(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189653
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】単板重ね式エッジワイズコイル
(51)【国際特許分類】
H01F 27/28 20060101AFI20221215BHJP
H01F 5/00 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
H01F27/28 147
H01F5/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098360
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】716000994
【氏名又は名称】脇元 文良
(72)【発明者】
【氏名】脇元 文良
【テーマコード(参考)】
5E043
【Fターム(参考)】
5E043AB04
5E043BA03
(57)【要約】
【課題】高効率なモーターやトランスなどを設計する上で、できるだけエッジワイズコイルを採用したいが、従来は平角断面形状のコイル材を巻き線する必要があり、その製造手段は難易度が高く、コストが高くなったり製造できても平角断面の形が変形し十分な効果が得られなかったりするなどの問題がある。
【解決手段】連続したコイル材を巻き線するのではなく、プレス加工などで比較的容易に製造できる平面状もしくは一部折り曲げを伴った単板のコイル材を多数重ねてコイルとしての形態を形成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単板状のコイル材を多数重ねることでコイル形態を形成したもの。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は平角断面の長辺に沿ってコイル状に形成されるコイル(通称エッジワイズコイルと呼ばれるコイル)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来エッジワイズコイルを形成する場合、例えば
図8に示すように平角断面のコイル材を巻き線している(例えば、特許文献1や2)ため、巻き付けに特殊な治具や設備が必要であったり、また巻き付けに多くの工数が掛かったり、更に巻き付けによってコイルが変形するなどの種々の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-022326
【特許文献2】特開2019-021796
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、エッジワイズコイルにすることでコイル自体を小型軽量にできる、表面積が大きく放熱性が良い、耐電圧性・耐熱性も良いなどのメリットがあり、近年では、EV(電気自動車)やHEV(ハイブリッド車)などの普及により小型軽量で更に高性能なモーターのニーズは高まり、そのようなモーターにおいてもエッジワイズコイルを採用することでの効果は大きいものの、特殊な製造設備を必要としたり、あるいは製造できても平角断面の形状が変形したりする問題があるため、生産効率が悪く容易に採用できない。エッジワイズコイルを採用するためには、これらの問題をいかに解決するかということが大きな課題であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明では、プレス加工などで成形された単純なほぼ平板状もしくは一部曲げ加工を施した単板コイル材を多数重ねることでエッジワイズコイルとしての形態を形成でき、コイル状に巻き線する必要がなく、それによるコイル材の断面の変形もほぼない状態でエッジワイズコイルを形成できる。
【発明の効果】
【0006】
これによりコイルとしての性能向上には大きな効果がありながら製造方法や製造時の変形などに問題が多く採用しにくかったエッジワイズコイルの採用の自由度が増し、コイルを使った機器の性能向上につなげることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は本発明の実施形態に係るエッジワイズコイルをコアと組み合わせた状態の一部を表したもの。
【
図3】
図3は本発明の実施形態に係るコイル部と端末のみを表したもの。
【
図4】
図4は
図3で構成するパターンコイル材の表裏を表したもの。
【
図5】
図5は
図3のパターンコイル材の導通部位の形態の例を表したもの。
【
図6】
図6はパターンコイル材の別案1を表したもの。
【
図7】
図7はコイル材単板に曲げを加えた別案2のAパターンコイル材とBパターンコイル材を重ねた例である。
【
図8】
図8は従来の巻き線方式で作られたエッジワイズコイルの例である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。ただし、これらの実施形態は本発明の一例であり、これらの実施形態に限定されるものではない。
【0009】
エッジワイズコイルを製造する場合に平角断面のコイル材をコイル状に巻き付けることなく、プレス加工などによって平板もしくは一部曲げ加工や凹凸などを施した単板状に切り出したコイル材を複数枚積み重ねることで疑似的にコイル状態を成す。
【実施例0010】
図1は本発明の単板重ね式のエッジワイズコイルをコアと組み合わせた時の模式図であり、コイル状に組付けられた時の一部を表している。
【0011】
図2は、
図1の導通部位付近の断面を表しており、コイル材は導通部位以外のほぼ全体か、もしくは重なり合うパターン間を絶縁材で覆うように構成している。
【0012】
図3はパターンコイル材を表向きと裏向き交互に重ね合わせ、更にその末端に端末コイル材を重ねてコイル状とした状態を表している。この時に導通部位の導通抵抗を減らすためにコイル材の板厚方向に加圧するよう締結部材を組み合わせたり、あるいは導電材でロウ付けするなどの方法を組み合わせたりすることもできる。
【0013】
図4はパターンコイル材をわかりやすく示したものであり、それぞれの斜線部は表裏反対向きで上下に重ねたパターンコイル材もしくは端末コイル材との導通部位を表している。
【0014】
図5は
図4に示した導通部位を導通部位以外よりも凸にして重なりに合う相手導通部位と互いに接触しやすくしたもの、あるいはコイル材は平板のままで、これとは別に導電部材をコイル材の導通部位に介在させた例を示す。
【0015】
もしくは導通部位を導電材料でロウ付けする方法、あるいはペースト状の導電材を導通部位に塗布するなどの方法も可能である。
【0016】
図6はパターンコイル材の別案1で、コイルを形成した時のコイル材の断面変化を少なくした例である。
【0017】
図7はパターンコイル材の別案2で、コイル材を平板ではなく一部曲げ加工を施した2種類のパターンのコイル材単板をエッジワイズコイル状になるよう交互に重ねた例を示す。
エッジワイズコイルはスペース効率が良く省エネ化などのニーズが高まる中で通常のトランスなどにおいてニーズが高いだけでなく、HEV(ハイブリッド車)はもちろん、これからのEV(電気自動車)化などにおいて高効率なモーターの実現に向けて活用したい方式であり、本発明によってエッジワイズコイルそのものの製造難易度が低減できれば大きな進化が期待できる。