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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189726
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】ステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/187 20060101AFI20221215BHJP
   B62D 1/184 20060101ALI20221215BHJP
   B62D 1/189 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
B62D1/187
B62D1/184
B62D1/189
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067388
(22)【出願日】2022-04-15
(31)【優先権主張番号】P 2021097487
(32)【優先日】2021-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000144810
【氏名又は名称】株式会社山田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100080090
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 邦男
(72)【発明者】
【氏名】白石 善紀
【テーマコード(参考)】
3D030
【Fターム(参考)】
3D030DD02
3D030DD19
3D030DD26
(57)【要約】
【目的】本発明は、簡易な構成であって、且つ安価に製造できるのみならず、車両内部にコンパクトに収納できること。
【構成】左側上板1Lの内端より下方に左側側板2Lが一体形成され、右側上板1Rの内端より下方に右側側板2Rが一体形成されている。左側側板1Lの前端と右側側板1Rの前端は接続上板3により接続され、左側側板1Lと接続上板3と右側側板1Rとが連続して且つ一体形成されている。左側上板1Lと右側上板1Rとの合計長さは、左側側板2Lと右側側板2Rの合計長さよりも短く形成されている。左側上板1Lと右側上板1Rとを合計した長さと接続上板3の長さが略同等形成され、これらの全ての部材が一枚の金属板よりプレス加工されている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリング装置の車両取付用ブラケットにおいて、
左側に位置する左側上板の内端より下方に左側側板が一体形成されると共に、右側に位置する右側上板の内端より下方に右側側板が一体形成され、
前記左側側板の前端と前記右側側板の前端は接続上板により接続され、前記左側側板と前記接続上板と前記右側側板とが連続して且つ一体形成されてなり、
前記左側上板と前記右側上板との合計の左右方向長さは、前記左側側板と前記右側側板の合計の左右方向長さよりも短く形成されると共に、前記左側上板と前記右側上板とを合計した左右方向長さと前記接続上板の左右方向長さが略同等となるように形成されてなり、これらの全ての部材が一枚の金属板よりプレス加工されてなることを特徴とするステアリング装置。
【請求項2】
請求項1において、前記左側上板と前記左側上板はそれぞれ水平状に、前記左側側板と前記右側側板はそれぞれ垂下状に形成されてなり、前記接続上板は門型状に形成されてなることを特徴とするステアリング装置。
【請求項3】
請求項1又は2の請求項において、前記左側上板の後部と前記左側側板の後部との交差部及び、前記右側上板の後部と前記右側側板の後部との交差部のそれぞれの左側・右側上板及び左側・右側側板に直交する三次元面部が屈曲形成されてなることを特徴とするステアリング装置。
【請求項4】
請求項1,2又は3の何れかの請求項において、前記左側上板と前記右側上板と、前記左側側板と前記右側側板とはそれぞれ左右対称に形成されると共に、前記接続上板も左右対称に形成されてなることを特徴とするステアリング装置。
【請求項5】
請求項1,2又は3の何れかの請求項において、前記左側側板と前記右側側板とは左右対称に形成されると共に、前記接続上板も左右対称に形成されてなり、前記左側上板及び前記右側上板の一方側端よりばね部の係止片が形成され、且つ前記左側上板と前記右側上板とは左右非対称に形成されてなることを特徴とするステアリング装置。
【請求項6】
請求項1又は2の何れかの請求項において、前記接続上板は、前記左側側板及び前記右側側板及び前記左側上板と前記右側上板のそれぞれの前端よりも車体前方に位置し、アウターコラムの上方を跨ぐ構成としたことを特徴とするステアリング装置。
【請求項7】
請求項6において、前記接続上板と、前記左側側板及び前記右側側板との間にU字状溝が設けられてなることを特徴とするステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡易な構成であって、且つ安価に製造できるのみならず、車両内部にコンパクトに収納できるステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ステアリング装置における車両取付用ブラケットを金属板で一体にプレス加工された製品は種々開発されている。いずれも複雑な形状・構造を成す製品が多かった。
【0003】
ところで、チルト機構を設けたステアリング装置における車両取付用ブラケットにおいて、チルトの上下方向の調整範囲を大きくすると、右側側板及び左側側板の長さが長くなる。
【0004】
特許文献1の車両取付用ブラケットでは、右側側板及び左側側板の長さに接続上板の長さが直接に影響するような構成である(図6参照)。具体的には、プレス加工前の展開図において、左側位置に左側上板31Lが、右側位置に右側上板31Rがそれぞれ形成されている。また、前記左側上板31Lの内側に左側側板33Lが一体形成され、前記右側上板31Rの内側に右側側板33Rが一体形成されている。そして、接続上板32は、前記左側上板31Lと前記右側上板31Rに連続して形成されている。前記左側側板33Lと前記右側側板33Rとの合計長さは、前記左側上板31Lと前記右側上板31Rの合計長さよりも長く形成されると共に、前記左側側板31Lと前記右側側板31Rとを合計した長さ2c2と前記接続上板32の長さ(N:代理人が記入)が同等となるように形成されている。
【0005】
このため、特許文献1の車両取付用ブラケットはプレス成形した一枚の金属板で比較的簡単な構成であるが、前記左側上板31Lと前記右側上板31Rとを接続する接続上板32が長すぎてしまう。これによって、屈曲加工された車両取付用ブラケットの接続上板3の高さが高くなり、車体への搭載性が悪化するおそれがある。このため、プレスで折り曲げながら圧縮し、接続上板32の板厚T2を左側上板31L、左側側板33L、右側上板31R、右側側板33Rの板厚T1よりも厚く形成したり、接続上板32の板幅を広げる加工を行い、接続上板32の長さを調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-75659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このため、本発明が解決しようとする課題(技術的課題又は目的等)は、圧縮することなく、一枚の金属板を打ち抜き、折り曲げるだけで接続上板を適宜の長さに形成することができる車体取付ブラケットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明は、上記課題を解決すべく鋭意,研究を重ねた結果、請求項1の発明を、ステアリング装置の車両取付用ブラケットにおいて、左側に位置する左側上板の内端より下方に左側側板が一体形成されると共に、右側に位置する右側上板の内端より下方に右側側板が一体形成され、前記左側側板の前端と前記右側側板の前端は接続上板により接続され、前記左側側板と前記接続上板と前記右側側板とが連続して且つ一体形成されてなり、前記左側上板と前記右側上板との合計長さは、前記左側側板と前記右側側板の合計長さよりも短く形成されると共に、前記左側上板と前記右側上板とを合計した長さと前記接続上板の長さが略同等となるように形成されてなり、これらの全ての部材が一枚の金属板よりプレス加工されてなることを特徴とするステアリング装置としたことにより、前記課題を解決した。
【0009】
請求項2の発明を、請求項1において、前記左側上板と前記左側上板はそれぞれ水平状に、前記左側側板と前記右側側板はそれぞれ垂下状に形成されてなり、前記接続上板は門型状に形成されてなることを特徴とするステアリング装置としたことにより、前記課題を解決した。請求項3の発明を、請求項1又は2の請求項において、前記左側上板の後部と前記左側側板の後部との交差部及び、前記右側上板の後部と前記右側側板の後部との交差部のそれぞれの左側・右側上板及び左側・右側側板に直交する三次元面部が屈曲形成されてなることを特徴とするステアリング装置としたことにより、前記課題を解決した。請求項4の発明を、請求項1,2又は3の何れかの請求項において、前記左側上板と前記右側上板と、前記左側側板と前記右側側板とはそれぞれ左右対称に形成されると共に、前記接続上板も左右対称に形成されてなることを特徴とするステアリング装置としたことにより、前記課題を解決した。
【0010】
請求項5の発明を、請求項1,2又は3の何れかの請求項において、前記左側側板と前記右側上板とは左右対称に形成されると共に、前記接続上板も左右対称に形成されてなり、前記左側上板及び前記右側上板の一方側端よりばね部の係止片が形成され、且つ前記左側上板と前記右側上板とは左右非対称に形成されてなることを特徴とするステアリング装置としたことにより、前記課題を解決したものである。請求項6の発明を、請求項1又は2の何れかの請求項において、前記接続上板は、前記左側側板及び前記右側側板及び前記左側上板と前記右側上板のそれぞれの前端よりも車体前方に位置し、アウターコラムの上方を跨ぐ構成としたことを特徴とするステアリング装置としたことにより、上記課題を解決した。請求項7の発明を、請求項6において、前記接続上板と、前記左側側板及び前記右側側板との間にU字状溝が設けられてなることを特徴とするステアリング装置としたことにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明においては、車両取付用ブラケットを一枚の金属板にてプレス成形したものにしつつ、特に、接続上板を最少の長さに形成することとして、コンパクトに収納するステアリング装置を提供できる利点がある。さらに、請求項2においては、請求項1と同様の効果を奏する。請求項3の発明においては、上板及び側板に直交するように屈曲形成された三次元面部の存在により、特に強固なる車両取付用ブラケットを製造できる効果を奏する。請求項4の発明では、左右対称的な車両取付用ブラケットとすることで、より簡易な構成で安価に製造できる利点がある。請求項5の発明では、左側上板と前記右側上板とを左右非対称とし、一方側端よりばね部の係止片が形成されることで、ステアリング装置を上方へ付勢するばね部の取付が簡易且つ容易にできる効果がある。
【0012】
請求項6の発明では、車両取付用ブラケットは、接続上板によって左側側板,左側上板及び右側側板,右側上板車両取付用ブラケットが一体的に構成されるものである。しかし、車両取付用ブラケットの左側側板及び右側側板をボルト等の締付部によってアウターコラムを締め付てロック(締付固定)状態にするときには、従来技術におけるブラケットでは、接続上板が左側側板と右側側板によるアウターコラムへの締付動作に対する抵抗部材となるおそれがあった。本発明における車両取付用ブラケットでは、接続上板は、前記左側側板及び前記右側側板及び前記左側上板と前記右側上板のそれぞれの前端よりも車体前方に位置している。よって、車両取付用ブラケットは、アウターコラムに対してチルトレバーによる締付操作時において左側側板,右側側板,左側上板及び右側上板の各部分と、接続上板とは相互に締付荷重が伝わり難い構造となる。よって、接続上板は、左側側板と右側側板とによるアウターコラムへの締付に対する抵抗力をきわめて小さくすることができる。このため締付部による締付にて左側側板と右側側板とは円滑に近接し、アウターコラムに対して略均一な面接触状態とし、締付状態を強固なものにすることができる。請求項7の発明では、前記接続上板と、前記左側側板及び前記右側側板との間にU字状溝が設けられる構成としたことにより、該U字状溝によって、接続上板と、左側側板及び右側側板とがより一層離間された分離状態となるため、接続上板は、左側側板と右側側板とによるアウターコラムへの締付に対する抵抗力をより一層小さくすることができ、アウターコラムに対する締付状態をより一層強固なものにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(A)は本発明のステアリング装置の側面図、(B)は本発明の車両取付用ブラケットの一部断面とした立面図、(C)は本発明の車体取付用ブラケットの斜視図である。
図2】(A)は本発明の車両取付用ブラケットの展開図、(B)は接続上板のみを取り出して適宜屈曲成形した状態図、(C)は図1(C)を右側から見て且つコラム関連部材を実線とした立面図である。
図3】(A)~(C)は本発明の車両取付用ブラケットを一枚の金属板からプレス加工にて順次製造する過程を示す状態図である。
図4】(D)~(G)は本発明の車両取付用ブラケットの最終形状までをプレス加工にて順次製造する過程を示す状態図である。
図5】(A)は本発明の別の実施形態の左右対称の車両取付用ブラケット展開図、(B)は(A)の接続上板箇所のみを取り出して屈曲させた状態図である。
図6】(A)は特許文献1の図3であって車両取付用ブラケットの展開図、(B)は接続上板箇所のみを取り出して屈曲させた状態図である。
図7】(A)は本発明における車両取付用ブラケットの側面図、(B)は(A)の(α)部拡大図、(C)は(A)のX1-X1矢視図、(D)は(C)のロック解除状態における(β)部拡大図、(E)は(D)の(γ)部拡大図、(F)は(C)のロック状態における(β)部拡大図、(G)の(δ)部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1(B)及び(C)に示すように、ステアリング装置の車両取付用ブラケットにおいて、左側に位置する左側上板1Lの内端より下方に左側側板2Lが一体形成されている。また、右側に位置する右側上板1Rの内端より下方に右側側板2Rが一体形成されている。
【0015】
前記左側側板2Lの前端と前記右側側板2Rの前端とは接続上板3によって接続され、前記左側側板2Lと前記接続上板3と前記右側側板2Rとは連続して且つ一体形成される構成を成している。〔図3(A)及び(B)参照〕。
【0016】
ここで、図2(A)及び図5(A)に示すように、展開図としての車両取付用ブラケットBの全体幅をWとし、前記左側上板1Lと前記右側上板1Rとは同一の左右方向長さw1とする。さらに、前記左側側板2Lと前記右側側板2Rとも同一の左右方向長さw2とする。また、左側上板1Lと右側上板1R間の僅かな隙間を隙間tとしておく。すると、車両取付用ブラケットBの全体幅Wは、
W=2×w2+2×w1+t・・・・・・・・・・・(1)
として形成されている。
そして、左側側板2Lと右側側板2Rの左右方向長さw2は、左側上板1Lと右側上板1Rの左右方向長さw1よりも長く形成されている。
2×w2>2×w1・・・・・・・・・・・・・・・(2)
【0017】
つまり、前記左側上板1Lと前記右側上板1Rとの合計左右方向長さ2w1は、前記左側側板2Lと前記右側側板2Rの合計左右方向長さ2w2よりも短かく形成されている。そして、この合計左右方向長さ2w1は、前記接続上板3の左右方向長さXと略同等(同等含む)となるように形成されている。
2×w1≒X・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3)
つまり、前記左側上板1Lと前記右側上板1Rとを合計した左右方向長さ2w1と前記接続上板3の左右方向長さXが略同等となるように形成されている〔図2(A)及び(B)参照〕。
【0018】
前記左側上板1Lは水平状に形成される部位であり、前記左側側板2Lは略垂下状に形成される部位であり、両方は一体形成されている。また、同様に、前記右側上板1Rも水平状に形成される部位であり、前記右側側板2Rは略垂下状に形成される部位であり、両方は一体形成されている。
【0019】
前記左側上板1L,右側上板1R,左側側板2L及び右側側板2Rのそれぞれは、主要な部位として存在しているが、それぞれの部位に設けられた下位概念用語についても、左側、右側にも同等に存在しているが、繰り返しになることと長文化して複雑な用語になるため、左側及び右側の文字は省略する。
【0020】
前記左側上板1L及び前記右側上板1Rの前端側には、車体への装着箇所としての取付箇所11,11が形成されている。また、前記左側側板2L及び前記右側側板2Rの下方位置には、チルト長孔21,21がそれぞれ穿設されている。さらに、該チルト長孔21,21の周囲には僅かな幅の段差部2,22が形成されている。
【0021】
前記接続上板3は、図1(B)に示すように、断面門型状を成している。具体的には、水平状の頂部31と該頂部31の両端より下方に垂下状に垂下部32,32が形成されている。接続上板3は、垂下状の断面門型状に限らず、適宜な角度を有する断面門型状としても良い。
【0022】
符号4は大型リブであって、前記左側上板1Lと左側側板2Lとの隅角部箇所、更には前記右側上板1Rと右側側板2Rとの隅角部箇所のそれぞれに、補強のための大きく形成されている。つまり、前記大型リブ4は、略四角面状の傾斜面41とこの両側の三角面42,42とで形成されている。
【0023】
符号5は三次元面部であって、前記左側上板1Lの後部と前記左側側板2Lの後部との交差部及び、前記右側上板1Rの後部と前記右側側板2Rの後部との交差部のそれぞれの上板及び側板に直交する面部として屈曲形成されている。実施例では、図1(C),図2(C)及び図4(G)に示すように、交差箇所は球状面の一部として形成されている。さらに、それぞれの前記左側・右側上板の後部端には上板屈曲面51が、それぞれの前記左側・右側側板の後部端には側板屈曲面52がそれぞれ形成されて隅角箇所で一体化されている。
【0024】
図1(A)及び(B)におけるステアリング装置では、コラムチューブ71の内部にはステアリングシャフト72が回動可能に内蔵され、該ステアリングシャフト72の後部にはステアリングホイール(ハンドル)73が装着されている。74はチルトレバー、ステアリング装置を上方へ付勢するバネ75等が備えられている。
【0025】
コラムチューブ71はアウターコラム77に挿通され、車両取付用ブラケットB及びアウターコラム77に対してチルト機構するように構成されている。前記コラムチューブ71は車両取付用ブラケットBの左右側板に形成された前記チルト長孔21,21及びアウターコラム77に挿通されたボルト等の締付部にてロック(固定)されている。該ボルト等の締付部は前記チルトレバー74の回動操作によりロックを解除することで前記チルト長孔21,21の上下の範囲内でステアリングホイール(ハンドル)73の高さ調整ができるように構成されている。
【0026】
次に、車両取付用ブラケットBの製造法について説明する。該車両取付用ブラケットBは、図3及び図4に示すように、一枚の金属板がプレス加工にて成形されるが、その製造法について説明する。まず、プレス成形前において、図2(A)示す展開図では、左側側板2L及び右側側板2Rを左右側の最外側に位置するように配置し、前記左側側板2Lの内方に左側上板1Lが、前記右側側板2Rの内方に右側上板1Rがそれぞれ配置される。前記左側側板2Lの前端と前記右側側板2Rの前端とが予め接続上板3と連続して形成される。〔図1(B)及び(C)参照〕。
【0027】
そして、抜き打ち加工を行い、前記左側上板1L及び前記右側上板1Rのそれぞれを垂直状に約90度折り曲げる〔図3(B)及び(C)参照〕。この約90度折り曲げと同時に大型リブ4,4が屈曲形成される〔図3(B)及び(C)参照〕。
【0028】
そして、前記左側上板1L及び右側上板1Rを平坦状位置〔図3(C)参照〕から、前記左側上板1L及び前記右側上板1Rの折り曲げ方向とは逆方向に折り曲げる。同時に、接続上板3を、図4(D)に示すように、約60~80度程度折り曲げ、さらに折り曲げて約90度屈曲形成する。つまり、前記左側側板2L及び右側側板2Rが略平行になるように成形する〔図4(E)参照〕。
【0029】
このように、前記左側側板2L及び右側側板2Rを成形すると、同時に、前記接続上板3の屈曲成形も同時に行う。つまり、今までは直線状であった前記接続上板3の頂部31の適宜の長さの箇所を屈曲箇所となるようにし折り曲げ成形する〔図4(D)及び(E)参照〕。
【0030】
つまり、該接続上板3は、図3(C)の状態では、単に水平状を成していたものが、図4(D)及び(E)の段階において、水平状の頂部31と該頂部31の両端より下方に垂下状に垂下部32,32が形成されることになる。
【0031】
そして、図4(F)において、前記左側上板1L及び前記右側上板1Rのそれぞれに取付箇所11,11がプレス加工され、最終段階の図4(G)にて、前記三次元面部5,5と前記左側上板1Lの後方側にばね部75の係止片12が形成される。
【0032】
以上の説明のように、プレス加工されるが、本発明の製造法では、図3(B)及び(C)乃至図4(D)~(E)の製造工程としての構成部位が存在すればよく、この後の部位成形には順序に制限されない。また、前記三次元面部5,5は、前記大型リブ4,4と同時に屈曲形成されることもある。
【0033】
本実施形態のステアリング装置における車体取付ブラケットは、接続上板3が前記左側側板2Lの前端と前記右側側板2Rの前端とに接続されている。そして、図2(A),(B)及び図5(A),(B)に示すように、前記左側側板2Lと前記右側側板2Rとの合計左右方向長さは、前記左側上板1Lと前記右側上板2Rの合計左右方向長さよりも長く形成されると共に、前記左側上板1Lと前記右側上板2Rとを合計した左右方向長さ2w1と前記接続上板3の左右方向長さXが略同等となるように形成されてなる。
【0034】
これにより、圧縮工程を行うことなく、金属板を打ち抜き折り曲げるだけで前記接続上板3を最適な長さに形成することができる。これにより、コスト削減及び車両内部にコンパクトに収納できるステアリング装置を提供することができる。また、図5に示すように、本発明の別の実施形態では、ばね部75の係止片12を形成せず、左側上板1Lと前記右側上板2Rと、左側上板1Lと右側上板2Rとをそれぞれ左右対称に形成しても良い。
【0035】
次に、本発明における車両取付用ブラケットBおいて、前記接続上板3は、前記左側側板2L及び前記右側側板1L及び前記左側上板1Lと前記右側上板1Rのそれぞれの前端よりも車体前方に位置させると共に、前記接続上板3がアウターコラム77の上方を跨ぐ構成とした実施形態が存在する〔図1(A),(C),図4(G),図6等参照〕。以下、この実施形態について説明する。
【0036】
この実施形態では、接続上板3は、コラムチューブ71,ステアリングシャフト72,アウターコラム77の軸方向に沿って、左側側板2L,右側側板1L,左側上板1L,右側上板1Rのそれぞれの前端の位置から車体前方側に、離間して離れた位置に形成される構成としたものである。さらに、具体的には、接続上板3の両垂下部32の後端と、左側側板2L及び右側側板2Rの前端とがそれぞれ離間した構成である〔図6(A),(B)参照〕。
【0037】
そして、接続上板3と左側側板2L、及び接続上板3と右側側板2Rとは、それぞれ小面積の連続部3aにて繋がっている。該連続部3aは、接続上板3の両垂下部32と、左側側板2L及び右側側板2Rとの間に位置する領域で、接続上板3の両垂下部32と、左側側板2L及び右側側板2Rを連続的に接続している部分である。
【0038】
連続部3aは、車両取付用ブラケットBの展開図に含まれており、金属板から切り抜く際に他の部位と共に形成されるものである〔図2(A),図3(A)等参照〕。これによって、接続上板3は、前記左側側板2L及び前記右側側板1L及び前記左側上板1Lと前記右側上板1Rとは、相互に独立性のある部位となる。また、車両取付用ブラケットBの接続上板3は、アウターコラム77の上方を跨ぐ構成である。
【0039】
前述したように、接続上板3は、前記左側側板2L及び前記右側側板1L及び前記左側上板1Lと前記右側上板1Rとは、離間して離れた位置に存在している。そのために、車両取付用ブラケットBは、チルトレバー74の締付により、左側側板2L,右側側板2Rがアウターコラム77を固定しチルトロック状態〔図7(F),(G)参照〕としたり、或いは締付けを緩めて、チルトロック解除状態にする場合〔図7(D),(E)参照〕に、左側側板2Lと右側側板2Rの間隔を拡げたり又は縮めたりする拡縮が行われる〔図7(C)乃至(G)参照〕。このとき、左側側板2Lと右側側板2Rは、連続部3aが変形(連続部変形)することで〔図7(F)参照〕、接続上板3が拡縮の抵抗となることなく、アウターコラム77を挟持することができる〔図7(F),(C)参照〕。
【0040】
さらに具体的には、チルトレバー74による締付力は、左側側板2L,右側側板1L同士及び左側上板1L,右側上板1Rにかかるものであり、これらと小面積の連続部3aを介して繋がっている接続上板3には締付力がほとんど伝わらず影響することがない。したがって、チルトレバー74の締付操作時の荷重は、連続部3aにかかり、該連続部3aが変形(連続部変形)することにより〔図7(F),(G)参照〕、接続上板3は、締付操作における抵抗力にはならないものである。よって、チルトレバー74の締付操作時では、アウターコラム77に対して左側側板2L,右側側板1L同士及び左側上板1L,右側上板1Rが相互に接近又は離間し易い構成にでき、良好な締付状態にすることができる〔図6(F),(C)参照〕。また、ロック解除状態では、車両取付用ブラケットBの両連続部33には、荷重が加わらず撓むことなく変形しないものである。つまり、連続部33は不変である。この連続部33が変形しない状態(連続部不変)については、図7(D)、(E)に記載されている。
【0041】
よって、車両取付用ブラケットは、アウターコラム77に対してチルトレバー74による締付操作時において左側側板2L,右側側板2R,左側上板1L及び右側上板1Rと、接続上板3とは相互に締付荷重が伝わり難い構造となる。よって、接続上板3は、左側側板2Lと右側側板2Rとによるアウターコラム77への締付に対する抵抗力をきわめて小さくすることができる。このため締付部による締付にて左側側板2Lと右側側板2Rとは円滑に近接し、アウターコラム77に対して略均一な面接触状態とし、締付状態を強固なものにすることができる。
【0042】
次に、上記実施形態において、前記接続上板3の水平状の頂部31と該頂部31の両端より下方に垂下状に垂下部32,32が形成され、該垂下部32と、前記左側側板2L,前記左側上板1L及び右側側板2R,右側上板1Rとの間にU字状溝3bが設けられることもある〔図1(A),(C),図4(G),図6等参照〕。該U字状溝3bは、前記連続部3aの略直上に位置している。そして、U字状溝3bにより接続上板3の両垂下部32と、左側側板2L及び右側側板2Rとは、離間し、連続部3aはより小面積と部分となる〔図7(A),(B)参照〕。
【0043】
接続上板3と、左側側板2L及び右側側板2Rとの間にU字状溝3bが設けられる構成としたことにより、該U字状溝3bによって、接続上板3と、左側側板2L及び右側側板2Rとはより一層離間された分離状態となる。そのため、接続上板3は、左側側板2Lと右側側板2Rとによるアウターコラム77への締付時における抵抗力をより一層小さくすることができ、アウターコラム77に対する締付状態は均一な面接触となり、より一層、良好且つ強固なものにすることができる。
【0044】
U字状溝3bは、車両取付用ブラケットBが一枚の金属板がプレス加工にて成形されるときに、車両取付用ブラケットBの展開図であらかじめ設けられる。つまり、前記接続上板3と、前記左側側板2Lの前端と前記右側側板2Rの前端との間に予めU字状溝3bの部位が設けられる。該U字状溝3bは略U字形状をなしている〔図7(B)参照〕。また、U字状溝3bは、略長方形状の溝とすることもある。該U字状溝3bは、車両取付用ブラケットBがプレス加工によって折り曲げ形成し易いようにする役目も有している。
【符号の説明】
【0045】
B…車両取付用ブラケット、1L…左側上板、2L…左側側板、1R…右側上板、
2R…右側側板、3…接続上板、3a…連続部、3b…U字状溝、12…係止片。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7