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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189738
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】複合基板および複合基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/25 20060101AFI20221215BHJP
   H03H 3/08 20060101ALI20221215BHJP
   C30B 29/30 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
H03H9/25 C
H03H3/08
C30B29/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078984
(22)【出願日】2022-05-12
(62)【分割の表示】P 2021097962の分割
【原出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100143650
【弁理士】
【氏名又は名称】山元 美佐
(72)【発明者】
【氏名】谷 美典
【テーマコード(参考)】
4G077
5J097
【Fターム(参考)】
4G077AA03
4G077AB10
4G077BC32
4G077HA04
5J097AA01
5J097AA13
5J097BB11
5J097EE08
5J097EE10
5J097GG03
5J097GG04
5J097HA03
5J097KK09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】SAWフィルタの高性能化に寄与し得る複合基板および複合基板の製造方法を提供する。
【解決手段】複合基板100は、支持基板10と、支持基板10の片側に配置される圧電層20と、を有する。複合基板100は、任意の層をさらに有していてもよく、例えば、複合基板100は、圧電層20と支持基板10との間に配置される中間層を有していてもよい。支持基板10は、その形状の空間周波数0.045cyc/mmを超えるうねりの振幅は10nm以下であり、好ましくは5nm以下である。このような支持基板を用いることにより、圧電層20の膜厚精度が良好に達成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板と、
前記支持基板の片側に配置される圧電層と、を有し、
前記支持基板の形状の空間周波数0.045cyc/mmを超えるうねりの振幅が10nm以下である、
複合基板。
【請求項2】
前記圧電層の第一地点における厚みT1と第二地点における厚みT2との差の絶対値は、100nm以下である、請求項1に記載の複合基板。
【請求項3】
前記圧電層の厚みは5μm以下である、請求項1または2に記載の複合基板。
【請求項4】
互いに対向する第一主面および第二主面を有する圧電基板の前記第一主面側に、支持基板を接合すること、および、
前記圧電基板の第二主面側の表面を研磨すること、を含み、
前記支持基板の形状の空間周波数0.045cyc/mmを超えるうねりの振幅が10nm以下である、
複合基板の製造方法。
【請求項5】
前記圧電基板を研磨して得られる圧電層の第一地点における厚みT1と第二地点における厚みT2との差の絶対値は、100nm以下である、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記圧電基板を研磨して得られる圧電層の厚みは5μm以下である、請求項4または5に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合基板および複合基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等の通信機器には、任意の周波数の電気信号を取り出すため、例えば、弾性表面波を利用したフィルタ(SAWフィルタ)が用いられている。このSAWフィルタは、圧電層を有する複合基板上に電極等が形成された構造を有する(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
近年、情報通信機器の分野では、例えば、通信量が急激に増加しており、上記SAWフィルタの高性能化が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-150488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の主たる目的は、SAWフィルタの高性能化に寄与し得る複合基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態による複合基板は、支持基板と、前記支持基板の片側に配置される圧電層と、を有し、前記支持基板の形状の空間周波数0.045cyc/mmを超えるうねりの振幅は10nm以下である。
1つの実施形態においては、上記圧電層の第一地点における厚みT1と第二地点における厚みT2との差の絶対値は、100nm以下である。
1つの実施形態においては、上記圧電層の厚みは5μm以下である。
本発明の別の実施形態による弾性表面波素子は、上記複合基板を有する。
【0007】
本発明の別の実施形態による複合基板の製造方法は、互いに対向する第一主面および第二主面を有する圧電基板の前記第一主面側に、支持基板を接合すること、および、前記圧電基板の第二主面側の表面を研磨すること、を含み、前記支持基板の形状の空間周波数0.045cyc/mmを超えるうねりの振幅は10nm以下である。
1つの実施形態においては、上記圧電基板を研磨して得られる圧電層の第一地点における厚みT1と第二地点における厚みT2との差の絶対値は、100nm以下である。
1つの実施形態においては、上記圧電基板を研磨して得られる圧電層の厚みは5μm以下である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、例えば、SAWフィルタの高性能化に寄与し得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の1つの実施形態に係る複合基板の概略の構成を示す模式的な断面図である。
図2】複合基板の外観の一例を示す図である。
図3A】支持基板の形状と圧電層の形状の概要の一例を示す図である。
図3B】支持基板の形状と圧電層の形状の概要の別の一例を示す図である。
図4A】1つの実施形態に係る複合基板の製造工程例を示す図である。
図4B図4Aに続く図である。
図4C図4Bに続く図である。
図4D図4Cに続く図である。
図5A】実施例のシリコン基板の形状を示す図である。
図5B】実施例のLT層の膜厚分布を示す図である。
図5C】実施例のシリコン基板の形状およびLT層の膜厚分布のFFT解析結果を示す図である。
図5D図5Cの縦軸および横軸を拡大して示す図である。
図6A】比較例のシリコン基板の形状を示す図である。
図6B】比較例のLT層の膜厚分布を示す図である。
図6C】比較例のシリコン基板の形状およびLT層の膜厚分布のFFT解析結果を示す図である。
図6D図6Cの縦軸および横軸を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。また、図面は説明をより明確にするため、実施の形態に比べ、各部の幅、厚み、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0011】
A.複合基板
図1は、本発明の1つの実施形態に係る複合基板の概略の構成を示す模式的な断面図である。複合基板100は、支持基板10と、支持基板10の片側に配置される圧電層20とを有する。図示しないが、複合基板100は、任意の層をさらに有していてもよい。このような層の種類・機能、数、組み合わせ、配置等は、目的に応じて適切に決定され得る。例えば、複合基板100は、圧電層20と支持基板10との間に配置される中間層(例えば、無機材料層)を有していてもよい。また、例えば、複合基板100は、圧電層20または図示しない中間層と支持基板10との間に配置される接合層を有していてもよい。
【0012】
複合基板100は、任意の適切な形状で製造され得る。1つの実施形態においては、図2に示すように、いわゆる、ウェハの形態で製造され得る。複合基板100のサイズは、目的に応じて適切に設定され得る。例えば、ウェハの直径は、50mm~150mmである。
【0013】
A-1.支持基板
支持基板10の厚みは、任意の適切な厚みが採用され得る。支持基板の厚みは、例えば100μm~1000μmである。
【0014】
支持基板は、その形状の空間周波数0.045cyc/mmを超えるうねりの振幅は0nm以上10nm以下であり、好ましくは5nm以下である。このような支持基板を用いることにより、後述の圧電層の膜厚精度が良好に達成され得る。
【0015】
支持基板としては、任意の適切な基板が用いられ得る。支持基板は、単結晶体で構成されてもよく、多結晶体で構成されてもよい。支持基板を構成する材料としては、好ましくは、シリコン、サファイア、ガラス、石英、水晶およびアルミナからなる群から選択される。
【0016】
上記シリコンは、単結晶シリコンであってもよく、多結晶シリコンであってもよく、高抵抗シリコンであってもよい。
【0017】
代表的には、上記サファイアはAlの組成を有する単結晶体であり、上記アルミナはAlの組成を有する多結晶体である。
【0018】
支持基板を構成する材料の熱膨張係数は、後述の圧電層を構成する材料の熱膨張係数よりも小さいことが好ましい。このような支持基板によれば、温度が変化したときの圧電層の形状・サイズの変化を抑制し、例えば、得られる弾性表面波素子の周波数特性の変化を抑制し得る。
【0019】
A-2.圧電層
上記圧電層を構成する材料としては、任意の適切な圧電性材料が用いられ得る。圧電性材料としては、好ましくは、LiAOの組成を有する単結晶が用いられる。ここで、Aは、ニオブおよびタンタルからなる群から選択される一種以上の元素である。具体的には、LiAOは、ニオブ酸リチウム(LiNbO)であってもよく、タンタル酸リチウム(LiTaO)であってもよく、ニオブ酸リチウム-タンタル酸リチウム固溶体であってもよい。
【0020】
圧電性材料がタンタル酸リチウムである場合、圧電層として、弾性表面波の伝搬方向であるX軸を中心に、その法線方向がY軸からZ軸に32°~55°(例えば、42°)回転した方向のもの、オイラー角表示で(180°,58°~35°,180°)のものを用いるのが、伝搬損失が小さいため好ましい。
【0021】
圧電性材料基板がニオブ酸リチウムである場合、圧電層として、例えば、弾性表面波の伝搬方向であるX軸を中心に、その法線方向がZ軸から-Y軸に37.8°回転した方向のもの、オイラー角表示で(0°,37.8°,0°)のものを用いるのが、電気機械結合係数が大きいため好ましい。また例えば、圧電性材料基板がニオブ酸リチウムである場合、圧電層として、弾性表面波の伝搬方向であるX軸を中心に、その法線方向がY軸からZ軸に40°~65°回転した方向のもの、オイラー角表示で(180°,50°~25°,180°)のものを用いるのが、高音速が得られるため好ましい。
【0022】
圧電層の厚みは、好ましくは5μm以下であり、より好ましくは3μm以下であり、さらに好ましくは1μm以下である。一方、圧電層の厚みは、例えば0.2μm以上である。このような厚みによれば、高性能な弾性表面波素子を得ることができる。具体的には、温度特性(TCF)を改善し得る、Q値を向上させ得る等の効果が期待される。
【0023】
圧電層の厚みは均一であることが好ましい。図3Aおよび図3Bは、それぞれ、支持基板の形状(例えば、X軸方向の)と圧電層の形状の概要の一例を示す図である。図3Aに示すように、支持基板10のうねり周波数が低い場合(例えば、空間周波数が0.045cyc/mm以下の場合)、圧電層20の形状を支持基板10のうねりに対応させやすく、圧電層20の膜厚精度に優れ得る。例えば、X軸方向において、第一地点における圧電層20の厚み(第一の厚み)T1と第二地点における圧電層の厚み(第二の厚み)T2との差の絶対値は、100nm以下であることが好ましく、より好ましくは50nm以下である。このような膜厚精度を有することにより、高性能な弾性表面波素子を得ることができる。具体的には、Q値を向上させ得る等の効果が期待される。また、特性のばらつきの小さい弾性表面波素子を得ることができる。図3Bに示すように、支持基板10のうねり周波数が高い場合(例えば、空間周波数が0.045cyc/mmを超える場合)、圧電層20の形状を支持基板10のうねりに対応させにくい傾向にあるが、上記支持基板のうねりの振幅を満たすことにより、圧電層20の膜厚精度に優れ得る。
【0024】
A-3.その他
上述のとおり、複合基板は、中間層を有し得る。中間層を構成する材料としては、例えば、酸化ケイ素、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウムが挙げられる。中間層の厚みは、例えば0.1μm~2μmである。
【0025】
上記中間層は、任意の適切な方法により成膜され得る。例えば、スパッタリング、イオンビームアシスト蒸着(IAD)等の物理蒸着、化学蒸着、原子層堆積(ALD)法により成膜され得る。
【0026】
また、上述のとおり、複合基板は、接合層を有し得る。接合層を構成する材料としては、例えば、ケイ素酸化物、シリコン、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ハフニウムが挙げられる。接合層の厚みは、例えば0.005μm~1μmである。
【0027】
接合層は、任意の適切な方法により成膜され得る。具体的には、上記中間層の成膜方法と同様の方法により成膜され得る。
【0028】
A-4.製造方法
本発明の1つの実施形態に係る複合基板の製造方法は、互いに対向する第一主面および第二主面を有する圧電基板の第一主面側に支持基板を接合すること、および、圧電基板の第二主面側の表面を研磨すること、を含む。代表的には、接合後に研磨を行う。
【0029】
図4A図4Dは、1つの実施形態に係る複合基板の製造工程例を示す図である。
【0030】
図4Aは、支持基板10の互いに対向する両主面の研磨が完了した状態を示している。図4Aに示す例では、支持基板10の下面10aは平らに研磨され、上面10bは下方に凸の湾曲した形状を呈している。支持基板10の形状の空間周波数0.045cyc/mmを超えるうねりの振幅は、0nm以上10nm以下であり、好ましくは5nm以下である。このような値は、例えば、図示例の形状により良好に達成され得る。図示しないが、上面10bは上方に凸の湾曲した形状を呈していてもよい。
【0031】
図4Bは、支持基板10と圧電基板22とが直接接合された状態を示している。圧電基板22は互いに対向する第一主面22aおよび第二主面22bを有し、第一主面22aを研磨した後、支持基板10と接合する。直接接合に際し、接合面は任意の適切な活性化処理により活性化されていることが好ましい。例えば、支持基板10の上面10bを活性化し、圧電基板22の第一主面22aを活性化した後、支持基板10の活性化面と圧電基板22の活性化面とを接触させ、加圧することで直接接合する。こうして、図4Bに示す接合体90を得る。
【0032】
得られた接合体90の圧電基板22の第二主面22bは、上記所望の厚みの圧電層となるように、研削、研磨等の加工が施される。図4Cは第二主面22bの研削が完了した状態を示し、図4Dは第二主面22bの研磨が完了し状態を示している。研磨により圧電層20が形成され、複合基板100を得る。圧電層20の上面20aの形状は、例えば、支持基板10の上面10bの形状に対応し得る。
【0033】
上記研磨の方法としては、例えば、化学機械研磨加工(CMP)、ラップ(lap)研磨等による鏡面研磨が挙げられる。好ましくは、化学機械研磨加工が採用される。具体的には、研磨スラリー(例えば、コロイダルシリカ)を用いた研磨パッドによる化学機械研磨加工が採用される。
【0034】
上記接合に際し、例えば、研磨剤の残渣、加工変質層等の除去のため、各層の表面を洗浄することが好ましい。洗浄方法としては、例えば、ウエット洗浄、ドライ洗浄、スクラブ洗浄が挙げられる。これらの中でも、簡便かつ効率的に洗浄し得ることから、スクラブ洗浄が好ましい。スクラブ洗浄の具体例としては、洗浄剤(例えば、ライオン社製、サンウオッシュシリーズ)を用いた後に、溶剤(例えば、アセトンとイソプロピルアルコール(IPA)との混合溶液)を用いてスクラブ洗浄機にて洗浄する方法が挙げられる。
【0035】
上記活性化処理は、代表的には、中性化ビームを照射することにより行う。好ましくは、特開2014-086400号公報に記載の装置のような装置を使用して中性化ビームを発生させ、このビームを照射することにより活性化処理を行う。具体的には、ビーム源として、サドルフィールド型の高速原子ビーム源を使用し、チャンバーにアルゴン、窒素等の不活性ガスを導入し、直流電源から電極へ高電圧を印加する。これにより、電極(正極)と筺体(負極)との間に生じるサドルフィールド型の電界により、電子が運動して、不活性ガスによる原子とイオンのビームが生成される。グリッドに達したビームのうち、イオンビームはグリッドで中和されるので、中性原子のビームが高速原子ビーム源から出射される。ビーム照射による活性化処理時の電圧は0.5kV~2.0kVとすることが好ましく、ビーム照射による活性化処理時の電流は50mA~200mAとすることが好ましい。
【0036】
上記接合面の接触および加圧は、真空雰囲気で行うことが好ましい。このときの温度は、代表的には、常温である。具体的には、20℃以上40℃以下が好ましく、より好ましくは25℃以上30℃以下である。加える圧力は、好ましくは100N~20000Nである。
【0037】
B.弾性表面波素子
本発明の実施形態による弾性表面波素子は、上記複合基板を有する。弾性表面波素子は、代表的には、上記複合基板と、上記複合基板の圧電層側に設けられた電極(櫛型電極)とを有する。このような弾性表面波素子は、例えば、SAWフィルタとして携帯電話等の通信機器に好適に用いられる。
【実施例0038】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0039】
[実施例]
直径4インチで厚み500μmのタンタル酸リチウム(LT)基板(弾性表面波(SAW)の伝搬方向をXとし、切り出し角が回転Yカット板である42°YカットX伝搬のLT基板)を用意した。
【0040】
また、直径4インチで厚み500μmのシリコン基板を用意し、このシリコン基板の表面(両面)を研磨した。具体的には、CMP研磨機のSUSキャリア上にシリコン基板を設置し、硬質ウレタンパッドを使用し、研磨剤としてコロイダルシリカを用いて両面研磨を行った。
【0041】
次いで、LT基板とシリコン基板とを直接接合した。具体的には、LT基板の表面およびシリコン基板の表面を洗浄した後、両基板を真空チャンバーに投入して10-6Pa台まで真空引きした後、両基板の表面に高速原子ビーム(加速電圧1kV、Ar流量27sccm)を80秒間照射した。照射後、両基板のビーム照射面を重ね合わせ、1200kgfで2分間加圧して両基板を接合し、接合体を得た。
【0042】
次いで、上記接合体(複合基板)のLT基板の裏面を、当初の500μmから3μmになるまで、グラインダー加工機により研削した。さらに、厚みが1μmになるまで、CMP研磨機にて、硬質ウレタンパッドを使用し、研磨剤としてコロイダルシリカを用いて鏡面研磨し、シリコン基板とLT層とを有する複合基板を得た。
【0043】
[比較例]
シリコン基板の両面研磨時に、硬質ウレタンパッドのかわりに不織布を使用したこと以外は実施例と同様にして、複合基板を得た。
【0044】
<評価>
上記実施例および比較例について下記の評価を行った。
1.平坦度(形状)および厚み(膜厚分布)の測定
斜入射干渉法フラットネステスター(NIDEK社製の「FT-17」)により両面研磨後のシリコン基板のX軸方向の平坦度を測定した。また、得られた複合基板のLT層のX軸方向の厚みを、顕微分光膜厚計(大塚電子社製の「OPTM」)により測定した。具体的には、ウェハの中心を原点とした時の-43.4mm~+43.4mmの範囲を2.8mmピッチにて32点を測定した。
実施例のシリコン基板の結果を図5Aに、実施例のLT層の結果を図5Bに示す。また、比較例のシリコン基板の結果を図6Aに、比較例のLT層の結果を図6Bに示す。なお、図5A図5Bおよび図6A図6Bに示すグラフでは、厚みの平均値を差し引いた値を示している。
2.FFT(Fast Fourier Transform)解析
上記1で得られた結果について、FFT解析を行った。具体的には、上記1で得られた形状および膜厚分布を窓関数としてハニング窓を掛け算し、FFT解析を行った。計算の際、傾き成分・直流成分は除去した上で、Microsoft Excelの分析ツールを使用した。FFT変換、振幅の計算のため、得られた絶対値を16(データ点数32点÷2)で割り算し、その後ハニング窓による処理の影響を考慮して2倍した。
なお、シリコン基板が下方(LT基板が配置されない側)に凸の形状の場合、ハニング窓を掛け算した際に不要な周波数成分が発生したため、シリコン基板が上方に凸の形状になるよう、各データを最大値から引き算することでデータを反転させて計算を行った。
実施例の結果を図5Cおよび図5Dに示し、比較例の結果を図6Cおよび図6Dに示す。
【0045】
図5Bに示すように、実施例では、LT層の膜厚精度に優れた複合基板が得られることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の実施形態による複合基板は、代表的には、弾性表面波素子に好適に用いられ得る。
【符号の説明】
【0047】
10 支持基板
20 圧電層
100 複合基板
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図6D