(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189682
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】気密端子および同気密端子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01R 9/16 20060101AFI20221215BHJP
H01R 43/20 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
H01R9/16 101
H01R43/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021157319
(22)【出願日】2021-09-28
(31)【優先権主張番号】P 2021097765
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】300078431
【氏名又は名称】ショット日本株式会社
(72)【発明者】
【氏名】前川 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】本田 浩喜
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 明
(72)【発明者】
【氏名】福島 大輔
【テーマコード(参考)】
5E063
5E086
【Fターム(参考)】
5E063HB02
5E063XA05
5E086PP16
5E086PP23
5E086PP25
5E086PP42
5E086QQ06
5E086QQ20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】従来のインサート成形法では難しい絶縁被覆にも対応でき、金属外環の変更にも金型を変更することなく、小ロット生産が可能な絶縁筒付気密端子とその製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも1個の封着孔11を有する金属外環12と、前記金属外環の前記封着孔に挿通したリード13と、前記金属外環と前記リードとを気密に封着する絶縁材14と、前記リードに挿着されて少なくとも端部を前記金属外環に接着した絶縁筒15とを備え、前記絶縁筒は、外周壁に周回溝を1つ以上設けこの周回溝内に弾性材からなるシール材を有するか、または前記絶縁筒の外径部の一部を延伸させて同外径部を周回する突起の何れか一方を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1個の封着孔を有する金属外環と、前記金属外環の前記封着孔に挿通したリードと、前記金属外環と前記リードとを気密に封着する絶縁材と、前記リードに挿着されて少なくとも端部を前記絶縁材ないし前記金属外環と接着層を介して気密に接着したプラスチック製の絶縁筒とを備え、前記絶縁筒は、外周壁に周回溝を1つ以上有し、前記周回溝内に弾性材からなるシール材を有した気密端子。
【請求項2】
前記絶縁筒は、耐熱性かつ耐油/耐冷媒性を有するプラスチック材からなる請求項1に記載の気密端子。
【請求項3】
前記シール材は、耐熱性かつ耐油/耐冷媒性を有するゴム材からなる請求項1または請求項2に記載の気密端子。
【請求項4】
少なくとも1個の封着孔を有する金属外環と、前記金属外環の前記封着孔に挿通したリードと、前記金属外環と前記リードとを気密に封着する絶縁材と、前記リードに挿着されて少なくとも端部を前記絶縁材ないし前記金属外環と接着層を介して気密に接着したゴム製の絶縁筒とを備え、前記絶縁筒は、同絶縁筒の外径を周回する突起を1つ以上有した気密端子。
【請求項5】
前記絶縁筒は、耐熱性かつ耐油/耐冷媒性を有するゴム材からなる請求項4に記載の気密端子。
【請求項6】
(1)先ず封着部品仮組工程において、用意した封着治具の所定位置に封着孔を有した金属外環を配置し、前記封着孔内にリードを挿通するための挿着孔を設けた絶縁材のタブレットを載置し、さらに前記挿着孔にリードを貫通挿着させて置き、この状態を保ったまま前記封着治具上に気密端子の前記金属外環と前記絶縁材と前記リードとからなる封着部品を仮組し、(2)次に封着工程において、所定の封着条件に雰囲気および温度調整した封着炉中に前記封着部品を載せた前記封着治具を通炉させて、前記絶縁材で前記金属外環に前記リードを絶縁封着させた気密端子を得る、(3)封着後の気密端子は、必要に応じてめっき工程において、所望の金属表面にめっき層を施す、(4)封着後の前記気密端子は、さらに接着剤塗布工程において、前記絶縁材ないし前記金属外環の所定表面に接着剤を塗布し、(5)最後に絶縁筒取付工程において、予め用意していたプラスチック製またはゴム製絶縁筒を前記リードに挿着して、前記絶縁筒を前記接着剤の塗布面に合わさるように押し当て、同接着剤を硬化させて前記絶縁筒を前記気密端子に接着させたことを特徴とする気密端子の製造方法。
【請求項7】
前記接着剤の塗布面をリードの一部に拡張した請求項6に記載の気密端子の製造方法。
【請求項8】
前記絶縁筒は、耐熱性かつ耐油/耐冷媒性を有するプラスチック材またはゴム材からなる請求項6または請求項7に記載の気密端子の製造方法。
【請求項9】
前記絶縁筒取付工程の前又は後に、前記絶縁筒の外周壁に設けた周回溝にシール材を取り付ける請求項6ないし請求項8の何れか1つに記載の気密端子の製造方法。
【請求項10】
前記シール材は、耐熱性かつ耐油/耐冷媒性を有するゴム材からなる請求項6ないし請求項9の何れか1つに記載の気密端子の製造方法。
【請求項11】
電気装置を収めた容器体と、前記容器体に設けられ前記容器体を貫通する挿着孔を閉塞して気密に固着された気密端子と、容器体の内部に配置された気密端子に水密に電気接続した前記電気装置の配線ブロックとを備え、前記気密端子は、封着孔を有する金属外環と、前記金属外環の封着孔に挿通したリードと、前記金属外環と前記リードとを気密に封着した絶縁材と、前記リードに挿着されて少なくとも端部を前記絶縁材ないし前記金属外環と接着層を介して気密に接着したプラスチック製の絶縁筒とを有し、前記絶縁筒は、外周壁に周回溝を1つ以上有し、前記周回溝内に弾性材からなるシール材を装着した気密容器。
【請求項12】
前記絶縁筒は、耐熱性かつ耐油/耐冷媒性を有するプラスチック材からなる請求項11に記載の気密容器。
【請求項13】
前記シール材は、耐熱性かつ耐油/耐冷媒性を有するゴム材からなる請求項11または請求項12に記載の気密容器。
【請求項14】
電気装置を収めた容器体と、前記容器体に設けられ前記容器体を貫通する挿着孔を閉塞して気密に固着された気密端子と、容器体の内部に配置された気密端子に水密に電気接続した前記電気装置の配線ブロックとを備え、前記気密端子は、封着孔を有する金属外環と、前記金属外環の封着孔に挿通したリードと、前記金属外環と前記リードとを気密に封着した絶縁材と、前記リードに挿着されて少なくとも端部を前記絶縁材ないし前記金属外環と接着層を介して気密に接着したゴム製の絶縁筒とを備え、前記絶縁筒は、同絶縁筒の外径を周回する突起を1つ以上有した気密容器。
【請求項15】
前記絶縁筒は、耐熱性かつ耐油/耐冷媒性を有するゴム材からなる請求項14に記載の気密容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は気密端子または車載用電動圧縮機に用いる気密端子に関する。
【背景技術】
【0002】
気密端子は、アイレットまたは金属外環の挿通孔にガラス絶縁材を介してリードを気密に封着したもので、気密容器内に収容された電気機器や素子に電流を供給したり、電気機器や素子から信号を外部に導出したりする場合に用いられる。例えば、冷蔵庫やエアコンの圧縮機に用いられる気密端子は、国際公開WO2010/117000号公報(特許文献1)に示されるように、天板部、この天板部の外周端から下方に向かって延びる筒状部、この筒状部の下端から斜め外方に広がったフランジ部、及び天板部から内方側に向かって延びるリード封着孔を形成する3個の小筒部を備えた金属外環が用いられている。そして、この金属外環のリード封着孔にそれぞれ封着用のガラス絶縁材を介して封着されたリードが気密封着される。
【0003】
ところで、ハイブリッド自動車では、エンジンによる環境への影響を軽減するという本来の目的から、自動車が信号などで一時停止する場合にはエンジンが停止する構成となっているものがある。このような場合、エンジンで駆動する圧縮機を用いていると、車が停止する度に空調が止まることになり、夏季や冬季、極寒や極暑の地では特に問題になる。そこで、ハイブリッド自動車や電気自動車では、エンジンで駆動する圧縮機ではなく電動機で駆動する圧縮機、すなわち屋内用エアコンと同様に圧縮機構を電動機とともに気密容器に内蔵した電動機内蔵の圧縮機が採用されている。これらの車載用電動圧縮機は、狭隘なエンジンルームへの設置を考慮して、出来るだけ省スペースかつ小型軽量のものが好ましい。電動機は気密容器の端子取付孔に取付けた気密端子を通じて駆動されるので、用いられる気密端子も、例えば、中国実用新案登録CN206098769U号公報(特許文献2)に示されるように、省スペースに有利なように直列一線状にピン配置されたものが多い。このような車載電動圧縮機用気密端子において、特開2020-136061号公報(特許文献3)に示されるように容器内側の金属外環とアウタリードとに耐冷媒性/耐油性ゴムの絶縁被覆を設けたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO2010/117000号公報
【特許文献2】中国実用新案登録CN206098769U号公報
【特許文献3】特開2020-136061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記の車載電動圧縮機用気密端子は、容器内側の金属外環とアウタリードとに耐冷媒性/耐油性ゴムの絶縁被覆を設けている。前記ゴム製絶縁被覆は、気密端子にインサート成形で一括成形されている。しかしながら、インサート成形は気密端子の金属外環部分の形状が変われば、その都度、金属外環に合わせて金型を用意しなければならない。また、インサート成形では、離型性などの要因により絶縁被覆の厚みが薄いものに破れや剥がれ等が発生して歩留まりが悪くなるときがあり、薄厚部分を有する形態には必ずしも好適ではなかった。
【0006】
本発明は、従来のインサート成形法では離型することが難しい絶縁被覆の形態にも対応でき、金属外環の形状変更にも専用金型を用意することなく、小ロット生産も可能な絶縁筒付き気密端子および前記気密端子の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に関わる第一の形態の気密端子は、封着孔を有した金属外環と、この金属外環の封着孔に挿通したリードと、前記金属外環とリードとを気密に封着する絶縁材と、リードに挿着されて少なくとも端部を絶縁材ないし金属外環と接着層を介して気密に接着した耐熱性かつ耐油/耐冷媒性を有するプラスチック製の絶縁筒とを備え、前記絶縁筒は、外周壁に周回溝を1つ以上有し、この周回溝内に耐熱性かつ耐油/耐冷媒性を有する弾性材からなるシール材を有する。金属外環は、さらに必要に応じて螺旋止めのため設けた通孔を設けてもよい。絶縁筒はゴム製としてもよい。
【0008】
本発明に関わる第二の形態の気密端子は、封着孔を有した金属外環と、この金属外環の封着孔に挿通したリードと、前記金属外環とリードとを気密に封着する絶縁材と、リードに挿着されて少なくとも端部を絶縁材ないし金属外環と接着層を介して気密に接着した耐熱性かつ耐油/耐冷媒性を有するゴム製の絶縁筒とを備え、前記絶縁筒は、同絶縁筒の外径を周回する突起を1つ以上有する。絶縁筒は、絶縁筒自身でシール機能を具備するゴム製の成形部材からなる。絶縁筒は、同部材のみでシール機能を有するので絶縁筒の外径部にシール用の突起を設けるのみでよい。この突起は、複数設けてもよい。金属外環は、さらに必要に応じて螺旋止め用の通孔を設けてもよい。
【0009】
本発明に関わる気密端子の製造方法は、(1)先ず封着部品仮組工程において、用意した封着治具の所定位置に封着孔を有した金属外環を配置し、前記封着孔内にリードを挿通するための挿着孔を設けた絶縁材のタブレットを載置し、さらに前記挿着孔にリードを貫通挿着させて置き、この状態を保ったまま封着治具上に気密端子の金属外環と絶縁材とリードとからなる封着部品を仮組する。(2)次に封着工程において、所定の封着条件に雰囲気および温度調整した封着炉中に封着部品を載せた封着治具を通炉させて、絶縁材で金属外環にリードを絶縁封着させた気密端子を得る。(3)封着後の気密端子は、必要に応じて設けられためっき工程において、所望の金属表面にめっき層を施してもよい。(4)封着後の気密端子は、さらに接着剤塗布工程において、絶縁材ないし金属外環の所定表面に接着剤を塗布する。前記接着剤の塗布は必要に応じてリードの一部に拡張してもよい。(5)最後に絶縁筒取付工程において、予め用意していた耐熱性かつ耐油/耐冷媒性を有するプラスチックまたはゴム製絶縁筒をリードに挿着して、絶縁筒を前記接着剤の塗布面に合わさるように押し当て、同接着剤を硬化させて絶縁筒を気密端子に接着させる。前記絶縁筒は、外径部に設けた周溝内に耐熱性かつ耐油/耐冷媒性を有する弾性材のシール材か、または前記絶縁筒の外径部の一部を延伸させて同外径部を周回する突起か、何れか一方を有する。製造方法により製造された本発明の気密端子は、その後電気装置を収めた気密容器と螺旋締結などで気密固定される。その際、必要に応じて気密容器と気密端子の金属外環との間にガスケットを挟んで固定してもよい。
【0010】
本発明に関わる気密容器は、上述の気密端子を備えた気密容器であって、電動機などの電気装置を収めた容器体と、この容器体を貫通する挿着孔を閉塞して気密に固着された気密端子と、容器体の内部に配置された気密端子のリードと水密に電気接続した前記電気装置の配線ブロック(コネクタブロックとも言う)とを備え、前記気密端子は、封着孔を有する金属外環と、この金属外環の封着孔に挿通したリードと、前記金属外環とリードとを気密に封着した絶縁材と、リードに挿着されて少なくとも端部を絶縁材ないし金属外環に接着された耐熱性かつ耐油/耐冷媒性を有するプラスチック製またはゴム製の絶縁筒とを有し、前記絶縁筒は、その外周壁に周回溝を1つ以上有し、この周回溝内に耐熱性かつ耐油/耐冷媒性を有する弾性材からなるシール材を装着した絶縁筒か、または前記絶縁筒の外径部の一部を延伸させて同外径部を周回する突起を1つ以上有した絶縁筒か、何れか一方からなる。金属外環は、さらに必要に応じて容器体に螺旋止めするのために設けた通孔を設けてもよい。前記通孔は、本発明の気密端子を電気装置の容器体に螺旋止め等の手段で締め付けて気密に固定するため設けられるものであり、気密端子の金属外環が容器体の器壁に固着できれば、この通孔に替えて他の形態、例えば気密端子の金属外環が挿着孔から抜け落ちないように、少なくとも金属外環の外周縁辺および挿着孔の外周縁辺を額縁状に覆って、容器体に気密端子を挟み込んで固定する枠体などの押さえ金を採用してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本開示の発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、次のとおりである。本開示の一実施形態によれば、金属外環の形状変更にも金型を変更することなく、小ロット生産が可能な絶縁筒付き気密端子を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る気密端子10を示し、(a)は平面図を、(b)は(a)のD-D線で切断した正面部分断面図を、(c)は下面図を、(d)は側面図を示す。
【
図2】本発明に係る気密端子20を示し、(a)は平面図を、(b)は(a)のD-D線で切断した正面部分断面図を、(c)は下面図を、(d)は側面図を示す。
【
図3】本発明に係る気密端子の製造方法のフロー図である。
【
図4】本発明に係る気密端子の気密容器への取付け状態を示し、(a)は電気装置の配線ブロックを外して気密容器の内側から見た平面図を、(b)は気密容器正面の部分断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に関わる気密端子10は、
図1に示すように、封着孔11を有した金属外環12と、金属外環12の封着孔11に挿通したリード13と、金属外環12とリード13とを気密に封着するガラスの絶縁材14と、リード13に挿着されて少なくとも端部を絶縁材14ないし金属外環12と接着層100を介して気密接着したプラスチック製の絶縁筒15とを備え、絶縁筒15は、外周壁に周回溝16を1つ以上有し、周回溝16内に耐熱性かつ耐油/耐冷媒性を有する弾性材からなるシール材17を有する。絶縁筒15は、耐熱性かつ耐油/耐冷媒性を有するPBT(ポリブチレンテレフタレート)、PPS(ポリフェニレンスルフィド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)などのスーパーエンジニアレングプラスチックで成形された成形部材からなる。金属外環12は、さらに必要に応じて螺旋止め用の通孔18を設けてもよい。絶縁筒15は、金属外環12とリード13との間を絶縁する絶縁部の沿面距離を伸ばしかつシール材17の取付基部を形成する。絶縁筒15を構成するプラスチック材料は、体積抵抗率が1×10
13Ω・cm以上のものが好適である。絶縁筒15とシール材17とを異なる材料で構成することで、絶縁筒15に求められる構造耐力および電気絶縁性を備えた材料と、シール材17に求められる弾性性能を備えた材料とを複合して適用することができ、これまでトレード・オフとなっていた絶縁被覆の構造耐力および電気絶縁性とシール性を向上させることができ、その変更や調整も格段に容易となる。例えば、高温の冷媒中で構造耐力を保ちながらシールの圧縮永久ひずみを小さく抑えて、気密容器に配置された水密コネクタブロックに対して長期にわたって安定したシール性を保持することができる。絶縁筒15は金属外環12の形状によらず共通利用ができるので、インサート成形のように金属外環の形状変化に合わせてその都度金型を用意する必要が無くなる。また、従来のインサート成形において課題であった周回溝16など厚さが薄い部分の成形歩留まりについては、プラスチック製絶縁筒15のみを別途成形しておき、これを気密端子の組立工程で後付けすることで解決できる。絶縁筒15はプラスチック単体成形であるため、成形/離型の際の気密端子との相互作用が無くなり歩留まりが向上する。
【0014】
本発明に関わる気密端子20は、
図2に示すように、封着孔21を有した金属外環22と、金属外環22の封着孔21に挿通したリード23と、金属外環22とリード23とを気密に封着するガラスの絶縁材24と、リード23に挿着されて少なくとも端部を絶縁材24ないし金属外環22と接着層200を介して気密接着したゴム製の絶縁筒25とを備え、絶縁筒25は、外周壁の外径を周回する突起27を1つ以上有する。絶縁筒25は、絶縁筒自身でシール機能を具備するHNBR(水素化ニトリルゴム)、EPDM(エチレン‐プロピレン‐ジエンゴム)などの耐熱性かつ耐油/耐冷媒性を有するゴム製の成形部材からなる。絶縁筒25は、同部材のみでシール機能を有するので絶縁筒25の外径部にシール用の突起27を設けるのみでもよい。この鉢巻状の突起27は、複数設けてもよい。金属外環22は、さらに必要に応じて螺旋止め用の通孔28を設ける。絶縁筒25は、金属外環22とリード23との間を絶縁する絶縁部の沿面距離を伸ばす機有する。絶縁筒25を構成するゴム材料は、体積抵抗率が1×10
13Ω・cm以上のものが好適である。絶縁筒25は金属外環22の形状によらず共通利用ができるので、インサート成形のように金属外環の形状変化に合わせてその都度金型を用意する必要が無くなる。絶縁筒25はゴムの単体成形であるため、成形/離型の際の気密端子との相互作用が無くなり歩留まりが向上する。
【0015】
本発明の気密端子のリードは、その表面に所望のめっき被覆を施すことができる。また、リードおよび金属外環は、気密端子に利用可能な金属材であれば何れの材料を用いてもよい、例えばFe-Cr合金に限らず、Fe-Ni合金、炭素鋼、銅合金、アルミニウム合金等に変更してもよい。同様に実施例に記載の絶縁材は、リードと金属外環とを電気絶縁および気密封着できればよく、ソーダバリウムガラスに限らず任意のガラス材を用いることができる。本発明の絶縁材は、必要ならば絶縁材の一部を互いに異なるガラス材で形成してもよく、また、さらに必要ならばガラス材の一部または全部をエポキシ樹脂等の樹脂材に替えてもよい。
【0016】
本発明に関わる気密端子の製造方法30は、
図3に示すように、(1)先ず封着部品仮組工程31において、用意した封着治具の所定位置に封着孔を有した金属外環を配置し、前記封着孔内にリードを挿通するための挿着孔を設けたガラス絶縁材のタブレットを載置し、さらに前記挿着孔にリードを貫通挿着させて置き、この状態を保ったまま封着治具上に気密端子の金属外環と絶縁材とリードとを仮組する。(2)次に封着工程32において、所定の封着条件に雰囲気および温度調整した封着炉中に封着部品を載せた封着治具を通炉させて、絶縁材で金属外環にリードを絶縁封着させる。(3)封着後の気密端子は、必要に応じて設けられためっき工程33において、所望の金属表面にめっき層を施してもよい。(4)封着後の気密端子は、さらに接着剤塗布工程34において、絶縁材ないし金属外環の所定表面に接着剤を塗布する。前記接着剤の塗布は必要に応じてリードの一部に拡張してもよい。(5)最後に絶縁筒取付工程35において、予め用意していた耐熱性かつ耐油/耐冷媒性を有するプラスチック製またはゴム製の絶縁筒をリードに挿着して、絶縁筒を前記接着剤の塗布面に合わさるように押し当て、同接着剤を硬化させて絶縁筒を気密端子に接着させる。前記絶縁筒は外径部に設けた周溝内に耐熱性かつ耐油/耐冷媒性を有する弾性材のシール材か、または前記絶縁筒の外径部の一部を延伸させて同外径部を周回する突起の何れか一方を備える。前記シール材は、絶縁筒取付工程35の前又は後に絶縁筒の外周壁に設けた周回溝に取り付けられる。ゴム製の成形部材からなる絶縁筒は、同部材のみでシール機能を有するので絶縁筒の外径部にシール用の突起を設けるのみでもよい。気密端子の製造方法30により製造された本発明の気密端子は、
図4に示すように、容器体401の内部に納められた電動機など電気装置の配線ブロック404にリードを電気接続させた後、容器体401の挿着孔402に挿着され、螺旋止め405などで気密固定される。その際、必要に応じて容器体401と気密端子の金属外環との間にガスケットを挟んで固定する。
【0017】
本発明に関わる気密容器40は、
図4に示すように、上述の気密端子10または20を備えた気密容器であって、電動機などの電気装置を収めた容器体401と、容器体401に設けられ容器体401を貫通する挿着孔402を閉塞して気密に固着された気密端子403と、容器体401の内部に配置された気密端子403のリードに水密に電気接続した前記電気装置の配線ブロック404とを備え、気密端子403は、封着孔41を有する金属外環42と、金属外環42の封着孔41に挿通したリード43と、金属外環42とリード43とを気密に封着したガラスの絶縁材44と、リード43に挿着されて少なくとも端部を絶縁材44ないし金属外環42と接着層400を介して気密接着したPBT(ポリブチレンテレフタレート)、PPS(ポリフェニレンスルフィド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)など耐熱性かつ耐油/耐冷媒性を有するスーパーエンジニアレングプラスチック製またはHNBR(水素化ニトリルゴム)、EPDM(エチレン‐プロピレン‐ジエンゴム)などの耐熱性かつ耐油/耐冷媒性を有するゴム製の成形部材からなる絶縁筒45とを有し、絶縁筒45は、外周壁に周回溝46を1つ以上設け周回溝46内に耐熱性かつ耐油/耐冷媒性ゴムからなるシール材47を装着するか、または周回溝46を設けず絶縁筒45の外周壁を突出させた突起47を1つ以上有する。突起47は、絶縁筒45の外周壁の外径を周回するように絶縁筒自身を突出させて設ける。金属外環42は、さらに必要に応じて容器体401に螺旋止め405するために通孔48を設けてもよい。通孔48は、本発明の気密端子403を電気装置の容器体401に螺旋止め等の手段で締め付けて気密に固定するため設けられるものであり、気密端子403の金属外環42が容器体401の器壁に固着できれば、通孔48に替えて他の形態、例えば気密端子の金属外環42が挿着孔402から抜け落ちないように、少なくとも金属外環42の外周縁辺および挿着孔402の外周縁辺を額縁状に覆って、気密端子403と容器体401とを固定する枠体などを採用してもよい。プラスチック製の絶縁筒45を用いた場合には、絶縁筒45に周回溝46を設け、周回溝46にシール材47を取り付ける。シール材47は、絶縁筒45と異なる材料で構成されるので圧縮永久ひずみを適度に調整する(小さく抑える)ことが可能となり、容器体401内に配置された水密性の配線ブロック404に対して長期にわたって安定したシール性を保持することができるようになる。一方、ゴム製の絶縁筒45を用いた場合には、絶縁筒45に周回溝46を設けずに突起47を設けて、突起47でシール性を確保する。これにより、モータ駆動時に生じて容器体401に蓄積する金属粉が、気密端子403のリード接続部に付着するのを防ぎ、配線接続部の耐トラッキング性が向上する。また、絶縁性が低いPAG(ポリアルキレングリコール)オイルの浸入も防ぐので、PAG潤滑油を用いたコンプレッサに対して好適に利用できる。
【実施例0018】
実施例1の気密端子10は、
図1に示すように、直線上に配置した3個の封着孔11と2個の通孔18を設けた炭素鋼の金属外環12と、金属外環12の封着孔11に挿通したFe-Cr合金製のリード13と、金属外環12とリード13とを気密に封着したソーダバリウムガラスの絶縁材14と、リード13に挿着されて一端を金属外環12の一部および絶縁材14の片側にエポキシ系接着剤の接着層100を介して接着されたPPS(ポリフェニレンスルフィド)製の絶縁筒15とを備え、絶縁筒15は、外周壁に周回溝16を4条有し、各周回溝16内にフッ素ゴム(FKM)製O-リングからなるシール材17を有する。
【0019】
実施例2の気密端子20は、
図2に示すように、直線上に配置した3個の封着孔21と2個の通孔28を設けた炭素鋼の金属外環22と、金属外環22の封着孔21に挿通したFe-Ni合金製のリード23と、金属外環22とリード23とを気密に封着したソーダバリウムガラスの絶縁材24と、リード23に挿着されて一端を金属外環22の一部および絶縁材24の片側にエポキシ系接着剤の接着層を介して接着されたEPDM(エチレン‐プロピレン‐ジエンゴム)製の絶縁筒25とを備え、絶縁筒25は、外周壁に突起27を2条有する。
【0020】
実施例1または実施例2の気密端子は、
図4に示す気密容器40に取り付けられる。
【0021】
実施例1の気密端子は、
図4の気密容器40に適用されて、冷媒および潤滑オイルと電動モータとを収めた容器体401と、容器体401に設けられ容器体401を貫通する挿着孔402を閉塞して螺旋止め405によって気密に締結された気密端子403と、容器体401の内部に配置された気密端子403のリードに水密に電気接続した前記電気装置の配線ブロック404とを備え、気密端子403は、直線上に配置した3個の封着孔41と2個の通孔48を設けた炭素鋼の金属外環42と、金属外環42の封着孔41に挿通したFe-Cr合金製のリード43と、金属外環42とリード43とを気密に封着したソーダバリウムガラスの絶縁材44と、リード43に挿着されて一端を金属外環42の一部および絶縁材44の片側にエポキシ系接着剤の接着層を介して接着されたPPS(ポリフェニレンスルフィド)製の絶縁筒45とを有し、絶縁筒45は、外周壁に周回溝46を4条有し、各周回溝46内にフッ素ゴム(FKM)のO-リングからなるシール材47を装着している。絶縁筒45とシール材47とが異なる樹脂材料で構成できるので、樹脂材料の組み合わせで構造強度を保ちながらシールの弾性を最適化できる。
【0022】
すなわち、実施例1の気密端子は気密容器に適用でき、電気装置を収めた容器体と、前記容器体に設けられ前記容器体を貫通する挿着孔を閉塞して気密に固着された気密端子と、容器体の内部に配置された気密端子に水密に電気接続した前記電気装置の配線ブロックとを備え、前記気密端子は、封着孔を有する金属外環と、前記金属外環の封着孔に挿通したリードと、前記金属外環と前記リードとを気密に封着した絶縁材と、前記リードに挿着されて少なくとも端部を前記絶縁材ないし前記金属外環と接着層を介して気密に接着したプラスチック製の絶縁筒とを有し、前記絶縁筒は、外周壁に周回溝を1つ以上有し、前記周回溝内に弾性材からなるシール材を装着した気密容器を構成する。前記絶縁筒は、耐熱性かつ耐油/耐冷媒性を有するPPS(ポリフェニレンスルフィド)製プラスチック材からなる。前記シール材は、耐熱性かつ耐油/耐冷媒性を有するフッ素ゴム(FKM)のO-リングからなる。
【0023】
実施例2の気密端子は、絶縁筒45に周回溝46を設けず突起47を有する。実施例2の気密端子も
図4の気密容器40に適用することができ、冷媒および潤滑オイルと電動モータとを収めた容器体401と、容器体401に設けられ容器体401を貫通する挿着孔402を閉塞して螺旋止め405によって気密に締結された気密端子403と、容器体401の内部に配置された気密端子403のリードに水密に電気接続した前記電気装置の配線ブロック404とを備え、気密端子403は、直線上に配置した3個の封着孔41と2個の通孔48を設けた炭素鋼の金属外環42と、金属外環42の封着孔41に挿通したFe-Ni合金製のリード43と、金属外環42とリード43とを気密に封着したソーダバリウムガラスの絶縁材44と、リード43に挿着されて一端を金属外環42の一部および絶縁材44の片側にエポキシ系接着剤の接着層を介して接着されたEPDM(エチレン‐プロピレン‐ジエンゴム)製の絶縁筒45とを有し、絶縁筒45は、外周壁に突起47を有する。実施例2の気密端子は、シール材47を取り付ける必要が無く、ゴム製の絶縁筒45の突起47でシール性を確保することができる。これにより、気密容器内に配置された水密コネクタブロックに対して長期にわたって安定したシール性を保持できる。
【0024】
すなわち、実施例2の気密端子は気密容器に適用でき、電気装置を収めた容器体と、前記容器体に設けられ前記容器体を貫通する挿着孔を閉塞して気密に固着された気密端子と、容器体の内部に配置された気密端子に水密に電気接続した前記電気装置の配線ブロックとを備え、前記気密端子は、封着孔を有する金属外環と、前記金属外環の封着孔に挿通したリードと、前記金属外環と前記リードとを気密に封着した絶縁材と、前記リードに挿着されて少なくとも端部を前記絶縁材ないし前記金属外環と接着層を介して気密に接着したゴム製の絶縁筒とを備え、前記絶縁筒は、同絶縁筒の外径を周回する突起を1つ以上有した気密容器を構成する。前記絶縁筒は、耐熱性かつ耐油/耐冷媒性を有するEPDM(エチレン‐プロピレン‐ジエンゴム)製ゴム材からなる。
気密端子10、封着孔11、金属外環12、リード13、絶縁材14、絶縁筒15、周回溝16、シール材17、通孔18、接着層100、気密端子20、封着孔21、金属外環22、リード23、絶縁材24、絶縁筒25、突起27、通孔28、接着層200、気密端子の製造方法30、封着部品仮組工程31、封着工程32、めっき工程33、接着剤塗布工程34、絶縁筒取付工程35、気密容器40、封着孔41、金属外環42、リード43、絶縁材44、絶縁筒45、周回溝46、シール材または突起47、通孔48、接着層400、容器体401、挿着孔402、気密端子403、配線ブロック404、螺旋止め405。