(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189718
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】大型工事用ポンプボリュートの設計方法及びそのボリュート
(51)【国際特許分類】
F04D 29/44 20060101AFI20221215BHJP
【FI】
F04D29/44 E
F04D29/44 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046608
(22)【出願日】2022-03-23
(31)【優先権主張番号】202110658301.3
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】521285126
【氏名又は名称】浙江理工大学
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG SCI-TECH UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No.928, Second Avenue, Jianggan District, Xiasha Higher Education Zone Hangzhou, Zhejiang 310018, China
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】李 暁俊
(72)【発明者】
【氏名】寧 望輝
(72)【発明者】
【氏名】馬 建峰
(72)【発明者】
【氏名】林 言丕
(72)【発明者】
【氏名】朱 祖超
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA03
3H130AB22
3H130AB42
3H130AC08
3H130BA04B
3H130CA08
3H130EB05B
3H130ED04B
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ポンプの運転中の圧力脈動及び径方向力を低減させ、ポンプの各運転条件での運転安全性及び安定性を向上させることができる大型工事用ポンプボリュートの設計方法及びそのボリュートを提供する。
【解決手段】ボリュート出口、拡散セグメント(2)、スロート部(3)、可動案内羽根(5)、固定案内羽根(6)、出口案内羽根(7)、及び仕切り舌(8)を含み、可動案内羽根の外周に複数の固定案内羽根が設けられ、出口案内羽根は加圧水室の入口の基礎円D3とほぼ正接し、出口案内羽根の入口端は断面Iを有し、仕切り舌端は断面IIを有し、ボリュートは、流れ方向に断面IIから断面Iまで環状ボリュートであり、ボリュートの流路の横断面の流通面積はほぼ同じである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボリュート出口(1)、拡散セグメント(2)、スロート部(3)、固定式多流路(4)、可動案内羽根(5)、固定案内羽根(6)、出口案内羽根(7)、仕切り舌/舌部(8)、及び流路隙間(9)を含み、加圧水室の出口端に拡散セグメントが設けられ、拡散セグメントの出口端はボリュート出口を有し、加圧水室と拡散セグメントとの間の接続部はスロート部であり、羽根車の外周にディフューザが設けられ、ディフューザは、周方向に分布する複数の可動案内羽根を含み、拡散セグメントとボリュート壁との間に仕切り舌が構成される、大型工事用ポンプのボリュートであって、
可動案内羽根(5)の外周に複数の固定案内羽根(6)が設けられ、固定案内羽根は、ボリュート流路を固定式多流路に仕切って、出口案内羽根の中線/軸線は拡散セグメントの中線/軸線と共線/平行し、出口案内羽根は加圧水室の入口の基礎円D3とほぼ正接し、固定案内羽根の出口端とそれに隣接する径方向内側の固定案内羽根の入口端又は加圧水室の入口の基礎円D3との間に流路隙間(9)があり、出口案内羽根の入口端は断面Iを有し、仕切り舌端は断面IIを有し、ボリュートは、流れ方向に断面IIから断面Iまで環状ボリュートであり、ボリュートの流路の横断面の流通面積はほぼ同じであることを特徴とする、大型工事用ポンプのボリュート。
【請求項2】
前記ボリュートは、ほぼ偏心した楕円形断面の環状ボリュートを用い、楕円形の長軸方向において、楕円形の偏心の長い部分の大きさは短い部分の大きさの2~4倍であることを特徴とする、請求項1に記載の大型工事用ポンプのボリュート。
【請求項3】
前記固定案内羽根(6)は、円弧状案内羽根であり、固定案内羽根は異なる円心角を有し、円心角は、流れ方向に断面IIから断面Iに向かうにつれて大きくなり、流れ方向に断面IIから断面Iまで、下流の円心角は上流の円心角の1.05~1.25倍であることを特徴とする、請求項2に記載の大型工事用ポンプのボリュート。
【請求項4】
流路隙間(9)は、流れ方向に断面IIから断面Iに向かうにつれて大きくなり、流れ方向に断面IIから断面Iまで、下流の流路隙間は、上流の流路隙間の1.05~1.2倍であることを特徴とする、請求項3に記載の大型工事用ポンプのボリュート。
【請求項5】
前記固定案内羽根(6)は下流端/尾縁端(61)を有し、下流端は先細いテーパ状または円弧状であり、下流端は第1の凹溝(62)、及び第2の凹溝(63)を有し、複数の第1の凹溝は下流端の径方向内側面に設けられ、複数の第2の凹溝は下流端の径方向外側面に設けられ、第1の凹溝、第2の凹溝は半円形構造であることを特徴とする、請求項4に記載の大型工事用ポンプのボリュート。
【請求項6】
前記第1の凹溝(62)の数は第2の凹溝(63)の数よりも多く、第1の凹溝の数は第2の凹溝数の1.5~3.0倍であることを特徴とする、請求項5に記載の大型工事用ポンプのボリュート。
【請求項7】
拡散セグメントはポンプボディ出口であり、拡散セグメントはスロート部からボリュート出口に向かうにつれて、水流通路の面積が大きくなり、拡散セグメントの断面は、矩形及び/又は円弧からなる形状を含み、スロート部位置での加圧水室の断面形状は拡散セグメントの端面形状と同じでありかつ重なり、該構造は、加圧水室と拡散セグメントとの円滑な遷移を保証することを特徴とする、請求項5に記載の大型工事用ポンプのボリュート。
【請求項8】
固定案内羽根及び可動案内羽根つきの環状ボリュート構造を用い、
所定の運転条件に応じて、ボリュート速度係数法に基づいて、
加圧水室の入口の基礎円直径D
3、ポンプ加圧水室の入口幅B
3、ボリュートチャンバーの外輪郭線の半径R、可動案内羽根の数Z
1、固定案内羽根の数Z
2、拡散角θを含むボリュートの幾何学的パラメータを決定し、
D
3= D
2+2b
2のように、加圧水室の入口の基礎円直径D
3を設計するステップ(1)であって、
式において、
b
2 - 可動案内羽根の半径、mmであり、
D
2 - ポンプインペラーの外径、mmであり、
D
3 - ポンプ加圧水室の入口の基礎円直径、mmである、ステップ(1)と、
B
3=B
2+0.05D
3のように、ポンプ加圧水室の入口幅B
3を設計するステップ(2)であって、
式において、
B
2 - ポンプインペラー出口の軸方向幅、mmであり、
D
3 - ポンプ加圧水室の入口の基礎円直径、mmであり、
B
3 - ポンプ加圧水室の入口幅、mmである、ステップ(2)と、
のように、ボリュートチャンバーの外輪郭線の半径Rを設計するステップ(3)であって、
式において、
A
I - ボリュートの第I断面の面積値、mmであり、
R - ボリュートチャンバーの外輪郭線の半径、mmである、ステップ(3)と、
Z
1=8~14のように、可動案内羽根の数Z
1を設計するステップ(4)であって、
式において、
Z
1 - 可動案内羽根の数、個である、ステップ(4)と、
Z
2=3~5のように、固定案内羽根の数Z
2を設計するステップ(5)であって、
式において、
Z
2 - 固定案内羽根の数、個である、ステップ(5)と、
のように、拡散セグメントの拡散角を設計するステップ(6)であって、
式において、
A
I - ボリュートの第I断面の面積値、mmであり、
D
S - ボリュート出口の直径、mmであり、
L - ボリュートの拡散セグメントの長さ、mmであり、
θ - 拡散角、°であり、
θを6°~12°とするステップ(6)とを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の大型工事用ポンプのボリュートの設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水利工事用ポンプボリュート、遠心ポンプボリュートの技術分野に関し、具体的には大型工事用ポンプボリュートの設計方法及びそのボリュートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、中国の水利水力発電プロジェクトは十分に発展しており、中国の電力エネルギーの需給要求を満たすとともに、中国の持続可能な発展戦略の実行のために堅固な基礎を築いた。ボリュートは遠心ポンプの重要な過流部品であり、ポンプの効率指標に大きな影響を及ぼす。流体が羽根車からボリュートに入ると、羽根車とボリュートの仕切り舌/舌部との隙間が小さいため、強い相互作用が発生し、従来の螺旋状ボリュートの仕切り舌領域で高振幅・低周波の圧力脈動をもたらす。また、螺旋状ボリュートの幾何的構造は非対称であるため、揚程と流量が高い場合、大きい圧力脈動及び径方向力が発生し、大きい振動や騒音が発生し、大型水利工事用ポンプの運転安定性に影響を与える。この問題に対して、中国実用新案公開番号CN201218236Yは、高速水ポンプボリュートを開示し、インボリュートまたはアルキメデススパイラルを有するフラットボリュートの円形ボリュートボトム及び連続側壁からなる連続したボリュート通路と、ポンプの給水口及び排水口が設けられたボリュートとを含み、該ボリュートの中心は給水口であり、連続側壁は止水板であり、揚程の高さ及び水の流量を増加させ、重量が軽く、耐食性があり、製造が容易で、コストが低いという特徴がある。中国特許出願公開番号CN111894903Aは、シリアル化された単段遠心ポンプのボリュート及び設計方法を開示し、異なる流量及び同じ羽根車の外径を設計する場合、ポンプカバー側に近いポンプボディの軸方向肉厚は、同じであってもよく、ポンプカバーは汎用形状に設計され得る。加圧水室は、軸方向の非対称断面を用い、中心線を基準とし、ポンプカバー側に近い断面は矩形であり、もう一側は直角台形であり、回転軸の摂動度を効果的に低減し、密封の信頼性を向上させ、ポンプの振動を低減させる。このように、生産効率を向上させ、機械的強度を向上させ、圧力脈動をある程度低下させるが、台形又は矩形断面を用いると、ポンプの圧力水頭及び効率が低い。従って、広く応用できるとともに、圧力脈動が小さく、径方向力が安定し、効率的に運転できる大型水利工事用ポンプボリュート構造を設計する必要がある。
【0003】
従来のボリュートの構造は、ボリュート本体を含み、ボリュート本体内に水流通路が設けられ、水流通路は、一般的に、加圧水室及び拡散セグメントからなる。加圧水室の開始端は仕切り舌であり、加圧水室と拡散セグメントとの接続箇所はスロート部であり、拡散セグメントの出口はポンプボディ出口である。従来の加圧水室は、羽根車外円の外側の設計基礎円を基準とし、仕切り舌部位から羽根車の回転方向に沿ってポンプの拡散セグメントの入口のスロート部に向かって大きくなる1組の断面を連結して構成され、加圧水室の横断面は、偏心楕円、台形又は半円円弧状の断面を用い、ポンプの圧力水頭及び効率を向上させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】中国実用新案公開第CN201218236Y号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来技術の不足を解消するために、ポンプの運転中の圧力脈動及び径方向力を低減させ、ポンプの各運転条件での運転安全性及び安定性を向上させることができる、大型工事用ポンプボリュートの設計方法及びそのボリュートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を実現するために、本発明で用いられる技術的解決手段は以下のとおりである。
【0007】
ボリュート出口(1)、拡散セグメント(2)、スロート部(3)、固定式多流路(4)、可動案内羽根(5)、固定案内羽根(6)、出口案内羽根(7)、仕切り舌/舌部(8)、及び流路隙間(9)を含み、加圧水室の出口端に拡散セグメントが設けられ、拡散セグメントの出口端はボリュート出口を有し、加圧水室と拡散セグメントとの間の接続部はスロート部であり、羽根車の外周にディフューザが設けられ、ディフューザは、周方向に分布する複数の可動案内羽根を含み、拡散セグメントとボリュート壁との間に仕切り舌が構成される、大型工事用ポンプのボリュートであって、可動案内羽根(5)の外周に複数の固定案内羽根(6)が設けられ、固定案内羽根は、ボリュート流路を固定式多流路に仕切って、出口案内羽根の中線/軸線は拡散セグメントの中線/軸線と共線/平行し、出口案内羽根は加圧水室の入口の基礎円D3とほぼ正接し、固定案内羽根の出口端とそれに隣接する径方向内側の固定案内羽根の入口端又は加圧水室の入口の基礎円D3との間に流路隙間(9)があり、出口案内羽根の入口端は断面Iを有し、仕切り舌端は断面IIを有し、ボリュートは、流れ方向に断面IIから断面Iまで環状ボリュートであり、ボリュートの流路の横断面の流通面積はほぼ同じである、ことを特徴とする。
【0008】
さらに、前記ボリュートは、ほぼ偏心した楕円形断面の環状ボリュートを用い、楕円形の長軸方向において、楕円形の偏心の長い部分の大きさは短い部分の大きさの2~4倍である
【0009】
さらに、前記固定案内羽根(6)は、円弧状案内羽根であり、固定案内羽根は異なる円心角を有し、円心角は、流れ方向に断面IIから断面Iに向かうにつれて大きくなり、流れ方向に断面IIから断面Iまで、下流の円心角は上流の円心角の1.05~1.25倍である。
【0010】
さらに、流路隙間(9)は、流れ方向に断面IIから断面Iに向かうにつれて大きくなり、流れ方向に断面IIから断面Iまで、下流の流路隙間は、上流の流路隙間の1.05~1.2倍である。
【0011】
さらに、前記固定案内羽根(6)は下流端/尾縁端(61)を有し、下流端は先細いテーパ状または円弧状であり、下流端は第1の凹溝(62)、及び第2の凹溝(63)を有し、複数の第1の凹溝は下流端の径方向内側面に設けられ、複数の第2の凹溝は下流端の径方向外側面に設けられ、第1の凹溝、第2の凹溝は半円形構造である
【0012】
さらに、前記第1の凹溝(62)の数は第2の凹溝(63)の数よりも多く、第1の凹溝の数は第2の凹溝数の1.5~3.0倍である。
【0013】
さらに、拡散セグメントはポンプボディ出口であり、拡散セグメントはスロート部からボリュート出口に向かうにつれて、水流通路の面積が大きくなり、拡散セグメントの断面は、矩形及び/又は円弧からなる形状を含み、スロート部位置での加圧水室の断面形状は拡散セグメントの端面形状と同じでありかつ重なり、該構造は、水室と拡散セグメントとの円滑な遷移を保証する。
【0014】
大型工事用ポンプのボリュートの設計方法であって、固定案内羽根及び可動案内羽根つきの環状ボリュート構造を用い、所定の運転条件に応じて、ボリュート速度係数法に基づいて、加圧水室の入口の基礎円直径D3、ポンプ加圧水室の入口幅B3、ボリュートチャンバーの外輪郭線の半径R、可動案内羽根の数Z1、固定案内羽根の数Z2、拡散角θを含むボリュートの幾何学的パラメータを決定し、
【0015】
D3= D2+2b2のように、加圧水室の入口の基礎円直径D3を設計するステップ(1)であって、
【0016】
式において、
b2 - 可動案内羽根の半径、mmであり、
D2 - ポンプインペラーの外径、mmであり、
D3 - ポンプ加圧水室の入口の基礎円直径、mmである、ステップ(1)と、
B3=B2+0.05D3のように、ポンプ加圧水室の入口幅B3を設計するステップ(2)であって、
【0017】
式において、
B
2 - ポンプインペラー出口の軸方向幅、mmであり、
D
3 - ポンプ加圧水室の入口の基礎円直径、mmであり、
B
3 - ポンプ加圧水室の入口幅、mmである、ステップ(2)と、
のように、ボリュートチャンバーの外輪郭線の半径Rを設計するステップ(3)であって、
【0018】
式において、
AI - ボリュートの第I断面の面積値、mmであり、
R - ボリュートチャンバーの外輪郭線の半径、mmである、ステップ(3)と、
Z1=8~14のように、可動案内羽根の数Z1を設計するステップ(4)であって、
【0019】
式において、
Z1 - 可動案内羽根の数、個である、ステップ(4)と、
Z2=3~5のように、固定案内羽根の数Z2を設計するステップ(5)であって、
【0020】
式において、
Z
2 - 固定案内羽根の数、個である、ステップ(5)と、
のように、拡散セグメントの拡散角を設計するステップ(6)であって、
【0021】
式において、
AI - ボリュートの第I断面の面積値、mmであり、
DS - ボリュート出口の直径、mmであり、
L - ボリュートの拡散セグメントの長さ、mmであり、
θ - 拡散角、°であり、
θを6°~12°とするステップ(6)とを含む、ことを特徴とする大型工事用ポンプのボリュートの設計方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、以下の有益な技術的効果を有する。
(1)、環状ボリュートの構造を用い、環状ボリュートは、従来の螺旋状ボリュートに比べて、対称的な過流流路を有し、仕切り舌と羽根車出口との間に大きい隙間があり、従来のボリュートの代わりに環状ボリュートを用いることで、ポンプの圧力脈動及び径方向力を低減させ、運転安定性を向上させることができる。羽根車の外周とボリュート仕切り舌との間の隙間が増加し、その利点は、ボリュート仕切り舌における水流の衝撃を減少させ、仕切り舌と羽根車との隙間が増加するため、圧力脈動及び全体の径方向力を減少できるのである。
【0023】
(2)、さらに設計することによって、固定案内羽根は異なる円心角を有し、円心角は、流れ方向に断面IIから断面Iに向かうにつれて大きくなる。流路隙間は、流れ方向に断面IIから断面に向かうにつれて大きくなる。ポンプの運転中の圧力脈動及び径方向力をさらに低減させ、固定案内羽根出口での角部渦流を減少させ、環状ボリュートの圧力変動及び圧力損失を減少させ、ポンプの各運転条件での運転安全性及び安定性を向上させることができる。本発明は、第1の凹溝、第2の凹溝の設計により、固定案内羽根出口での角部渦流をさらに減少させ、環状ボリュートの圧力変動及び圧力損失を減少させ、それによりポンプの各運転条件での運転安全性及び安定性を向上させることができる。
【0024】
(3)、ボリュート内に2列の案内羽根(可動案内羽根、固定案内羽根)が設けられることによって、羽根車から振り切られた高速液体を集め、次段の羽根車の入口又は排出チャンバーまで均一に案内し、案内羽根において液体の一部の運動エネルギーを圧力エネルギーに変換することができ、それにより、ポンプの効率を向上させる。2列の案内羽根を用いることで、固定案内羽根なし又は単列の固定案内羽根に比べて、水力性能が大幅に向上する。ボリュートの横断面が偏心楕円形断面を用いることを配慮した上で、横断面形状による遠心ポンプの水力性能への影響を分析し、環状ボリュートにおける楕円形の横断面形状は、台形、半円形又は矩形よりも高いポンプの圧力水頭を与えることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は本発明のポンプの環状ボリュートの構造概略図である。
【
図2】
図2は環状ボリュートの局所と螺旋状ボリュートの局所との比較図であり、(a)は環状ボリュートであり、(b)螺旋状ボリュートである。
【
図3】
図3は螺旋状ボリュートの断面と環状ボリュートの断面との比較図である(Aは螺旋状ボリュート、Bは環状ボリュートである)。
【
図4】
図4は環状ボリュートのポンプの性能と螺旋状ボリュートのポンプの性能との比較図である。
【
図5】
図5は本発明の固定案内羽根の別の実施形態の局所拡大構造の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施形態の目的、技術的解決手段及び利点をより明確にするために、以下、本発明の実施形態の図面を併せて、本発明の実施形態の技術的解決手段を明確かつ完全に説明する。説明された実施形態は、すべての実施形態ではなく、本発明の一部の実施形態であることは明らかである。本発明の実施形態によれば、当業者が創造的な労働を行わずに得た他のすべての実施形態は、本発明の保護の範囲に属する。
【0027】
以下、図面を用いて本発明をさらに詳細に説明する。
【0028】
図1~2に示すように、ボリュート出口1、拡散セグメント2、スロート部3、固定式多流路4、可動案内羽根5、固定案内羽根6、出口案内羽根7、仕切り舌/舌部8、及び流路隙間9を含み、加圧水室の出口端に拡散セグメント2が設けられ、拡散セグメント2の出口端はボリュート出口1を有し、加圧水室と拡散セグメント2との間の接続部はスロート部3であり、羽根車の外周にディフューザが設けられ、ディフューザは、周方向に分布する複数の可動案内羽根5を含み、拡散セグメント2とボリュート壁との間に仕切り舌8が構成される、大型工事用ポンプボリュートの設計方法及びそのボリュートであって、可動案内羽根5の外周には、ボリュート流路を固定式多流路4に仕切りする複数の固定案内羽根6が設けられ、出口案内羽根7の中線/軸線は拡散セグメント2の中線/軸線と共線/平行し、出口案内羽根7は加圧水室の入口の基礎円D3とほぼ正接し、固定案内羽根6の出口端とそれに隣接する径方向内側の固定案内羽根6の入口端又は加圧水室の入口の基礎円D3との間に流路隙間9があり、出口案内羽根7の入口端は断面Iを有し、仕切り舌8端は断面IIを有し、ボリュートは、流れ方向に断面IIから断面Iまで環状ボリュートであり、ボリュートの流路の横断面の流通面積は同じである、ことを特徴とする。
【0029】
さらに、
図3に示すように、ボリュートは、ほぼ偏心した楕円形断面の環状ボリュートBを用い、楕円形の長軸方向(X軸方向)に、楕円形の偏心の長い部分の大きさは、短い部分の大きさの2~4倍、好ましくは2.5倍である。
【0030】
さらに、固定案内羽根6は、円弧状案内羽根であり、固定案内羽根6は、同じ又は異なる円心角を有する。好ましくは、固定案内羽根6は異なる円心角を有し、円心角は、流れ方向に断面IIから断面Iに向かうにつれて大きくなる。具体的には、流れ方向に断面IIから断面Iまで、下流の円心角は上流の円心角の1.05~1.25倍である。
【0031】
さらに、流路隙間9は、流れ方向に断面IIから断面Iに向かうにつれて大きくなる。具体的には、流れ方向に断面IIから断面Iまで、下流の流路隙間9は上流の流路隙間9の1.05~1.2倍である。
【0032】
図1に示すように、ボリュートは、流れ方向に横断面IIから横断面Iまで、ほぼ同じ横断面の流通面積を有し、次に、羽根車外円とボリュート仕切り舌8との間の隙間が増加し、その利点は、固体粒子のボリュート舌における衝撃を減少させ、仕切り舌と羽根車との隙間が増加するため、圧力脈動及び全体の径方向力を減少できるのである。
【0033】
拡散セグメント2はポンプボディ出口であり、拡散セグメントはスロート部3からボリュート出口1に向かうにつれて、水流通路の面積が大きくなり、拡散セグメントの断面は、矩形及び/又は円弧からなる形状を含む。スロート部3における加圧水室の断面形状は拡散セグメント2の端面形状と同じでありかつ重なり、該構造は、加圧水室と拡散セグメントとの円滑な遷移を保証する。
【0034】
図2に示すように、従来の螺旋状ボリュートに比べて、環状ボリュートは、より大きくかつより均一な流通横断面積を有する。ボリュートの横断面積が小さいと、ポンプの揚程曲線にハンプピークが発生するため、パイプシステムのサージが発生してしまう。定格運転条件で、ボリュートの過流面積が大きくなるにつれて、水力性能がやや低下する。ポンプの運転が定格運転条件からずれるとき、ボリュートの流動面積が大きいと、水力性能が改善され、また、ボリュートの流動面積が増加するにつれて、高効率領域は広くなる。
【0035】
ボリュートは、従来の台形又は半円形のボリュート断面を用いるのではなく、ほぼ偏心した楕円形断面を用いることによって、ボリュートにおける圧力脈動を低減させるのに有利である。
【0036】
図4(a)に示すように、環状ボリュートを用いることによって、低流量範囲内に径方向力を減少させることができ、同様に、ポンプが最適な効率点以下で運転すると、これらのボリュートはより高い揚程と効率が生じる。これらのボリュートでは、大きい羽根先隙間により、羽根車羽根とボリュート仕切り舌との相互作用が減少し、従って、羽根車の周りの圧力分布がより均一になる。設計際、一定の断面積ボリュートにより、羽根車の周りの圧力分布が不均一であるため、最小径方向力点は、設計流量ではなく、低流量となる。
【0037】
図4(b)における径方向力の分布は四角形に示され、羽根車羽根の角度と一致する。また、流量の増加に伴い、四角形が時計回りに回転し、ボリュートの流動面積の増加により、軸に作用する径方向力の大きさを減少させることができ、特に公称流量及び大流量の条件下で、ポンプの振動を減少させ、それにより、ポンプの運転安定性を向上させることができる。
【0038】
図4(c)に示すように、変動強度係数の環状ボリュートにおける折れ線分布から、一般的に係数が流量の増加とともに増加することがわかる。また、複数の線はすべて4つのピークを示し、羽根車羽根の数と一致し、4つのピークの等価偏角は90°であり、最大圧力脈動はボリュートの仕切り舌の後の約30°に発生し、羽根車の後縁とボリュート仕切り舌との間の相互作用がボリュートにおける圧力脈動の要因であることを意味する。また、ボリュートの流動面積の増加は、ポンプの作動状態に関係なく、ボリュートにおける圧力脈動を減少させる。
【0039】
好ましくは、さらに設計することによって、固定案内羽根6は異なる円心角を有し、円心角は、流れ方向に断面IIから断面Iに向かうにつれて大きくなる。流路隙間9は、流れ方向に断面IIから断面Iに向かうにつれて大きくなる。ポンプの運転中の圧力脈動及び径方向力をさらに低減させ、固定案内羽根出口での角部渦流を減少させ、環状ボリュートの圧力変動及び圧力損失を減少させ、ポンプの各運転条件での運転安全性及び安定性を向上させることができる。
【0040】
図5に示すように、一実施形態において、固定案内羽根6は下流端/尾縁端61を有し、下流端/尾縁端61は先細いテーパ状または円弧状であり、下流端61は第1の凹溝62及び第2の凹溝63を有し、複数の第1の凹溝62は下流端61の径方向内側面に設けられ、複数の第2の凹溝63は下流端61の径方向外側面に設けられる。第1の凹溝62、第2の凹溝63は半円形構造である。第1の凹溝62、第2の凹溝63を設計することによって、固定案内羽根出口での角部渦流をさらに減少させ、環状ボリュートの圧力変動及び圧力損失を減少させ、それにより、ポンプの各運転条件での運転安全性及び安定性を向上させる。
【0041】
さらに、第1の凹溝62の数は第2の凹溝63の数よりも多く、好ましくは、第1の凹溝62の数は第2の凹溝63の数の1.5~3.0倍である。
【0042】
大型工事用ポンプのボリュートの設計方法であって、固定案内羽根及び可動案内羽根つきの環状ボリュート構造を用い、所定の運転条件に応じて、ボリュート速度係数法に基づいて、加圧水室の入口の基礎円直径D3、ポンプ加圧水室の入口幅B3、ボリュートチャンバーの外輪郭線の半径R、可動案内羽根の数Z1、固定案内羽根の数Z2、拡散角θを含むボリュートの幾何学的パラメータを決定し、
【0043】
D3= D2+2b2のように、加圧水室の入口の基礎円直径D3を設計するステップ(1)であって、
【0044】
式において、
b2 - 可動案内羽根の半径、mmであり、
D2 - ポンプインペラーの外径、mmであり、
D3 - ポンプ加圧水室の入口の基礎円直径、mmである、ステップ(1)と、
B3=B2+0.05D3のように、ポンプ加圧水室の入口幅B3を設計するステップ(2)であって、
【0045】
式において、
B
2 - ポンプインペラー出口の軸方向幅、mmであり、
D
3 - ポンプ加圧水室の入口の基礎円直径、mmであり、
B
3 - ポンプ加圧水室の入口幅、mmである、ステップ(2)と、
のように、ボリュートチャンバーの外輪郭線の半径Rを設計するステップ(3)であって、
【0046】
式において、
AI - ボリュートの第I断面の面積値、mmであり、
R - ボリュートチャンバーの外輪郭線の半径、mmである、ステップ(3)と、
Z1=8~14のように、可動案内羽根の数Z1を設計するステップ(4)であって、
【0047】
式において、
Z1 - 可動案内羽根の数、個である、ステップ(4)と、
Z2=3~5のように、固定案内羽根の数Z2を設計するステップ(5)であって、
【0048】
式において、
Z
2 - 固定案内羽根の数、個である、ステップ(5)と、
のように、拡散セグメントの拡散角を設計するステップ(6)であって、
【0049】
式において、
AI - ボリュートの第I断面の面積値、mmであり、
DS - ボリュート出口の直径、mmであり、
L - ボリュートの拡散セグメントの長さ、mmであり、
θ - 拡散角、°であり、
θを6°~12°とするステップ(6)とを含む。
【0050】
ポンプの体積及び排出パイプの直径を減少させ、パイプの損失を減少させ、それによりポンプの揚程を低減させ、ポンプの電力を減少させ、エネルギーを節約し、運転コストを低減させるために、排出口径を吸入口径未満にすることができる。ポンプの出口の直径を初歩的に確定した後、基準パイプ直径シリーズに従って丸める。ポンプの大きさを減少させるために、拡散管/拡散セグメントの高さLは、拡散角、加工及びボルト接合を確保した上で、できるだけ小さい値を用いる。
【0051】
本発明は、以下の有益な技術的効果を有する。
【0052】
(1)、環状ボリュートの構造を用い、環状ボリュートは、従来の螺旋状ボリュートに比べて、対称的な過流流路を有し、仕切り舌と羽根車出口との間に大きい隙間があり、従来のボリュートの代わりに環状ボリュートを用いることで、ポンプの圧力脈動及び径方向力を低減させ、運転安定性を向上させることができる。羽根車の外周とボリュート仕切り舌との間の隙間が増加し、その利点は、ボリュート仕切り舌における水流の衝撃を減少させ、仕切り舌と羽根車との隙間が増加するため、圧力脈動及び全体の径方向力を減少できるのである。
【0053】
(2)、さらに設計することによって、固定案内羽根は異なる円心角を有し、円心角は、流れ方向に断面IIから断面Iに向かうにつれて大きくなる。流路隙間は、流れ方向に断面IIから断面に向かうにつれて大きくなる。ポンプの運転中の圧力脈動及び径方向力をさらに低減させ、固定案内羽根出口での角部渦流を減少させ、環状ボリュートの圧力変動及び圧力損失を減少させ、ポンプの各運転条件での運転安全性及び安定性を向上させることができる。本発明は、第1の凹溝、第2の凹溝の設計により、固定案内羽根出口での角部渦流をさらに減少させ、環状ボリュートの圧力変動及び圧力損失を減少させ、それによりポンプの各運転条件での運転安全性及び安定性を向上させることができる。
【0054】
(3)、ボリュート内に2列の案内羽根(可動案内羽根、固定案内羽根)が設けられることによって、羽根車から振り切られた高速液体を集め、次段の羽根車の入口又は排出チャンバーまで均一に案内し、案内羽根において液体の一部の運動エネルギーを圧力エネルギーに変換することができ、それにより、ポンプの効率を向上させる。2列の案内羽根を用いることで、固定案内羽根なし又は単列の固定案内羽根に比べて、水力性能が大幅に向上する。ボリュートの横断面が偏心楕円形断面を用いることを配慮した上で、横断面形状による遠心ポンプの水力性能への影響を分析し、環状ボリュートにおける楕円形の横断面形状は、台形、半円形又は矩形よりも高いポンプの圧力水頭を与えることが分かる。
【0055】
上記実施形態は、本発明についての説明であって、本発明に対する限定ではなく、本発明の原理及び精神から逸脱することなく、これらの実施形態を種々の変更、修正、置換及び変形することができ、本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲及びその等価物によって限定されることが理解される。
【符号の説明】
【0056】
ボリュート出口1、拡散セグメント2、スロート部3、固定式多流路4、可動案内羽根5、固定案内羽根6、出口案内羽根7、仕切り舌/舌部8、流路隙間9、D2羽根車外径、D3加圧水室の入口の基礎円直径、Rボリュートチャンバーの外輪郭線の半径、下流端/尾縁端61、第1の凹溝62、第2の凹溝63