(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189659
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】射出成形機
(51)【国際特許分類】
B29C 45/76 20060101AFI20221215BHJP
B29C 45/84 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
B29C45/76
B29C45/84
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098370
(22)【出願日】2021-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100097696
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(72)【発明者】
【氏名】山下 優
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AM06
4F206AP15
4F206AP19
4F206AP20
4F206AR20
4F206JA07
4F206JL02
4F206JL07
4F206JP21
4F206JQ88
(57)【要約】
【課題】制御盤のセキュリティが確保されている射出成形機を提供する。
【解決手段】制御盤(5、6、7)と、コントローラ(8)と、を備えた射出成形機(1)を対象とする。制御盤(5、6、7)は開閉可能なカバー(33、34、35)で覆い、カバー(33、34、35)には電子ロック(41、42、43)を設けて施錠する。解錠要求をすると、コントローラ(8)はログインしているユーザのユーザレベルに応じて、解錠の可否を判断する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御盤と、
コントローラと、を備え、
前記制御盤は開閉可能なカバーによって覆われ、該カバーは電子ロックにより施錠されており、
前記電子ロックの解錠の可否は前記コントローラにより判断される、射出成形機。
【請求項2】
前記電子ロックの解錠の可否は、前記コントローラにログインしているユーザのユーザレベルに基づいて判断される、請求項1に記載の射出成形機。
【請求項3】
前記電子ロックの解錠の可否は、サーボアンプに電力が供給されているサーボON状態であるか供給されていないサーボOFF状態であるかに基づいて判断される、請求項1または2に記載の射出成形機。
【請求項4】
前記電子ロックの解錠の可否は、成形サイクルが実施されている運転状態であるか成形サイクルを停止している停止状態であるかに基づいて判断される、請求項1~3のいずれかの項に記載の射出成形機。
【請求項5】
前記電子ロックは前記射出成形機が緊急停止中のとき解錠が許可される、請求項1~4のいずれかの項に記載の射出成形機。
【請求項6】
前記射出成形機には前記制御盤が複数個設けられ、前記複数個の制御盤のそれぞれに前記カバーが設けられていると共にそれぞれ前記電子ロックにより施錠されており、
前記電子ロックの解錠の可否は、それぞれの前記制御盤ごとに判断される、請求項1~5のいずれかの項に記載の射出成形機。
【請求項7】
前記コントローラにはモニタが設けられ、該モニタには前記電子ロックの解錠を要求する解錠要求画面が表示されるようになっている、請求項1~6のいずれかの項に記載の射出成形機。
【請求項8】
前記カバーには解錠要求ボタンが設けられ、該解錠要求ボタンを操作すると解錠要求が前記コントローラに通知される、請求項1~7のいずれかの項に記載の射出成形機。
【請求項9】
前記ユーザが前記コントローラを操作して、サーボアンプに電力が供給されていないサーボOFF状態から供給されているサーボON状態にするサーボON要求をするとき、前記電子ロックの施錠状態と、前記ユーザレベルとに基づいて前記サーボON要求を許可する、請求項2に記載の射出成形機。
【請求項10】
前記ユーザが前記コントローラを操作して、成形サイクルの停止状態から運転を開始する運転開始要求をするとき、前記電子ロックの施錠状態と、前記ユーザレベルとに基づいて前記運転開始要求を許可する、請求項2または9に記載の射出成形機。
【請求項11】
前記コントローラは通信手段を備え、前記電子ロックの解錠が検出されると前記通信手段により外部に通知を送信する、請求項1~10のいずれかの項に記載の射出成形機。
【請求項12】
前記射出成形機の主電源がOFFされている停電状態のとき、前記電子ロックは施錠状態で維持される、請求項1~11のいずれかの項に記載の射出成形機。
【請求項13】
前記コントローラに、前記電子ロックの解錠の履歴が記録されるようになっている、請求項1~11のいずれかの項に記載の射出成形機。
【請求項14】
前記射出成形機の安全ドアの解錠は、前記コントローラがログアウトされているとき、成形サイクルの運転停止から規定時間後に許可される、請求項1~13のいずれかの項に記載の射出成形機。
【請求項15】
前記射出成形機の安全ドアの解錠は、前記ユーザレベルが規定レベル以下のとき、成形サイクルの運転停止から規定時間後に許可される、請求項2に記載の射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御盤にカバーが設けられている射出成形機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出成形機は、金型を型締めする型締装置、射出材料を溶融して金型に射出する射出装置、等から構成されている。適切に成形条件が設定されていれば一般のユーザであっても成形サイクルを実施することができる。しかしながら、適切な成形条件を設定するには熟練したユーザにより実施される必要がある。したがって射出成形機のコントローラは、例えば特許文献1に記載されているようにユーザ認証の仕組みが設けられている。コントローラにユーザがログインすると、そのユーザのユーザレベルに応じて射出成形機の操作可能な範囲が決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
射出成形機は1個または複数個の制御盤を備え、カバーが掛けられている。しかしながら制御盤のカバーは単にネジ止めされているだけであり、カバーの開閉に関して制限が設けられていない。誰でも制御盤を操作・変更することができるという問題がある。
【0005】
本開示において、制御盤のセキュリティが確保されている射出成形機を提供する。
【0006】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
制御盤のカバーに電子ロックを設ける。電子ロックの解錠はコントローラによって判断されるようにする。
【発明の効果】
【0008】
本開示は、コントローラに解錠を判断させるので制御盤のセキュリティを確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施の形態に係る射出成形機を示す正面図である。
【
図2】制御盤に設けられている、本実施の形態に係るカバーを示す上面断面図である。
【
図3】本実施の形態に係る射出成形機のコントローラと、制御盤に設けられている電子ロック等との接続関係を示す、ブロック図である。
【
図4】本実施の形態に係る射出成形機のコントローラに表示される解錠要求画面を示す図である。
【
図5】本実施の形態に係る射出成形機のコントローラにおいて実施される、制御盤カバーの電子ロックの解錠処理を示すフローチャートである。
【
図6】本実施の形態に係る射出成形機のコントローラにおいて実施される、ユーザからの駆動要求に対する処理を示すフローチャートである。
【
図7】本実施の形態に係る射出成形機のコントローラにおいて実施される、安全ドアの電子ロックの解錠処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、以下の実施の形態に限定される訳ではない。説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜簡略化されている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。また、図面が煩雑にならないように、ハッチングが省略されている部分がある。
【0011】
本実施の形態を説明する。
<射出成形機>
本実施の形態に係る射出成形機1は、
図1に示されているように、ベッドBに載せられている型締装置2と、同様にベッドBに載せられている射出装置3とを備えている。射出成形機1にはそのベッドB内に、射出成形機1の各装置を制御する制御盤5、6、7が設けられ、そしてベッドB上に、全体をコントロールするコントローラ8が設けられている。
【0012】
<型締装置>
型締装置2はベッドB上に固定されている固定盤10と、ベッドB上をスライドする型締ハウジング11と、ベッドB上を同様にスライドする可動盤12とを備えている。固定盤10と型締ハウジング11は複数本、例えば4本のタイバー14、14、…によって連結されている。可動盤12は、固定盤10と型締ハウジング11の間でスライド自在になっている。型締ハウジング11と可動盤12の間にはトグル機構からなる型締機構16が設けられている。なお型締機構16は直圧式の型締シリンダから構成してもよい。固定盤10と可動盤12にはそれぞれ固定側金型17と可動側金型18とが設けられ、型締機構16を駆動すると型開閉するようになっている。
【0013】
型締装置2は、型締装置カバー20と、安全ドア21とによって覆われて安全が確保されている。安全ドア21には電子ロック23が設けられている。本実施の形態に係る射出成形機1は、後で詳しく説明するように、安全ドア21の電子ロック23は、コントローラ8にログインしているユーザのユーザレベルに応じて、解錠可能な条件が相違しており、安全性が高められている。
【0014】
<射出装置>
射出装置3は、加熱シリンダ25と、この加熱シリンダ25に入れられているスクリュ27と、スクリュ27を駆動するスクリュ駆動装置28とから構成されている。加熱シリンダ25にはホッパ30と射出ノズル31とが設けられている。スクリュ27を回転してホッパ30から樹脂材料を供給すると樹脂材料は加熱シリンダ25内で溶融され計量される。スクリュ27を軸方向に駆動すると溶融された樹脂が射出ノズル31から射出される。
【0015】
<制御盤>
本実施の形態に係る射出成形機1には、ベッドB内に高圧部制御盤5と、低圧部制御盤6と、ヒータ制御盤7と、が設けられている。高圧部制御盤5は、サーボアンプ等の高電圧で駆動する装置を制御するための制御盤になっている。低圧部制御盤6は、比較的低電圧で駆動する装置を制御するための制御盤になっている。そしてヒータ制御盤7はヒータに電力を供給する制御盤になっている。これらの制御盤5、6、7は、それぞれ開閉可能なカバー33、34、35が設けられ、保護されている。
【0016】
<制御盤のカバー>
本実施の形態に係る射出成形機1において、制御盤5、6、7に設けられているカバー33、34、35には、開閉するための把手37、38、39が設けられている。さらに、カバー33、34、35には本実施の形態に特有の構造を備えている。具体的には、カバー33、34、35のそれぞれに、開閉を制限するための電子ロック41、42、43と、これら電子ロック41、42、43の解錠を要求するための解錠要求ボタン45、46、47とが設けられている。
【0017】
図2には、高圧部制御盤5のカバー33の上面断面図が示されている。他のカバー34、35も同様に構成されているので、このカバー33についてのみ説明する。カバー33は一方の端部が支柱50に対して蝶番51によって取り付けられており、他方の端部が支柱53に接して閉じたり、支柱53から離間して開いたりするようになっている。つまり開閉可能になっている。この支柱53とカバー33とに電子ロック41が設けられ、支柱53に解錠要求ボタン45が設けられている。
【0018】
<カバーの電子ロック>
電子ロック41は、支柱53に設けられている本体部55と、カバー33に設けられている受部材56とから構成されている。本体部55は、中空の本体部ケース57と、この本体部ケース57に入れられているラッチ59と、このラッチ59を外方に押し出すように付勢しているバネ60と、ラッチ59を本体部ケース57内に引き込む方向に駆動するソレノイド62とから構成されている。受部材56は凹部63が形成されており、ラッチ59の先端が収納されて施錠されるようになっている。ソレノイド62に電力を供給すると、ラッチ59が後退して解錠され、カバー33を開くことができる。
【0019】
ラッチ59は、先端がテーパ状に形成されている。したがって、カバー33を閉じると、ラッチ59は受部材56によって押されて本体部ケース57内に押し込まれる。ラッチ59と受部材56の凹部63とが整合する位置に達すると、ラッチ59はバネ60によって押されて先端が凹部63内に収納される。すなわち自動的に施錠されるようになっている。
【0020】
このような電子ロック41、42、43(
図1参照)、および解錠要求ボタン45、46、47は、コントローラ8に接続されている。後で説明するように、コントローラ8において解錠要求ボタン45、46、47からの解錠要求が受け付けられ、解錠の可否が判断されるようになっている。なお、電子ロック41、42、43は、上で説明した構造に限定される必要はなく、コントローラ8(
図1参照)の判断により解錠されるようになっていればその種類、構造は問わない。
【0021】
<コントローラ>
本実施のコントローラ8には、
図3に示されているように、制御部70、安全ドア処理部71、通信部72が設けられている。制御部70は、サーボモータに電力を供給するサーボアンプ75を制御し、射出成形機1(
図1参照)の各装置を制御し、成形サイクルを実施するようになっている。安全ドア処理部71は、安全ドア21(
図1参照)の電子ロック23の解錠を制御する。後で説明するように安全ドア処理部71は、本実施の形態に特有の処理を備えており、ユーザのユーザレベルに応じて解錠の条件を変えている。通信部72は、図示されないLAN等を介して外部のPC等の機器と通信を行うようになっている。
【0022】
本実施の形態に係る射出成形機1のコントローラ8には、
図3に示されているように、本実施に特有の処理部も設けられている。具体的には、制御盤電子ロック処理部74である。すでに説明したように、高圧部制御盤5(
図1参照)、低圧部制御盤6、ヒータ制御盤7のそれぞれに対応して設けられている電子ロック41、42、43と、解錠要求ボタン45、46、47はコントローラ8に接続されている。解錠要求ボタン45、46、47を押下すると制御盤電子ロック処理部74によって解錠要求が受け付けられ、制御盤電子ロック処理部74が電子ロック41、42、43の解錠の可否を判断するようになっている。コントローラ8には解錠履歴ログファイル73も設けられている。制御盤電子ロック処理部74において解錠された電子ロック41、42、43の履歴が記録されるようになっている。
【0023】
<解錠要求画面>
コントローラ8には、
図1に示されているようにモニタ9が設けられ、射出成形機1を操作する各種の画面が表示されるようになっている。本実施の形態においては、モニタ9に制御盤5、6、7のカバー33、34、35の電子ロック41、42、43の解錠を要求するための、解錠要求画面77(
図4参照)が表示されるようになっている。
【0024】
解錠要求画面77には、制御盤5、6、7(
図1参照)に対応して複数個のラジオボタン78、79、80が設けられている。これらラジオボタン78、79、80によって、ユーザは解錠要求の対象を選択するようになっている。解錠要求画面77には、解錠要求実行ボタン81も設けられている。ラジオボタン78、79、80により解錠要求の対象を選択した後に、この解錠要求実行ボタン81を実行する。そうすると、コントローラ8に解錠要求が送られるようになっている。
【0025】
<制御盤の電子ロック解錠の処理>
本実施の形態に係る射出成形機1(
図1参照)のコントローラ8において実施される、制御盤5、6、7の電子ロック41、42、43の解錠の処理について、
図5および以下の表1を参照して説明する。なお、表1にはユーザレベルが記載されているが、ユーザレベルは射出成形機1(
図1参照)において操作可能な範囲を規定する操作権限を表すものであり、ユーザ毎に与えられているものである。
【0026】
【0027】
ユーザが、制御盤5、6、7(
図1参照)に設けられている解錠要求ボタン45、46、47を押下する。あるいは、解錠要求画面77(
図4参照)を操作して所望の制御盤5、6、7について解錠を要求する。そうすると、コントローラ8の制御盤電子ロック処理部74(
図3参照)に解錠要求が送られる。制御盤電子ロック処理部74は、
図5に示されているように、解錠要求を受信する(ステップS01)。
【0028】
制御盤電子ロック処理部74は、最初にステップS02を実行して、射出成形機1(
図1参照)が緊急停止中になっているか否かをチェックする。緊急停止中になっていれば、直接ステップS09に移行して、解錠要求がある電子ロック41、42、43(
図1参照)を解錠する。つまり表1に示されているように、ユーザレベルに拘らずに解錠要求を許可して解錠する。このとき解錠した履歴を解錠履歴ログファイル73(
図3参照)に記録するようにする。解錠された制御盤5、6、7(
図1参照)のカバー33、34、35は開くことができる。一方、射出成形機1が緊急停止中でなければステップS03に移行する。
【0029】
ステップS03ではコントローラ8(
図1参照)にユーザがログインしているログイン状態か否かをチェックする。ログイン状態でない場合、つまりログアウト状態のとき、ステップS08に移行する。つまり解錠要求を拒否する。表1にはユーザレベルが0として記載されている。一方、ログイン状態のとき、制御盤電子ロック処理部74はステップS04に移行する。
【0030】
制御盤電子ロック処理部74(
図3参照)は、
図5に示されているように、ステップS04を実行し、ログインしているユーザのユーザレベルを調べる。ユーザレベルが1の場合、ステップS08の解錠禁止処理に移行する。すなわち表1にも示されているように、制御盤電子ロック処理部74は、ユーザレベルが1のユーザに対しては、全ての解錠要求を拒否する。参考としてユーザレベルが1のユーザに対して与えられている権限を説明すると、権限は小さい範囲に限定されている。すなわち、与えられている権限は、成形サイクルの各処理をモニタすること、および樹脂温度の設定値を変更することだけである。したがって、ユーザレベルが1のユーザに対して、解錠要求は拒否されている。
【0031】
一方、ユーザレベルが2または3のときには、表1に示されているように、特定の条件に適合すれば解錠要求を許可し、ユーザレベルが4のとき、条件にかかわらず全ての解錠要求を許可して解錠を実行する。具体的に、制御盤電子ロック処理部74は次のように処理する。まず、ユーザレベルが2の場合、制御盤電子ロック処理部74は後で説明するステップS05に移行する。ユーザレベルが3の場合にはさらに後で説明するステップS07に移行する。そして、ユーザレベルが4の場合には、制御盤電子ロック処理部74はステップS09に移行し、解錠要求がある電子ロック41、42、43(
図1参照)を解錠する。ついで解錠の履歴を解錠履歴ログファイル73(
図3参照)に記録する。
【0032】
ここで制御盤電子ロック処理部74の処理の説明を中断して、参考としてユーザレベルが2~4のユーザに対して与えられている権限を説明する。まず、ユーザレベルが2のユーザに対しては、ユーザレベルが1のユーザに与えられる権限に加えて、成形条件等の各種設定データを変更する権限が与えられている。ユーザレベルが3のユーザには、射出成形機1のコントローラ8が用意している全ての画面の操作権限が与えられている。ただしシステム情報を変更するシステム画面に対する操作権限は与えられていない。システム画面に対する操作権限を含む全ての操作権限が与えられているのは、ユーザレベルが4のユーザのみになっている。
【0033】
制御盤電子ロック処理部74の処理の説明に戻る。ステップS05の処理はユーザレベルが2のユーザに対して実施される。この処理において、制御盤電子ロック処理部74(
図3参照)は、サーボOFF状態であるか否かをチェックする。サーボOFF状態は、サーボアンプ75(
図3参照)に電力が供給されていない状態である。サーボアンプ75に電力が供給されているサーボON状態の場合、ステップS08に移行して解錠要求を拒否する。一方、サーボOFF状態のとき、制御盤電子ロック処理部74はステップS06に移行する。
【0034】
制御盤電子ロック処理部74は、ステップS06において、解錠要求がされている対象をチェックする。もし、解錠要求の対象が電子ロック41、つまり高圧部制御盤5(
図1参照)であればステップS08に移行して解錠要求を拒否する。もし、解錠要求の対象が低圧部制御盤6(
図1参照)またはヒータ制御盤7であればステップS09に移行して解錠する。ついで解錠の履歴を解錠履歴ログファイル73(
図3参照)に記録する。
【0035】
ステップS07の処理はユーザレベルが3のユーザに対して実施される。この処理では、制御盤電子ロック処理部74(
図3参照)は、射出成形機1(
図1参照)が成形サイクルの運転中であるかをチェックする。運転中であればステップS08に移行して解錠要求を拒否する。一方、成形サイクルが停止中であればステップS09に移行して解錠要求を許可し、解錠する。ついで解錠の履歴を解錠履歴ログファイル73(
図3参照)に記録する。制御盤電子ロック処理部74は、処理を終了する。
【0036】
射出成形機1に付属機器を追加するとき、制御盤5、6、7にリレーを付加する等、制御盤5、6、7を改造する場合がある。従来の射出成形機では制御盤5、6、7のカバー33、34、35はネジ止めされているだけであり、誰でも制御盤5、6、7を改造することが可能であった。そうすると、制御盤5、6、7において誤った改造がされても、これを防止することができないという問題があった。カバー33、34、35は、射出成形機1の運転状態に拘らず、開くことができるので、安全性において問題があった。本実施の形態に係る射出成形機1(
図1参照)は、上で説明したようにユーザレベルに基づいて、そして運転状態に基づいて、電子ロック41、42、43の解錠の可否を判断している。従って、制御盤5、6、7を改造が可能なユーザを制限することができ、安全性が高くなっている。
【0037】
ところでステップS09の処理は、解錠要求があった電子ロック41、42、43を解錠し、その履歴を解錠履歴ログファイル73に記録するだけであるように説明した。しかしながら、制御盤電子ロック処理部74はステップS09において通信部72(
図3参照)を介して外部PC等に通信するようにし、解錠した電子ロック41、42、43について情報を提供するようにしてもよい。そうすると、外部PCにおいて解錠されたことを確認できる。
【0038】
<駆動要求の処理>
本実施の形態に係る制御盤電子ロック処理部74は、射出成形機1(
図1参照)のコントローラ8において駆動要求があるとき、その可否を判断する機能も備えている。この機能により、射出成形機1の安全性が高くなっている。対象としている駆動要求には、サーボアンプ75(
図3参照)への電力供給の開始の要求つまりサーボON要求と、成形サイクルの運転開始を要求する運転開始要求とがある。
図6を参照しながら制御盤電子ロック処理部74の処理を説明する。
【0039】
コントローラ8(
図3参照)において、ユーザがサーボON要求または運転開始要求の駆動要求をすると、
図6に示されているように、ステップS11として制御盤電子ロック処理部74はこれを受信する。駆動要求を受信したら、制御盤電子ロック処理部74はステップS12を実行し、制御盤5、6、7(
図1参照)の電子ロック41、42、43が全て施錠状態であるか否かをチェックする。施錠状態であれば、ステップS18に移行して駆動要求を許可して実行する。つまりサーボONする。あるいは成形サイクルの運転を開始する。これに対し、制御盤5、6、7の電子ロック41、42、43が、いずれか1個でも解錠されていれば、ステップS13に移行する。1個でも施錠されていなければ、ユーザレベルに応じて、駆動要求を許可すべきか否か確認する必要があるからである。
【0040】
制御盤電子ロック処理部74は、ステップS13において、コントローラ8がログイン状態であるか否かをチェックする。ユーザがログインしていなかったらステップS17に移行して、駆動要求を拒否する。つまり、サーボON要求や運転開始要求を拒否する。施錠されていない電子ロック41、42、43が存在するときに、ユーザのログインがなく駆動要求を受け付けると危険だからである。一方、ログイン状態であればステップS14に移行する。
【0041】
制御盤電子ロック処理部74は、ステップS14においてログインしているユーザのユーザレベルを調べて、それぞれのユーザレベルに基づいて処理を分岐する。ユーザレベルが1または2の場合には、ステップS17に移行して駆動要求を拒否する。施錠されていない電子ロック41、42、43が存在するとき、ユーザレベルが高くないユーザに対して駆動要求を受け付けることは危険であるからである。ユーザレベルが4の場合には、ステップS18に移行して駆動要求を実行する。つまりサーボONする、あるいは成形サイクルの運転を開始する。
【0042】
これに対してユーザレベルが3の場合には、ステップS15に移行する。ステップS15において、高圧部制御盤5(
図1参照)の電子ロック41が施錠されているか否かをチェックする。もし、解錠されていればステップS17に移行して駆動要求を拒否する。ユーザレベルが3のユーザであっても、高圧部制御盤5が解錠されているときに駆動要求を許可することは危険であるからである。一方、高圧部制御盤5の電子ロック41が施錠されていればステップS16に移行して、駆動要求の種類をチェックする。もし、駆動要求が運転開始要求であればステップS17に移行して駆動要求を拒否する。一方、もし駆動要求がサーボON要求であれば、ステップS18に移行して駆動要求を実行する。つまりサーボONする。つまり成形サイクルの運転は開始できないが、サーボONは許可することができる。制御盤電子ロック処理部74は処理を終了する。
【0043】
このように、本実施の形態に係る制御盤電子ロック処理部74は、制御盤5、6、7の施錠状態と、ユーザレベルとに基づいて駆動要求の可否を判断するので、高い安全性が確保されている。
【0044】
<安全ドア処理部>
従来の射出成形機においても、成形サイクルが運転中のとき安全ドアは解錠されず、運転が停止されると安全ドアの解錠が許可されるようにして、安全を確保している。本実施の形態に係る射出成形機1(
図1参照)においても同様に、安全ドア21の電子ロック23は、成形サイクルが運転中のとき解錠が拒否され、そして停止中のときに解錠を許可して安全ドア21を開くことができる。本実施の形態においては、安全ドア21の電子ロック23の解錠について、さらにユーザレベルに基づいて制限を設けるようにしており、安全性を高めている。安全ドア処理部71(
図3参照)の処理について、
図7を参照しながら説明する。
【0045】
射出成形機1(
図1参照)において安全ドア21の電子ロック23の解錠を要求すると、安全ドア処理部71(
図3参照)に解錠要求が通知される。
図7においてステップS21として示されている。安全ドア処理部71は、ステップS22を実行して射出成形機1が緊急停止中か否かをチェックする。緊急停止中であれば、ステップS28に移行して電子ロック23を解錠する。すなわち安全ドア21を開くことが可能になる。緊急停止中でなければステップS23に移行する。
【0046】
安全ドア処理部71は、ステップS23において、成形サイクルの運転中か否かをチェックする。運転中であればステップS27に移行して解錠要求を拒否する。つまり電子ロック23は解錠しない。一方、成形サイクルが停止中の場合、ステップS24に移行する。安全ドア処理部71は、成形サイクルが停止してからの経過時間をチェックする。経過時間が規定時間経過していれば、ステップS28に移行して電子ロック23を解錠する。一方、規定時間を経過していなければステップS25に移行する。規定時間は、例えば30秒、1分等、とすることができる。規定時間を経過することによって、樹脂の温度が低下して危険が小さくなる。
【0047】
安全ドア処理部71は、ステップS25において、コントローラ8(
図1参照)がログイン状態であるか否かをチェックする。ログイン状態でなければステップS27に移行して電子ロック23の解錠を許可しない。一方、ログイン状態であればステップS26に移行する。安全ドア処理部71は、ステップS26においてユーザレベルをチェックする。ユーザレベルが1のとき、ステップS27に移行して電子ロック23の解錠を許可しない。一方、ユーザレベルが2~4のときステップS28に移行して電子ロック23を解錠する。ユーザレベルが2~4のユーザに対しては、成形サイクルの停止直後に安全ドア21の電子ロック23を解錠しても危険は少ないからである。
【0048】
<本実施の形態の変形例>
本実施の形態に係る射出成形機1は色々な変形が可能である。例えば、本実施の形態においては、制御盤5、6、7の電子ロック41、42、43の解錠要求は、解錠要求ボタン45、46、47からと、解錠要求画面77からのいずれからも実施できるように説明した。しかしながら、射出成形機1において、解錠要求ボタン45、46、47と解錠要求画面77の両方を用意する必要はない。一方のみが用意されていればよい。本実施の形態に係る射出成形機1は、制御盤5、6、7として、高圧部制御盤5、低圧部制御盤6、ヒータ制御盤7の3個を備えているように説明した。しかしながら制御盤は1個、あるいは2個だけ備えるようにしてもよいし、4個以上備えるようにしてもよい。
【0049】
本実施の形態において、制御盤電子ロック処理部74は解錠した履歴を解錠履歴ログファイル73に記録するように説明した。しかしながら記録は必ずしも必須ではない。そして、制御盤電子ロック処理部74は通信部72を介して外部PCに情報を送信することができるように説明した。そうすると、例えば外部のPCにおいて解錠の履歴を管理することができる。
【0050】
コントローラ8についても変形が可能である。本実施の形態においてコントローラ8の電源について格別に説明しなかったが、射出成形機1(
図1参照)の主電源とは別の電源を用意してもよい。つまり射出成形機1に電源を入れることなく、コントローラ8のみ独立して立ち上げられるようにしてもよい。射出成形機1の主電源がOFFになっていても、コントローラ8が立ち上がっていれば制御盤5、6、7の電子ロック41、42、43の解錠要求を処理して適宜解錠することができる。制御盤5、6、7には電力が供給されていないので、これらを安全にメンテナンスすることができる。
【0051】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。以上で説明した複数の例は、適宜組み合わせて実施されることもできる。
【符号の説明】
【0052】
1 射出成形機 2 型締装置
3 射出装置 5 高圧部制御盤
6 低圧部制御盤 7 ヒータ制御盤
8 コントローラ 9 モニタ
10 固定盤 11 型締ハウジング
12 可動盤 14 タイバー
16 型締機構 17 固定側金型
18 可動側金型 20 型締装置カバー
21 安全ドア 23 電子ロック
25 加熱シリンダ 27 スクリュ
28 スクリュ駆動装置 33 カバー
34 カバー 35 カバー
41 電子ロック 42 電子ロック
43 電子ロック 45 解錠要求ボタン
46 解錠要求ボタン 47 解錠要求ボタン
50 支柱 51 蝶番
53 支柱 55 本体部
56 受部材 57 本体部ケース
59 ラッチ 60 バネ
62 ソレノイド 63 凹部
70 制御部 71 安全ドア処理部
72 通信部 73 解錠履歴ログファイル
74 制御盤電子ロック処理部 75 サーボアンプ
77 解錠要求画面 78 ラジオボタン
79 ラジオボタン 80 ラジオボタン
81 解錠要求実行ボタン
B ベッド