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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189642
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   G16C 20/10 20190101AFI20221215BHJP
【FI】
G16C20/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098336
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】515130201
【氏名又は名称】株式会社Preferred Networks
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100118876
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 順生
(74)【代理人】
【識別番号】100202429
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 信人
(72)【発明者】
【氏名】澤田 亮人
(57)【要約】
【課題】適切な反応経路を探索する。
【解決手段】情報処理装置は、1又は複数のメモリと、1又は複数のプロセッサと、を備える。前記1又は複数のプロセッサは、第1状態及び第2状態を設定し、前記第1状態又は前記第2状態の少なくとも1つに基づいて、1又は複数の中間状態を生成する。前記1又は複数のプロセッサは、前記第2状態と、前記第1状態から生成される前記中間状態とのマッチング度を算出する場合と、前記第1状態と、前記第2状態から生成される前記中間状態とのマッチング度を算出する場合と、前記第1状態から生成された前記中間状態と、前記第2状態から生成された前記中間状態とのマッチング度を算出する場合との少なくともいずれか1つのマッチング度を算出する場合によってマッチング度を算出し、前記マッチング度に基づいて、1又は複数の前記中間状態を選択する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数のメモリと、1又は複数のプロセッサと、を備え、
前記1又は複数のプロセッサは、第1状態及び第2状態を設定し、
前記第1状態又は前記第2状態の少なくとも1つに基づいて、1又は複数の中間状態を生成し、
前記第1状態に基づいて前記中間状態が生成され、かつ、前記第2状態に基づいて前記中間状態が生成されないときには、前記中間状態と、前記第2状態とのマッチング度を算出する場合と、
前記第1状態に基づいて前記中間状態が生成されず、かつ、前記第2状態に基づいて前記中間状態が生成されたときには、前記第1状態と、前記中間状態とのマッチング度を算出する場合と、
前記第1状態及び前記第2状態から前記中間状態が生成されたときには、前記第1状態から生成された前記中間状態と、前記第2状態から生成された前記中間状態とのマッチング度を算出する場合との少なくともいずれか1つのマッチング度を算出する場合によってマッチング度を算出し、
前記マッチング度に基づいて、1又は複数の前記中間状態を選択する、
情報処理装置。
【請求項2】
前記1又は複数のプロセッサは、
環境に対する前記第1状態及び前記環境に対する前記第2状態を設定する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記1又は複数のプロセッサは、
選択された前記中間状態に基づいて、さらに1又は複数の前記中間状態を生成し、
新たに生成された前記中間状態のマッチング度を算出して新たに生成された前記中間状態を選択する、

請求項1又は請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記1又は複数のプロセッサは、
化学反応式における反応物に基づいて前記第1状態を取得し、前記化学反応式における生成物に基づいて前記第2状態を取得する、
請求項1から請求項3のいずれかにそれぞれ記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記1又は複数のプロセッサは、
量子化学計算により前記中間状態の生成処理を実行する、
請求項1から請求項4のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記1又は複数のプロセッサは、
GRRMにより前記中間状態の生成処理を実行する、
請求項1から請求項4のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記1又は複数のプロセッサは、
TPEにより前記第1状態、前記第2状態、又は、前記中間状態の少なくとも1つの状態を生成する、
請求項1から請求項6のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記1又は複数のプロセッサは、
ビームサーチにより前記中間状態の生成処理及び前記中間状態の選択処理を実行する、
請求項1から請求項7のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記1又は複数のプロセッサは、
選択された前記中間状態に基づいて、前記第1状態と前記第2状態とを接続する経路を取得する、
請求項1から請求項8のいずれかにそれぞれ記載の情報処理装置。
【請求項10】
情報を表示する、表示部、を備え、
前記1又は複数のプロセッサは、
前記経路の取得中において、前記中間状態及び経路の情報を前記表示部に表示する、
請求項9に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記1又は複数のプロセッサは、
前記経路の取得中において、ユーザからの要求により、前記マッチング度によらず、前記中間状態を選択する、
請求項10に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記1又は複数のプロセッサは、
前記経路の取得中において、ユーザからの要求により、前記マッチング度によらず、前記中間状態を選択から削除する、
請求項10又は請求項11に記載の情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
触媒の活性等の化学反応の起こりやすさの重要な指標として反応経路が挙げられる。反応経路とは、反応における原子の動きとエネルギーのペアのことをいう。複数の原子、分子等が反応しやすい経路は、エネルギー障壁が小さい経路であり、このような経路を抽出することにより化学反応の促す触媒を推定することも考えられる。従来、NEB(Nudged Elastic Band)法を用いて、始状態と終状態を指定することでエネルギー障壁の小さい経路を探索していた。しかしながら、このような手法では、複数の中間状態(準安定状態)を経由する問題を解くことは困難であった。このような場合、ユーザが中間状態を与える等の手当をしないと現実的に問題を解くことができなかった。
【0003】
そこで、自動的に中間状態を取得する手法も考案されたが、自動である反面、計算量と反応経路の可読性に問題がある。自動的に生成される反応経路の候補の中には物理化学的な知見に則ると不自然である反応経路も含まれてしまう。目的の反応が複数の中間状態を経由する場合、生成される誤った反応経路の数は指数関数的に増えてしまう。 密度汎関数法ベースの手法においては、1つの中間状態の候補を生成するのに数時間オーダーの時間を要することを加味すると複数の中間状態が存在する問題を解くことは困難である。
【0004】
また、大量の反応経路の候補が列挙されてしまうため、計算結果の可視化にも問題が生じる。反応経路の計算は時間がかかるタスクであるため、計算途中であっても反応経路の候補をユーザが確認し、仮に化学的に誤った経路を検索している場合、計算について打ち切り条件を見直すことが望ましいが、機械的に列挙された中間状態をユーザが目視で確認するのは困難である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Z. Rong, et. al., “An efficient algorithm for finding the minimum energy path for cation migration in ionic materials,” J. Chem. Phys., 145, 074112 (2016), July 2016
【非特許文献2】O. P. Koistinen, et. al., “Minimum energy path calculations with Gaussian process regression,” arXiv.org, https://arxiv.org/abs/1703.10423v1, March 30, 2017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の実施形態によれば、局所的な安定状態を自動生成して適切な反応経路を探索する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態によれば、情報処理装置は、1又は複数のメモリと、1又は複数のプロセッサと、を備える。前記1又は複数のプロセッサは、第1状態及び第2状態を設定し、前記第1状態又は前記第2状態の少なくとも1つに基づいて、1又は複数の中間状態を生成し、前記第1状態に基づいて前記中間状態が生成され、かつ、前記第2状態に基づいて前記中間状態が生成されないときには、前記中間状態と、前記第2状態とのマッチング度を算出する場合と、前記第1状態に基づいて前記中間状態が生成されず、かつ、前記第2状態に基づいて前記中間状態が生成されたときには、前記第1状態と、前記中間状態とのマッチング度を算出する場合と、前記第1状態及び前記第2状態から前記中間状態が生成されたときには、前記第1状態から生成された前記中間状態と、前記第2状態から生成された前記中間状態とのマッチング度を算出する場合との少なくともいずれか1つのマッチング度を算出する場合によってマッチング度を算出し、前記マッチング度に基づいて、1又は複数の前記中間状態を選択する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る情報処理装置を示すブロック図。
図2】一実施形態に係る第1状態の推定の一例を示す図。
図3】一実施形態に係る第2状態の推定の一例を示す図。
図4】一実施形態に係る情報処理装置の処理を示すフローチャート。
図5】一実施形態に係る第1状態及び第2状態の設定の一例を示す図。
図6】一実施形態に係る中間状態の推定の一例を示す図。
図7】一実施形態に係る評価値の算出の一例を示す図。
図8】一実施形態に係る中間状態の更新の一例を示す図。
図9】一実施形態に係る中間状態の推定及び評価値の算出の一例を示す図。
図10】一実施形態に係る情報処理装置の実装例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本開示の実施形態について説明する。図面及び実施形態の説明は一例として示すものであり、本開示を限定するものではない。一例として、触媒としてグラフェンを用いてアンモニアの化学反応を促進することについて説明するが、実施形態は、この触媒と化学反応に限定されるものではない。また、一部において数値を指定して説明しているが、この数値は限定されるものではなく、適切に指定できるものである。例えば、ある状態から生成する中間状態の個数は3個として説明するが、この数は、数十~数百~数千個、あるいは、これよりも多い数であってもよい。さらに、中間状態は遷移状態であってもよい。
【0010】
触媒として用いられる物質の配置、設置等の状態を以下の説明において環境という。この環境に対してどのような原子、分子の配置をするかにより反応経路を推定してもよい。例えば、この環境は、グラフェンの基板であり、この基板に対して原子等の始状態(第1状態)、中間状態、終状態(第2状態)を適切に推定することにより、種々の経路におけるエネルギーを算出して反応経路を推定してもよい。
【0011】
図1は、一実施形態に係る情報処理装置の一例を示すブロック図である。情報処理装置1は、入出力インタフェース(以下、入出力I/F 100と記載する)と、記憶部102と、環境設定部104と、状態設定部106と、中間状態推定部108と、評価部110と、更新部112と、を備えてもよい。情報処理装置1は、化合物の生成における各種環境(触媒)における反応経路を推定してもよい。より具体的な一例として、情報処理装置1は、触媒を用いた場合において、反応物の状態から生成物の状態を接続する反応経路を探索してもよい。また、情報処理装置1はさらに、この反応経路の推定結果から、化合物の生成における適した触媒を選択する処理をしてもよい。
【0012】
入出力I/F 100は、データの入出力等の処理を実行してもよい。入出力I/F 100は、推定に必要となるデータ等の入力、又は、推定結果等の出力を実現するデバイスを備えていてもよい。また、入出力I/F 100は、GUI(Graphical User Interface)を含むユーザインタフェースを含んでいてもよい。
【0013】
記憶部102は、反応経路の推定に必要となるデータ、プログラム等を格納するストレージ、メモリを備えもよく、一時的、又は、非一時的にデータ等を格納してもよい。本開示においてデータ等を出力することには、この記憶部102にデータ等を格納することを含んでもよい。
【0014】
環境設定部104は、例えば、反応経路における触媒となる情報を環境として設定する。環境設定部104は、例えば、触媒の化学的、物理的な情報に基づいて、原子、分子等を適切な3次元的な形状に配置してもよい。この情報は、ユーザが設定して入力するものであってもよいし、データベース等から取得するものであってもよいし、又は、化学式等の情報に基づいて環境設定部104が演算をして設定するものであってもよい。
【0015】
状態設定部106は、環境設定部104が設定した環境に対して、原子、分子等の状態を設定してもよい。状態設定部106は、例えば、化学反応式に基づいて、反応物を始状態(第1状態)として設定し、生成物を終状態(第2状態)として設定する。この設定は、原子、分子等の位置(基板との距離、原子、分子同士の距離等)、速度、姿勢(角度等の情報)、姿勢変動速度(回転角速度等)、その他の状態(原子同士、分子同士、原子分子間における摩擦力等)について実行されてもよい。上記の状態は一例としてあげたものであり、この全てを用いてもよいし、他の状態として定義できる量を設定してもよいし、上記の全てが用いずに少なくとも一部が用いられてもよい。状態設定部106は、1又は複数の第1状態と、1又は複数の第2状態と、を設定してもよい。
【0016】
状態設定部106は、例えば、第1状態として、反応物それぞれの原子、分子等が環境に対してどのような姿勢でどのような速度をもってどのような位置に配置されるかの第1状態として設定する。同様に、状態設定部106は、例えば、生成物の位置、速度、姿勢を第2状態として設定する。
【0017】
これらの設定は、例えば、ユーザが設定するものであってもよいし、データベースに基づいて初期状態となり得そうな状態を抽出等して用いるものであってもよい。例えば、状態設定部106は、よく知られている状態に基づいてこれらの状態を設定してもよい。この抽出等は、訓練済のニューラルネットワークモデル等を用いるものであってもよい。また、状態設定部106は、TPE(Tree-structured Parzen Estimator)に基づいて第1状態及び第2状態を生成してもよい。TPEに基づくことにより、状態設定部106は、多様な局所安定構造を生成することが可能となる。別の例として、状態設定部106は、ランダムにこの第1状態及び第2状態を設定してもよい。
【0018】
また、状態設定部106は特定の物理量を指標にしながら、原子/分子の位置や角度を機械的に変えることで生成しても良い。例えば、触媒反応の場合、触媒と分子が適切な位置関係で吸着していることが重要となる一方で、分子の吸着構造を事前に推理することが難しい。そこで、原子/分子の位置や角度を調整可能なパラメタとし、吸着エネルギーの低い状態を列挙することで適切な吸着構造を第1状態、第2状態として与えることができる。最適化するパラメタの数が原子の数に比例するためTPEなどの方法を使って効率的な探索をすることが望ましい
【0019】
図2は、一実施形態に係る環境と第1状態との一例を示す図である。状態設定部106は、環境Sに対してどのような分子がどのような配置、姿勢、速度、回転状態等になっているかを設定してもよい。Sは、例えば、板状のグラフェンである。板として描かれているが、実際にはC(炭素)原子が連なって構成されている。Hは、水素原子、Nは、窒素原子を表す。上述したように、環境、原子、分子等は、一例としてあげるものであり、これらに対する触媒の働き等に本実施形態は限定されるものではない。
【0020】
状態設定部106は、例えば、第1状態として、環境Sに対してN2分子と、複数のH2分子を図に示すように配置する。もちろん、この配置は、環境Sを構成するC原子の構造に対して設定されるものである。これを1つの第1状態として設定し、他にも始状態として複数の同様の第1状態を設定してもよい。このように、状態設定部106は、1又は複数の第1状態を設定してもよい。
【0021】
図3は、一実施形態に係る環境と第2状態の一例を示す図である。状態設定部106は、環境Sに対して分子における原子がどのような配置、姿勢になっているかを設定してもよい。上記の第1状態と同様に第2状態においても、状態設定部106は、この他の状態として、速度、回転状態等を設定してもよい。
【0022】
状態設定部106は、第2状態として、環境Sに対してNH3分子を図に示すように配置してもよい。この配置も、環境Sを構成するC原子の構造に対して設定されるものである。これを1つの第2状態として設定し、他にも終状態として複数の同様の第2状態を設定してもよい。このように、状態設定部106は、1又は複数の第2状態を設定してもよい。
【0023】
中間状態推定部108は、第1状態又は第2状態の少なくとも一方に基づいて、中間状態を推定してもよい。中間状態推定部108は、例えば、第1状態に基づいて、第1状態に近い中間状態を複数推定してもよい。複数の第1状態が設定されている場合には、それぞれの第1状態に対して1又複数の中間状態を生成してもよい。
【0024】
中間状態推定部108は、例えば、DimerMethod 、GRRM、量子化学計算に基づいた手法等の既存の手法に基づいて中間状態を生成してもよい。また、上記の状態設定部106が特定の物理量を指標にする例と同様に特定の目標値を指標に機械的に生成を行っても良い。例えば、図2に示す環境に対する状態において、微小に分子の位置、速度、姿勢等が異なる状態、又は、分子を構成する木構造におけるボンドが切れたり、接続されたりといった接続状態が変化した状態を生成する。
【0025】
このように、状態設定部106による第1状態及び第2状態の設定、中間状態推定部108による中間状態の推定においてTPE、GRRM等の手法を用いることにより、多種多様な安定した状態の候補を推定することができる。この候補について、次の中間状態を推定するべく、評価部110と、更新部112により中間状態の枝刈りが実行されてもよい。
【0026】
評価部110による中間状態の評価及び更新部112による中間状態の更新の後、中間状態推定部108は、枝刈りにより候補として取得されている1又は複数の中間状態に基づいて1又は複数の中間状態を生成してもよい。
【0027】
評価部110は、中間状態推定部108が推定した中間状態を評価してもよい。評価部110は、例えば、中間状態推定部108が推定した第1状態に近い複数の中間状態と、第2状態とを比較して、中間状態と第2状態との評価値を算出する。この評価値は、例えば、1又は複数の中間状態と、1又は複数の第2状態との間のマッチング度を算出することにより、それぞれの中間状態に対する評価値としてマッチング度を取得する。ここで、マッチング度は、例えば、同じ原子の距離の和や二乗和によって算出する。
【0028】
更新部112は、評価部110が取得した評価値に基づいて、中間状態の候補からより経路として経由するのに適した候補を抽出し、中間状態を選択して更新してもよい。すなわち、更新部112は、評価部110が算出したマッチング度に基づいて、中間状態推定部108が推定した中間状態の選択(枝刈り)を実行してもよい。
【0029】
上述したように、更新部112が中間状態を更新した後、更新された中間状態に基づいて、中間状態推定部108がさらに中間状態を生成して処理を繰り返してもよい。
【0030】
なお、上記においては、中間状態は、第1状態から生成され、生成された中間状態に基づいて次々と新たな中間状態を生成するものとしたが、これには限られない。例えば、中間状態は、第2状態から生成され、生成された中間状態と第1状態とのマッチング度により逐次的に候補を生成するものであってもよい。
【0031】
また別の例として、第1状態から生成された中間状態と、第2状態から生成された中間状態と、の間においてマッチング度を算出し、このマッチング度により候補とする中間状態の枝刈りをしてもよい。この場合、第1状態から生成された中間状態及び第2状態から生成された中間状態について枝刈りを実行した後に、それぞれの中間状態に基づいて、さらに中間状態が生成されてもよい。このように、第1状態又は第2状態の一方向からだけではなく、双方向から中間状態を生成し、これらの少なくともいずれか一つの場合においてマッチング度を算出してもよい。
【0032】
また、双方向から中間状態を生成する場合においても、同じタイミングで第1状態及び第2状態から中間状態が生成されなくてもよい。例えば、第1状態からの推定と、第2状態からの推定とを交互に実行してもよい。別の例としては、第1状態からの推定が2回実行される間に第2状態からの推定が1回行われるといったように、第1状態からの中間状態の生成と、第2状態からの中間状態の生成の頻度を変えてもよい。
【0033】
すなわち、情報処理装置1は、第1状態に基づいて中間状態が生成され、かつ、第2状態に基づいて中間状態が生成されないときには、中間状態と、第2状態とのマッチング度を算出する場合とする。第1状態に基づいて中間状態が生成されず、かつ、第2状態に基づいて中間状態が生成されたときには、第1状態と、中間状態とのマッチング度を算出する場合とする。第1状態及び第2状態から中間状態が生成されたときには、第1状態から生成された中間状態と、第2状態から生成された中間状態とのマッチング度を算出する場合とする。そして、これらの場合のうち、少なくともいずれか1つのマッチング度を算出する場合によってマッチング度を算出して、算出されたマッチング度に基づいて、1又は複数の中間状態を選択してもよい。
【0034】
以下においては、第1状態及び第2状態の双方から同じタイミングで次々に中間状態を生成する形態を用いて説明をするが、もちろん、一方向からの場合であっても、双方から異なるタイミングで生成する場合であっても同様に処理をすることが可能である。また、上記においては、第1状態、第2状態として、化学式に基づいて最小限の分子を取得する状態を設定したが、これには限られず、さらに多くの分子等を設定してもよい。例えば、図2図3において、それぞれに示される分子は、それぞれの図において整数倍された分子であってもよいし、これ以外の個数の分子を設定してもよい。
【0035】
図4は、一実施形態に係る処理を示すフローチャートである。このフローチャートを用いて、情報処理装置1の処理の流れについて説明する。
【0036】
まず、環境設定部104は、触媒等の環境を設定してもよい(S100)。環境は、例えば、触媒を構成する原子と、その配置、結合等を示す量である。
【0037】
次に、状態設定部106は、化合物に基づいて第1状態及び第2状態を設定してもよい(S102)。例えば、状態設定部106は、上述したように、化学反応式の反応物と環境との関係を第1状態として、ランダム又はTPE等の手法により設定してもよく、化合物と環境との関係を第2状態として、ランダム又はTPE等の手法により設定してもよい。ここでは、一例として、状態設定部106は、複数の第1状態と第2状態とを設定するとして説明する。また、この設定は、ユーザにより入力された状態に基づいたものであってもよい。
【0038】
図5は、第1状態と第2状態の設定について一例を示す図である。状態設定部106は、第1状態A1、A2と、第2状態B1、B2とを設定してもよい。なお、一例として示した図であり、さらに多くの第1状態及び第2状態が設定されてもよいし、第1状態又は第2状態のうち少なくとも一方は、1つだけが設定されるものであってもよい。
【0039】
複数の第1状態及び複数の第2状態が設定されると、それらのうち1対1の組合せが最適な経路の始状態及び終状態の組合せであると仮定してもよい。例えば、マルチコア、メニーコアのようなプロセッサを用いて数千から数万程度の始状態と終状態とを設定してもよい。このような設定をする場合、それぞれの第1状態及び第2状態に対して中間状態を推定し、そのうちからエネルギーが最小となる経路を探索すると、その状態に応じて指数関数的に探索経路が増加する。そのために適切な枝刈り手法を用いても良い。
【0040】
図4に戻り、次に、中間状態推定部108がそれぞれの状態の近傍の状態を1又は複数生成してもよい(S104)。上述したように、中間状態推定部108は、GRRM等の手法により第1状態、第2状態に基づいて、1又は複数の中間状態を生成してもよい。より具体的には、中間状態推定部108から更新部112においてビームサーチをすることにより、本実施形態における情報処理装置1は、反応経路の推定を実現してもよい。
【0041】
図6は、中間状態の推定について一例を示す図である。中間状態推定部108は、例えば、第1状態及び第2状態からそれぞれ3つの中間状態を生成してもよい。一例として示した図であり、さらに少ない、又は、さらに多く中間状態を生成してもよい。第1状態A1からは中間状態X1、X2、X3の3つの中間状態が生成されてもよく、第1状態A2からは中間状態X4、X5、X6の3つの中間状態が生成されてもよい。同様に、第2状態B1からは中間状態Y1、Y2、Y3の3つの中間状態が生成されてもよく、第2状態B1からは中間状態Y4、Y5、Y6の3つの中間状態が生成されてもよい。
【0042】
なお、全ての状態に対して同数の中間状態を生成しなくてもよい。例えば、第1状態A1からは3つの中間状態を生成し、第1状態A2からは4つの中間状態を生成してもよい。この生成処理は、上述したように、TPE、GRRM、量子化学計算に基づいた手法等により実行されてもよい。
【0043】
図4に戻り、次に、評価部110は、S104で生成した各中間状態間の評価値を算出してもよい(S106)。評価部110は、例えば、第1状態から生成された中間状態と、第2状態から生成された中間状態と、の間の類似度を評価してもよい。評価部110は、評価値として、中間状態同士のマッチング度を算出してもよい。
【0044】
例えば、評価部110は、原子同士又は分子同士がどの位置、姿勢等の状態になっているかの差分の和を算出して評価値とする。別の例としては、ステップ数を限定したNEB計算をすることにより算出されたエネルギーを評価値としてもよい。
【0045】
図7は、評価部110による評価値の算出について一例を示す図である。点線矢印で示すように、評価部110は、第1状態から生成した中間状態X1に対して、第2状態から生成した中間状態Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6との間の評価値を算出してもよい。なお、この図7においては、中間状態X1に対する評価値のみを示しているが、中間状態X2、X3、X4、X5、X6についても同様に、中間状態Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6との間の評価値がそれぞれ算出されてもよい。すなわち、評価部110は、第1状態から生成された中間状態と、第2状態から生成された中間状態との間の評価値を算出してもよい。
【0046】
図4に戻り、次に、更新部112は、評価部110が算出した評価値に基づいて状態を更新してもよい(S108)。ここで、状態の更新とは、S104で生成された中間状態から、次のステップの演算に用いる中間状態を選択する処理のことをいう。すなわち、S104において、次のステップに残す中間状態の候補を複数生成してもよく、S106において第1状態と第2状態との間の中間状態同士の評価値を算出してもよく、本S108ステップにおいて中間状態の候補から次のステップに用いる中間状態を抽出してもよく、中間状態を更新してもよい。このステップを複数回繰り返すことにより、徐々に第1状態と第2状態とを接続する経路を確立してもよい。
【0047】
図8は、更新部112による中間状態の選択について一例を示す図である。評価部110が算出した評価値が、中間状態X1、Y2間、中間状態X2、Y4間、中間状態X4、Y3間、で高かったとする。この場合、更新部112は、第1状態から取得された中間状態X1、X2、X4と、第2状態から取得された中間状態Y2、Y3、Y4を中間状態として抽出してもよい。、更新部112は、評価値が高い方から選択するとしたが、評価部110の評価値として算出する指標が低いほどよい場合には、低い方から選択してもよい。選択についての詳しい説明は、後述する。
【0048】
図4に戻り、次に、情報処理装置1は、推定が完了したか否かを判定してもよい(S110)。推定の終了は、例えば、評価値が所定値より高くなった中間状態の組合せが存在する、所定回数のステップ数の演算を繰り返した、等の適切な任意の条件とすることができる。
【0049】
推定が終了したと判定された場合(S110: YES)、情報処理装置1は、判定時に中間状態同士の組合せの評価値を用いた場合には、高い評価値となる中間状態の組合せを含む反応経路を、推定の対象となる化学反応式の反応経路として出力してもよい(S112)。この他に、例えば、2番目以降の評価値となる中間状態を含む反応経路等をその順番に出力するようにする等、必要と考えられる情報を併せて出力してもよい。
【0050】
情報処理装置1は、別の例として、判定時にステップ数を用いた場合には、最終ステップが終了したタイミングにおいて最も高い評価値を示した中間状態の組合せを含む反応経路を推定結果として出力してもよい。他の条件で判定した場合においても、情報処理装置1は、適切な反応経路を推定された反応経路として出力してもよい。
【0051】
推定が終了していないと判定された場合(S110: NO)、情報処理装置1は、更新された中間状態からS104~S108の処理を繰り返してもよい。
【0052】
図9は、中間状態から中間状態を生成する一例を示す図である。
【0053】
中間状態推定部108は、前ステップにおいて更新された中間状態から、さらに中間状態を生成してもよい(S104)。例えば図に示すように、中間状態X1からは、中間状態X11、X12、X13が、中間状態Y1からは、中間状態Y11、Y12、Y13が、といったように選択された中間状態のそれぞれから、1又は複数の中間状態をさらに生成する。
【0054】
評価部110は、上述したのと同様に、第1状態から派生する中間状態と、第2状態から派生する中間状態との間の評価値を算出してもよい(S106)。図には示されていないが、中間状態X12等についても同様に評価値が算出されてもよい。
【0055】
そして、更新部112は、上記の説明と同様に、中間状態の更新をしてもよい(S108)。このS104からS108の処理を繰り返すことにより、第1状態から第2状態へと接続する反応経路を徐々につないでもよい。情報処理装置1は、最終的にS110において推定の終了と判定されるまで、処理を繰り返してもよい。この例の処理では、例えば、中間状態は、各ステップで第1状態から派生したものと、第2状態から派生したものとが9つずつ存在する。これらの9つずつの中間状態から、3つの中間状態を抽出して、次々にこのステップを繰り返してもよい。
【0056】
最終的に、情報処理装置1は、更新された中間状態を接続することにより、第1状態と第2状態とを接続する反応経路の探索を実行することができる。この探索は、上述したように、各状態においてエネルギー値が小さくなるような経路となるため、結果的に、第1状態と中間状態と第2状態とを接続するエネルギー値が小さくなる適切な反応経路を探索することができる。
【0057】
上記では、各状態から3つの中間状態を生成するものとしたが、生成する中間状態の数は、各ステップ、又は、各状態に対して同数でなくてもよい。例えば、生成される中間状態が第1所定数以上第2所定数以下となるように、中間状態推定部108は新たな中間状態を生成してもよい。また別の例としては、生成される中間状態が第3所定数となるように、中間状態推定部108は新たな中間状態を生成してもよい。この場合、前ステップで評価値の高かった組合せから生成する中間状態を多くするように制御してもよい。
【0058】
更新部112による中間状態の更新については、いくつかのパターンが考えられる。例えば、単純に評価値が高いものから所定数(図では3つ)の組合せを選択して、この組合せの中間状態を次のステップの中間状態としてもよい。評価値が高い中間状態が全て異なる中間状態である場合、図8に示すように、全ての中間状態を次のステップに用いる中間状態として抽出する。しかしながら、評価値の高い順に経路の検索をした場合には、常に全ての中間状態が異なる中間状態であるとは限らない。以下においては、第1状態又は第2状態から生成された中間状態を用いて説明するが、中間状態から生成された中間状態についても、もちろん同様の処理を実行することが可能である。
【0059】
例えば、評価値が高い順番が、中間状態X1とY2、X4とY3、X1とY4であるといった場合がある。このような場合には、更新部112は、第1状態側の中間状態として、X1、X4を選択し、第2状態側の中間状態として、Y2、Y3、Y4を選択してもよい。この場合、次のステップにおいて、中間状態推定部108は、X1から6通りの中間状態を生成してもよい。
【0060】
また別の例として、評価値の順位が上記の例と同様であり、次に高い評価値である中間状態の組合せが、X3とY4である場合、更新部112は、第1状態側の中間状態として、X3をさらに選択してもよい。すなわち、第1状態側、第2状態側からそれぞれ派生している中間状態に対して、更新部112は、評価値が高い順番に所定数(例えば3個)の中間状態を選択してもよい。
【0061】
このように、更新部112は、第1状態から派生している中間状態、及び、第2状態から派生している中間状態について、適切にビームサーチが実現される態様の処理が実行できればよい。
【0062】
以上のように、本実施形態によれば、環境における適切な始状態、中間状態及び終状態を有する反応経路を探索することが可能となる。ランダムに生成された初期状態を用いることにより、各状態の初期状態の多様性を確保することが可能となる。また、ビームサーチを用いることにより、探索経路が発散することを回避することが可能となる。このため、例えば、精度のよい化学反応における触媒の探索をするとともに、その探索時間を削減することができる。
【0063】
例えば、化学反応式が既知である場合に、この化学反応式の反応物及び生成物に対して、種々の環境及び種々の初期状態を設定して各環境における反応経路を探索してもよい。この探索の結果、当該化学反応において用いることが適した触媒を探索することができる。
【0064】
なお、上記の実施形態においては、ランダムに初期状態を選択することと、ビームサーチを用いることの双方を用いたが、双方を同時に用いなくてもよい。例えば、初期状態をランダムに選択して探索を実行する形態、又は、所定の初期状態からビームサーチをする形態を本明細書の内容に基づいて実現することも可能である。ランダムに初期状態を選択することにより、多様な経路を探索することができる。
【0065】
(変形例)
情報処理装置1は、入出力I/F 100を介して、図8図9等に示される中間状態及び経路の状況(枝刈りの状態を含めてもよい)をユーザに出力、例えば、可視化して表示してもよい。これは、推定の途中で実行されてもよいし、推定の終了後に実行されてもよい。
【0066】
ユーザが入出力I/F 100を介して、この枝刈りの状態を修正してもよい。例えば、図8において、ユーザがY1の中間状態が適切、又は、有望であると判断した場合には、ユーザは、このY1を選択して、枝刈りしない対象として設定できる形態としてもよい。この場合、状態設定部106は、Y1を枝刈りしない中間状態として設定し、以降の処理において枝刈りの対象から外してもよい。
【0067】
逆に、情報処理装置1は、ユーザが入出力I/F 100を介して、例えば、図8において、X1を中間状態の対象から外すことを受け付けてもよい。この場合、状態設定部106は、X1を中間状態の候補から削除してもよい。
【0068】
このように、中間状態を可視化して表示することにより、ユーザに中間状態を知らせることができる。また、中間状態の計算対象にユーザが指定した中間状態を加えたり、削除したりできる形態であってもよい。ビームサーチを用いる場合、計算対象となる中間状態の数は、探索が深くなっても爆発的に増加することはなく、一定水準の数の中間状態が維持される。このため、ユーザからの可読性を確保することができる。
【0069】
また、情報処理装置1は、この状態において、ユーザにより指定された層について、枝刈りされた中間状態を表示させることもできる
【0070】
ビームサーチは、中間状態の生成と、生成された中間状態同士の評価、例えば、マッチング度合いの算出の繰り返しにより実行される。このため、ユーザにより処理の途中で中間状態の数が増減しても、計算の流れに問題を生じさせることはない。例えば、図9に示すような中間状態となった場合に、ユーザによりY1を追加したり、又は、X1を削除したりすることも特に大きな問題とはならず、推定の精度、速度を落とす大きな原因とはならない。
【0071】
以上のように、情報処理装置1は、推定における中間状態の接続状況を可視化して出力することができる。この可視化により、ユーザからの枝刈り状態の変更を受け付けて、当該変更された中間状態の状況に基づいて、ビームサーチを続行することができる。この形態によれば、探索の途中において、ユーザの経験等に基づいた情報を反映させた推定を実現することが可能となる。
【0072】
前述した実施形態における各装置(情報処理装置1)の一部又は全部は、ハードウェアで構成されていてもよいし、CPU(Central Processing Unit)、又はGPU(Graphics Processing Unit)等が実行するソフトウェア(プログラム)の情報処理で構成されてもよい。ソフトウェアの情報処理で構成される場合には、前述した実施形態における各装置の少なくとも一部の機能を実現するソフトウェアを、フレキシブルディスク、CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory)又はUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の非一時的な記憶媒体(非一時的なコンピュータ可読媒体)に収納し、コンピュータに読み込ませることにより、ソフトウェアの情報処理を実行してもよい。また、通信ネットワークを介して当該ソフトウェアがダウンロードされてもよい。さらに、ソフトウェアがASIC(Application Specific Integrated Circuit)又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等の回路に実装されることにより、情報処理がハードウェアにより実行されてもよい。
【0073】
ソフトウェアを収納する記憶媒体の種類は限定されるものではない。記憶媒体は、磁気ディスク、又は光ディスク等の着脱可能なものに限定されず、ハードディスク、又はメモリ等の固定型の記憶媒体であってもよい。また、記憶媒体は、コンピュータ内部に備えられてもよいし、コンピュータ外部に備えられてもよい。
【0074】
図10は、前述した実施形態における各装置(情報処理装置1)のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。各装置は、一例として、プロセッサ71と、主記憶装置72(メモリ)と、補助記憶装置73(メモリ)と、ネットワークインタフェース74と、デバイスインタフェース75と、を備え、これらがバス76を介して接続されたコンピュータ7として実現されてもよい。
【0075】
図10のコンピュータ7は、各構成要素を一つ備えているが、同じ構成要素を複数備えていてもよい。また、図10では、1台のコンピュータ7が示されているが、ソフトウェアが複数台のコンピュータにインストールされて、当該複数台のコンピュータそれぞれがソフトウェアの同一の又は異なる一部の処理を実行してもよい。この場合、コンピュータそれぞれがネットワークインタフェース74等を介して通信して処理を実行する分散コンピューティングの形態であってもよい。つまり、前述した実施形態における各装置(情報処理装置1)は、1又は複数の記憶装置に記憶された命令を1台又は複数台のコンピュータが実行することで機能を実現するシステムとして構成されてもよい。また、端末から送信された情報をクラウド上に設けられた1台又は複数台のコンピュータで処理し、この処理結果を端末に送信するような構成であってもよい。
【0076】
前述した実施形態における各装置(情報処理装置1)の各種演算は、1又は複数のプロセッサを用いて、又は、ネットワークを介した複数台のコンピュータを用いて、並列処理で実行されてもよい。また、各種演算が、プロセッサ内に複数ある演算コアに振り分けられて、並列処理で実行されてもよい。また、本開示の処理、手段等の一部又は全部は、ネットワークを介してコンピュータ7と通信可能なクラウド上に設けられたプロセッサ及び記憶装置の少なくとも一方により実行されてもよい。このように、前述した実施形態における各装置は、1台又は複数台のコンピュータによる並列コンピューティングの形態であってもよい。
【0077】
プロセッサ71は、コンピュータの制御装置及び演算装置を含む電子回路(処理回路、Processing circuit、Processing circuitry、CPU、GPU、FPGA又はASIC等)であってもよい。また、プロセッサ71は、専用の処理回路を含む半導体装置等であってもよい。プロセッサ71は、電子論理素子を用いた電子回路に限定されるものではなく、光論理素子を用いた光回路により実現されてもよい。また、プロセッサ71は、量子コンピューティングに基づく演算機能を含むものであってもよい。
【0078】
プロセッサ71は、コンピュータ7の内部構成の各装置等から入力されたデータやソフトウェア(プログラム)に基づいて演算処理を行い、演算結果や制御信号を各装置等に出力することができる。プロセッサ71は、コンピュータ7のOS(Operating System)や、アプリケーション等を実行することにより、コンピュータ7を構成する各構成要素を制御してもよい。
【0079】
前述した実施形態における各装置(情報処理装置1)は、1又は複数のプロセッサ71により実現されてもよい。ここで、プロセッサ71は、1チップ上に配置された1又は複数の電子回路を指してもよいし、2つ以上のチップあるいは2つ以上のデバイス上に配置された1又は複数の電子回路を指してもよい。複数の電子回路を用いる場合、各電子回路は有線又は無線により通信してもよい。
【0080】
主記憶装置72は、プロセッサ71が実行する命令及び各種データ等を記憶する記憶装置であり、主記憶装置72に記憶された情報がプロセッサ71により読み出される。補助記憶装置73は、主記憶装置72以外の記憶装置である。なお、これらの記憶装置は、電子情報を格納可能な任意の電子部品を意味するものとし、半導体のメモリでもよい。半導体のメモリは、揮発性メモリ、不揮発性メモリのいずれでもよい。前述した実施形態における各装置(情報処理装置1)において各種データを保存するための記憶装置は、主記憶装置72又は補助記憶装置73により実現されてもよく、プロセッサ71に内蔵される内蔵メモリにより実現されてもよい。例えば、前述した実施形態における記憶部102は、主記憶装置72又は補助記憶装置73により実現されてもよい。
【0081】
記憶装置(メモリ)1つに対して、複数のプロセッサが接続(結合)されてもよいし、単数のプロセッサが接続されてもよい。プロセッサ1つに対して、複数の記憶装置(メモリ)が接続(結合)されてもよい。前述した実施形態における各装置(情報処理装置1)が、少なくとも1つの記憶装置(メモリ)とこの少なくとも1つの記憶装置(メモリ)に接続(結合)される複数のプロセッサで構成される場合、複数のプロセッサのうち少なくとも1つのプロセッサが、少なくとも1つの記憶装置(メモリ)に接続(結合)される構成を含んでもよい。また、複数台のコンピュータに含まれる記憶装置(メモリ))とプロセッサによって、この構成が実現されてもよい。さらに、記憶装置(メモリ)がプロセッサと一体になっている構成(例えば、L1キャッシュ、L2キャッシュを含むキャッシュメモリ)を含んでもよい。
【0082】
ネットワークインタフェース74は、無線又は有線により、通信ネットワーク8に接続するためのインタフェースである。ネットワークインタフェース74は、既存の通信規格に適合したもの等、適切なインタフェースを用いればよい。ネットワークインタフェース74により、通信ネットワーク8を介して接続された外部装置9Aと情報のやり取りが行われてもよい。なお、通信ネットワーク8は、WAN(Wide Area Network)、LAN(Local Area Network)、PAN(Personal Area Network)等のいずれか、又は、それらの組み合わせであってよく、コンピュータ7と外部装置9Aとの間で情報のやりとりが行われるものであればよい。WANの一例としてインターネット等があり、LANの一例としてIEEE802.11やイーサネット(登録商標)等があり、PANの一例としてBluetooth(登録商標)やNFC(Near Field Communication)等がある。
【0083】
デバイスインタフェース75は、外部装置9Bと直接接続するUSB等のインタフェースである。
【0084】
外部装置9Aは、コンピュータ7とネットワークを介して接続されている装置である。外部装置9Bは、コンピュータ7と直接接続されている装置である。
【0085】
外部装置9A又は外部装置9Bは、一例として、入力装置であってもよい。入力装置は、例えば、カメラ、マイクロフォン、モーションキャプチャ、各種センサ等、キーボード、マウス、又は、タッチパネル等のデバイスであり、取得した情報をコンピュータ7に与える。また、パーソナルコンピュータ、タブレット端末、又は、スマートフォン等の入力部とメモリとプロセッサを備えるデバイスであってもよい。
【0086】
また、外部装置9A又は外部装置9Bは、一例として、出力装置でもよい。出力装置は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode Ray Tube)、PDP(Plasma Display Panel)、又は、有機EL(Electro Luminescence)パネル等の表示装置であってもよいし、音声等を出力するスピーカ等であってもよい。また、パーソナルコンピュータ、タブレット端末、又は、スマートフォン等の出力部とメモリとプロセッサを備えるデバイスであってもよい。
【0087】
また、外部装置9A又は外部装置9Bは、記憶装置(メモリ)であってもよい。例えば、外部装置9Aは、ネットワークストレージ等であってもよく、外部装置9Bは、HDD等のストレージであってもよい。
【0088】
また、外部装置9A又は外部装置9Bは、前述した実施形態における各装置(情報処理装置1)の構成要素の一部の機能を有する装置でもよい。つまり、コンピュータ7は、外部装置9A又は外部装置9Bの処理結果の一部又は全部を送信又は受信してもよい。
【0089】
本明細書(請求項を含む)において、「a、b及びcの少なくとも1つ(一方)」又は「a、b又はcの少なくとも1つ(一方)」の表現(同様な表現を含む)が用いられる場合は、a、b、c、a-b、a-c、b-c、又は、a-b-cのいずれかを含む。また、a-a、a-b-b、a-a-b-b-c-c等のように、いずれかの要素について複数のインスタンスを含んでもよい。さらに、a-b-c-dのようにdを有する等、列挙された要素(a、b及びc)以外の他の要素を加えることも含む。
【0090】
本明細書(請求項を含む)において、「データを入力として/データに基づいて/に従って/に応じて」等の表現(同様な表現を含む)が用いられる場合は、特に断りがない場合、各種データそのものを入力として用いる場合や、各種データに何らかの処理を行ったもの(例えば、ノイズ加算したもの、正規化したもの、各種データの中間表現等)を入力として用いる場合を含む。また「データに基づいて/に従って/に応じて」何らかの結果が得られる旨が記載されている場合、当該データのみに基づいて当該結果が得られる場合を含むとともに、当該データ以外の他のデータ、要因、条件、及び/又は状態等にも影響を受けて当該結果が得られる場合をも含み得る。また、「データを出力する」旨が記載されている場合、特に断りがない場合、各種データそのものを出力として用いる場合や、各種データに何らかの処理を行ったもの(例えば、ノイズ加算したもの、正規化したもの、各種データの中間表現等)を出力とする場合も含む。
【0091】
本明細書(請求項を含む)において、「接続される(connected)」及び「結合される(coupled)」との用語が用いられる場合は、直接的な接続/結合、間接的な接続/結合、電気的(electrically)な接続/結合、通信的(communicatively)な接続/結合、機能的(operatively)な接続/結合、物理的(physically)な接続/結合等のいずれをも含む非限定的な用語として意図される。当該用語は、当該用語が用いられた文脈に応じて適宜解釈されるべきであるが、意図的に或いは当然に排除されるのではない接続/結合形態は、当該用語に含まれるものして非限定的に解釈されるべきである。
【0092】
本明細書(請求項を含む)において、「AがBするよう構成される(A configured to B)」との表現が用いられる場合は、要素Aの物理的構造が、動作Bを実行可能な構成を有するとともに、要素Aの恒常的(permanent)又は一時的(temporary)な設定(setting/configuration)が、動作Bを実際に実行するように設定(configured/set)されていることを含んでよい。例えば、要素Aが汎用プロセッサである場合、当該プロセッサが動作Bを実行可能なハードウェア構成を有するとともに、恒常的(permanent)又は一時的(temporary)なプログラム(命令)の設定により、動作Bを実際に実行するように設定(configured)されていればよい。また、要素Aが専用プロセッサ又は専用演算回路等である場合、制御用命令及びデータが実際に付属しているか否かとは無関係に、当該プロセッサの回路的構造が動作Bを実際に実行するように構築(implemented)されていればよい。
【0093】
本明細書(請求項を含む)において、含有又は所有を意味する用語(例えば、「含む(comprising/including)」及び有する「(having)等)」が用いられる場合は、当該用語の目的語により示される対象物以外の物を含有又は所有する場合を含む、open-endedな用語として意図される。これらの含有又は所有を意味する用語の目的語が数量を指定しない又は単数を示唆する表現(a又はanを冠詞とする表現)である場合は、当該表現は特定の数に限定されないものとして解釈されるべきである。
【0094】
本明細書(請求項を含む)において、ある箇所において「1つ又は複数(one or more)」又は「少なくとも1つ(at least one)」等の表現が用いられ、他の箇所において数量を指定しない又は単数を示唆する表現(a又はanを冠詞とする表現)が用いられているとしても、後者の表現が「1つ」を意味することを意図しない。一般に、数量を指定しない又は単数を示唆する表現(a又はanを冠詞とする表現)は、必ずしも特定の数に限定されないものとして解釈されるべきである。
【0095】
本明細書において、ある実施例の有する特定の構成について特定の効果(advantage/result)が得られる旨が記載されている場合、別段の理由がない限り、当該構成を有する他の1つ又は複数の実施例についても当該効果が得られると理解されるべきである。但し当該効果の有無は、一般に種々の要因、条件、及び/又は状態等に依存し、当該構成により必ず当該効果が得られるものではないと理解されるべきである。当該効果は、種々の要因、条件、及び/又は状態等が満たされたときに実施例に記載の当該構成により得られるものに過ぎず、当該構成又は類似の構成を規定したクレームに係る発明において、当該効果が必ずしも得られるものではない。
【0096】
本明細書(請求項を含む)において、「最大化(maximize)」等の用語が用いられる場合は、グローバルな最大値を求めること、グローバルな最大値の近似値を求めること、ローカルな最大値を求めること、及びローカルな最大値の近似値を求めることを含み、当該用語が用いられた文脈に応じて適宜解釈されるべきである。また、これら最大値の近似値を確率的又はヒューリスティックに求めることを含む。同様に、「最小化(minimize)」等の用語が用いられる場合は、グローバルな最小値を求めること、グローバルな最小値の近似値を求めること、ローカルな最小値を求めること、及びローカルな最小値の近似値を求めることを含み、当該用語が用いられた文脈に応じて適宜解釈されるべきである。また、これら最小値の近似値を確率的又はヒューリスティックに求めることを含む。同様に、「最適化(optimize)」等の用語が用いられる場合は、グローバルな最適値を求めること、グローバルな最適値の近似値を求めること、ローカルな最適値を求めること、及びローカルな最適値の近似値を求めることを含み、当該用語が用いられた文脈に応じて適宜解釈されるべきである。また、これら最適値の近似値を確率的又はヒューリスティックに求めることを含む。
【0097】
本明細書(請求項を含む)において、複数のハードウェアが所定の処理を行う場合、各ハードウェアが協働して所定の処理を行ってもよいし、一部のハードウェアが所定の処理の全てを行ってもよい。また、一部のハードウェアが所定の処理の一部を行い、別のハードウェアが所定の処理の残りを行ってもよい。本明細書(請求項を含む)において、「1又は複数のハードウェアが第1の処理を行い、前記1又は複数のハードウェアが第2の処理を行う」等の表現が用いられている場合、第1の処理を行うハードウェアと第2の処理を行うハードウェアは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。つまり、第1の処理を行うハードウェア及び第2の処理を行うハードウェアが、前記1又は複数のハードウェアに含まれていればよい。なお、ハードウェアは、電子回路、又は、電子回路を含む装置等を含んでもよい。
【0098】
以上、本開示の実施形態について詳述したが、本開示は上記した個々の実施形態に限定されるものではない。特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲において種々の追加、変更、置き換え及び部分的削除等が可能である。例えば、前述した全ての実施形態において、数値又は数式を説明に用いている場合は、一例として示したものであり、これらに限られるものではない。また、実施形態における各動作の順序は、一例として示したものであり、これらに限られるものではない。
【符号の説明】
【0099】
1: 情報処理装置、
100: 入出力I/F、102: 記憶部、104: 環境設定部、106: 状態設定部、108: 中間状態推定部、110: 評価部、112: 更新部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10