(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189836
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】粘着剤付き偏光板および画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20221215BHJP
G02B 1/14 20150101ALI20221215BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20221215BHJP
C09J 7/22 20180101ALI20221215BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20221215BHJP
C09J 133/14 20060101ALI20221215BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20221215BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
G02B5/30
G02B1/14
G09F9/30 349E
C09J7/22
C09J7/38
C09J133/14
C09J175/04
G06F3/041 460
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160402
(22)【出願日】2022-10-04
(62)【分割の表示】P 2018020947の分割
【原出願日】2018-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寳田 翔
(72)【発明者】
【氏名】石原 康隆
(72)【発明者】
【氏名】野田 美菜子
(57)【要約】
【課題】薄型でかつ画像表示装置に使用した際の加熱加湿耐久性に優れる粘着剤付き偏光板を提供する。
【解決手段】粘着剤付き偏光板(2)は、ポリビニルアルコール系偏光子(11)を含む偏光板(10)の第一主面側に第一粘着シート(21)を備え、第二主面側に第二粘着シート(22)を備える。偏光板は、偏光子の第二主面に透明保護フィルム(15)が貼り合わせられており、偏光子の第一主面に接して厚みが0.1~10μmのウレタン層(17)を備える。第一粘着シートは、アクリル系ポリマーを50重量%以上含有し、アクリル系ポリマーは、ポリマーを構成するモノマー成分の合計100重量部に対する酸モノマー成分の量が1重量部以下であり、第一粘着シートの透湿度Xと厚みDの二乗の積XD
2が1×10
-7g/24h以上であることが好ましい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール系偏光子を含む偏光板の両方の主面に粘着シートを備える粘着剤付き偏光板であって、
前記偏光子の第二主面に透明保護フィルムが貼り合わせられており、
前記偏光子の第一主面に接して厚みが0.1~10μmのウレタン層を備え、
前記ウレタン層に接して第一粘着シートを備え、
前記透明保護フィルム上に第二粘着シートを備え、
前記第一粘着シートがアクリル系ポリマーを50重量%以上含有し、前記アクリル系ポリマーは、ポリマーを構成するモノマー成分の合計100重量部に対する酸モノマー成分の量が1重量部以下であり、
前記第一粘着シートは、透湿度Xと厚みDの二乗の積XD2が1×10-7g/24h以上である、粘着剤付き偏光板。
【請求項2】
前記第一粘着シートは、透湿度Xと厚みDの積XDが1×10-2g/m・24h以上である、請求項1に記載の粘着剤付き偏光板。
【請求項3】
前記透明保護フィルムの表面にハードコート層が設けられていない、請求項1または2に記載の粘着剤付き偏光板。
【請求項4】
前記偏光子の厚みが10μm以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の粘着剤付き偏光板。
【請求項5】
前記第二粘着シートがアクリル系ポリマーを50重量%以上含有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の粘着剤付き偏光板。
【請求項6】
前記第一粘着シートが前記偏光板と画像表示セルとの貼り合わせ用の粘着剤であり、前記第二粘着シートが前記偏光板と前面透明板またはタッチパネルとの貼り合わせ用の粘着剤である、請求項1~5のいずれか1項に記載の粘着剤付き偏光板。
【請求項7】
前記第一粘着シートの厚みが、前記第二粘着シートの厚みよりも小さい、請求項6に記載の粘着剤付き偏光板。
【請求項8】
前記第一粘着シートが前記偏光板と前面透明板またはタッチパネルとの貼り合わせ用の粘着剤であり、前記第二粘着シートが前記偏光板と画像表示セルとの貼り合わせ用の粘着剤である、請求項1~5のいずれか1項に記載の粘着剤付き偏光板。
【請求項9】
前記第二粘着シートの厚みが、前記第一粘着シートの厚みよりも小さい、請求項8に記載の粘着剤付き偏光板。
【請求項10】
前記第一粘着シートは、波長380nmの光透過率が30%以下である、請求項9に記載の粘着剤付き偏光板。
【請求項11】
画像表示セルと、前面透明板およびタッチパネルからなる群から選択される前面透明部材と、請求項6または7に記載の粘着剤付き偏光板とを備え、
前記画像表示セルが、前記粘着剤付き偏光板の前記第一粘着シートと貼り合わせられており、
前記前面透明部材が、前記粘着剤付き偏光板の前記第二粘着シートと貼り合わせられている、
画像表示装置。
【請求項12】
画像表示セルと、前面透明板およびタッチパネルからなる群から選択される前面透明部材と、請求項8~10のいずれか1項に記載の粘着剤付き偏光板とを備え、
前記前面透明部材が、前記粘着剤付き偏光板の前記第一粘着シートと貼り合わせられており、
前記画像表示セルが、前記粘着剤付き偏光板の前記第二粘着シートと貼り合わせられている、
画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置に用いられる粘着剤付き偏光板、および当該粘着剤付き偏光板を備える画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、カーナビゲーション装置、パソコン用モニタ、テレビ等の各種画像表示装置として、液晶表示装置や有機EL表示装置が広く用いられている。液晶表示装置は、その表示原理から、画像表示セルの視認側表面に偏光板が配置されている。また、有機EL表示装置では、外光が金属電極(陰極)で反射されて鏡面のように視認されることを抑制するために、画像表示セルの視認側表面に円偏光板(偏光板と1/4波長板の積層体)が配置される場合がある。
【0003】
偏光板は、一般に、ヨウ素等で染色したポリビニルアルコール系フィルムからなる偏光子の両面に透明保護フィルムを貼り合わせた構成を有する。薄型化・軽量化を図るために、偏光子の片面のみに透明保護フィルムを設けた偏光板も知られている(例えば特許文献1)。画像表示セルへの表面への偏光板の固定には粘着剤が用いられる。
【0004】
画像表示装置の表面には、外表面からの衝撃による画像表示パネルの破損防止等を目的として、ガラスや樹脂からなる透明板が設けられる場合がある。また、タッチパネルを備える画像表示装置では、画像表示パネルの視認側にタッチパネルが配置されている。画像表示パネルの視認側に前面透明板(カバーガラス、カバーウインドウ等)やタッチパネル等の前面透明部材を配置する場合は、画像表示パネル表面の偏光板と前面透明部材とが粘着剤を介して貼り合わせられる。
【0005】
画像表示装置の形成においては、偏光板に粘着シートを付設した粘着剤付き偏光板を画像表示セルの表面に貼り合わせる方法が一般的である。画像表示装置の表面に前面透明部材を配置する場合は、偏光板上に、粘着剤を介して前面透明部材が貼り合わせられる。特許文献2では、前面透明部材を備える画像表示装置の形成に、両面粘着剤付き偏光板を用いる方法が提案されている。両面粘着剤付き偏光板は、偏光板等の一方の面に画像表示セルとの貼り合わせのための粘着シートを備え、他方の面に前面透明部材との貼り合わせのための粘着剤シートを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-58519号公報
【特許文献2】特開2014-115468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
偏光子の片面のみに透明保護フィルムを設けた偏光板(以下、「片保護偏光板」と記載する場合がある)は、画像表示装置の薄型化・軽量化に有利である。しかし、片保護偏光板の一方の面に画像表示セルを貼り合わせ、他方の面に前面透明部材を貼り合わせた画像表示装置は、高温高湿の耐久試験において、偏光板の単体透過率の低下や、偏光板の端面付近における偏光子の退色が生じやすく、耐久性に問題があることが判明した。かかる課題に鑑み、本発明は、画像表示装置の薄型化と高耐久性とを両立可能な粘着剤付き偏光板の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の粘着剤付き偏光板は、ポリビニルアルコール系偏光子を含む偏光板の両方の主面に粘着シートを備える。偏光子は、厚みが10μm以下の薄型偏光子であってもよい。偏光板は、偏光子の一方の面に貼り合わせられた透明保護フィルムを備える。偏光子の他方の面には透明保護フィルムが設けられておらず、偏光子に接して厚みが0.1~10μmのウレタン層が設けられている。ウレタン層上に設けられた第一粘着シートは、高透湿性であることが好ましい。
【0009】
第一粘着シートは、透湿度Xと厚みDの二乗の積XD2が1×10-7g/24h以上であることが好ましい。第一粘着シートは、透湿度Xと厚みDの積XDが1×10-2g/m・24h以上であることが好ましい。第一粘着シートを構成する粘着剤としては、アクリル系ポリマーを主成分とするアクリル系粘着剤が好ましく用いられる。第一粘着シートを構成するアクリル系ポリマーは、構成モノマー成分の合計100重量部に対する酸モノマー成分の量が1重量部以下であることが好ましい。
【0010】
粘着剤付き偏光板は、偏光板の透明保護フィルム付設面上に第二粘着シートを備えている。偏光板の第一主面および第二主面の両面に粘着シートを備える両面粘着剤付き偏光板は、一方の粘着シートが偏光板と画像表示セルとの貼り合わせに用いられ、他方の粘着シートが偏光板と前面透明板またはタッチパネルとの貼り合わせに用いられる。
【0011】
第一粘着シートの厚みと第二粘着シートの厚みは同一でもよく異なっていてもよい。両面粘着剤付き偏光板の一方の粘着シートが偏光板と画像表示セルとの貼り合わせに用いられ、他方の粘着シートが偏光板と前面透明板またはタッチパネルとの貼り合わせに用いられる場合は、偏光板と画像表示セルとの貼り合わせに用いられる粘着シートの厚みが小さいことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の粘着剤付き偏光板は、偏光子の片面にのみ透明保護フィルムが設けられた片保護偏光板の偏光子上にウレタン層を介して高透湿の粘着シートが設けられている。ウレタン層は透湿層として作用し、偏光板内の水分の粘着シート端面からの散逸を促進するとともに、外部から侵入した水分の端面近傍への滞留を抑制する。そのため、画像表示装置が高温高湿環境に曝された場合の水分に起因する偏光子の劣化が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】粘着剤付き偏光板の一形態を表す模式的断面図である。
【
図2】両面粘着剤付き偏光板の一形態を表す模式的断面図である。
【
図3】画像表示装置の一実施形態を模式的に表す断面図である。
【
図4】両面粘着剤付き偏光板の一形態を表す模式的断面図である。
【
図5】画像表示装置の一実施形態を模式的に表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、偏光板10の一方の面に粘着シート21を備える片面粘着剤付き偏光板の構成例を示す断面図である。粘着剤付き偏光板1は、偏光板10の第一主面上に粘着シート21を備える。粘着シート21は、画像表示装置の形成において、偏光板と画像表示セルとの貼り合わせ、または偏光板と前面透明部材(タッチパネル、カバーガラス等)との貼り合わせ等に用いられる。
【0015】
偏光板10は、偏光子11の第二主面上に透明保護フィルム15を備える。偏光子11の第一主面上には透明保護フィルムが貼り合わせられておらず、偏光子11に接してウレタン層17が設けられている。粘着シート21は、ウレタン層17に接して設けられている。すなわち、粘着剤付き偏光板1において、偏光板10は、偏光子11の第二主面にのみ透明保護フィルム15を備える片保護偏光板であり、片保護偏光板10の第一主面に、ウレタン層17および粘着シート21を備える。
【0016】
図2は、両面粘着剤付き偏光板の構成例を示す断面図である。両面粘着剤付き偏光板2は、偏光板10の第一主面に第一粘着シート21を備え、偏光板10の第二主面に第二粘着シート22を備える。
図3は、両面粘着剤付き偏光板2を用いて作製した画像表示装置の構成例を示す断面図である。画像表示装置102では、第一粘着シート21を介して偏光板10と画像表示セル60とが貼り合わせられており、第二粘着シート22を介して偏光板10と前面透明部材70とが貼り合わせられている。
【0017】
図4は、両面粘着剤付き偏光板の構成例を示す断面図である。
図2の両面粘着剤付き偏光板2では、第一粘着シート21の厚みd
1が第二粘着シートの厚みd
2よりも小さいのに対して、
図4の両面粘着剤付き偏光板3では、第二粘着シート22の厚みd
2が第一粘着シートの厚みd
1よりも小さい。
図5は、両面粘着剤付き偏光板3を用いて作製した画像表示装置の構成例を示す断面図である。画像表示装置103では、第一粘着シート21を介して偏光板10と前面透明部材70とが貼り合わせられており、第二粘着シート22を介して偏光板10と画像表示セル60とが貼り合わせられている。
【0018】
[片保護偏光板]
片保護偏光板10では、偏光子11の片面のみに透明保護フィルム15が貼り合わせられている。片保護偏光板を用いることにより、画像表示装置を薄型化できる。
【0019】
<偏光子>
偏光子11は、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を含有するポリビニルアルコール系フィルムである。偏光子に適用されるポリビニルアルコール系フィルムの材料としては、ポリビニルアルコールまたはその誘導体が用いられる。ポリビニルアルコールの誘導体としては、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール等が挙げられる他、エチレン、プロピレン等のオレフィン、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸そのアルキルエステル、アクリルアミド等で変性したものが挙げられる。ポリビニルアルコールは、重合度が1000~10000程度、ケン化度が80~100モル%程度のものが一般に用いられる。
【0020】
ポリビニルアルコール系フィルムに、ヨウ素等による染色および延伸処理を施すことにより偏光子が得られる。偏光子の厚みは、例えば1~50μm程度である。画像表示装置の薄型化等を目的として、厚みが10μm以下の薄型の偏光子を用いることもできる。薄型の偏光子としては、例えば、特開昭51-069644号公報、特開2000-338329号公報、WO2010/100917号、特許第4691205号明細書、特許第4751481号明細書等に記載されている偏光子が挙げられる。このような薄型偏光子は、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂層と延伸用樹脂基材とを積層体の状態で延伸し、ヨウ素等により染色する方法により得られる。薄型化と高偏光度とを両立する観点から、薄型偏光子の厚みは、1~10μmが好ましく、2~8μmがより好ましく、3~7μmがさらに好ましい。
【0021】
<透明保護フィルム>
偏光子11の一方の面(第二主面)には、偏光子11を保護するための透明保護フィルム15が設けられる。透明保護フィルム15は、視野角拡大等を目的とする光学補償フィルムや、偏光子11とともに円偏光板を構成するための1/4波長板等の機能を有していてもよい。
【0022】
透明保護フィルム15を構成する材料としては、例えば、透明性、機械強度、および熱安定性に優れる樹脂材料が挙げられる。このような樹脂材料の具体例としては、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0023】
透明保護フィルム15の表面には、反射防止層、ハードコート層、スティッキング防止層、易接着層等が設けられていてもよい。例えば、画像表示装置の最表面に偏光板が配置される場合は、透明保護フィルム15の表面にハードコート層を設けることにより、表面に耐擦傷性を付与できる。一方、
図3や
図5に示す画像表示装置のように、偏光板10よりも視認側に前面透明部材70が配置される場合は、透明保護フィルム15には耐擦傷性は要求されない。フレキシブル性を高め、クラックの発生を抑制する観点から、透明保護フィルム15の表面にはハードコート層が設けられていないことが好ましい。
【0024】
透明保護フィルム15の厚みは、特に限定されないが、強度や取扱性等の作業性、薄膜性等の点からは、5~100μm程度が好ましく、10~80μmがより好ましい。偏光子11と透明保護フィルム15とは、適宜の接着剤層(不図示)を介して貼り合せられていることが好ましい。
【0025】
[ウレタン層]
本発明の粘着剤付き偏光板は、片保護偏光板10の透明保護フィルム15が設けられていない側の面(第一主面)に、偏光子11に接してウレタン層17を備え、ウレタン層17上に第一粘着シート21が付設されている。ウレタン層17は、水分の移動を促進する浸透膜として作用する。
【0026】
ウレタン層17の厚みは、透明保護フィルム15の厚みよりも小さいことが好ましい。薄層化の観点から、ウレタン層17の厚みは、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、2μm以下がさらに好ましく、1μm以下が特に好ましい。一方、浸透膜としての機能を持たせる観点から、ウレタン層17の厚みは、0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましい。
【0027】
ウレタン層17は、ウレタン結合を有する樹脂を含む。ウレタン結合は、典型的には、ポリオールとポリイソシアネートとの反応により形成される。ウレタン層17を構成する樹脂は、ウレタン結合に加えて、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、ウレア結合等を含んでいてもよい。ウレタン層17は、好ましくは、ウレタンプレポリマーの硬化物層である。
【0028】
ウレタンプレポリマーは、一般には、多官能イソシアネート(ポリイソシアネート)と多官能アルコール(ポリオール)との反応により形成される。ウレタン層17の形成に用いられるウレタンプレポリマーとしては、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーが好ましい。イソシアネート末端ウレタンプレポリマーは、ポリオールとの反応によりポリウレタンを形成可能である。また、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーのイソシアネートは、加水分解によりアミンが生成し、アミンとイソシアネートとの反応によりウレア結合を生じる。そのため、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーは、単独でも硬化物を生成し得る。
【0029】
ウレタンプレポリマーは、例えば、ポリイソシアネートとポリオールとを反応させることにより得られる。イソシアネート基が過剰になる当量比で反応させることにより、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーが得られる。
【0030】
ウレタンプレポリマーの形成に用いられるポリイソシアネートは、芳香族イソシアネートおよび脂環族イソシアネートのいずれでもよい。ウレタン層17の樹脂成分がリジッドな構造を有する場合に、水分の移動を促進する作用が高くなる傾向がある。そのため、ポリイソシアネートとして芳香族ポリイソシアネートを用いることが好ましい。
【0031】
芳香族系ポリイソシアネートとしては、フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソソアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンビス4-フェニルイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート等が挙げられる。これらの中でも、トリレンジイソシアネートおよびジフェニルメタンジイソシアネートが好ましく、トリレンジイソシアネートが特に好ましい。トリレンジイソシアネートは、2,4-トリレンジイソソアネート、および2,6-トリレンジイソシアネートのいずれでもよく、両者の混合物でもよい。
【0032】
ウレタンプレポリマーの形成に用いられるポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,8-デカンジオール、オクタデカンジオール、ポリアルキレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ヘキサントリオール、等が挙げられる。これらの中でも、硬化物に網目状のポリマーネットワークによるリジッドな構造を導入する観点からは、3官能以上のポリオールが好ましく、トリメチロールプロパンが特に好ましい。
【0033】
上記の中でも、ウレタンプレポリマーとしては、芳香族ポリイソシアネートと3官能以上のポリオールとの反応物からなるイソシアネート末端ウレタンプレポリマーが好ましく、中でも、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとの反応物からなるイソシアネート末端ウレタンプレポリマーが特に好ましい。
【0034】
イソシアネート末端ウレタンプレポリマーは、末端イソシアネート基に保護基が付加したものでもよい。イソシアネートの保護基としては、オキシムやラクタム等が挙げられる。これらの保護基は、加熱によりイソシアネート基から脱離するため、イソシアネート基が反応するようになる。
【0035】
ウレタンプレポリマーは、通常、有機溶媒の溶液として用いられる。特に、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーは、イソシアネート基の水との反応性が高いため、保管安定性の観点から有機溶媒の溶液とすることが好ましい。有機溶媒としては、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等が挙げられる。
【0036】
偏光子11の第一主面にウレタン層形成用組成物を塗布し、溶媒を除去することによりウレタン層17が形成される。ウレタン層形成用組成物は、ウレタンプレポリマーおよび溶媒を含む。ウレタン層形成用組成物は、ウレタンプレポリマーと反応性を有する化合物を含有していてもよい。例えば、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーとポリオールを用いることにより、プレポリマーのイソシアネート基とポリオールとが反応してポリウレタンが形成される。また、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーは、イソシアネート基の加水分解により生成したアミンがイソシアネートと反応してウレア結合を生成するため、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーを単独で用いた場合は、ポリウレタンポリウレアが生成する。
【0037】
ウレタン層形成用組成物を塗布後の乾燥温度は、例えば30~100℃程度であり、50~80℃程度が好ましい。ウレタン層形成用組成物を硬化する場合は、硬化反応促進の為に、30~100℃程度、好ましくは50~80℃で、0.5~24時間程度の加熱処理(エージング)を行ってもよい。
【0038】
[第一粘着シート]
ウレタン層17上に設けられる第一粘着シート21は、画像表示装置の形成において、偏光板と画像表示セルとの貼り合わせ、または偏光板と前面透明部材との貼り合わせに用いられる。例えば、
図3に示す画像表示装置102では、ウレタン層17に接して設けられた第一粘着シート21により、偏光板10と画像表示セル60とが貼り合わせられ、透明保護フィルム15上に設けられた第二粘着シート22により、偏光板10と前面透明部材70とが貼り合わせられている。
図5に示す画像表示装置103では、第一粘着シート21により偏光板10と前面透明部材70とが貼り合わせられ、第二粘着シート22により、偏光板10と画像表示セル60とが貼り合わせられている。
【0039】
ウレタン層17上の第一粘着シート21は、透明性が高いことが好ましい。第一粘着シート21のヘイズは1%以下が好ましく、全光線透過率は90%以上が好ましい。ヘイズおよび全光線透過率は、ヘイズメータを用いて、JIS K7136に準じて測定される。
【0040】
(第一粘着シートの透湿特性)
第一粘着シート21は、透湿度Xと厚みDの積XD(g/m・24h)が、1×10-2以上であることが好ましい。第一粘着シート21は、透湿度Xと厚みDの2乗との積XD2(g/24h)が、1×10-7以上であることが好ましい。ウレタン層17上の第一粘着シートのXDおよびXD2が大きいほど、画像表示装置が高温高湿環境に曝された場合の、偏光子の劣化が小さく、耐久性が向上する傾向がある。
【0041】
片保護偏光板10の一方の面に画像表示セル60が貼り合わせられ、片保護偏光板10の他方の面に前面透明部材70が貼り合わせられた画像表示装置が、高温環境に晒されると偏光板の単体透過率が低下する場合がある。偏光板の単体透過率の低下の要因の1つに、偏光子を構成するポリビニルアルコールのポリエン化が挙げられる(例えば特開2014-102353号公報参照)。高温環境では、粘着剤や透明保護フィルム中に残存する酸成分が水分によって遊離し、偏光子に移行しやすくなる。また、高湿環境下で加熱が行われると、粘着剤を構成するポリマーや残存モノマーが加水分解を受け、遊離酸が生成しやすくなる。ポリビニルアルコール系偏光子は、酸の存在によりポリビニルアルコールの脱水反応が触媒され、ポリエン構造(-(C=C)n-)が形成されやすい。ポリビニルアルコールがポリエン化すると、透過率が低下する。
【0042】
本発明においては、偏光子11上に透湿層としてのウレタン層17を設け、その上に透湿度Xと厚みDの2乗との積XD2の大きい第一粘着シート21を用いることにより、片保護偏光板への水分の滞留を抑制し、ポリビニルアルコールのポリエン化等に起因する偏光板の単体透過率の低下を抑制できる。XD2が大きい場合にポリエン化を抑制できる理由として、粘着シート20の端面から系外へ水分が拡散しやすく、粘着シート内での水分の滞留が抑制されることが考えられる。
【0043】
透湿度はシート状物の主面からの水分の散逸量であり、フィルムや粘着シート等のシート状物を介した系外への水分の散逸量の指標として透湿度が用いられている。偏光板上に粘着シートを介して画像表示セルや前面透明部材が貼り合せられた構成では、偏光子11上に設けられた透明保護フィルムや粘着シートの透湿度が大きい場合でも、前面透明部材70により水分の移動がブロックされるため、主面からは水分がほとんど散逸しない。
【0044】
透湿度Xと厚みDとは反比例の関係にあり、同一の材料からなるシート状物では、透湿度と厚みの積XDはほぼ一定である。XDは、材料中での水分の移動のしやすさ(移動速度)を表す指標であり、粘着シートのXDが大きいほど、粘着シート20内での水分の移動速度が大きい。粘着シート20の厚みDはシート端面の面積に比例し、Dが大きいほど粘着シートの端面に到達した水分が、端面から系外へ散逸しやすくなる。
【0045】
したがって、粘着シート内の水分の移動のしやすさに関係するXDと、端面から系外への水分の散逸しやすさに関係するDとの積XD2が大きいほど、面内中央部の水分が粘着シートの端面から系外へ散逸しやすく、粘着シートでの水分の滞留が抑制される傾向がある。
【0046】
前述のように、片保護偏光板10の偏光子11に接して設けられたウレタン層17は、透湿層として作用し、偏光子11の水分を偏光子外へ散逸させる作用を有する。ウレタン層17は厚みが小さいため、ウレタン層17の端面からの水分の散逸量はわずかであり、偏光子11からウレタン層17へ移動した水分は、主面を介して第一粘着シート21へ移動する。第一粘着シート21のXD2が大きい場合は、偏光子11からウレタン層17を介して第一粘着シート21に移動した水分が、第一粘着シート21の端面から外部に散逸されやすく、偏光子のポリエン化に起因する単体透過率の低下を抑制できる。
【0047】
偏光子11に接して設けられるウレタン層17は、偏光子11の水分を外部に散逸させるための浸透層として作用するとともに、高湿環境においては外部からの水分を偏光板に浸透させる作用も有している。
【0048】
片保護偏光板では、透明保護フィルム15が設けられていない第一主面側からの偏光子11への水分の移行量が大きい。前述のように、粘着シートの透湿度Xと厚みDの積XDは、材料中での水分の移動のしやすさ(移動速度)を表す指標であり、XDが大きいほど、粘着シート内での水分の移動速度が大きい。
【0049】
高湿環境下では、相対的に高湿度の外部環境から、第一粘着シート21の端面を介して水分が侵入する。粘着シートの端面から侵入した水分は、粘着シートの面内方向および厚み方向に移動する。XDが小さい場合は、粘着シートの面内での水分の移動速度が小さいため、粘着シートの端面近傍に水分が滞留しやすくなる。粘着シートの端面近傍に滞留した水分が偏光子11に移行すると、偏光子の端面近傍に退色が生じやすい。画像表示装置を高湿環境に暴露した際に生じる端面近傍の偏光子の退色は、主に短波長の可視光(青色の光)の透過率の上昇によるものである。このような退色は、ポリビニルアルコールとヨウ素イオン(I3
-およびI5
-)との錯体が、熱と水分により分解した際に生じやすい。特に、薄型偏光子では、ヨウ素等の二色性物質を高濃度でポリビニルアルコール系フィルムに含侵させて偏光度を高めているため、水分の影響によるヨウ素イオン錯体の分解が生じやすい。
【0050】
第一粘着シート21のXDが大きい場合は、第一粘着シート21の端面から侵入した水分の面内方向への移動速度が大きいため、端面近傍で偏光子11に移行する水分量が低減する。また、第一粘着シート21と偏光子11との間に設けられたウレタン層17が、粘着シート21から移行した水分を面内方向へ移動させる作用を有するため、偏光子11の端面近傍での水分の滞留が抑制される。そのため、偏光子11上のウレタン層17に接してXDの大きい第一粘着シート21が付設されることにより、水分の侵入に起因する端面近傍の偏光子の退色を抑制できる。
【0051】
上記のように、本発明の粘着剤付き偏光板は、片保護偏光板10の保護フィルムが設けられていない面(第一主面)に、透湿層としてのウレタン層17を介して所定の透湿特性を有する第一粘着シートを備える。そのため、偏光子11内の水分が第一粘着シート21の端面から外部に放出されやすく、偏光板の面内中央部での水分の滞留に起因する偏光子の劣化(PVAのポリエン化による単体透過率の低下等)を抑制できる。また、第一粘着シート21の端面から侵入した水分が面内に均一に拡散しやすく、端面近傍での水分の滞留が生じ難い、端面近傍での偏光子の劣化(退色による偏光度の低下等)を抑制できる。
【0052】
水分に起因する偏光子の劣化を抑制するために、第一粘着シートのXD2(g/24h)は、3×10-7以上がより好ましく、5×10-7以上がさらに好ましい。同様の観点から、第一粘着シートのXD(g/m・24h)は、2×10-2以上がより好ましく、3×10-2以上がさらに好ましい。
【0053】
一方、第一粘着シート21のXDおよびXD2が過度に大きいと、高温高湿環境において、第一粘着シート21の端面からの偏光子11への水分の侵入量が大きくなり、耐久性が低下する場合がある。そのため、第一粘着シートのXD2(g/24h)は、3×10-5以下が好ましく、2×10-5以下がより好ましく、1.5×10-5以下がさらに好ましい。第一粘着シートのXD(g/m・24h)は、3×10-1以下が好ましく、2×10-1以下がより好ましく、1.5×10-1以下がさらに好ましい。
【0054】
XDおよびXD2を上記範囲内とするために、第一粘着シートの透湿度X(g/m2・24h)は、100~10000が好ましく、200~8000がより好ましく、300~6000がさらに好ましく、400~5000が特に好ましい。透湿度は、JIS Z0208の透湿度試験(カップ法)に準じて測定される値であり、40℃、92%の相対湿度で、面積1m2の試料を24時間で透過する水蒸気の重量である。
【0055】
(粘着シートの組成)
第一粘着シート21を構成する粘着剤としては、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルエーテル、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィン、エポキシ系、フッ素系、天然ゴム、合成ゴム等のゴム系等のポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。中でも、光学的透明性に優れ、かつ透湿度が高いことから、ベースポリマーとしてアクリル系ポリマーを含有するアクリル系粘着剤が好ましい。
【0056】
第一粘着シート21中のアクリル系ベースポリマーの含有量は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上である。アクリル系ベースポリマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルのモノマーユニットを主骨格とするものである。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。ベースポリマーが共重合体である場合、構成モノマーの並びはランダムであっても、ブロックであってもかまわない。
【0057】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が1~20である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好適に用いられる。例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸イソトリドデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸イソテトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸イソオクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸アラルキル等が挙げられる。
【0058】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、ベースポリマーを構成するモノマー成分全量に対して40重量%以上であることが好ましく、より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは60重量%以上である。
【0059】
アクリル系ベースポリマーは、上記の(メタ)アクリル酸アルキルエステルに加えて、窒素含有モノマーユニットやヒドロキシ基含有モノマー等のモノマーユニットを含んでいてもよい。窒素原子やヒドロキシ基を有する極性モノマーユニットを含めることにより、粘着剤の接着性を調整できる。
【0060】
窒素含有モノマーとしては、N-ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、(メタ)アクリロイルモルホリン、N-ビニルカルボン酸アミド類、N-ビニルカプロラクタム等が挙げられる。
【0061】
ヒドロキシ基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリルや(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)-メチルアクリレート等のアルコール性ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
【0062】
第一粘着シートに含まれる酸成分が偏光子に移行すると、ポリビニルアルコールの加水分解やポリエン化を促進して、偏光子を劣化させる原因となり得る。そのため、第一粘着シート21は、(メタ)アクリル酸等の有機酸モノマー(遊離の有機酸)の含有量が低いことが好ましい。アクリル系粘着シート中の(メタ)アクリル酸モノマーの含有量は、1000ppm以下が好ましく、500ppm以下がより好ましく、100ppm以下がさらに好ましい。粘着シートの有機酸モノマー含有量は、粘着シートを純水中に浸漬し、100℃で45分加温して、水中に抽出された酸モノマーをイオンクロマトグラフで定量することにより求められる。
【0063】
熱硬化型や光硬化型のポリマーにおいて、未反応の残留モノマーの存在は不可避である。そのため、粘着シート中の酸モノマー含有量を低減させるためには、ベースポリマーを構成するモノマー成分における(メタ)アクリル酸等の有機酸モノマー成分の量を少なくすることが好ましい。ベースポリマーの構成モノマー成分全量に対する、有機酸(カルボキシ基含有モノマー)成分の含有量は、5重量%以下が好ましく、3重量%以下がより好ましく、1重量%以下がさらに好ましく、0.5重量%以下が特に好ましい。
【0064】
アクリル系ポリマーは、上記モノマー成分を公知の重合方法により重合して調製することができる。アクリル系ポリマーの重合方法としては、例えば、溶液重合法、乳化重合法、塊状重合法や活性エネルギー線照射による重合(活性エネルギー線重合法)等が挙げられる。透明性、耐水性、コスト等の点で、溶液重合法、または活性エネルギー線重合法が好ましい。
【0065】
ベースポリマーの調製に際しては、重合反応の種類に応じて、光重合開始剤や熱重合開始剤等の重合開始剤を用いてもよい。重合開始剤は単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。ベースポリマーの分子量は適宜に調整され得る。粘着シートに適度の粘弾性と接着性を持たせるために、ベースポリマーのポリスチレン換算の重量平均分子量は、5万~200万が好ましく、10万~150万がさらに好ましい。
【0066】
上記ベースポリマーは、必要に応じて架橋構造を有していてもよい。架橋構造の形成は、例えば、ベースポリマーの重合後に、架橋剤を添加することにより行われる。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、金属キレート系架橋剤等の一般に用いられているものを使用できる。架橋剤の含有量は、ベースポリマー100重量部に対して、通常、10重量部以下であり、好ましくは5重量部以下、より好ましくは3重量部以下である。
【0067】
粘着剤組成物中に架橋剤を含有する場合、被着体との貼り合わせ前に、加熱による架橋処理が行われ、架橋構造が形成されることが好ましい。架橋処理における加熱温度や加熱時間は、使用する架橋剤の種類に応じて適宜設定されるが、通常、20℃~160℃の範囲で、1分から7日程度の加熱により架橋が行われる。
【0068】
粘着剤組成物中には、上記のアクリル系ポリマー以外に、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルエーテル、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィン、エポキシ系、フッ素系、天然ゴム、合成ゴム等のゴム系等のポリマーを含有してもよい
【0069】
粘着剤組成物中には、接着力の調整を目的として、シランカップリング剤を添加することもできる。シランカップリング剤は、1種を単独で、あるいは2種以上を併用して用いることができる。粘着剤組成物がシランカップリング剤を含有する場合、その含有量は、粘着剤のポリマー100重量部に対し通常0.01~5.0重量部程度であり、0.03~2.0重量部程度であることが好ましい。
【0070】
粘着剤組成物には、必要に応じて粘着付与剤を添加してもよい。粘着付与剤としては、例えば、テルペン系粘着付与剤、スチレン系粘着付与剤、フェノール系粘着付与剤、ロジン系粘着付与剤、エポキシ系粘着付与剤、ジシクロペンタジエン系粘着付与剤、ポリアミド系粘着付与剤、ケトン系粘着付与剤、エラストマー系粘着付与剤等を用いることができる。
【0071】
第一粘着シート21は、紫外線吸収剤を含有していてもよい。特に、
図5に示す画像表示装置103のように、片保護偏光板10の第一主面に、第一粘着シート21を介して前面透明部材70が貼り合わせられる場合は、第一粘着シート21が紫外線吸収剤を含有することが好ましい。一般に、偏光子の視認側表面に設けられる透明保護フィルムは、紫外線による偏光子の劣化を防止する目的で紫外線吸収剤を含んでいる。偏光子11の視認側に透明保護フィルムを有していない片保護偏光板10は、第一粘着シート21の付設面に透明保護フィルムが設けられていないため、第一粘着シート21に紫外線吸収性を持たせて、紫外線に起因する偏光子11の劣化を防止することが好ましい。
【0072】
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、シュウ酸アニリド系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤等が挙げられる。紫外線吸収剤の含有量は、粘着剤のポリマー100重量部に対して、0.01~15重量部が好ましく、0.1~10重量部がより好ましい。第一粘着シート21が前面透明部材70との貼り合わせに用いられる場合、第一粘着シート21は、波長380nmの光透過率が15%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。
【0073】
上記例示の各成分の他、粘着シートを構成する粘着剤には、可塑剤、軟化剤、劣化防止剤、充填剤、着色剤、酸化防止剤、界面活性剤、帯電防止剤等の添加剤を、粘着剤の特性を損なわない範囲で用いることができる。
【0074】
第一粘着シート21を構成する粘着剤は、光硬化型または熱硬化型の粘着剤でもよい。例えば、
図5に示す画像表示装置103を形成する際に、偏光板10と前面透明部材70との貼り合せに、硬化前の第一粘着シート21を用いれば、粘着剤の流動性が高く、優れた柔軟性を有するため、印刷段差付近での気泡の混入等の不具合を抑制できる。貼り合わせ後に粘着剤の硬化を行うことにより、接着信頼性が高められる。硬化のタイミングの制御や、確実性等の観点からは、光硬化性の粘着剤が好ましい。
【0075】
光硬化性の粘着剤は、光硬化性成分を含有する。光硬化性成分としては、炭素‐炭素二重結合(C=C結合)を有するラジカル重合性化合物(エチレン性不飽和化合物)が好ましく用いられる。ラジカル重合性化合物は、モノマーまたはオリゴマーとして粘着剤組成物中に存在してもよく、ベースポリマーのヒドロキシ基等の官能基と結合していてもよい。硬化性の粘着剤は、重合開始剤(光重合開始剤や熱重合開始剤)を含むものが好ましい。
【0076】
粘着剤組成物中にラジカル重合性化合物がモノマーまたはオリゴマーとして存在する場合、1分子中に2以上の重合性官能基を有する多官能重合性化合物が好ましく用いられる。多官能重合性化合物としては、1分子中に2個以上のC=C結合を有する化合物や、1個のC=C結合と、エポキシ、アジリジン、オキサゾリン、ヒドラジン、メチロール等の重合性官能基とを有する化合物等が挙げられる。中でも、多官能アクリレートのように、1分子中に2個以上のC=C結合を有する多官能重合性化合物が好ましい。
【0077】
(粘着シートの形成)
粘着シートの形成方法としては、各種方法が用いられる。具体的には、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーター等による押出しコート法等の方法が挙げられる。
【0078】
粘着剤組成物のベースポリマーが溶液重合ポリマーである場合、塗布後に溶剤の乾燥を行うことが好ましい。乾燥方法としては、目的に応じて、適宜、適切な方法が採用され得る。加熱乾燥温度は、好ましくは40℃~200℃であり、さらに好ましくは、50℃~180℃であり、特に好ましくは70℃~170℃である。乾燥時間は、適宜、適切な時間が採用され得る。乾燥時間は、好ましくは5秒~20分、さらに好ましくは5秒~15分、特に好ましくは10秒~10分である。
【0079】
粘着剤組成物が架橋剤を含有する場合、基材上への塗布後に、加熱による架橋が行われてもよい。加熱温度や加熱時間は、使用する架橋剤の種類によって適宜設定されるが、通常、20℃~160℃の範囲で、1分から7日程度の加熱により架橋が行われる。塗布後の粘着剤を乾燥させるための加熱が、架橋のための加熱を兼ねていてもよい。
【0080】
図1に示すように、粘着剤付き偏光板1の第一粘着シート21上には、保護シート41が剥離可能に貼着されることが好ましい。保護シートは、粘着剤が被着体との貼り合わせに用いられるまでの間、粘着剤の露出面を保護する目的で用いられる。粘着剤シートの形成(塗布)時に用いられた基材を、そのまま前面側粘着シート上の保護シート41として用いてもよい。
【0081】
保護シート41の構成材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルム等のプラスチックフィルムが好ましく用いられる。保護シートの厚みは、通常5~200μm、好ましくは10~150μm程度である。保護シートは、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉等による離型および防汚処理や、塗布型、練り込み型、蒸着型等の帯電防止処理もすることもできる。特に、保護シートの表面にシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理等の剥離処理を適宜おこなうことにより、粘着剤からの剥離性をより高めることができる。
【0082】
第一粘着シート21の厚みは特に限定されない。XDおよびXD
2を上記範囲とするために、第一粘着シート21の厚みは、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましい。
図3に示すように、第一粘着シート21が、偏光板10と画像表示セル60との貼り合わせに用いられる場合は、画像表示装置の薄型化の観点から、第一粘着シート21の厚みは30μm以下が好ましく、25μm以下がより好ましい。一方、
図5に示すように、第一粘着シート21が、加飾印刷部76等の段差部分を有する場合は、段差吸収性を持たせるために、第一粘着シート21の厚みは30~500μmが好ましく、50~300μmがより好ましい。
【0083】
[第二粘着シート]
片保護偏光板10の第一主面に、ウレタン層17を介して第一粘着シート21を設け、第二主面(透明保護フィルム15付設面)に第二粘着シート22を設けることにより、両面粘着剤付き偏光板が得られる。両面粘着剤付き偏光板では、
図2および
図4に示すように、第一粘着シート21上に第一保護シート41が剥離可能に貼着され、第二粘着シート22上に第二保護シート42が剥離可能に貼着されていてもよい。
【0084】
偏光板10の両面に予め粘着シートが付設された両面粘着剤付き偏光板を用いれば、画像表示セルの表面に偏光板を貼り合わせた後、偏光板上に前面透明部材を貼り合わせる際に、偏光板上に別途の粘着シートを付設する工程を省略でき、画像表示装置の製造工程を簡略化できる。
【0085】
片保護偏光板は、偏光子の両面に透明保護フィルムを備える偏光板に比して厚みが小さく強度が低い。そのため、リワーク作業(粘着シートを介して偏光板を画像表示セルに貼り合わせた後に不良品等から偏光板を剥離する作業)の際に、片保護偏光板が裂けやすく、特に、薄型偏光子を用いた片保護偏光板はリワーク性が低い。片保護偏光板10の両面に粘着シートを備える両面粘着剤付き偏光板は、一方の粘着シートを介して画像表示セルに貼り合わせた後のリワーク作業において、他方の粘着シートが片保護偏光板の裂けを防止する作用を有する。そのため、片保護偏光板の両面に粘着シートを設けることにより、薄型偏光子を用いた場合でもリワークの作業性を向上できる。
【0086】
第二粘着シート22は、画像表示装置の形成において、偏光板と画像表示セルとの貼り合わせ、または偏光板と前面透明部材との貼り合わせに用いられる。第一粘着シートが偏光板10と画像表示セル60との貼り合わせに用いられる場合は、第二粘着シート22が偏光板10と前面透明部材70との貼り合わせに用いられる。第一粘着シートが偏光板10と前面透明部材70との貼り合わせに用いられる場合は、第二粘着シート22が偏光板10と画像表示セル60との貼り合わせに用いられる。
【0087】
第二粘着シート22は透明性が高いことが好ましい。第二粘着シート22のヘイズは1%以下が好ましく、全光線透過率は90%以上が好ましい。第二粘着シート22を構成する粘着剤は特に限定されず、第一粘着シート21と同様に各種のポリマーを用いることができる。中でも、光学的透明性に優れることから、ベースポリマーとしてアクリル系ポリマーを含有するアクリル系粘着剤が好ましい。
【0088】
片保護偏光板10では、透明保護フィルム15が設けられていない面からの偏光子への水分の侵入量および偏光子からの水分の散逸量が相対的に大きい。透明保護フィルム15上に設けられる第二粘着シート22の透湿度は、水分に起因する偏光子の劣化には大きな影響を与えないため、第二粘着シートの透湿度は特に限定されない。
【0089】
第二粘着シートを構成する粘着剤の組成は、被着体の種類等に応じて適宜に設定すればよい。
図3に示すように、片保護偏光板10の第一主面に、第二粘着シート22を介して前面透明部材70が貼り合わせられる場合は、第二粘着シート22が紫外線吸収剤を含有することが好ましい。
【0090】
第二粘着シート22の厚みd
2は特に限定されず、第一粘着シート21の厚みd
1と同等でもよく異なっていてもよい。
図3に示すように、第二粘着シート22が、加飾印刷部76等の段差部分を有する場合は、段差吸収性を持たせるために、第二粘着シート22の厚みは30~500μmが好ましく、50~300μmがより好ましい。一方、
図5に示すように、第二粘着シート22が、偏光板10と画像表示セルとの貼り合わせに用いられる場合は、画像表示装置の薄型化の観点から、第二粘着シート22の厚みは30μm以下が好ましく、25μm以下がより好ましい。
【0091】
両面粘着剤付き偏光板は、第一粘着シート21と第二粘着シート22のうち、画像表示セル60との貼り合わせに用いられる粘着シート(セル側粘着シート)の厚みが、前面透明部材70との貼り合わせに用いられる粘着シート(視認側粘着シート)の厚みよりも小さいことが好ましい。セル側の粘着シートの厚みを小さくすることにより画像表示装置を薄型化でき、視認側粘着シートの厚みを相対的に大きくすることにより段差吸収性を持たせることができる。
【0092】
[画像表示装置]
本発明の粘着剤付き偏光板は、画像表示装置の形成に用いられる。例えば、
図1に示す片面粘着剤付き偏光板1を、第一粘着シート21を介して画像表示セルと貼り合わせることにより画像表示装置を形成できる。また、画像表示セル上に片面粘着剤付き偏光板1を貼り合わせた後、別の粘着シートを介して、カバーガラス等を貼り合わせてもよい。
【0093】
画像表示パネルの視認側表面にタッチパネルや前面透明板等の前面透明部材70を備える画像表示装置の形成には、
図2および
図4に示す両面粘着剤付き偏光板を用いることが好ましい。前述のように、両面粘着剤付き偏光板を用いれば、画像表示装置の製造工程を簡略化できるとともに、リワークの作業性が向上する。
【0094】
前面透明部材70としては、前面透明板(ウインドウ層)やタッチパネル等が挙げられる。前面透明板としては、適宜の機械強度および厚みを有する透明板が用いられる。このような透明板としては、例えばアクリル系樹脂やポリカーボネート系樹脂のような透明樹脂板、あるいはガラス板等が用いられる。タッチパネルとしては、抵抗膜方式、静電容量方式、光学方式、超音波方式等、任意の方式のタッチパネルが用いられる。
【0095】
画像表示セル60と偏光板10の貼り合わせ方法、および前面透明部材70と偏光板10との貼り合わせ方法は特に限定されず、粘着シート21,22の表面に貼着された保護シート41,42を剥離した後、各種公知の方法により貼り合わせることができる。
【0096】
貼り合わせの作業性や、偏光板の軸精度を高める観点からは、セル側粘着シートの表面から保護シートを剥離後、偏光板10と画像表示セル60とを貼り合わせた後、視認側粘着シートの表面から保護シートを剥離して、偏光板10と前面透明部材70とを貼り合わせる方法が好ましい。
【0097】
前面透明部材70が、透明板71上に加飾印刷部76等の段差部分を有している場合は、粘着シートと前面透明部材70との界面や、段差部分近傍の気泡を除去するために脱泡が行われることが好ましい。脱泡方法としては、加熱、加圧、減圧等の適宜の方法が採用され得る。例えば、減圧・加熱下で気泡の混入を抑制しながら貼り合わせが行われ、その後、ディレイバブルの抑制等を目的として、オートクレーブ処理等により、加熱と同時に加圧が行われることが好ましい。
【0098】
視認側粘着シートが、光硬化型または熱硬化型の粘着剤を含む場合、偏光板10と前面透明部材70との貼り合せ後に、硬化が行われることが好ましい。粘着剤を硬化することにより、偏光板10と前面透明部材70との接着の信頼性を高めることができる。粘着剤の硬化方法は特に限定されない。光硬化が行われる場合は、前面透明部材70を通して紫外線等の活性光線を照射する方法が好ましい。
【実施例0099】
以下に実施例および比較例を挙げて、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0100】
[物性の評価方法]
<透湿度>
JIS Z0208の透湿度試験(カップ法)に準拠して、温度40℃、相対湿度92%の恒温恒湿槽中で24時間の透湿試験を行い、透湿度を算出した。
【0101】
<紫外線透過率>
可視紫外分光光度計により透過率スペクトルを測定し、波長380nmにおける透過率を読み取った。
【0102】
[粘着シートの作製]
<粘着シートA>
(粘着剤組成物の調製)
反応容器内に、モノマー成分として、ブチルアクリレート(BA)80重量部、アクリル酸(AA)0.2重量部、フェノキシエチルアクリレート(PEA)16重量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)0.8重量部、およびN-ビニルピロリドン(NVP)3重量部、ならびに熱重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2重量部を、酢酸エチル233重量部とともに投入し、23℃の窒素雰囲気下で1時間撹拌し、窒素置換を行った。その後、60℃で5時間反応させ、重量平均分子量(Mw)が110万のアクリルベースポリマーの溶液を得た。このアクリルベースポリマー溶液に、イソシアネート系架橋剤としてキシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(三井化学製「タケネートD110N」)0.3重量部、およびシランカップリング剤として3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学製「KBM403」)0.1重量部を添加した後、均一に混合して粘着剤組成物溶液を調製した。
【0103】
(粘着シートの作製)
セパレータ(片面がシリコーンで剥離処理されたポリエステルフィルム)の剥離処理面に、上記の粘着剤組成物を、乾燥後の厚みが20μmとなるように塗布し、100℃で3分間乾燥させて溶媒を除去して、粘着シートを得た。その後、50℃で48時間加熱して、架橋処理を行い、粘着シートAを得た。
【0104】
<粘着シートB>
モノマー成分を、BA:95重量部、およびAA:5重量部に変更したこと以外は粘着シートAと同様に粘着剤組成物溶液を調製し、セパレータ上への塗布、乾燥および架橋を行い、厚み20μmの粘着シートBを得た。
【0105】
<粘着シートC>
モノマー成分を、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA):22重量部、ラウリルアクリレート(LA):62重量部、4HBA:8重量部、およびNVP:10重量部に変更したこと以外は粘着シートAと同様に粘着剤組成物溶液を調製し、セパレータ上への塗布、乾燥および架橋を行い、厚み20μmの粘着シートCを得た。
【0106】
<粘着シートD>
重量平均分子量約75万のポリイソブチレン(PIB;BASF製「OPPANOL B80)100重量部を、300重量部のトルエンと混合して、粘着剤組成物を調製した。セパレータの剥離処理面に、上記の粘着剤組成物を、乾燥後の厚みが20μmとなるように塗布し、130℃で2分間加熱して溶媒を除去して粘着シートCを得た。
【0107】
<粘着シートK>
(粘着剤組成物の調製)
反応容器内に、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)67重量部、NVP15重量部、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)1重量部、および光重合開始剤として1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(BASF製「イルガキュア184」):0.1重量部を投入し、窒素雰囲気下で紫外線を照射して、重合率10%のプレポリマー組成物を得た。このプレポリマー組成物100重量部に、光重合開始剤として2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(BASF製「イルガキュア651」)0.2重量部、多官能モノマーとしてトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)0.2重量部、およびシランカップリング剤(信越化学製「KBM403」)0.3重量部を添加した後、均一に混合して粘着剤組成物を調製した。
【0108】
(粘着シートの作製)
セパレータの剥離処理面に、上記の粘着剤組成物を、100μmの厚みで塗布し、塗布層上に別のセパレータの剥離処理面を貼り合わせた。その後、ランプ直下の照射面における照射強度が5mW/cm2になるように位置調節したブラックライトにより、積算光量が3000mJ/cm2となるまでUV照射を行って、重合を進行させ、粘着シートKを得た。
【0109】
<粘着シートL>
プレポリマー組成物100重量部に、光重合開始剤およびシランカップリング剤に加えて、紫外線吸収剤として、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン(BASF製「チノソーブS」)0.7重量部を添加したこと以外は、粘着シートKと同様に粘着剤組成物溶液を調製し、セパレータ上への塗布および重合を行い、厚み100μmの粘着シートLを得た。
【0110】
上記の粘着シートA,B,C,D,K,Lの粘着剤の組成、および(厚みD、透湿度X、および波長380nmにおける透過率)を表1に示す。
【0111】
【0112】
[薄型偏光子の作製]
厚み100μmの非晶質ポリエステルフィルム(ポリエチレン-テレフタレート/イソフタレート;ガラス転移温度75℃)の片面にコロナ処理を施し、コロナ処理面に、ポリビニルアルコール(重合度4200、ケン化度99.2モル%)およびアセトアセチル変性ポリビニルアルコール(日本合成化学工業 「ゴーセファイマーZ200」;重合度1200、アセトアセチル変性度4.6%、ケン化度99.0モル%以上)を9:1の重量比で含む水溶液を25℃で塗布および乾燥して、非晶質ポリエステルフィルム基材上に厚み11μmのPVA系樹脂層が設けられた積層体を作製した。
【0113】
この積層体を、120℃のオーブン内で長手方向に2.0倍に自由端一軸延伸した。延伸後の積層体を、30℃の4%ホウ酸水溶液に30秒間浸漬した後、30℃の染色液(0.2%ヨウ素、1.0%ヨウ化カリウム水溶液)に60秒間浸漬した。次いで、30℃の架橋液(ヨウ化カリウムを3%、ホウ酸3%水溶液)に30秒間浸漬して架橋処理を行った。その後、積層体を、70℃のホウ酸4%、ヨウ化カリウム5%水溶液に浸漬しながら、総延伸倍率が5.5倍となるように長手方向に自由端一軸延伸した。その後、積層体を30℃の洗浄液(4%ヨウ化カリウム水溶液)に浸漬して、非晶質ポリエステルフィルム基材上に厚み5μmのPVA系偏光子が設けられた積層体を得た。
【0114】
[片保護偏光板の作製]
<偏光板A>
N-ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)40重量部およびアクリロイルモルホリン(ACMO)60重量部と、光重合開始剤(BASF製「イルガキュア819」)3重量部とを混合し、紫外線硬化型接着剤を調製した。この接着剤を、上記の積層体の偏光子の表面に約1μmの厚みで塗布し、その上に、透明保護フィルムとしてラクトン環構造を有するアクリル系樹脂フィルム(厚み20μm、透湿度153g/m2・24h)を貼り合わせ、積算照射量1000/mJ/cm2の紫外線を照射して接着剤を硬化させた。その後、非晶質ポリエステルフィルム基材を剥離し、厚み約5μmの薄型偏光子の片面に接着剤を介してアクリル系透明保護フィルムが貼り合わせられた片保護偏光板Aを得た。
【0115】
<偏光板B>
透明保護フィルムとして、アクリル系樹脂フィルムに代えて環状ポリオレフィンフィルム(厚み20μm、透湿度20g/m2・24h)を偏光子に貼り合わせたこと以外は、上記と同様にして、片保護偏光板Bを得た。
【0116】
<偏光板C>
透明保護フィルムとして、アクリル系樹脂フィルムに代えてトリアセチルセルロースフィルム(厚み25μm、透湿度:600g/m2・24h)を偏光子に貼り合わせたこと以外は、上記と同様にして、片保護偏光板Cを得た。
【0117】
[粘着剤付き偏光板の作製]
<実施例1>
片保護偏光板Aの偏光子上に、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート3量体付加物からなるイソシアネート末端ウレタンプレポリマーの75%酢酸エチル溶液(東ソー製「コロネートL」)をバーコーターにより塗布した後、60℃で12時間加熱して、厚み0.3μmのウレタン樹脂層を形成した。ロールラミネータにより、セル側粘着シートとして粘着シートAをウレタン樹脂層上に貼り合わせ、視認側粘着シートとして粘着シートKを透明保護フィルム上に貼り合わせ、両面粘着剤付き偏光板を作製した。
【0118】
<実施例2,3>
片保護偏光板Aに代えて、実施例2では片保護偏光板Bを用い、実施例3では片保護偏光板Cを用いた。それ以外は実施例1と同様にして両面粘着剤付き偏光板を作製した。
【0119】
<実施例4,5>
偏光子上のウレタン樹脂層の厚みを、実施例4では1μm、実施例5では3μmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして両面粘着剤付き偏光板を作製した。
【0120】
<実施例6>
ウレタン樹脂層上に、セル側粘着シートとして、粘着シートAに代えて粘着シートBを貼り合わせたこと以外は実施例1と同様にして実施例1と同様にして両面粘着剤付き偏光板を作製した。
【0121】
<実施例7>
ウレタン樹脂層上に、セル側粘着シートとして、粘着シートAに代えて粘着シートCを貼り合わせたこと以外は実施例1と同様にして両面粘着剤付き偏光板を作製した。
【0122】
<実施例8>
実施例1と同様にして片保護偏光板Aの偏光子上に厚み0.3μmのウレタン樹脂層を形成した後、ロールラミネータを用いて、視認側粘着シートとして粘着シートLをウレタン樹脂層上に貼り合わせ、セル側粘着シートとして粘着シートAを透明保護フィルム上に貼り合わせ、両面粘着剤付き偏光板を作製した。
【0123】
<比較例1>
片保護偏光板Aに、ウレタン樹脂層を形成せずに、ロールラミネータを用いて、粘着シートAを偏光子上に貼り合わせ、粘着シートKを透明保護フィルム上に貼り合わせ、両面粘着剤付き偏光板を作製した。
【0124】
<比較例2>
偏光子上のウレタン樹脂層の厚みを、約0.05μm変更したこと以外は、実施例1と同様にして両面粘着剤付き偏光板を作製した。
【0125】
<比較例3>
ウレタン樹脂層上に、粘着シートAに代えて粘着シートCを貼り合わせたこと以外は実施例1と同様にして実施例1と同様にして両面粘着剤付き偏光板を作製した。
【0126】
<比較例4>
片保護偏光板Aの偏光子上に、ポリビニルアルコール(重合度2400、ケン化度99%以上)水溶液をバーコーターにより塗布した後、90℃で5分間加熱して、厚み0.5μmのPVA樹脂層を形成した。ロールラミネータを用いて、粘着シートAをPVA樹脂層上に貼り合わせ、粘着シートKを透明保護フィルム上に貼り合わせ、両面粘着剤付き偏光板を作製した。
【0127】
[加熱加湿耐久性の評価]
両面粘着剤付き偏光板を200mm×140mmのサイズにカットし、セル側粘着シート(粘着シートA,BまたはC)上のセパレータを剥離した後、ハンドローラを用いて、粘着シートの露出面にガラス板(280mm×180mm×0.7mm)を貼り合わせた。その後、視認側粘着シート(粘着シートKまたはL)上のセパレータを剥離し、粘着シートの露出面にガラス板(280mm×180mm×0.7mm)を載置して、真空圧着装置で圧着して貼り合せを行った(装置内圧力:30Pa、貼り合わせ面圧:0.3MPa、貼り合わせ時間:5秒)。その後、オートクレーブ処理(温度:50℃、圧力:0.5MPa、時間:15分)を行った。このようにして、片保護偏光板の両面に、粘着シートを介してガラス板が貼り合せられた評価用パネルを得た。
【0128】
(端部の色抜け)
評価用パネルを、60℃、相対湿度95%の恒温恒湿槽に投入し、240時間静置した後に取り出した。評価用パネルの偏光板と標準偏光板(偏光度:99.995%)とをクロスニコルに配置して、評価用パネルの偏光板のコーナー付近を光学顕微鏡(Olympus製「MX61L」、倍率10倍)で観察し、色抜けが生じている領域の幅(偏光板の端部からの距離)を測定した。
【0129】
(中央部光学特性)
評価用パネルの面内中心部の単体透過率および直交透過率を測定した。透過率は、JlS Z8701の2度視野(C光源)により視感度補正を行ったY値である。直交透過率は、評価用パネルの偏光板と、標準偏光板とをクロスニコルに配置して測定した。単体透過率および直交透過率を測定後の評価用パネルを、60℃、相対湿度95%の恒温恒湿槽に投入し、500時間静置した後に取り出した。評価用パネルの直交透過率Pおよび単体透過率Tを測定し、恒温恒湿槽投入前の直交透過率および単体透過率からの変化(ΔTおよびΔPを算出した。
【0130】
[評価結果]
上記各実施例および比較例の両面粘着剤付き偏光板の構成、ならびに加熱加湿耐久試験後の評価結果を表2に示す。
【0131】
【0132】
偏光子保護フィルムが設けられていない面に、厚み0.3μmのウレタンプレポリマーの硬化物層が形成された片保護偏光板を用いた実施例1では、加熱・加湿耐久試験後の偏光板端部の色抜けが少なく、偏光板中央部の光学特性の変化が小さく、良好な耐久性を示した。片保護偏光板の偏光子保護フィルムとして環状ポリオレフィンフィルムを用いた実施例2、およびセルロース系フィルムを用いた実施例3においても、実施例1と同様に良好な耐久性を示した。偏光子上のウレタン層の厚みを大きくした実施例4および実施例5も、実施例1と同様の良好な耐久性を示した。
【0133】
一方、偏光子上にウレタン層を介さずにセル側粘着シートを設けた比較例1では、加熱・加湿耐久試験後の偏光板端部の色抜けが大幅に増加していた。また、偏光板中央部では、単体透過率が上昇するとともに偏光度が低下しており、水分に起因する偏光子の劣化がみられた。
【0134】
偏光子上に厚み0.05μmのウレタン層を設けた比較例2では、比較例1よりは偏光板端部の色抜けおよび偏光板中央部の光学特性の変化が抑制されていたが、実施例に比べると顕著な劣化がみられた。ウレタン層に代えて偏光子上にPVA系の樹脂層を設けた比較例3では、比較例1と同様に加熱・加湿耐久試験後に偏光板の劣化がみられた。
【0135】
これらの結果から、偏光子上に所定厚みのウレタン層を介して粘着シートを設けることにより、片保護偏光板の耐久性を大幅に向上できることがわかる。
【0136】
一方、ウレタン層上にセル側粘着シートとしてゴム系の粘着シートDを配置した比較例4では、加熱・加湿耐久試験後の偏光板端部の色抜けは抑制されていたものの、偏光板中央部の単体透過率の変化が3%を超えていた。これは、粘着シートDが低透湿であり、ウレタン層を設けた場合でも粘着シートからの水分が散逸し難く、水分の滞留に起因して偏光子が劣化したためと考えられる。
【0137】
ウレタン層上にセル側粘着シートとして粘着シートBを用いた実施例6では、他の実施例に比べて偏光板端部の色抜け量が大きくなっていた。粘着シートBと粘着シートAの透湿性は略同等であるが、粘着シートBでは、ベースポリマーを構成するモノマー成分中の有機酸(アクリル酸)の含有量が大きく、加熱・加湿環境下で残存酸モノマーが偏光子に移行しやすいことに関連していると考えられる。
【0138】
ウレタン層上の粘着シートとして、粘着シートAに代えて粘着シートCを設けた実施例7では、実施例1~5と同様に良好な耐久性を示した。また、片保護偏光板の偏光子保護フィルム付設面をセル側に配置し、ウレタン層上に視認側粘着シートとして粘着シートLを配置した実施例8も、他の実施例と同様に良好な耐久性を示した。
【0139】
以上の結果から、片保護偏光板の偏光子保護フィルムを設けてない面に、所定の厚みを有するウレタン層を形成し、ウレタン層上に透湿性の高い粘着シートを設けることにより、偏光板の厚みを大きくすることなく、加熱・加湿環境での耐久性を向上可能であることがわかる。