(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189833
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】電池における使用のために炭素系粉末上にシリコンナノワイヤを作るための製造装置および方法
(51)【国際特許分類】
C01B 33/029 20060101AFI20221215BHJP
C01B 32/21 20170101ALI20221215BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20221215BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20221215BHJP
H01M 4/1395 20100101ALI20221215BHJP
H01M 4/1393 20100101ALI20221215BHJP
【FI】
C01B33/029
C01B32/21
H01M4/36 C
H01M4/38 Z
H01M4/1395
H01M4/36 E
H01M4/1393
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022160349
(22)【出願日】2022-10-04
(62)【分割の表示】P 2019502003の分割
【原出願日】2017-07-14
(31)【優先権主張番号】62/363,087
(32)【優先日】2016-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514082756
【氏名又は名称】ワンディー マテリアル、 インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】OneD Material, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】イミン・ジュ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンセント・プリュヴィネージュ
(57)【要約】
【課題】LIBの構成要素および装置に使用するための高品質なSiナノワイヤ材料を、はるかにより大きな年間量で、狭い製造仕様内で、製造施設当たり1年間で数十から数千のメートルトンの程度で急成長している要求に対処するのに適切なコストで生産する方法に対する大きな要求がある。
【解決手段】リチウムイオン電池において陽極として使用され得る黒鉛などの炭素系粉末上にシリコン(Si)ナノワイヤを作る製造装置、システム、および方法が提供される。一部の実施形態では、電池産業のための生産規模の陽極を提供するために、大規模な量でシリコンナノワイヤを炭素系粉末上に成長させるための本発明のタンブラー反応装置、化学蒸着(CVD)システム、および方法が記載される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンナノワイヤを製造する方法であって、
CVD反応装置内での前駆体含有シリコンの化学蒸着によって炭素系粉末上にシリコンナノワイヤを成長させるステップであって、シリコンナノワイヤへの前記前駆体含有シリコンの変換率が少なくとも30%であり、前記CVD反応装置はバッチ当たり少なくとも1kgの前記炭素系粉末を処理するように構成される、ステップを含み、
前記成長させるステップは、シリコンナノワイヤが一端において前記炭素系粉末に付着していると共に、炭素に対するシリコンの重量比が少なくとも4%のシリコンナノワイヤ密度を有する炭素系粉末を含む、炭素系シリコンナノワイヤ複合粉末を生産する、方法。
【請求項2】
前記炭素系シリコンナノワイヤ複合粉末は、炭素に対するシリコンの重量比が少なくとも8%のシリコンナノワイヤ密度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記炭素系シリコンナノワイヤ複合粉末は、炭素に対するシリコンの重量比が少なくとも12%のシリコンナノワイヤ密度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記炭素系シリコンナノワイヤ複合粉末は、炭素に対して16%から32%の間のシリコンの重量比のシリコンナノワイヤ密度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
シリコン系前駆体はシランを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記シリコンナノワイヤへの前記前駆体含有シリコンの変換率が30%から99.5%の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記シリコンナノワイヤへの前記前駆体含有シリコンの変換率が少なくとも50%である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記シリコンナノワイヤへの前記前駆体含有シリコンの変換率が少なくとも70%である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記シリコンナノワイヤへの前記前駆体含有シリコンの変換率が少なくとも90%である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
バッチ当たり少なくとも10kgの前記炭素系シリコンナノワイヤ複合粉末が生産される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
バッチ当たり少なくとも100kgの前記炭素系シリコンナノワイヤ複合粉末が生産される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
シリコンナノワイヤを製造する方法であって、
炭素系粉末をCVD室に投入するステップと、
シリコン含有ガスを前記CVD室に注入するステップと、
化学蒸着によってシリコンナノワイヤを前記炭素系粉末上に成長させるステップであって、前記シリコンナノワイヤは、前記シリコンナノワイヤの一端において炭素粉末に付着して炭素系シリコンナノワイヤ複合粉末を形成し、前記シリコンナノワイヤへの前記シリコン含有ガスの変換率が少なくとも30%であり、バッチ当たり少なくとも1kgの前記炭素系シリコンナノワイヤ複合粉末が生産され、前記炭素系シリコンナノワイヤ複合粉末は、炭素-シリコン複合材に対して少なくとも4重量%のシリコンのシリコンナノワイヤ密度を有する、ステップと
を含む方法。
【請求項13】
前記シリコン含有ガスを注入するステップは、シリコン含有ガスと、H2、N2、Ar、またはHeのうちの1つ以上との混合物を注入することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
コンピュータを使用して前記CVD室内の温度および圧力を制御するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
陽極を形成するために前記炭素系シリコンナノワイヤ複合粉末で電極箔を被覆するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
電池を形成するために、前記陽極を陰極、セパレータ、および電解質と組み合わせるステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
リチウムイオン電池を形成するために陽極を陰極、セパレータ、および電解質と組み合わせるステップであって、前記陽極は、前記炭素系シリコンナノワイヤ複合粉末で被覆された電極箔を備える、ステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記炭素系粉末は触媒粒子で前処理される、請求項1または12に記載の方法。
【請求項19】
前記CVD室は、プロセスチューブと、前記プロセスチューブ内に位置決めされたタンブラー反応装置とをさらに備える、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記炭素系粉末が前記タンブラー反応装置に投入され、前記タンブラー反応装置を、前記注入するステップおよび前記成長させるステップの間に回転させる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記成長させるステップの後に前記タンブラー反応装置を前記CVD室から取り出し、前記CVD室の冷却より前に処理に向けて別のタンブラー反応装置を挿入するステップをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記炭素系粉末は黒鉛を含む、請求項1または12に記載の方法。
【請求項23】
炭素系粉末上にシリコンナノワイヤを成長させるための製造装置であって、
CVD室と、
前記CVD室内に位置決めされたプロセスチューブと、
前記炭素系粉末を受け入れるように構成されたタンブラー反応装置であって、前記タンブラー反応装置は前記プロセスチューブ内に取り外し可能に位置決めされ、前記タンブラー反応装置は前記タンブラー反応装置に位置決めされたガス分配マニホールドを有し、前記タンブラー反応装置は前記プロセスチューブ内で回転するように構成される、タンブラー反応装置と
を備える製造装置。
【請求項24】
前記ガス分配マニホールドは1つ以上のガス注入部材を備える、請求項23に記載の製造装置。
【請求項25】
前記1つ以上のガス注入部材は、前記タンブラー反応装置にプロセスガスを注入するために、前記ガス注入部材に形成された複数のガス注入ポートを備える、請求項24に記載の製造装置。
【請求項26】
前記ガス分配マニホールドはU字形ガス注入部材を備える、請求項23に記載の製造装置。
【請求項27】
前記U字形ガス注入部材は、前記タンブラー反応装置にプロセスガスを注入するために、前記U字形ガス注入部材に形成された複数のガス注入ポートを備える、請求項26に記載の製造装置。
【請求項28】
前記ガス注入ポートは、前記タンブラー反応装置内での前記プロセスガスの実質的に均一な分配を提供するために、前記ガス注入部材に沿って実質的に均等に分配されている、請求項25または27に記載の製造装置。
【請求項29】
前記タンブラー反応装置の内壁の少なくとも一部分を掻き落とすように構成された1つ以上のスクレーパをさらに備える、請求項23に記載の製造装置。
【請求項30】
前記1つ以上のスクレーパは、前記タンブラー反応装置の端のうちの1つ以上に位置決めされ、前記タンブラー反応装置の外周部から粉末を掻き落とす、請求項29に記載の製造装置。
【請求項31】
前記1つ以上のスクレーパは、前記タンブラー反応装置の長さの少なくとも一部分にわたって延びる細長い刃を備える、請求項29に記載の製造装置。
【請求項32】
ブラシ状部材が、前記細長い刃の外側の少なくとも一部分に沿って位置決めされる、請求項31に記載の製造装置。
【請求項33】
前記1つ以上のスクレーパがガス分配マニホールドと一体にされている、請求項29に記載の製造装置。
【請求項34】
前記プロセスチューブは金属を含む、請求項23に記載の製造装置。
【請求項35】
前記タンブラー反応装置は、前記タンブラー反応装置の1つ以上の内壁に備え付けられた1つ以上のフィンをさらに備える、請求項23に記載の製造装置。
【請求項36】
前記1つ以上のフィンは、前記タンブラー反応装置における粉末運動の制御および分配の少なくとも一方を提供するように構成される、請求項35に記載の製造装置。
【請求項37】
前記1つ以上のフィンは、前記タンブラー反応装置の回転の間、前記炭素系粉末が前記1つ以上の内壁に沿って滑ること、または前記1つ以上の内壁にまとわりつくことを防止するように構成される、請求項35に記載の製造装置。
【請求項38】
前記1つ以上のフィンは、前記1つ以上の内壁の表面から突出する細長いリップを備える、請求項35に記載の製造装置。
【請求項39】
前記タンブラー反応装置を支持すると共に前記タンブラー反応装置を前記プロセスチューブに出入りさせるように構成された、車輪付きの台車レールをさらに備える、請求項23に記載の製造装置。
【請求項40】
前記プロセスチューブ内に位置決めされた2つ以上のタンブラー反応装置をさらに備える、請求項23に記載の製造装置。
【請求項41】
前記2つ以上のタンブラー反応装置は、前記プロセスチューブにおいて半連続的な手法で処理される、請求項40に記載の製造装置。
【請求項42】
前記タンブラー反応装置は、前記タンブラー反応装置の各々の端に位置決めされた網エンドキャップをさらに備え、前記網エンドキャップは、前記炭素系粉末を前記タンブラー反応装置の内部に封じ込め、前記プロセスチューブへの前記炭素系粉末の流れを阻止する一方で、前記タンブラー反応装置と前記プロセスチューブとの間のガスの流れを許容する大きさの複数の開口を有する網を備える、請求項23に記載の製造装置。
【請求項43】
炭素系粉末上にシリコンナノワイヤを成長させるための製造装置であって、
CVD室と、
前記CVD室内に位置決めされた細長いプロセスチューブと
を備え、前記プロセスチューブは、
少なくとも1つの加熱領域、少なくとも1つの反応領域、および少なくとも1つの冷却領域と、
前記プロセスチューブにガスを注入するためのガスマニホールドと、
前記ガスマニホールドに結合され、前記プロセスチューブの少なくとも一部分を通じて延びるガス注入装置であって、前記少なくとも1つの反応領域にプロセスガスを注入するために前記ガス注入装置の区域に複数の注入ポートを含むガス注入装置と、
前記プロセスチューブの実質的な長さを通じて延び、少なくとも1つの予加熱領域、前記少なくとも1つの反応領域、および前記少なくとも1つの冷却領域を通じて前記炭素系粉末を押すように構成される細長いオーガと
を備える、製造装置。
【請求項44】
前記オーガはピッチを有し、前記ピッチは、前記予加熱領域、前記反応領域、および前記冷却領域のうちの1つ以上において、領域の各々を通じた前記炭素系粉末の進行の速度を制御するために、選択的に変化させることが可能である、請求項43に記載の製造装置。
【請求項45】
前記炭素系粉末は黒鉛を含む、請求項23および43に記載の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2016年7月15日に出願された「Manufacturing Apparatus And Method For Making Silicon Nanowires On Carbon Based Powders For Use As Anodes In The Battery Industry」という名称の米国仮特許出願第62/363,087号への優先権およびその利益を主張し、この仮特許出願の開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれている。
【0002】
本出願の実施形態は概して、例えばリチウムイオン電池において使用されるシリコン-炭素の複合活物質を経済的に作るために、黒鉛粉末の粒子など、炭素系基質上にシリコン(Si)ナノワイヤを成長させる製造装置、システム、および方法に関する。より詳細には、本出願の実施形態は、電池産業のための活物質に対して増えている需要を満たすために、炭素系基質上にシリコンナノワイヤを大規模な量で成長させるための本発明のタンブラー反応装置と化学蒸着(CVD)のシステムおよび方法とに関する。
【背景技術】
【0003】
向上した電池技術の開発は、相当の努力および援助を集め続けている。リチウムイオン電池(LIB)は、さらなる進歩に向けて最も期待できる分野のうちの1つである。LIBは概して、陽極、陰極、陰極と陽極とを分離する分離材料、および電解質から成る。ほとんどの商業的に利用可能なLIBの陽極は概して、黒鉛粉末、バインダ材料、および/または導電性添加物の混合物で被覆された銅箔集電体を含む。ほとんどの商業的に利用可能なLIBの陰極は概して、リチウム遷移金属酸化物系の陰極材料で被覆されたアルミニウム箔集電体を含む。従来のLIBの陽極は、限られた電荷容量を有する、天然または合成の黒鉛などのインターカレーションに基づく活物質を含み、より大きいエネルギー密度(容積または重量で)、より大きい電力密度、より優れた繰り返し耐久性、より長い電池寿命、より速い充電率、より大きい温度充電範囲または動作範囲、より小さい膨張、および他の重要な性能測定基準について、益々高まる市場の要求に達していない。
【0004】
蓄電容量および熱安定性の向上された様々な陽極材料がこの10年の間にリチウムイオン電池(LIB)に対して提案されている。シリコン(Si)は、その魅力的な特性のため、LIBにおける陽極の活物質として広く研究されている。炭素系活物質の理論的な比容量は、6個の炭素原子(C)当たり1つのリチウム原子(Li)のインターカレーションの割合に基づくと、372mAh/gである。SiおよびLiの合金は、完全にリチオ化された炭素系材料において、LiとC原子との間の1/6の割合よりも高いSiに対するLiの割合で形成され得る。これらの合金では、Li/Siの割合は、合金相Li12Si7についての1.71(1636mAh/gの理論的容量を伴う)から合金相Li15Si4についての3.75(3579mAh/gの理論的容量を伴う)までの範囲である。最も濃い合金相Li22Si5は、4.4の割合と4,200mAh/gの理論的容量とを有するが、一般に実用用途では到達されていない。より高い比容量に加えて、Siは黒鉛の電圧プラトーより若干高い電圧プラトーを有し、そのため魅力的な安全特性を有する。さらに、Siは豊富で安価な材料であり、リチオ化されたSiは、典型的なリチウムイオン電池の電解質において、リチオ化された黒鉛より安定している。
【0005】
シリコンの魅力的な特性にも拘らず、SiをLIBのための活物質として利用する商業的な試みは失敗に終わっている。いくつかの要因がこの不成功の原因となっており、これには、リチオ化および脱リチウム中のSiの大きな体積の膨張および収縮の有害な結果に対処するための実用的な解決策の欠如、Si系の陽極を伴うセルの短い繰り返し耐久性に対処するための解決策の欠如、および、コスト比較がシリコンを含む陽極の向上した比容量を考慮するとしても、既存の商業的な炭素系活物質と比較して、高品質なSi系陽極材料を合理的なコストで大量生産するための適切な方法の欠如がある。
【0006】
本発明によれば、黒鉛粒子などの炭素系基質上に成長および/または付着させられるSiナノワイヤに基づく活物質は、魅力的なコストで大量に生産でき、LIBのための活陽極材料を含む他のシリコンの先の制約に対処する。ナノワイヤは、非常に小さい半径および大きい長さ/半径の縦横比のため、一般に「一次元のナノ構造」と表現される。例えば、ナノワイヤは、例えば約5nmと約100nmとの間、例えば約20nmと約50nmとの間といった、約200nm未満の平均直径を有し得る。Siのナノワイヤは、5、10、15以上、25以上、50以上、または100よりさらに大きい縦横比(長さと幅との比)を呈する。Siナノワイヤは、LIB内で陽極の活物質として使用されるとき、シリコンを含む材料の他の形態によって生じる副作用の多くを克服するのに適したものにさせる特有の物理的、化学的、および電気的な性質を提供する。具体的には、リチオ化(充電)および脱リチウム(放電)の間、Siナノワイヤの大きな表面曲率(つまり、小さい直径)はより小さいエネルギー障壁をリチウムの挿入に提供し、リチウムイオンがシリコン構造を崩壊させるため、機械的応力のより容易な解放を可能にする。最初の繰り返しの後、ナノワイヤの結晶構造は典型的には非晶質となり、ナノワイヤはより柔軟となり、亀裂を呈することなく体積変化に適応する。
【0007】
シリコンナノワイヤを黒鉛粒子の表面上で直接成長させるとき、各々のナノワイヤは一端において付着したまま自由に膨張および収縮し、そのとき、ナノワイヤは黒鉛粒子の表面に付着し、その表面と電気接触をなす。リチオ化されると、リチウム原子およびシリコン原子の組み合わせによって形成された合金は、伝導性を大きく増加させ、各々のナノワイヤに沿っての黒鉛の基質との電子の効率的なやり取りを可能にする。黒鉛の各々の粒子の表面に付着した多くのナノワイヤは、それぞれの付着点において炭素系基質に電気的に連結されたまま、黒鉛粒子同士の間の細孔内で膨張および収縮できる。従来の陽極におけるように、黒鉛粒子同士は、バインダおよび導電性添加物を含む細孔構造において互いと電気的に接触している。したがって、細孔陽極層は隣接する黒鉛粒子(数多くのSiナノワイヤに連結されている各々の粒子)から成り、電解質を通じてナノワイヤと行き来するリチウムイオンの流れと、黒鉛粒子を通り最終的に陽極電極の集電体の箔までのナノワイヤと行き来する電子の流れとの両方を可能にする。各々のナノワイヤは一端において黒鉛基質に付着するため、ナノワイヤが互いと直接的な電気的接触をなす必要がなく、電子は、各々のナノワイヤから、黒鉛粒子の表面におけるその付着を通り、黒鉛粒子を通り、電極集電体までの電気経路を辿る。したがって、各々のナノワイヤは、陽極複合層の電気的接続性または機械的完全性に影響を与えることなく、繰り返しの間に自由に曲がって形を変化させる。
【0008】
良好に制御されたSiナノワイヤを大量に製造することは、複雑で困難であることが分かっており、現在、商業的な生産状況で利用できる大規模な製造工程または機器はまだ存在しない。10%のSi/Cの割合で黒鉛粒子上に成長させた1kgのSiナノワイヤのCVDバッチは、おおよそ100グラムまたは105ミリグラムのシリコンナノワイヤを含み、典型的には1ミリグラム当たり1000億個超(つまり、1011個超)のナノワイヤを含む。このように、LIBのための陽極の活物質としてのSiナノワイヤの意義深い利益はまだ完全には実現されていない。これは、特にLIBのための陽極の活物質に対する世界的な需要が、2015年には60,000メートルトンであったが、2019年には100,000メートルトンを超えると予測されるため(Avicenne ENERGY-「The worldwide rechargeable Battery Market」-2015年7月からの推定)、重大な関心事である。今日、このような需要は、ほとんどが様々な種類の天然または合成の黒鉛材料によって満足されている。いくつかの商業的なLIBでは、陽極は、活物質の黒鉛粉末と混合された酸化シリコン(SiOx)などのシリコン添加物を小さな割合で含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2015/0086871号
【特許文献2】米国特許出願公開第2010/0297502号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
LIBのための陽極材料として適したSiナノワイヤ複合材の利用可能性およびコストは、生産量が小さく、単位コストが大きい、1年間当たりの1メートルトン未満の生産が可能な生産方法によって制約されている。したがって、LIBの構成要素および装置に使用するための高品質なSiナノワイヤ材料を、はるかにより大きな年間量で、狭い製造仕様内で、製造施設当たり1年間で数十から数千のメートルトンの程度で急成長している要求に対処するのに適切なコストで生産する方法に対する大きな要求がある。本発明は、一端において黒鉛粒子の表面に付着したシリコンナノワイヤを含む材料の産業用の量の製作を、効率的で自動化された工程に従って、正確な仕様内で許容可能なコストで提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施形態は、概して、リチウムイオン電池における陽極の活物質として使用するのに適するシリコン(Si)ナノワイヤを作る製造装置、システム、および方法に関する。一部の実施形態では、産業規模で生産するために化学蒸着(CVD)処理を用いて黒鉛または炭素粉末上にSiナノワイヤを成長させるための製造装置、システム、および方法が、提供される。
【0012】
一態様では、本出願の実施形態は、大規模な量で、黒鉛の粒子または粉末などの炭素系基質上にシリコンナノワイヤを成長させるように構成される本発明のタンブラー反応装置および化学蒸着(CVD)システムを提供する。本出願の装置および方法は、産業規模の陽極材料をLIB産業に提供するために使用できる。本出願の目的には、タンブラー反応装置という用語とタンブラーという用語とは相互に置き換え可能に使用される。
【0013】
一態様において、シリコンナノワイヤを製造する方法が提供され、その方法では、炭素系シリコンナノワイヤ複合材を形成するために、前駆体含有シリコンの化学蒸着によって炭素系基質上にシリコンナノワイヤを成長させ、シリコンナノワイヤへの前駆体含有シリコンの変換率は少なくとも30%である。他の実施形態では、変換率は、少なくとも50%であり、好ましくは少なくとも70%であり、好ましくは少なくとも90%であり、または、98%よりさらに大きく、シリコンナノワイヤおよび炭素系基質の少なくとも1kgの複合材がバッチ当たりで生産でき、好ましくは、各々10kg超のバッチ、またはさらには各々20kg超のバッチで生産でき、シリコンの質量は、このような複合材の少なくとも4重量%であり(ここで、重量百分率は、炭素基質に対するシリコンの重量の比率である)、好ましくは8重量%超、または、16%よりさらに大きい炭素に対するシリコンの重量比である。「炭素系シリコンナノワイヤ複合材」という用語が、「炭素系シリコンナノワイヤ複合粉末」、または単に「炭素-シリコン複合材」と称されることもあり、これらの用語が相互に置き換え可能に使用されていることに留意されたい。
【0014】
別の態様では、炭素系シリコンナノワイヤ複合材は、当分野で知られている技術により電極箔を被覆することで、陽極を形成するためにさらに処理される。別の実施形態では、陽極は、リチウムイオン電池を形成するために、陰極、セパレータ、および電解質とさらに組み合わせられる。
【0015】
以下に提供される記載においてより詳細に述べられるように、本発明の装置およびシステムの実施形態は、以下の特徴のうちの1つ以上を備える。低圧CVDシステム(LPCVD)が、CVD室のより迅速な冷却および加熱を可能にするために構成、変更、および/または適合される。LPCVDシステムは、炉利用効率を高めるために、室から離れているプロセスチューブおよびタンブラー反応装置を加熱および冷却する炉加熱/冷却ユニットを移動させるように構成され得る。一部の実施形態では、車輪付きの台車レールが提供され、タンブラー反応装置を金属または石英のプロセスチューブに出入りさせるように構成される。台車レールは、炭素系シリコンナノワイヤ複合材の大量投入のためにタンブラー反応装置が重い場合にはタンブラー反応装置を支持するように構成されてもよい。別の実施形態では、タンブラー反応装置は炉組立体に対して固定位置で維持されてもよく、冷却要素および加熱要素がタンブラーの軸と同じ軸に沿って移動されてもよい。一部の実施形態では、金属プロセスチューブが使用され、それによって石英プロセスチューブを置き換えて、タンブラー反応装置により重い粉末材料を投入することを可能にし、これはより大きなSiナノワイヤの生産量を可能にする。一部の実施形態では、本出願の装置は、1年間当たり最大数百メートルトンまたは最大数千メートルトンもの生産量で炭素系シリコンナノワイヤ複合材を提供するように構成される。このような規模で生産する能力は、これまでの製造技術に対してかなりの利点であり、本発明の装置およびシステムによって提供されるより大きな生産量は、電池産業のための陽極材料としての炭素系シリコンナノワイヤ複合材の幅広い採用を可能にする。
【0016】
一部の実施形態では、本出願のLPCVDシステムは、回転および混合機構を有するタンブラー反応装置を組み込む。一部の実施形態では、回転および混合機構は、ガスマニホールドと結合され、任意選択で1つ以上のスクレーパと結合される。ガスマニホールドは、タンブラー反応装置を通じてガス分配を管理するためにいくつかの構成から成り得る。例えば、ガスマニホールドは、単一の細長い部材、U字形、または、フレームマニホールドであり得るなどである。任意選択で、ガスマニホールドは1つ以上のスクレーパと組み合わせられてもよい。任意選択で、タンブラーは筒状であってもよく、その断面は円形または多角形であってもよい。タンブラーは、同様の長さの複数のバッチ室のうちの1つから成るか、または、螺旋状に構成された連続した室から成り得る。螺旋状の構成の場合、回転する螺旋体が基質材料を1つ以上の加熱領域、反応領域、および冷却領域の連続を通じて前へと押すことができ、その際、反応ガスの注入は反応領域に向けて方向付けられ、反応領域ではシランがシリコンナノワイヤへと変換される。タンブラーは、水平に、鉛直に、または、炉が位置付けられる床に対して任意の角度に位置決めされ得る。
【0017】
一部の実施形態では、タンブラーは、タンブラー反応装置の1つ以上の内壁に備え付けられる1つ以上のフィンをさらに備える。フィンは、任意の適切な大きさ、形、または分配であってよく、特にプロセスガスの注入の間、タンブラーにおける粉末運動の制御および/または分配を提供するように構成される。例えば、フィンは、黒鉛または炭素系粉末がタンブラー反応装置の回転の間に壁に沿って滑るのを防止するように構成されてもよい。フィンは、タンブラー反応装置が回転するときに、投入された黒鉛粉末を持ち上げるのを支援してもよく、任意選択で、前駆体ガスを最適化してもよく、反応装置内の分配を加熱してもよい。
【0018】
別の態様では、本出願の実施形態は、融通の利く安定した製造を提供するために、様々な異なる種類の天然または合成の黒鉛粒子においてシリコンナノワイヤを生産するように適応するシステムおよび方法を提供する。例えば、黒鉛粒子は、小さいBET(5平方m/g未満)または大きいBET(15平方m/g超)を有してもよく、被覆もしくは未被覆とされ得る、球状もしくは片状であり得る、または、それらの任意の組み合わせであり得る。
【0019】
本発明の追加の特徴および利点と、本発明の様々な実施形態の構造および動作とが、添付の図面を参照しつつ下記でより詳細に説明される。本発明がここに記載した特定の実施形態に限定されないことが留意される。このような実施形態は、例示の目的だけのために本明細書に提示される。追加の実施形態は、ここに含まれる技術に基づき当業者に明らかとなる。
【0020】
ここに組み込まれ、本明細書の一部を形成している添付の図面は、本発明を図示しており、記載と共にさらに本発明の原理を説明し、当業者が本発明を作製し、使用することを可能にする役割を果たす。本発明の実施形態は、添付の図を参照して単なる例として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本出願の一部の実施形態によるタンブラー反応装置およびLPCVDシステムの断面部分図である。
【
図2A】本出願の一部の実施形態によるタンブラー反応装置およびLPCVDシステムの構成の断面部分図である。
【
図2B】本出願の一部の実施形態によるタンブラー反応装置およびLPCVDシステムの構成の断面部分図である。
【
図3A】本出願の一部の実施形態によるタンブラー反応装置の部分断面図である。
【
図3B】本出願の一部の実施形態によるタンブラー反応装置の端面図である。
【
図3C】本出願の一部の実施形態によるタンブラー反応装置の端面図である。
【
図3D】本出願の一部の実施形態によるタンブラー反応装置の底切断図である。
【
図4A】本出願の一部の実施形態によるタンブラー反応装置の内壁におけるフィンの様々な構成を示すタンブラー反応装置の端面図である。
【
図4B】本出願の一部の実施形態によるタンブラー反応装置の内壁におけるフィンの様々な構成を示すタンブラー反応装置の端面図である。
【
図4C】本出願の一部の実施形態によるタンブラー反応装置の内壁におけるフィンの様々な構成を示すタンブラー反応装置の端面図である。
【
図5】本出願の一部の実施形態による2つのタンブラー反応装置を備えるLPCVDシステムの断面部分図である。
【
図6】本出願の一部の実施形態によるSiナノワイヤを作る方法を示す工程流れ図である。
【
図7】本出願の一部の実施形態による、半連続製造工程のために構成されたLPCVDシステムの代替の実施形態の断面部分図である。
【
図8】本出願の一部の実施形態による、連続製造工程のために構成された螺旋室を有するLPCVDシステムの代替の実施形態の断面部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の特徴および利点は、図面と併せて理解されるとき、以下に明記されている詳細な記載からより明らかとなり、図面では、同様の符号は全体を通じて対応する要素を特定している。図面では、同様の符号は概して、同一の要素、機能的に同様の要素、および/または構造的に同様の要素を指示している。
【0023】
本出願の実施形態は、概して、リチウムイオン電池(LIB)における陽極の活物質として使用するのに適するシリコン(Si)ナノワイヤを作る製造装置、システム、および方法に関する。一部の実施形態では、増加した生産量を生み出すために、黒鉛粒子または任意の炭素含有粉末など、炭素系基質上に化学蒸着によってSiナノワイヤを成長させるように構成された製造装置、システム、および方法が提供される。
【0024】
文脈について、本発明者らは、シリコン(Si)がLIBの陽極において黒鉛(C)の潜在的な置き換えとしてより多くの注目を集めたため、いくつかの制限が存続したことを指摘したい。Siの原子は、Cの原子よりはるかに多くの数のリチウムイオンと組み合わせることができる。CをSiと置き換えることは、電池のエネルギー密度を相当に増加させることができる(黒鉛Cについての理論的な容量が372mAh/gである一方で、合金相Li22Si5においてLiと組み合わせられるとき、Siについての理論的な容量は4,200mAh/gである)。しかしながら、LIBに従来のバルクシリコン(例えば、Si粉末またはSi粒子)を使うことは、それが理想的な陽極材料となることを妨げる副作用をもたらす。第一に、シリコン材料の不十分な繰り返し耐久性が、シリコンホスト物質へのリチウムイオン挿入とシリコンホスト物質からのリチウムイオン抽出とを伴う大きな体積変動(300%超)の間に粉状化の結果として生じる。第二に、相当の不可逆的な容量損失および低いクーロン効果が、合金化/脱合金の過程の間にSi陽極の機械的破壊によって生じる。最後に、固体電解質相間(SEI:Solid Electrolyte Interphase)が繰り返しの間に破断し、電解質を非常に電気化学的に活性なシリコン表面に露出させる。これは、電解質へのシリコン表面の再露出と、さらなるSEIの再形成とをもたらし、SEI層が多くの充電/放電の繰り返しを通じてより厚く成長することになる。
【0025】
本発明者らは、LIBにおける陽極の活物質として黒鉛上に成長および/または付着したSiナノワイヤの使用が、従来のバルクSiの副作用を回避する一方で、Cと比較したSiの優れたエネルギー密度を保つことを見出した。黒鉛上に成長および付着したSiナノワイヤは、例えば、約5nmと約100nmとの間、例えば30nmと約50nmとの間といった、約200nm未満の平均直径を有し得る。Siナノワイヤは触媒ナノ粒子の大きさによって決定され、例えば、Cu2Oナノ粒子の大きさは5nm~200nmの範囲であり、Siナノワイヤは、5、10、15以上、25以上、50以上、および100より大きい縦横比(長さと幅との比)を呈する。Siナノワイヤの長さは、成長時間、温度、圧力、ガス流量、触媒活性、および黒鉛粉末表面における密度によって決定される。成長工程の温度、圧力、ガス流量、および触媒/密度が選択されるとき、成長時間は主にSiナノワイヤ長さを制御する。このようにして、Siナノワイヤは、その長さが径方向の寸法よりはるかに大きいため、一次元(1-D)の材料と言うことができる。Siナノワイヤの形および形状は、リチウムイオンの迅速な拡散を容易にし、LIB内で使用されるときにSiナノワイヤと電解質との間の副反応を軽減させる。Siがリチオ化されると、Siナノワイヤの構造は、実質的な結晶から実質的な非晶構造へと変換され、したがってSiナノワイヤはより柔軟となり、黒鉛粒子同士の間の利用可能な空間をより効率的により良好に埋めるように自己組織化することができる。陽極の活物質として黒鉛粒子に付着したSiナノワイヤを有する電気化学セルの数回の最初の繰り返しの間、電池製造者は、典型的には、電圧範囲を電池の完全な動作範囲より小さい値に設定し、電流をセルデータシートに明記されている最大定格電流よりも小さい値に設定する。この手法は、典型的には「形成プロトコル」と呼ばれ、電池製造者によって実施される最初の数回のリチオ化の繰り返しの間における各々のシリコンナノワイヤへのSEI層の綿密な構築を可能にする。SEI層が形成された後、ナノワイヤは、隣接するナノワイヤとの結合および/または融合から保護され、したがって、一端において黒鉛基質の表面に付着したままより容易に曲がって形を変化させることができる。さらに、本発明者らは、最初のSEI形成の繰り返し後、柔軟になって各々の繰り返しの間に自由に膨張および収縮できる状態のままであることで、シリコンナノワイヤが、同じ黒鉛粒子または隣り合う黒鉛粒子に付着した隣接するシリコンナノワイヤに沿ってその形および位置を漸進的に調節することを見出した。SEI被覆されたシリコンナノワイヤのこの漸進的な自己配置は、ナノワイヤが付着する黒鉛粒子同士の間の細孔によって提供される体積の効率的で最適な使用をもたらす。典型的には、シリコンナノワイヤは、炭素系基質の表面のわずかな部分を占め、例えば、シリコンナノワイヤが付着する領域は、黒鉛粒子の表面の5%未満、または1%未満にさえ相当する。したがって、隣接するナノワイヤ同士の間でのそれらの長さに沿う直接的な電気的接触を形成または保護する必要はなく、それは、各々のナノワイヤが付着点において炭素系基質に電気的に連結されるためである。実際、各々のナノワイヤを繰り返しの間に柔軟に形を変化させるために、隣接するナノワイヤ同士を融合することを回避することが好ましい。本質的に、黒鉛粒子に付着したSiナノワイヤは、黒鉛基質の細孔空間を占める一方で電極の膨張を著しく制限するスポンジ状の物質のようになる。陽極層の機械的および電気的な完全性は、黒鉛粒子の相互に連結されたネットワークによって提供され、従来の黒鉛のみの陽極におけるように、バインダおよび任意選択の導電性添加物と一緒に保持され、黒鉛粒子の細孔内に配置されるシリコンナノワイヤのスポンジ状の集まりは、リチウムイオンを吸収および放出する一方で、集電体の箔への黒鉛粒子を通じた電子の流れを可能にする。また、シリコンが実質的に非晶質であり、ナノワイヤが無傷のままであるとき、ナノワイヤに沿う電子の伝導性は優れている。本発明者らは、数百回さらには数千回の繰り返しにわたって、ナノワイヤが一端において黒鉛粒子に付着したままであり、その軸に沿って自由に曲がるままであることを見出した。電子は非常に迅速に進んで、バインダのために一般に銅集電体に付着している炭素系細孔の層に出入りすることができる。この複合Si/C材料、SEI形成工程、および陽極層配置は、黒鉛のみの活陽極物質または他のシリコン含有陽極物質を伴う従来のLIBと比べて、充電-放電の繰り返しを通じてより良好な容量保持を伴って、LIBにより大きいエネルギー密度を持たせ、より大きい出力を取り扱わせることができる。
【0026】
黒鉛粒子上に成長したSiナノワイヤは、既存のロールツーロール電池電極被覆製造機器を用いて篩分けし、スラリー中で使用できる粉末になる。Siのナノワイヤは、5、10、15以上、25以上、50以上、および100より大きい縦横比(長さと幅との比)を呈する。このようにして、Siナノワイヤは、その長さが横方向の寸法よりはるかに大きいため、一次元(1-D)の材料と言うことができる。表面にSiナノ粒子を伴うカーボンナノチューブ(CNT)は、1-Dの物質でもあり、LIBにおける陽極の活物質として、Siナノワイヤの潜在的な代替品と言われている。しかしながら、CNTにおけるSiナノ粒子は、Siナノワイヤの比表面積よりはるかに大きい比表面積を有する。この特徴は、LIBにおける陽極の活陽極物質として使用されるとき、Siナノワイヤの物理的構造と特有の化学的および電気的な性質とを、Siナノ粒子を伴うカーボンナノチューブと実質的に異ならせる(および、より良くさせる)。
【0027】
例えば、元素は、CNTにおけるSiナノ粒子について、および、炭素(黒鉛)粉末上に成長させるSiナノワイヤについて同じ(シリコンおよび炭素)である一方で、2つの構造は非常に異なる性質および性能を呈する。Siナノワイヤの場合、炭素(黒鉛)は単にナノワイヤが付着させられる基質である。表面にSi粒子を伴うCNTと異なり、Siナノワイヤは、その長さが増加させられるときにおおよそ一定のままである比表面積を有し(つまり、より多くのシリコンの原子が付着するので)、一方、シリコンナノ粒子の数を増加させると、比表面積は増加する。この特有の形状/物理性質は、後述するようにいくつかの利益を生み出す。
【0028】
LIBでは、リチウムイオンは、各々の充電および放電の繰り返しの間、電解質を通じて陰極から陽極へと移動し、そこから戻るように移動する。SiナノワイヤがLIBにおける活陽極物質として使用される場合、シリコンは電解質と直接接触しているときに電気化学的に非常に活性している可能性があり、結果的にSiナノワイヤの周りのSEI層となる副反応(および副産物)を生み出す。最初の数回の繰り返しの間のSiナノワイヤの周りでのSEI層の形成は、より電気化学的に不働態の保護を提供し、さらなるシリコン-電解質の反応を防止する一方で、なおもSEIを通じてリチウムイオンを拡散させることができる。Siナノ粒子のより大きい比表面積と異なり、Siナノワイヤは、同等のSi質量においてより小さい比表面積を有する。したがって、より小さいSEIが、CNTにおけるシリコンナノ粒子の表面よりSiナノワイヤの表面を不働態化するために形成される必要がある。したがって、シリコンナノワイヤにおける電解質-シリコンの副反応は、SEI形成の間により少ない電解質を消費し、Siナノワイヤの周りにより安定したSEI層を生成し、より多くの回数の繰り返しを通じて可逆的な容量を保持するのを助ける。
【0029】
本発明者らは、リチウムイオンがSiナノワイヤにおいて迅速にリチオ化および拡散できる一方で、リチウムイオンが黒鉛粒子へとインターカレートすることも見出した。したがって、ナノワイヤにおけるシリコンと基質における炭素との両方が、リチウムの貯蔵および電子の流れに加わる。完全にリチオ化すると、黒鉛粒子において貯蔵されたリチウムに対して、ナノワイヤに貯蔵されたリチウムの割合は、複合活物質における重量比Si/Cに関連する。より大きいSi/C比では、より小さい分量のリチウムが炭素構造内に貯蔵され、より大きい分量のリチウムがシリコンナノ構造内に貯蔵される。したがって、より大きいSi/C比では、より大きいBETを伴うより安価な黒鉛を、より多くの数のSiナノワイヤを収納するために使用することができる。なぜならば、黒鉛の主要な機能が、リチウムを貯蔵することではなく、電子がナノワイヤから集電体に流れる経路を提供することであるためである。各々の粒子の表面積が大きくなるほど、各々の粒子の表面へのナノワイヤ表面密度を高めることなく、より多くのナノワイヤを受け入れることができる。黒鉛粒子上に成長させたシリコンナノワイヤを組み合わせる複合的な解決策は、シリコンのエネルギー貯蔵性質と炭素系活物質の機械的および電気的な特徴とを特有の方法で活用する。
【0030】
すべてのこれらの性質、形状、電気化学的活性、電子の伝導性、および機械的強度は、それ自体の基部において炭素系粒子に付着し、それ自体の長さに沿っては付着しないSiナノワイヤの一次元の配置に特有である。本発明者らは、これらの性質の組み合わせが、炭素系粒子上に成長させたSiナノワイヤを、LIBを含む電池のための特有の材料とすることを発見し、この新規の材料を大きな規模で経済的に製造するために必要とされるCVD装置の設計および工程を発明した。
【0031】
炭素基質におけるSiナノワイヤが電池のための材料として特に価値があることを本発明者らは見出しているが、産業規模におけるSiナノワイヤの製造は非常に難しいことが分かっており、まだ実現されていない。したがって、本出願は、リチウムイオン電池における陽極の活物質として使用するのに適するシリコン(Si)ナノワイヤを産業規模で作る新規の製造装置、システム、および方法を記載する。
【0032】
一部の実施形態によれば、本出願のタンブラー反応装置およびシステムにおいて使用される炭素系基質の粉末は、天然黒鉛、人工黒鉛、軟質炭素、硬質炭素、および非晶質炭素のうちの任意の1つ以上から成り得る。このような炭素系基質の粉末は、おおよそ1~30m2/gの範囲で、より好ましくは、より大きいSi重量%ナノワイヤ成長の場合にはおおよそ5~30m2/gの範囲で、Brunauer-Emmett-Teller(BET)表面積を有し、0.01~1.5g/ccのタップ密度を有する。重要な注目点は、前述のBET値は正反対であり、典型的にはBET表面積を2m2/g未満にする必要がある現在の従来からの高性能の黒鉛陽極材料を教示していないことである。本出願の炭素系基質の粉末は、アセチレン、メタン、一酸化炭素、糖類、ならびに、CMC、PVDF、PAA、PVA、ポリマ混合物などのポリマなどの有機化合物を分解することで、炭素被覆などのその面被覆によって変更され得る。
【0033】
Au、Cu、またはCu2Oなどの触媒ナノ粒子が、Siナノワイヤ成長のためにシラン分解に触媒作用を及ぼすために、炭素系基質の粉末の表面に蒸着させられる。Au触媒が気体-液体-固体(VLS)ナノワイヤ成長機構を有するのに対して、CuまたはCu2Oは気体-固体-固体(VSS)ナノワイヤ成長機構を有し、VSSナノワイヤ成長機構は、米国特許出願公開第2015/0086871号および米国特許出願公開第2010/0297502号においてより詳細に記載されるように、炭素系基質上ではるかにより大きいSi重量%ナノワイヤの成長を可能にし、それらの開示は参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれている。
【0034】
Siナノワイヤ陽極材料の製作は、本明細書に記載されるような本発明の産業用の大きさとされた固定床および流動床を組み合わせた反応装置の設計およびシステムに基づき、これは、4重量%超のSiを伴うSiナノワイヤ-黒鉛複合材料を製作するために、例えば0.5kg、lkg、1.5kg、2kg、および2.5kgから5kg、10kg、100kg、または500kgまでといった大規模で、各々のバッチに黒鉛粉末を投入させることができる。「バッチ」の大きさは、工程の「成長ステップ」の間に単一の反応室で生産されるシリコン-炭素の複合材の粉末の重量を意味すると理解される。連続した工程では、「バッチ」の大きさは、単一の処理装置において1時間当たり生産されるシリコン-炭素の複合材の粉末の重量である。重要な利点は、本出願のタンブラー反応装置およびCVDシステムが非常に拡張性のあることである。一部の実施形態では、タンブラー反応装置は、バッチ当たり黒鉛粉末上に少なくとも1kg(1kg/バッチ)のSiナノワイヤを生産できる。一部の実施形態では、タンブラー反応装置は、バッチ当たり黒鉛粉末上に少なくとも10kg(10kg/バッチ)のSiナノワイヤ、または、バッチ当たり黒鉛粉末上に少なくとも100kg(100kg/バッチ)のSiナノワイヤを生産する。
【0035】
とりわけ1つの利点は、本出願のシステムおよび製造方法は、100%に近いSiナノワイヤへのSi原材料(例えば、シラン)の利用率または変換率を達成することである。一部の実施形態では、Si原材料の利用率は、約30~100%の範囲、または、30~99.5%の範囲であり、より一般的には、約70~99.5%の範囲である。一例示の実施形態では、Siナノワイヤは、以下の条件、すなわち、約300~900℃の温度、約5~100重量%のSiH4、約0~50重量%のHe(または、ArもしくはN2)、および約0~50重量%のH2のプロセスガス混合物における約5~100%のシラン濃度、10~500分間の範囲における成長時間を用いて、本明細書に記載されるシステムにおいて成長させられる。前述の条件およびタンブラー回転は、好ましくは、生産用の自動ソフトウェアを伴うコンピュータによって制御される。
【0036】
別の態様では、タンブラー反応装置、システム、および方法の実施形態は、炭素粉末におけるSi重量%を変化させる選択的な形成を可能にする表面密度制御を提供する。例えば、Cu2Oの使用と組み合わされるより大きいBET表面積黒鉛粉末は、基質の表面におけるSiナノワイヤ表面密度(簡単には、Si%/m2)が約1~30m2/gの範囲におけるBET表面積を有する適切な黒鉛基質において制御され得るため、35重量%以上のSiの均一なSiナノワイヤ成長を可能にする。例えば、1グラムの粉末を取る場合、5m2/gの黒鉛(例えば、黒鉛はHitachiから入手可能である)における8重量%のSiナノワイヤは、8重量%Si/5m2=1.6重量%Si/m2のナノワイヤ表面密度を有し、これは、20m2/gの表面積を伴うKS6の種類の黒鉛における32重量%のSiナノワイヤ、つまり、32重量%Si/20m2=1.6重量%Si/m2と等しい。Siナノワイヤの長さおよび直径が、5m2/gの黒鉛における8重量%のSiナノワイヤと、20m2/gの黒鉛における32重量%のSiナノワイヤとについて同一である場合、1平方メートルの基質表面当たりのSiナノワイヤの数は同様となる。本発明者らは、このような表面密度制御を先ず発見し、これは、リチオ化の間のSiナノワイヤの体積膨張が陽極複合層における黒鉛粒子同士の間のより多くの空洞空間によって受け入れ可能となるため、32%のSi陽極材料をセルにおいて繰り返させることができると共に、8%のSi陽極材料をセルにおいて繰り返させることができる。
【0037】
ここで図を見ると、大規模な量で、黒鉛または炭素系粉末上にシリコンナノワイヤを成長させるように構成される本発明のタンブラー反応装置および化学蒸着(CVD)システムを図示する本出願の実施形態が示されている。
【0038】
図1を参照すると、低圧力CVD(LPCVD)システム100が示されており、概して、細長いCVD室102と、プロセスチューブ104と、タンブラー反応装置106とから成る。CVD室102は、特定のプロセスレシピに従ってプロセスチューブ104およびタンブラー反応装置106を加熱および冷却するために、処理装置128によって典型的には制御される加熱要素108および110を備える。この実施形態では、プロセスチューブ104は、石英から形成された細長い筒状の管であり、CVD室102の内部に位置決めされている。動作中、プロセスチューブ104は真空下に保たれる。典型的には窒素であるパージガスが、真空ポート112によってプロセスチューブに注入され、真空ポンプおよびサイクロン(図示されていない)に連結された排気ポート114が、低圧環境を提供するためにプロセスチューブ104の出力端に設けられている。
【0039】
タンブラー反応装置106は、細長い筒状の金属室から成り、プロセスチューブ104の内部に位置決めされている。タンブラー反応装置106は、プロセスチューブの内部で回転するように構成されている。電気モータ120が、回転歯車115を介してタンブラー106の回転を駆動する。
【0040】
タンブラー反応装置106は、反応装置にプロセスガスを注入するためのガスマニホールド116を備える。任意の適切なシリコン含有プロセスガスがガスマニホールド116を通じて注入され得る。一部の実施形態では、窒素、ヘリウム、アルゴン、および/または水素などの1つ以上の不活性ガスと組み合わせられたシランが、ガスマニホールド116を通じてタンブラー反応装置106に注入される。一部の実施形態では、ガスマニホールド116は、タンブラー反応装置106の少なくとも一部分または実質的な長さで延びる単一の細長いガス注入部材117から成る。一部の実施形態では、複数の注入ポート119が、タンブラー反応装置106にプロセスガスを注入するためにガス注入部材117に沿って位置決めされる。好ましくは、注入ポートは、タンブラー反応装置内でのプロセスガスの実質的に均一な分配を提供するために、ガス注入部材に沿って実質的に均等に分配されている。一部の実施形態では、ガス注入部材117は不動である。代替で、ガス注入部材117は回転してもよい。一部のプロセスガスは、ガスパージ配管112によってタンブラー反応装置106内に注入される。
【0041】
任意選択で、タンブラー反応装置106は1つ以上のスクレーパ113をさらに備える。スクレーパ113は、内壁における粉末の蓄積を防止するために、タンブラー反応装置106の内壁の少なくとも一部分を掻き落とすように構成されている。一部の実施形態では、スクレーパ113は、タンブラー反応装置の端のうちの1つ以上に位置決めされ、タンブラー反応装置の外周部から粉末を掻き落とす。別の実施形態では、スクレーパ113は、内壁に沿って蓄積した粉末を掻き落とすために、タンブラー反応装置106の少なくとも一部分または実質的な長さにわたって延びる細長い刃から成り得る。なおも別の実施形態では、スクレーパ113はガスマニホールド116と一体にされ得る。
【0042】
図1に示した例示の実施形態では、スクレーパ113は、取付部材121aおよび121bによってガス注入部材117に取り付けられており、取付部材121aおよび121bは、ガス注入部材117の両端に配置されたフランジ122aおよび122bのフィードスルーに固定されている。フランジは、固定されて真空密封させることができ、したがってスクレーパ113も同様に不動となる。この実施形態では、タンブラー反応装置106が回転する一方でスクレーパは不動のままである。代替で、スクレーパ113は回転するように構成されてもよい。例示の実施形態では、スクレーパ113は細長い刃124から成り、細長い刃124の外側は、タンブラー回転の間、タンブラー反応装置106の内壁から粉末を掻き落とす。代替で、細長い刃124は、ブラシ状部材125がタンブラー回転の間にタンブラー反応装置106の内壁から粉末を掻き落とすように、刃124の外側の一部分または実質的な長さに沿って位置決めされたブラシ状部材125を備えてもよい。
【0043】
図2Aを参照すると、低圧力CVD(LPCVD)システム200の別の実施形態が示されており、概して、細長いCVD室202と、プロセスチューブ204と、タンブラー反応装置206とから成る。CVD室202は、特定のプロセスレシピに従ってCVD室を加熱するために、処理装置228によって制御される加熱要素208および210を備える。この実施形態では、プロセスチューブ204は、金属から形成された細長い筒状の管である。プロセスチューブ204は、低圧環境を提供するために、ポート212を介してパージガスによって排出される。プロセスチューブ204は、プロセスチューブ204の出力端に位置決めされ、真空ポンプおよびサイクロン(図示されていない)に連結された排気ポート214によって排気される。タンブラー反応装置206は、プロセスチューブ204の内部で回転するように構成されている。電気モータ220が、回転歯車215を介してタンブラー反応装置206の回転を駆動する。
【0044】
処理量を増加させ、サイクル間の処理時間を短縮するために、LPCVDシステム200は、プロセスチューブ204およびタンブラー反応装置206のより迅速な冷却および加熱を可能にするように適合されている。この実施形態では、タンブラー反応装置206はCVD室202から取り外されるように構成されている。この方法では、タンブラー反応装置206およびプロセスチューブ204は、処理が完了するとCVD室202から取り外して冷却することができ、一方で別のタンブラー反応装置およびプロセスチューブがCVD室内に置かれる。この構成は、CVD室がバッチ毎に冷却され次いで加熱される必要がないため、より迅速な処理を可能にし、それによってシステムの利用効率を高めている。
【0045】
この実施形態では、CVDシステム200は、タンブラー反応装置206を摺動させてプロセスチューブ204に出入りさせ、タンブラー反応装置206を支持するように構成される車輪222を伴う台車レール221をさらに備えている。台車レールは、タンブラー反応装置206を金属のプロセスチューブ204に出入りさせることができる。台車レールは、粉末で重いとき、タンブラー反応装置206も支持する。一部の実施形態では、金属プロセスチューブ204が使用され、それによって石英プロセスチューブを置き換えて、より重い粉末材料をタンブラー反応装置206に投入することを可能にし、これはSiナノワイヤの生産量の増加を提供する。代替の実施形態では、タンブラー反応装置206およびプロセスチューブ204はCVD室202に滑って出入りするように構成される。
【0046】
タンブラー反応装置206は、反応装置にプロセスガスを注入するためのガスマニホールド216を備える。一部の実施形態では、ガスマニホールド216は、タンブラー反応装置206の実質的な長さにわたって延びる単一の細長いガス注入部材から成る。例示の実施形態では、ガスマニホールドはU字形ガス注入部材217から成る。一部の実施形態では、複数の注入ポート219が、タンブラー反応装置206にプロセスガスを注入するためにU字形ガス注入部材217に沿って位置決めされる。好ましくは、注入ポートは、タンブラー反応装置内でのプロセスガスの実質的に均一な分配を提供するために、ガス注入部材に沿って実質的に均等に分配されている。一部の実施形態では、U字形ガス注入部材217は不動である。代替で、U字形ガス注入部材217は回転してもよい。
【0047】
タンブラー反応装置206は、
図1に関連して前述したような1つ以上のスクレーパ213をさらに備える。スクレーパ213は、内壁における粉末の蓄積を防止するために、タンブラー反応装置206の内壁の少なくとも一部分を掻き落とすように構成されている。一部の実施形態では、スクレーパ213は、タンブラー反応装置の端のうちの一方または両方に位置決めされ、外周部から粉末を掻き落とす。代替で、スクレーパ213は、内壁に沿って蓄積した粉末を掻き落とすために、タンブラー反応装置206の実質的な長さにわたって延びる細長い刃から成り得る。なおも別の実施形態では、スクレーパ213はU字形のガスマニホールド216と一体にされ得る。
【0048】
図2Aに示した例示の実施形態では、スクレーパ213は、U字形ガス注入部材217の両端に固定された取付部材223aおよび223bによってガス注入部材217に取り付けられている。この実施形態では、タンブラー反応装置206が回転する一方で、U字形ガス注入部材217およびスクレーパ213は固定されたままである。代替で、U字形ガス注入部材およびスクレーパが回転するように構成されてもよい。例示の実施形態では、スクレーパ213は、ブラシ状部材225が回転の間にタンブラー反応装置206の内壁から粉末を掻き落とすように、刃224の外側の一部分または実質的な長さに沿って位置決めされたブラシ状部材225を伴う細長い刃224から成る。
【0049】
代替の実施形態が
図2Bに示されており、ここでは、処理量を増加させ、サイクル間の処理時間を短縮するために、概して
図2Bにおいて矢印の方向によって示されているように、CVD室202がプロセスチューブ204およびタンブラー反応装置206から離すように移動されている。この方法では、加熱要素108、110を伴うCVD室202が、処理が完了すると、タンブラー反応装置206およびプロセスチューブ204から離すように引っ張られ、そのため、別のタンブラー反応装置およびプロセスチューブをさらなる処理のために受け入れることができる。この構成は、CVD室がバッチ毎に冷却され次いで加熱される必要がないため、より迅速な処理を可能にし、それによってシステムの利用効率を高める。CVD室202を移動させるために、車輪227を伴う台車レール226が、CVD室202をプロセスチューブ204およびタンブラー反応装置206から離すように運搬し、摺動させるために位置決めされている。
【0050】
図3A~
図3Dは、タンブラー反応装置300の一実施形態の様々な図を描写している。より具体的には、
図3Aは、例示のタンブラー反応装置300の部分断面図を示し、
図3Bおよび
図3Cは、タンブラー反応装置300の部分端面図を示し、
図3Dは、タンブラー反応装置300の部分的な底切断図を示している。この実施形態では、タンブラー反応装置300は、第1の端301および第2の端302を有する細長い筒状の管303から成る。両方の端301および302は、概して網エンドキャップ304およびエンドプレート306から成る。エンドプレート306は、タンブラー反応装置300を回転させるための歯車の役割を果たすエンドプレート306の外周全体にわたって延びる歯付き外縁305を有する(簡潔のために、図には歯付き外縁の一部分だけが示されている)。外歯車305は、タンブラー反応装置300の回転を駆動するためにモータ120に結合されたより小さい回転歯車115、215(
図1、
図2A、および
図2B)と係合する。取付ボルト307を介して網エンドキャップおよびエンドプレートを固定するためにフレーム308(
図3B)が設けられてもよい。フレーム308は、例えば注入マニホールド116、216など、様々な構成部品を受け入れるように構成された開口を備える。
【0051】
具体的な利点は、網エンドキャップ304が、黒鉛粉末をタンブラー反応装置の内部に封じ込め、プロセスチューブへの黒鉛粉末の流れを阻止する一方で、タンブラー反応装置とプロセスチューブとの間のプロセスガス、パージガス、および他のガスの流れを許容する大きさの複数の開口309を有する網から成ることである。網エンドキャップ304における網開口309の大きさは、タンブラー反応装置300に投入される黒鉛粉末の大きさおよび/または形に応じて異なってもよい。網エンドキャップ304は、ガスマニホールドからタンブラー反応装置の内部の黒鉛粉末への均一なガス分配を可能にする。
【0052】
タンブラー反応装置400の一実施形態が、
図4A~
図4Cを参照してより詳細に示されている。タンブラー反応装置400は、タンブラー反応装置400の1つ以上の内壁404に備え付けまたは形成された1つ以上のフィン402を備える。フィン402は、任意の適切な大きさ、形、または分配であり、特にプロセスガスの注入の間、タンブラー反応装置における粉末運動の制御および/または分配を提供するように構成されている。フィン402は、黒鉛または炭素系粉末がタンブラー反応装置の回転の間に壁に沿って滑ること、または壁にまとわりつくことを防止するように構成されている。フィンは、タンブラー反応装置が回転するとき、投入された黒鉛粉末を持ち上げることも支援できる。一部の実施形態では、フィン402は、内壁の表面から突出した細長いリップである。フィン402の高さは、様々な要因の中でも、使用される黒鉛粉末の種類に応じて異なり得る。一部の実施形態では、フィン402の高さは約0.05~50mmの範囲である。フィン402の各々の高さは均一であってよく、代替で、フィン402のうちの1つ以上の高さは異なってもよい。
【0053】
フィン402は、様々な形の中でも、
図4Aに示すような長方形の形、または、
図4Bに示すような三角形の形を有し得る。
図4Cでは、フィン402は、タンブラー反応装置が回転するときに黒鉛粉末を持ち上げるのを支援する湾曲した形を有する。当業者は、いずれも本発明の精神および範囲内で多くの異なる形が使用できることを認識されよう。
【0054】
Siナノワイヤの生産量をさらに増加させるために、
図5に示しているように2つ以上のタンブラー反応装置503aおよび503bから成るCVDシステム500が開示される。この実施形態では、タンブラー反応装置503aおよび503bは、フランジ504を介して結合され、回転する電気モータ508に結合された回転歯車506によって一体に回転させられる。代替で、タンブラー反応装置503aおよび503bは独立していてもよい。プロセスガス(この例では、シラン、または、N
2、Ar、H
2、もしくはHeなどの他のガスとの混合物を伴うシラン)は、ポート501を通じてタンブラー反応装置の各々へと独立して注入される。
【0055】
次いで、動作のプロセスについて
図6を参照して説明する。動作時、タンブラー反応装置は、プロセスチューブおよびCVD室の内部で回転し、タンブラー反応装置に投入されたあらかじめ処理された黒鉛粉末を混合する一方で、Siナノワイヤを黒鉛粉末上に成長させるように適切な条件を確保するために、シラン(SiH
4)などのプロセスガスが、制御された圧力および温度の下でタンブラー反応装置に注入される。
【0056】
図6は、本出願の実施形態によるSiナノワイヤへの製造工程の要旨の工程系統
図600を示している。ステップ602において、タンブラー反応装置に、触媒粒子(Au、Cu、またはCu酸化物)が蒸着されることであらかじめ処理された黒鉛または炭素の粉末が投入され、重みが掛けられる。ステップ604において、タンブラー反応装置がプロセスチューブおよびCVD室へと挿入され、タンブラー反応装置およびプロセスチューブが特定の温度まで加熱される。ステップ606において、化学蒸着によってSiナノワイヤを成長させる。シリコンナノワイヤの成長の後、ステップ608において、タンブラーがCVD室から取り出され、冷却される。ステップ610において、Siナノワイヤを伴う形成された黒鉛粉末が取り出される。
【0057】
図7は、3つのタンブラー706a、706b、および706cが半連続製造工程において処理されるLPCVDシステム700の代替の実施形態の断面部分図を示している。各々のタンブラー反応装置には、触媒が黒鉛に蒸着された黒鉛粉末が投入され、タンブラー反応装置が、LPCVDシステムの一端から挿入され、加熱領域701と、反応領域703と、冷却領域705とから成る3つの活性領域の連続を通じて処理された後、LPCVDシステムの反対の端から引き抜かれる。3つの活性領域は、活性領域から圧力および温度の次の制御下の条件へと各々のタンブラーの移行を可能にする2つの緩衝領域702および704によって互いから分離されている。予加熱領域701では、タンブラー706aが、緩衝領域702を通じて反応領域703に移動する前に、特定の温度条件および圧力条件に到達するように加熱される。反応領域703では、タンブラー反応装置706bに収容された黒鉛粉末は、シリコン含有プロセスガスと混合して、冷却領域705に移行する前に、黒鉛粉末上にシリコンナノワイヤを成長させる。冷却領域705では、タンブラー706cに収容された炭素系シリコンナノワイヤ複合粉末が、粉末を取り出すためにタンブラーを引き抜く前に冷却される。タンブラーが1つの活性領域から次の活性領域に移動するたびに、触媒を含む炭素系粉末が投入された新たなタンブラーが予加熱領域に挿入されて処理を再び開始し、完全に形成されたナノワイヤが炭素系粉末上に成長し、付着したタンブラーが、取り出される準備の整った冷却領域から引き抜かれる。この構成は、あらゆる時点で3つのタンブラーが3つの活性領域701、703、および705の各々に常に存在している半連続の製造工程を確保する。この構成の利点は、ある活性領域から次の活性領域へのタンブラーの断続的な移行を除いて、反応領域703がタンブラーにおいて途切れなくナノワイヤを連続的に成長させることである。この構成は、N-1個の緩衝領域を通じて互いから分離されたN個の活性領域を含むように拡張されてもよく、ここで、Nは3より大きい。
【0058】
図8は、タンブラー反応装置が連続製造工程のために構成された螺旋室802を備えるLPCVDシステム800の代替の実施形態の断面部分図を示している。螺旋状の構成の場合、回転する螺旋体またはオーガが基質粉末材料を1つ以上の加熱領域、反応領域、および冷却領域の連続を通じて前へと押し、その際、プロセスガスの注入は反応領域に向けて方向付けられ、反応領域ではシランがシリコンナノワイヤへと変換される。
【0059】
例示の実施形態では、LPCVDシステム800は、少なくとも1つの予加熱領域804、反応領域806、および冷却領域808から成る細長いCVD室802と、プロセスガス(および、任意選択で他のガス)をCVD室802に注入するためのガスマニホールド801とを備える。動作中、室802は真空下に保たれる。典型的には窒素であるパージガスが、真空ポート810によって室に注入され、サイクロン(図示されていない)に連結された排気ポート812が、低圧環境を提供するために室802の出力端に設けられている。
【0060】
一部の実施形態では、ガスマニホールド801は、室802の実質的な長さまたは全長を通じて延びる細長いガス注入部材814から成る。プロセスガスを反応領域へと送達するために、ガス注入部材814は、反応領域806に位置決めされるガス注入部材814の区域に沿って複数の注入ポート815を含んでいる。反応領域806におけるプロセスガス(概してシランであり、任意選択で、窒素、アルゴン、ヘリウム、および/または水素などの1つ以上の不活性ガスと混合される)の注入は、シランを、黒鉛粉末上に成長したシリコンナノワイヤへと変換する。予加熱領域804および冷却領域808に位置決めされたガス注入部材814の区域は、ポートを含んでおらず、そのためプロセスガスはこれらの領域には注入されない。
【0061】
黒鉛粉末が黒鉛注入装置816によって室802へと投入される。黒鉛粉末は、黒鉛粉末に触媒を蒸着させるために予加熱されている。回転する螺旋体またはオーガ803は、黒鉛粉末を予加熱領域804、反応領域806、および冷却領域808を通じて前へと押す。オーガ803は、ガス注入部材814と一体にされてもよく、または代替で、ガス注入部材814から分離されていてもよい。オーガ803とガス注入部材814とが一体化された組立体である場合、ガスを径方向に分配するために、ガス導管がオーガの中心を貫いて形成される。任意選択で、前述したようなスクレーパが、室802の内壁における粉末の蓄積を最小限にするために領域804、806、808のうちの1つ以上に含まれ得る。
【0062】
一実施形態では、黒鉛粉末が室802に入るとき、黒鉛粉末は真空の下で乾燥され、予加熱領域804において予加熱される。黒鉛粉末が予加熱領域を通って進むとき、黒鉛は特定の温度まで加熱される。次に、加熱された黒鉛粉末は予加熱領域を出て、反応領域に入る。任意選択で、予加熱領域および反応領域は、領域を部分的または十分に隔離するために、パージカーテンもしくは分離カーテン(図示されていない)または他の適切な手段によって、分離されてもよい。加熱された黒鉛粉末が反応領域806に入って反応領域806を通って進むとき、黒鉛粉末はシリコン含有プロセスガスと混合して黒鉛粉末上にシリコンナノワイヤを成長させることで、炭素系シリコンナノワイヤ複合粉末を形成する。次に、このシリコンナノワイヤ黒鉛粉末は、粉末が冷却される冷却領域808を通って進む。粉末(ここでは形成された製品)が冷却領域808を通過すると、粉末は製品出力部818を介して室802から連続的に取り出される。
【0063】
前述したように、黒鉛粉末は、オーガ803によって駆動される螺旋移動によって、複数の領域を通じて移動する。領域804、806、808の各々は、各々の領域において実行されている処理ステップに応じて、異なる滞留または進行の時間を要求する可能性がある。例えば、一部の実施形態では、予加熱領域804における黒鉛粉末の予加熱は、反応領域806においてシリコンナノワイヤを成長させるために必要とされる時間よりも多くの時間を要求する可能性がある。このような例では、特定の領域を通る滞留または進行の時間の制御は、3つのオーガ区域1、2、および3を示す
図8に描写されているように、その領域におけるオーガ803のピッチを変化させることで達成される。例えば、オーガのピッチは、必要に応じてより狭くまたはより広くなるように調節されてもよい。したがって、各々の領域を通る黒鉛粉末の進行の速度が選択的に調整され得る。
図8に示した3つのオーガ区域は長さが同様であるが、これは簡潔性のためだけであり、様々なオーガ区域の長さが本発明の教示により変化できることが理解される。別の実施形態では、複数のタンブラー反応装置を半連続的な手法で処理することができる半連続のバッチシステムおよび工程が提供される。一例示の実施形態では、プロセスチューブは細長く、複数のタンブラー反応装置が処理を受けることができ、領域から領域へとプロセスチューブを通じて移動でき、これによってタンブラーがプロセスチューブの各々の端において半連続的な手法で投入および取り出せることができるように、例えば、加熱領域、反応(成長)領域、および冷却領域を伴って、4つのタンブラー反応装置を収容するように構成される。
【0064】
一部の実施形態では、前述した炭素系シリコンナノワイヤ複合粉末を生産するための方法、システム、および反応装置の使用は、陽極を形成するためにさらに処理される。一部の実施形態では、陽極は、当分野で知られている被覆技術により、炭素系シリコンナノワイヤ複合粉末で電極箔を被覆することで形成される。別の実施形態では、陽極は、リチウムイオン電池を形成するために、陰極、セパレータ、および電解質とさらに組み合わせられる。
【0065】
シリコンナノワイヤの成長を、非常に大きい変換率および歩留まりを伴う統計的に制御された半径および長さの寸法で可能にする、より低コストな触媒ナノ粒子をより低コストな黒鉛基質粉末と大きなCVD体積の処理において組み合わせることが、本明細書に開示されており、高性能でかつ高エネルギー密度の活陽極物質を魅力的な製造コストで大量に生産することが可能になる。
【0066】
本明細書に記載した装置および方法は、これまでの製造技術に対してかなりの利点をもたらし、本出願の装置およびシステムによって提供される生産量の増加は、電池産業における陽極材料としての黒鉛または他の炭素粉末上に成長させたSiナノワイヤの幅広い採用を可能および促進する助けとなる。
【0067】
本発明の特定の実施形態について上記で説明したが、本発明は記載されるのとは別のやり方で実施できることが理解されよう。上記の記載は例示であることが意図されており、限定ではない。したがって、後に述べられている請求項の範囲から逸脱することなく記載される本発明に変更が行われ得ることは、当業者には明らかであろう。
【符号の説明】
【0068】
100、200 低圧力CVD(LPCVD)システム
102、202 CVD室
104 プロセスチューブ
106 タンブラー反応装置
108、110 加熱要素
112 真空ポート、ガスパージ配管
113 スクレーパ
114 排気ポート
115 回転歯車
116 ガスマニホールド
117 ガス注入部材
119 注入ポート
120 電気モータ
121a、121b 取付部材
122a、122b フランジ
124 細長い刃
125 ブラシ状部材
200 低圧力CVD(LPCVD)システム
202 CVD室
204 プロセスチューブ
206 タンブラー反応装置
208、210 加熱要素
212 ポート
213 スクレーパ
214 排気ポート
215 回転歯車
216 ガスマニホールド
217 U字形ガス注入部材
219 注入ポート
220 電気モータ
221 台車レール
222 車輪
223a、223b 取付部材
224 細長い刃
225 ブラシ状部材
226 台車レール
227 車輪
300 タンブラー反応装置
301 第1の端
302 第2の端
303 細長い筒状の管
304 網エンドキャップ
305 歯付き外縁、外歯車
306 エンドプレート
307 取付ボルト
308 フレーム
400 タンブラー反応装置
402 フィン
404 内壁
500 CVDシステム
503a、503b タンブラー反応装置
504 フランジ
506 回転歯車
508 電気モータ
700 LPCVDシステム
701 加熱領域、予加熱領域
702、704 緩衝領域
703 反応領域
705 冷却領域
706a、706b、706c タンブラー
800 LPCVDシステム
801 ガスマニホールド
802 螺旋室、CVD室
803 螺旋体、オーガ
804 予加熱領域
806 反応領域
808 冷却領域
810 真空ポート
812 排気ポート
814 ガス注入部材
815 注入ポート
816 黒鉛注入装置
818 製品出力部
【手続補正書】
【提出日】2022-11-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素系シリコンナノワイヤ複合材を製造する方法であって、
その上に堆積された触媒ナノ粒子を有する炭素系基質を提供するステップと、
複数のタンブラー反応装置に、その上に堆積された触媒ナノ粒子を有する前記炭素系基質を投入するステップと、
N-1個の緩衝領域によって互いに分離された連続するN個の活性領域を含む低圧CVDシステムの一端に前記複数のタンブラー反応装置を挿入するステップであって、前記N個の活性領域は、少なくとも1つの加熱領域、少なくとも1つの反応領域、及び少なくとも1つの冷却領域を備え、各領域は前記複数のタンブラー反応装置の少なくとも1つを備える、ステップと、
その上に堆積された触媒ナノ粒子を有する前記炭素系基質を、前記少なくとも1つの加熱領域内に位置した前記複数のタンブラー反応装置の1つ又は複数において、前記炭素系基質が特定の温度に到達するまで加熱するステップと、
気体―固体―固体合成技術によって炭素系シリコンナノワイヤ複合材を形成するために前記少なくとも1つの反応領域内に位置した前記複数のタンブラー反応装置の1つ又は複数において、その上に堆積された前記触媒ナノ粒子から前記炭素系基質上でシリコン含有ナノワイヤを成長させるステップと、
前記少なくとも1つの冷却領域内に位置した前記複数のタンブラー反応装置の1つ又は複数において前記炭素系シリコンナノワイヤ複合材を冷却するステップと、
圧力及び温度が制御された条件下で前記緩衝領域を通して前記低圧CVDシステムにおける前記複数のタンブラー反応装置の位置を断続的に変えて、1つの活性領域から次の活性領域への前記複数のタンブラー反応装置の断続的な移行を除いて、少なくとも1つの反応領域に位置した前記複数のタンブラー反応装置の1つ又は複数が、前記炭素系基質上でシリコン含有ナノワイヤを連続的に成長させる、方法。
【請求項2】
前記炭素系基質が、天然黒鉛粒子又は合成黒鉛粒子の少なくとも1つを含む、請求項1に記載に方法。
【請求項3】
前記触媒ナノ粒子が銅又は銅酸化物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
成長させるステップが、注入部材に沿って位置した注入ポートを介して前記複数のタンブラー反応装置の1つ又は複数に、1つ又は複数のプロセスガスを均一に注入している間に前記炭素系基質を混合するステップを更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
成長させるステップが、生産用の自動ソフトウェアを伴うコンピュータによって、温度と、1つ又は複数のプロセスガスの圧力とを制御するステップを更に備える、請求項3に記載に方法。
【請求項6】
混合するステップが、ナノワイヤ成長プロセス中に前記複数のタンブラー反応装置の1つ又は複数を回転させるステップを更に備える、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記炭素系シリコンナノワイヤ複合材は、炭素に対するシリコンの重量比が少なくとも12%のシリコンナノワイヤ密度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記炭素系シリコンナノワイヤ複合材は、炭素に対して16%から32%の間のシリコンの重量比のシリコンナノワイヤ密度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
1つ又は複数のプロセスガスがシリコン含有前駆体を含み、前記シリコン含有前駆体のシリコンナノワイヤへの変化率が90%よりも高い、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
1つ又は複数のシリコン含有プロセスガスがシランを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
内壁上の炭素系基質の蓄積を最小限にするために、前記少なくとも1つの反応領域に位置した前記複数のタンブラー反応装置の1つ又は複数の内壁を掻き落とすステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
炭素系シリコンナノワイヤ複合材を製造する方法であって、
その上に堆積された触媒ナノ粒子を有する炭素系基質を提供するステップと、
黒鉛注入装置を通して、その上に堆積された触媒ナノ粒子を有する前記炭素系基質を細長い室に連続的に投入するステップであって、前記細長い室は、オーガとガス注入部材とを備え、前記オーガ及びガス注入部材は前記細長い室の長さの少なくとも一部にわたって延在し、前記細長い室は、少なくとも1つの予加熱領域、少なくとも1つの反応領域、及び少なくとも1つの冷却領域を備える複数の活性領域を備える、ステップと、
その上に堆積された触媒ナノ粒子を有する前記炭素系基質を、前記1つ又は複数の予加熱領域において、特定の温度まで加熱するステップと、
気体―固体―固体合成技術によって炭素系シリコンナノワイヤ複合材を形成するために前記1つ又は複数の反応領域において、前記触媒ナノ粒子から前記炭素系基質上でシリコン含有ナノワイヤを成長させるステップと、
1つ又は複数の冷却領域で前記炭素系シリコンナノワイヤ複合材を冷却するステップと、
前記オーガを回転することによって、一連の1つ又は複数の予加熱領域、反応領域、及び冷却領域を通して前記炭素系基質を押すステップと、を備える方法。
【請求項13】
前記炭素系基質が、天然黒鉛粒子又は合成黒鉛粒子の少なくとも1つを含む、請求項12に記載に方法。
【請求項14】
前記触媒ナノ粒子が銅又は銅酸化物を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
成長させるステップが、前記1つ又は複数の反応領域で延在するガス注入部材の区域に沿って位置した注入ポートを介して1つ又は複数のプロセスガスを均一に注入している間に前記炭素系基質を混合するステップを更に備える、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記炭素系シリコンナノワイヤ複合材は、炭素に対するシリコンの重量比が少なくとも12%のシリコンナノワイヤ密度を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記炭素系シリコンナノワイヤ複合材は、炭素に対して16%から32%の間のシリコンの重量比のシリコンナノワイヤ密度を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
1つ又は複数のプロセスガスがシリコン含有前駆体を含み、前記シリコン含有前駆体のシリコンナノワイヤへの変化率が90%よりも高い、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
内壁上の炭素系基質の蓄積を最小限にするために、前記複数の活性領域の1つ又は複数において前記細長い室の内壁を掻き落とすステップを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記領域で延在するオーガの区域のピッチを変更することによって、前記複数の活性領域を通る前記炭素系基質の進行時間を制御するステップを更に備える、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも1つの予加熱領域と前記少なくとも1つの反応領域が分離カーテンによって分離されて、前記領域が少なくとも部分的に分離されている、請求項12に記載の方法。
【外国語明細書】