(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189731
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】配線板、電子モジュール及び電子機器
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20221215BHJP
【FI】
H05K1/02 N
H05K1/02 J
H05K1/02 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072225
(22)【出願日】2022-04-26
(31)【優先権主張番号】P 2021097003
(32)【優先日】2021-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 誠
(72)【発明者】
【氏名】石上 智久
(72)【発明者】
【氏名】小川 優
【テーマコード(参考)】
5E338
【Fターム(参考)】
5E338AA03
5E338AA12
5E338BB75
5E338CC01
5E338CC05
5E338CC06
5E338CD08
5E338EE13
(57)【要約】
【課題】電磁ノイズのレベルを低減させること。
【解決手段】フレキシブルプリント配線板101は、信号線201と、シールド部材205と、分岐線104と、を備える。シールド部材205は、主面2051を有する。シールド部材205は、主面2051が信号線201に沿うように配置されている。分岐線104は、シールド部材205と電気的に接続されている。分岐線104の先端は、開放された開放端211である。分岐線104は、シールド部材205の主面と平行な方向に延びる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号線と、
主面が前記信号線に沿うシールド部材と、
前記シールド部材と電気的に接続され、先端が開放された、前記シールド部材の前記主面と平行な方向に延びる分岐線と、を備える、
ことを特徴とする配線板。
【請求項2】
前記シールド部材の前記主面と平行な方向に前記信号線と並んで配列されたグラウンド線を更に備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の配線板。
【請求項3】
前記分岐線は、前記シールド部材から分岐している、
ことを特徴とする請求項1に記載の配線板。
【請求項4】
前記グラウンド線は、前記シールド部材と電気的に接続されており、
前記分岐線は、前記グラウンド線から分岐している、
ことを特徴とする請求項2に記載の配線板。
【請求項5】
前記信号線は、信号の送信側の第1端と、信号の受信側の第2端と、を含み、
前記分岐線は、前記第2端よりも前記第1端に近接する位置に配置されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の配線板。
【請求項6】
前記分岐線は、前記先端が前記第1端の位置する側を向いて配線されている、
ことを特徴とする請求項5に記載の配線板。
【請求項7】
前記分岐線における前記先端を含む一部分が、前記信号線に沿う方向に延びている、
ことを特徴とする請求項1に記載の配線板。
【請求項8】
前記分岐線は、L字形状である、
ことを特徴とする請求項1に記載の配線板。
【請求項9】
前記分岐線の長さをL、周波数をf、光速をc、実効比誘電率をε
rとし、
前記周波数が700MHz以上66GHz以下の範囲内であり、
【数1】
を満たす、
ことを特徴とする請求項1に記載の配線板。
【請求項10】
前記周波数は、2.4GHz帯または5GHz帯に含まれる周波数である、
ことを特徴とする請求項9に記載の配線板。
【請求項11】
前記配線板は、フレキシブルプリント配線板である、
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の配線板。
【請求項12】
請求項11に記載のフレキシブルプリント配線板と、
前記フレキシブルプリント配線板が接続されるプリント配線板と、を備える、
ことを特徴とする電子モジュール。
【請求項13】
前記プリント配線板の主面に垂直な方向に視て、前記フレキシブルプリント配線板の前記分岐線の少なくとも一部は、前記プリント配線板のグラウンドパターンと重なる、
ことを特徴とする請求項12に記載の電子モジュール。
【請求項14】
前記分岐線の少なくとも一部は、前記分岐線の前記先端を含む、
ことを特徴とする請求項13に記載の電子モジュール。
【請求項15】
前記分岐線の少なくとも一部は、前記分岐線の長さの1/2以上の部分である、
ことを特徴とする請求項13に記載の電子モジュール。
【請求項16】
前記プリント配線板に実装され、前記信号線に信号を送信する電子部品を更に備える、
ことを特徴とする請求項12に記載の電子モジュール。
【請求項17】
前記電子部品がイメージセンサである、
ことを特徴とする請求項16に記載の電子モジュール。
【請求項18】
前記フレキシブルプリント配線板が接続され、前記フレキシブルプリント配線板を介して前記電子部品とデータ通信可能な電子ユニットを更に備える、
ことを特徴とする請求項16に記載の電子モジュール。
【請求項19】
外部機器と無線通信可能な無線通信ユニットを更に備える、
ことを特徴とする請求項12に記載の電子モジュール。
【請求項20】
筐体と、
前記筐体の内部に配置された、請求項12に記載の電子モジュールと、を備える、
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノイズ対策の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のデジタルカメラ等の電子機器は、画像の高品質化の進展により、大容量のデジタル信号を高速に伝送する必要がある。信号が高速になる程、信号線から漏洩する電磁ノイズのレベルが大きくなる傾向にある。電磁ノイズが大きくなると、例えば電子機器に含まれる回路に電磁ノイズが干渉し、電子機器が誤動作することがある。この問題に対して、特許文献1には、電気的に接続されたグラウンド層とシールド層とで信号線を囲うことで、電磁ノイズを低減させるフレキシブルプリント配線板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、フレキシブルプリント配線板においては、グラウンド層とシールド層とで信号線を囲う構造とすると、フレキシブルプリント配線板の剛性が高くなってしまうことがあった。また、リジッドプリント配線板においては、グラウンド層とシールド層とで信号線を囲う構造とすると、配線板の設計自由度が下がってしまうことがあった。このため、このような構造を採用しない配線板であっても、電磁ノイズを低減できるのが望ましい。
【0005】
そこで、本発明は、電磁ノイズのレベルを低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、配線板は、信号線と、主面が前記信号線に沿うシールド部材と、前記シールド部材と電気的に接続され、先端が開放された、前記シールド部材の前記主面と平行な方向に延びる分岐線と、を備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電磁ノイズのレベルが低減する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】(a)は第1実施形態に係るカメラ本体の筐体の内部に配置された部材の斜視図である。(b)は第1実施形態に係る電子モジュールの構成を示す模式図である。
【
図3】(a)は第1実施形態に係る撮像ユニットのプリント配線板とフレキシブルプリント配線板との接続構造を示す平面模式図である。(b)は(a)に示すIIIB-IIIB線に沿うフレキシブルプリント配線板の断面図である。
【
図4】第1実施形態に係る撮像ユニットを示す平面模式図である。
【
図5】(a)は第1実施形態に係る2つのコネクタの接続構造の平面模式図である。(b)は(a)のVB-VB線に沿う2つのコネクタの接続構造の断面模式図である。
【
図6】(a)は第1実施形態に係るフレキシブルプリント配線板に流れる電流の分布を示す模式図である。(b)は第1実施形態に係るコネクタに流れる電流の分布を示す模式図である。
【
図7】(a)は比較例の電子モジュールの説明図である。(b)は第1実施形態の電子モジュールの説明図である。
【
図8】(a)は変形例1のフレキシブルプリント配線板の一部分の模式図である。(b)は変形例2のフレキシブルプリント配線板の一部分の模式図である。(c)は変形例3のフレキシブルプリント配線板の一部分の模式図である。
【
図9】(a)は変形例4のフレキシブルプリント配線板の一部分の模式図である。(b)は変形例5のフレキシブルプリント配線板の一部分の模式図である。
【
図10】(a)は第2実施形態に係る撮像ユニットのプリント配線板とフレキシブルプリント配線板との接続構造を示す平面模式図である。(b)は(a)に示すXB-XB線に沿うフレキシブルプリント配線板の断面図である。
【
図11】(a)は実施例における電子モジュールの一部を示す側面図である。(b)は実施例における電子モジュールの一部を示す平面図である。
【
図12】実施例のフレキシブルプリント配線板の断面構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係るカメラ1000の模式図である。カメラ1000は、デジタルスチルカメラなどのデジタルカメラである。カメラ1000は、レンズと一体のカメラでもよいが、本実施形態ではデジタル一眼カメラであり、カメラ本体1001を備える。カメラ本体1001、即ちカメラ1000は、電子機器の一例である。カメラ本体1001には、レンズ鏡筒2000が着脱可能となっている。
【0011】
カメラ本体1001は、外装ケースを含む筐体1002を備える。筐体1002は、レンズ鏡筒2000が着脱可能なマウント1003を有する。
【0012】
レンズ鏡筒2000は、交換レンズである。レンズ鏡筒2000は、レンズ筐体2001と、レンズ筐体2001に支持され、レンズ筐体2001が筐体1002に装着された状態で、後述するイメージセンサ401に光像を結像させる結像光学系2002と、を備える。結像光学系2002は、光軸方向に並設された複数のレンズ2110,2120を有する。レンズ筐体2001には、マウント1003に取り付けられるリングマウント2003が設けられている。
【0013】
カメラ本体1001は、筐体1002の内部に配置された電子モジュール300を備える。
図2(a)は、第1実施形態に係るカメラ本体1001の筐体1002の内部に配置された部材の斜視図である。
図2(b)は、第1実施形態に係る電子モジュール300の構成を示す模式図である。以下、
図1、
図2(a)及び
図2(b)を参照しながらカメラ本体1001の構成について詳細に説明する。
【0014】
電子モジュール300は、撮像ユニット400と、画像処理ユニット500と、無線通信ユニット600と、を有する。撮像ユニット400と画像処理ユニット500とは、デジタル信号でデータ通信可能となるように、フレキシブルプリント配線板101で接続されている。また、画像処理ユニット500と無線通信ユニット600とは、デジタル信号でデータ伝送が可能となるように、ケーブル715で接続されている。
【0015】
撮像ユニット400と画像処理ユニット500との間でフレキシブルプリント配線板101を通じて通信されるデータ信号は、1Gbps以上の伝送レートのデジタル信号である。データ信号は、第1実施形態では画像データのデジタル信号である。フレキシブルプリント配線板101を介して伝送されるデジタル信号は、シングルエンド信号及び差動信号のいずれであってもよいが、シングルエンド信号よりも高速な伝送が可能となる差動信号であるのが好ましい。第1実施形態では、撮像ユニット400から画像処理ユニット500へフレキシブルプリント配線板101を介して伝送されるデジタル信号は、差動信号である。
【0016】
撮像ユニット400は、電子部品の一例であるイメージセンサ401と、イメージセンサ401が実装されたプリント配線板402と、を含むプリント回路板である。プリント配線板402は、リジッドプリント配線板である。
【0017】
イメージセンサ401は、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ、又はCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサである。イメージセンサ401は、レンズ鏡筒2000によって結像された光を光電変換し、複数の画素それぞれの画素のデータを示す電気信号を出力する。
【0018】
画像処理ユニット500は、電子ユニットの一例である。画像処理ユニット500は、画像処理IC501と、画像処理IC501が実装されたプリント配線板502と、を含むプリント回路板である。プリント配線板502は、リジッドプリント配線板である。
【0019】
画像処理IC501は、例えばデジタルシグナルプロセッサである。画像処理IC501は、フレキシブルプリント配線板101を介してイメージセンサ401から各画素のデータを示す電気信号を取得し、取得した電気信号を補正する処理を行い、画像のデータを生成する機能を有する。また、画像処理IC501は、無線通信ユニット600から画像データを取得する機能、及び無線通信ユニット600に画像データを送る機能を有する。
【0020】
無線通信ユニット600は、PC又は無線ルータなどの外部機器と無線通信可能なプリント回路板である。無線通信ユニット600は、無線通信IC601と、無線通信IC601が実装されたプリント配線板602と、を有する。プリント配線板602は、リジッドプリント配線板である。プリント配線板602は、導体パターンなどで構成されたアンテナ603を有する。
【0021】
無線通信IC601は、アンテナ603を介して外部機器とデータの送信及び/又は受信が可能なICである。例えば、無線通信IC601は、画像データを示すデジタル信号を変調し、アンテナ603から無線通信規格の通信周波数の電波として送信する。また、例えば、無線通信IC601は、アンテナ603にて受信された電波を、画像データを示すデジタル信号に復調する。通信周波数は、700MHz以上66GHz以下の周波数、例えば2.4GHz帯又は5GHz帯の周波数である。
【0022】
無線通信ユニット600、即ち無線通信IC601は、無線通信規格に準拠して外部機器と無線通信するよう構成されている。無線通信規格は、例えばWiFi(登録商標)の規格又はBluetooth(登録商標)の規格であり、本実施形態では、WiFi(登録商標)の規格である。
【0023】
撮像ユニット400のプリント配線板402には、コネクタ403が実装されている。コネクタ403は、プリント配線板402に形成された信号線411及びグラウンド線412等の配線パターンでイメージセンサ401に電気的に接続される。また、プリント配線板402は、コネクタ403が実装された面、即ち導体層である表層に形成されたグラウンドパターン413を有する。グラウンドパターン413は、グラウンド線412と電気的に接続されている。グラウンドパターン413は、グラウンド線412と一体であってもよい。
【0024】
画像処理ユニット500のプリント配線板502には、コネクタ503が実装されている。コネクタ503は、プリント配線板502に形成された信号線511及びグラウンド線512等の配線パターンで画像処理IC501に電気的に接続される。
【0025】
フレキシブルプリント配線板101は、可撓性を有し、筐体1002の内部に屈曲した状態で配置される。なお、
図2(b)においては、フレキシブルプリント配線板101を真っ直ぐに伸ばした状態を模式的に図示している。フレキシブルプリント配線板101の長手方向である配線方向の2つの端のうち一方には、コネクタ102が設けられている。フレキシブルプリント配線板101の長手方向の2つの端のうち他方には、コネクタ103が設けられている。コネクタ102は、コネクタ403に装着される。コネクタ103は、コネクタ503に装着される。このように、コネクタ102,403同士、及びコネクタ103,503同士がそれぞれ接続される。これにより、撮像ユニット400のイメージセンサ401と画像処理ユニット500の画像処理IC501とがフレキシブルプリント配線板101を介して互いに通信可能に接続されることとなる。
【0026】
筐体1002の内部には、金属フレーム750が配置されている。画像処理ユニット500は、金属フレーム750に金属部材760を介して固定されている。即ち、画像処理ユニット500のプリント配線板502のグラウンドは、金属フレーム750に接地されている。
【0027】
また、金属フレーム750には、撮像ユニット400を機械的に駆動する駆動装置の一例である複数のコイル700が設けられている。撮像ユニット400は、
図1に示す金属部材730に金属部材780で固定されており、金属部材730及び複数のコイル700を介して金属フレーム750に支持されている。また、金属部材730と金属フレーム750とは複数のコイル700を介して電気的に接続されている。即ち、プリント配線板402のグラウンドは、金属フレーム750に接地されている。
【0028】
各コイル700は、ローレンツ力を発生させて、金属フレーム750に対し、撮像ユニット400を手振れの方向とは逆の方向に駆動する。これら複数のコイル700によって撮像ユニット400が駆動されることにより、手振れを補正する機能が実現される。よって、フレキシブルプリント配線板101は、柔軟性を有するのが好ましい。
【0029】
図3(a)は、第1実施形態に係る撮像ユニット400のプリント配線板402とフレキシブルプリント配線板101との接続構造を示す平面模式図である。
図3(b)は、
図3(a)に示すIIIB-IIIB線に沿うフレキシブルプリント配線板101の断面図である。
図4は、第1実施形態に係る撮像ユニット400を示す平面模式図である。
【0030】
フレキシブルプリント配線板101は、少なくとも2つの導体層、第1実施形態では導体層251と、Z方向に導体層251と間隔をあけて配置された導体層252とを含むフレキシブルプリント配線板である。フレキシブルプリント配線板101は、絶縁部材212と、絶縁部材212に保持されたシールド部材205と、を有する。シールド部材205は、導体層251に配置された導体であり、導体パターンで構成される。シールド部材205を構成する導体パターンは、フレキシブルプリント配線板101の長手方向であるX方向、及びフレキシブルプリント配線板101の短手方向であるY方向に延在する。X方向及びY方向は、Z方向と直交する方向であり、シールド部材205の主面2051と平行な方向でもある。Z方向は、シールド部材205の主面2051に垂直な方向でもある。シールド部材205は、電磁ノイズの遮蔽を目的としたものであり、ベタ又はメッシュの導体パターンで構成されている。
【0031】
フレキシブルプリント配線板101は、絶縁部材212に保持された信号線201及びグラウンド線202を有する。信号線201及びグラウンド線202のそれぞれは、導体で構成されている。信号線201及びグラウンド線202のそれぞれは、所定の幅、所定の厚さを有する、長手方向であるX方向に延びる、帯状の導体パターンである。グラウンド線202の幅は、信号線201の幅よりも広いのが好ましい。
【0032】
複数の信号線201は、同じ導体層252に配置され、フレキシブルプリント配線板101の幅方向であるY方向に互いに間隔をあけて並んで配列されている。グラウンド線202は、信号線201が配置された導体層252に配置されている。そして、グラウンド線202は、Y方向に信号線201と並んで配列されている。シールド部材205の主面2051に垂直なZ方向に視て、信号線201及びグラウンド線202は、シールド部材205と重なっている。即ち、信号線201及びグラウンド線202は、シールド部材205の主面2051に沿って配置されている。換言すると、シールド部材205は、主面2051が信号線201及びグラウンド線202に沿うように、絶縁部材212を介して信号線201及びグラウンド線202と対向して配置されている。このように、信号線201及びグラウンド線202は、絶縁部材212を介してシールド部材205の主面2051と対向して配置されている。
【0033】
導体層252に配置されたグラウンド線202と、導体層251に配置されたシールド部材205とは、ヴィア206によって電気的に接続されている。
【0034】
フレキシブルプリント配線板101に実装されたコネクタ102は、信号線201に接続されたピン203と、グラウンド線202に接続されたピン204と、を有する。プリント配線板402に実装されたコネクタ403は、信号線411に接続されたピン208と、グラウンド線412に接続されたピン210と、を有する。
【0035】
図5(a)は、第1実施形態に係る2つのコネクタ102,403同士が接続された状態の2つのコネクタ102,403の接続構造の平面模式図である。
図5(b)は、
図5(a)のVB-VB線に沿う2つのコネクタ102,403の接続構造の断面模式図である。コネクタ102がコネクタ403に接続されることで、ピン203とピン208とが接触して信号線201と信号線411とが電気的に接続され、ピン204とピン210とが接触してグラウンド線202とグラウンド線412とが電気的に接続される。
【0036】
ところで、イメージセンサ401の内部の信号にコモンモードノイズが重畳しているような場合、フレキシブルプリント配線板において、信号線およびグラウンド線には、同じ方向に伝搬するコモンモード電流が発生する。そして、コモンモード電流が信号線及びグラウンド線を伝搬すると、フレキシブルプリント配線板からはコモンモード電流に起因して電磁ノイズが放射される。電磁ノイズは放射ノイズともいう。
【0037】
そこで第1実施形態のフレキシブルプリント配線板101は、コネクタ102からコネクタ103までコモンモード電流が伝搬するのを抑制するために、シールド部材205に電気的に接続された分岐線104を備える。分岐線104の先端は開放された開放端211となっている。分岐線104は、複数の導体層に跨って形成されたものではなく、1つの導体層、第1実施形態では導体層251に形成された導体パターンである。即ち、分岐線104は、シールド部材205の主面2051と平行なX方向及び/又はY方向に延びるように形成された導体パターンである。第1実施形態では、分岐線104は、帯状に延びる導体パターンである。フレキシブルプリント配線板101を伝搬するコモンモード電流である伝導ノイズのレベルが低減されるので、フレキシブルプリント配線板101から放射される電磁ノイズのレベルが低減される。
【0038】
以下、フレキシブルプリント配線板101から放射される電磁ノイズのレベルが低減されるメカニズムについて説明する。
図6(a)は、第1実施形態に係るフレキシブルプリント配線板101に流れる電流の分布を示す模式図である。
図6(b)は、第1実施形態に係るコネクタ102に流れる電流の分布を示す模式図である。
図6(a)には、
図3(a)のIIIB-IIIB線に沿うフレキシブルプリント配線板101の断面における電流の分布を図示している。
図6(b)には、
図5(b)のVIB-VIB線に沿うコネクタ102の断面における電流の分布を図示している。
【0039】
図6(a)に示すように、フレキシブルプリント配線板101において、信号線201およびグラウンド線202には同方向のコモンモード電流651が流れる。シールド部材205を設けると、コモンモード電流651に対するリターン経路がシールド部材205に形成され、リターン電流652がシールド部材205を流れる。これにより、電磁ノイズは低下する。一方、
図6(b)に示すように、コネクタ102においては、ピン203およびピン204にコモンモード電流651が流れるが、リターン経路は形成されない。
【0040】
ここで、分岐線104の有無によるコモンモード電流の経路の違いについて説明する。
図7(a)は、比較例の電子モジュール300Xの説明図である。
図7(b)は、第1実施形態の電子モジュール300の説明図である。比較例の電子モジュール300Xのフレキシブルプリント配線板101Xは、分岐線104が無いこと以外、第1実施形態のフレキシブルプリント配線板101と同様の構成である。
【0041】
プリント配線板402は信号を送信する側、プリント配線板502は信号を受信する側である。フレキシブルプリント配線板101,101Xのグラウンド、シールド部材205、各プリント配線板402,502のグラウンドは、金属フレーム750に電気的に接続されている。
図7(a)のように、比較例の電子モジュール300Xでは、コネクタ102でリターン経路が形成されないため、シールド部材205とプリント配線板402のグラウンドパターン413との間で電位変動が生じる。この電位変動により、コモンモード電流の一部はシールド部材205の主面2051とは逆側の面2052を伝搬し、金属フレーム750に伝搬するようなループ経路LXが形成される。以下、シールド部材205に生じるコモンモード電流をノイズ電流ともいう。
【0042】
これに対し、第1実施形態のフレキシブルプリント配線板101は、分岐線104を有する。分岐線104の開放端211では空間インピーダンスが高く、分岐線104とシールド部材205の接続部分では空間インピーダンスが低い。そのため
図7(b)のように、コネクタ102で発生してシールド部材205を流れるコモンモード電流の一部は、分岐線104に流れ込む。そして、開放端211において電界が強くなることにより、分岐線104とプリント配線板402のグラウンドパターン413との容量結合によって、分岐線104に流れたコモンモード電流は、分岐線104からグラウンドパターン413へ流れる。グラウンドパターン413に流れたコモンモード電流は、コネクタ102へ戻る。このように、第1実施形態では、コモンモード電流は、比較例のループ経路LXよりも短いループ経路L1を辿る。ループ経路L1は、金属フレーム750を含まず、シールド部材205の長手方向の全長よりも短い一部分と、分岐線104と、グラウンドパターン413とを含む経路である。その結果、フレキシブルプリント配線板101のシールド部材205を伝搬するノイズ電流、即ちコネクタ103に到達するノイズ電流が低減されるので、フレキシブルプリント配線板101から放射される電磁ノイズのレベルが低減される。更に、金属フレーム750に流れて拡散するノイズ電流が低減されるので、フレキシブルプリント配線板101や金属フレーム750から放射される電磁ノイズのレベルが低減される。フレキシブルプリント配線板101や金属フレーム750から放射される電磁ノイズのレベルが低減されるので、無線通信ユニット600が受ける電磁ノイズのレベルが低減され、無線通信ユニット600において安定した無線通信を確保することができる。例えば、無線通信ユニット600において、電磁ノイズで無線通信が停止したり、無線通信速度が極端に低下したりするのを防止することができる。
【0043】
図3(b)に示すように、分岐線104は、絶縁部材212に覆われることで絶縁部材212に固定されている。これにより、分岐線104は、絶縁部材212に保持されている。
【0044】
また、グラウンド線202は、Y方向に信号線201と並んで配列されている。即ち、グラウンド線202は、信号線201が配置された導体層252に配置されている。よって、導体層251,252と、導体層251,252とは別の導体層とを有し、別の導体層の全体がグラウンド層であるフレキシブルプリント配線板と比較して、フレキシブルプリント配線板101の柔軟性が向上する。そして、このような構成であっても、分岐線104により電磁ノイズのレベルを効果的に低減することができる。
【0045】
第1実施形態では、分岐線104は、シールド部材205から分岐している。即ち、分岐線104は、シールド部材205の長手方向(X方向)に延びる一辺から突出するように形成された導体パターン、即ち突出部である。よって、シールド部材205を伝搬するノイズ電流をより効果的にノイズ電流の発生源であるコネクタ102に戻すことができ、フレキシブルプリント配線板101から放射される電磁ノイズをより効果的に低減することができる。
【0046】
ここで、
図2(b)に示すように、信号線201は、配線方向であるX方向の2つの端2011,2012を含む。端2011は、信号の送信側の第1端である。端2012は、信号の受信側の第2端である。第1実施形態では、端2011は、コネクタ102を介して撮像ユニット400に接続される端であり、端2012は、コネクタ103を介して画像処理ユニット500に接続される端である。分岐線104は、端2012よりも端2011に近接する位置に配置されるのが好ましい。これにより、フレキシブルプリント配線板101においてノイズ電流が伝搬する経路長を短くすることができ、フレキシブルプリント配線板101から放射される電磁ノイズをより効果的に低減することができる。
【0047】
また、
図3(a)に示すように、分岐線104は、先端である開放端211が、2つの端2011,2012のうち端2011の位置する側を向いて配線されている。即ち、分岐線104は、コネクタ102の位置する側を向いて配線されている。これにより、分岐線104においてノイズ電流の発生源に向けてノイズ電流が戻りやすくなり、フレキシブルプリント配線板101から放射される電磁ノイズをより効果的に低減することができる。
【0048】
また、第1実施形態では、分岐線104は、L字形状に形成されている。これにより、分岐線104における開放端211を含む一部分1041が、信号線201に沿うX方向に延びている。第1実施形態では、一部分1041は、信号線201と平行に直線状に延びる部分である。これにより、フレキシブルプリント配線板101のY方向の幅を狭く抑えることができる。なお、分岐線104の形状は、L字形状に限定するものではなく、湾曲部分を含む形状であってもよい。
【0049】
また、分岐線104の少なくとも一部は、プリント配線板402の主面4021に対して直交する方向、
図3(a)の場合にはZ方向に視て、プリント配線板402と重なるのが好ましい。つまり、
図3(a)のZ方向において、分岐線104の少なくとも一部は、プリント配線板402の主面4021と対向するのが好ましい。ここで、
図3(a)に示すZ方向は、プリント配線板402の主面4021に垂直な方向でもある。
【0050】
分岐線104の少なくとも一部は、分岐線104の全部であってもよいが、第1実施形態では分岐線104の一部1042である。特に、一部1042は、
図3(a)のZ方向に視て、プリント配線板402のグラウンドパターン413と重なるのが好ましい。これにより、分岐線104は、プリント配線板402のグラウンドパターン413と容量結合しやすくなり、より効果的に電磁ノイズを低減することができる。
【0051】
一部1042は、分岐線104の先端である開放端211を含むのが好ましい。これにより、分岐線104は、プリント配線板402のグラウンドパターン413と更に容量結合しやすくなり、より効果的に電磁ノイズを低減することができる。
【0052】
一部1042は、分岐線104の長さLの1/2以上の部分であるのが好ましい。ここで、分岐線104の長さLは、分岐線104の延びる方向の長さであって、分岐線104の幅方向の中央を通る線分の長さである。分岐線104における電界レベルは、開放端211で最大となり、開放端211から分岐線104とシールド部材205との接続部分に向かうに連れて徐々に小さくなってき、接続部分で0となる。このため、一部1042が分岐線104の長さLの1/2以上の部分であることで、分岐線104の全部をグラウンドパターン413と対向させるのと同等となる。これにより分岐線104とグラウンドパターン413とが効果的に容量結合され、効果的にノイズ電流を分岐線104からコネクタ102に帰還させることができ、効果的に電磁ノイズを低減することができる。このような観点から、プリント配線板402の主面4021に垂直なZ方向に視て、分岐線104の全部がグラウンドパターン413と重なっているのが好ましい。なお、Z方向に視て、分岐線104は、開放端211がプリント配線板402の主面4021と重なるように配置されているのが好ましいが、重なってなくてもよい。
【0053】
ここで分岐線104の長さL、すなわち開放端211から分岐線104とシールド部材205の接続部分までの長さLは、以下の式(1)で決定される。式(1)において、fは周波数、cは光速、ε
rは実効比誘電率である。式(1)において、周波数fは、無線通信ユニット600において無線通信で利用される周波数であり、700MHz以上66GHz以下の範囲内の周波数である。光速cは、略30万Km/sである。実効比誘電率ε
rは、絶縁部材212の誘電率と、シールド部材205と金属フレーム750との間隔で決まる。
【数1】
【0054】
分岐線の長さLを、以上の式(1)にすることにより、分岐線104の長さLが、低減させる電磁ノイズのターゲット周波数fに合わせられる。このため、周波数fにおいて電磁ノイズのレベルをさらに低減することができる。なお周波数fに対する分岐線の長さLは式(1)で求められる値に対し±10%の範囲であれば、式(1)で求められる値からずれていても構わない。
【0055】
周波数fは、2.4GHz帯または5GHz帯に含まれる周波数であるのが好ましい。2.4GHz帯は、2.4GHz以上2.5GHz未満の周波数帯であり、5GHz帯は5GHz以上6GHz未満の周波数帯である。2.4GHz帯及び5GHz帯のいずれも、WiFi(登録商標)で用いられる周波数帯である。
【0056】
[変形例]
図8(a)は、変形例1のフレキシブルプリント配線板の一部分の模式図である。
図8(a)に示すように、分岐線104Aが直線状であってもよい。その際、分岐線104Aは、シールド部材205の一辺に傾いて接続されていてもよい。
【0057】
図8(b)は、変形例2のフレキシブルプリント配線板の一部分の模式図である。
図8(b)に示すように、分岐線104Bが直線状であってもよい。その際、分岐線104Bは、シールド部材205の一辺に対して直角に接続されていてもよい。
【0058】
図8(c)は、変形例3のフレキシブルプリント配線板の一部分の模式図である。
図8(c)に示すように、分岐線104Cの開放端211Cが、
図3(a)の分岐線104とは逆方向を向いていてもよい。尚、分岐線104および104Cのそれぞれは、90度の角度で折り曲げた形状の折り曲げ部を1つだけ有しているが、これに限定するものではない。例えば、分岐線104および104Cのそれぞれは、45度の角度で折り曲げた形状の2つの折り曲げ部を有していてもよい。また、折り曲げ部が、円弧状の丸みであるRを有していてもよい。
【0059】
図9(a)は、変形例4のフレキシブルプリント配線板の一部分の模式図である。
図9(a)に示すように、変形例4のフレキシブルプリント配線板は、配線長が異なる複数の分岐線104,104Dを備えていてもよい。変形例4では、低減させる電磁ノイズのターゲット周波数fを異なる複数の周波数とすることができる。例えば、配線長が長い分岐線104Dのターゲットの周波数を2.4GHz帯とし、配線長が短い分岐線104のターゲットの周波数を5GHz帯とすることができる。
【0060】
図9(b)は、変形例5のフレキシブルプリント配線板の一部分の模式図である。
図9(b)に示すように、シールド部材205Eの一辺が、直線状ではなくてもよく、凹部2051Eを有しており、凹部2051Eに分岐線104Eが形成されていてもよい。
【0061】
[第2実施形態]
図10(a)は、第2実施形態に係る撮像ユニット400のプリント配線板402とフレキシブルプリント配線板101Fとの接続構造を示す平面模式図である。
図10(b)は、
図10(a)に示すXB-XB線に沿うフレキシブルプリント配線板101Fの断面図である。
【0062】
フレキシブルプリント配線板101Fは、第1実施形態と同様、導体層251と導体層252とを含むフレキシブルプリント配線板である。フレキシブルプリント配線板101Fは、第1実施形態と同様、絶縁部材212と、絶縁部材212に保持されたシールド部材205と、信号線201およびグラウンド線202と、を有する。複数の信号線201は、同じ導体層252に配置されている。グラウンド線202は、信号線201が配置された導体層252に配置されている。そして、グラウンド線202は、Y方向に信号線201と並んで配列されている。導体層252に配置されたグラウンド線202と、導体層251に配置されたシールド部材205とは、ヴィア206によって電気的に接続されている。
【0063】
フレキシブルプリント配線板101Fは、フレキシブルプリント配線板101Fをコモンモード電流が伝搬するのを抑制するために、シールド部材205に電気的に接続された分岐線104Fを備える。分岐線104Fの先端は開放された開放端211Fとなっている。分岐線104Fは、複数の導体層に跨って形成されたものではなく、1つの導体層、第2実施形態では導体層252に形成されている。即ち、分岐線104Fは、シールド部材205の主面2051と平行なX方向及び/又はY方向に延びるように形成されている。
【0064】
第2実施形態では、分岐線104Fは、グラウンド線202から分岐しており、グラウンド線202及びヴィア206を介してシールド部材205と電気的に接続されている。即ち、分岐線104Fは、グラウンド線202の長手方向に延びる一辺から突出するように形成された導体パターン、即ち突出部である。分岐線104Fにより、シールド部材205を伝搬するノイズ電流をより効果的にノイズ電流の発生源であるコネクタ102に戻すことができ、フレキシブルプリント配線板101Fから放射される電磁ノイズをより効果的に低減することができる。
【0065】
なお、第2実施形態のフレキシブルプリント配線板101Fにおいても、第1実施形態の変形例と同様の変形が可能である。
【0066】
[実施例]
実施例1~5のフレキシブルプリント配線板及び比較例1のフレキシブルプリント配線板について実験を行った結果について説明する。実施例1~5のフレキシブルプリント配線板は、第1実施形態のフレキシブルプリント配線板101と対応関係にあるため、同一の構成については、同一の符号を用いて説明する。比較例1のフレキシブルプリント配線板についても同様である。
【0067】
図11(a)は、実施例における電子モジュール300の一部を示す側面図、
図11(b)は、実施例における電子モジュール300の一部を示す平面図である。なお、
図11(a)及び
図11(b)に示すように、フレキシブルプリント配線板101は真っ直ぐに伸ばした状態とし、プリント配線板402とプリント配線板502とは、金属フレーム750の同一面に金属部材1007で固定した状態とした。
【0068】
プリント配線板402の外形寸法は、129.0mm×210.0mm×厚み1.6mmとした。プリント配線板402は、6層の基板とした。差動信号を出力するThine社製THCV215のICを20個、プリント配線板402に実装した。差動信号の周波数は3.53GHzとした。2つの信号線を1組とする差動信号線を、20組、プリント配線板402に設けた。差動信号を出力すると、コモンモード電流による電磁ノイズが、1GHzから6GHzまでの広い周波数帯域に渡って検出された。
【0069】
フレキシブルプリント配線板101の外形寸法は、144.0mm×27.0mm×厚み37.5μmとした。フレキシブルプリント配線板101は、単層の基板とした。フレキシブルプリント配線板101の片面の全面に、シールド印刷によって、銀からなるシールド部材205を設けた。
【0070】
フレキシブルプリント配線板101とプリント配線板402とを接続するコネクタ102,403には、ヒロセ電機社製DF40C-70DS-0.4V[51]とDF40C-70DP-0.4V[51]を用いた。
【0071】
フレキシブルプリント配線板101の幅方向の両端および中央には、それぞれグラウンド線が配置され、中央に配置されたグラウンド線の両側に、各10組の差動信号線が配置された。
【0072】
プリント配線板502の外形寸法は、50.0mm×70.0mm×厚み1.6mmとした。プリント配線板502は、6層の基板とした。
【0073】
フレキシブルプリント配線板101とプリント配線板502とを接続するコネクタ103,503には、ヒロセ電機社製DF40C-70DS-0.4V[51]とDF40C-70DP-0.4V[51]を用いた。
【0074】
プリント配線板502に設けられた差動信号線に含まれる2つの信号線間を100Ωの抵抗で終端した。
【0075】
プリント配線板402,502は、高さ15.0mm直径6mmの金属部材1007で金属フレーム750に電気的に接続した。金属フレーム750は、325mm×250mm×厚み1.0mmの金属板とした。
【0076】
フレキシブルプリント配線板101から放射される電磁ノイズを測定するため、フレキシブルプリント配線板101の中央から高さ5mmの地点を測定開始地点とし、測定開始地点に電界プローブ1008を配置した。電界プローブ1008には、ELECTRO-METRICS社製のEM-6997を用いた。そして、測定開始地点からプリント配線板502の方向に2mm間隔で電界プローブ1008を移動させて計23点の測定データを取得した。電界プローブ1008は、KEYSIGHT社製のスペクトラムアナライザE4440Aに接続した。このスペクトラムアナライザによって電界プローブ1008のグラウンドと検出部との間の電位差、即ち電圧値を測定データとして読み取り、23点の電圧値の中の最大値を測定値とした。
【0077】
図12は、実施例のフレキシブルプリント配線板101の断面構造を示す模式図である。信号線201は銅からなる。絶縁部材212はポリイミドで形成される。各信号線201の配線幅Wは55μm、差動信号線の2つの信号線201間の距離Sは140μm、各信号線201の厚さT1は6μm、絶縁部材212の厚さT2は37.5μmとした。また、シールド部材205の厚さT3は5μm、シールド部材205と金属フレーム750との間隔Dは15.0mmとした。ポリイミドの比誘電率は3.38である。
【0078】
シールド部材205の表皮と金属フレーム750の表皮とを含むループ経路を辿るコモンモード電流が、電磁ノイズの原因となる。そこで、信号線をシールド部材205、グラウンド線を金属フレーム750として、マクニカ社製のシミュレーター、ハイパーリンクスを用いて、実効比誘電率εrを算出した。ここで、間隔Dは15.0mmとしたが、ハイパーリンクスの入力値には上限値10.0mmの制約がある。ここでは、配線の断面の厚みT2+T3と比較してシールド部材250と金属フレーム750との間隔Dが充分広く、間隔Dが10.0mmの場合も15.0mmの場合も実効比誘電率εrの算出値に変化がないと考えられる。よって、間隔Dを上限値10.0mmとして、実効比誘電率εrを近似計算した。なお、金属フレーム750がない場合は、同様の考えから、上限値10.0mmで実効比誘電率εrを近似計算すればよい。
【0079】
分岐線104の長さLは、式(1)を用いて計算した。その結果、実効比誘電率εrは1.0008となった。WiFi(登録商標)の無線通信で使用される5.300GHzのノイズを低減することを想定すると、分岐線104の長さLは14.2mmとなり、2.412GHzのノイズを低減することを想定すると、分岐線104の長さLは31.1mmとなる。
【0080】
5.300GHzのノイズを低減することを想定した場合のフレキシブルプリント配線板を実施例1とする。実施例1において、分岐線104の幅は1.5mmとした。分岐線104は、シールド部材205との接続部分から4mmの箇所でプリント配線板402の方向に直角に折り曲げた形状とした。
【0081】
2.412GHzのノイズを低減することを想定した場合のフレキシブルプリント配線板を実施例2とする。実施例2において、分岐線104の幅は1.5mmとした。分岐線104は、シールド部材205との接続部分から4mmの箇所でプリント配線板402の方向に直角に折り曲げた形状とした。
【0082】
分岐線104のないフレキシブルプリント配線板を比較例1とする。実施例1,2において、分岐線104は、その開放端211がプリント配線板402の一辺と重なる位置に配置した。
【0083】
比較例1、実施例1及び実施例2のノイズ電圧の測定値を表1に示す。
【表1】
【0084】
比較例1と実施例1とを比較すると、5.3GHzにおいて、実施例1は比較例1に対して7dBμVの電磁ノイズの低減効果が得られた。また、比較例1と実施例2とを比較すると、2.412GHzにおいて、実施例2は比較例1に対して11.1dBμVの電磁ノイズの低減効果が得られた。
【0085】
表1に示す結果より、分岐線104の長さを調整することで、低減させる電磁ノイズの周波数を設定できることがわかる。なお、異なる複数の周波数の電磁ノイズを低減させたい場合は、長さの異なる複数の分岐線を設ければよい。
【0086】
次に、5.3GHzの電磁ノイズを低減させる分岐線104の開放端211の向きを変えた場合の比較を行った。実施例3において、分岐線104の幅は1.5mmとした。分岐線104は、シールド部材205との接続部分から4mmの箇所でプリント配線板402の方向とは逆の方向に直角に折り曲げた形状とした。
【0087】
比較例1、実施例1及び実施例3のノイズ電圧の測定値を表2に示す。
【表2】
【0088】
表2に示す結果より、分岐線104を、信号の送信側となるプリント配線板402の側に折り曲げた形状とする方が、電磁ノイズのより高い低減効果が得られることがわかる。
【0089】
次に、5.3GHzのノイズを低減させる分岐線104の配置位置を変えた場合の比較を行った。実施例4において、実施例1に示した開放端211の位置からプリント配線板402の方向、すなわち‐X方向に、分岐線104を10mm移動させた。また実施例5において、実施例1に示した開放端211の位置からプリント配線板402の方向とは逆の方向、すなわち+X方向に、分岐線104を10mm移動させた。
【0090】
実施例4、実施例1及び実施例5のノイズ電圧の測定値を表3に示す。
【表3】
【0091】
表3に示す結果より、分岐線104の開放端211がプリント配線板402と重なるように配置することで、電磁ノイズのより高い低減効果が得られることがわかる。
【0092】
本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で多くの変形が可能である。また、実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、実施形態に記載されたものに限定されない。
【0093】
上述の実施形態では、電子機器の一例として、無線通信ユニットが搭載されたカメラの場合について説明したが、これに限定するものではない。例えば、無線通信ユニットがフレキシブルプリント配線板の近くにある電子機器、または無線通信ユニットが搭載されていない電子機器に対しても、本発明は適用可能である。
【0094】
また、上述の実施形態では、デジタルカメラ等の撮像装置に搭載されるフレキシブルプリント配線板について説明したが、これに限定するものではない。例えば、リジッドプリント配線板402,502,602に対しても本発明は適用可能である。また、スマートフォン、タブレットPC、及びゲーム機といったモバイル通信機器、並びにウェアラブル機器など、配線板が搭載される電子機器について、本発明の配線板は適用可能である。
【0095】
また、上述の実施形態では、プリント配線板402がリジッドプリント配線板である場合について説明したが、プリント配線板402がフレキシブルプリント配線板であってもよい。同様に、プリント配線板502がリジッドプリント配線板である場合について説明したが、プリント配線板502がフレキシブルプリント配線板であってもよい。
【0096】
以上の実施形態の開示は、以下の構成および方法を含む。
【0097】
(構成1)
信号線と、
主面が前記信号線に沿うシールド部材と、
前記シールド部材と電気的に接続され、先端が開放された、前記シールド部材の前記主面と平行な方向に延びる分岐線と、を備える、
ことを特徴とする配線板。
【0098】
(構成2)
前記シールド部材の前記主面と平行な方向に前記信号線と並んで配列されたグラウンド線を更に備える、
ことを特徴とする構成1に記載の配線板。
【0099】
(構成3)
前記分岐線は、前記シールド部材から分岐している、
ことを特徴とする構成1又は2に記載の配線板。
【0100】
(構成4)
前記グラウンド線は、前記シールド部材と電気的に接続されており、
前記分岐線は、前記グラウンド線から分岐している、
ことを特徴とする構成2に記載の配線板。
【0101】
(構成5)
前記信号線は、信号の送信側の第1端と、信号の受信側の第2端と、を含み、
前記分岐線は、前記第2端よりも前記第1端に近接する位置に配置されている、
ことを特徴とする構成1乃至4のいずれか1項に記載の配線板。
【0102】
(構成6)
前記分岐線は、前記先端が前記第1端の位置する側を向いて配線されている、
ことを特徴とする構成5に記載の配線板。
【0103】
(構成7)
前記分岐線における前記先端を含む一部分が、前記信号線に沿う方向に延びている、
ことを特徴とする構成1乃至6のいずれか1項に記載の配線板。
【0104】
(構成8)
前記分岐線は、L字形状である、
ことを特徴とする構成1乃至7のいずれか1項に記載の配線板。
【0105】
(構成9)
前記分岐線の長さをL、周波数をf、光速をc、実効比誘電率をε
rとし、
前記周波数が700MHz以上66GHz以下の範囲内であり、
【数2】
を満たす、
ことを特徴とする構成1乃至8のいずれか1項に記載の配線板。
【0106】
(構成10)
前記周波数は、2.4GHz帯または5GHz帯に含まれる周波数である、
ことを特徴とする構成9に記載の配線板。
【0107】
(構成11)
前記配線板は、フレキシブルプリント配線板である、
ことを特徴とする構成1乃至10のいずれか1項に記載の配線板。
【0108】
(構成12)
構成11に記載のフレキシブルプリント配線板と、
前記フレキシブルプリント配線板が接続されるプリント配線板と、を備える、
ことを特徴とする電子モジュール。
【0109】
(構成13)
前記プリント配線板の主面に垂直な方向に視て、前記フレキシブルプリント配線板の前記分岐線の少なくとも一部は、前記プリント配線板のグラウンドパターンと重なる、
ことを特徴とする構成12に記載の電子モジュール。
【0110】
(構成14)
前記分岐線の少なくとも一部は、前記分岐線の前記先端を含む、
ことを特徴とする構成13に記載の電子モジュール。
【0111】
(構成15)
前記分岐線の少なくとも一部は、前記分岐線の長さの1/2以上の部分である、
ことを特徴とする構成13に記載の電子モジュール。
【0112】
(構成16)
前記プリント配線板に実装され、前記信号線に信号を送信する電子部品を更に備える、
ことを特徴とする構成12乃至15のいずれか1項に記載の電子モジュール。
【0113】
(構成17)
前記電子部品がイメージセンサである、
ことを特徴とする構成16に記載の電子モジュール。
【0114】
(構成18)
前記フレキシブルプリント配線板が接続され、前記フレキシブルプリント配線板を介して前記電子部品とデータ通信可能な電子ユニットを更に備える、
ことを特徴とする構成16又は17に記載の電子モジュール。
【0115】
(構成19)
外部機器と無線通信可能な無線通信ユニットを更に備える、
ことを特徴とする構成12乃至18のいずれか1項に記載の電子モジュール。
【0116】
(構成20)
筐体と、
前記筐体の内部に配置された、構成12乃至19のいずれか1項に記載の電子モジュールと、を備える、
ことを特徴とする電子機器。
【符号の説明】
【0117】
101…フレキシブルプリント配線板、104…分岐線、201…信号線、211…開放端(先端)