(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022018980
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】反応焼結炭化ケイ素焼結体とその製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 35/573 20060101AFI20220120BHJP
【FI】
C04B35/573
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020122465
(22)【出願日】2020-07-16
(71)【出願人】
【識別番号】719007350
【氏名又は名称】合同会社モルージ
(72)【発明者】
【氏名】寒川喜光
(57)【要約】
【課題】従来の反応焼結では得ることのできなかった高強度の反応炭化ケイ素からなる部品を押出成形もしくは鋳込み成形を用いて提供する。
【解決手段】炭化ケイ素原料粉末に平均粒径2~5μmからなる粉末且つ最大粒径が10μm以下である炭化ケイ素粉末(a)と平均粒径0.1~0.5μmからなる粉末且つ最大粒径が5μm以下である炭化ケイ素粉末(b)を用い、これら(a),(b)の炭化ケイ素粉末にカーボンとして、平均粒径0.001~0.1μm以下のカーボンブラック(c)を添加して、(a)、(b)、(c)の各粉末に有機バインダを添加して出成形もしくは鋳込み成形により、所望する成形体を作成し、金属シリコン粉末を含侵させて焼結することによりシリコンと炭化ケイ素からなる高強度の反応焼結炭化ケイ素を得ることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化ケイ素原料粉末に平均粒径2~5μmからなる粉末且つ最大粒径が10μm以下である炭化ケイ素粉末(a)と平均粒径0.1~0.5μmからなる粉末且つ最大粒径が5μm以下である炭化ケイ素粉末(b)を用い、これら(a),(b)の炭化ケイ素粉末にカーボンとして、平均粒径0.001~0.1μm以下のカーボンブラック(c)を添加して、(a)、(b)、(c)の各粉末に有機バインダを添加して所望する成形体を作成し、乾燥後、焼結工程において金属シリコンを溶融させて、成形体に含侵させて、シリコンと炭化ケイ素からなる複合材料を得ることを特徴とする高強度反応焼結炭化ケイ素の製造方法。
【請求項2】
前記製造方法において、成形方法として鋳込み成形もしくは押出成形により所望する成形体を作成することを特徴とする請求項1に記載の高強度反応焼結炭化ケイ素の製造方法。
【請求項3】
前記炭化ケイ素粉末(a)と炭化ケイ素粉末(b)の添加割合が、炭化ケイ素粉末(a)が50~90wt%及び炭化ケイ素粉末(b)が10~50wt%であることを特徴とする請求項1及び請求項2に記載の高強度反応焼結炭化ケイ素の製造方法。
【請求項4】
前記炭化ケイ素粉末(a)と炭化ケイ素粉末(b)の合計に対してカーボンブラックの混合比が重量割合で20wt%~40wt%であることを特徴とする請求項1,2及び3に記載の高強度反応焼結炭化ケイ素の製造方法。
【請求項5】
成形体に含侵させる金属シリコン粉末の粒径が0.05~1mmであり、焼結温度が1400℃以上で減圧下もしくは不活性ガス雰囲気下で行うことを特徴とする請求項1,2,3及び4に記載の高強度反応焼結炭化ケイ素の製造方法。
【請求項6】
前記押出成形方法において用いられる有機バインダとしてメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ポリビニルアルコールが少なくとも一種類以上含まれることを特徴とする請求項1,2,3,4及び5に記載の高強度反応焼結炭化ケイ素の製造方法。
【請求項7】
前記鋳込み成形、押出成形方法において用いられる有機バインダとしてメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ポリビニルアルコールが少なくとも一種類以上含まれることを特徴とする請求項1,2,3,4及び5に記載の高強度反応焼結炭化ケイ素の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、 本発明は、押出成形により、高強度の反応焼結炭化ケイ素焼結体を製造する方法並びに製造するための材料組成に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、炭化ケイ素は高温構造材料、耐蝕材料として優れた特性があり、高温伝導性、高硬度等の特徴を持ち、クリープ抵抗性、耐酸化性も高い特性を有する。これらの特徴から半導体製造装置用部材、耐摩耗用ノズル、メカニカルシール、耐食用反応管、酸処理用治具、等に用いられている。また、セラミックスを焼結させるための焼結炉に用いられる治具である架台もしくはローラーに用いられる。またリチウムイオン電池正極材料を作成するための連続処理炉の治具であるローラーに用いられる。
これらの炭化ケイ素焼結部品を得るための方法として、炭化ケイ素の代表的な製造プロセスには,焼結助剤を用いた常圧焼結法、雰囲気加圧焼結法、ホットプレス法、HIP法、反応焼結法が挙げられる。
特に、反応焼結法 (RS法)は,骨材の炭化ケイ素 (SiC)粉末と炭素(C)粉末からなる圧粉体に溶融した金属シリコンを含浸させて, Si+C→SiCの反応によりSiCを生成, SiCのまわりの気孔を遊離ケイ素 (Si) で埋めることにより緻密な焼結体が得られる。
そのため, RS法ではSICのほかに遊離Siを10~40wt%含んでいる. RS-SiCは, 常圧焼結法,雰囲気加圧焼結法,ホットプレス法, HIP法等の粉末焼結法で作製したSiCと比較して, 一般に,強度や破壊靭性値は低く, 熱伝導率は高いことが報告されている.また, RS法は焼結助剤を用いた粉末焼結法に比べて焼結温度が低く, 助剤を添加せずに緻密化できるため, 低コスト化ならびに高純度化が期待できる。 更に,焼結による寸法変化がほとんどなく,大型複雑形状物がニアネットに焼結できる。
このため、RS-SiCは他工法と比較して、製造コストが低く抑えられるため、焼結炉用の治具には多く用いられている。
しかしながら、RS法により得られたRS-SiCは常圧焼結法、雰囲気加圧焼結法、ホットプレス法ならびにHIP法と比較して、強度が低く、焼結炉用の架台に使用する場合には、肉厚を厚くする必要があり、また重量も重くなり、製造コストがアップする。
現在、技術論文1特許文献1~4にあるとおり、炭化ケイ素粉末の粒径の粒径を0.1μmから10μm の炭化ケイ素と平均粒径0.005μmから1μmのカーボン粉末との混合粉末を用いて有機バインダを添加しプレス成形にて製品を得ている。粒径が細かいほど焼結密度は高くなり、強度も向上するが、押出成形・鋳込み成形ではバインダ添加量を増やす必要があり、脱脂時のクラック・膨れ等が発生しやすくなるため、脱脂、乾燥時間24時間以上に長くする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】公開特許公報2004-35279
【特許文献2】公開特許公報2007-22914
【特許文献3】公開特許公報2007-55897
【特許文献4】公開特許公報2009-190950
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明は健全な高強度の反応焼結炭化ケイ素焼結体を押出成形及び鋳込み成形方法で得るために、最適な炭化ケイ素粉末、カーボン粉末組成並びに最適な炭化ケイ素粉末粒径を用いる事を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、粒径を調整した炭化ケイ素粉末とカーボン粉末並びに有機バインダを混合したものを原料として、鋳込み成形もしくは押出成形を行い、高強度の反応焼結炭化ケイ素を得る方法において、粒径が炭化ケイ素原料粉末に平均粒径2~5μmからなる粉末且つ最大粒径が10μm以下である炭化ケイ素粉末(a)と平均粒径0.1~0.5μmからなる粉末且つ最大粒径が5μm以下である炭化ケイ素粉末(b)を用い、これら(a),(b)の炭化ケイ素粉末にカーボンとして、平均粒径0.001~0.1μm以下のカーボンブラック(c)を添加した粉末組成に有機バインダを用いて成形、脱脂、焼結を行うことで、高強度の欠陥のない焼結体を得ることができる。
【0006】
すなわち、本発明に用いられる炭化ケイ素粉末には粒径が炭化ケイ素原料粉末に平均粒径2~5μmからなる粉末且つ最大粒径が10μm以下である炭化ケイ素粉末(a)と平均粒径0.1~0.5μmからなる粉末且つ最大粒径が5μm以下である炭化ケイ素粉末(b)を用い、これら(a),(b)の炭化ケイ素粉末にカーボンとして、平均粒径0.001~0.1μm以下のカーボンブラック(c)を添加した粉末組成に有機バインダを添加して成形、脱脂、焼結を行うことで、高強度の欠陥のない反応焼結炭化ケイ素を得ることができる。
【0007】
特に、前記炭化ケイ素粉末(a)と炭化ケイ素粉末(b)の添加割合が、炭化ケイ素粉末(a)が50~90wt%及び炭化ケイ素粉末(b)が10~50wt%である。また前記炭化ケイ素粉末(a)と炭化ケイ素粉末(b)の合計に対してカーボンブラックの混合比が重量割合で20wt%~40wt%とし、これらの粉末組成に有機バインダを添加して高強度の欠陥のない反応焼結炭化ケイ素を得ることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明にかかる粉末組成によれば添加するバインダを少なくして、高強度の反応炭化ケイ素焼結体を押出成形並びに鋳込み成形により得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明にかかる炭化ケイ素原料粉末にはβ炭化ケイ素もしくはα炭化ケイ素のいずれかもしくは両方を原料として用いることができる。平均粒径2~5μmからなる粉末且つ最大粒径が10μm以下である炭化ケイ素粉末(a)と平均粒径0.1~0.5μmからなる粉末且つ最大粒径が5μm以下である炭化ケイ素粉末(b)を用い、これら(a),(b)の炭化ケイ素粉末にカーボンとして、平均粒径0.001~0.1μm以下のカーボンブラック(c)を用いる。
成形するための有機バインダには水溶性高分子材料が望ましく、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ポリビニルアルコールが少なくとも一種類以上からなる水溶性高分子が用いられる。これらの水溶性高分子の中でもメチルセルロース類が望ましく、特にヒドロキシプロピルメチルセルロースが最も望ましい。
これら有機バインダに可塑剤並びに水を添加する。
可塑剤としてはグリセリン、ポリオキシエチレンモノブチルエーテル等の少なくとも一種以上からなる有機材料が用いられる。
【0011】
炭化ケイ素の粒径が(a)平均粒径2~5μm及び(b)平均粒径0.1~0.5μmであり、炭化ケイ素粉末(a)と炭化ケイ素粉末(b)の添加割合が、炭化ケイ素粉末(a)が50~90wt%及び炭化ケイ素粉末(b)が10~50wt%であることにより、焼結体の強度を向上することができる。炭化ケイ素粉末(a)の添加量が50wt%未満の場合には添加するバインダ量が多くなり、乾燥及び脱脂に長時間を要する。また、炭化ケイ素粉末(a)の添加量が10wt%未満の場合には焼結体の強度が十分向上しない。望ましい炭化ケイ素粉末(a)は60~80wt%及び炭化ケイ素粉末(b)が20~40wt%である。
また、炭化ケイ素粉末(a)の最大粒径が10μmよりも大きく、炭化ケイ素粉末(b)の最大粒径が5μmよりも大きくなる場合には焼結密度が低下する。
【0012】
これら(a),(b)の炭化ケイ素粉末にカーボンとして、平均粒径0.001~0.1μm以下のカーボンブラック(c)を用いる。前記炭化ケイ素粉末(a)と炭化ケイ素粉末(b)の合計に対してカーボンブラックの混合比が重量割合で20wt%~40wt%であることを特徴とする。カーボンブラックの添加量が20wt%未満の場合には未反応の金属シリコンが焼結体中に多く残存し、強度が低下する。また、カーボンブラックの添加量が40wt%よりも多い場合には焼結体中に未反応のカーボンが多く残存し、強度が低下する。カーボンブラックの粒子径が0.001μm以下の場合には均一にカーボンを分散させることが困難である。また、カーボンブラックの粒径が0.1μm以上の場合には焼結工程において金属シリコンとの反応が均一に行われず、焼結体の強度が向上しない。
【0013】
本発明の有機バインダには水溶性高分子材料が望ましく、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ポリビニルアルコールが少なくとも一種類以上からなる水溶性高分子が用いられる。水溶性高分子の添加量は炭化ケイ素とカーボン粉末を100部としたときに1~10部が望ましく、2~5部がさらに望ましい。水溶性高分子の添加量が1部未満の場合には、成形体の強度が低くなり、押出成形中に変形が生じやすい。水溶性高分子の添加量が10部を超える場合には加熱脱脂の際に熱分解が十分に進行せず、成形体にクラックが発生し炭化物が残留する。
【0014】
本発明の可塑剤の添加量としては0.5~7部が望ましく、1~4部がさらに望ましい。可塑剤の添加量が0.5部未満の場合には成形体が脆く、成形体の流動性も悪くなる。可塑剤の添加量が7部を超える場合には押出成形体が柔らかくなり、成形体の形状を保持することが困難になる。
本発明に用いられる水は成形体の粘度を下げ、流動性を付与する。望ましい水の添加量は5~15部であり、望ましい添加量は7~12部である。水の添加量が5部未満の場合には成形体に流動性を付与することが困難であり、水の添加量が15部を超える場合には押出成形時に成形体の形状を保持することが困難となる。
【0015】
本発明の炭化ケイ素粉末にカーボン粉末を加えたものに、可塑剤、水を添加して常温でヘンシェルミキサー等の混練機を用いて混合する混合した材料はニーダーもしくは3本ロールにて材料を分散させる。必要に応じて1~2日程度材料の養生を行い、真空脱気できる押出成形を用いて所望の形状に押出成形を行う。押出成形機にはスクリュ式真空押出成形機もしくはピストン式真空押出成形機を用いる。
必要な長さに切断し、乾燥機を用いて水溶性高分子をゲル化させるとともに、水分を除去する。
【0016】
乾燥した成形体は焼結炉を用いて焼結を行う。焼結においては、乾燥後の成形体の周囲を粒径が0.05~1mmである金属シリコン粉末で覆う。金属シリコン粉末の粒径が0.05mm未満の場合には焼結体から付着した金属シリコンを除去することが困難になり、金属シリコン粒径が1mm以上の場合には金属シリコンの含侵が均一に行われず、成形体中のカーボンと金属シリコンが均一に反応しない。また、金属シリコンの粒子が1mm以上になると、成形体に金属粒子が食い込んで焼結後に表面にクラック、割れ等の欠陥が生じる。
焼結温度は1400℃以上であり、1400℃~1550℃が望ましく、1400~1500℃が特に望ましい。また、焼結雰囲気は減圧下もしくは不活性ガス雰囲気下で行うことが望ましい。
【0017】
上記の条件で得られた焼結体は従来のRS-SiCと比較して高強度の焼結体を押出成形においても得ることができる。
【0018】
以下、実施例及び比較例により発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例0019】
[実施例1]
炭化ケイ素粉末には平均粒径2μmからなるα炭化ケイ素(a)を用いた。なお、粉末最大粒径は8μm以下とした。及び平均粒径0.4μmからなる粉末且つ最大粒径が4μm以下である炭化ケイ素粉末(b)を用い、これら(a),(b)の炭化ケイ素粉末にカーボンとして、平均粒径0.05μm以下のカーボンブラック(c)を用いた。
成形するための有機バインダにはヒドロキシエチルメチルセルロース、グリセリンからなる有機材料と水を用いた。
上記炭化ケイ素粉末にカーボンブラック粉末並びに有機バインダと水をヘンシェルミキサを用いて均一に混合を行い、得られた混合物を3本ロールを用いて混練を行った。得られた混練物を24時間養生させた後、スクリュ式真空押出成形機を用いて図に示す直径15mm×長さ200mmの丸棒を作成した。得られた成形体を50℃で乾燥させた後、120℃にして、成形体中の水分を蒸発させた。
得られた乾燥した成形体を粒径0.5mmの金属シリコン粉末中に埋めてカーボントレイの中で1450℃で2時間焼結を行った。
炭化ケイ素組成物
炭化ケイ素(a)平均粒径4μm 58wt%
炭化ケイ素(b)平均粒径0.4μm 42wt%
炭化ケイ素粉末(a)+(b) 70wt%
カーボン粉末 30wt%
バインダ組成(全炭化ケイ素粉末(a)+(b)+カーボン粉末=100部とするときの添加重量部)
ヒドロキシエチルメチルセルロース 3.5重量部
グリセリン 2.5重量部
水 12重量部
得られた焼結体の密度は3.1g/cmであり、内部に空隙の無いち密な焼結体を得ることができた。得られた焼結体の3点曲げ強度は720MPaであり、従来のRS-SiC焼結体では260MPa程度のため、従来のRS-SiCと比較して2倍以上の強度を有するRS-SiCの押出焼結品を得ることができた。
【0020】
[実施例2]
炭化ケイ素粉末には平均粒径4μmからなるβ炭化ケイ素(a)を用いた。なお、粉末最大粒径は8μm以下とした。及び平均粒径0.4μmからなる粉末且つ最大粒径が4μm以下である炭化ケイ素粉末(b)を用い、これら(a),(b)の炭化ケイ素粉末にカーボンとして、平均粒径0.05μm以下のカーボンブラック(c)を用いた。
成形するための有機バインダにはヒドロキシエチルメチルセルロース、グリセリンからなる有機材料と水を用いた。
上記炭化ケイ素粉末にカーボンブラック粉末並びに有機バインダと水をヘンシェルミキサを用いて均一に混合を行い、得られた混合物を3本ロールを用いて混練を行った。得られた混練物を24時間養生させた後、スクリュ式真空押出成形機を用いて図に示す直径15mm×長さ200mmの丸棒を作成した。得られた成形体を50℃で乾燥させた後、120℃にして、成形体中の水分を蒸発させた。
得られた乾燥した成形体を粒径0.5mmの金属シリコン粉末中に埋めてカーボントレイの中で1450℃で2時間焼結を行った。
炭化ケイ素組成物
炭化ケイ素(a)平均粒径4μm 60wt%
炭化ケイ素(b)平均粒径0.5μm 40wt%
炭化ケイ素粉末(a)+(b) 70wt%
カーボン粉末 30wt%
バインダ組成(全炭化ケイ素粉末(a)+(b)+カーボン粉末=100部とするときの添加重量部)
ヒドロキシエチルメチルセルロース 4重量部
グリセリン 2.5重量部
水 12重量部
得られた焼結体の密度は3.1g/cmであり、内部に空隙の無いち密な焼結体を得ることができた。得られた焼結体の3点曲げ強度は680MPaであり、実施例1と同様に従来のRS-SiC焼結体では260MPa程度のため、従来のRS-SiCと比較して2倍以上の強度を有するRS-SiCの押出焼結品を得ることができた。
【0021】
[比較例1]
炭化ケイ素粉末には平均粒径10μmからなるβ炭化ケイ素を用いた。なお、粉末最大粒径は20μm以下とした。平均粒径0.05μm以下のカーボンブラック(c)を用いた。
成形するための有機バインダにはヒドロキシエチルメチルセルロース、グリセリンからなる有機材料と水を用いた。
上記炭化ケイ素粉末にカーボンブラック粉末並びに有機バインダと水をヘンシェルミキサを用いて均一に混合を行い、得られた混合物を3本ロールを用いて混練を行った。得られた混練物を24時間養生させた後、スクリュ式真空押出成形機を用いて図に示す直径15mm×長さ200mmの丸棒を作成した。得られた成形体を50℃で乾燥させた後、120℃にして、成形体中の水分を蒸発させた。
得られた乾燥した成形体を粒径0.5mmの金属シリコン粉末中に埋めてカーボントレイの中で1450℃で2時間焼結を行った。
炭化ケイ素組成物
炭化ケイ素(平均粒径10μm) 100wt%
炭化ケイ素粉末(a)+(b) 70wt%
カーボン粉末 30wt%
バインダ組成(全炭化ケイ素粉末+カーボン粉末=100部とするときの添加重量部)
ヒドロキシエチルメチルセルロース 4重量部
グリセリン 2.5重量部
水 10重量部
得られた焼結体の密度は3.0g/cmであり、内部には空隙はほとんど確認できなかったものの、得られた焼結体の3点曲げ強度は250MPaであり、従来のRS-SiC焼結体が260MPa程度のため、従来のRS-SiCと比較して強度の向上は確認できなかった。
【0022】
[比較例2]
炭化ケイ素粉末には平均粒径4μmからなるβ炭化ケイ素(a)を用いた。なお、粉末最大粒径は8μm以下とした。及び平均粒径0.4μmからなる粉末且つ最大粒径が4μm以下である炭化ケイ素粉末(b)を用い、これら(a),(b)の炭化ケイ素粉末にカーボンとして、平均粒径0.05μm以下のカーボンブラック(c)を用いた。
成形するための有機バインダにはヒドロキシエチルメチルセルロース、グリセリンからなる有機材料と水を用いた。
上記炭化ケイ素粉末にカーボンブラック粉末並びに有機バインダと水をヘンシェルミキサを用いて均一に混合を行い、得られた混合物を3本ロールを用いて混練を行った。得られた混練物を24時間養生させた後、スクリュ式真空押出成形機を用いて図に示す直径15mm×長さ200mmの丸棒を作成した。得られた成形体を50℃で乾燥させた後、120℃にして、成形体中の水分を蒸発させた。
得られた乾燥した成形体を粒径0.5mmの金属シリコン粉末中に埋めてカーボントレイの中で1450℃で2時間焼結を行った。
炭化ケイ素組成物
炭化ケイ素(a)平均粒径4μm 60wt%
炭化ケイ素(b)平均粒径0.5μm 40wt%
炭化ケイ素粉末(a)+(b) 90wt%
カーボン粉末 10wt%
バインダ組成(全炭化ケイ素粉末(a)+(b)+カーボン粉末=100部とするときの添加重量部)
ヒドロキシエチルメチルセルロース 4重量部
グリセリン 2.5重量部
水 12重量部
得られた焼結体の密度は2.9g/cmであり、内部に空隙が生じていた。得られた焼結体の3点曲げ強度は230MPaであり、従来のRS-SiC焼結体では260MPa程度のため、従来のRS-SiCと比較して強度向上は確認できなかった。
【0023】
[実施例4~9、比較例3~5]
さらに、炭化ケイ素粉末とカーボン粉末の割合を種々変更して実験を行った。用いた炭化ケイ素粉末とカーボン粉末の組成を下部に、押出成形品の焼結体の結果を表1に示す。なお、混練の条件、脱脂の条件並びに焼結の条件は実施例1~3に準じて行った。成形体形状については
図1に記載の形状で行った。
炭化ケイ素組成物
炭化ケイ素(a)平均粒径: 4μm
炭化ケイ素(b)平均粒径:0.5μm
カーボン粉末 平均粒径: 0.03μm
有機バインダ成分表(体積%)
ヒドロキシエチルメチルセルロース 4重量部
グリセリン 2.5重量部
水 12重量部
【表1】
【0024】
実施例4~9に関しては焼結体の密度は3.1以上でありち密化しており、3点曲げ強度も640MPa以上と高い値を示した。一方炭化ケイ素の粗粉末(a)と微粉末(b)の割合が特許指定の範囲外の場合には曲げ強度が250MPa以下であり、微粉末(b)の添加割合が多い比較例3,4については焼結密度も3.0g/cm3以下と低い値であった。
【0025】
[実施例10~13、比較例6~8]
さらに、炭化ケイ素粉末の粒径を種々変更して実験を行った。用いた炭化ケイ素粉末とカーボン粉末の組成を下部に、押出成形品の焼結体の結果を表2に示す。なお、混練の条件、脱脂の条件並びに焼結の条件は実施例1~3に準じて行った。成形体の形状については
図1に記載の形状で行った。
粉末材料成分
炭化ケイ素(a)大粒径 60wt%
炭化ケイ素(b)小粒径 40wt%
炭化ケイ素粉末(a)+(b) 90wt%
カーボン粉末 30wt%
有機バインダ成分表(体積%)
ヒドロキシエチルメチルセルロース 4重量部
グリセリン 2.5重量部
水 12重量部
【表2】
【0026】
実施例10~13に関しては焼結体の密度は3.1以上でありち密化しており、3点曲げ強度も650MPa以上と高い値を示した。一方炭化ケイ素の粗粉末(a)と微粉末(b)の大きさが特許指定の範囲外の比較例6~8については曲げ強度が300MPa以下であった。
【0027】
[実施例14~17、比較例9~12]
さらに、カーボン粉末の添加割合を種々変更して実験を行った。用いた炭化ケイ素粉末とカーボン粉末の組成を下部に、押出成形品の焼結体の結果を表1に示す。なお、混練の条件、脱脂の条件並びに焼結の条件は実施例1~3に準じて行った。成形体の肉厚については
図1に記載の形状で行った。
炭化ケイ素組成物
炭化ケイ素(a)平均粒径: 4μm
炭化ケイ素(b)平均粒径:0.5μm
カーボン粉末 平均粒径: 0.03μm
有機バインダ成分表(体積%)
ヒドロキシエチルメチルセルロース 4重量部
グリセリン 2.5重量部
水 12重量部
【表3】
本発明を用いることで、従来では得られなかった高強度の反応焼結炭化ケイ素焼結体の押出焼結品を得ることができ、バッチ焼結炉の治具・架台、連続焼結炉の治具・架台として従来の2倍以上の重量物を乗せて焼結してもたわみ、破断を生じることは無く、特に連続炉の搬送ローラーに用いることにより、単位時間当たりの処理量を2倍程度まで増やすことができる。