(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189686
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】ヘッドレスト、及びヘッドレストの製造方法
(51)【国際特許分類】
B60N 2/879 20180101AFI20221215BHJP
A47C 7/38 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
B60N2/879
A47C7/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021159625
(22)【出願日】2021-09-29
(31)【優先権主張番号】63/209518
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 亮祐
(72)【発明者】
【氏名】青木 優人
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084DD06
3B084DD07
3B087DC05
(57)【要約】
【課題】ヘッドレストピラー内を延びるハーネスと干渉することなくパッドを発泡成形できる乗物用シートのヘッドレストを提供する。
【解決手段】その内部にてピラー孔16を画定する筒形状を有する左右のヘッドレストピラー10と、左右のヘッドレストピラーに接続されたプレート12と、プレートの下方に配置された温度調整ユニット14とを含むヘッドレスト1に於いて、プレートの後方に、プレート及び温度調整ユニットと協働して中空部を画定する保護カバー71を配置する。これにより、ヘッドレストピラーの先端が、中空部内に配置され、且つ、温度調整ユニットの温度調整部及びブロワに電力を供給するハーネス32が、ハーネス孔、中空部、及びピラー孔を通過して、ヘッドレストピラーの下端から突出するヘッドレストを提供する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物用シートのヘッドレストであって、
シートバックの上部から上方に延び、その内部にてピラー孔を画定する筒形状を有する左右のヘッドレストピラーと、
左右の前記ヘッドレストピラーに接続され、前後を向くプレートと、
前記プレートの下方に配置された温度調整ユニットと、
前記プレートの後方に配置され、前記プレート及び前記温度調整ユニットと協働して中空部を画定する保護カバーと、
前記ヘッドレストピラー、前記プレート、及び前記温度調整ユニットに支持されたパッドと、
前記パッドに被せられた表皮と、を備え、
前記温度調整ユニットは、
吸気口から送風口に延びる空気通路、及び前記中空部と前記空気通路とを連通するハーネス孔を有する、前記プレートに固定されたケーシングと、
前記ケーシング内に固定され、前記吸気口から前記ケーシング内に導入された空気の温度を調整する温度調整部と、
前記ケーシング内に固定され、温度調整された前記空気を前記送風口を介して前記ケーシング外に送風するブロワと、
前記温度調整部及び前記ブロワに電力を供給するハーネスと、を含み、
前記ヘッドレストピラーの先端が、前記中空部内に配置され、
前記ハーネスが、前記温度調整部及び前記ブロワから、前記ハーネス孔、前記中空部、及び前記ピラー孔を通過して、前記ヘッドレストピラーの下端から突出するヘッドレスト。
【請求項2】
前記保護カバーは、後方に向けて下方に下る板状のカバー中央部と、前記カバー中央部の左右の側縁から前方かつ下方に延びる左右のカバー側部とを有し、
前記カバー中央部の前縁、及び左右のカバー側部の前縁に於いて前記プレートに当接している請求項1に記載のヘッドレスト。
【請求項3】
前記プレートの下部には、後方に延びる結合片が設けられ、
前記ケーシングが、前記結合片に結合された請求項2に記載のヘッドレスト。
【請求項4】
前記結合片の両側縁に、左右外方に向けて下方に傾斜した左右の傾斜片が設けられ、
左右の前記ヘッドレストピラーが、対応する前記傾斜片に結合された請求項3に記載のヘッドレスト。
【請求項5】
前記温度調整ユニットの前端が、前記プレートの前端より後方に配置されている請求項1~4のいずれか一項に記載のヘッドレスト。
【請求項6】
前記吸気口が、前記ケーシングの左右の側部の一方に設けられている請求項1~5のいずれか一項に記載のヘッドレスト。
【請求項7】
前記吸気口内に、左右外方にかけて下方に延びる複数のルーバ板が形成された請求項6に記載のヘッドレスト。
【請求項8】
前記送風口が、前記ケーシングの前部に設けられ、
前記ルーバ板が、左右外方にかけて前方に延びる請求項7に記載のヘッドレスト。
【請求項9】
側面視に於いて、前記吸気口の後端が、前記ヘッドレストピラーより前方に配置されている請求項1~8のいずれか一項に記載のヘッドレスト。
【請求項10】
乗物用シートのヘッドレストの製造方法であって、
上方に延び、その内部にてピラー孔を画定する筒形状を有する左右のヘッドレストピラーに、前後を向くプレートを固定する第1の工程と、
前記プレートの下方に、上下に貫通するハーネス孔を有するケーシング上部を固定する第2の工程と、
前記プレートの後方に、前記プレート及び前記ケーシング上部と協働して中空部を画定する保護カバーを固定することにより、前記ヘッドレストピラーの先端を前記中空部内に配置する第3の工程と、
前記ヘッドレストピラー、前記プレート、及び前記ケーシング上部にパッドを取り付ける第4の工程と、
前記ヘッドレストピラーの下端から、前記ピラー孔、前記中空部、及び前記ハーネス孔を延びるハーネスを、該ヘッドレスト外から導入される空気の温度を調整する温度調整部、及び温度調整された前記空気を該ヘッドレスト外に送風するブロワに接続する第5の工程と、
前記ケーシング上部に、前記温度調整部及び前記ブロワを取り付ける第6の工程と、
前記ケーシング上部の下方にケーシング下部を固定することにより、前記ケーシング上部及び前記ケーシング下部が吸気口から送風口に延びる空気通路を画定し、且つ、前記温度調整部及び前記ブロワが前記空気通路中に配置される第7の工程と、
前記第7の工程により作製された構造体上に表皮を被せる第8の工程と、を含む製造方法。
【請求項11】
前記ヘッドレストピラー及び前記プレートが金属から形成され、
前記第1の工程に於いて、左右の前記ヘッドレストピラー及び前記プレートを溶接する請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記ケーシング上部が、係合部を有し、
前記プレートが、前記係合部と係合する被係合部を有し、
前記第2の工程に於いて、前記係合部及び前記被係合部を互いに係合させる請求項10又は11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記第5の工程に於いて、前記ヘッドレストピラー、前記プレート、及び前記ケーシング上部を成形型内に配置し、
前記成形型内に成形材料を供給して発泡成形を行う請求項10~12のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項14】
前記第7の工程に於いて、前記ケーシング上部及び前記ケーシング下部を互いに締結する請求項10~13のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートのヘッドレスト、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗物用シートのヘッドレストとして、円筒形状を有するヘッドレストピラーと、
ヘッドレストピラー内を延びるハーネスとを含むものが知られている(例えば、特許文献1)。ヘッドレストピラーには、ヘッドレストピラーの内部及び外部を連通する連通孔が形成されている。ハーネスは、連通孔を介して、ヘッドレスト内に配置された電装品に接続されている。また、連通孔には、連通孔を閉塞するための閉塞部材が設けられている。ヘッドレストピラー、ハーネス、及び電装品にはパッドが一体化され、パッド上には表皮が被せられている。
【0003】
特許文献1に記載のヘッドレストは、パッドを成形するための成形型内に、表皮と、連通孔を含むヘッドレストピラーの上部と、連通孔を介して電装品に接続されたハーネスとを配置し、発泡剤を発泡させることにより製造が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のヘッドレストは、パッドの形成時に発泡剤がハーネスと干渉する。これにより、例えばパッドに対して乗員等から荷重が加えられた場合に、ハーネスがパッドと一体的に変形することにより、ハーネスが劣化し易いという問題点があった。
【0006】
本発明は、以上の背景に鑑み、ヘッドレストピラー内を延びるハーネスと干渉することなくパッドを発泡成形できる乗物用シートのヘッドレストを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、乗物用シート(2)のヘッドレスト(1)であって、シートバック(4)の上部から上方に延び、その内部にてピラー孔(16)を画定する筒形状を有する左右のヘッドレストピラー(10)と、左右の前記ヘッドレストピラーに接続され、前後を向くプレート(12)と、前記プレートの下方に配置された温度調整ユニット(14)と、前記プレートの後方に配置され、前記プレート及び前記温度調整ユニットと協働して中空部(70)を画定する保護カバー(71)と、前記ヘッドレストピラー、前記プレート、及び前記温度調整ユニットに支持されたパッド(80)と、前記パッドに被せられた表皮(81)と、を備え、前記温度調整ユニットは、吸気口(64)から送風口(65)に延びる空気通路(67)、及び前記中空部と前記空気通路とを連通するハーネス孔(47)を有する、前記プレートに固定されたケーシング(28)と、前記ケーシング内に固定され、前記吸気口から前記ケーシング内に導入された空気の温度を調整する温度調整部(29)と、前記ケーシング内に固定され、温度調整された前記空気を前記送風口を介して前記ケーシング外に送風するブロワ(30)と、前記温度調整部及び前記ブロワに電力を供給するハーネス(32)と、を含み、前記ヘッドレストピラーの先端が、前記中空部内に配置され、前記ハーネスが、前記温度調整部及び前記ブロワから、前記ハーネス孔、前記中空部、及び前記ピラー孔を通過して、前記ヘッドレストピラーの下端から突出するヘッドレストを提供する。
【0008】
この態様によれば、ヘッドレストピラーの先端が中空部内に配置されるため、温度調整部及びブロワに接続されたハーネスが、ハーネス孔、中空部、及びピラー孔を延び、ヘッドレストピラーの下端から突出できる。これらの空間は、プレート、保護カバー、及びケーシングによってパッドから隔てられているため、乗物用シートのヘッドレストに於いて、ヘッドレストピラー内を延びるハーネスと干渉することなく、パッドを発泡成形できる。
【0009】
上記の態様に於いて、前記保護カバーは、後方に向けて下方に下る板状のカバー中央部と(72)、前記カバー中央部の左右の側縁から前方かつ下方に延びる左右のカバー側部(73)とを有し、前記カバー中央部の前縁、及び左右の前記カバー側部の前縁に於いて前記プレートに当接しているとよい。
【0010】
この態様によれば、プレート及び保護カバーを緊密に接続することができる。
【0011】
上記の態様に於いて、前記プレートの下部には、後方に延びる結合片(24)が設けられ、前記ケーシングが、前記結合片に結合されているとよい。
【0012】
この態様によれば、ケーシングをプレートに結合し易くなる。
【0013】
上記の態様に於いて、前記結合片の側縁に、左右外方に向けて下方に傾斜した左右の傾斜片(23)が設けられ、左右の前記ヘッドレストピラーが、対応する前記傾斜片に結合されているとよい。
【0014】
この態様によれば、ヘッドレストピラーをプレートに結合し易くなる。
【0015】
上記の態様に於いて、前記温度調整ユニットの前端が、前記プレートの前端より後方に配置されているとよい。
【0016】
この態様によれば、これにより、ヘッドレストに対して前方から衝撃が加わった場合に、この衝撃が温度調整ユニットに対して加えられることを防止できる。
【0017】
上記の態様に於いて、前記吸気口が、前記ケーシングの左右の側部の一方に設けられているとよい。
【0018】
この態様によれば、該ヘッドレストを適切な乗物用シートに設けることにより、吸気口を車両のサイドウインドウ側に配置することが可能となるため、吸気口を介して空気が導入され易くなる。
【0019】
上記の態様に於いて、前記吸気口内に、左右外方にかけて下方に延びる複数のルーバ板(111)が形成されているとよい。
【0020】
この態様によれば、雨水等が車両のサイドウインドウから車内に侵入した場合でも、この雨水等が吸気口を介してケーシング内に侵入し難くなる。
【0021】
上記の態様に於いて、前記送風口が、前記ケーシングの前部に設けられ、前記ルーバ板が、左右外方にかけて前方に延びているとよい。
【0022】
この態様によれば、温度調整部によって温度調整された空気が、吸気口を介してケーシング内に導入され易くなる。これにより、温度調整ユニットが、効率性良く温度を調整することができる。
【0023】
上記の態様に於いて、側面視に於いて、前記吸気口の後端が、前記ヘッドレストピラーより前方に配置されているとよい。
【0024】
この態様によれば、温度調整部によって温度調整された空気が、吸気口を介してケーシング内に導入され易くなる。これにより、温度調整ユニットが、吸気口の周囲の空気の温度を効率性良く調整することができる。
【0025】
また、上記課題を解決するために本発明の別の態様は、乗物用シート(2)のヘッドレスト(1)の製造方法であって、上方に延び、その内部にてピラー孔(16)を画定する筒形状を有する左右のヘッドレストピラー(10)に、前後を向くプレート(12)を固定する第1の工程と、前記プレートの下方に、上下に貫通するハーネス孔(47)を有するケーシング上部(34)を固定する第2の工程と、前記プレートの後方に、前記プレート及び前記ケーシング上部と協働して中空部(70)を画定する保護カバー(71)を固定することにより、前記ヘッドレストピラーの先端を前記中空部内に配置する第3の工程と、前記ヘッドレストピラー、前記プレート、及び前記ケーシング上部にパッド(80)を取り付ける第4の工程と、前記ヘッドレストピラーの下端から、前記ピラー孔、前記中空部、及び前記ハーネス孔を延びるハーネス(32)を、該ヘッドレスト外から導入される空気の温度を調整する温度調整部(29)、及び温度調整された前記空気を該ヘッドレスト外に送風するブロワ(30)に接続する第5の工程と、前記ケーシング上部に、前記温度調整部及び前記ブロワを取り付ける第6の工程と、前記ケーシング上部の下方にケーシング下部(56)を固定することにより、前記ケーシング上部及び前記ケーシング下部が吸気口(64)から送風口(65)に延びる空気通路(67)を画定し、且つ、前記温度調整部及び前記ブロワが前記空気通路中に配置される第7の工程と、前記第7の工程により作製された構造体上に表皮(81)を被せる第8の工程と、を含む製造方法を提供する。
【0026】
この態様によれば、ヘッドレストピラーの先端が中空部内に配置されるため、温度調整部及びブロワに接続されたハーネスが、ハーネス孔、中空部、及びピラー孔を延び、ヘッドレストピラーの下端から突出できる。これらの空間は、プレート、保護カバー、及びケーシングによってパッドから隔てられているため、ヘッドレストピラー内を延びるハーネスと干渉することなくパッドを発泡成形できるヘッドレストを製造できる。
【0027】
上記の態様に於いて、前記ヘッドレストピラー及び前記プレートが金属から形成され、前記第1の工程に於いて、左右の前記ヘッドレストピラー及び前記プレートが溶接されるとよい。
【0028】
この態様によれば、簡素な手段をもって、ヘッドレストピラー及びプレートを固定できる。
【0029】
上記の態様に於いて、前記ケーシング上部が、係合部(45)を有し、前記プレートが、前記係合部と係合する被係合部(25)を有し、前記第2の工程に於いて、前記係合部及び前記被係合部を互いに係合させるとよい。
【0030】
この態様によれば、簡素な手段をもって、プレート及びケーシング上部を固定できる。
【0031】
上記の態様に於いて、前記第5の工程に於いて、前記ヘッドレストピラー、前記プレート、及び前記ケーシング上部を成形型内に配置し、前記成形型内に成形材料を供給して発泡成形を行うとよい。
【0032】
この態様によれば、簡素な手段をもって、ヘッドレストピラー、プレート、及びケーシング上部にパッドを固定できる。
【0033】
上記の態様に於いて、前記第7の工程に於いて、前記ケーシング上部及び前記ケーシング下部を互いに締結するとよい。
【0034】
この態様によれば、簡素な手段をもって、ケーシング上部及びケーシング下部を固定できる。
【発明の効果】
【0035】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、乗物用シート(2)のヘッドレスト(1)であって、シートバック(4)の上部から上方に延び、その内部にてピラー孔(16)を画定する筒形状を有する左右のヘッドレストピラー(10)と、左右の前記ヘッドレストピラーに接続され、前後を向くプレート(12)と、前記プレートの下方に配置された温度調整ユニット(14)と、前記プレートの後方に配置され、前記プレート及び前記温度調整ユニットと協働して中空部(70)を画定する保護カバー(71)と、前記ヘッドレストピラー、前記プレート、及び前記温度調整ユニットに支持されたパッド(80)と、前記パッドに被せられた表皮(81)と、を備え、前記温度調整ユニットは、吸気口(64)から送風口(65)に延びる空気通路(67)、及び前記中空部と前記空気通路とを連通するハーネス孔(47)を有する、前記プレートに固定されたケーシング(28)と、前記ケーシング内に固定され、前記吸気口から前記ケーシング内に導入された空気の温度を調整する温度調整部(29)と、前記ケーシング内に固定され、温度調整された前記空気を前記送風口を介して前記ケーシング外に送風するブロワ(30)と、前記温度調整部及び前記ブロワに電力を供給するハーネス(32)と、を含み、前記ヘッドレストピラーの先端が、前記中空部内に配置され、前記ハーネスが、前記温度調整部及び前記ブロワから、前記ハーネス孔、前記中空部、及び前記ピラー孔を通過して、前記ヘッドレストピラーの下端から突出するヘッドレストを提供する。
【0036】
この態様によれば、ヘッドレストピラーの先端が中空部内に配置されるため、温度調整部及びブロワに接続されたハーネスが、ハーネス孔、中空部、及びピラー孔を延び、ヘッドレストピラーの下端から突出できる。これらの空間は、プレート、保護カバー、及びケーシングによってパッドから隔てられているため、乗物用シートのヘッドレストに於いて、ヘッドレストピラー内を延びるハーネスと干渉することなく、パッドを発泡成形できる。
【0037】
上記の態様に於いて、前記保護カバーは、後方に向けて下方に下る板状のカバー中央部と(72)、前記カバー中央部の左右の側縁から前方かつ下方に延びる左右のカバー側部(73)とを有し、前記カバー中央部の前縁、及び左右のカバー側部の前縁に於いて前記プレートに当接しているとよい。
【0038】
この態様によれば、プレート及び保護カバーを緊密に接続することができる。
【0039】
上記の態様に於いて、前記プレートの下部には、後方に延びる結合片(24)が設けられ、前記ケーシングが、前記結合片に結合されているとよい。
【0040】
この態様によれば、ケーシングをプレートに結合し易くなる。
【0041】
上記の態様に於いて、前記結合片の側縁に、左右外方に向けて下方に傾斜した左右の傾斜片(23)が設けられ、左右の前記ヘッドレストピラーが、対応する前記傾斜片に結合されているとよい。
【0042】
この態様によれば、ヘッドレストピラーをプレートに結合し易くなる。
【0043】
上記の態様に於いて、前記温度調整ユニットの前端が、前記プレートの前端より後方に配置されているとよい。
【0044】
この態様によれば、これにより、ヘッドレストに対して前方から衝撃が加わった場合に、この衝撃が温度調整ユニットに対して加えられることを防止できる。
【0045】
上記の態様に於いて、前記吸気口が、前記ケーシングの左右の側部の一方に設けられているとよい。
【0046】
この態様によれば、該ヘッドレストを適切な乗物用シートに設けることにより、吸気口を車両のサイドウインドウ側に配置することが可能となるため、吸気口を介して空気が導入され易くなる。
【0047】
上記の態様に於いて、前記吸気口内に、左右外方にかけて下方に延びる複数のルーバ板(111)が形成されているとよい。
【0048】
この態様によれば、雨水等が車両のサイドウインドウから車内に侵入した場合でも、この雨水等が吸気口を介してケーシング内に侵入し難くなる。
【0049】
上記の態様に於いて、前記送風口が、前記ケーシングの前部に設けられ、前記ルーバ板が、左右外方にかけて前方に延びているとよい。
【0050】
この態様によれば、温度調整部によって温度調整された空気が、吸気口を介してケーシング内に導入され易くなる。これにより、温度調整ユニットが、効率性良く温度を調整することができる。
【0051】
上記の態様に於いて、側面視に於いて、前記吸気口の後端が、前記ヘッドレストピラーより前方に配置されているとよい。
【0052】
この態様によれば、温度調整部によって温度調整された空気が、吸気口を介してケーシング内に導入され易くなる。これにより、温度調整ユニットが、吸気口の周囲の空気の温度を効率性良く調整することができる。
【0053】
また、上記課題を解決するために本発明の別の態様は、乗物用シート(2)のヘッドレスト(1)の製造方法であって、上方に延び、その内部にてピラー孔(16)を画定する筒形状を有する左右のヘッドレストピラー(10)に、前後を向くプレート(12)を固定する第1の工程と、前記プレートの下方に、上下に貫通するハーネス孔(47)を有するケーシング上部(34)を固定する第2の工程と、前記プレートの後方に、前記プレート及び前記ケーシング上部と協働して中空部(70)を画定する保護カバー(71)を固定することにより、前記ヘッドレストピラーの先端を前記中空部内に配置する第3の工程と、前記ヘッドレストピラー、前記プレート、及び前記ケーシング上部にパッド(80)を取り付ける第4の工程と、前記ヘッドレストピラーの下端から、前記ピラー孔、前記中空部、及び前記ハーネス孔を延びるハーネス(32)を、該ヘッドレスト外から導入される空気の温度を調整する温度調整部(29)、及び温度調整された前記空気を該ヘッドレスト外に送風するブロワ(30)に接続する第5の工程と、前記ケーシング上部に、前記温度調整部及び前記ブロワを取り付ける第6の工程と、前記ケーシング上部の下方にケーシング下部(56)を固定することにより、前記ケーシング上部及び前記ケーシング下部が吸気口(64)から送風口(65)に延びる空気通路(67)を画定し、且つ、前記温度調整部及び前記ブロワが前記空気通路中に配置される第7の工程と、前記第7の工程により作製された構造体上に表皮(81)を被せる第8の工程と、を含む製造方法を提供する。
【0054】
この態様によれば、ヘッドレストピラーの先端が中空部内に配置されるため、温度調整部及びブロワに接続されたハーネスが、ハーネス孔、中空部、及びピラー孔を延び、ヘッドレストピラーの下端から突出できる。これらの空間は、プレート、保護カバー、及びケーシングによってパッドから隔てられているため、ヘッドレストピラー内を延びるハーネスと干渉することなくパッドを発泡成形できるヘッドレストを製造できる。
【0055】
上記の態様に於いて、前記ヘッドレストピラー及び前記プレートが金属から形成され、前記第1の工程に於いて、左右の前記ヘッドレストピラー及び前記プレートが溶接されるとよい。
【0056】
この態様によれば、簡素な手段をもって、ヘッドレストピラー及びプレートを固定できる。
【0057】
上記の態様に於いて、前記ケーシング上部が、係合部(45)を有し、前記プレートが、前記係合部と係合する被係合部(25)を有し、前記第2の工程に於いて、前記係合部及び前記被係合部を互いに係合させるとよい。
【0058】
この態様によれば、簡素な手段をもって、プレート及びケーシング上部を固定できる。
【0059】
上記の態様に於いて、前記第5の工程に於いて、前記ヘッドレストピラー、前記プレート、及び前記ケーシング上部を成形型内に配置し、前記成形型内に成形材料を供給して発泡成形を行うとよい。
【0060】
この態様によれば、簡素な手段をもって、ヘッドレストピラー、プレート、及びケーシング上部にパッドを固定できる。
【0061】
上記の態様に於いて、前記第7の工程に於いて、前記ケーシング上部及び前記ケーシング下部を互いに締結するとよい。
【0062】
この態様によれば、簡素な手段をもって、ケーシング上部及びケーシング下部を固定できる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図1】第1実施形態に係るヘッドレストが設けられたシートを前方から見た斜視図
【
図2】第1実施形態に係るヘッドレストを前方から見た拡大斜視図
【
図4】第1実施形態に係るヘッドレストを後方から見た斜視図
【
図5】第1実施形態に係るヘッドレストの、
図3に於けるV-V線縦断面図
【
図6】第2実施形態に係るヘッドレストを前方から見た拡大斜視図
【
図7】第2実施形態に係るヘッドレストの、
図6に於けるVII-VII線横断面図
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下、図面を参照して、第1実施形態に係るヘッドレスト1を乗物用シート2に適用した実施例について説明する。本明細書に於いては、前後方向、左右方向、及び、上下方向を、自動車の向きを基準として定める。
【0065】
第1実施形態に係るヘッドレスト1は、乗物用シート2の一部を構成する。
図1に示すように、乗物用シート2は、ヘッドレスト1に加えて、シートクッション3及びシートバック4を備えている。
【0066】
シートクッション3は上方を向く座面を有し、着座者の臀部を支持する。シートバック4は、シートクッション3の後部から上方に延びている。シートバック4は、前方に向く支持面を有し、支持面に凭れかかる着座者の背面を支持する。
【0067】
シートクッション3及びシートバック4は、それぞれ、金属製のフレーム5と、フレーム5に支持されたパッド部材6と、パッド部材6を覆う表皮材7とを有する。
【0068】
シートバック4のフレーム5は、上下に延びる左右のサイドメンバと、左右に延び、左右のサイドメンバの上端部のそれぞれに結合したアッパメンバと、左右に延び、左右のサイドメンバの下端部のそれぞれに結合したロアメンバとを有する。
【0069】
アッパメンバの左右方向中央部には、左右のガイドステー8(
図2)が結合されている。各ガイドステー8は、両端が開口した四角筒形に形成されている。ガイドステー8は、それぞれ互いに左右に間隔を於いて配置されている。ガイドステー8にはそれぞれ円形断面を有し、上下方向に貫通する貫通孔が設けられている。
【0070】
以下、
図2~
図5を参照して、第1実施形態に係るヘッドレスト1について詳述する。なお、
図2及び
図3では、ヘッドレスト1は、表皮材81及びパッド部材80が取り除かれた状態で示されている。表皮材81及びパッド部材80については、後に詳述する。
【0071】
図2に示すように、ヘッドレスト1は、略筒形状を有する左右のヘッドレストピラー10と、左右のヘッドレストピラー10に接続されたプレート12と、プレート12の下方に配置された温度調整ユニット14とを含む。ヘッドレスト1は、ヘッドレストピラー10がガイドステー8の貫通孔内にそれぞれ挿入されることによって、シートバック4(
図1)の上端にて支持されている。
【0072】
ヘッドレストピラー10は、その両端が開口している。これにより、ヘッドレストピラー10の内部には、両端が開口したピラー孔16が画定されている。ヘッドレストピラー10は、ガイドステー8から略上下に延びる直立部17と、直立部17の先端から上方にかけて左右内方且つ前方に湾曲した湾曲部18とを有する。ヘッドレストピラー10は、金属により形成されている。
【0073】
プレート12は、略前後を向き、乗員の後頭部を支持する主面部20と、主面部20の上縁及び側縁から後方に延びる延出部21とを有する。主面部20の左右方向の幅は、直立部17間の左右方向に於ける距離より短く、湾曲部18の先端間の左右方向に於ける距離より長い。プレート12は、金属により形成されている。
【0074】
プレート12の下部には、後方に延びる結合片24が設けられている。結合片24は、主面部20に対して垂直をなす略板形状を有する。結合片24の左右方向に於ける略中央には、結合片24を上下に貫通する係止孔25が設けられている。結合片24の両側縁には、左右外方に向けて下方に傾斜した左右の傾斜片23が設けられている。傾斜片23の上面には、対応するヘッドレストピラー10の湾曲部18が溶接されている。
【0075】
図5に示すように、温度調整ユニット14は、プレート12に固定されたケーシング28と、ケーシング28内に固定された温度調整部29及びブロワ30と、温度調整部29及びブロワ30に電力を供給するハーネス32とを含む。
【0076】
また、ケーシング28は、プレート12の下方に配置されてプレート12に固定されるケーシング上部34と、ケーシング上部34の下方に配置されてケーシング上部34に固定されるケーシング下部56とを含む。ケーシング上部34及びケーシング下部56は、樹脂により形成されている。
【0077】
図4に示すように、ケーシング上部34は、プレート12の結合片24に結合され、略上下を向く上壁35と、上壁35の左右端から下方に延びる側壁36と、上壁35の前端から下方に延びる前壁37とを有する。両側壁36には、側壁36を左右に貫通する締結孔が設けられている。上壁35には、結合片24及び傾斜片23に沿って上方に突出した突出部41が形成されている。上壁35の左右端は、プレート12の左右端より左右外方に配置されている。上壁35の前端は、プレート12の前端より前方に配置されている。
【0078】
図4に示すように、ケーシング上部34(突出部41)の、結合片24の係止孔25に対して上下方向に対応する位置には、上方に向けて延びる係止爪45が突設されている。本実施形態では、係止爪45が係止孔25に係止されることにより、プレート12及びケーシング上部34が互いに連結されている。また、突出部41の、係止爪45より後方の位置には、突出部41を上下に貫通するハーネス孔47が形成されている。
【0079】
図5に示すように、ケーシング上部34の下方には、支持板50が配置されている。支持板50は、前後及び左右に延びる略薄板形状を有する。支持板50は、図示しないねじ穴にねじを螺合させることによって、ケーシング上部34に固定されている。
【0080】
支持板50の、前方側の下面には、温度調整部29が固定されている。また、支持板50の、後方側の下面には、左右のブロワ30が固定されている。支持板50の上面の、温度調整部29と上下に略対向する位置には、ハーネス32を収容し、温度調整部29及びブロワ30にハーネス32を配線するためのコネクタ54が固定されている。
【0081】
ケーシング上部34には、下方からケーシング下部56が固定されている。ケーシング下部56は、ケーシング上部34の側壁36の締結孔に略対応する位置に締結孔が形成された左右の側壁58と、両側壁58の下端から左右内方に延びる底壁59と、底壁59の前端から上方に延びる前壁60と、底壁59の後端から上方に延びる後壁61とを有する。ケーシング上部34及びケーシング下部56は、ケーシング上部34の締結孔及びケーシング下部56の締結孔を通過しナットと螺合するボルトによって互いに締結されている。前壁60の前端は、プレート12よりも後方に配置されている。
【0082】
ケーシング下部56の後壁61には、後壁61を前後に貫通する吸気口64が形成されている。ケーシング下部56の前壁60には、前壁60を前後に貫通する送風口65が形成されている。また、ケーシング下部56には、吸気口64の下端及び送風口65の下端を結ぶ線に沿って延びる区画壁66が形成されている。これにより、支持板50、区画壁66、及び左右の側壁58が、吸気口64から送風口65に延びる空気通路67を画定している。空気通路67は、前方にかけて下方に傾斜している。
【0083】
ブロワ39は、ケーシング28内(空気通路67内)に空気を送り込むための装置である。温度調整部29は、吸気口64からケーシング28内(空気通路67内)に流入された空気の温度を調整する、冷風や温風などを発生させるための装置である。温度調整部29は、例えば電熱線又はペルチェ素子などの、熱を発生又は吸収する熱源を含む。ブロワ30は、温度調整部29によって温度調整された空気を送風口65を介してケーシング28外に送風する。すなわち、ブロワ30によって前方に送り出される空気は、温度調整部29によって冷却又は加熱された後、送風口65を介して着座者の頭部に達する。これにより、着座者の頭部の周辺に於いて、空気の温度が調節される。
【0084】
ヘッドレスト1は、更に、プレート12の後方に配置され、プレート12及び温度調整ユニット14と協働して中空部70を画定する保護カバー71を有する。保護カバー71は、
図3には示されていない。詳細には、保護カバー71は、プレート12及びケーシング上部34と協働して中空部70を画定している。
【0085】
図2に示すように、保護カバー71は、後方に向けて下方に下る板状のカバー中央部72と、カバー中央部72の左右の側縁から前方かつ下方に延びる左右のカバー側部73とを有する。保護カバー71は、カバー中央部72の前縁、及び左右のカバー側部73の前縁に於いてプレート12に当接している。
図5に示すように、カバー中央部72の、前後方向に於ける略中央には、中空部70側を向いた、左右に延びるワイヤ係止部75が形成されている。また、プレート12の後面にはワイヤ76が配設されている。ワイヤ76はワイヤ係止部75に係止されており、これにより保護カバー71がプレート12に固定されている。
【0086】
図2に示すように、カバー側部73の下端には、上方にかけて切欠された切欠部77が形成されている。ヘッドレストピラー10の湾曲部18は、切欠部77を通って中空部70内に延びている。これにより、ヘッドレストピラー10の先端が中空部70内に配置されている。したがって、温度調整部29及びブロワ30に接続されたハーネス32は、温度調整部29及びブロワ30から、ハーネス孔47、中空部70、及びピラー孔16を通過し、ヘッドレストピラー10の下端から突出している。
【0087】
図5に示すように、ヘッドレスト1は、更に、ヘッドレストピラー10、プレート12、及び温度調整ユニット14に支持されたパッド部材80を有する。詳細には、パッド部材80は、ヘッドレストピラー10、プレート12、及びケーシング28を前方から覆い、且つ、保護カバー71のカバー中央部72を上方から覆っている。また、ヘッドレスト1は、更に、パッド部材80に被せられた表皮材81を有する。表皮材81の、吸気口64及び送風口65に前後に対応する部分には、それぞれメッシュ82が形成されている。これにより、ヘッドレスト1外の空気を吸気口64を介して吸気し、且つ、送風口65を介して送風することができる。
【0088】
次に、第1実施形態に係るヘッドレスト1の製造方法について説明する。まず、作業者は、左右のヘッドレストピラー10の先端の下面を、プレート12の傾斜片23の上面に対して溶接することにより、ヘッドレストピラー10をプレート12に固定する。次に、結合片24の係止孔25に対してケーシング上部34の係止爪45を係止させることにより、ケーシング上部34をプレート12に固定する。
【0089】
次に、作業者は、プレート12の後方に保護カバー71を配置し、ワイヤ係止部75にワイヤ76を係止させることにより、保護カバー71をプレート12に固定する。このとき、ヘッドレストピラー10の先端は、プレート12、ケーシング上部34、及び保護カバー71によって画定される中空部70内に配置される。その後、上述の工程によって組み立てられた構造物を、パッド部材80を成形するための成形型内に配置し、この成形型内に成形材料を供給して発泡成形を行う。これにより、ヘッドレストピラー10、プレート12、及びケーシング上部34にパッド部材80が取り付けられる。
【0090】
次に、作業者は、ヘッドレストピラー10のピラー孔16、中空部70、及びケーシング上部34のハーネス孔47を延びるハーネス32を、コネクタ54を介して温度調整部29及びブロワ30に接続する。その後、支持板50に対して、温度調整部29及びブロワ30を下方から取り付ける。次に、ケーシング上部34の締結孔及びケーシング下部56の締結孔を通過しナットと螺合するボルトを締結することにより、ケーシング上部34に対してケーシング下部56を固定する。これにより、吸気口64から送風口65に延びる空気通路67が画定されると共に、ブロワ30が吸気口64の前方に配置され、ブロワ30の前方に配置された温度調整部29が、送風口65の後方に配置されることとなる。最後に、上述の工程によって組み立てられた構造物に表皮材81を被せることにより、第1実施形態に係るヘッドレスト1が組み立てられる。
【0091】
第1実施形態に係るヘッドレスト1によれば、ヘッドレストピラー10の先端が中空部70内に配置されることにより、ハーネス32が、ハーネス孔47、中空部70、及びピラー孔16を延び、ヘッドレストピラー10の下端から突出できる。これらの空間は、プレート12、保護カバー71、及びケーシング28によってパッド部材80から隔てられているため、乗物用シート2のヘッドレスト1に於いて、ヘッドレストピラー10内を延びるハーネス32と干渉することなく、パッド80部材を発泡成形できる。
【0092】
次に、
図6及び
図7を参照して、第2実施形態に係るヘッドレスト100について詳述する。
図6に示されたヘッドレスト100は、ヘッドレスト1と比較して主として吸気口64及びパッド部材80が異なる。以下では、上記実施形態と異なる部分を説明し、他の部分について説明を省略する。
【0093】
図6及び
図7に示すように、ヘッドレスト100の吸気口101は、ケーシング102の左右の側部の一方に設けられている。詳細には、吸気口101は、ケーシング下部103の、左側の側壁104に設けられている。第2実施形態では、ヘッドレスト100が設けられる乗物用シート2は、車両の助手席、又は後部座席の最左方に位置する座席などに適用される。これにより、吸気口101が、この乗物用シート2に対応するサイドウインドウ側を向くようにして配置される。
【0094】
図7に示すように、前壁105の、左右方向に於ける中央より左方の位置には、後方に延びる左壁108が設けられている。また、前壁105の、左右方向に於ける中央より右方の位置には、後方に延びる右壁109が設けられている。右壁109は、前壁105と後壁106とを前後に接続している。また、左壁108及び右壁109は、ケーシング下部103の区画壁66(図示せず)と支持板50(図示せず)とを上下に接続している。これにより、支持板50、前壁105、後壁106、左壁108、右壁109、及び区画壁66が、吸気口101から送風口112に延びる空気通路113を画定している。空気通路113は、前方に向けて下方に傾斜している。
【0095】
空気通路113内には、左右のブロワ114及び温度調整部115が配置されている。これにより、吸気口101を介して空気通路113に導かれた空気は、吸気口101から右方及び後方に進み、ブロワ114によって前方に送り出された後、温度調整部115によって冷却又は加熱され、送風口112を介して着座者の頭部に達することとなる。
【0096】
また、吸気口101内には、左右外方にかけて下方に延びる複数のルーバ板116が形成されている。これにより、ヘッドレスト100は、雨水等が車両のサイドウインドウから車内に侵入した場合でも、この雨水等が吸気口101を介してヘッドレスト100内に侵入し難くなる。また、ルーバ板116は、左右外方にかけて後方に延びている。これにより、温度調整部115によって温度調整された空気が、吸気口101を介してヘッドレスト100内に導入され易くなるため、温度調整部115が、着座者の頭部周辺の温度を効率性良く調整することができる。
【0097】
また、ヘッドレスト100は、ヘッドレストピラー10、プレート12、及びケーシング下部103を前方から覆うパッド部材120を有する。パッド部材120は、更に、保護カバー71のカバー中央部72を上方から覆うと共に、
図7に示すように、ケーシング下部103を左右外方から覆っている。パッド部材120の、送風口112に前後に対応する部分には、開口が設けられている。パッド部材120には、表皮材121が被せられている。
【0098】
以上で具体的な実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、本発明に係る吸気口64は、ケーシング下部56に対して一体的に形成されてもよいし、吸気口64及びケーシング下部56が別個の部材であってもよい。また、プレート12の結合片24に、下方に向けて延びる係止爪45が突設され、係止爪45が、ケーシング上部34の突出部41に形成された係止孔25に係止されてもよい。
【符号の説明】
【0099】
1 :ヘッドレスト
2 :乗物用シート
10 :ヘッドレストピラー
12 :プレート
14 :温度調整ユニット
16 :ピラー孔
23 :傾斜片
24 :結合片
25 :係止孔
28 :ケーシング
29 :温度調整部
30 :ブロワ
32 :ハーネス
34 :ケーシング上部
39 :ブロワ
45 :係止爪
47 :ハーネス孔
56 :ケーシング下部
64 :吸気口
65 :送風口
67 :空気通路
70 :中空部
71 :保護カバー
72 :カバー中央部
73 :カバー側部
80 :パッド部材
81 :表皮材
100 :ヘッドレスト
101 :吸気口
102 :ケーシング
112 :送風口
113 :空気通路
114 :ブロワ
115 :温度調整部
116 :ルーバ板