(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189661
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】検査機器
(51)【国際特許分類】
G01N 1/10 20060101AFI20221215BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
G01N1/10 V
G01N33/48 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021104490
(22)【出願日】2021-06-23
【出願変更の表示】U 2021002270の変更
【原出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】514293008
【氏名又は名称】株式会社東亜産業
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 龍志
【テーマコード(参考)】
2G045
2G052
【Fターム(参考)】
2G045CB07
2G045HA06
2G045HA14
2G052AA29
2G052AA36
2G052AD06
2G052AD26
2G052BA19
2G052DA02
2G052DA08
2G052DA15
2G052DA27
2G052GA30
2G052JA04
(57)【要約】
【課題】簡単な構成により、感染症に感染したヒトか否かを判定することができる検査機器を提供する。
【解決手段】唾液採取ユニット(3)と、唾保護キャップ(5)と、検査タンクユニット(7)とを備え、唾液採取ユニットは、唾液保持部(13)と、唾液保持部の先端に形成される凸部(13a)とを有し、保護キャップは、筒部(5a)と、ストッパ部(21)とを有し、検査タンクユニットは、挿入部(33)と、開口端(3a)と、所定の検査液(37)を貯留するタンク部(31)と、タンク部と挿入部とを仕切る薄膜(35)とを有し、保護キャップのストッパ部は、検査タンクユニットの開口端の内径よりも延び、開口端に当接する際に検査タンクユニットの薄膜と保護キャップとが所定距離離間する位置に形成されており、検査タンクユニットの薄膜は、唾液採取ユニットの凸部を押圧されると破断可能に形成されており、唾液保持部は、検査タンクユニットの薄膜を超えてタンク部に挿入可能な位置に配設されてなる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の唾液を採取する棒状の唾液採取ユニットと、
前記唾液採取ユニットの少なくとも一部が収納される棒状の保護キャップと、
前記保護キャップの少なくとも一部が収納される検査タンクユニットと、を備え、
前記唾液採取ユニットは、
一端に前記被検体の唾液を保持する唾液保持部と、
前記唾液保持部の先端に形成される凸部と、を有し、
前記保護キャップは、
前記唾液保持部及び前記凸部を収容する筒部と、
前記筒部から径方向外側に延びるストッパ部と、を有し、
前記検査タンクユニットは、
前記唾液保持部及び前記凸部並びに前記保護キャップが通過可能な挿入部と、
前記挿入部の一端に形成される開口端と、
前記開口端とは反対側の端部に形成され、所定の検査液を貯留するタンク部と、
前記タンク部と前記挿入部とを仕切る薄膜と、を有し、
前記保護キャップの前記ストッパ部は、少なくとも一部が前記検査タンクユニットの前記開口端の内径よりも延び、該開口端に当接する際に前記検査タンクユニットの前記薄膜と前記保護キャップとが所定距離離間する位置に形成されており、
前記検査タンクユニットの前記薄膜は、前記唾液採取ユニットの前記凸部を押圧されると破断可能に形成されており、
前記唾液保持部は、前記検査タンクユニットの前記薄膜を超えて前記タンク部に挿入可能な位置に配設されてなる検査機器。
【請求項2】
唾液採取ユニット及び検査タンクユニットの少なくとも一部には、長手方向から視て多角形となるよう形成されてなる、請求項1に記載の検査機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は検査機器に係り、特に簡便に感染症への感染を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ヒトからヒトに感染する感染症は、密室に複数人が位置することを防止することや、敷地の入り口で検温する等の蔓延防止措置により、感染を抑制する方法が一般的である。
しかしながら、感染症に感染したヒトか否かを判定するためには、検温等では判定精度が低く、正確な特定方法が求められていた。
【0003】
そこで、現在は、発熱や倦怠感等による感染した可能性のあるヒト(被検体)から唾液を唾液保存キット(特許文献1)に採取し、所定の検査機関に当該キットを送付して検査することで、被検体に係る労力を軽減しつつ簡単に感染症への感染を特定する技術が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のように唾液を唾液保存キットに採取し、所定の検査機関に当該キットを送付して検査することは、唾液を採取したときから感染症に感染したヒトか否かを判定するまでに労力と時間がかかるため、更なる改善の余地があった。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡単な構成により、感染症に感染したヒトか否かを判定することができる検査機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の検査機器は、被検体の唾液を採取する棒状の唾液採取ユニットと、前記唾液採取ユニットの少なくとも一部が収納される棒状の保護キャップと、前記保護キャップの少なくとも一部が収納される検査タンクユニットと、を備え、前記唾液採取ユニットは、一端に前記被検体の唾液を保持する唾液保持部と、前記唾液保持部の先端に形成される凸部と、を有し、前記保護キャップは、前記唾液保持部及び前記凸部を収容する筒部と、前記筒部から径方向外側に延びるストッパ部と、を有し、前記検査タンクユニットは、前記唾液保持部及び前記凸部並びに前記保護キャップが通過可能な挿入部と、前記挿入部の一端に形成される開口端と、前記開口端とは反対側の端部に形成され、所定の検査液を貯留するタンク部と、前記タンク部と前記挿入部とを仕切る薄膜と、を有し、前記保護キャップの前記ストッパ部は、少なくとも一部が前記検査タンクユニットの前記開口端の内径よりも延び、該開口端に当接する際に前記検査タンクユニットの前記薄膜と前記保護キャップとが所定距離離間する位置に形成されており、前記検査タンクユニットの前記薄膜は、前記唾液採取ユニットの前記凸部を押圧されると破断可能に形成されており、前記唾液保持部は、前記検査タンクユニットの前記薄膜を超えて前記タンク部に挿入可能な位置に配設されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の検査機器によれば、保護キャップのストッパ部の少なくとも一部が検査タンクユニットの開口端の内径よりも延びてなるので、保護キャップが検査タンクユニットの薄膜と接触することを防止することができる。また、検査タンクユニットの薄膜が唾液採取ユニットの凸部を押圧されると破断可能に形成されるので、タンク部に貯留される所定の検査液が漏れることを防止しつつ、唾液採取ユニットの凸部を押圧することで簡単に開封することができる。またさらに、唾液保持部が検査タンクユニットの薄膜を超えてタンク部に挿入可能な位置に配設されたので、検査タンクユニットの薄膜を破断しつつ、唾液保持部をタンク部に貯留される所定の検査液に浸すことができる。これにより、簡単な構成により、感染症に感染したヒトか否かを判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づき本発明の一実施形態について説明する。
図1を参照すると、検査器1の斜視図が示されている。検査器1は、被検体の唾液を用いて、該被検体が感染症に感染しているか否かを判定(以下、感染判定という。)する器具である。この検査器1は、唾液採取ユニット3、保護キャップ5及び検査タンクユニット7を備えている。
【0011】
図2を参照すると、検査器1の分解説明図が示されている。唾液採取ユニット3は、被検体の唾液を保持することや、感染判定を表示することが可能な器具である。具体的には、唾液採取ユニット3は、中空管部11、唾液保持部13及び表示部15を有している。
【0012】
中空管部11は、透明な樹脂製の中空管部である。この中空管部11は、長手方向一方側(
図2で視て下側)に、比較的細い径の先細部11aが形成されている。また、中空管部11の先細部11aは、後述する検査液37を毛細管現象により吸い上げることが可能な流路11bが内部に形成されている。唾液保持部13は、先細部11aの先端部に設けられた海綿体である。この唾液保持部13は、被検体の唾液や後述する検査液37を吸い取り保持することができる。また、唾液保持部13は、先端部から突出する凸部13aが形成されている。この凸部13aは、後述する薄膜35を貫くことができる。表示部15は、感染判定の結果を表示することが可能な表示部である。
【0013】
一方、中空管部11の先細部11aとは反対側の端部には、長手方向から視て四角形(多角形)となるよう形成された四角柱部11bが形成されている。これにより、唾液採取ユニット3は、中空管部11の長手方向を軸にして周方向に転がることを四角柱部11bにより抑制することができる。
【0014】
保護キャップ5は、筒部5aで中空管部11の先細部11aを収納することが可能な樹脂製のキャップ部材である。この保護キャップ5は、長手方向略中央から径方向に延びるストッパ部21が形成されている。
【0015】
検査タンクユニット7は、唾液採取ユニット3や保護キャップ5を挿入することや検査液37を貯留することが可能なタンクユニットである。この検査タンクユニット7は、タンク部31、挿入部33及び薄膜35を有している。タンク部31は、検査液37を貯留するタンクである。このタンク部31は、長手方向から視て四角形(多角形)となるよう形成されている。これにより、検査タンクユニット7は、長手方向を軸にして周方向に転がることをタンク部31より抑制することができる。
【0016】
挿入部33は、長手方向に延びる中空管である。この挿入部33は、保護キャップ5の長手方向下側が挿入可能である。また、挿入部33は、開口端33aの内径が保護キャップ5のストッパ部21の外径より小さい。薄膜35は、タンク部31と挿入部33とを仕切る例えばアルミ製の薄膜である。この薄膜35は、保護キャップ5が挿入部33に挿入される際、保護キャップ5から所定距離離間した位置に配設されている。なお、薄膜35は、タンク部31と同様に樹脂製の部材で形成してもよく、タンク部31から延びて形成されるようにしてもよい。
【0017】
ここで、本発明に係る検査器1の収納態様について説明する。検査器1は、使用前、唾液採取ユニット3の先細部11aが保護キャップ5に挿入され、保護キャップ5が検査タンクユニット7の挿入部33に挿入される。このように配設することで、検査器1は、唾液採取ユニット3の先細部11aを保護キャップ5で保護しつつ、先細部11aが検査タンクユニット7の薄膜35に接触することを防止することができる。ゆえに、検査器1は、収納態様を比較的コンパクトにしつつ、輸送時等における破損を防止することができる。
図3~
図6を参照すると、検査器1の使用方法を説明する説明図が示されている。以下、本発明に係る検査器1の使用方法について説明する。
【0018】
まず、被検体である被験者は、検査タンクユニット7から唾液採取ユニット3を保護キャップ5ごと長手方向に引き抜く(
図3)。次に、被験者は、唾液採取ユニット3を保護キャップ5から長手方向に引き抜く(
図4)。次に、被験者は、唾液採取ユニット3の唾液保持部13に唾液を浸透させる(不図示)。具体的には、被験者は、唾液採取ユニット3の唾液保持部13を咥え、口腔内の唾液や粘膜を唾液保持部13にこすりつけるようにして採取させる。
【0019】
その後、被験者は、唾液保持部13を挿入部33に挿入して押圧し、凸部13aによって薄膜35を破断させる(
図5、6)。凸部13aによって薄膜35を破断させると、唾液保持部13は、タンク部31の検査液37に浸る。このように唾液保持部13がタンク部31の検査液37に浸ると、検査液37は、被験者の唾液と化合し、先細部11aを例えば毛細管現象によって移動して表示部15に浸透する。
【0020】
ところで、検査液37は、被験者が特定の感染症に感染している際に化学反応を生じる液体である。また、表示部15は、検査液37と化学反応して所定の箇所にライン15aが表示される指示薬を含んだ紙である。具体例としては、検査液37中には、抗SARSCoV-2ヒトモノクローナル抗体結合金コロイド粒子が含まれ、表示部15には、抗SARS-CoV-2マウスモノクローナル抗体が固相化されてなる。したがって、検査器1は、被験者の唾液が、検査液37中の抗SARSCoV-2ヒトモノクローナル抗体結合金コロイド粒子と反応して複合体を形成し、当該複合体が、表示部15に固相化された抗SARS-CoV-2マウスモノクローナル抗体に捕捉され、表示部15にライン15aを形成する。
【0021】
これにより、検査器1は、被験者が特定の感染症に感染している場合、第1の箇所にライン15aを表示することで、被験者が陽性であることを表示することができ、被験者が特定の感染症には感染していない場合、第2の箇所(例えば第1の箇所より長手方向内側の位置)にライン15aを表示することで、被験者が陰性であることを表示することができる。
【0022】
以上説明したように、本発明に係る検査機器では、被検体の唾液を採取する棒状の唾液採取ユニット3と、唾液採取ユニット3の少なくとも一部が収納される棒状の保護キャップ5と、保護キャップ5の少なくとも一部が収納される検査タンクユニット7と、を備え、唾液採取ユニット3は、一端に被検体の唾液を保持する唾液保持部13と、唾液保持部13の先端に形成される凸部13aと、を有し、保護キャップ5は、唾液保持部13及び凸部13aを収容する筒部5aと、筒部5aから径方向外側に延びるストッパ部21と、を有し、検査タンクユニット7は、唾液保持部13及び凸部13a並びに保護キャップ5が通過可能な挿入部33と、挿入部33の一端に形成される開口端33aと、開口端33aとは反対側の端部に形成され、検査液37を貯留するタンク部31と、タンク部31と挿入部33とを仕切る薄膜35と、を有し、保護キャップ5のストッパ部21は、少なくとも一部が検査タンクユニット7の開口端33aの内径よりも延び、該開口端33aに当接する際に検査タンクユニット7の薄膜35と保護キャップ5とが所定距離離間する位置に形成されており、検査タンクユニット7の薄膜35は、唾液採取ユニット3の凸部13aを押圧されると破断可能に形成されており、唾液保持部13は、検査タンクユニット7の薄膜35を超えてタンク部31に挿入可能な位置に配設されてなる。
【0023】
従って、保護キャップ5のストッパ部21の少なくとも一部が検査タンクユニット7の開口端33aの内径よりも延びてなるため、保護キャップ5が検査タンクユニット7の薄膜35と接触することを防止することができる。また、検査タンクユニット7の薄膜35が唾液採取ユニット3の凸部13aを押圧されると破断可能に形成されたので、タンク部31に貯留される検査液37が漏れることを防止しつつ、唾液採取ユニット3の凸部13aを押圧することで簡単に開封することができる。またさらに、唾液保持部13が検査タンクユニット7の薄膜35を超えてタンク部31に挿入可能な位置に配設されたので、検査タンクユニット7の薄膜35を破断しつつ、唾液保持部13をタンク部31に貯留される検査液37に浸すことができる。
【0024】
そして、唾液採取ユニット3及び検査タンクユニット7の少なくとも一部には、長手方向から視て多角形となるよう形成されてなるので、唾液採取ユニット3及び検査タンクユニット7が長手方向を軸にして周方向に転がることを抑制することができる。
以上で本発明に係る検査機器の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0025】
例えば、本実施形態では、薄膜35をアルミ製の薄膜としたが、タンク部31と同様に樹脂製の部材で形成してもよく、タンク部31から延びて形成されるようにしてもよい。
【0026】
また、本実施形態では、唾液保持部13を先端部から突出する凸部13aとしたが、円柱を径方向に対して所定角度傾斜するような面で切断した形状に形成してもよく、薄膜35を貫いて破断させることができればよい。
【0027】
また、本実施形態では、四角柱部11bやタンク部31が長手方向から視て四角形となるよう形成されているが、少なくとも一部が四角形に形成されていればよく、多角形であれば三角形等であってもよい。
【0028】
また、本実施形態では、検査液37を毛細管現象により吸い上げることが可能な流路11bを中空管部11における先細部11aの内部に形成するようにしたが、先細部11aがタンク部31に挿入されることによりタンク部31内の検査液37が貯留可能な空間が減少し、該検査液37が中空管部11に流入するような構成としてもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 検査器
3 唾液採取ユニット
5 保護キャップ
5a 筒部
7 検査タンクユニット
13 唾液保持部
13a 凸部
21 ストッパ部
31 タンク部
33 挿入部
3a 開口端
35 薄膜
37 検査液