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特開2022-189755電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189755
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 5/147 20060101AFI20221215BHJP
   G03G 5/047 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
G03G5/147 504
G03G5/147
G03G5/047
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089702
(22)【出願日】2022-06-01
(31)【優先権主張番号】P 2021098346
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】石田 知仁
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 俊太郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 延博
(72)【発明者】
【氏名】山合 達也
(72)【発明者】
【氏名】渡部 博之
(72)【発明者】
【氏名】廣田 匡紀
【テーマコード(参考)】
2H068
【Fターム(参考)】
2H068AA03
2H068AA04
2H068AA08
2H068AA09
2H068AA28
2H068AA35
2H068AA37
2H068BB06
2H068BB33
2H068BB51
(57)【要約】
【課題】良好な転写性を実現する電子写真感光体の提供。
【解決手段】支持体上に、電荷発生層、電荷輸送層及び、保護層をこの順に積層させてなる電子写真感光体において、該保護層が、結着樹脂及び粒子を含有し、該保護層の断面において、該粒子を含まない部位の保護層の平均膜厚をTとし、該粒子の体積平均粒子径をDmとしたとき、下記式(a)を満たすことを特徴とする。
Dm > T 式(a)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、電荷発生層、電荷輸送層及び保護層をこの順に積層させてなる電子写真感光体において、
該保護層が、結着樹脂及び粒子を含有し、
該保護層の断面において、該粒子を含まない部位の保護層の平均膜厚をTとし、該粒子の体積平均粒子径をDmとしたとき、下記式(a)を満たす、
Dm > T 式(a)
ことを特徴とする電子写真感光体。
【請求項2】
前記電荷輸送層の硬度をH1とし、前記保護層の結着樹脂成分の硬度をH2としたとき、下記式(b)を満たす、
H1 > H2 式(b)
請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記電荷輸送層の弾性変形率をG1とし、前記保護層の結着樹脂成分の弾性変形率をG2としたとき、下記式(c)を満たす、
G1 > G2 式(c)
請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記粒子の体積平均粒子径Dmの標準偏差が、該体積平均粒子径の20%以下である、請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項5】
前記粒子の体積平均粒子径をDmとし、個数平均粒子径をDnとしたとき、Dm/Dnが1.5以下である、請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項6】
前記平均膜厚Tの変動係数が20%以下である、請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項7】
前記保護層の断面において、前記保護層の表面から部分的に露出し、かつ前記保護層と前記電荷輸送層との界面に接する粒子が、前記保護層に含有される粒子の全数に対して50個数%以上である、請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項8】
前記粒子の少なくとも一部の粒子は、前記保護層の表面から部分的に露出しており、
前記保護層の表面を上面視したとき、前記粒子の露出部分の面積の合計をS1とし、該粒子の露出部分以外の面積の合計をS2としたとき、S1/(S1+S2)が、下記式(d)を満たす、
S1/(S1+S2)≧ 0.50 式(d)
請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項9】
前記粒子の前記体積平均粒子径Dmと前記保護層の平均膜厚Tが、
下記式(e)を満たす、
Dm > 2T 式(e)
請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項10】
前記保護層の結着樹脂成分の硬度をH2とし、前記粒子の硬度をH3としたとき、下記式(f)を満たす、
H3 > H2 式(f)
請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項11】
前記電荷輸送層の硬度をH1とし、前記保護層の結着樹脂成分の硬度をH2とし、前記粒子の硬度をH3としたとき、下記式(g)を満たす、
H3 > H1 > H2 式(g)
請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、及びクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段と、を一体に支持し、電子写真装置の本体に着脱自在であるプロセスカートリッジ。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか1項に記載の電子写真感光体、並びに、帯電手段、露光手段、現像手段、及び転写手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段を有する電子写真装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真感光体、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機やプリンターといった電子写真装置の分野においては、生産性を高めるため、高速で印字することが求められている。電子写真装置において高速化を達成するためには、電子写真プロセスの帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程の繰り返しにおいて、露光工程で作像された潜像が、現像工程でトナーに現像され、紙や中間転写体などの媒体にトナーが効率良く転写されていく必要がある。
【0003】
転写工程においては、感光体上の潜像を現像したトナーを記録媒体に転写するため、所定のバイアスをトナーに印加することが行われている。この印加バイアスに関し、トナーに外添剤を添加し、感光体の表面に凹凸形状を作製することで、トナーと感光体表面の付着性を低下させることにより、印加するバイアスが低減できる。これにより、高いバイアスを印加するための高圧電源のスペースを電子写真装置内で省くことが可能となるのみならず、高い転写バイアスによるトナーの飛び散りも抑制でき、画質の向上も達成可能となる。感光体の表面に凹凸形状を作製した、感光体の表面に対するトナーの付着力を低減する方法の一つとして、トナーと感光体の表面との接触を点接触にするべく、電子写真感光体の表面に粒子を含有させて、凸形状を形成することが従来提案されてきている。
【0004】
特許文献1には、滑剤の供給量に関わらず、クリーニング性を向上させ、感光体やクリーニングブレードの摩耗を低減させることを目的として、重合性モノマーと、無機フィラーを含む組成物の重合硬化物から構成される最外層の表面が凸部構造を有する電子写真感光体が開示されている。
【0005】
特許文献2には、感光体の耐摩耗性と潤滑性とを両立させることを目的として、アクリル樹脂粒子及びメラミン樹脂粒子の少なくとも一方の有機樹脂粒子と、重合性官能基を有する正孔輸送性化合物と、を含有する塗布膜を硬化させて得られた表面層を有する電子写真感光体が開示されている。
【0006】
特許文献3には、耐摩耗性を保ちつつ、支持体の光沢ムラに起因する画像ムラを軽減することを目的として、硬化性樹脂とポリテトラフルオロエチレン粒子とを含有し、表面層の表面が、機械的研磨によって形成された凹凸形状を有する電子写真感光体が開示されている。
【0007】
特許文献4には、感光体の表面の潤滑性やクリーニング性を向上させることを目的として、マトリックス成分中の細孔に包まれている被包球状粒子を含有する電子写真感光体が開示されている。
【0008】
特許文献5には、離型効果を維持することを目的として、感光体の表面層の表面に各々独立した深さ0.1μm以上10μm以下の凹形状部を形成し、凹形状部内に離型材料を含有させる電子写真感光体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2020-71423号公報
【特許文献2】特開2019-45862号公報
【特許文献3】特開2016-118628号公報
【特許文献4】特開2013-029812号公報
【特許文献5】特開2009-14915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
近年の電子写真装置では、環境対応により廃トナー削減のための転写工程の効率化と、出力の高速化における高画質との両立が求められている。転写性の向上には、トナーと感光体の接触面積を小さくすることが有効である。その手段として、上記特許文献1~5には感光体表面に粒子を添加させる技術が開示されている。しかしながら、特許文献1~3では、感光体表面に均等に粒子を露出させて整列することが難しく、転写に寄与する粒子の配置に課題がある。特許文献1~3の感光体表面に存在する粒子の配列のイメージを図2に示す。
【0011】
さらに、特許文献4では、転写工程において感光体と中間転写体あるいは記録媒体との周速差がある場合に、前記被包球状粒子が動いてしまい、トナーと感光体の表面との接触面積が増大して転写性が減退する現象が見られた。また、特許文献5では、凹形状部内に複数の離型材料が含有され、トナーと感光体の表面との点接触が維持できず、良好な転写性を長期に維持することが難しいことが分かった。
【0012】
本発明者らは鋭意検討の結果、図1に示すように、粒子を粒子径より薄い層で保持することで、安定して粒子を露出させられることを見出した。すなわち、感光体の表面に保護層を設け、該保護層は、結着樹脂と粒子とを含有し、該保護層の断面において、該粒子を含まない部位の保護層の平均膜厚をTとし、該粒子の体積平均粒子径をDmとしたとき、下記式(a)を満たすことで、均等に粒子を露出させて整列することが可能となり、良好な転写性を実現できた。
Dm > T 式(a)
【0013】
本発明の目的は、感光体表面に粒子を配置する構成において、粒子を粒子径より薄い層で保持することで、安定して粒子を露出させ、良好な転写性を実現する感光体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的は以下の本発明によって達成される。即ち、本発明にかかる電子写真感光体は、支持体上に、電荷発生層、電荷輸送層及び、保護層をこの順に積層させてなり、該保護層が、結着樹脂及び粒子を含有し、該保護層の断面において、該粒子を含まない部位の保護層の平均膜厚をTとし、該粒子の体積平均粒子径をDmとしたとき、下記式(a)を満たすことを特徴とする。
Dm > T 式(a)
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、トナーと電子写真感光体の接触面積を小さくすることができ、その結果、良好な転写性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る感光体の断面における各層構成の概念図である。
図2】従来技術の感光体の断面における各層構成の概念図である。
図3】感光体の断面における各層構成の概念図である。
図4】感光体を上面視したときの粒子の露出面積の概念図である。
図5】電子写真画像形成装置を説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。
[電子写真感光体]
本発明の電子写真感光体は、支持体と、支持体上に設けられた電荷発生層、電荷輸送層及び粒子を含有する保護層を有する。本発明による電子写真感光体は、円筒状支持体上に電荷発生層、電荷輸送層及び保護層を形成した円筒状電子写真感光体として用いることが可能であるが、ベルト状あるいはシート状の形状も可能である。
【0018】
本発明の電子写真感光体は、電子写真感光体の表面を帯電させる帯電工程と、帯電された前記電子写真感光体を露光し、静電潜像を形成する露光工程と、前記静電潜像が形成された前記電子写真感光体にトナーを供給してトナー像を形成する現像工程と、前記電子写真感光体上に形成されたトナー像を転写する転写工程と、を有する画像形成方法に用いられる。
【0019】
本発明の電子写真感光体を製造する方法としては、後述する各層の塗布液を調製し、所望の層の順番に塗布して、乾燥させる方法が挙げられる。このとき、塗布液の塗布方法としては、浸漬塗布、スプレー塗布、インクジェット塗布、ロール塗布、ダイ塗布、ブレード塗布、カーテン塗布、ワイヤーバー塗布、リング塗布などが挙げられる。これらの中でも、効率性及び生産性の観点から、浸漬塗布が好ましい。
【0020】
本発明は、支持体上に、電荷発生層、電荷輸送層及び、保護層をこの順に積層させてなる電子写真感光体において、該保護層が、結着樹脂及び粒子を含有し、該保護層の断面において、該粒子を含まない部位の保護層の平均膜厚をTとし、該粒子の体積平均粒子径をDmとしたとき、下記式(a)を満たす電子写真感光体である。
Dm > T 式(a)
【0021】
上記の構成によって、感光体表面に均等に粒子を露出させて整列することができ、良好な転写性を実現することができる。本発明の感光体表面に存在する粒子の配列のイメージを図1に示す。本発明の構成により課題が解決されるメカニズムは明確にはなっていないが、以下のように推察している。
【0022】
電子写真画像形成装置において転写性を改良するためには、トナーと電子写真感光体の付着性を低下させる必要がある。トナーと電子写真感光体の付着力は、静電的付着力と非静電的付着力に大別される。静電的付着力は鏡映力が主な因子となるためトナーの電荷量に大きく左右され、鏡映力の大きさはトナーの電荷量に比例し、トナーの電荷量と付着対象となる感光体の表面の距離の2乗に反比例する。トナーと感光体の表面との距離をとる観点から、感光体の表面層に粒子を配列して、鏡映力を減衰させる方法がとられることが多い。合わせて、前記非静電的付着力を低下させるには、ファンデルワールス力も低下させる必要がある。ファンデルワールス力を低下させるには、機械的にトナーと電子写真感光体の接触面積を低下させることが効果的である。
【0023】
このとき、本発明の電子写真感光体の保護層の表面に露出する粒子表面は、均等の高さでトナー粒子を支えることが理想と考えられる。本発明では、感光体の最表面に、粒子を含有した保護層を、粒子の粒径より薄く形成することで、粒子を均等の高さで露出させることが可能となる。
【0024】
また、保護層の下層にある電荷輸送層のユニバーサル硬度(HU)をH1とし、保護層のユニバーサル硬度(HU)をH2としたとき、下記式(b)を満たすことにより、繰り返し印字した際にも、露出した粒子の埋没を抑制することができ、長期に渡り良好な転写性を持続することができる。
H1 > H2 式(b)
【0025】
また同様に、保護層の下層にある電荷輸送層の弾性変形率(We)をG1とし、保護層の弾性変形率(We)をG2としたとき、下記式(c)を満たすことにより、繰り返し印字した際にも、露出した粒子の埋没を抑制することができ、長期に渡り良好な転写性を持続することができる。
G1 > G2 式(c)
【0026】
これは、表面に露出した粒子に、電子写真の作像プロセスで押し込む力が加わった際、粒子が電荷輸送層の上面と保護層の下層の界面で押し戻され、粒子の沈み込みを抑制できているものと推察している。
【0027】
また、粒子の体積平均粒子径Dmの標準偏差や、体積平均粒子径Dmと個数平均粒子径Dnの比Dm/Dnを小さくすることで、保護層に埋没する粒子数を抑制し、より均一に粒子の表面を露出させることができる。具体的には、標準偏差が粒径の20%以下、Dm/Dnが1.5以下で、より安定して均一な粒子の露出が可能となる。
【0028】
更に、粒子が存在しない部位の保護層の膜厚Tの変動幅が小さいほど、粒子の埋没を抑制し、安定して粒子を露出させることができる。具体的には変動幅が膜厚の20%以下であることが好ましい。
【0029】
また多くの粒子が、保護層の下層と、電荷輸送層の上面がなす界面に接触することで、繰り返し使用した際の粒子の埋没を抑制することができる。これは、表面に露出した粒子に、電子写真の作像プロセスで押し込む力が加わった際、図3のように粒子が界面から浮いていると、粒子が保護層に埋没してしまう。一方、図1に示すように粒子が電荷輸送層の上面と保護層の下層の界面に接している場合、下層である電荷輸送層内部に粒子が押し込まれにくいものと推察する。具体的には、全粒子の50%以上が、電荷輸送層の上面と接していることで、効果的に粒子の埋没を抑制することができる。すなわち、保護層の断面において、保護層から部分的に露出し、かつ電荷輸送層の上面と接する粒子(いわゆる「底着き粒子」)が、保護層に含有される粒子の全数に対して50個数%以上であることが好ましい。図1、2、3において、符号101は支持体、符号102は電荷発生層、符号103は電荷輸送層、符号104は保護層、符号105は粒子を意味する。
【0030】
更に、良好な転写を実現する上では、多くのトナーが感光体上の粒子と接触する必要がある。すなわち、前記粒子の少なくとも一部の粒子は、保護層の表面から部分的に露出しており、図4に示すように、感光体表面を上面からみたときの粒子の露出部分(201)の露出面積をS1とし、粒子の露出部分以外の部分(202)の面積をS2としたとき、下記式(d)を満たすことで、多くのトナーが粒子と接触可能となり、良好な転写性を実現することができる。
S1 /(S1+S2)≧ 0.50 式(d)
【0031】
更に、粒子の体積平均粒子径Dmと保護層の平均膜厚Tが下記式(e)を満たすとき、より安定して粒子を露出させることができ、良好な転写性が可能となる。
Dm > 2T 式(e)
【0032】
また、電荷輸送層の結着樹脂のユニバーサル硬度(HU)をH1とし、保護層の結着樹脂成分のユニバーサル硬度(HU)をH2とし、粒子の硬度をH3としたとき、下記式(f)及び(g)を満たすことで、粒子の埋没を抑制し、長期にわたり良好な転写性を可能とする。
H3 > H2 式(f)
H3 > H1 > H2 式(g)
【0033】
なお、上記メカニズムは推測に基づくものであり、この推測が本発明の技術的範囲に影響を及ぼすものではない。
【0034】
本発明の電子写真感光体の保護層が有する粒子としては、特に制限されない。粒子としては、アクリル樹脂粒子などの有機樹脂粒子や、アルミナ、シリカ、チタニアなどの無機粒子、有機無機ハイブリッド粒子が挙げられる。
【0035】
また、保護層の電荷輸送能力を向上させる目的で、保護層用塗布液に導電性粒子や電荷輸送物質を添加してもよい。導電性粒子としては、導電層に用いられる導電性顔料を用いることができる。電荷輸送物質としては、後述する電荷輸送物質を用いることができる。また、各種機能改善を目的として添加剤を添加することもできる。添加剤としては、例えば、導電性粒子、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、レベリング剤が挙げられる。
【0036】
有機樹脂粒子としては、架橋ポリスチレン、架橋アクリル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル粒子、ポリテトラフルオロエチレン粒子、シリコーン粒子が挙げられる。
【0037】
アクリル粒子は、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルの重合体を含有する。中でも、スチレンアクリル粒子がより好ましい。アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂の重合度や、樹脂が熱可塑性か熱硬化性であるかは、特に限定されない。
【0038】
ポリテトラフルオロエチレン粒子は、主に4フッ化エチレン樹脂からなる粒子であればよく、他に3フッ化塩化エチレン樹脂、6フッ化プロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、2フッ化2塩化エチレン樹脂などを含んでいても良い。
【0039】
有機無機ハイブリッド粒子としては、シロキサン結合を含むポリメチルシルセスキオキサン粒子が挙げられる。
【0040】
本発明の電子写真感光体の保護層が有する粒子としては、硬度が高く、トナーとの点接触に関して有利な無機粒子を使用することが好ましい。
無機粒子としては、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉛、酸化スズ、酸化タンタル、酸化インジウム、酸化ビスマス、酸化イットリウム、酸化コバルト、酸化銅、酸化マンガン、酸化セレン、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化ゲルマニウム、酸化錫、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化モリブデン、酸化バナジウム、銅アルミ酸化物、アンチモンイオンをドープした酸化スズ、ハイドロタルサイトなどが挙げられる。これら粒子は、単独でも又は2種以上を組み合わせても用いることができる。また、粒子は合成品であってもよいし、市販品であってもよい。また、無機粒子としては、シリカ粒子が好ましい。
【0041】
前記シリカ粒子としては、公知のシリカ微粒子が使用可能であり、乾式シリカの微粒子、湿式シリカの微粒子のいずれであってもよい。好ましくは、ゾルゲル法により得られる湿式シリカの微粒子(以下、「ゾルゲルシリカ」ともいう)であることが好ましい。
【0042】
本発明の電子写真感光体の保護層に含有される粒子に用いられるゾルゲルシリカは、親水性であっても、表面を疎水化処理させてあってもよい。
疎水化処理の方法としては、ゾルゲル法において、シリカゾル懸濁液から溶媒を除去し、乾燥させた後に、疎水化処理剤で処理する方法と、シリカゾル懸濁液に、直接的に疎水化処理剤を添加して乾燥と同時に処理する方法が挙げられる。粒度分布の半値幅の制御、及び飽和水分吸着量の制御という観点で、シリカゾル懸濁液に直接疎水化処理剤を添加する手法が好ましい。
【0043】
疎水化処理剤としては、以下が挙げられる。
メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、t-ブチルジメチルクロロシラン、ビニルトリクロロシランなどのクロロシラン類;
テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、o-メチルフェニルトリメトキシシラン、p-メチルフェニルトリメトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、i-ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、i-ブチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシランなどのアルコキシシラン類;
ヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザン、へキサプロピルジシラザン、ヘキサブチルジシラザン、ヘキサペンチルジシラザン、ヘキサヘキシルジシラザン、ヘキサシクロヘキシルジシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、ジビニルテトラメチルジシラザン、ジメチルテトラビニルジシラザンなどのシラザン類;
ジメチルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、クロロアルキル変性シリコーンオイル、クロロフェニル変性シリコーンオイル、脂肪酸変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルコキシ変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、及び、末端反応性シリコーンオイルなどのシリコーンオイル;
ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサンなどのシロキサン類;
脂肪酸及びその金属塩として、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ドデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ペンタデシル酸、ステアリン酸、ヘプタデシル酸、アラキン酸、モンタン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸などの長鎖脂肪酸、前記脂肪酸と亜鉛、鉄、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、ナトリウム、リチウムなどの金属との塩。
【0044】
これらの中でも、アルコキシシラン類、シラザン類、シリコーンオイルは、疎水化処理を実施しやすいため、好ましく用いられる。これらの疎水化処理剤は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0045】
本発明の電子写真感光体においては、支持体上に電荷発生層及び電荷輸送層を有した積層型感光層、支持体上に電荷発生物質と電荷輸送物質を共に含有する単層型感光層、いずれの構成を用いても良い。いずれの構成においても、その表層に粒子が分散された保護層を有している。
【0046】
以下、支持体及び各層について説明する。
<支持体>
本発明の電子写真感光体は、支持体を有する。本発明において、支持体は導電性を有する導電性支持体であることが好ましい。また、支持体の形状としては、円筒状、ベルト状、シート状などが挙げられる。中でも、円筒状支持体であることが好ましい。また、支持体の表面に、陽極酸化などの電気化学的な処理や、ブラスト処理、切削処理などを施してもよい。
支持体の材質としては、金属、樹脂、ガラスなどが好ましい。
金属としては、アルミニウム、鉄、ニッケル、銅、金、ステンレスや、これらの合金などが挙げられる。中でも、アルミニウムを用いたアルミニウム製支持体であることが好ましい。
また、樹脂やガラスには、導電性材料を混合又は被覆するなどの処理によって、導電性を付与してもよい。
【0047】
<感光層>
電子写真感光体の感光層は、主に、(1)積層型感光層と、(2)単層型感光層とに分類される。(1)積層型感光層は、電荷発生物質を含有する電荷発生層と、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層と、を有する。(2)単層型感光層は、電荷発生物質と電荷輸送物質を共に含有する感光層である。
【0048】
(1)積層型感光層
積層型感光層は、電荷発生層と、電荷輸送層と、を有する。
【0049】
(1-1)電荷発生層
電荷発生層は、電荷発生物質と、樹脂と、を含有することが好ましい。
【0050】
電荷発生物質としては、アゾ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、インジゴ顔料、フタロシアニン顔料などが挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料、フタロシアニン顔料が好ましい。フタロシアニン顔料の中でも、オキシチタニウムフタロシアニン顔料、クロロガリウムフタロシアニン顔料、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料が好ましい。
電荷発生層中の電荷発生物質の含有量は、電荷発生層の全質量に対して、40質量%以上85質量%以下であることが好ましく、60質量%以上80質量%以下であることがより好ましい。
【0051】
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、セルロース樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ポリビニルブチラール樹脂がより好ましい。
【0052】
また、電荷発生層は、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの添加剤を更に含有してもよい。具体的には、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、硫黄化合物、リン化合物、ベンゾフェノン化合物、などが挙げられる。
【0053】
電荷発生層の平均膜厚は、0.1μm以上1μm以下であることが好ましく、0.15μm以上0.4μm以下であることがより好ましい。
【0054】
電荷発生層は、上述の各材料及び溶剤を含有する電荷発生層用塗布液を調製し、この塗膜を支持体又は後述する導電層或いは下引き層上に形成し、乾燥させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤などが挙げられる。
【0055】
(1-2)電荷輸送層
電荷輸送層は、電荷輸送物質と、樹脂と、を含有することが好ましい。
【0056】
電荷輸送物質としては、例えば、多環芳香族化合物、複素環化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、エナミン化合物、ベンジジン化合物、トリアリールアミン化合物や、これらの物質から誘導される基を有する樹脂などが挙げられる。これらの中でも、トリアリールアミン化合物、ベンジジン化合物が好ましく、下記式(1)の構造のものが好適に用いられる。
【化1】
式(1)中、R~R10は、それぞれ独立して、水素原子、又はメチル基を表す。
【0057】
式(1)で示される構造の例を式(1-1)~(1-10)に示す。この中でも、式(1-1)~(1-6)で示される構造がより好ましい。
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【0058】
樹脂としては、熱可塑性樹脂が用いられ、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。ポリエステル樹脂としては、特にポリアリレート樹脂が好ましい。
【0059】
電荷輸送層中の電荷輸送物質の含有量は、電荷輸送層の全質量に対して、25質量%以上70質量%以下であることが好ましく、30質量%以上55質量%以下であることがより好ましい。
【0060】
電荷輸送物質と樹脂との含有量比(質量比)は、4/10~20/10が好ましく、5/10~12/10がより好ましい。
【0061】
また、電荷輸送層は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、レベリング剤、滑り性付与剤、耐摩耗性向上剤などの添加剤を含有してもよい。具体的には、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、硫黄化合物、リン化合物、ベンゾフェノン化合物、シロキサン変性樹脂、シリコーンオイル、フッ素樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、ポリエチレン樹脂粒子、シリカ粒子、アルミナ粒子、窒化ホウ素粒子などが挙げられる。
【0062】
電荷輸送層の平均膜厚は、5μm以上50μm以下であることが好ましく、8μm以上40μm以下であることがより好ましく、10μm以上30μm以下であることが特に好ましい。
【0063】
電荷輸送層は、上述の各材料及び溶剤を含有する電荷輸送層用塗布液を調製し、この塗膜を電荷発生層上に形成し、乾燥させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤が挙げられる。これらの溶剤の中でも、エーテル系溶剤又は芳香族炭化水素系溶剤が好ましい。
【0064】
(2)単層型感光層
単層型感光層は、電荷発生物質、電荷輸送物質、樹脂及び溶剤を含有する感光層用塗布液を調製し、この塗膜を支持体又は導電層或いは下引き層上に形成し、乾燥させることで形成することができる。電荷発生物質、電荷輸送物質、樹脂としては、上記「(1)積層型感光層」における材料の例示と同様である。
【0065】
<保護層>
本発明において、電荷輸送層の上には、保護層を設けている。保護層を設けることで、電子写真感光体の表面の耐久性を向上することができる。
保護層は、導電性粒子及び/又は電荷輸送物質と、樹脂とを含有することが好ましい。
【0066】
導電性粒子としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物の粒子が挙げられる。電荷輸送物質としては、多環芳香族化合物、複素環化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、エナミン化合物、ベンジジン化合物、トリアリールアミン化合物や、これらの物質から誘導される基を有する樹脂などが挙げられる。これらの中でも、トリアリールアミン化合物、ベンジジン化合物が好ましい。
【0067】
樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。中でも、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂が好ましい。また、保護層は、重合性官能基を有するモノマーを含有する組成物を重合することで硬化膜として形成してもよい。その際の反応としては、熱重合反応、光重合反応、放射線重合反応などが挙げられる。重合性官能基を有するモノマーが有する重合性官能基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基などが挙げられる。重合性官能基を有するモノマーとして、電荷輸送能を有する材料を用いてもよい。
【0068】
重合性官能基を有した化合物は、連鎖重合性官能基と同時に電荷輸送性構造を有していてもよい。電荷輸送性構造としてはトリアリールアミン構造が電荷輸送の点で好ましい。連鎖重合性官能基としてはアクリロイル基、メタクリロイル基が好ましい。官能基の数は一つ又は複数有していても良い。中でも、複数の官能基を有した化合物と一つの官能基を有した化合物を含有して硬化膜を形成すると、複数の官能基同士の重合で生じたひずみが解消されやすいため、特に好ましい。
【0069】
上記一つの官能基を有した化合物の例を(2-1)~(2-6)に示す。
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【0070】
上記複数の官能基を有した化合物の例を(3-1)~(3-7)に示す。
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【0071】
保護層は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、レベリング剤、滑り性付与剤、耐摩耗性向上剤、などの添加剤を含有してもよい。具体的には、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、硫黄化合物、リン化合物、ベンゾフェノン化合物、シロキサン変性樹脂、シリコーンオイル、フッ素樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、ポリエチレン樹脂粒子、シリカ粒子、アルミナ粒子、窒化ホウ素粒子などが挙げられる。
【0072】
保護層は、上述の各材料及び溶剤を含有する保護層用塗布液を調製し、この塗膜を電荷輸送層又は単層型感光層上に形成し、乾燥及び/又は硬化させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、スルホキシド系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤が挙げられる。
【0073】
<導電層>
本発明の電子写真感光体は、支持体の上に、導電層を設けてもよい。導電層を設けることで、支持体表面の傷や凹凸を隠蔽することや、支持体表面における光の反射を制御することができる。導電層は、導電性粒子と、樹脂と、を含有することが好ましい。導電性粒子の材質としては、金属酸化物、金属、カーボンブラックなどが挙げられる。
【0074】
金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化インジウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化ビスマスなどが挙げられる。金属としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などが挙げられる。
これらの中でも、導電性粒子として、金属酸化物を用いることが好ましく、特に、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛を用いることがより好ましい。
導電性粒子として金属酸化物を用いる場合、金属酸化物の表面をシランカップリング剤などで処理したり、金属酸化物にリンやアルミニウムなど元素やその酸化物をドーピングしたりしてもよい。
また、導電性粒子は、芯材粒子と、その粒子を被覆する被覆層とを有する積層構成としてもよい。芯材粒子としては、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛などが挙げられる。被覆層としては、酸化スズなどの金属酸化物が挙げられる。
また、導電性粒子として金属酸化物を用いる場合、その体積平均粒子径が、1nm以上500nm以下であることが好ましく、3nm以上400nm以下であることがより好ましい。
【0075】
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などが挙げられる。
また、導電層は、シリコーンオイル、樹脂粒子、酸化チタンなどの隠蔽剤などを更に含有してもよい。
【0076】
導電層の平均膜厚は、1μm以上50μm以下であることが好ましく、3μm以上40μm以下であることが特に好ましい。導電層は、上述の各材料及び溶剤を含有する導電層用塗布液を調製し、この塗膜を支持体上に形成し、乾燥させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤などが挙げられる。導電層用塗布液中で導電性粒子を分散させるための分散方法としては、ペイントシェーカー、サンドミル、ボールミル、液衝突型高速分散機を用いた方法が挙げられる。
【0077】
<下引き層>
本発明の電子写真感光体は、支持体又は導電層の上に、下引き層を設けてもよい。下引き層を設けることで、層間の接着機能が高まり、電荷注入阻止機能を付与することができる。
下引き層は、樹脂を含有することが好ましい。また、重合性官能基を有するモノマーを含有する組成物を重合することで硬化膜として下引き層を形成してもよい。
【0078】
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、アルキッド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリエチレンオキシド樹脂、ポリプロピレンオキシド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミド酸樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、セルロース樹脂などが挙げられる。
【0079】
重合性官能基を有するモノマーが有する重合性官能基としては、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、メチロール基、アルキル化メチロール基、エポキシ基、金属アルコキシド基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、カルボン酸無水物基、炭素-炭素二重結合基などが挙げられる。
【0080】
また、下引き層は、電気特性を高める目的で、電子輸送物質、金属酸化物、金属、導電性高分子などを更に含有してもよい。これらの中でも、電子輸送物質、金属酸化物を用いることが好ましい。
【0081】
電子輸送物質としては、キノン化合物、イミド化合物、ベンズイミダゾール化合物、シクロペンタジエニリデン化合物、フルオレノン化合物、キサントン化合物、ベンゾフェノン化合物、シアノビニル化合物、ハロゲン化アリール化合物、シロール化合物、含ホウ素化合物などが挙げられる。電子輸送物質として、重合性官能基を有する電子輸送物質を用い、上述の重合性官能基を有するモノマーと共重合させることで、硬化膜として下引き層を形成してもよい。
【0082】
金属酸化物としては、酸化インジウムスズ、酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素などが挙げられる。金属としては、金、銀、アルミなどが挙げられる。
【0083】
また、下引き層は、添加剤を更に含有してもよい。下引き層の平均膜厚は、0.1μm以上50μm以下であることが好ましく、0.2μm以上40μm以下であることがより好ましく、0.3μm以上30μm以下であることが特に好ましい。
【0084】
下引き層は、上述の各材料及び溶剤を含有する下引き層用塗布液を調製し、この塗膜を支持体又は導電層上に形成し、乾燥及び/又は硬化させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤などが挙げられる。
【0085】
[プロセスカートリッジ、電子写真装置]
これまで述べてきた電子写真感光体は、帯電工程、現像工程、転写工程及びクリーニング工程からなる群より選択される少なくとも1つの工程と、を一体に支持したプロセスカートリッジに具備することが可能である。前記プロセスカートリッジは、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とする。
【0086】
図5に、本発明の電子写真感光体を備えたプロセスカートリッジを有する電子写真装置の概略構成の一例を示す。
1は円筒状の電子写真感光体であり、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。電子写真感光体1の表面は、帯電手段3により、正又は負の所定電位に帯電される。尚、図5においては、ローラ型帯電部材によるローラ帯電方式を示しているが、コロナ帯電方式、近接帯電方式、注入帯電方式などの帯電方式を採用してもよい。帯電された電子写真感光体1の表面には、露光手段(不図示)から露光光4が照射され、目的の画像情報に対応した静電潜像が形成される。電子写真感光体1の表面に形成された静電潜像は、現像手段5内に収容されたトナーで現像され、電子写真感光体1の表面にはトナー像が形成される。電子写真感光体1の表面に形成されたトナー像は、転写手段6により、転写材7に転写される。トナー像が転写された転写材7は、定着手段8へ搬送され、トナー像の定着処理を受け、電子写真装置の外へプリントアウトされる。電子写真装置は、転写後の電子写真感光体1の表面に残ったトナーなどの付着物を除去するための、クリーニング手段9を有していてもよい。また、クリーニング手段を別途設けず、上記付着物を現像手段などで除去する、所謂、クリーナーレスシステムを用いてもよい。電子写真装置は、電子写真感光体1の表面を、前露光手段(不図示)からの前露光光10により除電処理する除電機構を有していてもよい。また、本発明のプロセスカートリッジ11を電子写真装置本体に着脱するために、レールなどの案内手段12を設けてもよい。
【0087】
本発明の電子写真感光体は、レーザービームプリンター、LEDプリンター、複写機などに用いることができる。
【0088】
[電子写真感光体の保護層の測定手法]
本発明における電子写真感光体における、保護層の硬度及び弾性変形率、粒子の体積平均粒子径Dm及び個数平均粒子径Dn、保護層の樹脂部分の平均膜厚T、保護層における粒子の被覆率と変動係数、及び保護層における露出した粒子のヤング率の測定手法について説明する。
【0089】
<保護層(表面層)の硬度及び弾性変形率の測定>
ユニバーサル硬さ値(HU)及び弾性変形率(We)は、微小硬さ測定装置フィシャースコープH100V(Fischer社製)を用いて測定した。測定は、温度23℃湿度50%RHの環境下で、圧子として対面角136°のビッカース四角錐ダイヤモンド圧子を使用しておこなった。測定対象の保護層表面に該ダイヤモンド圧子を押し込み、7秒かけて2mNまで荷重をかけた後、7秒かけて徐々に減少させて荷重が0mNになるまでの押し込み深さを連続的に測定した。得られ結果から、ユニバーサル硬さ値(HU)及び弾性変形率(We)を求めた。
【0090】
<粒子の体積平均粒子径Dm及び個数平均粒子径Dnの測定方法>
体積平均粒子径はゼータサイザーNano-ZS(MALVERN社製)を用いて測定する。該装置は動的光散乱法により、粒径を測定できる。まず、測定対象のサンプルの固液比が0.10質量%(±0.02質量%)となるように希釈して調整し、石英セルに採取して測定部に入れる。分散媒体は、サンプルが無機微粒子の場合は、水又はメチルエチルケトン/メタノール混合溶媒を用い、サンプルが樹脂粒子若しくはトナー用外添剤の場合は水を用いる。測定条件として、制御ソフトZetasizersoftware 6.30で サンプルの屈折率、分散溶媒の屈折率、粘度及び温度を入力し測定する。体積平均粒子径Dm、個数平均粒子径Dnを求める。
【0091】
粒子の屈折率は、化学便覧 基礎編 改訂4版(日本化学会編、丸善株式会社)のII巻517ページに記載された「固体の屈折率」から採用する。樹脂粒子の屈折率は、樹脂粒子に使用している樹脂の屈折率を前記制御ソフトに内蔵されている屈折率を採用する。ただし、内蔵されている屈折率が無い場合は、国立研究開発法人 物質・材料研究機構 高分子データベースに記載の値を用いる。トナー用外添剤の屈折率は、無機微粒子の屈折率と樹脂粒子に使用されている樹脂の屈折率から重量平均をとって計算する。分散溶媒の屈折率、粘度及び温度は、前記制御ソフトに内蔵されている数値を選択する。混合溶媒の場合は、混合する分散媒体の重量平均をとる。
【0092】
<保護層の樹脂部分の平均膜厚Tの求め方>
本発明の電子写真感光体を5mm角に切断しサンプルとする。前記サンプルの表面(電子写真感光体の表面に相当する面)に蒸着器で白金を30秒間コートする。FIB-SEM(NVision40、カールツァイス社製)にてガリウムイオンビームにて縦10μm、横10μm、深さ方向へ切削加工を行う。加速電圧は5kVで焦点距離はWD=5mmにてSEM観察を実施し、得られた断面図から画像処理ソフト〔イメージJ(https://imagej.nih.gov/ij/より入手可能)〕を用い、樹脂部分の平均膜厚を求めた。具体的には、粒子を含まない部分を抽出し、得られた画像の断面長手方向全ての画素位置で膜厚を求め、それらを積算し平均化した。
【0093】
<保護層における粒子の被覆率と変動係数の測定方法>
本発明の電子写真感光体において、保護層の表面を上面視したとき、前記粒子の露出部分の面積の合計をS1とし、前記粒子の露出部分以外の面積の合計をS2としたとき、S1/(S1+S2)(以下「被覆率」と呼ぶ)の算出は、以下のように行った。
保護層の表面の粒子について、走査型電子顕微鏡(SEM)(「S-4800」、日本電子株式会社製)を用いて撮影した感光体の保護層の表面の30000倍の写真画像をスキャナーにより取り込み、画像処理解析装置(「LUZEX AP」、株式会社ニレコ製)を用いて該写真画像の粒子について2値化処理する。1視野における感光体における粒子の露出部分の面積をS1、粒子の露出部分以外の面積の合計をS2として、被覆率S1/(S1+S2)(%)を算出する。合計10視野に対して前記の被覆率の算出を行い、得られた被覆率の平均値を感光体の保護層の表面における粒子の被覆率とする。
また、合計10視野から得られた標準偏差を前記平均値で除した値を粒子の被覆率の変動係数とする。
【0094】
<保護層の表面における露出した粒子のヤング率の測定方法>
評価機として、ヒーターを内蔵する走査型プローブ顕微鏡(株式会社日立ハイテクサイエンス製「S-image」)を備えたSPMプローブステーション(株式会社日立ハイテクサイエンス製「NanoNaviReal」)を用いた。測定に先立ち、標準物質としてPMMA(ポリメタクリル酸メチル)粒子を用いて許容範囲2.920±0.119GPa(ヤング率)の条件で評価機を校正した。校正後の評価機で測定したPMMAのヤング率は3.01GPaであった。
電子写真感光体の保護層の表面の粒子に対して、SPMで測定を実施し10回の測定結果の平均値を粒子のヤング率とした。
【実施例0095】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を更に詳細に説明する。本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。
なお、以下の実施例の記載において、「部」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。また、実施例及び比較例の電子写真感光体の各層の膜厚は、渦電流式膜厚計(Fischerscope、フィッシャーインスツルメント社製)で求め、又は、単位面積当たりの質量から比重換算で求めた。
【0096】
<電子写真感光体1の製造例>
直径20mm、長さ257.5mmのアルミニウムシリンダー(JIS-A3003、アルミニウム合金)を支持体(導電性支持体)とした。
【0097】
(導電層用塗布液1の作製例)
・アナターゼ型二酸化チタン
(平均一次粒径150nm、ニオブ含有量0.20wt%) 100質量部
・純水 1000質量部
上記混合物を分散させ、1Lの水懸濁液とし、60℃に加温した。
五塩化ニオブ(NbCl5)3質量部を11.4モル/L塩酸100mLに溶解させたニオブ溶液とTiとして33.7質量部を含む硫酸チタン溶液600mLを混合したチタンニオブ酸液と10.7モル/L水酸化ナトリウム溶液とを懸濁液のpHが2~3となるように3時間かけて同時に滴下した。滴下終了後、懸濁液をろ過、洗浄し、110℃で8時間乾燥した。
この乾燥物を大気雰囲気中、800℃にて1時間の加熱処理を行い、酸化チタンを含有する芯材と、ニオブがドープされている酸化チタンを含有する被覆層と、を有する金属酸化物粒子1の粉末を得た。
【0098】
次に
・フェノール樹脂
(商品名:プライオーフェンJ-325、DIC製、樹脂固形分:60%、硬化後の密度:1.3g/cm) 50質量部
・1-メトキシ-2-プロパノール 35質量部
・金属酸化物粒子1 75質量部
・ガラスビーズ(平均粒径1.0mm) 120質量部
を混合し、縦型サンドミルに入れ、分散液温度23±3℃、回転数1500rpm(周速5.5m/s)の条件で4時間分散処理を行い、金属酸化物粒子分散液1を得た。金属酸化物粒子分散液1からメッシュでガラスビーズを取り除き、
・シリコーンオイル(商品名:SH28 PAINT ADDITIVE、東レ・ダウコーニング製) 0.01質量部
・シリコーン樹脂粒子(商品名:トスパール120、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ製、平均粒径:2μm、密度:1.3g/cm) 10質量部
を添加して攪拌し、PTFE濾紙(商品名:PF060、アドバンテック東洋製)を用いて加圧ろ過することによって、導電層用塗布液1を調製した。
【0099】
(導電層1の作製例)
前記導電層用塗布液1を支持体上に浸漬塗布し、これを1時間140℃で加熱することによって、膜厚が20μmの導電層1を形成した。
【0100】
(下引き層用塗布液1の作製例)
・ルチル型酸化チタン粒子(平均一次粒径:50nm、テイカ製) 100質量部
・フェノール樹脂(商品名:プライオーフェンJ-325、大日本インキ化学工業(株)製、樹脂固形分:60質量%) 132質量部
・トルエン 500質量部
・ビニルトリメトキシシラン(商品名:KBM-1003、信越化学製) 5質量部
・ガラスビーズ(直径0.8mm) 450質量部
上記成分を混合し8時間攪拌した。その後、トルエンを減圧蒸留にて留去し、3時間120℃で乾燥させることによって、ビニルトリメトキシシランで表面処理されたルチル型酸化チタン粒子1を得た。
【0101】
次に
・表面処理されたルチル型酸化チタン粒子1 18質量部
・N-メトキシメチル化ナイロン(商品名:トレジンEF-30T、ナガセケムテックス製) 4.5質量部
・共重合ナイロン樹脂(商品名:アミランCM8000、東レ製) 1.5質量部
・メタノール 90質量部
・1-ブタノール 60質量部
・アセトン 15質量部
・ガラスビーズ(平均粒径1.0mm) 120質量部
を混合し、縦型サンドミルにて5時間分散処理することにより、下引き層用塗布液1を調製した。
【0102】
(下引き層1の作製例)
下引き層用塗布液1を前記導電層1上に浸漬塗布し、170℃で30分間加熱することによって、膜厚が1.0μmの下引き層1を形成した。
【0103】
(電荷発生層1の作製例)
・ヒドロキシガリウムフタロシアニン(CuKα特性X線回折より得られるチャートにおいて、
7.5°及び28.4°の位置にピークを有する) 10質量部
・ポリビニルブチラール樹脂(商品名:エスレックBX-1、積水化学工業社製)
5質量部
・シクロヘキサノン 200質量部
・ガラスビーズ 200質量部
をサンドミル装置で6時間分散した。これにシクロヘキサノン150質量部と酢酸エチル350質量部を更に加えて希釈して電荷発生層用塗布液1を得た。得られた電荷発生層用塗布液1を下引き層1の上に浸漬塗布し、95℃で10分間乾燥することにより、膜厚が0.20μmの電荷発生層1を形成した。
【0104】
(電荷輸送層1の作製例)
次に、以下の材料を用意した。
・上記構造式(1-1)で示される電荷輸送物質(正孔輸送性物質) 5質量部
・上記構造式(1-3)で示される電荷輸送物質(正孔輸送性物質) 5質量部
・ポリカーボネート(商品名:ユーピロンZ400、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製) 10質量部
・下記構造式(C-1)と下記構造式(C-2)の共重合ユニットを有するポリカーボネート樹脂0.02部(x/y=0.95/0.05:粘度平均分子量=20000)
これらを、トルエン60質量部/安息香酸メチル3質量部/テトラヒドロフラン15質量部の混合溶剤に溶解させることによって電荷輸送層用塗布液1を調製した。この電荷輸送層用塗布液1を電荷発生層1上に浸漬塗布して塗膜を形成し、塗膜を乾燥温度40℃で5分間乾燥させることによって、膜厚が16μmの電荷輸送層1を形成した。
【化25】
【化26】
【0105】
(粒子を含有する保護層1の作製例)
・粒子1(KE-P30/表1に記載) 4.8質量部
・上記構造式(2-1)で示される電荷輸送物質(正孔輸送性物質) 0.1質量部
・上記構造式(3-1)で示される電荷輸送物質(正孔輸送性物質) 0.2質量部
・シロキサン変性アクリル化合物(商品名:サイマックUS270、東亜合成(株)製)
0.1質量部
・シクロヘキサン 30質量部
・1-プロパノール 70質量部
を混合して撹拌し、保護層用塗布液1を調製した。
この保護層用塗布液1を電荷輸送層1の上に浸漬塗布して塗膜を形成し、得られた塗膜を5分間40℃で乾燥させた。
その後、窒素雰囲気下にて、加速電圧70kV、ビーム電流5.0mAの条件で支持体(被照射体)を300rpmの速度で回転させながら、1.6秒間電子線を塗膜に照射した。最表面層位置の線量は15kGyであった。その後、窒素雰囲気下にて、25℃から100℃まで20秒かけて昇温させて第一の加熱を行い、膜厚1.0μmの保護層を形成した。電子線照射から、その後の加熱処理までの酸素濃度は10ppm以下であった。次に、大気中において、塗膜の温度が25℃になるまで自然冷却し、塗膜の温度が135℃になる条件で20分間の第二の加熱処理を行った。このようにして電子写真感光体1を作製した。粒子の分散状態の結果を表3に示す。
【0106】
<電子写真感光体2の製造例>
前記電子写真感光体1の製造例において、電荷発生層、電荷輸送層までは同様に作製し、保護層を下記のとおり作製した。それ以外は電子写真感光体1の製造例と同様にして電子写真感光体2を作製した。
【0107】
(粒子を含有する保護層2の作製例)
次に、以下の材料を用意した。
・粒子1(KE-P30/表1に記載) 4.8質量部
・上記構造式(1-1)で示される電荷輸送物質(正孔輸送性物質) 0.5質量部
・上記構造式(1-3)で示される電荷輸送物質(正孔輸送性物質) 0.5質量部
・ポリカーボネート(商品名:ユーピロンZ400、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製) 1質量部
・上記構造式(C-1)と上記構造式(C-2)の共重合ユニットを有するポリカーボネート樹脂0.02部(x/y=0.95/0.05:粘度平均分子量=20000)
これらを、トルエン63質量部/安息香酸メチル3.2質量部/テトラヒドロフラン16質量部の混合溶剤に溶解させることによって保護層塗布液2を調製した。この保護層塗布液2を電荷発生層上に浸漬塗布して塗膜を形成し、塗膜を乾燥温度40℃で5分間乾燥させることによって、粒子が露出した保護層2を形成した。
【0108】
<電子写真感光体3の製造例>
電子写真感光体1の製造例において、電荷輸送層を下記のとおり作製した。それ以外は電子写真感光体1の製造例と同様にして、電子写真感光体3を作製した。
【0109】
(電荷輸送層2の作製例)
次に、以下の材料を用意した。
・上記構造式(1-1)で示される電荷輸送物質(正孔輸送性物質) 5質量部
・上記構造式(1-3)で示される電荷輸送物質(正孔輸送性物質) 5質量部
・ポリカーボネート(商品名:ユーピロンZ200、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製) 10質量部
・上記構造式(C-1)と上記構造式(C-2)の共重合ユニットを有するポリカーボネート樹脂0.02部(x/y=0.95/0.05:粘度平均分子量=10000)
これらを、トルエン60質量部/安息香酸メチル3質量部/テトラヒドロフラン15質量部の混合溶剤に溶解させることによって電荷輸送層用塗布液2を調製した。この電荷輸送層用塗布液2を電荷発生層上に浸漬塗布して塗膜を形成し、塗膜を乾燥温度40℃で5分間乾燥させることによって、膜厚が16μmの電荷輸送層2を形成した。
【0110】
<電子写真感光体4の製造例>
電子写真感光体1の製造例において、添加する粒子を下記に変更し、それ以外は同様の条件で電子写真感光体4を作製した。
・粒子2(エポスターMX100/表1に記載) 4.8質量部
【0111】
<電子写真感光体5の製造例>
電子写真感光体1の製造例において、添加する粒子を下記に変更し、それ以外は同様の条件で電子写真感光体5を作製した。
・粒子3(エポスターSS/表1に記載) 3.2質量部
【0112】
<電子写真感光体6の製造例>
電子写真感光体1の製造例において、添加する粒子を下記に変更し、それ以外は同様の条件で電子写真感光体6を作製した。
・粒子4(FS-106/表1に記載) 3.6質量部
【0113】
<電子写真感光体7の製造例>
電子写真感光体1の製造例において、添加する粒子を下記に変更し、それ以外は同様の条件で電子写真感光体7を作製した。
・粒子5(GTR-100/表1に記載) 6.0質量部
【0114】
<電子写真感光体8の製造例>
電子写真感光体1の製造例において、添加する粒子を下記に変更し、それ以外は同様の条件で電子写真感光体8を作製した。
・粒子6(QSG-170/表1に記載) 3.2質量部
【0115】
<電子写真感光体9の製造例>
電子写真感光体1の製造例において、粒子を含有する保護層1の作製例における、シロキサン変性アクリル化合物(商品名:サイマックUS270、東亜合成(株)製)の使用量を0.2質量部に変更した以外は同様の条件で電子写真感光体9を作製した。
【0116】
<電子写真感光体10の製造例>
電子写真感光体1の製造例において、粒子を含有する保護層1の作製例における、シロキサン変性アクリル化合物(商品名:サイマックUS270、東亜合成(株)製)の使用量を0.02質量部に変更した以外は同様の条件で電子写真感光体10を作製した。
【0117】
<電子写真感光体11の製造例>
電子写真感光体1の製造例において、粒子を含有する保護層1の作製例で使用したシクロヘキサンと1-プロパノールの使用量を、
・シクロヘキサン 40質量部
・1-プロパノール 90質量部
に変更し、膜厚は引き上げ速度で調整し、それ以外は同様の条件で電子写真感光体11を作製した。
【0118】
<電子写真感光体12の製造例>
電子写真感光体1の製造例において、粒子を含有する保護層1の作製例で使用したシクロヘキサンと1-プロパノールの使用量を、
・シクロヘキサン 20質量部
・1-プロパノール 60質量部
に変更し、膜厚は引き上げ速度で調整し、それ以外は同様の条件で電子写真感光体12を作製した。
【0119】
<電子写真感光体13の製造例>
電子写真感光体1の製造例において、添加する粒子を下記に変更し、それ以外は同様の条件で電子写真感光体13を作製した。
・粒子1(KE-P30/表1に記載) 10.0質量部
【0120】
<電子写真感光体14の製造例>
電子写真感光体1の製造例において、添加する粒子を下記に変更し、それ以外は同様の条件で電子写真感光体14を作製した。
・粒子1(KE-P30/表1に記載) 6.8質量部
【0121】
<電子写真感光体15の製造例>
電子写真感光体1の製造例において、添加する粒子を下記に変更し、それ以外は同様の条件で電子写真感光体15を作製した。
・粒子1(KE-P30/表1に記載) 6.0質量部
【0122】
<電子写真感光体16の製造例>
電子写真感光体1の製造例において、添加する粒子を下記に変更し、それ以外は同様の条件で電子写真感光体16を作製した。
・粒子1(KE-P30/表1に記載) 3.6質量部
【0123】
<電子写真感光体17の製造例>
電子写真感光体1の製造例において、添加する粒子を下記に変更し、保護層の膜厚は塗工速で調整し、それ以外は同様の条件で電子写真感光体17を作製した。
・粒子1(KE-P30/表1に記載) 3.6質量部
【0124】
<電子写真感光体18の製造例>
電子写真感光体1の製造例において、添加する粒子を下記に変更し、保護層の膜厚は塗工速で調整し、それ以外は同様の条件で電子写真感光体18を作製した。
・粒子7(KE-P10/表1に記載) 2.0質量部
【0125】
<電子写真感光体19の製造例>
電子写真感光体1の製造例において、添加する粒子を下記に変更し、保護層の膜厚は塗工速で調整し、それ以外は同様の条件で電子写真感光体19を作製した。
・粒子8(KE-P50/表1に記載) 8.0質量部
【0126】
<電子写真感光体20、21の製造例>
電子写真感光体1の製造例において、保護層の膜厚は塗工速で調整し、それ以外は同様の条件で電子写真感光体20、21を作製した。
【0127】
<電子写真感光体22の製造例>
電子写真感光体1の製造例において、添加する粒子を下記に変更し、保護層の膜厚は塗工速で調整し、それ以外は同様の条件で電子写真感光体22を作製した。
・粒子1(KE-P30/表1に記載) 12質量部
【0128】
<電子写真感光体23の製造例>
電子写真感光体1の製造例において、粒子を添加せず、それ以外は同様の条件で電子写真感光体23を作製した。
【0129】
上記電子写真感光体の製造例において使用した粒子1から8の種類、製造会社(メーカー)、個数平均粒子径、体積平均粒子径、(体積平均粒子径)/(個数平均粒子径)を表1に示す。
さらに、各電子写真感光体の表面の保護層に添加した粒子と部数、溶媒について、表2に示す。表2において、作製した電子写真感光体2は、結着樹脂が異なるため、溶媒条件は上記した電子写真感光体2の製造例に記載した。さらに、得られた各電子写真感光体の粒子分散状態について、表3に示す。
【0130】
【表1】
【0131】
【表2】
【0132】
【表3】
【0133】
〔実施例1~19〕
上記で作製した電子写真感光体1~6、8~15、17~19、21~22を用いて、以下に示す転写性及び耐久濃度推移の評価を行った。得られた評価結果を表4に示す。
なお、電子写真感光体1~6、8~15、17~19、21~22を用いた場合を順に実施例1~19とした。
【0134】
〔比較例1~4〕
比較例1では、Dm/Dnが1.5以上である粒子5を含有する電子写真感光体7を用いて以下に示す転写性及び耐久濃度推移の評価を行った。
比較例2、3では、S1/(S1+S2)が0,50以下である、電子写真感光体16、20を用いて以下に示す転写性及び耐久濃度推移の評価を行った。
比較例4では、粒子を含有していない電子写真感光体23を用いて以下に示す転写性及び耐久濃度推移の評価を行った。
得られた評価結果を表4に示す。
【0135】
<評価手法>
<転写性の評価>
評価機として、キヤノン株式会社製レーザービームプリンターLBP712Ciの改造機を用いた。改造点は、評価機本体及びソフトウェアを変更することにより、転写工程の印加バイアスを変更できるようにした。
前記評価機のトナーカートリッジにトナーを装填し、そのトナーカートリッジを常温常湿環境下(25℃、50%RH;以下、N/Nともいう)で24時間放置した。常温常湿環境下で24時間放置後のトナーカートリッジを上記評価機に取り付け、N/N環境下で左右に余白を50mmずつとり中央部に、5.0%の印字率の画像をA4用紙横方向で500枚までプリントアウトした。
評価は、使用初期(1枚目印字後)と500枚印字後(長期使用後)にベタ画像を出力し、ベタ画像形成時の感光体上の転写残トナーを、透明なポリエステル製の粘着テープを用いてテーピングしてはぎ取った。
はぎ取った粘着テープを紙上に貼ったものの濃度から、粘着テープのみを紙上に貼ったものの濃度を差し引いた濃度差を算出した。濃度測定は5箇所行い、その算術平均値を求めた。そして、その濃度差の値(転写残濃度とする。)から、以下の評価基準により転写性の良否を判定した。なお、濃度はX-Riteカラー反射濃度計(X-rite社製、X-rite 500Series)で測定した。
(評価基準)
A:転写残濃度が0.2未満
B:転写残濃度が0.2以上0.5未満
C:転写残濃度が0.5以上1.0未満
D:転写残濃度が1.0以上
【0136】
<耐久濃度推移の評価>
改造機を高温高湿(30℃、80%RH)環境下において、耐久試験の濃度推移について評価を行った。20mm四方のベタ黒パッチが現像域内に5箇所配置されたオリジナル画像を出力し、初期の反射濃度が1.3になるように現像バイアスを設定した。次に、印字比率が1%の文字画像を10000枚出力した。用紙は、普通紙 CS-680(68g/m2)(キヤノンマーケティングジャパン株式会社)を用いた。ベタ黒パッチの5点平均濃度が、初期画像の濃度に対する耐久試験後の画像濃度の濃度差を比較することで、耐久性を評価した。
なお、画像濃度は「マクベス反射濃度計 RD918」(マクベス社製)を用いて、オリジナル画像の白地部分に対する相対濃度を測定した。
以下の評価基準で耐久性の良否を評価した。
(評価基準)
A:濃度差が0.1未満
B:濃度差が0.10以上0.15未満
C:濃度差が0.15以上0.20未満
D:濃度差が0.20以上
【0137】
【表4】
【0138】
本実施形態の開示は、以下の構成を含む。
(構成1)
支持体上に、電荷発生層、電荷輸送層及び保護層をこの順に積層させてなる電子写真感光体において、
該保護層が、結着樹脂及び粒子を含有し、
該保護層の断面において、該粒子を含まない部位の保護層の平均膜厚をTとし、該粒子の体積平均粒子径をDmとしたとき、下記式(a)を満たす、
Dm > T 式(a)
ことを特徴とする電子写真感光体。
(構成2)
前記電荷輸送層の硬度をH1とし、前記保護層の結着樹脂成分の硬度をH2としたとき、下記式(b)を満たす、
H1 > H2 式(b)
構成1に記載の電子写真感光体。
(構成3)
前記電荷輸送層の弾性変形率をG1とし、前記保護層の結着樹脂成分の弾性変形率をG2としたとき、下記式(c)を満たす、
G1 > G2 式(c)
構成1又は2に記載の電子写真感光体。
(構成4)
前記粒子の体積平均粒子径Dmの標準偏差が、該体積平均粒子径の20%以下である、構成1~3のいずれかに記載の電子写真感光体。
(構成5)
前記粒子の体積平均粒子径をDmとし、個数平均粒子径をDnとしたとき、Dm/Dnが1.5以下である、構成1~4のいずれかに記載の電子写真感光体。
(構成6)
前記平均膜厚Tの変動係数が20%以下である、構成1~5のいずれかに記載の電子写真感光体。
(構成7)
前記保護層の断面において、前記保護層の表面から部分的に露出し、かつ前記保護層と前記電荷輸送層との界面に接する粒子が、前記保護層に含有される粒子の全数に対して50個数%以上である、構成1~5のいずれかに記載の電子写真感光体。
(構成8)
前記粒子の少なくとも一部の粒子は、前記保護層の表面から部分的に露出しており、
前記保護層の表面を上面視したとき、前記粒子の露出部分の面積の合計をS1とし、該粒子の露出部分以外の面積の合計をS2としたとき、S1/(S1+S2)が、下記式(d)を満たす、
S1/(S1+S2)≧ 0.50 式(d)
構成1~7のいずれかに記載の電子写真感光体。
(構成9)
前記粒子の前記体積平均粒子径Dmと前記保護層の平均膜厚Tが、
下記式(e)を満たす、
Dm > 2T 式(e)
構成1~7のいずれかに記載の電子写真感光体。
(構成10)
前記保護層の結着樹脂成分の硬度をH2とし、前記粒子の硬度をH3としたとき、下記式(f)を満たす、
H3 > H2 式(f)
構成1~7のいずれかに記載の電子写真感光体。
(構成11)
前記電荷輸送層の硬度をH1とし、前記保護層の結着樹脂成分の硬度をH2とし、前記粒子の硬度をH3としたとき、下記式(g)を満たす、
H3 > H1 > H2 式(g)
構成1~9のいずれかに記載の電子写真感光体。
(構成12)
構成1~11のいずれかに記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、及びクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段と、を一体に支持し、電子写真装置の本体に着脱自在であるプロセスカートリッジ。
(構成13)
構成1~11のいずれかに記載の電子写真感光体、並びに、帯電手段、露光手段、現像手段、及び転写手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段を有する電子写真装置。
【符号の説明】
【0139】
1 電子写真感光体
2 軸
3 帯電手段
4 露光光
5 現像手段
6 転写手段
7 転写材
8 定着手段
9 クリーニング手段
10 前露光光
11 プロセスカートリッジ
12 案内手段
101 支持体
102 電荷発生層
103 電荷輸送層
104 保護層
105 粒子
201 粒子の露出部分
202 粒子の露出部分以外の部分
図1
図2
図3
図4
図5