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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189739
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】仮撚加工機
(51)【国際特許分類】
   D02G 1/04 20060101AFI20221215BHJP
   D02J 13/00 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
D02G1/04 A
D02J13/00 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079745
(22)【出願日】2022-05-13
(31)【優先権主張番号】P 2021097084
(32)【優先日】2021-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】502455511
【氏名又は名称】TMTマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】今中 昭仁
(72)【発明者】
【氏名】北川 重樹
(72)【発明者】
【氏名】堀本 尭幸
【テーマコード(参考)】
4L036
【Fターム(参考)】
4L036AA01
4L036MA05
4L036MA37
4L036PA07
4L036PA09
4L036PA28
4L036PA45
4L036PA49
4L036UA21
(57)【要約】
【課題】太い糸を仮撚加工する場合でも、生産効率及び均質性が損なわれることを抑制しつつ、良好な糸品質を確保する。
【解決手段】仮撚加工機1は、第1の糸Ya及び第2の糸Ybに撚りを付与する仮撚装置15と、第1の糸Ya及び第2の糸Ybを冷却する冷却装置14とを備える。仮撚装置15は、円板41と、第1ベルトユニット42aと、第2ベルトユニット42bとを有する。円板41は、第1接触面41aと第2接触面41bとを有する。第1接触面41aと、第1ベルトユニット42aの第1無端ベルト46aとによって第1の糸Yaが撚られる。第2接触面41bと、第2ベルトユニット42bの第2無端ベルト46bとによって第2の糸Ybが撚られる。冷却装置14は、第1冷却空間Sa及び第2冷却空間Sbが形成された冷却ユニット31と、第1冷却空間Sa及び第2冷却空間Sbに冷却風を供給するための吸気ダクト32とを有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、走行している第1の糸と第2の糸とを同時に仮撚加工可能に構成された仮撚加工機であって、
前記第1の糸及び前記第2の糸に撚りを付与するように構成された仮撚装置と、
前記第1の糸及び前記第2の糸が走行する糸走行方向において前記仮撚装置の上流側に配置され、前記第1の糸及び前記第2の糸を冷却するように構成された冷却装置と、を備え、
前記仮撚装置は、所定方向を回転軸方向として回転するように構成された円板と、前記円板の前記所定方向における一方側に配置された第1ベルトユニットと、前記円板の前記所定方向における他方側に配置された第2ベルトユニットと、を有し、
前記円板は、前記所定方向における前記一方側の端に配置された第1接触面と、前記所定方向における前記他方側の端に配置された第2接触面と、を有し、
前記第1ベルトユニットは、前記第1の糸と接触しつつ移動可能な第1ベルト部材を有し、前記第1接触面と前記第1ベルト部材との間に前記第1の糸を挟んで前記第1の糸に撚りを付与するように構成され、
前記第2ベルトユニットは、前記第2の糸と接触しつつ移動可能な第2ベルト部材を有し、前記第2接触面と前記第2ベルト部材との間に前記第2の糸を挟んで前記第2の糸に撚りを付与するように構成され、
前記冷却装置は、
前記第1の糸を冷却するための第1冷却空間と、前記第1冷却空間と並べて配置された、前記第2の糸を冷却するための第2冷却空間と、が形成された冷却ユニットと、
前記第1冷却空間及び前記第2冷却空間と接続される吸気空間が形成された、前記第1冷却空間及び前記第2冷却空間に冷却風を供給するための吸気ダクトと、を有することを特徴とする仮撚加工機。
【請求項2】
前記第1冷却空間及び前記第2冷却空間は、前記所定方向に並べて配置されていることを特徴とする請求項1に記載の仮撚加工機。
【請求項3】
前記糸走行方向における前記第1冷却空間の上流端と、前記糸走行方向における前記第2冷却空間の上流端との前記所定方向における間隔をWC1とし、前記糸走行方向における前記第1冷却空間の下流端と、前記糸走行方向における前記第2冷却空間の下流端との前記所定方向における間隔をWC2としたとき、WC2≦WC1であることを特徴とする請求項2に記載の仮撚加工機。
【請求項4】
前記糸走行方向において前記冷却装置の上流側に配置された加熱装置と、
前記糸走行方向において前記加熱装置と前記冷却装置との間に配置された上流ガイド部材と、
前記糸走行方向において前記冷却装置と前記仮撚装置との間に配置された下流ガイド部材と、を備え、
前記上流ガイド部材は、前記第1の糸と前記第2の糸との前記所定方向における間隔をW1に規定するように構成され、
前記下流ガイド部材は、前記第1の糸と前記第2の糸との前記所定方向における間隔をW2に規定するように構成され、
前記糸走行方向における前記第1冷却空間の上流端と、前記糸走行方向における前記第2冷却空間の上流端との前記所定方向における間隔をWC1とし、前記糸走行方向における前記第1冷却空間の下流端と、前記糸走行方向における前記第2冷却空間の下流端との前記所定方向における間隔をWC2としたとき、W2≦WC2≦WC1≦W1、又は、W1≦WC1≦WC2≦W2であることを特徴とする請求項2又は3に記載の仮撚加工機。
【請求項5】
前記冷却ユニットは、
前記第1冷却空間と前記第2冷却空間とを前記所定方向において仕切る仕切部材、を有することを特徴とする請求項2~4のいずれかに記載の仮撚加工機。
【請求項6】
前記吸気空間は、前記所定方向に延びており、
前記第1冷却空間及び前記第2冷却空間のそれぞれが、前記吸気空間と接続されていることを特徴とする請求項5に記載の仮撚加工機。
【請求項7】
前記仕切部材は、
前記第1冷却空間を形成するように、前記所定方向における前記一方側に配置された第1仕切面、を有する第1仕切部と、
前記第2冷却空間を形成するように、前記所定方向における前記他方側に配置された第2仕切面、を有する第2仕切部と、を有し、
前記冷却ユニットは、
前記第1仕切面の前記所定方向における前記一方側に配置された、前記第1冷却空間を形成するための第1壁面、を有する第1壁部材と、
前記第2仕切面の前記所定方向における前記他方側に配置された、前記第2冷却空間を形成するための第2壁面、を有する第2壁部材と、を有することを特徴とする請求項5又は6に記載の仮撚加工機。
【請求項8】
前記第1仕切面は、前記所定方向において前記第1壁面と向かい合うように配置され、
前記第2仕切面は、前記所定方向において前記第2壁面と向かい合うように配置されていることを特徴とする請求項7に記載の仮撚加工機。
【請求項9】
前記冷却ユニットは、
前記所定方向において前記第1仕切面と前記第1壁面との間に配置され、前記第1の糸を前記糸走行方向における下流側へ案内する第1糸ガイドと、
前記所定方向において前記第2仕切面と前記第2壁面との間に配置され、前記第2の糸を前記糸走行方向における下流側へ案内する第2糸ガイドと、を有することを特徴とする請求項7又は8に記載の仮撚加工機。
【請求項10】
前記第1壁部材及び前記第2壁部材は、前記吸気ダクトに取り付けられ、
前記第1壁部材及び前記第2壁部材の少なくとも一方は、前記仕切部材を支持するように構成されていることを特徴とする請求項7~9のいずれかに記載の仮撚加工機。
【請求項11】
前記第1壁部材及び前記第2壁部材の両方が、前記仕切部材を支持するように構成されていることを特徴とする請求項10に記載の仮撚加工機。
【請求項12】
少なくとも前記仕切部材は、前記第1壁部材及び前記第2壁部材に対して相対移動可能に構成されていることを特徴とする請求項7~11のいずれかに記載の仮撚加工機。
【請求項13】
前記第1壁部材及び前記第2壁部材のうち一方は、前記吸気ダクトに対して位置が固定されており、
前記第1壁部材及び前記第2壁部材のうち他方と、前記仕切部材とが、前記第1壁部材及び前記第2壁部材のうち前記一方に対して移動可能であることを特徴とする請求項12に記載の仮撚加工機。
【請求項14】
前記仕切部材は、前記冷却ユニットに対して着脱可能に構成されていることを特徴とする請求項12又は13に記載の仮撚加工機。
【請求項15】
前記冷却ユニットの長手方向及び前記所定方向の両方と直交する方向を高さ方向としたとき、
前記仕切部材は、
少なくとも前記高さ方向において、前記第1仕切部よりも、前記冷却装置への糸掛け作業が行われる作業空間側に突出した第1糸挿入ガイド部と、
少なくとも前記高さ方向において、前記第2仕切部よりも前記作業空間側に突出した第2糸挿入ガイド部と、を有することを特徴とする請求項7~14のいずれかに記載の仮撚加工機。
【請求項16】
前記冷却装置の前記糸走行方向における上流側に配置され、前記第1の糸及び前記第2の糸を加熱するように構成された加熱装置を備え、
前記仮撚装置、前記冷却装置及び前記加熱装置は、前記作業空間の上方に配置され、
前記加熱装置の前記糸走行方向における上流側端部は、前記加熱装置の前記糸走行方向における下流側端部と比べて、鉛直方向において前記冷却装置から上側に遠くなるように配置されていることを特徴とする請求項15に記載の仮撚加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸を仮撚加工する仮撚加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、合成繊維からなる複数の糸を仮撚加工する仮撚加工機が開示されている。仮撚加工機は、複数の糸にそれぞれ撚りを付与する仮撚装置と、複数の糸が走行する糸走行方向において仮撚装置の上流側に配置された冷却装置と、糸走行方向において冷却装置の上流側に配置された加熱装置とを備える。走行中の複数の糸は、複数の仮撚装置によってそれぞれ撚られた状態で、加熱装置によって加熱されて熱固定された後、冷却装置によって冷却される。これにより、糸の捲縮が固定され、嵩高性を有する糸が生産される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4462751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、従来以上に太い糸を仮撚加工可能な仮撚加工機の提供が求められている。一方で、同時に仮撚加工可能な糸の数(以下、生産効率)、及び、複数の糸間での糸品質ばらつきの増大抑制(以下、均質性)も考慮に入れる必要がある。
【0005】
本発明の目的は、太い糸を仮撚加工する場合でも、生産効率及び均質性が損なわれることを抑制しつつ、良好な糸品質を確保することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明の仮撚加工機は、少なくとも、走行している第1の糸と第2の糸とを同時に仮撚加工可能に構成された仮撚加工機であって、前記第1の糸及び前記第2の糸に撚りを付与するように構成された仮撚装置と、前記第1の糸及び前記第2の糸が走行する糸走行方向において前記仮撚装置の上流側に配置され、前記第1の糸及び前記第2の糸を冷却するように構成された冷却装置と、を備え、前記仮撚装置は、所定方向を回転軸方向として回転するように構成された円板と、前記円板の前記所定方向における一方側に配置された第1ベルトユニットと、前記円板の前記所定方向における他方側に配置された第2ベルトユニットと、を有し、前記円板は、前記所定方向における前記一方側の端に配置された第1接触面と、前記所定方向における前記他方側の端に配置された第2接触面と、を有し、前記第1ベルトユニットは、前記第1の糸と接触しつつ移動可能な第1ベルト部材を有し、前記第1接触面と前記第1ベルト部材との間に前記第1の糸を挟んで前記第1の糸に撚りを付与するように構成され、前記第2ベルトユニットは、前記第2の糸と接触しつつ移動可能な第2ベルト部材を有し、前記第2接触面と前記第2ベルト部材との間に前記第2の糸を挟んで前記第2の糸に撚りを付与するように構成され、前記冷却装置は、前記第1の糸を冷却するための第1冷却空間と、前記第1冷却空間と並べて配置された、前記第2の糸を冷却するための第2冷却空間と、が形成された冷却ユニットと、前記第1冷却空間及び前記第2冷却空間と接続される吸気空間が形成された、前記第1冷却空間及び前記第2冷却空間に冷却風を供給するための吸気ダクトと、を有することを特徴とする。
【0007】
本発明の仮撚加工機が備える仮撚装置では、第1の糸が第1ベルト部材と第1接触面との間に挟まれ、第2の糸が第2ベルト部材と第2接触面との間に挟まれる。これにより、第1の糸及び第2の糸に撚りをしっかり付与できる。また、第1接触面と第2接触面が同一の円板に形成されているので、仮撚装置において第1の糸と第2の糸との間隔を小さくすることができる。したがって、小さなスペースにおいて多くの糸に撚りを付与できる。また、当該仮撚装置では、第1の糸が仮撚される位置と、第2の糸が仮撚される位置とを近くすることができる。したがって、第1の糸の糸道と第2の糸の糸道とが大きく異なってしまうこと(また、その影響により、第1の糸と第2の糸との間で糸品質がばらついてしまうこと)を抑制できる。
【0008】
また、本発明の仮撚加工機が備える冷却装置では、第1の糸及び第2の糸を冷却風によってしっかり冷却できる。また、第1冷却空間と第2冷却空間が同一の冷却ユニット内に形成されているので、冷却装置において第1の糸と第2の糸との間隔を小さくすることができる。したがって、小さなスペースにおいて多くの糸を冷却できる。さらに、上述したように第1の糸と第2の糸との間隔を小さくすることができるので、第1の糸の糸道と第2の糸の糸道とが大きく異なってしまうこと(また、その影響による、上述した糸品質のばらつき)を抑制できる。
【0009】
以上のようにして、太い糸を仮撚加工する場合でも、生産効率及び均質性が損なわれることを抑制しつつ、良好な糸品質を確保できる。
【0010】
第2の発明の仮撚加工機は、前記第1の発明において、前記第1冷却空間及び前記第2冷却空間は、前記所定方向に並べて配置されていることを特徴とする。
【0011】
本発明では、冷却装置から仮撚装置に第1の糸及び第2の糸が送られる際に、第1の糸と第2の糸とが所定方向に並べられた状態を維持できる。これにより、例えば、第1冷却空間と第2冷却空間とが所定方向と異なる方向に並べて配置されている場合と比べて、第1の糸の糸道と第2の糸の糸道が互いに異なってしまうことをさらに抑制できる。したがって、第1の糸と第2の糸との間での糸品質のばらつきを効果的に低減できる。
【0012】
第3の発明の仮撚加工機は、前記第2の発明において、前記糸走行方向における前記第1冷却空間の上流端と、前記糸走行方向における前記第2冷却空間の上流端との所定方向における間隔をWC1とし、前記糸走行方向における前記第1冷却空間の下流端と、前記糸走行方向における前記第2冷却空間の下流端との所定方向における間隔をWC2としたとき、WC2≦WC1であることを特徴とする。
【0013】
本発明では、WC2が小さいため、第1の糸及び第2の糸を冷却装置から仮撚装置へ送る際に、第1の糸及び第2の糸の屈曲を抑制できる。したがって、糸品質の低下を抑制できる。
【0014】
第4の発明の仮撚加工機は、前記第2又は第3の発明において、前記糸走行方向において前記冷却装置よりも上流側に配置された上流ガイド部材と、前記糸走行方向において前記冷却装置よりも下流側に配置された下流ガイド部材と、を備え、前記上流ガイド部材は、前記第1の糸と前記第2の糸との前記所定方向における間隔をW1に規定するように構成され、前記下流ガイド部材は、前記第1の糸と前記第2の糸との前記所定方向における間隔をW2に規定するように構成され、前記糸走行方向における前記第1冷却空間の上流端と、前記糸走行方向における前記第2冷却空間の上流端との所定方向における間隔をWC1とし、前記糸走行方向における前記第1冷却空間の下流端と、前記糸走行方向における前記第2冷却空間の下流端との所定方向における間隔をWC2としたとき、W2≦WC2≦WC1≦W1、又は、W1≦WC1≦WC2≦W2であることを特徴とする。
【0015】
本発明では、冷却ユニットへの糸掛け作業の際、第1の糸及び第2の糸の両方を略直線状に維持しつつ糸掛け作業を行うことができる。つまり、冷却ユニットへの糸掛け作業の際、第1の糸及び第2の糸をほとんど屈曲させる必要がない。したがって、第1の糸及び第2の糸を冷却ユニットに同時に糸掛けすることが容易になる。
【0016】
第5の発明の仮撚加工機は、前記第2~第4のいずれかの発明において、前記冷却ユニットは、前記第1冷却空間と前記第2冷却空間とを所定方向において仕切る仕切部材、を有することを特徴とする。
【0017】
第1冷却空間と第2冷却空間とは必ずしも仕切られていなくても良いが、この場合、第1の糸と第2の糸とが何らかの原因により互いに絡まってしまうおそれがある。本発明では、第1冷却空間と第2冷却空間とが仕切部材によって仕切られているので、そのような問題の発生を確実に回避できる。
【0018】
第6の発明の仮撚加工機は、前記第5の発明において、前記吸気空間は、前記所定方向に延びており、前記第1冷却空間及び前記第2冷却空間のそれぞれが、前記吸気空間と接続されていることを特徴とする。
【0019】
本発明では、第1冷却空間及び第2冷却空間のそれぞれが、所定方向に延びた吸気空間と接続されている(すなわち、並列に接続されている)。したがって、単純な構造によって、第1冷却空間及び第2冷却空間に冷却風を略均一に供給できる。
【0020】
第7の発明の仮撚加工機は、前記第5又は第6の発明において、前記仕切部材は、前記第1冷却空間を形成するように、前記所定方向における前記一方側に配置された第1仕切面、を有する第1仕切部と、前記第2冷却空間を形成するように、前記所定方向における前記他方側に配置された第2仕切面、を有する第2仕切部と、を有し、前記冷却ユニットは、前記第1仕切面の前記所定方向における前記一方側に配置された、前記第1冷却空間を形成するための第1壁面、を有する第1壁部材と、前記第2仕切面の前記所定方向における前記他方側に配置された、前記第2冷却空間を形成するための第2壁面、を有する第2壁部材と、を有することを特徴とする。
【0021】
本発明では、仕切部材の第1仕切面と第1壁部材の第1壁面とによって、第1冷却空間が形成されている。また、仕切部材の第2仕切面と第2壁部材の第2壁面とによって、第2冷却空間が形成されている。したがって、単純な構造により第1冷却空間及び第2冷却空間を形成できる。
【0022】
第8の発明の仮撚加工機は、前記第7の発明において、前記第1仕切面は、前記所定方向において前記第1壁面と向かい合うように配置され、前記第2仕切面は、前記所定方向において前記第2壁面と向かい合うように配置されていることを特徴とする。
【0023】
例えば、第1の糸が仮撚装置によって撚られ、第1冷却空間を形成する壁面に接触したとき、第1の糸が当該壁面に沿って転がってしまい、第1冷却空間から脱落してしまうおそれがある。特に、第1の糸を第1冷却空間に入れるための入口が広い場合、その可能性が高まる。第2冷却空間についても同様である。本発明では、第1仕切面が所定方向において第1壁面と向かい合うように配置されている(すなわち、当該2つの面が互いに略平行である)。これにより、第1冷却空間の上記入口を狭くすることができる。第2冷却空間についても同様である。したがって、第1の糸の第1冷却空間からの脱落を抑制でき、第2の糸の第2冷却空間からの脱落を抑制できる。
【0024】
第9の発明の仮撚加工機は、前記第7又は第8の発明において、前記冷却ユニットは、前記所定方向において前記第1仕切面と前記第1壁面との間に配置され、前記第1の糸を前記糸走行方向における下流側へ案内する第1糸ガイドと、前記所定方向において前記第2仕切面と前記第2壁面との間に配置され、前記第2の糸を前記糸走行方向における下流側へ案内する第2糸ガイドと、を有することを特徴とする。
【0025】
冷却ユニットは、例えば、冷却風と、冷却風によって冷やされた壁面及び仕切面とによって糸を冷却するように構成されていても良い。しかし、そのように、糸を壁面及び仕切面に積極的に接触させる構成では、糸が仮撚装置によって撚られたときに、糸が壁面又は仕切面に沿って転がりやすくなる。このため、糸が冷却空間から脱落してしまう可能性が高まる。この点、本発明では、第1の糸は第1糸ガイドによって糸走行方向下流側へ案内され、第2の糸は第2糸ガイドによって糸走行方向下流側へ案内される。つまり、冷却ユニットは、糸を仕切面及び壁面に積極的に接触させるように構成されているわけではない。したがって、上述した問題の発生を抑制できる。
【0026】
第10の発明の仮撚加工機は、前記第7~第9のいずれかの発明において、前記第1壁部材及び前記第2壁部材は、前記吸気ダクトに取り付けられ、前記第1壁部材及び前記第2壁部材の少なくとも一方は、前記仕切部材を支持するように構成されていることを特徴とする。
【0027】
仕切部材が所定方向において小さいほど、第1冷却空間と第2冷却空間との所定方向における距離が短くなるように冷却ユニットを設計できる。つまり、第1の糸と第2の糸との間隔を狭くすることができる。しかし、仕切部材が所定方向において非常に小さい場合に、仕切部材の吸気ダクトへの取り付け(例えばねじ止め等)ができない可能性がある。本発明では、第1壁部材及び第2壁部材の少なくとも一方によって仕切部材を支持できる。したがって、仕切部材の吸気ダクトへの取り付けができない場合でも、仕切部材を正常に配置できる。
【0028】
第11の発明の仮撚加工機は、前記第10の発明において、前記第1壁部材及び前記第2壁部材の両方が、前記仕切部材を支持するように構成されていることを特徴とする。
【0029】
本発明では、第1壁部材及び第2壁部材によって、仕切部材が両持ち支持される。したがって、仕切部材を安定的に支持できる。
【0030】
第12の発明の仮撚加工機は、前記第7~第11のいずれかの発明において、少なくとも前記仕切部材は、前記第1壁部材及び前記第2壁部材に対して相対移動可能に構成されていることを特徴とする。
【0031】
一般的に、仮撚加工される糸には、糸がスムーズに走行するための油剤が付与される。このような油剤が冷却ユニットに付着すると冷却ユニットが汚れるため、冷却ユニットを構成する部材は適宜清掃される必要がある。本発明では、少なくとも仕切部材が、第1壁部材及び第2壁部材に対して相対移動可能に構成されている。相対移動可能とは、例えば、第1壁部材及び第2壁部材が仕切部材に対して移動可能である場合も含まれる。これにより、これらの部材を清掃するための広いスペースを確保できる。したがって、清掃等の作業効率を向上させることができる。
【0032】
第13の発明の仮撚加工機は、前記第12の発明において、前記第1壁部材及び前記第2壁部材のうち一方は、前記吸気ダクトに対して位置が固定されており、前記第1壁部材及び前記第2壁部材のうち他方と、前記仕切部材とが、前記第1壁部材及び前記第2壁部材のうち前記一方に対して移動可能であることを特徴とする。
【0033】
前記第1壁部材及び前記第2壁部材のうち一方を、説明の便宜上、固定壁部材と呼ぶ。本発明では、固定壁部材の近傍に、冷却ユニットの長手方向と概ね平行な直線を対称軸として、上記冷却ユニットと線対称に構成された別の冷却ユニットを設けることができる。このような別の冷却ユニットが設けられていても、互いに隣接配置された2つの固定壁部材は移動しない。したがって、清掃時に部材が移動させられる際に、部材同士が干渉することを回避できる。
【0034】
第14の発明の仮撚加工機は、前記第12又は第13の発明において、前記仕切部材は、前記冷却ユニットに対して着脱可能に構成されていることを特徴とする。
【0035】
本発明では、仕切部材を冷却ユニットから完全に切り離すことができるので、清掃等の作業効率を大きく向上させることができる。
【0036】
第15の発明の仮撚加工機は、前記第7~第14のいずれかの発明において、前記冷却ユニットの長手方向及び前記所定方向の両方と直交する方向を高さ方向としたとき、前記仕切部材は、少なくとも前記高さ方向において、前記第1仕切部よりも、前記冷却装置への糸掛け作業が行われる作業空間側に突出した第1糸挿入ガイド部と、少なくとも前記高さ方向において、前記第2仕切部よりも前記作業空間側に突出した第2糸挿入ガイド部と、を有することを特徴とする。
【0037】
本発明では、糸掛け作業の際、第1の糸を第1糸挿入ガイド部に沿って移動させ、第2の糸を第2糸挿入ガイド部に沿って移動させることができる。これにより、糸掛け作業の成功率を高めることができる。
【0038】
第16の発明の仮撚加工機は、前記第15の発明において、前記冷却装置の前記糸走行方向における上流側に配置され、前記第1の糸及び前記第2の糸を加熱するように構成された加熱装置を備え、前記仮撚装置、前記冷却装置及び前記加熱装置は、前記作業空間の上方に配置され、前記加熱装置の前記糸走行方向における上流側端部は、前記加熱装置の前記糸走行方向における下流側端部と比べて、鉛直方向において前記冷却装置から上側に遠くなるように配置されていることを特徴とする。
【0039】
本発明では、加熱装置の糸走行方向における上流側端部が鉛直方向において高い位置に配置されているため、作業者が人手で加熱装置に糸を掛けることが難しい。このような場合、一般的には、まず仮撚装置に糸が掛けられた後、糸を上方へ移動させるための装置(例えばエア噴射装置)を用いて、冷却装置及び加熱装置に一度に糸が掛けられる。このような糸掛け作業が行われる際、第1糸挿入ガイド部及び第2糸挿入ガイド部によって糸掛けの成功率を高めることは、特に効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本実施形態に係る仮撚加工機の側面図である。
図2】糸の経路に沿って仮撚加工機を展開した模式図である。
図3図1のIII矢視図である。
図4】冷却装置の糸走行方向上流側の端部及びその近傍部分を示す、図3の一部の拡大図である。
図5】冷却装置の糸走行方向下流側の端部及びその近傍部分を示す、図3の一部の拡大図である。
図6】仮撚装置を示す、図3の一部の拡大図である。
図7】仮撚装置の側面図である。
図8】冷却ユニットを構成する部材を大まかに示した図である。
図9図8のIX-IX線断面図である。
図10】冷却ユニットから仕切部材が取り外された状態を示す説明図である。
図11】冷却ユニットをさらに模式化した図である。
図12】変形例に係る冷却ユニットを示す説明図である。
図13】別の変形例に係る冷却ユニットを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
次に、本発明の実施の形態について説明する。図1の紙面垂直方向を機台長手方向(本発明の所定方向)とする。説明の便宜上、図1の紙面手前側及び図2の紙面左側を機台長手方向における一方側とし、図1の紙面奥側及び図2の紙面右側を機台長手方向における他方側とする。図1の紙面左右方向を機台幅方向とする。機台長手方向及び機台幅方向の両方と直交する方向を、重力の作用する上下方向(鉛直方向)とする。複数の糸Y(後述)が並んで走行する方向を糸走行方向とする。
【0042】
(仮撚加工機の全体構成)
まず、本実施形態の仮撚加工機1の全体構成について、図1及び図2を参照しつつ説明する。図1は、仮撚加工機1の側面図である。図2は、糸Yの経路(糸道)に沿って仮撚加工機1を展開した模式図である。
【0043】
仮撚加工機1は、合成繊維(例えばポリエステル)からなる複数の糸Yを同時に仮撚加工可能に構成されている。複数の糸Yの各々は、例えば複数のフィラメントからなるマルチフィラメント糸である。或いは、各々の糸Yは、1本のフィラメントによって構成されていても良い。仮撚加工機1は、給糸部2と、加工部3と、巻取部4とを備える。給糸部2は、複数の糸Yを供給可能に構成されている。加工部3は、給糸部2から複数の糸Yを引き出して仮撚加工するように構成されている。巻取部4は、加工部3によって加工された複数の糸Yを巻取ボビンBwに巻き取るように構成されている。給糸部2、加工部3及び巻取部4が有する各構成要素は、機台長手方向において複数配列されている(図2参照)。機台長手方向は、給糸部2から加工部3を通って巻取部4に至る糸道によって形成される、糸Yの走行面(図1の紙面)と直交する方向である。
【0044】
給糸部2は、複数の給糸パッケージPsを保持するクリールスタンド7を有し、加工部3に複数の糸Yを供給する。加工部3は、給糸部2から複数の糸Yを引き出して加工するように構成されている。加工部3は、糸走行方向における上流側から順に、第1フィードローラ11、撚止ガイド12、第1加熱装置13(本発明の加熱装置)、冷却装置14、仮撚装置15、第2フィードローラ16、合糸装置17、第3フィードローラ18、第2加熱装置19、第4フィードローラ20が配置された構成となっている。巻取部4は、複数の巻取装置21を有する。各巻取装置21は、加工部3で仮撚加工された糸Yを1つ又は複数の巻取ボビンBwに巻き取って、1つ又は複数の巻取パッケージPwを形成する。
【0045】
仮撚加工機1は、機台幅方向に間隔を置いて配置された主機台8及び巻取台9を有する。主機台8及び巻取台9は、機台長手方向に略同じ長さに延びるように設けられている。主機台8及び巻取台9は、機台幅方向において互いに対向するように配置されている。主機台8と巻取台9との間には、作業者が糸掛け等の作業を行うための作業空間Swが形成されている(図1参照)。仮撚加工機1は、1組の主機台8及び巻取台9を含む、スパンと呼ばれる単位ユニットを有する。1つのスパンにおいては、機台長手方向に並んだ状態で走行する複数の糸Yに対して、同時に仮撚加工を施すことができるように各装置が配置されている。仮撚加工機1は、このスパンが、主機台8の機台幅方向の中心線Cを対称軸として、紙面左右対称に配置されている(主機台8は、左右のスパンで共通のものとなっている)。また、複数のスパンが、機台長手方向に配列されている。
【0046】
(加工部の構成)
加工部3の構成について、図1及び図2を参照しつつ説明する。第1フィードローラ11は、給糸部2に装着された給糸パッケージPsから糸Yを解舒して第1加熱装置13へ送るように構成されている。第1フィードローラ11は、例えば、図2に示すように、2本の糸Yを第1加熱装置13へ送ることが可能に構成されているが、これには限られない。撚止ガイド12は、仮撚装置15で糸Yに付与された撚りが、撚止ガイド12よりも糸走行方向上流側に伝播しないように構成されている。
【0047】
第1加熱装置13は、第1フィードローラ11から送られてきた糸Yを加熱するように構成されている。第1加熱装置13は、糸走行方向における上流側端部が下流側端部よりも上側に位置するように斜めに配置されている(図1参照)。言い換えると、第1加熱装置13の糸走行方向における上流側端部は、第1加熱装置13の糸走行方向における下流側端部と比べて、上下方向(鉛直方向)において冷却装置14から上側に遠くなるように配置されている。第1加熱装置13は、例えば、図2に示すように、4本の糸Yを加熱可能に構成されているが、これには限られない。
【0048】
冷却装置14は、第1加熱装置13によって加熱された糸Yを冷却するように構成されている。冷却装置14の詳細については後述する。仮撚装置15は、冷却装置14の糸走行方向下流側に配置され、2本の糸Y(第1の糸Ya及び第2の糸Yb)に撚りを付与するように構成されている。仮撚装置15の詳細については後述する。
【0049】
第2フィードローラ16は、仮撚装置15で処理された糸Yを合糸装置17へ送るように構成されている。第2フィードローラ16による糸Yの搬送速度は、第1フィードローラ11による糸Yの搬送速度よりも速い。これにより、糸Yは、第1フィードローラ11と第2フィードローラ16との間で延伸される。
【0050】
合糸装置17は、第1の糸Yaと第2の糸Ybを合糸して糸Ycを形成可能に構成されている。合糸装置17は、2つのインターレースノズル17a、17bを有する(図2参照)。合糸装置17は、例えばインターレースノズル17aの内部を通っている第1の糸Ya及び第2の糸Yb(図2の紙面左側部分参照)に対して空気を噴射し、第1の糸Yaと第2の糸Ybを空気流で絡める空気交絡(インターレース)によって合糸し、糸Ycを形成する。合糸装置17は、第1の糸Yaと第2の糸Ybとを合糸せずにそのまま糸走行方向における下流側へ案内することも可能である。この場合、第1の糸Yaはインターレースノズル17aの内部を通り、第2の糸Ybはインターレースノズル17bの内部を通る(図2の紙面右側部分参照)。なお、インターレースノズル17a、17bを有する合糸装置17の代わりに、例えば不図示のガイド又はフィードローラを有する合糸部(不図示)が設けられていても良い。合糸部は、これらのガイド又はフィードローラによって2本の糸Yを合糸しても良く、或いは、又は2本の糸Yを合糸せずにそのまま糸走行方向における下流側へ案内しても良い。
【0051】
第3フィードローラ18は、合糸装置17よりも糸走行方向における下流側を走行している糸Yを第2加熱装置19へ送るように構成されている。第3フィードローラ18は、例えば、図2に示すように、2本の糸Yを第2加熱装置19へ送ることが可能に構成されているが、これには限られない。なお、第3フィードローラ18による糸Yの搬送速度は、第2フィードローラ16による糸Yの搬送速度よりも遅い。このため、糸Yは、第2フィードローラ16と第3フィードローラ18との間で弛緩される。第2加熱装置19は、第3フィードローラ18から送られてきた糸Yを加熱するように構成されている。第2加熱装置19は、鉛直方向に沿って延びており、1つのスパンに1つずつ設けられている。第4フィードローラ20は、第2加熱装置19によって加熱された糸Yを巻取装置21へ送るように構成されている。第4フィードローラ20は、例えば、図2に示すように、2本の糸Yを巻取装置21へ送ることが可能に構成されているが、これには限られない。第4フィードローラ20による糸Yの搬送速度は、第3フィードローラ18による糸Yの搬送速度よりも遅い。このため、糸Yは、第3フィードローラ18と第4フィードローラ20との間で弛緩される。
【0052】
以上のように構成された加工部3では、第1フィードローラ11と第2フィードローラ16との間で延伸された糸Yが、仮撚装置15によって撚られる。仮撚装置15により形成される撚りは、撚止ガイド12までは伝播するが、撚止ガイド12よりも糸走行方向上流側には伝播しない。延伸されつつ撚りが付与された糸Yは、第1加熱装置13で加熱されて熱固定された後、冷却装置14で冷却される。仮撚装置15よりも糸走行方向下流側では糸Yは解撚されるが、上記の熱固定によって糸Yが波状に仮撚りされた状態が維持される。仮撚りが施された2本の糸Y(第1の糸Ya及び第2の糸Yb)は、第2フィードローラ16と第3フィードローラ18との間で弛緩されながら、合糸装置17によって合糸された後、又は、合糸されずにそのまま、糸走行方向下流側へ案内される。さらに、糸Yは、第3フィードローラ18と第4フィードローラ20との間で弛緩されながら、第2加熱装置19で熱処理される。最後に、第4フィードローラ20から送られた糸Y(糸Yc、又は、第1の糸Ya及び第2の糸Yb)は、巻取装置21によって巻き取られる。これにより、各巻取装置21において、1つ又は2つの巻取パッケージPwが形成される。
【0053】
(巻取部の構成)
巻取部4の構成について、図2を参照しつつ説明する。巻取部4は、複数の巻取装置21を有する。各巻取装置21は、例えば、1つ又は2つの巻取ボビンBwに糸Yを巻取可能に構成されている。巻取装置21は、支点ガイド22と、トラバース装置23と、クレードル24とを有する。支点ガイド22は、糸Yが綾振りされる際の支点となるガイドである。支点ガイド22は、例えば、各巻取装置21に3つずつ設けられている(図2参照)。例えば、合糸装置17により合糸されて1本になった糸Ycを案内する場合には、3つの支点ガイドのうち中央に配置された支点ガイド22に糸Yが掛けられる(図2の紙面左側部分参照)。また、合糸されずにそのまま送られてきた2本の糸Yを案内する場合には、3つの支点ガイド22のうち両端の2つの支点ガイド22にそれぞれ糸Yが掛けられる(図2の紙面右側部分参照)。トラバース装置23は、トラバースガイド25によって糸Yを綾振りすることが可能に構成されている。トラバースガイド25の数は、綾振りされる糸Yの数に応じて変更可能である。クレードル24は、1つ又は2つの巻取ボビンBwを回転自在に支持するように構成されている。クレードル24の近傍には、接触ローラ26が配置されている。接触ローラ26は、1つ又は2つの巻取パッケージPwの表面に接触して接圧を付与する。以上のように構成された巻取部4では、上述した第4フィードローラ20から送られた糸Yが各巻取装置21によって1つ又は2つの巻取ボビンBwに巻き取られ、1つ又は2つの巻取パッケージPwが形成される。なお、巻取装置21の構成は上述したものに限らない。巻取装置21は、例えば、3つ以上の巻取パッケージPwを同時に形成可能に構成されていても良い。或いは、巻取部4は、給糸部2から供給される糸Yの数と同じ数の巻取装置(不図示)を有していても良い。当該巻取装置の各々は、1本の糸Yを巻取可能に構成されていても良い。
【0054】
ここで、近年、従来以上に太い糸Yを仮撚加工可能にすることが求められている。一方で、同時に仮撚加工可能な糸Yの数(以下、生産効率)及び複数の糸Y間での糸品質ばらつきの増大抑制(以下、均質性)も考慮に入れる必要がある。そこで、本実施形態では、太い糸Yを仮撚加工する場合でも、生産効率及び均質性が損なわれることを抑制しつつ、良好な糸品質を確保するために、加工部3は以下のような構成を有する。
【0055】
(加工部のより詳細な構成)
次に、加工部3のより詳細な構成について説明する。まず、第1加熱装置13、冷却装置14及び仮撚装置15の近傍のより詳細なレイアウトについて、図3図5を参照しつつ説明する。図3は、図1のIII矢視図である。図4は、冷却装置14の糸走行方向における上流側端部及びその近傍部分を示す、図3の一部の拡大図である。図5は、冷却装置14の糸走行方向における下流側端部及びその近傍部分を示す、図3の一部の拡大図である。本実施形態では、第1加熱装置13、冷却装置14及び仮撚装置15は、作業空間Swの上方に配置されている。
【0056】
図3に示すように、複数の第1加熱装置13は、機台長手方向に並べて配置されている。複数の第1加熱装置13の各々は、例えば機台長手方向に並んで走行する4本の糸Yを同時に加熱可能に構成されている。糸走行方向において、第1加熱装置13と冷却装置14との間(すなわち、冷却装置14よりも糸走行方向における上流側)には、糸ガイドG1(図4参照。本発明の上流ガイド部材)が設けられている。糸ガイドG1は、上記4本の糸Yを糸走行方向における下流側へ案内するように構成されている。糸ガイドG1によって案内されている4本の糸Yの機台長手方向におけるピッチ(間隔W1。図4参照)は、例えば14mmに規定される。なお、間隔W1の大きさはこれには限られない。
【0057】
冷却装置14は、冷却風によって複数の糸Yを冷却する非接触式の装置である(詳細については後述する)。図3に示すように、冷却装置14は、複数の冷却ユニット31と、複数の冷却ユニット31と接続された吸気ダクト32とを有する。冷却装置14は、吸気ダクト32内の気体を吸引する不図示の吸引装置によって、複数の冷却ユニット31にそれぞれ形成された複数の冷却空間S(図4及び図5参照)に冷却風を供給する。この冷却風によって、複数の糸Yが冷却される。
【0058】
複数の冷却ユニット31は、機台長手方向に並べて配置されている。複数の冷却ユニット31は、吸気ダクト32に取り付けられている。複数の冷却ユニット31の各々は、機台長手方向と交差する方向(概ね直交する方向)に延びている。各冷却ユニット31は、略直線状に延びていても良いが、これには限られない(例えば、湾曲等していても良い)。各冷却ユニット31は、2本の糸Y(第1の糸Ya及び第2の糸Yb)を冷却するように構成されている。各冷却ユニット31には、第1の糸Yaを冷却するための第1冷却空間Sa及び第2の糸Ybを冷却するための第2冷却空間Sbが形成されている(図4及び図5参照)。複数の冷却ユニット31は、機台長手方向において隣り合うように配置された2つの冷却ユニット31A、31Bを含む。2つの冷却ユニット31A、31Bが、1つの第1加熱装置13に対応して設けられている。冷却ユニット31Aと冷却ユニット31Bの機台長手方向における間隔は、例えば、糸走行方向における下流側へ向かうほど大きくなっている。2つの冷却ユニット31A、31Bは、所定の直線L(図3参照)を対称軸として、互いに線対称に構成されている。冷却ユニット31のより詳細については後述する。
【0059】
吸気ダクト32は、複数の冷却ユニット31に冷却風を供給するように構成されたダクトである。吸気ダクト32は、機台長手方向に延びている。吸気ダクト32内には、機台長手方向に延びた吸気空間Ssが形成されている。吸気空間Ssは、冷却空間S(図4及び図5参照)と接続されている。吸気ダクト32には、複数の冷却ユニット31が取り付けられている。
【0060】
図3に示すように、複数の仮撚装置15は、機台長手方向に並べて配置されている。複数の仮撚装置15の各々は、機台長手方向に並んで走行する2本の糸Y(第1の糸Ya及び第2の糸Yb)を同時に加熱可能に構成されている。糸走行方向において、冷却装置14と仮撚装置15との間(すなわち、冷却装置14よりも糸走行方向における下流側)には、糸ガイドG2(図5参照。本発明の下流ガイド部材)が設けられている。糸ガイドG2は、上記2本の糸Yを糸走行方向における下流側へ案内するように構成されている。糸ガイドG2によって案内されている2本の糸Yの機台長手方向における間隔W2(図5参照)は、例えば8mmに規定される。なお、間隔W2の大きさはこれには限られない。
【0061】
(仮撚装置の詳細構成)
次に、仮撚装置15の詳細構成について、図6及び図7を参照しつつ説明する。図6は、仮撚装置15を示す、図3の一部の拡大図である。図7は、仮撚装置15を機台長手方向における一方側から見た図である。
【0062】
仮撚装置15は、例えば特開2018-127731号公報に記載された公知の仮撚装置である。図6に示すように、仮撚装置15は、円板41と、2つのベルトユニット42(第1ベルトユニット42a及び第2ベルトユニット42b)とを有する。仮撚装置15は、円板41の第1接触面41a(後述)と第1ベルトユニット42aの第1無端ベルト46a(後述)との間に第1の糸Yaを挟んで、第1の糸Yaに撚りを付与するように構成されている。また、仮撚装置15は、円板41の第2接触面41b(後述)と第2ベルトユニット42bの第2無端ベルト46b(後述)との間に第2の糸Ybを挟んで、第2の糸Ybに撚りを付与するように構成されている。
【0063】
円板41は、機台長手方向を回転軸方向として回転するように構成された部材である。円板41は、例えば、機台長手方向に延びた共通回転軸43に固定されている。共通回転軸43は、複数の仮撚装置15にそれぞれ設けられた複数の円板41を連結するように構成されている。共通回転軸43は、例えば不図示のモータによって回転駆動される。これにより、円板41が回転駆動される。円板41の機台長手方向における一方側の端面には、第1の糸Yaが接触するための第1接触面41aが形成されている。円板41の機台長手方向における他方側の端面には、第2の糸Ybが接触するための第2接触面41bが形成されている。
【0064】
第1ベルトユニット42aは、円板41の機台長手方向における一方側に配置されている。第1ベルトユニット42aは、第1駆動プーリ44aと、第1従動プーリ45aと、第1無端ベルト46a(本発明の第1ベルト部材)とを有する。第1駆動プーリ44a及び第1従動プーリ45aに第1無端ベルト46aが巻き掛けられている。第1の糸Yaは、第1無端ベルト46aと第1接触面41aとの間に挟まれるように配置される。第1駆動プーリ44aの回転軸及び第1従動プーリ45aの回転軸は、機台長手方向と略直交する方向に延びている。第1駆動プーリ44aの回転軸及び第1従動プーリ45aの回転軸は、互いに略平行である。第1駆動プーリ44aと第1従動プーリ45aは、共通回転軸43と略直交する方向に並べて配置されている。
【0065】
第2ベルトユニット42bは、円板41の機台長手方向における他方側に配置されている。第2ベルトユニット42bは、第2駆動プーリ44bと、第2従動プーリ45bと、第2無端ベルト46b(本発明の第2ベルト部材)とを有する。第2駆動プーリ44b及び第2従動プーリ45bに第2無端ベルト46bが巻き掛けられている。第2の糸Ybは、第2無端ベルト46bと第2接触面41bとの間に挟まれるように配置されている。第2駆動プーリ44bの回転軸及び第2従動プーリ45bの回転軸は、第1駆動プーリ44aの回転軸及び第1従動プーリ45aの回転軸と略平行な方向に延びている。第2駆動プーリ44bと第2従動プーリ45bは、共通回転軸43と略直交する方向に並べて配置されている。
【0066】
第1駆動プーリ44a及び第2駆動プーリ44bは、駆動部47(図7参照)によって回転駆動される。駆動部47は、第1駆動プーリ44a及び第2駆動プーリ44bを互いに逆向きに回転駆動するように構成されている。駆動部47は、不図示の駆動源(例えばモータ)と、駆動源の動力を第1駆動プーリ44aに伝達する不図示の第1動力伝達部材と、駆動源の動力を第2駆動プーリ44bに伝達する不図示の第2動力伝達部材とを有する。
【0067】
機台長手方向から見たとき、第1ベルトユニット42aと第2ベルトユニット42bは互いに実質的に重なるように配置されている。これにより、機台長手方向から見たとき、仮撚装置15において第1の糸Yaの糸道と第2の糸Ybの糸道は実質的に重なっている(図7参照)。
【0068】
以上のように構成された仮撚装置15において、第1無端ベルト46aと第1接触面41aとによって第1の糸Yaに撚りが付与される。第2無端ベルト46bと第2接触面41bとによって第2の糸Ybに撚りが付与される。このようにして、2本の糸Yに同時に撚りが付与される。第1の糸Yaと第2の糸Ybは、互いに逆向きに撚られる。例えば、第1の糸YaにZ撚りが施され、第2の糸YbにS撚りが施される。
【0069】
(冷却装置の詳細構成)
次に、冷却装置14のさらなる詳細について、主に図8図11を参照しつつ説明する。図8は、冷却ユニット31(冷却ユニット31A)を構成する部材を大まかに示した図であり、図3と同じ方向から冷却ユニット31Aを見た図である。つまり、図8は、冷却ユニット31Aを概ね下側から見た図である。図9は、図8のIX-IX線断面図である。図10は、後述する仕切部材53が冷却ユニット31Aから取り外された状態を示す説明図である。図11は、冷却空間Sを見やすくするため、冷却ユニット31Aをさらに模式化した図である。上述したように、冷却ユニット31Aと冷却ユニット31Bは互いに線対称に構成されている(図3参照)。したがって、以下、主に冷却ユニット31Aについて詳細に説明し、冷却ユニット31Bについては簡潔に説明する。
【0070】
図8の紙面垂直方向を高さ方向とする。高さ方向は、図9及び図10の紙面上下方向と平行である。高さ方向は、機台長手方向と直交する方向である。また、本実施形態では、高さ方向は、少なくとも上下方向の成分を有する。本実施形態では、高さ方向における一方側は、概ね上側と言い換えることができる。また、高さ方向における他方側は、概ね下側と言い換えることができる。但し、高さ方向と上下方向との関係は、冷却装置14が配置される向きに応じて変わりうることに留意されたい。また、機台長手方向及び高さ方向の両方と直交する方向を、説明の便宜上、直交方向とする。冷却ユニット31A及び冷却ユニット31Bは、少なくとも直交方向に延びている。直交方向において、第1加熱装置13に近い側を一方側とし、仮撚装置15に近い側を他方側とする。本実施形態では、冷却ユニット31A及び冷却ユニット31Bの各々は、直交方向から少し傾いた方向に延びている。
【0071】
図8図11に示すように、冷却ユニット31Aは、固定壁プレート51(本発明の第2壁部材)と、可動壁プレート52(本発明の第1壁部材)と、仕切部材53とを有する。固定壁プレート51は、本発明の「第1壁部材及び第2壁部材のうち一方」に相当する。可動壁プレート52は、本発明の「第1壁部材及び第2壁部材のうち他方」に相当する。固定壁プレート51、可動壁プレート52及び仕切部材53は、2つの冷却空間S(第1冷却空間Sa及び第2冷却空間Sb)を形成するための長尺の部材である。図8に示すように、固定壁プレート51、可動壁プレート52及び仕切部材53は、高さ方向と直交し且つ機台長手方向と交差する方向において、長く延びている。冷却ユニット31Aにおいては、機台長手方向において一方側から順番に、可動壁プレート52、仕切部材53及び固定壁プレート51が並べて配置されている。つまり、可動壁プレート52が機台長手方向において最も一方側に配置されている。仕切部材53は、機台長手方向において、可動壁プレート52の他方側に配置され、可動壁プレート52と隣接している。固定壁プレート51は、機台長手方向において、仕切部材53の他方側に配置され、仕切部材53と隣接している。冷却ユニット31Bにおいては、これらの部材が、機台長手方向において逆の順番で並べて配置されている(図4の固定壁プレート56、可動壁プレート57及び仕切部材58を参照)。
【0072】
次に、固定壁プレート51のより詳細について説明する。図9及び図10に示すように、固定壁プレート51は、略C字状の断面を有する部材である。すなわち、固定壁プレート51は、図9及び図10に示す断面において、基端部61と、中間部62と、先端部63とを有する。
【0073】
基端部61は、固定壁プレート51の高さ方向における一方側の端部に配置され、機台長手方向に延びた部分である。基端部61は、例えば不図示のねじによって吸気ダクト32に固定されている。より具体的には、吸気ダクト32の高さ方向における他方側の端部に、機台長手方向に延びた壁部33が形成されている。基端部61は、壁部33にねじ止めされている。中間部62は、基端部61の機台長手方向における一方側の端部から、高さ方向における他方側へ延びた部分である。中間部62の機台長手方向における一方側には、高さ方向に延びた壁面64(本発明の第2壁面)が形成されている。壁面64は、冷却ユニット31Aにおいて第2冷却空間Sbを形成するための面である。壁面64には、糸走行方向において互いに離れて配置された複数の接触体65(図10及び図11参照)が設けられている。接触体65は、走行中の糸Y(ここでは第2の糸Yb)を接触体65に積極的に接触させるように構成されている。これにより、第2の糸Ybが、壁面64のうち接触体65が設けられていない部分に意図せず接触することが防止される。また、中間部62には、機台長手方向に貫通する複数の貫通孔66が形成されている(図9及び図10参照)。貫通孔66は、後述する位置決めピン97bが挿通される位置決め孔である。先端部63は、中間部62の高さ方向における他方側の端部から、機台長手方向における他方側へ延びた部分である。
【0074】
次に、可動壁プレート52のより詳細について説明する。図9及び図10に示すように、可動壁プレート52は、固定壁プレート51とは逆向きの、略C字状の断面を有する部材である。すなわち、可動壁プレート52は、図9及び図10に示す断面において、基端部71と、中間部72と、先端部73とを有する。
【0075】
基端部71は、可動壁プレート52の高さ方向における一方側の端部に配置され、機台長手方向に延びた部分である。中間部72は、基端部71の機台長手方向における他方側の端部から、高さ方向における他方側へ延びた部分である。中間部72の機台長手方向における他方側には、高さ方向に延びた壁面74(本発明の第1壁面)が形成されている。壁面74は、冷却ユニット31Aにおいて第1冷却空間Saを形成するための面である。壁面74には、糸走行方向において互いに離れて配置された複数の接触体75(図10及び図11参照)が設けられている。接触体75は、走行中の第1の糸Yaを接触体75に積極的に接触させるように構成されている。これにより、第1の糸Yaが、壁面74のうち接触体75が設けられていない部分に意図せず接触することが防止される。また、中間部72には、機台長手方向に貫通する複数の貫通孔76が形成されている(図9及び図10参照)。貫通孔76は、後述する位置決めピン97aが挿通される位置決め孔である。先端部73は、中間部72の高さ方向における他方側の端部から、機台長手方向における一方側へ延びた部分である。
【0076】
可動壁プレート52は、例えば、複数のばねユニット54(図4図5図9及び図10参照)に取り付けられている。これにより、可動壁プレート52は、固定壁プレート51に対して少なくとも機台長手方向に移動可能になっている。可動壁プレート52は、稼働位置(図4及び図5の実線、並びに図9参照)と、取外位置(図4及び図5の二点鎖線、並びに図10)との間で移動可能である。稼働位置は、仮撚加工機1が稼働しているときの可動壁プレート52の位置である。取外位置は、仕切部材53が冷却ユニット31Aから取り外されるとき(詳細は後述)の可動壁プレート52の位置である。ばねユニット54は、冷却ユニット31Aにおいて、可動壁プレート52の機台長手方向における一方側に設けられている。冷却ユニット31Bにおいては、ばねユニット54と同様の構成を有するばねユニット59(図4参照)が、可動壁プレート57の機台長手方向における他方側に設けられている。
【0077】
ばねユニット54の構成の詳細について、図4図9及び図10を参照しつつ説明する。ばねユニット54は、可動壁プレート52に対して、固定壁プレート51側へ向かう力を加えるための加力ユニットである。ばねユニット54は、例えば、図4に示すように、トーションばね81と、固定部材82と、規制ピン83とを有する。トーションばね81は、コイル部(不図示)と、コイル部の一端に設けられた固定アーム84と、コイル部の他端に設けられた可動アーム85とを有する。コイル部は、固定部材82によって吸気ダクト32に固定されている。固定アーム84は、吸気ダクト32に固定された規制ピン83によって、移動を規制されている。可動アーム85は、例えば可動壁プレート52に取り付けられており、可動壁プレート52を支持している。
【0078】
次に、仕切部材53のより詳細について、図9図11を参照しつつ説明する。仕切部材53は、第1冷却空間Saと第2冷却空間Sbとを機台長手方向において仕切るための部材である。仕切部材53は、機台長手方向において固定壁プレート51と可動壁プレート52との間に配置されている。仕切部材53は、冷却ユニット31Aに着脱可能に構成されている(詳細については後述する)。仕切部材53は、例えば、第1仕切プレート86aと、第2仕切プレート86bと、複数の連結部材87とを有する。第1仕切プレート86aと第2仕切プレート86bは、複数の連結部材87によって連結されている。第1仕切プレート86aと可動壁プレート52とによって第1冷却空間Saが形成される。第2仕切プレート86bと固定壁プレート51とによって第2冷却空間Sbが形成される。第1冷却空間Saと第2冷却空間Sbとは、機台長手方向において並べて配置されている。第1冷却空間Sa及び第2冷却空間Sbのそれぞれが、吸気空間Ssと接続されている。
【0079】
第1仕切プレート86aは、少なくとも直交方向に延びた長尺の板部材である(図11参照)。第1仕切プレート86aは、仕切部材53の機台長手方向における一方側の端に配置されている。第1仕切プレート86aは、例えば不図示のねじによって連結部材87に固定されている。第1仕切プレート86aは、第1冷却空間Saを形成するための第1仕切部88aと、第1仕切部88aの高さ方向における他方側に配置された第1糸挿入ガイド部89aとを有する(図9及び図10参照)。
【0080】
第1仕切部88aには、第1仕切面90aが形成されている。第1仕切面90aは、壁面74の機台長手方向における他方側に配置され、壁面74と機台長手方向において向かい合っている。第1仕切面90aと壁面74とによって、第1冷却空間Saが形成されている。第1冷却空間Saと吸気空間Ssは、吸気ダクト32の壁部33に形成された第1吸気スリット34aを介して接続されている。第1仕切面90aには、糸走行方向において互いに離れて配置された複数の接触体91aが設けられている。複数の接触体91aと上述した複数の接触体75とは、高さ方向から見たときにジグザグに配置されている(図11参照)。接触体91aは、第1の糸Yaを接触体91aに積極的に接触させるように構成されている。これにより、第1の糸Yaが、第1仕切面90aのうち接触体91aが設けられていない部分に意図せず接触することが防止される。また、第1仕切面90aの機台長手方向における一方側には、例えば、第1仕切面90aと壁面74との間隔を所定の間隔に規定するためのスペーサ92aが設けられている(図10参照)。第1仕切部88aには、それぞれ機台長手方向に貫通する複数の貫通孔93a、94aが設けられている(図9及び図10参照)。貫通孔93aは、後述する第1糸ガイド96aが挿通されるためのものである。貫通孔94aは、後述する位置決めピン97aが挿通されるためのものである。
【0081】
第1糸挿入ガイド部89aは、第1仕切部88aの高さ方向における他方側に配置されている。第1糸挿入ガイド部89aは、第1仕切部88aよりも、高さ方向における他方側(つまり、作業空間Sw側)、且つ、機台長手方向における他方側(つまり、第二仕切プレート86b側)へ突出している。
【0082】
第2仕切プレート86bは、少なくとも直交方向に延びた長尺の板部材である(図11参照)。第2仕切プレート86bは、仕切部材53の機台長手方向における他方側の端に配置されている。第2仕切プレート86bは、例えば不図示のねじによって連結部材87に固定されている。第2仕切プレート86bは、第2冷却空間Sbを形成するための第2仕切部88bと、第2仕切部88bの高さ方向における他方側に配置された第2糸挿入ガイド部89bとを有する(図9及び図10参照)。
【0083】
第2仕切部88bには、第2仕切面90bが形成されている。第2仕切面90bは、壁面64の機台長手方向における一方側に配置され、壁面64と機台長手方向において向かい合っている。第2仕切面90bと壁面64とによって、第2冷却空間Sbが形成されている。第2冷却空間Sbと吸気空間Ssは、吸気ダクト32の壁部33に形成された第2吸気スリット34bを介して接続されている。第2仕切面90bには、糸走行方向において互いに離れて配置された複数の接触体91bが設けられている。複数の接触体91bと上述した複数の接触体65とは、高さ方向から見たときにジグザグに配置されている(図11参照)。接触体91bは、第2の糸Ybを接触体91bに積極的に接触させるように構成されている。これにより、第2の糸Ybが、第2仕切面90bのうち接触体91bが設けられていない部分に意図せず接触することが防止される。また、第2仕切面90bの機台長手方向における一方側には、スペーサ92aと同様のスペーサ92bが設けられている(図10参照)。第2仕切部88bには、それぞれ機台長手方向に貫通する複数の貫通孔93b、94bが設けられている(図9及び図10参照)。貫通孔93bは、後述する第2糸ガイド96bが挿通されるためのものである。貫通孔94bは、後述する位置決めピン97bが挿通されるためのものである。
【0084】
第2糸挿入ガイド部89bは、第2仕切部88bの高さ方向における他方側に配置されている。第2糸挿入ガイド部89bは、第2仕切部88bよりも、高さ方向における他方側(つまり、作業空間Sw側)、且つ、機台長手方向における一方側(つまり、第一仕切プレート86a側)へ突出している。
【0085】
複数の連結部材87は、第1仕切プレート86aと第2仕切プレート86bとを連結するように構成されている。複数の連結部材87は、機台長手方向において第1仕切プレート86aと第2仕切プレート86bとの間に配置されている。図9図11に示すように、複数の連結部材87の各々には、第1糸ガイド96aと、第2糸ガイド96bと、位置決めピン97a、97bとが設けられている。
【0086】
第1糸ガイド96aは、第1の糸Yaを糸走行方向における下流側へ案内するように構成されている。第1糸ガイド96aは、例えば、ばね98aを介して連結部材87の機台長手方向における一方側部分に取り付けられている。第1糸ガイド96aは、第1仕切プレート86aの貫通孔93aに挿通されており、機台長手方向における一方側へ突出している。第1糸ガイド96aは、ばね98aの伸縮に応じて機台長手方向に移動可能に構成されている。具体的には、第1糸ガイド96aが可動壁プレート52の壁面74によって押さえられているときに、ばね98aが縮んでいる。第1糸ガイド96aが壁面74から離れているときには、ばね98aは初期状態に戻っている。
【0087】
第2糸ガイド96bは、第2の糸Ybを糸走行方向における下流側へ案内するように構成されている。第2糸ガイド96bは、例えば、ばね98bを介して連結部材87の機台長手方向における他方側部分に取り付けられている。第2糸ガイド96bは、第2仕切プレート86bの貫通孔93bに挿通されており、機台長手方向における他方側へ突出している。第2糸ガイド96bは、第1糸ガイド96aと同様、ばね98bの伸縮に応じて機台長手方向に移動可能に構成されている。
【0088】
位置決めピン97aは、連結部材87と可動壁プレート52との位置合わせを行うためのものである。位置決めピン97aは、例えば連結部材87の機台長手方向における一方側の面に固定されている。位置決めピン97aは、第1仕切プレート86aの貫通孔94aに挿通されており、機台長手方向における一方側へ突出している。位置決めピン97aは、可動壁プレート52の貫通孔76に挿通されることが可能に構成されている。位置決めピン97bは、連結部材87と固定壁プレート51との位置合わせを行うためのものである。位置決めピン97bは、例えば連結部材87の機台長手方向における他方側の面に固定されている。位置決めピン97bは、第2仕切プレート86bの貫通孔94bに挿通されており、機台長手方向における他方側へ突出している。位置決めピン97bは、固定壁プレート51の貫通孔66に挿通されることが可能に構成されている。
【0089】
以上の構成を有する仕切部材53は、可動壁プレート52が上述した稼働位置に位置しているとき、固定壁プレート51及び可動壁プレート52に支持されている。より具体的には、位置決めピン97aが貫通孔76に挿通され、且つ、位置決めピン97bが貫通孔66に挿通されているとき、仕切部材53は、固定壁プレート51及び可動壁プレート52によって両持ち支持されている(図9参照)。言い換えると、仕切部材53は、固定壁プレート51とは異なり、吸気ダクト32に固定されていない。また、仕切部材53は、可動壁プレート52が上述した取外位置に位置しているとき、冷却ユニット31Aから取り外されることが可能である(図10参照)。つまり、仕切部材53は、冷却ユニット31Aに着脱可能である。言い換えると、仕切部材53は、固定壁プレート51及び可動壁プレート52に対して相対移動可能である。
【0090】
以上の構成を有する冷却ユニット31Aにおいて、仮撚加工機1が稼働しているとき、機台長手方向に並べて配置されたスリット状の第1冷却空間Sa及び第2冷却空間Sbが形成されている。本実施形態においては、第1冷却空間Saと第2冷却空間Sbとの機台長手方向における間隔(つまり、第1の糸Yaと第2の糸Ybとの機台長手方向における間隔)は一定である。すなわち、本実施形態において、当該間隔は、冷却ユニット31Aが延びる方向における位置に応じて変わるものではない。また、冷却ユニット31Aの糸走行方向における上流端における当該間隔をWC1(図4参照)とする。より厳密に定義すると、WC1は、第1冷却空間Saの直交方向における一方側(第1加熱装置13側)の端の機台長手方向における中心と、第2冷却空間Sbの直交方向における一方側の端の機台長手方向における中心との、機台長手方向における距離である。本実施形態では、直交方向において、第1冷却空間Saの一方側の端の位置と第2冷却空間Sbの一方側の端の位置とは略一致している。このとき、WC1は、上述した間隔W1(図4参照)と略等しく、又は間隔W1よりも小さいと好ましい。つまり、WC1≦W1であると好ましい。また、冷却ユニット31Aの糸走行方向における下流端における当該間隔をWC2(図5参照)とする。より厳密に定義すると、WC2は、第1冷却空間Saの直交方向における他方側(仮撚装置15側)の端の機台長手方向における中心と、第2冷却空間Sbの直交方向における他方側の端の機台長手方向における中心との、機台長手方向における距離である。本実施形態では、直交方向において、第1冷却空間Saの他方側の端の位置と第2冷却空間Sbの他方側の端の位置とは略一致している。このとき、WC2は、上述した間隔W2(図5参照)と略等しく、又は間隔W2よりも大きいと好ましい。つまり、W2≦WC2であると好ましい。これにより、糸道の屈曲を効果的に抑制できる。本実施形態では、以下の関係が成り立つ。
【0091】
W2<WC2=WC1<W1
【0092】
また、このような構成では、冷却ユニット31Aへの糸掛け作業(後述)の際に、第1の糸Ya及び第2の糸Ybの両方を略直線状に維持しつつ糸掛け作業を行うことができる。つまり、冷却ユニット31Aへの糸掛け作業の際、第1の糸Ya及び第2の糸Ybをほとんど屈曲させる必要がない。したがって、第1の糸Ya及び第2の糸Ybを冷却ユニット31Aに同時に糸掛けすることが容易になる。
【0093】
(糸掛け作業)
本実施形態では、仮撚加工機1への糸掛け作業が行われる場合、仮撚装置15に糸Yが掛けられた後、冷却装置14及び第1加熱装置13に糸Yが掛けられる。冷却装置14及び第1加熱装置13への糸掛けの際、例えば、作業者が不図示のエア噴射装置を用いて糸Yを上方へ移動させる。或いは、人手によらず自動動作可能なエア噴射ロボットが、糸Yを上方へ移動させても良い。その理由は、本実施形態の仮撚加工機1において、第1加熱装置13の糸走行方向における上流側端部の鉛直方向における位置が高く、作業者の手が当該上流側端部に届きにくいためである。上記のような手段によって糸掛けが行われる際、第1の糸Yaは、第1糸挿入ガイド部89aに沿って案内され、第1入口95aを通って第1冷却空間Saに入る。また、第2の糸Ybは、第2糸挿入ガイド部89bに沿って案内され、第2入口95bを通って第2冷却空間Sbに入る。なお、糸掛け作業の際、作業者が冷却ユニット31Aを操作する必要はない(すなわち、可動壁プレート52及び仕切部材53が移動させられる必要はない)。
【0094】
また、上述したようにW2<WC2=WC1<W1であるため、冷却ユニット31Aへの糸掛け作業の際に、第1の糸Ya及び第2の糸Ybの両方を略直線状に維持しつつ糸掛け作業を行うことができる。つまり、冷却ユニット31Aへの糸掛け作業の際、第1の糸Ya及び第2の糸Ybをほとんど屈曲させる必要がない。
【0095】
(メンテナンス)
また、冷却装置14の清掃等のメンテナンスが行われる際には、作業者が、可動壁プレート52を稼働位置から取外位置に移動させ、仕切部材53を冷却ユニット31Aから取り外す等の作業を行う。仕切部材53の清掃が完了した後、作業者は、仕切部材53を冷却ユニット31Aに取り付ける。より具体的には、作業者は、可動壁プレート52を取外位置に位置させた状態で、仕切部材53の位置決めピン97bを貫通孔66に挿通させる。その後、作業者は、可動壁プレート52を稼働位置に移動させ、位置決めピン97aを貫通孔76に挿通させる。これにより、仕切部材53が固定壁プレート51及び可動壁プレート52によって両持ち支持される。
【0096】
以上のように、本実施形態の仮撚加工機1が備える仮撚装置15では、第1の糸Yaが第1無端ベルト46aと第1接触面41aとの間に挟まれ、第2の糸Ybが第2無端ベルト46bと第2接触面41bとの間に挟まれる。これにより、第1の糸Ya及び第2の糸Ybに撚りをしっかり付与できる。また、第1接触面41aと第2接触面41bが同一の円板41に形成されているので、仮撚装置15において第1の糸Yaと第2の糸Ybとの間隔を小さくすることができる。したがって、小さなスペースにおいて多くの糸Yに撚りを付与できる。また、当該仮撚装置15では、第1の糸Yaが仮撚される位置と、第2の糸Ybが仮撚される位置とを近くすることができる。したがって、第1の糸Yaの糸道と第2の糸Ybの糸道とが大きく異なってしまうこと(また、その影響により、第1の糸Yaと第2の糸Ybとの間で糸品質がばらついてしまうこと)を抑制できる。
【0097】
また、本実施形態の仮撚加工機1が備える冷却装置14では、第1の糸Ya及び第2の糸Ybを冷却風によってしっかり冷却できる。また、第1冷却空間Saと第2冷却空間Sbが同一の冷却ユニット31A内に形成されているので、冷却装置14において第1の糸Yaと第2の糸Ybとの間隔を小さくすることができる。したがって、小さなスペースにおいて多くの糸Yを冷却できる。さらに、上述したように第1の糸Yaと第2の糸Ybとの間隔を小さくすることができるので、第1の糸Yaの糸道と第2の糸Ybの糸道とが大きく異なってしまうこと(また、その影響による、上述した糸品質のばらつき)を抑制できる。
【0098】
以上のようにして、太い糸Yを仮撚加工する場合でも、生産効率及び均質性が損なわれることを抑制しつつ、良好な糸品質を確保できる。
【0099】
また、第1冷却空間Sa及び第2冷却空間Sbは、機台長手方向に並べて配置されている。したがって、冷却装置14から仮撚装置15に第1の糸Ya及び第2の糸Ybが送られる際に、第1の糸Yaと第2の糸Ybとが機台長手方向に並べられた状態を維持できる。これにより、例えば、第1冷却空間Saと第2冷却空間Sbとが機台長手方向と異なる方向に並べて配置されている場合と比べて、第1の糸Yaの糸道と第2の糸Ybの糸道が互いに異なってしまうことをさらに抑制できる。したがって、第1の糸Yaと第2の糸Ybとの間での糸品質のばらつきを効果的に低減できる。
【0100】
また、WC2がWC1と等しい(すなわち、WC2が小さい)。このため、第1の糸Ya及び第2の糸Ybを冷却装置14から仮撚装置15へ送る際に、第1の糸Ya及び第2の糸Ybの屈曲を抑制できる。したがって、糸品質の低下を抑制できる。
【0101】
また、本実施形態では、W2<WC2=WC1<W1である。このため、冷却ユニット31Aへの糸掛け作業の際、第1の糸Ya及び第2の糸Ybの両方を略直線状に維持しつつ糸掛け作業を行うことができる。つまり、冷却ユニット31Aへの糸掛け作業の際、第1の糸Ya及び第2の糸Ybをほとんど屈曲させる必要がない。したがって、第1の糸Ya及び第2の糸Ybを冷却ユニット31Aに同時に糸掛けすることが容易になる。
【0102】
また、第1冷却空間Saと第2冷却空間Sbとが仕切部材53によって仕切られている。したがって、仕切部材53が設けられておらず第1冷却空間Saと第2冷却空間Sbが仕切られていない構成と比べて、第1の糸Yaと第2の糸Ybとが何らかの原因により互いに絡まってしまうことを確実に回避できる。
【0103】
また、第1冷却空間Sa及び第2冷却空間Sbのそれぞれが、機台長手方向に延びた吸気空間Ssと接続されている(すなわち、並列に接続されている)。したがって、単純な構造によって、第1冷却空間Sa及び第2冷却空間Sbに冷却風を略均一に供給できる。
【0104】
また、可動壁プレート52の壁面74と第1仕切部88aの第1仕切面90aとによって第1冷却空間Saが形成され、固定壁プレート51の壁面64と第2仕切部88bの第2仕切面90bとによって第2冷却空間Sbが形成されている。このように、単純な構造により第1冷却空間Sa及び第2冷却空間Sbを形成できる。
【0105】
また、第1仕切面90aは、機台長手方向において壁面74と向かい合うように配置され、第2仕切面90bは、機台長手方向において壁面64と向かい合うように配置されている。これにより、第1入口95a及び第2入口95bを狭くすることができる。したがって、第1の糸Yaの第1冷却空間Saからの脱落を抑制でき、第2の糸Ybの第2冷却空間Sbからの脱落を抑制できる。
【0106】
また、冷却ユニット31Aは、第1糸ガイド96a及び第2糸ガイド96bを有する。これにより、第1の糸Yaは第1糸ガイド96aによって糸走行方向下流側へ案内され、第2の糸Ybは第2糸ガイド96bによって糸走行方向下流側へ案内される。つまり、冷却ユニット31Aは、糸Yを仕切面及び壁面に積極的に接触させるように構成されているわけではない。したがって、糸Yが仮撚装置15によって撚られたときに、糸Yが壁面又は仕切面に沿って転がることを抑制できる。したがって、糸Yが冷却空間Sから脱落してしまうことを抑制できる。
【0107】
また、固定壁プレート51及び可動壁プレート52によって仕切部材53が支持されている。したがって、仕切部材53の吸気ダクト32への取り付けができない場合でも、仕切部材53を正常に配置できる。また、より具体的には、仕切部材53が両持ち支持されている。したがって、仕切部材53を安定的に支持できる。
【0108】
また、仕切部材53は、固定壁プレート51及び可動壁プレート52に対して着脱可能(すなわち、相対移動可能)である。これにより、固定壁プレート51、可動壁プレート52及び仕切部材53を清掃するための広いスペースを確保できる。したがって、清掃等の作業効率を向上させることができる。また、仕切部材53を冷却ユニット31Aから完全に切り離すことができるので、清掃等の作業効率を大きく向上させることができる。
【0109】
また、固定壁プレート51は吸気ダクト32に対して位置が固定されており、可動壁プレート52及び仕切部材53が、固定壁プレート51に対して移動可能である。これにより、直線Lを対称軸として、冷却ユニット31Aと線対称に構成された冷却ユニット31Bを設けることができる。このような冷却ユニット31Bが設けられていても、互いに隣接配置された2つの部材(固定壁プレート51、56)は移動しない。したがって、清掃時に部材が移動させられる際に、部材同士が干渉することを回避できる。
【0110】
また、糸掛け作業の際、第1の糸Yaを第1糸挿入ガイド部89aに沿って移動させ、第2の糸Ybを第2糸挿入ガイド部89bに沿って移動させることができる。これにより、糸掛けの成功率を高めることができる。
【0111】
また、本実施形態のように、第1加熱装置13の糸走行方向における上流側端部が鉛直方向において高い位置にある場合、糸Yを上方へ移動させるための装置(不図示)を用いて、冷却装置14及び第1加熱装置13に糸が掛けられる。このような糸掛け作業が行われる際、第1糸挿入ガイド部89a及び第2糸挿入ガイド部89bによって糸掛けの成功率を高めることは、特に効果的である。
【0112】
次に、前記実施形態に変更を加えた変形例について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0113】
(1)前記実施形態において、仕切部材53は、固定壁プレート51及び可動壁プレート52に両持ち支持されているものとした。しかしながら、これには限られない。仕切部材53は、固定壁プレート51及び可動壁プレート52のうち一方によって片持ち支持されるように構成されていても良い。
【0114】
(2)前記までの実施形態において、仕切部材53は、固定壁プレート51及び可動壁プレート52のうち少なくとも一方に支持されているものとした。しかしながら、これには限られない。仕切部材53は、例えば、吸気ダクト32に直接取り付けられていても良い。
【0115】
(3)前記までの実施形態において、仕切部材53は、冷却ユニット31Aに着脱可能であるものとした。しかしながら、これには限られない。仕切部材53は、例えば、固定壁プレート51及び可動壁プレート52のうち少なくとも一方に支持された状態で、機台長手方向に移動可能に構成されていても良い。
【0116】
(4)前記までの実施形態において、可動壁プレート52及び仕切部材53が、固定壁プレート51及び吸気ダクト32に対して移動可能であるものとした。しかしながら、これには限られない。例えば、仕切部材53が吸気ダクト32に固定されていても良い。この場合、固定壁プレート51の代わりに、吸気ダクト32及び仕切部材53に対して移動可能な壁部材(不図示)が設けられていても良い。このように構成された仮撚加工機(不図示)も、本発明の「仕切部材が第1壁部材及び第2壁部材に対して相対移動可能に構成された仮撚加工機」に相当する。
【0117】
(5)前記までの実施形態において、仕切部材53が、本発明の第1壁部材及び第2壁部材に対して相対移動可能に構成されているものとした。しかしながら、これには限られない。これらの部材のいずれもが、吸気ダクト32に対して位置が固定されていても良い。
【0118】
(6)前記までの実施形態において、冷却装置14は、第1糸ガイド96a及び第2糸ガイド96bを有する非接触式の装置であるものとした。しかしながら、これには限られない。冷却装置14は、例えば、特開平11-107084に開示された冷却装置のように、糸Yを壁面(不図示)に積極的に接触させるように構成されていても良い。なお、このような構成においては、糸Yの冷却装置14からの脱落を防止するための何らかの工夫をすることが好ましい。
【0119】
(7)前記までの実施形態において、第1仕切面90aは、機台長手方向において壁面74と向かい合うように配置され、第2仕切面90bは、機台長手方向において壁面64と向かい合うように配置されているものとした。つまり、第1仕切面90aと壁面74とが略平行であり、第2仕切面90bと壁面64とが略平行であるものとした。しかしながら、これには限られない。例えば、第1仕切面90aと壁面74は、高さ方向における他方側へ向かうほど機台長手方向における距離が長くなるように配置されていても良い。第2仕切面90bと壁面64についても同様である。
【0120】
(8)前記までの実施形態において、冷却ユニット31Aが固定壁プレート51と可動壁プレート52と仕切部材53とを有するものとした。しかしながら、これには限られない。例えば、固定壁プレート51、可動壁プレート52及び仕切部材53の代わりに、これらの部材と同様の機能を有する1つの部材が、吸気ダクト32に取り付けられていても良い。
【0121】
(9)前記までの実施形態において、第1冷却空間Sa及び第2冷却空間Sbが仕切部材53によって仕切られているものとしたが、これには限られない。例えば、第1冷却空間Saと第2冷却空間Sbとの間に、高さ方向に延びた複数のピン(不図示)が糸走行方向に並べて配置されていても良い。これらのピンは、糸走行方向において互いに離れて配置されていても良い。これによって、第1の糸Yaと第2の糸Ybの機台長手方向における移動を規制し、第1の糸Yaと第2の糸Ybとが絡まり合うことを回避しても良い。
【0122】
(10)前記までの実施形態において、第1冷却空間Sa及び第2冷却空間Sbのそれぞれが、機台長手方向に延びた吸気空間Ssと接続されている(すなわち、並列に接続されている)ものとした。しかしながら、これには限られない。例えば、冷却風が吸気空間Ssに吸い込まれる吸気方向において、第1冷却空間Saと第2冷却空間Sbとが直列に接続されていても良い。つまり、第1冷却空間Sa及び第2冷却空間Sbの一方が、吸気方向において他方の上流側に配置されていても良い。
【0123】
(11)前記までの実施形態において、第1冷却空間Saと第2冷却空間Sbとの機台長手方向における間隔(つまり、第1の糸Yaと第2の糸Ybとの機台長手方向における間隔)は一定であるものとした。つまり、冷却ユニット31Aにおいて、第1の糸Yaと第2の糸Ybとが略平行である(さらに言い換えると、WC1=WC2である)ものとした。しかしながら、これには限られない。冷却ユニット31Aにおいて、第1の糸Yaと第2の糸Ybは、略平行でなくても良い。例えば、冷却ユニット31Aの糸走行方向下流端における当該間隔が、糸走行方向上流端における当該間隔よりも狭くても良い(WC2<WC1)。つまり、WC2≦WC1であっても良い。或いは、WC1<WC2であっても良い。
【0124】
また、直交方向において、第1冷却空間Saの一方側の端の位置と、第2冷却空間Sbの一方側の端の位置は、略一致していなくても良い。直交方向において、第1冷却空間Saの他方側の端の位置と、第2冷却空間Sbの他方側の端の位置は、略一致していなくても良い。この場合でも、WC1及びWC2の厳密な定義は、上述したものと同様である。
【0125】
(12)W1、W2、WC1及びWC2の関係は、W2<WC2=WC1<W1以外であっても良い。例えば、上述したように、第1の糸Ya及び第2の糸Ybを同時に冷却ユニット31Aに糸掛けしやすくするためには、糸ガイドG1、G2及び冷却ユニット31Aが、以下のいずれかの関係を満たすように構成されていても良い。すなわち、W2≦WC2≦WC1≦W1であっても良い。或いは、W1≦WC1≦WC2≦W2であっても良い。この場合、前記までの実施形態と異なり、W2がW1よりも大きくても良い。
【0126】
或いは、第1の糸Ya及び第2の糸Ybを同時に冷却ユニット31Aに糸掛けするかどうかを考慮しない場合には、W1、W2、WC1及びWC2の関係は、上述したものに限られない。
【0127】
(13)前記までの実施形態において、第1冷却空間Sa及び第2冷却空間Sbが機台長手方向に並べて配置されているものとしたが、これには限られない。例えば特許第4462751号公報に開示された冷却装置(不図示)のように、第1冷却空間(不図示)と第2冷却空間(不図示)とが高さ方向に並べて配置されていても良い。
【0128】
(14)前記までの実施形態において、複数の冷却ユニット31の各々が2本の糸Yを冷却可能であるものとした。しかしながら、これには限られない。以下、図12を参照しつつ説明する。例えば冷却ユニット31の代わりに、図12に示すように、機台長手方向に並んで走行する3本の糸Yを冷却するように構成された冷却ユニット31M1が設けられていても良い。冷却ユニット31M1は、例えば、上述した固定壁プレート51と、上述した仕切部材53と、仕切部材53Aと、上述した可動壁プレート52とを有する。仕切部材53Aは、機台長手方向において、仕切部材53を隔てて固定壁プレート51の反対側に配置されている。また、この変形例において、可動壁プレート52は、機台長手方向において、仕切部材53及び53Aを隔てて固定壁プレート51の反対側に配置されている。
【0129】
仕切部材53Aは、少なくとも直交方向に延びた部材である。仕切部材53Aは、図9と同じ方向から見たときの断面(図12参照)が概ねU字状である。仕切部材53Aは、仕切部88cと、底部99と、仕切部88dと、糸挿入ガイド部89cと、糸挿入ガイド部89dとを有する。仕切部88cは、高さ方向に延びた部分である。仕切部88cは、機台長手方向において第1仕切面90aと向かい合うように配置された仕切面90cを有する。第1仕切面90aと仕切面90cとの間に、上述した第1冷却空間Saが形成されている。仕切部88cには、貫通孔94a、94bと略同じ形状及び大きさの貫通孔94cが形成されている。底部99は、仕切部88cと接続され、壁部33と接触する部分である。仕切部88dは、底部99と接続され且つ高さ方向に延びた部分である。仕切部88dは、機台長手方向において可動壁プレート52の壁面74と向かい合うように配置された仕切面90dを有する。壁面74と仕切面90dとの間に、第1の糸Ya及び第2の糸Ybとは別の糸Ydを冷却するための冷却空間Sdが形成されている。仕切部88dには、貫通孔94cと略同じ形状及び大きさの貫通孔94dが形成されている。糸挿入ガイド部89cは、仕切部88cと接続された部分であり、高さ方向において底部99とは反対側へ延びた部分である。糸挿入ガイド部89dは、仕切部88dと接続された部分であり、高さ方向において底部99とは反対側へ延びた部分である。
【0130】
また、冷却ユニット31M1において、例えば、吸気空間Ssと冷却空間Sdとを接続する吸気スリット34dが、壁部33に形成されている。連結部材87と同じ構造を有する連結部材87Aが、可動壁プレート52に固定されている。壁面74と仕切面90dとの間隔を規定するスペーサ92dが、機台長手方向において壁面74と仕切面90dとの間に設けられている。第2糸ガイド96bと同じ構造を有する糸ガイド96dが、連結部材87Aに取り付けられている。位置決めピン97bと同じ構造を有する位置決めピン97dが、連結部材87Aに取り付けられている。
【0131】
(15)さらに別の変形例として、図13に示すように、機台長手方向に並んで走行する4本の糸Yを冷却するように構成された冷却ユニット31M2が設けられていても良い。詳細な説明は省略するが、冷却ユニット31M2においては、例えば、機台長手方向において仕切部材53Aを隔てて2つの仕切部材53が設けられていても良い。これにより、冷却ユニット31M2において、第1の糸Ya、第2の糸Yb及び糸Ydとは別の糸Yeを冷却するための冷却空間Seを形成できる。この変形例においては、吸気空間Ssと冷却空間Seとを接続する吸気スリット34eが、壁部33に形成されている。さらに、この変形例及び上述した(13)の変形例を応用して、各冷却ユニット(不図示)が5本以上の糸Yを同時に冷却可能に構成されていても良い。
【符号の説明】
【0132】
1 仮撚加工機
13 第1加熱装置(加熱装置)
14 冷却装置
15 仮撚装置
31 冷却ユニット
31A 冷却ユニット
32 吸気ダクト
41 円板
41a 第1接触面
41b 第2接触面
42a 第1ベルトユニット
42b 第2ベルトユニット
46a 第1無端ベルト(第1ベルト部材)
46b 第2無端ベルト(第2ベルト部材)
51 固定壁プレート(第2壁部材)
52 可動壁プレート(第1壁部材)
53 仕切部材
64 壁面(第1壁面)
74 壁面(第2壁面)
89a 第1糸挿入ガイド部
89b 第2糸挿入ガイド部
90a 第1仕切面
90b 第2仕切面
96a 第1糸ガイド
96b 第2糸ガイド
Sa 第1冷却空間
Sb 第2冷却空間
Ss 吸気空間
W1 間隔
W2 間隔
WC1 間隔
WC2 間隔
Ya 第1の糸
Yb 第2の糸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13