(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189658
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】モータ・ジェネレータ
(51)【国際特許分類】
H02K 21/24 20060101AFI20221215BHJP
H02K 1/27 20220101ALI20221215BHJP
【FI】
H02K21/24 G
H02K21/24 M
H02K1/27 503
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098369
(22)【出願日】2021-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】518120603
【氏名又は名称】株式会社FINEMECH
(72)【発明者】
【氏名】平岩 一美
【テーマコード(参考)】
5H621
5H622
【Fターム(参考)】
5H621AA03
5H621BB01
5H621BB06
5H621BB07
5H621GB03
5H621GB08
5H621HH01
5H621PP03
5H621PP10
5H622AA03
5H622CA01
5H622CA05
5H622CA10
5H622PP03
5H622QB05
(57)【要約】
【課題】
簡単な構成でありながら、高性能化と高速回転における損失を低減可能なM/Gを提供すること。
【解決手段】
ケース20、22に支持された主軸10に連結した円盤状のロータ12を回転子とし、ロータ12は永久磁石列14を有してハルバッハ配列界磁を構成しており、永久磁石列14に対抗するように円盤状に配置した複数の電機子コイル16を固定子としてケース20、22に固定し、電機子コイル16の永久磁石列14に対抗した面と反対側の、ケース22に形成した凹部22cに磁性材料でできた円盤状の界磁部材24を配置するように構成した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースに支持された主軸に連結した円盤状のロータを回転子とし、前記ロータは永久磁石列を有してハルバッハ配列界磁を構成しており、前記永久磁石列に対抗するように円盤状に配置した複数の電機子コイルを固定子として前記ケースに固定し、前記電機子コイルの前記永久磁石列に対抗した面と反対側の、前記ケースに形成した凹部に磁性材料でできた円盤状の界磁部材を配置したことを特徴とするモータ・ジェネレータ。
【請求項2】
前記永久磁石列と、前記電機子コイルおよび前記界磁部材とを、それぞれ2組有したことを特徴とする請求項1に記載のモータ・ジェネレータ。
【請求項3】
前記界磁部材を、前記電機子コイルに対して近接位置から離反位置まで軸方向に移動可能としたことを特徴とする請求項1および2のいずれかに記載のモータ・ジェネレータ。
【請求項4】
前記界磁部材と前記ケースとの間に、前記界磁部材が前記電機子コイルに対して近接する方向に、前記界磁部材を押圧するスプリングを設けたことを特徴とする請求項3に記載のモータ・ジェネレータ。
【請求項5】
前記界磁部材が、自体の回動を伴って軸方向に移動することを特徴とする請求項3および4のいずれかに記載のモータ・ジェネレータ。
【請求項6】
前記電機子コイルと前記界磁部材との間に、前記電機子コイルと一体の磁性材料でできた支持部材を設けたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のモータ・ジェネレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車などに用いられる、小型で大きな出力を要求され、出力を可変にできるのも含むモータ・ジェネレータ(以下、M/Gと記述する)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、小型で大きな出力を要求されるM/Gとしては、一般にハルバッハ配列と呼ばれる永久磁石列を用いた例(例えば、特許文献1参照)が知られている。特に、特許文献1における第2の実施形態(
図10他)は、磁性材料でできた外筒部64を有することで、シングルハルバッハ配列でありながら高速回転させることで、デュアルハルバッハ配列のM/Gと同等の出力を得ることを特徴としている。
【0003】
また、M/Gの出力を可変とした、一般にアキシャルギャップ型と称するM/Gで、高速回転において電機子コイルに生ずる誘起電圧の増大を抑制して、損失を低減するなどの効果を出すために、永久磁石と電機子コイル間のエアギャップを可変にする例(例えば特許文献2)が知られている。
【0004】
しかしながら、特許文献1の第2の実施形態に記載された、従来のハルバッハ配列の永久磁石列を用いたM/Gにあっては、界磁部(永久磁石列)66とコイル20が1組のみであり、これを2組備えたデュアルハルバッハ配列にして性能を向上させることができないという問題と、エアギャップを可変にすることができないため、高速回転における損失低減が困難という問題があった。
【0005】
一方、特許文献2に記載された従来のアキシャルギャップ型のM/Gにあっては、エアギャップを可変とするのに、M/Gにおける中枢要素のロータを移動させるため、構造が複雑になるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許6781489号公報
【特許文献2】特許5460566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、いわゆるデュアルハルバッハ配列にするなどの性能向上や、高速回転における損失を低減させるなどの応用性が低いか、またはそれらを達成するのに構造が複雑になる点である。
【0008】
すなわち、本発明の目的は、簡単な構成でありながら、応用性を高めて体格に比較して高出力を可能にすることや、出力を可変にできるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ケースに支持された主軸に連結した円盤状のロータを回転子とし、ロータは永久磁石列を有してハルバッハ配列界磁を構成しており、永久磁石列に対抗するように円盤状に配置した複数の電機子コイルを固定子としてケースに固定し、電機子コイルの永久磁石列に対抗した面と反対側の、ケースに形成した凹部に磁性材料でできた円盤状の界磁部材を配置するように構成されている。
【0010】
永久磁石列と、電機子コイルおよび界磁部材とを、それぞれ2組有していることが好ましい。
【0011】
界磁部材を、電機子コイルに対して近接位置から離反位置まで軸方向に移動可能に構成されていることがより好ましい。
【0012】
界磁部材とケースとの間に、界磁部材が電機子コイルに対して近接する方向に、界磁部材を押圧するスプリングを設けることが好ましい。
【0013】
界磁部材が、自体の回動を伴って軸方向に移動するように構成されていることがより好ましい。
【0014】
電機子コイルと界磁部材との間に、電機子コイルと一体の磁性材料でできた支持部材を設けることも好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のM/Gによれば、いわゆるアキシャル型にすることで高出力化することや、簡単な構成で一般に可変式エアギャップと呼ばれる方式に近い効果、すなわち高速回転における損失を低減可能といった効果を出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るM/Gの要部断面図である。
【
図2】
図1のA-Aおける電機子コイルの断面図である。
【
図3】第1の実施形態における第1永久磁石列の形状を示す正面図である。
【
図4】第1の実施形態における第1永久磁石列の配列を示す外面展開図である。
【
図5】第1の実施形態における第2ケースの部分外観図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態に係るM/Gの要部断面図である。
【
図7】本発明の第3の実施形態に係るM/Gの要部断面図である。
【
図8】本発明の第4の実施形態に係るM/Gの要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るM/G1を、実施形態に基づき図を参照して説明する。
【0018】
〔第1の実施形態〕
図1は、本発明の第1の実施形態に係るM/G1の要部を表した断面図である。なお、
図1は主軸10の軸中心から上側半分を描いている。また、
図2は、後述する電機子コイル16の形状を示す、
図1のA-A線における断面図であり、M/G1の円周の約1/4を描いている。
図3は、後述するロータ12における永久磁石列14を電機子コイル16側から見た正面図であり、
図2に対応して描いている。
図4は、永久磁石列14における永久磁石14a乃至14dの配列を
図3の径方向外側から見た展開図である。
図5は、後述する第2ケース22を
図1の右側から見た部分外観図である。
【0019】
本実施形態において、M/G1の主軸10は、本発明の回転子を構成するロータ12とともに、第1ケース20および第2ケース22に第1ベアリング10aおよび第2ベアリング10bを介して回転自在に支持されている。なお、第1ケース20と主軸10の間にはオイルシール20aを備えている。円盤状のロータ12は、主軸10とそのスプライン10cで回転方向に結合されており、スナップリング10dで主軸10と軸方向に固定されている。
【0020】
ロータ12は、後述する電機子コイル16に面した側に凹部12aを形成しており、該凹部12aには永久磁石列14がはめ込まれている。ロータ12は、要部を非磁性材料のオーステナイト系ステンレスまたはチタニウムとするのが好適であり、永久磁石列14は凹部12aに接着剤を用いて固定するか、または圧入などの手段で固定する。
【0021】
永久磁石列14は、
図3に示すように4種類の永久磁石14a乃至14dを合わせて32個で構成され、
図4に見るように、各永久磁石14a乃至14dのN極とS極を、矢先をN極とした矢印で表した場合、N極の方向が異なる4種類が交互に並んだ、いわゆるハルバッハ配列になっている。
【0022】
ロータ12に対抗して円盤状に配置された12個の電機子コイル16は本発明の固定子を構成し、ボビン18に巻装して該ボビン18を介して第1ケース20と第2ケース22に挟まれて両者に固定されている。電機子コイル16は、磁性材料でできたコアを有しない空芯であり、かつリッツ線を用いるのが好適であって、図示しない電源と周知の三相コイルとして結線されている。
【0023】
ボビン18は、ベークライトなどの非磁性体でできていて、
図1および
図2に示すように12個のコア18aが外側鍔18bおよび内側鍔18cを軸方向両側に形成しており、内側鍔18cの片側は連結部18dにて12個のコア18aがつながっている。該連結部18dは可撓性を有しているので、
図2の右側に示すように変形させることで隣り合ったコア18a同士を離すことができるようになっている。すなわち、電機子コイル16をボビン18に巻装する際には
図2の右側の状態にして行うのが好適であり、第1ケース20に組み付ける際には
図2の左側の状態で行う。
【0024】
ボビン18は、12カ所の外側鍔18bの片側に凹部18eを2個ずつ形成しており、それに対応した第1ケース20の突起20bに係合して、固定子に作用するトルクを第1ケース20で受けるようになっている。なお、ボビン18の固定方法は、外側鍔18bと第1ケース20の凹凸関係を逆にしてもいいし、電機子コイル16を巻装するボビン18に代えて、電機子コイル16の周りを囲むようなホルダー型にしてもよい。
【0025】
電機子コイル16の軸方向右側には、第2ケース22に形成した凹部22cがあり、該凹部22cに磁性材料でできた円盤状の界磁部材24が固定されている。そして凹部22cの軸方向の底面22dに複数の孔22eがあいていて、
図5にその形状を示すように、孔22eの周方向両隣にフィン22fが形成されている。孔22eとフィン22fは、界磁部材24の冷却と第2ケース22の強度および剛性を考慮した形状および寸法としている。
【0026】
上述の説明は、永久磁石14a乃至14dを32個備えた構成で説明したが、これを例えば64個にすることも可能であり、その場合は電機子コイル16を24個にする。また、特許文献1にあるように、シングルハルバッハ配列ながら、本実施形態と異なる種類数の磁石をもって構成することもできる。
【0027】
つぎに、第1の実施形態の動作および作用について説明する。M/G1は、電機子コイル16に電力を供給して主軸10から動力を得るモータとして用いることと、主軸10を外部動力で駆動して電機子コイル16から電力を取り出すジェネレータとして用いることの、両方ができる。例えば電気自動車やハイブリッド自動車などへの適用では、必要に応じてモータとしての作用とジェネレータとしての作用を切り替えながら走行する。
【0028】
以上説明したように、第1の実施形態のM/G1によれば、モータおよびジェネレータのいずれの場合も界磁部材24の存在が作用して、永久磁石列14の電機子コイル16側に強力なハルバッハ配列界磁が形成されるので、特に軸方向長さを制約される場合などにおいて、体格の割に大きな動力を主軸10で入・出力することができる。
【0029】
〔第2の実施形態〕
つぎに、本発明の第2の実施形態にかかるM/G1につき説明する。
図6は、
図1に対応した要部の断面図である。ここでは、第1の実施形態と異なる部分を中心に説明し、第1の実施形態と実質的に同じ部分については、同じ符号を付しそれらの説明を省略する。
【0030】
第2の実施形態における第1の実施形態との違いは、それぞれ2個の永久磁石列14と電機子コイル16と、これに対応して第1界磁部材24と第2界磁部材25とを、備えていることである。すなわち、本発明の回転子を構成するロータ12は、軸方向両側に永久磁石列14を有しており、これに対抗する本発明の固定子を構成する電機子コイル16および第1界磁部材24と第2界磁部材25は、ロータ12を中心として軸方向両側に対称に配置されている。
【0031】
このため、第1ケース20と第2ケース22との間に中間ケース21が設けてあり、2個のボビン18は、それぞれ第1ケース20と中間ケース21との間および第2ケース22と中間ケース21との間に固定され、第2界磁部材25は第1ケース20に形成した凹部20cに配置している。また、第1ケース20には、底面20d、孔20e、フィン20fが、第2ケース22と同様に形成してある。その他の構成は、基本的に第1の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0032】
つづいて、第2の実施形態の動作および作用について説明する。M/G1は、それぞれ2個の永久磁石列14と電機子コイル16とが、いずれも第1の実施形態で説明したのと同様にモータおよびジェネレータとして作用する。
【0033】
以上説明したように、第2の実施形態のM/G1によれば、それぞれ2個の永久磁石列14と電機子コイル16とを有しているので、第1の実施形態のほぼ2倍の動力を主軸10で入・出力することができる。すなわち、一般的なデュアルハルバッハ配列と同程度の体格でありながら、その2倍の、言わばクアッドハルバッハ配列に匹敵する動力を主軸10で入・出力することができる。
【0034】
〔第3の実施形態〕
つぎに、本発明の第3の実施形態にかかるM/G1につき説明する。
図7は、
図1に対応した要部の断面図である。ここでは、第1の実施形態と異なる部分を中心に説明し、第1の実施形態と実質的に同じ部分については、同じ符号を付しそれらの説明を省略する。
【0035】
第3の実施形態における第1の実施形態との違いは、界磁部材24が、第2ケース22に形成した凹部22cの中で軸方向に移動可能としたことである。すなわち、界磁部材24と一体になったホルダー24aと凹部22cとの間にネジ24bとネジ22gが形成してあるとともに、第2ケース22に備えたアクチュエータ26の軸26aに形成したギヤ26aが、ホルダー24aに形成したギヤ24cと噛み合っていて、アクチュエータ26が軸26aを回転させることにより、ホルダー24aが主軸10aの軸心を中心にして回転することで、ネジ24bとネジ22gの作用で界磁部材24とホルダー24aが軸方向に移動する。
【0036】
ネジ24bとネジ22gは3条ネジにすることが好適であり、ホルダー24aに形成したギヤ24cは、ネジ24bのリードと同じリードを有するヘリカル状になっていて、界磁部材24とホルダー24aが回転しながら軸方向に移動しても、ギヤ24cとギヤ26aの噛み合い関係は基本的に変わらない。
【0037】
本実施の形態にあっては、アクチュエータ26を制御する電源およびコントローラや、界磁部材24の軸方向位置または回転方向位置を検出するセンサーなどを備えるが、図示を省略した。その他の構成は、基本的に第1の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0038】
つづいて、第3の実施形態の動作および作用について説明する。M/G1は、第1の実施形態で説明したのと同様にモータおよびジェネレータとして作用するが、界磁部材24を、凹部22cの中で軸方向に移動可能としたので、界磁部材24の軸方向位置により、モータおよびジェネレータとしての入・出力特性が変化する。
【0039】
すなわち、永久磁石列14と電機子コイル16との間に形成される界磁は、界磁部材24の位置によって変化するので、M/G1は、界磁部材24が電機子コイル16に最も近接した位置にあっては第1の実施形態で説明したようにダブルハルバッハ配列と同等の入・出力が得られ、界磁部材24を電機子コイル16から遠ざかるように移動するとシングルハルバッハ配列に近い入・出力に変化する。
【0040】
つまり、界磁部材24の位置により、M/G1の入・出力可能な動力がほぼ1:2の比率の範囲で変化することを意味する。これは、永久磁石列14により電機子コイル16に鎖交する鎖交磁束数が、界磁部材24の位置によって変化するからであり、特に界磁部材24が電機子コイル16から離反した位置にあっては、高速回転における誘起電圧の抑制作用が生じる。
【0041】
以上説明したように、第3の実施形態のM/G1によれば、界磁部材24の軸方向位置を変化させることで、入・出力可能な動力範囲がほぼ1:2の比率で制御可能という効果を有する。これは、自動車のように駆動や制動の負荷の変動幅が大きい場合に適した特性であり、低速で大きなトルクを要する場合はデュアルハルバッハ配列並みの動力で駆動し、高速走行で特に駆動負荷が比較的小さい場合はシングルハルバッハ配列並みの誘起電圧で、損失の少ない駆動が可能という効果がある。
【0042】
これらの特性を得るのに、回転子や固定子といったM/G1の中枢要素に属す構成部品ではない、界磁部材24の移動操作で済ますことができるので、誘起電圧の抑制作用を有する従来例(特許文献2)に比べて、構成が簡単であり製造コストや重量の面でも効果が期待できる。
【0043】
〔第4の実施形態〕
つぎに、本発明の第4の実施形態にかかるM/G1につき説明する。
図7は、
図1に対応した要部の断面図である。ここでは、第1乃至第3の実施形態と異なる部分を中心に説明し、それらと実質的に同じ部分については同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0044】
第4の実施形態は、上述した第2の実施形態および第3の実施形態を組み合わせたような構成になっている。すなわち、第2の実施形態と同様に、それぞれ2個の永久磁石列14と電機子コイル16と、これに対応して第1界磁部材24と第2界磁部材25とを備えているとともに、第3の実施形態と同様に、第1界磁部材24と第2界磁部材25とは、軸方向に移動可能になっている。
【0045】
また、第4の実施形態は、第1乃至第3の実施形態のように電機子コイル16がボビン18に巻装されておらず、磁性鋼板でできた支持部材28と一体になって第1ケース20と中間ケース21および第2ケース22に固定されている。すなわち、支持部材28は電機子コイル16と第1界磁部材24および第2界磁部材25との間にそれぞれ設けてある。
【0046】
そして、第4の実施形態は、第1界磁部材24と第2界磁部材25の両方を軸方向に移動させるために、アクチュエータ26との連結関係が第3の実施形態とは違っている。すなわち、第1界磁部材24と第2界磁部材25は、それぞれ第1ホルダー24a、第2ホルダー25aと一体になっており、第1ホルダー24aと第2ホルダー25aは、第1ケース20および第2ケース22との間に、それぞれネジ24c、ネジ22gとネジ25c、ネジ20gとを形成するとともに、第2ケース22に備えたアクチュエータ26の軸26aに形成した2カ所のギヤ26bと噛み合う、ギヤ24bと25bとを形成している。
【0047】
なお、第1界磁部材24と第2界磁部材25が同じ方向に回動した場合に、それぞれ軸方向には逆の方向に移動するように、ネジ24cならびにネジ22gとネジ25cならびにネジ20gとは、捻れ方向が互いに逆になっている。したがって、アクチュエータ26が一方に回転すると第1界磁部材24、第2界磁部材25が電機子コイル16に近接する側に、他方に回転すると第1界磁部材24、第2界磁部材25が電機子コイル16から離反する側にそれぞれ移動する。
【0048】
また、第4の実施形態は、第1ホルダー24aおよび第2ホルダー25aと、それぞれが配置された凹部20c、凹部22cの底面20dおよび22dとの間に、スプリング24dおよび25dを備えている。スプリング24dと25dは円錐型コイルスプリングが好適であり、それぞれ第1界磁部材24と第2界磁部材25が対になる電機子コイル16に近接する方向に常時押圧するようになっている。したがって、アクチュエータ26は、第1界磁部材24、第2界磁部材25が電機子コイル16から離反する側に移動させる際は、スプリング24dと25dの押圧力に抗して軸26aを駆動し、逆に第1界磁部材24、第2界磁部材25が電機子コイル16に近接する側に移動させる際は、スプリング24dと25dの押圧力に援助されながら軸26aを駆動する。
【0049】
さらに、主軸10を支持する第1ベアリング10aおよび第2ベアリング10bの、第1ケース20および第2ケース22への軸方向の固定方法が第1乃至第3の実施例と異なっている。すなわち、スラストワッシャ10fを介してナット10gにより、第1ケース20と第2ケース22とを互いに近接させる方向に締め上げている。これに関連してオイルシール20aはカバー20hを介して第1ケース20に支持され、第2ケース22にはカバー22hが設けてある。
【0050】
つづいて、第4の実施形態の動作および作用について説明する。M/G1は、第1の実施形態で説明したのと同様にモータおよびジェネレータとして作用するが、上述したように、第2の実施形態と同様に、それぞれ2個の永久磁石列14と電機子コイル16と、これに対応して第1界磁部材24と第2界磁部材25とを備えているため、言わばクアッドハルバッハ配列に匹敵する動力を主軸10で入・出力することができるとともに、第3の実施形態と同様に、第1界磁部材24と第2界磁部材25の軸方向位置を可変としたため、第1界磁部材24と第2界磁部材25の軸方向位置により、モータおよびジェネレータとしての出力特性が変化する。
【0051】
すなわち、第1界磁部材24と第2界磁部材25とを、それぞれ対になる電機子コイル16に最も近接させると、言わばクアッドハルバッハ配列に匹敵する動力特性になり、逆にそれぞれ対になる電機子コイル16から離反させると、デュアルハルバッハ配列に近い動力特性に変化する。
【0052】
また、第1界磁部材24および第2界磁部材25と、底面20dおよび22dとの間に備えたスプリング24dおよび25dは、第1界磁部材24と第2界磁部材25とを、それぞれ対になる電機子コイル16に近接させる方向の移動を迅速に行うように作用し、逆にそれぞれ対になる電機子コイル16から離反させる方向の移動はやや緩慢になるように作用する。
【0053】
以上説明したように、第4の実施形態のM/G1によれば、低速で大きなトルクを要する場合などにおいては、言わばクアッドハルバッハ配列に匹敵する動力特性を得ることができるとともに、高速走行で特に駆動負荷が比較的小さい場合はダブルハルバッハ配列並みの誘起電圧で損失の少ない駆動が可能という効果がある。
【0054】
また、M/G1を大きい入・出力に切り替えるのは、一般に急を要する場合が多いが、上述したようにスプリング24dおよび25dは、それを迅速に制御することができるという効果がある。
【0055】
これらの特性を得るのに、回転子や固定子といったM/G1の中枢要素に属さない、第1界磁部材24と第2界磁部材25の位置を操作するだけで済ますことができるので、誘起電圧の抑制作用を有する従来例(特許文献2)に比べて、構成が簡単であり製造コストや重量の面でも効果が期待できる。
【0056】
以上、本発明の概要を説明したが、詳細の構成は図示した内容にこだわることなく、種々の変更や工夫が加えて実施することができる。また、具体的な応用例として、自動車の駆動システムに本発明のM/Gを2台用い、1台を内燃機関と連結して主として発電させ、他の1台を車輪と連結して制動・駆動する、いわゆるシリーズ型ハイブリッドシステムとすることができる。さらには、ドローンや風力発電などの運転条件が一定しない場合のM/Gとして用いるのに適している。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明のM/Gは、電気自動車やハイブリッド自動車など小型で高性能を要求されるとともに、特に負荷の変動幅が大きい用途に幅広く用いることができる。
【符号の説明】
【0058】
1 モータ・ジェネレータ(M/G)
10 主軸
12 ロータ
14 永久磁石列
16 電機子コイル
18 ボビン
20 第1ケース
21 中間ケース
22 第2ケース
24 界磁部材、第1界磁部材
25 第2界磁部材
26 アクチュエータ