(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022018970
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】保冷材収納袋及びそれを備える冷感衣服
(51)【国際特許分類】
B65D 81/38 20060101AFI20220120BHJP
A41D 13/005 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
B65D81/38 T
A41D13/005 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020122449
(22)【出願日】2020-07-16
(71)【出願人】
【識別番号】598019554
【氏名又は名称】岡山貿易株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】518387996
【氏名又は名称】株式会社トラスタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】特許業務法人森特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前定 達雄
【テーマコード(参考)】
3B011
3E067
【Fターム(参考)】
3B011AC01
3B011AC21
3E067AB99
3E067AC01
3E067BA12B
3E067BA12C
3E067BB11B
3E067BB14B
3E067BB14C
3E067BB25B
3E067CA18
3E067CA24
3E067EA06
3E067EE28
3E067FA04
3E067FC01
3E067GA11
3E067GD07
(57)【要約】
【課題】
冷却対象物側に比して、冷却対象物の反対側における熱伝達をより大きく抑制し、保冷効果を長時間持続させて、比較的に厚みを小さく構成した保冷材収納袋と、それを備える冷感衣服を提供することを目的とする。
【解決手段】
保冷材を入れるための収納袋であり、断熱層と金属薄膜との積層材で構成された袋部と、袋部の内部に収納された断熱材とを有しており、袋部の一方の面側及び他方の面側のうちいずれか一方にのみ断熱材が配置される保冷材収納袋。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保冷材を入れるための収納袋であり、
断熱層と金属薄膜との積層材で構成された袋部と、
袋部の内部に収納された断熱材とを有しており、
袋部の一方の面側及び他方の面側のうちいずれか一方にのみに断熱材が配置される保冷材収納袋。
【請求項2】
袋部の内部に収納された保冷材をさらに備えており、
保冷材と袋部との間には前記断熱材の他は別の断熱材が配置されていない請求項1に記載の保冷材収納袋。
【請求項3】
断熱材は、断熱層と金属薄膜とを有する第1断熱材と、断熱層を有する第2断熱材とを重ねた構成である請求項1又は2に記載の保冷材収納袋。
【請求項4】
第1断熱材は、袋部の外寄りに配置され、第2断熱材は、袋部の内寄りに配置され、
第1断熱材と第2断熱材とは重ねた状態で袋部の内部に収納された請求項3に記載の保冷材収納袋。
【請求項5】
袋部の内面を構成する断熱層は、気泡緩衝材である請求項1ないし4のいずれかに記載の保冷材収納袋。
【請求項6】
プラスチックフィルムで構成された保護袋をさらに備えており、袋部は保護袋で覆われた形状である請求項1ないし5のいずれかに記載の保冷材収納袋。
【請求項7】
保護袋、及び袋部のうち少なくともいずれか一方に、冷却対象物の反対側又は冷却対象物側がいずれかを示す表示部を備えた請求項1ないし6のいずれかに記載の保冷材収納袋。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の保冷材収納袋を着脱可能に構成した冷感衣服。
【請求項9】
着用者の肌の反対側に保冷材収納袋の断熱材が配置されるように、保冷材収納袋が冷感衣服に着脱可能に固定されている請求項8に記載の冷感衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保冷材収納袋及びそれを備える冷間衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示すように、発泡合成樹脂製のシートと、当該シートの上に積層されたアルミニウム箔と、当該アルミニウム箔の上に積層される透明な合成樹脂層とを有するシート状の素材で袋を構成することが記載されている。この袋は、氷菓子や魚を収納する携帯用の袋として使用されるとされている。
【0003】
また、特許文献2には、外面層及び内面層で構成された袋状の保冷用包装材が記載されている。外面層と内面層とは、それぞれアルミニウム蒸着層と発泡樹脂層とが積層された構造である。外面層と内面層とは、内側に発泡樹脂が配置され、外側にアルミニウム蒸着層が配置されるように、積層される。
【0004】
また、特許文献3には、2枚の断熱シートの間にドライアイスを収納して、バッグを構成することが記載されている。このバッグは、クーラーボックスの蓋に取り付けられる。上記のバッグに対しては、面ファスナーにより、調整カバーを取り付けることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭49-61162号公報
【特許文献2】特開2019-172364号公報
【特許文献3】実用新案登録第3016676号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1ないし3の袋は、袋の表面及び裏面のうち温度が昇温しやすい環境に配される面における熱伝達量を、他方の面における熱伝達量よりも小さくして、袋に収納された氷結状態の保冷材が短時間で液化し保冷効果が失われることを防止し、袋の他方の面に配される冷却対象物を冷却するものではない。
【0007】
例えば、保冷材の収納袋の一方の面及び他方の面のうちいずれか一方に対して日光若しくは照明が直接的又は間接的に照射される環境で、保冷材により冷却対象物を冷却する場合は、日光が照射される側から氷結した保冷材が溶解して、保冷効果が短時間で失われてしまうという問題がある。また、外気温が高い環境で保冷材を冷却対象物に当てて冷却対象物を冷却する場合は、冷却対象物の反対側から氷結した保冷材が溶解して、保冷効果が短時間で失われてしまうという問題がある。このように、保冷材収納袋の一方の面及び他方の面のうちいずれか一方の温度が昇温しやすい環境で、保冷材収納袋を使用する場合は、保冷効果が短時間で失われやすい。
【0008】
本発明は、冷却対象物側に比して、冷却対象物の反対側における熱伝達をより大きく抑制し、保冷効果を長時間持続させて、比較的に厚みを小さく構成した保冷材収納袋と、それを備える冷感衣服とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
保冷材を入れるための収納袋であり、断熱層と金属薄膜との積層材で構成された袋部と、袋部の内部に収納された断熱材とを有しており、袋部の一方の面側及び他方の面側のうちいずれか一方にのみに断熱材が配置される保冷材収納袋により、上記の課題を解決する。この保冷材収納袋によれば、冷却対象物の反対側に断熱材が位置するようにして使用すれば、例えば、保冷材収納袋に対して日光が直接的又は間接的に照射されるなどして、冷却対象物の反対側の温度が上昇しやすい環境になった際に、保冷材が短時間で溶解し、保冷効果が短時間で失われることを防ぐことができる。換言すれば、上述の保冷材収納袋によれば、保冷効果を長時間持続させることが可能である。断熱材は、袋部の一方の面側及び他方の面側のうちいずれか一方にのみ配されているので、袋部の一方の面側及び他方の面側の両方に配する場合に比べて、保冷材収納袋の厚みを小さく抑えることが可能である。
【0010】
また、上記の保冷材収納袋を着脱可能に構成した冷感衣服によって、上記の課題を解決する。
【0011】
上記の保冷材収納袋又は上記の冷感衣服において、袋部の内部に収納された保冷材をさらに備えており、保冷材と袋部との間には前記断熱材の他は別の断熱材が配置されていない構成とすることが好ましい。断熱材が配置されていない面を冷却対象物側とし、断熱材が配置されてる面を冷却対象物の反対側となるようにして使用すれば、保冷材が短時間で溶解することを防いて冷却対象物を効率的に冷却することが可能になる。
【0012】
上記の保冷材収納袋又は上記の冷感衣服において、断熱層は、断熱層と金属薄膜とで構成された第1断熱材と、断熱材を有する第2断熱材とを重ねた構成とすることが好ましい。このように、第1断熱材と第2断熱材との間に、空気が含まれるようにして、冷却対象物の反対側の面において熱伝達を抑制する効果をより高めることができる。
【0013】
上記の保冷材収納袋又は上記の冷感衣服において、第1断熱材は、袋部の外寄りに配置され、第2断熱材は、袋部の内寄りに配置される構成とすることが好ましい。このような構成とすることにより、冷却対象物の反対側の面において熱伝達を抑制する効果をより高めることができる。
【0014】
上記の保冷材収納袋又は上記の冷感衣服において、袋部の内面を構成する断熱層は、気泡緩衝材とすることが好ましい。気泡緩衝材は、表面にプラスチックフィルムが露出する滑面として構成される。袋部の中に断熱材を挿入する際に、断熱材の滑りがよくなり、円滑に断熱材を袋部の中に収めることができる。
【0015】
上記の保冷材収納袋又は上記の冷感衣服において、プラスチックフィルムで構成された保護袋をさらに備えており、袋部は保護袋で覆われた形状とすることが好ましい。これによって袋部の金属薄膜をプラスチックフィルムで保護して、金属薄膜が破損することを防止することができる。
【0016】
上記の冷感衣服において、着用者の肌の反対側に保冷材収納袋の断熱材が配置されるように、保冷材収納袋が冷感衣服に着脱可能に固定することが好ましい。これにより、保冷材による保冷効果を長時間持続させて、衣服の着用者の身体を効率的に冷却することが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、冷却対象物側に比して、冷却対象物の反対側における熱伝達をより大きく抑制し、保冷効果を長時間持続させて、比較的に厚みを小さく構成した保冷材収納袋と、それを備える冷感衣服とを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態に係る保冷材収納袋の正面図である。
【
図6】第2実施形態に係る保冷材収納袋の拡大断面図であり、
図4のB部に相当する部分を拡大したものである。
【
図7】第3実施形態に係る保冷材収納袋の断面図である。
【
図8】比較例2に係る保冷材収納袋の断面図である。
【
図10】冷感衣服の一例であるベストの正面図である。
【
図11】比較例1、比較例2、実施例2、それぞれの保冷材収納袋又は保冷材の保冷効果を示すグラフである。
【
図12】実施例1、実施例2、それぞれの保冷材収納袋の保冷効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の保冷材収納袋(以下、単に収納袋と称する。)の実施形態について説明する。以下に示す各実施形態は、例示に過ぎず、本発明の技術的範囲は例示した実施形態に限定されるものではない。
図1から
図5には、保冷材収納袋の第1実施形態を示す。
図6には、保冷材収納袋の第2実施形態を示す。
図7には、保冷材収納袋の第3実施形態を示す。
図10には、冷感衣服の一例を示す。
【0020】
[第1実施形態]
本実施形態の収納袋1aは、
図1ないし
図3に示したように、保冷材12を入れるためのものである。収納袋1aは、
図3及び
図4に示したように、断熱層131と金属薄膜132との積層材で構成された袋部13と、袋部13の内部に収納された断熱材15とを有する。そして、断熱材15は、袋部の一方の面側及び他方の面側のうちいずれか一方にのみ配置される。
【0021】
袋部13は、
図3及び
図4に示したように、断熱層131に金属薄膜132を積層したシート状の素材で構成される袋状の部分である。本実施形態の収納袋では、袋部13は、左右の端部と、上端部とに、溶着部133が設けられる。溶着部では、袋部13を構成する断熱層が熱溶着によって、閉じられている。袋部13の下端部は、乾熱層131及び金属薄膜132が折り重なった部分となっており、溶着部は設けられていない。本実施形態の収納袋1aを製造する際には、袋部13は、左右の端部が溶着されており、上端部は開口となっているものを使用する。上端部の開口から保冷材12と断熱材15とを入れて、上端部を溶着することで収納袋1aを製造することができる。
【0022】
本実施形態の収納袋では、袋部13は保護袋14に収納された状態となっている。保護袋14は、熱可塑性樹脂で構成されている。保護袋14の左右の端部及び上下の端部には、溶着部141が設けられている。本実施形態の収納袋1aを製造する際には、保護袋14は、左右の端部及び下端部が溶着されているものを使用する。上端部の開口から袋部13を入れて、上端部を溶着することで収納袋1aを製造することができる。
【0023】
本実施形態の収納袋1aでは、冷却対象物に接する面若しくは冷却対象物に対向する面がいずれか、冷却対象物の反対側になる面がいずれか、又は断熱材15がいずれの面に配置されているかを示す表示部171が袋部13に設けられている。本実施形態の収納袋1aでは、袋部の一方の面と袋部の他方の面にひとつずつ表示部171が設けられている。袋部13の中に収められた断熱材15は、袋部13の外からは視認できないが、表示部を設けることにより、収納袋のいずれの面を冷却対象物側となるように配置して使用すればよいか、簡便に判別することが可能になる。
【0024】
表示部は、
図2及び
図3の例に示したように、例えば、「外側」、「内側」などの文字による区別であってもよいし、絵による区別、記号による区別、色彩による区別、形状による区別であってもよい。絵、記号、色彩、又は形状による区別の場合、表面と裏面とで収納袋の形状が相違するようにして、説明書において、いずれの絵、記号、色彩、又は形状が日光が照射する側になるのかを説明すればよい。
【0025】
本実施形態の収納袋1aでは、
図1、
図3、及び
図4に示したように、「外側」の表示をした側に断熱材15が配置され、「内側」の表示を下側に保冷材12が配置される。
【0026】
表示部は、例えば、文字等の表示を印刷したシール等のラベルで構成してもよいし、袋部又は保護袋に文字等を印刷するして構成してもよい。
【0027】
本実施形態の例では、断熱材15は、断熱層154と、金属薄膜153とを有する第1断熱材151と、断熱層からなる第2断熱材152とで構成される。なお、第2断熱材152にも金属薄膜を積層してもよい。第1断熱材151と、第2断熱材152とは、互いに接合されておらず、重ねた状態で袋部13の中に入れられる。このため、第1断熱材151と第2断熱材152との間に空気が含まれる。この空気の存在により、冷却対象物の反対側の面における断熱効果がより高められ、保冷効果がより長くなるように構成している。
【0028】
本実施形態の例では、第1断熱材151は、
図3に示したように、袋部13の外寄りに配置され、第2断熱材152は、袋部13の内寄りに配置される。この構成では、保冷効果の持続時間をより長くすることが可能である。なお、袋部の外寄りとは、袋部の表面に近い方向を指し、袋部の内寄りとは袋部の中に近い方向を指す。
【0029】
本実施形態の収納袋1aでは、袋部13を構成する断熱層131として、気泡緩衝材を採用している。断熱層131を構成する気泡緩衝材の上に、金属薄膜132を積層しているため、
図1及び
図2に示したように、金属薄膜には、気泡緩衝材の気泡の形状に対応する凹凸に起因する模様が現れる。この凹凸模様は、透明な保護袋14を介して視認され、収納袋の美感を高める。
【0030】
図5に示したように、断熱層131を構成する気泡緩衝材は、2枚の熱可塑性樹脂製のシート161と、当該2枚のシートの間に配される独立気泡163を形成する熱可塑性樹脂製のシート162とを接合した形状を有する。独立気泡は、一方のシート161から他方のシート161に向かって突出する円形の凸部として構成される。凸部の頂点は他方のシートに接し、凸部の底は一方のシートに接する形状である。気泡緩衝材は、2枚のシート161により、表裏面が比較的に平滑な面として構成される。気泡緩衝材の2枚のシート161のいずれか一方が、袋部の内面を構成する。内面は、比較的に平滑な面であるため、保冷材12又は断熱材15を挿入する際に保冷材等が引っ掛かりにくくなる。
【0031】
本実施形態の収納袋1aは、袋部13の一方の面側及び他方の面側のうちいずれか一方にのみ断熱材15を配置し、袋部13と保冷材12との間には前記断熱材15の他は別の断熱材が配置されない構成である。このため、収納袋1aの厚みが過度に大きくならず、嵩張らない。例えば、冷感衣服に収納袋を固定した場合に、冷感衣服の着心地が損なわれにくい。
【0032】
[第2実施形態]
本実施形態の収納袋1bは、上記の収納袋1aと比較して、
図6に示したように、第1断熱材151と、第2断熱材152とを、袋部13に入れる際の積層順が異なる。収納袋1bでは、袋部13の外寄りに第2断熱材152が配置され、袋部13の内寄りに第1断熱材151が配置された状態、かつ第1断熱材151と第2断熱材152とが重ねられた状態で、第1断熱材151と第2断熱材152とが袋部13に挿入されている。保冷材12が、収納袋1aと同様に内側になるように袋部13に挿入されている。
【0033】
[第3実施形態]
本実施形態の収納袋1cは、上記の収納袋1aと比較して、
図7に示したように、断熱材15cを単一の断熱層のみで構成している点が異なる。断熱材15cは、冷却対象物の反対側、すなわち外側になるように袋部13に挿入されている。保冷材12は、収納袋1aと同様に冷却対象物側、すなわち内側になるように袋部13に挿入されている。
【0034】
本実施形態の収納袋1cは、断熱材15cを冷却対象物の反対側に備えるため、収納袋1cの外側から照射される日光若しくは照明、又は外気温により保冷材が溶解することを遅らせて、保冷効果を長時間持続させることができる。しかしながら、断熱材15cには金属薄膜が配されておらず、また断熱材が単一であることから複数の断熱材の間に空気層を含まない構成となっている。このため、上記の収納袋1a又は収納袋1bに比べれば、保冷効果の持続時間は短くなる。
【0035】
上記の各実施形態における収納袋において、袋部を構成する断熱層、第2断熱材を構成する断熱層、断熱材を構成する断熱層は、発泡合成樹脂製のシート、又はシート状の気泡緩衝材で構成することができる。気泡緩衝材としては、少なくとも1枚の熱可塑性樹脂シートと、独立気泡を形成する熱可塑性樹脂製のシートとを接合したものを使用することができる。
【0036】
上記の各実施形態における収納袋において、袋部を構成する金属薄膜、又は第1断熱材の金属薄膜は、アルミニウム箔、又は銅箔などの金属で構成した薄膜で構成することができる。金属薄膜を断熱層の上に積層する方法は特に限定されず、例えば、金属の蒸着により行ってもよいし、金属の薄膜を断熱層に対して接着してもよい。
【0037】
表示部は、保護袋14に設けてもよいし、保護袋14と袋部13との両方に設けてもよい。また、表示部は、袋部又は保護袋の一方の面又は他方の面のみに設ける構成としてもよい。
【0038】
断熱層を構成する発泡合成樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン;ナイロン;ポリウレタン又はポリスチレンなどのプラスチックを使用することができる。
【0039】
保護袋を構成する熱可塑性樹脂、又は気泡緩衝材を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン;ナイロン;又はポリエチレンテレフタレートなどを使用することができる。
【0040】
上記の各実施形態に係る収納袋は、食品、飲料などを冷却する際に使用することができるし、衣服に着脱可能に固定して、衣服を着用する者の身体を冷却する際に好適に使用することができる。したがって、冷却対象物としては、例えば、食品、飲料、ヒトの身体、動物の身体などが挙げられる。
【0041】
本明細書では、衣服を着用する者の身体を冷却する衣服を、冷感衣服と称する。そのような衣服としては、ジャケット、ベストなどの上衣、ズボン、スカートなどの下衣、上衣と下衣とを一体にしたつなぎ服などが挙げられる。収納袋を衣服に着脱可能に固定するには、例えば、衣服に設けたポケットに収納袋を収納したり、面ファスナーにより収納袋を衣服に固定したり、釦により週の袋を衣服に固定したり、紐により収納袋を衣服に固定することにより、実現することができる。
【0042】
袋部、保護袋、断熱材の形状は特に限定されず、収納する保冷材の形状に合わせて変更することができる。例えば、一方の面又は他方の面から見た形状が、正方形、若しくは長方形などの矩形、楕円、若しくは新円などの円形、三角形などの多角形などにすることができる。袋部、保護袋を構成する方法は、溶着に限定されず、縫合などの手段を採用してもよい。袋部、保護袋を溶着等により接合する位置も特に限定されず、適宜変更することが可能である。
【0043】
保護袋、袋部を構成する各部材の厚みは適宜変更することができる。
【実施例0044】
保冷材収納袋の実施例を挙げて、より具体的に説明する。本発明の構成は、以下に挙げる実施例に限定されるものではない。以下では、実施例1、実施例2、及び比較例1に係る保冷材収納袋を作成し、それぞれの保冷効果の持続時間を確認した。
【0045】
[実施例1]
以下に示す方法で、
図3に示した形状を有する保冷材収納袋を作製した。材料として、以下のものを準備した。保護袋として、厚みが20μmの透明なポリエチレン製のシート材で構成された袋を準備した。保護袋は、長手方向の長さが170mmであり、短手方向の長さが140mmであり、3辺が熱溶着により接合されている。残りの上端部の一辺が、開口部となっている。
【0046】
袋部として、厚みが20μmの透明なポリエチレン製の2枚のシートと、当該2枚のシートとの間に配置される独立気泡を形成するシートとを有する気泡緩衝材と;当該気泡緩衝材に積層された厚み5μmアルミニウム薄膜とからなるシート材で構成された袋を準備した。袋部は、長方形状のシート材のポリエチレン製のシートが内側となるように、重なるように中ほどで折って、左右の縁を熱溶着により接合した形状を有する。左右の2辺は溶着部であり、下端部の一辺は折り返した部分であり、上端部の一辺が開口部となっている。袋部の寸法は、上記の保護袋に収納することができる程度に構成されている。
【0047】
保冷材は、市販の保冷材を使用した。当該保冷材は、プラチックフィルムで構成された袋の中に保冷用のゲルが封入されたものである。保冷用のゲルには、水とポリアクリル酸ナトリウムと防腐剤と形状安定剤とが含まれる。保冷用のゲルは、氷結前の状態においてはゲル状であり、氷結することにより固体となる。保冷用のゲルが固体から液体に相転移する際の吸熱を利用して、対象物を冷却する。
【0048】
断熱材は、厚み1.0mmの発泡ポリエチレンのシートに対して、厚み2μmのアルミニウム薄膜を積層した第1断熱材と、厚み3.0mmの発泡ポリスチレンのシートである第2断熱材とを使用した。第1断熱材と、第2断熱材とは、互いに接合されておらず、重ねて使用する。第1断熱材と、第2断熱材との間には、空気層が形成される。
【0049】
上記の袋部の中に、上記の保冷材と、第1断熱材と、第2断熱材とを重ねて収納する。袋部の上端の開口部を熱溶着により封止した。封止した袋部を上記の保護袋の中に入れて、保護袋の開口部を熱溶着して、実施例1に係る保冷材用保護袋を得た。保冷材と、第1断熱材と、第2断熱材とを袋部に入れる際には、収納袋の外寄りの面、すなわち冷却対象物の反対側の面からみて、第1断熱材、第2断熱材、保冷材の順になるように、第1断熱材、第2断熱材、及び保冷材を重ねて、袋部に入れた。この際、袋部の内面は、気泡緩衝材を構成するポリエチレン製のシートが露出しており、凹凸の少ない滑面として構成される。このため、第1断熱材、第2断熱材、及び保冷材を袋部に入れる際に、袋部の内面に第1断熱材等が引っ掛かることなく円滑に挿入することができた。
【0050】
なお、袋部の金属薄膜であるアルミニウム箔、第1断熱材の金属薄膜であるアルミニウム箔は、いずれも保冷材収納袋の外側にアルミニウム箔が配置される構成である。
【0051】
[実施例2]
保冷材と、第1断熱材と、第2断熱材とを袋部に入れる際に、収納袋の外寄りの面、すなわち冷却対象物の反対側の面からみて、第2断熱材、第1断熱材、保冷材の順になるように、第1断熱材、第2断熱材、及び保冷材を重ねて、袋部に入れるように変更した点以外は、実施例1の保冷材収納袋と同様の構成で、実施例2に係る保冷材収納袋を作製した。
【0052】
[比較例1]
比較のために、実施例1で使用したのと同様の保冷材を用意した。この保冷材を、保護袋で覆うことなく、単独で使用した。
【0053】
[比較例2]
比較のために、
図8に示したように、厚み1.0mmの発泡ポリエチレンのシートに対して、厚み5μmのアルミニウム薄膜を積層したシート状の積層材で構成した袋部13cに、実施例1で使用したのと同様の保冷材12を収納して、これを比較例2に係る保冷材収納袋1dとした。
【0054】
[保冷効果の評価1]
実施例2に係る保冷材収納袋、比較例1に係る保冷材、比較例2に係る保冷材収納袋のそれぞれを、-20℃の冷凍庫に入れて、保冷材の保冷ゲルを芯まで氷結させた。
【0055】
氷結させたそれぞれの保冷材収納袋と保冷材とを、直射日光が当たらない室内に設置した断熱シートの上に静置した。断熱シートの上に実施例2に係る保冷材収納袋を載置するに際しては、
図9に示したように、第1断熱材151、及び第2断熱材152が配される面、すなわち
図6に示した「外側」が、上になるように配置した。
図9に示したように、保冷材収納袋1bと断熱シート2との間に温度計3を挿入して、午前8:30から午後6時半までの温度の変化を30分ごとに記録した。なお試験を行った室内の温度が27℃から31℃の範囲内に収まる環境で試験を実施した。断熱シート2としては、厚み25mmの発泡ポリエチレンのシートを使用した。断熱シートは、保冷材収納袋を置いた地面の温度の影響を排除するために使用した。温度を計測した結果を
図11のグラフに示す。
【0056】
図11に示しように、保冷材を単独で使用した比較例1の場合は、試験開始後わずか3時間で保冷効果が失われ始めて、試験開始後6時間が経過した時点で日光が間接的に照射される側の反対側の面における温度が25℃を越えてしまった。また、比較例1の場合は、日光が照射される側とは反対側の面における温度が0℃を下回り過冷却の状態であった。
【0057】
図11に示しように、比較例2に係る保冷材収納袋の場合は、試験開始後5時間半で保冷効果が失われ始めて、試験開始後9時間が経過した時点で日光が照射される側の反対側の面における温度が25℃を越えてしまった。また、比較例2の保冷材用収納袋の場合は、日光が照射される側とは反対側の面における温度が5℃を下回り過冷却の状態であった。
【0058】
図11に示したように、実施例2に係る保冷材収納袋の場合は、急激に保冷効果が失われることはなく、試験開始後10時間以上が経過しても日光が間接的に照射される面の反対側の面における温度は25℃を下回っていた。本実施形態の保冷材収納袋では、温度が上昇しやすい保冷対象物の反対側において、断熱層と金属薄膜とを有する袋部と断熱材とを有する多層構造となっている。これにより、冷却対象物の反対側の面における熱伝達が抑制され、10時間以上も冷却効果を持続することが可能になった。また、実施例2の保冷材用収納袋の場合は、日光が間接的に照射される面とは反対側の面における温度が5℃を下回ることがなく、ヒトの身体、動物の身体、食品、又は飲料等を冷却するのに最適な温度であった。
【0059】
[保冷効果の評価2]
第1断熱材と第2断熱材との配置順と、保冷時間との関係を調べる目的で、上記の「保冷効果の評価1」と同様の方法により、実施例1に係る保冷材収納袋の保冷時間と、実施例2に係る保冷材収納袋の保冷時間とを検証した。環境温度は、25℃から26℃前後である。結果を
図12に示す。なお、断熱シートの上に実施例1に係る保冷材収納袋を載置するに際しては、
図9に示したのと同様に、第1断熱材151、及び第2断熱材152が配される面、すなわち
図4に示した「外側」が、上になるように、配置した。
【0060】
実施例1に係る保冷材収納袋の保冷効果の持続時間と、実施例2に係る保冷材収納袋の保冷効果の持続時間とを比較すると、実施例1に係る保冷材収納袋の方が保冷効果の持続時間が若干長くなることが分かった。詳細な機構は不明であるが、日光が照射される面に配された第1断熱材のアルミニウム箔が、赤外線を反射し、保冷材の昇温をより低減したものと思われる。
【0061】
次に、実施例1の保冷材収納袋又は比較例2に係る保冷材収納袋を、
図10のベスト4に固定して、冷感と保冷効果の持続効果を官能評価により確かめた。ベスト4の背中部分の内側には、ポケット41が設けられており、このポケット41に「内側」の表示部が着用者の肌側となるようにし、「外側」の表示部が着用者の肌側の反対側となるように保冷材収納袋を入れることにより、ベスト4に保冷材収納袋1aを着脱可能に固定した。
【0062】
上記のベスト4では、着用者の肩から延びる第1の部分42と、着用者の腰回の方向に延びる第2の部分43とが、長さを調節可能に構成された帯44で連結されている。帯44は、調節環45を備えており、帯44の長さを長くしたり短くしたりすることができるようになっている。第2の部分43の外側にも、保冷材収納袋1aを収納することができるポケット41が設けられている。
【0063】
着用者は、帯44の長さを短く調節することにより、第2の部分43に収納された保冷材収納袋1aが、着用者の脇の下に位置するように、調節することができるようになっている。
【0064】
上記のベスト4のポケット41に、実施例1に係る保冷材収納袋又は比較例2に係る保冷材収納袋を固定したベストを屋外で着用して、保冷効果の持続時間と、冷感とを比較した。比較例2に係る保冷材収納袋を使用した場合は、収納袋が身体に触れる点が過度に冷却されて冷たく感じると共に、保冷効果は短時間で失われてしましった。
【0065】
実施例1に係る保冷材収納袋を使用した場合は、収納袋が身体に触れる点が過度に冷却されることはなく、適度な冷感を得ることができた。保冷効果は、比較例2の保冷材収納袋に比して、長時間持続した。
【0066】
実施例1に係る保冷材収納袋は、日光が照射される側、すなわち外側に断熱材を配置した構成であり、日光が照射される側の反対側、すなわち内側には断熱材を配置しない。このため、保冷材収納袋の厚みが過度に大きくならない。ベストのポケットに保冷材収納袋を入れた際に、保冷材収納袋の厚みが過度に大きくならないので、ベストに保冷材収納袋を固定したことによる着用時の違和感を小さくすることができた。