(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189802
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】積層されたアノード層及び電解質層を有する固体酸化物形燃料電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/1213 20160101AFI20221215BHJP
H01M 8/12 20160101ALI20221215BHJP
H01M 4/88 20060101ALI20221215BHJP
H01M 4/86 20060101ALI20221215BHJP
H01M 4/90 20060101ALI20221215BHJP
H01M 8/1226 20160101ALI20221215BHJP
H01M 8/124 20160101ALI20221215BHJP
【FI】
H01M8/1213
H01M8/12 101
H01M4/88 T
H01M4/86 T
H01M4/86 U
H01M4/90 M
H01M8/1226
H01M8/124
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022094029
(22)【出願日】2022-06-10
(31)【優先権主張番号】63/209,778
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/297,696
(32)【優先日】2022-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514116578
【氏名又は名称】ブルーム エネルギー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エル バタウィ,エマッド
【テーマコード(参考)】
5H018
5H126
【Fターム(参考)】
5H018AA06
5H018BB00
5H018BB08
5H018EE12
5H018HH01
5H018HH05
5H126AA02
5H126AA15
5H126BB06
5H126GG12
5H126HH00
5H126HH01
5H126HH02
5H126JJ03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】固体酸化物形燃料電池(SOFC)及びその製造方法を提供する。
【解決手段】固体酸化物形燃料電池(SOFC)が、100ミクロン以下の厚さを有するセラミック電解質と、電解質の第1の側に積層されたアノードと、第1の側とは反対側である電解質の第2の側に配置されたカソードとを含む。SOFCの製造方法が、セラミック電解質前駆体層と少なくとも1つのアノード前駆体層とを互いに接触させずに別々に形成する工程と、形成された少なくとも1つのアノード前駆体層をセラミック電解質前駆体層の第1の側に接触させて重ねる工程と、少なくとも1つのアノード前駆体層とセラミック電解質前駆体層とを積層する工程と、少なくとも1つのカソード層を形成する工程とを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体酸化物形燃料電池(SOFC)であって、
100ミクロン以下の厚さを有するセラミック電解質と、
前記電解質の第1の側に積層されたアノードと、
前記第1の側とは反対側である前記電解質の第2の側に配置されたカソードと
を備える、SOFC。
【請求項2】
前記カソードが、前記電解質の前記第2の側にインク堆積法により堆積されている、請求項1記載のSOFC。
【請求項3】
前記アノードが、
前記電解質に積層され、セラミック相と金属触媒を含む金属相とを有するサーメットを含む、第1の層と、
前記第1の層に積層され、前記セラミック相と前記金属相とを有する、第2の層と
を備え、
前記第1の層が前記第2の層と前記電解質との間に配置されており、前記第2の層が、前記第1の層よりも高い、前記セラミック相に対する前記金属相の比率を有する、
請求項1記載のSOFC。
【請求項4】
前記アノードの前記第2の層が、Al、Ca、Ce、Cr、Fe、Mg、Mn、Nb、Pr、Ti、V、W、若しくはZr、これらの任意の酸化物、又はこれらの任意の組み合わせから選択されるドーパントをさらに含む、請求項3記載のSOFC。
【請求項5】
前記第2の層の前記金属相が、
約2~約4at%の前記ドーパントと、
約98~約96at%の前記金属触媒と
を含み、
前記第2の層の前記ドーパントがMgOを含み、
前記第2の層の前記金属触媒がNiOを含み、
前記第2の層の前記金属相がMgxNi1-xO又はMgxNi1-xを含み、xが約0.01~約0.04の範囲である、
請求項4記載のSOFC。
【請求項6】
前記第1の層が、前記第1の層の総重量に基づいて、約80~約95重量%の前記セラミック相と、約5~約20重量%の前記金属相とを有し、
前記第2の層が、前記第2の層の総重量に基づいて、約20~約35重量%のセラミック相と、約65~約95重量%の前記金属相とを有する、
請求項3記載のSOFC。
【請求項7】
前記電解質の厚さが50~100ミクロンであり、前記SOFCが電解質支持型SOFCである、請求項3記載のSOFC。
【請求項8】
前記SOFCが、前記アノードの前記第1の層と前記第2の層の厚さとの合計よりも厚いアノード支持層をさらに備える、請求項3記載のSOFC。
【請求項9】
前記アノード支持層が、セラミック相粒子よりも大きな平均粒径を有する金属相粒子を有するサーメットを含み、
前記電解質の厚さが5~25ミクロンであり、
前記SOFCが電解質支持型SOFCを含む、
請求項3記載のSOFC。
【請求項10】
前記カソードが、前記電解質の前記第2の側とカソード機能層との間に配置されたカソードバリア層を備え、
前記カソードバリア層が、サマリア、ガドリニア又はプラセオジミアをドープしたセリアを含み、
前記カソード機能層が、導電性成分及びイオン伝導性成分を含む、
請求項1記載のSOFC。
【請求項11】
固体酸化物形燃料電池(SOFC)の製造方法であって、
セラミック電解質前駆体層と少なくとも1つのアノード前駆体層とを互いに接触させずに別々に形成する工程と、
形成された前記少なくとも1つのアノード前駆体層を前記セラミック電解質前駆体層の第1の側に接触させて重ねる工程と、
前記少なくとも1つのアノード前駆体層と前記セラミック電解質前駆体層とを積層する工程と、
少なくとも1つのカソード層を形成する工程と
を含む、方法。
【請求項12】
前記セラミック電解質前駆体層と前記少なくとも1つのアノード前駆体層とを別々に形成する前記工程が、テープ成形により、前記セラミック電解質前駆体層と前記少なくとも1つのアノード前駆体層とを別々に形成する工程を含み、
重ねる前記工程が、テープ成形された前記少なくとも1つのアノード前駆体層を、テープ成形された前記セラミック電解質前駆体層の第1の側に接触させて重ねる工程を含み、
積層する前記工程が、テープ成形された前記少なくとも1つのアノード前駆体層を、テープ成形された前記セラミック電解質前駆体層の第1の側に接触させて熱間等方加圧して、グリーン複合体を形成する工程を含む、
請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記方法が、前記グリーン複合体を焼結して、セラミック電解質及び前記少なくとも1つのサーメットアノード層を備える半SOFCを形成する工程と、焼結する前記工程の後に、前記第1の側とは反対側である前記セラミック電解質の第2の側に前記少なくとも1つのカソード層を形成する工程とをさらに含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つのカソード層を形成する前記工程が、前記少なくとも1つのカソード層をスクリーン印刷する工程を含み、前記セラミック電解質が100ミクロン以下の厚さを有する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つのカソード層が、前記セラミック電解質の第2の側とカソード機能層との間に配置されたカソードバリア層を備え、
前記カソードバリア層が、サマリア、ガドリニア又はプラセオジミアをドープしたセリアを含み、
前記カソード機能層が導電性成分及びイオン伝導性成分を含む、
請求項13記載の方法。
【請求項16】
前記セラミック電解質前駆体層と前記少なくとも1つのアノード前駆体層とを別々に形成する前記工程が、テープ成形により、前記セラミック電解質前駆体層、第1のアノード前駆体層及び第2のアノード前駆体層を別々に形成する工程を含み、
重ねる前記工程が、テープ成形された前記第1及び前記第2のアノード前駆体層を、テープ成形された前記セラミック電解質前駆体層の第1の側に接触させて重ねる工程を含み、
積層する前記工程が、テープ成形された前記第1及び前記第2のアノード前駆体層を、テープ成形された前記セラミック電解質前駆体層の第1の側に接触させて熱間等方加圧して、グリーン複合体を形成する工程を含み、
前記方法が、前記グリーン複合体を焼結して、セラミック電解質並びに第1及び第2のサーメットアノード層を備える半SOFCを形成する工程と、焼結する前記工程の後に、前記第1の側とは反対側である前記セラミック電解質の第2の側に前記少なくとも1つのカソード層を形成する工程とをさらに含む、
請求項11記載の方法。
【請求項17】
前記第1のサーメットアノード層が、前記第2のアノードサーメット層と前記セラミック電解質との間に配置されており、前記第2のアノードサーメット層が、前記第1のアノードサーメット層よりも高い、前記セラミック相に対する前記金属相の比率を有する、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記方法が、アノード支持前駆体層をテープ成形する工程と、前記アノード支持前駆体層を前記第2のアノード前駆体層に積層する工程と、続いて、焼結によってサーメットアノード支持層を形成する工程とをさらに含む、請求項16記載の方法。
【請求項19】
前記サーメットアノード支持層が、セラミック相粒子よりも大きな平均サイズを有する金属相粒子を有し、
前記セラミック電解質の厚さが5~25ミクロンであり、
前記SOFCが電解質支持型SOFCである、
請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記電解質の厚さが50~100ミクロンであり、前記SOFCが電解質支持型SOFCである、請求項11記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本出願は、2021年6月11日に出願された米国仮特許出願第63/209778号及び2022年1月7日に出願された米国仮特許出願第63/297696号の利益を主張する通常出願であり、それぞれの出願の内容の全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明の実施形態は、概して、固体酸化物形燃料電池(SOFC:solid oxide fuel cell)及びその製造方法を志向している。
【背景技術】
【0003】
SOFCシステムのような高温燃料電池システムでは、酸化流が燃料電池のカソード側に通され、燃料流が燃料電池のアノード側に通される。酸化流は典型的には空気であり、燃料流は、炭化水素燃料、例えば、メタン、天然ガス、プロパン、ペンタン、エタノール又はメタノールであることができる。燃料電池は、750℃~950℃の典型的な温度で作動し、カソード流からアノード流への負に帯電した酸素イオンの輸送を可能にし、イオンは、自由水素又は炭化水素分子中の水素のいずれかと結合して水蒸気を形成し、及び/又は、一酸化炭素と結合して二酸化炭素を形成する。
【0004】
負に帯電したイオンによる過剰な電子は、アノードとカソードとの間に形成される電気回路を通して燃料電池のカソード側に戻され、回路を流れる電流をもたらす。
【発明の概要】
【0005】
様々な実施形態によれば、固体酸化物形燃料電池(SOFC)が、100ミクロン以下の厚さを有するセラミック電解質と、電解質の第1の側に積層されたアノードと、第1の側とは反対側である電解質の第2の側に配置されたカソードとを含む。
【0006】
様々な実施形態によれば、固体酸化物型燃料電池(SOFC)の製造方法が、セラミック電解質前駆体層と少なくとも1つのアノード前駆体層とを互いに接触させずに別々に形成する工程と、形成された少なくとも1つのアノード前駆体層をセラミック電解質前駆体層の第1の側に接触させて重ねる工程と、少なくとも1つのアノード前駆体層とセラミック電解質前駆体層とを積層する工程と、少なくとも1つのカソード層を形成する工程とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】本発明の様々な実施形態による燃料電池の断面図である。
【
図1B】本発明の様々な実施形態による燃料電池の断面図である。
【
図2】本発明の様々な実施形態による燃料電池スタックの断面図である。
【
図3】本発明の様々な実施形態による燃料電池システムのホットボックスの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
添付の図面を参照して、様々な実施形態について詳細に説明する。同一又は類似の部分を参照するために、図面全体を通して可能な限り同じ参照番号を使用される。特定の例及び実装例への参照は例示のためであり、本発明又は特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。
【0009】
様々な実施形態では、セラミック電解質の厚さを薄くすることによってSOFCの電気抵抗率を低下させることができる。しかし、より薄い電解質は、電解質中の欠陥及び/又は電解質に課される応力により、より亀裂を生じさせやすい。例えば、電解質支持型電池の場合、セラミック(すなわち、焼結された)電解質層にスクリーン印刷又は別のインク堆積法によって堆積させた比較的厚いアノードインクの焼成(すなわち、結合剤の焼失及び焼結)により、セラミック電解質に応力がかかる。電解質が比較的薄い場合、焼成によってセラミック電解質に亀裂が生じる場合がある。
【0010】
アノードの導電相は、それぞれの熱還元及び酸化工程の最中に、金属相(例えばニッケル相)と金属酸化物相(例えば酸化ニッケル相)との間で熱的に循環される。例えば、アノードは、最初に、金属酸化物相及びセラミック相によって形成することができ、続いて、還元性(例えば水素を含む)雰囲気で熱還元工程によって金属酸化物相を金属相に変換することができる。熱還元及び/又は酸化工程の最中に、アノードの体積が変化し、電解質に引張又は圧縮応力を与え、より薄い電解質に亀裂が生じる場合がある。
【0011】
本発明のある実施形態では、電解質前駆体層と1つ以上のアノード前駆体層とは、互いに接触させずに別々に形成される。次いで、電解質前駆体層と1つ以上のアノード前駆体層を重ね合わせ、任意の適切な加圧方法によって積層して半SOFCにする。
【0012】
例えば、電解質前駆体層と1つ以上のアノード前駆体層とを、テープ成形により、又は別の適切なセラミック若しくはサーメット前駆体層製造プロセスにより、別々に形成することができる。次いで、1つ以上のアノード前駆体層を乾燥させ、互いに接触させ、また乾燥した電解質前駆体層の第1の側に接触させて配置し、熱間等方加圧又は別の適切な加圧方法などによって合わせて加圧して、複合体(例えばグリーン複合体)を形成する。次いで、複合体を1300℃及び1400℃で焼結して、半SOFC(すなわち、カソード用のモノリシック基板)を形成する。半SOFCは、セラミック電解質層の第1の側に接触する1つ以上のサーメットアノード層を含むモノリシック構造を有する。
【0013】
電解質が同じ焼結工程中に1つ以上のアノード層と共に焼結されるので、セラミック(すなわち焼結された)電解質は、アノード焼成工程の応力にさらされない。これにより、電解質の亀裂又は破損が低減する。したがって、電解質の厚さを、亀裂などの電解質の損傷を著しく増加させることなく、SOFCの電気抵抗率を低下させるために低減することができる。例えば、電解質は、100ミクロン以下、例えば5~100ミクロン、例えば5~25ミクロン、又は50~100ミクロンの厚さを有することができる。
【0014】
焼結された半SOFCの空隙率は、テープ中の有機材料(例えば、結合剤、分散剤など)の所望の体積分率を選択することにより、特定のテープにおけるセラミック若しくはサーメット前駆体の粒径分布を制御することにより、及び/又は、テープ成形プロセス中にポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)などのポリマー材料の微粒子若しくは小球などの空隙形成剤をテープに添加することにより、制御することができる。空隙形成剤は、熱間等方加圧中又は焼結中に揮発して、電解質層及び/又は1つ以上のアノード層に空隙を形成する。
【0015】
ある実施形態では、次いで、セラミック電解質層の第1の側とは反対側であるセラミック電解質層の第2の側に1つ以上のカソード層が形成される。1つ以上のカソード層は、スクリーン印刷などのインク堆積法により、続いて、1つ以上のカソード層を950℃~1150℃の温度で焼成して、半SOFC(すなわち、積層されたセラミック電解質及びサーメットアノードを含む焼結されたモノリシック基板)にカソードを形成することにより、形成することができる。その結果、全SOFCが形成される。
【0016】
様々な実施形態では、1つ以上のカソード層は、テープ成形又は他の適切な方法を使用して、電解質とは別に形成される。次いで、1つ以上のカソード層は、電解質前駆体層の第2の表面に接触させて配置され、熱間等方加圧又は別の適切な方法によって合わせて加圧される。加圧は、電解質前駆体層が1つ以上のアノード前駆体層に接触している間に、又は接触していない間に行うことができる。次いで、1つ以上のカソード層は、電解質前駆体層と共に、また任意選択的に1つ以上のアノード前駆体層と共に焼結される。
【0017】
図1Aは、本発明の様々な実施形態による例示的な電解質支持型燃料電池10Aを示す。
【0018】
図1を参照すると、燃料電池10Aは、カソード30(例えば第1の電極)とアノード40(例えば第2の電極)との間に配置された電解質20を含むSOFCであることができる。
【0019】
電解質20は、110ミクロン未満、例えば50~100ミクロン、例えば55~75ミクロンの厚さを有することができる。電解質20は、イオン伝導性セラミック、例えば、ドープしたジルコニア、ドープしたセリア、及び/又は任意の他の適切なイオン伝導性セラミック酸化物材料であることができる。例えば、電解質20は、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、イットリアセリア安定化ジルコニア(YCSZ)、スカンジア安定化ジルコニア(SSZ)、イッテルビアセリアスカンジア安定化ジルコニア(YCSSZ)、又はこれらのブレンドを含むことができる。YCSSZには、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第8580456号明細書に開示されているように、スカンジアが、9~11モル%、例えば10モル%に等しい量で存在することができ、セリアが、0よりも多く、3モル%以下、例えば0.5モル%~2.5モル%、例えば1モル%の量で存在することができ、イッテルビアが、0よりも多く、2.5モル%以下、例えば0.5モル%~2モル%、例えば1モル%の量で存在することができる。YCSZには、イットリアが8~10モル%に等しい量で存在することができ、任意選択的にセリアが0~3モル%に等しい量で存在することができる。他の実施形態では、電解質は、サマリア、ガドリニア又はイットリアをドープしたセリアを含むことができる。
【0020】
カソード30は、導電性材料、例えば、導電性ペロブスカイト材料又は金属を含むことができる。カソード30は、1つ以上の層を備えることができる。
【0021】
一実施形態では、カソード30は、電解質20の第2の側に接触する任意選択的なカソードバリア層32を含むことができる。カソードバリア層32は、ドープしたセリア、例えば、サマリア、ガドリニア及び/又はプラセオジミアをドープしたセリアを含むことができる。例えば、カソードバリア層32は、10~20モル%のSm2O3、Gd2O3及び/又はPr2O3をドープしたCeO2を含むことができる。カソードバリア層32は、5~10ミクロンの厚さを有することができ、0~10%の空隙率を有することができる。
【0022】
カソードバリア層32は、本来なら電解質30と反応して望ましくないジルコネートを形成してしまう、(LaSr)(FeCo)ベースのペロブスカイトなどのより反応性の高い上のカソード層材料を使用することを可能にする。さらに、カソードバリア層32は、上のカソード層から電解質20へのCo及び/又はFeのさらなる移動を低減又は防止する拡散バリア層として機能する。電解質へのCo及び/又はFeの移動は、望ましくないことに、電解質20のイオン伝導度を低下させる。
【0023】
カソード30は、カソード機能層34も含む。カソード機能層34は、カソードバリア層32よりも厚くすることができ、15~50ミクロン、例えば25~30ミクロンの厚さを有することができる。カソード機能層34は、カソードバリア層32よりも高い空隙率を有することができ、導電性材料、例えば導電性ペロブスカイト、例えば、ランタンストロンチウムマンガナイト(LSM)、ランタンストロンチウムコバルタイト(La,Sr)CoO3(「LSCo」)、ランタンストロンチウムコバルトフェライト(La,Sr)(Co,Fe)O3(LSCF)、ランタンストロンチウムフェライト(LSF)、ランタンカルシウムマンガナイト(LCM)、ランタンストロンチウムマンガンフェライト(LSMF)、ランタンストロンチウムクロマイト(LSCr)など、又はPtなどの金属を含むことができる。
【0024】
一実施形態では、カソード機能層34は、参照によって全体が本明細書に組み込まれる、2019年4月2日に発行された米国特許第10249883号明細書に記載されているような導電性成分及びイオン伝導性成分を含むことができる。イオン伝導性成分は、セリア系セラミック成分、例えば、サマリアをドープしたセリア(SDC)、ガドリニアをドープしたセリア(GDC)又はイットリアをドープしたセリア(YDC)のうちの少なくとも1つである。例えば、セリア系セラミック成分は、式Ce(1-x)AxO2を有し、Aは、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)又はイットリア(Y)のうちの少なくとも1つであり、xは約0.1~0.4の範囲である。導電性成分は、導電性セラミック、例えば、ランタンストロンチウムマンガナイト(LSM)、ランタンカルシウムマンガナイト(LCM)、ランタンストロンチウムコバルトフェライト(LSCF)、ランタンストロンチウムフェライト(LSF)、ランタンストロンチウムマンガンフェライト(LSMF)、及びランタンストロンチウムクロマイト(LSCr)、又はランタンストロンチウムコバルタイト(LSCo)である。カソード機能層34は、10~90重量%、例えば55~75重量%のセリア系セラミック成分と、10~90重量%、例えば25~45重量%の導電性成分とを含むことができる。
【0025】
カソード30は、任意選択的なカソードコンタクト層36も含む。カソードコンタクト層36は、カソード機能層34よりも厚くすることができ、より導電の度合いを高めることができる。カソードコンタクト層36は、40~100ミクロン、例えば50~60ミクロンの厚さを有することができる。カソード機能層34は、導電性材料、例えば導電性ペロブスカイト、例えば、ランタンストロンチウムマンガナイト(LSM)、ランタンストロンチウムコバルタイト(La,Sr)CoO3(「LSCo」)、ランタンストロンチウムコバルトフェライト(La,Sr)(Co,Fe)O3(LSCF)、ランタンストロンチウムフェライト(LSF)、ランタンカルシウムマンガナイト(LCM)、ランタンストロンチウムマンガンフェライト(LSMF)、ランタンストロンチウムクロマイト(LSCr)など、又はPtなどの金属を含むことができる。
【0026】
アノード40は、金属相及びセラミック相を有する少なくとも1種類のサーメットを含む1つ以上の層を備えることができる。金属相は金属触媒を含むことができ、セラミック相は1種類以上のセラミック材料を含むことができる。金属相は、金属相が酸化される場合に起こりうる損傷を制限するように、セラミック相のセラミックマトリックス内に非常に微細に分散することができる。例えば、金属相は、500ナノメートル未満、例えば100~400ナノメートルの平均粒径を有することができる。
【0027】
アノード40のセラミック相は、任意の適切なイオン伝導性セラミック材料、例えば、ドープしたセリア及び/又はドープしたジルコニアを含むことができる。例えば、セラミック相としては、限定するものではないが、ガドリニアをドープしたセリア(GDC)、サマリアをドープしたセリア(SDC)、プラセオジミアをドープしたセリア(PDC)、イッテルビアをドープしたセリア(YDC)、スカンジア安定化ジルコニア(SSZ)、イッテルビアセリアスカンジア安定化ジルコニア(YCSSZ)、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)などが含まれうる。例えば、セラミック材料は、ドープしたセリア、例えば、サマリア、ガドリニア及び/又はプラセオジミアをドープしたセリア、例えば、10~20モル%のSm2O3、Gd2O3及び/又はPr2O3をドープしたCeO2であることができる。
【0028】
金属相は、電子伝導体として機能するニッケル(Ni)などの金属触媒を含むことができる。金属触媒は、金属状態であることができ、又は酸化物状態であることができる。例えば、金属触媒は、酸化状態にある場合に金属酸化物を形成する。よって、アノード40は、金属触媒を金属状態に還元するために、燃料電池10Aの動作前及び/又は動作中に還元性雰囲気中でアニールすることができる。
【0029】
一実施形態によれば、酸化物状態の金属相は、金属触媒及びドーパント(すなわち合金元素)を含むことができる。例えば、金属相は、式DxNi1-xOで表すことができ、Dは、2020年6月9日に発行され、参照によって全体が本明細書に組み込まれる米国特許第10680251号明細書に記載されているような、Al、Ca、Ce、Cr、Fe、Mg、Mn、Nb、Pr、Ti、V、W、若しくはZr、これらの任意の酸化物、又はこれらの任意の組み合わせから選択される(任意の酸化状態にある)ドーパントである。xは、0~1、例えば0.01~0.1の範囲であることができ、yは1~2の範囲であることができる。他の実施形態では、xは0.01~0.04の範囲であることができる。例えば、xは0.02であることができ、yは1又は2のいずれかであることができる。
【0030】
これにより、金属相は、1~10原子%(「at%」)の金属酸化物ドーパント及び99~90at%の金属触媒を含むことができる。例えば、金属相は、還元される前に製造されたときに、2~4at%の金属酸化物ドーパント及び98~96at%の金属触媒を含むことができる。
【0031】
様々な実施形態によれば、アノード40は、MgOをドープしたNiOを含む金属相を有することができる。例えば、金属相は、MgxNi1-xOを含むことができ、xは上述の範囲内である。アノードの製造後及び燃料電池の動作前又は動作中に、金属相は、高温(例えば、750~950℃の範囲の温度)で還元性雰囲気(例えば燃料)に曝露されることによって還元される。還元された金属相は、式DxM1-xで表することができる。
【0032】
アノード40は、傾斜機能構成を有する耐酸化性電極であることができる。例えば、
図1Aに示すように、アノード40は、電解質20の第1の側に又はその上に配置された第1の層42と、第1の層42上に配置された第2の層44とを含むことができる。第1の層42は、第2の層44よりも電解質20の近くに配置することができる。第1の層42は、燃料を電気化学的に酸化させるように構成することができる。第2の層44は、電子伝導のために構成することができ、改質触媒として機能することができる。
【0033】
第1の層42は、第2の層44よりも薄くすることができる。例えば、第1の層42は、5~40ミクロン、例えば15~20ミクロンの厚さを有することができ、第2の層44は、20~60ミクロン、例えば30~40ミクロンの厚さを有することができる。第1の層42は、第2の層44と同じ空隙率を有することができ、又は異なる空隙率を有することができる。例えば、両層の空隙率は5~20%の範囲である。
【0034】
第1及び第2の層42,44はそれぞれ、上述したように、金属相及びセラミック相を有するサーメットを含むことができる。第1及び第2の層42,44の金属相及び/又はセラミック相は、同じ材料又は異なる材料を含むことができる。いくつかの実施形態では、第1及び第2の層42,44の両方のうちの一方が単一の相のみを含むことができる。例えば、第2の層44が金属相を有し、セラミック相を省略することができる。
【0035】
いくつかの実施形態では、第1の層42は、重量パーセントで、第2の層44よりもセラミック相を多く、金属相を少なく含むことができる。第1の層42が有するセラミック相と金属相の重量パーセント比は、99:1~50:50の範囲であることができる。例えば、第1の層42は、第1の層42の総重量を基準にして、80~95重量%のセラミック相と、1~30重量%、例えば5~20重量%の金属相とを有することができる。
【0036】
第2の層44におけるセラミック相と金属相の重量パーセント比は、0:100~50:50の範囲であることができる。例えば、第2の層44は、第2の層44の総重量を基準にして、15~40重量%、例えば20~35重量%のセラミック相と、60~85重量%、例えば65~80重量%の金属相とを有することができる。ドーパントは、第1の層42及び第2の層44の少なくとも一方に、例えば、第1の層42のみに、第2の層44のみに、又は第1及び第2の層42,44の両方に配置することができる。
【0037】
一実施形態では、SOFC10Aを形成する方法は、セラミック電解質前駆体層、第1のアノード前駆体層、及び第2のアノード前駆体層をテープ成形により別々に形成する工程と、続いて、テープ成形された第1及び第2のアノード前駆体層を、テープ成形されたセラミック電解質前駆体層の第1の側に接触させて重ねる工程と、次いで、テープ成形された第1及び第2のアノード前駆体層を、テープ成形されたセラミック電解質前駆体層の第1の側に接触させて熱間等方加圧してグリーン複合体を形成する工程とを含む。方法は、グリーン複合体を焼結して、セラミック電解質20並びに第1及び第2のサーメットアノード層42,44を含む半SOFCを形成する工程と、焼結する工程の後に、第1の側とは反対側であるセラミック電解質20の第2の側に少なくとも1つのカソード層30を形成する工程とをさらに含む。
【0038】
図1Bは、本発明の別の実施形態によるアノード支持型SOFC10Bを示す。
【0039】
アノード支持型SOFC10Bは、追加のアノード支持層46の存在及び電解質20の厚さの低減により、電解質支持型SOFC10Aとは異なる。アノード支持型SOFC10Bの残りの層は電解質支持型SOFC10Aの層と同じであってよく、あらためては説明しない。
【0040】
アノード支持型SOFC10Bでは、電解質20の厚さは、50ミクロン以下、例えば5~50ミクロン、例えば5~25ミクロンであることができる。電解質20は、アノード40よりも薄い。
【0041】
アノード支持層46は、アノード40の第1及び第2の層42,44を組み合わせた厚さよりも厚くすることができる。アノード支持層46の厚さは、50~200ミクロンであることができる。アノード支持層は、20~45重量%、例えば25~35重量%のセラミック相と、55~80重量%、例えば65~75重量%の金属相とを有するサーメット材料を含むことができる。アノード支持層46のセラミック相及び金属相の組成は、アノード40の第1及び第2の層42,44の組成と同じであることができる。代替的に、アノード支持層46のセラミック相は、8~10モル%のイットリア安定化ジルコニア又は8~10モル%のイットリアと0.1~3モル%のセリア安定化ジルコニアとを含むことができる。一実施形態では、アノード支持層46におけるセラミック相の平均粒径は、0.5~2ミクロンであることができ、アノード支持層46における金属相の平均粒径は、2~10ミクロン(すなわち、セラミック相の平均粒径よりも大きい)であることができる。
【0042】
一実施形態では、SOFC10Bを形成する方法は、アノード支持前駆体層をテープ成形する工程と、アノード支持前駆体層を第2のアノード前駆体層に積層する工程と、続いて、上述の焼結によってサーメットアノード支持層46を形成する工程とを含む。付加的又は代替的に、異なる組成及び厚さの積層テープを使用して、アノード層、電解質層及び/又はバリア層を作ることもできる。
【0043】
図2は、本発明の様々な実施形態による燃料電池スタック100の平面図を示す。
【0044】
本明細書で使用される「燃料電池スタック」という用語は、共通の燃料入口及び排気通路又はライザを任意選択的に共有できる重ねられた複数の燃料電池を意味する。本明細書で使用される「燃料電池スタック」は、スタックの電力調整機器及び電力(すなわち、電気)出力部に接続されている2つのエンドプレートを含む別個の電気的実体を含む。よって、いくつかの構成では、そのような別個の電気的実体からの電力出力は、他のスタックとは別々に制御することができる。本明細書で使用される「燃料電池スタック」という用語は、別個の電気的実体の一部も含む。例えば、スタックは、同じエンドプレートを共有することができる。この場合、スタックは、カラムなどの別個の電気的実体を共同で構成する。この場合、両方のスタックからの電力出力は、別々に制御することができない。
【0045】
図2を参照すると、スタック100は、重ね合わされ、インターコネクト50によって隔てられた、燃料電池10(例えば、
図1AのSOFC10A又は
図1BのSOFC10B)を含む。インターコネクト50は、燃料電池10に燃料又は空気を供給するように構成された流路52を含む。インターコネクト50は、燃料電池10を電気的に直列に接続するようにも機能することができる。
【0046】
図3は、本発明の様々な実施形態による、
図2のスタック100を含む燃料電池システムホットボックス120の平面図を示す。
【0047】
図3を参照すると、ホットボックス120は、燃料電池スタック100を含むように示されている。なお、ホットボックス120は、2つ以上のスタック100を含んでもよい。スタック100は、燃料電池10の間に配置されたインターコネクト50によって電気的に接続された重ね合わされた燃料電池10(例えば10A又は10B)と、エンドプレート60とを含むことができる。ホットボックス120は、他の部品、例えば、燃料導管、空気導管、シール、電気接点などを含むことができ、周辺機器部品を含む燃料電池システムに組み込むことができる。インターコネクト50及び/又はエンドプレート60は、任意の適切なガス不透過性及び導電性材料、例えばクロム-鉄合金、例えば、4~6重量%の鉄及び残り部分のクロムから成る合金を含むことができる。インターコネクト50は、隣り合う燃料電池10を電気的に接続し、燃料及び空気が燃料電池10に到達するための通路を提供する。
【0048】
本発明の前述の説明は、例示及び説明の目的で提示されたものである。これは、網羅的であること、又は開示されたとおりの形態に本発明を限定することを意図するものではなく、修正及び変形が上記の教示に照らして可能であり、又は本発明の実践から得られる。説明は、本発明の基本方式及びその実際的応用を説明するために選択されたものである。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲及びその等価物によって定義されることが意図されている。
【0049】
開示した様々な実施形態が、その特定の実施形態に関連して記載した特定の特徴、要素又は工程を含みうることが理解されよう。また、特定の特徴、要素又は工程を特定の一実施形態に関連して記載したが、図示されていない様々な組み合わせ又は順列で代替的な実施形態と置き換えたり組み合わせたりできることも理解されよう。
【0050】
要素又は層が別の要素又は層「の上にある」又は「に接続されている」と言及される場合、この要素が他の要素若しくは層の直上にあってよく若しくはこれらに直接に接続されていてよく、又は介在する要素若しくは層が存在していてもよいことも理解されよう。対照的に、要素が別の要素又は層「の直上にある」又は「に直接に接続されている」と言及される場合には、介在する要素又は層は存在しない。本開示の目的のために、「X、Y及びZのうちの少なくとも1つ」は、Xのみ、Yのみ、Zのみ又は項目X、Y及びZのうちの2つ以上の任意の組み合わせ(例えば、XYZ、XYY、YZ、ZZ)と解釈されうることが理解されよう。
【0051】
範囲は、本明細書では、ある特定の「およそ」の値から及び/又は別の特定の「およそ」の値までと表現されうる。このような範囲が表現されている場合、例は、ある特定の値から及び/又は他の特定の値までを含む。同様に、先行詞「約」の使用により、値が近似値として表現されている場合、特定の値は別の態様を形成することが理解されよう。いくつかの実施形態では、値「X」は、Xの±1%の値を含みうる。さらに、それぞれの範囲の端点は、他方の端点と関連していても他方の端点から独立していても有意であることも理解されよう。
【外国語明細書】