(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189704
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】近赤外線吸収ガラスおよび近赤外線カットフィルタ
(51)【国際特許分類】
C03C 4/08 20060101AFI20221215BHJP
C03C 3/17 20060101ALI20221215BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
C03C4/08
C03C3/17
G02B5/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002975
(22)【出願日】2022-01-12
(31)【優先権主張番号】P 2021098174
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021172620
(32)【優先日】2021-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩一
(72)【発明者】
【氏名】塩田 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】金子 将士
【テーマコード(参考)】
2H148
4G062
【Fターム(参考)】
2H148CA06
2H148CA12
2H148CA17
4G062AA04
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4G062NN12
(57)【要約】
【課題】薄肉化によっても可視域(紫色領域~赤色領域)の透過率が高く、近赤外線カット能力に優れ、かつ耐候性の低下の抑制が可能な近赤外線吸収ガラスを提供すること。
【解決手段】Pイオン、Liイオン、Cuイオン、Alイオン、Baイオン、Srイオン、Caイオン、Mgイオン、Znイオン、Kイオン、Naイオン、Laイオン、GdイオンおよびYイオンからなる群から選ばれる主要カチオンを4種以上含み、Pイオン、BaイオンおよびCuイオンを必須カチオンとして含み、アニオン%表示のガラス組成において、Oイオンの含有量が90.0アニオン%以上であり、原子%表示のガラス組成において、Pイオンの含有量に対するOイオンの含有量の比率(Oイオン/Pイオン)が3.15以下であり、酸化物基準のモル%表示のガラス組成において、B2O3とSiO2との合計含有量(B2O3+SiO2)が3.0モル%以下であり、MgOとAl2O3との合計含有量(MgO+Al2O3)が8.0モル%以下であり、Li2O、Na2OおよびK2Oの合計含有量(Li2O+Na2O+K2O)が15モル%以下であり、CuO含有量がα1%以上である近赤外線吸収ガラス。α1は式1:α1=70400×exp(-2.855×R)により算出される値であり、式1中、Rは上記比率(Oイオン/Pイオン)である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Pイオン、Liイオン、Cuイオン、Alイオン、Baイオン、Srイオン、Caイオン、Mgイオン、Znイオン、Kイオン、Naイオン、Laイオン、GdイオンおよびYイオンからなる群から選ばれる主要カチオンを4種以上含み、
Pイオン、BaイオンおよびCuイオンを必須カチオンとして含み、
アニオン%表示のガラス組成において、Oイオンの含有量が90.0アニオン%以上であり、
原子%表示のガラス組成において、Pイオンの含有量に対するOイオンの含有量の比率(Oイオン/Pイオン)が3.15以下であり、
酸化物基準のモル%表示のガラス組成において、
B2O3とSiO2との合計含有量(B2O3+SiO2)が3.0モル%以下であり、
MgOとAl2O3との合計含有量(MgO+Al2O3)が8.0モル%以下であり、
Li2O、Na2OおよびK2Oの合計含有量(Li2O+Na2O+K2O)が15モル%以下であり、
CuO含有量がα1%以上であり、
α1は下記式1:
(式1)
α1=70400×exp(-2.855×R)
により算出される値であり、
前記式1中、
Rは前記比率(Oイオン/Pイオン)である、
近赤外線吸収ガラス。
【請求項2】
Pイオン、Liイオン、Cuイオン、Alイオン、Baイオン、Srイオン、Caイオン、Mgイオン、Znイオン、Kイオン、Naイオン、Laイオン、GdイオンおよびYイオンからなる群から選ばれる主要カチオンを4種以上含み、
Pイオン、BaイオンおよびCuイオンを必須カチオンとして含み、
アニオン%表示のガラス組成において、Oイオンの含有量が90.0アニオン%以上であり、
原子%表示のガラス組成において、Pイオンの含有量に対するOイオンの含有量の比率(Oイオン/Pイオン)が3.15以下であり、
酸化物基準のモル%表示のガラス組成において、
B2O3とSiO2との合計含有量(B2O3+SiO2)が3.0モル%以下であり、
MgOとAl2O3との合計含有量(MgO+Al2O3)が8.0モル%以下であり、
Li2O、Na2OおよびK2Oの合計含有量(Li2O+Na2O+K2O)が15モル%以下であり、
下記式2:
(式2)
C-3200×exp(-2.278×R)≧0
を満たし、
前記式2中、
Cは、ガラスのモル体積あたりのCuO含有量(単位:ミリモル/cc)であり、
Rは前記比率(Oイオン/Pイオン)である、
近赤外線吸収ガラス
【請求項3】
Pイオン、Liイオン、Cuイオン、Alイオン、Baイオン、Srイオン、Caイオン、Mgイオン、Znイオン、Kイオン、Naイオン、Laイオン、GdイオンおよびYイオンからなる群から選ばれる主要カチオンを4種以上含み、
Pイオン、BaイオンおよびCuイオンを必須カチオンとして含み、
アニオン%表示のガラス組成において、Oイオンの含有量が90.0アニオン%以上であり、
原子%表示のガラス組成において、Pイオンの含有量に対するOイオンの含有量の比率(Oイオン/Pイオン)が3.15以下であり、
酸化物基準のモル%表示のガラス組成において、
B2O3とSiO2との合計含有量(B2O3+SiO2)が3.0モル%以下であり、
MgOとAl2O3との合計含有量(MgO+Al2O3)が8.0モル%以下であり、
Li2O、Na2OおよびK2Oの合計含有量(Li2O+Na2O+K2O)が15モル%以下であり、
下記式3:
(式3)
A1={O(P)-O(others)}×Cu
によって算出されるA1が2500以上であり、
前記式3中、
O(P)は、酸化物基準のガラス組成においてPイオンの酸化物を構成する酸素量を示し、
O(others)は、酸化物基準のガラス組成において前記主要カチオンの酸化物を構成する酸素量から前記O(P)を除いた酸素量を示し、
Cuは、酸化物基準のガラス組成におけるモル%表示のCuO含有量を示す、
近赤外線吸収ガラス。
【請求項4】
Pイオン、Liイオン、Cuイオン、Alイオン、Baイオン、Srイオン、Caイオン、Mgイオン、Znイオン、Kイオン、Naイオン、Laイオン、GdイオンおよびYイオンからなる群から選ばれる主要カチオンを4種以上含み、
Pイオン、BaイオンおよびCuイオンを必須カチオンとして含み、
アニオン%表示のガラス組成において、Oイオンの含有量が90.0アニオン%以上であり、
原子%表示のガラス組成において、Pイオンの含有量に対するOイオンの含有量の比率(Oイオン/Pイオン)が3.15以下であり、
酸化物基準のモル%表示のガラス組成において、
B2O3とSiO2との合計含有量(B2O3+SiO2)が3.0モル%以下であり、
MgOとAl2O3との合計含有量(MgO+Al2O3)が8.0モル%以下であり、
Li2O、Na2OおよびK2Oの合計含有量(Li2O+Na2O+K2O)が15モル%以下であり、
下記式4:
(式4)
A2={O(P)-O(others)}×C
によって算出されるA2が700以上であり、
前記式4中、
Cは、ガラスのモル体積あたりのCuO含有量(単位:ミリモル/cc)であり、
O(P)は、酸化物基準のガラス組成においてPイオンの酸化物を構成する酸素量を示し、
O(others)は、酸化物基準のガラス組成において前記主要カチオンの酸化物を構成する酸素量から前記O(P)を除いた酸素量を示す、
近赤外線吸収ガラス。
【請求項5】
Pイオン、Liイオン、Cuイオン、Alイオン、Baイオン、Srイオン、Caイオン、Mgイオン、Znイオン、Kイオン、Naイオン、Laイオン、GdイオンおよびYイオンからなる群から選ばれる主要カチオンを4種以上含み、
Pイオン、BaイオンおよびCuイオンを必須カチオンとして含み、
アニオン%表示のガラス組成において、Oイオンの含有量が90.0アニオン%以上であり、
原子%表示のガラス組成において、Pイオンの含有量に対するOイオンの含有量の比率(Oイオン/Pイオン)が3.15以下であり、
酸化物基準のモル%表示のガラス組成において、
B2O3とSiO2との合計含有量(B2O3+SiO2)が3.0モル%以下であり、
MgOとAl2O3との合計含有量(MgO+Al2O3)が8.0モル%以下であり、
Li2O、Na2OおよびK2Oの合計含有量(Li2O+Na2O+K2O)が15モル%以下であり、
CuO含有量がα2%以上であり、
α2は下記式5:
(式5)
α2=76522×exp(-2.855×R)
により算出される値であり、
前記式5中、
Rは前記比率(Oイオン/Pイオン)である、
近赤外線吸収ガラス。
【請求項6】
Pイオン、Liイオン、Cuイオン、Alイオン、Baイオン、Srイオン、Caイオン、Mgイオン、Znイオン、Kイオン、Naイオン、Laイオン、GdイオンおよびYイオンからなる群から選ばれる主要カチオンを4種以上含み、
Pイオン、BaイオンおよびCuイオンを必須カチオンとして含み、
アニオン%表示のガラス組成において、Oイオンの含有量が90.0アニオン%以上であり、
原子%表示のガラス組成において、Pイオンの含有量に対するOイオンの含有量の比率(Oイオン/Pイオン)が3.15以下であり、
酸化物基準のモル%表示のガラス組成において、
B2O3とSiO2との合計含有量(B2O3+SiO2)が3.0モル%以下であり、
MgOとAl2O3との合計含有量(MgO+Al2O3)が8.0モル%以下であり、
Li2O、Na2OおよびK2Oの合計含有量(Li2O+Na2O+K2O)が15モル%以下であり、
下記式6:
(式6)
C-3478×exp(-2.278×R)≧0
を満たし、
前記式6中、
Cは、ガラスのモル体積あたりのCuO含有量(単位:ミリモル/cc)であり、
Rは前記比率(Oイオン/Pイオン)である、
近赤外線吸収ガラス。
【請求項7】
酸化物基準のモル%表示のガラス組成において、
Li2O含有量に対するBaO含有量の比率(BaO/Li2O)が1.0以上であり、
かつ下記(1)~(4):
(1)BaO含有量に対する、CaO、SrOおよびZnOの合計含有量の比率((CaO+SrO+ZnO)/BaO)が0.02以上、
(2)MgOとBaOとの合計含有量に対する、CaO、SrOおよびZnOの合計含有量の比率((CaO+SrO+ZnO)/(MgO+BaO))0.02以上、
(3)BaO含有量に対する、K2O+CaO+SrOの合計含有量の比率((K2O+CaO+SrO)/BaO)が0.12以上、
(4)MgOとBaOとの合計含有量に対する、K2O、CaO、SrOおよびZnOの合計含有量の比率((K2O+CaO+SrO+ZnO)/(MgO+BaO))が0.12以上、
の1つ以上を満たす、請求項1~6のいずれか1項に記載の近赤外線吸収ガラス。
【請求項8】
酸化物基準のモル%表示のガラス組成において、前記主要カチオンの酸化物の合計含有量が90.0%以上である、請求項1~7のいずれか1項に記載の近赤外線吸収ガラス。
【請求項9】
酸化物基準のモル%表示のガラス組成において、
P2O5含有量が40.0~65.0モル%、
CuO含有量が9.0~25.0モル%、
BaO含有量が5.0~50.0モル%、
Li2O、Na2OおよびK2Oの合計含有量(Li2O+Na2O+K2O)が1.0~15.0モル%、
SiO2含有量が2.0モル%以下、
B2O3含有量が2.0モル%以下、
Al2O3含有量が0.5~7.0モル%以下、
Li2O含有量が7.0モル%以下、
ZnO含有量が10.0モル%以下、
PbO含有量が2.0モル%以下、
MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計含有量に対するMgO含有量の比率(MgO/(MgO+CaO+SrO+BaO))が0.3以下、
原子%表示のガラス組成において、Pイオンの含有量に対するOイオンの含有量の比率(Oイオン/Pイオン)が3.50以下であり、
アニオン%表示のガラス組成において、Fイオンの含有量が10.0アニオン%以下である、
近赤外線吸収ガラス。
【請求項10】
下記(1)~(4):
(1)BaO含有量に対する、CaO、SrOおよびZnOの合計含有量の比率((CaO+SrO+ZnO)/BaO)が0.02以上、
(2)MgOとBaOとの合計含有量に対する、CaO、SrOおよびZnOの合計含有量の比率((CaO+SrO+ZnO)/(MgO+BaO))0.02以上、
(3)BaO含有量に対する、K2O+CaO+SrOの合計含有量の比率((K2O+CaO+SrO)/BaO)が0.12以上、
(4)MgOとBaOとの合計含有量に対する、K2O、CaO、SrOおよびZnOの合計含有量の比率((K2O+CaO+SrO+ZnO)/(MgO+BaO))が0.12以上、
の1つ以上を満たす、請求項9に記載の近赤外線吸収ガラス。
【請求項11】
厚み0.25mm以下で、波長620~650nmにおいて外部透過率が50%となる厚みに換算して、波長400nmにおける外部透過率が75%以上および波長1200nmにおける外部透過率が7%以下である透過率特性を有し、かつ
100~300℃における平均線膨張係数が135×10-7/K以下である近赤外線吸収ガラス。
【請求項12】
厚み0.23mm以下で、波長625~650nmにおいて外部透過率が50%となる厚みに換算して、波長400nmにおける外部透過率が80%以上および波長1200nmにおける外部透過率が5%以下である透過率特性を有し、かつ
100~300℃における平均線膨張係数が130×10-7/K以下である、請求項11に記載の近赤外線吸収ガラス。
【請求項13】
波長550nm以上で反射損失を含む外部透過率が50%となる波長である半値λT50が633nmとなるガラスの厚みが0.25mm以下であり、
前記厚みにおいて、波長600nmにおける反射損失を含む外部透過率T600が50%以上であり、かつ波長1200nmにおける反射損失を含む外部透過率T1200が30%以下である、請求項1~12のいずれか1項に記載の近赤外線吸収ガラス。
【請求項14】
波長550nm以上で反射損失を含む外部透過率が50%となる波長である半値λT50が633nmとなるガラスの厚みが0.25mm以下であり、
前記厚みにおいて、波長600nmにおける反射損失を含む外部透過率T600が50%以上であり、かつ波長1200nmにおける反射損失を含む外部透過率T1200がβ1%以下であり、
β1は下記式B1:
(式B1)
β1=64×R-170
により算出される値であり、
前記式B1中、
Rは前記比率(Oイオン/Pイオン)である、請求項1~12のいずれか1項に記載の近赤外線吸収ガラス。
【請求項15】
厚み0.16mm換算の透過率特性として、反射損失を含む外部透過率が50%となる波長である半値λT50が600nm~650nmの範囲にあり、波長1200nmにおける反射損失を含む外部透過率T1200が30%以下であり、かつ波長400nmにおける反射損失を含む外部透過率T400が70%以上である、請求項1~12のいずれか1項に記載の近赤外線吸収ガラス。
【請求項16】
厚み0.21mm換算の透過率特性として、反射損失を含む外部透過率が50%となる波長である半値λT50が600nm~650nmの範囲にあり、波長1200nmにおける反射損失を含む外部透過率T1200が25%以下であり、かつ波長400nmにおける反射損失を含む外部透過率T400が70%以上である、請求項1~12のいずれか1項に記載の近赤外線吸収ガラス。
【請求項17】
波長550nm以上で反射損失を含む外部透過率が50%となる波長である半値λT50が645nmとなるガラスの厚みが0.25mm以下であり、
前記厚みにおいて、波長600nmにおける反射損失を含む外部透過率T600が50%以上であり、かつ波長1200nmにおける反射損失を含む外部透過率T1200が30%以下である、請求項1~12のいずれか1項に記載の近赤外線吸収ガラス。
【請求項18】
波長550nm以上で反射損失を含む外部透過率が50%となる波長である半値λT50が645nmとなるガラスの厚みが0.25mm以下であり、
前記厚みにおいて、波長600nmにおける反射損失を含む外部透過率T600が50%以上であり、かつ波長1200nmにおける反射損失を含む外部透過率T1200がβ1%以下であり、
前記β1は下記式B1:
(式B1)
β1=64×R-170
により算出される値であり、
前記式B1中、
Rは前記比率(Oイオン/Pイオン)である、請求項1~12のいずれか1項に記載の近赤外線吸収ガラス。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか1項に記載の近赤外線吸収ガラスからなる近赤外線カットフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外線吸収ガラスおよび近赤外線カットフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のスマートフォン等に代表される小型カメラにおいては、得られた画像情報を単にデジタル化するだけでなく、その画像情報に対して種々の電算処理を行うことによって画像を再構成する。例えば、特定の対象を抽出して、画像の色彩やコントラストを調整することが主流になってきている。その際、光学素子中の光の反射によって、本来存在しない色情報が撮像素子に入力されると、その情報を取り除かなければならず、望ましくない。
【0003】
近赤外線カットフィルタは、撮像素子の感度波長域における不要な近赤外光(波長700~1200nm)をカットする機能を有する。近赤外線カットフィルタは、一般に撮像素子の直前に設けられることが多い。
【0004】
近赤外線カットフィルタとしては、近赤外線吸収ガラスを基材とし、平板上に研磨加工されたものが広く用いられている。
【0005】
近赤外線吸収ガラスは、一般にCuイオンを含む。近赤外線吸収ガラスの分光透過特性の一例を
図1に示す。なお、
図1は、本発明を何ら限定するものではない。波長700~1200nm付近の光吸収特性は、ガラス中のCuイオン(Cu
2+)によって発現する。中でも、CuイオンとともにPイオンを含むガラスは、Cuイオン(Cu
2+)のもつ近赤外線吸収特性を広範な波長域で示すことができるため、近赤外線カットフィルタ用のガラスとして有用である(例えば特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-38719号公報
【特許文献2】CN110255897
【特許文献3】特開昭55-3336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図1の波長600nm以降の透過率カーブおいて、透過率50%となる波長は「半値」と呼ばれ、近赤外線カットフィルタの主要規格の一つになっている。半値は、フィルタの仕様によって異なるが、波長600nm~650nmの範囲に設定されることが多い。半値を所望の値にする一般的な方法としては、ランベルト-ベールの法則にしたがい、ガラス基材の板厚か、ガラス中のCuイオン(Cu
2+)濃度のいずれかを調節する方法がある。
【0008】
近赤外線カットフィルタには、近赤外線をカットする能力に優れること(即ち所望の半値を有しながら近赤外光の透過率が低いこと)とともに、可視域(紫色領域~赤色領域)の透過率が高いことも求められる。
【0009】
また、近年、スマートフォン等に搭載される撮像素子モジュールには、小型化と高性能化の両立が求められており、近赤外線カットフィルタの板厚は薄肉化が要求されている。そのため、近赤外線吸収ガラスの厚みも、従来の1mmから、近年は0.45mm、0.3mmまたは0.2mm程度まで薄肉化され、更には0.1mm台に薄肉化することも望まれている。
【0010】
近赤外線吸収ガラスを単に薄肉化すると、近赤外線吸収に必要なCuOの光学濃度(モル数×厚み)が減少することにより、近赤外線の吸収効率は低下してしまう。これを解決するためにはCuOを増量することが考えられる。しかし、CuOを増量するのみでは、短波長側の透過率が低下する傾向があるために、可視域(紫色領域~赤色領域)の透過率と近赤外線の吸収を共に維持することは困難である。
【0011】
更に、近赤外線吸収ガラスには、高温高湿環境下における使用に好適な近赤外線カットフィルタを提供するために、高温高湿環境下における耐候性の低下が抑制されていることが望まれる。しかし、本発明者の検討によれば、可視域(紫色領域~赤色領域)の透過率と近赤外線の吸収を共に維持することに加えて、耐候性の低下を抑制することは、容易ではない。
【0012】
上記に鑑み、本発明の一態様は、薄肉化によっても可視域(紫色領域~赤色領域)の透過率が高く、近赤外線カット能力に優れ、かつ耐候性の低下の抑制が可能な近赤外線吸収ガラス、および、かかる近赤外線吸収ガラスからなる近赤外線カットフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様は、
Pイオン、Liイオン、Cuイオン、Alイオン、Baイオン、Srイオン、Caイオン、Mgイオン、Znイオン、Kイオン、Naイオン、Laイオン、GdイオンおよびYイオンからなる群から選ばれる主要カチオンを4種以上含み、
Pイオン、BaイオンおよびCuイオンを必須カチオンとして含み、
アニオン%表示のガラス組成において、Oイオンの含有量が90.0アニオン%以上であり、
原子%表示のガラス組成において、Pイオンの含有量に対するOイオンの含有量の比率(Oイオン/Pイオン)(以下、「O/P比率」とも呼ぶ。)が3.15以下であり、
酸化物基準のモル%表示のガラス組成において、
B2O3とSiO2との合計含有量(B2O3+SiO2)が3.0モル%以下であり、
MgOとAl2O3との合計含有量(MgO+Al2O3)が8.0モル%以下であり、
Li2O、Na2OおよびK2Oの合計含有量(Li2O+Na2O+K2O)が15モル%以下であり、
CuO含有量がα1%以上であり、
α1は下記式1:
(式1)
α1=70400×exp(-2.855×R)
により算出される値であり、
上記式1中、
Rは上記比率(Oイオン/Pイオン)である、
近赤外線吸収ガラス(以下、「ガラス1」とも呼ぶ。)
に関する。
【0014】
また、本発明の一態様は、
Pイオン、Liイオン、Cuイオン、Alイオン、Baイオン、Srイオン、Caイオン、Mgイオン、Znイオン、Kイオン、Naイオン、Laイオン、GdイオンおよびYイオンからなる群から選ばれる主要カチオンを4種以上含み、
Pイオン、BaイオンおよびCuイオンを必須カチオンとして含み、
アニオン%表示のガラス組成において、Oイオンの含有量が90.0アニオン%以上であり、
原子%表示のガラス組成において、Pイオンの含有量に対するOイオンの含有量の比率(Oイオン/Pイオン)が3.15以下であり、
酸化物基準のモル%表示のガラス組成において、
B2O3とSiO2との合計含有量(B2O3+SiO2)が3.0モル%以下であり、
MgOとAl2O3との合計含有量(MgO+Al2O3)が8.0モル%以下であり、
Li2O、Na2OおよびK2Oの合計含有量(Li2O+Na2O+K2O)が15モル%以下であり、
下記式2:
(式2)
C-3200×exp(-2.278×R)≧0
を満たし、
上記式2中、
Cは、ガラスのモル体積あたりのCuO含有量(単位:ミリモル/cc)であり、
Rは上記比率(Oイオン/Pイオン)である、
近赤外線吸収ガラス(以下、「ガラス2」とも呼ぶ。)
に関する。
【0015】
また、本発明の一態様は、
Pイオン、Liイオン、Cuイオン、Alイオン、Baイオン、Srイオン、Caイオン、Mgイオン、Znイオン、Kイオン、Naイオン、Laイオン、GdイオンおよびYイオンからなる群から選ばれる主要カチオンを4種以上含み、
Pイオン、BaイオンおよびCuイオンを必須カチオンとして含み、
アニオン%表示のガラス組成において、Oイオンの含有量が90.0アニオン%以上であり、
原子%表示のガラス組成において、Pイオンの含有量に対するOイオンの含有量の比率(Oイオン/Pイオン)が3.15以下であり、
酸化物基準のモル%表示のガラス組成において、
B2O3とSiO2との合計含有量(B2O3+SiO2)が3.0モル%以下であり、
MgOとAl2O3との合計含有量(MgO+Al2O3)が8.0モル%以下であり、
Li2O、Na2OおよびK2Oの合計含有量(Li2O+Na2O+K2O)が15モル%以下であり、
下記式3:
(式3)
A1={O(P)-O(others)}×Cu
によって算出されるA1が2500以上であり、
上記式3中、
O(P)は、酸化物基準のガラス組成においてPイオンの酸化物を構成する酸素量を示し、
O(others)は、酸化物基準のガラス組成において上記主要カチオンの酸化物を構成する酸素量から上記O(P)を除いた酸素量を示し、
Cuは、酸化物基準のガラス組成におけるモル%表示のCuO含有量を示す、
近赤外線吸収ガラス(以下、「ガラス3」とも呼ぶ。)
に関する。
【0016】
また、本発明の一態様は、
Pイオン、Liイオン、Cuイオン、Alイオン、Baイオン、Srイオン、Caイオン、Mgイオン、Znイオン、Kイオン、Naイオン、Laイオン、GdイオンおよびYイオンからなる群から選ばれる主要カチオンを4種以上含み、
Pイオン、BaイオンおよびCuイオンを必須カチオンとして含み、
アニオン%表示のガラス組成において、Oイオンの含有量が90.0アニオン%以上であり、
原子%表示のガラス組成において、Pイオンの含有量に対するOイオンの含有量の比率(Oイオン/Pイオン)が3.15以下であり、
酸化物基準のモル%表示のガラス組成において、
B2O3とSiO2との合計含有量(B2O3+SiO2)が3.0モル%以下であり、
MgOとAl2O3との合計含有量(MgO+Al2O3)が8.0モル%以下であり、
Li2O、Na2OおよびK2Oの合計含有量(Li2O+Na2O+K2O)が15モル%以下であり、
下記式4:
(式4)
A2={O(P)-O(others)}×C
によって算出されるA2が700以上であり、
上記式4中、
Cは、ガラスのモル体積あたりのCuO含有量(単位:ミリモル/cc)であり、
O(P)は、酸化物基準のガラス組成においてPイオンの酸化物を構成する酸素量を示し、
O(others)は、酸化物基準のガラス組成において上記主要カチオンの酸化物を構成する酸素量から上記O(P)を除いた酸素量を示す、
近赤外線吸収ガラス(以下、「ガラス4」とも呼ぶ。)
に関する。
【0017】
また、本発明の一態様は、
Pイオン、Liイオン、Cuイオン、Alイオン、Baイオン、Srイオン、Caイオン、Mgイオン、Znイオン、Kイオン、Naイオン、Laイオン、GdイオンおよびYイオンからなる群から選ばれる主要カチオンを4種以上含み、
Pイオン、BaイオンおよびCuイオンを必須カチオンとして含み、
アニオン%表示のガラス組成において、Oイオンの含有量が90.0アニオン%以上であり、
原子%表示のガラス組成において、Pイオンの含有量に対するOイオンの含有量の比率(Oイオン/Pイオン)が3.15以下であり、
酸化物基準のモル%表示のガラス組成において、
B2O3とSiO2との合計含有量(B2O3+SiO2)が3.0モル%以下であり、
MgOとAl2O3との合計含有量(MgO+Al2O3)が8.0モル%以下であり、
Li2O、Na2OおよびK2Oの合計含有量(Li2O+Na2O+K2O)が15モル%以下であり、
CuO含有量がα2%以上であり、
α2は下記式5:
(式5)
α2=76522×exp(-2.855×R)
により算出される値であり、
上記式5中、
Rは上記比率(Oイオン/Pイオン)である、
近赤外線吸収ガラス(以下、「ガラス5」とも呼ぶ。)
に関する。
【0018】
また、本発明の一態様は、
Pイオン、Liイオン、Cuイオン、Alイオン、Baイオン、Srイオン、Caイオン、Mgイオン、Znイオン、Kイオン、Naイオン、Laイオン、GdイオンおよびYイオンからなる群から選ばれる主要カチオンを4種以上含み、
Pイオン、BaイオンおよびCuイオンを必須カチオンとして含み、
アニオン%表示のガラス組成において、Oイオンの含有量が90.0アニオン%以上であり、
原子%表示のガラス組成において、Pイオンの含有量に対するOイオンの含有量の比率(Oイオン/Pイオン)が3.15以下であり、
酸化物基準のモル%表示のガラス組成において、
B2O3とSiO2との合計含有量(B2O3+SiO2)が3.0モル%以下であり、
MgOとAl2O3との合計含有量(MgO+Al2O3)が8.0モル%以下であり、
Li2O、Na2OおよびK2Oの合計含有量(Li2O+Na2O+K2O)が15モル%以下であり、
下記式6:
(式6)
C-3478×exp(-2.278×R)≧0
を満たし、
上記式6中、
Cは、ガラスのモル体積あたりのCuO含有量(単位:ミリモル/cc)であり、
Rは上記比率(Oイオン/Pイオン)である、
近赤外線吸収ガラス(以下、「ガラス6」とも呼ぶ。)
に関する。
【0019】
また、本発明の一態様は、
酸化物基準のモル%表示のガラス組成において、
P2O5含有量が40.0~65.0モル%、
CuO含有量が9.0~25.0モル%、
BaO含有量が5.0~50.0モル%、
Li2O、Na2OおよびK2Oの合計含有量(Li2O+Na2O+K2O)が1.0~15.0モル%、
SiO2含有量が2.0モル%以下、
B2O3含有量が2.0モル%以下、
Al2O3含有量が0.5~7.0モル%以下、
Li2O含有量が7.0モル%以下、
ZnO含有量が10.0モル%以下、
PbO含有量が2.0モル%以下、
MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計含有量に対するMgO含有量の比率(MgO/(MgO+CaO+SrO+BaO))が0.3以下、
原子%表示のガラス組成において、Pイオンの含有量に対するOイオンの含有量の比率(Oイオン/Pイオン)が3.50以下であり、
アニオン%表示のガラス組成において、Fイオンの含有量が10.0アニオン%以下である、
近赤外線吸収ガラス(以下、「ガラス7」とも呼ぶ。)
に関する。
【0020】
また、本発明の一態様は、
厚み0.25mm以下で、波長620~650nmにおいて外部透過率が50%となる厚みに換算して、波長400nmにおける外部透過率が75%以上および波長1200nmにおける外部透過率が7%以下である透過率特性を有し、かつ
100~300℃における平均線膨張係数が135×10-7/K以下である近赤外線吸収ガラス(以下、「ガラス8」とも呼ぶ。)
に関する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一態様によれば、薄肉化によっても可視域(紫色領域~赤色領域)の透過率が高く、近赤外線カット能力に優れ、かつ耐候性の低下の抑制が可能な近赤外線吸収ガラスを提供することができる。更に、本発明の一態様によれば、かかる近赤外線吸収ガラスからなる近赤外線カットフィルタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】近赤外線吸収ガラスの分光透過特性の一例を示す。
【
図2】実施例1-1~1-4のガラスの外観写真を示す。
【
図3】実施例1および実施例1-1~1-4のガラスについて、Sb
2O
3量に対してT400の値をプロットしたグラフを示す。
【
図4】実施例4-1~4-4のガラスの外観写真を示す。
【
図5】実施例4および実施例4-1~4-4のガラスについて、Sb
2O
3量に対してT400の値をプロットしたグラフを示す。
【
図6】実施例25-1~25-4のガラスの外観写真を示す。
【
図7】実施例25および実施例25-1~25-4のガラスについて、Sb
2O
3量に対してT400の値をプロットしたグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[近赤外線吸収ガラス]
以下において、ガラス1~8をまとめて単に「ガラス」または「近赤外線吸収ガラス」とも呼ぶ。特記しない限り、ガラス組成および物性に関する記載は、ガラス1~8のすべてに適用されるものとする。
【0024】
本発明および本明細書において、近赤外線吸収ガラスとは、少なくとも近赤外線の波長域(波長700~1200nm)の全領域または一部の波長の光を吸収する性質を有するガラスである。また、本発明の一態様にかかる近赤外線吸収ガラスは、構成イオンとしてOイオンを含み得るため、酸化物ガラスであることができる。酸化物ガラスとは、ガラスの主要ネットワーク形成成分が酸化物であるガラスである。更に、本発明の一態様にかかる近赤外線吸収ガラスは、構成イオンとしてOイオン(アニオン)とともにPイオン(カチオン)を含み得るため、リン酸塩ガラスであることができる。なお、Oイオンは、酸素原子のアニオンであり、一般に酸化物イオン(oxide ion)とも呼ばれる。
【0025】
以下、ガラス1~8について、更に詳細に説明する。
【0026】
<ガラス組成>
(分析方法)
ガラスを構成する各種成分については、公知の方法、例えば、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)等により、ガラス中に含まれる元素の含有量(元素の質量%)を定量することができる。
アニオン成分については、公知の分析法、例えばイオンクロマトグラフィー法、非分散赤外線吸収法(ND-IR)等によって、ガラスに含まれるアニオン成分を同定および定量することができる。
なお、本発明および本明細書において、構成成分の含有量が0%または含まないもしくは導入しないとは、この構成成分を実質的に含まないことを意味し、この構成成分が不可避的不純物レベルで含まれることは許容される。
【0027】
(酸化物基準のガラス組成の表記)
上記の分析で得られた結果をもとに、酸化物基準のガラス組成における各成分の含有量(単位:モル%)を算出することができる。具体的方法は以下の通りである。
上記の分析方法で得られた元素iの含有量(元素の質量%Pi)を元素iの原子量Miで除することにより、各元素のモル数ni=Pi/Miを求める。
上記の元素iがカチオン成分Aiである場合は、上記で得られた元素のモル数niを、対応する酸化物のモル数n’iに置き換える。具体的には元素iに対応するカチオン成分Aiの酸化物の組成式がAixOyで表されるとき、n’i=ni/xとなる。
上記の元素iがOイオン以外のアニオン成分Biである場合の、対応する上記の元素のモル数niは以降miと表記する。
酸化物基準のガラス組成における、カチオン成分Aiの酸化物AixOyとしての含有量PAi(モル%)は、
PAi=n’i/(Σn’i+Σmi)×100
で表される。酸化物基準のガラス組成における含有量は、酸化物基準分率ということもできる。
【0028】
酸化物基準のガラス組成において、Oイオン以外のアニオン成分Biの酸化物基準分率PBi(モル%)は、
PBi=mi/(Σn’i+Σmi)×100
で表される。
【0029】
ここで、Σn’iは、ガラスに含まれるカチオン成分の酸化物AixOyのモル数の合計である。ただし含有量の有効数字によっては、微量な成分を無視しても計算結果に影響を与えない。
【0030】
(アニオン%)
「アニオン%」とは、「(注目するアニオンiの、モル%表示の含有量)/(ガラスに含まれるアニオンのモル%表示の総数)×100」で算出される値であって、注目するアニオン量のアニオンの総量に対するモル百分率を意味する。
上記の酸化物基準のガラス組成の表記の説明に基づくOイオンのアニオン%は、
元素iに対応するカチオン成分Aiの酸化物の組成式がAixOyで表され、カチオン成分Aiの酸化物に含まれるOの個数を、カチオン成分Aiの酸化物基準分率PAi(モル%)を用いてOi=PAi×y、アニオン成分Bkの価数をNk、としたときに
(ΣOi-Σ(Nk/2)Bk)/(ΣOi-Σ(Nk/2)Bk+ΣBk)×100
として計算できる。
ここでΣOiは、酸化物基準のガラス組成のOイオンのモル数の総和であり、Σ(Nk/2)Bkは、アニオン成分Bkによって置換されたOイオンのモル数を表す。式の分子(ΣOi-Σ(Nk/2)Bk)が、ガラス中に含まれるOイオンのモル数となる。
一方、本発明および本明細書において、酸素の含有量については、公知の方法による分析によって酸素以外のアニオン成分が検出されない場合には、アニオン成分中のすべて(即ち100アニオン%)がOイオンであるものとする。
【0031】
(カチオン成分)
カチオン成分の価数については、各カチオンの形式価数を用いる。形式価数とは、注目するカチオンの酸化物について、酸化物を構成するOイオンの価数を-2としたときに酸化物が電気的中性を保つために必要な価数であり、酸化物の化学式から一義的に求めることができる。
例えば、Cuイオンについては、酸化物CuOの化学式に含まれるO2-とCuとの電気的中性を保つためにCuの価数は+2となる。また、例えばPイオンについては、酸化物P2O5の化学式に含まれるO2-とPとの電気的中性を保つためにPの価数は、+2×5/2=+5となる。これを一般化すると、酸化物AixOyに含まれるカチオンAiの形式価数は「+2y/x」となる。したがって、ガラス組成を分析する際、カチオンの価数まで分析しなくてよい。
また、アニオンの価数(例えばOイオンの価数が-2)についても、Oイオンが2つの電子を受容し閉殻構造を取るという考えに基づいた形式価数である。したがって、ガラス組成を分析する際、アニオンの価数まで分析しなくてよい。また、Cu2+の一部は熔解時にCu+となり得るが、通常、その量はわずかであるので、Cuの価数はすべて+2として差支えない。
【0032】
<ガラス1~6>
(アニオン成分)
ガラス1~6は、アニオンとして少なくともOイオンを含み、その含有量は、アニオン%表示のガラス組成において90.0アニオン%以上である。このようにアニオンとしてOイオンを主体とするガラスにおいてO/P比率を低くすることにより、CuOの赤色領域の吸収を長波長側にシフトさせることができ、それにより赤色領域の透過率を低下させることなくCuOの含有率を高めて近赤外線カット能力を向上させることが可能になると本発明者は考えている。ガラス1~6において、アニオン%表示のガラス組成におけるOイオン含有量は、90.0%以上であり、95.0%以上であることが好ましく、98.0%以上であることがより好ましく、99.0%以上であることが更に好ましい。アニオン成分に占めるOイオンの割合が高いことは、ガラス熔融時の揮発を抑えるうえでも好ましい。ガラス熔融時の揮発を抑えることは、脈理の発生を抑制する観点から好ましい。特にガラス熔融時の揮発を抑え、生産性を高めると共に製造時の有害ガスの発生を抑える観点からは、Oイオンの含有量が100%であることが好ましい。なお、Oイオンの形式価数は、-2である。
【0033】
ガラス1~6は、アニオンとして、一形態ではOイオンのみを含むことができ、他の一形態ではOイオンとともに他のアニオンを1種以上含むことができる。他のアニオンとしては、Fイオン、Clイオン、Brイオン、Iイオン等を挙げることができる。なお、Fイオン、Clイオン、Brイオン、Iイオンの形式価数は、-1である。
【0034】
Fイオンの含有量は、ガラスの均質性向上および強度向上の観点から、アニオン%表示のガラス組成において15.0アニオン%以下であることが好ましく、10.0アニオン%以下であることがより好ましく、5.0アニオン%以下であることが更に好ましく、2.0アニオン%以下であることが一層好ましく、1.0アニオン%以下であることがより一層好ましい。特にガラス熔融時の揮発を抑え、生産性を高めると共に製造時の有害ガスの発生を抑える観点からは、ガラス1~6は、Fイオンを含まないガラスであることもできる。
【0035】
(O/P比率)
原子%表示のガラス組成において、カチオンの含有量とアニオンの含有量の比率は、すべてのカチオン成分とすべてのアニオン成分の総量を100原子%としたときの注目する成分同士の含有量(原子%表示)の比率である。したがって、Pイオンの含有量に対するOイオンの含有量の比率(Oイオン/Pイオン)は、すべてのカチオン成分とすべてのアニオン成分の総量を100原子%としたときのPイオンとの含有量(原子%表示)に対するOイオンの含有量(原子%表示)の比率である。
【0036】
O/P比率の算出方法1
酸化物基準のガラス組成として以下の組成を有するガラスを例にとり、O/P比率(Rとも表記する。)の算出方法について説明する。
P2O5:52.6モル、Al2O3:2.6モル、K2O:2.7モル、BaO:21.6モル、ZnO:4.2モル、CuO:16.3モル。
分子式に含まれるOの数は、P2O5は5個、Al2O3は3個、K2Oは1個、BaOは1ケ、ZnOは1個、CuOは1個である。
分子式に含まれるOのモル数は、P2O5は263.0、Al2O3は7.8、K2Oは2.7、BaOは21.6、 ZnOは4.2、CuOは16.3である。
上記の例のガラスのO/P比率は、以下のように求めることができる。
ガラスの分子式:52.6P2O5-2.6Al2O3-2.7K2O-21.6BaO-4.2ZnO-16.3CuOにおけるOイオンの数NSを求める。ガラスの分子式とは、ガラスに含まれる分子の合計が100となるように示されたガラスの組成式である。即ち、各酸化物の分子式MxOyに含まれるOイオンの個数(P2O5:5、Al2O3:3、K2O:1、BaO:1、ZnO:1、CuO:1)を用いて、
NS=52.6×5+2.6×3+2.7×1+21.6×1+4.2×1+16.3×1=315.7
としてNsを算出する。
上記の例のガラスは、ガラスの分子式中、他のアニオンにより置換されたOイオンがゼロ個であるため、このNs=315.7を、P2O5に含まれるPのモル数52.6×2で除することで、O/P比率=315.7/(52.6×2)=3.00…が求められる。
【0037】
O/P比率の算出方法2
公知の方法による分析によって酸素に加えて1種以上の他のアニオン成分が検出された場合には、酸素の含有量としては、(1)ガラスに含まれるカチオン成分の価数および元素のモル%を基準としたカチオンの含有量と(2)酸素以外のアニオン成分の価数および元素のモル%を基準としたアニオンの含有量から、以下の(3)の方法によって算出される含有量(単位:アニオン%)を採用することができる。
即ち、公知の方法による同定および定量分析の結果から、
(1)ガラスに含まれるカチオン成分について、「酸化物MxOyの酸素の数yとカチオンの数xから成る、カチオン1個あたりの酸素数y/x×元素のモル%を基準としたカチオン含有量」の合計Uを算出する。
(2)酸素を除くアニオン成分についても、公知の方法による同定および定量分析の結果と、アニオンの価数zから、「元素のモル%を基準としたアニオンの含有量×アニオン1個当たり置換される酸素数z/2」の合計Vを算出する。
(3)U-Vを、Pイオンの含有率に対するOイオンの含有率として採用することもできる。
【0038】
算出方法2の算出例として、以下の算出例1および算出例2を示す。
【0039】
算出例1:Pイオン、Liイオン、Cuイオンの元素のモル百分率が22.0、8.0、5.5(元素のモル%表示の含有量)と定量されたとき、対応する酸化物:P2O5、Li2O、CuOのy/xはそれぞれ2.5、0.5、1.0であるため、
U=22×2.5+8×0.5+5.5×1.0=64.5と求められ、
V=0となる。
したがって、元素のモル百分率を基準としたOイオンのモル百分率は64.5(元素のモル%表示の含有量)となる。
このように求めたOイオンの値と、分析されたPイオンのモル百分率の比率から、O/P比率=64.5/22=2.93… を求めることができる。
【0040】
算出例2:Pイオン、Liイオン、Cuイオンの元素のモル百分率が22.0、8.0、5.5(元素のモル%表示の含有量)、Fイオンの元素のモル百分率が4.0(元素のモル%表示の含有量)と定量されたとき、対応する酸化物:P2O5、Li2O、CuOのy/xはそれぞれ2.5、0.5、1.0であり、Fの価数は-1であるため、
U=22×2.5+8×0.5+5.5×1.0=64.5と求められ、
V=4×1/2=2となる。
したがって、元素のモル百分率を基準としたOイオンのモル百分率は62.5(元素のモル%表示の含有量)となる。
このように求めたOイオンの値と、分析されたPイオンのモル百分率の比率から、O/P比率=62.5/22=2.84… を求めることができる。
【0041】
ガラス1~6において、可視域の透過率向上と近赤外線カット能力向上との両立の観点、ならびにガラスの熱的安定性を向上させる観点から、原子%表示のガラス組成において、Pイオンの含有量に対するOイオンの含有量の比率(O/P比率)は3.15以下である。
ガラス1~ガラス6において、O/P比率は、3.14以下であることが好ましく、3.13以下、3.12以下、3.11以下、3.10以下の順により好ましい。
一方、耐候性の向上、および/または、熔解性の低下を抑制する観点からは、ガラス1~ガラス6において、O/P比率は大きいことが好ましい。この点から、ガラス1~ガラス6において、O/P比率は、2.85以上であることが好ましく、2.86以上、2.87以上、2.88以上、2.89以上、2.90以上、3.00以上の順により好ましい。
【0042】
(カチオン成分)
ガラス1~6は、Pイオン、Liイオン、Cuイオン、Alイオン、Baイオン、Srイオン、Caイオン、Mgイオン、Znイオン、Kイオン、Naイオン、Laイオン、GdイオンおよびYイオンからなる群から選ばれる主要カチオンを4種以上含み、Pイオン、BaイオンおよびCuイオンを必須カチオンとして含む。一形態では、ガラス1~6の酸化物基準のガラス組成(モル%表示)において、上記主要カチオンの酸化物の合計含有量は90.0%以上であることができる。
ガラス1~6において、主要カチオンの酸化物の合計含有量が90.0%以上であることは、ガラスの熱的安定性向上に寄与することができ、および/または、脈理や揮発等を抑制することによってガラスの光学的な均質性を向上させることに寄与し得る。上記の点から、ガラス1~6における上記主要カチオンの酸化物の合計含有量は、92.0%以上であることが好ましく、93.0%以上、95.1%以上、96.1%以上、97.1%以上、98.1以上、98.6%以上、99.1%以上、99.6%以上の順により好ましく、100%であることもできる。一形態では、ガラス1~6における上記主要カチオンの酸化物の合計含有量は、100%以下または99.5%以下、99%以下、98.5%以下、98.0%以下、97.5%以下であることができる。
【0043】
以下、カチオン成分の含有量について、酸化物基準のガラス組成(モル%表示)における含有量として説明する。
【0044】
CuOはガラスに近赤外線カット能力をもたらすための必須成分であるため、ガラス1~6は、必須カチオンとしてCuイオンを含む。
【0045】
ガラス1において、CuO含有量はα1%以上である。α1は、下記式1により算出される値である。
【0046】
(式1)
α1=70400×exp(-2.855×R)
【0047】
式1中、RはO/P比率である。
【0048】
また、ガラス2については、CuO含有量の下限は、ガラスのモル体積あたりのCuO含有率により下記式2によって規定される。
【0049】
(式2)
C-3200×exp(-2.278×R)≧0
【0050】
式2中、Cは、ガラスのモル体積当たりのCuO含有量(単位:ミリモル/cc)であり、RはO/P比率である。
【0051】
式2中、上記Cは、以下の方法によって求められる。
Cは、ガラスの比重値D(g/cc)を測定し、先に記載したように分析して得られたガラス組成をもとに、ガラス組成1モル相当の質量、すなわちモル分子量M(g/モル)を求め、ガラスのモル体積M/D(単位:cc/モル)を求めることにより、
C=CuOのモル%/(M/D)×1000(単位:ミリモル/cc)
として算出することができる。
上記モル分子量Mは、
上記の酸化物基準のガラス組成の表記の説明に基づき、上記のカチオン成分Aiの対応する酸化物の式量MAi、アニオン成分Bkの原子量をMBk、酸素の原子量をMoとするとき、
M={Σ(PAi×MAi)+Σ(PBk×MBk)-Σ(Nk/2)Mo}/ΣPAi
として求めることができる。
例えば、ガラス組成が、酸化物基準でsモル%のA2O成分、酸化物基準でtモル%のBO成分、およびuモル%のF成分から構成され、s+t+u=100(%)、A2O成分の式量がMA(g/モル)、BO成分の式量がMB(g/モル)、Fの原子量がMF(g/モル)、酸素の原子量がMO(g/モル)、であるとき、
M=(s×MA+t×MB+u×MF-u/2×MO)/(s+t)
となる。
例えば、酸化物基準のガラス組成が、P2O5:52.6モル%、Al2O3:2.6モル(g/モル)、K2O:2.7モル(g/モル)、BaO:21.6モル(g/モル)、ZnO:4.2モル(g/モル)、CuO:16.3モル(g/モル)のガラスを例にとり、モル分子量Mの算出方法を説明する。
P2O5の式量:141.94(g/モル)
Al2O3の式量:101.96(g/モル)
K2Oの式量:94.2(g/モル)
BaOの式量:153.3(g/モル)
ZnOの式量81.4(g/モル)
CuOの式量79.55(g/モル)
を用いて、M=(52.6×141.94+2.6×101.96+2.7×94.2+21.6×153.3+4.2×81.4+16.3×79.55)/(52.6+2.6+2.7+21.6+4.2+16.3)=129.36(g/モル)、と算出できる。
【0052】
本発明者は鋭意検討を重ねた結果、アニオンとしてOイオンを主体とするガラスにおいてO/P比率を低下させると、CuOの赤色領域の吸収が長波長側にシフトすることによって赤色領域の透過率の低下を抑制しつつCuO含有量を増量できることを新たに見出した。更に本発明者は、O/P比率と所定肉厚で所定半値を達成するためのCuO含有量との間に良好な相関があることを新たに見出し、O/P比率が先に記載した範囲であるガラス1については式1によって、ガラス5については式5によってCuO含有量の下限(α1、α2)を規定するに至った。また、O/P比率が先に記載した範囲であるガラスについては式2によって、ガラス6については式6によって、ガラスのモル体積あたりのCuO含有率を規定するに至った。
【0053】
ガラス3においては、CuO含有量は下記式3によって算出されるA1に基づき規定され、A1は2500以上である。
【0054】
(式3)
A1={O(P)-O(others)}×Cu
【0055】
式3中、O(P)は、酸化物基準のガラス組成においてPイオンの酸化物を構成する酸素量を示し、O(others)は、酸化物基準のガラス組成においてガラス3の先に示した主要カチオンの酸化物を構成する酸素量から上記O(P)を除いた酸素量を示し、Cuは、酸化物基準のガラス組成におけるモル%表示のCuO含有量を示す。
【0056】
式3中の「O(P)」は、以下のように算出される。
酸化物基準のガラス組成(モル%表示)におけるP2O5含有量がMモル%の場合、P2O5の化学式に含まれる酸素の数:5を使用し、O(P)は、「O(P)=M×5」として算出される。
同様に、Pイオン以外の主要カチオンについても、酸化物基準のガラス組成(モル%表示)における酸化物としての含有量の値と、各カチオンが形式価数の状態で形成する酸化物に含まれる酸素の数を使用して各カチオンの酸化物を構成する酸素量が算出される。
こうして主要カチオンの酸化物について算出された酸素量の合計からO(P)を差し引いた値として、「O(others)」が算出される。
酸化物基準のガラス組成(モル%表示)におけるCuO含有量がNモル%の場合、「A」は、A1={O(P)-O(others)}×Nとして算出される。
【0057】
上記の通り、アニオンとしてOイオンを主体とするガラスにおいてO/P比率を低下させると、CuOの赤色領域の吸収が長波長側にシフトすることによって赤色領域の透過率の低下を抑制しつつCuO含有量を増量できることが本発明者によって新たに見出された。更に、CuOに配位するP-O以外の化学種を、よりイオン半径が小さく、かつ価数の小さい化学種で構成することにより、下記1)および2)によって結果的に可視域(紫色領域~赤色領域)の透過率を高くすることができるとの知見も新たに得られた。ガラス3については、かかる知見に基づき、CuO含有量が式3によって算出されるAに基づき規定される。
1)Cu2+に由来する吸収をより長波長化することにより赤色領域の透過率を高めることができる。
2)ガラスを低温で液相状態にすることが可能になることによって、波長400nm付近の紫色領域の吸収をもたらすCu+の発生を抑えることができる。
【0058】
ガラス3について、可視域の透過率向上と近赤外線カット能力向上との両立の観点から、A1は2500以上であり、2800以上であることが好ましく、2900以上、3000以上、3100以上、3200以上、3300以上、3400以上、3500以上、3600以上、3700以上、3800以上、3900以上、4000以上、4100以上、4200以上、4300以上、4400以上、4500以上、4600以上、4700以上、4800以上、4900以上、5000以上、5100以上、5200以上、5300以上、5400以上、5500以上、5600以上、5700以上、5800以上、5900以上、6000以上、6100以上、6200以上、6300以上、6400以上、6500以上の順により好ましい。一方、Cu、Oが多量に含まれることによるガラスの熱的安定性の低下、望ましい半値の波長における透過率の低下、および/または、O(others)が過少になることによるガラスの熱的安定性の低下もしくは耐候性の低下の更なる抑制の観点からは、Aは20000以下であることが好ましく、19000以下、18000以下、17000以下、16000以下、150000以下、14000以下、13000以下、12000以下、11000以下、10000以下、9000以下、8000以下であることがより好ましい。なお、より薄い肉厚で望ましい半値を達成するためには、この数値は大きいことが好ましい傾向がある。
【0059】
ガラス4においては、CuO含有量は下記式4によって算出されるA2に基づき規定され、A2は700以上である。
【0060】
(式4)
A2={O(P)-O(others)}×C
【0061】
式4中、Cは、ガラスのモル体積当たりのCuO含有量(単位:ミリモル/cc)である。O(P)は、酸化物基準のガラス組成においてPイオンの酸化物を構成する酸素量を示し、O(others)は、酸化物基準のガラス組成において上記主要カチオンの酸化物を構成する酸素量から上記O(P)を除いた酸素量を示す。
【0062】
ガラス4について、可視域の透過率向上と近赤外線カット能力向上との両立の観点から、A2は700以上であり、800以上であることが好ましく、850以上、890以上、1000以上、1100以上、1200以上、1300以上、1400以上、1500以上、1600以上、1700以上、1800以上の順により好ましい。一方、Cu、Oが多量に含まれることによるガラスの熱的安定性の低下、望ましい半値の波長における透過率の低下、および/または、O(others)が過少になることによるガラスの熱的安定性の低下もしくは耐候性の低下の更なる抑制の観点からは、A2は5000以下であることが好ましく、4000以下、3500以下、3000以下、2500以下、2000以下であることがより好ましい。なお、より薄い肉厚で望ましい透過率半値を達成するためには、この数値は大きいことが好ましい傾向がある。
【0063】
また、ガラス5において、CuO含有量はα2%以上である。α2は、下記式5より算出される値である。
【0064】
(式5)
α2=76522×exp(-2.855×R)
【0065】
式5中、RはO/P比率である。
【0066】
また、ガラス6については、CuO含有量の下限は、ガラスのモル体積あたりのCuO含有率により下記式6によって規定される。
【0067】
(式6)
C-3478×exp(-2.278×R)≧0
【0068】
式6中、Cは、ガラスのモル体積あたりのCuO含有量(単位:ミリモル/cc)であり、RはO/P比率である。
【0069】
ガラス1~6のCuO含有量は、酸化物基準のガラス組成(モル%表示)において、4.0%以上であることが好ましく、5.0%以上、6.0%以上、7.0%以上、7.5%以上、8.0%以上、8.5%以上、9.0%以上、9.5%以上、10.0%以上、10.5%以上、11.0%以上、11.5%以上、12.0%以上、12.5%以上、13.0%以上、13.5%以上、14.0%以上、14.5%以上、15.0%以上、15.5%以上、16.0%以上、16.5%以上、17.0%以上、17.5%以上、18.0%以上、18.5%以上、19.0%以上、19.5%以上、20.0%以上の順により好ましい。CuO含有量は、ガラス形成成分の導入余地を残し、ガラスの熱的安定性を維持する観点からは、48.0%以下であることが好ましく、更には、47.0%以下、46.0%以下、45.0%以下、44.0%以下、43.5%以下、43.0%以下、42.5%以下、42.0%以下、41.5%以下、41.0%以下、40.5%以下、40.0%以下、39.5%以下、39.0%以下、38.5%以下、38.0%以下、37.5%以下、37.0%以下、36.5%以下、36.0%以下、35.5%以下、35.0%以下、34.5%以下、34.0%以下、33.5%以下、33.0%以下、32.5%以下、32.0%以下、31.5%以下、31.0%以下の順により好ましい。
【0070】
厚み0.16mm換算の透過率特性として、反射損失を含む外部透過率が50%となる波長λT50が600nm~650nmの範囲であるためには、CuO含有量は、酸化物基準のガラス組成(モル%表示)において、15.0%以上であることが好ましく、15.5%以上、16.0%以上、16.5%以上、17.0%以上、17.5%以上、18.0%以上、18.5%以上、19.0%以上、19.5%以上、20.0%以上の順により好ましい。
厚み0.21mm換算の透過率特性として、反射損失を含む外部透過率が50%となる波 長λT50が600nm~650nmの範囲であるためには、CuO含有量は、酸化物基準のガラス組成(モル%表示)において、10.0%以上であることが好ましく、10.5%以上、11.0%以上、11.5%以上、12.0%以上、12.5%以上、13.0%以上、13.5%以上、14.0%以上、14.5%以上、15.0%以上、15.5%以上、16.0%以上、16.5%以上、17.0%以上、17.5%以上、18.0%以上、18.5%以上、19.0%以上、19.5%以上、20.0%以上の順により好ましい。
厚み0.25mm換算の透過率特性として、反射損失を含む外部透過率が50%となる波長λT50が600nm~650nmの範囲であるためには、CuO含有量は、酸化物基準のガラス組成(モル%表示)において、10.0%以上であることが好ましく、10.5%以上、11.0%以上、11.5%以上、12.0%以上、12.5%以上、13.0%以上、13.5%以上、14.0%以上、14.5%以上、15.0%以上、15.5%以上、16.0%以上、16.5%以上、17.0%以上、17.5%以上、18.0%以上、18.5%以上、19.0%以上、19.5%以上、20.0%以上の順により好ましい。
一方、厚み0.25mm換算の透過率特性は、CuO含有量が多量になると、反射損失を含む外部透過率が50%となる波長λT50が600nmを下回る可能性があるため、CuO含有量は、35.0%以下であることが好ましく、34.0%以下、33.0%以下、32.0%以下、31.0%以下、30.0%以下、29.5%以下、29.0%以下、28.5%以下、28.0%以下、27.5%以下、27.0%以下、26.5%以下、26.0%以下、25.5%以下、25.0%以下、24.5%以下、24.0%以下、23.5%以下、23.0%以下、22.5%以下、22.0%以下、21.5%以下、21.0%以下、20.5%以下、20.0%以下の順により好ましい。
波長550nm以上で反射損失を含む外部透過率が50%となる波長λT50が645nmとなるガラスの厚みが0.25mm以下であるためには、CuO含有量は、酸化物基準のガラス組成(モル%表示)において、10.0%以上であることが好ましく、10.5%以上、11.0%以上、11.5%以上、12.0%以上、12.5%以上、13.0%以上、13.5%以上、14.0%以上、14.5%以上、15.0%以上、15.5%以上、16.0%以上、16.5%以上、17.0%以上、17.5%以上、18.0%以上、18.5%以上、19.0%以上、19.5%以上、20.0%以上の順により好ましい。
波長550nm以上で反射損失を含む外部透過率が50%となる波長λT50が633nmとなるガラスの厚みが0.25mm以下であるためには、CuO含有量は、酸化物基準のガラス組成(モル%表示)において、10.5%以上であることが好ましく、11.0%以上、11.5%以上、12.0%以上、12.5%以上、13.0%以上、13.5%以上、14.0%以上、14.5%以上、15.0%以上、15.5%以上、16.0%以上、16.5%以上、17.0%以上、17.5%以上、18.0%以上、18.5%以上、19.0%以上、19.5%以上、20.0%以上の順により好ましい。
【0071】
ガラス2およびガラス4において、Cの値は、4.0以上であることが好ましく、4.1以上であることがより好ましく、4.2以上であることが更に好ましい。Cの値は、ガラス形成成分の導入余地を残し、ガラスの熱的安定性を維持する観点からは、8.5以下であることが好ましく、8.0以下、7.5以下、7.0以下、6.5以下、6.0以下、5.5以下の順により好ましい。
【0072】
ガラス1~6において、CuO含有量は、α3%以上であることができる。α3は、下記式7より算出される値である。一形態では、ガラス7および8について、CuO含有量は、α3%以上であることができる。
【0073】
(式7)
α3=(70400×0.25/d)×exp(-2.855×R)
【0074】
式7中、RはO/P比率である。dは、0超0.25以下の値を取ることができる。例えば、dは、0.25、0.24、0.23、0.22、0.21、0.20、0.19、0.18、0.17、0.16、0.15、0.14、0.13、0.12、0.11、0.10、0.09、0.08、0.07、0.06、0.05、0.04、0.03、0.02、0.01等であることができる。ただし、dの値はこれらに限定されない。より薄い肉厚で望ましい透過率半値を達成するためには、dの値が小さいことが好ましい傾向がある。
【0075】
例えば、d=0.11のとき、CuO含有量は、α3%以上であることができ、α3は、以下の式によって算出される。
α3=(70400×0.25/0.11)×exp(-2.855×R)
【0076】
ガラスにおいて波長633nmの光に対する外部透過率が50%となるときのガラスの板厚がD(mm)であるとき、一形態では、上記式7において、d=Dであることができる。この場合、α3は、以下の式によって算出される。
α3=(70400×0.25/D)×exp(-2.855×R)
【0077】
ガラス1~6については、CuO含有量の下限は、ガラスのモル体積あたりのCuO含有率により下記式8によって規定される値であることもできる。
【0078】
(式8)
C-3200×0.25/d×exp(-2.855×R)≧0
【0079】
式8中、dは、0超0.25以下の値を取ることができる。例えば、dは、0.25、0.24、0.23、0.22、0.21、0.20、0.19、0.18、0.17、0.16、0.15、0.14、0.13、0.12、0.11、0.10、0.09、0.08、0.07、0.06、0.05、0.04、0.03、0.02、0.01等であることができる。ただし、dの値はこれらに限定されない。より薄い肉厚で望ましい透過率半値を達成するためには、dの値が小さいことが好ましい傾向がある。
【0080】
例えば、d=0.11のとき、式8は、以下の式である。
C-3300×0.25/0.11×exp(-2.855×R)≧0
【0081】
ガラスにおいて波長633nmの光に対する外部透過率が50%となるときのガラスの板厚がD(mm)であるとき、一形態では、上記式8において、d=Dであることができる。この場合、式8は、以下の式である。
【0082】
CuO含有量に関して、ガラス1~6は、それぞれ、他のガラスに関する式の1つ以上の規定を満たすこともできる。
【0083】
ガラス1~6は、必須カチオンとしてPイオンを含む。先に記載したように、可視域の透過率向上と近赤外線カット能力向上との両立の観点から、O/P比率が低いことは好ましい。O/P比率を低下させるためには、P2O5含有量を高くすることが好ましい。この点から、酸化物基準のガラス組成(モル%表示)におけるP2O5含有量は、33.0%以上であることが好ましく、34.0%以上、35.0%以上、36.0%以上、37.0%以上、38.0%以上、39.0%以上、40.0%以上、40.5%以上、41.0%以上、41.5%以上、42.0%以上、42.5%以上、43.0%以上、43.5%以上、44.0%以上、44.5%以上、45.0%以上、45.5%以上、46.0%以上、46.5%以上、47.0%以上、47.5%以上、48.0%以上、48.5%以上、49.0%以上、49.5%以上、50.0%以上の順により好ましい。P2O5自体は近赤外線吸収能力を有さない成分であるため、近赤外線吸収能力を有するCuO含有量を高める観点からは、P2O5含有量は、72.0%以下であることが好ましく、71.0%以下、70.0%以下、69.5%以下、69.0%以下、68.5%以下、68.0%以下、67.5%以下、67.0%以下、66.5%以下、66.0%以下、65.5%以下、65.0%以下、64.5%以下、64.0%以下、63.5%以下、63.0%以下、62.5%以下、62.0%以下、61.5%以下、61.0%以下、60.5%以下、60.0%以下の順により好ましい。また、P2O5含有量が上記の値以下であることは、耐候性の低下をより一層抑制する観点、および/または、熔解性の低下を抑制する観点からも好ましい。
【0084】
ガラス1~6は、酸化物基準のガラス組成が、P2O5,BaOおよびCuOから主に構成されることが、所望の透過率特性を得るために望ましい。この点から、P2O5、BaOおよびCuOの合計含有量(P2O5+BaO+CuO)は、70.0%以上であることが好ましく、75.0%以上、80.0%以上、85.0%以上の順により好ましい。ガラス1~6は、必須カチオンとしてPイオン、BaイオンおよびCuイオンを含み、ガラスの熱的安定性および/またはガラスの化学的耐久性を得るために、主要カチオンの群から選ばれる1種以上のカチオンを更に含む。したがって、合計含有量(P2O5+BaO+CuO)は、100%未満であり、99.0%以下であることが好ましく、98.0%以下、97.0%以下、96.0%以下、95.0%以下、94.0%以下、93.0%以下、92.0%以下、91.0%以下の順により好ましい。
【0085】
一形態では、厚み0.16mm換算の透過率特性として、反射損失を含む外部透過率が50%となる波長λT50が600nm~650nmの範囲であるためには、P2O5、BaOおよびCuOの合計含有量(P2O5+BaO+CuO)は、酸化物基準のガラス組成(モル%表示)において、84.0%以上であることが好ましく、85.0%以上、86.0%以上、87.0%以上、88.0%以上、89.0%以上、90.0%以上の順により好ましい。
厚み0.21mm換算の透過率特性として、反射損失を含む外部透過率が50%となる波長λT50が600nm~650nmの範囲であるためには、P2O5、BaOおよびCuOの合計含有量(P2O5+BaO+CuO)は、酸化物基準のガラス組成(モル%表示)において、80.0%以上であることが好ましく、81.0%以上、82.0%以上、83.0%以上、84.0%以上、85.0%以上、86.0%以上、87.0%以上、88.0%以上、89.0%以上、90.0%以上の順により好ましい。
厚み0.25mm換算の透過率特性として、反射損失を含む外部透過率が50%となる波長λT50が600nm~650nmの範囲であるためには、P2O5、BaOおよびCuOの合計含有量(P2O5+BaO+CuO)は、酸化物基準のガラス組成(モル%表示)において、75.0%以上であることが好ましく、76.0%以上、77.0%以上、78.0%以上、79.0%以上、80.0%以上、81.0%以上、82.0%以上、83.0%以上、84.0%以上、85.0%以上、86.0%以上、87.0%以上、88.0%以上、89.0%以上、90.0%以上の順により好ましい。
波長550nm以上で反射損失を含む外部透過率が50%となる波長λT50が645nmとなるガラスの厚みが0.25mm以下であるためには、また、P2O5、BaOおよびCuOの合計含有量(P2O5+BaO+CuO)は、酸化物基準のガラス組成(モル%表示)において、80.0%以上であることが好ましく、81.0%以上、82.0%以上、83.0%以上、84.0%以上、85.0%以上、86.0%以上、87.0%以上、88.0%以上、89.0%以上、90.0%以上の順により好ましい。
波長550nm以上で反射損失を含む外部透過率が50%となる波長λT50が633nmとなるガラスの厚みが0.25mm以下であるためには、P2O5、BaOおよびCuOの合計含有量(P2O5+BaO+CuO)は、酸化物基準のガラス組成(モル%表示)において、81.0%以上であることが好ましく、82.0%以上、83.0%以上、84.0%以上、85.0%以上、86.0%以上、87.0%以上、88.0%以上、89.0%以上、90.0%以上の順により好ましい。
【0086】
一方、他の一形態として、Li2O、Na2OおよびK2Oの合計含有量(Li2O+Na2O+K2O)に対するMgO、CaO、SrO、BaOおよびZnOの合計含有量(MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO)のモル比((MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO)/(Li2O+Na2O+K2O))が2.0以上のガラスについては、厚み0.16mm換算の透過率特性として、反射損失を含む外部透過率が50%となる波長λT50が600nm~650nmの範囲であるためには、P2O5、BaOおよびCuOの合計含有量(P2O5+BaO+CuO)は、酸化物基準のガラス組成(モル%表示)において、65.0%以上であることが好ましく、66.0%以上、67.0%以上、68.0%以上、69.0%以上、70.0%以上の順により好ましい。
上記の他の一形態について、厚み0.21mm換算の透過率特性として、反射損失を含む外部透過率が50%となる波長λT50が600nm~650nmの範囲であるためには、P2O5、BaOおよびCuOの合計含有量(P2O5+BaO+CuO)は、酸化物基準のガラス組成(モル%表示)において、60.0%以上であることが好ましく、61.0%以上、62.0%以上、63.0%以上、64.0%以上、65.0%以上の順により好ましい。
上記の他の一形態について、厚み0.25mm換算の透過率特性として、反射損失を含む外部透過率が50%となる波長λT50が600nm~650nmの範囲であるためには、P2O5、BaOおよびCuOの合計含有量(P2O5+BaO+CuO)は、酸化物基準のガラス組成(モル%表示)において、55.0%以上であることが好ましく、56.0%以上、57.0%以上、58.0%以上、59.0%以上、60.0%以上の順により好ましい。
上記の他の一形態について、波長550nm以上で反射損失を含む外部透過率が50%となる波長λT50が645nmとなるガラスの厚みが0.25mm以下であるためには、また、P2O5、BaOおよびCuOの合計含有量(P2O5+BaO+CuO)は、酸化物基準のガラス組成(モル%表示)において、60.0%以上であることが好ましく、61.0%以上、62.0%以上、63.0%以上、64.0%以上、65.0%以上の順により好ましい。
上記の他の一形態について、波長550nm以上で反射損失を含む外部透過率が50%となる波長λT50が633nmとなるガラスの厚みが0.25mm以下であるためには、P2O5、BaOおよびCuOの合計含有量(P2O5+BaO+CuO)は、酸化物基準のガラス組成(モル%表示)において、で61.0%以上であることが好ましく、62.0%以上、63.0%以上、64.0%以上、65.0%以上、66.0%以上の順により好ましい。
【0087】
ガラス1~6は、一形態では、ガラスの近赤外線カット能力を高め、かつ可視域の透過率を向上させる観点から、半値を短波長側にシフトさせる傾向があるBイオンおよびSiイオンの一方または両方を含むガラスであることができ、他の一形態では、BイオンもSiイオンも含まないガラスであることもできる。
【0088】
ガラス1~6について、酸化物基準のガラス組成(モル%表示)において、可視域の透過率をより一層向上させる観点から、B2O3とSiO2との合計含有量(B2O3+SiO2)は3.0%以下であることが好ましく、2.5%以下、2.0%以下、1.5%以下、1.0%以下、0.5%以下の順により好ましい。
【0089】
ガラス1~6において、B2O3とSiO2との合計含有量(B2O3+SiO2)は、0%、0%以上または0%超であることができる。
【0090】
ガラス1~6において、可視域の透過率をより一層向上させる観点から、B2O3との含有量は3.0%以下であることが好ましく、2.5%以下、2.0%以下、1.5%以下、1.0%以下、0.5%以下の順により好ましい。B2O3含有率は0%であることもできる。
他方で、ガラス1~6について、ガラスの均質化を促進させるためにガラスの粗熔解を石英製るつぼで行う場合、SiO2含有量は0%超であることが好ましく、0.01%以上、0.02%以上、0.03%以上、0.04%以上、0.05%以上、0.1%以上、0.2%以上、0.3%以上の順により好ましい。ただしガラス中への過剰なSiO2の導入は、ガラスの光学的な均質性を低下させる傾向がある。この点から、ガラス1~6において、SiO2含有量は、2.0%以下であることが好ましく、1.4%以下、0.9%以下、0.8%以下、0.6%以下、0.4%以下の順により好ましい。
【0091】
ガラス1~6は、一形態ではLiイオンを含み、他の一形態ではLiイオンを含まない。Li2Oは、各種ガラス成分と比べて、CuOの吸収を長波長域に維持する能力が高く、また耐候性に与える悪影響も小さい。この観点から、Li2O含有量は、0%以上または0%超であることができ、0.1%以上であることが好ましく、0.5%以上、1.0%以上、1.2%以上の順により好ましい。他方、ガラスの熱的安定性を確保する観点および/または耐候性の低下をより一層抑制する維持する観点からは、Li2O含有量は、13.0%以下であることが好ましく、12.0%以下、11.0%以下、10.0%以下、9.0%以下、8.0%以下、7.0%以下、6.0%以下、5.0%以下、4.0%以下、3.0%以下、2.8%以下の順により好ましい。Li2O含有量が7.0%以下であることは、ガラスの潮解を抑制する観点から好ましい。
【0092】
ガラス1~6において、MgOとAl2O3との合計含有量(MgO+Al2O3)は、熔解性向上および可視域における透過率向上、近赤外線吸収特性向上の観点から、8.0%以下であり、7.5%以下であることが好ましく、7.0%以下、6.5%以下、6.0%以下、5.5%以下、5.0%以下、4.5%以下、4.0%以下、3.5%以下、3.0%以下、2.5%以下、2.0%以下、1.8%以下、1.6%以下、1.5%以下、1.4%以下の順により好ましく、0%であることもできる。他方で、MgOとAl2O3との合計含有量(MgO+Al2O3)は、ガラスの耐候性を高め、ガラスの機械的強度を向上させる観点からは、0%超であることができ、0.1%以上であることが好ましく、0.2%以上、0.3%以上、0.4%以上、0.5%以上、0.6%以上、0.7%以上、0.8%以上、0.9%以上、1.0%以上、1.1%以上、1.3%以上の順により好ましい。
【0093】
ガラス1~6において、Al2O3は、耐候性を特に高めることに寄与し得る成分である。Al2O3含有量は、0%、0%以上または0%超であることができ、耐候性向上の観点からは、0.1%以上であることが好ましく、0.2%以上、0.3%以上、0.4%以上、0.5%以上、0.6%以上、0.7%以上、0.9%以上、1.1%以上、1.2%以上の順により好ましい。他方、可視域における透過率低下をより一層抑制する観点からは、Al2O3含有量は、6.0%以下であることが好ましく、5.5%以下、5.0%以下、4.5%以下、4.0%以下、3.5%以下、3.0%以下、2.8%以下の順により好ましい。一形態では、ガラスの耐候性の維持よりも近赤外線吸収特性の向上を優先し、CuOの吸収の短波長側シフトを抑制することで可視域の透過率をより高め、かつ近赤外線吸収特性を向上させる観点からは、Al2O3含有量は2.0%未満であることが好ましく、1.9%以下、1.8%以下、1.7%以下、1.6%以下、1.5%以下、1.4%以下、1.3%以下、1.2%以下、1.1%以下、1.0%以下、0.9%以下、0.8%以下、0.7%以下、0.6%以下、0.5%以下の順により好ましい。
【0094】
ガラス1~6において、MgOは、ガラスの熱的安定性の調整の理由で適宜加えることができる成分であるが、CuOの吸収を短波長側にシフトさせ、近赤外線吸収特性を悪化させるため、CuO含有量を増やし難くする傾向がある。また、MgO含有量の増加にともなってガラスの熔解性は低下する傾向がある。これらの観点から、MgO含有量は、9.0%以下であることが好ましく、8.0%以下、7.0%以下、6.0%以下、5.0%以下、4.0%以下、3.0%以下、2.0%以下の順により好ましい。MgO含有量は、0%であることもできる。一形態では、ガラスの機械的強度を向上させる観点から、MgO含有量は0%超であることができ、0.5%以上であることが好ましく、1.0%以上であることがより好ましい。
【0095】
La2O3は、ガラスの近赤外線吸収特性を損なうことなく耐候性を高めることに寄与し得る成分である。La2O3含有量は、0.10%以上であることが好ましく、0.15%以上、0.18%以上、0.21%以上の順により好ましい。他方、可視域における透過率低下をより一層抑制する観点からは、La2O3含有量は、8.0%以下であることが好ましく、7.0%以下、6.5%以下、6.0%以下、5.5%以下、5.0%以下、4.5%以下、4.0%以下、3.5%以下、3.0%以下、2.5%以下、2.0%以下、1.5%以下、1.0%以下の順により好ましい。La2O3含有量は0%であってもよい。
【0096】
Y2O3も、ガラスの近赤外線吸収特性を損なうことなく耐候性を高めることに寄与し得る成分である。Y2O3含有量は、0.10%以上であることが好ましく、0.15%以上、0.20%以上、0.25%以上、0.30%以上、0.35%以上、0.40%以上、0.45%以上、0.50%以上の順により好ましい。他方、可視域における透過率低下をより一層抑制する観点からは、Y2O3含有量は、8.0%以下であることが好ましく、7.0%以下、6.5%以下、6.0%以下、5.5%以下、5.0%以下、4.5%以下、4.0%以下、3.5%以下、3.0%以下、2.5%以下、2.0%以下、1.5%以下、1.0%以下の順により好ましい。Y2O3含有量は0%であってもよい。なおガラスの比重を高めることなくガラスのモル体積を増大させる観点からY2O3を導入することもできる。
【0097】
Gd2O3も耐候性を高めることに寄与し得る成分である。Gd2O3含有量は、0.10%以上であることが好ましく、0.15%以上、0.18%以上、0.21%以上の順により好ましい。他方、可視域における透過率低下をより一層抑制する観点からは、Gd2O3含有量は、8.0%以下であることが好ましく、7.0%以下、6.5%以下、6.0%以下、5.5%以下、5.0%以下、4.5%以下、4.0%以下、3.5%以下、3.0%以下、2.5%以下、2.0%以下、1.5%以下、1.0%以下の順により好ましい。Gd2O3含有量は0%であってもよい。
【0098】
なお、酸化物基準のガラス組成にLu2O3、Sc2O3等の上記以外の希土類酸化物の1種または2種以上が含まれてもよく、含まれなくてもよい。それら成分は一般に高価であるため、La2O3、Y2O3およびGd2O3以外の希土類酸化物の含有量(2種以上含まれる場合はそれらの合計含有量)は、2.5%以下であることが好ましく、1.5%以下、1.0%、0.5%以下が好ましく、0%であることもできる。
【0099】
ガラス1~6において、Al2O3、La2O3、Y2O3およびGd2O3の合計含有量(Al2O3+La2O3+Y2O3+Gd2O3)は、耐候性向上の観点からは、0.1%以上であることが好ましく、0.15%以上、0.20%以上、0.25%以上、0.30%以上、0.35%以上、0.40%以上、0.45%以上、0.50%以上の順により好ましい。他方で合計含有量(Al2O3+La2O3+Y2O3+Gd2O3)は、ガラスの熱的安定性の確保および/または熔融温度を低下させる観点からは、8.0%以下であることが好ましく、7.0%以下、6.5%以下、6.0%以下、5.5%以下、5.0%以下、4.5%以下、4.0%以下、3.5%以下、3.0%以下、2.5%以下、2.0%以下、1.5%以下、1.0%以下の順により好ましい。
【0100】
ガラス1~6において、Baイオンは必須カチオンである。ガラス1~6のBaO含有量は、0%超であることができる。BaOは一定量の導入により耐候性を高められる成分であり、アルカリ金属酸化物と比べて潮解を起こし難い傾向がある。また、BaOは、ガラスの熱的安定性を高め、熔解性を調整する目的で添加することができる。更に、BaOは、T1200を下げることに寄与し得るが、過剰な導入によりT400が低下する傾向がある。T1200およびT400については後述する。上記の観点から、ガラス1~6において、BaO含有量は、10.0%以上であることが好ましく、11.0%以上であることがより好ましい。また、上記の観点から、ガラス1~6において、BaO含有量は、23.0%以下であることが好ましく、22.0%以下であることがより好ましい。
【0101】
SrO含有量は、0%。0%以上または0%超であることができる。BaOと同様に、SrOは、耐候性を比較的低下させ難い成分であり、ガラスの熱的安定性の調整等の理由で適宜添加することができる成分である。SrOは、CuOの濃度の調整に使用することもできる。SrO含有量は、0.5%以上であることが好ましく、1.0%以上、1.5%以上、2.0%以上、2.5%以上、3.0%以上、3.5%以上、4.0%以上、4.5%以上、5.0%以上、5.5%以上、6.0%以上、6.5%以上、7.0%以上の順により好ましい。ただし過剰な導入によりT400が低下する傾向があることから、SrO含有量は、30.0%以下であることが好ましく、29.0%以下、28.0%以下、27.0%以下、26.0%以下、26.0%以下、25.0%以下、24.0%以下、23.0%以下、22.0%以下、21.0%以下、20.0%以下、19.0%以下、18.0%以下、17.0%以下、16.0%以下、15.0%以下、14.0%以下、13.0%以下、12.0%以下、11.0%以下、10.0%以下、9.0%以下の順により好ましい。
【0102】
CaO含有量は、0%。0%以上または0%超であることができる。CaOは、耐候性を比較的低下させ難い成分であり、ガラスの熱的安定性の調整等の理由で適宜添加することができる成分である。CaOは、CuOの濃度の調整に使用することもできる。CaO含有量は、0.5%以上であることが好ましく、1.0%以上、1.5%以上、2.0%以上、2.5%以上、3.0%以上、3.5%以上、4.0%以上、4.5%以上、5.0%以上、5.5%以上、6.0%以上、6.5%以上、7.0%以上であることが好ましい。ただし過剰な導入によりT400が低下する傾向があることから、CaO含有量は、
30.0%以下であることが好ましく、29.0%以下、28.0%以下、27.0%以下、26.0%以下、26.0%以下、25.0%以下、24.0%以下、23.0%以下、22.0%以下、21.0%以下、20.0%以下、19.0%以下、18.0%以下、17.0%以下、16.0%以下、15.0%以下、14.0%以下、13.0%以下、12.0%以下、11.0%以下、10.0%以下、9.0%以下の順により好ましい。
【0103】
Na2O含有量は、0%、0%以上または0%超であることができる。Na2Oは過剰導入により耐候性が低下する傾向がある。このためNa2O含有量は、5.0%以下であることが好ましく、4.0%以下、3.0%以下、2.0%以下、1.0%以下の順により好ましい。
【0104】
K2O含有量は、0%、0%以上または0%超であることができる。アルカリ金属酸化物の中で、K2Oは、Li2OおよびNa2Oに比べて近赤外線吸収特性をより向上させる効果がある。一方、K2Oの過剰導入により耐候性が低下する傾向がある。これらの観点から、K2O含有量は、10.0%以下であることが好ましく、9.0%以下、8.0%以下、7.0%以下、6.0%以下、5.0%以下、4.0%以下、3.0%以下、2.0%以下、1.0%以下の順により好ましい。
【0105】
Cs2O含有量は、0%、0%以上または0%超であることができる。Cs2Oも耐候性を低下させる傾向があるため、積極的に導入しないことが望ましい。Cs2O含有量は、15.0%以下、14.0%以下、13.0%以下、12.0%以下、11.0%以下、10.0%以下、9.0%以下、8.0%以下、7.0%以下、6.0%以下の順により好ましい。他方で、熱的安定性や熔解性の調整のため、Cs2O含有量は、0.5%以上とすることができ、1.0%以上、1.5%以上、2.0%以上、2.5%以上、3.0%以上、3.5%以上、4.0%以上とすることもできる。
【0106】
Li2O、Na2OおよびK2Oの合計含有量(Li2O+Na2O+K2O)は、0%、0%以上または0%超であることができる。耐候性の低下をより一層抑制する観点からは、合計含有量(Li2O+Na2O+K2O)は、15.0%以下であることが好ましく、14.0%以下、13.0%以下、12.0%以下、11.0%以下、10.0%以下の順により好ましい。合計含有量(Li2O+Na2O+K2O)が上記の値以下であることは、熱膨張係数が増大することによってガラスの膨張収縮量が増加し、ガラスの体積変化が他の部材によって規制された際にガラスに応力が加わってガラスに欠けや割れが生じることを回避する観点からも好ましい。
【0107】
ガラスの潮解を抑える観点からは、Na2OとK2Oとの合計含有量(Na2O+K2O)は、15.0%以下であることが好ましく、14.0%以下、13.0%以下、12.0%以下、11.0%以下、10.0%以下、9.0%以下の順により好ましい。Na2OとK2Oとの合計含有量(Na2O+K2O)は、0%、0%以上または0%超であることができる。Na2OとK2Oとの合計含有量(Na2O+K2O)を0%にすることにより潮解をより一層抑えたガラスを得ることもできる。他方でガラスの熔解性を抑制し、かつT600の低下を抑えながら、ガラスの原料費を抑制する観点からは、合計含有量(Na2O+K2O)を1.0%以上とすることができ、更には2.0%以上、3.0%以上、4.0%以上、5.0%以上、6.0%以上、7.0%以上、8.0%以上、9.0%以上、10.0%以上、11.0%以上、12.0%以上、13.0%以上、14.0%以上、15.0%以上とすることもできる。
【0108】
耐候性については、ガラスの潮解が抑制されていること、高温高湿下におけるガラス表面の析出物の発生が抑制されていることの一方または両方を、耐候性の指標とすることができる。この点については、更に後述する。耐候性をより一層向上させるためには、Al2O3の導入がより好ましく、次いでY2O3、La2O3およびGd2O3の1種以上の導入が好ましい。またBaOは比較的多くの導入により上記の耐候性を向上させることができ、SrOやCaOは耐候性向上の観点からは更に多くの導入を要することから、「(3×Al2O3+Y2O3+La2O3+Gd2O3+BaO/3+(CaO+SrO)/6)」として算出される値(単位:モル%)は、0%以上であることが好ましく、0%超であることがより好ましく、0.5%以上、1.0%以上、2.0%以上、3.0%以上、4.0%以上、5.0% 以上、6.0%以上、7.0%以上、8.0%以上とすることが好ましい。更にガラスの耐候性や機械的強度を重視する場合は、9.0%以上、10.0%以上、11.0%以上、12.0%以上、13.0%以上、14.0%以上、15.0%以上、16.0%以上、17.0%以上、18.0%以上、19.0%以上の順に更に好ましい。「(3×Al2O3+Y2O3+La2O3+Gd2O3+BaO/3+(CaO+SrO)/6)」において、「Al2O3」はAl2O3含有量、「Y2O3」はY2O3含有量、「La2O3」はLa2O3含有量、「Gd2O3」はGd2O3含有量、「BaO」はBaO含有量、「CaO」はCaO含有量、「SrO」はSrO含有量である。即ち、「(3×Al2O3+Y2O3+La2O3+Gd2O3+BaO/3+(CaO+SrO)/6)」は、Al2O3含有量を3倍して算出される値と、Y2O3含有量、La2O3含有量、Gd2O3含有量、BaO含有量の1/3として算出される値と、CaO含有量とSrO含有量の合計の1/6として算出される値と、の合計であり、こうして算出される値に単位として%(モル%)を付して表示するものとする。
他方で「(3×Al2O3+Y2O3+La2O3+Gd2O3+BaO/3+(CaO+SrO)/6)」の値を大きくしすぎるとガラスの熔解性が悪化する傾向があること、近赤外線吸収の位置が可視光側にシフトする傾向があること等から、「(3×Al2O3+Y2O3+La2O3+Gd2O3+BaO/3+(CaO+SrO)/6)」として算出される値は 40.0%以下であることが好ましく、37.0%以下、35.0%以下、33.0%以下、32.0%以下、30.0%以下、28.0%以下、26.0%以下、25.0%以下、24.0%以下、23.0%以下、22.0%以下、21.0%以下の順により好ましい。
【0109】
P2O5、BaOおよびCuOの合計含有量に対する、「(3×Al2O3+Y2O3+La2O3+Gd2O3+BaO/3+(CaO+SrO)/6)」により算出される値の比率、即ち、「(3×Al2O3+Y2O3+La2O3+Gd2O3+BaO/3+(CaO+SrO)/6)/(P2O5+BaO+CuO)」は、0.0以上であることができる。Al2O3、Y2O3、La2O3、Gd2O3、BaO、CaOおよびSrOからなる群から選ばれる成分は、必須成分であるP2O5、BaOおよびCuOに対して一定量以上を導入することが望ましい。したがって、上記比率は、0.05以上であることが好ましく、0.06以上、0.07以上、0.08以上、0.09以上、0.10以上、0.11以上の順により好ましい。
他方で、上記比率を大きくしすぎるとガラスの透過率特性が低下し、更にはガラスの安定性が低下する傾向も強まるため、上記比率は、0.32以下であることが好ましく、0.30以下、0.28以下、0.26以下、0.24以下、0.22以下、0.20以下、0.18以下の順により好ましい。
【0110】
ZnO含有量は、0%、0%以上または0%超であることができる。ZnOはガラスの熱的安定性の調整等の理由で適宜添加することができる成分であるが、他の2価成分(中でもBaO、SrO、CaO)に比べて近赤外線吸収特性を悪化させることがある。また、必須成分であるP2O5の導入量を充分に確保する観点から、その含有量の上限は10.0%以下であることが好ましく、9.0%以下、8.0%以下、7.0%以下、6.0%以下、5.0%以下の順により好ましい。他方でガラスの熱的安定性の調整、Tgおよび/またはTmを低下させるためにZnOを導入する場合、0.4%以上、0.6%以上、0.8%以上、1.0%以上、1.2%以上、1.4%以上、1.6%以上、1.8%以上、2.0%以上の順により好ましい。
【0111】
ガラス1~6は、基本的に上記成分により構成されることが好ましいが、上記成分が奏する作用効果を妨げない範囲において、その他の成分を含有させることも可能である。また、ガラス1~6について、不可避的不純物の含有を排除するものではない。
【0112】
例えば、Nb2O5、ZrO2は、上記成分以外の成分として、ガラスの耐候性や機械的強度の調整、または熱的安定性の向上のために、それぞれ、0%超、0.1%以上または0.2%以上を適宜導入することもできるが、それぞれの含有量は、5.0%以下が望ましく、4.0%以下、3.0%以下、2.0%以下、1.0%以下、0.5%以下、0.3%以下の順により望ましい。これらの成分の含有量は、それぞれ0%であることもできる。
【0113】
TiO2、WO3、Bi2O3も、上記成分以外の成分として、ガラスの透過率に影響しない程度に、ガラスの耐候性や機械的強度の調整、または熱的安定性の向上のために、それぞれ、0%超、0.1%以上または0.2%以上を適宜導入することもできるが、それぞれの含有量は、4.0%以下が望ましく、3.0%以下、2.0%以下、1.0%以下、0.5%以下、0.3%以下の順により望ましい。これらの成分の含有量は、それぞれ0%であることもできる。
【0114】
Pb、As、Cd、Tl、Be、Seは、いずれも毒性を有する。そのため、ガラス1~6はこれらをガラス成分として含有しないことが好ましい。
【0115】
U、Th、Raはいずれも放射性元素である。そのため、ガラス1~6はこれらをガラス成分として含有しないことが好ましい。
【0116】
V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Pr,Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tmは、ガラスの着色を増大させ、蛍光の発生源となり得る。そのため、ガラス1~6では、これら元素の酸化物ガラス基準での酸化物基準での含有量は総量で10質量ppm以下とすることが好ましく、これら元素をガラス成分として含有しないことがより好ましい。
【0117】
中でも、V2O5は、毒性があること、可視域の透過率特性を悪化させることから使用しないことが好ましい。即ち、一形態では、ガラス1~6は、Vイオンを含まないガラスであることが好ましく、酸化物基準のガラス組成(モル%表示)において、V2O5含有量は、1.0%以下であることが好ましく、0.3%以下、0.1%以下、0.01%以下の順により好ましく、V2O5を含まないことが更に好ましい。
【0118】
一例として、V2O5と、必須成分であるLi2Oとの比率として、Li2O含有量に対するV2O5含有量の比率(V2O5/Li2O)は、0.0080以下であることが好ましく、0.0048以下、0.0028以下、0.0018以下、0.0014以下の順により好ましい。
【0119】
CoOは、ガラスの可視域の透過率を低下させてしまうほか、毒性もあるため、使用しないことが好ましい。即ち、一形態では、ガラス1~6は、Coイオンを含まないガラスであることが好ましく、酸化物基準のガラス組成においてCoOを含まないことが好ましい。
【0120】
GeおよびTaをガラスに導入するための原料は高価である。そのため、ガラス1~6は、これらをガラス成分として含有しないことが好ましい。
【0121】
Sb(Sb2O3)、Sn(SnO2)、Ce(CeO2)、およびSO3は清澄剤として機能する任意に添加可能な元素である。このうち、Sb(Sb2O3)は、清澄効果の大きな清澄剤である。
Sn(SnO2)、Ce(CeO2)は、Sb(Sb2O3)と比較し、清澄効果が小さい。これら清澄剤は、多量に添加するとガラスの着色が強まる傾向がある。したがって、清澄剤を添加する場合は、添加による着色の影響を考慮しつつ、Sb(Sb2O3)を添加することが好ましい。
【0122】
以下に記載の清澄剤として機能し得る成分の含有量については、酸化物基準のガラス組成における値を示す。
【0123】
Sb2O3含有量は、外割り表示とする。即ち、Sb2O3、SnO2、CeO2およびSO3以外の全ガラス成分の酸化物としての合計含有量を100.0質量%としたときのSb2O3含有量は、2.0質量%未満であることが好ましく、1.5質量%以下、1.2質量%以下、1.0質量%以下、0.9質量%以下、0.8質量%以下、0.7質量%以下、0.6質量%以下、0.5質量%以下、0.4質量%以下、0.3質量%以下、0.2質量%以下、0.1質量%未満の順により好ましい。Sb2O3の含有量は0質量%であってもよい。ただしガラスの酸化を促進し可視域の透過率を高める観点からは、Sb2O3含有量を0.01質量%以上とすることができ、0.02質量%以上、0.03質量%以上、0.04質量%以上、0.05質量%以上、0.06質量%以上または0.08質量%以上とすることもできる。
【0124】
SnO2含有量も、外割り表示とする。即ち、SnO2、Sb2O3、CeO2およびSO3以外の全ガラス成分の酸化物としての合計含有量を100.0質量%としたときのSnO2の含有量は、2.0質量%未満であることが好ましく、1.0質量%未満、更に好ましくは0.9質量%以下、0.8質量%以下、0.7質量%以下、0.6質量%以下、0.5質量%以下、0.4質量%以下、0.3質量%以下、0.2質量%以下、0.1質量%の順により好ましい。SnO2の含有量は0質量%であってもよい。SnO2含有量を上記範囲とすることによりガラスの清澄性を改善できる。
【0125】
CeO2含有量も、外割り表示とする。即ち、CeO2、Sb2O3、SnO2およびSO3以外の全ガラス成分の酸化物としての合計含有量を100.0質量%としたときのCeO2含有量は、2.0質量%未満であることが好ましく、1.0質量%未満、更に好ましくは0.9質量%以下、0.8質量%以下、0.7質量%以下、0.6質量%以下、0.5質量%以下、0.4質量%以下、0.3質量%以下、0.2質量%以下、0.1質量%未満の順により好ましい。CeO2含有量は0質量%であってもよい。CeO2含有量を上記範囲とすることによりガラスの清澄性を改善できる。
【0126】
SO3含有量も、外割り表示とする。即ち、SO3、Sb2O3、SnO2、CeO2以外の全ガラス成分の酸化物としての合計含有量を100.0質量%としたときのSO3含有量は、好ましくは2.0質量%未満、より好ましくは1.0質量%未満、更に好ましくは0.5質量%未満、一層好ましくは0.1質量%未満の範囲である。SO3含有量は0質量%であってもよい。SO3の含有量を上記範囲とすることによりガラスの清澄性を改善できる。
【0127】
一形態では、ガラス1~6は、酸化物基準のモル%表示のガラス組成において、Li2O含有量に対するBaO含有量の比率(BaO/Li2O)が1.0以上であり、かつ下記(1)~(4)の1つ以上を満たすことができる。ガラス1~6は、下記(1)~(4)を1つのみ満たすこともでき、2つ以上満たすこともでき、3つ以上満たすこともでき、4つ満たすこともできる。
(1)BaO含有量に対する、CaO、SrOおよびZnOの合計含有量の比率((CaO+SrO+ZnO)/BaO)が0.02以上、
(2)MgOとBaOとの合計含有量に対する、CaO、SrOおよびZnOの合計含有量の比率((CaO+SrO+ZnO)/(MgO+BaO))0.02以上、
(3)BaO含有量に対する、K2O+CaO+SrOの合計含有量の比率((K2O+CaO+SrO)/BaO)が0.12以上、
(4)MgOとBaOとの合計含有量に対する、K2O、CaO、SrOおよびZnOの合計含有量の比率((K2O+CaO+SrO+ZnO)/(MgO+BaO))が0.12以上。
【0128】
<ガラス7>
次に、ガラス7について説明する。
【0129】
ガラス7は、酸化物基準のモル%表示のガラス組成が以下の組成である近赤外線吸収ガラスである。
P2O5含有量が40.0~65.0モル%、
CuO含有量が9.0~25.0モル%、
BaO含有量が5~50モル%、
Li2O、Na2OおよびK2Oの合計含有量(Li2O+Na2O+K2O)が1.0~15.0モル%、
SiO2含有量が2.0モル%以下、
B2O3含有量が2.0モル%以下、
Al2O3含有量が0.5~7.0モル%以下、
Li2O含有量が7.0モル%以下、
ZnO含有量が10.0モル%以下、
PbO含有量が2.0モル%以下、
MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計含有量に対するMgO含有量の比率(MgO/(MgO+CaO+SrO+BaO))が0.3以下、
原子%表示のガラス組成において、Pイオンの含有量に対するOイオンの含有量の比率 (Oイオン/Pイオン)が3.50以下であり、
アニオン%表示のガラス組成において、Fイオンの含有量が10.0アニオン%以下である。
【0130】
ガラス7において、P2O5含有量、CuO含有量、BaO含有量、Li2O、Na2OおよびK2Oの合計含有量、SiO2含有量、B2O3含有量、Al2O3含有量、Li2O含有量、ZnO含有量、PbO含有量ならびにMgO、CaO、SrOおよびBaOの合計含有量に対するMgO含有量の比率は、上記範囲である。かかるガラス7において、可視域の透過率向上と近赤外線カット能力向上との両立の観点、および、ガラスの熱的安定性を向上させる観点から、原子%表示のガラス組成において、Pイオンの含有量に対するOイオンの含有量の比率(O/P比率)は3.50以下である。ガラス7において、O/P比率は、3.40以下であることが好ましく、3.30以下、3.20以下の順に好ましい。
ガラス7に、厚み0.25mm以下で、波長620~650nmにおいて外部透過率が50%となる厚みに換算して、波長400nmにおける外部透過率が75%以上および波長1200nmにおける外部透過率が7%以下である透過率特性を付与するうえで、O/P比率は3.15以下であることが好ましく、3.10以下、3.05以下の順により好ましい。一方、耐候性の向上、および/または、熔解性の低下を抑制する観点からは、ガラス7において、O/P比率は大きいことが好ましい。この点から、ガラス7において、O/P比率は、2.85以上であることが好ましく、2.86以上、2.87以上、2.88以上、2.89以上、2.90以上、3.00以上の順により好ましい。
【0131】
以下、ガラス7の酸化物基準のガラス組成(モル%表示)について、更に詳細に説明する。
【0132】
ガラス7のCuO含有量は、9.0%以上であり、9.5%以上、10.0%以上、10.5%以上、11.0%以上、11.5%以上、12.0%以上、12.5%以上、13.0%以上、13.5%以上、14.0%以上、14.5%以上、15.0%以上、15.5%以上、16.0%以上、16.5%以上、17.0%以上、17.5%以上、18.0%以上、18.5%以上、19.0%以上、19.5%以上、20.0%以上の順に好ましい。CuO含有量は、ガラス形成成分の導入余地を残し、ガラスの熱的安定性を維持する観点からは、25.0%以下であり、24.5%以下、24.0%以下、23.5%以下、23.0%以下、22.5%以下、22.0%以下、21.5%以下、21.0%以下、20.5%以下の順に好ましい。
【0133】
厚み0.16mm換算の透過率特性として、反射損失を含む外部透過率が50%となる波長λT50が600nm~650nmの範囲であるためには、CuO含有量は、15.0%以上であることが好ましく、15.5%以上、16.0%以上、16.5%以上、17.0%以上、17.5%以上、18.0%以上、18.5%以上、19.0%以上、19.5%以上、20.0%以上の順により好ましい。
厚み0.21mm換算の透過率特性として、反射損失を含む外部透過率が50%となる波 長λT50が600nm~650nmの範囲であるためには、CuO含有量は、10.0%以上であることが好ましく、10.5%以上、11.0%以上、11.5%以上、12.0%以上、12.5%以上、13.0%以上、13.5%以上、14.0%以上、14.5%以上、15.0%以上、15.5%以上、16.0%以上、16.5%以上、17.0%以上、17.5%以上、18.0%以上、18.5%以上、19.0%以上、19.5%以上、20.0%以上の順により好ましい。
厚み0.25mm換算の透過率特性として、反射損失を含む外部透過率が50%となる波長λT50が600nm~650nmの範囲であるためには、CuO含有量は、10.0%以上であることが好ましく、10.5%以上、11.0%以上、11.5%以上、12.0%以上、12.5%以上、13.0%以上、13.5%以上、14.0%以上、14.5%以上、15.0%以上、15.5%以上、16.0%以上、16.5%以上、17.0%以上、17.5%以上、18.0%以上、18.5%以上、19.0%以上、19.5%以上、20.0%以上の順により好ましい。
一方、厚み0.25mm換算の透過率特性は、CuO含有量が多量になると、反射損失を含む外部透過率が50%となる波長λT50が600nmを下回る可能性があるため、CuO含有量は、25.0%以下、24.5%以下、24.0%以下、23.5%以下、23.0%以下、22.5%以下、22.0%以下、21.5%以下、21.0%以下、20.5%以下、20.0%以下の順により好ましい。
波長550nm以上で反射損失を含む外部透過率が50%となる波長λT50が645nmとなるガラスの厚みが0.25mm以下であるためには、CuO含有量は、10.0%以上であることが好ましく、10.5%以上、11.0%以上、11.5%以上、12.0%以上、12.5%以上、13.0%以上、13.5%以上、14.0%以上、14.5%以上、15.0%以上、15.5%以上、16.0%以上、16.5%以上、17.0%以上、17.5%以上、18.0%以上、18.5%以上、19.0%以上、19.5%以上、20.0%以上の順により好ましい。
波長550nm以上で反射損失を含む外部透過率が50%となる波長λT50が633nmとなるガラスの厚みが0.25mm以下であるためには、CuO含有量は、10.5%以上であることが好ましく、11.0%以上、11.5%以上、12.0%以上、12.5%以上、13.0%以上、13.5%以上、14.0%以上、14.5%以上、15.0%以上、15.5%以上、16.0%以上、16.5%以上、17.0%以上、17.5%以上、18.0%以上、18.5%以上、19.0%以上、19.5%以上、20.0%以上の順により好ましい。
【0134】
ガラス7は、必須成分としてP2O5を含む。先に記載したように、可視域の透過率向上と近赤外線カット能力向上との両立の観点から、O/P比率が低いことは好ましい。O/P比率を低下させるためには、P2O5含有量を高くすることが好ましい。この点から、ガラス7のP2O5含有量は、40.0%以上であり、41.0%以上、42.0%以上、43.0%以上、44.0%以上、45.0%以上、46.0%以上、47.0%以上、48%以上、49.0%以上、50%以上、51.0%以上、52.0%以上の順に好ましい。P2O5自体は近赤外線吸収能力を有さない成分であるため、近赤外線吸収能力を有するCuO含有量を高める観点からは、P2O5含有量は、65.0%以下であり、64.0%以下、63.0%以下、62.0%以下、61.0%以下、60.0%以下、59.0%以下、58.0%以下、57.0%以下、56.0%以下、55.0%以下、54.0%以下、53.0%以下の順に好ましい。また、P2O5含有量が上記の値以下であることは、耐候性の低下をより一層抑制する観点、および/または、熔解性の低下を抑制する観点からも好ましい。
【0135】
ガラス7は、一形態では、ガラスの近赤外線カット能力を高め、かつ可視域の透過率を向上させる観点から、酸化物基準のガラス組成において、半値を短波長側にシフトさせる傾向があるB2O3およびSiO2の一方または両方を含むガラスであることができ、他の一形態では、B2O3もSiO2のも含まないガラスであることもできる。
ガラス7において、可視域の透過率をより一層向上させる観点から、SiO2含有量は2.0%以下であり、1.5%以下、1.0%以下、0.5%以下の順に好ましい。B2O3含有量は0%であることもできる。
他方で、ガラス7について、ガラスの均質化を促進させるためにガラスの粗熔解を石英製るつぼで行う場合、SiO2含有量は0%超であることが好ましく、0.01%以上、0.02%以上、0.03%以上、0.04%以上、0.05%以上、0.1%以上、0.2%以上、0.3%以上の順により好ましい。ただしガラス中への過剰なSiO2の導入は、ガラスの光学的な均質性を低下させる傾向がある。この点から、ガラス7において、SiO2含有量は、2.0%以下であることが好ましく、1.4%以下、0.9%以下、0.8%以下、0.6%以下、0.4%以下の順により好ましい。
ガラス7において、可視域の透過率をより一層向上させる観点から、B2O3含有量は2.0%以下であり、1.5%以下、1.0%以下、0.5%以下の順に好ましい。B2O3含有量は0%であることもできる。
他方で、ガラス7について、ガラスの均質化を促進させるためにガラスの粗熔解を石英製るつぼで行う場合、B2O3含有量は0%超であることが好ましく、0.01%以上、0.02%以上、0.03%以上、0.04%以上、0.05%以上、0.1%以上、0.2%以上、0.3%以上の順により好ましい。ただしガラス中への過剰なSiO2の導入は、ガラスの光学的な均質性を低下させる傾向がある。この点から、ガラス7において、SiO2含有量は、2.0%以下であることが好ましく、1.4%以下、0.9%以下、0.8%以下、0.6%以下、0.4%以下の順により好ましい。
【0136】
ガラス7は、酸化物基準のガラス組成において、一形態ではLi2Oを含み、他の一形態ではLi2Oを含まない。Li2Oは、各種ガラス成分と比べて、CuOの吸収を長波長域に維持する能力が高く、また耐候性に与える悪影響も小さい。この観点から、Li2O含有量は、0%以上または0%超であることができ、0.1%以上であることが好ましく、0.5%以上、1.0%以上、1.2%以上の順により好ましい。他方、ガラスの熱的安定性を確保する観点および/または耐候性の低下をより一層抑制する維持する観点から、ガラス7において、Li2O含有量は、7.0%以下であり、6.0%以下、5.0%以下、4.0%以下、3.0%以下、2.8%以下の順に好ましい。Li2O含有量が7.0%以下であることは、ガラスの潮解を抑制する観点からも好ましい。
【0137】
ガラス7では、Al2O3は、耐候性を特に高めることに寄与し得る成分である。Al2O3含有量は、耐候性向上の観点から、0.5%以上であり、0.6%以上、0.7%以上、0.9%以上、1.1%以上、1.2%以上の順に好ましい。他方、可視域における透過率低下をより一層抑制し、近赤外線透過率特性向上の観点からは、Al2O3含有量は、7.0%以下であり、6.5%以下、6.0%以下、5.5%以下、5.0%以下、4.5%以下、4.0%以下、3.5%以下、3.0%以下、2.5%以下の順に好ましい。
【0138】
ガラス7では、MgOは、ガラスの熱的安定性の調整のために適宜加えることができる成分であるが、CuOの吸収を短波長側にシフトさせ近赤外線吸収特性を悪化させるため、CuO含有量を増やし難くする傾向がある。また、MgO含有量の増加にともなってガラスの熔解性は低下する傾向がある。これらの観点から、MgO含有量は、9.0%以下であることが好ましく、8.0%以下、7.0%以下、6.0%以下、5.0%以下、4.0%以下、3.0%以下、2.0%以下の順により好ましい。MgO含有量は0%であることもできる。一形態では、ガラスの機械的強度を向上させる観点から、MgO含有量は0%超であることができ、0.5%以上であることが好ましく、1.0%以上であることがより好ましい。
【0139】
La2O3は、ガラスの近赤外線吸収特性を損なうことなく耐候性を高めることに寄与し得る成分である。La2O3含有量は、0.10%以上であることが好ましく、0.15%以上、0.18%以上、0.21%以上の順により好ましい。他方、可視域における透過率低下をより一層抑制する観点からは、La2O3含有量は、8.0%以下であることが好ましく、7.0%以下、6.5%以下、6.0%以下、5.5%以下、5.0%以下、4.5%以下、4.0%以下、3.5%以下、3.0%以下、2.5%以下、2.0%以下、1.5%以下、1.0%以下、0.5%以下、0.1%以下の順により好ましい。0%であることもできる。La2O3含有量は0%であってもよい。
【0140】
Y2O3も、ガラスの近赤外線吸収特性を損なうことなく耐候性を高めることに寄与し得る成分である。Y2O3含有量は、0.10%以上であることが好ましく、0.15%以上、0.20%以上、0.25%以上、0.30%以上、0.35%以上、0.40%以上、0.45%以上、0.50%以上の順により好ましい。他方、可視域における透過率低下をより一層抑制する観点からは、Y2O3含有量は、8.0%以下であることが好ましく、7.0%以下、6.5%以下、6.0%以下、5.5%以下、5.0%以下、4.5%以下、4.0%以下、3.5%以下、3.0%以下、2.5%以下、2.0%以下、1.5%以下、1.0%以下、0.5%以下、0.1%以下の順により好ましい。Y2O3含有量は0%であってもよい。
なお、ガラスの比重を高めることなくガラスのモル体積を増大させる観点からY2O3を導入することもできる。
【0141】
Gd2O3も耐候性を高めることに寄与し得る成分である。Gd2O3含有量は、0.10%以上であることが好ましく、0.15%以上、0.18%以上、0.21%以上の順により好ましい。他方、可視域における透過率低下をより一層抑制する観点からは、Gd2O3含有量は、8.0%以下であることが好ましく、7.0%以下、6.5%以下、6.0%以下、5.5%以下、5.0%以下、4.5%以下、4.0%以下、3.5%以下、3.0%以下、2.5%以下、2.0%以下、1.5%以下、1.0%以下、0.5%以下、0.1%以下の順により好ましい。Gd2O3含有量は0%であってもよい。
【0142】
酸化物基準のガラス組成にLu2O3、Sc2O3等の上記以外の希土類酸化物の1種または2種以上が含まれてもよく、含まれなくてもよい。それら成分は一般に高価であるため、La2O3、Y2O3およびGd2O3以外の希土類酸化物の含有量(2種以上含まれる場合はそれらの合計含有量)は、2.5%以下であることが好ましく、1.5%以下、1.0%、0.5%以下が好ましく、0%であることもできる。
【0143】
ガラス7において、Al2O3、La2O3、Y2O3およびGd2O3の合計含有量(Al2O3+La2O3+Y2O3+Gd2O3)は、耐候性向上の観点からは、0.5%以上であることが好ましく、0.55%以上、0.60%以上、0.65%以上、0.70%以上、0.75%以上、0.80%以上、0.85%以上、0.90%以上の順により好ましい。他方で合計含有量(Al2O3+La2O3+Y2O3+Gd2O3)は、ガラスの熱的安定性の確保および/または熔融温度を低下させる観点からは、8.0%以下であることが好ましく、7.0%以下、6.5%以下、6.0%以下、5.5%以下、5.0%以下、4.5%以下、4.0%以下、3.5%以下、3.0%以下、2.5%以下、2.0%以下、1.5%以下、1.0%以下の順により好ましい。
【0144】
ガラス7の酸化物基準のガラス組成において、BaOは必須成分である。BaOは一定量の導入により耐候性を高められる成分であり、アルカリ金属酸化物と比べて潮解を起こし難い傾向がある。また、BaOは、ガラスの熱的安定性を高め、熔解性を調整する目的で添加することができる。更に、BaOは、T1200を下げることに寄与し得るが、過剰な導入によりT400が低下する傾向がある。T1200およびT400については後述する。上記の観点から、ガラス7において、BaO含有量は、5.0%以上であり、10.0%以上 15.0%以上 17%以上、19%以上、21%以上の順に好ましい。また、上記の観点から、ガラス7において、BaO含有量は、50.0%以下であり、45.0%以下、40.0%以下、35.0%以下、30.0%以下、28.0%以下、26.0%以下、24.0%以下の順に好ましい。
【0145】
SrO含有量は、0%、0%以上または0%超であることができる。BaOと同様に、SrOは、耐候性を比較的低下させ難い成分であり、ガラスの熱的安定性の調整等のために適宜添加することができる成分である。SrOは、CuOの濃度の調整に使用することもできる。SrO含有量は、0.5%以上であることが好ましく、1.0%以上、1.5%以上、2.0%以上、2.5%以上、3.0%以上、3.5%以上、4.0%以上、4.5%以上、5.0%以上、5.5%以上、6.0%以上、6.5%以上、7.0%以上の順により好ましい。ただし過剰な導入によりT400が低下する傾向があることから、SrO含有量は、30.0%以下であることが好ましく、29.0%以下、28.0%以下、27.0%以下、26.0%以下、26.0%以下、25.0%以下、24.0%以下、23.0%以下、22.0%以下、21.0%以下、20.0%以下、19.0%以下、18.0%以下、17.0%以下、16.0%以下、15.0%以下、14.0%以下、13.0%以下、12.0%以下、11.0%以下、10.0%以下、9.0%以下の順により好ましい。
【0146】
CaO含有量は、0%、0%以上または0%超であることができる。CaOは、耐候性を比較的低下させ難い成分であり、ガラスの熱的安定性の調整等の理由で適宜添加することができる成分である。CaOは、CuOの濃度の調整に使用することもできる。CaO含有量は、0.5%以上であることが好ましく、1.0%以上、1.5%以上、2.0%以上、2.5%以上、3.0%以上、3.5%以上、4.0%以上、4.5%以上、5.0%以上、5.5%以上、6.0%以上、6.5%以上、7.0%以上の順に好ましい。ただし過剰な導入によりT400が低下する傾向があることから、CaO含有量は、30.0%以下であることが好ましく、29.0%以下、28.0%以下、27.0%以下、26.0%以下、26.0%以下、25.0%以下、24.0%以下、23.0%以下、22.0%以下、21.0%以下、20.0%以下、19.0%以下、18.0%以下、17.0%以下、16.0%以下、15.0%以下、14.0%以下、13.0%以下、12.0%以下、11.0%以下、10.0%以下、9.0%以下の順により好ましい。
【0147】
Na2O含有量は、0%、0%以上または0%超であることができる。Na2Oは過剰導入により耐候性が低下する傾向がある。このためNa2O含有量は、5.0%以下であることが好ましく、4.0%以下、3.0%以下、2.0%以下、1.0%以下の順により好ましい。
【0148】
K2O含有量は、0%、0%以上または0%超であることができる。同じアルカリの中でLi2O Na2Oに比べて近赤外線吸収特性を良くする効果があるが、K2Oも過剰導入により耐候性が低下する傾向がある。これらの観点から、K2O含有量は、10.0%以下であることが好ましく、9.0%以下、8.0%以下、7.0%以下、6.0%以下、5.0%以下、4.0%以下、3.0%以下、2.0%以下、1.0%以下の順により好ましい。
【0149】
Cs2O含有量は、0%、0%以上または0%超であることができる。Cs2Oも耐候性を低下させる傾向があるため、積極的に導入しないことが望ましい。Cs2O含有量は、15.0%以下、14.0%以下、13.0%以下、12.0%以下、11.0%以下、10.0%以下、9.0%以下、8.0%以下、7.0%以下、6.0%以下の順により好ましい。他方で、熱的安定性や熔解性の調整のため、Cs2O含有量は、0.5%以上とすることができ、1.0%以上、1.5%以上、2.0%以上、2.5%以上、3.0%以上、3.5%以上、4.0%以上とすることもできる。
【0150】
ガラス7において、熔融性と近赤外線吸収特性の観点から、Li2O、Na2OおよびK2Oの合計含有量(Li2O+Na2O+K2O)は1.0%以上であり、2.0%以上であることが好ましく、3.0%以上であることがより好ましい。耐候性の低下をより一層抑制する観点からは、合計含有量(Li2O+Na2O+K2O)は、15.0%以下であり、14.0%以下、13.0%以下、12.0%以下、11.0%以下、10.0%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下の順に好ましい。合計含有量(Li2O+Na2O+K2O)が上記の値以下であることは、熱膨張係数が増大することによってガラスの膨張収縮量が増加し、ガラスの体積変化が他の部材によって規制された際にガラスに応力が加わってガラスに欠けや割れが生じることを回避する観点からも好ましい。
【0151】
ZnO含有量は、0%、0%以上または0%超であることができる。ZnOはガラスの熱的安定性の調整等の理由で適宜添加することができる成分であるが、必須成分であるP2O5の導入量を充分に確保する観点から、ガラス7におけるZnO含有量は、10.0%以下であり、9.0%以下、8.0%以下、7.0%以下、6.0%以下、5.0%以下、4.0%以下、3.0以下、2.5%以下の順に好ましい。他方でガラスの熱的安定性の調整、Tgおよび/またはTmを低下させるためにZnOを導入する場合、ZnO含有量は、0.4%以上、0.6%以上、0.8%以上、1.0%以上、1.2%以上、1.4%以上、1.6%以上、1.8%以上、2.0%以上の順により好ましい。
【0152】
ガラス7において、耐候性を維持しながら、近赤外透過率吸収特性も維持する観点から、 MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計含有量に対するMgO含有量の比率(MgO/(MgO+CaO+SrO+BaO))は0.3以下であり、0.25以下、0.20以下、0.15以下、0.10以下、0.05以下の順に好ましく、0にすることもできる。
【0153】
ガラス7は、基本的に上記成分により構成されることが好ましいが、上記成分が奏する作用効果を妨げない範囲において、その他の成分を含有させることも可能である。また、ガラス7について、不可避的不純物の含有を排除するものではない。
例えば、Nb2O5およびZrO2は、上記成分以外の成分として、ガラスの耐候性や機械的強度の調整、または熱的安定性の向上のために、それぞれ、0%超、0.1%以上または0.2%以上を適宜導入することもできる。それぞれの含有量は、5.0%以下が望ましく、4.0%以下、3.0%以下、2.0%以下、1.0%以下、0.5%以下、0.3%以下の順により望ましい。これらの成分の含有量は、それぞれ0%であることもできる。
【0154】
TiO2、WO3、Bi2O3も、上記成分以外の成分として、ガラスの透過率に影響しない程度に、ガラスの耐候性や機械的強度の調整、または熱的安定性の向上のために、それぞれ、0%超、0.1%以上または0.2%以上を適宜導入することもできるが、それぞれの含有量は、4.0%以下が望ましく、3.0%以下、2.0%以下、1.0%以下、0.5%以下、0.3%以下の順により望ましい。これらの成分の含有量は、それぞれ0%であることもできる。
【0155】
ガラス7において、PbO含有量は2.0モル%以下である。Pbは毒性を有するため、ガラス7におけるPbO含有量は0%であることが好ましい。
【0156】
As、Cd、Tl、Be、Seは、いずれも毒性を有する。そのため、ガラス7はこれらをガラス成分として含有しないことが好ましい。
【0157】
U、Th、Raはいずれも放射性元素である。そのため、ガラス7はこれらをガラス成分として含有しないことが好ましい。
【0158】
V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tmは、ガラスの着色を増大させ、蛍光の発生源となり得る。そのため、ガラス7では、これら元素の酸化物ガラス基準での酸化物基準での含有量は総量で10質量ppm以下とすることが好ましく、これら元素をガラス成分として含有しないことがより好ましい。
中でも、V2O5は、毒性があることから、可視域の透過率特性を悪化させることから使用しないことが好ましい。即ち、一形態では、ガラス7は、V2O5を含まないガラスであることが好ましく、酸化物基準のガラス組成(モル%表示)において、V2O5含有量は、1.0%以下であることが好ましく、0.3%以下、0.1%以下、0.01%以下の順により好ましく、V2O5を含まないことが更に好ましい。
CoOは、ガラスの可視域の透過率を低下させてしまうほか、毒性もあるため、使用しないことが好ましい。即ち、一形態では、ガラス7は、CoOを含まないガラスであることが好ましい。
GeおよびTaをガラスに導入するための原料は高価である。そのため、ガラス7は、これらをガラス成分として含有しないことが好ましい。
【0159】
Sb(Sb2O3)、Sn(SnO2)、Ce(CeO2)、およびSO3は清澄剤として機能する任意に添加可能な元素である。このうち、Sb(Sb2O3)は、清澄効果の大きな清澄剤である。
Sn(SnO2)、Ce(CeO2)は、Sb(Sb2O3)と比較し、清澄効果が小さい。これら清澄剤は、多量に添加するとガラスの着色が強まる傾向がある。したがって、清澄剤を添加する場合は、添加による着色の影響を考慮しつつ、Sb(Sb2O3)を添加することが好ましい。
以下に記載の清澄剤として機能し得る成分の含有量については、酸化物基準のガラス組成における値を示す。
Sb2O3含有量は、外割り表示とする。即ち、Sb2O3、SnO2、CeO2およびSO3以外の全ガラス成分の酸化物としての合計含有量を100.0質量%としたときのSb2O3含有量は、2.0質量%未満であることが好ましく、1.5質量%以下、1.2質量%以下、1.0質量%以下、0.9質量%以下、0.8質量%以下、0.7質量%以下、0.6質量%以下、0.5質量%以下、0.4質量%以下、0.3質量%以下、0.2質量%以下、0.1質量%未満の順により好ましい。Sb2O3の含有量は0質量%であってもよい。ただしガラスの酸化を促進し可視域の透過率を高める観点からは、Sb2O3含有量を0.01質量%以上とすることができ、0.02質量%以上、0.03質量%以上、0.04質量%以上、0.05質量%以上、0.06質量%以上または0.08質量%以上とすることもできる。
SnO2含有量も、外割り表示とする。即ち、SnO2、Sb2O3、CeO2およびSO3以外の全ガラス成分の酸化物としての合計含有量を100.0質量%としたときのSnO2の含有量は、2.0質量%未満であることが好ましく、1.0質量%未満、更に好ましくは0.9質量%以下、0.8質量%以下、0.7質量%以下、0.6質量%以下、0.5質量%以下、0.4質量%以下、0.3質量%以下、0.2質量%以下、0.1質量%の順により好ましい。SnO2の含有量は0質量%であってもよい。SnO2含有量を上記範囲とすることによりガラスの清澄性を改善できる。
CeO2含有量も、外割り表示とする。即ち、CeO2、Sb2O3、SnO2およびSO3以外の全ガラス成分の酸化物としての合計含有量を100.0質量%としたときのCeO2含有量は、2.0質量%未満であることが好ましく、1.0質量%未満、更に好ましくは0.9質量%以下、0.8質量%以下、0.7質量%以下、0.6質量%以下、0.5質量%以下、0.4質量%以下、0.3質量%以下、0.2質量%以下、0.1質量%未満の順により好ましい。CeO2含有量は0質量%であってもよい。CeO2含有量を上記範囲とすることによりガラスの清澄性を改善できる。
SO3含有量も、外割り表示とする。即ち、SO3、Sb2O3、SnO2、CeO2以外の全ガラス成分の酸化物としての合計含有量を100.0質量%としたときのSO3含有量は、好ましくは2.0質量%未満、より好ましくは1.0質量%未満、更に好ましくは0.5質量%未満、一層好ましくは0.1質量%未満の範囲である。SO3含有量は0質量%であってもよい。SO3の含有量を上記範囲とすることによりガラスの清澄性を改善できる。
【0160】
一形態では、ガラス7は、下記(1)~(4)の1つ以上を満たすことができる。ガラス7は、下記(1)~(4)を1つのみ満たすこともでき、2つ以上満たすこともでき、3つ以上満たすこともでき、4つ満たすこともできる。
(1)BaO含有量に対する、CaO、SrOおよびZnOの合計含有量の比率((CaO+SrO+ZnO)/BaO)が0.02以上、
(2)MgOとBaOとの合計含有量に対する、CaO、SrOおよびZnOの合計含有量の比率((CaO+SrO+ZnO)/(MgO+BaO))0.02以上、
(3)BaO含有量に対する、K2O+CaO+SrOの合計含有量の比率((K2O+CaO+SrO)/BaO)が0.12以上、
(4)MgOとBaOとの合計含有量に対する、K2O、CaO、SrOおよびZnOの合計含有量の比率((K2O+CaO+SrO+ZnO)/(MgO+BaO))が0.12以上。
【0161】
アニオン%表示のガラス組成において、ガラス7は、アニオンとして少なくともOイオンを含むことができ、その含有量は、90.0アニオン%以上であることができる。このようにアニオンとしてOイオンを主体とするガラスにおいてO/P比率を低くすることにより、CuOの赤色領域の吸収を長波長側にシフトさせることができ、それにより赤色領域の透過率を低下させることなくCuOの含有率を高めて近赤外線カット能力を向上させることが可能になると本発明者は考えている。ガラス7において、アニオン%表示のガラス組成におけるOイオン含有量は、95.0%以上であることが好ましく、98.0%以上であることがより好ましく、99.0%以上であることが更に好ましい。アニオン成分に占めるOイオンの割合が高いことは、ガラス熔融時の揮発を抑えるうえでも好ましい。ガラス熔融時の揮発を抑えることは、脈理の発生を抑制する観点から好ましい。特にガラス熔融時の揮発を抑え、生産性を高めると共に製造時の有害ガスの発生を抑える観点からは、Oイオンの含有量が100%であることが好ましい。
【0162】
ガラス7は、アニオン%表示のガラス組成において、アニオンとして、一形態ではOイオンのみを含むことができ、他の一形態ではOイオンとともに他のアニオンを1種以上含むことができる。他のアニオンとしては、Fイオン、Clイオン、Brイオン、Iイオン等を挙げることができる。
【0163】
ガラス7のアニオン%表示のガラス組成において、Fイオンの含有量は、ガラスの均質性向上および強度向上の観点から、10.0アニオン%以下であり、5.0アニオン%以下であることが好ましく、2.0アニオン%以下であることがより好ましく、1.0アニオン%以下であることが一層好ましい。特にガラス熔融時の揮発を抑え、生産性を高めると共に製造時の有害ガスの発生を抑える観点からは、ガラス7は、Fイオンを含まないガラスであることもできる。
【0164】
<ガラス8>
次に、ガラス8について説明する。
【0165】
ガラス8は、厚み0.25mm以下で、波長620~650nmにおいて外部透過率が50%となる厚みに換算して、波長400nmにおける外部透過率が75%以上および波長1200nmにおける外部透過率が7%以下である透過率特性を有し、かつ100~300℃における平均線膨張係数(以下、「α(100~300℃)」とも記載する。)が135×10-7/K以下である近赤外線吸収ガラスである。
上記透過率特性について換言すると、波長620~650nmにおいて外部透過率が50%となる厚みに換算して波長400nmにおける外部透過率が75%以上となる厚みであって、かつ波長620~650nmにおいて外部透過率が50%となる厚みに換算して波長1200nmにおける外部透過率が7%以下となる厚みをT1と呼ぶと、T1が、0.25mm以下の範囲内に1つまたは2つ以上存在するということである。
【0166】
一形態では、ガラス8は、厚み0.23mm以下で、波長625~650nmにおいて外部透過率が50%となる厚みに換算して、波長400nmにおける外部透過率が80%以上および波長1200nmにおける外部透過率が5%以下である透過率特性を有し、かつ100~300℃における平均線膨張係数が130×10-7/K以下である近赤外線吸収ガラスであることができる。
上記透過率特性について換言すると、波長620~650nmにおいて外部透過率が50%となる厚みに換算して波長400nmにおける外部透過率が80%以上となる厚みであって、かつ波長620~650nmにおいて外部透過率が50%となる厚みに換算して波長1200nmにおける外部透過率が5%以下となる厚みをT2と呼ぶと、T2が、0.23mm以下の範囲内に1つまたは2つ以上存在するということである。
【0167】
近年のスマートフォン搭載のカメラ等に代表される小型カメラにおいては、得られた画像情報を単にデジタル化するだけでなく、その画像情報に対して種々の電算処理を行うことによって画像を再構成する。例えば、特定の対象を抽出して、画像の色彩やコントラストを調整することが主流になってきている。その際、光学素子中の光の反射によって、本来存在しない色情報が撮像素子に入力されると、その情報を取り除かなければならず、望ましくない、このような高性能化と小型化とを両立するためには、近赤外線吸収ガラスには、厚み0.25mm以下(更には厚み0.23mm)以下であることが望まれる。かかる厚みにおいて上記透過率特性を有する近赤外線吸収ガラスは、上記の高性能化と小型化とを両立する観点から好ましい。
【0168】
一方、ガラスのα(100~300℃)が大きいと、厚み0.25mm以下(更には0.23mm以下)にガラスを研磨した後、反射損失を低減するために蒸着等による反射防止膜を成膜する前の加熱および成膜後の降熱の工程において、サ-マルショックによりガラスが割れやすくなる。他方、サ-マルショックによるガラスの割れを防止するために、各工程におけるガラスの昇温速度および降温速度をより遅くすると、生産性の低下を招く。これに対し、α(100~300℃)が135×10-7/K以下(好ましくは130×10-7/K)のガラス8は、生産性の維持しつつ、サ-マルショックによるガラスの割れを防止することができる観点から好ましい。
【0169】
ガラス8について、上記透過率特性は、後述の透過率特性の測定方法によって求められる。
【0170】
ガラスのα(100~300℃)は、熱機械分析装置によって測定するものとする。例えば、ガラスのα(100~300℃)は、直径5mm、長さ20mmの円柱状ガラス試料を用意し、ブルカー・エイエックスエス(BRUKER axs)製の熱機械分析装置「TMA4000s」を使用して測定することができる。なお、測定時の試料の昇温速度は4℃/分とすることができる。
【0171】
ガラス8のガラス組成については、ガラス1~7について先に記載した各種事項の1つのみを適用することができ、または、ガラス1~7について先に記載した各種事項の2つ以上を任意の組み合わせで適用することもできる。ガラス1~7の中であるガラスについて先に記載した各種事項の1つ以上を、他のガラスについて先に記載した各種事項の1つ以上と任意に組み合わせて、ガラス8のガラス組成について適用することができる。一例として、ガラス1について先に記載した各種事項の1つ以上と、ガラス2について先に記載した各種事項の1つ以上と、を組み合わせてガラス8のガラス組成について適用することができる。また、他の一例として、ガラス1について先に記載した各種事項の1つ以上と、ガラス2について先に記載した各種事項の1つ以上と、ガラス3について先に記載した各種事項の1つ以上と、を組み合わせてガラス8のガラス組成について適用することができる。また、これら例に限定されず、任意の組み合わせが可能である。
【0172】
<ガラス物性>
次に、ガラス1~8が有し得るガラス物性について説明する。
【0173】
(透過率特性)
ガラス1~8は、近赤外線カットフィルタ用ガラスとして好適である。本発明および本明細書において、特記しない限り、「透過率」とは、反射損失を含む外部透過率をいうものとする。
近赤外線カット能力については、波長550nm以上で透過率が50%になる波長である半値λT50を指標とすることができ、波長1200nmにおける透過率T1200を指標とすることもできる。
また、ガラス1~8は、可視域において高い透過率を示すこともできる。可視域における透過率については、波長400nmにおける透過率T400を指標とすることができ、波長600nmにおける透過率T600を指標とすることもできる。
【0174】
ガラスの透過率特性は、以下の方法によって求められる値である。
ガラスサンプルを、互いに平行かつ光学研磨された平面を有するように加工し、波長200~1200nmにおける外部透過率を測定する。外部透過率には、試料表面における光線の反射損失も含まれる。
光学研磨された一方の平面に垂直に入射する光線の強度を強度Aとし、他方の平面から出射する光線の強度を強度Bとして、反射損失を含む分光透過率B/Aを算出する。波長550nm以上で分光透過率が50%になる波長を半値λT50とする。波長400nmにおける分光透過率をT400、波長600nmにおける分光透過率をT600、また、波長1200nmにおける分光透過率をT1200とする。
また、測定対象のガラスが換算される厚みのガラスでない場合には、そのガラスの厚みをdとして、以下の式Aによって、各波長λにおける透過率を換算するものとし、換算により得られた透過率特性から、各種換算値を求めることができる。
【0175】
式A: T(λ)=(1-R(λ))2×exp(loge((T0(λ)/100)/(1-R(λ))2)×d/d0)×100
【0176】
式A中、T(λ):波長λにおける換算透過率(%)、T0(λ):波長λにおける実測透過率(%)、d:換算される厚み(mm)、d0:ガラスの厚み(mm)、R(λ)=((n(λ)-1)/(n(λ)+1))2で表される、波長λにおける反射率、n(λ):波長λにおける屈折率である。ここで、n(λ)=1.51680、R(λ)=0.042165の定数とみなして計算する。
【0177】
赤色領域の透過率であるT600の値が高く、かつ近赤外域の透過率であるT1200の値が低いことは、可視域における透過率向上と近赤外線カット能力向上とが両立されていることを意味し得る。また、紫色領域の透過率であるT400の値が高いことも、可視域における透過率が向上されていることを意味し得る。
以上の観点から、T400、T600およびT1200について、それぞれ、好ましい範囲は以下の通りである。
T400については、70%以上であることが好ましく、更には、71%以上、72%以上、73%以上、74%以上、75%以上、76%以上、77%以上、78%以上、79%以上、80%以上の順により好ましい。T400は、例えば98%以下、97%以下または96%以下であることができるが、T400がより高いことは可視光透過性により優れることを意味するということができるため、上記例示した値を上回ることも好ましい。
T600については、50%以上であることが好ましく、更には、55%以上、56%、57%以上、58%以上、59%以上、60%以上、61%以上、62%以上、63%以上、64%以上、65%以上、66%以上、67%以上、68%以上、69%以上、70%以上、71%以上、72%以上、73%以上、74%以上、75%以上の順により好ましい。T600は、例えば90%以下、85%以下または80%以下であることができるが、T600がより高いことは可視光透過性により優れることを意味するということができるため、上記例示した値を上回ることも好ましい。
T1200については、30%以下であることが好ましく、29%以下、28%以下、27%以下、26%以下、25%以下、24%以下、23%以下、22%以下、21%以下、20%以下、19%以下、18%以下、17%以下、16%以下、15%以下、14%以下、13%以下、12%以下、11%以下、10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下の順により好ましい。T1200は、可視光透過率との両立を目的として、例えば1%以上、3%以上、5%以上または7%以上であることができるが、T1200がより低いことは近赤外線カット能力により優れることを意味するということができるため、上記例示した値を下回ることも好ましい。
【0178】
一形態では、T1200は、β1%以下であることもできる。
【0179】
β1は下記式B1により算出される。式B1中、RはO/P比率である。
(式B1)
β1=64×R-170
【0180】
また、一形態では、T1200は、以下式B2~B6に示すβ2、β3、β4、β5、β6に示す数値以下であることもできる(単位:%)。下記式中、RはO/P比率である。
式B2:β2=64×R-175
式B3:β3=64×R-180
式B4:β4=80×R-220
式B5:β5=80×R-224
式B6:β6=80×R-228
【0181】
波長550nm以上で分光透過率が50%になる波長である半値λT50は、600nm以上が好ましく、610nm以上、613nm以上、615nm以上、617nm以上、620nm以上、623nm以上、625nm以上、628nm以上の順により好ましい。半値λT50は、650nm以下が好ましく、更には、647nm以下、645nm以下、643nm以下、641nm以下、640nm以下、639nm以下、638nm以下の順により好ましい。波長550nm以上で分光透過率が50%になる波長である半値λT50を、所定以下のガラス厚みで達成できることは、ガラスの薄肉化と近赤外線カット能力向上との両立の観点から好ましい。所定以下のガラス厚みとは、好ましくは0.25mm以下である。
【0182】
ガラス1~8は、詳細を後述するように、一形態では、厚みが0.25mm以下の近赤外線カットフィルタ用ガラスとして使用することができる。
【0183】
ガラス1~8について、厚みが0.25mm以下の薄肉化された近赤外線カットフィルタ用ガラスとして好ましい透過率特性としては、下記(a)~(h)を挙げることができる。ガラス1~8は、下記(a)~(h)の1つ以上を満たすことが好ましく、2つ以上を満たすこともできる。先に説明したガラス組成調整を行うことによって、好ましい透過率特性を有するガラスを得ることができる。
【0184】
(a)波長550nm以上で反射損失を含む外部透過率が50%となる波長λT50が633nmとなるガラスの厚みが0.25mm以下であり、
上記厚みにおいて、波長600nmにおける反射損失を含む外部透過率T600が50%以上であり、かつ波長1200nmにおける反射損失を含む外部透過率T1200が30%以下である。
【0185】
上記(a)について、波長550nm以上で反射損失を含む外部透過率が50%となる波長λT50が633nmとなるガラスの厚みは、0.25mm以下であり、近赤外線カットフィルタの厚みについて後述する厚み範囲であることがより好ましい。この点は、下記(b)、(e)および(f)についても同様である。
【0186】
(b)波長550nm以上で反射損失を含む外部透過率が50%となる波長が633nmとなるガラスの厚みが0.25mm以下であり、
上記厚みにおいて、波長600nmにおける反射損失を含む外部透過率T600が50%以上であり、かつ波長1200nmにおける反射損失を含む外部透過率T1200がβ1%以下である。βは下記式B1より算出される値である。式B1中、Rは、ガラス1~8のO/P比率である。
【0187】
(式B1)
β1=64×R-170
【0188】
先に記載したように、T1200は、上記β2%以下、β3%以下、β4%以下、β5%以下またはβ6%以下であることもできる。
【0189】
(c)厚み0.16mm換算の透過率特性として、反射損失を含む外部透過率が50%となる波長λT50が600nm~650nmの範囲にあり、波長1200nmにおける反射損失を含む外部透過率T1200が30%以下であり、かつ波長400nmにおける反射損失を含む外部透過率T400が70%以上である。
【0190】
(d)厚み0.21mm換算の透過率特性として、反射損失を含む外部透過率が50%となる波長λT50が600nm~650nmの範囲にあり、波長1200nmにおける反射損失を含む外部透過率T1200が25%以下であり、かつ波長400nmにおける反射損失を含む外部透過率T400が70%以上である。
【0191】
(e)波長550nm以上で反射損失を含む外部透過率が50%となる波長が645nmとなるガラスの厚みが0.25mm以下であり、
上記厚みにおいて、波長600nmにおける反射損失を含む外部透過率T600が50%以上であり、かつ波長1200nmにおける反射損失を含む外部透過率T1200が30%以下である。
【0192】
(f)波長550nm以上で反射損失を含む外部透過率が50%となる波長λT50が645nmとなるガラスの厚みが0.25mm以下であり、
上記厚みにおいて、波長600nmにおける反射損失を含む外部透過率T600が50%以上であり、かつ波長1200nmにおける反射損失を含む外部透過率T1200がβ1%以下であり、β1は先に記載の式4により算出される値である。
【0193】
(g)厚み0.23mm換算の透過率特性として、反射損失を含む外部透過率が50%となる波長λT50が600nm~650nmの範囲にあり、波長1200nmにおける反射損失を含む外部透過率T1200が18%以下であり、かつ波長400nmにおける反射損失を含む外部透過率T400が70%以上である。
【0194】
(h)厚み0.25mm換算の透過率特性として、反射損失を含む外部透過率が50%となる波長λT50が600nm~650nmの範囲にあり、波長1200nmにおける反射損失を含む外部透過率T1200が16%以下であり、かつ波長400nmにおける反射損失を含む外部透過率T400が70%以上である。
【0195】
(耐候性)
ガラス1~8は、先に説明した組成を有することにより、優れた耐候性を示すことができる。耐候性については、ヘーズメーターによって測定されるヘーズ(Haze)値を指標とすることもできる。耐候性に優れるガラスとしては、温度85℃相対湿度85%の恒温恒湿下において90分間保管後に、JIS K 7136:2000に規定されているヘーズメーターによって測定されるヘーズ値が15%以下のガラスを挙げることができる。かかるヘーズ値は、0%または0%以上であることができ、10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、1%以下であることが更に好ましい。
また、耐候性については、一形態では、潮解が起こり難いガラスほど耐候性に優れるガラスということができる。潮解性の評価方法の一例としては、後述の実施例に記載の方法を挙げることができる。
【0196】
(ガラス転移温度Tg、融解による吸熱反応が収束する温度Tm)
ガラス1~8のガラス転移温度は、特に限定されないが、ガラスの熔融性を改善することによってガラスの短波長域の透過率を高める観点、およびアニール炉や成形装置への負担軽減の観点からは、Tgは、480℃以下であることが好ましく、更には、450℃以下、430℃以下、420℃以下、410℃以下、400℃以下、370℃以下の順により好ましい。ガラスの化学的耐久性および/または耐熱性を高める観点から、Tgは250℃以上であることが好ましく、更には260℃以上、270℃以上、280℃以上、290℃以上、300℃以上の順により好ましい。
【0197】
ガラスのTgの値は、Li2OやNa2O、K2Oの含有量やその合計含有量、ZnO含有量、MgO含有量やAl2O3含有量やその合計含有量の調整等によって制御できる。
【0198】
ガラス1~8の融解による吸熱反応が収束する温度Tmは、特に限定されないが、Tmが低いほど熔解性が良好になり、より高粘度での成形を行ってもガラス中に失透が発生しない傾向がある。また、熔解性が良好になるほどガラスの短波長域の可視域における透過率を高めることができる傾向がある。これらの観点からは、Tmは、890℃以下であることが好ましく、更には、880℃以下、870℃以下、860℃以下、850℃以下、840℃以下、830℃以下、820℃以下、810℃以下、800℃以下、790℃以下、780℃以下、770℃以下、760℃以下、750℃以下、740℃以下、730℃以下、720℃以下、710℃以下、700℃以下、690℃以下、680℃以下、670℃以下、660℃以下、650℃以下の順により好ましい。Tmの下限は特に限定されないが、Tmが低すぎることによってガラスの耐候性が低下する傾向もあるため、Tmは、500℃以上、550℃以上、580℃以上、600℃以上、620℃以上、640℃以上であることもできる。
【0199】
ガラスのTmの値は、Li2OやNa2O、K2Oの含有量やその合計含有量、ZnO含有量、MgO含有量やAl2O3含有量やその合計含有量の調整等によって制御できる。
【0200】
例えば、Rigaku社製の示差走査熱量分析装置(DSC8270)を使用し、昇温速度10℃/分にしてガラス転移温度Tgおよび融解による吸熱反応が収束する温度Tmを測定することができる。測定温度範囲は室温から1050℃の範囲とすることができる。
【0201】
(比重)
近赤外線カットフィルタが軽量であることは、このフィルタが組み込まれる素子や装置の軽量化につながるため好ましい。この点から、ガラス1~8の比重は、3.80以下であることが好ましく、3.40以下、3.35以下、3.30以下、3.25以下、3.20以下、3.15以下、3.10以下、3.05以下、3.00以下、2.95以下、2.90以下、2.85以下、2.80以下、2.75以下、2.70以下、2.65以下、2.60以下の順により好ましい。
比重は、例えば2.00以上または2.40以上であることができるが、上記観点から比重が低いことは好ましいため、ここに例示した値を下回ることも好ましい。比重の単位は、「g/cc」である。
【0202】
(モル体積)
ガラスのモル体積M/Dについては、特に限定されないが、単位体積当たりのCuO量を多くすることによって近赤外線吸収能力を高める観点からは、ガラスのモル体積は、より小さいことが好ましい。モル体積は、P2O5、La2O3、Y2O3、Gd2O3,BaO、K2O等をLi2Oに置換すると小さくすることができ、Al2O3やCuO、Na2OをLi2Oに置換すると、やや小さくすることができる。他方でCaO,ZnO、SrOをLi2Oに置換してもモル体積は大きく変化せず、MgOをLi2Oに置換するとモル体積が増加する傾向にある。これらの傾向を勘案してガラス組成を調整することにより、ガラスのモル体積を調整することができる。モル体積は、45cc/モル以下であることが好ましく、43cc/モル以下、42cc/モル以下、41cc/モル以下、40cc/モル以下、39.5cc/モル以下、39.0cc/モル以下、38.5cc/モル以下、38.0cc/モル以下、37.5cc/モル以下の順により好ましい。
他方で、ガラスの耐候性を維持する観点からはモル体積を大きくすることもでき、この点から、ガラス1~6のモル体積は、34.0cc/モル以上であることができ、35.0cc/モル以上、36.0cc/モル以上、36.5cc/モル以上、37.0cc/モル以上、37.5cc/モル以上、38.0モル以上、38.5cc/モル以上、39.0cc/モル以上、39.5cc/モル以上であることもできる。
【0203】
<ガラスの製造方法>
上記ガラスは、各種ガラス原料を調合、熔融、成形することにより得ることができる。製造方法については、後述の記載も参照できる。
【0204】
上記近赤外線吸収ガラスは、近赤外線カットフィルタ用ガラスとして好適である。また、上記近赤外線吸収ガラスは、近赤外線カットフィルタ以外の光学素子(レンズ等)にも適用することができ、その他、種々のガラス製の製品に対して適用可能であるし、種々の変形も可能である。
【0205】
[近赤外線カットフィルタ]
本発明の一態様は、上記近赤外線吸収ガラスからなる近赤外線カットフィルタ(以下、単に「フィルタ」とも記載する。)に関する。
【0206】
上記フィルタを構成するガラスについては、先に記載した通りである。
【0207】
以下に、上記フィルタの製造方法の具体例について説明する。ただし、以下の製造方法は例示であって、本発明を限定するものではない。
【0208】
熔融ガラスを、燐酸塩、酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、フッ化物等のガラス原料を適宜用いて、所望の組成になるように原料を秤量し、混合した後、白金製坩堝等の熔融容器中にて、例えば800℃~1100℃にて熔解する。その際、揮発性成分の揮発を抑制するために白金等の蓋を用いることもできる。また、熔融は大気中で行うことができ、Cuの価数変化を抑えるために、酸素雰囲気にするか、熔融ガラス中に酸素をバブリングすることもできる。熔融状態のガラスは、撹拌および清澄によって泡が低減された(好ましくは泡を含まない)均質化された熔融ガラスとなる。なおガラスを900℃~1100℃で清澄したのち、ガラスの酸化を促進するためにガラスを800℃~1000℃に降温したのちにガラスを得ることもできる。ただし熔解温度や清澄温度が長時間ガラスの液相温度を下回ることは望ましくない。
【0209】
熔融状態のガラスを撹拌および清澄を行った後、ガラスを流し出して、徐冷したのち、所望の形状に成形する。ガラスを流し出す際は液相温度付近の温度まで降温し、ガラスの粘度を高めてから行うと、流し出したガラスの対流が起こりにくく、脈理が生じにくいため好ましい。徐冷速度としては、-50℃/hr~-1℃/hrの間の速度を選択することができ、-30℃/hrや-10℃/hrを選択することもできる。
【0210】
ガラスの成形方法としては、キャスト、パイプ流出、ロール、プレス等の公知の方法を使用できる。成形されたガラスは予めガラスの転移点付近に加熱されたアニール炉に移し、室温まで徐冷される。こうして、近赤外線カットフィルタを製造することができる。
【0211】
成形方法の一例について、以下に説明する。平坦かつ水平な底面と、この底面を挟んで互いに平行に対抗する一対の側壁と、一対の側壁の間に位置する一方の開口部を塞ぐ堰板によって構成された鋳型を用意する。この鋳型に白金合金製のパイプから一定の流出スピードで均質化された熔融ガラスを鋳込む。鋳込まれた熔融ガラスは鋳型内に広がり、一対の側壁によって一定の幅に規制されたガラス板に成形される。成形されたガラス板は、鋳型の開口部から連続的に引き出されていく。ここで鋳型の形状、寸法、熔融ガラスの流出スピード等の成形条件を適宜設定することにより、大判かつ肉厚のガラスブロックを成形することができる。成形されたガラス成形体は、予めガラス転移温度付近に加熱されたアニール炉に移され、室温まで徐冷される。徐冷によって歪が除かれたガラス成形体には、スライス、研削、研磨加工等の機械加工が施される。こうして、板状、レンズ形状等の用途に応じた形状の近赤外線カットフィルタを得ることができる。または、上記ガラスからなるプリフォームを成形し、このプリフォームを加熱、軟化してプレス成形する方法(特に光学機能面に研削、研磨等の機械加工を施すことなく最終製品をプレス成形する精密プレス成形法)等も使用可能である。フィルタの表面には必要に応じて光学多層膜を形成してもよい。
【0212】
上記近赤外線カットフィルタは、優れた近赤外線カット能力と可視域における高い透過率を兼ね備えることができる。かかる近赤外線カットフィルタによれば、半導体撮像素子の色感度補正を良好に行うことができる。
【0213】
また、上記近赤外線カットフィルタは、半導体イメージセンサーと組み合わせることにより、撮像装置に適用することが可能である。半導体イメージセンサーは、パッケージ内にCCDやCMOS等の半導体撮像素子を装着し、受光部を透光性部材でカバーしたものである。透光性部材を近赤外線カットフィルタが兼ねることもできるし、透光性部材を近赤外線カットフィルタとは別個のものとすることもできる。
【0214】
上記撮像装置は、半導体イメージセンサーの受光面に被写体の像を結像するためのレンズ、またはプリズム等の光学素子を備えることもできる。
【0215】
また、上記近赤外線カットフィルタによれば、色感度補正が良好になされ、優れた画質の画像を得ることが可能な撮像装置を提供することができる。
【0216】
上記近赤外線カットフィルタは、一形態では、厚みが0.25mm以下の近赤外線カットフィルタであることができる。近年、スマートフォンの登場により、撮像素子のカメラ厚みの減少傾向が顕著であり、これに伴い近赤外線カットフィルタにもより薄い厚みで性能を発揮することが望まれている。そのような近赤外線カットフィルタとしても、上記近赤外線カットフィルタは好適である。上記近赤外線カットフィルタの厚みは、0.24mm以下、0.23mm以下、0.22mm以下、0.21mm以下、0.20mm以下、0.19mm以下、0.18mm以下、0.17mm以下、0.16mm以下、0.15mm以下、0.14mm以下、0.13mm以下または0.12mm以下であることができる。上記近赤外線カットフィルタの厚みは、例えば0.21mmまたは0.11mmであることができる。また、上記近赤外線カットフィルタの厚みは、例えば0.50mm以上であることができるが、これに限定されるものではない。本発明および本明細書において、「厚み」とは、透過率を測定する領域の試料の厚みをいうものとし、シックネスゲージやマイクロメーター等によって測定することができる。例えば、透過光が通過する位置のほぼ中心部の厚みを測定してもよく、または透過光のスポット内で複数点の厚みを測定し、その平均値をとってもよい。
【0217】
上記近赤外線カットフィルタの透過率特性については、ガラス1~8に関する先の記載を参照できる。また、上記近赤外線カットフィルタの物性についても、ガラス1~8に関する先の記載を参照できる。
【実施例0218】
以下に、本発明を実施例により更に詳細に説明する。ただし、本発明は実施例の形態に限定されるものではない。
【0219】
[実施例1~39、比較例1~3]
ガラス原料として、燐酸塩、フッ化物、炭酸塩、硝酸塩、酸化物等を、表1に示されている組成のガラスが150g~300g得られるよう秤量混合し、白金製坩堝中または石英坩堝中に投入し、800℃~1000℃で、80分~100分熔解し、撹拌して脱泡、均質化を行った後、予熱した金型に流し出し、所定形状に成形した。得られたガラス成形体をガラス転移温度付近に加熱したアニール炉に移し、室温まで徐冷した。得られたガラスからテストピースを切り出し、両面を鏡面研磨して厚み約0.2mmとした後、以下の方法により各種評価を行った。
比較例1は、特開2019-38719号公報(特許文献1)の実施例5の組成を有するガラスである。
比較例2は、CN110255897(特許文献2)の実施例5の組成を有するガラスである。
比較例3は、特開昭55-3336号公報(特許文献3)の実施例10の組成を有するガラスである。
【0220】
[評価方法]
<透過率特性>
各テストピースの波長200~1200nmの透過率を分光光度計を使用して測定した。測定結果から、半値645nm換算、半値633nm換算、厚み0.16mm換算、厚み0.21mm換算、厚み0.23mm換算および厚み0.25mm換算の値として、半値(単位:nm)、T400、T600、T1200(単位:%)を求めた。
また、各テストピースの波長200~1200nmの透過率を分光光度計を使用して測定して得られた測定結果から、以下の透過率特性:
厚み0.25mm以下で、波長620~650nmにおいて外部透過率が50%となる厚みに換算して、波長400nmにおける外部透過率および波長1200nmにおける外部透過率;
厚み0.23mm以下で、波長625~650nmにおいて外部透過率が50%となる厚みに換算して、波長400nmにおける外部透過率および波長1200nmにおける外部透過率、
を求めた。
【0221】
<比重>
アルキメデス法により比重を測定した。
【0222】
<α(100~300℃)>
直径5mm、長さ20mmの円柱状ガラス試料を用意し、ブルカー・エイエックスエス(BRUKER axs)製の熱機械分析装置「TMA4000s」を使用してα(100~300℃)を測定した。測定時の試料の昇温速度は4℃/分とした。
【0223】
<モル体積>
測定された比重の値から、先に記載の方法によってモル体積を算出した。
【0224】
<耐候性の評価>
各テストピースを、温度85℃相対湿度85%の恒温恒湿槽内に90分間保持した。その後、JIS K 7136:2000に規定されているヘーズメーターを使用して、テストピースのクモリをヘーズ値として定量評価した。
潮解性については、温度85℃相対湿度85%の恒温恒湿槽内に90分間保持後の各テストピースの研磨表面およびサイド荒摺り面状態を観察して、以下の評価基準によってした。
〇:「研磨面のベタツキ」、「透過率変化」、「サイド荒摺り面の含水による色の変化(黒ずみ)」はいずれも確認されなかった
×:「研磨面のベタツキ」、「透過率変化」および「サイド荒摺り面の含水による色の変化(黒ずみ)」の一つ以上が確認された。
【0225】
以上の結果を、以下の表に示す。
【0226】
【0227】
【0228】
【0229】
【0230】
【0231】
【0232】
【0233】
【0234】
【0235】
【0236】
【0237】
【0238】
【0239】
【0240】
【0241】
【0242】
【0243】
【0244】
【0245】
【0246】
【0247】
上記の表に示す結果から、上記実施例の各ガラスは、薄肉化によっても可視域(紫色領域~赤色領域)の透過率が高く、近赤外線カット能力に優れ、かつ耐候性の低下の抑制されていることが確認できる。
比較例1は、Cu濃度がα1%未満かつα2%未満である。比較例1のガラスでは、所望の透過率特性を得るためには、ガラスを薄肉化できない。
比較例2のガラスは、薄肉化された厚みにおけるT1200が高かった。
比較例3のガラスは、α(100~300℃)が大きいため、先に記載したように割れやすいガラスである。
また、比較例1~3のガラスは、Li2O、Na2OおよびK2Oの合計含有量(Li2O+Na2O+K2O)が15モル%超えるため、潮解し易いガラスであった。
【0248】
上記実施例の各ガラスを、それぞれ3種の厚み、即ち、0.21mm、0.16mm、0.11mmの平板に加工して、近赤外線カットフィルタを作製した。近赤外線カットフィルタの主表面は光学研磨面である。このようにして近赤外線カット能力に優れ、かつ優れた耐候性を有する近赤外線カットフィルタを得ることができた。なお、近赤外線カットフィルタの表面には反射防止膜などのコートを形成してもよい。
【0249】
[実施例1-1~1-4]
外割表示のSb
2O
3含有量が0.1質量%(実施例1-1)、0.5質量%(実施例1-2)、1.0質量%(実施例1-3)または1.5質量%(実施例1-4)である点以外は先に示した実施例1と同じの組成のガラスが150g~300g得られるように、ガラス原料として、燐酸塩、フッ化物、炭酸塩、硝酸塩、酸化物等を秤量混合し、白金製坩堝中または石英坩堝中に投入し、800℃~1000℃で、80分~100分熔解し、撹拌して脱泡、均質化を行った後、予熱した金型に流し出し、所定形状に成形した。得られたガラス成形体をガラス転移温度付近に加熱したアニール炉に移し、室温まで徐冷した。得られたガラスからテストピースを切り出し、両面を鏡面研磨して厚み約0.20mm~約0.21mm程度とした後、先に記載した方法によって各テストピースについて透過率特性の測定を行い、波長633nmにおける外部透過率が50%となる板厚での波長400nmの外部透過率としてT400(単位:%)を求めた。かかるT400を、実施例1のガラス(Sb
2O
3添加なし)についても求めた。
実施例1-1~1-4のガラスの外観写真を
図2に示す。実施例1および実施例1-1~1-4のガラスについて、Sb
2O
3量に対してT400の値をプロットしたグラフを
図3に示す。
【0250】
[実施例4-1~4-4]
外割表示のSb
2O
3含有量が0.1質量%(実施例4-1)、0.5質量%(実施例4-2)、1.0質量%(実施例4-3)または1.5質量%(実施例4-4)である点以外は先に示した実施例4と同じの組成のガラスが150g~300g得られるように、ガラス原料として、燐酸塩、フッ化物、炭酸塩、硝酸塩、酸化物等を秤量混合し、白金製坩堝中または石英坩堝中に投入し、800℃~1000℃で、80分~100分熔解し、撹拌して脱泡、均質化を行った後、予熱した金型に流し出し、所定形状に成形した。得られたガラス成形体をガラス転移温度付近に加熱したアニール炉に移し、室温まで徐冷した。得られたガラスからテストピースを切り出し、両面を鏡面研磨して厚み約0.20mm程度とした後、先に記載した方法によって各テストピースについて透過率特性の測定を行い、波長633nmにおける外部透過率が50%となる板厚での波長400nmの外部透過率としてT400(単位:%)を求めた。かかるT400を、実施例4のガラス(Sb
2O
3添加なし)についても求めた。
実施例4-1~4-4のガラスの外観写真を
図4に示す。実施例4および実施例4-4~4-4のガラスについて、Sb
2O
3量に対してT400の値をプロットしたグラフを
図5に示す。
【0251】
[実施例25-1~25-4]
外割表示のSb
2O
3含有量が0.1質量%(実施例25-1)、0.5質量%(実施例25-2)、1.0質量%(実施例25-3)または1.5質量%(実施例25-4)である点以外は先に示した実施例25と同じの組成のガラスが150g~300g得られるように、ガラス原料として、燐酸塩、フッ化物、炭酸塩、硝酸塩、酸化物等を秤量混合し、白金製坩堝中または石英坩堝中に投入し、800℃~1000℃で、80分~100分熔解し、撹拌して脱泡、均質化を行った後、予熱した金型に流し出し、所定形状に成形した。得られたガラス成形体をガラス転移温度付近に加熱したアニール炉に移し、室温まで徐冷した。得られたガラスからテストピースを切り出し、両面を鏡面研磨して厚み約0.21mm~約0.22mm程度とした後、先に記載した方法によって各テストピースについて透過率特性の測定を行い、波長633nmにおける外部透過率が50%となる板厚での波長400nmの外部透過率としてT400(単位:%)を求めた。かかるT400を、実施例25のガラス(Sb
2O
3添加なし)についても求めた。
実施例25-1~25-4のガラスの外観写真を
図6に示す。実施例25および実施例25-1~25-4のガラスについて、Sb
2O
3量に対してT400の値をプロットしたグラフを
図7に示す。
【0252】
図2~
図7に示す結果から、ガラスの酸化を促進し可視域の透過率を高める観点から、ガラスへのSb
2O
3添加が好ましいことが確認できる。一形態では、外割表示のSb
2O
3含有量は、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1.0質量%以上または1.5質量%以上とすることができる。
【0253】
最後に、前述の各態様を総括する。
【0254】
一態様によれば、先に詳述したガラス1~6が提供される。
【0255】
一形態では、ガラス1~6は、酸化物基準のモル%表示のガラス組成において、Li2O含有量に対するBaO含有量の比率(BaO/Li2O)が1.0以上であり、かつ下記(1)~(4)の1つ以上を満たすガラスであることができる。
(1)BaO含有量に対する、CaO、SrOおよびZnOの合計含有量の比率((CaO+SrO+ZnO)/BaO)が0.02以上、
(2)MgOとBaOとの合計含有量に対する、CaO、SrOおよびZnOの合計含有量の比率((CaO+SrO+ZnO)/(MgO+BaO))0.02以上、
(3)BaO含有量に対する、K2O+CaO+SrOの合計含有量の比率((K2O+CaO+SrO)/BaO)が0.12以上、
(4)MgOとBaOとの合計含有量に対する、K2O、CaO、SrOおよびZnOの合計含有量の比率((K2O+CaO+SrO+ZnO)/(MgO+BaO))が0.12以上。
【0256】
一形態では、ガラス1~6の酸化物基準のモル%表示のガラス組成において、上記主要カチオンの酸化物の合計含有量は、90.0%以上であることができる。
【0257】
一態様によれば、先に詳述したガラス7が提供される。
【0258】
一形態では、ガラス7は、下記(1)~(4)の1つ以上を満たすガラスであることができる。
(1)BaO含有量に対する、CaO、SrOおよびZnOの合計含有量の比率((CaO+SrO+ZnO)/BaO)が0.02以上、
(2)MgOとBaOとの合計含有量に対する、CaO、SrOおよびZnOの合計含有量の比率((CaO+SrO+ZnO)/(MgO+BaO))0.02以上、
(3)BaO含有量に対する、K2O+CaO+SrOの合計含有量の比率((K2O+CaO+SrO)/BaO)が0.12以上、
(4)MgOとBaOとの合計含有量に対する、K2O、CaO、SrOおよびZnOの合計含有量の比率((K2O+CaO+SrO+ZnO)/(MgO+BaO))が0.12以上。
【0259】
一態様によれば、先に詳述したガラス8が提供される。
【0260】
一形態では、ガラス8は、厚み0.23mm以下で、波長625~650nmにおいて外部透過率が50%となる厚みに換算して、波長400nmにおける外部透過率が80%以上および波長1200nmにおける外部透過率が5%以下である透過率特性を有し、かつ100~300℃における平均線膨張係数が130×10-7/K以下であるガラスであることができる。
【0261】
一形態では、ガラス1~8は、波長550nm以上で反射損失を含む外部透過率が50%となる波長である半値λT50が633nmとなるガラスの厚みが0.25mm以下であり、上記厚みにおいて、波長600nmにおける反射損失を含む外部透過率T600が50%以上であり、かつ波長1200nmにおける反射損失を含む外部透過率T1200が30%以下であるガラスであることができる。
【0262】
一形態では、ガラス1~8は、波長550nm以上で反射損失を含む外部透過率が50%となる波長である半値λT50が633nmとなるガラスの厚みが0.25mm以下であり、上記厚みにおいて、波長600nmにおける反射損失を含む外部透過率T600が50%以上であり、かつ波長1200nmにおける反射損失を含む外部透過率T1200がβ1%以下であるガラスであることができる。β1については、先に記載した通りである。
【0263】
一形態では、ガラス1~8は、厚み0.16mm換算の透過率特性として、反射損失を含む外部透過率が50%となる波長である半値λT50が600nm~650nmの範囲にあり、波長1200nmにおける反射損失を含む外部透過率T1200が30%以下であり、かつ波長400nmにおける反射損失を含む外部透過率T400が70%以上であるガラスであることができる。
【0264】
一形態では、ガラス1~8は、厚み0.21mm換算の透過率特性として、反射損失を含む外部透過率が50%となる波長である半値λT50が600nm~650nmの範囲にあり、波長1200nmにおける反射損失を含む外部透過率T1200が25%以下であり、かつ波長400nmにおける反射損失を含む外部透過率T400が70%以上であるガラスであることができる。
【0265】
一形態では、ガラス1~8は、波長550nm以上で反射損失を含む外部透過率が50%となる波長である半値λT50が645nmとなるガラスの厚みが0.25mm以下であり、上記厚みにおいて、波長600nmにおける反射損失を含む外部透過率T600が50%以上であり、かつ波長1200nmにおける反射損失を含む外部透過率T1200が30%以下であるガラスであることができる。
【0266】
一形態では、ガラス1~8は、波長550nm以上で反射損失を含む外部透過率が50%となる波長である半値λT50が645nmとなるガラスの厚みが0.25mm以下であり、上記厚みにおいて、波長600nmにおける反射損失を含む外部透過率T600が50%以上であり、かつ波長1200nmにおける反射損失を含む外部透過率T1200がβ1%以下であるガラスであることができる。β1については、先に記載した通りである。
【0267】
一態様によれば、上記近赤外線吸収ガラスからなる近赤外線カットフィルタが提供される。
【0268】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
例えば、上記の例示されたガラス組成に対し、明細書に記載の組成調整を行うことにより、本発明の一態様にかかる近赤外線吸収ガラスを得ることができる。
また、明細書に例示または好ましい範囲として記載した事項の2つ以上を任意に組み合わせることは、もちろん可能である。