(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189806
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】ウィンドウカバーフィルム、その製造方法、およびそれを含むフレキシブルディスプレイパネル
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20221215BHJP
G02B 1/14 20150101ALI20221215BHJP
G02B 1/18 20150101ALI20221215BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20221215BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20221215BHJP
C09D 183/04 20060101ALI20221215BHJP
C09D 183/08 20060101ALI20221215BHJP
C09D 5/16 20060101ALI20221215BHJP
C09D 183/06 20060101ALI20221215BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20221215BHJP
【FI】
B32B27/00 B
B32B27/00 Z
G02B1/14
G02B1/18
C09D5/00 D
C09D201/00
C09D183/04
C09D183/08
C09D5/16
C09D183/06
C09D7/63
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022094068
(22)【出願日】2022-06-10
(31)【優先権主張番号】10-2021-0075178
(32)【優先日】2021-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】519214271
【氏名又は名称】エスケー アイイー テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK IE TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 03188 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】チェ ジョン ミン
(72)【発明者】
【氏名】カン ソン ウク
(72)【発明者】
【氏名】コ コン ヒョク
(72)【発明者】
【氏名】イ ファン ピョ
【テーマコード(参考)】
2K009
4F100
4J038
【Fターム(参考)】
2K009AA15
2K009BB02
2K009CC26
2K009CC33
2K009CC42
2K009EE05
4F100AH05
4F100AH05C
4F100AK49
4F100AK49A
4F100AK52
4F100AK52B
4F100AK52C
4F100AK52D
4F100AK53
4F100AK53B
4F100AK53C
4F100AK53D
4F100AR00C
4F100AT00A
4F100BA05
4F100BA07
4F100CA02
4F100CA02B
4F100EH46
4F100EJ42
4F100EJ86
4F100GB41
4F100JK12B
4F100JK16
4F100JL06
4F100JL06D
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
4F100YY00D
4J038DL061
4J038DL071
4J038DL081
4J038DL091
4J038JA69
4J038KA03
4J038KA04
4J038KA06
4J038MA09
4J038NA05
4J038NA09
4J038NA11
4J038PA07
4J038PA17
4J038PA19
4J038PB08
4J038PB09
4J038PC08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】各層間の結合力に優れ、耐摩耗性、耐スクラッチ性、および指紋拭き取り性などが顕著に向上したウィンドウカバーフィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】ウィンドウカバーフィルムは、基材層と、前記基材層の一面に形成されるハードコーティング層と、前記ハードコーティング層上に形成され、1つの官能基または2つ以上の官能基を有するアルコキシシラン系化合物を含んで形成される付着強化層と、前記付着強化層上に形成され、フッ素含有アルコキシシラン系化合物を含んで形成される防汚層と、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、
前記基材層の一面に形成されるハードコーティング層と、
前記ハードコーティング層上に形成され、1つの官能基または2つ以上の官能基を有するアルコキシシラン系化合物を含んで形成される付着強化層と、
前記付着強化層上に形成され、フッ素含有アルコキシシラン系化合物を含んで形成される防汚層と、
を含む、ウィンドウカバーフィルム。
【請求項2】
前記官能基は、有機官能基である、請求項1に記載のウィンドウカバーフィルム。
【請求項3】
前記有機官能基は、カルボキシル基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、およびアミノ基の中から選択されるいずれか1つまたはこれらの組み合わせである、請求項2に記載のウィンドウカバーフィルム。
【請求項4】
前記フッ素含有アルコキシシラン系化合物は、ペルフルオロポリエーテル基を分子主鎖に有し、ケイ素原子に結合した加水分解可能な反応基を末端部に有する、請求項1に記載のウィンドウカバーフィルム。
【請求項5】
前記ウィンドウカバーフィルムの表面を、直径6mmの消しゴム(Rubber stick、Minoan社)に荷重0.5kgをかけ、40rpmの速度で25mmの距離を往復1500回の摩擦後に耐摩耗性を評価した際に、ASTM D5946に準じた水接触角が90°以上である、請求項1に記載のウィンドウカバーフィルム。
【請求項6】
前記フィルムは、被摩擦材を無塵布とし、200gの荷重で、5Nの力、100mm/minの速度で測定した動摩擦係数が0.15未満である、請求項1に記載のウィンドウカバーフィルム。
【請求項7】
前記ハードコーティング層は、エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物を含んで形成される、請求項1に記載のウィンドウカバーフィルム。
【請求項8】
前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物は、エポキシ基を有するシルセスキオキサン樹脂である、請求項7に記載のウィンドウカバーフィルム。
【請求項9】
前記ハードコーティング層は、多官能性エポキシ基を有する架橋剤をさらに含んで形成される、請求項7に記載のウィンドウカバーフィルム。
【請求項10】
前記基材層は、フッ素系芳香族ジアミンから誘導された単位を含むポリイミド系基材層である、請求項1に記載のウィンドウカバーフィルム。
【請求項11】
前記基材層は、フッ素系芳香族ジアミンから誘導された単位、芳香族二無水物から誘導された単位、および芳香族二酸二塩化物から誘導された単位を含むポリイミド系基材層である、請求項10に記載のウィンドウカバーフィルム。
【請求項12】
前記ポリイミド系基材層は、環状脂肪族二無水物から誘導された単位をさらに含む、請求項11に記載のウィンドウカバーフィルム。
【請求項13】
前記基材層の厚さは10~150μmである、請求項1に記載のウィンドウカバーフィルム。
【請求項14】
前記ハードコーティング層の厚さは1~100μmである、請求項1に記載のウィンドウカバーフィルム。
【請求項15】
前記防汚層の厚さは1~100nmである、請求項1に記載のウィンドウカバーフィルム。
【請求項16】
前記付着強化層の厚さは1~300nmである、請求項1に記載のウィンドウカバーフィルム。
【請求項17】
基材層の一面にハードコーティング層形成用組成物を塗布および硬化させてハードコーティング層を形成するステップと、
前記ハードコーティング層上に1つの官能基または2つ以上の官能基を有するアルコキシシラン系化合物を含む付着強化層形成用組成物を塗布および乾燥させて付着強化層を形成するステップと、
前記付着強化層上にフッ素含有アルコキシシラン系化合物を含む防汚層形成用組成物を塗布および硬化させて防汚層を形成するステップと、
を含む、ウィンドウカバーフィルムの製造方法。
【請求項18】
前記官能基は、有機官能基である、請求項17に記載のウィンドウカバーフィルムの製造方法。
【請求項19】
前記有機官能基は、カルボキシル基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、およびアミノ基の中から選択されるいずれか1つまたはこれらの組み合わせである、請求項18に記載のウィンドウカバーフィルムの製造方法。
【請求項20】
前記フッ素含有アルコキシシラン系化合物は、ペルフルオロポリエーテル基を分子主鎖に有し、ケイ素原子に結合した加水分解可能な反応基を末端部に有する、請求項17に記載のウィンドウカバーフィルムの製造方法。
【請求項21】
前記ハードコーティング層形成用組成物は、エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物を含む、請求項17に記載のウィンドウカバーフィルムの製造方法。
【請求項22】
前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物は、エポキシ基を有するシルセスキオキサン樹脂である、請求項21に記載のウィンドウカバーフィルムの製造方法。
【請求項23】
前記ハードコーティング層形成用組成物は、多官能性エポキシ基を有する架橋剤をさらに含む、請求項21に記載のウィンドウカバーフィルムの製造方法。
【請求項24】
請求項1~16のいずれか一項に記載のウィンドウカバーフィルムを含むフレキシブルディスプレイパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ウィンドウカバーフィルム、その製造方法、およびそれを含むフレキシブルディスプレイパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置(liquid crystal display)または有機発光表示装置(organic light emitting diode display)などの平板表示装置を用いた薄型表示装置が大きな注目を浴びている。特に、これらの薄型表示装置は、タッチスクリーンパネル(touch screen panel)の形態で実現され、スマートフォン(smart phone)、タブレット(tablet)PCだけでなく、各種ウェアラブル機器(wearable device)に至るまで、携帯性を特徴とする各種スマート機器(smart device)に広く用いられている。
【0003】
このような携帯可能なタッチスクリーンパネルベースの表示装置は、スクラッチまたは外部衝撃からディスプレイパネルを保護するためにディスプレイパネル上にディスプレイ保護用ウィンドウカバーを備えており、大半の場合、ディスプレイ用強化ガラスをウィンドウカバーとして用いている。ディスプレイ用強化ガラスは、一般的なガラスよりも薄いが、高い強度とともにスクラッチに強く作製されているという特徴がある。
【0004】
しかしながら、強化ガラスは、重さが重いため携帯機器の軽量化に適していない短所を有しているだけでなく、外部衝撃に脆弱であるため容易に割れない性質(unbreakable)を実現し難く、一定レベル以上曲がらないため曲げたり(bendable)折り畳んだりできる(foldable)機能を有するフレキシブル(flexible)ディスプレイ素材として適していない。
【0005】
近年、柔軟性および耐衝撃性を確保するとともに強化ガラスに相応する強度または耐スクラッチ性を有する光学用プラスチックカバーに対する検討が多様に行われている。一般的に、強化ガラスに比べて柔軟性を有する光学用透明プラスチックカバー基材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアクリレート(PAR)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリアラミド(PA)、ポリアミドイミド(PAI)などが挙げられる。しかし、これらの高分子プラスチック基材の場合、ディスプレイ保護用ウィンドウカバーとして用いられる強化ガラスに比べて、硬度および耐スクラッチ性の面で足りない物性を示すだけでなく、耐衝撃性も充分ではない。このため、これらのプラスチック基材に複合樹脂組成物をコーティングすることで、求められる物性を補完しようとする多様な試みが行われている。
【0006】
特に、近年、前記光学用透明プラスチック基材の足りない物性を補完するために、ハードコーティング層を備え、その上部にフッ素およびシリコン元素を有する疎水性材料から形成される防汚層を形成したウィンドウカバーフィルムが多数公知となっている。しかし、上記のウィンドウカバーフィルムの場合も、前記疎水性材料の低い表面エネルギーにより結合力が低下し、外部摩耗などによりフィルムが損傷しやすく、耐汚染および耐スクラッチ性などの物性が依然として低下しやすいという問題がある。
【0007】
そこで、摩耗、振動、および化合物などへの露出にもフィルムが容易に損傷せず、耐摩耗性および耐スクラッチ性などの物性が長期的に持続して優れた特性を維持するとともに、優れたタッチ感およびスリップ性(slip property)などを有し、前記光学用透明プラスチック基材の足りない物性を補完するのに適した、新しいウィンドウカバーフィルムに対する開発が必要な実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】大韓民国公開特許第10-2020-0096070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一実施形態は、各層間の結合力に優れ、耐摩耗性、耐スクラッチ性、および指紋拭き取り性(fingerprint wipeability)などが顕著に向上したウィンドウカバーフィルムおよびそれを含むフレキシブルディスプレイパネルを提供しようとする。
【0010】
また、一実施形態は、長期間の摩耗、振動、および化合物などへの露出後にも優れた防汚性を有する効果、例えば、長期間の耐摩耗評価後にも水接触角が90°以上を満たし、耐摩耗性に優れたウィンドウカバーフィルムを提供しようとする。
【0011】
また、一実施形態は、ガラスのようなタッチ感を有し、スリップ性に優れた表面特性を有するウィンドウカバーフィルムを提供しようとする。
また、一実施形態は、耐スクラッチ性および指紋拭き取り性に優れ、フィルム表面の外観の損傷ないしムラを最小化できるウィンドウカバーフィルムを提供しようとする。
【0012】
また、一実施形態は、各層間の結合力に優れ、耐摩耗性、耐スクラッチ性、および指紋拭き取り性などが顕著に向上したウィンドウカバーフィルムの製造方法を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、一態様は、基材層と、
前記基材層の一面に形成されるハードコーティング層と、
前記ハードコーティング層上に形成され、1つの官能基または2つ以上の官能基を有するアルコキシシラン系化合物を含んで形成される付着強化層と、
前記付着強化層上に形成され、フッ素含有アルコキシシラン系化合物を含んで形成される防汚層と、を含む、ウィンドウカバーフィルムを提供する。
【0014】
一実施形態において、前記官能基は、有機官能基であってもよい。
一実施形態において、前記有機官能基は、カルボキシル基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、およびアミノ基の中から選択されるいずれか1つまたはこれらの組み合わせであってもよい。
【0015】
一実施形態において、前記フッ素含有アルコキシシラン系化合物は、ペルフルオロポリエーテル基を分子主鎖に有し、ケイ素原子に結合した加水分解可能な反応基を末端部に有してもよい。
【0016】
一実施形態において、前記ウィンドウカバーフィルムの表面を、直径6mmの消しゴム(Rubber stick、Minoan社)に荷重0.5kgをかけ、40rpmの速度で25mmの距離を往復1500回の摩擦後に耐摩耗性を評価した際に、ASTM D5946に準じた水接触角が90°以上であってもよい。一実施形態において、前記フィルムは、被摩擦材を無塵布とし、200gの荷重で、5Nの力、100mm/minの速度で測定した動摩擦係数が0.15未満であってもよい。
【0017】
一実施形態において、前記ハードコーティング層は、エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物を含んで形成されてもよい。
一実施形態において、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物は、エポキシ基を有するシルセスキオキサン樹脂であってもよい。
【0018】
一実施形態において、前記ハードコーティング層は、多官能性エポキシ基を有する架橋剤をさらに含んで形成されてもよい。
一実施形態において、前記基材層は、フッ素系芳香族ジアミンから誘導された単位を含むポリイミド系基材層であってもよい。
【0019】
一実施形態において、前記基材層は、フッ素系芳香族ジアミンから誘導された単位、芳香族二無水物から誘導された単位、および芳香族二酸二塩化物から誘導された単位を含むポリイミド系基材層であってもよい。
【0020】
一実施形態において、前記ポリイミド系基材層は、環状脂肪族二無水物から誘導された単位をさらに含んでもよい。
一実施形態において、前記基材層の厚さは10~150μmであってもよい。
一実施形態において、前記ハードコーティング層の厚さは1~100μmであってもよい。
【0021】
一実施形態において、前記防汚層の厚さは1~100nmであってもよい。
一実施形態において、前記付着強化層の厚さは1~300nmであってもよい。
【0022】
他の一態様は、基材層の一面にハードコーティング層形成用組成物を塗布および硬化させてハードコーティング層を形成するステップと、
前記ハードコーティング層上に1つの官能基または2つ以上の官能基を有するアルコキシシラン系化合物を含む付着強化層形成用組成物を塗布および乾燥させて付着強化層を形成するステップと、
前記付着強化層上にフッ素含有アルコキシシラン系化合物を含む防汚層形成用組成物を塗布および硬化させて防汚層を形成するステップと、を含む、ウィンドウカバーフィルムの製造方法を提供する。
【0023】
一実施形態において、前記官能基は、有機官能基であってもよい。
一実施形態において、前記有機官能基は、カルボキシル基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、およびアミノ基の中から選択されるいずれか1つまたはこれらの組み合わせであってもよい。
【0024】
一実施形態において、前記フッ素含有アルコキシシラン系化合物は、ペルフルオロポリエーテル基を分子主鎖に有し、ケイ素原子に結合した加水分解可能な反応基を末端部に有してもよい。
一実施形態において、前記ハードコーティング層形成用組成物は、エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物を含んでもよい。
【0025】
一実施形態において、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物は、エポキシ基を有するシルセスキオキサン樹脂であってもよい。
一実施形態において、前記ハードコーティング層形成用組成物は、多官能性エポキシ基を有する架橋剤をさらに含んでもよい。
【0026】
また他の一態様は、上述したウィンドウカバーフィルムを含むフレキシブルディスプレイパネルを提供する。
【発明の効果】
【0027】
本開示の一態様は、ウィンドウカバーフィルムおよびそれを含むフレキシブルディスプレイパネルを提供するものであり、前記ウィンドウカバーフィルムは、1つの官能基または2つ以上の官能基を有するアルコキシシラン系化合物を含んで製造される付着強化層を含むことで、各層間の結合力を顕著に向上させることができる。
【0028】
また、一態様に係るウィンドウカバーフィルムは、摩耗、振動、および化合物などへの露出にもフィルムが容易に損傷しない。
また、一態様に係るウィンドウカバーフィルムは、長期間の耐摩耗評価後にも水接触角が90°以上を満たし、耐摩耗性が顕著に向上することができる。
【0029】
また、一態様に係るウィンドウカバーフィルムは、ガラスのようなタッチ感を有し、スリップ性に優れた表面特性を有することができる。
また、一態様に係るウィンドウカバーフィルムは、耐スクラッチ性および指紋拭き取り性に優れ、フィルム表面の外観の損傷ないしムラを最小化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、一実施形態に係るウィンドウカバーフィルム、その製造方法、およびそれを含むフレキシブルディスプレイパネルについて詳しく説明する。
この際、他に定義しない限り、全ての技術的用語および科学的用語は、本明細書に開示された技術の当業者の1人により一般的に理解される意味と同一の意味を有する。本明細書において、説明で用いられる用語は、単に特定の具体例を効果的に記述するためのものであって、実施形態を制限しようとするものではない。また、明細書において、特に記載していない添加物の単位は重量%であってもよい。
【0031】
また、明細書および添付された請求範囲で用いられる単数の形態は、文脈上、特に指示しない限り、複数の形態も含むことを意図し得る。
本明細書の全般にわたって、ある部分がある構成要素を「含む」とは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味し得る。
【0032】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、層、膜、薄膜、領域、板などの部分が他の部分の「上部に」または「上に」存在するとする際、これは、他の部分の「真上に」存在する場合だけでなく、その間にまた他の部分が存在する場合も含んでもよい。
【0033】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「これらの組み合わせ」とは、構成物の混合または共重合を意味し得る。
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「Aおよび/またはB」とは、AおよびBを同時に含む態様を意味してもよく、AおよびBの中から択一された態様を意味してもよい。
【0034】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「誘導された」とは、化合物の官能基のうち少なくともいずれか1つが変形されたことを意味し、具体的に、化合物の反応基および/または離脱基が反応に応じて変形または離脱した形態を含んでもよい。また、互いに異なる化合物から誘導された構造が互いに同一であれば、いずれか1つの化合物から誘導された構造は、他のいずれか1つの化合物から誘導されて同一の構造を有する場合も含んでもよい。
【0035】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「重合体」は、相対的に高分子量の分子をいい、その構造は、低分子量の分子から誘導された単位の多重繰り返しを含んでもよい。一態様において、重合体は、交互(alternating)共重合体、ブロック(block)共重合体、ランダム(random)共重合体、分岐(branched)共重合体、架橋(crosslinked)共重合体、またはこれらを全て含む共重合体(例えば、1種よりも多い単量体を含む共重合体)であってもよい。他の態様において、重合体は、単独重合体(homopolymer)(例えば、1種の単量体を含む共重合体)であってもよい。
【0036】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、用語「フレキシブル(flexible)」は、曲がったり、撓んだり、折り畳まれたりすることを意味し得る。
【0037】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「ポリイミド」は、イミド構造を含むものであって、「ポリイミド」または「ポリアミドイミド」を含む意味として用いられてもよい。
【0038】
一実施形態は、フッ素およびシリコン元素を有する疎水性材料から形成される防汚層を含むとしても、摩耗、振動、および化合物などへの露出にもフィルムが容易に損傷せず、耐スクラッチ性および指紋拭き取り性などに優れたウィンドウカバーフィルムおよびそれを含むフレキシブルディスプレイパネルを提供することができる。
【0039】
一態様に係るウィンドウカバーフィルムは、基材層と、
前記基材層の一面に形成されるハードコーティング層と、
前記ハードコーティング層上に形成され、1つの官能基または2つ以上の官能基を有するアルコキシシラン系化合物を含んで形成される付着強化層(Adhesion enhancement layer)と、
前記付着強化層上に形成され、フッ素含有アルコキシシラン系化合物を含んで形成される防汚層と、を含んでもよい。
【0040】
この際、前記基材層、ハードコーティング層、付着強化層、および防汚層は、順に積層されてもよい。また、各層は、直接接して積層されてもよく、各層の間に他の層が形成されてもよい。
【0041】
一態様に係るウィンドウカバーフィルムは、耐摩耗性が顕著に向上しており、直径6mmの消しゴム(Rubber stick、Minoan社)に荷重0.5kgをかけ、40rpmの速度で25mmの距離を往復1500回の摩擦後に耐摩耗性を評価した際に、ASTM D5946に準じた水接触角が90°以上、または95°以上であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0042】
また、一態様に係るウィンドウカバーフィルムは、被摩擦材を無塵布とし、200gの荷重で、5Nの力、100mm/minの速度で測定した動摩擦係数が0.15未満、または0.1未満であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0043】
また、一態様に係るウィンドウカバーフィルムは、耐スクラッチ性が顕著に向上しており、スチールウールで0.5kgの荷重を加えて往復1000回摩擦させた後にも、フィルムの表面に損傷が発生しないだけでなく、指紋拭き取り性が顕著に向上しており、前記フィルムの防汚層の表面に指紋を付着させた後、無塵布で表面を拭き取り、指紋が観察されないまでの拭き取り回数を測定した結果、その回数が5回未満、または3回以下であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0044】
以下、一態様に係るウィンドウカバーフィルムに含まれる基材層、ハードコーティング層、防汚層、および付着強化層の各構成についてより具体的に説明する。ただし、これは例示的なものにすぎず、一実施形態が例示的に説明された具体的な実施形態に制限されるのではない。
【0045】
<基材層>
先ず、一態様に係る基材層について説明する。
一態様に係る基材層は、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、および等方性などに優れることが好ましい。基材層は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレートなどのアクリル系樹脂;ポリスチレンアクリロニトリル-スチレン共重合体などのスチレン系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系またはノルボルネン構造を有するポリオレフィン系樹脂、エチレンプロピレン共重合体などのポリオレフィン系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリアラミド系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;スルホン系樹脂などから製造されてもよく、これらの樹脂は単独でまたは2種以上混合して用いられてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0046】
より具体的に、一態様において、前記基材層は、フッ素系芳香族ジアミンから誘導された単位を含むポリイミド系樹脂から形成されるポリイミド系基材層であってもよく、この際、前記ポリイミド系樹脂は、ポリイミド樹脂およびポリアミドイミド樹脂のいずれを含んでもよい。
【0047】
したがって、一態様において、前記ポリイミド系基材層は、フッ素原子および脂肪族環状構造を含むポリアミドイミド樹脂を含むものであって、具体的な一例としては、フッ素系芳香族ジアミン、芳香族二無水物、および芳香族二酸二塩化物から誘導された単位を含むポリイミド系基材層であってもよく、より具体的な一例としては、環状脂肪族二無水物から誘導された単位をさらに含むポリイミド系基材層であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0048】
前記基材層がポリイミド系基材層である場合、レインボー現象やムラ(mura)現象などが発生せず、光学特性にさらに優れたフィルムを提供することができ、ウィンドウカバーフィルムのヘイズをさらに低くし、全光線透過率をさらに高めることができ、透明性にさらに優れたフィルムを提供することができるため好まれるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
前記基材層の厚さは、特に限定されず、例えば、10~150μmであってもよい。
【0049】
<ハードコーティング層>
次に、一態様に係るハードコーティング層について説明する。
一態様において、前記ハードコーティング層は、基材層の一面上に形成されてもよい。前記ハードコーティング層は、優れた光学的、機械的特性を有する基材層を外部の物理、化学的損傷から保護することができる。
【0050】
一態様において、前記ハードコーティング層は、ハードコーティング層形成用組成物が硬化して形成されてもよく、また、前記ハードコーティング層形成用組成物を光硬化した後に熱硬化した複合ハードコーティング層であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0051】
一態様において、前記ハードコーティング層は、エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物を含んで形成されてもよく、例えば、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物は、エポキシ基を含むシロキサン(Siloxane)樹脂であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物は、硬化する場合に、優れた硬度および曲げ特性を有することができる。
【0052】
前記エポキシ基は、環状エポキシ基、脂肪族エポキシ基、および芳香族エポキシ基から選択されるいずれか1つ以上であってもよく、前記シロキサン樹脂は、シリコン原子と酸素原子が共有結合を形成した高分子化合物を意味し得る。
【0053】
一態様において、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物は、エポキシ基を有するシルセスキオキサン(Silsesquioxane)樹脂であってもよく、具体的には、シルセスキオキサン樹脂のケイ素原子にエポキシ基が直接置換されるか、または前記ケイ素原子に置換された置換基にエポキシ基が置換されたものであってもよく、より具体的には、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物は、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基が置換されたシルセスキオキサン樹脂であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0054】
前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物を含んで形成されるハードコーティング層上に、1つの官能基または2つ以上の官能基を有するアルコキシシラン系化合物を含む付着強化層を形成する場合、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物および前記1つの官能基または2つ以上の官能基を有するアルコキシシラン系化合物の類似した化学構造により、前記エポキシ基および官能基の間の化学結合がなされることができ、前記ハードコーティング層および付着強化層の層間結合力がさらに向上することができる。
【0055】
一態様において、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物は、重量平均分子量が1,000~20,000g/mol、具体的には1,000~18,000g/mol、より具体的には2,000~15,000g/molであってもよい。重量平均分子量が前述した範囲である場合、前記ハードコーティング層形成用組成物の流れ性、塗布性、硬化反応性などがさらに向上することができる。
【0056】
一態様において、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物は、下記化学式1で表されるアルコキシシラン化合物由来の繰り返し単位を含んでもよい。
【0057】
[化学式1]
R1
nSi(OR2)4-n
【0058】
前記化学式1中、R1は、炭素数3~6のエポキシシクロアルキル基またはオキシラニル基で置換された直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~6のアルキル基であって、前記アルキル基は、エーテル基を含んでもよく、R2は、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~7のアルキル基であり、nは、1~3の整数であってもよい。
【0059】
前記化学式1で表されるアルコキシシラン化合物は、例えば、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどが挙げられ、これらは単独でまたは2種以上混合して用いられてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0060】
一態様において、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物は、全体ハードコーティング層形成用組成物100重量部に対して20~70重量部で含まれてもよく、具体的には、100重量部に対して20~50重量部で含まれてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。前記範囲を満たす場合、ハードコーティング層形成用組成物は、さらに優れた流れ性および塗工性を確保することができる。また、ハードコーティング層形成用組成物の硬化時に均一な硬化が可能であるため、過硬化によるクラックなどの物理的欠陥をさらに効果的に防止することができ、ハードコーティング層はさらに優れた硬度を示すことができる。
【0061】
また、一態様において、前記ハードコーティング層は、多官能性エポキシ基を有する架橋剤をさらに含んで形成されてもよい。この際、前記架橋剤は、脂環式エポキシ基を有する化合物を含んでもよく、例えば、前記架橋剤は、2個の3,4-エポキシシクロヘキシル基が連結された化合物を含んでもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。前記架橋剤は、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合と構造および性質が類似してもよく、この場合、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物の架橋結合を促進させることができる。
【0062】
一態様において、前記ハードコーティング層の厚さは1~100μm、より具体的には1~50μmであってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。ハードコーティング層の厚さが前記範囲内である場合、ハードコーティング層は、さらに優れた硬度を有しながらも、柔軟性を維持し、機械的物性がさらに向上することができる。
【0063】
以下、ハードコーティング層の形成方法について説明する。
ハードコーティング層は、ハードコーティング層形成用組成物を製造し、それを基材層上に塗布し硬化して形成される。
【0064】
一態様において、前記ハードコーティング層形成用組成物は、エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物を含んでもよく、この際、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物としては、前記ハードコーティング層に関する説明において上述したものと同様のものを用いてもよい。
【0065】
また、一態様において、前記ハードコーティング層形成用組成物は、下記化学式2で表される化合物を含む熱開始剤および光開始剤をさらに含んでもよい。
【0066】
【0067】
前記化学式2中、R3は、水素、炭素数1~4のアルコキシカルボニル基、炭素数1~4のアルキルカルボニル基、または炭素数6~14のアリールカルボニル基であり、R4は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、または炭素数1~4のアルキル基であり、nは、1~4であり、R5は、炭素数1~4のアルキル基、または炭素数1~4のアルキル基で置換されていてもよい炭素数7~15のアラルキル基であり、R6は、炭素数1~4のアルキル基であり、Xは、SbF6、PF6、AsF6、BF4、CF3SO3、N(CF3SO2)2、またはN(C6F5)4である。
【0068】
前記アルコキシカルボニル基は、アルコキシ部分の炭素数が1~4であるものであって、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、およびプロポキシカルボニル基などが挙げられる。
前記アルキルカルボニル基は、アルキル部分の炭素数が1~4であるものであって、例えば、アセチル基およびプロピオニル基などが挙げられる。
【0069】
前記アリールカルボニル基は、アリール部分の炭素数が6~14であるものであって、例えば、ベンゾイル基、1-ナフチルカルボニル基、および2-ナフチルカルボニル基などが挙げられる。
前記アラルキル基は、例えば、ベンジル基、2-フェニルエチル基、1-ナフチルメチル基、および2-ナフチルメチル基などが挙げられる。
【0070】
前記化学式2の化合物を熱開始剤として用いることで、硬化半減期を短縮させることができ、低温条件においても迅速に熱硬化を行うことができるため、高温条件下で長期間熱処理をする場合に発生する損傷および変形を防止することができる。
【0071】
前記熱開始剤は、ハードコーティング層形成用組成物に熱が加えられる際に、前記エポキシシロキサン樹脂または後述する架橋剤の架橋反応を促進することができる。前記熱開始剤としては、カチオン性熱開始剤が用いられてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0072】
また、前記熱開始剤を用いた熱硬化と前記光開始剤を用いた光硬化を併用することで、ハードコーティング層の硬化度、硬度、柔軟性などを向上させることができる。例えば、前記ハードコーティング層形成用組成物を基材などに塗布し、紫外線を照射(光硬化)して少なくとも部分的に硬化させた後、追加的に熱を加えて(熱硬化)実質的に完全に硬化させてもよい。
【0073】
前記光硬化により前記ハードコーティング層形成用組成物が半硬化または部分硬化することができ、前記半硬化または部分硬化したハードコーティング層形成用組成物は、前記熱硬化により実質的に完全に硬化することができる。
【0074】
例えば、前記ハードコーティング層形成用組成物を光硬化だけで硬化する際には、硬化時間が過度に長くなるか、または部分的に硬化が完全に行われないことがある。これに対し、前記光硬化に続き前記熱硬化を行う場合には、光硬化により硬化していない部分が熱硬化により実質的に完全に硬化することができ、硬化時間も減少することができる。
【0075】
また、一般的に、硬化時間の増加(例えば、露光時間の増加)により、既に適した程度に硬化した部分に過度なエネルギーが提供されることで、過硬化が起こり得る。前記過硬化が進行する場合、ハードコーティング層が柔軟性を失うか、カール、クラックなどの機械的欠陥が発生し得る。これに対し、前記光硬化と前記熱硬化を併用する場合、前記ハードコーティング層形成用組成物を短時間に実質的に完全に硬化させることができ、ハードコーティング層の柔軟性を維持しながらも、硬度をさらに向上させることができる。
【0076】
前記ハードコーティング層形成用組成物を先に光硬化し、追加的に熱硬化する方法について前述したが、光硬化および熱硬化の順が特にこれに制限されない。すなわち、一部の実施形態においては、前記熱硬化が先に行われてから前記光硬化が行われてもよいことはいうまでもない。
【0077】
一態様において、前記熱開始剤は、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物100重量部に対して0.1~20重量部、より具体的には1~20重量部で含まれてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。前記熱開始剤の含量が前記範囲内である場合、熱硬化反応がさらに有効な速度で行われることができ、ハードコーティング層形成用組成物の他成分の含量が減少してハードコーティング層の機械的特性(例えば、硬度、柔軟性、カール特性など)が低下するのを防止することができる。
【0078】
また、例えば、前記熱開始剤は、全体ハードコーティング層形成用組成物100重量部に対して0.01~15重量部、具体的には0.1~15重量部、より具体的には0.3~10重量部で含まれてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0079】
一態様において、前記光開始剤は、光カチオン開始剤を含んでもよい。前記光カチオン開始剤は、前記エポキシシロキサン樹脂およびおよびエポキシ系単量体の重合を開始することができる。
【0080】
前記光カチオン開始剤としては、オニウム塩および/または有機金属塩などを用いてもよく、例えば、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、アリールジアゾニウム塩、鉄-アレーン錯体などを単独でまたは2種以上混合して用いてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0081】
前記光開始剤の含量は、特に限定されず、例えば、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物100重量部に対して0.1~15重量部、具体的には1~15重量部で含まれてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。前記光開始剤の含量が前記範囲内である場合、さらに優れたハードコーティング層形成用組成物の硬化効率を維持し、硬化後の残存成分による物性の低下を防止することができる。
【0082】
また、例えば、前記光開始剤は、全体ハードコーティング層形成用組成物100重量部に対して0.01~10重量部、具体的には0.1~10重量部、より具体的には0.3~5重量部で含まれてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0083】
一態様において、前記ハードコーティング層形成用組成物は、架橋剤をさらに含んでもよい。前記架橋剤は、例えば、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物と架橋結合を形成してハードコーティング層形成用組成物を固体化させ、ハードコーティング層の硬度を向上させることができる。
【0084】
一態様において、前記架橋剤は、脂環式エポキシ基を有する化合物を含んでもよい。例えば、前記架橋剤は、2個の3,4-エポキシシクロヘキシル基が連結された化合物を含んでもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。前記架橋剤は、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合と構造および性質が類似してもよく、この場合、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物の架橋結合を促進し、組成物を適正粘度に維持させることができる。
【0085】
一態様に係る架橋剤の含量は、特に限定されず、例えば、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物100重量部に対して5~150重量部で含まれてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。架橋剤の含量が前記範囲内である場合、組成物の粘度を適正範囲に維持することができ、塗布性および硬化反応性をさらに改善させることができる。
【0086】
また、例えば、前記架橋剤は、全体ハードコーティング層形成用組成物100重量部に対して1~30重量部、具体的には5~20重量部で含まれてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0087】
一態様において、前記ハードコーティング層形成用組成物は、熱硬化剤をさらに含んでもよい。
前記熱硬化剤は、アミン系、イミダゾール系、酸無水物系、アミド系の熱硬化剤などを含んでもよく、変色を防止および高硬度を実現するという面で、より好ましくは、酸無水物系熱硬化剤をさらに用いてもよく、これらは単独でまたは2種以上混合して用いられてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0088】
前記熱硬化剤の含量は、特に限定されず、例えば、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物100重量部に対して5~30重量部で含まれてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。前記熱硬化剤の含量が前記範囲内である場合、ハードコーティング層形成用組成物の硬化効率をさらに改善し、さらに優れた硬度を有するハードコーティング層を形成することができる。
【0089】
一態様において、前記ハードコーティング層形成用組成物は、溶媒をさらに含んでもよい。前記溶媒は、特に限定されず、当該分野で公知の溶媒が用いられてもよい。
【0090】
前記溶媒の非制限的な例として、アルコール系(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなど)、ケトン系(メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、シクロヘキサノンなど)、ヘキサン系(ヘキサン、ヘプタン、オクタンなど)、ベンゼン系(ベンゼン、トルエン、キシレンなど)などが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上混合して用いられてもよい。
【0091】
前記溶媒の含量は、特に限定されず、例えば、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物100重量部に対して10~200重量部で含まれてもよい。前記範囲を満たす場合、ハードコーティング層形成用組成物は、適正レベルの粘度を確保することができるため、ハードコーティング層の形成時に作業性にさらに優れることができる。また、ハードコーティング層の厚さ調節が容易であり、溶媒乾燥時間を減少させ、さらに迅速な工程速度を確保することができる。
【0092】
一態様において、前記溶媒は、予定の全体組成物の総重量のうち、残りの成分が占める量を除いた残量を含んでもよい。例えば、予定の全体組成物の総重量が100gであり、溶媒を除いた残りの成分の重量の和が70gであれば、溶媒は30gが含まれてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0093】
一態様において、前記ハードコーティング層形成用組成物は、無機充填剤をさらに含んでもよい。前記無機充填剤は、ハードコーティング層の硬度をさらに向上させることができる。
【0094】
前記無機充填剤としては、特に限定されず、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタンなどの金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カリウムなどの水酸化物;金、銀、銅、ニッケル、これらの合金などの金属粒子;カーボン、カーボンナノチューブ、フラーレンなどの導電性粒子;ガラス;セラミック;などが用いられてもよく、好ましくは、ハードコーティング層形成用組成物の他の成分との相溶性の面でシリカが用いられてもよく、これらは単独でまたは2種以上混合して用いられてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0095】
一態様において、前記ハードコーティング層形成用組成物は、滑剤をさらに含んでもよい。前記滑剤は、巻取り効率、耐ブロッキング性、耐摩耗性、耐スクラッチ性などをさらに改善させることができる。
【0096】
前記滑剤の種類は、特に限定されず、例えば、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、合成ワックス、またはモンタンワックスなどのワックス類;シリコン系樹脂、フッ素系樹脂などの合成樹脂類;などが用いられてもよく、これらは単独でまたは2種以上混合して用いられてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0097】
この他にも、前記ハードコーティング層形成用組成物は、例えば、抗酸化剤、UV吸収剤、光安定剤、熱的高分子化禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、潤滑剤、防汚剤などの添加剤をさらに含んでもよい。
【0098】
<防汚層>
次に、一態様に係る防汚層について説明する。
一態様において、前記防汚層は、前記付着強化層上に形成されてもよく、例えば、前記防汚層は、前記付着強化層の上面に接して形成されてもよい。
【0099】
一態様において、前記防汚層は、フッ素含有アルコキシシラン系化合物を含んで形成されてもよい。前記フッ素含有アルコキシシラン系化合物は、例えば、アルコキシシラン系化合物のケイ素原子にフッ素が直接置換されるか、またはケイ素原子に置換された置換基(例えば、アルキル基)などがフッ素で置換されたものであってもよい。換言すれば、ケイ素原子にフッ素が置換されたアルキル基が連結されたものであってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0100】
より具体的に、一態様において、前記フッ素含有アルコキシシラン系化合物は、ペルフルオロポリエーテル基(Perfluoropolyether)を分子主鎖に有し、ケイ素原子に結合した加水分解可能な反応基を末端部に有してもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。この場合、前記加水分解可能な反応基は、付着強化層に含まれるアルコキシシラン系化合物の反応基と加水分解反応または縮合反応などを介して化学的結合を形成することで層間結合力をさらに向上させることができ、防汚層の表面上部層にフッ素官能基が配向されて防汚性、撥水性、および撥油性などがさらに向上することができる。
【0101】
一態様において、前記ペルフルオロポリエーテル基は、-(CpF2p)-、-(CpF2pO)-、-(CF(Z))-、-(CF(Z)O)-、-(CF(Z)CpF2pO)-、-(CpF2pCF(Z)O)-、-(CF2CF(Z)O)-、またはその組み合わせなどから選択されたペルフルオロ化した繰り返し単位を含んでもよく、直鎖状、分岐状、環状、またはその組み合わせなどであってもよく、飽和もしくは不飽和のものであってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0102】
前記繰り返し単位において、前記pは1~10の整数であってもよく、具体的には1~4、より具体的には1~2の整数であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0103】
また、前記Z基は、フッ素基、ペルフルオロアルキル基、ペルフルオロエーテル基、含窒素ペルフルオロアルキル基、ペルフルオロポリエーテル基、およびペルフルオロアルコキシ基などから選択されるいずれか1つであってもよく、これらはいずれも直鎖状、分岐状、環状であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0104】
また、前記ペルフルオロポリエーテル基中で、前記繰り返し単位は、それぞれ独立して0~200、具体的には1~200個だけ存在してもよく、前記繰り返し単位数の総計は、少なくとも1以上、具体的には20~100、より具体的には30~50であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではなく、前記ペルフルオロポリエーテル基中で、前記繰り返し単位の順は、任意に存在してもよく、これを特に限定しない。
【0105】
前記フッ素含有アルコキシシラン系化合物の商業化された一例としては、Shin-etsu社のKY-1901、KY-19012、Daikin社のOptool DSX、UD120などが挙げられるが、これは非限定的な一例にすぎず、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0106】
前記フッ素含有アルコキシシラン系化合物を含んで形成される防汚層が、1つの官能基または2つ以上の官能基を有するアルコキシシラン系化合物を含んで形成される付着強化層上に形成される場合、前記防汚層および付着強化層に含まれるそれぞれのアルコキシシラン系化合物間の類似した化学構造により、前記防汚層および付着強化層の間の化学的結合に応じた層間結合力がさらに向上することができる。
【0107】
また、前記フッ素含有アルコキシシラン系化合物は、防汚層に優れた撥水、防水、および撥油機能を付与することができる。したがって、前記フッ素含有アルコキシシラン系化合物を含んで形成される防汚層は、非常に優れた防汚特性を示すことができる。また、防汚層は、水接触角が105°以上であってもよく、優れた硬度、向上した耐摩耗性、耐スクラッチ性、および指紋拭き取り性などの特性を有することができる。
【0108】
一態様において、前記防汚層の厚さは1~100nm、より具体的には5~50nmであってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。防汚層の厚さが前記範囲内である場合、防汚層は、さらに優れた防汚特性を示すことができる。
【0109】
以下、防汚層の形成方法について説明する。
防汚層は、防汚層形成用組成物を製造し、それを付着強化層上に塗布し硬化して形成される。
【0110】
一態様において、前記防汚層形成用組成物は、フッ素含有アルコキシシラン系化合物を含んでもよく、この際、前記フッ素含有アルコキシシラン系化合物としては、前記防汚層に関する説明において上述したものと同様のものを用いてもよい。
【0111】
一態様において、前記防汚層形成用組成物は、溶媒を含んでもよく、前記溶媒は、例えば、ヘキサフルオロキシレン、ヒドロフルオロカーボン、およびヒドロフルオロエーテルなどから選択されるいずれか1つまたはこれらの2つ以上の組み合わせを含んでもよく、前記溶媒の商業化された一例としては、3M社のHFE-7500、7200、7100、デュポン社のバートレルXF、および日本ゼオン社のゼオローラHなどが挙げられるが、これは非限定的な一例にすぎず、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0112】
一態様において、前記防汚層は、塗布された防汚層形成用組成物を熱硬化して形成されてもよい。前記防汚層の硬化を光硬化ではなく熱硬化により行う場合、防汚層底面のハードコーティング層および付着強化層が活性エネルギー線(例えば、紫外線)に再び露出されるのを防止することができ、特に硬化が完了したハードコーティング層が再び光に露出されて過硬化または黄弁が発生するのを防止することができる。
【0113】
一態様において、前記熱硬化は、50~200℃の温度で3~30分間、または100~200℃の温度で5~30分間行われてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。前記温度範囲にて、防汚層形成用組成物がさらに有効な速度で硬化することができ、前記組成物中の各成分の間で副反応が発生するのを効果的に防止することができる。
【0114】
<付着強化層>
次に、一態様に係る付着強化層について説明する。
一態様において、前記付着強化層は、前記ハードコーティング層上に形成されてもよく、例えば、前記付着強化層は、前記ハードコーティング層の上面に接して形成されてもよい。
【0115】
一態様において、前記付着強化層は、1つの官能基または2つ以上の官能基を有するアルコキシシラン系化合物を含んで形成されてもよい。前記1つの官能基または2つ以上の官能基を有するアルコキシシラン系化合物は、アルコキシシラン系化合物に1つまたは2つ以上の官能基が置換されたものであって、例えば、アルコキシシラン系化合物のケイ素原子に前記官能基が直接置換されるか、ケイ素原子に置換された置換基(例えば、アルキル基)などが前記官能基で置換されたものであってもよい。換言すれば、ケイ素原子に1つまたは2つ以上の官能基が置換されたアルキル基が連結されたものであってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0116】
一態様において、前記官能基は、有機官能基(organofunctional group)であってもよく、例えば、前記有機官能基は、カルボキシル基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、およびアミノ基などから選択されるいずれか1つまたはこれらの組み合わせであってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0117】
有機官能基を有するアルコキシシラン系化合物は、分子中に無機材料と反応するアルコキシシラン基、および有機材料と化学的結合を形成する有機官能基を同時に有しており、有機物と無機物を結合させる能力に優れ、有機物の表面エネルギーを減少させて無機物との接着力をさらに増大させることができる。また、有機官能基を有するアルコキシシラン系化合物は、他の樹脂との相溶性を強化させることができる。
【0118】
したがって、前記付着強化層に含まれる1つの官能基または2つ以上の官能基を有するアルコキシシラン系化合物が前記有機官能基とアルコキシシラン基を同時に有する場合、前記付着強化層に含まれるアルコキシシラン系化合物は、前記ハードコーティング層のエポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物および前記防汚層のフッ素含有アルコキシシラン系化合物と同時に化学的結合を形成することができる。また、前記付着強化層が前記ハードコーティング層と防汚層との間に形成される場合、各層間の結合力がさらに顕著に向上し、各層が実質的に一体化することができる。
【0119】
特に、前記付着強化層に含まれる1つの官能基または2つ以上の官能基を有するアルコキシシラン系化合物と、前記防汚層に含まれるフッ素含有アルコキシシラン系化合物は、加水分解可能な反応基間の加水分解反応または縮合反応などにより化学的結合を形成することができ、この場合、前記付着強化層と防汚層との間の結合力がさらに向上することができるが、これは非限定的な一例にすぎず、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0120】
したがって、前記付着強化層が前記ハードコーティング層と防汚層との間に形成される場合、一態様に係るウィンドウカバーフィルムは、各層間の結合力が顕著に向上し、耐摩耗性、耐スクラッチ性、および指紋拭き取り性などが顕著に向上することができるとともに、顕著に向上したタッチ感およびスリップ性などの表面特性を共に実現することができる。
【0121】
より具体的に、前記付着強化層が前記ハードコーティング層と防汚層との間に形成される場合、一態様に係るウィンドウカバーフィルムは、耐摩耗性が顕著に向上しており、消しゴム(Rubber stick、Minoan社)に荷重0.5kgをかけ、40rpmの速度で25mmの距離を往復1500回の摩擦後に耐摩耗性を評価した際に、ASTM D5946に準じた水接触角が90°以上、または95°以上であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0122】
また、一態様に係るウィンドウカバーフィルムは、被摩擦材を無塵布とし、200gの荷重で、5Nの力、100mm/minの速度で測定した動摩擦係数が0.15未満、または0.1未満であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0123】
また、一態様に係るウィンドウカバーフィルムは、耐スクラッチ性が顕著に向上しており、スチールウールで0.5kgの荷重を加えて往復1000回摩擦させた後にも、フィルムの表面に損傷が発生しないだけでなく、指紋拭き取り性が顕著に向上しており、前記フィルムの防汚層の表面に指紋を付着させた後、無塵布で表面を拭き取り、指紋が観察されないまでの拭き取り回数を測定した結果、その回数が5回未満、または3回以下であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0124】
一態様において、前記1つの官能基または2つ以上の官能基を有するアルコキシシラン系化合物の商業化された一例としては、Shin-etsu社のKBM-402、KBM-603、KBM-903、およびKBM-802などが挙げられるが、これは非限定的な一例にすぎず、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0125】
一態様において、前記付着強化層の厚さは1~300nm、より具体的には5~200nmであってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。付着強化層の厚さが前記範囲内である場合、各層間の結合力がさらに向上することができ、フィルムの耐摩耗性、耐スクラッチ性、および指紋拭き取り性などにさらに優れた特性を示すことができる。
【0126】
以下、付着強化層の形成方法について説明する。
付着強化層は、付着強化層形成用組成物を製造し、それをハードコーティング層上に塗布し乾燥して形成される。
【0127】
一態様において、前記付着強化層形成用組成物は、1つの官能基または2つ以上の官能基を有するアルコキシシラン系化合物を含んでもよく、この際、前記1つの官能基または2つ以上の官能基を有するアルコキシシラン系化合物としては、前記付着強化層に関する説明において上述したものと同様のものを用いてもよい。
【0128】
一態様において、前記付着強化層形成用組成物は、溶媒をさらに含んでもよい。前記溶媒は、特に限定されず、当該分野で公知の溶媒が用いられてもよい。
【0129】
前記溶媒の非制限的な例として、アルコール系(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなど)、ケトン系(メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、シクロヘキサノンなど)などが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上混合して用いられてもよい。
【0130】
<フレキシブルディスプレイパネル>
他の一態様は、前記一態様に係るウィンドウカバーフィルムを含むフレキシブルディスプレイパネルまたはフレキシブルディスプレイ装置を提供することができる。
【0131】
この際、前記ウィンドウカバーフィルムは、フレキシブルディスプレイ装置の最外面ウィンドウ基板として用いられてもよい。フレキシブルディスプレイ装置は、通常の液晶表示装置、電界発光表示装置、プラズマ表示装置、電界放出表示装置などの各種画像表示装置であってもよい。
【0132】
<ウィンドウカバーフィルムの製造方法>
また他の一態様は、上述したウィンドウカバーフィルムの製造方法を提供する。
【0133】
一態様において、上述したウィンドウカバーフィルムの製造方法は、基材層の一面にハードコーティング層形成用組成物を塗布および硬化させてハードコーティング層を形成するステップと、前記ハードコーティング層上に1つの官能基または2つ以上の官能基を有するアルコキシシラン系化合物を含む付着強化層形成用組成物を塗布および乾燥させて付着強化層を形成するステップと、前記付着強化層上にフッ素含有アルコキシシラン系化合物を含む防汚層形成用組成物を塗布および硬化させて防汚層を形成するステップと、を含んでもよい。
【0134】
また、一態様において、上述したウィンドウカバーフィルムの製造方法は、前記基材層の他面にハードコーティング層形成用組成物を塗布および硬化させてハードコーティング層を形成するステップをさらに含んでもよい。
【0135】
一態様において、前記塗布は、ダイコータ、エアナイフ、リバースロール、スプレー、ブレード、キャスティング、グラビア、およびスピンコーティングなどにより行われてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0136】
一態様において、前記ハードコーティング層を形成するステップは、前記ハードコーティング層形成用組成物を光硬化した後に熱硬化してもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
この際、前記熱硬化は、100~200℃の温度で5~20分間行われてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0137】
また、一態様において、前記光硬化前に前記ハードコーティング層形成用組成物を加熱して前処理するステップをさらに含んでもよく、前記前処理は、前記熱硬化よりも低い温度で行われてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0138】
一態様において、前記付着強化層形成用組成物を乾燥させるステップは、前記付着強化層形成用組成物を0~50℃の温度で3~10分間乾燥させてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0139】
一態様において、前記防汚層形成用組成物を硬化させるステップは、前記防汚層形成用組成物を50~200℃の温度で3~30分間、または100~200℃の温度で5~30分間行われてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0140】
一態様に係るウィンドウカバーフィルムの製造方法において、前記基材、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物、前記ハードコーティング層形成用組成物、前記付着強化層形成用組成物、および前記防汚層形成用組成物は前述したものと同様であってもよいため、ここでは、その具体的説明は省略する。
【0141】
以下、実施例および比較例に基づいて実施形態をより詳細に説明する。ただし、下記の実施例および比較例は、実施形態をより詳細に説明するための1つの例示にすぎず、実施形態が下記の実施例および比較例により制限されるものではない。
【0142】
[物性の測定方法]
(1)水接触角
ASTM D5946の規格に準じて、水接触角測定器(Kruss社、DSA)を用いて接触角を測定した。
【0143】
(2)消しゴム耐摩耗性
下記の実施例および比較例で製造されたフィルムを7cm×12cmに裁断して耐摩耗測定器(Kipae E&T社、scratch tester)ジグに固定し、TIPに直径6mmの消しゴム(Rubber stick、Minoan社)を取り付けおよび固定した。移動距離25mm、移動速度40rpm、および荷重0.5kgに設定し、消しゴムを前記フィルムの防汚層の表面に往復1500回摩擦させた後、摩耗した面の水接触角を前記水接触角の測定方法により測定した。
【0144】
(3)動摩擦係数
下記の実施例および比較例で製造されたフィルムを7cm×12cmに裁断した後にFriction Tester(TOYOSEIKI社、TR-2)に固定し、被摩擦材を無塵布とした後、200gの荷重で、5Nの力、100mm/minの速度で100mmの距離に対して測定した。
【0145】
(4)耐スクラッチ性
下記の実施例および比較例で製造されたフィルムを7cm×12cmに裁断して耐摩耗測定器(Kipae E&T社)ジグに固定し、直径22mmのTIPにスチールウール(#0000、リベロン社)を取り付けおよび固定した。移動距離40mm、移動速度40rpm、および荷重0.5kgに設定し、スチールウールを前記フィルムの防汚層の表面に往復1000回摩擦させた後、表面の傷(スクラッチ)有無を肉眼で観察した。観察後、損傷がないときには「OK」と判断し、損傷が発生したときには「NG」と判断した。
【0146】
(5)指紋拭き取り性
下記の実施例および比較例で製造されたフィルムの防汚層の表面に指紋を付着させ、無塵布で表面を拭き取り、指紋が観察されないまでの拭き取り回数を測定した。
【0147】
[ハードコーティング層形成用組成物の製造]
[製造例1]
2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(ECTMS、TCI社)と水を24.64g:2.70g(0.1mol:0.15mol)の割合で混合して反応溶液を製造し、250mLの2-neckフラスコに入れた。前記混合物に0.1mLのテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(Aldrich社)触媒およびテトラヒドロフラン(Aldrich社)100mLを添加し、25℃で36時間撹拌した。
【0148】
その後、層分離を行い、生成物層を塩化メチレン(Aldrich社)で抽出し、抽出物を硫酸マグネシウム(Aldrich社)で水分を除去し、溶媒を真空乾燥させ、エポキシシロキサン系樹脂を得た。エポキシシロキサン系樹脂は、GPC(Gel Permeation Chromatography)を用いて測定した結果、重量平均分子量が2500g/molであった。
【0149】
上記のように製造されたエポキシシロキサン系樹脂30g、架橋剤として(3’,4’-エポキシシクロヘキシル)メチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート10gおよびビス[(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル]アジペート5g、光開始剤として(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート0.5g、熱開始剤として4-アセトキシフェニルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート0.1g、メチルエチルケトン54.5gを混合し、ハードコーティング層形成用組成物を製造した。
【0150】
[防汚層形成用組成物の製造]
[製造例2]
ペルフルオロ化基とアルコキシシラン基を含有したアルコキシシラン系化合物(Shin-etsu社、KY-1905)をフッ素系溶媒(3M社、Novec 7500)に固形分含量0.1重量%となるように希釈し、防汚層形成用組成物を製造した。
【0151】
[付着強化層形成用組成物の製造]
[製造例3]
エポキシ基とアルコキシシラン基を含有したアルコキシシラン系化合物(Shin-etsu社、KBM-402)をエタノール溶液に固形分含量0.1重量%となるように希釈し、付着強化層形成用組成物を製造した。
【0152】
[製造例4]
25mlのフラスコに、3-アミノプロピルトリメトキシシラン0.6g、ビス[3-トリメトキシシリル]プロピルアミン0.4g、2-プロパノール11mlを投入し、60℃に昇温する。十分に撹拌後に常温に冷却し、蒸留水0.081gを投入して常温で3日間撹拌し、アミノ基とアルコキシシラン基を含有したアルコキシシラン系化合物9.73g得た。前記アルコキシシラン系化合物をイソプロパノール溶液に固形分含量0.1重量%となるように希釈し、付着強化層形成用組成物を製造した。
【0153】
[製造例5]
アミノ基とアルコキシシラン基を含有したアルコキシシラン系化合物(Shin-etsu社、KBM-603)をエタノール溶液に固形分含量0.1重量%となるように希釈し、付着強化層形成用組成物を製造した。
【0154】
[製造例6]
メルカプト基とアルコキシシラン基を含有したアルコキシシラン系化合物(Shin-etsu社、KBM-802)をエタノール溶液に固形分含量0.1重量%となるように希釈し、付着強化層形成用組成物を製造した。
【0155】
[ウィンドウカバーフィルムの製造]
[実施例1]
基材層の製造
窒素雰囲気下、反応器にて、ジクロロメタンおよびピリジンの混合溶液にテレフタロイルジクロライド(TPC)および2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-ベンジジン(TFMB)を入れ、窒素雰囲気下で25℃で2時間撹拌させた。この際、前記TPC:TFMBのモル比が3:4となるように投入し、固形分含量が10重量%となるように調節して重合した。その後、前記生成物を過量のメタノールに沈殿させた後に濾過して得られた固形分を50℃で6時間以上真空乾燥し、オリゴマーを得た。製造されたオリゴマーのFW(Formula Weight)は1670g/molであった。
【0156】
反応器に、溶媒としてN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、前記オリゴマー100モルおよび2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-ベンジジン(TFMB)28.6モルを投入し、十分に撹拌した。その後、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)64.3モルおよび4,4’-ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物(6FDA)64.3モルを前記反応器に投入して十分に撹拌し、40℃で10時間重合した。この際、反応溶液の固形分含量は20重量%であった。次いで、前記反応溶液に、ピリジン(Pyridine)と酢酸無水物(Acetic Anhydride)をそれぞれ二無水物の総含量に対して2.5倍モルで順次投入し、60℃で12時間撹拌した。
【0157】
重合の終了後、重合溶液を過量のメタノールに沈殿させた後に濾過して得られた固形分を50℃で6時間以上真空乾燥し、ポリアミドイミドパウダーを得た。前記パウダーをDMAcに20重量%に希釈溶解し、基材層形成用組成物を製造した。
【0158】
前記基材層形成用組成物をアプリケータを用いて支持体(ガラス基板)上に塗布した後、80℃で30分、100℃で1時間乾燥し、常温で冷却し、フィルムを製造した。その後、100~200℃で120分、250~300℃で48分(総熱処理時間の40%)の間、昇温速度20℃/minで段階的な熱処理を行い、基材層を製造した。この際、基材層の厚さは50μmであった。
【0159】
ハードコーティング層の形成ステップ
前記製造された基材層の一面に、メイヤーバーを用いて、前記製造例1で製造されたハードコーティング層形成用組成物を塗布し、60℃の温度で4分間乾燥した。その後、高圧メタルランプを用いて1J/cm2でUVを照射した後、120℃の温度で10分間硬化させ、ハードコーティング層を形成した。この際、ハードコーティング層の厚さは5μmであった。
【0160】
付着強化層の形成ステップ
前記製造例3で製造された付着強化層形成組成物を前記ハードコーティング層上にメイヤーバー#14を用いて塗布し、常温で5分間乾燥し、付着強化層を形成した。この際、付着強化層の厚さは32nmであった。
【0161】
防汚層の形成ステップ
前記製造例2で製造された防汚層形成用組成物を前記付着強化層上にメイヤーバー#14を用いて塗布し、80℃で5分間乾燥した後、150℃で10分間熱硬化させ、防汚層(厚さ32nm)が形成されたウィンドウカバーフィルムを製造した。
【0162】
[実施例2]
前記実施例1において、付着強化層として、前記製造例3で製造された付着強化層形成用組成物の代わりに、前記製造例4で製造された付着強化層形成用組成物を用いて形成したことを除いては、実施例1と同様にウィンドウカバーフィルムを製造した。
【0163】
[実施例3]
前記実施例1において、付着強化層として、前記製造例3で製造された付着強化層形成用組成物の代わりに、前記製造例5で製造された付着強化層形成用組成物を用いて形成したことを除いては、実施例1と同様にウィンドウカバーフィルムを製造した。
【0164】
[実施例4]
前記実施例1において、付着強化層として、前記製造例3で製造された付着強化層形成用組成物の代わりに、前記製造例6で製造された付着強化層形成用組成物を用いて形成したことを除いては、実施例1と同様にウィンドウカバーフィルムを製造した。
【0165】
[比較例1]
前記実施例1において、付着強化層を形成するステップを省略し、直ちに前記ハードコーティング層上に前記製造例2で製造された防汚層形成用組成物を塗布および硬化して防汚層を形成したことを除いては、実施例1と同様にウィンドウカバーフィルムを製造した。
【0166】
[比較例2]
前記製造例1で製造されたハードコーティング層形成用組成物に撥水添加剤(Shin-etsu社、KY-1271)0.2gをさらに投入したハードコーティング層形成用組成物を用いて、前記実施例1と同様の方法で基材層上にハードコーティング層を形成し、別に付着強化層や防汚層を含まないウィンドウカバーフィルムを製造した。
【0167】
前記実施例1~4および比較例1~2で製造されたウィンドウカバーフィルムの物性を測定し、下記表1に示した。
【0168】
【0169】
前記表1を参照すると、ハードコーティング層と防汚層との間に官能基を有するアルコキシシラン系化合物を含んで製造された付着強化層が形成されている実施例1~4のウィンドウカバーフィルムは、水接触角が105°以上、または110°以上であって防汚特性に優れ、特に、消しゴム耐摩耗性の評価後に測定された水接触角も95°以上であって耐摩耗性に非常に優れることを確認した。
【0170】
また、動摩擦係数の測定結果、全ての実施例において、動摩擦係数が0.15未満であって優れた耐指紋性が発揮されるとともに、顕著に向上したタッチ感およびスリップ性などの表面特性を実現可能であることを確認した。
【0171】
また、耐スクラッチ性の評価結果、フィルム外観に損傷が発生しないため、耐スクラッチ性に非常に優れ、指紋拭き取り性の評価結果、指紋が観察されないまで無塵布で表面を拭き取った回数が3回測定され、非常に少ない回数だけで表面の指紋を除去することができるため、指紋拭き取り性にも非常に優れることを確認することができる。
【0172】
これに対し、ハードコーティング層と防汚層との間に付着強化層が形成されていない比較例1のウィンドウカバーフィルムと、別の防汚層および付着強化層を形成せず、単にハードコーティング層に撥水添加剤を含む比較例2のウィンドウカバーフィルムは、消しゴム耐摩耗性の評価後に測定された水接触角が大幅に低下し、全ての実施例と比べて動摩擦係数が高いため、表面特性が大幅に低下することを確認した。
【0173】
また、耐スクラッチ性の評価結果、表面の損傷が顕著に発生することを確認することができ、指紋拭き取り性の評価結果、指紋が観察されないまで無塵布で表面を拭き取った回数が5回以上、特に比較例2は9回測定され、実施例1~4と比べて顕著に低下した指紋拭き取り性を有することを確認した。
【0174】
したがって、一実施形態により、1つの官能基または2つ以上の官能基を有するアルコキシシラン系化合物を含んで製造される付着強化層が前記ハードコーティング層と防汚層との間に形成されるウィンドウカバーフィルムは、各層間の結合力が顕著に向上し、摩耗、振動、および化合物などへの露出にもフィルムが容易に損傷しないため、耐摩耗性、耐スクラッチ性、および指紋拭き取り性などの表面特性が顕著に向上して外観の損傷ないしムラなどを最小化することができながらも、ガラスのようなタッチ感を有し、スリップ性に優れることができる。
【0175】
以上、本明細書では特定された事項と限定された実施例により実施形態を説明したが、これは実施形態のより全般的な理解のために提供されたものにすぎず、実施形態が上記の実施例に限定されるものではない。
【0176】
したがって、本明細書の思想は、説明された実施例に限定されて決まってはならず、後述の特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等または等価的変形を有するものは、いずれも本明細書の思想の範囲に属するといえる。
【外国語明細書】