(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189793
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】パワー半導体モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20221215BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L21/60 321E
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022093745
(22)【出願日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】21178802
(32)【優先日】2021-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】519431812
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・スウィツァーランド・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY SWITZERLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スラボ・キシン
(72)【発明者】
【氏名】アルネ・シュレーダー
(72)【発明者】
【氏名】ファルハード・ヤゴウビ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】並列接続されかつ高速スイッチングする半導体スイッチを含むパワー半導体モジュールを提供する。
【解決手段】少なくとも2つの半導体スイッチのグループ2、3に配置された複数の半導体スイッチ4を備えたパワー半導体モジュールであって、半導体スイッチ4は、被制御経路の第1端子及び第2端子と制御端子(ゲート端子10)とを有し、各グループ2、3は、第1端子に接続された第1グループコンタクト(ソースグループコンタクト14)と、第2端子に接続された第2グループコンタクト(ドレイングループコンタクト15)と、制御端子に接続された制御グループコンタクト(ゲートグループコンタクト13)とを有し、さらに、少なくとも2つのグループの制御グループコンタクトと第1グループコンタクトとを接続するための相互接続ブリッジ6を備える。相互接続ブリッジは、第1導電層と第2導電層とが絶縁層によって分離されている層構造を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワー半導体モジュール(1)であって、
少なくとも2つのグループ(2,3,32,33)に配置された複数の半導体スイッチ(4)を備え、前記半導体スイッチ(4)は、被制御経路の第1端子および第2端子と、制御端子(10)とを有し、
各グループ(2,3,32,33)は、前記第1端子に接続された第1グループコンタクト(14)と、前記第2端子に接続された第2グループコンタクトと、前記制御端子(10)に接続された制御グループコンタクト(13)とを有し、前記パワー半導体モジュールはさらに、
前記少なくとも2つのグループ(2,3,32,33)の前記制御グループコンタクト(13)と前記第1グループコンタクト(14)とを接続するための相互接続ブリッジ(6,35)を備え、
前記相互接続ブリッジ(6,35)は、第1導電層(17)と第2導電層(18)とが絶縁層(21)によって分離されている層構造を含む、パワー半導体モジュール。
【請求項2】
前記層構造がプリント回路基板として形成されることを特徴とする、請求項1に記載のパワー半導体モジュール。
【請求項3】
前記層構造がフレキシブルプリント回路基板として形成されることを特徴とする、請求項2に記載のパワー半導体モジュール。
【請求項4】
前記層構造が2面メタライゼーションを有するセラミック基板によって形成されることを特徴とする、請求項1に記載のパワー半導体モジュール。
【請求項5】
前記相互接続ブリッジ(6,35)が各面に少なくとも2つの脚部(19,20)を含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のパワー半導体モジュール。
【請求項6】
前記相互接続ブリッジ(6,35)の前記少なくとも2つの脚部(19,20)と、前記グループコンタクト(13,14)との間の接続が、はんだ接続、溶接接続、または焼結接続、または接着剤接続であることを特徴とする、請求項5に記載のパワー半導体モジュール。
【請求項7】
前記複数の半導体スイッチ(4)がSi系またはワイドバンドギャップ材料系のMOSFETまたはIGBTのうちの少なくとも一方であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載のパワー半導体モジュール。
【請求項8】
モジュールゲートコンタクト(5)と前記複数の半導体スイッチの制御端子(10)との間の直接接続を特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載のパワー半導体モジュール。
【請求項9】
モジュールゲートコンタクト(5)と前記複数の半導体スイッチの制御端子(10)との間に接続された2Ω未満の抵抗器(24)を特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載のパワー半導体モジュール。
【請求項10】
前記抵抗器(24)がメタライゼーションの上に配置された半導体抵抗器であることを特徴とする、請求項9に記載のパワー半導体モジュール。
【請求項11】
グループ(2,3,32,33)内のゲートインダクタンスの最大差が2nHであることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載のパワー半導体モジュール。
【請求項12】
前記パワー半導体モジュールがスイッチまたはハーフブリッジであることを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載のパワー半導体モジュール。
【請求項13】
前記絶縁層(21)の厚さが150μm未満であることを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載のパワー半導体モジュール。
【請求項14】
前記絶縁層(21)の厚さが80μm未満であることを特徴とする、請求項13に記載のパワー半導体モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、少なくとも2つのグループに配置された複数の半導体スイッチを有するパワー半導体モジュールに関し、半導体スイッチは、被制御経路の第1端子および第2端子と、制御端子とを有する。
【背景技術】
【0002】
EP3113223A1から、積層方式で配置された別々の基板メタライゼーションを用いていくつかのパワー半導体スイッチがともに接続されている、パワー半導体モジュールが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
パワーモジュールのスイッチング損失をより小さくするために、原理的に高速のスイッチング挙動を有するワイドバンドギャップ半導体を使用するという選択肢がある。しかしながら、高速スイッチング半導体の使用は、モジュールの設計に新たな課題を提起する。加えて、典型的なワイドバンドギャップ半導体デバイスの面積は、現代のSiデバイスの面積よりもかなり小さいので、目標とする定格電流を実現するためにはそれらのうちのより多くを並列接続する必要がある。
【0004】
目的は、ワイドバンドギャップ半導体系であって、並列接続されかつ高速スイッチング挙動を有する多数の半導体スイッチを含む、パワー半導体モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ある実施形態に従うと、この目的は、以下のパワー半導体モジュールによって達成され、このパワー半導体モジュールは、少なくとも2つのグループに配置された複数の半導体スイッチを有し、半導体スイッチは、被制御経路の第1端子および第2端子と制御端子とを有し、各グループは、第1端子に接続された第1グループコンタクトと、第2端子に接続された第2グループコンタクトと、制御端子に接続された制御グループコンタクトとを有し、パワー半導体モジュールはさらに、少なくとも2つのグループの制御グループコンタクトと第1グループコンタクトとを接続するための相互接続ブリッジを備え、相互接続ブリッジは、第1導電層と第2導電層とが絶縁層によって分離されている層構造を含む。
【0006】
制御グループコンタクト間および第1グループコンタクト間に印加される電圧を用いることにより、半導体デバイスの状態を制御する、すなわち、この電圧は、状態を開状態と閉状態との間で切り替える。したがって、低損失動作のためには、この電圧を重大な振動を伴うことなく高速で変化させることが重要である。上記実施形態は改善されたゲート接続を有する。2つの導電層の双方が非常に薄い絶縁層だけで隔てられている相互接続ブリッジ内で非常に近接して配置されているので、基板間の従来のワイヤボンド接続と比較して、ゲート制御ループインダクタンスの実質的な低減を実現することができる。
【0007】
インダクタンス低減の物理的な理由は、2つの導体が近接配置されていると誘導結合が大幅に増加することにある。相互接続ブリッジのゲート接続層を通ってそのグループのスイッチのゲート端子に流れる電流は、主としてゲート電極の容量を充電する。関連する電流が、相互接続ブリッジのソース接続層を通って反対方向に流れる。電流の逆平行方向および相互誘導結合により、ゲートインダクタンスの実質的な低減を実現することができる。
【0008】
提案されている実施形態は、多数の半導体スイッチが並列接続されているために異なる半導体スイッチグループへの接続経路の長さが大きく異なっているパワー半導体モジュールにおいても、異なる長さが異なる半導体スイッチグループのゲートインダクタンスに与える影響を低減してスイッチング挙動のより適切な同期およびより少ない振動を実現することを可能にする。その結果、スイッチング期間中のスイッチング挙動が改善されて電力損失が減じられる。
【0009】
提案されている実施形態のさらに他の利点は、抵抗器、たとえばモジュール内に直接配置されたゲート抵抗器であって通常はスイッチ間の振動を減衰させるために使用されるゲート抵抗器を、省略するかまたは少なくとも減じることができる点である。このことは、スイッチング挙動をさらに改善する。抵抗器が省略された場合、モジュールゲートコンタクトと複数の半導体スイッチの制御端子との間の直接接続を実現することができ、このことは、その間に電子素子がないことを意味する。
【0010】
振動の十分な低減により、厚膜抵抗器を入手し易い半導体抵抗器に置き換えることでモジュールの製造を容易にし製造コストを削減することが、少なくとも可能になる。
【0011】
より詳細な実施形態に従うと、層構造は、「通常の」またはフレキシブルプリント回路基板として形成される。そのような実施形態において、フレキシブル絶縁材料の両面が、少なくとも部分的に金属等の導電材料で覆われる。導電材料としては、銅、またはアルミニウム、または銅とアルミニウムとの合金が、好都合である。
【0012】
別の実施形態に従うと、層構造は、2面メタライゼーションを有するセラミック基板で形成される。相互接続ブリッジが各面に少なくとも2つの脚部を有することが好都合であり、脚部は、2つのグループの双方のグループコンタクトに、はんだ付け、または溶接、または接着剤接続によって接続される。記載されている実施形態では、典型的にMOSFETまたはMISFETまたはIGBTが半導体スイッチとして使用される。半導体スイッチは、ケイ素系またはワイドバンドギャップ材料系であってもよく、典型的にはSiCまたはGaNであってもよい。
【0013】
本開示は、モジュール内のいくらかの接続のインダクタンスを選択的に増大させているゲート接続の改善というさらに他の側面を含む。この側面に従い、補償構造が、より短いゲート接続経路に対して与えられる。この方策によって総ゲートインダクタンスは増加する一方で、モジュール内の異なるグループのゲート接続経路のインダクタンス間の相違を減じることができる。このことは、振動をさらに減じ、したがってスイッチング挙動を改善する。この側面に従う補償構造は、先に述べたインダクタンスの低減と組み合わせて用いることができる。このことは、必要になるまたは有益になる可能性があるが、その理由は、インダクタンス低減の物理的可能性は限られており、すべての実際の構成において完全な均等化を実現できるわけではないことにある。しかしながら、2つの側面双方を組み合わせることにより、すなわち、長い接続経路のインダクタンスの低減および短い接続経路のインダクタンスの増大が、ゲートインダクタンスの相違の完全な均等化または少なくとも実質的な低減につながり得る。
【0014】
これらの側面のうちの一方に関して記載されるどの特徴も、たとえ各特徴が特定の側面の文脈において明確に言及されていなくても、他方の側面に関して本明細書に開示される。
【0015】
添付の図面は、一層の理解を得るために含まれている。図面において、同一の構造および/または機能の要素は同一の参照符号を用いて参照される場合がある。図面に示される実施形態は、提示のために説明の役割を果たすものであって、必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではないことが、理解されねばならない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】パワーモジュールの第1の実施形態の概略図である。
【
図2】ゲートインダクタンスに対する第1の実施形態の効果を示す図である。
【
図4】相互接続ブリッジのある実施形態を示す図である。
【
図6】機械的安定性が増した相互接続ブリッジの別の実施形態を示す図である。
【
図7】機械的安定性が増した相互接続ブリッジの別の実施形態を示す図である。
【
図8】追加の補償構造を有するパワーモジュールの第2の実施形態を示す図である。
【
図9】補償構造のいくつかの設計選択肢のうちの1つを示す図である。
【
図10】補償構造のいくつかの設計選択肢のうちの1つを示す図である。
【
図11】補償構造のいくつかの設計選択肢のうちの1つを示す図である。
【
図12】補償構造のいくつかの設計選択肢のうちの1つを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、半導体スイッチ4の2つのグループ2および3を含むパワーモジュール1の概略図である。半導体スイッチ4のゲート端子10がモジュールゲートコンタクト5に接続される。モジュールゲートコンタクト5と半導体スイッチ4のゲート端子10との間の導電経路の長さは、モジュール1内の構成要素の幾何学的配置に応じて決まる。たとえば、半導体スイッチの3つ以上のグループが設けられる場合、半導体スイッチのグループの各々の接続経路の長さを等しくすることは困難になり得る。
【0018】
ゲート接続の長さが等しくないことは問題になる。なぜなら、炭化ケイ素、略してSiC、および窒化ガリウム、略してGaN等の、ワイドバンドギャップ半導体の使用が、ケイ素系パワー半導体デバイスの限界を克服するために、一層普及するようになったからである。典型的に、炭化ケイ素および窒化ガリウム系デバイス等のワイドバンドギャップ系デバイスは、低スイッチング損失をもたらすその高速スイッチング機能のため、魅力的である。しかしながら、モジュール内で複数のワイドバンドギャップ半導体を使用すると、モジュール内でより強い振動が観察された。そのような振動を減じるために、抵抗器がゲート接続経路に設けられた。多くの場合、振動を抑制するには5Ωの抵抗器で十分である。しかしながら、そのような抵抗器を設けるためには、厚膜技術の使用が必要であり、このことは、追加の製造工程が必要であることを意味していた。このやり方で振動を抑制することは可能であるが、高速スイッチング機能というワイドバンドギャップ半導体の当初の利点を十分に保つことはできない。
【0019】
本開示に従うと、目標は、振動を抑制することではなく、最初から回避することである。そのための方法は、パワー半導体モジュール1の総ゲートインダクタンスを最小にすることではなく、半導体スイッチの異なるグループのゲートインダクタンスを均等化することである。パワー半導体モジュール1のスイッチング機能は、ゲート経路の総インダクタンスにも依存するが、振動は、半導体スイッチ4の2つの異なるグループ2および3のインダクタンスおよび経路長の差に強く依存する。
【0020】
言い換えると、高速でスイッチングできるようにするには、モジュール浮遊インダクタンスを十分に低くして重大な電圧オーバーシュートを回避しなければならず、かつ、インダクタンス不平衡を小さくして半導体スイッチ間の振動を回避しなければならない。
【0021】
図1を参照すると、第1グループ2のゲート経路のインダクタンスは、共有インダクタンスL_shared+相互接続インダクタンスL_interconnection+インダクタンスL1として説明することができ、第2ゲート経路のインダクタンスは、共有インダクタンスL_shared+L2として説明することができる。
図1からわかるように、第1グループ2への接続経路は第2グループ3への接続経路よりも長い。この実施形態に従うと、第1グループ2へのゲート経路の一部は、相互接続ブリッジ6で実現される。モジュールソースコンタクト7からスイッチ4のソース端子までのソース経路の非常に近接した断面平行配置に関して、ゲート経路のこの部分のインダクタンスを減じることができる。実際、第1グループ2へのゲート経路のゲートインダクタンスを約50%減じることができる。
【0022】
提案されている特徴は、特に、いくつかの基板上に配置され並列接続されている多数の炭化ケイ素または窒化ガリウムスイッチに基づいた複雑なハイパワーモジュールの設計という点で、有益となり得る。しかしながら、本開示の概念は、
図1に示されるようなより小さなパワーモジュールでも実現できる。
【0023】
意図されている電流密度/定格電流を実現するために多数の半導体スイッチ4を並列接続することは、パワー半導体モジュール1の典型的な構成である。これは、たとえば炭化ケイ素および窒化ガリウム半導体スイッチにも当てはまる。なぜなら、これらのスイッチのフットプリントは、Si技術のスイッチよりも小さいので、同様の電流のスイッチングを可能にするためにはより多くのスイッチを並列接続する必要があるからである。
【0024】
図2は、そのような実施形態における相互接続ブリッジの効果を示す。たとえば、10個の半導体スイッチ4をモジュールの1つの基板上でグループにし、別の10個の半導体スイッチ4をモジュールの別の基板上でグループにすることが可能である。双方の基板の上に配置された20個の半導体デバイス4は、並列接続される。ハーフブリッジモジュール構成の場合、そのような2つの基板は、モジュールの上または下面を表すことになるであろう。並列接続された、別のそのような2つの基板が、このハーフブリッジモジュールの他方のスイッチを形成することになるであろう。
【0025】
図2の図において、並列接続された2つの基板のうちのいずれかの基板上に配置された各スイッチごとに、相対ゲートインダクタンスが、最大値に対する%で示されている。このことは、スイッチ1~10が第1グループ2に属し、スイッチ11~20が第2グループ3に属していることを意味する。従来のワイヤボンディングのパワー半導体モジュールのゲートインダクタンスを示す点線8からわかるように、ゲートインダクタンス間の最大差は19%であるのに対し、グループ内での差はわずか6%である。実線9からわかるように、相互接続ブリッジ6を使用することにより、第1グループ2のゲート経路のインダクタンスを減じることができる。相互接続ブリッジ6を有する構成において、ゲートインダクタンスの最大差はわずか12%である。
【0026】
さらに他の効果として、振動が減じられそれによりスイッチング速度を高めることができる。出願人の測定値は、ゲート電圧の振動の振幅を約70%に低減できたことを示している。振動の低減により、スイッチング時間にわたる電力損失も減じることができる。
【0027】
本開示の着想を使用することによるもう1つの好ましい効果は、ゲート経路の抵抗器を、少なくとも2Ω未満の値まで低減できることである。そのような抵抗器は、半導体抵抗器として実現することができ、追加の製造工程を必要としない。
【0028】
本開示は、振動を抑制するために抵抗器を省略し得る、または少なくとも基板抵抗器として実装される、という利点を有する。
【0029】
図3は、半導体スイッチ4の2つのグループ2および3のより詳細な図を示す。半導体スイッチ4は、メタライゼーション層の上に配置される。メタライゼーション層の部分15は、ドレイン接続として使用される。メタライゼーション層の別の部分が分離されてゲートグループコンタクト13を形成し、これは制御グループコンタクト13とも呼ばれる。メタライゼーションのさらに他の部分が、ソースグループコンタクト14として分離され、これは第1グループコンタクト14とも呼ばれる。このことは、グループ2および3の基板の双方に当てはまる。
【0030】
スイッチ4のゲート端子10は、
図3では上面メタライゼーションとして現れている第1面メタライゼーション11に接続され、そこから、左のグループ2について示されたゲートグループコンタクト13に接続される。第1面メタライゼーションは、たとえば、右のグループ3について示されるように抵抗器24およびボンドワイヤを介して接続される2つの部分に分けることもできる。このようにして、2Ω未満の値を有する抵抗器24をゲート経路に組み込むことで、振動を減衰させる。
【0031】
スイッチ4のソース端子は、ソース配線を形成するさらに他のメタライゼーション16に接続され、そこから第1グループコンタクト14に接続される。異なるスイッチグループ間の接続も意味する基板間の接続のために、本開示に従う相互接続ブリッジ6が使用される。
【0032】
図4は、相互接続ブリッジ6のより詳細な図を示す。これは、2つの導電層17および18を含む。層18はゲート接続として使用され、層17はソース接続として使用される。これら2つの層は、この図面には示されていない絶縁層によって分離される。相互接続ブリッジ6の両面に、ゲート接続の脚部19およびソース接続の脚部20が設けられる。これらの脚部は、制御グループコンタクト13および第1グループコンタクト14に、たとえば、溶接、または焼結、またははんだ付け、または接着剤によって接続される。
【0033】
図5は、相互接続ブリッジ6のさらに詳細な図を示す。この図からわかるように、導電層17および18は、絶縁層21によって分離されている。導電層17と18とが近いほど、これらの導電層間においてより好適な誘導結合が得られる。そして、この結合が好適であるほど、ゲート接続のインダクタンスは低くなる。したがって、パワー半導体モジュールの性能にとっては薄い絶縁層が有益である。絶縁層の厚さは150マイクロメートル未満、または、80マイクロメートル未満であることが有益である。現実的な値は30~150マイクロメートルである。
【0034】
層の厚みを薄くした結果、好ましくないブリッジの機械的安定性の低下が生じる場合、さらに1つまたは複数の層を追加することでこの機械的安定性を高めることができる。機械的安定性が高められた相互接続ブリッジ6の典型的な実施形態が
図6および
図7に示される。この実施形態に従うと、相互接続ブリッジは、一連の層としての、絶縁保護層25、それに続く第1電位のための第1メタライゼーション26、薄い絶縁層27、第2電位のための第2メタライゼーション28、および第2絶縁保護層29を有する、積層体を含む。たとえば、層25および26も、層29および28も、PCBとして設けられる。
【0035】
第2絶縁保護層29の反対側に、メタライゼーションの双方、すなわち第1メタライゼーション26および第2メタライゼーション28の電気的接続に使用される端子30および36が配置される。そのために、たとえばビアを用いて、第2絶縁保護層29の端子側からメタライゼーション26および28にアクセスすることができる。
【0036】
図7は、
図7の実施形態の断面図である。ゲートおよびソース接続に関連し得る2つの電位のための端子30および36が、ビアにより、それぞれ第1メタライゼーション26および第2メタライゼーション28に接続される。
【0037】
図4および
図5の実施形態と比較して、機械的安定性が高められる。このことは、非常に長い相互接続ブリッジの場合に有益となり得るものであり、さらに、相互接続ブリッジを機械的に安定させる機械的機能を提供する必要がないので、絶縁層の厚みを最小にする可能性が開ける。
【0038】
相互接続ブリッジを機械的に安定させるためのもう1つの可能性として、ブリッジを支えるために端子間のどこかに接着剤を使用することが挙げられる。これは、たとえば本開示のすべての実施形態に関連して実現することができる。
【0039】
図8は、本開示のさらに他の実施形態を示す。ここで、半導体スイッチのグループ2および3は、サブモジュール31内に統合されている。半導体スイッチの追加の2つのグループ32および33が、第2サブモジュール34内に統合されている。サブモジュール31および34の各々は、上述の図面に記載されている相互接続ブリッジ6を介したグループ間の接続を含む。また、第1サブモジュール31と第2サブモジュール34との間のゲート接続のために、サブモジュール31および34の各々の中のグループ間の接続のための相互接続ブリッジ6と同様に形成された相互接続ブリッジ35が使用される。しかしながら、本実施形態に従うと、相互接続ブリッジ35は、サブモジュール31および34へのゲート経路のゲートインダクタンスの相違を十分に均等化することができない。そのため、上述のように本開示の第2側面に従い追加の補償構造36が提供される。補償構造は、第1サブモジュール31のスイッチへのゲート接続経路のインダクタンスの増加を生じさせる。相互接続ブリッジ35によるインダクタンスの減少および補償構造36によるインダクタンスの増加の双方が、サブモジュール31および34の双方のゲート接続経路における、より等しいインダクタンスに寄与する。
【0040】
なお、相互接続ブリッジ6および35の技術的効果のためには、ゲートおよびソースの接続経路の双方が必要であるが、補償構造36についてはゲート経路のみを修正すればよい。
【0041】
補償構造の実現に関して、
図9~
図12は、容易に実現できる可能性を示す。
図9は、コンタクトポイント38とコンタクトポイント39との間の接続が蛇行構造によって増大した蛇行状構造を示す。
図10において、アイランド40が、基板23のメタライゼーション22に形成され、ボンドワイヤ41によって接続されている。また、このようにして、接続ポイント38および39間の電流経路も延びる。
【0042】
図11では、螺旋状構造が同様の効果のために使用されている。
図12において、
図11の構造が使用されているが、ボンドワイヤは螺旋状構造を十分に使用していない。このようにして、この構成の構造36を、パワー半導体モジュール1内の幾何学的配置に応じて決まる個々のグループの特定の必要性に合わせて調整することができる。
【0043】
図3に示される実施形態に関して、補償構造はメタライゼーション11で実現することもできる。
【0044】
上記
図1~
図12に示される実施形態は、パワー半導体モジュールの改善された構成の典型的な実施形態を示す。したがって、これらの実施形態は、改善された構成に従うすべての実施形態の完全なリストを構成するわけではない。実際の構成は、構成またはデバイスという点で、示されている実施形態から変わる可能性がある。
【符号の説明】
【0045】
参照符号
1 パワー半導体モジュール
2 半導体スイッチの第1グループ
3 半導体スイッチの第2グループ
4 半導体スイッチ
5 モジュールゲートコンタクト
6 相互接続ブリッジ
7 モジュールソースコンタクト
8 従来のワイヤボンディングの場合のゲートインダクタンス
9 相互接続ブリッジの場合のゲートインダクタンス
10 ゲート端子
11 第1面メタライゼーション
13 制御グループコンタクト/ゲートグループコンタクト
14 第1グループコンタクト/ソースグループコンタクト
15 第2グループコンタクト/ドレイングループコンタクト
16 他のメタライゼーション/ソースグループコンタクト
17 導電層
18 導電層
19 ゲート接続脚部
20 ソース接続脚部
21 絶縁層
23 基板
24 抵抗器
25 第1絶縁保護層
26 第1ブリッジメタライゼーション
27 絶縁層
28 第2ブリッジメタライゼーション
29 第2絶縁保護層
30 第1ブリッジ端子
31 第1サブモジュール
32 半導体スイッチの第3グループ
33 半導体スイッチの第4グループ
34 第2サブモジュール
35 相互接続ブリッジ
36 第1ブリッジ端子
38 第1接続ポイント
39 第2接続ポイント
40 メタライゼーションアイランド
41 ボンドワイヤ
【外国語明細書】