(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189746
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】核医学診断装置、方法、回路及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01T 1/161 20060101AFI20221215BHJP
G01T 1/20 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
G01T1/161 C
G01T1/161 A
G01T1/20 G
G01T1/20 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083920
(22)【出願日】2022-05-23
(31)【優先権主張番号】17/345,823
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VERILOG
2.Linux
3.SOLARIS
4.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ チャン
(72)【発明者】
【氏名】ケント・シー・バー
(72)【発明者】
【氏名】ペン ペン
(72)【発明者】
【氏名】シャオリ リ
【テーマコード(参考)】
2G188
4C188
【Fターム(参考)】
2G188AA02
2G188BB04
2G188BB07
2G188CC12
2G188CC23
2G188DD02
2G188DD05
2G188EE07
2G188EE08
2G188EE16
2G188EE22
2G188EE37
2G188EE39
2G188FF28
4C188EE02
4C188FF07
4C188GG19
4C188JJ02
4C188KK01
4C188KK15
4C188KK22
4C188KK24
4C188KK33
4C188KK35
(57)【要約】
【課題】検出器アレイに生じる電荷分布に基づいて、時間分解能及び空間分解能を向上させるための有用な情報を提供すること。
【解決手段】実施形態に係る核医学診断装置は、複数の検出素子が配列された検出器アレイと、前記検出器アレイに接続された回路とを備える。前記回路は、第1、第2、第3及び第4の加算回路を含む。第1の加算回路は、各検出素子から出力される信号に基づいて、信号の総エネルギーに対応する第1の出力を生成する。第2の加算回路は、各検出素子から出力される信号に基づいて、検出器アレイの第1の次元における信号の位置に対応する第2の出力を生成する。第3の加算回路は、各検出素子から出力される信号に基づいて、検出器アレイの第2の次元における信号の位置に対応する第3の出力を生成する。第4の加算回路は、各検出素子から出力される信号に基づいて、信号の電荷分布の半径に対応する第4の出力を生成する。
【選択図】
図6A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガンマ線を光に変換する結晶と、
前記光を検出して当該光に基づく信号を出力する複数の検出素子が配列された検出器アレイと、
前記検出器アレイに接続された回路と
を備え、
前記回路は、
前記複数の検出素子それぞれから出力される信号を第1の重みで重み付けして加算することで、前記信号の総エネルギーに対応する第1の出力を生成する第1の加算回路と、
前記複数の検出素子それぞれから出力される信号を第2の重みで重み付けして加算することで、前記検出器アレイの第1の次元における前記信号の位置に対応する第2の出力を生成する第2の加算回路と、
前記複数の検出素子それぞれから出力される信号を第3の重みで重み付けして加算することで、前記検出器アレイの第2の次元における前記信号の位置に対応する第3の出力を生成する第3の加算回路と、
前記複数の検出素子それぞれから出力される信号を第4の重みで重み付けして加算することで、前記信号の電荷分布の半径に対応する第4の出力を生成する第4の加算回路と
を含む、核医学診断装置。
【請求項2】
前記第1の加算回路は、前記第1の重みとして、前記複数の検出素子それぞれから出力される信号ごとに等しい重みを用いて、前記第1の出力を生成し、
前記第2の加算回路は、前記第2の重みとして、前記複数の検出素子それぞれから出力される信号ごとに前記検出器アレイの前記第1の次元における位置に対応する重みを用いて、前記第2の出力を生成し、
前記第3の加算回路は、前記第3の重みとして、前記複数の検出素子それぞれから出力される信号ごとに前記検出器アレイの前記第2の次元における位置に対応する重みを用いて、前記第3の出力を生成し、
前記第4の加算回路は、前記第4の重みとして、前記複数の検出素子それぞれから出力される信号ごとに前記検出器アレイの前記第1の次元における位置及び前記第2の次元における位置の分散に対応する重みを用いて、前記第4の出力を生成する、
請求項1に記載の核医学診断装置。
【請求項3】
前記第1の出力、前記第2の出力、前記第3の出力及び前記第4の出力に基づいて、前記電荷分布の合計された分散を導出する処理回路をさらに備える、
請求項1又は2に記載の核医学診断装置。
【請求項4】
前記処理回路は、前記電荷分布の合計された分散に基づいて、前記ガンマ線の相互作用の深さをさらに導出する、
請求項3に記載の核医学診断装置。
【請求項5】
前記検出器アレイは、前記複数の検出素子が前記第1の次元及び前記第2の次元にそれぞれ対応するx及びyの2次元に配列された検出素子のマトリクスで構成されており、
位置(x,y)にある検出素子から出力される信号の値をExyとした場合に、
前記第1の加算回路は、前記第1の出力として、次の式を用いて信号Eを生成し、
E=ΣExy
前記第2の加算回路は、前記第2の出力として、次の式を用いて信号Xを生成し、
X=ΣxExy
前記第3の加算回路は、前記第3の出力として、次の式を用いて信号Yを生成し、
Y=ΣyExy
前記第4の加算回路は、前記第4の出力として、次の式を用いて信号Rを生成する、
R=Σ(x2+y2)Exy
請求項2に記載の核医学診断装置。
【請求項6】
前記信号E、前記信号X、前記信号Y及び前記信号Rに基づいて、次の式を用いて前記電荷分布の合計された分散σxを導出する処理回路をさらに備える、
σx
2=R/E-(X2+Y2)/E2
請求項5に記載の核医学診断装置。
【請求項7】
前記回路は、次の式を用いて歪度の信号Sを生成する第5の加算回路をさらに含む、
S=Σ(x3+y3)Exy
請求項5又は6に記載の核医学診断装置。
【請求項8】
前記第4の加算回路によって用いられる前記第4の重みは、前記検出器アレイの次元に対して非線形である、
請求項1又は2に記載の核医学診断装置。
【請求項9】
前記回路は、前記複数の検出素子のうちの一つの検出素子の出力を受け取るようにそれぞれ構成された複数のバッファ回路をさらに含み、
前記第1の加算回路、前記第2の加算回路、前記第3の加算回路及び前記第4の加算回路は、それぞれ、
前記複数のバッファ回路のうちの一つの出力を受け取るようにそれぞれ構成された複数の重み付け回路と、
前記複数の重み付け回路それぞれからの出力を受け取るように構成された加算アンプと
を含む、請求項1又は2に記載の核医学診断装置。
【請求項10】
前記加算アンプは、前記複数の重み付け回路と一体化されるように構成されている、
請求項9に記載の核医学診断装置。
【請求項11】
前記回路は、
前記複数の検出素子のうちの一つの検出素子の出力を受け取るようにそれぞれ構成された複数のバッファ回路と、
前記複数のバッファ回路のうちの一つの出力を受け取るようにそれぞれ構成された複数の第1の重み付け回路と、
前記複数の第1の重み付け回路それぞれからの出力を受け取るようにそれぞれ構成された複数の第1の加算アンプと
をさらに含み、
前記第1の加算回路、前記第2の加算回路、前記第3の加算回路及び前記第4の加算回路は、それぞれ、
前記複数の第1の加算アンプのうちの一つの出力を受け取るようにそれぞれ構成された複数の第2の重み付け回路と、
前記複数の第2の重み付け回路それぞれからの出力を受け取るように構成された第2の加算アンプと
を含む、請求項1又は2に記載の核医学診断装置。
【請求項12】
ガンマ線を光に変換する結晶と、
前記光を検出して当該光に基づく信号を出力する複数の検出器が配列された検出器アレイと、
前記検出器アレイに接続された回路と
を備え、
前記回路は、前記複数の検出器それぞれから出力される信号を所定の重みで重み付けして加算することで、前記検出器アレイの第1の次元における前記信号の位置に対応する出力、前記検出器アレイの第2の次元における前記信号の位置に対応する出力、及び、前記信号の電荷分布の半径に対応する出力のうちの少なくとも1つを生成する加算回路を含む、核医学診断装置。
【請求項13】
ガンマ線を光に変換する結晶と、前記光を検出して当該光に基づく信号を出力する複数の検出素子が配列された検出器アレイとを備えた核医学診断装置に適用される方法であって、
前記複数の検出素子それぞれから出力される信号を第1の重みで重み付けして加算することで、前記信号の総エネルギーに対応する第1の出力を生成し、
前記複数の検出素子それぞれから出力される信号を第2の重みで重み付けして加算することで、前記検出器アレイの第1の次元における前記信号の位置に対応する第2の出力を生成し、
前記複数の検出素子それぞれから出力される信号を第3の重みで重み付けして加算することで、前記検出器アレイの第2の次元における前記信号の位置に対応する第3の出力を生成し、
前記複数の検出素子それぞれから出力される信号を第4の重みで重み付けして加算することで、前記信号の電荷分布の半径に対応する第4の出力を生成する
ことを含む、方法。
【請求項14】
ガンマ線を光に変換する結晶と、前記光を検出して当該光に基づく信号を出力する複数の検出素子が配列された検出器アレイとを備えた核医学診断装置に適用される方法であって、
前記複数の検出素子それぞれから出力される信号を所定の重みで重み付けして加算することで、前記検出器アレイの第1の次元における前記信号の位置に対応する出力、前記検出器アレイの第2の次元における前記信号の位置に対応する出力、及び、前記信号の電荷分布の半径に対応する出力のうちの少なくとも1つを生成することを含む、方法。
【請求項15】
ガンマ線を光に変換する結晶と、前記光を検出して当該光に基づく信号を出力する複数の検出素子が配列された検出器アレイとを備えた核医学診断装置に適用される回路であって、
前記複数の検出素子それぞれから出力される信号を第1の重みで重み付けして加算することで、前記信号の総エネルギーに対応する第1の出力を生成する第1の加算回路と、
前記複数の検出素子それぞれから出力される信号を第2の重みで重み付けして加算することで、前記検出器アレイの第1の次元における前記信号の位置に対応する第2の出力を生成する第2の加算回路と、
前記複数の検出素子それぞれから出力される信号を第3の重みで重み付けして加算することで、前記検出器アレイの第2の次元における前記信号の位置に対応する第3の出力を生成する第3の加算回路と、
前記複数の検出素子それぞれから出力される信号を第4の重みで重み付けして加算することで、前記信号の電荷分布の半径に対応する第4の出力を生成する第4の加算回路と
を含む、回路。
【請求項16】
ガンマ線を光に変換する結晶と、前記光を検出して当該光に基づく信号を出力する複数の検出素子が配列された検出器アレイとを備えた核医学診断装置に適用されるプログラムであって、
前記複数の検出素子それぞれから出力される信号を第1の重みで重み付けして加算することで、前記信号の総エネルギーに対応する第1の出力を生成する手順と、
前記複数の検出素子それぞれから出力される信号を第2の重みで重み付けして加算することで、前記検出器アレイの第1の次元における前記信号の位置に対応する第2の出力を生成する手順と、
前記複数の検出素子それぞれから出力される信号を第3の重みで重み付けして加算することで、前記検出器アレイの第2の次元における前記信号の位置に対応する第3の出力を生成する手順と、
前記複数の検出素子それぞれから出力される信号を第4の重みで重み付けして加算することで、前記信号の電荷分布の半径に対応する第4の出力を生成する手順と
をコンピュータに実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、核医学診断装置、方法、回路及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のポジトロン放射断層撮影(Positron Emission Tomography:PET)検出器は、入射したガンマ線の位置を判定するために結晶アレイを用いる。結晶アレイとともに複数のシリコン光電子増倍管(Silicon Photomultiplier:SiPM)を用いることによって、ピクセル化された複数の検出素子で形成された検出器アレイが得られる。検出器アレイのSiPMからの信号が個別にデジタル化又は重みを付けて合計されて、結果として、信号の総エネルギー及び検出されたガンマ線の2次元(Two Dimensional:2D)座標に対応する信号が得られる。
【0003】
検出器アレイでは、結晶及びSiPMの間における散乱及び光の共有によって、入射したガンマ線が複数のSiPMによって検出される場合があり、その結果、検出器アレイにわたって電荷分布が生じることがある。この電荷分布は、時間分解能及び空間分解能を向上させるための有用な情報を提供することができる。
図1に、散乱の概略図を示す。矢印20によって示されるように、ある結晶10aで511keVの光子が受け取られ、別の結晶10bに散乱される。
図1では、SiPMアレイ30によって受け取られた、結晶アレイ10からの電荷が、曲線40及び曲線41によって概略的に示されている。
【0004】
また、検出器アレイでは、モノリシック結晶を用いることも可能である。その場合に、電荷分布は、ガンマ線の相互作用の深さ(Depth Of Interaction:DOI)を導出するために用いることができる。
図2は、モノリシック結晶における散乱及び電荷の共有情報を示す。異なる深さでの511keVの光子がモノリシック結晶50によって吸着され、SiPM70によって検出される。
図2では、2つの光子の電荷分布が、曲線80及び曲線81として示されている。DOIは、矢印60として示されている。
【0005】
このような検出器アレイにおいて、より高い空間分解能を得るためには、結晶を小さくする必要があり、その結果、SiPMの数が多くなる。読み出すSiPMが著しく多い場合、アンガーロジックを用いて総出力数を減少させることができる。しかしながら、アンガーロジックを用いた場合、電荷分布の損失が生じる。
【0006】
例えば、従来の重み付け加算回路が特許文献1に記載されている。当該特許文献1の
図2には、読み出し回路が示されている。このシステムでは、結晶アレイからの利用可能な情報を限定する位置情報に対して2つの合計チャネルしかない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、検出器アレイに生じる電荷分布に基づいて、時間分解能及び空間分解能を向上させるための有用な情報を提供することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置付けることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態に係る核医学診断装置は、ガンマ線を光に変換する結晶と、前記光を検出して当該光に基づく信号を出力する複数の検出素子が配列された検出器アレイと、前記検出器アレイに接続された回路とを備える。前記回路は、第1の加算回路と、第2の加算回路と、第3の加算回路と、第4の加算回路とを含む。前記第1の加算回路は、前記複数の検出素子それぞれから出力される信号を第1の重みで重み付けして加算することで、前記信号の総エネルギーに対応する第1の出力を生成する。前記第2の加算回路は、前記複数の検出素子それぞれから出力される信号を第2の重みで重み付けして加算することで、前記検出器アレイの第1の次元における前記信号の位置に対応する第2の出力を生成する。前記第3の加算回路は、前記複数の検出素子それぞれから出力される信号を第3の重みで重み付けして加算することで、前記検出器アレイの第2の次元における前記信号の位置に対応する第3の出力を生成する。前記第4の加算回路は、前記複数の検出素子それぞれから出力される信号を第4の重みで重み付けして加算することで、前記信号の電荷分布の半径に対応する第4の出力を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本願は、添付の図面を伴う非限定的な方法で示す説明に照らして、より理解されるであろう。
【
図1】
図1は、検出器アレイにおける散乱を示す図である。
【
図2】
図2は、モノリシック結晶における散乱を示す図である。
【
図3】
図3は、本願に係るPET装置を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、本願に係るPET装置及び関連ハードウェアを示す概略図である。
【
図5A】
図5Aは、本願に係る結晶検出器及び光検出器アレイの配置を示す図である。
【
図5B】
図5Bは、本願に係る結晶検出器及び光検出器アレイの配置を示す図である。
【
図5C】
図5Cは、本願に係る結晶検出器及び光検出器アレイの配置を示す図である。
【
図5D】
図5Dは、本願に係る結晶検出器及び光検出器アレイの配置を示す図である。
【
図6A】
図6Aは、本願の第1の実施形態に係る加算回路を示す図である。
【
図6B】
図6Bは、本願の第1の実施形態の変形例に係る加算回路を示す図である。
【
図7】
図7は、本願に係る重み付け回路の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、本願の変形例に係る加算アンプを示す図である。
【
図9】
図9は、本願に係る光検出器アレイで用いられる重み付けの一例を示す図である。
【
図10A】
図10Aは、本願に係る光検出器アレイ内の読み出しチャネルによる重みを示す図である。
【
図10B】
図10Bは、本願に係る光検出器アレイ内の読み出しチャネルによる重みを示す図である。
【
図10C】
図10Cは、本願に係る光検出器アレイ内の読み出しチャネルによる重みを示す図である。
【
図10D】
図10Dは、本願に係る光検出器アレイ内の読み出しチャネルによる重みを示す図である。
【
図11】
図11は、本願の第2の実施形態に係る加算回路を示す図である。
【
図12】
図12は、本願に係る加算回路を用いた位置復号を示す図である。
【
図13】
図13は、本願に係る重み調整及び信号補正の方法を示すフローチャートである。
【
図15】
図15は、本願の変形例に係る補正マトリクスを較正する方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、核医学診断装置、方法、回路及びプログラムの実施形態について詳細に説明する。
【0012】
一実施形態は、結晶によって生成された信号を検出するように配置された光検出器アレイから信号を受信する回路であって、重み付け回路を有する複数の加算回路を含む回路に関するものであり、当該加算回路は、信号の総エネルギー、光検出器アレイの第1の次元における信号の位置、光検出器アレイの第2の次元における信号の位置、及び信号の電荷分布の半径に対応する出力を生成するように構成されている。
【0013】
一実施形態は、ガンマ線を受け取るように構成された結晶、及び結晶によって生成された信号を検出するように配置された光検出器アレイを有するPET装置に関するものであり、光検出器アレイに接続された回路が、重み付け回路を有する複数の加算回路を含み、当該加算回路は、信号の総エネルギー、光検出器アレイの第1の次元における信号の位置、光検出器アレイの第2の次元における信号の位置、及び、信号の電荷分布の半径に対応する出力を生成するように構成されている。
【0014】
一実施形態は、結晶内のガンマ線の相互作用から情報を抽出する方法に関するものであり、当該方法は、相互作用から出力信号を生成し、出力信号の総エネルギーに対応する第1の信号、結晶の第1の次元における出力信号の位置に従って重み付けされた出力信号のエネルギーに対応する第2の信号、結晶の第2の次元における出力信号の位置に従って重み付けされた出力信号のエネルギーに対応する第3の信号、及び、第1及び第2の方向における出力信号の位置の分散に従って重み付けされた出力信号のエネルギーに対応する第4の信号を生成することを含む。
【0015】
一実施形態は、結晶内のガンマ線の相互作用の位置を判定する方法に関するものであり、当該方法は、相互作用から出力信号を生成し、出力信号の総エネルギーに対応する第1の信号、結晶の第1の次元における出力信号の位置に従って重み付けされた出力信号のエネルギーに対応する第2の信号、結晶の第2の次元における出力信号の位置に従って重み付けされた出力信号のエネルギーに対応する第3の信号、及び、第1及び第2の方向における出力信号の位置の分散に従って重み付けされた出力信号のエネルギーに対応する第4の信号を生成することを含み、第1の信号に対する第2の信号の比、第1の信号に対する第3の信号の比、及び、第1の信号に対する第4の信号の比から引かれた第1の信号の二乗に対する、第1の信号の二乗と第2の信号の二乗の合計の比の少なくとも1つを用いて、相互作用の位置が判定される。
【0016】
図3~
図4に、本願に係るPET装置を示す。PET装置100は、それぞれが矩形の検出器モジュールとして構成された複数のガンマ線検出器(Gamma-Ray Detector:GRD)101(例えば、GRD1、GRD2~GRDN)を含む。一実施態様によれば、検出器は、ガントリ104を中心とした円形のボア102を形成するリング内に配置される。この例では、リングは40個のGRD101を含む。リングは、ボア102の所望のサイズなどの要因に応じて、異なる数のGRD101を有してもよい。GRD101は、ガンマ線を光検出器によって検出されるシンチレーション光子(例えば、光学的、赤外線、及び紫外線の波長)に変換するための、シンチレータ結晶アレイを含む。各GRD101は、ガンマ線を吸収してシンチレーション光子を放射する個々の検出器結晶の2次元アレイを含むことができ、又は、モノリシックアレイ若しくはスラットのあるアレイを含むことができる。シンチレーション光子は、同じくGRD101内に配置されたSiPMなどのデバイス(図示せず)の2次元アレイによって検出することができる。検出結晶のアレイとSiPMの間に、ライトガイドを配置することができる。本願に係る結晶及びSiPMの配置を、以下でより詳細に説明する。
【0017】
図3は、被検体OBJから放射されるガンマ線を検出するように配置されたGRDを有するPET装置100の概略図を示す。GRD101は、検出された各ガンマ線に対応するタイミング、位置及びエネルギーを測定することができる。なお、
図3の単一のPET検出器リングをPET装置の軸長に沿って外挿することで、任意の数のPET検出器リングを含むようにしてもよい。
【0018】
図4は、PET装置100の配置の一例を示し、ここでは画像化されるべき被検体OBJが寝台206上に置かれており、GRD101(GRD1~GRDN)が被検体OBJ及び寝台206の周囲に円周方向に配置されている。GRD101は、PET検出器リングを含んでもよく、ガントリ204に固定接続されている円筒形のボア202に固定接続されてもよい。ガントリ204は、PET装置の多くの部品を収容する。PET装置のガントリ204はまた、被写体OBJ及び寝台206が通過することができる、円筒形のボア202によって定義される、開いた開口部を含み、対消滅イベントにより被検体OBJから反対方向に放射されるガンマ線をGRD101によって検出することができ、タイミング及びエネルギー情報を用いてガンマ線のペアの同時計数を判定することができる。
【0019】
図4では、ガンマ線検出データを取得、記憶、処理、及び分配するための回路及びハードウェアも示されている。この回路及びハードウェアは、プロセッサ207、ネットワークコントローラ203、メモリ205、及びデータ取得システム(Data Acquisition System:DAS)208を含む。PET撮像装置はまた、GRD101からの検出測定結果を、DAS208、プロセッサ207、メモリ205、及びネットワークコントローラ203にルーティングするデータチャネルも含む。DAS208は、検出器からの検出データの取得、デジタル化、及びルーティングを制御することができる。一実施形態において、DAS208は、寝台206の動きを制御する。プロセッサ207は、配置エラーの識別、検出データの前再構成処理、画像再構成、及び、画像データの後再構成処理を含む機能を実行する。ここで、プロセッサ207は、処理回路の一例である。
【0020】
一実施形態によれば、
図3及び
図4のPET装置100のプロセッサ207が、本明細書に記載される方法を実行するように構成される。プロセッサ207は、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)、又は、他の複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)など、個々の論理ゲートとして実行可能なCPU(Central Processing Unit)を含むことができる。FPGA又はCPLDの実装は、VHDL、Verilog又はその他のハードウェア記述言語でコード化されていてもよく、そのコードはFPGA又はCPLDで直接電子メモリ内に記憶されてもよく、又は、個別の電子メモリとして記憶されてもよい。さらに、メモリ305は、ハードディスクドライブ、CD-ROMドライブ、DVDドライブ、フラッシュドライブ、RAM、ROM、又は、当技術分野において既知の、任意のその他の電子記憶装置とすることができる。メモリ205は、ROM、EPROM、EEPROM、又は、フラッシュメモリなどの不揮発性であってもよい。メモリ205はまた、静的又は動的RAMなど揮発性であることが可能であり、マイクロコントローラ又はマイクロプロセッサなどのプロセッサは、FPGA又はCPLDと、メモリとの間の相互作用と同様に、電子メモリを管理するために提供されていてもよい。
【0021】
または、プロセッサ207内のCPUは、本明細書に記載された方法を実行する一連のコンピュータ可読命令を含むコンピュータプログラムを実行することができ、そのプログラムは、任意の上述の非一時的電子メモリ及び/又はハードディスクドライブ、CD、DVD、フラッシュドライブ、又は、その他の任意の既知の記憶媒体に記憶されている。さらに、コンピュータ可読命令は、ユーティリティアプリケーション、バックグラウンドデーモン若しくはオペレーティングシステムの構成要素、又は、それらの組み合わせで提供されてもよく、インテル社製のXenon又はAMD社製のOpteronプロセッサ、及びMicrosoft VISTA、UNIX(登録商標)、Solaris、LINUX、Apple、MAC-OS、ならびに当業者に既知の他のオペレーティングシステムなどのプロセッサと協働して実行される。さらに、CPUは、命令を実行するために並行して協同的に動作する、複数のプロセッサとして実行することができる。命令は、メモリ205に、又は、ネットワークコントローラ203に位置したメモリ(図示せず)内に記憶されてもよい。
【0022】
一実施形態において、PET装置は、再構成画像などを表示するためのディスプレイを含んでもよい。ディスプレイは、LCDディスプレイ、CRTディスプレイ、プラズマディスプレイ、OLED、LED、又は、当業者にとって既知のその他のディスプレイであることが可能である。
【0023】
インテル社からのインテルイーサネットPROネットワークインタフェースカードなどのネットワークコントローラ203は、PET撮像装置の様々な部分の間でインタフェースすることができる。さらに、ネットワークコントローラ203はまた、外部ネットワークとインタフェースすることもできる。理解できるように、この外部ネットワークは、インターネットなどの公共ネットワーク、又は、LAN若しくはWANネットワークなどのプライベートネットワーク、又は、これらの任意の組み合わせであることができ、PSTN若しくはISDNサブネットワークを含むこともできる。外部ネットワークはまた、イーサネットネットワークなどの有線とすることができ、又は、EDGE、3G、及び4G無線セルラーシステムを含むセルラーネットワークなどの無線とすることもできる。無線ネットワークは、WiFi、Bluetooth、又は、既知の任意のその他の無線通信形式とすることもできる。
【0024】
本願に係るGRD101では、SiPMアレイなどの光検出器が、結晶アレイ、スラット結晶のスタック、又は、モノリシック結晶に結合される。
図5A~
図5Dに、これらの構造を示す。これらの図は例であり、代表的な数の結晶及びSiPM素子を示す。結晶及びSiPM素子の数は、PET装置の必要性及び要件に従って変化することができる。
図5A及び
図5Bは、1-1結合のSiPMアレイ30及び不一致結合のSiPMアレイ31に結合された結晶アレイ10を示している。ここで、不一致結合とは、結晶の数とSiPMの数とが異なることである。
図5Bの例では、SiPMアレイ31は、アレイ内の結晶の数よりも大きなピッチ(又は、少ない素子)を有している。SiPMアレイ30及び31は、複数の検出器素子で構成され、結晶アレイ10は、複数の結晶で構成されている。
図5Cに、モノリシック結晶50を用いた実施形態を示し、
図5Dに、スラット結晶のスタックを用いた結晶アレイ90を有する実施形態を示す。
【0025】
結晶アレイにおいて、結晶は、空隙、リフレクタ、又は、不透明な材料によって互いに分離されてもよい。結晶間の分離は、結晶を透過する光を完全に分離する必要はない。例えば、結晶の長さよりも短いリフレクタが隙間に配置されている場合に、結晶間でいくらかの光が共有されてもよい。
【0026】
光検出器アレイの個々のチャネルからの信号は、受信信号に関する情報を導出するために合計される。本願では、光検出器アレイからの信号は、有利なことに、特別に設計された重みを有する複数の加算回路のグループに供給される。加算回路は、DAS208の一部であるか、又は、GRD101に配置されてもよい。例えば、4つ以上の加算回路のグループが配置されてもよい。この例では、1つのグループが、等しい重みを加えて1つのエネルギーの信号を生成するように設計されている。また、2つのグループが、チャネルに依存した重みを用いて、座標の信号を生成する。また、4つ目のグループが、チャネルに依存した重みを用いて、電荷分布の半径の信号を生成する。
【0027】
原理的には、電荷分布は、全ての次数のモーメントの合計として表現することができる。有界区間内における確率分布、本願では電荷分布は、全てのモーメント(全ての次数のmn=∫xnf(x)dx、n=0~∞)の集まりによって一意に判定される(ハウスドルフのモーメント問題、モーメント(数学)、Wikipedia;https://en.wikipedia.org/wiki/Moment_(mathematics))。したがって、電荷分布のより多くの特徴を抽出する必要がある場合には、さらにグループが追加されてもよい。
【0028】
図6Aに、本願に係る加算回路の第1の実施形態を示す。この配置は、1段の加算回路である。3×3のマトリクスに配置されたSiPM D11~D33が、一例として示されている。典型的には、より多数のSiPMが合計される。SiPMの各出力は、まずバッファ回路110を用いてバッファされ、次に重み付け回路111のアレイに転送される。バッファ回路110は、SiPMの電極を終端させ、重み付け処理用の出力を駆動するために用いられるアンプで構成されている。SiPMに用いられる典型的なバッファ回路は、トランスインピーダンス入力アンプ(Transimpedance Input Amplifier:TIA)である。これは、SiPMからの電流信号を、所望の振幅を有する電圧信号に変換する。重み付け回路111は、加算アンプ112で合計される前の信号に適用される重みを制御する。なお、
図6Aでは、図を見やすくするために、バッファ回路110と重み付け回路111との間の接続については、エネルギー及びXの信号のみを示しているが、SiPM D11~D33に接続されたバッファ回路の出力は、Y及び半径の信号の重み付け回路111にも供給される。
【0029】
図7に、重み付け回路111の一例を示す。重み付け回路111は、可変抵抗器又は可変インピーダンスデバイスとして実装されてもよく、プロセッサによって制御可能である。重み付け回路は、要求に応じて調整されて、SiPMによって生成された信号から加算アンプへの適切な入力を提供する。重み付け回路の制御については、以下でより詳細に記載する。
【0030】
重み付け回路111のそれぞれは、機器チャネルに接続することができ、プロセッサ207によって制御されて、適切な重みを設定及び調整する。また、バッファ回路110も、ゲインの制御のために機器チャネルに接続することができる。当該ゲインは、SiPMのゲインの変動を補正するために調整することができる。また、SiPMのゲインの変動を補正するために、重みを調整することも可能である。なお、
図6Aでは、図を見やすくするために、1つのバッファ回路110及び1つの重み付け回路111のみが機器チャネルに接続されているように示している。
【0031】
重み付け回路111の出力が加算アンプ112に入力されて、エネルギーの信号が提供される。また、座標の信号を表すX及びYの信号がチャネルに依存した重みで生成され、半径の信号がチャネルに依存した重みで生成される。加算アンプ112は、入力した信号を集約し、入力信号の合計に比例した信号を出力する。例えば、重み付け回路111によって出力された信号の電圧値が合計されて、合計電圧値が生成される。合計された出力は、補正マトリクス113に出力される。補正マトリクス113は、ハードウェア、FPGA、プロセッサに組み込まれたプログラム又はメモリ205に記憶されたプログラムを実行するように構成されたプロセッサ、変換テーブル、又は、ニューラルネットワークで構成することができる。補正マトリクス113の動作については、以下でより詳細に記載する。補正マトリクス113を省略して、合計された出力を補正せずに用いてもよい。
【0032】
なお、一変形例として、重み付け回路111は、加算アンプの一部であってもよい。
図8に、重み付け回路111及び加算器114を有する加算アンプ115を示す。例えば、加算アンプ115は、複数の重み付け回路111及び加算器114と一体化されるように構成されている。
【0033】
ここで、信号の重み付けについて、より詳細に説明する。まず、エネルギー(E)のチャネルについては、等しい重みが用いられ、次の式で求められる。
E=ΣExy
【0034】
この式において、x及びyは、SiPMアレイ内のSiPMの2次元位置を表し、Exyは、位置(x,y)でのバッファ回路からの信号の値である。また、Xのチャネルについては、重みは水平方向の位置xに比例し、次の式で求められる。
X=ΣxExy
【0035】
同様に、Yのチャネルについては、重みは垂直方向の位置yに比例し、次の式で求められる。
Y=ΣyExy
【0036】
最後に、半径(R)のチャネルについては、重みは(x2+y2)に比例し、次の式で求められる。
R=Σ(x2+y2)Exy
【0037】
また、プロセッサ207によって、以下の式を用いて、電荷分布の合計された分散を導出することができる。
σx
2=R/E-(X2+Y2)/E2
【0038】
ここで、合計された分散は、散乱又はDOI(Z)の指標となる。例えば、プロセッサ207が、電荷分布の合計された分散に基づいて、ガンマ線のDOIを導出する。
【0039】
また、一変形例として、x方向及びy方向の双方の電荷分布の分散を分離する必要がある場合は、以下のように2つの半径のチャネルが用いられてもよい。
Rx=Σx2Exy
Ry=Σy2Exy
【0040】
本変形例では、合計された分散は、次の式で求められる。
σx
2=Rx/E-X2/E2
σy
2=Ry/E-Y2/E2
【0041】
また、モノリシック結晶を用いる場合は、DOI及び散乱の両方によって電荷の共有が生じるが、それぞれの電荷分布は異なる。そこで、これらの2つの要因を分離するために、以下の式に従って、高次の加算回路のグループ(3次のモーメント、歪度)が追加されてもよい。
S=Σ(x3+y3)Exy
【0042】
図6Bは、歪度の加算回路を有する場合の第1の実施形態の簡略化された一部を示す。
図6Bでは、アレイの図示を省略している。なお、これとは別の方法として、4つのグループのうちの1つが、プロセッサ207によって調整された重みを有して、歪度の信号Sを生成してもよい。エネルギーの信号を用いて、タイミング情報を測定することもできる。タイミング情報は、例えば、
図6Aに示すように、SiPMアレイからの別の信号を用いて測定することもできる。
図6Aでは、バイアス電圧の印加がタイミングチャネルに送られる。
【0043】
SiPM D11~D33からの各出力は、特定の出力であるエネルギー、X、Y及び半径に対応する重み付け回路のグループそれぞれに供給される。
図9に、重み付けの一例を示す。重み付けを示すために、4×4のSiPMアレイが用いられている。
図9の表には、Xの出力についての重み(W_X)、Yの出力についての重み(W_Y)、エネルギーの出力についての重み(W_E)、及び、半径の出力についての重み(W_R)が示されている。
図10A~
図10Dは、4×4のSiPMアレイに対応する重みを示す。上述したように、X及びYの重みは位置x及びyに比例し、エネルギーの重みは一定であり、半径の重みは(x
2+y
2)に応じて変化する。半径の重みは、非線形であることに留意されたい。このような非線形の重みは、座標であるX及びY、並びに、エネルギーに適用することもでき、それにより、より良い精度に調整することができる。例えば、ある位置のSiPMが他の位置と比べて低いゲインを有することがあるが、関連するチャネルに適用される重みをSiPMのゲインに反比例する係数を用いて適宜にスケーリングすることで、ゲインが低いSiPMの位置を補償することができる。結果として、重みは、もはやX又はYの座標に対して線形ではない。
【0044】
なお、
図6Aの1段の加算回路は、バッファ回路と重み付け回路との間に多数の接続を必要とする。これに対し、
図11に、より少ない接続を有する2段の加算回路を含む第2の実施形態を示す。
図11では、図を見やすくするために、SiPM D11~D33の3×3のマトリクスを示しているが、これとは異なる数のSiPMを用いることもできる。本実施形態では、信号は、まずバッファ回路120を用いてバッファされ、次に重み付け回路121を用いて局所的に重み付けされる。重み付け回路121によって重み付けされた信号が加算アンプ122に供給されて、一連の局所的なエネルギー、X及びYの信号であるE
yn、X
yn及びR
ynが生成される。この例では、X方向に沿った同じ行に並ぶSiPMの各出力が、まず、3つの信号E
y、X
y及びR
yに合計される。ここで、E
yは、当該行の総エネルギーを表し、X
yは、当該行の重み付けされた位置xを表し、R
yは、半径を表す。これら3つの信号は、以下の式に従って判定される。
E
y=Σ
yE
xy
X
y=Σ
yxE
xy
R
y=Σ
y(x
2+y
2)E
xy
【0045】
次に、これらの信号が重み付け回路123に入力され、その後、加算アンプ124で合計されて、エネルギー(E)、X、Y及び半径(R)の信号が生成される。これらの信号は、以下の式に従って生成される。
E=ΣEy
X=ΣXy
Y=ΣyEy
R=ΣRy
【0046】
バッファ回路120並びに重み付け回路121及び123は、第1の実施形態と同様に、重み付け値の制御のために、機器チャネルを介してプロセッサ207及びDAS208に接続される。また、第1の実施形態と同様に、
図8のような重み付け回路を集積した加算回路が用いられてもよい。
【0047】
第1の実施形態と比較すると、加算回路に送られる信号の最大数及び必要な重みの数は、1段の実施形態ではn2であるが、2段の実施形態では3nとなる。ここで、nは、x方向に沿ったSiPMの数である。加算アンプの数は、1段の実施形態では4であるが、2段の実施形態では3n+4となる。バッファアンプの数(n2)は、1段の実施形態及び2段の実施形態で同じである。2段の実施形態では、加算アンプの数は多くなるが、その一方で、アレイ内のSiPMの数が多い場合でも、必要な重みの数を大幅に低減することができる。大きなサイズのアレイでは、重みの数を減少することができることにより、回路内のトレース数を減少させることができ、設計及びトレースのルーティングを管理しやすくなる。
【0048】
図12に、位置の復号の一例を示す。これは、第1及び第2の実施形態の両方に適用することができる。ここでは、
図9及び
図10A~
図10Dに示す重みを有する4×4のアレイが一例として用いられている。説明を容易にするために、1つのマトリクスにつき最大2つのヒットを有する6つの異なる事例が図示されている。
図12は、合計出力と復号位置とを含む。合計出力は、重みから、以下のように判定される。
X
sum=Σx
iE
i
Y
sum=Σy
iE
i
E
sum=ΣE
i
R
sum=Σ(x
i
2+y
i
2)E
i
【0049】
復号位置は、以下のように判定される。
PX=Xsum/Esum
PY=Ysum/Esum
PE=Esum
PR=Rsum/Esum-(xsum
2+ysum
2)/Esum
2
【0050】
事例1では、マトリクスの(1,1)でヒット1が発生している。X、Y及びEに対する重みは、(1,1)の位置で全て1である。復号位置の情報(X=Y=1)は、ヒットが(1,1)で発生したことを示している。また、事例2では、(2,2)でヒット1が発生しており、X及びYに対する重みはそれぞれ2であり、復号位置の情報(X=Y=2)は、ヒットが(2,2)で発生したことを示している。事例3~6は、それぞれ、ヒット1及びヒット2の2つのヒットを含む。各ヒットの位置から、X、Y及びRに対する固有の値のセットが得られる。X、Y及びRに対する固有の値のセットから、ヒット1及びヒット2のそれぞれの位置を判定することができる。プロセッサ207は、サンプリング期間中に得られたX、Y及びRの計算値を、例えば、経験的に事前に判定されてメモリ205内に記憶された値と比較することで、ヒット(単数又は複数)の位置(単数又は複数)を判定することができる。上記の解析は、サンプリングマトリクス内の2つよりも大きい他の数のヒットについても実行することができ、プロセッサ207が計算値を記憶された値と比較されることで、ヒットの位置を判定することができる。
【0051】
また、検出されたヒットの位置をX、Y及びRの値の固有の組み合わせによって理解することにより、復号位置の情報を用いて、ヒットの間の距離を判定することができる。後続の画像再構成において、当該距離の情報を用いて適切な飛行時間(Time-Of-Flight:TOF)及び点像分布関数(Point-Spread Function:PSF)カーネルを選択することで、画質を向上させることができる。時間分解能及び空間分解能は、どちらも電荷分布の影響を受ける。従来、画像再構成は、全てのイベントの平均的なTOFカーネル及びPSFカーネルを用いている。これに対し、本願は、与えられたイベントに対して、適切な(時間分解能用の)TOF及び(空間分解能用の)PSFカーネルを選択するための電荷分布情報を提供することができる。
【0052】
第1及び第2の実施形態では、加算回路のグループは、モーメント数学(Moment (mathematics) Wikipedia)に基づいて、モーメントとして表現することができる。エネルギーのチャネルは、0次のモーメント、つまり積分である。X及びYのチャネルは、1次のモーメント、つまり平均値である。半径のチャネルは、2次のモーメント、つまりアレイにわたる電荷分布の分散であり、電荷の広がりのレベルに対応する。
【0053】
第1及び第2の実施形態における電荷分布のモーメント及び結晶中の電荷堆積の位置を導出するための上記の式は、結晶及びSiPMに不均一性がないと考えた場合の最も単純な形式である。実際には、検出器の応答の変動、結晶の不均一性、及び、結晶の境界によって、生の合計値を物理的な測定値に変換するためのさらなる補正が必要となる。生のX、Y、半径及びエネルギーそれぞれの合計を物理的な値(X、Y、Z及びエネルギー)に変換する一般的な形式は、線形マトリクス、複数のマトリクスの積、多次の変換テーブル、ルックアップテーブル、又は、ニューラルネットワークを含むが、これらに限定されない。ここで、Zは、アプリケーションに応じて、相互作用の深さ、又は、コンプトンヒットの空間的分離のいずれかを表す。
【0054】
SiPMからの信号に対する重みをさらに最適化することで、最も効率的かつ正確な方法で関連情報を抽出することができる。例えば、シミュレーションの結果又はキャリブレーションの測定を用いて、重みを較正してもよい。(個別又はスラットの)結晶アレイの場合、当該関連情報は、エネルギー、X及びYの位置、並びに、同じガンマ線からのヒットの間の距離である。モノリシック結晶の場合、当該関連情報は、エネルギー、X及びYの位置、DOI、並びに、同じガンマ線からのヒットの間の距離を含み得る。製造上の差異について、重みを補償することもできる。この補償のために、キャリブレーションの測定が用いられてもよい。
【0055】
図13に、空間情報のためのデータ処理及び較正のプロセスを示す。この例では、このプロセスがモノリシック結晶に適用されて、空間情報が抽出される。モノリシック結晶の場合、ガンマ線の相互作用点の3次元位置(X、Y及びZ)に対応する空間情報が抽出される。また、通常、X及びYの位置とともにRのチャネルを用いて、DOIが抽出される。
【0056】
まず、ステップ130において、光検出器に加算の重みが設定される。続いて、ステップ131において、コリメートされたガンマ線源、例えばピンホールコリメーションを露出することによって、検出器マトリクスの離散した位置にガンマ線が照射される。
図3に示すシステムでは、コリメートされたガンマ線源がボア102内に配置され、選択されたGRD101にガンマ線が照射される。続いて、ステップ132において、生の合計された出力(X_sum、Y_sum、E_sum及びR_sum)が生成される。続いて、ステップ133において、合計された出力が補正マトリクス113/125で処理されることによって補正され、ステップ134において、物理的な変数であるX、Y、Z及びEが生成される。
【0057】
典型的には、加重の重みは、抽出されることが望まれる情報の検出器の解像力が最大となるように最適化される。
図13では、好ましくは、ステップ135において、性能マトリクスを用いた最適化処理がプロセッサ207で実行される。DOI又はZの情報が求められるモノリシック結晶について、加算の重みを最適化する1つの方法は、補正された物理的なZの値の山谷比を評価することである。例えば、コリメートされたガンマ線源を2つの離散した深さに配置することによって、データのセットが取得される。
図14を参照すると、所与の重みに基づいて補正された物理的なZの値の分布がプロットされている。2つのキャリブレーションの深さを表す山部の高さ140/141と、当該2つの深さの間の曖昧さを表す谷部の高さ142とが比較されて、山谷比が最大となるように、加算の重みが最適化される。
【0058】
ここで、最適化の方法としては、重みを変化させながら結果を比較することによる試行錯誤法、又は、反復により最適な設定を見つける方法のいずれかを用いることができる。別のアプローチは、異なる重みで予測される検出器の応答をモデル化することであり、それにより、より少ない反復で最適化を達成することができる。同様の手順を、X及びYのチャネルに用いてもよい。
【0059】
また、グランドトゥルース(ground truth)に近い物理的な値を再構成するために、補正マトリクスが用いられる。既知の離散的な位置に配置されたガンマ線源で収集したデータを用いてコスト関数を最小化することにより、当該補正マトリクスを較正することができる。ここで、コスト関数は、グランドトゥルースと測定値との間のカイ二乗関数(chi-square function)などである。
図15に、補正マトリクスを較正するプロセスを示す。まず、
図13について上述したステップ130~ステップ134が実行され、ステップ134において、物理的な変数であるX、Y、Z及びEが生成される。続いて、ステップ136において、物理的な値を用いて、コスト関数の最小化による補正が行われる。ステップ136で行われる補正は、ステップ133で実行された補正を較正するために用いられる。
【0060】
また、異なる重みでモデル化された検出器の応答を用いて、重みの最適化及び補正マトリクスの較正を一緒に実行することで、全体性能を向上させてステップ数を減少させることができる。将来的に、利用可能な数学的な最適化/最小化/最大化の方法として、最小二乗法、最尤、及び、機械学習があるが、これらに限定されない。
【0061】
なお、上述した第1及び第2の実施形態は、正方形(n×n)アレイに基づくが、本願は、行及び列の数が不均等なn×mアレイにも適用可能である。また、重みをゼロに設定して、所望に応じてマトリクスの一部又はチャネルを効果的に無効にすることも可能である。
【0062】
また、上記実施形態はPET装置の例であるが、当該実施形態は、SPECT(Single-Photon Emission Computerized Tomography)装置などの他の核医学診断装置にも適用することが可能である。
【0063】
本願は、光検出器アレイからのデジタル化される信号の数を大幅に減少させることができる。また、本願は、検出器アレイにわたる電荷分布を測定し、散乱されたヒットの間の距離に関する情報を提供することもできる。また、本願は、モノリシック結晶の場合に、DOI情報を提供することもできる。
【0064】
また、本願は、モノリシック結晶のデジタル化されたチャネル数を減少させるための読み出し設計を簡素化し、一般に個々のSiPMの読み出しを必要としながらも、DOI情報を提供することもできる。
【0065】
さらに、本願は、光共有設計を有する結晶アレイにおけるDOIの評価を可能にする。
【0066】
なお、本願は、上述した説明を考慮して、多くの修正及び変形が可能であることが自明である。したがって、本願は、添付の請求の範囲内で、本明細書に具体的に記載されている以外の方法で実施し得ることを理解されたい。
【0067】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、検出器アレイに生じる電荷分布に基づいて、時間分解能及び空間分解能を向上させるための有用な情報を提供することができる。
【0068】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0069】
100 ポジトロン放射断層撮影装置
101 ガンマ線検出器
10、90 結晶アレイ
50 モノリシック結晶
30、31 SiPMアレイ
110、120 バッファ回路
111、121、123 重み付け回路
112、115、122 加算アンプ
207 プロセッサ