IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザウラー スピニング ソリューションズ ゲー・エム・ベー・ハー ウント コー. カー・ゲーの特許一覧

特開2022-189782繊維機械の作業ユニット用の糸貯留ユニット
<>
  • 特開-繊維機械の作業ユニット用の糸貯留ユニット 図1
  • 特開-繊維機械の作業ユニット用の糸貯留ユニット 図2
  • 特開-繊維機械の作業ユニット用の糸貯留ユニット 図3
  • 特開-繊維機械の作業ユニット用の糸貯留ユニット 図4
  • 特開-繊維機械の作業ユニット用の糸貯留ユニット 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189782
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】繊維機械の作業ユニット用の糸貯留ユニット
(51)【国際特許分類】
   D01H 4/40 20060101AFI20221215BHJP
   B65H 59/30 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
D01H4/40
B65H59/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022093528
(22)【出願日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】LU102827
(32)【優先日】2021-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(71)【出願人】
【識別番号】518264859
【氏名又は名称】ザウラー スピニング ソリューションズ ゲー・エム・ベー・ハー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Saurer Spinning Solutions GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Carlstr. 60, 52531 Uebach-Palenberg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ブンクター
(72)【発明者】
【氏名】マーティン レスツァート
(72)【発明者】
【氏名】ペーター エッガース
【テーマコード(参考)】
3F111
4L056
【Fターム(参考)】
3F111AA14
3F111CA11
3F111CB00
4L056AA14
4L056AA45
4L056CA06
4L056CA11
4L056CA52
(57)【要約】      (修正有)
【課題】巻取りプロセス中における糸張力を十分一定に維持することを特に確実に可能にする糸貯留ユニットを提供する。
【解決手段】紡績ユニット、及び/又は巻取りユニット用の糸貯留ユニット1であって、糸ガイドアーム2と、糸ガイドアームを可逆式に旋回させるために制御可能な駆動ユニット4を備える。巻取りプロセス中に糸張力を一定に維持するために、糸ガイドアームは、自由に回動可能に支持されていて、旋回軸線から間隔を置いて配置された第1の連結要素6を有し、駆動ユニットは第1の連結要素に対して横方向に、又は旋回軸線を中心にして移動可能に配置された磁気反発するように第1の連結要素に作用する磁気的な第2の連結要素を有し、第2の連結要素は、第1の連結要素に作用結合可能に駆動ユニットに配置されており、第1の連結要素に向かう方向への第2の連結要素の移動が、第1の連結要素の同方向の移動を生じさせることが特定される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維機械の作業ユニット用の糸貯留ユニット(1)であって、
- 旋回軸線(S)を中心にして旋回可能に支持された糸ガイドアーム(2)と、
- 前記糸ガイドアーム(2)を可逆式に旋回させるための制御可能な駆動ユニット(4)と
を備える、糸貯留ユニット(1)において、
- 前記糸ガイドアーム(2)は、自由に回動可能に支持されていて、前記旋回軸線(S)から間隔を置いて配置された、磁気作用する第1の連結要素(6)を有し、
- 前記駆動ユニットは、前記第1の連結要素(6)に対して移動可能に配置されるとともに磁気反発するように前記第1の連結要素(6)に作用する磁気的な第2の連結要素(7)を有し、該第2の連結要素(7)は、前記第1の連結要素(6)に作用結合可能に前記駆動ユニット(4)に配置されており、前記第1の連結要素(6)に向かう方向への前記第2の連結要素(7)の移動が、前記第1の連結要素(6)の同方向の移動を生じさせる
ことを特徴とする、糸貯留ユニット(1)。
【請求項2】
前記第2の連結要素(7)は、前記駆動ユニット(4)によって前記糸ガイドアーム(2)の前記旋回軸線(S)を中心にして同軸に移動可能な支持体(8)に配置されていることを特徴とする、請求項1記載の糸貯留ユニット(1)。
【請求項3】
前記第1の連結要素(6)は、前記糸ガイドアーム(2)に解離可能に固定されていることを特徴とする、請求項1または2記載の糸貯留ユニット(1)。
【請求項4】
前記駆動ユニット(4)は、駆動軸(16)を備えた電気モータ(5)を有し、前記駆動軸(16)は、前記支持体(8)に相対回動不能に結合されており、前記駆動軸(16)に前記糸ガイドアーム(2)が自由に回動可能に支持されていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項または複数項記載の糸貯留ユニット(1)。
【請求項5】
前記第1の連結要素(6)および前記第2の連結要素(7)は、永久磁石として形成されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項または複数項記載の糸貯留ユニット(1)。
【請求項6】
前記支持体(8)は、前記駆動軸(16)に対して同軸に配置されかつ前記駆動軸(16)に相対回動不能に結合された連結ディスク(14)に配置されていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項または複数項記載の糸貯留ユニット(1)。
【請求項7】
前記糸貯留ユニット(1)にセンサユニット(3)が割り当てられており、該センサユニット(3)は、前記糸ガイドアーム(2)に相対回動不能に結合された、特に前記駆動軸(16)に対して同軸に配置された、接続要素(15)の回動運動および/または位置を検出するように構成かつ配置されていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項または複数項記載の糸貯留ユニット(1)。
【請求項8】
繊維機械の作業ユニットであって、
糸を供給するための糸供給装置と、
供給された前記糸を綾振りするための綾振り装置と、
綾振りされた前記糸を、糸走路に沿って配置された巻取りパッケージに巻き取るための糸巻取り装置と
を備える、作業ユニットにおいて、
請求項1から7までのいずれか1項記載の糸貯留ユニット(1)を備え、該糸貯留ユニット(1)は、前記糸走路に沿って走行する前記糸を前記糸ガイドアーム(2)の旋回運動によって前記糸走路から規定通りに押し退けるために、前記糸走路に沿って前記糸供給装置と前記綾振り装置との間に配置されていることを特徴とする、作業ユニット。
【請求項9】
前記糸ガイドアーム(2)の休止位置が、前記糸走路を横切る位置に設けられており、該位置では、前記糸ガイドアーム(2)によって案内されている前記糸が、巻取り工程中に前記糸走路から押し退けられていることを特徴とする、請求項8記載の作業ユニット。
【請求項10】
前記作業ユニットに、制御システムと、情報を交換するために前記制御システムに接続可能なセンサユニット(3)とが割り当てられており、該センサユニット(3)は、前記糸ガイドアーム(2)の回動運動および/または位置を検出しかつセンサ情報を前記制御システムに伝達するように構成かつ配置されており、前記制御システムは、伝達された前記センサ情報をデータ処理し、評価し、評価結果に基づいて前記駆動ユニット(4)を規定通りに制御するように設計されていることを特徴とする、請求項8または9記載の作業ユニット。
【請求項11】
前記制御システムは、糸張力を調整しかつ/または案内された前記糸の貯留量を調整するために前記駆動ユニット(4)を制御するように構成されていることを特徴とする、請求項10記載の作業ユニット。
【請求項12】
請求項10または11記載の作業ユニットで走行する糸の糸張力を調整するための方法であって、
前記センサユニット(3)は、前記糸ガイドアーム(2)の回動運動および/または位置に関するセンサ情報を、前記作業ユニットに割り当てられた制御システムに伝達し、伝達された前記センサ情報に基づいて、前記制御システムは、存在する糸張力を識別するために、前記第1の連結要素(6)と前記第2の連結要素(7)との間に作用する磁力を評価し、前記糸張力に対する限界値または限界値範囲からの逸脱が許容不可と評価された場合に、前記糸ガイドアーム(2)の位置を変化させるために駆動ユニット(4)を規定通りに制御する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維機械の作業ユニット用、特に紡績ユニットおよび/または巻取りユニット用の糸貯留ユニットであって、
- 旋回軸線を中心にして旋回可能に支持された糸ガイドアームと、
- 糸ガイドアームを可逆式に旋回させるための制御可能な駆動ユニットと
を備える、糸貯留ユニットに関する。
【0002】
繊維機械、例えば紡績機および巻取り機の作業ユニット、特に紡績ユニットおよび/または巻取りユニットに関連して、パッケージ、例えば円錐形の綾巻きパッケージを巻き取るために、糸走路に沿って綾振り装置の上流に、制御可能な糸貯留ユニットが配置することが知られている。この糸貯留ユニットは、パッケージの巻取り時に発生する糸弛みを、例えば紡績装置または紡績コップ引出し装置の一定の糸供給速度に合わせるために働く。公知の繊維機械では、巻取りパッケージは、通常、巻取りプロセス中もしくは巻取り工程中に、綾振り装置の下流に配置された巻取り装置の旋回可能に支持されたパッケージフレームに保持されていて、通常、摩擦ローラによって摩擦によりまたは個々に駆動される。詳細には、巻取りパッケージの巻取り速度は、巻取りパッケージのその都度の巻取り直径に関連して、例えば巻取り装置によって一定の糸供給速度に対応する。糸は、巻取り時にパッケージ幅によって規定されて、特に交差状に、綾振り装置によって綾巻きされる。このとき、一定の糸供給速度に基づいて、糸は周期的に弛緩し、したがって、所望の糸張力を維持するために、糸走路に沿った糸の作業路の短縮の途中の弛みを補償することが必要となる。
【0003】
糸弛みを補償することのほかに、糸張力を巻取り工程中に十分一定に保つことも不可欠である。例えば欧州特許出願公開第2955142号明細書のような従来技術に基づいて、糸ガイドアームを備えて糸貯留ユニットを構成することが既に公知であり、この糸ガイドアームは、糸走路の範囲に旋回させられ、これによって、ループを形成して、糸の通常の作業路の長さが一時的に延長させられる。糸ガイドアームは、通常、旋回軸線を中心にして糸走路に対して横方向に、制御可能な電気駆動装置を介して旋回可能に支持されていて、位置決め可能である。電気駆動装置の制御は、制御システムを介して行われ、この制御システムは、糸張力センサを制御するための出力情報を得る。巻取り時に存在している糸張力に関連して、制御システムは、電気駆動装置ひいては糸ガイドアームの規定通りの制御の形態で応答し、これによって、糸張力を増減させることができる。
【0004】
しかしながら、公知のシステムには、このシステムが特に比較的高い巻取り速度の場合、特に種々様々な影響に基づいて糸張力が頻繁に変化する場合に、糸張力を持続的に十分一定に保つために適していないという欠点がある。
【0005】
このことから出発して、本発明の根底にある課題は、巻取りプロセス中における糸張力を十分一定に維持することを特に確実に可能にする糸貯留ユニットを提供することである。
【0006】
本発明は、この課題を請求項1の特徴を有する糸貯留ユニット、請求項8の特徴のように、このような糸貯留ユニットを備える作業ユニットおよび請求項12の特徴のように、このような作業ユニットにおける糸張力を調整するための方法によって解決する。本発明の有利な改良形態は、従属請求項に記載されている。
【0007】
本発明に係る糸貯留ユニットのための特徴として、糸ガイドアームは、自由に回動可能に支持されていて、旋回軸線から間隔を置いて配置された、磁気作用する第1の連結要素を有するということが挙げられる。さらに、駆動ユニットは、第1の連結要素に対して移動可能に配置された、磁気反発するように第1の連結要素に作用する磁気的な第2の連結要素を有する。この磁気的な第2の連結要素は、第1の連結要素に作用結合可能に駆動ユニットに配置されており、第1の連結要素に向かう方向への第2の連結要素の移動が、第1の連結要素の同方向の移動ひいては糸ガイドアームの旋回を生じさせる。
【0008】
糸ガイドアームが駆動ユニットの駆動軸によって、例えば位置固定の支持部を介して駆動軸で直に強制回動させられ、結果として、力伝達が、力伝達経路に沿って互いに接触している構成要素によって厳密に行われる公知の糸貯留ユニットとは異なり、本発明に係る糸ガイドアームは、自由に回動可能に、特に駆動ユニットの駆動軸に支持されている。これによって、駆動軸により発生させられた回動力を、磁気作用する手段を使用して、糸ガイドアームに非接触で伝達することができる。本発明によれば、第1の連結要素と第2の連結要素とは、両方の連結要素が互いに反発する磁気作用を加えるように互いにアライメントされている。ゆえに、結果として、第1の連結要素に向かう方向への駆動ユニットによる第2の連結要素の移動時には、第1の連結要素と第2の連結要素との間における反発作用に基づいて、第1の連結要素の、第2の連結要素の運動方向に相応して行われる移動が生じ、これによって、第1の連結要素が糸ガイドアームに結合されていることに基づいて、糸ガイドアームは、旋回軸線を中心にして旋回させられる。その結果、旋回軸線を中心にした糸ガイドアームの移動が、駆動ユニットを介して、駆動ユニットに配置された第2の連結要素の調整された位置に関連して非接触で行われる。
【0009】
糸走路内への旋回軸線を中心にした糸ガイドアームの旋回によって、糸ガイドアームにより糸貯留ユニットの領域には糸のループ状の経過が生じる。糸ガイドアームは、好ましくは糸走路に沿って配置された2つの糸ガイドローラまたは糸ガイド孔の間の領域で糸と係合することができ、これによって、規定通りのループ経過を生じさせることができる。両方の連結要素を介して、駆動ユニットによる糸ガイドアームの非接触の移動が生じる。巻取りプロセス中、糸張力を低下させる余剰糸が発生すると、この余剰糸は、好ましくは対を成して設けられた糸ガイドローラまたは糸ガイド孔と、糸ガイドアームとの間にループとして収容される。これに対して、巻取りプロセス中、巻取りパッケージ、例えば綾巻きパッケージによって要求されるよりも少ない糸しか存在せず、これによって、糸張力が増大すると、必要な糸長さは、ループから糸ガイドアームの戻り移動によって解放される。そのために、第2の連結要素は、駆動ユニットを介して、糸ガイドアームが糸を押し退ける逆向きの方向に旋回させられるように移動させられる。このとき、糸ガイドアームの戻り旋回は、糸ガイドアームに作用する糸張力に基づいて生じる。これによって、糸ガイドアームは、第2の連結要素の戻り調整運動に追従し、必要な糸長さを規定通りに解放する。これによって、糸貯留ユニットは、正確かつ高い頻度で、自由に回動可能に支持された糸ガイドアームを介して、糸張力を一定に保つことができ、これによって、巻取りプロセスを、特に高い巻取り速度で実施することができ、円筒形および円錐形の両方の巻取りパッケージの製造を特に確実に実施することができる。
【0010】
理想的には、糸に向かう方向もしくは逆向きの方向への糸ガイドアームの移動運動は、第1の連結要素と第2の連結要素との間の間隔を変化させることなしに、ひいては、両方の連結要素相互の間隔から生じる磁気による弾性力を変化させることなしに行われる。糸ガイドアームの移動運動は、好ましくは、駆動ユニットを制御する制御システムと、検出されたセンサ情報を伝達するための、制御システムに接続可能なセンサユニットとを介して調整することができる。制御システムは、好ましくは、伝達されたセンサ情報をデータ処理し、評価し、評価結果に基づいて駆動ユニットを規定通りに制御するように設計されている。制御システムは、好ましくは制御ユニットとデータ処理兼評価ユニットとを備えていてよい。これらのユニットは、同一ユニットであってもよいし、互いに異なるユニットであってもよい。また、ただ1つのユニットを備えた2つのユニットが実現されていてもよい。制御システムは、さらに、糸貯留装置の1つの構成部分であってもよいし、糸貯留ユニットとは別体の構成部分であってもよい。制御システムの配置形態もまた自由に選択されていてよい。したがって、制御システムは、糸貯留ユニットを備える作業ユニットにおいて、中央の機械制御装置に設けられていてよく、かつ/または繊維機械から離れて設けられていてよい。互いに検査し合うまたは検査可能な2つのこのような制御システムを設けることによる冗長的な制御も同様に可能であり得る。
【0011】
制御システムに接続可能なセンサユニットは、好ましくは、糸ガイドアームの回動運動および/または位置を検出するために使用することができ、これにより、センサユニットにより検出されたセンサ情報によって、両方の連結要素の、糸張力の変化によって生じる間隔変化をも求めることができる。糸ガイドアームが、制御システムによって調整された位置に対して、第2の連結要素に向かう方向に移動させられた位置を有している場合、つまり、第1の連結要素と第2の連結要素との間の間隔が僅かな場合には、第1の連結要素と第2の連結要素との間に作用する、磁気によって生じる弾性力が上昇する。予め制御システム内にまたは制御システムに連結された読取り可能なメモリユニット内に記憶された既知の磁気的な弾性力の特性線を考慮して、制御システムを介して、糸に作用する糸引張り力ひいては糸張力を推定することができる。その結果、制御システムを介して、駆動ユニットの相応の制御による第1の連結要素に対する第2の連結要素の位置の変化によって糸張力を検査し、調整し、かつ/または一定に保つことができる。
【0012】
これによって、糸貯留ユニットが、特に正確にかつ高い頻度で糸張力を一定に保つことが可能となる。
【0013】
駆動ユニットによって第1の連結要素に対して第2の連結要素を移動させる構成は、基本的に任意の形式で行うことができる。ここでは、例えば、第2の連結要素を直線的に第1の連結要素に向かう方向で旋回軸線に対して横方向に移動させ、これによって、糸ガイドアームの移動を生じさせるリニア駆動装置が考えられる。
【0014】
本発明の特に有利な構成によれば、第2の連結要素は、駆動ユニットによって糸ガイドアームの旋回軸線を中心にして特に同軸に移動可能な支持体に配置されていることが特定されている。本発明のこの構成によれば、第2の連結要素は、糸ガイドアームの旋回軸線を中心にして移動可能であり、そのために、第2の連結要素は、駆動ユニットに結合された支持体に配置されている。糸ガイドアームの旋回軸線を中心にした支持体の回動は、第2の連結要素の移動のために、特にスペースを節減する回動駆動装置の使用を可能にする。さらに、特に好ましくは旋回軸線から第1の連結要素と同じ間隔を置いて配置された第2の連結要素の回動は、特に均一かつ確実な移動を提供し、これによって、制御システムによる糸ガイドアームの特に正確な駆動を支持体の移動によって行うことができる。
【0015】
糸ガイドアームにおける第1の連結要素の配置形態は、基本的に自由に選択可能である。本発明の特に好適な構成によれば、第1の連結要素は、糸ガイドアームに解離可能に固定されており、かつ/または第2の連結要素は、駆動ユニットに解離可能に固定されていることが特定されている。本発明のこの構成は、第1の連結要素および/または第2の連結要素を必要な場合に簡単に交換することを可能にし、これによって、場合によっては互いに異なる磁気作用を必要とする種々様々な製造条件への適合を簡単に行うことができる。さらに、保守作業および修理作業を特に簡単かつ迅速に実施することができる。
【0016】
第2の連結要素、特に支持体を移動させるための駆動ユニットの構成は、基本的に自由に選択可能であり、ここでは、種々様々なモータ駆動装置を使用することができる。しかしながら、本発明の特に有利な構成によれば、駆動ユニットは、駆動軸を備えた電気モータ、特にステップモータを有し、駆動軸は、支持体に相対回動不能に結合されており、駆動軸に糸ガイドアームは自由に回動可能に支持されていることが特定されている。特に好ましくは、ガイドアームは一方の自由端部に軸受ユニット、特にブシュ要素を有していて、この軸受ユニットによって糸ガイドアームを駆動軸の自由端部に装着することができる。軸受ユニットは、駆動軸の回動運動に左右されることなく、つまり、トルク伝達なしに糸ガイドアームを駆動軸の自由端部に自由に回動運動可能に支持するために設計されている。さらに好ましくは、糸ガイドアームは他方の自由端部に、糸に接触して糸を案内するための糸ガイド区分、特に糸ガイド孔または糸ガイドローラを有している。これによって、糸ガイドアームのてこ作用を最大限利用することができる。糸ガイドアーム長手方向延在軸線に沿った軸受ユニットおよび糸ガイド区分の、必要に応じて選択された別の配置箇所も他の有利な実施形態に応じて同様に考えることができる。
【0017】
本発明のこの構成によれば、可逆式に作用する電気モータを介して、糸ガイドアームの旋回軸線を中心にした支持体の特に正確な移動が可能である。さらに、駆動軸は、糸ガイドアームを自由に回動運動可能に取り付けるために働く。このとき、自由に回動可能な支持もしくは自由な回動可能性というのは、一般的に、駆動軸と糸ガイドアームとの間におけるトルク伝達なしの結合形態を意味しており、これによって、駆動軸は、糸ガイドアームを旋回させるためにだけ、特に旋回可能に支持するためにだけ働き、糸ガイドアームにはトルクが伝達されない。糸貯留ユニットの相応の構成は、さらに、糸貯留ユニットの特にコンパクトな構成を可能にし、支持体に配置された第2の連結要素が、駆動軸の軸線から相応の間隔を置いて糸ガイドアームに配置されている第1の連結要素と同じ円周上で駆動軸を中心にして移動することができるということが、特に確実に保証されている。
【0018】
第1の連結要素と第2の連結要素とが互いに磁気による反発作用を得るような構成は、基本的に自由に選択可能である。例えば、第1の連結要素および/または第2の連結要素は、電磁石として形成されていてよく、電磁石の磁界は、両方の連結要素が互いに反発作用を生じさせるようにアライメントされている。電磁石は、制御システムを介して制御可能であってよく、これによって、電磁石を介して必要な場合に異なる磁界を生じさせることができ、その結果、反発作用を相応の制御システムを介して調整する、特に制御することが可能である。
【0019】
本発明の特に有利な構成によれば、第1の連結要素および第2の連結要素は、永久磁石として形成されていることが特定されている。永久磁石を、相応にアライメントされて糸ガイドアームと支持体とに配置されている連結要素として使用することは、磁気による反発作用を提供するための特に簡単で保守しやすい安価な可能性である。永久磁石の選択によって、所望の反発作用を決定することができる。
【0020】
支持体を駆動ユニット、特に電気モータの好適に設けられた駆動軸に結合することは、簡単なフランジ結合によって達成することができる。しかしながら、本発明の改良形態によれば、支持体は、駆動軸に対して同軸に配置されかつ駆動軸に相対回動不能に結合された連結ディスクに配置されていることが特定されている。連結ディスクの使用は、支持体と、支持体に結合された第2の連結要素との、糸ガイドアームの旋回軸線を中心にした特に確実な移動を保証する。連結ディスクは、面同士での案内のために、有利に設けられた電気モータの相応の対向面に接触していてよい。
【0021】
糸ガイドアームの回動運動および/または位置を検出する、特に制御システムによって駆動ユニットを介して調整された位置に対する糸ガイドアームの位置の逸脱を認識するためには、センサユニットが働き、このセンサユニットは、基本的に任意の箇所に配置されてよい。本発明の好適な構成によれば、センサユニットは、糸ガイドアームに相対回動不能に結合された、駆動軸に対して同軸に配置された接続要素の回動角および/または位置を検出するように構成かつ配置されていることが特定されている。このとき、センサユニットは、さらに好ましくは、接続要素に対して同軸に配置されている。本発明のこの構成によれば、糸ガイドアームに相対回動不能に結合された接続要素は、駆動軸の端部から間隔を置いて配置されたセンサユニット内に部分的に延在している。センサユニットの相応の配置形態、特に好ましくは接続要素に対して同軸に設けられた配置形態は、糸ガイドアームの回動運動および/または位置の特に正確な検出を可能にし、さらに、糸貯留ユニットの特にコンパクトな構成を可能にする。
【0022】
本発明の別の態様によれば、上述した実施形態による糸貯留ユニットを備えた、繊維機械の作業ユニット、特に紡績ユニットまたは巻取りユニットが提案される。作業ユニットは、さらに、糸を供給するための糸供給装置と、供給された糸を綾振りするための綾振り装置と、綾振りされた糸を巻取りパッケージに巻き取るための糸巻取り装置とを備えて構成されている。糸供給装置と、綾振り装置と、糸巻取り装置とは、糸を相応に加工するために糸走路に沿って配置されている。糸走路は、供給箇所から巻取り箇所に至る走路であり、糸貯留ユニットによる影響がない巻取り工程中、糸はこの走路に沿って延びている。糸貯留ユニットもまた、糸走路に沿って糸供給装置と綾振り装置との間に配置されており、これによって、走行する糸を、巻取り工程中に糸ガイドアームの旋回運動によって糸走路から押し退けることができる。特に好ましくは、糸ガイドアームは、糸走路に沿って2つの糸ガイドローラまたは糸ガイド孔の間に配置されており、両方のガイドローラを介してもしくは両糸ガイド孔を通して、糸はその巻取り工程中に案内されている。糸ガイドローラまたは糸ガイド孔は、糸走路に沿って綾振り装置の上流に配置されたワキシング装置によって支持されていてよく、ワキシング装置のワキシングボディの上流に位置するように配置されていてよい。このことは、糸貯留ユニットの、綾振り装置の近傍への可能な配置を可能にし、しかも、このとき、糸の、綾振り装置によって生じた糸走路に対して横方向に向けられた横方向への往復動によって、ワキシングボディを糸走路に対して横方向に延在するその幅にわたって均一に消費することができ、糸に均一にワキシングすることができる。
【0023】
好適な実施形態によれば、作業ユニットには、上述した制御システムと、情報交換のために制御システムに接続可能な上述したセンサユニットとが割り当てられており、センサユニットは、糸ガイドアームの回動運動および/または位置を検出しかつセンサ情報を制御システムに伝達するように構成かつ配置されている。制御システムは、好ましくは、伝達されたセンサ情報をデータ処理し、評価し、評価結果に基づいて駆動ユニットを規定通りに制御するように設計されている。さらに好ましくは、制御システムは、案内された糸の糸張力および/または貯留量を調整するために駆動ユニットを制御するだけでなく、さらに好ましくは、センサ情報を呼び出すためにセンサユニットを制御するように形成されている。
【0024】
好適な実施形態によれば、糸ガイドアームの休止位置は、糸走路を横切る位置に設けられており、この位置では、糸ガイドアームによって案内されている糸が、巻取り工程中に糸走路から押し退けられている。言い換えれば、糸貯留ユニットの糸ガイドアームは、糸ガイドアームの、駆動ユニットのゼロ位置に相当する休止位置が、糸走路の範囲外にかつ糸ガイドアームが糸を糸走路から押し退ける方向に位置しているように、糸走路に沿って配置されている。これによって、糸ガイドアームは、糸の、糸走路の方向に生じた力作用のみによって、糸走路からの糸ガイドアームの変位時に戻ることができることを保証することができる。代替的にまたは付加的に、糸貯留ユニットは、磁気的にまたは機械的に弾性力を作用させる別の連結要素を有していてよく、このような連結要素は、第1の連結要素および第2の連結要素の磁気による力作用とは逆向きであり、糸ガイドアームを、必要に応じて、第1の連結要素および第2の連結要素による変位方向とは逆向きに戻すように設計されている。これらの別の連結要素は、好ましくは、第1の連結要素および第2の連結要素同様、上述した制御システムのように、駆動ユニットと、駆動ユニットに接続された接続システムと、センサユニットまたは別のセンサユニットとに接続されていてよく、これによって、糸ガイドアームを要求に即して旋回させることができる。
【0025】
本発明の別の態様によれば、上述した実施形態のうちの1つの実施形態による作業ユニットで走行する糸の糸張力を調整するための方法が提案される。センサユニットは、糸ガイドアームの回動運動および/または位置に関するセンサ情報を、作業ユニットに割り当てられた制御システムに伝達する。伝達されたセンサ情報に基づいて、制御システムは、糸に加えられた糸張力を識別するために、第1の連結要素と第2の連結要素との間に作用する磁力を評価し、糸張力に対する限界値または限界値範囲からの逸脱が許容不可と評価された場合に、糸ガイドアームの位置を変化させるために駆動ユニットを上述したように規定通りに制御する。これによって、冒頭に記載したように、糸張力を巻取り工程中に一定に保つことができ、必要に応じて調整することができる。
【0026】
次に図面を参照しながら、本発明の1つの実施例について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】1つの実施例による糸貯留ユニットを概略的に示す斜視図である。
図2図1に示した糸貯留ユニットの部分領域を拡大して概略的に示す斜視図である。
図3図1に示した糸貯留ユニットを、糸ガイドアームを省いて、拡大して概略的に示す斜視図である。
図4図1に示した糸貯留ユニットの糸ガイドアームを概略的に示す斜視図である。
図5図1に示した糸貯留ユニットを、ワキシング装置の上流に配置された配置形態で概略的に示す斜視図である。
【0028】
図1には、1つの実施例による糸貯留ユニット1が概略的に斜視図で示してあり、この糸貯留ユニット1は、ここでは図示しない繊維機械の作業ユニット、特に紡績ユニットまたは巻取りユニットに配置するために、接続プレート17に結合されている。図2図4には、図1に示した糸貯留ユニット1の部分領域が拡大されて概略的に斜視図で示してあり、この糸貯留ユニット1の糸ガイドアーム2が概略的に斜視図で示してある。
【0029】
糸貯留ユニット1は糸ガイドアーム2を有しており、この糸ガイドアーム2の自由端部に配置された糸ガイド孔13が、作業ユニットにおいて、巻取りパッケージに巻き取るべき糸の糸走路Fに配置されている。糸は糸ガイド孔13を通して案内される。糸貯留器を形成するために、糸ガイドアーム2は、糸貯留ユニット1の駆動ユニット4の電気モータ5の駆動軸16に旋回可能に支持されている。そのために、糸ガイドアーム2は、駆動軸16の自由端部に配置するためのブシュ18を有しており、これによって、糸ガイドアーム2は、駆動軸16にトルク伝達なしに支持されている。ブシュ18は、さらに、糸ガイドアーム2に結合されたホルダ9に結合されており、このホルダ9は、永久磁石として形成された第1の連結要素6を収容するための開口を有している。
【0030】
糸ガイドアーム2の、運転中にループ形成する旋回のために、電気モータ5の駆動軸16は、駆動軸16に対して同軸に配置された連結ディスク14に相対回動不能に結合されている。連結ディスク14には支持体8が配置されており、この支持体8は、第2の連結要素7として別の永久磁石を収容するための別のブシュ12を有している。糸ガイドアーム2における永久磁石と支持体8における永久磁石とは、両方の磁石が互いに反発し合う磁気作用を加えるように、互いにアライメントされている。これにより、可逆式に作動する電気モータ5による連結ディスク14の回動によって、糸ガイドアーム2は、旋回軸線Sを規定する駆動軸16を中心にして非接触で相応に旋回させられる。電気モータ5の制御は、ここには図示しない制御システムによって接続部19を介して行われる。
【0031】
糸ガイドアーム2の位置認識のためには、図面で見て駆動軸16の上側でハウジング10のハウジングカバー11に配置されたセンサユニット3が役立ち、このセンサユニット3の、旋回角を認識するセンサが、糸ガイドアーム2に結合された接続要素15に対して同軸に配置されており、センサユニット3自体は、駆動軸16の長手軸線方向に延在している。
【0032】
センサユニット3を介して、少なくとも糸ガイドアーム2の回動運動または位置を特に確実に規定することができ、制御システムへの相応のセンサ情報の伝達によって、制御システムを介して、駆動ユニット4により調整された位置からの糸ガイドアーム2の逸脱を確認することができる。例えば糸張力が増大すると、これによって、糸ガイドアーム2は、磁気による反発作用によって生じた弾性力に抗して、第2の連結要素7に向かう方向に移動させられる。これを起点として制御システムによって、連結ディスク14の戻り移動を行うことができる。例えば糸張力が糸弛みの発生中に低減すると、これによって、第2の連結要素7は、駆動軸16およびこれに連結された支持体8の回動によって、連結ディスク14および永久磁石と一緒に糸ガイドアーム2の方向に移動させられる。磁気による反発作用によって、糸ガイドアーム2も同じ方向に一緒に運動させられ、これによって、案内されている糸が、その糸走路から押し退けられるかもしくは糸走路からさらに遠ざけられ、糸ループが形成されるかもしくは増大させられる。このようにして、全巻取りプロセス中もしくは巻取り工程中に実質的に一定の糸張力を得ることおよび保証することができる。
【0033】
図5には、図示しない作業ユニットでの糸貯留ユニット1の配置形態の1つの実施例が、概略的に斜視図で示してあり、作業ユニットは紡績ユニットまたは巻取りユニットであってよい。糸貯留ユニット1は、図示しない糸供給装置から図示しない綾振り装置の方向に延びる糸走路Fに沿って、糸走路Fに沿って綾振り装置の上流に配置されたワキシング装置20(単に概略的に部分的に図示)の上流に配置されている。ワキシング装置20は、下側に保持体22を有しており、この保持体22には、2つの糸ガイドローラ21が回転運動可能に保持されている。両方の糸ガイドローラ21を介して、糸は糸走路に沿って一部巻き掛けられて案内可能である。糸貯留ユニット1は、糸ガイドアーム2のガイド孔13が糸走路F内に旋回できるように、糸走路Fに位置決めされている。これによって、走行する糸を、その糸走路Fから糸ガイドローラ21の配置方向に対して横方向に押し退けることができる。糸は、その糸走路Fからの糸貯留ユニット1を用いた外方への押し退けに基づいて、糸ガイドローラ21に接触し、これによって、糸ガイドローラ21の間に規定通りのサイズの糸ループが形成される。糸ループのサイズは、糸貯留ユニット1によって、糸ガイドアーム2の検出された回動運動または位置に応じて、電気モータ5ひいては糸ガイドアーム2を制御する制御システムを介して要求に即して変化させられ、これによって、巻取り工程のために有利に一定に保つべき糸張力が調整かつ制御される。
【符号の説明】
【0034】
1 糸貯留ユニット
2 糸ガイドアーム
3 センサユニット
4 駆動ユニット
5 電気モータ
6 第1の連結要素
7 第2の連結要素
8 支持体
9 ホルダ
10 ハウジング
11 ハウジングカバー
12 別のブシュ
13 糸ガイド孔
14 連結ディスク
15 接続要素
16 駆動軸
17 接続プレート
18 ブシュ
19 接続部
20 ワキシング装置
21 糸ガイドローラ
22 保持体
F 糸走路
S 旋回軸線
図1
図2
図3
図4
図5
【外国語明細書】