(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189864
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】電子エアロゾル発生喫煙装置
(51)【国際特許分類】
A24F 40/40 20200101AFI20221215BHJP
A24F 40/46 20200101ALI20221215BHJP
【FI】
A24F40/40
A24F40/46
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163259
(22)【出願日】2022-10-11
(62)【分割の表示】P 2019513049の分割
【原出願日】2017-08-31
(31)【優先権主張番号】16189009.0
(32)【優先日】2016-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】ベサント ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】デュク ファビアン
(57)【要約】
【課題】特にエアロゾル形成基体またはその構成要素に従属する装置部品の掃除の必要性を減らす、エアロゾル発生装置を提供する。
【解決手段】電子エアロゾル発生喫煙装置は、エアロゾル形成基体用の加熱領域を備える本体を備える。加熱領域または加熱領域の下流にある本体の内表面の少なくとも部分は疎水性または超疎水性の表面である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル形成基体用の加熱領域を備える本体を備える電子エアロゾル発生喫煙装置であって、前記本体が、
エアロゾル形成基体を受けるためのくぼみと、
前記本体内に配置され、かつ前記くぼみ内に収容されたエアロゾル形成基体を加熱するように適合されたヒーターとを備え、
前記加熱領域内で前記くぼみを画定する前記本体の内表面の少なくとも一部分が、疎水性または超疎水性の表面である、装置。
【請求項2】
前記ヒーターが、前記くぼみ内に延びるヒーターブレードであり、前記ヒーターブレードが、疎水性または超疎水性の外表面を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記加熱領域が管状の抽出装置を備え、前記抽出装置の内表面および外表面が、疎水性または超疎水性の表面である、請求項1~2のいずれか一項に記載の装置。
【請求項4】
前記本体が、近位端を含み、
前記加熱領域から前記本体の前記近位端に通じる気流コンジットを備え、前記気流コンジットの少なくとも部分が、疎水性または超疎水性の表面を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記気流コンジットが前記加熱領域の下流に配置されたエアロゾル化チャンバーを備え、前記エアロゾル化チャンバーが疎水性または超疎水性の内表面を備える、請求項1または4に記載の装置。
【請求項6】
前記マウスピース内に配置されたフローチャネルを備えるマウスピースを備え、前記フローチャネルの下流端が、前記マウスピースの前記近位端にある出口開口部であり、前記マウスピース内の前記フローチャネルが、疎水性または超疎水性の表面を備える、請求項1、4~5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記本体がエアロゾル形成基体を保持するための貯蔵部を備え、前記貯蔵部の外表面に疎水性または超疎水性の表面が提供されている、請求項1、4~6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記疎水性または超疎水性の表面が、前記加熱領域または前記加熱領域の下流にある前記本体の内表面の少なくとも前記部分に施された疎水性または超疎水性の被覆である、請求項1~7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記疎水性の被覆が、シラン、フルオロカーボン、フッ素化化合物またはアクリル酸を含む非極性である、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記超疎水性の被覆が、酸化マンガンポリスチレンナノ複合体、酸化亜鉛ポリスチレンナノ複合体、沈降炭酸カルシウム、カーボンナノチューブを含むか、またはシリカナノコーティングである、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
前記疎水性または超疎水性の表面が、ミクロ構造またはナノ構造の表面である、請求項1~7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記超疎水性の表面が、ミクロ構造とナノ構造の表面の組み合わせである、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記ミクロ構造またはナノ構造の表面が、マイクロショットピーニング、フェムト秒レーザー加工、マイクロプラズマ処理、フォトリソグラフィーまたはナノインプリントリソグラフィーによって製造されている、請求項11~12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
疎水性または超疎水性の被覆がミクロ構造またはナノ構造の表面に施されている、請求項11~13のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子エアロゾル発生喫煙装置に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な喫煙システムが周知であり、ここで基体からの物質を気化して吸入可能なエアロゾルを形成するために、エアロゾル形成基体は加熱される。一部のシステムにおいて、たばこ材料プラグは、プラグに挿入されたヒーターブレードによって加熱される。ブレード上に残った残留物だけでなく、フロー経路内の堆積物も、喫煙体験に影響しうる。加えて、装置部品の掃除は、不可能であったり、多大な労力を要したりすることがよくある。
【0003】
残留物の量を減らす、特にエアロゾル形成基体またはその構成要素に従属する装置部品の掃除の必要性を減らす、エアロゾル発生装置のニーズがある。
【発明の概要】
【0004】
本発明によると、電子エアロゾル発生喫煙装置が提供されている。電子喫煙装置は、エアロゾル形成基体のための加熱領域を備える本体を備え、ここで加熱領域内または加熱領域の下流にある本体の内表面の少なくとも部分は、疎水性または超疎水性の表面である。
【0005】
本発明による電子エアロゾル発生喫煙装置は、エアロゾル形成基体用の加熱領域を備える本体を備えてもよく、ここで本体は、エアロゾル形成基体を受けるためのくぼみと、本体内に配置され、かつくぼみ内に収容されたエアロゾル形成基体を加熱するように適合されたヒーターとを含む。加熱領域内のくぼみを画定する本体の内表面の少なくとも一部分は、疎水性または超疎水性の表面としうる。
【0006】
喫煙プロセス中にエアロゾルまたはエアロゾルもしくは加熱されたエアロゾル形成基体の残留物と接触する構成要素の表面は、これらの物質で汚染されることがある。
【0007】
疎水性、好ましくは超疎水性の表面を提供することで、これらの表面上での残留物の形成や凝縮が防止または低減されうる。従って、エアロゾル発生装置のこれらの部品を掃除する手順が、省略または低減されうる。加えて、疎水性または超疎水性の表面からの汚染物質は一般に、簡単に取れやすいため、掃除が促進される。
【0008】
特に、たばこ含有エアロゾル形成基体が挿入されるヒーターブレードおよび抽出装置部品を備える電子喫煙装置では、例えば脆弱性や要素へのアクセスの制限が原因で、掃除は難題であることがある。
【0009】
例えばフローコンジット内での、または加熱領域の下流での加熱およびエアロゾル形成プロセスの残留物および副産物が存在しないこと、またはその存在量が低減されていることはまた、喫煙体験の向上、およびより信頼でき再現可能な喫煙体験につながりうる。エアロゾルまたはエアロゾル形成基体と直接接触する汚染物質のないヒーターによって、ヒーターの性能またはヒーターの所定の動作モードが維持されうる。
【0010】
フローコンジットは本明細書において、加熱されたエアロゾル形成基体の物質と接触する、エアロゾル発生装置内の任意の表面を含むと理解される。こうして、これは、エアロゾルまたは加熱されたエアロゾル形成基体と接触する装置の内部の任意の表面を含み、加熱領域に、および加熱領域の下流に典型的に配置されている。フローコンジットは、加熱領域または加熱領域の部分、マウスピース内のフローコンジット、エアロゾル形成基体を受けるためのくぼみを画定する表面(例えば、エアロゾル発生物品のたばこプラグ)、外側カートリッジ表面を特に含んでもよく(ただし、これらに限定はされない)、カートリッジはエアロゾル形成基体を含み、カートリッジは例えば装置の一体型の部品でもよく、または交換不能または再充填可能なカートリッジでもよい。
【0011】
疎水性または超疎水性の表面は、加熱領域または加熱領域の下流にある本体の内表面の少なくとも部分に施された疎水性または超疎水性の被覆でもよい。例えば、疎水性または超疎水性の被覆は、気流コンジットの内表面に、またはヒーターの外表面の少なくとも部分に、またはエアロゾル形成基体、例えばヒートスティックまたはたばこプラグを受けるための本体内のくぼみを画定する内表面に施されてもよい。疎水性または超疎水性の被覆は、既存の装置の部品の表面に、例えばその掃除属性を改善するために、施されてもよい。
【0012】
疎水性の被覆は例えば、一例としてシラン、フルオロカーボン、フッ素化化合物またはアクリル酸を含む無極性でもよい。非極性または無極性の被覆または表面は、任意の局在的な電気的付加の不在によって画定される。
【0013】
超疎水性の被覆は、例えば酸化マンガンポリスチレンナノ複合体、酸化亜鉛ポリスチレンナノ複合体、沈降炭酸カルシウム、カーボンナノチューブを含んでもよく、またはシリカナノコーティングでもよい。
【0014】
有利なことに、疎水性の被覆は、被覆の安定性から見て、温度の関数での被覆の劣化や、例えばたばこ、ニコチン系の液体および装置内で発生するエアロゾルとの化学反応が発生しないことを保証するために選択される。
【0015】
被覆は、薄膜を蒸着させるための当技術分野において周知の方法によって、基礎となるベース材料に施されてもよい。化学蒸着法または物理蒸着法を使用してもよい。例えば、疎水性の材料は、被覆される材料の表面に直接噴霧されてもよく、または被覆される材料の浸漬被覆が施されてもよい。より耐久性のある表面処理は、例えば物理蒸着法(PVD)、化学蒸着法(CVD)、ゾルゲル法および薄膜被覆に適したその他の蒸着法である。
【0016】
疎水性または超疎水性の表面はまた、ミクロ構造またはナノ構造の表面でもよい。
【0017】
超疎水性の表面は、ミクロ構造およびナノ構造の表面の組み合わせでもよい。例えば、ミクロ構造の表面のミクロ構造に、ナノ構造を提供してもよい。
【0018】
ミクロ構造の表面は、1マイクロメートル~数百マイクロメートル、好ましくは1~200マイクロメートル、より好ましくは1~100マイクロメートルの範囲の構造サイズを有しうる。
【0019】
ナノ構造の表面は、10分の数ナノメートルまたは数百ナノメートルの構造サイズを有しうる。ナノ構造の表面のナノ構造は、例えば10nm~800nm、好ましくは50nm~500nm、より好ましくは100nm~300nmのサイズを有する。
【0020】
疎水性または超疎水性の被覆は、ミクロ構造またはナノ構造の表面に、またはミクロ構造およびナノ構造の表面に施されうる。
【0021】
ミクロ構造またはナノ構造の表面に施された疎水性または超疎水性の被覆は、上述した疎水性または超疎水性の被覆のどれか一つとしうる。
【0022】
ミクロ構造またはナノ構造は、疎水性または超疎水性の被覆に提供されうる。
【0023】
構造と被覆の組み合わせによって、構造化された表面の物理属性は被覆の化学属性と組み合わせられうる。よって、疎水性または超疎水性の効果は、強化されうるか、またはそれぞれの表面からはじかれる特定の物質に適合されうる。例えば、表面は、エアロゾル化されるエアロゾル形成液体の特定のエアロゾル液滴サイズまたは特定の粘性について超疎水性となるように適合されてもよい。
【0024】
被覆の化学属性は、表面のミクロ構造またはナノ構造が生成された時に強化されうる。これは、表面に生成されたミクロ構造体またはナノ構造体が液滴サイズに関連する時に有意となりうる。例えば、超疎水性の表面は、疎水性表面上に微小サイズの人工的な隆起を分散させることによって達成されてもよい。超疎水性は、液滴がこうした隆起の上部に付着する時に達成される。
【0025】
表面の疎水性または親水性は、液滴と液滴が配置される平坦な固体表面との間の接触角度θによって定義される。接触角度は、液滴による表面の湿潤性の測定基準である。
【0026】
疎水性表面は、90度よりも大きい接触角度θを有する。疎水性表面の接触角度θは典型的に、90度~120度である(液滴が玉状になる)。約90度の接触角度は、表面上の水にとって理想的な接触角度であり、表面が撥水性でありながらも、依然として水で掃除されることを示す。
【0027】
超疎水性の表面は、大きい接触角度によって特徴付けられ、かつ水で濡らすことが困難である。
【0028】
超疎水性の表面は、150度よりも大きい接触角度を有する。疎水性表面の接触角度θは典型的に、150度~180度である(液滴の玉状の度合いが高くなる)。
【0029】
疎水性とは反対に、親水性の表面では、水滴は遠くまで広がり、接触角度θは非常に小さい。これらの表面では、水滴は転がらず、滑るように動く。
【0030】
本明細書で使用される「液滴サイズ」という用語は、問題の液滴と同一の速度になる球状の単位密度液滴のサイズである空気力学的な液滴サイズを意味するために使用される。エアロゾルの液滴サイズを説明するために当該技術分野において、幾つかの測定が使用される。これらは、質量中央径(MMD)および空気力学的質量中央径(MMAD)を含む。本明細書で使用される「質量中央径(MMD)」という用語は、半分の質量のエアロゾルが小径の液滴に含まれ、また半分の大径の液滴に含まれるような液滴の直径を意味するために使用される。本明細書で使用される「空気力学的質量中央径(MMAD)」という用語は、エアロゾルの中央質量の液滴と同一の空気力学的特性を有する単位密度の球の直径を意味するために使用される。
【0031】
本発明の喫煙装置によって発生した液滴の空気力学的質量中央径(MMAD)は、約0.1μm~約10μmであってもよく、またはMMADは、約0.5μm~約5μmであってもよく、例えば0.5μm~3μm(0.8μm~1.2μmなど)であってもよい。液滴のMMADは、2.5μm以下であってもよい。本発明の喫煙装置によって発生した液滴の所望の液滴サイズは、上述の任意のMMADであってもよい。所望の液滴サイズ(MMAD)は、2.5μm以下であってもよい。
【0032】
本発明による喫煙装置におけるエアロゾル発生に使用されるエアロゾル形成液体は、1mPas~200mPas、好ましくは1mPas~150mPas、例えば80mPas~130mPasの範囲の粘性を有することが好ましい。
【0033】
ミクロ構造またはナノ構造の表面は、ナノ構造およびミクロ構造の表面を製造するための当技術分野において周知の方法によって製造されうる。ミクロ構造またはナノ構造の表面は、例えばマイクロショットピーニング、フェムト秒レーザー加工、マイクロプラズマ処理、フォトリソグラフィーまたはナノインプリントリソグラフィーで製造されてもよい。
【0034】
マイクロショットピーニングは、表面(例えば、金属または複合表面)の機械的属性を修正する、冷間加工プロセスである。マイクロショットピーニングにおいて、表面はプラスチックを変形するのに十分なショット(丸い粒子、例えばガラス、金属、セラミック材料製)による衝突を受ける。それによって、各粒子は、表面が可塑的に変形するように丸頭ハンマーとして機能する(摩耗が発生するサンドブラストとは異なる)。マイクロショットピーニングは、例えば表面に微小な窪みを提供する、ランダムな表面構造の製造において都合が良い。従来的なショットピーニングと比較して、マイクロショットピーニングでは、より小さいショットの寸法およびより速いショット速度が使用される。所定の表面材料および形状での望ましい構造は、ショットの材料およびサイズ、ショットの強度および適用範囲を適切に選択することによって、達成されうる。マイクロショットピーニングでは、0.03mm~0.5mmの典型的なショットサイズが使用される。喫煙装置内の表面の表面処理では、直径約0.03mmのサイズを有する粒子を含むショットが使用されることが好ましい。
【0035】
フェムト秒レーザーでは、ミクロ構造およびナノ構造は一つの工程で実施されうる。この方法は基本的に、すべての材料について適切であり、かつ達成される望ましい構造サイズおよび構造パターンに簡単に拡張されることができる。ランダムな構造と周期性のある構造のどちらも利用可能である。特に、10分の数ナノメートルまたは数百ナノメートル(例えば、100nm~300nm、または~10nm)のナノ構造は、フェムト秒レーザー処理を用いて利用可能である。この方法は無接触であり、また必要ではないが特殊な雰囲気内で実施されてもよい。フェムト秒レーザー処理によるミクロ構造は、より低いマイクロメートル範囲、典型的に1マイクロメートル~20マイクロメートルの範囲であることが好ましい。
【0036】
ミクロ構造には、1ミクロン未満の、およびより小さいミクロ構造またはナノ構造を与えられうる。
【0037】
従来的なプラズマ処理と比較して、マイクロプラズマ処理は、数十~数千マイクロメートルの範囲のプラズマの寸法に制限されるという利点を有する。
【0038】
表面のプラズマ処理は、材料を堆積またはエッチングすることだけでなく、表面を活性化または化学的に変化させることを可能にする。よって、マイクロプラズマ処理は、表面に構造を提供することを可能にし、特定の材料の疎水化が達成されうる。例えば、疎水性フルオロカーボンポリマーパターンがガラス基体上に提供されてもよい。
【0039】
フォトリソグラフィーは、例えばウェハー構造体において、それ自体よく知られたプロセスであり、さらに説明しない。ナノインプリントリソグラフィー(NIL)は基本的に類似したプロセスである。基体上のレジストには、構造化されたスタンプによって望ましい構造が提供されている。構造化されたレジストは、最終的な構造を達成するために、エッチングおよび硬化されてもよい。レジストの代わりに、成形材料にはスタンプの構造が直接提供されてもよい。リソグラフィーにおけるポリマーとポリマーの接触による印刷の性質のため、材料の弾性構造は、約1マイクロメートルに至るまでのミクロ構造の製造を可能にする。ところが、材料によっては(例えば、非晶質金属)、約20~100ナノメートルに至るまでのナノ構造が提供されてもよい。
【0040】
有利なことに、本発明による装置における疎水性または超疎水性の表面、特に気流コンジットの表面は、上述のエアロゾル液滴サイズ用に最適化された疎水性または超疎水性の表面を備える。
【0041】
装置のセットアップに応じて、および例えば液体エアロゾル形成貯蔵部または固体たばこ材料を使用してエアロゾル形成基体が提供される方法に応じて、装置またはフローコンジットの異なる部品は、加熱されたエアロゾル形成基体、エアロゾルまたはエアロゾル形成基体からのその他の蒸発物質または非蒸発物質と接触するようになる。よって、これらの装置の異なる部品および要素には、疎水性または超疎水性の表面が提供されうる。
【0042】
装置は、エアロゾル形成基体を保持するための区画を備えうる。こうした区画は、固体エアロゾル形成基体を直接受けてもよく、またはカートリッジまたは貯蔵部を受けたり含んだりしてもよい。エアロゾル形成基体と直接接触する場合、または蒸発した物質を装置の口側端に案内する気流コンジットの部分を恐らく形成する場合には、内側区画の壁は、疎水性または超疎水性の表面であることが好ましい。
【0043】
例えば、たばこプラグを含むエアロゾル形成基体を典型的に含むヒートスティックとともに使用する装置において、本体は、くぼみ内で加熱されるエアロゾル形成基体を受けるための、または場合によってはまた、くぼみに挿入されるカートリッジを受けるためのくぼみを備える。エアロゾル発生基体を受けるために本体にあるくぼみは典型的に、基体、特には加熱された基体と直接接触し、そのため、くぼみを画定する疎水性または超疎水性の内表面を備えることが好ましい。こうしたくぼみは、新しいエアロゾル形成基体がくぼみ内に挿入される前に、より簡単に掃除されうる。
【0044】
ヒートスティックとともに使用されるための装置は、本体内に配置されたヒーターをさらに含み、ヒーターはくぼみ内に収容されたエアロゾル形成基体を加熱するために適合されている。これらの装置において、くぼみを画定する表面の、またはヒーターの少なくとも部分は、疎水性または超疎水性の表面であることが好ましい。
【0045】
抵抗加熱可能な装置において、ヒーターはくぼみ内に延びるヒーターブレードとしうる。ヒートスティックは、そのエアロゾル形成基体を含む端部またはたばこ端で、装置のくぼみ内に導入され、それによってヒーターブレード上に押されてもよい。それぞれの新しいヒートスティックについて一貫性のある加熱条件および喫煙条件を保てるように、ヒーターブレードは疎水性または超疎水性の外表面を備えうる。
【0046】
くぼみ、またはくぼみを囲む加熱領域内の本体装置の壁は、一つまたは好ましくは幾つかの要素によって形成されうる。これらの要素は、エアロゾル形成基体用のくぼみを画定するだけでなく、環境から、加熱されたエアロゾル形成基体への本体内の気流経路も画定しうる。くぼみの内側、およびこうした外側の気流経路は、蒸発した物質がくぼみから外側気流経路内へと通過し、その内部で蒸着されうるように、相互に流体連通しうる。
【0047】
例えば、加熱領域は、管状の抽出装置を備えてもよく、ここで抽出装置の内表面および外表面は、疎水性または超疎水性の表面である。それによって、抽出装置の内表面は、くぼみのサイズを実質的に画定する。
【0048】
エアロゾル形成基体が液体状または液体含有の形態で、例えばカートリッジ内またはタンクシステム内などに提供されている装置において、装置のセットアップは異なり、ユーザーは装置のマウスピースを吸う。
【0049】
電子喫煙装置のこうした実施形態において、本体は近位端を含み、加熱領域から本体内のその近位端へと通じる気流コンジットを備える。気流コンジットの少なくとも部分は、疎水性または超疎水性の表面を備えうる。エアロゾル形成基体を加熱するためのヒーターは装置の一部でもよく、従ってまた、疎水性または超疎水性の表面を備える。ところが、ヒーターはまた、例えばカートリッジと一体型でもよい。ヒーターを含むまたは含まない、カートリッジが再使用可能なシステムにおいて、カートリッジの外側は、疎水性または超疎水性の表面を備えうることが好ましい。
【0050】
装置の本体はまた、エアロゾル形成基体を保持するための貯蔵部を備えうる。こうした貯蔵部またはカートリッジの外表面には、疎水性または超疎水性の表面が提供されてもよい。貯蔵部が一体型の貯蔵部または再使用可能な貯蔵部であるか、または一般にカートリッジまたはタンクの形態の再充填可能な貯蔵部でもある場合、この手段は特に都合が良い。再使用可能なカートリッジは、疎水性の外側表面を伴う、装置とは独立した個別の取り外し可能な部品であることがよくあるが、再使用前のこれらのカートリッジの掃除は省略または簡略化されうる。
【0051】
電子喫煙装置は、エアロゾル形成基体から蒸発した物質が、例えば冷めてエアロゾルを形成しうるエアロゾル化チャンバーを備えうる。典型的に、こうしたエアロゾル化チャンバーは、加熱領域の下流に、また典型的にヒーターの下流に配置され、エアロゾル形成基体を加熱する方法、および基体が提供される状態・形態とは基本的に独立している。
【0052】
例えばフローコンジットがエアロゾル化チャンバーを備える、加熱領域の下流に配置されたエアロゾル化チャンバーを備える本発明による装置の実施形態において、エアロゾル化チャンバーは疎水性または超疎水性の内表面を備えることが好ましい。
【0053】
ヒーターは、エアロゾル形成基体と直接接触してもよく、または例えば装置ハウジング内に取り付けられ、従ってハウジング壁によって保護されてもよい。ヒーターは装置の一部でもよく、またはカートリッジの一部でもよい。ヒーターは抵抗性または誘導性のヒーターであることが好ましい。
【0054】
エアロゾル形成基体と直接接触するヒーターを備える装置において、特にヒーターが交換可能なヒーターではない場合、例えば使い捨てカートリッジの一部であるヒーターである場合に、ヒーターの表面には、疎水性または超疎水性の表面が提供されることが好ましい。例えば、流体透過性の平坦なメッシュヒーターの形態またはヒーターブレードの形態のヒーターを備える装置において、メッシュヒーターまたはヒーターブレードは、疎水性または超疎水性の外表面を備えることが好ましい。例えば、ガラスブレードおよびガラス製エアロゾル化チャンバーは、疎水性または超疎水性の表面を備えうる。
【0055】
エアロゾル発生装置はマウスピースをさらに備えてもよく、ここでフローコンジットの一部、フローコンジットの最下流部分は、マウスピース内に配置されている。
【0056】
「上流」および「下流に」は本明細書において、装置に入り、装置を通過し、装置を去る空気の流れ方向から見たものである。装置の出口開口部は、エアロゾルを含むまたは含まない気流が装置を去る装置内の最下流の場所である。
【0057】
装置のフローコンジットは、一つまたは幾つかの個別の、別個のまたは絡み合ったフローチャネルを含みうる。
【0058】
本発明による装置は、マウスピース内に配置された少なくとも一つのフローチャネルを備えるマウスピースを備えうる。フローチャネルの下流端は、マウスピースの近位端にある出口開口部に対応する。マウスピース内のフローチャネルは、疎水性または超疎水性の表面を備えうる。
【0059】
本発明を実施形態に関してさらに説明し、それらの実施形態を下記の図面によって例示する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図3】
図3は、疎水性のナノ構造およびミクロ構造の表面を示す。
【
図4】
図4は、エアロゾル発生物品のたばこプラグを加熱するためのヒーターブレードを使用する電子喫煙装置の概略断面図である。
【
図5】
図5は、液体含有貯蔵部を備える電子喫煙装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0061】
図1および
図2は、疎水性および親水性の表面での液滴の挙動の例を示す。疎水性の表面10と親水性の表面11とを区別する主な方法は、接触角度21である。これは、剛直な基体1の表面と接触する地点で流体液滴(ここではエアロゾル液滴2)が成す角度21を指す。
図1に示す通りの疎水性表面10では、接触角度21は常に90度よりも大きく、最大150度になりうる。150度を超える接触角度で、表面は超疎水性であると言われる。
図2に示す通りの親水性の表面11は常に、90度未満の接触角度を有し、通常は50度未満である。
【0062】
図3では、ミクロ構造およびナノ構造の組み合わせの一例を示す。ミクロ構造12はドーム12の形態であり、これは表面上に規則的にまたは不規則に配置されうる。ミクロ構造12自体には、ミクロ構造12の表面上に複数の角錐として示されたナノ構造13が提供されている。超疎水性は、エアロゾル液滴2がナノ構造13の上部に残る時に得られる。
【0063】
図4は、ヒートスティック3用の電子喫煙装置4の一例である。たばこスティックの形態のエアロゾル発生物品は、マウス部分30およびたばこ部分31を備える。マウス部分30は、例えばフィルターセグメントを備える。たばこ部分31は、たばこプラグ、例えば捲縮・集合させたキャストリーフ(たばこ粒子、ファイバー粒子、エアロゾル形成体、結合剤、および例えば風味をも含むスラリーから形成されている再構成たばこの形態)を備えうる。ヒートスティック3は、装置4の前方ハウジング部分41内のくぼみ410内に挿入される。ヒートスティック3の少なくともマウス部分30は、スティック3がくぼみ410内に収容されている時に、前方ハウジング部分から延びる。使用時にユーザーは、エアロゾルおよびその他の物質を、加熱式たばこスティックから、このスティックを通してマウス部分30に引き出すためのヒートスティック3のマウス部分30を吸う。
【0064】
前方ハウジング部分41は基本的に、抽出装置47および中央部品46によって形成されていて、後者は例えばアルミニウム製である。たばこを加熱するためのヒーターブレード45は、くぼみ410内に延び、ヒートスティック3が装置4のくぼみ410内に挿入されると、ヒートスティック3のたばこ部分31に押し込まれる。ヒーターブレードおよびエアロゾル形成基体がくぼみ内に存在する時に、前方ハウジング部分47がそれらを囲む領域は基本的に、装置の加熱領域420を形成する。半径方向の延長部において、加熱領域420は、前方ハウジング部分41の外壁の内側まで延びる。
【0065】
遠位ハウジング部分40は、ヒーターブレードを加熱するための、および加熱プロセスを制御するためのヒーターブレード45に接続された電池42および電子回路(例えば、電子制御盤43)を備える。断熱材、例えばヒーターオーバーモールド44は、加熱領域420を遠位ハウジング部分40から分離するために、くぼみ410と遠位ハウジング部分40の間に配置されている。ヒーターオーバーモールド44は、くぼみ410の底部を直接形成する。
【0066】
前方ハウジング部分41の部品、すなわち抽出装置47および中央部品46のほか、ヒーターブレードおよびヒーターオーバーモールド44には、疎水性の表面または好ましくは超疎水性の表面が提供されている。これらは、ナノ構造の表面、ミクロ構造の表面、疎水性または超疎水性の被覆またはその組み合わせでありうる。
【0067】
抽出装置47および中央部品46には、すべての側面に、少なくとも内側および外側の側面に疎水性表面が提供されることが好ましい。ヒーターオーバーモールド44には、くぼみ410の部品を形成する側面のみに、疎水性表面が提供されうる。ヒーターブレード45には、少なくとも二つの大きい側面に、好ましくは小さい側面にも疎水性表面が提供されている。
【0068】
抽出装置47および中央部品46は、基本的に管状の形状を有する。しかしながら、抽出装置47には典型的に、幾つかの突起および凹みが提供されていて、また中央部品には、気流が通過できるようにするための幾つかの開口部が提供されている。よって、これらの部品は、たばこ部分と直接接触するか、または加熱式たばこ基体からの物質と接触することもあるか、またはその両方と接触することもあり、よって、その表面上で残留物を捕捉する傾向にある。加えて、それらの形状および脆弱性によって、掃除の点で、それらのアクセス性および安定性が制限される。喫煙装置4は反復的な使用のために作製されているため、ヒートスティック3の加熱式たばこ基体からの物質と直接接触するようになる部品上への汚染物質および残留物の蓄積を軽減することで、装置のこれらの部品の疎水性表面を提供することによって、取り扱い、性能およびユーザー体験が向上されうる。
【0069】
図5には、液体貯蔵部またはタンク6を使用する電子喫煙装置の一例を示す。タンク6内の液体エアロゾル形成基体は、ヒーター55によって、例えば芯要素の周りのヒーターコイル、または流体透過性の平坦なヒーターによって、加熱されエアロゾル化される。ヒーター55はタンク6に隣接して配置されている。ヒーター55の横隣には、電池42からヒーター55に電力を供給するために電気接点54が提供されている。電池42および電子回路、例えば電子制御盤43は、遠位ハウジング部分40に配置されている。
【0070】
図5に示す実施形態の加熱領域420は、装置の長軸方向に、どちらかと言えば短い延長部を有し、この長軸方向で、タンク6の開放端とヒーターのサイズとの間の領域に基本的に限定されている。半径方向の延長部において、加熱領域420は本体の内側壁まで延びる。
【0071】
装置の近位端および装置ハウジングの最下流要素は、マウスピース48によって形成されている。マウスピース48において、加熱された液体からのエアロゾルは回収され、出口49を経由してマウスピース48を去りうる。これらの装置において、ユーザーは装置のマウスピースを吸う。
【0072】
ヒーター55の場所で発生されたエアロゾルは、タンク6とマウスピース48の下流にあるハウジング壁との間を通過し、出口49に移動する。こうして、この経路上の部品や要素の表面は、すべて疎水性表面または超疎水性の表面であることが好ましい。
【0073】
ヒーター55と、タンク6の隣に配置された内部ハウジング壁と、マウスピース48の内表面480と、タンク6の外表面とは、疎水性または超疎水性の表面である。
【0074】
図5に示す実施形態において、マウスピースは、タンク6の下流に配置されたエアロゾル化チャンバーを形成するくぼみを備える。
【0075】
タンク6は、一体型のタンクでもよく、または交換可能かつ場合によっては再充填可能なタンク6でもよい。
【0076】
当然のことながら、疎水性表面の提供の言及には、超疎水性の表面の提供の可能性も含まれる。汚染物質の低減および簡略化された掃除の属性の観点から、超疎水性の表面が好まれる場合がある。しかしながら、使用する材料または例えばコストの制約に応じて、表面を疎水性または超疎水性にするための異なるプロセスが選択されうる。
【手続補正書】
【提出日】2022-11-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル形成基体用の加熱領域を備える本体を備える電子エアロゾル発生喫煙装置であって、前記本体が、
エアロゾル形成基体を受けるためのくぼみと、
前記本体内に配置され、かつ前記くぼみ内に収容されたエアロゾル形成基体を加熱するように適合されたヒーターとを備え、
前記加熱領域内で前記くぼみを画定する前記本体の内表面の少なくとも一部分が、疎水性または超疎水性の表面である、装置。