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特開2022-189854寸法安定性を有する未焼結の延伸ポリテトラフルオロエチレン複合膜
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189854
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】寸法安定性を有する未焼結の延伸ポリテトラフルオロエチレン複合膜
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/00 20060101AFI20221215BHJP
   B29C 55/12 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
C08J9/00 A CEW
B29C55/12
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022161808
(22)【出願日】2022-10-06
(62)【分割の表示】P 2021518629の分割
【原出願日】2018-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】391028362
【氏名又は名称】ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【弁理士】
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】江端 ゆり
(72)【発明者】
【氏名】トッド エス.セイラー
(57)【要約】
【課題】未焼結の二軸延伸PTFE/熱可塑性ポリマー複合膜を形成する方法を提供すること。
【解決手段】この方法は、熱可塑性ポリマー粒子の融点がフィブリル化可能なPTFE粒子の融点よりも低い、フィブリル化可能なポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子と熱可塑性ポリマー粒子とをブレンドすることを含む。この方法は、ブレンドをテープに成形し、テープを第一の温度で第一の方向に延伸しそして加熱することをさらに含む。次に、延伸したテープを第二の方向に同時に又は順次に延伸して、ePTFE複合膜を形成する。この方法は焼結温度を含まない。ePTFE粒子及び熱可塑性ポリマー粒子の平均粒子サイズは1μm未満である。さらに、ePTFE複合膜は、幾何平均マトリックス弾性率の幾何平均マトリックス引張強度に対する比が少なくとも約6であり、絶対寸法変化率が約1.5%未満である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の融点を有する複数のフィブリル化可能なポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子と、該第一の融点よりも低い第二の融点を有する複数の熱可塑性ポリマー粒子とを含むブレンドを提供し、
該ブレンドをテープに成形し、
該テープを該第二の融点未満で第一の方向に延伸して延伸テープを形成し、そして
該延伸テープを、該第二の融点より高いが該第一の融点未満で、第二の方向に延伸することによりePTFE複合膜を形成するに際し、
該延伸が、該ePTFE複合膜が焼結されないように、該第一の融点を下回る温度で起こることを特徴とする、延伸複合ePTFE膜を形成する方法。
【請求項2】
複数の前記延伸工程を順次に実施する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
複数の前記延伸工程を同時に実施する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記熱可塑性ポリマーは熱可塑性フルオロポリマーである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記熱可塑性フルオロポリマーは、ポリ(エテン-コ-テトラフルオロエテン)(ETFE)、ポリ二フッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)及びそれらの組み合わせから選ばれる、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記膜は、幾何平均マトリックス弾性率の幾何平均マトリックス引張強度に対する比が約6以上である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記ブレンドは、40質量%~79.9質量%のフィブリル化可能なポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子及び20.1質量%~60質量%の熱可塑性ポリマー粒子を含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記フィブリル化可能なPTFE粒子及び熱可塑性ポリマー粒子は、それぞれ平均粒子サイズが1μm未満である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記ePTFE複合膜は絶対寸法変化が1.5%未満である、請求項1記載の方法。
【請求項10】
1μm未満の平均粒子サイズを有するフィブリル化可能なポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子を含む第一の複数の粒子と、
1μm未満の平均粒子サイズを有する熱可塑性ポリマー粒子を含む第二の複数の粒子であって、該熱可塑性ポリマー粒子の融点が該フィブリル化可能なPTFE粒子の融点よりも低い第二の複数の粒子と
を含むブレンドであって、40質量%~79.9質量%のフィブリル化可能なPTFE粒子及び20.1質量%~60質量%の熱可塑性ポリマー粒子を含むブレンドを提供し、
該ブレンドを潤滑剤中でペースト押出してカレンダ加工テープを形成し、
該カレンダ加工テープを乾燥して該潤滑剤を除去することにより、乾燥したカレンダ加工テープを作製し、
該乾燥したカレンダ加工テープを該熱可塑性ポリマーの融点より低い温度で第一の方向に延伸することにより、一軸延伸ePTFE複合膜を形成し、
該一軸延伸多孔質膜を、該熱可塑性ポリマーの融点より高いが、該フィブリル化可能なPTFEの融点より低い温度に加熱し、そして
該一軸延伸多孔質膜を、該第一方向とは異なる第二方向に延伸することにより二軸延伸ePTFE複合膜を形成することを特徴とする、焼結されていない二軸延伸複合ePTFE膜を形成する方法。
【請求項11】
複数の前記延伸工程を順次に実施する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
複数の前記延伸工程を同時に実施する、請求項10記載の方法。
【請求項13】
前記ePTFE複合膜は絶対寸法変化が1.5%未満である、請求項10記載の方法。
【請求項14】
前記膜は、幾何平均マトリックス弾性率の幾何平均マトリックス引張強度に対する比が約6以上である、請求項10記載の方法。
【請求項15】
40質量%~79.9質量%のフィブリル化可能なポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子、
20.1質量%~60質量%の熱可塑性ポリマー粒子、
フィブリルによって相互接続された複数のノード、及び
約6以上の幾何平均マトリックス弾性率の幾何平均マトリックス引張強度に対する比
を備えた、未焼結の二軸ePTFE複合膜。
【請求項16】
前記フィブリルはePTFEを含み、かつ、前記ノードは前記ePTFE複合膜の総熱可塑性ポリマー含有量よりも高い熱可塑性ポリマー含有量を含む、請求項15記載の膜。
【請求項17】
前記フィブリルは約85%以上の前記ePTFEを含む、請求項15記載の膜。
【請求項18】
前記ノードは約51質量%以上の前記熱可塑性ポリマーを含む、請求項15記載の膜。
【請求項19】
前記ePTFE複合膜は、25℃から200℃に5℃/分の速度で加熱し、かつ、200℃で5分間保持して測定された動的機械分析(DMA)による寸法変化が、1.5%未満である、請求項15記載の膜。
【請求項20】
前記熱可塑性ポリマーは、ポリ(エチレン-コ-テトラフルオロエテン)(ETFE)、ポリ二フッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ペルフルオロアルコキシ(PFA)及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる、請求項15記載の膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、焼結なしで寸法的に安定である延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)複合膜、より具体的には、少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを含むePTFE複合膜に関する。そのような複合膜を製造する方法も提供される。
【背景技術】
【0002】
ePTFE膜及びePTFE複合膜は、使用前に寸法安定性を改善するために少なくとも1つの焼結工程に供されることがある。ePTFEの融点を超える焼結工程により、ePTFE膜の寸法安定性が向上することが知られているが、焼結は結晶化度を低下させ、非晶含有量を増加させることにより、膜に悪影響を及ぼす。非晶性PTFEを含む膜は、しばしば、転移温度が約120℃の剛直な非晶相を示す。この転移温度を超えると、焼結ePTFE製品の機械的特性が低下することがある。例えば、ePTFE膜を焼結すると、平均マトリックス弾性率、経時的な寸法安定性の低下及び結晶化度の低下など、膜の特性に悪影響を及ぼす。当業者には、ePTFEを焼結し、それによって結晶化度を失う必要なしに、ePTFEから誘導された寸法的に安定な多孔質膜を生成することが望まれている。したがって、高温で経時的に寸法的に安定であり、高いマトリックス弾性率を示し、幾何平均マトリックス弾性率/幾何平均マトリックス引張強度の比が比較的高いePTFE膜及びePTFE複合膜を提供する必要性がある。
【発明の概要】
【0003】
1つの実施形態は、未焼結の二軸延伸ePTFE複合膜を形成する方法に関する。この方法は、第一の融点を有する第一の複数のフィブリル化可能なポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子と、第一の融点よりも低い第二の融点を有する第二の複数の熱可塑性ポリマー粒子とを含むブレンドを提供することを含む。次に、ブレンドをテープに成形する。次に、テープを、第一の融点よりも低い温度で、第一の方向に延伸し、次いで、第一の方向とは異なる(例えば、直交する)第二の方向に延伸して、ePTFE複合膜を形成する。第一の方向への延伸は、約170℃~約300℃など、第二の融点よりも低い温度で実施することができる。第二の方向への延伸は、約280℃~327℃など、第二の融点より高く、かつ、第一の融点より低い温度で実施することができる。ブレンドは、40質量%~79.9質量%のフィブリル化可能なPTFE粒子と、20.1質量%~60質量%の熱可塑性ポリマーを含む。ePTFE複合膜は、少なくとも約6の幾何平均マトリックス弾性率/幾何平均マトリックス引張強度比を有することができる。さらに、この方法は、327℃を超える加熱工程を欠くことができる。
【0004】
別の実施形態は、未焼結の二軸延伸ePTFE複合膜を形成する方法に関する。この方法は、平均粒子サイズが1μm未満の第一の複数のフィブリル化可能なポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子と、平均粒子サイズが1μm未満の第二の複数の熱可塑性ポリマー粒子とを含むブレンドを提供することを含む。例示的な実施形態において、熱可塑性ポリマー粒子の平均粒子サイズは、フィブリル化可能なPTFE粒子の平均粒子サイズと同じか又はそれよりも小さい。さらに、熱可塑性ポリマーの融点は、フィブリル化可能なPTFE粒子の融点よりも低い。ブレンドは、40質量%~79.9質量%のフィブリル化可能なPTFE粒子と、20.1質量%~60質量%の熱可塑性ポリマー粒子を含む。この方法はまた、潤滑剤を含むブレンドをペースト押出して、カレンダ加工テープを形成すること、カレンダ加工テープを乾燥させて潤滑剤を除去し、乾燥したカレンダ加工テープを製造すること、乾燥したカレンダ加工テープを熱可塑性ポリマーの融点より低い温度で第一の方向に延伸させて、一軸延伸ePTFE複合膜を形成することを含む。この方法はまた、一軸延伸多孔質ePTFE複合膜を、熱可塑性ポリマーの融点より高く、フィブリル化可能なPTFE粒子の融点より低い温度に加熱し、同時に又は順次に、一軸延伸多孔質ePTFE複合膜を第二の方向に延伸し、ここで、第二の方向は第一の方向とは異なり、二軸延伸ePTFE複合膜を形成することを含む。第一の方向に延伸する工程の温度は、約170℃~約300℃であることができ、加熱工程の温度は、約280℃~約300℃であることができる。膜を第二の方向に延伸する工程は、加熱の工程と同時であってよい。この方法は、327℃超などのフィブリル化可能なPTFE粒子の融点以上の温度での加熱工程を欠いていてよい。熱可塑性ポリマーとしては、ポリ(エテン-コ-テトラフルオロエテン)(ETFE)、ポリ二フッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ペルフルオロアルコキシ(PFA)及びそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0005】
さらに別の実施形態は、複数のノード及びフィブリルを有する未焼結の二軸ePTFE複合膜に関する。ePTFE複合膜は、40質量%~79.9質量%のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、20.1質量%~60質量%の熱可塑性ポリマーを含み、そして少なくとも約6の幾何平均マトリックス弾性率/幾何平均マトリックス引張強度比を備える。フィブリルは、主にePTFEを含み、ノードは、ePTFE複合膜に元々存在していた熱可塑性ポリマーの量よりも多い量の熱可塑性ポリマーを含む。ePTFE複合膜は、25℃から200℃に5℃/分の速度で加熱し、200℃で5分間保持したときに動的機械分析(DMA)で測定して、1.5%未満の寸法変化を示すことができる。フィブリルは、少なくとも約85質量%又は約90質量%のePTFE複合膜を含むことができる。ノードは、少なくとも約51質量%の熱可塑性ポリマーを含むことができる。熱可塑性ポリマーとしては、ポリ(エテン-コ-テトラフルオロエテン)(ETFE)、ポリ二フッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ペルフルオロアルコキシ(PFA)及びそれらの組み合わせを挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
添付の図面は、本開示のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に取り込まれ、その一部を構成し、実施形態を示し、記載とともに、本開示の原理を説明するのに役立つ。
【0007】
図1図1は、少なくとも1つの実施形態による、二軸延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)複合膜を形成する方法を示すフローチャートである。
【0008】
図2図2は、少なくとも1つの実施形態による、約260℃の融点を有する例1のポリ(エテン-コ-テトラフルオロエテン)(ETFE)樹脂の示差走査熱量測定(DSC)グラフである。
【0009】
図3図3は、少なくとも1つの実施形態による、約344℃の融点を有する例7のPTFE/ETFE複合膜のDSCグラフであり、これは、PTFE複合膜が事前に焼結されていなかったことを示している。
【0010】
図4図4は、少なくとも1つの実施形態による、約342℃の融点を有する、例9のFEP/PTFE複合膜のDSCグラフである。
【0011】
図5図5は、少なくとも1つの実施形態による、主にePTFEから形成されたフィブリルと、熱可塑性ポリマーを豊富に含むノードとを有するePTFE複合膜の構造の概略図である。
【0012】
図6図6は、少なくとも1つの実施形態による、ETFE/ePTFE複合膜の構造を示す走査型電子顕微鏡写真(SEM)である。そして、
【0013】
図7図7は、別の実施形態による、ETFE/ePTFE複合膜の構造を示す走査型電子顕微鏡写真(SEM)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
当業者は、本開示の様々な態様が、意図された機能を発揮するように構成された任意の数の方法及び装置によって実現されうることを容易に理解するであろう。本明細書で参照される添付の図面は、必ずしも縮尺通りに描かれているわけではなく、本開示の様々な態様を例示するために誇張されている場合があり、その点に関して、図面は限定として解釈されるべきではないことにも留意されたい。「フィブリル化可能なPTFE粒子」及び「フィブリル化可能なPTFE」という用語は、本明細書において交換可能に使用されうることが理解されるべきである。さらに、「熱可塑性ポリマー粒子」及び「熱可塑性ポリマー」という用語は、本明細書において交換可能に使用されうる。また、延伸複合膜は多孔性であることを理解されたい。
【0015】
最初に図1を参照すると、それぞれが異なる融点を有するPTFE粒子及び熱可塑性ポリマー粒子からePTFE複合膜を作製するための方法1000が示されている。得られたePTFE複合膜は、PTFEと熱可塑性ポリマーとの両方の構造的特徴を備えている。得られたePTFE複合膜は、優れた寸法安定性及び機械的特性を示す。「熱可塑性ポリマー」という用語は、単一の熱可塑性ポリマー又は複数の熱可塑性ポリマーを含むことが意図されることが理解されるべきである。
【0016】
図1の方法1000の工程1010に示されるように、熱可塑性ポリマー粒子は提供される。本開示によるePTFE複合膜を形成するのに有用なフィブリル化可能なPTFE粒子は、例えば、ゴアの米国特許第3,953,566号明細書(例えば、ホモポリマー)及びベイルの米国特許第6,541,589号明細書(例えば、変性ポリマー)に開示されている。ポリマーは、例えば、ペルフルオロブチルエチレン(PFBE)、ポリ(メチルビニルエーテル)(PMVE)、ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)などで変性されうる。PTFE粒子は1.0μm未満の平均粒子サイズを有することができる。PTFEの粒子サイズは、約0.1μm、約0.2μm、約0.3μm、約0.4μm、約0.5μm、約0.6μm、約0.7μm、約0.8μm、約0.9μm又は約1.0μmであることができる。幾つかの実施形態において、PTFE粒子サイズは、約0.1μm~約1.0μm、約0.2μm~約0.9μm又は約0.3μm~約0.8μmである。
【0017】
図1の方法1000の工程1020に示されるように、熱可塑性ポリマー粒子は提供される。適切な熱可塑性ポリマー粒子としては、限定するわけではないが、ポリ(エテン-コ-テトラフルオロエテン)(ETFE)、ポリ二フッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フッ素化エチレンポリエチレン(FEP)、ペルフルオロアルコキシ(PFA)及びそれらの組み合わせが挙げられる。熱可塑性ポリマーの粒子サイズは、フィブリル化可能なPTFE粒子とほぼ同じサイズであることができ、又は、熱可塑性ポリマーの粒子サイズは、PTFE粒子よりも小さくてよい。熱可塑性ポリマーの粒子サイズは、約0.1μm、約0.2μm、約0.3μm、約0.4μm、約0.5μm、約0.6μm、約0.7μm、約0.8μm、約0.9μm又は約1.0μmであることができる。幾つかの実施形態において、熱可塑性ポリマーの粒子サイズは、約0.1μm~約1.0μm、約0.2μm~約0.9μm又は約0.3μm~約0.8μmである。
【0018】
図1の方法1000の工程1030に示されるように、複合樹脂は、工程1010からのPTFE粒子及び工程1020からの熱可塑性ポリマー粒子から形成される。複合樹脂形成工程1030は、工程1010からのフィブリル化可能なPTFE粒子を工程1020からの熱可塑性ポリマー粒子とブレンドすることを含む。1つの実施形態において、PTFE粒子は、適切な液体(例えば、水)中で重合されて、PTFE粒子を含む第一の分散液を形成することができる。目立たない熱可塑性ポリマー粒子は、適切な液体(例えば、水)中で重合されて、熱可塑性ポリマー粒子を含む第二の分散液を形成することができる。各分散液中の分散粒子の固形分に応じて、2つの分散液を所望の比率(例えば、熱可塑性ポリマー粒子分散液/フィブリル化可能なPTFE粒子分散液)でブレンドして、ブレンド中の各ポリマーの所望の質量パーセントを生成することができる。ブレンドは、約40質量%、約50質量%、約55質量%、約60質量%、約65質量%、約70質量%、約75質量%、約77質量%又は79.9質量%のPTFEを含むことができる。幾つかの実施形態において、ブレンドのPTFE含有量は、約40質量%~79.9質量%、約50質量%~約70質量%又は約55質量%~約65質量%であることができる。特定の実施形態において、ブレンドのPTFE含有量は、75質量%、76質量%、77質量%、78質量%、79質量%、79.5質量%又は79.9質量%と高くてもよい。さらに、ブレンドは、20.1質量%、約23質量%、約25質量%、約30質量%、約35質量%、約45質量%、約50質量%、約55質量%又は約60質量%の熱可塑性ポリマーを含むことができる。幾つかの実施形態において、ブレンドの熱可塑性ポリマー含有量は、約23質量%~約60質量%、約30質量%~約50質量%又は約35質量%~約45質量%であることができる。特定の実施形態において、ブレンドの熱可塑性ポリマー含有量は、20.1質量%、20.5質量%、21質量%、22質量%、23質量%又は24質量%と低くてもよい。例示的な実施形態において、ブレンドは、40質量%~79.9質量%のePTFE及び20.1質量%~60質量%の熱可塑性ポリマーを含む。
【0019】
樹脂形成工程1030は、他の成分をブレンドすること及び/又は所望の重量分率及び他の所望の特性を有するブレンドされた分散液を生成するための他の工程を含むことができる。例えば、樹脂形成工程1030は、例えば、HNO3を添加することによって、ブレンドされた分散液を凝固させることを含むことができ、これは、次に攪拌される。樹脂形成工程1030は、また、又は代替的に、ブレンドされた分散液を真空オーブン内で、又は、当該技術分野で知られている他の適切な乾燥方法によって乾燥させて、複合樹脂を生成することを含むことができる。さらに、樹脂形成工程1030は、ブレンドされた分散液を所望の固形分%に希釈することを含むことができる。固形分%は、約10質量%、約15質量%、約20質量%、約25質量%、約30質量%、約35質量%、約40質量%、約45質量%又は約50質量%であることができる。幾つかの実施形態において、固形分%は、約10質量%~約50質量%、約15質量%~約45質量%又は約20質量%~約40質量%である。幾つかの実施形態において、固形分%は約15質量%である。
【0020】
図1の方法1000の工程1040に示されるように、次に複合樹脂はテープに成形される。成形工程1040は、複合樹脂を軽質鉱油などの適切な潤滑剤と混合して潤滑された混合物を形成する前に、複合樹脂形成工程1030で調製された複合樹脂を約10℃に冷却することから始まる。他の適切な潤滑剤としては、可燃性、蒸発速度及び経済的考慮事項に従って選択される脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素などが挙げられる。本明細書で使用されるときに、「潤滑剤」という用語は、プロセス条件でポリマー用の溶媒ではない非圧縮性流体からなる処理助剤を記載することが意図されることを理解されたい。適切な潤滑剤の1つの特定の例は、ISOPAR(商標)K SOLVENT(インペリアルオイルケミカル、カルガリー、カナダから市販されている)などのイソパラフィン系炭化水素である。
【0021】
次に、潤滑された混合物を圧縮してペレットを作成することができ、これを押出機ダイを通して押出して、湿潤テープを製造することができる。圧力(圧縮)を課す方法の非限定的な例としては、ラム押出(例えば、潤滑剤が存在するときに、典型的に、ペースト押出又はペースト処理と呼ばれる)が挙げられる。次に、得られた湿潤テープは、カレンダ加工され、その後に、潤滑剤を除去するためにカレンダ加工テープを乾燥させることができる。管を押出し、それに続いて管を所望の厚さにスリットするなどの他の既知の方法を使用して、テープを形成することができる。カレンダ加工テープの厚さは、約0.10mm、約0.20mm、約0.30mm、約0.40mm、約0.50mm、約0.60mm、約0.70mm、約0.80mm、約0.90mm又は約1.0mmであることができる。幾つかの実施形態において、カレンダ加工テープの厚さは、約0.10mm~約1.0mm、約0.20mm~約0.60mm又は約0.30mm~約0.40mmであることができる。乾燥温度は、熱可塑性ポリマーの融解温度よりも低い。乾燥温度は、約145℃、約150℃、約155℃、約160℃、約165℃、約170℃又は約175℃であることができる。幾つかの実施形態において、乾燥温度は、約145℃~約175℃、約150℃~約170℃又は約155℃~約165℃である。幾つかの実施形態において、乾燥温度は約160℃である。
【0022】
図1の方法1000の工程1050に示されるように、次に、テープは第一の方向に延伸される。延伸工程1050は、直列の2つのオーブン又は単一の温度調整可能なオーブンなどの温度制御された環境で実施されうる。テープを第一方向に延伸するために、二軸テンターフレームなどでテープを拘束することができる。次に、拘束されたテープを第一の温度に加熱することができ、ここで、第一の温度は、熱可塑性ポリマーの融点よりも低い。適切な温度は熱可塑性ポリマーに固有であり、一般にPTFEと選択した熱可塑性ポリマーの両方の融解温度よりも低い。融解温度が170℃であるPVDFでは、適切な温度としては約170℃未満の温度が挙げられる。この例において、第一の温度は、約150℃、約155℃、約160℃、約165℃又は約170℃であることができる。PVDFを含む幾つかの実施形態において、第一の温度は、約150℃~約170℃又は約155℃~約165℃であることができる。融解温度が200℃であるPCTFEでは、適切な温度としては約200℃未満の温度が挙げられる。そのような実施形態において、第一の温度は、約180℃、約185℃、約190℃、約195℃又は約200℃であることができる。幾つかの実施形態において、第一の温度は、約180℃~約200℃又は約185℃~約195℃であることができる。融解温度が280℃であるFEPでは、適切な温度としては約280℃未満の温度が挙げられる。この実施形態において、第一の温度は、約260℃、約265℃、約270℃、約275℃又は約280℃であることができる。幾つかの実施形態において、第一の温度は、約260℃~約280℃又は約265℃~約275℃であることができる。融解温度が310℃であるPFAでは、適切な温度としては約310℃未満の温度が挙げられる。この例において、第一の温度は、約290℃、約295℃、約300℃、約305℃又は約310℃であることができる。幾つかの実施形態において、第一の温度は、約290℃~約310℃又は約295℃~約305℃である。融解温度が260℃であるETFEでは、適切な温度としては約260℃未満の温度が挙げられる。そのような実施形態において、第一の温度は、約240℃、約245℃、約250℃、約255℃又は約260℃であることができる。幾つかの実施形態において、第一の温度は、約240℃~約260℃、約245℃~約255℃又は約249℃~約251℃である。他の実施形態において、適切な第一の温度は、ETFEについては約290℃未満、PVDFについては約170℃未満、PCTFEについては約200℃未満、FEPについては約280℃未満又はPFAについては約310℃未満であることができる。幾つかの実施形態において、拘束されたテープは、約250℃の第一の温度に加熱される。
【0023】
図1の方法1000の工程1060及び1070に示されるように、工程1050からの一軸延伸多孔質膜は、工程1060での加熱後に(又は加熱工程1060と同時に)、PTFEの融解温度よりも低いが、熱可塑性ポリマーの融解温度を超える温度で第二の方向に(すなわち、第一の方向に直交して)さらに延伸される。幾つかの実施形態において、工程1070における第二の延伸は、第一の方向とは異なる第二の方向である。さらなる実施形態において、第二の方向は第一の方向に直交している。例示的な実施形態において、複合膜は、PTFEの融解温度よりも低く、熱可塑性ポリマーの融解温度よりも高い温度に加熱され、次いで、第二の方向に延伸される。加熱工程1060は、工程1050の第一のオーブンとは異なる第二のオーブンで実施することができ、又は、加熱は、工程1050で利用されるオーブンで行うことができる。
【0024】
第二の温度は、工程1050の第一の温度よりも高い(すなわち、温度は熱可塑性樹脂の融解温度より高い)が、PTFEの融点よりも低い(すなわち、約340℃未満)。第二の温度は、約280℃、約285℃、約290℃、約295℃、約300℃、約305℃、約310℃又は約315℃であることができる。幾つかの実施形態において、第二の温度は、約280℃~約300℃、約290℃~約310℃又は約295℃~約305℃である。例示的な実施形態において、第二の温度は約300℃である。加熱工程1060は、約30秒、約60秒、約90秒又は約120秒実施されうる。特定の実施形態において、加熱工程1060は、約60秒~約90秒実施されうる。
【0025】
延伸の第一の方向及び第二の方向は、(i)長手方向又は押出方向とも呼ばれる機械方向(MD)、又は(ii)交差方向とも呼ばれる横断方向(TD)に対応することができ、ここで、TDはMDに直交している。幾つかの実施形態において、第一の方向は長手方向に向けられ、第二の方向は第一の延伸方向に対して横断方向である。他の実施形態において、第一の方向は横断方向に向けられ、第二の方向は第一の延伸方向に対して長手方向である。幾つかの標準的な機器に対応するために、横断方向に延伸する前に、テープを機械方向に延伸することが有利であることができる。逆に、テープを機械方向に延伸する前に、横断方向に延伸することも考えられる。
【0026】
図1の方法1000は、すべての工程でテープを327℃未満の温度に維持することも含む。工程1010からのフィブリル化可能なPTFE粒子は、約340℃の初期融点と、327℃の焼結後の第二の融点を有する。したがって、図1の方法1000は、どの工程でもテープを340℃以上の温度に加熱することを含まない。幾つかの実施形態において、方法1000は、テープを327℃以上、又はその焼結温度で加熱することを欠いている。幾つかの実施形態において、方法1000は、いかなる追加の加熱もなしに、加熱工程1050及び1070から形成されうる。テープをPTFEの初期融点未満に維持することにより、得られるePTFE複合膜100(図5)は未焼結である。
【0027】
図1に示される方法1000は、方法1000の様々な特徴の例として提供され、これらの例示された特徴の組み合わせは明らかに本発明の範囲内であるが、方法1000に示される工程は、本明細書で提供される本発明の概念が、より少ない工程、追加の工程又は図1に示される1つ以上の工程の代替工程を含むことから限定されることを示唆することが意図されない。例えば、様々な実施形態において、延伸工程1050、1070及び加熱工程1050、1060は、同時に及び/又は異なる順序で行うことができる。
【0028】
図1の方法1000に従って作製された二軸延伸ePTFE複合膜100は、図5に概略的に示されている。特に、ePTFE複合膜100は、フィブリル110、ノード120及び細孔130を含む微細構造を含む。ノード120は、ポリマー材料及びePTFEの塊であり、フィブリル110は、ePTFEから形成され、ノード120間を延在し、ノード120を相互接続する。ePTFE複合膜の微細構造は、例えば、熱可塑性ポリマーの粘度を変化させることによって変更することができ、その場合に、微細構造は、ほぼ平行なノードを含む(図7に示すように)。
【0029】
フィブリル110は、主にePTFEから形成され、これは、ePTFEがフィブリル110の重量のより多く(すなわち、50%超)を構成することを意味する。したがって、フィブリル110内のePTFEの熱可塑性ポリマーに対する質量比は1:1より大きい。幾つかの実施形態において、フィブリル110は、51質量%のePTFE、約55質量%のePTFE、約60質量%のePTFE、約65質量%のePTFE、約70質量%のePTFE、約75質量%のePTFE、約80質量%のePTFE、約85質量%のePTFE、約90質量%のePTFE又は約95質量%のePTFEから形成されうる。幾つかの実施形態において、フィブリル110は、少なくとも約90質量%のePTFE又は少なくとも約95質量%のePTFEあるいはそれを超えるePTFEから形成されうる。幾つかの実施形態において、フィブリル110は、実質的にePTFEから形成されているか、又は完全にePTFEから形成されている。本明細書で使用されるときに、「実質的に形成される」という用語は、フィブリルが完全に(例えば、100%)、又はほぼ完全に(例えば、99%、98%、97%、96%)ePTFEから形成されることを意味することが意図される。方法1000に関して、提供工程1010からのPTFEのより多くの部分は、フィブリル110内に存在しうる。
【0030】
ノード120は、熱可塑性ポリマーが豊富であることができ、それは、全体としてのePTFE複合膜100の熱可塑性ポリマー含有量よりもノード120における熱可塑性ポリマー含有量が高いことを意味する。幾つかの実施形態において、ノード120は、複合樹脂において提供される熱可塑性ポリマー含有量よりも多い熱可塑性ポリマー含有量を有することができる(図1における工程1030を参照されたい)。言い換えれば、約20質量%の熱可塑性ポリマー含有量を有するePTFE複合膜が形成されるときに、ノード120の熱可塑性ポリマー含有量は約20質量%よりも大きく、約30質量%の熱可塑性ポリマー含有量を有する膜が形成されるときに、ノードの熱可塑性ポリマー含有量は約30質量%を超えるなどである。
【0031】
特定の実施形態において、ノード120は、主に熱可塑性ポリマーから形成することができ、これは、熱可塑性ポリマーがノード120の質量のより多く(すなわち、50%を超える)を構成することを意味する。したがって、ノード120内の熱可塑性ポリマーのePTFEに対する質量比は1:1より大きい。幾つかの実施形態において、ノード120は、51質量%の熱可塑性ポリマー、約55質量%の熱可塑性ポリマー、約60質量%の熱可塑性ポリマー、約65質量%の熱可塑性ポリマー、約70質量%の熱可塑性ポリマー、約75質量%の熱可塑性ポリマー又は約80質量%の熱可塑性ポリマーから形成されうる。
【0032】
ePTFE複合膜100の多孔度は、ノード120間の距離(例えば、細孔のサイズ)の関数として変化しうる。ノード間距離が減少すると、多孔度が減少し、逆もまた同様である。膜100の多孔度はまた、各ノード120のサイズの関数として変化しうる。各ノード120のサイズが増加すると、多孔度は減少し、逆もまた同様である。ePTFE複合膜の多孔度は、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%であることができる。幾つかの実施形態において、多孔度は、約10%~約99%、約40%~約90%又は約50%~約80%である。
【0033】
ePTFE複合膜100の厚さもまた変化しうる。ePTFE複合膜100の厚さは、約10μm、約15μm、約20μm、約30μm、約40μm、約50μm、約60μm、約70μm、約80μm、約90μm、約100μm、約110μm、約120μm、約130μm、約140μm又は約150μmであることができる。幾つかの実施形態において、ePTFE複合膜100の厚さは、約10μm~約150μm、約15μm~約120μm又は約20μm~約100μmである。
【0034】
図1の方法1000に従って作製されたePTFE /熱可塑性ポリマー複合膜200の走査型電子顕微鏡写真は図6に示されている。図5の膜100と同様に、図6の膜200は、フィブリル210、ノード220及び細孔230を有する。上記のように、ePTFE/熱可塑性ポリマー複合膜は、図7に示されるように、より薄く、実質的に平行なノードを有するように構成されることができ、該図は、膜300、フィブリル310、ノード320及び細孔330を示している。
【0035】
膜100、200、300は、寸法的に安定であり、高いマトリックス弾性率を示し、幾何平均マトリックス弾性率の幾何平均マトリックス引張強度に対する比が比較的高い。絶対的な寸法変化率は、動的機械分析(DMA)によって測定された。これについては、以下の「寸法安定性試験」で詳しく記載される。特に、サンプルを5℃/分で25℃から200℃に加熱し、次いで、200℃で5分間保持した。ePTFE複合膜の絶対寸法変化率は、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1.0%、約1.25%又は約1.5%であることができる。幾つかの実施形態において、絶対寸法変化率は、約0.1%~約1.5%、約0.2%~約1.0%又は約0.3%~約0.9%である。幾つかの実施形態において、絶対寸法変化率は1.5%未満である。ePTFE複合膜のマトリックス弾性率は、約700MPa、約800MPa、約900MPa、約1000MPa、約1100MPa、約1200MPa、約1300MPa、約1400MPa、約1500MPa又は約1600MPaであることができる。幾つかの実施形態において、マトリックス弾性率は、約700MPa~約1600MPa、約800MPa~約1500MPa又は約900MPa~約1400MPaである。ePTFE複合膜の幾何平均マトリックス弾性率の幾何平均マトリックス引張強度に対する比は、約6、約8、約10、約12、約14又は約16であることができる。幾つかの実施形態において、幾何平均マトリックス弾性率は、約6~約16、約8~約14又は約10~約12である。
【実施例0036】
試験方法
特定の方法及び装置を以下に記載するが、当業者によって適切であると決定される他の方法又は装置を代替的に利用できることを理解されたい。
【0037】
非接触厚さ測定
【0038】
膜の非接触厚さをKEYENCE LS-7600レーザシステム(KEYENCEアメリカから市販されている)を使用して測定した。
【0039】
膜密度の計算
【0040】
サンプルをダイカットして、9.05cm×5.08cmの矩形セクションを形成した。各サンプルを、A&DモデルHF400天びんを使用して計量した。KEYENCEレーザで計算した厚さを使用して、サンプルの密度を以下の式を使用して計算した。
【数1】
(上式中、ρ=密度(g/cc)であり、
m=質量(g)であり、
w=幅(9.05cm)であり、
l=長さ(5.08cm)であり、
t=厚さ(cm)である)
【0041】
マトリックス引張強度(MTS)
【0042】
MTSを決定するために、サンプルePTFE複合膜を、ASTM D412-ドッグボーンダイタイプF(DD412F)を使用して、長手方向及び横断方向に切断した。フラットフェースグリップと「200ポンド」(約90.72kg)ロードセルを備えたINSTRON(登録商標)5500R(Illinois Tool Works Inc., Norwood, MA)引張試験機を使用して引張破壊荷重を測定した。グリップのゲージ長を8.26cmに設定し、ひずみ速度は0.847cm/s又は14.3%/sを使用した。サンプルをグリップに配置した後に、サンプルを1.27cm縮めてベースラインを取得し、次いで、上述のひずみ速度で引張試験を行った。各条件の2つのサンプルを個別に試験し、最大負荷(すなわち、ピーク力)の測定値の平均をMTSの計算に使用した。長手方向及び横断方向のMTSを以下の式を使用して計算した。
MTS=(最大荷重/断面積)*(樹脂の密度/膜の密度)。
【0043】
次に、各膜のMTSの幾何平均を以下の式を使用して計算した。
幾何平均MTS=平方根[(長手方向MTS)*(横断方向MTS)]
【0044】
特定のひずみでのマトリックス引張応力
【0045】
マトリックス引張応力=(特定のひずみでの荷重/断面積)*(樹脂の密度/膜の密度)
【0046】
マトリックス弾性率
【0047】
特定のひずみでのマトリックス引張強度に記載されているのと同じ引張試験から、生データをデータ分析プログラムにインポートした。サンプルをグリップに完全にロードするのは難しいため、各サンプルの0ひずみ点は、荷重の標準偏差がゼロより2偏差上になる点として計算した。弾性率は、0cmの点から追加の0.18cm(又はD412-Fドッグボーンのゲージ長に基づいて0~3%のひずみ)までで取得した。弾性率は、応力/ひずみの勾配である。長手方向と横断方向の両方のマトリックス弾性率を以下の式を使用して計算した。
3%ひずみでのマトリックス引張応力=(3%ひずみでの荷重/断面積)*(樹脂の密度/膜の密度)
マトリックス弾性率=(3%でのマトリックス引張応力)/(.03)
【0048】
次に、各膜のマトリックス弾性率の幾何平均を以下の式を使用して計算した。
幾何平均マトリックス弾性率=平方根[(長手方向マトリックス弾性率)*(横断方向マトリックス弾性率)]
【0049】
次に、マトリックス弾性率のマトリックス引張強度に対する比を以下の式を使用して計算した。
マトリックス弾性率のマトリックス引張強度に対する比=幾何平均マトリックス弾性率/幾何平均マトリックス引張強度
【0050】
示差走査熱量(DSC)測定
【0051】
DSC測定は、Q2000機械(TA Instruments, New Castle, Delaware)で行った。図2に示されるように、DSCを使用して、例1のETFEの融点、そして、それぞれ図3及び図4に示されるように、例7及び9に従って製造されたePTFE複合膜の融点を同定した。ePTFE複合膜サンプルでは、得られた膜のDSCで測定した融点が約344℃であるならば、サンプルは事前に焼結されなかった。これは、PTFEがDSC中に初期に融解を経験したため、延伸の間に事前に焼結されなかったことの指標を提供する。
【0052】
寸法安定性試験
【0053】
動的機械分析(DMA)を、TA Instruments(New Castole, Delaware)から入手可能なRSA-G2固体分析器を使用して実施した。ePTFE複合膜サンプルを機械方向に幅13mm、ゲージ長15mmで切り出した。サンプルをぴんと張った状態に保つために1gの最小負荷で、サンプルを5℃/分で25℃から200℃に加熱し、次に200℃で5分間保持した。各サンプルの寸法変化を一定期間にわたって測定し、寸法の最終的な絶対変化を報告した(表2を参照されたい)。
【0054】
例1
【0055】
エチレン-テトラフルオロエチレン(ETFE)重合を以下のように行った。23kgの脱イオン(DI)水、5gのシュウ酸、20mLのクロロホルム及び0.6kgの非テロゲン性過フッ素化分散剤を、3枚羽根の攪拌機を備えた50リットルの水平重合反応器に加えた。反応器を、酸素レベルが20ppm以下に低下するまで、繰り返し排気し、テトラフルオロエチレン(TFEE)で約1気圧(Atm)(約101.325kPa)以下に加圧した。水が確実に脱酸素化されるように、排気とパージのサイクルの間に内容物を約60rpmで短時間攪拌した。反応器を20℃に冷却し、60rpmで撹拌した。続いて、1550kPaのTFEを添加し、続いて550kPaのエチレンを添加した。このとき、DI水溶液中のKMnO4(0.6g/L)を40g/分で継続的に注入した。圧力が200kPa低下するごとに、110kPaのTFE及び90kPaのエチレンを反応器に戻し、一定の圧力を維持した。322分後に、反応を停止し、圧力を抜いた。44.64kgの分散液が生成され、固形含有分は15.96質量%固形分であり、未処理の分散液の粒子サイズは220nmであった。図2に示されるように、得られたETFE樹脂は、DSCによって測定して260℃の融点を有していた。
【0056】
例2
【0057】
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)重合を以下のように行った。1.5kgのパラフィンワックス、28kgの脱イオン(DI)水、18gの非テロゲン性過フッ素化分散剤及び約50グラムのDI水に溶解した5gのコハク酸を、3枚羽根の攪拌機を備えた50リットルの水平重合反応器に添加した。反応器及び内容物をワックスの融点である約60℃を超えて加熱した。反応器を、酸素レベルが20ppm以下に低下するまで、繰り返し排気し、TFEで約1気圧(約101.325kPa)以下に加圧した。水が確実に脱酸素化されるように、排気及びパージのサイクルの間に内容物を約60rpmで短時間攪拌した。コモノマーの予備装填物として、8mLのペルフルオロブチルエチレン(PFBE)を真空反応に加えた。次に、反応器を83℃に加熱した。
【0058】
次に、圧力が2.8MPA(約3.0kg)に達するまでTFEを反応器に加え、約2.0kgのTFEが加えられるまで、DI水溶液中のKMnO4(0.063g/L)を80mL/分で注入した。これは約7分で達成された。約100gの非テロゲン性過フッ素化分散剤を12グラム増分で加え、最初の増分は約1kgのTFEを反応器に加えた後に加え、その後の増分はその後の各kgのTFEを加えた後に加え、約9kgのTFEが装填された後に、最後の増分が添加された。KMnO4の添加速度は2kgTFEレベルで40mL/分に低下させ、約3kgTFEが添加されるまでこの速度で継続した。次に、約5kgのTFEが添加されるまで、KMnO4の添加速度をさらに20mL/分に低下させた。次に、KMnO4の添加を10mL/分に低下させ、約7kgのTFEが反応器に添加されるまでこの速度で添加を続け、その時点でKMnO4の添加を停止した。得られた分散液は、203nmの未処理分散液粒子サイズ及び35.0質量%固形分の固形含有分を有していた。
【0059】
例3
【0060】
二フッ化ビニリデン(VDF)変性ポリクロロトリフルオロエチレン(mPCTFE)重合を以下のように行った。3枚羽根の攪拌機を備えた50リットルの水平重合反応器に、28kgのDI水、5gのシュウ酸、100gの重亜硫酸アンモニウム一水和物及び0.5kgの非テロゲン性過フッ素化分散剤を加えた。酸素レベルが20ppm以下に低下するまで、反応器を繰り返し排気し、フッ化ビニリデン(VDF)で約1気圧(約101.325kPa)以下に加圧した。水が確実に脱酸素化されるように、排気及びパージのサイクルの間に内容物を約60rpmで短時間攪拌した。次に、反応器を60℃に冷却し、60rpmで撹拌した。次に、100kPaのVDFを反応器に加え、続いて2.0Lの液化クロロトリフルオロエチレン(CTFE)を高圧液体ポンプを通して反応器内の最終圧力1400kPaまで加えた。過硫酸アンモニウム溶液(100mLのDI水に5gを溶解)を5g/分の速度で反応器に継続的に加えた。CTFEは、1400kPaの圧力を維持するために反応器に継続的に添加した。液化CTFEを100mL添加するごとに、10kPaのVDFを反応器に添加した。300分後に反応を停止し(合計3.6LのCTFEモノマー及び360kPaのVDFを添加)、反応容器内の圧力を逃がした。固形分が15.2質量%の合計37.74kgの分散液が生成された。DSC分析は203℃の融点を示した。2.177g/mLの骨格密度は、ヘリウムピクノメトリを使用して決定した。次に、mPCTFEの分散液を、例4に記載の一般的な混合方法を使用して、例2で製造されたPTFEの分散液と共凝固させて、40質量%のPCTFE及び60質量%のPTFEである最終複合樹脂を得た。
【0061】
例4
【0062】
ETFEとPTFEの混合を以下のように行った。それぞれ例1及び2に記載の重合から得られる2つの樹脂の固形分含有量に基づいて、2つの分散液を、1kgの15.96質量%固形分ETFE分散液/0.684kgの35.0質量%固形分PTFEの比率で混合した。これにより、40質量%のETFE及び60質量%のPTFEを含む、23.7質量%固形分を含む分散液が生成された。次に、この分散液を15質量%固形分に希釈した。2つの材料を凝固させるために、1.0Lの65質量%HNO3を、100rpmで攪拌されている117kgの分散液に加えた。攪拌速度を420rpmに上げ、さらに12分間攪拌して、空気湿潤複合樹脂を製造した。次に、この複合樹脂を150℃の真空オーブンで28時間乾燥させ、40質量%のETFE熱可塑性樹脂及び60質量%のフィブリル化可能なPTFEを含む17.7kgの最終樹脂を製造した。
【0063】
例5
【0064】
フッ素化エチレンプロピレン(FEP)重合を以下のように行った。23kgのDI水及び0.2kgの非テロゲン性過フッ素化分散剤を、3枚羽根の攪拌機を備えた50リットルの水平重合反応器に加えた。酸素レベルが20ppm以下に低下するまで、反応器を繰り返し排気し、TFEで約1atm(約101.325kPa)以下に加圧した。水が確実に脱酸素化されるように、排気及びパージのサイクルの間に内容物を約60rpmで短時間攪拌した。反応器を85℃に加熱し、60rpmで撹拌した。続いて、3kgのヘキサフルオロプロピレン(HFP)を反応器に加えた。次に、全圧が1100kPaになるまでTFEを反応器に加えた。このとき、過硫酸アンモニウムの脱イオン水中の溶液(1.13g/L)2.5kgを反応器に加えた。TFEが消費された反応器にTFEを継続的に添加することにより、圧力を1100kPaに維持した。105分後に反応を停止して、14.6質量%固形分を有する35.65kgの分散液を得た。この樹脂は、例4に記載されている一般的な混合プロセスに従って、PTFEと混合するのに適している。
【0065】
例6
【0066】
ETFE/PTFE押出を以下のように行った。例4から調製した3.17kgのETFE/PTFE樹脂ブレンドを10℃に冷却した後に、0.80kgのイソパラフィン系炭化水素潤滑剤であるISOPAR(商標)Kと混合し、ドラムタンブラー内で10.5分間振とうした。次に、この混合物を直径101mmのチューブ内で3.1MPaで圧縮してペレットを作成した。ISOPAR(商標)Kが蒸発するのを防ぐために、ペレットを隠蔽チューブ内で70℃で一晩加熱した。次に、ペレットを、幅229mm×厚さ0.46mmの寸法のダイを用いて49℃に加熱された押出機を通して、0.76mm/秒の速度で押し出した。次に、得られた湿潤テープを0.30mmにカレンダ加工し、その後に、160℃の温度の乾燥機内で乾燥させて、テープからすべてのISOPAR(商標)Kを除去した。得られた乾燥テープの面積あたりの質量は420g/m2であった。
【0067】
例7
【0068】
ETFE/PTFE延伸を以下のように行った。次に、例6からの乾燥押出物の切片を、2つのオーブンを備えた二軸テンターフレームに配置して、二軸延伸された多孔質ETFE/PTFE膜を製造した。拘束されたテープを250℃で120秒間(すなわち、ETFEの融点未満)加熱した後に、テープを長手方向に50%/秒の速度で10:1に延伸した。次に、延伸ETFE/PTFE膜を第二のオーブンで300℃(すなわち、ETFEの融点を超えるが、PTFEの融点を下回る)に加熱し、横断方向に50%/秒の速度で10:1に延伸した。この二軸延伸により、面積あたりの質量が6.2g/m2であり、厚さが18.85マイクロメートルであり、MTSが長手方向に185MPa、横断方向に92MPaである多孔質ETFE/PTFE膜を生成した。図3に示されるように、得られた膜は、DSCによって測定して約344℃の融点を有し、これは、PTFEがDSC中に初期溶融し、したがって、延伸中に事前に焼結されなかったことを示している。PTFEが焼結された場合に、344℃の融点はDSCによって示されず、PTFEの融点は327℃になることが理解されるべきである。
【0069】
比較例1
【0070】
PTFEの押出を以下のように行った。例2で調製されたPTFE樹脂は、熱可塑性樹脂とブレンドせずに凝固させた。この樹脂7.71kgにISOPAR(商標)K1.94kgを加え、10.25分間混合した。次に、この混合物を直径101mmのチューブ内で3.1MPaで圧縮してペレットを作成した。このペレットを、幅229mm、厚さ0.46mmのダイを使用して、約22℃で12.2mm/秒の速度で押出した。湿潤テープを0.30mmにカレンダ加工し、その後に、乾燥機で乾燥してテープからすべてのISOPAR(商標)Kを除去した。得られた乾燥テープの面積あたりの質量は400g/m2であった。
【0071】
比較例2
【0072】
PTFE延伸を以下のように行った。比較例1からのテープの切片を、2つのオーブンを含む二軸テンターフレームに配置して、二軸延伸膜を製造した。拘束テープを300℃で加熱した後に、テープを長手方向及び横断方向の両方に同時に700%/秒の速度で10:1で二軸延伸し、次いで、365℃で90秒間焼結拘束した。得られた膜は、面積あたりの質量が6.2g/m2であり、厚さが28.9μmであり、MTSが長手方向に240MPaであり、横断方向に96MPaであった。
【0073】
比較例3
【0074】
非溶融ETFE/PTFEブレンド延伸を以下のように行った。例6で調製されたテープの切片を、2つのオーブンを含む二軸テンターフレームに配置して、二軸延伸膜を製造した。加熱後に、拘束されたテープを、250℃(ETFE融点未満)で250%/秒の速度で長手方向に10:1で延伸した後に、250℃で250%/秒の速度で横断方向に10:1の速度で延伸した。このETFE/PTFE複合膜は、ETFE又はPTFEのいずれかの融点以上の温度にさらされることはなかった。膜の面積あたりの質量は6.81g/m2で、厚さは120μmであった。
【0075】
例8
【0076】
FEP/PTFEブレンド押出を以下のように行った。混合樹脂13.22kgを、例4に記載の一般的な混合方法に従って調製した。混合FEP/PTFE樹脂は、40質量%のFEP(例5で合成)及び60質量%のPTFE(例2で合成)を含んだ。これを10℃に冷却し、その後に、3.33kgのISOPAR(商標)K潤滑剤と混合し、ドラムタンブラーで10.5分間振とうした。次に、混合物を直径101mmのチューブ内で3.1MPaで圧縮してペレットを作成した。ISOPAR(商標)Kが蒸発するのを防ぐために、ペレットを隠蔽チューブ内で49℃で一晩加熱した。ペレットを、幅229mm×厚さ0.46mmのダイを使用して、49℃に加熱された押出機を通して2.54mm/秒の速度で押出した。次に、湿潤テープを0.25mmにカレンダ加工し、その後に、180℃の温度で乾燥機で乾燥させて、テープからすべてのISOPAR(商標)Kを除去した。
【0077】
例9
【0078】
FEP/PTFEブレンドの延伸を以下のように行った。例8からの乾燥テープを、200℃の温度(FEP融点未満)でオーブン内で長手方向に10メートル/分の速度で4:1の比率で延伸した。次に、この延伸したテープを、200℃、2:1の比率及び2.5メートル/分の速度で同じオーブンを通して同じ長手方向にもう一度延伸した。最後に、テープを300℃(FEP融点よりも高いが、PTFE融点を下回る)でオーブンに送って、均一に溶融した一軸延伸テープを製造した。次に、このテープの一部をテンターフレームに置き、300℃(FEP融点より高いが、PTFE融点を下回る)に加熱し、100%/秒の速度で横断方向に10:1で延伸した。得られた膜は、DSCによって測定されたPTFEについて約342℃の融点を含み、これは、PTFEがDSC中に初期溶融し、したがって、延伸中に事前に焼結されなかったことを示している(図4を参照されたい)。
【0079】
例10
【0080】
ETFE/PTFEブレンドの延伸を以下のように行った。例6からの乾燥押出物の切片を、2つのオーブンを備えた二軸テンターフレームに配置して、二軸延伸された多孔質膜を製造した。拘束されたテープを250℃(ETFE融点未満)で加熱した後に、テープを長手方向に10:1で50%/秒の速度で延伸した。次に、延伸した膜を第二のオーブンで300℃(すなわち、ETFEの融点より高いが、PTFEの融点を下回る)に加熱し、50%/秒の速度で横断方向に5:1で延伸した。得られた多孔質ETFE/PTFE複合膜は、面積あたりの質量が13.6g/m2であり、厚さが67.8マイクロメートルであり、MTSが長手方向に203MPaであり、横断方向に43MPaであった。
【0081】
例11
【0082】
ETFE/PTFEブレンドの延伸を、以下のように行った。例6からの乾燥押出物の切片を、2つのオーブンを備えた二軸テンターフレームに配置して、二軸延伸された多孔質膜を製造した。拘束されたテープを250℃(すなわち、ETFE融点未満)で加熱した後に、テープを50%/秒の速度で長手方向に5:1で延伸した。次に、この延伸した膜を第二のオーブンで300℃(すなわち、ETFEの融点より高く、PTFEの融点を下回る)に加熱し、50%/秒の速度で横断方向に10:1で延伸した。これにより、面積あたりの質量が13.6g/m2であり、厚さが67.8マイクロメートルであり、MTSが長手方向に108MPaであり、横断方向に107MPaである多孔質ETFE/PTFE複合膜を生成した。
【0083】
例12
【0084】
ETFE/PTFEブレンドの延伸を以下のように行った。例5からの乾燥押出物片の一部を二軸テンターフレームに置き、250℃(すなわち、ETFEの融点未満)、10:1及び250%/秒で長手方向に、続いて、横断方向に二軸延伸した。ETFEの融点260℃以上の温度で延伸は行わなかった。延伸操作後に、膜を300℃(すなわち、ETFEの融点より高いが、PTFEの融点を下回る)で60秒間熱処理した。これにより、面積あたりの質量が6.7g/m2であり、厚さが99マイクロメートルであり、MTSが長手方向に164MPaであり、横断方向に96MPaであるETFE/PTFE複合膜を製造した。
【0085】
比較例4
【0086】
PTFEの延伸を以下のように行った。比較例1の乾燥押出物片(PTFE-熱可塑性樹脂なし)を二軸テンターフレームに置き、300℃(すなわち、PTFE融点を下回る)で加熱し、次いで、長手方向に10:1で延伸した。次に、サンプルを第二のオーブンに移動し、365℃(すなわち、PTFEの融点を上回る)に加熱し、横断方向に6:1で延伸した。これにより、面積あたりの質量が10.9g/m2であり、厚さが70.6マイクロメートルであり、MTSが長手方向に251MPaであり、横断方向に192MPaであるePTFE多孔質膜を生成した。ePTFE膜は寸法的に安定していることが観察され、テンターフレームピンから取り外したときにそれ自体が収縮しなかった。
【0087】
比較例5
【0088】
樹脂は、例1に従って調製された15質量%のETFEと、例2に従って調製された85質量%のPTFEとをブレンドすることによって作製した。樹脂を、厚さ0.76mm×幅76cmの平らなテープにペースト押出した。次に、テープを2つの金属ニップ間でカレンダ加工して、厚さが0.46mmであり、MTSが長手方向に30.6MPaであり、横断方向に15.0MPaであるテープを提供した。乾燥した押出物片を二軸テンターフレームに置き、250℃(すなわち、ETFEの融点を下回る)で機械方向及び横断方向の両方に10:1で二軸延伸した。次に、サンプルを第二のオーブンに移し、365℃(すなわち、PTFEの融点を超える)で60秒間加熱した。これにより、10.9g/m2であり、MTSが長手方向に283MPaであり、横断方向に175MPaであり、幾何平均MTSが222MPaとなるETFE/PTFE複合膜(ETFE含有量15質量%)を生成した。長手方向のマトリックス弾性率は1738MPaであり、横断方向のマトリックス弾性率は1078MPaであり、幾何平均は1369MPaであった。
【0089】
比較例6
【0090】
例6による乾燥押出物の切片を、2つのオーブンを含む二軸テンターフレームに配置して、二軸延伸した多孔質膜を製造した。拘束されたテープを250℃(すなわち、ETFEの融点を下回る)で加熱した後に、テープを長手方向に10:1、続いて横断方向に10:1で延伸した。次に、このePTFE複合膜を365℃(すなわち、PTFEの融点を超える)で60秒間焼結した。これにより、6.3g/m2であり、MTSが長手方向に158MPaであり、横断方向に84MPaであり、幾何平均MTSが108MPaである多孔質膜を生成した。長手方向のマトリックス弾性率は1263MPaであり、横断方向で337MPaであると決定され、幾何平均マトリックス弾性率が652MPaとなった。
【0091】
例13
【0092】
上記のサンプルを、引張強度及び寸法安定性について評価し、その結果をそれぞれ表1及び2に示す。
【表1】
【表2】
【0093】
例14~18
【0094】
例1、3及び5で調製された熱可塑性樹脂を使用して、熱可塑性樹脂とPTFEの様々な共凝固複合樹脂を製造した。次に、これらの樹脂を、例6又は7と同様の方法で、しかしペースト押出の当業者が行うことできるように様々な条件でペースト押出した。次に、熱可塑性樹脂の融点未満でMD方向に指定された延伸比で延伸し、次に熱可塑性樹脂の融点より高いが、327℃未満で横断方向に延伸することにより、これらのテープから多孔質膜を延伸させて、表3に示されるとおりの幾何平均MTS、幾何平均マトリックス弾性率及びマトリックス弾性率のMTSに対する比率に関する最終特性を提供した。例14~18の複合樹脂は、長手方向の延伸が熱可塑性樹脂の融点未満で行われ、次いで、横断方向の延伸が熱可塑性樹脂の融点より高いが、PTFEの融点未満で行われている。熱可塑性樹脂を含まない比較例7~9は、寸法的に安定した膜を生成するために、365℃で60秒間の熱処理が必要であった。
【表3】
【0095】
本出願の発明は、一般的に及び特定の実施形態に関しての両方で上記に記載した。本開示の範囲から逸脱することなく、実施形態において様々な変更及び変形を行うことができることは当業者に明らかであろう。したがって、実施形態は、それらが添付の特許請求の範囲及びそれらの均等形態の範囲内に入る限り、本発明の変更及び変形を網羅することが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2022-11-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0095
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0095】
本出願の発明は、一般的に及び特定の実施形態に関しての両方で上記に記載した。本開示の範囲から逸脱することなく、実施形態において様々な変更及び変形を行うことができることは当業者に明らかであろう。したがって、実施形態は、それらが添付の特許請求の範囲及びそれらの均等形態の範囲内に入る限り、本発明の変更及び変形を網羅することが意図されている。以下、本発明の態様を列挙する。
[態様1]
第一の融点を有する複数個のフィブリル化可能なポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子と、該第一の融点よりも低い第二の融点を有する複数個の熱可塑性ポリマー粒子とを含むブレンドを提供し、
該ブレンドをテープに成形し、
該テープを該第二の融点未満で第一の方向に延伸して延伸テープを形成し、そして
該延伸テープを、該第二の融点より高いが該第一の融点未満で、第二の方向に延伸することにより延伸PTFE複合膜を形成するに際し、
該延伸が、該延伸PTFE複合膜が焼結されないように、該第一の融点を下回る温度で起こることを特徴とする、延伸複合延伸PTFE膜を形成する方法。
[態様2]
複数の前記延伸工程を順次に実施する、態様1記載の方法。
[態様3]
複数の前記延伸工程を同時に実施する、態様1記載の方法。
[態様4]
前記熱可塑性ポリマーは熱可塑性フルオロポリマーである、態様1記載の方法。
[態様5]
前記熱可塑性フルオロポリマーは、ポリ(エテン-コ-テトラフルオロエテン)(ETFE)、ポリ二フッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)及びそれらの組み合わせから選ばれる、態様4記載の方法。
[態様6]
前記膜は、幾何平均マトリックス弾性率の幾何平均マトリックス引張強度に対する比が6以上である、態様1記載の方法。
[態様7]
前記ブレンドは、40質量%~79.9質量%のフィブリル化可能なポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子及び20.1質量%~60質量%の熱可塑性ポリマー粒子を含む、態様1記載の方法。
[態様8]
前記フィブリル化可能なPTFE粒子及び熱可塑性ポリマー粒子は、それぞれ平均粒子サイズが1μm未満である、態様1記載の方法。
[態様9]
前記延伸PTFE複合膜は絶対寸法変化が1.5%未満である、態様1記載の方法。
[態様10]
1μm未満の平均粒子サイズを有するフィブリル化可能なポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子を含む第一の複数個の粒子と、
1μm未満の平均粒子サイズを有する熱可塑性ポリマー粒子を含む第二の複数個の粒子であって、該熱可塑性ポリマー粒子の融点が該フィブリル化可能なPTFE粒子の融点よりも低い第二の複数個の粒子と
を含むブレンドであって、40質量%~79.9質量%のフィブリル化可能なPTFE粒子及び20.1質量%~60質量%の熱可塑性ポリマー粒子を含むブレンドを提供し、
該ブレンドを潤滑剤中でペースト押出してカレンダ加工テープを形成し、
該カレンダ加工テープを乾燥して該潤滑剤を除去することにより、乾燥したカレンダ加工テープを作製し、
該乾燥したカレンダ加工テープを該熱可塑性ポリマーの融点より低い温度で第一の方向に延伸することにより、一軸延伸PTFE複合膜を形成し、
該一軸延伸多孔質膜を、該熱可塑性ポリマーの融点より高いが、該フィブリル化可能なPTFEの融点より低い温度に加熱し、そして
該一軸延伸多孔質膜を、該第一方向とは異なる第二方向に延伸することにより二軸延伸PTFE複合膜を形成することを特徴とする、焼結されていない二軸延伸複合PTFE膜を形成する方法。
[態様11]
複数の前記延伸工程を順次に実施する、態様10記載の方法。
[態様12]
複数の前記延伸工程を同時に実施する、態様10記載の方法。
[態様13]
前記延伸PTFE複合膜は絶対寸法変化が1.5%未満である、態様10記載の方法。
[態様14]
前記膜は、幾何平均マトリックス弾性率の幾何平均マトリックス引張強度に対する比が6以上である、態様10記載の方法。
[態様15]
40質量%~79.9質量%のフィブリル化可能なポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子、
20.1質量%~60質量%の熱可塑性ポリマー粒子、
フィブリルによって相互接続された複数個のノード、及び
6以上の幾何平均マトリックス弾性率の幾何平均マトリックス引張強度に対する比
を備えた、未焼結の二軸延伸PTFE複合膜。
[態様16]
前記フィブリルは延伸PTFEを含み、かつ、前記ノードは前記延伸PTFE複合膜の総熱可塑性ポリマー含有量よりも高い熱可塑性ポリマー含有量を含む、態様15記載の膜。
[態様17]
前記フィブリルは85%以上の前記延伸PTFEを含む、態様15記載の膜。
[態様18]
前記ノードは51質量%以上の前記熱可塑性ポリマーを含む、態様15記載の膜。
[態様19]
前記延伸PTFE複合膜は、25℃から200℃に5℃/分の速度で加熱し、かつ、200℃で5分間保持して測定された動的機械分析(DMA)による寸法変化が、1.5%未満である、態様15記載の膜。
[態様20]
前記熱可塑性ポリマーは、ポリ(エチレン-コ-テトラフルオロエテン)(ETFE)、ポリ二フッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ペルフルオロアルコキシ(PFA)及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる、態様15記載の膜。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
40質量%~79.9質量%のフィブリル化可能なポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子、
20.1質量%~60質量%の熱可塑性ポリマー粒子、
フィブリルによって相互接続された複数個のノード、及び
6以上の幾何平均マトリックス弾性率の幾何平均マトリックス引張強度に対する比
を備えた、未焼結の二軸延伸PTFE複合膜
【請求項2】
前記フィブリルは延伸PTFEを含み、かつ、前記ノードは前記延伸PTFE複合膜の総熱可塑性ポリマー含有量よりも高い熱可塑性ポリマー含有量を含む、請求項1記載の膜
【請求項3】
前記フィブリルは85%以上の前記延伸PTFEを含む、請求項1記載の膜
【請求項4】
前記ノードは51質量%以上の前記熱可塑性ポリマーを含む、請求項1記載の膜
【請求項5】
前記延伸PTFE複合膜は、25℃から200℃に5℃/分の速度で加熱し、かつ、200℃で5分間保持して測定された動的機械分析(DMA)による寸法変化が、1.5%未満である、請求項1記載の膜
【請求項6】
前記熱可塑性ポリマーは、ポリ(エチレン-コ-テトラフルオロエテン)(ETFE)、ポリ二フッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ペルフルオロアルコキシ(PFA)及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる、請求項1記載の膜
【外国語明細書】