(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189660
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】プリント配線板
(51)【国際特許分類】
H05K 3/40 20060101AFI20221215BHJP
H05K 1/11 20060101ALI20221215BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
H05K3/40 E
H05K1/11 H
H05K1/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021104159
(22)【出願日】2021-06-23
(31)【優先権主張番号】P 2021097474
(32)【優先日】2021-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】500400216
【氏名又は名称】住友電工プリントサーキット株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新田 耕司
(72)【発明者】
【氏名】酒井 将一郎
(72)【発明者】
【氏名】岡 良雄
(72)【発明者】
【氏名】森山 周作
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩三
(72)【発明者】
【氏名】松岡 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 賢治
(72)【発明者】
【氏名】種村 祐作
【テーマコード(参考)】
5E317
5E338
【Fターム(参考)】
5E317AA27
5E317BB03
5E317BB12
5E317CC31
5E317CD15
5E317CD18
5E317CD25
5E317CD32
5E317GG05
5E317GG14
5E338AA02
5E338AA16
5E338BB02
5E338BB14
5E338BB25
5E338EE21
5E338EE60
(57)【要約】
【課題】ヒートサイクルを受けた際の信頼性を確保しつつ、ファインピッチ化が可能なプリント配線板を提供する。
【解決手段】プリント配線板は、ベースフィルムと、第1配線及び第2配線と、第1配線及び第2配線に電気的に接続されているスルーホールめっき層とを備える。ベースフィルムは、第1主面と、第1主面の反対面である第2主面とを有している。ベースフィルムには、ベースフィルムを厚さ方向に沿って貫通している貫通孔が形成されている。第1配線は、第1主面上に配置されている。第2配線は、第2主面上に配置されている。スルーホールめっき層は、スルーホールめっき層は、貫通孔の内壁面上、貫通孔の周囲にある第1配線の上面上、貫通孔の周囲にある第1配線の側面上及び貫通孔の周囲にある第2配線の側面上に配置されている。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースフィルムと、
第1配線及び第2配線と、
前記第1配線及び前記第2配線に電気的に接続されているスルーホールめっき層とを備え、
前記ベースフィルムは、第1主面と、前記第1主面の反対面である第2主面とを有し、
前記ベースフィルムには、前記ベースフィルムを厚さ方向に沿って貫通している貫通孔が形成されており、
前記第1配線は、前記第1主面上に配置されており、
前記第2配線は、前記第2主面上に配置されており、
前記スルーホールめっき層は、前記貫通孔の内壁面上、前記貫通孔の周囲にある前記第1配線の上面上、前記貫通孔の周囲にある前記第1配線の側面上及び前記貫通孔の周囲にある前記第2配線の側面上に配置されている、プリント配線板。
【請求項2】
前記貫通孔の周囲にある前記第1配線と前記貫通孔との間及び前記貫通孔の周囲にある前記第2配線と前記貫通孔との間には、間隔が空いており、
前記スルーホールめっき層は、前記貫通孔の内壁面上、前記貫通孔の周囲にある前記第1配線の上面上、前記貫通孔の周囲にある前記第1配線の側面上、前記貫通孔の周囲にある前記第1主面上、前記貫通孔の周囲にある前記第2主面上及び前記貫通孔の周囲にある前記第2配線の側面上に配置されている、請求項1に記載のプリント配線板。
【請求項3】
前記貫通孔の周囲にある前記第1配線の側面と前記スルーホールめっき層との界面におけるボイド率及び前記貫通孔の周囲にある前記第2配線の側面と前記スルーホールめっき層との界面におけるボイド率は、0.2μm2/μm以下である、請求項2に記載のプリント配線板。
【請求項4】
前記貫通孔は、テーパ部を有し、
前記テーパ部における前記貫通孔の内径は、前記第1主面側から前記第2主面側に向かうにつれて小さくなっている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のプリント配線板。
【請求項5】
前記スルーホールめっき層は、前記貫通孔の周囲にある前記第2配線の上面上に配置されているバリを有する、請求項1に記載のプリント配線板。
【請求項6】
前記第2配線の互いに隣り合っている2つの部分の間の間隔の最小値は、前記第1配線の互いに隣り合っている2つの部分の間の最小値よりも小さい、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のプリント配線板。
【請求項7】
前記第2配線の互いに隣り合っている2つの部分の間の間隔の最小値は、30μm以下である、請求項6に記載のプリント配線板。
【請求項8】
前記貫通孔の内壁面上にある前記スルーホールめっき層の厚さの最大値である第1厚さは、前記第2配線の上面側の端における前記スルーホールめっき層の厚さである第2厚さよりも大きい、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のプリント配線板。
【請求項9】
前記第1厚さは、前記第2厚さの1.05倍以上である、請求項8に記載のプリント配線板。
【請求項10】
前記第1厚さは、前記第2厚さの1.10倍以上である、請求項8に記載のプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2019/107289号(特許文献1)には、フレキシブルプリント配線板が記載されている。特許文献1に記載のフレキシブルプリント配線板は、ベースフィルムと、第1導電パターンと、第2導電パターンと、めっき層とを有している。
【0003】
ベースフィルムは、第1主面と、第2主面とを有している。第2主面は、第1主面の反対面である。ベースフィルムには、ベースフィルムを厚さ方向に沿って貫通している貫通孔が形成されている。第1導電パターン及び第2導電パターンは、それぞれ、第1主面上及び第2主面上に配置されている。
【0004】
めっき層は、貫通孔の内壁面上、貫通孔の周囲にある第1導電パターンの上面上、貫通孔の周囲にある第1導電パターンの側面上、貫通孔の周囲にある第2導電パターンの上面上及び貫通孔の周囲にある第2導電パターンの側面上に配置されていることにより、第1導電パターンと第2導電パターンとを電気的に接続している。第1導電パターン及び第2導電パターンは、パターンニングがされていることにより、配線を構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のフレキシブルプリント配線板では、めっき層が貫通孔の周囲にある第1導電パターンの上面上及び貫通孔の周囲にある第2導電パターンの上面上にも配置されているため、第1導電パターン及び第2導電パターンをパターンニングする際のマスクを厚く形成せざるを得ない。その結果、第1導電パターンの互いに隣り合っている2つの部分の間の間隔及び第2導電パターンの互いに隣り合っている2つの部分の間の間隔が大きくなってしまう。すなわち、特許文献1に記載のフレキシブルプリント配線板では、第1導電パターン及び第2導電パターンのファインピッチ化が困難である。
【0007】
上記の問題を解消するために、特許文献1に記載のプリント配線板において、めっき層を貫通孔の内壁面上、貫通孔の周囲にある第1導電パターンの側面上及び貫通孔の周囲にある第2導電パターンの側面上にのみ配置することが考えられる。しかしながら、この場合には、ヒートサイクルを受けた際の信頼性低下が懸念される。
【0008】
本開示は、上記のような従来技術の問題点に鑑みたものである。より具体的には、本開示は、ヒートサイクルを受けた際の信頼性を確保しつつ、ファインピッチ化が可能なプリント配線板を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示のプリント配線板は、ベースフィルムと、第1配線及び第2配線と、第1配線及び第2配線に電気的に接続されているスルーホールめっき層とを備えている。ベースフィルムは、第1主面と、第1主面の反対面である第2主面とを有している。ベースフィルムには、ベースフィルムを厚さ方向に沿って貫通している貫通孔が形成されている。第1配線は、第1主面上に配置されている。第2配線は、第2主面上に配置されている。スルーホールめっき層は、貫通孔の内壁面上、貫通孔の周囲にある第1配線の上面上、貫通孔の周囲にある第1配線の側面上及び貫通孔の周囲にある第2配線の側面上に配置されている。
【発明の効果】
【0010】
本開示のプリント配線板によると、ヒートサイクルを受けた際の信頼性を確保しつつ、ファインピッチ化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】
図2は、プリント配線板100の製造方法を示す工程図である。
【
図3】
図3は、準備工程S1を説明する断面図である。
【
図4】
図4は、貫通孔形成工程S2を説明する断面図である。
【
図5】
図5は、フィルム貼付工程S41を説明する断面図である。
【
図6】
図6は、フィルムパターンニング工程S42を説明する断面図である。
【
図7】
図7は、めっき工程S43を説明する断面図である。
【
図8】
図8は、プリント配線板200の断面図である。
【
図9】
図9は、プリント配線板300の断面図である。
【
図11】
図11は、プリント配線板100Aの製造方法を示す工程図である。
【
図12】
図12は、エッチング工程S6を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本開示の実施形態の説明]
まず、本開示の実施形態を列記して説明する。
【0013】
(1)実施形態に係るプリント配線板は、ベースフィルムと、第1配線及び第2配線と、第1配線及び第2配線に電気的に接続されているスルーホールめっき層とを備えている。ベースフィルムは、第1主面と、第1主面の反対面である第2主面とを有している。ベースフィルムには、ベースフィルムを厚さ方向に沿って貫通している貫通孔が形成されている。第1配線は、第1主面上に配置されている。第2配線は、第2主面上に配置されている。スルーホールめっき層は、貫通孔の内壁面上、貫通孔の周囲にある第1配線の上面上、貫通孔の周囲にある第1配線の側面上及び貫通孔の周囲にある第2配線の側面上に配置されている。なお、「第1配線の側面」及び「第2配線の側面」は、特に説明がない限り、それぞれ、「第1配線の側面のうちの貫通孔に近い側面」及び「第2配線の側面のうちの貫通孔に近い側面」を意味する。また、「第1配線の上面」及び「第2配線の上面」は、それぞれ、ベースフィルムとの接触面の反対側の面を意味する。
【0014】
上記(1)のプリント配線板によると、ヒートサイクルを受けた際の信頼性を確保しつつ、第2配線のファインピッチ化が可能である。
【0015】
(2)上記(1)のプリント配線板では、貫通孔の周囲にある第1配線と貫通孔との間及び貫通孔の周囲にある第2配線と貫通孔との間に、間隔が空いていてもよい。スルーホールめっき層は、貫通孔の内壁面上、貫通孔の周囲にある第1配線の上面上、貫通孔の周囲にある第1配線の側面上、貫通孔の周囲にある第1主面上、貫通孔の周囲にある第2主面上及び貫通孔の周囲にある第2配線の側面上に配置されていてもよい。
【0016】
上記(2)のプリント配線板によると、ヒートサイクルを受けた際の信頼性をさらに高めることができる。
【0017】
(3)上記(2)のプリント配線板では、貫通孔の周囲にある第1配線の側面とスルーホールめっき層との界面におけるボイド率及び貫通孔の周囲にある第2配線の側面とスルーホールめっき層との界面におけるボイド率が、0.2μm2/μm以下であってもよい。
【0018】
上記(3)のプリント配線板によると、ヒートサイクルを受けた際の信頼性をさらに高めることができる。
【0019】
(4)上記(1)から(3)のプリント配線板では、貫通孔がテーパ部を有していてもよい。テーパ部における貫通孔の内径は、第1主面側から第2主面側に向かうにつれて小さくなっていてもよい。
【0020】
上記(4)のプリント配線板によると、ヒートサイクルを受けた際の信頼性をさらに高めることができる。
【0021】
(5)上記(1)のプリント配線板では、スルーホールめっき層が、貫通孔の周囲にある第2配線の上面上に配置されているバリを有していてもよい。
【0022】
上記(5)のプリント配線板によると、ヒートサイクルを受けた際の信頼性をさらに高めることができる。
【0023】
(6)上記(1)から(5)のプリント配線板では、第2配線の互いに隣り合っている2つの部分の間の間隔の最小値が、第1配線の互いに隣り合っている2つの部分の間の最小値よりも小さくてもよい。
【0024】
上記(6)のプリント配線板によると、ヒートサイクルを受けた際の信頼性を確保しつつ、第2配線のファインピッチ化が可能である。
【0025】
(7)上記(6)のプリント配線板では、第2配線の互いに隣り合っている2つの部分の間の間隔の最小値が、30μm以下であってもよい。
【0026】
上記(7)のプリント配線板によると、ヒートサイクルを受けた際の信頼性を確保しつつ、第2配線のさらなるファインピッチ化が可能である。
【0027】
(8)上記(1)から(7)のプリント配線板では、貫通孔の内壁面上にあるスルーホールめっき層の厚さの最大値である第1厚さは、第2配線の上面側の端におけるスルーホールめっき層の厚さである第2厚さよりも大きくてもよい。
【0028】
上記(8)のプリント配線板によると、ヒートサイクルを受けた際の信頼性をさらに高めることができる。
【0029】
(9)上記(8)のプリント配線板では、第1厚さが、第2厚さの1.05倍以上であってもよい。
【0030】
(10)上記(8)のプリント配線板では、第1厚さが、第2厚さの1.10倍以上であってもよい。
【0031】
[本開示の実施形態の詳細]
次に、本開示の実施形態の詳細を、図面を参照しながら説明する。以下の図面では、同一又は相当する部分に同一の参照符号を付し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0032】
(第1実施形態)
第1実施形態に係るプリント配線板(「プリント配線板100」とする)を説明する。
【0033】
<プリント配線板100の構成>
以下に、プリント配線板100の構成を説明する。
【0034】
図1Aは、プリント配線板100の断面図である。
図1Aに示されているように、プリント配線板100は、ベースフィルム10と、第1配線20と、第2配線30と、スルーホールめっき層40とを有している。
【0035】
ベースフィルム10は、第1主面10aと、第2主面10bとを有している。第1主面10a及び第2主面10bは、ベースフィルム10の厚さ方向における端面である。第2主面10bは、第1主面10aの反対面である。ベースフィルム10は、電気絶縁性及び可撓性を有する材料により形成されている。ベースフィルム10は、例えば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、液晶ポリマー(LCP)、フッ素樹脂等により形成されている。
【0036】
ベースフィルム10には、貫通孔10cが形成されている。貫通孔10cは、ベースフィルム10を厚さ方向に沿って貫通している。
【0037】
第1配線20は、第1主面10a上に配置されている。第1配線20は、例えば、銅(Cu)により形成されている。第2配線30は、第2主面10b上に配置されている。第2配線30は、例えば、銅により形成されている。
【0038】
第1配線20の互いに隣り合っている部分の間の間隔の最小値を、間隔SP1とする。第2配線30の互いに隣り合っている部分の間の間隔の最小値を、間隔SP2とする。間隔SP2は、間隔SP1よりも小さいことが好ましい。間隔SP1は、例えば、35μm以上である。間隔SP2は、例えば、30μm以下である。好ましくは、間隔SP2は、25μm以下である。さらに好ましくは、間隔SP2は、20μm以下である。
【0039】
スルーホールめっき層40は、例えば銅により形成されている、スルーホールめっき層40は、貫通孔10cの内壁面上、貫通孔10cの周囲にある第1配線20の上面上、貫通孔10cの周囲にある第1配線20の側面上及び貫通孔10cの周囲にある第2配線30の側面上に配置されている。但し、スルーホールめっき層40は、貫通孔10cの周囲にある第2配線30の上面上には配置されていない。スルーホールめっき層40により、第1配線20及び第2配線30は、電気的に接続されている。
【0040】
図1Bは、
図1Aの部分拡大図である。
図1Bに示されるように、貫通孔10cの内壁面上におけるスルーホールめっき層40の厚さの最大値を、厚さT1とする。第2配線30の上面側の端におけるスルーホールめっき層40の厚さを、厚さT2とする。厚さT1は、厚さT2よりも大きいことが好ましい。厚さT1は、厚さT2の1.05倍以上であることが好ましい。厚さT1は、厚さT2の1.10倍以上であることがさらに好ましい。
【0041】
<プリント配線板100の製造方法>
以下に、プリント配線板100の製造方法を説明する。
【0042】
図2は、プリント配線板100の製造方法を示す工程図である。
図2に示されているように、プリント配線板100の製造方法は、準備工程S1と、貫通孔形成工程S2と、導電化処理工程S3と、スルーホールめっき層形成工程S4と、配線パターンニング工程S5とを有している。
【0043】
貫通孔形成工程S2は準備工程S1の後に行われ、導電化処理工程S3は貫通孔形成工程S2の後に行われる。スルーホールめっき層形成工程S4は、導電化処理工程S3の後に行われる。配線パターンニング工程S5は、スルーホールめっき層形成工程S4の後に行われる。
【0044】
図3は、準備工程S1を説明する断面図である。
図3に示されているように、準備工程S1では、ベースフィルム10が準備される。準備工程S1において準備されるベースフィルム10には、貫通孔10cが形成されていない。また、準備工程S1において準備されるベースフィルム10では、第1主面10a及び第2主面10b上にそれぞれ第1銅層50及び第2銅層60が配置されている。なお、準備工程S1において準備されるベースフィルム10は、個片化されていない。
【0045】
図4は、貫通孔形成工程S2を説明する断面図である。
図4に示されているように、貫通孔形成工程S2では、ベースフィルム10に貫通孔10cが形成される。貫通孔10cは、例えば、ベースフィルム10にレーザを照射することにより形成される。
【0046】
導電化処理工程S3では、貫通孔10cの内壁面に対する導電化処理が行われる。導電化処理は、例えば貫通孔10cの内壁面上に炭素(C)の粒子を付着させることにより行われる。なお、炭素の粒子は、貫通孔10cの内壁面上のみならず、貫通孔10cの周囲にある第1銅層50の側面上及び貫通孔10cの周囲にある第2銅層60の側面上にも付着される。
【0047】
図2に示されているように、スルーホールめっき層形成工程S4は、フィルム貼付工程S41と、フィルムパターンニング工程S42と、めっき工程S43とを有している。フィルムパターンニング工程S42は、フィルム貼付工程S41の後に行われる。めっき工程S43は、フィルムパターンニング工程S42の後に行われる。
【0048】
図5は、フィルム貼付工程S41を説明する断面図である。
図5に示されているように、フィルム貼付工程S41では、第1銅層50上にドライフィルム71が貼付され、第2銅層60上にバックフィルム72が貼付される。ドライフィルム71は、バックフィルム72が貼付された後に貼付される。ドライフィルム71は、感光性の有機材料により形成されている。バックフィルム72は、例えばドライフィルム、ポリエチレンテレフタレート等により形成されている。
【0049】
図6は、フィルムパターンニング工程S42を説明する断面図である。
図6に示されているように、フィルムパターンニング工程S42では、ドライフィルム71のパターンニングが行われる。ドライフィルム71のパターンニングは、ドライフィルム71を露光及び現像することにより行われる。このパターンニングにより、ドライフィルム71には、開口71aが形成される。貫通孔10cは、開口71aよりも内側にある。
【0050】
図7は、めっき工程S43を説明する断面図である。
図7に示されているように、めっき工程S43では、スルーホールめっき層40が形成される。スルーホールめっき層40は、めっき液中において第1銅層50及び第2銅層60に通電することにより形成される。
【0051】
貫通孔10cの内壁面上には導電化処理が行われているため、スルーホールめっき層40は、貫通孔10cの内壁面上に形成される。また、ドライフィルム71には開口71aが形成されており、貫通孔10cは開口71aの内側にあるため、スルーホールめっき層40は、貫通孔10cの周囲にある第1銅層50の上面上、貫通孔10cの周囲にある第1銅層50側面上及び貫通孔10cの周囲にある第2銅層60の側面上にも形成される。しかしながら、第2銅層60上にはバックフィルム72が貼付されているため、スルーホールめっき層40は、貫通孔10cの周囲にある第2銅層60の上面上には形成されない。なお、スルーホールめっき層40が形成された後に、ドライフィルム71及びバックフィルム72は除去される。
【0052】
配線パターンニング工程S5では、第1銅層50及び第2銅層60のパターンニングが行われる。第1銅層50及び第2銅層60のパターンニングでは、第1銅層50上及び第2銅層60上に、感光性の有機材料により形成されたドライフィルムが貼付される。第1銅層50上に貼付されるドライフィルムは、第2銅層60上に貼付されるドライフィルムよりも厚くなっている。
【0053】
第2に、このドライフィルムが感光及び現像されることにより、パターンニングされる。第3に、パターンニングされたドライフィルムをマスクとして第1銅層50及び第2銅層60がエッチングされる。エッチング後の第1銅層50及び第2銅層60が、それぞれ、第1配線20及び第2配線30となる。
【0054】
配線パターンニング工程S5が行われた後、ベースフィルム10が個片化されることにより、
図1Aに示される構造のプリント配線板100が複数得られる。
【0055】
<プリント配線板100の効果>
以下に、比較例1に係るプリント配線板(「プリント配線板200」とする)及び比較例2に係るプリント配線板(「プリント配線板300」とする)と対比しながら、プリント配線板100の効果を説明する。
【0056】
図8は、プリント配線板200の断面図である。
図8に示されているように、プリント配線板200は、ベースフィルム10と、第1配線20と、第2配線30と、スルーホールめっき層40とを有している。この点に関して、プリント配線板200の構成は、プリント配線板100の構成と共通している。
【0057】
プリント配線板200では、スルーホールめっき層40が、貫通孔10cの内壁面上、貫通孔10cの周囲にある第1配線20の上面上、貫通孔10cの周囲にある第1配線20の側面上及び貫通孔10cの周囲にある第2配線30の側面上に加えて、貫通孔10cの周囲にある第2配線30の上面上にも配置されている。この点に関して、プリント配線板200の構成は、プリント配線板100の構成と異なっている。なお、プリント配線板200の製造方法は、プリント配線板100の製造方法と同様である。
【0058】
プリント配線板200では、スルーホールめっき層40が貫通孔10cの周囲にある第2配線30の上面上にも配置されているため、配線パターンニング工程S5が行われる際、第1銅層50上のドライフィルム及び第2銅層60上のドライフィルムの双方を厚くせざるを得ない。
【0059】
銅層上のドライフィルムが厚い場合、ドライフィルムを微細にパターンニングすることが困難となる。また、銅層上のドライフィルムが厚い場合、ドライフィルムに形成された開口を通して銅層にエッチング液を噴射しにくくなるため、銅層に対するエッチングがより等方的に進行しやすい。そのため、プリント配線板200では、第1配線20のファインピッチ化及び第2配線30のファインピッチ化がともに困難である。
【0060】
他方で、プリント配線板100では、スルーホールめっき層40が貫通孔10cの周囲にある第2配線30の上面上には配置されないため、配線パターンニング工程S5が行われる際、第2銅層60上のドライフィルムを第1銅層50上のドライフィルムよりも薄くすることができる。その結果、プリント配線板100によると、第2配線30のファインピッチ化が可能である。
【0061】
図9は、プリント配線板300の断面図である。
図9に示されているように、プリント配線板300は、ベースフィルム10と、第1配線20と、第2配線30と、スルーホールめっき層40とを有している。この点に関して、プリント配線板300の構成は、プリント配線板100の構成と共通している。
【0062】
プリント配線板300では、スルーホールめっき層40が、貫通孔10cの内壁面上、貫通孔10cの周囲にある第1配線20の側面上及び貫通孔10cの周囲にある第2配線30の側面上にのみ配置されている。この点に関して、プリント配線板300の構成は、プリント配線板100の構成と異なっている。なお、プリント配線板300の製造方法は、プリント配線板100の製造方法と同様である。
【0063】
プリント配線板300では、スルーホールめっき層40が貫通孔10cの周囲にある第1配線20の上面上及び貫通孔10cの周囲にある第2配線30の上面上に配置されていないため、配線パターンニング工程S5が行われる際、第1銅層50上のドライフィルム及び第2銅層60上のドライフィルムの双方を薄くすることができる。そのため、プリント配線板300によると、第1配線20及び第2配線30のファインピッチ化が可能である。
【0064】
しかしながら、プリント配線板300では、スルーホールめっき層40が貫通孔10cの内壁面上、貫通孔10cの周囲にある第1配線20の側面上及び貫通孔10cの周囲にある第2配線30の側面上にのみ配置されているため、ヒートサイクルが加わった際に、スルーホールめっき層40が剥離しやすい。
【0065】
他方で、プリント配線板100では、スルーホールめっき層40が貫通孔10cの内壁面上、貫通孔10cの周囲にある第1配線20の側面上及び貫通孔10cの周囲にある第2配線30の側面上のみならず、貫通孔10cの周囲にある第1配線20の上面上にも配置されているため、ヒートサイクルが加わった際にスルーホールめっき層40の剥離が生じにくい。このように、プリント配線板100によると、ヒートサイクルを受けた際の信頼性を確保しつつ、第2配線30のファインピッチ化が可能である。
【0066】
(第2実施形態)
第2実施形態に係るプリント配線板(「プリント配線板100A」とする)を説明する。ここでは、プリント配線板100と異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0067】
<プリント配線板100Aの構成>
以下に、プリント配線板100Aの構成を説明する。
【0068】
図10は、プリント配線板100Aの断面図である。
図10に示されているように、プリント配線板100Aは、ベースフィルム10と、第1配線20と、第2配線30と、スルーホールめっき層40とを有している。この点に関して、プリント配線板100Aの構成は、プリント配線板100の構成と共通している。
【0069】
プリント配線板100Aでは、貫通孔10cの周囲にある第1配線20と貫通孔10cとの間及び貫通孔10cの周囲にある第2配線30との間に、間隔が空いている。また、プリント配線板100Aでは、スルーホールめっき層40が、貫通孔10cの内壁面上、貫通孔10cの周囲にある第1配線20の上面上、貫通孔10cの周囲にある第1配線20の側面上、貫通孔10cの周囲にある第1主面10a上、貫通孔10cの周囲にある第2主面10b上及び貫通孔10cの周囲にある第2配線30の側面上に配置されている。
【0070】
また、プリント配線板100Aでは、貫通孔10cの周囲にある第1配線20の側面とスルーホールめっき層40との界面におけるボイド率及び貫通孔10cの周囲にある第2配線30の側面とスルーホールめっき層40との界面におけるボイド率が、0.2μm2/μm以下になっている。これらの点に関して、プリント配線板100Aの構成は、プリント配線板100の構成と異なっている。
【0071】
貫通孔10cの周囲にある第1配線20の側面とスルーホールめっき層40との界面におけるボイド率は、以下の方法により測定される。第1に、走査型電子顕微鏡を用いて、貫通孔10cの周囲にある第1配線20の側面とスルーホールめっき層40との界面における断面画像が取得される。第2に、取得された断面画像に基づいて、貫通孔10cの周囲にある第1配線20の側面とスルーホールめっき層40との界面を所定の測定長さの範囲内で横切っているボイド(以下「測定対象ボイド」とする)が特定される。測定長さは、例えば、10μmとされる。
【0072】
第3に、取得された断面画像に対して、画像処理(二値化処理)が行われる。この画像処理は、例えばGNU Image Manipulation Programを用いて行われる。この画像処理により、測定対象ボイドの面積の合計が特定される。この合計面積を測定長さで除した値が、貫通孔10cの周囲にある第1配線20の側面とスルーホールめっき層40との界面におけるボイド率と見做される。貫通孔10cの周囲にある第2配線30の側面とスルーホールめっき層40との界面におけるボイド率は、同様の方法により測定される。
【0073】
<プリント配線板100Aの製造方法>
以下に、プリント配線板100Aの製造方法を説明する。
【0074】
図11は、プリント配線板100Aの製造方法を示す工程図である。
図11に示されるように、プリント配線板100Aの製造方法は、準備工程S1と、貫通孔形成工程S2と、導電化処理工程S3と、スルーホールめっき層形成工程S4と、配線パターンニング工程S5とを有している。この点に関して、プリント配線板100Aの製造方法は、プリント配線板100の製造方法と共通している。
【0075】
プリント配線板100Aの製造方法は、さらに、エッチング工程S6を有している。エッチング工程S6は、導電化処理工程S3が行われた後であって、スルーホールめっき層形成工程S4が行われる前に行われる。これらの点に関して、プリント配線板100Aの製造方法は、プリント配線板100の製造方法と異なっている。
【0076】
図12は、エッチング工程S6を説明する断面図である。
図12に示されているように、エッチング工程S6では、エッチングが行われる。このエッチングにより、貫通孔10cの周囲にある第1銅層50の側面上に付着している炭素の粒子及び貫通孔10cの周囲にある第2銅層60の側面上に付着している炭素の粒子が、除去される。なお、エッチング工程S6後においても、貫通孔10c上に炭素の粒子が残存している。
【0077】
また、このエッチングに伴い、貫通孔10cの周囲にある第1銅層50及び貫通孔10cの周囲にある第2銅層60がエッチングされる。そのため、エッチング工程S6が行われることにより、貫通孔10cの周囲にある第1銅層50の位置及び貫通孔10cの周囲にある第2銅層60の位置が貫通孔10cの縁から後退し、貫通孔10cの周囲にある第1銅層50と貫通孔10cとの間及び貫通孔10cの周囲にある第2銅層60との間に、間隔が空いている。
【0078】
そのため、プリント配線板100Aでは、貫通孔10cの内壁面上、貫通孔10cの周囲にある第1配線20の上面上、貫通孔10cの周囲にある第1配線20の側面上及び貫通孔10cの周囲にある第2配線30の側面上に加え、貫通孔10cの周囲にある第1主面10a上及び貫通孔10cの周囲にある第2主面10b上にもスルーホールめっき層40が配置されることになる。
【0079】
プリント配線板100Aでは、エッチング工程S6により貫通孔10cの周囲にある第1銅層50の側面上に付着している炭素の粒子及び貫通孔10cの周囲にある第2銅層60の側面上に付着している炭素の粒子が除去される結果、貫通孔10cの周囲にある第1配線20の側面とスルーホールめっき層40との界面及び貫通孔10cの周囲にある第2配線30の側面とスルーホールめっき層40との界面にボイドが形成されにくくなる。
【0080】
<プリント配線板100Aの効果>
以下に、プリント配線板100Aの効果を説明する。
【0081】
プリント配線板100Aでは、貫通孔10cの内壁面上、貫通孔10cの周囲にある第1配線20の上面上、貫通孔10cの周囲にある第1配線20の側面上及び貫通孔10cの周囲にある第2配線30の側面上に加えて、貫通孔10cの周囲にある第1主面10a上及び貫通孔10cの周囲にある第2主面10b上にもスルーホールめっき層40が配置されている。また、プリント配線板100Aでは、貫通孔10cの周囲にある第1配線20の側面とスルーホールめっき層40との界面及び貫通孔10cの周囲にある第2配線30の側面とスルーホールめっき層40との界面にボイドが形成されにくい。
【0082】
そのため、プリント配線板100Aによると、スルーホールめっき層40が貫通孔10cの内壁面上、貫通孔10cの周囲にある第1配線20の上面上、貫通孔10cの周囲にある第1配線20の側面上及び貫通孔10cの周囲にある第2配線30の側面上にのみ配置されているプリント配線板100と比較し、ヒートサイクルが加わった際にスルーホールめっき層40の剥離がさらに生じにくい。
【0083】
(第3実施形態)
第3実施形態に係るプリント配線板(「プリント配線板100B」とする)を説明する。ここでは、プリント配線板100と異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0084】
<プリント配線板100Bの構成>
以下に、プリント配線板100Bの構成を説明する。
【0085】
図13は、プリント配線板100Bの断面図である。
図13に示されているように、プリント配線板100Bは、ベースフィルム10と、第1配線20と、第2配線30と、スルーホールめっき層40とを有している。この点に関して、プリント配線板100Bの構成は、プリント配線板100の構成と共通している。
【0086】
プリント配線板100Bでは、貫通孔10cが、テーパ部10caを有している。プリント配線板100Bでは、貫通孔10cの内径が、テーパ部10caにおいて、第1主面10a側から第2主面10b側に向かうにつれて小さくなっている。
図13に示される例では、貫通孔10cの全体がテーパ部10caになっているが、貫通孔10cの一部がテーパ部10caになっていてもよい。これらの点に関して、プリント配線板100Bの構成は、プリント配線板100の構成と異なっている。プリント配線板100Bでは、スルーホールめっき層40の内壁面で形成されるスルーホールに、テーパ部を有している。このテーパ部は、第1配線20の上面側から第2配線30の上面にわたり形成されている。スルーホールの内径は、第1配線20の上面側から第2配線30の上面側に向かうにつれて小さくなっている。
【0087】
なお、テーパ部10caは、貫通孔形成工程S2においてベースフィルム10に照射されるレーザの出力を調整することにより形成される。
【0088】
<プリント配線板100Bの効果>
以下に、プリント配線板100Bの効果を説明する。
【0089】
プリント配線板100Bでは、貫通孔10cがテーパ部10caを有しているため、スルーホールめっき層40と貫通孔10cの内壁面との接触面積が大きくなっている。
【0090】
そのため、プリント配線板100Bによると、貫通孔10cがテーパ部10caを有していないプリント配線板100と比較し、ヒートサイクルが加わった際にスルーホールめっき層40の剥離がさらに生じにくい。
【0091】
(第4実施形態)
第4実施形態に係るプリント配線板(「プリント配線板100C」とする)を説明する。ここでは、プリント配線板100と異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0092】
<プリント配線板100Cの構成>
以下に、プリント配線板100Cの構成を説明する。
【0093】
図14は、プリント配線板100Cの断面図である。
図15は、
図14の領域XVにおける拡大図である。
図14及び
図15に示されているように、プリント配線板100Bは、ベースフィルム10と、第1配線20と、第2配線30と、スルーホールめっき層40とを有している。この点に関して、プリント配線板100Cの構成は、プリント配線板100の構成と共通している。
【0094】
プリント配線板100Cでは、スルーホールめっき層40がバリ41を有している。バリ41は、貫通孔10cの周囲にある第2配線30の上面上に配置されている。これらの点に関して、プリント配線板100Cの構成は、プリント配線板100の構成と異なっている。
【0095】
なお、バリ41の形成においては、第1に、フィルム貼付工程S41が行われる前に第2銅層60の表面が酸化される。第2に、フィルム貼付工程S41が行われた後に、例えば希硫酸を用いて貫通孔10cの周囲にある第2銅層60の表面上にある酸化物が除去される。これにより、バックフィルム72と貫通孔10cの周囲にある第2銅層60の上面との間に、隙間が生じる。この状態でめっき工程S43を行うことにより、上記の隙間にもスルーホールめっき層40が成長し、バリ41が形成される。
【0096】
<プリント配線板100Cの効果>
以下に、プリント配線板100Cの効果を説明する。
【0097】
プリント配線板100Cでは、スルーホールめっき層40がバリ41を有しているため、スルーホールめっき層40と第2配線30との接触面積が大きくなっている。そのため、プリント配線板100Cによると、スルーホールめっき層40がバリ41を有していないプリント配線板100と比較し、ヒートサイクルが加わった際にスルーホールめっき層40の剥離がさらに生じにくい。
【0098】
(実施例)
プリント配線板100、プリント配線板100A及びプリント配線板100Cの効果を確認するため、第1評価試験、第2評価試験、第3評価試験、第4評価試験、第5評価試験、第6評価試験及び第7評価試験を行った。
【0099】
<第1評価試験>
第1評価試験には、サンプル1及びサンプル2が供された。サンプル1では、スルーホールめっき層40が、貫通孔10cの内壁面上、貫通孔10cの周囲にある第1配線20の上面上、貫通孔10cの周囲にある第1配線20の側面上及び貫通孔10cの周囲にある第2配線30の側面上に配置された。
【0100】
他方で、サンプル2では、スルーホールめっき層40が、貫通孔10cの内壁面上、貫通孔10cの周囲にある第1配線20の上面上、貫通孔10cの周囲にある第1配線20の側面上及び貫通孔10cの周囲にある第2配線30の側面上に加え、貫通孔10cの周囲にある第2配線30の上面上にも配置された。
【0101】
サンプル1では、第2配線30の幅を20μmとすることができ、間隔SP2を20μmとすることができた。他方で、サンプル2では、第2配線30の幅を35μm未満とすることができず、間隔SP2を35μmとすることができなかった。この比較から、貫通孔10cの周囲にある第2配線30の上面上にスルーホールめっき層40を配置しないことにより第2配線30をファインピッチ化することが可能であることが、実験的に明らかにされた。
【0102】
<第2評価試験>
第2評価試験には、サンプル1及びサンプル3が供された。サンプル3では、貫通孔10cの内壁面上、貫通孔10cの周囲にある第1配線20の側面上及び貫通孔10cの周囲にある第2配線30の側面上に配置された。
【0103】
第2評価試験では、各サンプルに対してヒートサイクル試験が行われた。ヒートサイクル試験では、100サイクルのヒートサイクルを受けた時点でのスルーホールめっき層40の電気抵抗値の変化、500サイクルのヒートサイクルを受けた時点でのスルーホールめっき層40の電気抵抗値の変化及び1000サイクルのヒートサイクルを受けた時点でのスルーホールめっき層40の電気抵抗値の変化が測定された。なお、1サイクルの間では、温度が-40℃から125℃まで上昇され、その後に-40℃まで戻された。1サイクルに要する時間は、30分とされた。サンプル1及びサンプル3に対するヒートサイクル試験の結果は、表1に示されている。
【0104】
【0105】
サンプル3では、100サイクルのヒートサイクルを受けた時点で、スルーホールめっき層40が断線していた。他方で、サンプル1では、500サイクルのヒートサイクルを受けた時点でも、スルーホールめっき層40が断線していなかった。この比較から、貫通孔10cの内壁面上、貫通孔10cの周囲にある第1配線20の側面上及び貫通孔10cの周囲にある第2配線30の側面上に加えて貫通孔10cの周囲にある第1配線20の上面上にもスルーホールめっき層40を配置することによりヒートサイクルを受けた際の信頼性が改善されることが、実験的に明らかにされた。
【0106】
<第3評価試験>
第3評価試験には、サンプル1、サンプル4及びサンプル5が供された。サンプル4及びサンプル5では、スルーホールめっき層40が、貫通孔10cの内壁面上、貫通孔10cの周囲にある第1配線20の上面上、貫通孔10cの周囲にある第1配線20の側面上及び貫通孔10cの周囲にある第2配線30の側面上に加え、貫通孔10cの周囲にある第1主面10a上及び貫通孔10cの周囲にある第2主面10b上にも配置された。
【0107】
サンプル4では、貫通孔10cの周囲にある第1配線20の貫通孔10cからの後退量及び貫通孔10cの周囲にある第2配線30の貫通孔10cからの後退量が、0.2μmとされた。サンプル5では、貫通孔10cの周囲にある第1配線20の貫通孔10cからの後退量及び貫通孔10cの周囲にある第2配線30の貫通孔10cからの後退量が、0.5μmとされた。
【0108】
第3評価試験では、各サンプルに対してヒートサイクル試験が行われた。ヒートサイクル試験の方法は、第2評価試験と同一である。表2には、サンプル1、サンプル4及びサンプル5に対するヒートサイクル試験の結果が示されている。
【0109】
【0110】
サンプル1では、500サイクルのヒートサイクルを受けた時点ではスルーホールめっき層40が断線していなかったが、1000サイクルのヒートサイクルを受けた時点ではスルーホールめっき層40が断線していた。他方で、サンプル4及びサンプル5では、1000サイクルのヒートサイクルを受けた時点でもスルーホールめっき層40が断線していなかった。
【0111】
この比較から、スルーホールめっき層40が貫通孔10cの内壁面上、貫通孔10cの周囲にある第1配線20の上面上、貫通孔10cの周囲にある第1配線20の側面上及び貫通孔10cの周囲にある第2配線30の側面上に加えて貫通孔10cの周囲にある第1主面10a上及び貫通孔10cの周囲にある第2主面10b上にも配置されることによりヒートサイクルを受けた際の信頼性がさらに改善されることが、実験的に明らかにされた。
【0112】
サンプル5では、サンプル4よりも、ヒートサイクルを受けた後におけるスルーホールめっき層40の電気抵抗値の上昇が小さかった。この比較から、貫通孔10cの周囲にある第1配線20の貫通孔10cからの後退量及び貫通孔10cの周囲にある第2配線30の貫通孔10cからの後退量を大きくすることによりヒートサイクルを受けた際の信頼性がさらに改善されることが、実験的に明らかにされた。
【0113】
<第4評価試験>
第4評価試験には、サンプル1、サンプル6及びサンプル7が供された。サンプル6及びサンプル7では、スルーホールめっき層40が、貫通孔10cの内壁面上、貫通孔10cの周囲にある第1配線20の上面上、貫通孔10cの周囲にある第1配線20の側面上及び貫通孔10cの周囲にある第2配線30の側面上に配置された。
【0114】
サンプル1では、貫通孔10cの周囲にある第1配線20の側面とスルーホールめっき層40との界面におけるボイド率及び貫通孔10cの周囲にある第2配線30の側面とスルーホールめっき層40との界面におけるボイド率が、0.20μm2/μmを超えていた。
【0115】
他方で、サンプル6及びサンプル7では、貫通孔10cの周囲にある第1配線20の側面とスルーホールめっき層40との界面におけるボイド率及び貫通孔10cの周囲にある第2配線30の側面とスルーホールめっき層40との界面におけるボイド率が、0.20μm2/μm以下であった。
【0116】
第4評価試験では、各サンプルに対してヒートサイクル試験が行われた。ヒートサイクル試験の方法は、第2評価試験と同一である。表3には、サンプル1、サンプル6及びサンプル7に対するヒートサイクル試験の結果が示されている。
【0117】
【0118】
サンプル1では、500サイクルのヒートサイクルを受けた時点ではスルーホールめっき層40が断線していなかったが、1000サイクルのヒートサイクルを受けた時点ではスルーホールめっき層40が断線していた。他方で、サンプル6及びサンプル7では、1000サイクルのヒートサイクルを受けた時点でもスルーホールめっき層40が断線していなかった。また、サンプル6及びサンプル7では、サンプル1よりも、ヒートサイクルを受けた後におけるスルーホールめっき層40の電気抵抗値の上昇が小さかった。
【0119】
この比較から、貫通孔10cの周囲にある第1配線20の側面とスルーホールめっき層40との界面におけるボイド率及び貫通孔10cの周囲にある第2配線30の側面とスルーホールめっき層40との界面におけるボイド率を0.20μm2/μm以下とすることによりヒートサイクルを受けた際の信頼性がさらに改善されることが、実験的に明らかにされた。
【0120】
<第5評価試験>
第5評価試験には、サンプル8及びサンプル9が供された。サンプル8及びサンプル9では、スルーホールめっき層40が、貫通孔10cの内壁面上、貫通孔10cの周囲にある第1配線20の上面上、貫通孔10cの周囲にある第1配線20の側面上及び貫通孔10cの周囲にある第2配線30の側面上に配置された。
【0121】
サンプル8では、スルーホールめっき層40の厚さT1がスルーホールめっき層40の厚さT2の1.05倍であった。また、サンプル9では、スルーホールめっき層40の厚さT1がスルーホールめっき層40の厚さT2の1.10倍であった。
【0122】
第5評価試験では、各サンプルに対してヒートサイクル試験が行われた。ヒートサイクル試験の方法は、第2評価試験と同一である。表4には、サンプル8及びサンプル9に対するヒートサイクル試験の結果が示されている。
【0123】
【0124】
サンプル9では、サンプル8よりも、ヒートサイクルを受けた後におけるスルーホールめっき層40の電気抵抗値の上昇が小さかった。この比較から、スルーホールめっき層40の厚さT1をスルーホールめっき層40の厚さT2よりも大きくすることによりヒートサイクルを受けた際の信頼性がさらに改善されることが、実験的に明らかにされた。
【0125】
<第6評価試験>
第6評価試験には、サンプル10及びサンプル11が供された。サンプル10及びサンプル11では、スルーホールめっき層40が、貫通孔10cの内壁面上、貫通孔10cの周囲にある第1配線20の上面上、貫通孔10cの周囲にある第1配線20の側面上及び貫通孔10cの周囲にある第2配線30の側面上に配置された。
【0126】
サンプル10では、貫通孔10cの周囲にある第2配線30の上面上におけるバリ41の長さが0.2μmとされた。サンプル11では、貫通孔10cの周囲にある第2配線30の上面上におけるバリ41の長さが1.0μmとされた。
【0127】
第6評価試験では、各サンプルに対してヒートサイクル試験が行われた。ヒートサイクル試験の方法は、第2評価試験と同一である。表5には、サンプル10及びサンプル11に対するヒートサイクル試験の結果が示されている。
【0128】
【0129】
サンプル11では、サンプル10よりも、ヒートサイクルを受けた後におけるスルーホールめっき層40の電気抵抗値の上昇が小さかった。この比較から、スルーホールめっき層40にバリ41を形成することによりヒートサイクルを受けた際の信頼性がさらに改善されることが、実験的に明らかにされた。
【0130】
<第7評価試験>
第7評価試験には、サンプル12が供された。サンプル12では、スルーホールめっき層40が、貫通孔10cの内壁面上、貫通孔10cの周囲にある第1配線20の上面上、貫通孔10cの周囲にある第1配線20の側面上及び貫通孔10cの周囲にある第2配線30の側面上に加え、貫通孔10cの周囲にある第1主面10a上及び貫通孔10cの周囲にある第2主面10b上にも配置された。なお、サンプル12では、貫通孔10cの周囲にある第1配線20の貫通孔10cからの後退量及び貫通孔10cの周囲にある第2配線30の貫通孔10cからの後退量が、0.2μmとされた。
【0131】
また、サンプル12では、貫通孔10cの周囲にある第1配線20の側面とスルーホールめっき層40との界面におけるボイド率及び貫通孔10cの周囲にある第2配線30の側面とスルーホールめっき層40との界面におけるボイド率が、0.15μm2/μmとされた。サンプル12では、貫通孔10cの周囲にある第2配線30の上面上におけるバリ41の長さが0.2μmとされた。
【0132】
第7評価試験では、サンプル12に対してヒートサイクル試験が行われた。ヒートサイクル試験の方法は、第2評価試験と同一である。表6には、サンプル12に対するヒートサイクル試験の結果が示されている。サンプル12は、サンプル1からサンプル11のいずれよりもヒートサイクルを受けた後におけるスルーホールめっき層40の電気抵抗値の上昇が小さかった。
【0133】
この結果から、(a)スルーホールめっき層40が貫通孔10cの内壁面上、貫通孔10cの周囲にある第1配線20の上面上、貫通孔10cの周囲にある第1配線20の側面上、貫通孔10cの周囲にある第2配線30の側面上、貫通孔10cの周囲にある第1主面10a上及び貫通孔10cの周囲にある第2主面10b上に配置されること、(b)貫通孔10cの周囲にある第1配線20の側面とスルーホールめっき層40との界面におけるボイド率及び貫通孔10cの周囲にある第2配線30の側面とスルーホールめっき層40との界面におけるボイド率を0.20μm2/μm以下とすること及び(c)スルーホールめっき層40にバリ41を形成することが満たされることによりヒートサイクルを受けた際の信頼性が特に改善されることが、実験的に明らかにされた。
【0134】
【0135】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記の実施形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0136】
10 ベースフィルム
10a 第1主面
10b 第2主面
10c 貫通孔
10ca テーパ部
20 第1配線
30 第2配線
40 スルーホールめっき層
41 バリ
50 第1銅層
60 第2銅層
71 ドライフィルム
71a 開口
72 バックフィルム
100,100A,100B,100C,200,300 プリント配線板
S1 準備工程
S2 貫通孔形成工程
S3 導電化処理工程
S4 スルーホールめっき層形成工程
S41 フィルム貼付工程
S42 フィルムパターンニング工程
S43 めっき工程
S5 配線パターンニング工程
S6 エッチング工程
SP1,SP2 間隔
T1,T2 厚さ。