(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189868
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/786 20060101AFI20221215BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
H01L29/78 618E
H01L29/78 618B
H01L27/146 C
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164624
(22)【出願日】2022-10-13
(62)【分割の表示】P 2021052125の分割
【原出願日】2012-06-14
(31)【優先権主張番号】P 2011135365
(32)【優先日】2011-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
(72)【発明者】
【氏名】本田 達也
(57)【要約】
【課題】酸化物半導体をチャネル形成領域に用いたトランジスタの電気特性のしきい値電
圧をプラスにすることができ、所謂ノーマリーオフのスイッチング素子を実現するトラン
ジスタ構造を提供する。
【解決手段】異なるエネルギーギャップを有する、少なくとも第1の酸化物半導体層及び
第2の酸化物半導体層を積層させた酸化物半導体積層であって、化学量論的組成比よりも
過剰に酸素を含む領域を有する酸化物半導体積層を用いてトランジスタを形成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物半導体層と、
ゲート絶縁膜を介して前記酸化物半導体層と重なるゲート電極層と、
前記酸化物半導体層と電気的に接続されるソース電極層と、
前記酸化物半導体層と電気的に接続されるドレイン電極層と、を有し、
前記酸化物半導体層は、第1の酸化物半導体層と、前記第1の酸化物半導体層上の第2の酸化物半導体層と、を有し、
前記第1の酸化物半導体層は、InとSnとZnとを有し、
前記第2の酸化物半導体層は、InとGaとZnとを有し、
前記第1の酸化物半導体層のエネルギーギャップは、前記第2の酸化物半導体層のエネルギーギャップよりも小さく、
前記第2の酸化物半導体層は、結晶構造を有する、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示する発明の一態様は、半導体装置及びその作製方法に関する。
【0002】
なお、本明細書中において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置
全般を指し、電気光学装置、半導体回路および電子機器は全て半導体装置である。
【背景技術】
【0003】
近年、半導体装置の開発が進められ、LSIやCPUやメモリとして用いられている。C
PUは、半導体ウェハから切り離された半導体集積回路(少なくともトランジスタ及びメ
モリ)を有し、接続端子である電極が形成された半導体素子の集合体である。
【0004】
LSIやCPUやメモリなどの半導体回路(ICチップ)は、回路基板、例えばプリント
配線板に実装され、様々な電子機器の部品の一つとして用いられる。
【0005】
また、チャネル形成領域に酸化物半導体膜を用いてトランジスタなどを作製する技術が注
目されている。例えば、酸化物半導体膜として酸化亜鉛(ZnO)を用いるトランジスタ
や、InGaO3(ZnO)mを用いるトランジスタが挙げられる。これらの酸化物半導
体膜を用いたトランジスタを、透光性を有する基板上に形成し、画像表示装置のスイッチ
ング素子などに用いる技術が特許文献1及び特許文献2で開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-123861号公報
【特許文献2】特開2007-96055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
半導体装置に適用されるトランジスタは、ゲート電圧が、0Vにできるだけ近い正のしき
い値電圧(Vth)でチャネルが形成されることが望ましい。トランジスタのしきい値電
圧の値が負であると、ゲート電圧が0Vでもソース電極層とドレイン電極層の間に電流が
流れる、所謂ノーマリーオンとなりやすい。
【0008】
そこで、本発明の一態様では、酸化物半導体をチャネル形成領域に用いたnチャネル型の
トランジスタにおいて、正のしきい値電圧を有し、所謂ノーマリーオフのスイッチング素
子を実現するトランジスタ構造およびその作製方法を提供することを課題の一つとする。
【0009】
また、材料や作製条件によっては、作製されたトランジスタがノーマリーオフとならない
場合であっても、ノーマリーオフの特性に近づけることが重要であり、しきい値電圧の値
が負である、所謂ノーマリーオンであっても、トランジスタのしきい値電圧をゼロに近づ
ける構成およびその作製方法を提供することも課題の一つとする。
【0010】
また、より高性能な半導体装置を実現するため、トランジスタのオン特性(例えば、オン
電流や電界効果移動度)を向上させて、半導体装置の高速応答、高速駆動を実現する構成
およびその作製方法を提供することも課題の一つとする。
【0011】
また、トランジスタのリーク電流も半導体装置の消費電力を左右するため、リーク電流を
低減することも低消費電力な半導体装置を実現する上で重要である。そこで、本発明の一
態様は、トランジスタのソース電極層およびドレイン電極層のリーク電流(寄生チャネル
)の発生を低減する構成を提供することも課題の一つとする。
【0012】
なお、本発明の一態様は、上述の課題の少なくとも一を解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様では、異なるエネルギーギャップ及び/または異なる電子親和力を有する
酸化物半導体を積層させた酸化物半導体層(以下、酸化物半導体積層とも表記する)を用
いてトランジスタを構成する。また、当該酸化物半導体積層は化学量論的組成比よりも過
剰に酸素を含む領域(以下、酸素過剰領域とも表記する)を有する。
【0014】
例えば、第1の酸化物半導体層と、第1の酸化物半導体層とは異なるエネルギーギャップ
を有する第2の酸化物半導体層と、を含み、酸素過剰領域を有する酸化物半導体積層を用
いてトランジスタを構成する。ここで、第1の酸化物半導体層と第2の酸化物半導体層と
は互いに異なるエネルギーギャップを有すればよく、その積層順は問わない。より具体的
には、一方の酸化物半導体層のエネルギーギャップを3eV以上とし、他方の酸化物半導
体層のエネルギーギャップを3eV未満とすればよい。
【0015】
なお、本明細書等において、「エネルギーギャップ」という用語は、「バンドギャップ」
や「禁制帯幅」と同じ意味で用いている。
【0016】
また、酸化物半導体積層を3層以上の酸化物半導体層を含む構成としてもよい。酸化物半
導体積層を3層以上の酸化物半導体層を有する構成とする場合には、全ての酸化物半導体
層同士が異なるエネルギーギャップを有する構成としてもよいし、同等のエネルギーギャ
ップを有する酸化物半導体層を複数酸化物半導体積層中に用いてもよい。
【0017】
例えば、第1の酸化物半導体層と、第1の酸化物半導体層上に設けられ、電子親和力が第
1の酸化物半導体層の電子親和力よりも大きく、またはエネルギーギャップが第1の酸化
物半導体層のエネルギーギャップよりも小さい第2の酸化物半導体層と、第2の酸化物半
導体層上に第2の酸化物半導体層の側面を包むように設けられた第3の酸化物半導体層と
を含む構成とすることができる。なお、第3の酸化物半導体層の電子親和力とエネルギー
ギャップは、第1の酸化物半導体層の電子親和力とエネルギーギャップと同等とするのが
好ましい。ここで、電子親和力とは真空準位と酸化物半導体の伝導帯のエネルギー差を表
す。エネルギーギャップの小さい第2の酸化物半導体層を、エネルギーギャップの大きい
第1の酸化物半導体層及び第3の酸化物半導体層により挟む構造とすることによって、よ
りトランジスタのオフ電流(リーク電流)を低減する効果が得られる。
【0018】
具体的には、第1の酸化物半導体層及び第3の酸化物半導体層のエネルギーギャップは、
3eV以上とし、第2の酸化物半導体層のエネルギーギャップは、3eV未満とする。酸
化物半導体層を用いたトランジスタにおいて、該酸化物半導体層のエネルギーギャップは
、トランジスタの電気特性に影響を与える。例えば、酸化物半導体層を用いたトランジス
タにおいて、酸化物半導体層のエネルギーギャップが小さいと、オン特性(例えば、オン
電流や電界効果移動度)が向上し、一方、酸化物半導体層のエネルギーギャップが大きい
と、オフ電流が低減できる。
【0019】
単層の酸化物半導体層では該酸化物半導体層のエネルギーギャップの大きさで、トランジ
スタの電気特性はほぼ決定してしまうため、所望の電気的特性をトランジスタに付与する
ことは難しい。しかしながら、本発明の一態様に係るトランジスタは、異なるエネルギー
ギャップを有する複数の酸化物半導体層を用いた酸化物半導体積層を用いることによって
、その電気特性をより精度よく制御することができ、所望の電気特性をトランジスタに付
与することが可能となる。
【0020】
従って、高機能、高信頼性、又は低消費電力など、種々の目的に応じた半導体装置を提供
することができる。
【0021】
本明細書で開示する発明の構成の一態様は、第1の酸化物半導体層と、第1の酸化物半導
体層と異なるエネルギーギャップを有する第2の酸化物半導体層と、を含む酸化物半導体
積層を形成し、酸化物半導体積層上にソース電極層またはドレイン電極層を形成し、ソー
ス電極層またはドレイン電極層上にゲート絶縁膜を形成し、ゲート絶縁膜上から、ソース
電極層またはドレイン電極層をマスクとして酸化物半導体積層に自己整合的に酸素を導入
し、ゲート絶縁膜を介して、酸化物半導体積層と重畳するゲート電極層を形成する半導体
装置の作製方法である。
【0022】
また、本明細書で開示する発明の他の一態様は、順に積層された第1の酸化物半導体層と
、第1の酸化物半導体層より小さいエネルギーギャップを有する第2の酸化物半導体層と
、第2の酸化物半導体層より大きいエネルギーギャップを有する第3の酸化物半導体層と
、を含む酸化物半導体積層を形成し、酸化物半導体積層上にソース電極層またはドレイン
電極層を形成し、ソース電極層またはドレイン電極層上にゲート絶縁膜を形成し、ゲート
絶縁膜上から、ソース電極層またはドレイン電極層をマスクとして酸化物半導体積層に自
己整合的に酸素を導入し、ゲート絶縁膜を介して、酸化物半導体積層と重畳するゲート電
極層を形成する半導体装置の作製方法である。
【0023】
上記の半導体装置の作製方法において、第1の酸化物半導体層の側面及び第2の酸化物半
導体層の側面を覆うように第3の酸化物半導体層を積層させるのが好ましい。
【0024】
第1の酸化物半導体層の側面及び第2の酸化物半導体層の側面を覆うように第3の酸化物
半導体層を形成することで、第2の酸化物半導体層の酸素欠損の増加を抑え、トランジス
タのしきい値電圧をゼロに近づける構成とすることができる。さらには、第2の酸化物半
導体層が埋め込みチャネルとなることでチャネル形成領域を絶縁膜界面から遠ざけること
ができ、これによってキャリアの界面散乱が低減され、高い電界効果移動度を実現するこ
とができる。
【0025】
また、上記の半導体装置の作製方法のいずれかにおいて、ゲート電極層を形成した後、ゲ
ート電極層をマスクとして、酸化物半導体積層に自己整合的にドーパントを導入するのが
好ましい。
【0026】
また、上記の半導体装置の作製方法のいずれかにおいて、ゲート電極層上に、層間絶縁膜
を形成し、層間絶縁膜に、ソース電極層またはドレイン電極層に達するコンタクトホール
を形成し、層間絶縁膜上に、コンタクトホールを介して、ソース電極層またはドレイン電
極層とそれぞれ接続する配線層を形成してもよい。
【0027】
また、本発明の他の一態様は、第1の酸化物半導体層と、第1の酸化物半導体層と異なる
エネルギーギャップを有する第2の酸化物半導体層と、を含む酸化物半導体積層と、酸化
物半導体積層上に設けられたソース電極層またはドレイン電極層と、ソース電極層または
ドレイン電極層上に設けられたゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜を介して、酸化物半導体積
層と重畳するゲート電極層と、を有し、酸化物半導体積層において、ソース電極層または
ドレイン電極層と重畳しない領域は、ソース電極層またはドレイン電極層と重畳する領域
よりも高い酸素濃度を有する半導体装置である。
【0028】
また、本発明の他の一態様は、第1の酸化物半導体層と、第1の酸化物半導体層に接し、
第1の酸化物半導体層よりも小さいエネルギーギャップを有する第2の酸化物半導体層と
、第2の酸化物半導体層に接し、第2の酸化物半導体層より大きいエネルギーギャップを
有する第3の酸化物半導体層と、を含む酸化物半導体積層と、酸化物半導体積層上に設け
られたソース電極層またはドレイン電極層と、ソース電極層またはドレイン電極層上に設
けられたゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜を介して、酸化物半導体積層と重畳するゲート電
極層と、を有し、酸化物半導体積層において、ソース電極層またはドレイン電極層と重畳
しない領域は、ソース電極層またはドレイン電極層と重畳する領域よりも高い酸素濃度を
有する半導体装置である。
【0029】
上記構成の半導体装置において、第1の酸化物半導体層と第2の酸化物半導体層は同じマ
スクを用いて形成することができ、第3の酸化物半導体層は、第2の酸化物半導体層と重
なり、且つ、第2の酸化物半導体層の面積よりも広い面積とすることで、第2の酸化物半
導体層を包むような構成とすることができる。このような構成の半導体装置は、第1の酸
化物半導体層の側面及び第2の酸化物半導体層の側面を接して覆うように第3の酸化物半
導体層が設けられているため、第3の酸化物半導体層上に接して形成されるソース電極層
またはドレイン電極層が、第2の酸化物半導体層の側面と接しない構造となっており、ト
ランジスタのソース電極層およびドレイン電極層のリーク電流(寄生チャネル)の発生を
低減することができるため好ましい。
【0030】
また、ソース電極層またはドレイン電極層が、第2の酸化物半導体層の側面と接しない構
造であれば特に限定されず、例えば、第1の酸化物半導体層の側面が、第2の酸化物半導
体層の側面から突出した構造とし、第3の酸化物半導体層が第1の酸化物半導体層の上面
の一部と接する構成としてもよい。
【0031】
また、上記の半導体装置のいずれかにおいて、酸化物半導体積層において、ゲート電極層
と重畳しない領域は、ドーパントを含むのが好ましい。このような構成とすることで、酸
化物半導体積層は、ゲート絶縁膜を介してゲート電極層と重なるチャネル形成領域を有し
、チャネル長方向にそのチャネル形成領域を挟んで一対の低抵抗領域を有する。
【0032】
チャネル長方向にチャネル形成領域を挟んで低抵抗領域を含む酸化物半導体層を形成する
ことにより、該トランジスタはオン特性(例えば、オン電流及び電界効果移動度)が高く
、高速動作、高速応答が可能となる。また、低抵抗領域は、自己整合的に形成され、ゲー
ト電極層と重ならないため、寄生容量を小さくすることができる。寄生容量を小さくする
ことは、半導体装置全体の消費電力を低減することに繋がる。
【0033】
低抵抗領域におけるドーパントの濃度は、5×1018/cm3以上1×1022/cm
3以下であることが好ましい。
【0034】
また、ソース電極層及びドレイン電極層の膜厚やドーパントの導入条件にもよるが、ソー
ス電極層またはドレイン電極層を通過させて、これらのドーパントを酸化物半導体積層に
対して添加してもよい。チャネル形成領域にはドーパントが添加されないようにすること
が重要であるため、ソース電極層及びドレイン電極層の膜厚は、ゲート電極層の膜厚より
も薄い膜厚とする。
【0035】
また、上記の半導体装置のいずれかにおいて、ゲート電極層上に設けられ、ソース電極層
またはドレイン電極層に達するコンタクトホールを有する層間絶縁膜と、層間絶縁膜上に
設けられ、コンタクトホールを介してソース電極層またはドレイン電極層とそれぞれ接続
する配線層と、をさらに有するのが好ましい。
【発明の効果】
【0036】
本発明の一態様によって、トランジスタのオン特性(例えば、オン電流や電界効果移動度
)を向上させることができる。
【0037】
また、本発明の一態様によって、ノーマリーオフのトランジスタを実現することができる
。また、トランジスタがノーマリーオンであっても、トランジスタのしきい値をゼロに近
づけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明の一態様の半導体装置を説明する平面図、断面図、及びエネルギーバンド図。
【
図2】本発明の一態様の半導体装置の作製方法を説明する図。
【
図3】本発明の一態様の半導体装置を説明する断面図。
【
図4】本発明の一態様の半導体装置を説明する断面図。
【
図11】サンプルのTEM写真図およびその模式図。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は
以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれ
ば容易に理解される。したがって、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して
解釈されるものではない。
【0040】
なお、以下に説明する本発明の構成において、同一部分または同様の機能を有する部分に
は、同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。また、
同様の機能を有する部分を指す場合にはハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない
場合がある。
【0041】
なお、本明細書で説明する各図において、各構成の大きさ、膜の厚さ、または領域は、明
瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない
。
【0042】
なお、本明細書等において、第1、第2等として付される序数詞は便宜上用いるものであ
り、工程順又は積層順を示すものではない。また、本明細書等において発明を特定するた
めの事項として固有の名称を示すものではない。
【0043】
(実施の形態1)
本実施の形態では、半導体装置及び半導体装置の作製方法の一形態を、
図1乃至
図3を用
いて説明する。本実施の形態では、半導体装置の一例として酸化物半導体積層を有するト
ランジスタを示す。
【0044】
図1(A)、
図1(B)、及び
図1(C)に示すトランジスタ510は、トップゲート構
造のトランジスタの一例である。
図1(A)は上面図であり、
図1(A)中の鎖線XYで
切断した断面が
図1(B)に相当し、
図1(A)中の鎖線VWで切断した断面が
図1(C
)に相当する。なお、
図1(B)及び
図1(C)において、酸化物半導体積層403に含
まれる各酸化物半導体層の界面を模式的に点線で図示している。酸化物半導体層の材料や
成膜条件によっては、各酸化物半導体層同士の界面が不明確になる場合もある。また、界
面が不明確になる場合、異なる複数の酸化物半導体層の混合領域または混合層と呼ぶこと
のできる箇所が形成されることもある。
【0045】
チャネル長方向の断面図である
図1(B)に示すように、トランジスタ510は、酸化物
絶縁膜436が設けられた絶縁表面を有する基板400上に、第1の酸化物半導体層、第
2の酸化物半導体層、及び第3の酸化物半導体層を含む酸化物半導体積層403と、ソー
ス電極層405aと、ドレイン電極層405bと、ゲート絶縁膜402と、ゲート電極層
401と、を有する。トランジスタ510において第1の酸化物半導体層は、酸化物絶縁
膜436上に接して形成され、第2の酸化物半導体層は、第1の酸化物半導体層上に形成
される。また、トランジスタ510において、酸化物半導体積層は、第3の酸化物半導体
層を有し、第3の酸化物半導体層は、第1の酸化物半導体層の側面及び第2の酸化物半導
体層の側面を覆って設けられている。なお、第3の酸化物半導体層の周縁部は、酸化物絶
縁膜と接する。
【0046】
酸化物半導体積層403において、ゲート絶縁膜402を介してゲート電極層401と重
畳するチャネル形成領域は、3層で形成され、第1のチャネル形成領域121c、第2の
チャネル形成領域122c、及び第3のチャネル形成領域123cが積層されている。
【0047】
また、チャネル長方向に第1のチャネル形成領域121cを挟んで第1の低抵抗領域12
1a、121bを有する。また、チャネル長方向に第2のチャネル形成領域122cを挟
んで第2の低抵抗領域122a、122bを有する。また、チャネル長方向に第3のチャ
ネル形成領域123cを挟んで第3の低抵抗領域123a、123bを有する。
【0048】
また、ソース電極層405aまたはドレイン電極層405bと重なる第1の領域121d
、121e、第2の領域122d、122e、第3の領域123d、123eを有する。
【0049】
図1に示すトランジスタ510において、酸化物半導体積層403は、第1の低抵抗領域
121a、121b、第1のチャネル形成領域121c、及び第1の領域121d、12
1eを含む第1の酸化物半導体層と、第2の低抵抗領域122a、122b、第2のチャ
ネル形成領域122c、及び第2の領域122d、122eを含む第2の酸化物半導体層
と、第3の低抵抗領域123a、123b、第3のチャネル形成領域123c、及び第3
の領域123d、123eを含む第3の酸化物半導体層と、が順に積層されて構成される
。
【0050】
また、トランジスタ510において、第2の酸化物半導体層は、第1の酸化物半導体層よ
り小さいエネルギーギャップを有し、第3の酸化物半導体層は、第2の酸化物半導体層よ
りも大きいエネルギーギャップを有する。また、第1の酸化物半導体層と、第3の酸化物
半導体層とは同等のエネルギーギャップを有するのが好ましい。
【0051】
図1(B)は、チャネル長方向の断面図であり、第2の酸化物半導体層の端部、即ち、第
2の領域122d、122eの側面が第3の酸化物半導体層の端部、即ち、第3の領域1
23d、123eで覆われる構造とするのが好ましい。このような構造とすることで、ト
ランジスタのソース電極層405a及びドレイン電極層405bのリーク電流(寄生チャ
ネル)の発生を低減することができる。
【0052】
図1(C)は、チャネル幅方向の断面図であり、
図1(B)と同様に第2の酸化物半導体
層の端部、即ち、第2のチャネル形成領域122cの側面が第3の酸化物半導体層の端部
、即ち、第3のチャネル形成領域123cで覆われる構造とするのが好ましい。
【0053】
また、
図1(D)は、
図1(B)における膜厚方向(D-D’間)のエネルギーバンド図
を示す図である。本実施の形態では、
図1(D)に示すエネルギーバンド図となるように
、第1の酸化物半導体層、第2の酸化物半導体層、及び第3の酸化物半導体層の材料を選
択する。但し、伝導帯に埋め込みチャネルが形成されれば十分な効果が得られるため、必
ずしも
図1(D)に示すエネルギーバンド図のように伝導帯と価電子帯の両方に凹部を有
するエネルギーバンド図に限定しなくともよい。例えば、伝導帯のみに凹部を有するエネ
ルギーバンド図が得られる構成としてもよい。
【0054】
図2(A)、
図2(B)、
図2(C)、及び
図2(D)にトランジスタの作製方法の一例
を示す。
【0055】
まず、絶縁表面を有する基板400上に酸化物絶縁膜436、第1の酸化物半導体層10
1、第2の酸化物半導体層102を形成する。
【0056】
絶縁表面を有する基板400に使用することができる基板に大きな制限はないが、少なく
とも、後の熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有していることが必要となる。例えば、バリ
ウムホウケイ酸ガラスやアルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板、セラミック基板、
石英基板、サファイア基板などを用いることができる。また、シリコンや炭化シリコンな
どの単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウムなどの化合物半導体基
板、SOI基板などを適用することもでき、これらの基板上に半導体素子が設けられたも
のを、基板400として用いてもよい。
【0057】
また、基板400として、可撓性基板を用いて半導体装置を作製してもよい。可撓性を有
する半導体装置を作製するには、可撓性基板上に酸化物半導体積層を含むトランジスタを
直接作製してもよいし、他の作製基板に酸化物半導体積層を含むトランジスタを作製し、
剥離し、その後可撓性基板に転置してもよい。なお、作製基板から可撓性基板に剥離、転
置するために、作製基板と酸化物半導体積層を含むトランジスタとの間に剥離層を設ける
とよい。
【0058】
酸化物絶縁膜436としては、プラズマCVD法又はスパッタリング法等により、酸化シ
リコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ハフニウム
、酸化ガリウム、窒化酸化シリコン、窒化酸化アルミニウム、又はこれらの混合材料を用
いて形成することができる。酸化物絶縁膜436は、単層でも積層でもよい。本実施の形
態では酸化物絶縁膜436としてスパッタリング法を用いて形成する酸化シリコン膜を用
いる。
【0059】
トランジスタ510において、酸化物絶縁膜436は、酸化物半導体積層の最下層及び最
上層と接するため、膜中(バルク中)に少なくとも化学量論的組成比を超える量の酸素が
存在することが好ましい。例えば、酸化物絶縁膜436として、酸化シリコン膜を用いる
場合には、SiO2+α(ただし、α>0)とする。このような酸化物絶縁膜436を用
いることで、上方に形成する酸化物半導体積層に酸素を供給することができ、特性を良好
にすることができる。酸化物半導体積層へ酸素を供給することにより、膜中の酸素欠損を
補填することができる。
【0060】
酸化物絶縁膜436上に形成する酸化物半導体積層の形成工程において、第1の酸化物半
導体層101及び第2の酸化物半導体層102に水素、又は水がなるべく含まれないよう
にするために、第1の酸化物半導体層101及び第2の酸化物半導体層102の成膜の前
処理として、スパッタリング装置の予備加熱室で酸化物絶縁膜436が形成された基板を
予備加熱し、基板及び酸化物絶縁膜436に吸着した水素、水分などの不純物を脱離し排
気することが好ましい。なお、予備加熱室に設ける排気手段はクライオポンプが好ましい
。
【0061】
酸化物半導体積層に用いる酸化物半導体としては、少なくともインジウム(In)あるい
は亜鉛(Zn)を含むことが好ましい。特にInとZnを含むことが好ましい。また、該
酸化物を用いたトランジスタの電気特性のばらつきを減らすためのスタビライザーとして
、それらに加えてガリウム(Ga)を有することが好ましい。また、スタビライザーとし
てスズ(Sn)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてハフニウム(Hf
)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてアルミニウム(Al)を有する
ことが好ましい。
【0062】
また、他のスタビライザーとして、ランタノイドである、ランタン(La)、セリウム(
Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム
(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホル
ミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ル
テチウム(Lu)のいずれか一種あるいは複数種を有してもよい。
【0063】
例えば、酸化物半導体として、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、二元系金属の酸化
物であるIn-Zn系酸化物、Sn-Zn系酸化物、Al-Zn系酸化物、Zn-Mg系
酸化物、Sn-Mg系酸化物、In-Mg系酸化物、In-Ga系酸化物、三元系金属の
酸化物であるIn-Ga-Zn系酸化物(IGZOとも表記する)、In-Al-Zn系
酸化物、In-Sn-Zn系酸化物、Sn-Ga-Zn系酸化物、Al-Ga-Zn系酸
化物、Sn-Al-Zn系酸化物、In-Hf-Zn系酸化物、In-La-Zn系酸化
物、In-Ce-Zn系酸化物、In-Pr-Zn系酸化物、In-Nd-Zn系酸化物
、In-Sm-Zn系酸化物、In-Eu-Zn系酸化物、In-Gd-Zn系酸化物、
In-Tb-Zn系酸化物、In-Dy-Zn系酸化物、In-Ho-Zn系酸化物、I
n-Er-Zn系酸化物、In-Tm-Zn系酸化物、In-Yb-Zn系酸化物、In
-Lu-Zn系酸化物、四元系金属の酸化物であるIn-Sn-Ga-Zn系酸化物、I
n-Hf-Ga-Zn系酸化物、In-Al-Ga-Zn系酸化物、In-Sn-Al-
Zn系酸化物、In-Sn-Hf-Zn系酸化物、In-Hf-Al-Zn系酸化物を用
いることができる。
【0064】
酸化物半導体は単結晶でも、非単結晶でもよい。後者の場合、アモルファスでも、多結晶
でもよい。また、アモルファス中に結晶性を有する部分を含む構造でも、非アモルファス
でもよい。なお、同じ材料でも単結晶と、非単結晶ではエネルギーギャップが異なること
があるため、適宜結晶状態を選択することが重要である。
図1(D)に示すエネルギーバ
ンド図となるように、第1の酸化物半導体層101や第2の酸化物半導体層102の材料
を選択する。
【0065】
また、酸化物半導体積層として、結晶を含み、結晶性を有する酸化物半導体膜(結晶性酸
化物半導体膜)を用いることができる。結晶性酸化物半導体膜における結晶状態は、結晶
軸の方向が無秩序な状態でも、一定の配向性を有する状態であってもよい。
【0066】
例えば、結晶性酸化物半導体膜として、表面に概略垂直なc軸を有している結晶を含む酸
化物半導体膜を用いることができる。
【0067】
表面に概略垂直なc軸を有している結晶を含む酸化物半導体膜は、単結晶構造ではなく、
非晶質構造でもない構造であり、c軸配向を有したCAAC-OS(C Axis Al
igned Crystalline Oxide Semiconductor)膜で
ある。
【0068】
CAAC-OS膜は、完全な単結晶ではなく、完全な非晶質でもない。CAAC-OS膜
は、非晶質相に結晶部および非晶質部を有する結晶-非晶質混相構造の酸化物半導体膜で
ある。なお、当該結晶部は、一辺が100nm未満の立方体内に収まる大きさであること
が多い。また、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electro
n Microscope)による観察像では、CAAC-OS膜に含まれる非晶質部と
結晶部との境界は明確ではない。また、TEMによってCAAC-OS膜には粒界(グレ
インバウンダリーともいう。)は確認できない。そのため、CAAC-OS膜は、粒界に
起因する電子移動度の低下が抑制される。
【0069】
CAAC-OS膜に含まれる結晶部は、c軸がCAAC-OS膜の被形成面の法線ベクト
ルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向に揃い、かつab面に垂直な方向から見て三角
形状または六角形状の原子配列を有し、c軸に垂直な方向から見て金属原子が層状または
金属原子と酸素原子とが層状に配列している。なお、異なる結晶部間で、それぞれa軸お
よびb軸の向きが異なっていてもよい。本明細書において、単に垂直と記載する場合、8
5°以上95°以下の範囲も含まれることとする。また、単に平行と記載する場合、-5
°以上5°以下の範囲も含まれることとする。
【0070】
なお、CAAC-OS膜において、結晶部の分布が一様でなくてもよい。例えば、CAA
C-OS膜の形成過程において、酸化物半導体膜の表面側から結晶成長させる場合、被形
成面の近傍に対し表面の近傍では結晶部の占める割合が高くなることがある。また、CA
AC-OS膜へ不純物を添加することにより、当該不純物添加領域において結晶部が非晶
質化することもある。
【0071】
CAAC-OS膜に含まれる結晶部のc軸は、CAAC-OS膜の被形成面の法線ベクト
ルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向に揃うため、CAAC-OS膜の形状(被形成
面の断面形状または表面の断面形状)によっては互いに異なる方向を向くことがある。な
お、結晶部のc軸の方向は、CAAC-OS膜が形成されたときの被形成面の法線ベクト
ルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向となる。結晶部は、成膜することにより、また
は成膜後に加熱処理などの結晶化処理を行うことにより形成される。
【0072】
CAAC-OS膜を用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気特性の変動
を低減することが可能である。よって、当該トランジスタは、信頼性が高い。
【0073】
第1の酸化物半導体層101及び第2の酸化物半導体層102の膜厚は、5nm以上10
nm以下(好ましくは5nm以上30nm以下)とし、スパッタリング法、MBE(Mo
lecular Beam Epitaxy)法、CVD法、パルスレーザ堆積法、AL
D(Atomic Layer Deposition)法等を適宜用いることができる
。また、第1の酸化物半導体層101及び第2の酸化物半導体層102は、スパッタリン
グターゲット表面に対し、概略垂直に複数の基板表面がセットされた状態で成膜を行うス
パッタ装置を用いて成膜してもよい。
【0074】
なお、第1の酸化物半導体層101及び第2の酸化物半導体層102は、成膜時に酸素が
多く含まれるような条件(例えば、酸素100%の雰囲気下でスパッタリング法により成
膜を行うなど)で成膜して、酸素を多く含む(好ましくは酸化物半導体が結晶状態におけ
る化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれている)膜とすることが
好ましい。
【0075】
なお、本実施の形態において、第1の酸化物半導体層101は、スパッタリング法で作製
するためのターゲットとしては、例えば、組成比として、In2O3:Ga2O3:Zn
O=1:1:2[mol比]の金属酸化物ターゲットを用い、In-Ga-Zn系酸化物
膜を成膜する。また、このターゲットの材料及び組成に限定されず、例えば、In2O3
:Ga2O3:ZnO=1:1:1[mol比]の金属酸化物ターゲットを用いてもよい
。
【0076】
第1の酸化物半導体層101及び第2の酸化物半導体層102を、成膜する際に用いるス
パッタリングガスは水素、水、水酸基又は水素化物などの不純物が除去された高純度ガス
を用いることが好ましい。
【0077】
また、酸化物絶縁膜436と酸化物半導体積層とを大気に解放せずに連続的に形成するこ
とが好ましい。酸化物絶縁膜436と酸化物半導体積層とを大気に曝露せずに連続して形
成すると、酸化物絶縁膜436表面に水素や水分などの不純物が吸着することを防止する
ことができる。
【0078】
CAAC-OS膜は、例えば、多結晶である酸化物半導体スパッタリング用ターゲットを
用い、スパッタリング法によって成膜する。当該スパッタリング用ターゲットにイオンが
衝突すると、スパッタリング用ターゲットに含まれる結晶領域がa-b面から劈開し、a
-b面に平行な面を有する平板状またはペレット状のスパッタリング粒子として剥離する
ことがある。この場合、当該平板状のスパッタリング粒子が、結晶状態を維持したまま基
板に到達することで、CAAC-OS膜を成膜することができる。
【0079】
また、CAAC-OS膜を成膜するために、以下の条件を適用することが好ましい。
【0080】
成膜時の不純物混入を低減することで、不純物によって結晶状態が崩れることを抑制でき
る。例えば、成膜室内に存在する不純物濃度(水素、水、二酸化炭素および窒素など)を
低減すればよい。また、成膜ガス中の不純物濃度を低減すればよい。具体的には、露点が
-80℃以下、好ましくは-100℃以下である成膜ガスを用いる。
【0081】
また、成膜時の基板加熱温度を高めることで、基板到達後にスパッタリング粒子のマイグ
レーションが起こる。具体的には、基板加熱温度を100℃以上740℃以下、好ましく
は200℃以上500℃以下として成膜する。成膜時の基板加熱温度を高めることで、平
板状のスパッタリング粒子が基板に到達した場合、基板上でマイグレーションが起こり、
スパッタリング粒子の平らな面が基板に付着する。
【0082】
また、成膜ガス中の酸素割合を高め、電力を最適化することで成膜時のプラズマダメージ
を軽減すると好ましい。成膜ガス中の酸素割合は、30体積%以上、好ましくは100体
積%とする。
【0083】
スパッタリング用ターゲットの一例として、In-Ga-Zn-O化合物ターゲットにつ
いて以下に示す。
【0084】
InOX粉末、GaOY粉末およびZnOZ粉末を所定のmol数比で混合し、加圧処理
後、1000℃以上1500℃以下の温度で加熱処理をすることで多結晶であるIn-G
a-Zn-O化合物ターゲットとする。なお、X、YおよびZは任意の正数である。ここ
で、所定のmol数比は、例えば、InOX粉末、GaOY粉末およびZnOZ粉末が、
2:2:1、8:4:3、3:1:1、1:1:1、4:2:3または3:1:2のmo
l数比である。なお、粉末の種類、およびその混合する比率は、作製するスパッタリング
用ターゲットによって適宜変更すればよい。
【0085】
本実施の形態では、
図2(A)に示すように、成膜された酸化物半導体積層を第1のフォ
トリソグラフィ工程により島状の第1の酸化物半導体層101及び島状の第2の酸化物半
導体層102に加工する。また、島状の第1の酸化物半導体層101及び島状の第2の酸
化物半導体層102を形成するためのレジストマスクをインクジェット法で形成してもよ
い。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製
造コストを低減できる。
【0086】
なお、酸化物半導体積層のエッチングは、ドライエッチングでもウェットエッチングでも
よく、両方を用いてもよい。例えば、酸化物半導体膜のウェットエッチングに用いるエッ
チング液としては、燐酸と酢酸と硝酸を混ぜた溶液などを用いることができる。また、I
TO07N(関東化学社製)を用いてもよい。
【0087】
次いで、島状の第1の酸化物半導体層101及び島状の第2の酸化物半導体層102を覆
う第3の酸化物半導体層103を形成する。これによって、酸化物半導体積層403が形
成される。第3の酸化物半導体層103は、第1の酸化物半導体層101と同じターゲッ
トを用いて形成する。第3の酸化物半導体層103の成膜条件は、第1の酸化物半導体層
101と同じであるため、ここでは説明を省略する。なお、第2のフォトリソグラフィ工
程により第2の酸化物半導体層102と重なり、且つ、第2の酸化物半導体層102の平
面面積よりも広い上面形状の第3の酸化物半導体層103を形成する。
【0088】
次いで、酸化物半導体積層403に、過剰な水素(水や水酸基を含む)を除去(脱水化ま
たは脱水素化)するための加熱処理を行ってもよい。加熱処理の温度は、300℃以上7
00℃以下、または基板の歪み点未満とする。加熱処理は減圧下又は窒素雰囲気下などで
行うことができる。例えば、加熱処理装置の一つである電気炉に基板を導入し、酸化物半
導体積層403に対して窒素雰囲気下450℃において1時間の加熱処理を行う。
【0089】
なお、加熱処理装置は電気炉に限られず、抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導または熱
輻射によって、被処理物を加熱する装置を用いてもよい。例えば、GRTA(Gas R
apid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid T
hermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Anne
al)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドラ
ンプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀
ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置であ
る。GRTA装置は、高温のガスを用いて加熱処理を行う装置である。高温のガスには、
アルゴンなどの希ガス、または窒素のような、加熱処理によって被処理物と反応しない不
活性気体が用いられる。
【0090】
例えば、加熱処理として、650℃~700℃の高温に加熱した不活性ガス中に基板を入
れ、数分間加熱した後、基板を不活性ガス中から出すGRTAを行ってもよい。
【0091】
なお、加熱処理においては、窒素、またはヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスに、水
、水素などが含まれないことが好ましい。または、熱処理装置に導入する窒素、またはヘ
リウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上好ましく
は7N(99.99999%)以上(即ち不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1
ppm以下)とすることが好ましい。
【0092】
また、加熱処理で酸化物半導体積層403を加熱した後、加熱温度を維持、またはその加
熱温度から徐冷しながら同じ炉に高純度の酸素ガス、高純度の一酸化二窒素ガス、又は超
乾燥エア(CRDS(キャビティリングダウンレーザー分光法)方式の露点計を用いて測
定した場合の水分量が20ppm(露点換算で-55℃)以下、好ましくは1ppm以下
、より好ましくは10ppb以下の空気)を導入してもよい。酸素ガスまたは一酸化二窒
素ガスに、水、水素などが含まれないことが好ましい。または、熱処理装置に導入する酸
素ガスまたは一酸化二窒素ガスの純度を、6N以上好ましくは7N以上(即ち、酸素ガス
または一酸化二窒素ガス中の不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)
とすることが好ましい。酸素ガス又は一酸化二窒素ガスの作用により、脱水化または脱水
素化処理による不純物の排除工程によって同時に減少してしまった酸化物半導体を構成す
る主成分材料である酸素を供給することによって、酸化物半導体積層403を高純度化及
びi型(真性)化することができる。
【0093】
次いで、酸化物半導体積層403上に、ソース電極層及びドレイン電極層(これと同じ層
で形成される配線を含む)となる導電膜を形成する。該導電膜は後の加熱処理に耐えられ
る材料を用いる。ソース電極層、及びドレイン電極層に用いる導電膜としては、例えば、
Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、Wから選ばれた元素を含む金属膜、または上述し
た元素を成分とする金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン
膜)等を用いることができる。また、Al、Cuなどの金属膜の下側又は上側の一方また
は双方にTi、Mo、Wなどの高融点金属膜またはそれらの金属窒化物膜(窒化チタン膜
、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)を積層させた構成としても良い。また、ソー
ス電極層、及びドレイン電極層に用いる導電膜としては、導電性の金属酸化物で形成して
も良い。導電性の金属酸化物としては酸化インジウム(In2O3)、酸化スズ(SnO
2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム酸化スズ(In2O3-SnO2)、酸化イ
ンジウム酸化亜鉛(In2O3-ZnO)またはこれらの金属酸化物材料に酸化シリコン
を含ませたものを用いることができる。
【0094】
第3のフォトリソグラフィ工程により導電膜上にレジストマスクを形成し、選択的にエッ
チングを行ってソース電極層405a、ドレイン電極層405bを形成した後、レジスト
マスクを除去する。この段階での断面が
図2(B)である。本実施の形態では、ソース電
極層405a、ドレイン電極層405bとして膜厚10nmのタングステン膜を形成する
。このようにソース電極層405a、ドレイン電極層405bの膜厚が薄いと、上に形成
されるゲート絶縁膜442の被覆性が良好となる他、ソース電極層405a、ドレイン電
極層405bを通過してソース電極層405a、ドレイン電極層405b下方の酸化物半
導体積層403にドーパントを導入することができる。
【0095】
次いで、酸化物半導体積層403、ソース電極層405a、及びドレイン電極層405b
を覆うゲート絶縁膜402を形成する。
【0096】
ゲート絶縁膜402の膜厚は、1nm以上20nm以下とし、スパッタリング法、MBE
法、CVD法、パルスレーザ堆積法、ALD法等を適宜用いることができる。また、ゲー
ト絶縁膜402は、スパッタリングターゲット表面に対し、概略垂直に複数の基板表面が
セットされた状態で成膜を行うスパッタ装置を用いて成膜してもよい。
【0097】
ゲート絶縁膜402の材料としては、酸化シリコン膜、酸化ガリウム膜、酸化アルミニウ
ム膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化窒化アルミニウム膜、または窒化酸化
シリコン膜を用いて形成することができる。
【0098】
また、ゲート絶縁膜402の材料として酸化ハフニウム、酸化イットリウム、ハフニウム
シリケート(HfSixOyx>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムシリケー
ト(HfSiOxNy(x>0、y>0))、ハフニウムアルミネート(HfAlxOy
(x>0、y>0))、酸化ランタンなどのhigh-k材料を用いることでゲートリー
ク電流を低減できる。さらに、ゲート絶縁膜402は、単層構造としても良いし、積層構
造としても良い。
【0099】
次いで、
図2(C)に示すように、ソース電極層405a、及びドレイン電極層405b
をマスクとして酸化物半導体積層403に酸素431を導入する。酸素(少なくとも、酸
素ラジカル、酸素原子、酸素イオン、のいずれかを含む)を導入して、少なくとも第3の
酸化物半導体層中に酸素を供給する。酸素の導入方法としては、イオン注入法、イオンド
ーピング法、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法、プラズマ処理などを
用いることができる。
【0100】
酸化物半導体積層403へ酸素を導入することで、酸化物半導体積層403において、ソ
ース電極層405aまたはドレイン電極層405bと重畳しない領域は、ソース電極層4
05aまたはドレイン電極層405bと重畳する領域よりも高い酸素濃度を有することと
なる。酸素の導入処理によって、ソース電極層405aまたはドレイン電極層405bと
重畳しない領域における酸素の含有量を、その化学量論的組成比を超える程度とするのが
好ましい。例えば、酸素導入処理によって酸素が導入された領域における酸化物半導体積
層403の酸素濃度のピークを1×1018/cm3以上5×1021/cm3以下とす
るのが好ましい。
【0101】
本実施の形態においては、酸素431の導入によって、化学量論的組成比よりも酸素を過
剰に含む領域(酸素過剰領域)として、第1の酸素過剰領域111、第2の酸素過剰領域
112及び第3の酸素過剰領域113を自己整合的に形成する。但し、酸素431は、少
なくとも第3の酸化物半導体層103と、ゲート絶縁膜402の界面において含有されれ
ばよい。よって、酸素431の導入深さによっては、第1の酸化物半導体層101及び第
2の酸化物半導体層102における酸素濃度は、ソース電極層405aまたはドレイン電
極層405bと重畳する領域とその他の領域において同等である場合もある。酸化物半導
体積層403への酸素の導入深さは、加速電圧、ドーズ量などの注入条件、また通過させ
るゲート絶縁膜402膜厚を適宜設定して制御すればよい。
【0102】
なお、酸素431の導入のタイミングは、ゲート絶縁膜402の形成後に限られるもので
はない。但し、酸素の導入を、酸化物半導体積層403に積層された膜越しに行うと、酸
素の導入深さ(導入領域)がより制御しやすくなるため、酸化物半導体積層403へ酸素
を効率よく注入できるという利点がある。
【0103】
また、酸素431の導入処理後、加熱処理を行ってもよい。加熱条件としては、温度25
0℃以上700℃以下、好ましくは300℃以上450℃以下で、酸素雰囲気下で行うこ
とが好ましい。また、窒素雰囲気下、減圧下、大気(超乾燥エア)下で加熱処理を行って
もよい。
【0104】
酸化物半導体積層の少なくとも一層を結晶性酸化物半導体膜とした場合、酸素431の導
入により、一部非晶質化する場合がある。この場合、酸素431の導入後に加熱処理を行
うことによって、酸化物半導体積層の結晶性を回復することができる。
【0105】
また、酸化物半導体積層403に酸素過剰領域を形成することで、酸素欠損を直ちに補填
することができるため、酸化物半導体積層403中の電荷捕獲中心を低減することができ
る。酸化物半導体積層403において、酸素が脱離した箇所では酸素欠損が存在し、該酸
素欠損に起因してトランジスタの電気的特性変動を招くドナー準位が生じてしまう。酸素
を導入することにより、膜中の酸素欠損を補填することができるため、このような酸化物
半導体積層をトランジスタに用いることで、酸素欠損に起因するトランジスタのしきい値
電圧Vthのばらつき、しきい値電圧のシフトΔVthを低減することができる。また、
しきい値電圧をプラスシフトさせ、トランジスタをノーマリーオフ化することもできる。
【0106】
次いで、ゲート電極層401をプラズマCVD法又はスパッタリング法等により、ゲート
絶縁膜402上に形成する。ゲート電極層401の材料は、モリブデン、チタン、タンタ
ル、タングステン、アルミニウム、銅、クロム、ネオジム、スカンジウム等の金属材料ま
たはこれらを主成分とする合金材料を用いて形成することができる。また、ゲート電極層
401としてリン等の不純物元素をドーピングした多結晶シリコン膜に代表される半導体
膜、ニッケルシリサイドなどのシリサイド膜を用いてもよい。ゲート電極層401は、単
層構造としてもよいし、積層構造としてもよい。
【0107】
また、ゲート電極層401の材料は、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むイン
ジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジ
ウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素
を添加したインジウム錫酸化物などの導電性材料を適用することもできる。また、上記導
電性材料と、上記金属材料の積層構造とすることもできる。
【0108】
また、ゲート絶縁膜402と接するゲート電極層401の一層として、窒素を含む金属酸
化物、具体的には、窒素を含むIn-Ga-Zn系酸化物膜や、窒素を含むIn-Sn系
酸化物膜や、窒素を含むIn-Ga系酸化物膜や、窒素を含むIn-Zn系酸化物膜や、
窒素を含むSn系酸化物膜や、窒素を含むIn系酸化物膜や、金属窒化膜(InN、Sn
Nなど)を用いることができる。これらの膜は5eV、好ましくは5.5eV以上の仕事
関数を有し、ゲート電極層として用いた場合、トランジスタの電気特性のしきい値電圧を
プラスにすることができ、所謂ノーマリーオフのスイッチング素子を実現できる。
【0109】
次に、ドーパント421を選択的に導入する処理を行うのが好ましい。この処理で、ゲー
ト電極層401をマスクとして、ゲート絶縁膜402を通過して、第1の低抵抗領域12
1a、121b、第2の低抵抗領域122a、122b、第3の低抵抗領域123a、1
23bを形成する。この処理でチャネル長方向に第1のチャネル形成領域121cを挟ん
で第1の低抵抗領域121a、121bが自己整合的に形成される。また、チャネル長方
向に第2のチャネル形成領域122cを挟んで第2の低抵抗領域122a、122bが自
己整合的に形成される。また、チャネル長方向に第3のチャネル形成領域123cを挟ん
で第3の低抵抗領域123a、123bが自己整合的に形成される。
【0110】
本実施の形態のトランジスタ510において、第1の低抵抗領域121a、121b、第
2の低抵抗領域122a、122b、及び第3の低抵抗領域123a、123bは、ドー
パントと、酸素を過剰に含む領域となる。
【0111】
さらに、この処理で、ゲート絶縁膜402、ソース電極層405a、及びドレイン電極層
405bを通過して酸化物半導体積層403(少なくとも第3の酸化物半導体層103)
にドーパント421を選択的に導入し、第1の領域121d、121e、第2の領域12
2d、122e、及び第3の領域123d、123eを形成する(
図2(D)参照)。ソ
ース電極層405a、及びドレイン電極層405bの下方にもドーパント421を導入す
ることで第1の領域121d、121e、第2の領域122d、122e、及び第3の領
域123d、123eの低抵抗化を図ることができる。
【0112】
ドーパント421を導入してチャネル長方向にチャネル形成領域を挟んで低抵抗領域を含
む酸化物半導体積層403を形成することにより、トランジスタ510のオン特性を向上
させ、高速動作、高速応答が可能なトランジスタとすることができる。また、低抵抗領域
は、自己整合的に形成され、ゲート電極層と重ならないため、寄生容量を小さくすること
ができる。寄生容量を小さくすることは、半導体装置全体の消費電力を低減することに繋
がる。
【0113】
また、本実施の形態では、ソース電極層405a、及びドレイン電極層405bを薄膜と
するため、ソース電極層405a、及びドレイン電極層405b下の酸化物半導体積層4
03にもドーパント421が導入される。ソース電極層405a、及びドレイン電極層4
05bの膜厚や、ドーパント421の導入条件によってはソース電極層405a、及びド
レイン電極層405b下の酸化物半導体積層にはドーパント421が導入されない構成と
することもできる。
【0114】
ドーパント421の導入処理は、加速電圧、ドーズ量などの注入条件、また通過させるゲ
ート絶縁膜402の膜厚を適宜設定して制御すればよい。例えば、ホウ素を用いて、イオ
ン注入法でホウ素イオンの注入を行う場合、ドーズ量を1×1013ions/cm2以
上5×1016ions/cm2以下とすればよい。
【0115】
第1の低抵抗領域121a、121b、第2の低抵抗領域122a、122b、及び第3
の低抵抗領域123a、123bにおけるドーパント421の濃度は、5×1018/c
m3以上1×1022/cm3以下であることが好ましい。
【0116】
ドーパントを導入する際に、基板400を加熱しながら行ってもよい。
【0117】
なお、第1の低抵抗領域121a、121b、第2の低抵抗領域122a、122b、第
3の低抵抗領域123a、123bにドーパント421を導入する処理は、複数回行って
もよく、ドーパントの種類も複数種用いてもよい。
【0118】
また、ドーパント421の導入処理後、加熱処理を行ってもよい。加熱条件としては、温
度300℃以上700℃以下、好ましくは300℃以上450℃以下で1時間、酸素雰囲
気下で行うことが好ましい。また、窒素雰囲気下、減圧下、大気(超乾燥エア)下で加熱
処理を行ってもよい。
【0119】
酸化物半導体積層の少なくとも一層を結晶性酸化物半導体膜とした場合、ドーパント42
1の導入により、一部非晶質化する場合がある。この場合、ドーパント421の導入後に
加熱処理を行うことによって、酸化物半導体積層の結晶性を回復することができる。
【0120】
本実施の形態では、ドーパントとしてホウ素を用いる。よって、第1の低抵抗領域121
a、121b、第2の低抵抗領域122a、122b、及び第3の低抵抗領域123a、
123bはホウ素と、過剰な酸素とが含まれる。
【0121】
以上の工程で、本実施の形態のトランジスタ510が作製される。
【0122】
なお、トランジスタを覆うように絶縁膜407を形成してもよい(
図1(B)、及び
図1
(C)参照)。
【0123】
絶縁膜407は、酸化シリコン膜の他に、代表的に酸化アルミニウム膜、酸化窒化シリコ
ン膜、酸化窒化アルミニウム膜、又は酸化ガリウム膜などの無機絶縁膜を用いることがで
きる。例えば、絶縁膜407として酸化シリコン膜と酸化アルミニウム膜との積層を用い
ることができる。
【0124】
絶縁膜407として用いることのできる酸化アルミニウム膜は、水素、水分などの不純物
、及び酸素の両方に対して膜を通過させない遮断効果(ブロック効果)が高い。
【0125】
また、絶縁膜407として平坦化絶縁膜を用いてもよい。平坦化絶縁膜としては、ポリイ
ミド樹脂、アクリル樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、等の有機材料を用いることができ
る。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(low-k材料)等を用いることができる
。なお、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させることで、平坦化絶縁膜を形成
してもよい。
【0126】
次いで、絶縁膜407にソース電極層405a、ドレイン電極層405bに達する開口を
形成し、開口にソース電極層405a、ドレイン電極層405bと電気的に接続する配線
層を形成する。この配線層を用いて他のトランジスタと接続させ、様々な回路を構成する
ことができる。
【0127】
なお、本実施の形態で示すトランジスタは、異なるエネルギーギャップを有する酸化物半
導体を積層させた酸化物半導体層を含み、当該酸化物半導体積層は化学量論的組成比より
も過剰に酸素を含む領域を有することを技術的本質とする。よって、酸化物半導体積層4
03への不純物の導入は必ずしも行う必要はない。例えば、
図2で示す作製工程において
、ゲート電極層401を形成後、不純物の導入を行わずに、ゲート絶縁膜402及びゲー
ト電極層401上に絶縁膜407を形成することで、
図3に示すトランジスタ520を形
成することができる。
【0128】
図3に示すトランジスタ520は、酸化物絶縁膜436が設けられた絶縁表面を有する基
板400上に、第1の酸化物半導体層、第2の酸化物半導体層及び第3の酸化物半導体層
を含む酸化物半導体積層403と、ソース電極層405aと、ドレイン電極層405bと
、ゲート絶縁膜402と、ゲート絶縁膜402を介して酸化物半導体積層403と重畳す
るゲート電極層401と、を含んで構成される。
【0129】
トランジスタ520において、酸化物半導体積層403は、ソース電極層405aまたは
ドレイン電極層405bをマスクとして自己整合的に形成された第1の酸素過剰領域11
1、第2の酸素過剰領域112及び第3の酸素過剰領域113と、ソース電極層405a
またはドレイン電極層405bと重畳する第1の領域131d、131e、第2の領域1
32d、132e及び第3の領域133d、133eと、を含む。
【0130】
ソース電極層405aまたはドレイン電極層405bと重畳しない領域(第1の酸素過剰
領域111、第2の酸素過剰領域112及び第3の酸素過剰領域113)は、ソース電極
層405aまたはドレイン電極層405bと重畳する領域(第1の領域131d、131
e、第2の領域132d、132e及び第3の領域133d、133e)よりも高い酸素
濃度を有するが、双方の領域における構成元素は同一である。
【0131】
トランジスタ510またはトランジスタ520に用いられる、高純度化され、酸素欠損が
補填された酸化物半導体積層403は、水素、水などの不純物が十分に除去されており、
酸化物半導体積層403中の水素濃度は5×1019/cm3以下、好ましくは5×10
18/cm3以下である。なお、酸化物半導体積層403中の水素濃度は、二次イオン質
量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometr
y)で測定されるものである。
【0132】
本実施の形態を用いて作製した、高純度化し、酸素欠損を補填する酸素を過剰に含む酸化
物半導体積層403を用いたトランジスタは、オフ状態における電流値(オフ電流値)を
、チャネル幅1μm当たり室温にて100zA/μm(1zA(ゼプトアンペア)は1×
10-21A)以下、好ましくは10zA/μm以下、より好ましくは1zA/μm以下
、さらに好ましくは100yA/μm以下レベルにまで低くすることができる。
【0133】
また、本実施の形態で示すトランジスタ510及びトランジスタ520において、第1の
酸化物半導体層の側面及び第2の酸化物半導体層の側面を覆うように、第3の酸化物半導
体層が形成されている。このような構成とすることで、第2の酸化物半導体層の酸素欠損
の増加を抑制し、トランジスタのしきい値電圧をゼロに近づける構成とすることができる
。さらには、第2の酸化物半導体層が埋め込みチャネルとなることでキャリアの散乱が低
減され、高い電界効果移動度を実現することができる。
【0134】
また、エネルギーギャップの小さい第2の酸化物半導体層を、エネルギーギャップの大き
い第1の酸化物半導体層及び第3の酸化物半導体層により挟む構造とすることによって、
よりトランジスタのオフ電流(リーク電流)を低減する効果が得られる。
【0135】
こうして得られる電気特性の高いトランジスタを用いることで高性能及び高信頼性の半導
体装置を提供することができる。
【0136】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適
宜組み合わせて用いることができる。
【0137】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1の工程を一部変更して得られるトランジスタの一例を図
4(A)乃至(E)に示す。実施の形態1と一部異なるだけであるため、簡略化のため同
一の符号を用いて説明し、同一の部分の詳細な説明は、ここでは省略することとする。
【0138】
図4(A)に示すトランジスタ530は、第1の酸化物半導体層及び第2の酸化物半導体
層を島状に加工する際に、同じマスクを用いて(或いは、加工によって作製した島状の第
1の酸化物半導体層及び第2の酸化物半導体層をマスクとして)酸化物絶縁膜436の一
部をエッチングして薄くした構成である。トランジスタ530において酸化物絶縁膜43
6は、島状の第1の酸化物半導体層及び第2の酸化物半導体層と重畳する領域は、その他
の領域(重畳しない領域)と比較して厚い膜厚を有している。第1の酸化物半導体層及び
第2の酸化物半導体層の島状への加工の際に、酸化物絶縁膜436の一部までエッチング
することによって第1の酸化物半導体層の残渣などのエッチング残りを除去し、リーク電
流の発生を低減することができる。
【0139】
また、
図4(B)に示すトランジスタ540は、3回のフォトリソグラフィ工程により、
酸化物半導体積層403を形成した構成である。トランジスタ540に含まれる酸化物半
導体積層403は、第1の酸化物半導体層を成膜後、第1のマスクを用いて島状の第1の
酸化物半導体層を形成し、島状の第1の酸化物半導体層上に第2の酸化物半導体層を成膜
後、第2のマスクを用いて島状の第2の酸化物半導体層を形成し、島状の第1及び第2の
酸化物半導体層上に第3の酸化物半導体層を成膜後、当該第3の酸化物半導体層を第3の
マスクを用いて島状に加工することで、形成される。
【0140】
なお、トランジスタ540は、第1の酸化物半導体層の側面が、第2の酸化物半導体層の
側面から突出した構造であり、第3の酸化物半導体層が第1の酸化物半導体層の上面の一
部と接する構成とした例である。第3の酸化物半導体層の端部に相当する第3の領域12
3d、123eは、第1の酸化物半導体層の端部に相当する第1の領域121d、121
eとそれぞれ接して重なる。
【0141】
また、
図4(C)に示すトランジスタ550は、ソース電極層をソース電極層405cと
ソース電極層405aの積層構造とし、ドレイン電極層をドレイン電極層405dとドレ
イン電極層405bの積層構造として、下層であるソース電極層405cとドレイン電極
層405dに達する配線層465a、配線層465bを形成する例である。絶縁膜407
にコンタクトホールを形成する際のエッチング工程によって、ソース電極層405aまた
はドレイン電極層405bの一部がオーバーエッチングによって除去されることがある。
トランジスタ550では、ソース電極層405a及びドレイン電極層405bを積層構造
とし、下層の導電層をエッチングストッパーとして機能させることもできる。
【0142】
本実施の形態で示すトランジスタ550では、下層のソース電極層405c及びドレイン
電極層405dとしてタングステン膜、または窒化タンタル膜を用い、下層よりも厚い上
層のソース電極層405a及びドレイン電極層405bとして銅膜またはアルミニウム膜
を用いる。
図4(C)における、ソース電極層405a及びドレイン電極層405bの膜
厚は5nm以上15nmとすることで、その上に形成されるゲート絶縁膜402の被覆性
を良好なものとすることができる。なお、本実施の形態では、配線層465a、配線層4
65bは、窒化タンタル膜と銅膜の積層、或いは窒化タンタル膜とタングステン膜の積層
とすることで接触抵抗の低減を図ることができる。
【0143】
また、
図4(D)に示すトランジスタ560は、第1の酸化物半導体層、第2の酸化物半
導体層及び第3の酸化物半導体層は同じマスクを用いて、1回のフォトリソグラフィ工程
により酸化物半導体積層403を形成した構成である。トランジスタ560に含まれる酸
化物半導体積層403においては、第1の酸化物半導体層、第2の酸化物半導体層及び第
3の酸化物半導体層は端部が一致した同形状の酸化物半導体層となる。すなわち、酸化物
半導体積層403において、第1の酸化物半導体層及び第2の酸化物半導体層の側面(端
部)は露出している。
【0144】
酸化物半導体積層403を1回のフォトリソグラフィ工程によって形成することで、工程
数を削減することができ、半導体装置の製造コストを低減することができる。なお、トラ
ンジスタ560において、ソース電極層405a及びドレイン電極層405bを第3の酸
化物半導体層の上面のみ、または第3の酸化物半導体積層の上面及び側面のみに接するよ
うに第3の酸化物半導体層上に設けることで、ソース電極層405a及びドレイン電極層
405bが第2の酸化物半導体層の側面と接しない構造とすることができる。このような
構成とすることで、トランジスタのソース電極層およびドレイン電極層のリーク電流(寄
生チャネル)の発生を低減することができるため好ましい。
【0145】
酸化物半導体積層403は、必ずしも3層構造としなくともよい。例えば、
図4(E)に
示すトランジスタ570は、第1の酸化物半導体層及び第2の酸化物半導体層からなる2
層構造の酸化物半導体積層403を含んで構成される。トランジスタ570において、第
2の酸化物半導体層は、第1の酸化物半導体層と重なり、且つ第1の酸化物半導体層の面
積よりも広い面積とすることで、第1の酸化物半導体層を包むような構成とすることがで
きる。このような構成とすることで、第1の酸化物半導体層の酸素欠損の増加を抑制し、
トランジスタのしきい値電圧をゼロに近づける構成とすることができる。なお、トランジ
スタ570において酸化物絶縁膜436として酸化アルミニウム膜を含む構成することで
、第1の酸化物半導体層に接する絶縁膜への酸素の脱離を防止することができるため、好
ましい。
【0146】
図4(E)に示すトランジスタ570は、第2の酸化物半導体層上に接して形成されるソ
ース電極層405aまたはドレイン電極層405bが第1の酸化物半導体層の側面と接し
ない構造とすることができるため、ソース電極層405a及びドレイン電極層405bの
リーク電流(寄生チャネル)の発生を低減することができるため好ましい。
【0147】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適
宜組み合わせて用いることができる。
【0148】
(実施の形態3)
実施の形態1または実施の形態2に示したトランジスタを用いて表示機能を有する半導体
装置(表示装置ともいう)を作製することができる。また、トランジスタを含む駆動回路
の一部または全体を、画素部と同じ基板上に一体形成し、システムオンパネルを形成する
ことができる。
【0149】
図5(A)において、第1の基板4001上に設けられた画素部4002を囲むようにし
て、シール材4005が設けられ、第2の基板4006によって封止されている。
図5(
A)においては、第1の基板4001上のシール材4005によって囲まれている領域と
は異なる領域に、別途用意された基板上に単結晶半導体膜又は多結晶半導体膜で形成され
た走査線駆動回路4004、信号線駆動回路4003が実装されている。また別途形成さ
れた信号線駆動回路4003と、走査線駆動回路4004または画素部4002に与えら
れる各種信号及び電位は、FPC(Flexible printed circuit
)4018a、4018bから供給されている。
【0150】
図5(B)、及び
図5(C)において、第1の基板4001上に設けられた画素部400
2と、走査線駆動回路4004とを囲むようにして、シール材4005が設けられている
。また画素部4002と、走査線駆動回路4004の上に第2の基板4006が設けられ
ている。よって画素部4002と、走査線駆動回路4004とは、第1の基板4001と
シール材4005と第2の基板4006とによって、表示素子と共に封止されている。図
5(B)、及び(C)においては、第1の基板4001上のシール材4005によって囲
まれている領域とは異なる領域に、別途用意された基板上に単結晶半導体膜又は多結晶半
導体膜で形成された信号線駆動回路4003が実装されている。
図5(B)、及び(C)
においては、別途形成された信号線駆動回路4003と、走査線駆動回路4004または
画素部4002に与えられる各種信号及び電位は、FPC4018から供給されている。
【0151】
また
図5(B)、及び
図5(C)においては、信号線駆動回路4003を別途形成し、第
1の基板4001に実装している例を示しているが、この構成に限定されない。走査線駆
動回路を別途形成して実装してもよいし、信号線駆動回路の一部または走査線駆動回路の
一部のみを別途形成して実装してもよい。
【0152】
なお、別途形成した駆動回路の接続方法は、特に限定されるものではなく、COG(Ch
ip On Glass)方法、ワイヤボンディング方法、或いはTAB(Tape A
utomated Bonding)方法などを用いることができる。
図5(A)は、C
OG方法により信号線駆動回路4003、走査線駆動回路4004を実装する例であり、
図5(B)は、COG方法により信号線駆動回路4003を実装する例であり、
図5(C
)は、TAB方法により信号線駆動回路4003を実装する例である。
【0153】
また、表示装置は、表示素子が封止された状態にあるパネルと、該パネルにコントローラ
を含むIC等を実装した状態にあるモジュールとを含む。
【0154】
なお、本明細書中における表示装置とは、画像表示デバイス、表示デバイス、もしくは光
源(照明装置含む)を指す。また、コネクター、例えばFPCもしくはTABテープもし
くはTCPが取り付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が
設けられたモジュール、または表示素子にCOG方式によりIC(集積回路)が直接実装
されたモジュールも全て表示装置に含むものとする。
【0155】
また第1の基板上に設けられた画素部及び走査線駆動回路は、トランジスタを複数有して
おり、実施の形態1または実施の形態2に例示したトランジスタを適用することができる
。
【0156】
表示装置に設けられる表示素子としては液晶素子(液晶表示素子ともいう)、発光素子(
発光表示素子ともいう)、を用いることができる。発光素子は、電流または電圧によって
輝度が制御される素子をその範疇に含んでおり、具体的には無機EL(Electro
Luminescence)、有機EL等が含まれる。また、電子インクなど、電気的作
用によりコントラストが変化する表示媒体も適用することができる。
【0157】
半導体装置の一形態について、
図5及び
図6を用いて説明する。
図6は、
図5(B)のM
-Nにおける断面図に相当する。
【0158】
図5及び
図6で示すように、半導体装置は接続端子電極4015及び端子電極4016を
有しており、接続端子電極4015及び端子電極4016はFPC4018が有する端子
と異方性導電膜4019を介して、電気的に接続されている。
【0159】
接続端子電極4015は、第1の電極層4030と同じ導電膜から形成され、端子電極4
016は、トランジスタ4040、4010、4011のソース電極層及びドレイン電極
層と同じ導電膜で形成されている。
【0160】
また第1の基板4001上に設けられた画素部4002と、走査線駆動回路4004は、
トランジスタを複数有しており、
図6(A)では、画素部4002に含まれるトランジス
タ4040と、走査線駆動回路4004に含まれるトランジスタ4011とを例示してい
る。また、
図6(B)では、画素部4002に含まれるトランジスタ4010と、走査線
駆動回路4004に含まれるトランジスタ4011とを例示している。
図6(A)では、
トランジスタ4040、4011上には絶縁膜4020が設けられ、
図6(B)では、ト
ランジスタ4010、4011上に絶縁膜4020及び絶縁膜4021が設けられている
。なお、絶縁膜4023は下地膜として機能する絶縁膜である。
【0161】
走査線駆動回路4004に含まれるトランジスタ4011としては、実施の形態1または
実施の形態2で示した埋め込みチャネルを有するトランジスタを適用することができる。
埋め込みチャネルを有するトランジスタは、オン特性(例えば、オン電流及び電界効果移
動度)が高く、走査線駆動回路4004の高速動作、高速応答を可能とする。本実施の形
態では、実施の形態1で示したトランジスタと同様な構造を有するトランジスタを適用す
る例を示す。
【0162】
画素部4002に設けられたトランジスタ4010、4040は表示素子と電気的に接続
し、表示パネルを構成する。表示素子は表示を行うことができれば特に限定されず、様々
な表示素子を用いることができる。
【0163】
また、画素部4002に含まれるトランジスタ4040としては、特に埋め込みチャネル
を必要としないため、単層の酸化物半導体層をチャネル形成領域とするトランジスタ40
40を設ける。このトランジスタ4040は、工程数を増やすことなく、トランジスタ4
011を作製する工程と同じ工程で作製することができる。このトランジスタ4040の
酸化物半導体層は、トランジスタ4011の第3の酸化物半導体層と同じ工程で形成する
ことができる。トランジスタ4040は、大型の表示装置でない場合、特にオン特性を高
くしなくてもよい。トランジスタ4040は、酸化物半導体層を単層とすることで、トラ
ンジスタ4011よりもオフ電流値を低くすることができ、低消費電力の表示装置を実現
できる。
【0164】
図6(A)に表示素子として液晶素子を用いた液晶表示装置の例を示す。
図6(A)にお
いて、表示素子である液晶素子4013は、第1の電極層4030、第2の電極層403
1、及び液晶層4008を含む。なお、液晶層4008を挟持するように配向膜として機
能する絶縁膜4032、4033が設けられている。第2の電極層4031は第2の基板
4006側に設けられ、第1の電極層4030と第2の電極層4031とは液晶層400
8を介して積層する構成となっている。
【0165】
また4035は絶縁膜を選択的にエッチングすることで得られる柱状のスペーサであり、
液晶層4008の膜厚(セルギャップ)を制御するために設けられている。なお球状のス
ペーサを用いていてもよい。
【0166】
表示素子として、液晶素子を用いる場合、サーモトロピック液晶、低分子液晶、高分子液
晶、高分子分散型液晶、強誘電性液晶、反強誘電性液晶等を用いることができる。これら
の液晶材料(液晶組成物)は、条件により、コレステリック相、スメクチック相、キュー
ビック相、カイラルネマチック相、等方相等を示す。
【0167】
また、液晶層4008に、配向膜を用いないブルー相を発現する液晶組成物を用いてもよ
い。ブルー相は液晶相の一つであり、コレステリック液晶を昇温していくと、コレステリ
ック相から等方相へ転移する直前に発現する相である。ブルー相は、液晶及びカイラル剤
を混合させた液晶組成物を用いて発現させることができる。また、ブルー相が発現する温
度範囲を広げるために、ブルー相を発現する液晶組成物に重合性モノマー及び重合開始剤
などを添加し、高分子安定化させる処理を行って液晶層を形成することもできる。ブルー
相を発現する液晶組成物は、応答速度が短く、光学的等方性であるため配向処理が不要で
あり、視野角依存性が小さい。また配向膜を設けなくてもよいのでラビング処理も不要と
なるため、ラビング処理によって引き起こされる静電破壊を防止することができ、作製工
程中の液晶表示装置の不良や破損を軽減することができる。よって液晶表示装置の生産性
を向上させることが可能となる。酸化物半導体膜を用いるトランジスタは、静電気の影響
によりトランジスタの電気的な特性が著しく変動して設計範囲を逸脱する恐れがある。よ
って酸化物半導体膜を用いるトランジスタを有する液晶表示装置にブルー相を発現する液
晶組成物を用いることはより効果的である。
【0168】
また、液晶材料の固有抵抗は、1×109Ω・cm以上であり、好ましくは1×1011
Ω・cm以上であり、さらに好ましくは1×1012Ω・cm以上である。なお、本明細
書における固有抵抗の値は、20℃で測定した値とする。
【0169】
液晶表示装置に設けられる保持容量の大きさは、画素部に配置されるトランジスタのリー
ク電流等を考慮して、所定の期間の間電荷を保持できるように設定される。保持容量の大
きさは、トランジスタのオフ電流等を考慮して設定すればよい。本明細書に開示する酸化
物半導体膜を有するトランジスタを用いることにより、各画素における液晶容量に対して
1/3以下、好ましくは1/5以下の容量の大きさを有する保持容量を設ければ充分であ
る。
【0170】
本明細書に開示する酸化物半導体膜を用いたトランジスタ4040は、オフ状態における
電流値(オフ電流値)を低く制御することができる。よって、画像信号等の電気信号の保
持時間を長くすることができ、電源オン状態では書き込み間隔も長く設定できる。よって
、リフレッシュ動作の頻度を少なくすることができるため、消費電力を抑制する効果を奏
する。
【0171】
また、本明細書に開示する酸化物半導体膜を用いたトランジスタ4011は、電界効果移
動度を高く制御することができるため、走査線駆動回路4004の高速駆動が可能である
。本実施の形態によると、画素部のスイッチングトランジスタと、駆動回路部に使用する
ドライバートランジスタを同一基板上に形成することができる。すなわち、別途駆動回路
として、シリコンウェハ等により形成された半導体装置を用いる必要がないため、半導体
装置の部品点数を削減することができる。
【0172】
また、画素部においても、トランジスタ4011と同じ酸化物半導体層の積層を有するト
ランジスタを用いてもよく、画素部においても高速駆動が可能なトランジスタを用いるこ
とで、高画質な画像や、大面積の表示を提供することもできる。
【0173】
液晶表示装置には、TN(Twisted Nematic)モード、IPS(In-P
lane-Switching)モード、FFS(Fringe Field Swit
ching)モード、ASM(Axially Symmetric aligned
Micro-cell)モード、OCB(Optical Compensated B
irefringence)モード、FLC(Ferroelectric Liqui
d Crystal)モード、AFLC(AntiFerroelectric Liq
uid Crystal)モードなどを用いることができる。
【0174】
また、ノーマリーブラック型の液晶表示装置、例えば垂直配向(VA)モードを採用した
透過型の液晶表示装置としてもよい。垂直配向モードとしては、いくつか挙げられるが、
例えば、MVA(Multi-Domain Vertical Alignment)
モード、PVA(Patterned Vertical Alignment)モード
、ASV(Advanced Super View)モードなどを用いることができる
。また、VA型の液晶表示装置にも適用することができる。VA型の液晶表示装置とは、
液晶表示パネルの液晶分子の配列を制御する方式の一種である。VA型の液晶表示装置は
、電圧が印加されていないときにパネル面に対して液晶分子が垂直方向を向く方式である
。また、画素(ピクセル)をいくつかの領域(サブピクセル)に分け、それぞれ別の方向
に分子を倒すよう工夫されているマルチドメイン化あるいはマルチドメイン設計といわれ
る方法を用いることができる。
【0175】
また、表示装置において、ブラックマトリクス(遮光層)、偏光部材、位相差部材、反射
防止部材などの光学部材(光学基板)などは適宜設ける。例えば、偏光基板及び位相差基
板による円偏光を用いてもよい。また、光源としてバックライト、サイドライトなどを用
いてもよい。
【0176】
また、画素部における表示方式は、プログレッシブ方式やインターレース方式等を用いる
ことができる。また、カラー表示する際に画素で制御する色要素としては、RGB(Rは
赤、Gは緑、Bは青を表す)の三色に限定されない。例えば、RGBW(Wは白を表す)
、又はRGBに、イエロー、シアン、マゼンタ等を一色以上追加したものがある。なお、
色要素のドット毎にその表示領域の大きさが異なっていてもよい。ただし、開示する発明
はカラー表示の表示装置に限定されるものではなく、モノクロ表示の表示装置に適用する
こともできる。
【0177】
また、表示装置に含まれる表示素子として、エレクトロルミネッセンスを利用する発光素
子を適用することができる。エレクトロルミネッセンスを利用する発光素子は、発光材料
が有機化合物であるか、無機化合物であるかによって区別され、一般的に、前者は有機E
L素子、後者は無機EL素子と呼ばれている。
【0178】
有機EL素子は、発光素子に電圧を印加することにより、一対の電極から電子および正孔
がそれぞれ発光性の有機化合物を含む層に注入され、電流が流れる。そして、それらキャ
リア(電子および正孔)が再結合することにより、発光性の有機化合物が励起状態を形成
し、その励起状態が基底状態に戻る際に発光する。このようなメカニズムから、このよう
な発光素子は、電流励起型の発光素子と呼ばれる。なお、ここでは、発光素子として有機
EL素子を用いて説明する。
【0179】
発光素子は発光を取り出すために少なくとも一対の電極の一方が透光性であればよい。そ
して、基板上にトランジスタ及び発光素子を形成し、基板とは逆側の面から発光を取り出
す上面射出や、基板側の面から発光を取り出す下面射出や、基板側及び基板とは反対側の
面から発光を取り出す両面射出構造の発光素子があり、どの射出構造の発光素子も適用す
ることができる。
【0180】
図6(B)に表示素子として発光素子を用いた発光装置の例を示す。表示素子である発光
素子4513は、画素部4002に設けられたトランジスタ4010と電気的に接続して
いる。なお発光素子4513の構成は、第1の電極層4030、電界発光層4511、第
2の電極層4031の積層構造であるが、示した構成に限定されない。発光素子4513
から取り出す光の方向などに合わせて、発光素子4513の構成は適宜変えることができ
る。
【0181】
隔壁4510は、有機絶縁材料、又は無機絶縁材料を用いて形成する。特に感光性の樹脂
材料を用い、第1の電極層4030上に開口部を形成し、その開口部の側壁が連続した曲
率を持って形成される傾斜面となるように形成することが好ましい。
【0182】
電界発光層4511は、単数の層で構成されていても、複数の層が積層されるように構成
されていてもどちらでもよい。
【0183】
発光素子4513に酸素、水素、水分、二酸化炭素等が侵入しないように、第2の電極層
4031及び隔壁4510上に保護膜を形成してもよい。保護膜としては、窒化シリコン
膜、窒化酸化シリコン膜、DLC膜等を形成することができる。
【0184】
また、発光素子4513に酸素、水素、水分、二酸化炭素等が侵入しないように、発光素
子4513を覆う有機化合物を含む層を蒸着法により形成してもよい。
【0185】
また、第1の基板4001、第2の基板4006、及びシール材4005によって封止さ
れた空間には充填材4514が設けられ密封されている。このように外気に曝されないよ
うに気密性が高く、脱ガスの少ない保護フィルム(貼り合わせフィルム、紫外線硬化樹脂
フィルム等)やカバー材でパッケージング(封入)することが好ましい。
【0186】
充填材4514としては窒素やアルゴンなどの不活性な気体の他に、紫外線硬化樹脂また
は熱硬化樹脂を用いることができ、PVC(ポリビニルクロライド)、アクリル、ポリイ
ミド、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、PVB(ポリビニルブチラル)またはEVA(エ
チレンビニルアセテート)を用いることができる。例えば充填材として窒素を用いればよ
い。
【0187】
また、必要であれば、発光素子の射出面に偏光板、又は円偏光板(楕円偏光板を含む)、
位相差板(λ/4板、λ/2板)、カラーフィルタなどの光学フィルムを適宜設けてもよ
い。また、偏光板又は円偏光板に反射防止膜を設けてもよい。例えば、表面の凹凸により
反射光を拡散し、映り込みを低減できるアンチグレア処理を施すことができる。
【0188】
また、表示装置として、電子インクを駆動させる電子ペーパーを提供することも可能であ
る。電子ペーパーは、電気泳動表示装置(電気泳動ディスプレイ)も呼ばれており、紙と
同じ読みやすさ、他の表示装置に比べ低消費電力、薄くて軽い形状とすることが可能とい
う利点を有している。
【0189】
電気泳動表示装置は、様々な形態が考えられ得るが、プラスの電荷を有する第1の粒子と
、マイナスの電荷を有する第2の粒子とを含むマイクロカプセルが溶媒または溶質に複数
分散されたものであり、マイクロカプセルに電界を印加することによって、マイクロカプ
セル中の粒子を互いに反対方向に移動させて一方側に集合した粒子の色のみを表示するも
のである。なお、第1の粒子または第2の粒子は染料を含み、電界がない場合において移
動しないものである。また、第1の粒子の色と第2の粒子の色は異なるもの(無色を含む
)とする。
【0190】
このように、電気泳動表示装置は、誘電定数の高い物質が高い電界領域に移動する、いわ
ゆる誘電泳動的効果を利用したディスプレイである。
【0191】
上記マイクロカプセルを溶媒中に分散させたものが電子インクと呼ばれるものであり、こ
の電子インクはガラス、プラスチック、布、紙などの表面に印刷することができる。また
、カラーフィルタや色素を有する粒子を用いることによってカラー表示も可能である。
【0192】
なお、マイクロカプセル中の第1の粒子および第2の粒子は、導電体材料、絶縁体材料、
半導体材料、磁性材料、液晶材料、強誘電性材料、エレクトロルミネセント材料、エレク
トロクロミック材料、磁気泳動材料から選ばれた一種の材料、またはこれらの複合材料を
用いればよい。
【0193】
また、電子ペーパーとして、ツイストボール表示方式を用いる表示装置も適用することが
できる。ツイストボール表示方式とは、白と黒に塗り分けられた球形粒子を、表示素子に
用いる電極層である第1の電極層及び第2の電極層の間に配置し、第1の電極層及び第2
の電極層に電位差を生じさせて球形粒子の向きを制御することにより、表示を行う方法で
ある。
【0194】
なお、
図5及び
図6において、第1の基板4001、第2の基板4006としては、ガラ
ス基板の他、可撓性を有する基板も用いることができ、例えば透光性を有するプラスチッ
ク基板などを用いることができる。プラスチックとしては、FRP(Fiberglas
s-Reinforced Plastics)板、PVF(ポリビニルフルオライド)
フィルム、ポリエステルフィルムまたはアクリル樹脂フィルムを用いることができる。ま
た、透光性が必要でなければ、アルミニウムやステンレスなどの金属基板(金属フィルム
)を用いてもよい。例えば、アルミニウムホイルをPVFフィルムやポリエステルフィル
ムで挟んだ構造のシートを用いることもできる。
【0195】
本実施の形態では、絶縁膜4020として酸化アルミニウム膜を用いる。
【0196】
酸化物半導体膜上に絶縁膜4020として設けられた酸化アルミニウム膜は、水素、水分
などの不純物、及び酸素の両方に対して膜を透過させない遮断効果(ブロック効果)が高
い。
【0197】
従って、酸化アルミニウム膜は、作製工程中及び作製後において、変動要因となる水素、
水分などの不純物の酸化物半導体膜への混入、及び酸化物半導体を構成する主成分材料で
ある酸素の酸化物半導体膜からの放出を防止する保護膜として機能する。
【0198】
また、平坦化絶縁膜として機能する絶縁膜4021は、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、
ベンゾシクロブテン系樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等の、耐熱性を有する有機材
料を用いることができる。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(low-k材料)、
シロキサン系樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)等を用いるこ
とができる。なお、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させることで、絶縁膜を
形成してもよい。
【0199】
表示素子に電圧を印加する第1の電極層及び第2の電極層(画素電極層、共通電極層、対
向電極層などともいう)においては、取り出す光の方向、電極層が設けられる場所、及び
電極層のパターン構造によって透光性、反射性を選択すればよい。
【0200】
第1の電極層4030、第2の電極層4031は、酸化タングステンを含むインジウム酸
化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化
物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物
、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物、グラフェンなどの透光性を有する導電性材
料を用いることができる。
【0201】
また、第1の電極層4030、第2の電極層4031はタングステン(W)、モリブデン
(Mo)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(N
b)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、チタ
ン(Ti)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)等の金属、
又はその合金、若しくはその金属窒化物から一つ、又は複数種を用いて形成することがで
きる。
【0202】
また、トランジスタは静電気などにより破壊されやすいため、駆動回路保護用の保護回路
を設けることが好ましい。保護回路は、非線形素子を用いて構成することが好ましい。
【0203】
以上のように実施の形態1または実施の形態2で示したトランジスタを適用することで、
様々な機能を有する半導体装置を提供することができる。
【0204】
(実施の形態4)
実施の形態1または実施の形態2に示したトランジスタを用いて、対象物の情報を読み取
るイメージセンサ機能を有する半導体装置を作製することができる。
【0205】
図7(A)に、イメージセンサ機能を有する半導体装置の一例を示す。
図7(A)はフォ
トセンサの等価回路であり、
図7(B)はフォトセンサの一部を示す断面図である。
【0206】
フォトダイオード602は、一方の電極がフォトダイオードリセット信号線658に、他
方の電極がトランジスタ640のゲートに電気的に接続されている。トランジスタ640
は、ソース又はドレインの一方がフォトセンサ基準信号線672に、ソース又はドレイン
の他方がトランジスタ656のソース又はドレインの一方に電気的に接続されている。ト
ランジスタ656は、ゲートがゲート信号線659に、ソース又はドレインの他方がフォ
トセンサ出力信号線671に電気的に接続されている。
【0207】
なお、本明細書における回路図において、酸化物半導体膜を用いるトランジスタと明確に
判明できるように、酸化物半導体膜を用いるトランジスタの記号には「OS」と記載して
いる。
図7(A)において、トランジスタ640、トランジスタ656は実施の形態1ま
たは実施の形態2に示したトランジスタが適用でき、酸化物半導体積層を用いるトランジ
スタである。本実施の形態では、実施の形態1で示したトランジスタと同様な構造を有す
るトランジスタを適用する例を示す。
【0208】
図7(B)は、フォトセンサにおけるフォトダイオード602及びトランジスタ640に
示す断面図であり、絶縁表面を有する基板601(TFT基板)上に、センサとして機能
するフォトダイオード602及びトランジスタ640が設けられている。フォトダイオー
ド602、トランジスタ640の上には接着層608を用いて基板613が設けられてい
る。
【0209】
トランジスタ640上には絶縁膜631、絶縁膜632、層間絶縁膜633、層間絶縁膜
634が設けられている。フォトダイオード602は、層間絶縁膜633上に設けられ、
層間絶縁膜633上に形成した電極層641と、層間絶縁膜634上に設けられた電極層
642との間に、層間絶縁膜633側から順に第1半導体膜606a、第2半導体膜60
6b、及び第3半導体膜606cを積層した構造を有している。
【0210】
電極層641は、層間絶縁膜634に形成された導電層643と電気的に接続し、電極層
642は電極層641を介して導電層645と電気的に接続している。導電層645は、
トランジスタ640のゲート電極層と電気的に接続しており、フォトダイオード602は
トランジスタ640と電気的に接続している。
【0211】
ここでは、第1半導体膜606aとしてp型の導電型を有する半導体膜と、第2半導体膜
606bとして高抵抗な半導体膜(I型半導体膜)、第3半導体膜606cとしてn型の
導電型を有する半導体膜を積層するpin型のフォトダイオードを例示している。
【0212】
第1半導体膜606aはp型半導体膜であり、p型を付与する不純物元素を含むアモルフ
ァスシリコン膜により形成することができる。第1半導体膜606aの形成には13族の
不純物元素(例えばボロン(B))を含む半導体材料ガスを用いて、プラズマCVD法に
より形成する。半導体材料ガスとしてはシラン(SiH4)を用いればよい。または、S
i2H6、SiH2Cl2、SiHCl3、SiCl4、SiF4等を用いてもよい。ま
た、不純物元素を含まないアモルファスシリコン膜を形成した後に、拡散法やイオン注入
法を用いて該アモルファスシリコン膜に不純物元素を導入してもよい。イオン注入法等に
より不純物元素を導入した後に加熱等を行うことで、不純物元素を拡散させるとよい。こ
の場合にアモルファスシリコン膜を形成する方法としては、LPCVD法、気相成長法、
又はスパッタリング法等を用いればよい。第1半導体膜606aの膜厚は10nm以上5
0nm以下となるよう形成することが好ましい。
【0213】
第2半導体膜606bは、i型半導体膜(真性半導体膜)であり、アモルファスシリコン
膜により形成する。第2半導体膜606bの形成には、半導体材料ガスを用いて、アモル
ファスシリコン膜をプラズマCVD法により形成する。半導体材料ガスとしては、シラン
(SiH4)を用いればよい。または、Si2H6、SiH2Cl2、SiHCl3、S
iCl4、SiF4等を用いてもよい。第2半導体膜606bの形成は、LPCVD法、
気相成長法、スパッタリング法等により行ってもよい。第2半導体膜606bの膜厚は2
00nm以上1000nm以下となるように形成することが好ましい。
【0214】
第3半導体膜606cは、n型半導体膜であり、n型を付与する不純物元素を含むアモル
ファスシリコン膜により形成する。第3半導体膜606cの形成には、15族の不純物元
素(例えばリン(P))を含む半導体材料ガスを用いて、プラズマCVD法により形成す
る。半導体材料ガスとしてはシラン(SiH4)を用いればよい。または、Si2H6、
SiH2Cl2、SiHCl3、SiCl4、SiF4等を用いてもよい。また、不純物
元素を含まないアモルファスシリコン膜を形成した後に、拡散法やイオン注入法を用いて
該アモルファスシリコン膜に不純物元素を導入してもよい。イオン注入法等により不純物
元素を導入した後に加熱等を行うことで、不純物元素を拡散させるとよい。この場合にア
モルファスシリコン膜を形成する方法としては、LPCVD法、気相成長法、又はスパッ
タリング法等を用いればよい。第3半導体膜606cの膜厚は20nm以上200nm以
下となるよう形成することが好ましい。
【0215】
また、第1半導体膜606a、第2半導体膜606b、及び第3半導体膜606cは、ア
モルファス半導体ではなく、多結晶半導体を用いて形成してもよいし、微結晶(セミアモ
ルファス(Semi Amorphous Semiconductor:SAS))半
導体を用いて形成してもよい。
【0216】
また、光電効果で発生した正孔の移動度は電子の移動度に比べて小さいため、pin型の
フォトダイオードはp型の半導体膜側を受光面とする方がよい特性を示す。ここでは、p
in型のフォトダイオードが形成されている基板601の面からフォトダイオード602
が受ける光を電気信号に変換する例を示す。また、受光面とした半導体膜側とは逆の導電
型を有する半導体膜側からの光は外乱光となるため、電極層は遮光性を有する導電膜を用
いるとよい。また、n型の半導体膜側を受光面として用いることもできる。
【0217】
絶縁膜632、層間絶縁膜633、層間絶縁膜634としては、絶縁性材料を用いて、そ
の材料に応じて、スパッタリング法、プラズマCVD法、SOG法、スピンコート、ディ
ップ、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法等)、印刷法(スクリーン印刷、オ
フセット印刷等)、ドクターナイフ、ロールコーター、カーテンコーター、ナイフコータ
ー等を用いて形成することができる。
【0218】
本実施の形態では、絶縁膜631として酸化アルミニウム膜を用いる。絶縁膜631はス
パッタリング法やプラズマCVD法によって形成することができる。
【0219】
酸化物半導体膜上に絶縁膜631として設けられた酸化アルミニウム膜は、水素、水分な
どの不純物、及び酸素の両方に対して膜を透過させない遮断効果(ブロック効果)が高い
。
【0220】
従って、酸化アルミニウム膜は、作製工程中及び作製後において、変動要因となる水素、
水分などの不純物の酸化物半導体膜への混入、及び酸化物半導体を構成する主成分材料で
ある酸素の酸化物半導体膜からの放出を防止する保護膜として機能する。
【0221】
絶縁膜632としては、無機絶縁材料としては、酸化シリコン層、酸化窒化シリコン層、
酸化アルミニウム層、又は酸化窒化アルミニウム層などの酸化物絶縁膜、窒化シリコン層
、窒化酸化シリコン層、窒化アルミニウム層、又は窒化酸化アルミニウム層などの窒化物
絶縁膜の単層、又は積層を用いることができる。
【0222】
層間絶縁膜633、634としては、表面凹凸を低減するため平坦化絶縁膜として機能す
る絶縁膜が好ましい。層間絶縁膜633、634としては、例えばポリイミド樹脂、アク
リル樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等の、耐熱性を有
する有機絶縁材料を用いることができる。また上記有機絶縁材料の他に、低誘電率材料(
low-k材料)、シロキサン系樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガ
ラス)等の単層、又は積層を用いることができる。
【0223】
フォトダイオード602に入射する光を検出することによって、被検出物の情報を読み取
ることができる。なお、被検出物の情報を読み取る際にバックライトなどの光源を用いる
ことができる。
【0224】
以上のように、埋め込みチャネルを有する酸化物半導体積層を用いることによって、トラ
ンジスタの電気特性をより精度よく制御することができ、所望の電気特性をトランジスタ
に付与することが可能となる。よって、該トランジスタを用いることで、高機能、高信頼
性、又は低消費電力など、種々の目的に応じた半導体装置を提供することができる。
【0225】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能
である。
【0226】
(実施の形態5)
本明細書に開示する半導体装置は、さまざまな電子機器(遊技機も含む)に適用すること
ができる。電子機器としては、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機と
もいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジ
タルフォトフレーム、携帯電話機、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、遊技
機(パチンコ機、スロットマシン等)、ゲーム筐体が挙げられる。これらの電子機器の具
体例を
図8に示す。
【0227】
図8(A)は、表示部を有するテーブル9000を示している。テーブル9000は、筐
体9001に表示部9003が組み込まれている。本発明の一態様を用いて作製される半
導体装置は、表示部9003に用いることが可能であり、表示部9003により映像を表
示することが可能である。なお、4本の脚部9002により筐体9001を支持した構成
を示している。また、電力供給のための電源コード9005を筐体9001に有している
。
【0228】
表示部9003は、タッチ入力機能を有しており、テーブル9000の表示部9003に
表示された表示ボタン9004を指などで触れることで、画面操作や、情報を入力するこ
とができ、また他の家電製品との通信を可能とする、または制御を可能とすることで、画
面操作により他の家電製品をコントロールする制御装置としてもよい。例えば、実施の形
態3に示したイメージセンサ機能を有する半導体装置を用いれば、表示部9003にタッ
チ入力機能を持たせることができる。
【0229】
また、筐体9001に設けられたヒンジによって、表示部9003の画面を床に対して垂
直に立てることもでき、テレビジョン装置としても利用できる。狭い部屋においては、大
きな画面のテレビジョン装置は設置すると自由な空間が狭くなってしまうが、テーブルに
表示部が内蔵されていれば、部屋の空間を有効に利用することができる。
【0230】
図8(B)は、テレビジョン装置9100を示している。テレビジョン装置9100は、
筐体9101に表示部9103が組み込まれている。本発明の一態様を用いて作製される
半導体装置は、表示部9103に用いることが可能であり、表示部9103により映像を
表示することが可能である。なお、ここではスタンド9105により筐体9101を支持
した構成を示している。
【0231】
テレビジョン装置9100の操作は、筐体9101が備える操作スイッチや、別体のリモ
コン操作機9110により行うことができる。リモコン操作機9110が備える操作キー
9109により、チャンネルや音量の操作を行うことができ、表示部9103に表示され
る映像を操作することができる。また、リモコン操作機9110に、当該リモコン操作機
9110から出力する情報を表示する表示部9107を設ける構成としてもよい。
【0232】
図8(B)に示すテレビジョン装置9100は、受信機やモデムなどを備えている。テレ
ビジョン装置9100は、受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さら
にモデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向
(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の
情報通信を行うことも可能である。
【0233】
先の実施の形態に示した埋め込みチャネルを有する半導体装置を利用すれば、当該半導体
装置をテレビジョン装置の表示部9103に用いることで、従来に比べて表示品質の高い
テレビジョン装置とすることができる。
【0234】
図8(C)はコンピュータであり、本体9201、筐体9202、表示部9203、キー
ボード9204、外部接続ポート9205、ポインティングデバイス9206等を含む。
コンピュータは、本発明の一態様を用いて作製される半導体装置をその表示部9203に
用いることにより作製される。
【0235】
また、先の実施の形態に示した半導体装置を利用すれば、当該半導体装置をコンピュータ
の表示部9203に用いることで、従来に比べて表示品質の高い表示部とすることが可能
となる。
【0236】
図8(D)は、携帯電話機の一例を示している。携帯電話機9500は、筐体9501に
組み込まれた表示部9502の他、操作ボタン9503、外部接続ポート9504、スピ
ーカ9505、マイク9506などを備えている。携帯電話機9500は、本発明の一態
様を用いて作製される半導体装置を表示部9502に用いることにより作製される。
【0237】
図8(D)に示す携帯電話機9500は、表示部9502を指などで触れることで、情報
を入力する、電話を掛ける、またはメールを作成するなどの操作を行うことができる。
【0238】
表示部9502の画面は、主として3つのモードがある。第1は、画像の表示を主とする
表示モードであり、第2は、文字等の情報の入力を主とする入力モードである。第3は表
示モードと入力モードの2つのモードが混合したものである。
【0239】
例えば、電話を掛ける、またはメールを作成する場合は、表示部9502を文字の入力を
主とする入力モードとし、画面に表示させた文字の入力操作を行えばよい。この場合、表
示部9502の画面のほとんどにキーボードまたは番号ボタンを表示させることが好まし
い。
【0240】
また、携帯電話機9500内部に、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサを
有する検出装置を設けることで、携帯電話機9500の向き(縦向きか横向きか)を判断
して、表示部9502の画面表示を自動的に切り替えるようにすることができる。
【0241】
また、画面モードの切り替えは、表示部9502を触れる、または筐体9501の操作ボ
タン9503の操作により行われる。また、表示部9502に表示される画像の種類によ
って切り替えるようにすることもできる。例えば、表示部に表示する画像信号が動画のデ
ータであれば表示モード、テキストデータであれば入力モードに切り替える。
【0242】
また、入力モードにおいて、表示部9502の光センサで検出される信号を検知し、表示
部9502のタッチ操作による入力が一定期間ない場合には、画面のモードを入力モード
から表示モードに切り替えるように制御してもよい。
【0243】
また、表示部9502は、イメージセンサとして機能させることもできる。例えば、表示
部9502に掌や指を触れ、掌紋、指紋等を撮像することで、本人認証を行うことができ
る。また、表示部に近赤外光を発光するバックライトまたは近赤外光を発光するセンシン
グ用光源を用いれば、指静脈、掌静脈などを撮像することもできる。
【0244】
先の実施の形態に示した半導体装置を利用すれば、表示における色のにじみ、色ずれなど
が生じにくいため、当該半導体装置を携帯電話機の表示部9502に用いることで、従来
に比べて表示品質の高い携帯電話機とすることが可能となる。また、遮光性を有するスペ
ーサによって一対の基板が保持されているため、衝撃や歪みなどの外力に極めて強いため
、
図8(D)に示す携帯電話機として好適に用いることができる。
【0245】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適
宜組み合わせて用いることができる。
【実施例0246】
本実施例では、第1の酸化物半導体層上に、第1の酸化物半導体層のエネルギーギャップ
よりも小さい第2の酸化物半導体層を形成し、さらに第2の酸化物半導体層上に第3の酸
化物半導体層を形成したサンプルを作製し、そのサンプルのイオン化ポテンシャルの測定
を行い、その結果に基づきエネルギーバンド図を計算した。本明細書において、イオン化
ポテンシャルの値は、バンドギャップと電子親和力を加算した値であり、バンドギャップ
の値は、材料の単膜のエリプソで測定して得られる値を用いる。
【0247】
サンプルは、単結晶シリコン基板上に膜厚5nmのIGZO膜、膜厚5nmのIn-Sn
-Zn系酸化物膜、膜厚5nmのIGZO膜を積層成膜した。それぞれの成膜条件は、ス
パッタリング法を用いて基板温度300℃、酸素雰囲気(酸素100%)下で成膜を行っ
た。ターゲットは、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]の酸化物ターゲットを用
い、IGZO膜を成膜した。また、In-Sn-Zn系酸化物膜は、In:Sn:Zn=
2:1:3[原子数比]の酸化物ターゲットを用いる。
【0248】
また、基板を石英基板として、同じ成膜条件で石英基板1000上に膜厚5nmの第1の
IGZO膜1001、膜厚5nmのIn-Sn-Zn系酸化物膜1002、膜厚5nmの
第2のIGZO膜1003を積層成膜して得られたサンプル2の断面を撮影したTEM写
真が
図11(A)である。なお、模式図を
図11(B)に示す。
図11(B)において、
酸化物半導体層の界面を点線で図示しているが、模式的に示したものである。材料や成膜
条件や加熱処理によっては、各酸化物半導体層との界面が不明確になる場合もある。
図1
1(A)のサンプル2は、In-Sn-Zn系酸化物膜とIGZO膜の界面が確認できる
。また、
図11(A)では、第2のIGZO膜1003と、In-Sn-Zn系酸化物膜
1002は、結晶を含んでおり、c軸配向を有した結晶性酸化物半導体膜(CAAC-O
S膜)であることが確認できる。また、
図11(A)において第1のIGZO膜1001
は非晶質構造である。なお、
図11(A)では、3層のうち、2層が結晶構造を有してい
る酸化物半導体膜となっているが特に限定されず、第2のIGZO膜1003のみが結晶
構造を有してもよいし、3層全てが結晶構造を有してもよいし、3層全て非晶質構造であ
ってもよい。
【0249】
サンプル1の表面からスパッタリングしながら紫外線光電子分光分析(UPS:Ultr
aviolet Photoelectron Spectroscopy)によるイオ
ン化ポテンシャルを測定した結果を
図9に示す。
【0250】
図9において、横軸はサンプル表面からのスパッタリング時間を表し、縦軸はイオン化ポ
テンシャルを表している。なお、IGZO膜とIn-Sn-Zn系酸化物膜のスパッタレ
ートは等しいと仮定して試料の境界を表示している。この
図9から、IGZO膜に挟まれ
たIn-Sn-Zn系酸化物膜でイオン化ポテンシャルが低下することがわかる。なお、
イオン化ポテンシャルは真空準位から価電子帯までのエネルギー差を表す。
【0251】
イオン化ポテンシャルの値からエリプソで測定したバンドギャップを引くことで伝導帯の
エネルギーを算出し、この積層膜のバンド構造を作成した。ただし、IGZO膜とIn-
Sn-Zn系酸化物膜のバンドギャップはそれぞれ3.2eV、2.8eVとした。その
結果が
図10になる。
図10には、
図1(D)に示したエネルギーバンド図のように埋め
込みチャネルが形成されていることがわかる。
【0252】
本実施例では、第1の酸化物半導体層及び第3の酸化物半導体層としてIGZO膜を用い
、第1の酸化物半導体層及び第3の酸化物半導体層よりも大きいイオン化ポテンシャルを
有し、且つ、小さいエネルギーギャップを有する第2の酸化物半導体層としてIn-Sn
-Zn系酸化物膜を用いた積層は、
図10または
図1(D)に示すエネルギーバンド図で
表すことができることを確認した。第1の酸化物半導体層、第2の酸化物半導体層、及び
第3の酸化物半導体層の材料の組み合わせは、特に限定されず、
図10または
図1(D)
に示すエネルギーバンド図となるように、実施者が用いる材料のエネルギーギャップを考
慮して適宜材料を選択し、組み合わせればよく、例えば、第1の酸化物半導体層及び第3
の酸化物半導体層としてIGZO膜を用い、第2の酸化物半導体層としてIn-Sn-Z
n系酸化物膜を用いた積層を用いてもよい。