(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189845
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 63/00 20060101AFI20221215BHJP
C08G 59/42 20060101ALI20221215BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20221215BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20221215BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
C08L63/00 C
C08G59/42
C08K3/013
H05K1/03 610L
H01L23/30 R
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161192
(22)【出願日】2022-10-05
(62)【分割の表示】P 2018238724の分割
【原出願日】2018-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阪内 啓之
(57)【要約】
【課題】硬化物の誘電特性の低減とフローマークの発生抑制とが可能な樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、及び(C)無機充填材を含む樹脂組成物であって、(B)成分が、(B-1)軟化点が100℃以下の活性エステル樹脂、(B-2)2官能の活性エステル樹脂又は(B-3)分子量が1,000以下の活性エステル樹脂を含む、樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、及び(C)無機充填材を含む樹脂組成物であって、(B)成分が、(B-1)軟化点が100℃以下の活性エステル樹脂を含み、(C)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、50質量%以上であり、樹脂組成物を180℃で90分熱硬化させて得られる硬化物のファブリペロー法で測定した誘電正接(測定周波数79GHz)が、0.004以下である、樹脂組成物。
【請求項2】
(B)成分が、(B-1)式(1):
【化1】
[式中、環X、Y及びZは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリール基、アリールオキシ基、アリールカルボニル基、アラルキル基、芳香族複素環基、及び非芳香族複素環基から選ばれる置換基を有していてもよい芳香環を示す。]
で表される2官能の活性エステル樹脂のうち軟化点が100℃以下のものを含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、及び(C)無機充填材を含む樹脂組成物であって、(B)成分が、(B-1)式(1):
【化2】
[式中、環X、Y及びZは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリール基、アリールオキシ基、アリールカルボニル基、アラルキル基、芳香族複素環基、及び非芳香族複素環基から選ばれる置換基を有していてもよい芳香環を示す。]
で表される2官能の活性エステル樹脂のうち軟化点が100℃以下のものを含み、(C)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、50質量%以上である、樹脂組成物。
【請求項4】
(B)成分が、さらに、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤及びアミン系硬化剤から選ばれる1種以上の硬化剤を含む、請求項1又は3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
(B)成分が、さらに、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、アミン系硬化剤、及び酸無水物系硬化剤から選ばれる1種以上の硬化剤を含む、請求項1又は3に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
(B-1)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、1質量%~20質量%である、請求項1又は3に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
(A)成分が、液状エポキシ樹脂である、請求項1又は3に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
(C)成分の平均粒径が、1μm~40μmである、請求項1又は3に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
(C)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、80質量%以上である、請求項1又は3に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
25℃で液状である、請求項1又は3に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
半導体チップパッケージの絶縁層を形成するための請求項1又は3に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
回路基板の絶縁層を形成するための請求項1又は3に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
半導体チップパッケージの半導体チップを封止するための請求項1又は3に記載の樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1又は3に記載の樹脂組成物の硬化物。
【請求項15】
支持体と、上記支持体上に設けられた請求項1又は3に記載の樹脂組成物を含む樹脂組成物層と、を有する樹脂シート。
【請求項16】
請求項1又は3に記載の樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層を含む回路基板。
【請求項17】
請求項16に記載の回路基板と、当該回路基板に搭載された半導体チップと、を含む半導体チップパッケージ。
【請求項18】
半導体チップと、当該半導体チップを封止する請求項1又は3に記載の樹脂組成物の硬化物と、を含む半導体チップパッケージ。
【請求項19】
請求項18に記載の半導体チップパッケージを備える半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂及び硬化剤を含む樹脂組成物;上記樹脂組成物の硬化物;上記樹脂組成物を含む樹脂シート;上記硬化物を含む回路基板;上記硬化物を含む半導体チップパッケージ;及び上記半導体チップパッケージを備える半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン、タブレット型デバイスといった小型の高機能電子機器の需要が増大しており、それに伴い、これら小型の電子機器に用いられる半導体チップパッケージ用絶縁材料も更なる高機能化が求められている。このような絶縁層は、樹脂組成物を硬化して形成されるもの等が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体チップパッケージ用絶縁材料は、今後の小型化・薄膜化のますますの要求の高まりの中、誘電特性を低くすることが求められる。しかし、従来の絶縁材料のうち、誘電特性が低い材料はフローマークが発生しやすい。
【0005】
本発明の課題は、硬化物の誘電特性の低減とフローマークの発生抑制とが可能な樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の課題を達成すべく、本発明者らは鋭意検討した結果、(B)硬化剤として、(B-1)軟化点が100℃以下の活性エステル樹脂、(B-2)2官能の活性エステル樹脂又は(B-3)分子量が1,000以下の活性エステル樹脂を使用することにより、上記の課題の解決が可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
[1] (A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、及び(C)無機充填材を含む樹脂組成物であって、(B)成分が、(B-1)軟化点が100℃以下の活性エステル樹脂を含む、樹脂組成物。
[2] (B-1)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、1質量%~50質量%である、上記[1]に記載の樹脂組成物。
[3] (A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、及び(C)無機充填材を含む樹脂組成物であって、(B)成分が、(B-2)2官能の活性エステル樹脂を含む、樹脂組成物。
[4] (B-2)成分が、式(1):
【0008】
【0009】
[式中、環X、Y及びZは、それぞれ独立して、さらに置換基を有していてもよい芳香環を示す。]
で表される化合物である、上記[3]に記載の樹脂組成物。
[5] (B)成分が、さらに、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、アミン系硬化剤、及び酸無水物系硬化剤から選ばれる1種以上の硬化剤を含む、上記[1]~[4]の何れかに記載の樹脂組成物。
[6] (A)成分が、液状エポキシ樹脂である、上記[1]~[5]の何れかに記載の樹脂組成物。
[7] (C)成分の平均粒径が、1μm~40μmである、上記[1]~[6]の何れかに記載の樹脂組成物。
[8] (C)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、80質量%以上である、上記[1]~[7]の何れかに記載の樹脂組成物。
[9] 25℃で液状である、上記[1]~[8]の何れかに記載の樹脂組成物。
[10] 半導体チップパッケージの絶縁層を形成するための上記[1]~[9]の何れかに記載の樹脂組成物。
[11] 回路基板の絶縁層を形成するための上記[1]~[9]の何れかに記載の樹脂組成物。
[12] 半導体チップパッケージの半導体チップを封止するための上記[1]~[9]の何れかに記載の樹脂組成物。
[13] 上記[1]~[12]の何れかに記載の樹脂組成物の硬化物。
[14] 支持体と、上記支持体上に設けられた上記[1]~[12]の何れかに記載の樹脂組成物を含む樹脂組成物層と、を有する樹脂シート。
[15] 上記[1]~[12]の何れかに記載の樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層を含む回路基板。
[16] 上記[15]に記載の回路基板と、当該回路基板に搭載された半導体チップと、を含む半導体チップパッケージ。
[17] 半導体チップと、当該半導体チップを封止する上記[1]~[12]の何れかに記載の樹脂組成物の硬化物と、を含む半導体チップパッケージ。
[18] 上記[16]又は[17]に記載の半導体チップパッケージを備える半導体装置。
[19] (A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、及び(C)無機充填材を含む樹脂組成物であって、(B)成分が、(B-3)分子量が1,000以下の活性エステル樹脂を含む、樹脂組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、硬化物の誘電特性の低減とフローマークの発生抑制とが可能な樹脂組成物;上記樹脂組成物の硬化物;上記樹脂組成物を含む樹脂シート;上記硬化物を含む回路基板;上記硬化物を含む半導体チップパッケージ;及び上記半導体チップパッケージを備える半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。ただし、本発明は、下記実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施され得る。
【0012】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、及び(C)無機充填材を含む。第1の実施形態では、(B)成分は、(B-1)軟化点が100℃以下の活性エステル樹脂を含む。第2の実施形態では、(B)成分は、(B-2)2官能の活性エステル樹脂を含む。第3の実施形態では、(B)成分は、(B-3)分子量が1,000以下の活性エステル樹脂を含む。
【0013】
このような樹脂組成物を用いることにより、硬化物の誘電特性の低減とフローマークの発生抑制との両方を達成できる。さらに、このような樹脂組成物によれば、一実施形態において、長期にわたって維持可能な半導体チップに対する密着性、優れた貯蔵弾性率を備える硬化物を得ることができる。
【0014】
本発明の樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、及び(C)無機充填材の他に、さらに任意の成分を含んでいてもよい。任意の成分としては、例えば、(D)硬化促進剤、(E)有機溶剤、及び(F)その他の添加剤が挙げられる。以下、樹脂組成物に含まれる各成分について詳細に説明する。
【0015】
<(A)エポキシ樹脂>
本発明の樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂を含有する。
【0016】
(A)エポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂として、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、(A)エポキシ樹脂の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
【0018】
エポキシ樹脂には、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ということがある。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」ということがある。)とがある。一実施形態では、本発明の樹脂組成物は、エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂を含む。一実施形態では、本発明の樹脂組成物は、エポキシ樹脂として、固体状エポキシ樹脂を含む。液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とは、組み合わせて用いてもよい。本発明の樹脂組成物は、エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂のみを含むことが好ましい。
【0019】
液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましい。
【0020】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましい。
【0021】
液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「828EL」、「jER828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「EP-3950S」、「EP-3950L」、「EP-3980S」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P(CEL2021P)」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB-3600」、日本曹達社製の「JP-100」、「JP-200」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する芳香族系の固体状エポキシ樹脂がより好ましい。
【0023】
固体状エポキシ樹脂としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましい。
【0024】
固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂);DIC社製の「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-7200」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-7200HH」、「HP-7200H」、「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ESN475V」(ナフトール型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YX4000」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX7700」(キシレン構造含有ノボラック型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」;三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
(A)エポキシ樹脂として液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いる場合、液状エポキシ樹脂の固体状エポキシ樹脂に対する質量比(液状エポキシ樹脂/固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、好ましくは1以上、より好ましくは10以上、特に好ましくは50以上である。液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との量比が斯かる範囲にあることにより、本発明の所望の効果を顕著に得ることができる。
【0026】
(A)エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq.~5000g/eq.、より好ましくは50g/eq.~3000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.~2000g/eq.、さらにより好ましくは110g/eq.~1000g/eq.である。この範囲となることで、樹脂シートの硬化物の架橋密度が十分となり、表面粗さの小さい絶縁層をもたらすことができる。エポキシ当量は、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量である。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
【0027】
(A)エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは100~5000、より好ましくは100~3000、さらに好ましくは100~1500である。樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0028】
樹脂組成物中の「不揮発成分」を100質量%とした場合、(A)エポキシ樹脂の含有量は、特に限定されるものではないが、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上、特に好ましくは4質量%以上である。その上限は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。
【0029】
樹脂組成物中の「樹脂成分」を100質量%とした場合、(A)エポキシ樹脂の含有量は、特に限定されるものではないが、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上、特に好ましくは45質量%以上である。その上限は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下、特に好ましくは50質量%以下である。
【0030】
本明細書において「樹脂成分」とは、樹脂組成物から(C)無機充填剤を除いた残りの全不揮発成分を意味する。したがって、「樹脂成分」には、低分子化合物も含まれ得る。
【0031】
<(B)硬化剤>
本発明の樹脂組成物は、(B)硬化剤を含有する。(B)硬化剤は、(A)エポキシ樹脂を硬化する機能を有する。
【0032】
樹脂組成物中の「不揮発成分」を100質量%とした場合、(B)硬化剤の含有量は、特に限定されるものではないが、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは4質量%以上、特に好ましくは5質量%以上である。その上限は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。
【0033】
樹脂組成物中の「樹脂成分」を100質量%とした場合、(B)硬化剤の含有量は、特に限定されるものではないが、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上、特に好ましくは50質量%以上である。その上限は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下、特に好ましくは55質量%以下である。
【0034】
第1の実施形態では、(B)硬化剤は、(B-1)軟化点が100℃以下の活性エステル樹脂を含む。第2の実施形態では、(B)成分は、(B-2)2官能の活性エステル樹脂を含む。第3の実施形態では、(B)成分は、(B-3)分子量が1,000以下の活性エステル樹脂を含む。
【0035】
活性エステル樹脂とは、エポキシ樹脂のエポキシ基と付加反応可能なエステル化合物をいう。活性エステル樹脂は、エポキシ樹脂のエポキシ基との付加反応で水酸基を発生させない特徴を有する。したがって、硬化剤として活性エステル樹脂を用いることにより、得られる硬化物中の極性基濃度を低減できるため、低誘電特性を実現できる。
【0036】
<(B-1)軟化点が100℃以下の活性エステル樹脂>
(B-1)成分の活性エステル樹脂は、軟化点が100℃以下である限り特に限定されるものではない。軟化点は、例えば、JIS K2351に基づく環球法により測定することができる。(B-1)成分を用いることにより、樹脂組成物の組成の均一性を高めることができるので、フローマークの発生を抑制することができる。(B-1)成分としては、好ましくは、軟化点が100℃以下の2官能の活性エステル樹脂(「2官能の活性エステル樹脂」については下記の説明の通り)であり、より好ましくは、式(1):
【0037】
【0038】
[式中、環X、Y及びZは、それぞれ独立して、さらに置換基を有していてもよい芳香環を示す。]
で表される2官能の活性エステル樹脂のうち軟化点が100℃以下のものであり、さらに好ましくは、式(2):
【0039】
【0040】
[式中、環A、B、C、D及びEは、それぞれ独立して、さらに置換基を有していてもよいベンゼン環を示す。]
で表される2官能の活性エステル樹脂のうち軟化点が100℃以下のものである。
【0041】
本明細書中、「芳香環」とは、環上のπ電子系に含まれる電子数が4n+2個(nは自然数)のヒュッケル則に従う環を意味し、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環が挙げられる。
【0042】
本明細書中、「芳香族炭化水素環」とは、炭素原子を環構成原子とする芳香環を意味する。「芳香族炭化水素環」は、好ましくは炭素原子数6~14の芳香族炭化水素環、より好ましくは炭素原子数6~10の芳香族炭化水素環である。「芳香族炭化水素環」としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等が挙げられる。
【0043】
本明細書中、「芳香族複素環」とは、環構成原子として炭素原子以外に窒素原子、硫黄原子、酸素原子等の(好ましくは1~4個の)ヘテロ原子を含有する芳香環を意味する。「芳香族複素環」としては、好ましくは5~14員の芳香族複素環、より好ましくは5~10員の芳香族複素環が挙げられる。「芳香族複素環」としては、例えば、チオフェン環、フラン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、1,2,4-オキサジアゾール環、1,3,4-オキサジアゾール環、1,2,4-チアジアゾール環、1,3,4-チアジアゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、トリアジン環等の5又は6員の単環式芳香族複素環;ベンゾチオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾトリアゾール環等の8~14員の縮合芳香族複素環が挙げられる。
【0044】
式(1)の「さらに置換基を有していてもよい芳香環」、式(2)の「さらに置換基を有していてもよいベンゼン環」それぞれにおけるさらなる置換基は、特に限定されるものではないが、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリール基、アリールオキシ基、アリールカルボニル基、アラルキル基、芳香族複素環基、非芳香族複素環基等が挙げられる。
【0045】
本明細書中、「ハロゲン原子」としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0046】
本明細書中、「アルキル基」は、直鎖、分枝鎖又は環状の1価の脂肪族飽和炭化水素基を意味する。「アルキル基」の炭素原子数は、好ましくは1~6であり、より好ましくは1~4であり、さらに好ましくは1~3である。「アルキル基」としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1-エチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、1,1-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0047】
本明細書中、「アルケニル基」とは、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する直鎖、分枝鎖又は環状の1価の不飽和脂肪族炭化水素基を意味する。「アルケニル基」の炭素原子数は、好ましくは2~6であり、より好ましくは2~4であり、さらに好ましくは2又は3である。「アルケニル基」としては、例えば、エテニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、2-メチル-1-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、3-メチル-2-ブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、4-メチル-3-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。
【0048】
本明細書中、「アルコキシ基」とは、アルキル基が酸素原子に結合して形成される1価の基(アルキル-O-)を意味する。「アルコキシ基」の炭素原子数は、好ましくは1~6であり、より好ましくは1~4であり、さらに好ましくは1~3である。「アルコキシ基」としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0049】
本明細書中、「アルキルカルボニル基」とは、アルキル基がカルボニルに結合して形成される1価の基(アルキル-CO-)を意味する。「アルキルカルボニル基」の炭素原子数は、好ましくは2~7であり、より好ましくは2~5であり、さらに好ましくは2~4である。「アルキルカルボニル基」としては、例えば、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、2-メチルプロパノイル基、ペンタノイル基、3-メチルブタノイル基、2-メチルブタノイル基、2,2-ジメチルプロパノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基等が挙げられる。
【0050】
本明細書中、「アリール基」とは、1価の芳香族炭化水素基を意味する。「アリール基」の炭素原子数は、好ましくは6~14であり、より好ましくは6~10である。「アリール基」としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントリル基、2-アントリル基、9-アントリル基等が挙げられる。
【0051】
本明細書中、「アリールオキシ基」とは、アリール基が酸素原子に結合して形成される1価の基(アリール-O-)を意味する。「アリールオキシ基」の炭素原子数は、好ましくは6~14であり、より好ましくは6~10である。「アリールオキシ基」としては、例えば、フェノキシ基、ナフトキシ基等が挙げられる。
【0052】
本明細書中、「アリールカルボニル基」とは、アリール基がカルボニルに結合して形成される1価の基(アリール-CO-)を意味する。「アリールカルボニル基」の炭素原子数は、好ましくは7~15であり、より好ましくは7~11である。「アリールカルボニル基」としては、例えば、ベンゾイル基、1-ナフトイル基、2-ナフトイル基等が挙げられる。
【0053】
本明細書中、「アラルキル基」としては、1又は2個以上のアリール基で置換されたアルキル基を意味する。「アラルキル基」の炭素原子数は、好ましくは7~15であり、より好ましくは7~11である。「アラルキル基」としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、2-ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0054】
本明細書中、「芳香族複素環基」とは、環構成原子として炭素原子以外に窒素原子、硫黄原子、酸素原子等の(好ましくは1~4個の)ヘテロ原子を含有する芳香環基を意味する。「芳香族複素環基」としては、好ましくは5~14員の芳香族複素環基、より好ましくは5~10員の芳香族複素環基が挙げられる。「芳香族複素環基」としては、例えば、チエニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、1,2,4-オキサジアゾリル基、1,3,4-オキサジアゾリル基、1,2,4-チアジアゾリル基、1,3,4-チアジアゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、トリアジニル基等の5又は6員の単環式芳香族複素環基;ベンゾチオフェニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、ベンゾトリアゾリル基等の8~14員の縮合芳香族複素環基が挙げられる。
【0055】
本明細書中、「非芳香族複素環基」とは、環構成原子として炭素原子以外に窒素原子、硫黄原子、酸素原子等の(好ましくは1~4個の)ヘテロ原子を含有する非芳香環基を意味する。「非芳香族複素環基」としては、好ましくは3~14員の非芳香族複素環基、より好ましくは4~10員の非芳香族複素環基が挙げられる。「非芳香族複素環基」としては、例えば、アジリジニル基、オキシラニル基、チイラニル基、アゼチジニル基、オキセタニル基、チエタニル基、テトラヒドロチエニル基、テトラヒドロフラニル基、ピロリニル基、ピロリジニル基、イミダゾリニル基、イミダゾリジニル基、オキサゾリニル基、オキサゾリジニル基、ピラゾリニル基、ピラゾリジニル基、チアゾリニル基、チアゾリジニル基、テトラヒドロイソチアゾリル基、テトラヒドロオキサゾリル基、テトラヒドロイソオキサゾリル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基などの3~8員の単環式非芳香族複素環基;ジヒドロベンゾフラニル基、ジヒドロベンゾイミダゾリル基、ジヒドロベンゾオキサゾリル基、ジヒドロベンゾチアゾリル基、ジヒドロベンゾイソチアゾリル基、ジヒドロナフト[2,3-b]チエニル基、テトラヒドロイソキノリル基等の9~14員の縮合非芳香族複素環基が挙げられる。
【0056】
式(1)において、環X、Y及びZは、それぞれ独立して、さらに置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環であることが好ましく、さらに置換基を有していてもよいベンゼン環又はナフタレン環であることがより好ましく、無置換のベンゼン環又はナフタレン環であることがさらに好ましい。
【0057】
式(2)において、環A、B、C、D及びEは、無置換のベンゼン環であることが好ましい。
【0058】
(B-1)成分の軟化点は、好ましくは90℃以下であり、より好ましくは85℃以下であり、さらに好ましくは80℃以下である。
【0059】
(B-1)成分の分子量は、1,000以下であることが好ましく、700以下であることがより好ましく、600以下であることがさらに好ましく、500以下であることがなお一層好ましく、450以下であることが特に好ましい。下限値は、特に限定されるものではないが、200等とし得る。
【0060】
(B-1)成分の具体例としては、式(3):
【0061】
【0062】
で表される化合物等が挙げられる。
【0063】
(B-1)成分は、市販されているものを用いてもよいし、公知の方法により合成したものを使用してもよい。(B-1)成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
<(B-2)2官能の活性エステル樹脂>
(B-2)成分の活性エステル樹脂は、2官能である限り特に限定されるものではない。2官能の活性エステル樹脂とは、エポキシ樹脂のエポキシ基と付加反応可能なエステル構造を2個有する化合物を意味する。(B-2)成分を用いることにより、樹脂組成物の組成の均一性を高めることができるので、フローマークの発生を抑制することができる。(B-2)成分としては、好ましくは、式(1):
【0065】
【0066】
[式中、環X、Y及びZは、それぞれ独立して、さらに置換基を有していてもよい芳香環を示す。]
で表される2官能の活性エステル樹脂であり、より好ましくは、式(2):
【0067】
【0068】
[式中、環A、B、C、D及びEは、それぞれ独立して、さらに置換基を有していてもよいベンゼン環を示す。]
で表される2官能の活性エステル樹脂である。
【0069】
(B-2)成分の軟化点は、好ましくは100℃以下であり、より好ましくは90℃以下であり、さらに好ましくは85℃以下であり、特に好ましくは80℃以下である。
【0070】
(B-2)成分の分子量は、1,000以下であることが好ましく、700以下であることがより好ましく、600以下であることがさらに好ましく、500以下であることがなお一層好ましく、450以下であることが特に好ましい。下限値は、特に限定されるものではないが、200等とし得る。
【0071】
(B-2)成分の具体例としては、式(3):
【0072】
【0073】
で表される化合物等が挙げられる。
【0074】
(B-2)成分は、市販されているものを用いてもよいし、公知の方法により合成したものを使用してもよい。(B-2)成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0075】
<(B-3)分子量が1,000以下の活性エステル樹脂>
(B-3)成分の活性エステル樹脂は、分子量が1,000以下である限り特に限定されるものではない。(B-3)成分を用いることにより、樹脂組成物の組成の均一性を高めることができるので、フローマークの発生を抑制することができる。(B-3)成分としては、好ましくは、分子量が1,000以下の2官能の活性エステル樹脂(「2官能の活性エステル樹脂」については上記の説明の通り)であり、より好ましくは、式(1):
【0076】
【0077】
[式中、環X、Y及びZは、それぞれ独立して、さらに置換基を有していてもよい芳香環を示す。]
で表される2官能の活性エステル樹脂のうち分子量が1,000以下のものであり、より好ましくは、式(2):
【0078】
【0079】
[式中、環A、B、C、D及びEは、それぞれ独立して、さらに置換基を有していてもよいベンゼン環を示す。]
で表される2官能の活性エステル樹脂のうち分子量が1,000以下のものである。
【0080】
(B-3)成分の軟化点は、好ましくは100℃以下であり、より好ましくは90℃以下であり、さらに好ましくは85℃以下であり、特に好ましくは80℃以下である。
【0081】
(B-3)成分の分子量は、700以下であることが好ましく、600以下であることがより好ましく、500以下であることがさらに好ましく、450以下であることが特に好ましい。下限値は、特に限定されるものではないが、200等とし得る。
【0082】
(B-3)成分の具体例としては、式(3):
【0083】
【0084】
で表される化合物等が挙げられる。
【0085】
(B-3)成分は、市販されているものを用いてもよいし、公知の方法により合成したものを使用してもよい。(B-3)成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0086】
樹脂組成物中の「不揮発成分」を100質量%とした場合、(B-1)成分、(B-2)成分又は(B-3)成分の含有量は、特に限定されるものではないが、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上、なお一層好ましくは2.5質量%以上、特に好ましくは3質量%以上である。その上限は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。
【0087】
樹脂組成物中の「樹脂成分」を100質量%とした場合、(B-1)成分、(B-2)成分又は(B-3)成分は、特に限定されるものではないが、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、特に好ましくは25質量%以上である。その上限は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは45質量%以下、特に好ましくは40質量%以下である。
【0088】
(B)硬化剤に対する(B-1)成分、(B-2)成分又は(B-3)成分の質量割合は、特に限定されるものではないが、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の(B)硬化剤を100質量%とした場合、好ましくは5質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上、特に好ましくは35質量%以上である。その上限は、好ましくは100質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下、特に好ましくは75質量%以下である。
【0089】
<(B-1)~(B-3)成分以外の任意の硬化剤>
(B)硬化剤は、(B-1)成分、(B-2)成分又は(B-3)成分に加えて、さらにその他の任意の硬化剤を含んでいてもよい。(B-1)成分、(B-2)成分又は(B-3)成分以外の任意の硬化剤としては、エポキシ樹脂を硬化する機能を有する限り特に限定されず、例えば、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、(B-1)成分、(B-2)成分又は(B-3)成分以外の活性エステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤及びアミン系硬化剤が挙げられる。中でも、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、アミン系硬化剤、及び酸無水物系硬化剤が好ましく、酸無水物系硬化剤がより好ましい。このような硬化剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0090】
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するフェノール系硬化剤、又はノボラック構造を有するナフトール系硬化剤が好ましい。また、被着体に対する密着性の観点から、含窒素フェノール系硬化剤又は含窒素ナフトール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤又はトリアジン骨格含有ナフトール系硬化剤がより好ましい。中でも、耐熱性、耐水性、及び密着性を高度に満足させる観点から、トリアジン骨格含有フェノールノボラック樹脂が好ましい。フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤の具体例としては、例えば、明和化成社製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」、日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」、新日鉄住金化学社製の「SN-170」、「SN-180」、「SN-190」、「SN-475」、「SN-485」、「SN-495」、「SN-375」、「SN-395」、DIC社製の「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-3018」、「LA-3018-50P」、「LA-1356」、「TD2090」、「TD-2090-60M」等が挙げられる。
【0091】
酸無水物系硬化剤としては、1分子内中に1個以上の酸無水物基を有する硬化剤が挙げられる。酸無水物系硬化剤の具体例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’-4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、スチレンとマレイン酸とが共重合したスチレン・マレイン酸樹脂などのポリマー型の酸無水物などが挙げられる。酸無水物系硬化剤の市販品としては、新日本理化社製の「HNA-100」、「MH-700」、「MTA-15」、「DDSA」、「HF-08」、「OSA」、三菱ケミカル社製の「YH306」、「YH307」、三菱ガス化学社製の「H-TMAn」、日立化成社製の「HN-2200」、「HN-2000」、「HN-5500」、「MHAC-P」等が挙げられる。
【0092】
(B-1)成分、(B-2)成分又は(B-3)成分以外の活性エステル系硬化剤としては、特に制限はないが、一般にフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の反応活性の高いエステル基を1分子中に3個以上有する化合物が好ましく用いられる。当該活性エステル系硬化剤は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系硬化剤がより好ましい。カルボン酸化合物としては、3個以上カルボキシ基を有する化合物が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
【0093】
具体的には、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物が好ましく、中でもナフタレン構造を含む活性エステル化合物、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物がより好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン-ジシクロペンタレン-フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
【0094】
(B-1)成分、(B-2)成分又は(B-3)成分以外の活性エステル系硬化剤の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC-8000」、「HPC-8000H」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H-65TM」、「EXB-8000L」、「EXB-8000L-65TM」(DIC社製);ナフタレン構造を含む活性エステル化合物として「EXB9416-70BK」、「EXB-8150-65T」(DIC社製);フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物として「YLH1026」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系硬化剤として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系硬化剤として「YLH1026」(三菱ケミカル社製)、「YLH1030」(三菱ケミカル社製)、「YLH1048」(三菱ケミカル社製);等が挙げられる。
【0095】
ベンゾオキサジン系硬化剤の具体例としては、JFEケミカル社製の「JBZ-OP100D」、「ODA-BOZ」;昭和高分子社製の「HFB2006M」、四国化成工業社製の「P-d」、「F-a」などが挙げられる。
【0096】
シアネートエステル系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート(オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート))、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT30」及び「PT60」(いずれもフェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
【0097】
カルボジイミド系硬化剤の具体例としては、日清紡ケミカル社製の「V-03」、「V-07」等が挙げられる。
【0098】
アミン系硬化剤としては、1分子内中に1個以上のアミノ基を有する硬化剤が挙げられ、例えば、脂肪族アミン類、ポリエーテルアミン類、脂環式アミン類、芳香族アミン類等が挙げられ、中でも、本発明の所望の効果を奏する観点から、芳香族アミン類が好ましい。アミン系硬化剤は、第1級アミン又は第2級アミンが好ましく、第1級アミンがより好ましい。アミン系硬化剤の具体例としては、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルアニリン)、ジフェニルジアミノスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、m-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンジアミン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、等が挙げられる。アミン系硬化剤は市販品を用いてもよく、例えば、日本化薬社製の「KAYABOND C-200S」、「KAYABOND C-100」、「カヤハードA-A」、「カヤハードA-B」、「カヤハードA-S」、三菱ケミカル社製の「エピキュアW」等が挙げられる。
【0099】
樹脂組成物が(B-1)成分、(B-2)成分又は(B-3)成分以外の任意の硬化剤を含有する場合、樹脂組成物中の「不揮発成分」を100質量%としたとき、(B-1)成分、(B-2)成分又は(B-3)成分以外の任意の硬化剤の含有量は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上、特に好ましくは1.5質量%以上である。その上限は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。
【0100】
樹脂組成物が(B-1)成分、(B-2)成分又は(B-3)成分以外の任意の硬化剤を含有する場合、樹脂組成物中の「樹脂成分」を100質量%としたとき、(B-1)成分、(B-2)成分又は(B-3)成分以外の任意の硬化剤の含有量は、特に限定されるものではないが、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上、特に好ましくは15質量%以上である。その上限は、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下、特に好ましくは30質量%以下である。
【0101】
(A)エポキシ樹脂と(B)硬化剤との量比は、[エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数]:[硬化剤の反応基の合計数]の比率で、1:0.2~1:2の範囲が好ましく、1:0.3~1:1.5がより好ましく、1:0.4~1:1.2がさらに好ましい。ここで、硬化剤の反応基とは、活性水酸基、活性エステル基等であり、硬化剤の種類によって異なる。また、エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数とは、各エポキシ樹脂の不揮発成分質量をエポキシ当量で除した値をすべてのエポキシ樹脂について合計した値であり、硬化剤の反応基の合計数とは、各硬化剤の不揮発成分質量を反応基当量で除した値をすべての硬化剤について合計した値である。エポキシ樹脂と硬化剤との量比を斯かる範囲とすることにより、得られる硬化物の耐熱性がより向上する。
【0102】
<(C)無機充填材>
本発明の樹脂組成物は、(C)無機充填材を含有する。
【0103】
(C)無機充填材の材料は特に限定されないが、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられ、シリカ及びアルミナが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。またシリカとしては球形シリカが好ましい。(C)無機充填材は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0104】
(C)無機充填材の市販品としては、例えば、電化化学工業社製の「UFP-30」;新日鉄住金マテリアルズ社製の「SP60-05」、「SP507-05」;アドマテックス社製の「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」、「FE9シリーズ」、「FEBシリーズ」、「FEDシリーズ」;デンカ社製の「UFP-30」;トクヤマ社製の「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」;アドマテックス社製の「SC2500SQ」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」;などが挙げられる。
【0105】
(C)無機充填材の平均粒径は、特に限定されるものではないが、フローマークの発生を抑制する観点から、好ましくは40μm以下、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは25μm以下、さらにより好ましくは20μm以下、特に好ましくは15μm以下である。無機充填材の平均粒径の下限は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上、さらにより好ましくは7μm以上、特に好ましくは8μm以上である。無機充填材の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、無機充填材の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材100mg、メチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて10分間分散させたものを使用することができる。測定サンプルを、レーザー回折式粒径分布測定装置を使用して、使用光源波長を青色及び赤色とし、フローセル方式で無機充填材の体積基準の粒径分布を測定し、得られた粒径分布からメディアン径として平均粒径を算出した。レーザー回折式粒径分布測定装置としては、例えば堀場製作所社製「LA-960」等が挙げられる。
【0106】
(C)無機充填材は、耐湿性及び分散性を高める観点から、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、アルコキシシラン化合物、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤などの1種以上の表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)、信越化学工業社製「KBM-7103」(3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM503」(3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM5783」(N-フェニル-3-アミノオクチルトリメトキシシラン)等が挙げられる。
【0107】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の分散性向上の観点から、所定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、無機充填材100質量%は、0.2質量%~5質量%の表面処理剤で表面処理されていることが好ましく、0.2質量%~3質量%で表面処理されていることが好ましく、0.3質量%~2質量%で表面処理されていることが好ましい。
【0108】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m2以上が好ましく、0.1mg/m2以上がより好ましく、0.2mg/m2以上がさらに好ましい。一方、樹脂ワニスの溶融粘度やシート形態での溶融粘度の上昇を防止する観点から、1mg/m2以下が好ましく、0.8mg/m2以下がより好ましく、0.5mg/m2以下がさらに好ましい。
【0109】
(C)無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA-320V」等を使用することができる。
【0110】
(C)無機充填材の比表面積は、本発明の効果をより向上させる観点から、好ましくは0.01m2/g以上、より好ましくは0.1m2/g以上、特に好ましくは0.2m2/g以上である。上限に特段の制限は無いが、好ましくは50m2/g以下、より好ましくは20m2/g以下、10m2/g以下又は5m2/g以下である。無機充填材の比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置(マウンテック社製Macsorb HM-1210)を使用して試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することで得られる。
【0111】
(C)無機充填材の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の「不揮発成分」を100質量%とした場合、好ましくは20質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上である。その上限は、特に限定されるものではないが、例えば、98質量%以下、95質量%以下、92質量%以下、90質量%以下等とし得る。
【0112】
<(D)硬化促進剤>
本発明の樹脂組成物は、任意成分として(D)硬化促進剤を含む場合がある。
【0113】
(D)硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤等が挙げられる。中でも、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、金属系硬化促進剤が好ましく、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、金属系硬化促進剤がより好ましく、イミダゾール系硬化促進剤が特に好ましい。硬化促進剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0114】
リン系硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等が挙げられる。
【0115】
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられ、4-ジメチルアミノピリジンが好ましい。
【0116】
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられる。
【0117】
イミダゾール系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、三菱ケミカル社製の「P200-H50」等が挙げられる。
【0118】
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられる。
【0119】
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0120】
樹脂組成物が(D)硬化促進剤を含有する場合、樹脂組成物中の「不揮発成分」を100質量%としたとき、(D)硬化促進剤の含有量は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上、特に好ましくは0.1質量%以上である。その上限は、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下、特に好ましくは0.2質量%以下である。
【0121】
樹脂組成物が(D)硬化促進剤を含有する場合、樹脂組成物中の「樹脂成分」を100質量%としたとき、(D)硬化促進剤の含有量は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.5質量%以上である。その上限は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下、特に好ましくは0.6質量%以下である。
【0122】
<(E)有機溶剤>
本発明の樹脂組成物は、任意の揮発性成分として、さらに(E)有機溶剤を含有する場合がある。
【0123】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート、エチルジグリコールアセテート、γ-ブチロラクトン等のエステル系溶剤;セロソルブ及びブチルカルビトール等のカルビトール溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド(DMAc)及びN-メチルピロリドン等のアミド系溶剤;メタノール、エタノール、2-メトキシプロパノール等のアルコール系溶剤;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素系溶剤等を挙げることができる。有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0124】
<(F)その他の添加剤>
樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として、更にその他の添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、例えば、有機充填剤、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤、重合開始剤、難燃剤などが挙げられる。これらの添加剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。それぞれの含有量は当業者であれば適宜設定できる。
【0125】
<樹脂組成物の製造方法>
一実施形態において、本発明の樹脂組成物は、例えば、反応容器に(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)無機充填材、必要に応じて(D)硬化促進剤、必要に応じて(E)有機溶剤、及び必要に応じて(F)その他の添加剤を、任意の順で及び/又は一部若しくは全部同時に加えて混合し、樹脂組成物を得る工程を含む方法によって、製造することができる。
【0126】
上記工程において、各成分を加える過程の温度は適宜設定することができ、各成分を加える過程で、一時的に又は終始にわたって、加熱及び/又は冷却してもよい。各成分を加える過程において、撹拌又は振盪を行ってもよい。また、上記工程の後に、樹脂組成物を、例えば、ミキサーなどの撹拌装置を用いて撹拌し、均一に分散させる工程をさらに含むことが好ましい。
【0127】
<樹脂組成物の特性>
本発明の樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、及び(C)無機充填材を含み、(B)成分が、(B-1)軟化点が100℃以下の活性エステル樹脂、(B-2)2官能の活性エステル樹脂又は(B-3)分子量が1,000以下の活性エステル樹脂を含むため、誘電特性が低減され、且つフローマークの発生が抑制された硬化物を得ることができる。また、本発明の樹脂組成物によれば、一実施形態において、長期にわたって維持可能な半導体チップに対する密着性、優れた貯蔵弾性率を備える硬化物を得ることができる。
【0128】
本発明の樹脂組成物の硬化物の特徴の一つである低い誘電特性に関しては、一実施形態において、例えば、樹脂組成物を熱硬化させて得られる硬化物のファブリペロー法(測定周波数79GHz)で測定した誘電正接(tanδ)が、好ましくは0.01以下、より好ましくは0.005以下、さらに好ましくは0.004以下、特に好ましくは0.003以下である。誘電正接の下限値は特に限定されないが、0.001以上、0.0001以上、0.00001以上等とし得る。
【0129】
一実施形態における本発明の樹脂組成物の硬化物の特徴の一つである長期にわたって維持可能な半導体チップに対する密着性に関しては、例えば、樹脂組成物から形成される樹脂組成物層をシリコンウエハ上に圧縮成型して熱硬化させた後、130℃、85%RHの条件で100時間の高温高湿環境試験(HAST)に付した場合であっても、樹脂組成物層の硬化物と下地のシリコンウエハの界面に剥がれが生じない。
【0130】
一実施形態における本発明の樹脂組成物の硬化物の特徴の一つである優れた貯蔵弾性率に関しては、例えば、樹脂組成物を熱硬化させて得られる層状硬化物の周波数1Hz、昇温速度5℃/分の条件で測定した25℃での貯蔵弾性率が、好ましくは40GPa以下、より好ましくは30GPa以下、さらに好ましくは25GPa以下である。貯蔵弾性率の下限値は特に限定されないが、10GPa以上、1GPa以上、0.1GPa以上等とし得る。
【0131】
また、一実施形態において、本発明の樹脂組成物は、圧縮成型して、樹脂組成物層を形成し、150℃で60分間加熱させた後であっても、樹脂組成物層の表面にフローマークが発生しない。また、一実施形態において、本発明の樹脂組成物は、25℃で流動性のある液状の性状を有する。
【0132】
<樹脂組成物の用途>
本発明の樹脂組成物の硬化物は、上述した利点により、半導体の封止層及び絶縁層に有用である。よって、この樹脂組成物は、半導体封止用又は絶縁層用の樹脂組成物として用いることができる。
【0133】
例えば、本発明の樹脂組成物は、半導体チップパッケージの絶縁層を形成するための樹脂組成物(半導体チップパッケージの絶縁層用の樹脂組成物)、及び、回路基板(プリント配線板を含む。)の絶縁層を形成するための樹脂組成物(回路基板の絶縁層用の樹脂組成物)として、好適に使用することができる。
【0134】
また、例えば、本発明の樹脂組成物は、半導体チップパッケージの半導体チップを封止するための樹脂組成物(半導体チップ封止用の樹脂組成物)として、好適に使用することができる。
【0135】
本発明の樹脂組成物の硬化物で形成された封止層又は絶縁層を適用できる半導体チップパッケージとしては、例えば、FC-CSP、MIS-BGAパッケージ、ETS-BGAパッケージ、Fan-out型WLP(Wafer Level Package)、Fan-in型WLP、Fan-out型PLP(Panel Level Package)、Fan-in型PLPが挙げられる。
【0136】
また、本発明の樹脂組成物は、アンダーフィル材として用いてもよく、例えば、半導体チップを基板に接続した後に用いるMUF(Molding Under Filling)の材料として用いてもよい。
【0137】
さらに、本発明の樹脂組成物は、樹脂シート、プリプレグ等のシート状積層材料、ソルダーレジスト等のための樹脂インク等の液状材料、ダイボンディング材、穴埋め樹脂、部品埋め込み樹脂等、樹脂組成物が用いられる広範な用途に使用できる。
【0138】
<樹脂シート>
本発明の樹脂シートは、支持体と、該支持体上に設けられた樹脂組成物層と、を有する。樹脂組成物層は、本発明の樹脂組成物を含む層であり、通常は、樹脂組成物で形成されている。
【0139】
樹脂組成物層の厚みは、薄型化の観点から、好ましくは600μm以下、より好ましくは500μm以下である。樹脂組成物層の厚さの下限は、好ましくは1μm以上、5μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは50μm以上、特に好ましくは100μm以上でありうる。
【0140】
また、樹脂組成物層を硬化させて得られる硬化物の厚みは、好ましくは1μm以上、5μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは50μm以上、特に好ましくは100μm以上である。
【0141】
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
【0142】
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル;ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。);ポリメチルメタクリレート(以下「PMMA」と略称することがある。)等のアクリルポリマー;環状ポリオレフィン;トリアセチルセルロース(以下「TAC」と略称することがある。);ポリエーテルサルファイド(以下「PES」と略称することがある。);ポリエーテルケトン;ポリイミド;等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0143】
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられる。中でも、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0144】
支持体は、樹脂組成物層と接合する面に、マット処理、コロナ処理、帯電防止処理等の処理が施されていてもよい。
【0145】
また、支持体としては、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型剤の市販品としては、例えば、アルキド樹脂系離型剤である、リンテック社製の「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」等が挙げられる。また、離型層付き支持体としては、例えば、東レ社製の「ルミラーT60」;帝人社製の「ピューレックス」;ユニチカ社製の「ユニピール」;等が挙げられる。
【0146】
支持体の厚さは、5μm~75μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
【0147】
樹脂シートは、例えば、樹脂組成物を、ダイコーター等の塗布装置を用いて支持体上に塗布して、製造することができる。また、必要に応じて、樹脂組成物を有機溶剤に溶解して樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを塗布して樹脂シートを製造してもよい。溶剤を用いることにより、粘度を調整して、塗布性を向上させることができる。樹脂ワニスを用いた場合、通常は、塗布後に樹脂ワニスを乾燥させて、樹脂組成物層を形成する。
【0148】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。乾燥条件は、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂ワニス中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%~60質量%の有機溶剤を含む樹脂ワニスを用いる場合、50℃~150℃で3分~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0149】
樹脂シートは、必要に応じて、支持体及び樹脂組成物層以外の任意の層を含んでいてもよい。例えば、樹脂シートにおいて、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)には、支持体に準じた保護フィルムが設けられていてもよい。保護フィルムの厚さは、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。樹脂シートが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって樹脂シートは使用可能となる。また、樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。
【0150】
樹脂シートは、半導体チップパッケージの製造において絶縁層を形成するため(半導体チップパッケージの絶縁用樹脂シート)に好適に使用できる。例えば、樹脂シートは、回路基板の絶縁層を形成するため(回路基板の絶縁層用樹脂シート)に使用できる。このような基板を使ったパッケージの例としては、FC-CSP、MIS-BGAパッケージ、ETS-BGAパッケージが挙げられる。
【0151】
また、樹脂シートは、半導体チップを封止するため(半導体チップ封止用樹脂シート)に好適に使用することができる。適用可能な半導体チップパッケージとしては、例えば、Fan-out型WLP、Fan-in型WLP、Fan-out型PLP、Fan-in型PLP等が挙げられる。
【0152】
また、樹脂シートを、半導体チップを基板に接続した後に用いるMUFの材料に用いてもよい。
【0153】
さらに、樹脂シートは高い絶縁信頼性が要求される他の広範な用途に使用できる。例えば、樹脂シートは、プリント配線板等の回路基板の絶縁層を形成するために好適に使用することができる。
【0154】
<回路基板>
本発明の回路基板は、本発明の樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層を含む。この回路基板は、例えば、下記の工程(1)及び工程(2)を含む製造方法によって、製造できる。
(1)基材上に、樹脂組成物層を形成する工程。
(2)樹脂組成物層を熱硬化して、絶縁層を形成する工程。
【0155】
工程(1)では、基材を用意する。基材としては、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板(ステンレスや冷間圧延鋼板(SPCC)など)、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の基板が挙げられる。また、基材は、当該基材の一部として表面に銅箔等の金属層を有していてもよい。例えば、両方の表面に剥離可能な第一金属層及び第二金属層を有する基材を用いてもよい。このような基材を用いる場合、通常、回路配線として機能できる配線層としての導体層が、第二金属層の第一金属層とは反対側の面に形成される。このような金属層を有する基材としては、例えば、三井金属鉱業社製のキャリア銅箔付極薄銅箔「Micro Thin」が挙げられる。
【0156】
また、基材の一方又は両方の表面には、導体層が形成されていてもよい。以下の説明では、基材と、この基材表面に形成された導体層とを含む部材を、適宜「配線層付基材」ということがある。導体層に含まれる導体材料としては、例えば、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む材料が挙げられる。導体材料としては、単金属を用いてもよく、合金を用いてもよい。合金としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性の観点から、単金属としてのクロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅;及び、合金としてのニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金;が好ましい。その中でも、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属;及び、ニッケル・クロム合金;がより好ましく、銅の単金属が特に好ましい。
【0157】
導体層は、例えば配線層として機能させるために、パターン加工されていてもよい。この際、導体層のライン(回路幅)/スペース(回路間の幅)比は、特に制限されないが、好ましくは20/20μm以下(即ちピッチが40μm以下)、より好ましくは10/10μm以下、さらに好ましくは5/5μm以下、よりさらに好ましくは1/1μm以下、特に好ましくは0.5/0.5μm以上である。ピッチは、導体層の全体にわたって同一である必要はない。導体層の最小ピッチは、例えば、40μm以下、36μm以下、又は30μm以下であってもよい。
【0158】
導体層の厚さは、回路基板のデザインによるが、好ましくは3μm~35μm、より好ましくは5μm~30μm、さらに好ましくは10μm~20μm、特に好ましくは15μm~20μmである。
【0159】
導体層は、例えば、基材上にドライフィルム(感光性レジストフィルム)を積層する工程、フォトマスクを用いてドライフィルムに対して所定の条件で露光及び現像を行ってパターンを形成してパターンドライフィルムを得る工程、現像したパターンドライフィルムをめっきマスクとして電解めっき法等のメッキ法によって導体層を形成する工程、及び、パターンドライフィルムを剥離する工程を含む方法によって、形成できる。ドライフィルムとしては、フォトレジスト組成物からなる感光性のドライフィルムを用いることができ、例えば、ノボラック樹脂、アクリル樹脂等の樹脂で形成されたドライフィルムを用いることができる。基材とドライフィルムとの積層条件は、後述する基材と樹脂シートとの積層の条件と同様でありうる。ドライフィルムの剥離は、例えば、水酸化ナトリウム溶液等のアルカリ性の剥離液を使用して実施することができる。
【0160】
基材を用意した後で、基材上に、樹脂組成物層を形成する。基材の表面に導体層が形成されている場合、樹脂組成物層の形成は、導体層が樹脂組成物層に埋め込まれるように行うことが好ましい。
【0161】
樹脂組成物層の形成は、例えば、樹脂シートと基材とを積層することによって行われる。この積層は、例えば、支持体側から樹脂シートを基材に加熱圧着することにより、基材に樹脂組成物層を貼り合わせることで、行うことができる。樹脂シートを基材に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ということがある。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール等)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を樹脂シートに直接プレスするのではなく、基材の表面凹凸に樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
【0162】
基材と樹脂シートとの積層は、例えば、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは80℃~140℃の範囲である。加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲である。加熱圧着時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力13hPa以下の減圧条件下で実施する。
【0163】
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された樹脂シートの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。なお、積層と平滑化処理は、真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0164】
また、樹脂組成物層の形成は、例えば、圧縮成型法によって行うことができる。成型条件は、後述する半導体チップパッケージの封止層を形成する工程における樹脂組成物層の形成方法と同様な条件を採用してもよい。
【0165】
基材上に樹脂組成物層を形成した後、樹脂組成物層を熱硬化して、絶縁層を形成する。樹脂組成物層の熱硬化条件は、樹脂組成物の種類によっても異なるが、硬化温度は通常120℃~240℃の範囲(好ましくは150℃~220℃の範囲、より好ましくは170℃~200℃の範囲)、硬化時間は5分間~120分間の範囲(好ましくは10分間~100分間、より好ましくは15分間~90分間)である。
【0166】
樹脂組成物層を熱硬化させる前に、樹脂組成物層に対して、硬化温度よりも低い温度で加熱する予備加熱処理を施してもよい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、通常50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上110℃以下、より好ましくは70℃以上100℃以下)の温度にて、樹脂組成物層を、通常5分間以上(好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間)、予備加熱してもよい。
【0167】
以上のようにして、絶縁層を有する回路基板を製造できる。また、回路基板の製造方法は、更に、任意の工程を含んでいてもよい。
例えば、樹脂シートを用いて回路基板を製造した場合、回路基板の製造方法は、樹脂シートの支持体を剥離する工程を含んでいてもよい。支持体は、樹脂組成物層の熱硬化の前に剥離してもよく、樹脂組成物層の熱硬化の後に剥離してもよい。
【0168】
回路基板の製造方法は、例えば、絶縁層を形成した後で、その絶縁層の表面を研磨する工程を含んでいてもよい。研磨方法は特に限定されない。例えば、平面研削盤を用いて絶縁層の表面を研磨することができる。
【0169】
回路基板の製造方法は、例えば、導体層を層間接続する工程(3)、いわゆる絶縁層に穴あけをする工程を含んでいてもよい。これにより絶縁層にビアホール、スルーホール等のホールを形成することができる。ビアホールの形成方法としては、例えば、レーザー照射、エッチング、メカニカルドリリング等が挙げられる。ビアホールの寸法や形状は回路基板の出デザインに応じて適宜決定してよい。なお、工程(3)は、絶縁層の研磨又は研削によって層間接続を行ってもよい。
【0170】
ビアホールの形成後、ビアホール内のスミアを除去する工程を行うことが好ましい。この工程は、デスミア工程と呼ばれることがある。例えば、絶縁層上への導体層の形成をめっき工程により行う場合には、ビアホールに対して、湿式のデスミア処理を行ってもよい。また、絶縁層上への導体層の形成をスパッタ工程により行う場合には、プラズマ処理工程などのドライデスミア工程を行ってもよい。さらに、デスミア工程によって、絶縁層に粗化処理が施されてもよい。
【0171】
また、絶縁層上に導体層を形成する前に、絶縁層に対して、粗化処理を行ってもよい。この粗化処理によれば、通常、ビアホール内を含めた絶縁層の表面が粗化される。粗化処理としては、乾式及び湿式のいずれの粗化処理を行ってもよい。乾式の粗化処理の例としては、プラズマ処理等が挙げられる。また、湿式の粗化処理の例としては、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、及び、中和液による中和処理をこの順に行う方法が挙げられる。
【0172】
ビアホールを形成後、絶縁層上に導体層を形成してもよい。ビアホールが形成された位置に導体層を形成することで、新たに形成された導体層と基材表面の導体層とが導通して、層間接続が行われる。導体層の形成方法は、例えば、めっき法、スパッタ法、蒸着法などが挙げられ、中でもめっき法が好ましい。好適な実施形態では、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の適切な方法によって絶縁層の表面にめっきして、所望の配線パターンを有する導体層を形成する。また、樹脂シートにおける支持体が金属箔である場合、サブトラクティブ法により、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。形成される導体層の材料は、単金属でもよく、合金でもよい。また、この導体層は、単層構造を有していてもよく、異なる種類の材料の層を2層以上含む複層構造を有していてもよい。
【0173】
ここで、絶縁層上に導体層を形成する実施形態の例を、詳細に説明する。絶縁層の表面に、無電解めっきにより、めっきシード層を形成する。次いで、形成されためっきシード層上に、所望の配線パターンに対応して、めっきシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出しためっきシード層上に、電解めっきにより電解めっき層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なめっきシード層をエッチング等の処理により除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成できる。なお、導体層を形成する際、マスクパターンの形成に用いるドライフィルムは、上記ドライフィルムと同様である。
【0174】
回路基板の製造方法は、基材を除去する工程(4)を含んでいてもよい。基材を除去することにより、絶縁層と、この絶縁層に埋め込まれた導体層とを有する回路基板が得られる。この工程(4)は、例えば、剥離可能な金属層を有する基材を用いた場合に、行うことができる。
【0175】
<半導体チップパッケージ>
本発明の第一実施形態に係る半導体チップパッケージは、上述した回路基板と、この回路基板に搭載された半導体チップとを含む。この半導体チップパッケージは、回路基板に半導体チップを接合することにより、製造することができる。
【0176】
回路基板と半導体チップとの接合条件は、半導体チップの端子電極と回路基板の回路配線とが導体接続できる任意の条件を採用できる。例えば、半導体チップのフリップチップ実装において使用される条件を採用できる。また、例えば、半導体チップと回路基板との間に、絶縁性の接着剤を介して接合してもよい。
【0177】
接合方法の例としては、半導体チップを回路基板に圧着する方法が挙げられる。圧着条件としては、圧着温度は通常120℃~240℃の範囲(好ましくは130℃~200℃の範囲、より好ましくは140℃~180℃の範囲)、圧着時間は通常1秒間~60秒間の範囲(好ましくは5秒間~30秒間)である。
【0178】
また、接合方法の他の例としては、半導体チップを回路基板にリフローして接合する方法が挙げられる。リフロー条件は、120℃~300℃の範囲としてもよい。
【0179】
半導体チップを回路基板に接合した後、半導体チップをモールドアンダーフィル材で充填してもよい。このモールドアンダーフィル材として、上述した樹脂組成物を用いてもよく、また、上述した樹脂シートを用いてもよい。
【0180】
本発明の第二実施形態に係る半導体チップパッケージは、半導体チップと、この半導体チップを封止する前記樹脂組成物の硬化物とを含む。このような半導体チップパッケージでは、通常、樹脂組成物の硬化物は封止層として機能する。第二実施形態に係る半導体チップパッケージとしては、例えば、Fan-out型WLPが挙げられる。
【0181】
このような半導体チップパッケージの製造方法は、
(A)基材に仮固定フィルムを積層する工程、
(B)半導体チップを、仮固定フィルム上に仮固定する工程、
(C)半導体チップ上に封止層を形成する工程、
(D)基材及び仮固定フィルムを半導体チップから剥離する工程、
(E)半導体チップの基材及び仮固定フィルムを剥離した面に、絶縁層としての再配線形成層を形成する工程、
(F)再配線形成層上に、導体層としての再配線層を形成する工程、並びに、
(G)再配線層上にソルダーレジスト層を形成する工程、
を含む。また、前記の半導体チップパッケージの製造方法は、
(H)複数の半導体チップパッケージを、個々の半導体チップパッケージにダイシングし、個片化する工程
を含んでいてもよい。
【0182】
(工程(A))
工程(A)は、基材に仮固定フィルムを積層する工程である。基材と仮固定フィルムとの積層条件は、回路基板の製造方法における基材と樹脂シートとの積層条件と同様でありうる。
【0183】
基材としては、例えば、シリコンウェハ;ガラスウェハー;ガラス基板;銅、チタン、ステンレス、冷間圧延鋼板(SPCC)等の金属基板;FR-4基板等の、ガラス繊維にエポキシ樹脂等をしみこませ熱硬化処理した基板;BT樹脂等のビスマレイミドトリアジン樹脂からなる基板;などが挙げられる。
【0184】
仮固定フィルムは、半導体チップから剥離でき、且つ、半導体チップを仮固定することができる任意の材料を用いうる。市販品としては、日東電工社製「リヴァアルファ」等が挙げられる。
【0185】
(工程(B))
工程(B)は、半導体チップを、仮固定フィルム上に仮固定する工程である。半導体チップの仮固定は、例えば、フリップチップボンダー、ダイボンダー等の装置を用いて行うことができる。半導体チップの配置のレイアウト及び配置数は、仮固定フィルムの形状、大きさ、目的とする半導体チップパッケージの生産数等に応じて適切に設定できる。例えば、複数行で、かつ複数列のマトリックス状に半導体チップを整列させて、仮固定してもよい。
【0186】
(工程(C))
工程(C)は、半導体チップ上に封止層を形成する工程である。封止層は、上述した樹脂組成物の硬化物によって形成する。封止層は、通常、半導体チップ上に樹脂組成物層を形成する工程と、この樹脂組成物層を熱硬化させて封止層を形成する工程とを含む方法で形成する。
【0187】
樹脂組成物の優れた圧縮成型性を活用して、樹脂組成物層の形成は、圧縮成型法によって行うことが好ましい。圧縮成型法では、通常、半導体チップ及び樹脂組成物を型に配置し、その型内で樹脂組成物に圧力及び必要に応じて熱を加えて、半導体チップを覆う樹脂組成物層を形成する。
【0188】
圧縮成型法の具体的な操作は、例えば、下記のようにしうる。圧縮成型用の型として、上型及び下型を用意する。また、前記のように仮固定フィルム上に仮固定された半導体チップに、樹脂組成物を塗布する。樹脂組成物を塗布された半導体チップを、基材及び仮固定フィルムと一緒に、下型に取り付ける。その後、上型と下型とを型締めして、樹脂組成物に熱及び圧力を加えて、圧縮成型を行う。
【0189】
また、圧縮成型法の具体的な操作は、例えば、下記のようにしてもよい。圧縮成型用の型として、上型及び下型を用意する。下型に、樹脂組成物を載せる。また、上型に、半導体チップを、基材及び仮固定フィルムと一緒に取り付ける。その後、下型に載った樹脂組成物が上型に取り付けられた半導体チップに接するように上型と下型とを型締めし、熱及び圧力を加えて、圧縮成型を行う。
【0190】
成型条件は、樹脂組成物の組成により異なり、良好な封止が達成されるように適切な条件を採用できる。例えば、成型時の型の温度は、樹脂組成物が優れた圧縮成型性を発揮できる温度が好ましく、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、特に好ましくは120℃以上であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは170℃以下、特に好ましくは150℃以下である。また、成形時に加える圧力は、好ましくは1MPa以上、より好ましくは3MPa以上、特に好ましくは5MPa以上であり、好ましくは50MPa以下、より好ましくは30MPa以下、特に好ましくは20MPa以下である。キュアタイムは、好ましくは1分以上、より好ましくは2分以上、特に好ましくは5分以上であり、好ましくは60分以下、より好ましくは30分以下、特に好ましくは20分以下である。通常、樹脂組成物層の形成後、型は取り外される。型の取り外しは、樹脂組成物層の熱硬化前に行ってもよく、熱硬化後に行ってもよい。
【0191】
樹脂組成物層の形成は、樹脂シートと半導体チップとを積層することによって行ってもよい。例えば、樹脂シートの樹脂組成物層と半導体チップとを加熱圧着することにより、半導体チップ上に樹脂組成物層を形成することができる。樹脂シートと半導体チップとの積層は、通常、基材の代わりに半導体チップを用いて、回路基板の製造方法における樹脂シートと基材との積層と同様にして行うことができる。
【0192】
半導体チップ上に樹脂組成物層を形成した後で、この樹脂組成物層を熱硬化させて、半導体チップを覆う封止層を得る。これにより、樹脂組成物の硬化物による半導体チップの封止が行われる。樹脂組成物層の熱硬化条件は、回路基板の製造方法における樹脂組成物層の熱硬化条件と同じ条件を採用してもよい。さらに、樹脂組成物層を熱硬化させる前に、樹脂組成物層に対して、硬化温度よりも低い温度で加熱する予備加熱処理を施してもよい。この予備加熱処理の処理条件は、回路基板の製造方法における予備加熱処理と同じ条件を採用してもよい。
【0193】
(工程(D))
工程(D)は、基材及び仮固定フィルムを半導体チップから剥離する工程である。剥離方法は、仮固定フィルムの材質に応じた適切な方法を採用することが望ましい。剥離方法としては、例えば、仮固定フィルムを加熱、発泡又は膨張させて剥離する方法が挙げられる。また、剥離方法としては、例えば、基材を通して仮固定フィルムに紫外線を照射して、仮固定フィルムの粘着力を低下させて剥離する方法が挙げられる。
【0194】
仮固定フィルムを加熱、発泡又は膨張させて剥離する方法において、加熱条件は、通常、100℃~250℃で1秒間~90秒間又は5分間~15分間である。また、紫外線を照射して仮固定フィルムの粘着力を低下させて剥離する方法において、紫外線の照射量は、通常、10mJ/cm2~1000mJ/cm2である。
【0195】
(工程(E))
工程(E)は、半導体チップの基材及び仮固定フィルムを剥離した面に、絶縁層としての再配線形成層を形成する工程である。
【0196】
再配線形成層の材料は、絶縁性を有する任意の材料を用いることができる。中でも、半導体チップパッケージの製造のしやすさの観点から、感光性樹脂及び熱硬化性樹脂が好ましい。また、この熱硬化性樹脂として、本発明の樹脂組成物を用いてもよい。
【0197】
再配線形成層を形成した後、半導体チップと再配線層とを層間接続するために、再配線形成層にビアホールを形成してもよい。
【0198】
再配線形成層の材料が感光性樹脂である場合のビアホールの形成方法では、通常、再配線形成層の表面に、マスクパターンを通して活性エネルギー線を照射して、照射部の再配線形成層を光硬化させる。活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、可視光線、電子線、X線等が挙げられ、特に紫外線が好ましい。紫外線の照射量及び照射時間は、感光性樹脂に応じて適切に設定できる。露光方法としては、例えば、マスクパターンを再配線形成層に密着させて露光する接触露光法、マスクパターンを再配線形成層に密着させずに平行光線を使用して露光する非接触露光法、などが挙げられる。
【0199】
再配線形成層を光硬化させた後で、再配線形成層を現像し、未露光部を除去して、ビアホールを形成する。現像は、ウェット現像、ドライ現像のいずれを行ってもよい。現像の方式としては、例えば、ディップ方式、パドル方式、スプレー方式、ブラッシング方式、スクラッピング方式等が挙げられ、解像性の観点から、パドル方式が好適である。
【0200】
再配線形成層の材料が熱硬化性樹脂である場合のビアホールの形成方法としては、例えば、レーザー照射、エッチング、メカニカルドリリング等が挙げられる。中でも、レーザー照射が好ましい。レーザー照射は、炭酸ガスレーザー、UV-YAGレーザー、エキシマレーザー等の光源を用いる適切なレーザー加工機を用いて行うことができる。
【0201】
ビアホールの形状は、特に限定されないが、一般的には円形(略円形)とされる。ビアホールのトップ径は、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは20μm以下であり、好ましくは3μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上である。ここで、ビアホールのトップ径とは、再配線形成層の表面でのビアホールの開口の直径をいう。
【0202】
(工程(F))
工程(F)は、再配線形成層上に、導体層としての再配線層を形成する工程である。再配線形成層上に再配線層を形成する方法は、回路基板の製造方法における絶縁層上への導体層の形成方法と同様でありうる。また、工程(E)及び工程(F)を繰り返し行い、再配線層及び再配線形成層を交互に積み上げて(ビルドアップ)もよい。
【0203】
(工程(G))
工程(G)は、再配線層上にソルダーレジスト層を形成する工程である。ソルダーレジスト層の材料は、絶縁性を有する任意の材料を用いることができる。中でも、半導体チップパッケージの製造のしやすさの観点から、感光性樹脂及び熱硬化性樹脂が好ましい。また、熱硬化性樹脂として、本発明の樹脂組成物を用いてもよい。
【0204】
また、工程(G)では、必要に応じて、バンプを形成するバンピング加工を行ってもよい。バンピング加工は、半田ボール、半田めっきなどの方法で行うことができる。また、バンピング加工におけるビアホールの形成は、工程(E)と同様に行うことができる。
【0205】
(工程(H))
半導体チップパッケージの製造方法は、工程(A)~(G)以外に、工程(H)を含んでいてもよい。工程(H)は、複数の半導体チップパッケージを個々の半導体チップパッケージにダイシングし、個片化する工程である。半導体チップパッケージを個々の半導体チップパッケージにダイシングする方法は特に限定されない。
【0206】
<半導体装置>
半導体装置は、半導体チップパッケージを備える。半導体装置としては、例えば、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、スマートフォン、タブレット型デバイス、ウェラブルデバイス、デジタルカメラ、医療機器、及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【実施例0207】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0208】
<合成例1:活性エステル樹脂の合成>
反応容器に1-ナフトール288質量部、トルエン1400質量部を仕込み、容器内を減圧窒素置換させながら溶解させた。続いて、イソフタル酸クロライド203質量部を仕込み溶解させた。容器内を窒素パージしながら20%水酸化ナトリウム水溶液400gを3時間かけ滴下した。その際、系内の温度は60℃以下に制御した。その後、1時間攪拌させ反応させた。反応終了後、反応物を分液し水層を取り除いた。水層のpHが7になるまでこの操作を繰り返し、加熱減圧条件でトルエン等を留去させ活性エステル樹脂(上記式(3)の化合物;分子量418.4)を得た。活性エステル樹脂の官能基当量は209g/当量、軟化点78℃であった。
【0209】
<実施例1>
グリシジルアミン型エポキシ樹脂(ADEKA社製「EP-3980S」、エポキシ当量115g/eq.)2部、脂環型エポキシ樹脂(ダイセル社製「セロキサイド2021P」、エポキシ当量136g/eq.)7部、合成例1で得た活性エステル樹脂(軟化点78℃)5部、酸無水物系硬化剤(新日本理化製「MH-700」)5部、シリカA(平均粒径9um、比表面積5.0m2/g,KBM573(信越化学工業製)で表面処理されたもの)を140部、硬化促進剤(四国化成社製「1B2PZ」、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール)0.1部を、ミキサーを用いて均一に分散して、樹脂組成物を得た。
【0210】
<実施例2>
シリカAを140部使用する代わりに、アルミナA(平均粒径10μm、比表面積0.3m2/g、KBM5783(信越化学製)で表面処理されたもの)を170部使用したこと以外は、実施例1と同じ操作を行って、樹脂組成物を得た。
【0211】
<実施例3>
シリカAを140部使用する代わりに、シリカB(平均粒径9μm、比表面積5.0m2/g、KBM503(信越化学製)で表面処理されたもの)を140部使用したこと以外は、実施例1と同じ操作を行って、樹脂組成物を得た。
【0212】
<実施例4>
合成例1で得た活性エステル樹脂(軟化点78℃)の使用量を5部から3部に変更したこと、酸無水物系硬化剤(新日本理化製「MH-700」)の使用量を5部から7部に変更したこと以外は、実施例1と同じ操作を行って、樹脂組成物を得た。
【0213】
<実施例5>
合成例1で得た活性エステル樹脂(軟化点78℃)の使用量を5部から7部に変更したこと、酸無水物系硬化剤(新日本理化製「MH-700」)の使用量を5部から3部に変更したこと以外は、実施例1と同じ操作を行って、樹脂組成物を得た。
【0214】
<比較例1>
合成例1で得た活性エステル樹脂(軟化点78℃)を使用しなかったこと、酸無水物系硬化剤(新日本理化製「MH-700」)の使用量を5部から10部に変更したこと以外は、実施例1と同じ操作を行って、樹脂組成物を得た。
【0215】
<比較例2>
合成例1で得た活性エステル樹脂(軟化点78℃)を5部使用する代わりに、市販の活性エステル樹脂(DIC社製「HPC-8000」、軟化点152℃)5部使用したこと以外は、実施例1と同じ操作を行って、樹脂組成物を得た。
【0216】
<試験例1:高温高湿環境試験(HAST)後のシリコンウエハに対する密着性の評価>
12インチシリコンウエハ上に、実施例及び比較例で作製した樹脂組成物を、コンプレッションモールド装置(金型温度:130℃、圧力:6MPa、キュアタイム:10分)を用いて圧縮成型して、厚さ300μmの樹脂組成物層を形成した。その後、180℃で90分間加熱して樹脂組成物層を熱硬化させてサンプルを作製した。作製したサンプルについて、高度加速寿命試験装置(楠本化成社製「PM422」)を用いて、130℃、85%RHの条件で100時間の高温高湿環境試験を実施した。試験後のサンプルについて、硬化物と下地のシリコンウエハの界面に剥がれがあるか確認した。硬化物と下地のシリコンウエハの界面に剥がれが無い場合を「○」、硬化物と下地のシリコンウエハの界面に剥がれがある場合を「×」と評価した。
【0217】
<試験例2:誘電正接の測定>
離型処理した12インチシリコンウエハ上に、実施例及び比較例で作製した樹脂組成物を、コンプレッションモールド装置(金型温度:130℃、圧力:6MPa、キュアタイム:10分)を用いて圧縮成型して、厚さ300μmの樹脂組成物層を形成した。その後、離型処理したシリコンウエハから樹脂組成物を剥がし、180℃で90分間加熱して樹脂組成物を熱硬化させサンプルを作製した。ファブリペロー法により79GHzでの誘電正接の測定を行った。3本の試験片について測定を行い、平均値を算出した。
【0218】
<試験例3:貯蔵弾性率の測定>
離型処理した12インチシリコンウエハ上に、実施例及び比較例で作製した樹脂組成物を、コンプレッションモールド装置(金型温度:130℃、圧力:6MPa、キュアタイム:10分)を用いて圧縮成型して、厚さ300μmの樹脂組成物層を形成した。その後、離型処理したシリコンウエハから樹脂組成物を剥がし、180℃で90分間加熱して樹脂組成物を熱硬化させ硬化物サンプルを作製した。上記硬化物を幅7mm、長さ40mmの試験片に切断し、動的機械分析装置DMS-6100(セイコーインスツルメンツ(株)製)を使用して、引張モードにて動的機械分析を行った。試験片を前記装置に装着後、周波数1Hz、昇温速度5℃/分の測定条件にて測定した。かかる測定における25℃のときの貯蔵弾性率(E‘)GPaの値を読み取った。
【0219】
<試験例4:フローマークの評価>
12インチシリコンウエハ上に、実施例及び比較例で作製した樹脂組成物を、コンプレッションモールド装置(金型温度:130℃、圧力:6MPa、キュアタイム:10分)を用いて圧縮成型して、厚さ300μmの樹脂組成物層を形成した。その後、150℃で60分間加熱させた後、樹脂組成物層の表面を目視にてフローマークを確認した。フローマークがあるものを「×」、フローマークがないものを「○」とした。
【0220】
<試験例5:樹脂組成物の性状の評価>
実施例及び比較例で作製した樹脂組成物の性状を評価した。25℃で樹脂組成物が流動性のある液状である場合を「液状」、流動性のない粘土状である場合を「粘土状」と評価した。
【0221】
実施例及び比較例の樹脂組成物の不揮発成分及びその使用量、並びに試験例の測定結果及び評価結果を下記表1に示す。
【0222】
【0223】
上記の結果の通り、(B)硬化剤として、(B-1)~(B-3)成分を用いた場合に、誘電特性が低減され、且つフローマークの発生が抑制された硬化物を得ることができることがわかる。