(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189664
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】圧電水晶振動板、共振器および振動器
(51)【国際特許分類】
H03H 9/19 20060101AFI20221215BHJP
【FI】
H03H9/19 E
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021117388
(22)【出願日】2021-07-15
(31)【優先権主張番号】202110655132.8
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】516360775
【氏名又は名称】成都泰美克晶体技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHENGDU TIMEMAKER CRYSTAL TECHNOLOGY CO., LTD
【住所又は居所原語表記】No. 103, Tianying Road, Hi-tech Zone(West Park)Chengdu, Sichuan 610041, China
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 輝
(72)【発明者】
【氏名】叶 竹之
(72)【発明者】
【氏名】龍 利
【テーマコード(参考)】
5J108
【Fターム(参考)】
5J108AA01
5J108BB02
5J108CC04
5J108CC09
5J108CC11
5J108CC12
5J108DD02
5J108EE03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】製品の温度-周波数特性及び製品の室温パラメーター抵抗要件を効果的に改善する圧電水晶振動板を採用する圧電水晶共振器及び水晶振動器を提供する。
【解決手段】振動板本体1は、接着剤4の塗布側に近い振動板本体の表面に溝5や切り口を設ける。接着剤塗布側に近いBI-MESA構造の結晶表面に溝5または切り口を設置することにより、寄生振動の干渉を抑制する同時に、接着剤塗布領域の応力が電極領域に及ぼす力-周波数の影響を効果的に改善する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電水晶振動板であって、振動板本体を備え、接着剤塗布側に近い前記振動板本体の表面に溝が設けられていることを特徴とする圧電水晶振動板。
【請求項2】
前記振動板本体の上面と下面の両方に溝が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の圧電水晶振動板。
【請求項3】
前記溝の幅は振動板本体の厚さの2%~50%、前記溝の深さは振動板本体の厚さの2%~45%であることを特徴とする請求項1に記載の圧電水晶振動板。
【請求項4】
前記溝の幅は振動板本体の厚さの2%~25%、前記溝の深さは振動板本体の厚さの2%~25%であることを特徴とする請求項3に記載の圧電水晶振動板。
【請求項5】
前記溝の幅は振動板本体の厚さの43%、前記溝の深さは振動板本体の厚さの43%であることを特徴とする請求項3に記載の圧電水晶振動板。
【請求項6】
前記溝の形状は弧状の溝、長方形の溝、台形の溝または三角形の溝であることを特徴とする請求項1に記載の圧電水晶振動板。
【請求項7】
前記溝は貫通溝であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の圧電水晶振動板。
【請求項8】
前記の溝が切り口で置き換えられ、切り口が2つあり、それぞれ振動板本体の両側に位置することを特徴とする請求項1に記載の圧電水晶振動板。
【請求項9】
水晶共振器であって、請求項1~8のいずれか一項に記載の圧電水晶振動板を含むことを特徴とする水晶共振器。
【請求項10】
水晶振動器であって、請求項1~8のいずれか一項に記載の圧電水晶振動板を含むことを特徴とする水晶振動器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電水晶振動板に関し、具体的には圧電水晶振動板、共振器と振動器に関する。
【背景技術】
【0002】
5G通信の発達に伴い、ウェアラブルデバイスとモバイル端末は、ますます薄く軽量化しており、必然的に内部デバイスのサイズも小さくする必要がある、水晶共振器と振動器は、通信のコアコンポーネントとして例外ではない。ATカット水晶共振器または振動器のコアコンポーネントは、圧電水晶振動板であり、この振動板は、スパッタコーティングした後、導電性接着剤でセラミックベースに固定し、そして蓋をかけて真空包装する。水晶共振器のサイズが徐々に小さくなると、その内部の振動板のサイズも小さくなり、導電性接着剤のサイズが小型振動板の振動に対する影響がますます明らかになる。接着点のサイズは振動板の固定点と電極の間の距離を反映する、接着点が大きすぎると、固定点と電極の間の距離が短くなることを意味する、振動板が振動すると、振動波は固定接着点に反射され、波の反射は振動板のエネトラップ効果に影響を与え、寄生振動を生成する一方で、外部温度が上昇または下降すると、接着点の膨脹または収縮により、振動板に力-周波数効果が生じ、振動板のインピーダンスが大きすぎるようになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、導電性接着剤で固定された境界条件によって引き起こされる寄生振動干渉および全体的共振インピーダンスが高すぎる技術的問題を解決するための圧電水晶振動板、共振器と振動器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の技術的解決策を提供する。
本発明により提供される圧電水晶振動板は、振動板本体を備え、接着剤塗布側に近い前記振動板本体の表面に溝が設けられる。
【0005】
任意にまたは好ましくは、前記振動板本体の上面と下面の両方に溝が設けられる。
【0006】
任意にまたは好ましくは、前記溝の幅は振動板本体の厚さの2%~50%、前記溝の深さは振動板本体の厚さの2%~45%である。
【0007】
任意にまたは好ましくは、前記溝の幅は振動板本体の厚さの2%~25%、前記溝の深さは振動板本体の厚さの2%~25%である。
【0008】
任意にまたは好ましくは、前記溝の幅は振動板本体の厚さの43%、前記溝の深さは振動板本体の厚さの43%である。
【0009】
任意にまたは好ましくは、前記の溝の形状は弧状の溝、長方形の溝、台形の溝または三角形の溝である。
【0010】
任意にまたは好ましくは、前記溝は貫通溝である。
【0011】
任意にまたは好ましくは、前記の溝が切り口で置き換えられ、切り口が2つあり、それぞれ振動板本体の両側に位置する。
【0012】
任意にまたは好ましくは、前記切り口の幅は振動板本体の厚さの2%~50%である。
【0013】
本発明により提供される水晶共振器であって、前記の圧電水晶振動板を備える。
【0014】
本発明により提供される水晶振動器であって、前記の圧電水晶振動板を備える。
【0015】
上記の技術的解決策により、本発明の実施形態は、少なくとも以下の技術的効果を生み出すことができる。
(1)本発明により提供される圧電水晶振動板は、振動板本体の表面の接着剤に近い側に溝が設けられる、溝が深いほど、エッジのより薄い振動板のようにX方向のAT厚さのせん断振動は、より深い溝に当たり、溝のエッジにより高い周波数領域が発生したことを意味し、階段と電極領域の周波数は、より高い周波数範囲に伝達できない非常に低い周波数と比較して、エネルギーを階段と電極領域に集中することができるため、寄生振動を抑制し、主振動が強くなる。また、溝構造により、XZ方向の表面せん断振動の干渉をよく抑制する同時に、溝の切断は振動板の長さが短くなり、XX方向の縦振動周波数が高くなることを意味するので、長手方向の伸縮振動が抑制され、振動板のXY方向の厚みせん断振動のエネルギーが大きくなる。本発明により提供される圧電水晶振動板は、BI-MESA構造の結晶表面の接着剤に近い領域に溝を設置する方法は、寄生振動の干渉を抑制する一方で、接着剤塗布領域の応力が電極領域に及ぼす力-周波数の影響を効果的に改善することができる。この溝の幅と深さは、寄生の抑制効果と主振動にも影響を与える。
【0016】
(2)本発明により提供される圧電水晶振動板は、振動板本体表面の接着剤に近い側に切り口が設けられる、切り口があるため、エッジのより薄い振動板のようにX方向のAT厚さのせん断振動は切り口に当たり、切り口のエッジにより高い周波数が発生したことを意味し、階段と電極領域の周波数は、より高い周波数範囲に伝達できない非常に低い周波数と比較して、エネルギーを階段と電極領域に集中することができるため、寄生振動を抑制し、主振動が強くなる。また、切り口構造により、XZ方向の表面せん断振動の干渉をよく抑制する同時に、切り口の切断は振動板の長さが短くなり、XX方向の縦振動周波数が高くなることを意味するので、長手方向の引張振動をよく抑制し、振動板のXY方向の厚みせん断振動のエネルギーが大きくなる。本発明により提供される圧電水晶振動板は、BI-MESA構造の結晶表面の接着剤領域に近いに切り口を設置する方法は、寄生振動の干渉を抑制する一方で、接着剤塗布領域の応力が電極領域に及ぼす力-周波数の影響を効果的に改善することができる。この切り口の幅は、寄生の抑制効果と主振動にも影響を与える。
【0017】
(3)本発明により提供される圧電水晶共振器および水晶振動器は、本発明の圧電水晶振動板を採用しているので、製品の温度-周波数特性および製品の室温パラメーター抵抗要件を効果的に改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は本発明の比較例1の構造の概略図である。
【
図2】
図2は本発明の比較例2の構造の概略図である。
【
図3】
図3は本発明の実施例および比較例における応力およびひずみ節点値の経路採集概略図である。
【
図4】
図4は比較例1の振動板の応力解析図である。
【
図5】
図5は比較例2の振動板の応力解析図である。
【
図6】
図6は比較例1の振動板のひずみ解析図である。
【
図7】
図7は比較例2の振動板のひずみ解析図である。
【
図8】
図8は本発明実施例1の構造の概略図である。
【
図9】
図9は本発明実施例2の構造の概略図である。
【
図13】
図13は本発明実施例1の振動板の変位分布図である。
【
図14】
図14は本発明実施例2の振動板の変位分布図である。
【
図15】
図15は本発明実施例3の振動板の変位分布図である。
【
図16】
図16は本発明実施例1の振動板の応力分布図である。
【
図17】
図17は本発明実施例2の振動板の応力分布図である。
【
図18】
図18は本発明実施例3の振動板の応力分布図である。
【
図19】
図19は本発明実施例1の振動板のひずみ分布図である。
【
図20】
図20は本発明実施例2の振動板のひずみ分布図である。
【
図21】
図21は本発明実施例3の振動板のひずみ分布図である。
【
図22】
図22は比較例1の振動板のエネルギー分布図である。
【
図23】
図23は比較例2の振動板のエネルギー分布図である。
【
図24】
図24は本発明実施例1の振動板のエネルギー分布図である。
【
図25】
図25は本発明実施例2の振動板のエネルギー分布図である。
【
図26】
図26は本発明実施例3の振動板のエネルギー分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
一、実施例:
本発明は圧電水晶振動板を提供し、振動板本体1を備え、前記振動板本体1の表面の接着剤4に近い側に溝5が設けられる。
【0020】
オプションの実施形態であり、前記振動板本体1の上面と下面の両方に溝5が設けられる。
【0021】
オプションの実施形態として、前記溝5の幅は振動板本体1の厚さの2%~50%、前記溝5の深さは振動板本体1の厚さの2%~45%である。
【0022】
オプションの実施形態として、前記溝5の幅は振動板本体1の厚さの43%、前記溝の深さは振動板本体1の厚さの43%である。
【0023】
オプションの実施形態として、前記溝5の形状は弧状の溝、長方形の溝、台形の溝または三角形の溝である。
【0024】
オプションの実施形態として、前記溝5は貫通溝である。
【0025】
オプションの実施形態として、前記溝5は切り口6に置き換える。
【0026】
オプションの実施形態として、前記切り口6は2つあり、それぞれ振動板本体1の両側に位置する。
【0027】
オプションの実施形態として、前記切り口6の幅は振動板本体1の厚さの2%~50%である。
【0028】
次の振動板はSMD1612仕様の26MHZのbi-MESA構造の結晶共振器を選択し、その電極2のサイズは0.065*0.055mm、最も内側の長方形は電極2、中間長方形は階段3である。実施例1~6において、幅と深さが異なる溝5が設けられる、実施例7において、切り口6が設けられる、同時に、溝5と切り口6がないのは比較例である、振動板のパラメーターの詳細(単位はmm)を表1に示す。
【表1】
【0029】
比較例1~2の振動板の構造概略図を
図1と
図2に示す。比較例1と比較例2は、接着剤4のサイズが異なる。
【0030】
実施例1~3の振動板では、振動板本体1の上面と下面の接着剤4に近い側に溝5が設けられ、前記溝5は貫通溝かつ弧状溝であり、溝の寸法が異なる、寸法の詳細を表1に示す、その構造概略図をそれぞれ
図8~10と
図28に示す。
【0031】
実施例4の振動板では、溝5が貫通溝かつ長方形の溝であり、寸法の詳細を表1に示す、その構造概略図を
図29に示す。
【0032】
実施例5の振動板では、溝5が貫通溝かつ三角形の溝であり、寸法の詳細を表1に示す、その構造概略図を
図31に示す。
【0033】
実施例6の振動板では、溝5が貫通溝かつ台形の溝であり(溝の幅a1は0.025mm、溝の幅a2は0.015mm)、寸法の詳細を表1に示す、その構造概略図を
図30に示す。
【0034】
実施例7の振動板では、振動板本体1の表面の接着剤4に近い側に切り口6が設けられ、切り口6は2つあり、それぞれ振動板本体1の両側に位置する、その構造概略図を
図27に示す。
【0035】
二、実施例:
1、比較例1~2および実施例1~7の振動板を例として有限要素計算ソフトウェアで分析し、分析結果を表3に示す。
【0036】
1)電界励起による振動モード
比較例1~2と実施例1~3の振動板に対して電界(100uw)励起を行い、振動モードの変位特性を得る。
【0037】
2つの接着剤4サイズが異なる振動板の電界励起による振動モードを利用して接着剤塗布槽のサイズの高調波応答分析を行い、励起作用下の振動板モード変位特性図を
図11~15に示す。
【0038】
比較例1では、振動板は、接着剤4(直径190mmの円)を塗布することにより、電界励起の作用下で、接着剤4まで0.95mm(実際の接着点と振動板の接続部が接着点の1/4を占める部分)のところにエネルギー集中による変位ジャンプが発生する。比較例2では、接着点のサイズが小さいほど接着剤と電極の間の距離が大きく、接着点が電極に及ぼす力-周波数の影響が小さく、振動エネルギーは電極2領域に集中し、より良いエネトラップ効果を実現することができるため、寄生干渉をよりよく抑制し、振動インピーダンスを低減する。
【0039】
図11~15に示すように、図のX方向の線は、ATカット水晶共振器の主振動方向を表しており、図からわかるように、この線は、放物線の曲線に似ている。これは、その主振動が電極領域と階段3領域にあり、電極領域と階段3領域外のエネルギーが急速に減衰することを意味する、階段3と電極領域の周波数は階段3領域外の周波数よりも低いため、低周波は高周波領域に伝播することができないようにこの領域に集中されてエネトラップ効果を実現する。上記の5つのデーターセットを比較し、放物線の傾きを計算してエネルギー減衰を測定する、その比較結果を表2に示す。
【表2】
【0040】
階段3のエッジ減衰が速い場合は、より良いエネトラップ効果を得たことを意味する。表2のデータから、大きい接着剤4よりも小さい接着剤4の方が振動板のエネトラップ効果が高く、溝5が設けられていないものよりも溝5が設けられたものの方がエネトラップ効果が良好であり、溝5の幅は、溝5の深さよりも影響が明らかである。また、
図11~
図14では、横座標0.21mmのZ方向の水平振動でマークされた位置が階段3のエッジであり、振動板の階段3のエッジから振動板のエッジまでのエネルギーが非常に滑らかに減衰され、エッジ振動の干渉を減らしているとわかる。エネトラップ効果が悪い
図11からわかるように(溝5がなく、接着剤4のサイズがより大きい比較例1の振動板)、階段3を離れた後にジャンプ現象が発生している。これは接着剤4に応力が集中することに起因する変位ジャンプである。
【0041】
比較例1~2および実施例1~3の振動モード変位特性の比較分析:
第1に、溝5を開いた後に溝5での電極2領域の振動は接着剤4領域に伝達することができない。その理由は、ATの水晶振動が厚みせん断振動であり、その波の伝播方向が厚み方向で、振動方向はX方向に沿ってせん断振動を行うことであるが、溝5を開いた後、その波はX方向に沿って溝5の位置まで振動し、伝達振動エネルギーが減少したことである。
第2に、接着剤4で発生した応力集中は、溝5での応力集中となる。その理由は、溝5は接着剤4へのX方向の結晶の伝達を弱める一方で、小さな溝5はエネルギー集中につながり、接着剤の力-周波数効果を弱めるのに役立つと同時に、この溝5は、ばねの柔軟な構造と似ており、その振動領域の弾性を改善し、結晶振動の全体的なインピーダンスを低減するのに役立つ。
【0042】
2)応力とひずみの分析
振動板の中心から振動板の長さに沿って経路(
図3に示すように、振動板の幅はZ方向、振動板の長さ方向はX方向、直線aは経路)を描き、比較例1~2および実施例1~3の振動板の振動モード変位分布曲線の経路を採集し、応力とひずみの変化を分析する、その結果を
図4~7と
図16~21に示す。
【0043】
図4~5から明らかにわかるように、接着剤4が大きい場合、比較例1の振動板のXZ方向の応力とひずみは、比較例2の振動板より大幅に大きい。結晶共振器はATカット水晶振動板を使用しており、このような振動板の振動はXY方向の厚みせん断振動であるため、XZ方向の表面せん断振動は寄生振動であり、主振動の厚みせん断に対する寄生干渉であり、より良い抑制効果があり、エネルギーの集中に役立つ。エネルギー保存法則によると、寄生振動のエネルギーが小さいほど、主振動のエネルギーが大きくなり、全体的な共振インピーダンスが低くなる。
【0044】
図4~7および
図16~21から、溝5を開いた振動板は溝5のない振動板よりもXZ方向の補助振動をより明らかに抑制できることが分かる。これは、溝5を開くことにより、接着剤の塗布によって発生する応力が電極2領域の振動に及ぼす影響を低減できることを示している。
図16~21から、異なるサイズの溝5幅と溝5の深さが全体に振動に与える影響を観察することができる。
図16~17と
図19~20に示すように、溝の幅が0.015mmから0.025mmになると全体の応力とひずみが変化する。つまり寄生振動を効果的に抑制するだけでなく、主振動にも大きな影響を与える。これは、可撓性溝5の切断が振動板の長さを短くすることと同等であるため、主振動と寄生振動の両方に影響を与えることである。
図17~18と
図20~21に示すように、同じ溝5の幅と異なる溝5の深さの場合、寄生振動の振動幅はあまり変化しないが、主振動への影響がかなり異なる。これは、溝5が深いほど、AT厚みせん断振動のX方向のせん断振動がエッジが薄い振動板のようにより深い溝5にあたり、溝5のエッジに周波数がより高い領域が発生したことを意味することである。階段3と電極2領域の周波数は、より高い周波数範囲に伝達できない非常に低い周波数と比較して、エネルギーを階段3と電極2領域に集中することができ、主振動が強くなる。
【0045】
3)比較例と実施例1~3の振動板をエネルギーの観点から分析する。
結晶振動過程は運動エネルギーと位置エネルギーの変換であり、本発明は対応する応力とひずみを計算した、応力とひずみを乗算することでひずみエネルギー、つまり位置エネルギーを得られる、
図22~26に示すように、エネルギーの大きさを比較することで異なる振動方向の振動の抑制効果を観察する。
【0046】
図22~23から、比較例1と比較例2の振動板は接着剤4の影響を受けていることがわかる。接着剤が大きいほど、XZ方向の表面せん断振動の影響が大きくなる。同時に、振動板の長さおよび接着剤4の影響により、XX方向の縦振動が抑制できなくなり、寄生振動の存在により割り当てた一部のエネルギーが主振動エネルギー減少の原因となる。
【0047】
図24~26から、溝5構造によりXZ方向の表面せん断振動の干渉をよりよく抑制していることがわかる。同時に、溝5の切断は、振動板の長さが短くなることを意味するので、XX方向の縦振動周波数が高くなり、長手方向の引張振動をよりよく抑制できる。この時、最適の振動実施例3の振動板のXY方向の厚みせん断振動エネルギーは、比較例1の振動板と比較して、約40倍増加している。
【0048】
上記の比較実験により、接着剤4領域に近いBI-MESA構造の結晶表面に溝を開く方法は、寄生振動の干渉を抑制する一方で、接着剤塗布領域の応力が電極領域に及ぼす力-周波数の影響を効果的に改善することができる。この溝5の幅と深さは、寄生の抑制効果と主振動にも影響を与えると同時に、デバイス梱包後に機械的強度を確保するには、合理的な溝5の幅と深さを考慮する必要がある。
【0049】
上記1の方法(電界励起による振動モード、応力とひずみ分析、エネルギー観点からの分析)を使用して実施例4~7の振動板を分析し、分析結果を表3に示す。
【表3】
【0050】
表3からわかるように、比較例1に基づいて異なるサイズと形状の溝構造を開け、または切り口6構造を設置して実施例1~7の構造を形成し、実施例1~7で溝構造を開け、または切り口6構造を設置した後、ATカット結晶の主振動方向のXY方向の厚みせん断振動を効果的に改善し、その他の方向の寄生振動を効果的に抑制できることがわかる。例えば、X、Y、Z方向の伸縮振動およびYZ曲げ振動とXZ方向の表面せん断振動では、実施例3と実施例4で溝5構造を開いた後、ATカット結晶主振動方向XY方向の厚みせん断振動が明らかに改善される。
【符号の説明】
【0051】
1、振動板本体、2、電極、3、階段、4接着剤、5、溝、6切り口
【手続補正書】
【提出日】2022-12-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電水晶振動板であって、振動板本体を備え、接着剤塗布側に近い前記振動板本体の表面に溝が設けられており、
前記溝の前記表面における溝幅aと前記溝の溝深さbとは、a/bが1以上5/3以下であることを特徴とする圧電水晶振動板。
【請求項2】
前記振動板本体の上面と下面の両方に前記溝が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の圧電水晶振動板。
【請求項3】
前記溝の溝幅aは前記振動板本体の厚さの2%~50%、前記溝の溝深さbは前記振動板本体の厚さの2%~45%であることを特徴とする請求項1に記載の圧電水晶振動板。
【請求項4】
前記溝の溝幅aは前記振動板本体の厚さの2%~25%、前記溝の溝深さbは前記振動板本体の厚さの2%~25%であることを特徴とする請求項3に記載の圧電水晶振動板。
【請求項5】
前記溝の溝幅aは前記振動板本体の厚さの43%、前記溝の溝深さbは前記振動板本体の厚さの43%であることを特徴とする請求項3に記載の圧電水晶振動板。
【請求項6】
前記溝は、前記圧電水晶振動板の厚さ方向における断面形状が、弧状、長方形、台形または三角形であることを特徴とする請求項1に記載の圧電水晶振動板。
【請求項7】
前記圧電水晶振動板の短辺方向において、前記溝は貫通していることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の圧電水晶振動板。
【請求項8】
前記の溝が切り口で置き換えられ、切り口が2つあり、それぞれ振動板本体の両側に位置することを特徴とする請求項2に記載の圧電水晶振動板。
【請求項9】
水晶共振器であって、請求項1~8のいずれか一項に記載の圧電水晶振動板を含むことを特徴とする水晶共振器。
【請求項10】
水晶振動器であって、請求項1~8のいずれか一項に記載の圧電水晶振動板を含むことを特徴とする水晶振動器。