(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189889
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】疼痛関連障害を処置するための物質及び方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/09 20060101AFI20221215BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20221215BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20221215BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20221215BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20221215BHJP
A61K 35/545 20150101ALI20221215BHJP
A61K 35/28 20150101ALI20221215BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20221215BHJP
【FI】
C12N15/09 110
C12N15/11 Z ZNA
A61P25/04
A61P29/00
A61K48/00
A61K35/545
A61K35/28
A61K35/76
【審査請求】有
【請求項の数】29
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022167518
(22)【出願日】2022-10-19
(62)【分割の表示】P 2019500283の分割
【原出願日】2017-07-06
(31)【優先権主張番号】62/358,769
(32)【優先日】2016-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/461,876
(32)【優先日】2017-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】598032106
【氏名又は名称】バーテックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】VERTEX PHARMACEUTICALS INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100134784
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和美
(72)【発明者】
【氏名】アンテ スベン ランドバーグ
(72)【発明者】
【氏名】サマース クルカーニー
(72)【発明者】
【氏名】ローレンス クレイン
(72)【発明者】
【氏名】ハリ クマー パッドマナブハン
(57)【要約】
【課題】SCN10A関連適応症に関する安全で有効な処置を開発すること。
【解決手段】ex vivoまたはin vivoに関わらずSCN10Aと関連する1つまたは複数の状態を有する患者を処置するための物質及び方法を提供する。加えて、本出願は、ゲノム編集によって細胞内でSCN10A遺伝子の発現を編集及び/またはモジュレートするための物質及び方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲノム編集によって細胞内で電位依存性ナトリウムチャネルX型アルファサブユニット(SCN10A)遺伝子を編集するための方法であって、前記細胞に1つまたは複数のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼを導入して、前記SCN10A遺伝子またはSCN10A制御エレメント内またはその近傍で1つまたは複数の一本鎖切断(SSB)または二本鎖切断(DSB)を行い、前記SCN10A遺伝子内またはその近傍に少なくとも1つのヌクレオチドの1つまたは複数の恒久的挿入、欠失または変異をもたらし、それによって、SCN10A遺伝子産物の発現または機能を低減または除去することを含む前記方法。
【請求項2】
SCN10A関連状態または障害を有する患者を処置するためのex vivo方法であって、
(a)患者特異的誘導多能性幹細胞(iPSC)を電位依存性ナトリウムチャネルX型アルファサブユニット(SCN10A)遺伝子または前記SCN10A遺伝子の制御エレメントをコードする他のDNA配列内またはその近傍で編集すること;
(b)前記編集されたiPSCを末梢神経系のニューロンに分化させること;及び
(c)前記末梢神経系のニューロンを前記患者に投与すること
を含む前記方法。
【請求項3】
前記編集ステップが、前記iPSCに1つまたは複数のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼを導入して、前記SCN10A遺伝子またはSCN10A制御エレメント内またはその近傍で1つまたは複数の一本鎖切断(SSB)または二本鎖切断(DSB)を行い、前記SCN10A遺伝子内またはその近傍に少なくとも1つのヌクレオチドの1つまたは複数の恒久的挿入、欠失または変異をもたらし、それによって、SCN10A遺伝子産物の発現または機能を低減または除去することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
SCN10A関連状態または障害を有する患者を処置するためのex vivo方法であって、
(a)間葉系幹細胞を電位依存性ナトリウムチャネルX型アルファサブユニット(SCN10A)遺伝子または前記SCN10A遺伝子の制御エレメントをコードする他のDNA配列内またはその近傍で編集すること;
(b)前記編集された間葉系幹細胞を末梢神経系のニューロンに分化させること;及び
(c)前記末梢神経系のニューロンを前記患者に投与すること
を含む前記方法。
【請求項5】
前記編集ステップが、前記間葉系幹細胞に1つまたは複数のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼを導入して、前記SCN10A遺伝子またはSCN10A制御エレメント内またはその近傍で1つまたは複数の一本鎖切断(SSB)または二本鎖切断(DSB)を行い、前記SCN10A遺伝子内またはその近傍に少なくとも1つのヌクレオチドの1つまたは複数の恒久的挿入、欠失または変異をもたらし、それによって、SCN10A遺伝子産物の発現または機能を低減または除去することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
SCN10A関連障害を有する患者を処置するためのin vivo方法であって、前記患者の細胞内で前記電位依存性ナトリウムチャネルX型アルファサブユニット(SCN10A)遺伝子を編集することを含む前記方法。
【請求項7】
前記編集ステップが、前記細胞に1つまたは複数のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼを導入して、前記SCN10A遺伝子またはSCN10A制御エレメント内またはその近傍で1つまたは複数の一本鎖切断(SSB)または二本鎖切断(DSB)を行い、前記SCN10A遺伝子内またはその近傍に少なくとも1つのヌクレオチドの1つまたは複数の恒久的挿入、欠失または変異をもたらし、それによって、SCN10A遺伝子産物の発現または機能を低減または除去することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記細胞が末梢神経系のニューロンである、請求項6~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記1種または複数のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼを、直接的な神経節内もしくは髄腔内注射、または髄腔内送達を介して前記末梢神経系のニューロンに送達する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
細胞内でSCN10A遺伝子の連続ゲノム配列を変化させる方法であって、前記細胞を、1種または複数のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼと接触させて、1種または複数の一本鎖切断(SSB)または二本鎖切断(DSB)を行うことを含む前記方法。
【請求項11】
前記連続ゲノム配列の変化が前記SCN10A遺伝子の1つまたは複数のエキソンで生じる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記1種または複数のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼが、配列番号1~620の配列のいずれか、及び配列番号1~620において開示されている配列のいずれかに対して少なくとも90%相同性を有するバリアントから選択される、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記1種または複数のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼが1つまたは複数のタンパク質またはポリペプチドである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記1つまたは複数のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼが、前記1つまたは複数のDNAエンドヌクレアーゼをコードする1種または複数のポリヌクレオチドである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記1つまたは複数のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼが、前記1つまたは複数のDNAエンドヌクレアーゼをコードする1つまたは複数のリボ核酸(RNA)である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記1つまたは複数のリボ核酸(RNA)が、1つまたは複数の化学修飾RNAである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記1つまたは複数のリボ核酸(RNA)が、前記コード領域で化学修飾されている、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記1つもしくは複数のポリヌクレオチドまたは1つもしくは複数のリボ核酸(RNA)がコドン最適化されている、請求項14~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記細胞に、1つもしくは複数のgRNAまたは1つもしくは複数のsgRNAを導入することをさらに含む、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記1つもしくは複数のgRNAまたは1つもしくは複数のsgRNAが、前記SCN10A遺伝子内またはその近傍のDNA配列に対して相補的であるスペーサー配列を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記1つもしくは複数のgRNAまたは1つもしくは複数のsgRNAが化学修飾されている、請求項19~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記1つもしくは複数のgRNAまたは1つもしくは複数のsgRNAが、前記1つまたは複数のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼと事前複合体化されている、請求項19~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記事前複合体化が、前記1つもしくは複数のgRNAまたは1種もしくは複数のsgRNAと前記1つまたは複数のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼとの共有結合を伴う、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記1つまたは複数のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼがリポソームまたは脂質ナノ粒子に製剤化されている、請求項12~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記1つまたは複数のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼが、前記1つもしくは複数のgRNAまたは1つもしくは複数のsgRNAも含むリポソームまたは脂質ナノ粒子に製剤化されている、請求項19~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記1つまたは複数のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼがAAVベクター粒子内でコードされる、請求項10、または19~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記1つもしくは複数のgRNAまたは1つもしくは複数のsgRNAがAAVベクター粒子内でコードされる、請求項19~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記1つまたは複数のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼが、前記1つもしくは複数のgRNAまたは1つもしくは複数のsgRNAもコードするAAVベクター粒子内でコードされる、請求項19~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記AAVベクター粒子が、配列番号4734~5302及び表2に開示されているもののうちのいずれかからなる群から選択される、請求項26~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
配列番号5305~76012のいずれかに対応するRNA配列である少なくとも1つのスペーサー配列を含む、一分子ガイドRNA。
【請求項31】
前記一分子ガイドRNAがスペーサーエクステンション領域をさらに含む、請求項30に記載の一分子ガイドRNA。
【請求項32】
前記一分子ガイドRNAがtracrRNAエクステンション領域をさらに含む、請求項30に記載の一分子ガイドRNA。
【請求項33】
前記一分子ガイドRNAが化学修飾されている、請求項30~32に記載の一分子ガイドRNA。
【請求項34】
DNAエンドヌクレアーゼと事前複合体化している、請求項30~33のいずれか1項に記載の一分子ガイドRNA。
【請求項35】
前記DNAエンドヌクレアーゼがCas9またはCpf1エンドヌクレアーゼである、請求項34に記載の一分子ガイドRNA。
【請求項36】
Cas9またはCpf1エンドヌクレアーゼが、S.pyogenes Cas9、S.aureus Cas9、N.meningitides Cas9、S.thermophilus CRISPR1 Cas9、S.thermophilus CRISPR 3 Cas9、T.denticola Cas9、L.bacterium ND2006 Cpf1及びAcidaminococcus sp.BV3L6 Cpf1、ならびに前記エンドヌクレアーゼに対して少なくとも90%相同性を有するバリアントからなる群から選択される、請求項35に記載の一分子ガイドRNA。
【請求項37】
前記Cas9またはCpf1エンドヌクレアーゼが1つまたは複数の核移行シグナル(NLS)を含む、請求項36に記載の一分子ガイドRNA。
【請求項38】
少なくとも1つのNLSが、前記Cas9またはCpf1エンドヌクレアーゼのアミノ末端に、またはその50アミノ酸以内にあり、及び/または少なくとも1つのNLSが、前記Cas9またはCpf1のカルボキシ末端に、またはその50アミノ酸以内にある、請求項37に記載の一分子ガイドRNA。
【請求項39】
請求項30~33のいずれか1項に記載の一分子ガイドRNAをコードするDNA。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遺伝子編集の分野に、具体的には、電位依存性ナトリウムチャネルX型アルファサブユニット(SCN10A)遺伝子の変化に関する。
【0002】
関連出願
本出願は、2016年7月6日出願の米国特許仮出願第62/358,769号、及び2017年2月22日出願の米国特許仮出願第62/461,876号の利益を請求するものであり、これらは両方とも、参照によってその全体が本明細書に援用される。
【0003】
配列表の参照による援用
本出願は、コンピューター読み取り可能な形式の配列表[ファイル名:170153PCT sequence listing(SCN10A)_(Part 1):18,375,910バイト-ASCIIテキストファイル;2017年6月28日作成、及び170153PCT sequence listing(SCN10A)_(Part 2):15,048,608バイト-ASCIIテキストファイル;2017年6月28日作成]を含み、これらは、その全体が参照によって本明細書に援用され、かつ本開示の一部を形成する。
【背景技術】
【0004】
ゲノム操作は、生体の遺伝情報(ゲノム)を標的特異的修飾するためのストラテジー及び技法を指す。ゲノム操作は、特にヒトの健康分野における広範な適用可能性により、研究が非常に活発な分野である。例えば、ゲノム操作を、有害な変異を保有する遺伝子を変化させる(例えば、修正する、またはノックアウトする)ために、または遺伝子の機能を探求するために使用することができる。生細胞に導入遺伝子を挿入するために開発された初期の技術は、ゲノムへの新たな配列のランダムな挿入性によって制限されることが多かった。ゲノムへのランダム挿入は、隣接遺伝子の正常な制御の破壊をもたらし、深刻で望ましくない作用につながることがある。さらに、2つの異なる細胞で同じ場所に配列が挿入される保証がないので、ランダム挿入技術は、再現性をほとんど示さない。最近のゲノム操作ストラテジー、例えば、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、ホーミングエンドヌクレアーゼ(HE)及びMegaTALでは、DNAの特異的な領域を修飾することができ、それによって、初期技術と比較すると、修正または挿入の精度が上昇する。これらの新しいプラットフォームは、かなり高い程度の再現性を示すが、それらにはまだ限界がある。
【0005】
遺伝性障害に対処しようとしている全世界の研究者及び医療従事者の努力にも関わらず、かつゲノム操作アプローチの将来性にも関わらず、SCN10A関連適応症に関する安全で有効な処置を開発する重大な必要性がいまだ存在する。
【0006】
ゲノムの恒久的変化をもたらし、わずか1回の処置でSCN10A関連障害または状態に対処することができるゲノム操作ツールを使用することによって、結果として生じる治療法は、ある種のSCN10A関連適応症及び/または疾患を完全に治癒させ得る。
【発明の概要】
【0007】
ゲノム編集によって電位依存性ナトリウムチャネルX型アルファサブユニット(SCN10A)遺伝子またはSCN10A遺伝子の制御エレメントをコードする他のDNA配列内またはその近傍に少なくとも1つのヌクレオチドの1つまたは複数の挿入、欠失または変異を導入し、電位依存性ナトリウムチャネルX型アルファサブユニット(SCN10A)遺伝子産物を減少させる、または除去することによって、ゲノムの恒久的変化をもたらすための細胞ex vivo及びin vivo方法を本明細書において提供し、この方法を、疼痛を処置するために使用することができる。そのような方法を行うための成分及び組成物、ならびにベクターも提供する。
【0008】
細胞に1つまたは複数のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼを導入して、SCN10A遺伝子またはSCN10A制御エレメント内またはその近傍で1つまたは複数の一本鎖切断(SSB)または二本鎖切断(DSB)を行い、SCN10A遺伝子内またはその近傍に少なくとも1つのヌクレオチドの1つまたは複数の恒久的挿入、欠失または変異をもたらし、それによって、SCN10A遺伝子産物の発現または機能を低減または除去することを含む、ゲノム編集により細胞内で電位依存性ナトリウムチャネルX型アルファサブユニット(SCN10A)遺伝子を編集するための方法を本明細書において提供する。
【0009】
患者特異的誘導多能性幹細胞(iPSC)を電位依存性ナトリウムチャネルX型アルファサブユニット(SCN10A)遺伝子またはSCN10A遺伝子の制御エレメントをコードする他のDNA配列内またはその近傍で編集すること;編集されたiPSCを末梢神経系のニューロンに分化させること;及び末梢神経系のニューロンを患者に投与することを含む、SCN10A関連状態または障害を有する患者を処置するためのex vivo方法も本明細書において提供する。
【0010】
一部の態様では、編集ステップは、iPSCに1つまたは複数のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼを導入して、SCN10A遺伝子またはSCN10A制御エレメント内またはその近傍で1つまたは複数の一本鎖切断(SSB)または二本鎖切断(DSB)を行い、SCN10A遺伝子内またはその近傍に少なくとも1つのヌクレオチドの1つまたは複数の恒久的挿入、欠失または変異をもたらし、それによって、SCN10A遺伝子産物の発現または機能を低減または除去することを含む。
【0011】
間葉系幹細胞を電位依存性ナトリウムチャネルX型アルファサブユニット(SCN10A)遺伝子またはSCN10A遺伝子の制御エレメントをコードする他のDNA配列内またはその近傍で編集すること;編集された間葉系幹細胞を末梢神経系のニューロンに分化させること;及び末梢神経系のニューロンを患者に投与することを含む、SCN10A関連状態または障害を有する患者を処置するためのex vivo方法も本明細書において提供する。
【0012】
一部の態様では、編集ステップは、間葉系幹細胞に1つまたは複数のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼを導入して、SCN10A遺伝子またはSCN10A制御エレメント内またはその近傍で1つまたは複数の一本鎖切断(SSB)または二本鎖切断(DSB)を行い、SCN10A遺伝子内またはその近傍に少なくとも1つのヌクレオチドの1つまたは複数の恒久的挿入、欠失または変異をもたらし、それによって、SCN10A遺伝子産物の発現または機能を低減または除去することを含む。
【0013】
患者の細胞内で電位依存性ナトリウムチャネルX型アルファサブユニット(SCN10A)遺伝子を編集することを含む、SCN10A関連障害を有する患者を処置するためのin vivo方法も本明細書において提供する。
【0014】
一部の態様では、編集ステップは、細胞に1つまたは複数のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼを導入して、SCN10A遺伝子またはSCN10A制御エレメント内またはその近傍で1つまたは複数の一本鎖切断(SSB)または二本鎖切断(DSB)を行い、SCN10A遺伝子内またはその近傍に少なくとも1つのヌクレオチドの1つまたは複数の恒久的挿入、欠失または変異をもたらし、それによって、SCN10A遺伝子産物の発現または機能を低減または除去することを含む。
【0015】
一部の態様では、細胞は、末梢神経系のニューロンである。一部の態様では、1種または複数のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼを、直接的な神経節内もしくは髄腔内注射、または髄腔内送達を介して末梢神経系のニューロンに送達する。
【0016】
細胞を1種または複数のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼと接触させて、1つまたは複数の一本鎖切断(SSB)または二本鎖切断(DSB)を行うことを含む、細胞内でSCN10A遺伝子の連続ゲノム配列を変化させる方法も本明細書において提供する。一部の態様では、連続ゲノム配列の変化は、SCN10A遺伝子の1つまたは複数のエキソンで生じる。
【0017】
一部の態様では、1種または複数のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼは、配列番号1~620の配列のいずれか、及び配列番号1~620で開示されているもののうちのいずれかに対して少なくとも90%相同性を有するバリアントから選択される。
【0018】
一部の態様では、1種または複数のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼは、1種または複数のタンパク質またはポリペプチドである。一部の態様では、1種または複数のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼは、1種または複数のDNAエンドヌクレアーゼをコードする1種または複数のポリヌクレオチドである。一部の態様では、1種または複数のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼは、1種または複数のDNAエンドヌクレアーゼをコードする1種または複数のリボ核酸(RNA)である。一部の態様では、1種または複数のリボ核酸(RNA)は、1種または複数の化学修飾RNAである。一部の態様では、1種または複数のリボ核酸(RNA)は、コード領域で化学修飾されている。一部の態様では、1種もしくは複数のポリヌクレオチドまたは1種もしくは複数のリボ核酸(RNA)は、コドン最適化されている。
【0019】
一部の態様では、方法はさらに、細胞に1種もしくは複数のgRNAまたは1種もしくは複数のsgRNAを導入することを含む。一部の態様では、1種もしくは複数のgRNAまたは1種もしくは複数のsgRNAは、SCN10A遺伝子内またはその近傍のDNA配列に対して相補的であるスペーサー配列を含む。一部の態様では、1種もしくは複数のgRNAまたは1種もしくは複数のsgRNAは、化学修飾されている。一部の態様では、1種もしくは複数のgRNAまたは1種もしくは複数のsgRNAは、1種または複数のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼと事前複合体化されている。一部の態様では、事前複合体化は、1種または複数のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼへの1種もしくは複数のgRNAまたは1種もしくは複数のsgRNAの共有結合を伴う。
【0020】
一部の態様では、1種または複数のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼをリポソームまたは脂質ナノ粒子に製剤化する。一部の態様では、1種または複数のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼを、1種もしくは複数のgRNAまたは1種もしくは複数のsgRNAも含むリポソームまたは脂質ナノ粒子に製剤化する。
【0021】
一部の態様では、1種または複数のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼは、AAVベクター粒子内でコードされる。一部の態様では、1種もしくは複数のgRNAまたは1種もしくは複数のsgRNAは、AAVベクター粒子内でコードされる。一部の態様では、1種または複数のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼは、1種もしくは複数のgRNAまたは1種もしくは複数のsgRNAもコードするAAVベクター粒子内でコードされる。一部の態様では、AAVベクター粒子は、配列番号4734~5302及び表2に開示されているもののいずれかからなる群から選択される。
【0022】
配列番号5305~76012のいずれかに対応するRNA配列である少なくとも1つのスペーサー配列を含む一分子ガイドRNAも本明細書において提供する。一部の態様では、一分子ガイドRNAはさらに、スペーサーエクステンション領域を含む。一部の態様では、一分子ガイドRNAはさらに、tracrRNAエクステンション領域を含む。一部の態様では、一分子ガイドRNAは、化学修飾されている。
【0023】
一部の態様では、一分子ガイドRNAは、部位特異的ポリペプチドと事前複合体化されている。一部の態様では、部位特異的ポリペプチドは、DNAエンドヌクレアーゼである。一部の態様では、DNAエンドヌクレアーゼは、Cas9またはCPf1エンドヌクレアーゼである。一部の態様では、Cas9またはCpf1エンドヌクレアーゼは、S.pyogenes Cas9、S.aureus Cas9、N.meningitides Cas9、S.thermophilus CRISPR1 Cas9、S.thermophilus CRISPR 3 Cas9、T.denticola Cas9、L.bacterium ND2006 Cpf1及びAcidaminococcus sp.BV3L6 Cpf1、ならびにこれらのエンドヌクレアーゼに対して少なくとも90%相同性を有するバリアントからなる群から選択される。一部の態様では、Cas9またはCpf1エンドヌクレアーゼは、1つまたは複数の核移行シグナル(NLS)を含む。一部の態様では、少なくとも1つのNLSは、Cas9またはCpf1エンドヌクレアーゼのアミノ末端もしくはその50アミノ酸以内にあり、及び/または少なくとも1つのNLSは、Cas9またはCpf1エンドヌクレアーゼのカルボキシ末端もしくはその50アミノ酸以内にある。
【0024】
本明細書に記載の一分子ガイドポリヌクレオチドをコードするRNAも本明細書において提供する。
【0025】
本明細書に記載のCRISPR/CasシステムをコードするRNAも本明細書において提供する。
【0026】
本明細書に記載の一分子ガイドRNAをコードするDNAも本明細書において提供する。
【0027】
本明細書に記載のCRISPR/CasシステムをコードするDNAも本明細書において提供する。
【0028】
一分子ガイドRNAまたはCRISPR/CasシステムをコードするDNAを含むベクターも本明細書において提供する。一部の態様では、ベクターはプラスミドである。一部の態様では、ベクターは、配列番号4734~5302または表2に列挙されているものから選択されるAAVベクター粒子である。
【0029】
添付の図面を参照することによって、本明細書において開示する、及び記載する物質及び方法の様々な態様をより良好に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】A~Bは、II型CRISPR/Casシステムを示している。Aは、gRNAを含むII型CRISPR/Casシステムの図である。Bは、sgRNAを含むII型CRISPR/Casシステムの別の図である。
【
図2A】in-vitro転写された(IVT)gRNAスクリーニングを介して選択されたS.pyogenes gRNAの90.4~98.6%の範囲の切断効率を示している。
【
図2B】in-vitro転写された(IVT)gRNAスクリーニングを介して選択されたS.pyogenes gRNAの84.6~90.3%の範囲の切断効率を示している。
【
図2C】in-vitro転写された(IVT)gRNAスクリーニングを介して選択されたS.pyogenes gRNAの78.7~84.3%の範囲の切断効率を示している。
【
図2D】in-vitro転写された(IVT)gRNAスクリーニングを介して選択されたS.pyogenes gRNAの71.4~77.6%の範囲の切断効率を示している。
【
図2E】in-vitro転写された(IVT)gRNAスクリーニングを介して選択されたS.pyogenes gRNAの62~71.4%の範囲の切断効率を示している。
【
図2F】in-vitro転写された(IVT)gRNAスクリーニングを介して選択されたS.pyogenes gRNAの44~59.9%の範囲の切断効率を示している。
【
図2G】in-vitro転写された(IVT)gRNAスクリーニングを介して選択されたS.pyogenes gRNAの15.4~43.7%の範囲の切断効率を示している。
【
図2H】in-vitro転写された(IVT)gRNAスクリーニングを介して選択されたS.pyogenes gRNAの1.6~14.7%の範囲の切断効率を示している。
【
図3A】SCN10A遺伝子をターゲティングする、HEK293T細胞内でのS.pyogenes gRNAの81.1~98.6%の範囲の切断効率を示している。
【
図3B】SCN10A遺伝子をターゲティングする、HEK293T細胞内でのS.pyogenes gRNAの62.1~81.1%の範囲の切断効率を示している。
【
図3C】SCN10A遺伝子をターゲティングする、HEK293T細胞内でのS.pyogenes gRNAの1.6~62%の範囲の切断効率を示している。
【発明を実施するための形態】
【0031】
配列表の簡単な説明
配列番号1~620は、Casエンドヌクレアーゼオルソログ配列である。
【0032】
配列番号621~631は、配列を含まない。
【0033】
配列番号632~4715は、ミクロRNA配列である。
【0034】
配列番号4716~4733は、配列を含まない。
【0035】
配列番号4734~5302は、AAV血清型配列である。
【0036】
配列番号5303は、SCN10Aヌクレオチド配列である。
【0037】
配列番号5304は、SCN10A遺伝子の上流及び/または下流にある1~5キロ塩基対を含む遺伝子配列である。
【0038】
配列番号5305~5702は、T.denticola Cas9エンドヌクレアーゼで、SCN10A遺伝子またはSCN10A遺伝子の制御エレメントをコードする他のDNA配列内またはその近傍でターゲティングするための20bpスペーサー配列である。
【0039】
配列番号5703~6771は、S.thermophilus Cas9エンドヌクレアーゼで、SCN10A遺伝子またはSCN10A遺伝子の制御エレメントをコードする他のDNA配列内またはその近傍でターゲティングするための20bpスペーサー配列である。
【0040】
配列番号6772~9983は、S.aureus Cas9エンドヌクレアーゼで、SCN10A遺伝子またはSCN10A遺伝子の制御エレメントをコードする他のDNA配列内またはその近傍でターゲティングするための20bpスペーサー配列である。
【0041】
配列番号9984~12753は、N.meningitides Cas9エンドヌクレアーゼで、SCN10A遺伝子またはSCN10A遺伝子の制御エレメントをコードする他のDNA配列内またはその近傍でターゲティングするための20bpスペーサー配列である。
【0042】
配列番号12754~40530は、S.pyogenes Cas9エンドヌクレアーゼで、SCN10A遺伝子またはSCN10A遺伝子の制御エレメントをコードする他のDNA配列内またはその近傍でターゲティングするための20bpスペーサー配列である。
【0043】
配列番号40531~76012は、Acidaminococcus、a Lachnospiraceae、及びFranciscella Novicida Cpf1エンドヌクレアーゼで、SCN10A遺伝子またはSCN10A遺伝子の制御エレメントをコードする他のDNA配列内またはその近傍でターゲティングするための20bpスペーサー配列である。
【0044】
配列番号76013~76042は、配列を含まない。
【0045】
配列番号76043は、S.pyogenes Cas9エンドヌクレアーゼのためのサンプルのガイドRNA(gRNA)である。
【0046】
配列番号76044~76046は、サンプルのsgRNA配列を示している。
【0047】
詳細な説明
I.序論
ゲノム編集
本開示は、生体の遺伝情報(ゲノム)を標的特異的変化させるためのストラテジー及び技法を提供する。本明細書で使用する場合、「変化」または「遺伝情報の変化」という用語は、細胞のゲノムの任意の変化を指す。遺伝性障害を処置する文脈では、変化には、これに限定されないが、挿入、欠失及び修正が含まれ得る。本明細書で使用する場合、「挿入」という用語は、DNA配列での1個または複数のヌクレオチドの付加を指す。挿入は、いくつかのヌクレオチドの小さな挿入から、大きなセグメント、例えばcDNAまたは遺伝子の挿入までの範囲であり得る。「欠失」という用語は、DNA配列における1つもしくは複数のヌクレオチドの喪失もしくは除去または遺伝子の機能の喪失もしくは除去を指す。場合によっては、欠失には、例えば、いくつかのヌクレオチド、エキソン、イントロン、遺伝子セグメント、または遺伝子の全配列の喪失が含まれ得る。場合によっては、遺伝子の欠失は、遺伝子の機能もしくは発現またはその遺伝子産物の除去または低減を指す。これは、遺伝子内またはその近傍の配列の欠失からだけでなく、遺伝子の発現を破壊する他の事象(例えば挿入、ナンセンス変異)からも生じ得る。「修正」という用語は、本明細書で使用する場合、挿入、欠失または置換によるかに関わらず、細胞内のゲノムの1つまたは複数のヌクレオチドの変化を指す。そのような修正は、構造または機能においてに関わらず、修正されたゲノム部位に、より好ましい遺伝子型または表現型結果をもたらし得る。「修正」の非限定的例の1つは、構造または機能を遺伝子またはその遺伝子産物(複数可)に回復する、野生型配列に対する変異または欠損配列の修正を含む。変異の性質に応じて、修正は、本明細書で開示する様々なストラテジーによって達成され得る。非限定的一例では、ミスセンス変異は、変異を含む領域をその野生型カウンターパートに置き換えることによって修正し得る。別の例として、遺伝子における重複変異(例えば、リピート伸長)は、余分な配列を除去することによって修正し得る。
【0048】
一部の態様では、変化には、遺伝子ノックイン、ノックアウトまたはノックダウンも含まれ得る。本明細書で使用する場合、「ノックイン」という用語は、DNA配列、またはその断片をゲノムに付加することを指す。ノックインされたそのようなDNA配列は、遺伝子全体または複数の遺伝子を含んでよく、遺伝子または上述の任意の部分もしくは断片と関連する制御配列を含んでよい。例えば、野生型タンパク質をコードするcDNAを、変異遺伝子を保持する細胞のゲノムへ挿入してもよい。ノックインストラテジーは、全体で、または部分で、欠損遺伝子を置き換える必要はない。場合によっては、ノックインストラテジーはさらに、既存の配列を用意した配列で置き換えること、例えば、変異対立遺伝子を野生型コピーで置き換えることを伴ってよい。他方で、「ノックアウト」という用語は、遺伝子または遺伝子の発現の除去を指す。例えば、リーディングフレームの破壊をもたらすヌクレオチド配列を欠失させる、またはそれを付加することによって、遺伝子をノックアウトすることができる。別の例として、遺伝子の一部を関連配列で置き換えることによって、遺伝子をノックアウトしてもよい。最後に、「ノックダウン」という用語は、本明細書で使用する場合、遺伝子の発現またはその遺伝子産物(複数可)の低減を指す。遺伝子ノックダウンの結果として、タンパク質の活性または機能は減弱し得るか、またはタンパク質レベルは低下する、または除去され得る。
【0049】
ゲノム編集は一般に、ゲノムのヌクレオチド配列を好ましくは正確な、または事前決定された手法で修飾するプロセスを指す。本明細書に記載のゲノム編集の方法の例には、ゲノム内の正確な標的位置でデオキシリボ核酸(DNA)を切断し、それによって、ゲノム内の特定の位置で一本鎖または二本鎖DNA切断を作製するために、部位特異的ヌクレアーゼを使用する方法が含まれる。そのような切断は、Cox et al.,Nature Medicine 21(2),121-31(2015)において概説されているとおり、天然内因性細胞プロセス、例えば、相同性配向型修復(HDR)及び非相同性末端結合(NHEJ)によって修復されてよいか、または通常、それらによって修復される。これら2つの主なDNA修復プロセスは、別の経路のファミリーから構成される。NHEJは、二本鎖切断から生じているDNA末端を直接結合させ、時に、遺伝子発現を破壊または増強し得るヌクレオチド配列の喪失また付加を伴う。HDRは、切断点に規定のDNA配列を挿入するためのテンプレートとして、相同配列、またはドナー配列を利用する。相同配列は、内在性ゲノム、例えば、姉妹染色分体にあり得る。別法では、ドナーは、ヌクレアーゼ切断遺伝子座と高い相同性の領域を有するが、切断標的遺伝子座に組み込まれ得る追加の配列または欠失を含む配列変化も含み得る外在性核酸、例えば、プラスミド、一本鎖オリゴヌクレオチド、二本鎖オリゴヌクレオチド、二重鎖オリゴヌクレオチドまたはウイルスであり得る。第3の修復機構は、「代替NHEJ」とも称されるマイクロホモロジー媒介末端結合(MMEJ)であり得、この場合、遺伝子結果は、小さな欠失及び挿入が切断部位で生じ得るNHEJと同様である。MMEJは、より好ましいDNA末端結合修復結果を促進するために、DNA切断部位に隣接するいくつかの塩基対の相同配列を利用することができ、最近の報告が、このプロセスの分子機構をさらに明瞭にしている;例えば、Cho and Greenberg,Nature 518,174-76(2015);Kent et al.,Nature Structural and Molecular Biology,Adv.Online doi:10.1038/nsmb.2961(2015);Mateos-Gomez et al.,Nature 518,254-57(2015);Ceccaldi et al.,Nature 528,258-62(2015)を参照されたい。一部の例では、DNA切断の部位で起こり得るマイクロホモロジーの分析に基づき、有望な修復結果を予測することが可能であり得る。
【0050】
これらのゲノム編集機構のそれぞれを、所望のゲノム変化を作製するために使用することができる。ゲノム編集プロセスのステップは、標的遺伝子座で、意図されている変異の部位近傍として1つまたは2つのDNA切断(後者は二本鎖切断として、または2つの一本鎖切断として)を作製するためであり得る。これを、本明細書に記載及び例示するとおり、部位特異的ポリペプチドの使用によって達成することができる。
【0051】
CRISPRエンドヌクレアーゼシステム
CRISPR(クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート;Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats)ゲノム遺伝子座は、多くの原核生物(例えば、細菌及び古細菌)のゲノムにおいて見出され得る。原核生物では、CRISPR遺伝子座は、外来侵入物、例えば、ウイルス及びファージに対して原核生物を防御するために役立つ免疫系の1タイプとして機能する産物をコードする。CRISPR遺伝子座機能には3つの段階がある:CRISPR遺伝子座への新たな配列の組込み、CRISPR RNA(crRNA)の発現、及び外来侵入物核酸のサイレンシング。5種のCRISPRシステム(例えば、I型、II型、III型、U型、及びV型)が同定されている。
【0052】
CRISPR遺伝子座は、「リピート」と呼ばれるいくつかの短い繰り返し配列を含む。発現すると、リピートは、二次構造(例えば、ヘアピン)を形成し得る、及び/または非構造化一本鎖配列を含み得る。リピートは通常、クラスターで生じ、種の間で高頻度に分岐し得る。リピートは、「スペーサー」と呼ばれる固有の介在配列で規則的に空間を空けられていて、それによってリピート-スペーサー-リピート遺伝子座の構造が生じている。スペーサーは、既知の外来侵入物配列と同一であるか、または高い相同性を有する。スペーサー-リピート単位は、crisprRNA(crRNA)をコードし、これは、スペーサー-リピート単位の成熟形態にプロセシングされる。crRNAは、標的核酸をターゲティングすることに関与する「シード」またはスペーサー配列を含む(原核生物において天然に存在する形態では、スペーサー配列は外来侵入物核酸をターゲティングする)。スペーサー配列は、crRNAの5’または3’末端に位置する。
【0053】
CRISPR遺伝子座はまた、CRISPR関連(Cas)遺伝子をコードするポリヌクレオチド配列を含む。Cas遺伝子は、原核生物において生合成及びcrRNA機能の干渉段階に関与するエンドヌクレアーゼをコードする。一部のCas遺伝子は、相同性の二次的構造及び/または三次的構造を含む。
【0054】
II型CRISPRシステム
天然におけるII型CRISPRシステムでのcrRNA生合成は、トランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)を必要とする。II型CRISPRシステムの非限定的例は、
図1のA及びBに示されている。tracrRNAは、内在性RNアーゼIIIによって修飾され得、次いで、ハイブリダイズして、プレcrRNAアレイでcrRNAリピートになる。内在性RNアーゼIIIは、プレcrRNAを切断するために動員され得る。切断されたcrRNAは、エキソリボヌクレアーゼトリミングに供されて、成熟型crRNA(例えば、5’トリミング)を生じ得る。tracrRNAは、crRNAとハイブリダイズされたまま残存し得、tracrRNA及びcrRNAは、部位特異的ポリペプチド(例えば、Cas9)と会合する。crRNA-tracrRNA-Cas9複合体のcrRNAは、複合体を標的核酸にガイドし得る(標的核酸へcrRNAがハイブリダイズし得る)。標的核酸に対するcrRNAのハイブリダイゼーションは、標的核酸切断に関してCas9を活性化し得る。II型CRISPRシステムにおける標的核酸は、プロトスペーサー隣接モチーフ(protospacer adjacent motif;PAM)と呼ばれる。天然では、PAMは、標的核酸への部位特異的ポリペプチド(例えば、Cas9)の結合を容易にするために必須である。II型システム(NmeniまたはCASS4とも呼ばれる)はさらに、II-A(CASS4)型及びII-B(CASS4a)型に細分される。Jinek et al.,Science,337(6096):816-821(2012)は、CRISPR/Cas9システムが、RNAプログラム可能ゲノム編集に有用であることを示しており、国際特許出願公開番号WO2013/176772は、部位特異的遺伝子編集のためのCRISPR/Casエンドヌクレアーゼシステムの多数の例及び用途を提供している。
【0055】
V型CRISPRシステム
V型CRISPRシステムは、II型システムとはいくつかの重要な相違を有する。例えば、Cpf1は、II型システムとは対照的に、tracrRNAをもたない単一のRNAガイドされるエンドヌクレアーゼである。実際に、Cpf1関連CRISPRアレイは、追加のトランス活性化tracrRNAを必要とせずに、成熟crRNAへとプロセシングされ得る。V型CRISPRアレイは、42~44ヌクレオチド長の短い成熟crRNAにプロセシングされ得、各成熟crRNAは、19ヌクレオチドのダイレクトリピートから始まり、23~25ヌクレオチドのスペーサー配列が続く。対照的に、II型システムの成熟crRNAは、20~24ヌクレオチドのスペーサー配列から始まり、約22ヌクレオチドのダイレクトリピートが続き得る。また、Cpf1はTリッチプロトスペーサー隣接モチーフを利用し得て、Cpf1-crRNA複合体が、短いTリッチPAMが先行する標的DNAを効率的に切断するようになっているが、これは、II型システムでは標的DNAの後であるGリッチPAMとは対照的である。したがって、V型システムが、PAMから離れたポイントで切断する一方で、II型システムは、PAMに隣接するポイントで切断する。加えて、II型システムとは対照的に、Cpf1は、スタッガード(staggered)DNA二本鎖切断を介して、4または5ヌクレオチドの5’オーバーハングを伴ってDNAを切断する。II型システムは、ブラント二本鎖切断を介して切断する。II型システムと同様に、Cpf1は、予測されたRuvC様エンドヌクレアーゼドメインを含有するが、第2のHNHエンドヌクレアーゼドメインを欠いていて、これは、II型システムとは対照的である。
【0056】
Cas遺伝子/ポリペプチド及びプロトスペーサー隣接モチーフ
例示的なCRISPR/Casポリペプチドは、Fonfara et al.、Nucleic Acids Research、42:2577-2590(2014)で公開されているとおりのCas9ポリペプチドを含む。CRISPR/Cas遺伝子命名システムは、Cas遺伝子が発見されて以来広範に書き換えを受けてきた。Fonfara et al.も、様々な種からのCas9ポリペプチドでのPAM配列を提供している(上記表1も参照されたい)。
【0057】
II.本開示の組成物及び方法
SCN10A遺伝子またはSCN10A遺伝子の制御エレメントをコードする他のDNA配列の欠失または変異によって、ゲノムに恒久的変化をもたらすためにゲノム操作ツールを使用するための細胞ex vivo及びin vivo方法を本明細書において提供する。そのような方法は、エンドヌクレアーゼ、例えば、CRISPR関連(Cas9、Cpf1など)ヌクレアーゼを使用して、SCN10A遺伝子またはSCN10A遺伝子の制御エレメントをコードする他のDNA配列のゲノム遺伝子座内またはその近傍で恒久的に編集する。この方法で、本開示で記載する例は、(患者の寿命にわたって有望な治療を送達するのではなく)わずか1回の処置でSCN10A遺伝子の発現を減少させる、または除去するために役立ち得る。
【0058】
部位特異的ポリペプチド(エンドヌクレアーゼ、酵素)
部位特異的ポリペプチドは、DNAを切断するためにゲノム編集で使用されるヌクレアーゼである。部位特異的ポリペプチドを、1種もしくは複数のポリペプチド、またはそのポリペプチドをコードする1種もしくは複数のmRNAのいずれかとして細胞または患者に投与することができる。配列番号1~620に列挙されている、または本明細書で開示する酵素またはオルソログのいずれかを、本明細書に記載の方法で利用し得る。一分子ガイドRNAは、部位特異的ポリペプチドと事前複合体化することができる。部位特異的ポリペプチドは、本明細書で開示するDNAエンドヌクレアーゼのいずれかであり得る。
【0059】
CRISPR/Cas9またはCRISPR/Cpf1システムの文脈では、部位特異的ポリペプチドは、ガイドRNAに結合し得て、これが次いで、標的DNA内の部位を指定し、そこにポリペプチドが配向される。本明細書で開示するCRISPR/Cas9またはCRISPR/Cpf1システムでは、部位特異的ポリペプチドは、エンドヌクレアーゼ、例えば、DNAエンドヌクレアーゼであり得る。
【0060】
部位特異的ポリペプチドは、複数の核酸切断(すなわち、ヌクレアーゼ)ドメインを含み得る。2つ以上の核酸切断ドメインをリンカーによって一緒に連結させることができる。例えば、リンカーは、柔軟なリンカーを含み得る。リンカーは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40またはそれ以上のアミノ酸長を含み得る。
【0061】
天然に存在する野生型Cas9酵素は、2つのヌクレアーゼドメイン、HNHヌクレアーゼドメイン及びRuvCドメインを含む。本明細書では、「Cas9」という用語は、天然に存在するCas9及び組換えCas9の両方を指す。本明細書で企図されているCas9酵素は、HNHまたはHNH様ヌクレアーゼドメイン、及び/またはRuvCまたはRuvC様ヌクレアーゼドメインを含み得る。
【0062】
HNHまたはHNH様ドメインは、McrA様フォールドを含む。HNHまたはHNH様ドメインは、2つの逆平行βストランド及びαへリックスを含む。HNHまたはHNH様ドメインは、金属結合部位(例えば、二価カチオン結合部位)を含む。HNHまたはHNH様ドメインは、標的核酸の1つのストランド(例えば、crRNA標的ストランドの相補的ストランド)を切断することができる。
【0063】
RuvCまたはRuvC様ドメインは、RNアーゼHまたはRNアーゼH様フォールドを含む。RuvC/RNアーゼHドメインは、RNA及びDNAの両方に対する作用を含む、多様なセットの核酸ベースの機能に関与する。RNアーゼHドメインは、多数のαへリックスに囲まれた5つのβストランドを含む。RuvC/RNアーゼHまたはRuvC/RNアーゼH様ドメインは、金属結合部位(例えば、二価カチオン結合部位)を含む。RuvC/RNアーゼHまたはRuvC/RNアーゼH様ドメインは、標的核酸の1つのストランド(例えば、二本鎖標的DNAの非相補的ストランド)を切断することができる。
【0064】
部位特異的ポリペプチドは、核酸、例えば、ゲノムDNAに二本鎖切断または一本鎖切断を導入することができる。二本鎖切断は、細胞の内在性DNA修復経路(例えば、相同性依存的修復(HDR)またはNHEJまたは代替の非相同性末端結合(A-NHEJ)またはマイクロホモロジー媒介末端結合(MMEJ))を刺激することができる。NHEJは、相同性テンプレートを必要とせずに、切断された標的核酸を修復し得る。これは時に、標的核酸に切断部位で小さな欠失または挿入(インデル)をもたらし得、かつ遺伝子発現の破壊または変化をもたらし得る。相同性修復テンプレート、またはドナーが利用可能である場合に、HDRは生じ得る。相同性ドナーテンプレートは、標的核酸切断部位に隣接する配列に対して相同である配列を含み得る。姉妹染色分体が、細胞によって修復テンプレートとして使用され得る。しかしながら、ゲノム編集の目的のために、修復テンプレートを、外因性核酸、例えばプラスミド、二重鎖オリゴヌクレオチド、一本鎖オリゴヌクレオチドまたはウイルス核酸として供給することができる。外因性ドナーテンプレートを用いると、追加の、または変化した核酸配列も標的遺伝子座に組み込まれるように、追加の核酸配列(導入遺伝子など)または修飾(1つまたは多数の塩基変化または欠失など)を相同性の隣接領域の間に導入することができる。MMEJは、NHEJと同様である遺伝結果をもたらし得、その際、小さな欠失及び挿入が切断部位で生じ得る。好ましい末端結合DNA修復結果を推進するために、MMEJは、切断部位に隣接するいくつかの塩基対の相同配列を利用することができる。一部の例では、ヌクレアーゼ標的領域で起こり得るマイクロホモロジーの分析に基づき、見込まれる修復結果を予測することが可能であり得る。
【0065】
したがって、場合によっては、外因性ポリヌクレオチド配列を標的核酸切断部位に挿入するために、相同性組換えを使用することができる。外因性ポリヌクレオチド配列は、本明細書では「ドナーポリヌクレオチド」(またはドナーもしくはドナー配列)と呼ばれる。ドナーポリヌクレオチド、ドナーポリヌクレオチドの一部、ドナーポリヌクレオチドのコピー、またはドナーポリヌクレオチドのコピーの一部を標的核酸切断部位に挿入することができる。ドナーポリヌクレオチドは、外因性ポリヌクレオチド配列、すなわち、標的核酸切断部位で天然に生じない配列であり得る。
【0066】
NHEJ及び/またはHDRによる標的DNAの修飾は、例えば、変異、欠失、変化、組込み、遺伝子修正、遺伝子置換、遺伝子タギング、導入遺伝子挿入、ヌクレオチド欠失、遺伝子破壊、転座及び/または遺伝子変異をもたらし得る。ゲノムDNAを欠失する、及び非天然核酸をゲノムDNAに組み込むプロセスは、ゲノム編集の例である。
【0067】
部位特異的ポリペプチドは、野生型の例示的部位特異的ポリペプチド[例えばS.pyogenes由来のCas9、US2014/0068797号、配列番号8またはSapranauskas et al.、Nucleic Acids Res,39(21):9275-9282(2011)]、及び様々な他の部位特異的ポリペプチドに対して少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%アミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。部位特異的ポリペプチドは、10の連続アミノ酸にわたって野生型部位特異的ポリペプチド(例えばS.pyogenes由来のCas9、前出)に対して少なくとも70、75、80、85、90、95、97、99、または100%同一性を含み得る。部位特異的ポリペプチドは、10の連続アミノ酸にわたって野生型部位特異的ポリペプチド(例えばS.pyogenes由来のCas9、前出)に対して多くとも70、75、80、85、90、95、97、99、または100%同一性を含み得る。部位特異的ポリペプチドは、部位特異的ポリペプチドのHNHヌクレアーゼドメイン内の10の連続アミノ酸にわたって野生型部位特異的ポリペプチド(例えばS.pyogenes由来のCas9、前出)に対して少なくとも70、75、80、85、90、95、97、99、または100%同一性を含み得る。部位特異的ポリペプチドは、部位特異的ポリペプチドのHNHヌクレアーゼドメイン内の10の連続アミノ酸にわたって野生型部位特異的ポリペプチド(例えばS.pyogenes由来のCas9、前出)に対して多くとも70、75、80、85、90、95、97、99、または100%同一性を含み得る。部位特異的ポリペプチドは、部位特異的ポリペプチドのRuvCヌクレアーゼドメイン内の10の連続アミノ酸にわたって野生型部位特異的ポリペプチド(例えばS.pyogenes由来のCas9、前出)に対して少なくとも:70、75、80、85、90、95、97、99、または100%同一性を含み得る。部位特異的ポリペプチドは、部位特異的ポリペプチドのRuvCヌクレアーゼドメイン内の10の連続アミノ酸にわたって野生型部位特異的ポリペプチド(例えばS.pyogenes由来のCas9、前出)に対して多くとも70、75、80、85、90、95、97、99、または100%同一性を含み得る。
【0068】
部位特異的ポリペプチドは、野生型の例示的な部位特異的ポリペプチドの修飾形態を含み得る。野生型の例示的な部位特異的ポリペプチドの修飾形態は、部位特異的ポリペプチドの核酸切断活性を低下させる変異を含み得る。野生型の例示的な部位特異的ポリペプチドの修飾形態は、野生型の例示的な部位特異的ポリペプチド(例えばS.pyogenes由来のCas9、前出)の核酸切断活性の90%未満、80%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、または1%未満を有し得る。部位特異的ポリペプチドの修飾形態は、実質的な核酸切断活性を有し得ない。部位特異的ポリペプチドが実質的な核酸切断活性を有さない修飾形態である場合、本発明では「酵素的に不活性な」と称される。
【0069】
部位特異的ポリペプチドの修飾形態は、(例えば、二本鎖標的核酸の糖-リン酸骨格の一方だけを切ることによって)標的核酸で一本鎖切断(SSB)を誘導し得るような変異を含み得る。一部の態様では、変異は、野生型部位特異的ポリペプチド(例えばS.pyogenes由来のCas9、前出)の複数の核酸切断ドメインのうちの1つまたは複数の核酸切断活性の90%未満、80%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、または1%未満をもたらし得る。一部の態様では、変異は、複数の核酸切断ドメインのうちの1つまたは複数で生じて、標的核酸の相補ストランドを切断する能力は維持しつつ、しかし、標的核酸の非相補ストランドを切断するその能力は低下させ得る。変異は、複数の核酸切断ドメインのうちの1種または複数で生じて、標的核酸の非相補ストランドを切断する能力は維持しつつ、しかし、標的核酸の相補ストランドを切断するその能力は低下させ得る。例えば、野生型の例示的S.pyogenes Cas9ポリペプチドの残基、例えばAsp10、His840、Asn854及びAsn856を変異させて、複数の核酸切断ドメイン(例えば、ヌクレアーゼドメイン)のうちの1つまたは複数を不活化させる。変異させる残基は、(例えば、配列及び/または構造的アラインメントによって決定されるとおり)野生型の例示的なS.pyogenes Cas9ポリペプチド内の残基Asp10、His840、Asn854及びAsn856に対応し得る。変異の非限定的例には、D10A、H840A、N854AまたはN856Aが含まれる。当業者は、アラニン置換以外の変異が適し得ることが分かるであろう。
【0070】
一部の態様では、DNA切断活性を実質的に欠いている部位特異的ポリペプチドを生成するために、D10A変異を、H840A、N854A、またはN856A変異のうちの1つまたは複数と組み合わせることができる。DNA切断活性を実質的に欠いている部位特異的ポリペプチドを生成するために、H840A変異を、D10A、N854A、またはN856A変異のうちの1つまたは複数と組み合わせることができる。DNA切断活性を実質的に欠いている部位特異的ポリペプチドを生成するために、N854A変異を、H840A、D10A、またはN856A変異のうちの1つまたは複数と組み合わせることができる。DNA切断活性を実質的に欠いている部位特異的ポリペプチドを生成するために、N856A変異をH840A、N854A、またはD10A変異のうちの1つまたは複数と組み合わせることができる。1つの実質的に不活性なヌクレアーゼドメインを含む部位特異的ポリペプチドは、「ニッカーゼ」と呼ばれる。
【0071】
RNAガイドされるエンドヌクレアーゼ、例えばCas9のニッカーゼバリアントを、CRISPR媒介ゲノム編集の特異性を上昇させるために使用することができる。野生型Cas9は典型的には、標的配列(内在性ゲノム遺伝子座など)内の規定の約20ヌクレオチド配列とハイブリダイズするように設計された単一ガイドRNAによってガイドされる。しかしながら、いくつかのミスマッチが、ガイドRNAと標的遺伝子座との間で許容され得、これは、標的部位内の必要な相同性の長さを例えば13ntの相同性の小ささまで効果的に低減し、それによって、オフターゲット切断としても知られている、標的ゲノム内の他の場所でのCRISPR/Cas9複合体による結合及び二本鎖核酸切断の可能性を上昇させる。Cas9のニッカーゼバリアントはそれぞれ1本のストランドしか切断しないので、二本鎖切断をもたらすためには、一対のニッカーゼが近接して、かつ標的核酸の逆ストランド上で結合し、それによって、二本鎖切断の同等物である一対のニックを作製することが必要である。これは、2つの別々のガイドRNA(各ニッカーゼに1つ)が近接して、かつ標的核酸の逆ストランド上で結合する必要がある。この要求は本質的に、二本鎖切断を起こすために必要な相同性の最小長さを二倍にし、それによって、ゲノム内の他の箇所で二本鎖切断事象が起こる可能性を低下させるが、その際、2つのガイドRNA部位(それらが存在する場合に)が、二本鎖切断の形成を可能にするように相互に十分に近接する可能性は低い。当技術分野で記載されているとおり、ニッカーゼはまた、NHEJに対してHDRを促進するために使用することができる。HDRは、所望の変化を効果的に媒介する特異的なドナー配列の使用によってゲノム内の標的部位に選択された変化を導入するために使用することができる。
【0072】
企図される変異には、置換、付加、及び欠失、またはその任意の組み合わせが含まれ得る。変異は、変異アミノ酸をアラニンに変換する。変異は、変異アミノ酸を別のアミノ酸(例えば、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、ヒスチジン、リシン、またはアルギニン)に変換する。変異は、変異アミノ酸を非天然アミノ酸(例えば、セレノメチオニン)に変換する。変異は、変異アミノ酸をアミノ酸模倣体(例えば、ホスホ模倣体)に変換する。変異は、保存的変異であり得る。例えば、変異は、変異アミノ酸をサイズ、形状、電荷、極性、配置が類似するアミノ酸、及び/または変異アミノ酸の回転異性体に変換する(例えば、システイン/セリン変異、リシン/アスパラギン変異、ヒスチジン/フェニルアラニン変異)。変異は、リーディングフレームのシフト及び/または未成熟終止コドンの作成をもたらし得る。変異は、1つまたは複数の遺伝子の発現に影響を及ぼす遺伝子または遺伝子座の制御領域を変化させ得る。
【0073】
部位特異的ポリペプチド(例えば、バリアント、変異、酵素的に不活性な、及び/または条件的に酵素的に不活性な部位特異的ポリペプチド)は、核酸をターゲティングし得る。部位特異的ポリペプチド(例えば、バリアント、変異、酵素的に不活性な、及び/または条件的に酵素的に不活性なエンドリボヌクレアーゼ)は、DNAをターゲティングし得る。部位特異的ポリペプチド(例えば、バリアント、変異、酵素的に不活性な、及び/または条件的に酵素的に不活性なエンドリボヌクレアーゼ)は、RNAをターゲティングし得る。
【0074】
部位特異的ポリペプチドは、1つまたは複数の非天然配列を含み得る(例えば、部位特異的ポリペプチドは融合タンパク質である)。
【0075】
部位特異的ポリペプチドは、細菌(例えばS.pyogenes)由来のCas9に対して少なくとも15%のアミノ酸同一性を含むアミノ酸配列、核酸結合ドメイン、及び2つの核酸切断ドメイン(すなわち、HNHドメイン及びRuvCドメイン)を含み得る。
【0076】
部位特異的ポリペプチドは、細菌(例えばS.pyogenes)由来のCas9に対して少なくとも15%アミノ酸同一性を含むアミノ酸配列、及び2つの核酸切断ドメイン(すなわち、HNHドメイン及びRuvCドメイン)を含み得る。
【0077】
部位特異的ポリペプチドは、細菌(例えばS.pyogenes)由来のCas9に対して少なくとも15%のアミノ酸同一性を含むアミノ酸配列、及び2つの核酸切断ドメインを含み得、その際、核酸切断ドメインの一方または両方は、細菌(例えばS.pyogenes)由来のCas9からのヌクレアーゼドメインに対して少なくとも50%アミノ酸同一性を含む。
【0078】
部位特異的ポリペプチドは、細菌(例えばS.pyogenes)由来のCas9に対して少なくとも15%のアミノ酸同一性を含むアミノ酸配列、2つの核酸切断ドメイン(すなわち、HNHドメイン及びRuvCドメイン)、及び非天然配列(例えば、核移行シグナル)または非天然配列に部位特異的ポリペプチドを連結するリンカーを含み得る。
【0079】
部位特異的ポリペプチドは、細菌(例えばS.pyogenes)由来のCas9に対して少なくとも15%のアミノ酸同一性を含むアミノ酸配列、2つの核酸切断ドメイン(すなわち、HNHドメイン及びRuvCドメイン)を含み得、その際、部位特異的ポリペプチドは、核酸切断ドメインの一方または両方において、ヌクレアーゼドメインの切断活性を少なくとも50%低下させる変異を含む。
【0080】
部位特異的ポリペプチドは、細菌(例えばS.pyogenes)由来のCas9に対して少なくとも15%のアミノ酸同一性を含むアミノ酸配列、及び2つの核酸切断ドメイン(すなわち、HNHドメイン及びRuvCドメイン)を含み得、その際、ヌクレアーゼドメインの一方は、アスパラギン酸10の変異を含み、及び/またはヌクレアーゼドメインの一方は、ヒスチジン840の変異を含み得、及び変異は、ヌクレアーゼドメイン(複数可)の切断活性を少なくとも50%低下させる。
【0081】
1種または複数の部位特異的ポリペプチド、例えばDNAエンドヌクレアーゼは、ゲノム内の特異的な遺伝子座で1つの二本鎖切断を一緒になって行う2つのニッカーゼ、またはゲノム内の特異的な遺伝子座で2つの二本鎖切断を一緒になって行うか、それをもたらす4つのニッカーゼを含み得る。別法では、1つの部位特異的ポリペプチド、例えばDNAエンドヌクレアーゼは、ゲノム内の特異的な遺伝子座で1つの二本鎖切断を行い得るか、それをもたらし得る。
【0082】
他の菌株に由来するCas9オルソログの非限定的例には、これに限定されないが、Acaryochloris marina MBIC11017;Acetohalobium arabaticum DSM 5501;Acidithiobacillus caldus;Acidithiobacillus ferrooxidans ATCC 23270;Alicyclobacillus acidocaldarius LAA1;Alicyclobacillus acidocaldarius subsp.acidocaldarius DSM 446;Allochromatium vinosum DSM 180;Ammonifex degensii KC4;Anabaena variabilis ATCC 29413;Arthrospira maxima CS-328;Arthrospira platensis str.Paraca;Arthrospira sp.PCC 8005;Bacillus pseudomycoides DSM 12442;Bacillus selenitireducens MLS10;Burkholderiales bacterium 1_1_47;Caldicelulosiruptor becscii DSM 6725;Candidatus Desulforudis audaxviator MP104C;Caldicellulosiruptor hydrothermalis_108;Clostridium phage c-st;Clostridium botulinum A3 str.Loch Maree;Clostridium botulinum Ba4 str.657;Clostridium difficile QCD-63q42;Crocosphaera watsonii WH 8501;Cyanothece sp.ATCC 51142;Cyanothece sp.CCY0110;Cyanothece sp.PCC 7424;Cyanothece sp.PCC 7822;Exiguobacterium sibiricum 255-15;Finegoldia magna ATCC 29328;Ktedonobacter racemifer DSM 44963;Lactobacillus delbrueckii subsp.bulgaricus PB2003/044-T3-4;Lactobacillus salivarius ATCC 11741;Listeria innocua;Lyngbya sp.PCC 8106;Marinobacter sp.ELB17;Methanohalobium evestigatum Z-7303;Microcystis phage Ma-LMM01;Microcystis aeruginosa NIES-843;Microscilla marina ATCC 23134;Microcoleus chthonoplastes PCC 7420;Neisseria meningitidis;Nitrosococcus halophilus Nc4;Nocardiopsis dassonvillei subsp.dassonvillei DSM 43111;Nodularia spumigena CCY9414;Nostoc sp.PCC 7120;Oscillatoria sp.PCC 6506;Pelotomaculum_thermopropionicum_SI;Petrotoga mobilis SJ95;Polaromonas naphthalenivorans CJ2;Polaromonas sp.JS666;Pseudoalteromonas haloplanktis TAC125;Streptomyces pristinaespiralis ATCC 25486;Streptomyces pristinaespiralis ATCC 25486;Streptococcus thermophilus;Streptomyces viridochromogenes DSM 40736;Streptosporangium roseum DSM 43021;Synechococcus sp.PCC 7335;及びThermosipho africanus TCF52Bで同定されたCasタンパク質が含まれる(Chylinski et al.,RNA Biol.,2013;10(5):726-737)。
【0083】
Cas9オルソログに加えて、他のCas9バリアント、例えば、不活性なdCas9及び異なる機能を有するエフェクタードメインの融合タンパク質は、遺伝的修飾のためのプラットフォームとして役立ち得る。上述の酵素のいずれも、本開示において有用であり得る。
【0084】
本開示で利用してもよいエンドヌクレアーゼのさらなる例を配列番号1~620に示す。これらのタンパク質は、使用前に修飾されてもよいか、または核酸配列、例えば、DNA、RNAもしくはmRNAにおいて、またはベクター構築物、例えば、本明細書において教示するプラスミドまたはAAVベクター内でコードされてもよい。さらに、それらは、コドン最適化されていてもよい。
【0085】
配列番号1~620は、エンドヌクレアーゼ配列の非排他的リストを開示している。
【0086】
ゲノムターゲティング核酸
本開示は、関連ポリペプチド(例えば、部位特異的ポリペプチド)の活性を標的核酸内の特異的標的配列へと指示し得るゲノムターゲティング核酸を提供する。ゲノムターゲティング核酸はRNAであり得る。ゲノムターゲティングRNAは、本明細書では「ガイドRNA」または「gRNA」と称される。ガイドRNAは、目的の標的核酸配列、及びCRISPRリピート配列とハイブリダイズする少なくとも1つのスペーサー配列を含み得る。II型システムでは、gRNAはまた、tracrRNA配列と呼ばれる第2のRNAを含む。II型ガイドRNA(gRNA)では、CRISPRリピート配列及びtracrRNA配列は、相互にハイブリダイズして二重鎖を形成する。V型ガイドRNA(gRNA)では、crRNAは二重鎖を形成する。両方のシステムで、ガイドRNA及び部位特異的ポリペプチドが複合体を形成するように、二重鎖は部位特異的ポリペプチドに結合し得る。ゲノムターゲティング核酸は、部位特異的ポリペプチドとのその会合により、標的特異性を複合体に与え得る。したがって、ゲノムターゲティング核酸は、部位特異的ポリペプチドの活性を指示し得る。
【0087】
例示的なガイドRNAには、配列表の配列番号5305~76012におけるスペーサー配列が含まれる。通常の技能の当業者には理解されるとおり、各ガイドRNAを、そのゲノム標的配列に相補的なスペーサー配列を含むように設計することができる。例えば、配列表の配列番号5305~76012におけるスペーサー配列のそれぞれを、単一のRNAキメラまたはcrRNA(対応するtracrRNAと共に)に入れることができる。Jinek et al.,Science,337,816-821(2012)及びDeltcheva et al.,Nature,471,602-607(2011)を参照されたい。
【0088】
ゲノムターゲティング核酸は、二重分子ガイドRNAであり得る。ゲノムターゲティング核酸は、一分子ガイドRNAであり得る。
【0089】
二重分子ガイドRNAは、RNAの二本のストランドを含み得る。第1のストランドは、5’から3’方向で、任意選択のスペーサーエクステンション配列、スペーサー配列及びミニマムCRISPRリピート配列を含む。第2のストランドは、最少tracrRNA配列(ミニマムCRISPRリピート配列に相補的)、3’tracrRNA配列及び任意選択のtracrRNAエクステンション配列を含み得る。
【0090】
II型システムにおける一分子ガイドRNA(sgRNA)は、5’から3’方向で、任意選択のスペーサーエクステンション配列、スペーサー配列、ミニマムCRISPRリピート配列、一分子ガイドリンカー、ミニマムtracrRNA配列、3’tracrRNA配列及び任意選択のtracrRNAエクステンション配列を含み得る。任意選択のtracrRNAエクステンションは、追加の機能性(例えば、安定性)をガイドRNAに与えるエレメントを含み得る。一分子ガイドリンカーは、ミニマムCRISPRリピート及びミニマムtracrRNA配列を連結して、ヘアピン構造を形成し得る。任意選択のtracrRNAエクステンションは、1つまたは複数のヘアピンを含み得る。
【0091】
sgRNAは、sgRNA配列の5’末端に20ヌクレオチドのスペーサー配列を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の5’末端に20ヌクレオチド未満のスペーサー配列を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の5’末端に20ヌクレオチド超のスペーサー配列を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の5’末端に、17~30ヌクレオチドを含む様々な長さのスペーサー配列を含み得る(表1を参照されたい)。
【0092】
sgRNAは、表1の配列番号76045においてのように、sgRNA配列の3’末端にウラシルを含まなくてよい。sgRNAは、表1の配列番号76046においてのように、sgRNA配列の3’末端に1つまたは複数のウラシルを含んでよい。例えば、sgRNAは、sgRNA配列の3’末端に1つのウラシル(U)を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の3’末端に2つのウラシル(UU)を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の3’末端に3つのウラシル(UUU)を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の3’末端に4つのウラシル(UUUU)を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の3’末端に5つのウラシル(UUUUU)を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の3’末端に6つのウラシル(UUUUUU)を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の3’末端に7つのウラシル(UUUUUUU)を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の3’末端に8つのウラシル(UUUUUUUU)を含み得る。
【0093】
sgRNAは、修飾されていなくてよいか、または修飾されていてよい。例えば、修飾sgRNAは、1つまたは複数の2’-O-メチルホスホロチオエートヌクレオチドを含み得る。
【表1】
【0094】
V型システムにおける一分子ガイドRNA(sgRNA)は、5’から3’方向で、ミニマムCRISPRリピート配列及びスペーサー配列を含み得る。
【0095】
実例としては、CRISPR/Cas9またはCRISPR/Cpf1システムにおいて使用されるガイドRNA、または他のより小さなRNAは、下記で例示するとおり、かつ当技術分野で記載されているとおり、化学的手段によって容易に合成することができる。化学合成手順は絶えず拡大しているが、ポリヌクレオチド長さが約100ヌクレオチドを超えてかなり増大するにつれて、高速液体クロマトグラフィー(HPLC、これによりPAGEなどのゲルの使用が回避される)などの手順によるそのようなRNAの精製は、より困難になる傾向がある。比較的大きな長さのRNAを生成するために使用されるアプローチの1つは、2つ以上の分子を生成して、それらを一緒にライゲートさせることである。かなり長いRNA、例えば、Cas9またはCpf1エンドヌクレアーゼをコードするものは、酵素によってより容易に生成される。当技術分野で記載されているとおり、RNAの化学合成及び/または酵素的生成の間に、またはその後に、様々な種類のRNA修飾、例えば、安定性を上昇させる、自然免疫応答の可能性または程度を低下させる、及び/または他の特性を増強する修飾を導入することができる。
【0096】
スペーサーエクステンション配列
ゲノムターゲティング核酸の一部の例では、スペーサーエクステンション配列は、活性を修飾し得る、安定性をもたらし得る、及び/またはゲノムターゲティング核酸を修飾するための位置をもたらし得る。スペーサーエクステンション配列は、オンターゲットまたはオフターゲット活性または特異性を修飾し得る。一部の例では、スペーサーエクステンション配列を付与することができる。スペーサーエクステンション配列は、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280、300、320、340、360、380、400、1000、2000、3000、4000、5000、6000、もしくは7000超またはそれ以上のヌクレオチドの長さを有し得る。スペーサーエクステンション配列は、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280、300、320、340、360、380、400、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000未満またはそれ以上のヌクレオチドの長さを有し得る。スペーサーエクステンション配列は、10未満のヌクレオチド長さであり得る。スペーサーエクステンション配列は、10から30の間のヌクレオチド長さであり得る。スペーサーエクステンション配列は、30から70の間のヌクレオチド長さであり得る。
【0097】
スペーサーエクステンション配列は、別の部分(例えば、安定性制御配列、エンドリボヌクレアーゼ結合配列、リボザイム)を含み得る。その部分は、核酸ターゲティング核酸の安定性を低下または上昇させ得る。その部分は、転写ターミネーターセグメント(すなわち、転写終結配列)であり得る。その部分は、真核細胞において機能し得る。その部分は、原核細胞において機能し得る。その部分は、真核及び原核細胞の両方で機能し得る。適切な部分の非限定的例には:5’キャップ(例えば、7-メチルグアニレートキャップ(m7G))、リボスイッチ配列(例えば、タンパク質及びタンパク質複合体による制御された安定性及び/または制御されたアクセシビリティを可能にするために)、dsRNA二本鎖(すなわち、ヘアピン)を形成する配列、RNAを細胞内位置(例えば、核、ミトコンドリア、葉緑体など)へと配向する配列、追跡を可能にする修飾または配列(例えば、蛍光分子との直接的なコンジュゲーション、蛍光検出を促進する部分とのコンジュゲーション、蛍光検出を可能にする配列など)、及び/またはタンパク質のための結合部位を提供する修飾または配列(例えば、転写活性化因子、転写リプレッサー、DNAメチルトランスフェラーゼ、DNAデメチラーゼ、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ、ヒストンデアセチラーゼなどを含む、DNAに作用するタンパク質)が含まれる。
【0098】
スペーサー配列
スペーサー配列は、目的の標的核酸内の配列とハイブリダイズする。ゲノムターゲティング核酸のスペーサーは、ハイブリダイゼーション(すなわち、塩基対合)を介して、配列特異的に標的核酸と相互作用し得る。スペーサーのヌクレオチド配列は、目的の標的核酸の配列に依存して変化し得る。
【0099】
本明細書に記載のCRISPR/Casシステムでは、スペーサー配列を、システムで使用されるCas9酵素のPAMの5’側に位置する標的核酸とハイブリダイズするように設計することができる。スペーサーは、標的配列に完全にマッチしてもよいか、またはミスマッチを有してもよい。各Cas9酵素は、標的DNAにおいて認識する特定のPAM配列を有する。例えばS.pyogenesは、標的核酸において、配列5’-NRG-3’を含むPAMを認識し、その際、Rは、AまたはGのいずれかを含み、Nは、任意のヌクレオチドであり、Nは、スペーサー配列がターゲティングする標的核酸配列のすぐ3’側である。
【0100】
標的核酸配列は、20のヌクレオチドを含み得る。標的核酸は、20未満のヌクレオチドを含み得る。標的核酸は、20超のヌクレオチドを含み得る。標的核酸は、少なくとも5、10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30またはそれ以上のヌクレオチドを含み得る。標的核酸は、多くとも5、10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30またはそれ以上のヌクレオチドを含み得る。標的核酸配列は、PAMの第1のヌクレオチドのすぐ5’側に20の塩基を含み得る。例えば、5’-NNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNRG-3’(配列番号76043)を含む配列では、標的核酸は、任意のヌクレオチドであるNに対応する配列を含み得、下線を付されたNRG配列が、S.pyogenes PAMである。この標的核酸配列は多くの場合に、PAMストランドと称され、相補核酸配列は多くの場合に、非PAMストランドと称される。当業者は、スペーサー配列が標的核酸の非PAMストランドとハイブリダイズすることが分かるであろう(
図1のA及びB)。
【0101】
標的核酸とハイブリダイズするスペーサー配列は、少なくとも約6ヌクレオチド(nt)の長さを有し得る。スペーサー配列は、少なくとも約6nt、少なくとも約10nt、少なくとも約15nt、少なくとも約18nt、少なくとも約19nt、少なくとも約20nt、少なくとも約25nt、少なくとも約30nt、少なくとも約35ntまたは少なくとも約40nt、約6nt~約80nt、約6nt~約50nt、約6nt~約45nt、約6nt~約40nt、約6nt~約35nt、約6nt~約30nt、約6nt~約25nt、約6nt~約20nt、約6nt~約19nt、約10nt~約50nt、約10nt~約45nt、約10nt~約40nt、約10nt~約35nt、約10nt~約30nt、約10nt~約25nt、約10nt~約20nt、約10nt~約19nt、約19nt~約25nt、約19nt~約30nt、約19nt~約35nt、約19nt~約40nt、約19nt~約45nt、約19nt~約50nt、約19nt~約60nt、約20nt~約25nt、約20nt~約30nt、約20nt~約35nt、約20nt~約40nt、約20nt~約45nt、約20nt~約50nt、または約20nt~約60ntであり得る。一部の例では、スペーサー配列は、20ヌクレオチドを含み得る。一部の例では、スペーサーは、19ヌクレオチドを含み得る。一部の例では、スペーサーは18ヌクレオチドを含み得る。一部の例では、スペーサーは、22ヌクレオチドを含み得る。
【0102】
一部の例では、スペーサー配列と標的核酸との間の相補性パーセントは、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%である。一部の例では、スペーサー配列と標的核酸との間の相補性パーセントは、多くとも約30%、多くとも約40%、多くとも約50%、多くとも約60%、多くとも約65%、多くとも約70%、多くとも約75%、多くとも約80%、多くとも約85%、多くとも約90%、多くとも約95%、多くとも約97%、多くとも約98%、多くとも約99%、または100%である。一部の例では、スペーサー配列と標的核酸との間の相補性パーセントは、標的核酸の相補性ストランドの標的配列の6つの連続する最も5’側のヌクレオチドにわたって100%である。スペーサー配列と標的核酸との間の相補性パーセントは、約20の連続ヌクレオチドにわたって少なくとも60%であり得る。スペーサー配列及び標的核酸の長さは、1~6ヌクレオチド異なってよく、これは、1つのバルジまたは複数のバルジと考えてよい。
【0103】
スペーサー配列を、コンピュータープログラムを使用して設計または選択することができる。コンピュータープログラムは、変数、例えば、予測融解温度、二次構造形成、予測アニーリング温度、配列同一性、ゲノムコンテキスト、クロマチンアクセシビリティ、%GC、(例えば、同一であるか、または相似しているが、ミスマッチ、挿入もしくは欠失の結果として1つまたは複数のスポットにおいて異なる配列の)ゲノム出現の頻度、メチル化状態、SNPの存在などを使用することができる。
【0104】
ミニマムCRISPRリピート配列
一部の態様では、ミニマムCRISPRリピート配列は、基準CRISPRリピート配列(例えばS.pyogenes由来のcrRNA)に対して少なくとも約30%、約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または100%配列同一性を有する配列である。
【0105】
一部の態様では、ミニマムCRISPRリピート配列は、細胞内でミニマムtracrRNA配列とハイブリダイズし得るヌクレオチドを含む。ミニマムCRISPRリピート配列及びミニマムtracrRNA配列は、二重鎖、すなわち塩基対合二本鎖構造を形成し得る。ミニマムCRISPRリピート配列及びミニマムtracrRNA配列は一緒に、部位特異的ポリペプチドに結合し得る。ミニマムCRISPRリピート配列の少なくとも一部は、ミニマムtracrRNA配列とハイブリダイズし得る。ミニマムCRISPRリピート配列の少なくとも一部は、ミニマムtracrRNA配列に対して少なくとも約30%、約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または100%相補性を含み得る。一部の態様では、ミニマムCRISPRリピート配列の少なくとも一部は、ミニマムtracrRNA配列に対して多くとも約30%、約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または100%相補性を含む。
【0106】
ミニマムCRISPRリピート配列は、約7ヌクレオチドから約100ヌクレオチドまでの長さを有し得る。例えば、ミニマムCRISPRリピート配列の長さは、約7ヌクレオチド(nt)~約50nt、約7nt~約40nt、約7nt~約30nt、約7nt~約25nt、約7nt~約20nt、約7nt~約15nt、約8nt~約40nt、約8nt~約30nt、約8nt~約25nt、約8nt~約20nt、約8nt~約15nt、約15nt~約100nt、約15nt~約80nt、約15nt~約50nt、約15nt~約40nt、約15nt~約30nt、または約15nt~約25ntである。一部の態様では、ミニマムCRISPRリピート配列は、約9ヌクレオチド長さである。一部の態様では、ミニマムCRISPRリピート配列は、約12ヌクレオチド長さである。
【0107】
ミニマムCRISPRリピート配列は、少なくとも6、7、または8つの連続ヌクレオチドの区間にわたって基準ミニマムCRISPRリピート配列(例えばS.pyogenes由来の野生型crRNA)に対して少なくとも約60%同一であり得る。例えば、ミニマムCRISPRリピート配列は、少なくとも6、7、または8つの連続ヌクレオチドの区間にわたって基準ミニマムCRISPRリピート配列に対して少なくとも約65%同一、少なくとも約70%同一、少なくとも約75%同一、少なくとも約80%同一、少なくとも約85%同一、少なくとも約90%同一、少なくとも約95%同一、少なくとも約98%同一、少なくとも約99%同一または100%同一であり得る。
【0108】
ミニマムtracrRNA配列
ミニマムtracrRNA配列は、基準tracrRNA配列(例えばS.pyogenes由来の野生型tracrRNA)に対して少なくとも約30%、約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または100%配列同一性を有する配列であり得る。
【0109】
ミニマムtracrRNA配列は、細胞内でミニマムCRISPRリピート配列とハイブリダイズするヌクレオチドを含み得る。ミニマムtracrRNA配列及びミニマムCRISPRリピート配列は、二重鎖、すなわち塩基対合二本鎖構造を形成する。ミニマムtracrRNA配列及びミニマムCRISPRリピートは一緒に、部位特異的ポリペプチドに結合し得る。ミニマムtracrRNA配列の少なくとも一部は、ミニマムCRISPRリピート配列とハイブリダイズし得る。ミニマムtracrRNA配列は、ミニマムCRISPRリピート配列に対して少なくとも約30%、約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または100%相補性であり得る。
【0110】
ミニマムtracrRNA配列は、約7ヌクレオチドから約100ヌクレオチドまでの長さを有し得る。例えば、ミニマムtracrRNA配列は、約7ヌクレオチド(nt)~約50nt、約7nt~約40nt、約7nt~約30nt、約7nt~約25nt、約7nt~約20nt、約7nt~約15nt、約8nt~約40nt、約8nt~約30nt、約8nt~約25nt、約8nt~約20nt、約8nt~約15nt、約15nt~約100nt、約15nt~約80nt、約15nt~約50nt、約15nt~約40nt、約15nt~約30nt、または約15nt~約25nt長さであり得る。ミニマムtracrRNA配列は、約9ヌクレオチド長さであり得る。ミニマムtracrRNA配列は、約12ヌクレオチドであり得る。ミニマムtracrRNAは、Jinek et al.(前出)に記載のtracrRNA nt23~48からなり得る。
【0111】
ミニマムtracrRNA配列は、少なくとも6、7、または8つの連続ヌクレオチドの区間にわたって基準ミニマムtracrRNA(例えばS.pyogenes由来の野生型tracrRNA)配列に対して少なくとも約60%同一であり得る。例えば、ミニマムtracrRNA配列は、少なくとも6、7、または8つの連続ヌクレオチドの区間にわたって基準ミニマムtracrRNA配列に対して少なくとも約65%同一、約70%同一、約75%同一、約80%同一、約85%同一、約90%同一、約95%同一、約98%同一、約99%同一または100%同一であり得る。
【0112】
ミニマムCRISPR RNA及びミニマムtracrRNAとの間の二重鎖は、二重へリックスを含み得る。ミニマムCRISPR RNA及びミニマムtracrRNAとの間の二重鎖は、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10またはそれ以上のヌクレオチドを含み得る。ミニマムCRISPR RNA及びミニマムtracrRNAとの間の二重鎖は、多くとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10またはそれ以上のヌクレオチドを含み得る。
【0113】
二重鎖は、ミスマッチを含み得る(すなわち、二重鎖の2つのストランドは100%相補的ではない)。二重鎖は、少なくとも約1、2、3、4、もしくは5またはミスマッチを含み得る。二重鎖は、多くとも約1、2、3、4、もしくは5またはミスマッチを含み得る。二重鎖は、2つ以下のミスマッチを含み得る。
【0114】
バルジ
場合によっては、ミニマムCRISPR RNA及びミニマムtracrRNAとの間の二重鎖に、「バルジ」が存在し得る。バルジは、二重鎖内のヌクレオチドの非対合領域である。バルジは、部位特異的ポリペプチドへの二重鎖の結合に寄与し得る。バルジは、二重鎖の片側に、非対合5’-XXXY-3’(ここで、Xは、任意のプリンであり、Yは、逆ストランド上のヌクレオチドとゆらぎ対を形成し得るヌクレオチドを含む)、及び二重鎖の他の側に、非対合ヌクレオチド領域を含み得る。二重鎖の2つの側にある非対合ヌクレオチドの数は、異なり得る。
【0115】
一例では、バルジは、バルジのミニマムCRISPRリピートストランド上に非対合プリン(例えば、アデニン)を含み得る。一部の例では、バルジは、バルジのミニマムtracrRNA配列ストランドの非対合5’-AAGY-3’を含み得、ここで、Yは、ミニマムCRISPRリピート鎖上のヌクレオチドとゆらぎ対合を形成し得るヌクレオチドを含む。
【0116】
二重鎖のミニマムCRISPRリピート側にあるバルジは、少なくとも1、2、3、4、もしくは5またはそれ以上の非対合ヌクレオチドを含み得る。二重鎖のミニマムCRISPRリピート側にあるバルジは、多くとも1、2、3、4、もしくは5またはそれ以上の非対合ヌクレオチドを含み得る。二重鎖のミニマムCRISPRリピート側にあるバルジは、1つの非対合ヌクレオチドを含み得る。
【0117】
二重鎖のミニマムtracrRNA配列側にあるバルジは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10またはそれ以上の非対合ヌクレオチドを含み得る。二重鎖のミニマムtracrRNA配列側にあるバルジは、多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10またはそれ以上の非対合ヌクレオチドを含み得る。二重鎖の第2の側にあるバルジ(例えば、二重鎖のミニマムtracrRNA配列側)は、4つの非対合ヌクレオチドを含み得る。
【0118】
バルジは、少なくとも1つのゆらぎ対合を含み得る。一部の例では、バルジは、多くとも1つのゆらぎ対合を含み得る。バルジは、少なくとも1つのプリンヌクレオチドを含み得る。バルジは、少なくとも3つのプリンヌクレオチドを含み得る。バルジ配列は、少なくとも5つのプリンヌクレオチドを含み得る。バルジ配列は、少なくとも1つのグアニンヌクレオチドを含み得る。一部の例では、バルジ配列は、少なくとも1つのアデニンヌクレオチドを含み得る。
【0119】
ヘアピン
様々な例で、1つまたは複数のヘアピンが、3’tracrRNA配列内のミニマムtracrRNAの3’側に位置し得る。
【0120】
ヘアピンは、ミニマムCRISPRリピート及びミニマムtracrRNA配列二重鎖内の最後の対合ヌクレオチドから3’側の少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、もしくは20またはそれ以上のヌクレオチドで始まり得る。ヘアピンは、ミニマムCRISPRリピート及びミニマムtracrRNA配列二重鎖内の最後の対合ヌクレオチドから3’側の多くとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10またはそれ以上のヌクレオチドで始まり得る。
【0121】
ヘアピンは、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、もしくは20またはそれ以上の連続ヌクレオチドを含み得る。ヘアピンは、多くとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、もしくはそれ以上の連続ヌクレオチドを含み得る。
【0122】
ヘアピンは、CCジヌクレオチド(すなわち、2つの連続シトシンヌクレオチド)を含み得る。
【0123】
ヘアピンは、二重鎖ヌクレオチド(例えば、一緒にハイブリダイズしているヘアピン内のヌクレオチド)を含み得る。例えば、ヘアピンは、3’tracrRNA配列のヘアピン二重鎖内のGGジヌクレオチドとハイブリダイズしているCCジヌクレオチドを含み得る。
【0124】
ヘアピンの1つまたは複数は、部位特異的ポリペプチドのガイドRNA-相互作用領域と相互作用し得る。
【0125】
一部の例では、2つ以上のヘアピンが存在し、他の例では、3つ以上のヘアピンが存在する。
【0126】
3’tracrRNA配列
3’tracrRNA配列は、基準tracrRNA配列(例えばS.pyogenes由来のtracrRNA)に対して少なくとも約30%、約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または100%配列同一性を有する配列を含み得る。
【0127】
3’tracrRNA配列は、約6ヌクレオチド~約100ヌクレオチドの長さを有し得る。例えば、3’tracrRNA配列は、約6ヌクレオチド(nt)~約50nt、約6nt~約40nt、約6nt~約30nt、約6nt~約25nt、約6nt~約20nt、約6nt~約15nt、約8nt~約40nt、約8nt~約30nt、約8nt~約25nt、約8nt~約20nt、約8nt~約15nt、約15nt~約100nt、約15nt~約80nt、約15nt~約50nt、約15nt~約40nt、約15nt~約30nt、または約15nt~約25ntの長さを有し得る。3’tracrRNA配列は、約14ヌクレオチドの長さを有し得る。
【0128】
3’tracrRNA配列は、少なくとも6、7、または8つの連続ヌクレオチドの区間にわたって基準3’tracrRNA配列(例えばS.pyogenes由来の野生型3’tracrRNA配列)に対して少なくとも約60%同一であり得る。例えば、3’tracrRNA配列は、少なくとも6、7、または8の連続ヌクレオチドの区間にわたって基準3’tracrRNA配列(例えばS.pyogenes由来の野生型3’tracrRNA配列)に対して少なくとも約60%同一、約65%同一、約70%同一、約75%同一、約80%同一、約85%同一、約90%同一、約95%同一、約98%同一、約99%同一、または100%同一であり得る。
【0129】
3’tracrRNA配列は、1つより多い二重鎖領域(例えば、ヘアピン、ハイブリダイズした領域)を含み得る。3’tracrRNA配列は、2つの二重鎖領域を含み得る。
【0130】
3’tracrRNA配列は、ステムループ構造を含み得る。3’tracrRNA内のステムループ構造は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15もしくは20またはそれ以上のヌクレオチドを含み得る。3’tracrRNA内のステムループ構造は、多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10またはそれ以上のヌクレオチドを含み得る。ステムループ構造は、機能性部分を含み得る。例えば、ステムループ構造は、アプタマー、リボザイム、タンパク質-相互作用ヘアピン、CRISPRアレイ、イントロン、またはエキソンを含み得る。ステムループ構造は、少なくとも約1、2、3、4、もしくは5またはそれ以上の機能性部分を含み得る。ステムループ構造は、多くとも約1、2、3、4、もしくは5またはそれ以上の機能性部分を含み得る。
【0131】
3’tracrRNA配列内のヘアピンは、P-ドメインを含み得る。一部の例では、P-ドメインは、ヘアピン内の二本鎖領域を含み得る。
【0132】
tracrRNAエクステンション配列
tracrRNAが一分子ガイドまたは二重分子ガイドの状況にあるかに関わらず、tracrRNAエクステンション配列を付与してよい。tracrRNAエクステンション配列は、約1ヌクレオチド~約400ヌクレオチドの長さを有し得る。tracrRNAエクステンション配列は、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280、300、320、340、360、380、または400ヌクレオチド超の長さを有し得る。tracrRNAエクステンション配列は、約20~約5000またはそれ以上のヌクレオチドの長さを有し得る。tracrRNAエクステンション配列は、1000ヌクレオチド超の長さを有し得る。tracrRNAエクステンション配列は、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280、300、320、340、360、380、400未満またはそれ以上のヌクレオチドの長さを有し得る。tracrRNAエクステンション配列は、1000ヌクレオチド未満の長さを有し得る。tracrRNAエクステンション配列は、10ヌクレオチド未満の長さを含み得る。tracrRNAエクステンション配列は、10~30ヌクレオチドの長さであり得る。tracrRNAエクステンション配列は、30~70ヌクレオチドの長さであり得る。
【0133】
tracrRNAエクステンション配列は、機能性部分(例えば、安定性制御配列、リボザイム、エンドリボヌクレアーゼ結合配列)を含み得る。機能性部分は、転写ターミネーターセグメント(すなわち、転写終結配列)を含み得る。機能性部分は、約10ヌクレオチド(nt)~約100ヌクレオチド、約10nt~約20nt、約20nt~約30nt、約30nt~約40nt、約40nt~約50nt、約50nt~約60nt、約60nt~約70nt、約70nt~約80nt、約80nt~約90nt、または約90nt~約100nt、約15nt~約80nt、約15nt~約50nt、約15nt~約40nt、約15nt~約30nt、または約15nt~約25ntの全長を有し得る。機能性部分は、真核細胞において機能し得る。機能性部分は、原核細胞において機能し得る。機能性部分は、真核及び原核細胞の両方で機能し得る。
【0134】
適切なtracrRNAエクステンション機能性部分の非限定的例には、3’ポリ-アデニル化テイル、リボスイッチ配列(例えば、タンパク質及びタンパク質複合体による制御された安定性及び/または制御されたアクセシビリティを可能にするために)、dsRNA二本鎖(すなわち、ヘアピン)を形成する配列、RNAを細胞内位置(例えば、核、ミトコンドリア、葉緑体など)へと配向する配列、追跡を可能にする修飾または配列(例えば、蛍光分子との直接的なコンジュゲーション、蛍光検出を促進する部分とのコンジュゲーション、蛍光検出を可能にする配列など)、及び/またはタンパク質のための結合部位を提供する修飾または配列(例えば、転写活性化因子、転写リプレッサー、DNAメチルトランスフェラーゼ、DNAデメチラーゼ、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ、ヒストンデアセチラーゼなどを含む、DNAに作用するタンパク質)が含まれる。tracrRNAエクステンション配列は、プライマー結合部位または分子インデックス(例えば、バーコード配列)を含み得る。tracrRNAエクステンション配列は、1つまたは複数の親和性タグを含み得る。
【0135】
一分子ガイドリンカー配列
一分子ガイド核酸のリンカー配列は、約3ヌクレオチド~約100ヌクレオチドの長さを有し得る。Jinek et al.(前出)では、例えば、単純な4ヌクレオチド「テトラループ」(-GAAA-)が使用された(Science、337(6096):816-821(2012))。リンカーの実例は、約3ヌクレオチド(nt)~約90nt、約3nt~約80nt、約3nt~約70nt、約3nt~約60nt、約3nt~約50nt、約3nt~約40nt、約3nt~約30nt、約3nt~約20nt、約3nt~約10ntの長さを有する。例えば、リンカーは、約3nt~約5nt、約5nt~約10nt、約10nt~約15nt、約15nt~約20nt、約20nt~約25nt、約25nt~約30nt、約30nt~約35nt、約35nt~約40nt、約40nt~約50nt、約50nt~約60nt、約60nt~約70nt、約70nt~約80nt、約80nt~約90nt、または約90nt~約100ntの長さを有し得る。一分子ガイド核酸のリンカーは、4から40の間のヌクレオチドであり得る。リンカーは、少なくとも約100、500、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、もしくは7000またはそれ以上のヌクレオチドであり得る。リンカーは、多くとも約100、500、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、もしくは7000またはそれ以上のヌクレオチドであり得る。
【0136】
リンカーは、様々な配列のいずれも含むことができるが、一部の例では、リンカーは、ガイドの他の機能性領域を妨害し得る分子内結合をもたらすかもしれない、ガイドRNAの他の部分と相同性の広範な領域を有する配列を含まない。Jinek et al.(前出)では、単純な4ヌクレオチド配列-GAAA-が使用されたが(Science、337(6096):816-821(2012))、より長い配列を含む多数の他の配列を同様に使用することができる。
【0137】
リンカー配列は、機能性部分を含み得る。例えば、リンカー配列は、アプタマー、リボザイム、タンパク質-相互作用ヘアピン、タンパク質結合部位、CRISPRアレイ、イントロン、またはエキソンを含む1つまたは複数のフィーチャーを含み得る。リンカー配列は、少なくとも約1、2、3、4、もしくは5またはそれ以上の機能性部分を含み得る。一部の例では、リンカー配列は、多くとも約1、2、3、4、もしくは5またはそれ以上の機能性部分を含み得る。
【0138】
核酸修飾(化学及び構造修飾)
一部の態様では、本明細書においてさらに記載するとおり、かつ当技術分野で公知のとおり、細胞に導入されるポリヌクレオチドは、例えば、活性、安定性または特異性を増強するために、送達を変化させるために、宿主細胞における自然免疫応答を低下させるために、または他の増強のために個別に、または組み合わせて使用することができる1つまたは複数の修飾を含み得る。
【0139】
ある種の例では、修飾ポリヌクレオチドを、CRISPR/Cas9またはCRISPR/Cpf1システムで使用することができ、その場合、以下に記載及び例示するとおり、細胞に導入されるガイドRNA(一分子ガイドまたは二重分子ガイドのいずれか)及び/またはCas9またはCpf1エンドヌクレアーゼをコードするDNAまたはRNAを修飾することができる。そのような修飾ポリヌクレオチドを、任意の1つまたは複数のゲノム遺伝子座を編集するためにCRISPR/Cas9またはCRISPR/Cpf1システムにおいて使用することができる。
【0140】
そのような使用の非限定的説明を目的としてCRISPR/Cas9またはCRISPR/Cpf1システムを使用すると、ガイドRNAの修飾を、一分子ガイドまたは二重分子であってよいガイドRNAと、Cas9またはCpf1エンドヌクレアーゼとを含むCRISPR/Cas9またはCRISPR/Cpf1ゲノム編集複合体の形成または安定性を増強するために使用することができる。ガイドRNAの修飾をまた、または別法で、ゲノム編集複合体とゲノム内の標的配列との相互作用の開始、安定性または反応速度を増強するために使用することができ、これを、例えばオンターゲット活性を増強するために使用することができる。ガイドRNAの修飾をまた、または別法で、特異性、例えば、他の(オフターゲット)部位での作用と比較して、オンターゲット部位でのゲノム編集の相対速度を増強するために使用することができる。
【0141】
修飾をまた、または別法で、ガイドRNAの安定性を、例えば、細胞内に存在するリボヌクレアーゼ(RNアーゼ)による分解に対するその抵抗性を上昇させ、それによって細胞におけるその半減期を増加させることによって上昇させるために使用することができる。ガイドRNA半減期を増加させる修飾は、Cas9またはCpf1エンドヌクレアーゼが、エンドヌクレアーゼを生成するために翻訳されることを必要とするRNAを介して、編集されるべき細胞に導入される態様で特に有用であり得るが、それというのも、エンドヌクレアーゼをコードするRNAと同時に導入されるガイドRNAの半減期の増加を、ガイドRNA及びコードされたCas9またはCpf1エンドヌクレアーゼが細胞内に同時に存在する時間を増加させるために使用することができるためである。
【0142】
修飾をまた、または別法で、細胞に導入されたRNAが自然免疫応答を誘発する可能性または程度を低下させるために使用することができる。以下に、及び当技術分野で記載されているとおりの低分子干渉RNA(siRNA)を含むRNA干渉(RNAi)の文脈で十分に特徴付けられているそのような応答は、RNAの半減期の減少及び/またはサイトカインまたは免疫応答と関連する他の因子の誘発と関連する傾向がある。
【0143】
限定ではないが、RNAの安定性を増強する修飾(細胞内に存在するRNアーゼによるその分解を増加させることなどによって)、生じる産物(すなわち、エンドヌクレアーゼ)の翻訳を増強する修飾、及び/または細胞に導入されたRNAが自然免疫応答を誘発する可能性または程度を低下させる修飾を含む、1つまたは複数の種類の修飾を、細胞に導入されるエンドヌクレアーゼをコードするRNAに行うこともできる。
【0144】
上述などの修飾の組み合わせも同様に使用することができる。CRISPR/Cas9またはCRISPR/Cpf1の場合では、例えば、1つまたは複数の種類の修飾をガイドRNA(上記で例示したものを含む)に行うことができる、及び/または1つまたは複数の種類の修飾をCasエンドヌクレアーゼ(上記で例示したものを含む)をコードするRNAに行うことができる。
【0145】
実例としては、CRISPR/Cas9またはCRISPR/Cpf1システムで使用されるガイドRNA、または他のより小さなRNAを、化学的手段によって容易に合成することができ、下記で例示されているとおり、及び当技術分野で記載されているとおり、いくつかの修飾を容易に組み込むことができる。化学合成手順は絶えず拡大しているが、ポリヌクレオチド長さが約100ヌクレオチドを超えてかなり増大するにつれて、高速液体クロマトグラフィー(HPLC、これによりPAGEなどのゲルの使用が回避される)などの手順によるそのようなRNAの精製は、より困難になる傾向がある。比較的大きな長さの化学修飾RNAを生成するために使用され得るアプローチの1つは、2つ以上の分子を生成して、それらを一緒にライゲートさせることである。かなり長いRNA、例えば、Cas9エンドヌクレアーゼをコードするものは、酵素によってより容易に生成される。より少ない種類の修飾を酵素生成RNAで使用することができるが、例えば、さらに以下で記載するとおり、及び当技術分野で記載するとおり、安定性を増強する、自然免疫応答の可能性または程度を低下させる、及び/または他の特性を増強するために使用することができる修飾がなお存在し;新たな種類の修飾が定期的に開発されている。
【0146】
様々な種類の修飾、特に、しばしば比較的小さな化学合成RNAと共に使用されるものの実例としては、修飾は、糖の2’位で修飾された1つまたは複数のヌクレオチド、一部の態様では、2’-O-アルキル、2’-O-アルキル-O-アルキル、または2’-フルオロ-修飾ヌクレオチドを含み得る。一部の例では、RNA修飾には、ピリミジンのリボースでの2’-フルオロ、2’-アミノもしくは2’-O-メチル修飾、非塩基残基、またはRNAの3’末端にある反転塩基(inverted base)が含まれる。そのような修飾は、オリゴヌクレオチドにルーチン的に組み込まれ、これらのオリゴヌクレオチドは、所与の標的に対して2’-デオキシオリゴヌクレオチドよりも高いTm(すなわち、より高い標的結合親和性)を有することが示されている。
【0147】
いくつかのヌクレオチド及びヌクレオシド修飾は、組み込まれるオリゴヌクレオチドを天然オリゴヌクレオチドよりもヌクレアーゼ消化に対してより抵抗性にすることが示されている;これらの修飾オリゴは、非修飾オリゴヌクレオチドよりも長時間にわたって無傷で残存する。修飾オリゴヌクレオチドの具体例には、修飾骨格、例えば、ホスホロチオエート、ホスホトリエステル、メチルホスホネート、短鎖アルキルもしくはシクロアルキル糖間(intersugar)結合または短鎖ヘテロ原子もしくは複素環式糖間結合を含むものが含まれる。一部のオリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート骨格を有するオリゴヌクレオチド及びヘテロ原子骨格、特にCH2-NH-O-CH2、CH、-N(CH3)-O-CH2(メチレン(メチルイミノ)またはMMI骨格としても公知)、CH2-O-N(CH3)-CH2、CH2-N(CH3)-N(CH3)-CH2及びO-N(CH3)-CH2-CH2骨格(ここで、天然のホスホジエステル骨格は、O-P-O-CHとして表される);アミド骨格[De Mesmaeker et al.,Ace.Chem.Res.、28:366-374(1995)を参照されたい];モルホリノ骨格構造(Summerton及びWeller、米国特許第5,034,506号を参照されたい);ペプチド核酸(PNA)骨格(ここで、オリゴヌクレオチドのホスホジエステル骨格はポリアミド骨格で置き換えられ、ヌクレオチドは、ポリアミド骨格のアザ窒素原子に直接的または間接的に結合している。Nielsen et al.,Science 1991,254,1497を参照されたい)を有するものである。リン含有結合には、これに限定されないが、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、3’アルキレンホスホネート及びキラルホスホネートを含むメチル及び他のアルキルホスホネート、ホスフィネート、3’-アミノホスホラミデート及びアミノアルキルホスホラミデートを含むホスホラミデート、チオノホスホラミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、及び正常な3’-5’結合を有するボラノホスフェート、これらの2’-5’結合類似体、ならびにヌクレオシド単位の隣接対が3’-5’から5’-3’に、または2’-5’から5’-2’に結合している逆転極性(inverted polarity)を有するものが含まれる;米国特許第3,687,808号;同第4,469,863号;同第4,476,301号;同第5,023,243号;同第5,177,196号;同第5,188,897号;同第5,264,423号;同第5,276,019号;同第5,278,302号;同第5,286,717号;同第5,321,131号;同第5,399,676号;同第5,405,939号;同第5,453,496号;同第5,455,233号;同第5,466,677号;同第5,476,925号;同第5,519,126号;同第5,536,821号;同第5,541,306号;同第5,550,111号;同第5,563,253号;同第5,571,799号;同第5,587,361号;及び同第5,625,050号を参照されたい。
【0148】
モルホリノベースのオリゴマー化合物は、Braasch and David Corey,Biochemistry,41(14):4503-4510(2002);Genesis,Volume 30,Issue 3,(2001);Heasman,Dev.Biol.,243:209-214(2002);Nasevicius et al.,Nat.Genet.,26:216-220(2000);Lacerra et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,97:9591-9596(2000);及び1991年7月23日発行の米国特許第5,034,506号に記載されている。
【0149】
シクロヘキセニル核酸オリゴヌクレオチド模倣体は、Wang et al.,J.Am.Chem.Soc.,122:8595-8602(2000)に記載されている。
【0150】
リン原子をそこに含まない修飾オリゴヌクレオチド骨格は、短鎖アルキルまたはシクロアルキルヌクレオシド間結合、混合ヘテロ原子及びアルキルまたはシクロアルキルヌクレオシド間結合、または1つもしくは複数の短鎖ヘテロ原子もしくは複素環式ヌクレオシド間結合によって形成される骨格を有する。これらは、モルホリノ結合を有するもの(一部はヌクレオシドの糖部分から形成される);シロキサン骨格;スルフィド、スルホキシド及びスルホン骨格;ホルムアセチル及びチオホルムアセチル骨格;メチレンホルムアセチル及びチオホルムアセチル骨格;アルケン含有骨格;スルファメート骨格;メチレンイミノ及びメチレンヒドラジノ骨格;スルホネート及びスルホンアミド骨格;アミド骨格;ならびに混合N、O、S、及びCH2構成部分を有する他のものを含む;米国特許第5,034,506号;同第5,166,315号;同第5,185,444号;同第5,214,134号;同第5,216,141号;同第5,235,033号;同第5,264,562号;同第5,264,564号;同第5,405,938号;同第5,434,257号;同第5,466,677号;同第5,470,967号;同第5,489,677号;同第5,541,307号;同第5,561,225号;同第5,596,086号;同第5,602,240号;同第5,610,289号;同第5,602,240号;同第5,608,046号;同第5,610,289号;同第5,618,704号;同第5,623,070号;同第5,663,312号;同第5,633,360号;同第5,677,437号;及び同第5,677,439号を参照されたい。
【0151】
1つまたは複数の置換糖部分、例えば、2’位の次のいずれか:OH、SH、SCH3、F、OCN、OCH3OCH3、OCH3O(CH2)nCH3、O(CH2)nNH2、またはO(CH2)nCH3(ここで、nは、1~約10である);C1~C10低級アルキル、アルコキシアルコキシ、置換低級アルキル、アルカリールまたはアラルキル;Cl;Br;CN;CF3;OCF3;O-、S-、またはN-アルキル;O-、S-、またはN-アルケニル;SOCH3;SO2 CH3;ONO2;NO2;N3;NH2;ヘテロシクロアルキル;ヘテロシクロアルカリール;アミノアルキルアミノ;ポリアルキルアミノ;置換シリル;RNA切断基;レポーター基;インターカレーター;オリゴヌクレオチドの薬物動態特性を改善するための基;または同様の特性を有するオリゴヌクレオチド及び他の置換基の薬力学的特性を改善するための基も含まれ得る。一部の態様では、修飾には、2’-メトキシエトキシ(2’-O-CH2CH2OCH3、2’-O-(2-メトキシエチル)としても公知)(Martin et al,HeIv.Chim.Acta,1995,78,486)が含まれる。他の修飾には、2’-メトキシ(2’-O-CH3)、2’-プロポキシ(2’-OCH2CH2CH3)及び2’-フルオロ(2’-F)が含まれる。同様の修飾をまた、オリゴヌクレオチドの他の位置、特に3’末端ヌクレオチド上の糖の3’位、及び5’末端ヌクレオチドの5’位で行ってもよい。オリゴヌクレオチドはまた、ペントフラノシル基の代わりにシクロブチルなどの糖模倣体を有してもよい。
【0152】
一部の例では、糖及びヌクレオシド間結合の両方、すなわち、ヌクレオチド単位の骨格が、新規の基で置き換えられ得る。塩基単位は、適切な核酸標的化合物とのハイブリダイズのために維持され得る。そのようなオリゴマー化合物の1つである、優れたハイブリダイゼーション特性を有することが示されているオリゴヌクレオチド模倣体は、ペプチド核酸(PNA)と称される。PNA化合物では、オリゴヌクレオチドの糖-骨格は、アミド含有骨格、例えば、アミノエチルグリシン骨格と置き換えられ得る。ヌクレオ塩基は維持され、骨格のアミド部分のアザ窒素原子に直接的または間接的に結合し得る。PNA化合物の調製を教示している代表的な米国特許には、これに限定されないが、米国特許第5,539,082号;同第5,714,331号;及び同第5,719,262号が含まれる。PNA化合物のさらなる教示は、Nielsen et al,Science,254:1497-1500(1991)において見出すことができる。
【0153】
ガイドRNAはまた、加えて、または別法で、ヌクレオ塩基(多くの場合に当技術分野では単純に「塩基」と称される)修飾または置換を含み得る。本明細書で使用する場合、「非修飾」または「天然」ヌクレオ塩基には、アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、シトシン(C)、及びウラシル(U)が含まれる。修飾ヌクレオ塩基には、天然核酸でまれに、または一過性にのみ見出されるヌクレオ塩基、例えば、ヒポキサンチン、6-メチルアデニン、5-Meピリミジン、特に5-メチルシトシン(5-メチル-2’デオキシシトシンとも称され、多くの場合に当技術分野では5-Me-Cと称される)、5-ヒドロキシメチルシトシン(HMC)、グリコシルHMC及びゲントビオシルHMC、さらには合成ヌクレオ塩基、例えば、2-アミノアデニン、2-(メチルアミノ)アデニン、2-(イミダゾリルアルキル)アデニン、2-(アミノアルキルアミノ)アデニンまたは他のヘテロ置換アルキルアデニン、2-チオウラシル、2-チオチミン、5-ブロモウラシル、5-ヒドロキシメチルウラシル、8-アザグアニン、7-デアザグアニン、N6(6-アミノヘキシル)アデニン、及び2,6-ジアミノプリンが含まれる。Kornberg,A.,DNA Replication,W.H.Freeman & Co.,San Francisco,pp.75-77(1980);Gebeyehu et al.,Nucl.Acids Res.15:4513(1997)。当技術分野で公知の「ユニバーサル」塩基、例えばイノシンも含まれ得る。5-Me-C置換は核酸二重鎖の安定性を0.6~1.2℃上昇させることが示されており(Sanghvi,Y.S.,in Crooke,S.T.and Lebleu,B.,eds.,Antisense Research and Applications,CRC Press,Boca Raton,1993,pp.276-278)、塩基置換の態様である。
【0154】
修飾ヌクレオ塩基は、他の合成及び天然ヌクレオ塩基、例えば、5-メチルシトシン(5-me-C)、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、アデニン及びグアニンの6-メチル及び他のアルキル誘導体、アデニン及びグアニンの2-プロピル及び他のアルキル誘導体、2-チオウラシル、2-チオチミン及び2-チオシトシン、5-ハロウラシル及びシトシン、5-プロピニルウラシル及びシトシン、6-アゾウラシル、シトシン及びチミン、5-ウラシル(シュード-ウラシル)、4-チオウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシル及び他の8-置換アデニン及びグアニン、5-ハロ、特に5-ブロモ、5-トリフルオロメチル及び他の5-置換ウラシル及びシトシン、7-メチルグアニン及び7-メチルアデニン、8-アザグアニン及び8-アザアデニン、7-デアザグアニン及び7-デアザアデニン、ならびに3-デアザグアニン及び3-デアザアデニンを含み得る。
【0155】
さらに、ヌクレオ塩基は、米国特許第3,687,808号に開示されているもの、「The Concise Encyclopedia of Polymer Science And Engineering」、pages 858-859,Kroschwitz,J.I.,ed.John Wiley & Sons,1990に開示されているもの、Englisch et al.,Angewandle Chemie,International Edition’,1991,30,page 613によって開示されているもの、及びSanghvi,Y.S.,in Chapter 15,Antisense Research and Applications’,pages 289- 302,Crooke,S.T.and Lebleu,B.ea.,CRC Press,1993によって開示されているものを含み得る。これらのヌクレオ塩基のいくつかは、本開示のオリゴマー化合物の結合親和性を上昇させるために特に有用である。これらには、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジンならびにN-2、N-6及び0-6置換プリンが含まれ、2-アミノプロピルアデニン、5-プロピニルウラシル及び5-プロピニルシトシンを含む。5-メチルシトシン置換は、核酸二重鎖安定性を0.6~1.2℃まで上昇させることが示されており(Sanghvi,Y.S.,in Crooke,S.T.and Lebleu,B.,eds.,Antisense Research and Applications,CRC Press,Boca Raton,1993,pp.276-278)、より詳しくは2’-O-メトキシエチル糖修飾と組み合わせる場合も、塩基置換の態様である。修飾ヌクレオ塩基は、米国特許第3,687,808号、さらには、同第4,845,205号;同第5,130,302号;同第5,134,066号;同第5,175,273号;同第5,367,066号;同第5,432,272号;同第5,457,187号;同第5,459,255号;同第5,484,908号;同第5,502,177号;同第5,525,711号;同第5,552,540号;同第5,587,469号;同第5,596,091号;同第5,614,617号;同第5,681,941号;同第5,750,692号;同第5,763,588号;同第5,830,653号;同第6,005,096号;及び米国特許出願公開第2003/0158403号に記載されている。
【0156】
したがって、「修飾」という用語は、ガイドRNA、エンドヌクレアーゼ、またはガイドRNA及びエンドヌクレアーゼの両方に組み込まれる非天然糖、リン酸、または塩基に関する。所与のオリゴヌクレオチド内のすべての位置が均一に修飾されている必要はなく、実際には、上記の修飾のうちの1つより多くを、単一のオリゴヌクレオチドに、またはオリゴヌクレオチド内の単一のヌクレオシドにも組み込むことができる。
【0157】
ガイドRNA及び/またはエンドヌクレアーゼをコードするmRNA(またはDNA)は、オリゴヌクレオチドの活性、細胞分布、または細胞取り込みを増強する1つまたは複数の部分またはコンジュゲートに化学結合していてよい。そのような部分は、これに限定されないが、脂質部分、例えば、コレステロール部分[[Letsinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86:6553-6556(1989)];コール酸[Manoharan et al.,Bioorg.Med.Chem.Let.,4:1053-1060(1994)];チオエーテル、例えば、ヘキシル-S-トリチルチオール[Manoharan et al,Ann.N.Y.Acad.Sci.,660:306-309(1992)及びManoharan et al.,Bioorg.Med.Chem.Let.,3:2765-2770(1993)];チオコレステロール[Oberhauser et al.,Nucl.Acids Res.,20:533-538(1992)];脂肪族鎖、例えば、ドデカンジオールまたはウンデシル残基[Kabanov et al.,FEBS Lett.,259:327-330(1990)及びSvinarchuk et al.,Biochimie,75:49-54(1993)];リン脂質、例えば、ジ-ヘキサデシル-rac-グリセロールまたはトリエチルアンモニウム1,2-ジ-O-ヘキサデシル-rac-グリセロ-3-H-ホスホネート[Manoharan et al.,Tetrahedron Lett.,36:3651-3654(1995)及びShea et al.,Nucl.Acids Res.,18:3777-3783(1990)];ポリアミンまたはポリエチレングリコール鎖[Mancharan et al.,Nucleosides & Nucleotides,14:969-973(1995)];アダマンタン酢酸[Manoharan et al.,Tetrahedron Lett.,36:3651-3654(1995)];パルミチル部分[(Mishra et al.,Biochim.Biophys.Acta,1264:229-237(1995)];またはオクタデシルアミンもしくはヘキシルアミノ-カルボニル-tオキシコレステロール部分[Crooke et al.,J.Pharmacol.Exp.Ther.,277:923-937(1996)]を含む。また、米国特許第4,828,979号;同第4,948,882号;同第5,218,105号;同第5,525,465号;同第5,541,313号;同第5,545,730号;同第5,552,538号;同第5,578,717号;同第5,580,731号;同第5,580,731号;同第5,591,584号;同第5,109,124号;同第5,118,802号;同第5,138,045号;同第5,414,077号;同第5,486,603号;同第5,512,439号;同第5,578,718号;同第5,608,046号;同第4,587,044号;同第4,605,735号;同第4,667,025号;同第4,762,779号;同第4,789,737号;同第4,824,941号;同第4,835,263号;同第4,876,335号;同第4,904,582号;同第4,958,013号;同第5,082,830号;同第5,112,963号;同第5,214,136号;同第5,082,830号;同第5,112,963号;同第5,214,136号;同第5,245,022号;同第5,254,469号;同第5,258,506号;同第5,262,536号;同第5,272,250号;同第5,292,873号;同第5,317,098号;同第5,371,241号;同第5,391,723号;同第5,416,203号;同第5,451,463号;同第5,510,475号;同第5,512,667号;同第5,514,785号;同第5,565,552号;同第5,567,810号;同第5,574,142号;同第5,585,481号;同第5,587,371号;同第5,595,726号;同第5,597,696号;同第5,599,923号;同第5,599,928号及び同第5,688,941号を参照されたい。
【0158】
糖及び他の部分を、タンパク質及びヌクレオチドを含む複合体、例えば、カチオン性ポリソーム及びリポソームを特定の部位に配向するために使用することができる。例えば、肝細胞配向送達を、アシアロ糖タンパク質受容体(ASGPR)を介して媒介することができ;例えば、Hu,et al.,Protein Pept Lett.21(10):1025-30(2014)を参照されたい。この場合に使用される生体分子及び/またはその複合体を目的の特定の標的細胞に配向するために、当技術分野で公知である、及び定期的に開発される他のシステムを使用することができる。
【0159】
これらのターゲティング部分またはコンジュゲートは、官能基、例えば、第一級または第二級ヒドロキシル基に共有結合しているコンジュゲート基を含み得る。本開示のコンジュゲート基には、インターカレーター、レポーター分子、ポリアミン、ポリアミド、ポリエチレングリコール、ポリエーテル、オリゴマーの薬力学的特性を増強する基、及びオリゴマーの薬物動態特性を増強する基が含まれる。典型的なコンジュゲート基には、コレステロール、脂質、リン脂質、ビオチン、フェナジン、フォレート、フェナントリジン、アントラキノン、アクリジン、フルオレセイン、ローダミン、クマリン、及び色素が含まれる。薬力学的特性を増強する基には、本開示の文脈では、取り込みを改善する、分解に対する抵抗性を増強する、及び/または標的核酸との配列特異的ハイブリダイゼーションを強化する基が含まれる。薬物動態特性を増強する基には、本開示の文脈では、本開示の化合物の取り込み、分布、代謝または排出を改善する基が含まれる。代表的なコンジュゲート基は、1992年10月23日出願の国際特許出願PCT/US92/09196(WO1993007883として公開)、及び米国特許第6,287,860号に開示されている。コンジュゲート部分には、これに限定されないが、脂質部分、例えば、コレステロール部分、コール酸、チオエーテル、例えば、ヘキシル-5-トリチルチオール、チオコレステロール、脂肪族鎖、例えば、ドデカンジオールもしくはウンデシル残基、リン脂質、例えば、ジ-ヘキサデシル-rac-グリセロールもしくはトリエチルアンモニウムl,2-ジ-O-ヘキサデシル-rac-グリセロ-3-H-ホスホネート、ポリアミンもしくはポリエチレングリコール鎖、またはアダマンタン酢酸、パルミチル部分、またはオクタデシルアミンまたはヘキシルアミノ-カルボニル-オキシコレステロール部分が含まれる。例えば、米国特許第4,828,979号;同第4,948,882号;同第5,218,105号;同第5,525,465号;同第5,541,313号;同第5,545,730号;同第5,552,538号;同第5,578,717、5,580,731号;同第5,580,731号;同第5,591,584号;同第5,109,124号;同第5,118,802号;同第5,138,045号;同第5,414,077号;同第5,486,603号;同第5,512,439号;同第5,578,718号;同第5,608,046号;同第4,587,044号;同第4,605,735号;同第4,667,025号;同第4,762,779号;同第4,789,737号;同第4,824,941号;同第4,835,263号;同第4,876,335号;同第4,904,582号;同第4,958,013号;同第5,082,830号;同第5,112,963号;同第5,214,136号;同第5,082,830号;同第5,112,963号;同第5,214,136号;同第5,245,022号;同第5,254,469号;同第5,258,506号;同第5,262,536号;同第5,272,250号;同第5,292,873号;同第5,317,098号;同第5,371,241号;同第5,391,723号;同第5,416,203、5,451,463号;同第5,510,475号;同第5,512,667号;同第5,514,785号;同第5,565,552号;同第5,567,810号;同第5,574,142号;同第5,585,481号;同第5,587,371号;同第5,595,726号;同第5,597,696号;同第5,599,923号;同第5,599,928号及び同第5,688,941号を参照されたい。
【0160】
化学合成に対する適性が低く、典型的には酵素合成によって生成される比較的長いポリヌクレオチドはまた、様々な手段によって修飾することができる。そのような修飾には、例えば、ある種のヌクレオチド類似体の導入、分子の5’または3’末端での特定の配列または他の部分の組込み、及び他の修飾が含まれ得る。実例としては、Cas9をコードするmRNAは、約4kb長さであり、in vitro転写によって合成することができる。例えば、その翻訳または安定性を増加させるために(細胞での分解に対するその抵抗性を増大させることなどによって)、または多くの場合に外因性RNA、特に、Cas9をコードするものなどの比較的長いRNAの導入後に細胞内で観察される自然免疫応答を誘発するRNAの傾向を低下させるために、mRNAに対する修飾を適用することができる。
【0161】
多数のそのような修飾、例えばポリAテイル、5’キャップ類似体(例えば、アンチリバースキャップ類似体(ARCA)またはm7G(5’)ppp(5’)G(mCAP))、修飾された5’または3’非翻訳領域(UTR)、修飾塩基の使用(シュード-UTP、2-チオ-UTP、5-メチルシチジン-5’-トリホスフェート(5-メチル-CTP)またはN6-メチル-ATPなど)、または5’末端リン酸を除去するためのホスファターゼでの処理が当技術分野で記載されている。これらの及び他の修飾は当技術分野で公知であり、RNAの新たな修飾が定期的に開発されている。
【0162】
修飾RNAの多数の商業的供給者が存在し、例えば、TriLink Biotech、AxoLabs、Bio-Synthesis Inc.、Dharmacon及びその他多数が含まれる。TriLinkによって記載されているとおり、例えば、5-メチル-CTPを、望ましい特徴、例えば、ヌクレアーゼ安定性の増大、翻訳の増大または自然免疫受容体とin vitro転写RNAの相互作用の減少を付与するために使用することができる。以下で言及するKormann et al.及びWarren et al.による刊行物において説明されているとおり、5-メチルシチジン-5’-三リン酸(5-メチル-CTP)、N6-メチル-ATP、さらにはシュード-UTP及び2-チオ-UTPも、翻訳を増強しながら、培養及びin vivoにおいて自然免疫刺激を減少させることが示されている。
【0163】
in vivoで送達された化学修飾mRNAを、治療効果の改善を達成するために使用することができることが示されている;例えば、Kormann et al.,Nature Biotechnology 29,154-157(2011)を参照されたい。例えば、RNA分子の安定性を増大させるために、及び/または免疫原性を低下させるために、そのような修飾を使用することができる。化学修飾、例えば、シュード-U、N6-メチル-A、2-チオ-U及び5-メチル-Cを使用する場合、ウリジン及びシチジン残基のちょうど1/4をそれぞれ2-チオ-U及び5-メチル-Cで置換すると、マウスにおいてmRNAのtoll様受容体(TLR)媒介認識の有意な減少が生じることが見出された。自然免疫系の活性化を低下させることによって、これらの修飾を使用して、in vivoでのmRNAの安定性及び寿命を効果的に増大させることができる;例えば、Kormann et al.(前出)を参照されたい。
【0164】
自然免疫抗ウイルス応答をバイパスするように設計された修飾が組み込まれている合成メッセンジャーRNAの反復投与が分化ヒト細胞を多能性にリプログラミングし得ることも示されている。例えば、Warren,et al.,Cell Stem Cell,7(5):618-30(2010)を参照されたい。一次リプログラミングタンパク質(primary reprogramming protein)として作用するそのような修飾mRNAは、多数のヒト細胞型をリプログラミングする効率的な手段であり得る。そのような細胞は、誘導多能性幹細胞(iPSC)と称され、5-メチル-CTP、シュード-UTP及びアンチリバースキャップ類似体(ARCA)が組み込まれた酵素合成RNAを、細胞の抗ウイルス応答を効果的に回避するために使用することができることが見出された;例えば、Warren et al.(前出)を参照されたい。
【0165】
当技術分野に記載のポリヌクレオチドの他の修飾には、例えばポリAテイルの使用、5’キャップ類似体(例えば、m7G(5’)ppp(5’)G(mCAP))の付加、5’または3’非翻訳領域(UTR)の修飾、または5’末端リン酸を除去するためのホスファターゼでの処理が含まれ、新たなアプローチが定期的に開発されている。
【0166】
本明細書で使用するための修飾RNAの生成に適用可能ないくつかの組成物及び技法は、低分子干渉RNA(siRNA)を含むRNA干渉(RNAi)の修飾と関連して開発されている。siRNAは、in vivoで特定の攻撃を提示し、それというのも、mRNA干渉を介しての遺伝子サイレンシングに対するそれらの作用は一般に一過性であり、これを繰り返し投与することが必要であり得るためである。加えて、siRNAは、二本鎖RNA(dsRNA)であり、哺乳類細胞は、多くの場合にウイルス感染の副産物であるdsRNAを検出及び中和するために展開されてきた免疫応答を有する。したがって、哺乳類酵素、例えば、PKR(dsRNA-応答キナーゼ;dsRNA-responsive kinase)、及び潜在的に、細胞応答をdsRNAに媒介し得る潜在的にレチノイン酸誘導遺伝子I(RIG-I)、さらにそのような分子に応じてサイトカインの誘導を開始させ得るToll様受容体(例えばTLR3、TLR7及びTLR8)が存在する;例えば、Angart et al.,Pharmaceuticals(Basel)6(4):440-468(2013);Kanasty et al.,Molecular Therapy 20(3):513-524(2012);Burnett et al.,Biotechnol J.6(9):1130-46(2011);Judge and MacLachlan,Hum Gene Ther 19(2):111-24(2008)による概説;及びそこで引用されている参照文献を参照されたい。
【0167】
本明細書に記載のとおり、RNA安定性を増強するために、自然免疫応答を減少させるために、及び/またはヒト細胞へのポリヌクレオチドの導入に関して有用であり得る他の利点を達成するために、多数の様々な修飾が開発され、適用されている;例えば、Whitehead KA et al.,Annual Review of Chemical and Biomolecular Engineering,2:77-96(2011);Gaglione and Messere,Mini Rev Med Chem,10(7):578-95(2010);Chernolovskaya et al,Curr Opin Mol Ther.,12(2):158-67(2010);Deleavey et al.,Curr Protoc Nucleic Acid Chem Chapter 16:Unit 16.3(2009);Behlke,Oligonucleotides 18(4):305-19(2008);Fucini et al.,Nucleic Acid Ther 22(3):205-210(2012);Bremsen et al.,Front Genet 3:154(2012)による概説を参照されたい。
【0168】
上記のとおり、多数の修飾RNAの商業的供給者が存在し、そのうちの多くは、siRNAの有効性を改善するように設計された修飾を専門としている。様々なアプローチが、文献で報告された様々な所見に基づき提示されている。例えば、Kole,Nature Reviews Drug Discovery 11:125-140(2012)によって報告されているとおり、Dharmaconは、siRNAのヌクレアーゼ抵抗性を改善するために硫黄(ホスホロチオエート、PS)での非架橋酸素の置き換えが広範に使用されていることを述べている。リボースの2’位の修飾は、二重鎖安定性(Tm)を増大させながらヌクレオチド間リン酸結合のヌクレアーゼ抵抗性を改善することが報告されており、これはまた、免疫活性化からの防御を提供することも示されている。Soutschek et al.Nature 432:173-178(2004)によって報告されているとおり、中等度のPS骨格修飾と小さな十分に許容される2’-置換(2’-O-メチル、2’-フルオロ、2’-ヒドロ)との組み合わせは、in vivoで適用するために高度に安定なsiRNAと関連しており;Volkov,Oligonucleotides 19:191-202(2009)によって報告されているとおり、2’-O-メチル修飾は、安定性の改善において有効であると報告されている。自然免疫応答の誘導を減少させることに関しては、特異的な配列を2’-O-メチル、2’-フルオロ、2’-ヒドロで修飾することが、一般にサイレンシング活性を保存しながらTLR7/TLR8相互作用を減少させると報告されている;例えば、Judge et al.,Mol.Ther.13:494-505(2006);及びCekaite et al.,J.Mol.Biol.365:90-108(2007)を参照されたい。追加の修飾、例えば2-チオウラシル、シュードウラシル、5-メチルシトシン、5-メチルウラシル、及びN6-メチルアデノシンも、TLR3、TLR7、及びTLR8によって媒介される免疫作用を最小化することが示されている;例えば、Kariko,K.et al.,Immunity 23:165-175(2005)を参照されたい。
【0169】
当技術分野で公知で、市販もされているとおり、本明細書での使用のために、それらの送達及び/または細胞による取り込みを増強し得るいくつかのコンジュゲートを、ポリヌクレオチド、例えばRNAに適用することができ、例えば、コレステロール、トコフェロール及び葉酸、脂質、ペプチド、ポリマー、リンカー及びアプタマーが含まれる;例えば、Winkler,Ther.Deliv.4:791-809(2013)による概説、及びそこで引用されている参照文献を参照されたい。
【0170】
コドン最適化
目的の標的DNAを含有する細胞内での発現のために当技術分野で標準的な方法に従って、部位特異的ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをコドン最適化することができる。例えば、意図されている標的核酸がヒト細胞内にあれば、Cas9をコードするヒトコドン最適化ポリヌクレオチドが、Cas9ポリペプチドを生成するために使用されるように企図される。
【0171】
ゲノムターゲティング核酸及び部位特異的ポリペプチドの複合体
ゲノムターゲティング核酸は、部位特異的ポリペプチド(例えば、核酸ガイドされるヌクレアーゼ、例えばCas9)と相互作用し、それによって、複合体を形成する。ゲノムターゲティング核酸は、部位特異的ポリペプチドを標的核酸に配向させる。
【0172】
リボヌクレオタンパク質複合体(RNP)
部位特異的ポリペプチド及びゲノムターゲティング核酸をそれぞれ、細胞または患者に別々に投与することができる。他方で、部位特異的ポリペプチドを、tracrRNAと一緒に1つもしくは複数のガイドRNA、または1つもしくは複数のcrRNAと事前複合体化することができる。次いで、事前複合体化物質を細胞または患者に投与することができる。そのような事前複合体化物質は、リボ核タンパク質粒子(RNP)として公知である。RNP中の部位特異的ポリペプチドは、例えば、Cas9エンドヌクレアーゼまたはCpf1エンドヌクレアーゼであり得る。部位特異的ポリペプチドは、N末端、C末端、またはN末端及びC末端の両方で1つまたは複数の核移行シグナル(NLS)と隣接し得る。例えば、Cas9エンドヌクレアーゼは、2つのNLSと隣接し得て、1つのNLSはN末端に位置し、第2のNLSはC末端に位置する。NLSは、当技術分野で公知の任意のNLS、例えば、SV40 NLSであり得る。RNPにおけるゲノムターゲティング核酸と部位特異的ポリペプチドとの重量比は、1:1であり得る。例えば、RNPにおけるsgRNAとCas9エンドヌクレアーゼとの重量比は、1:1であり得る。
【0173】
システム成分をコードする核酸
本開示は、本開示のゲノムターゲティング核酸をコードするヌクレオチド配列、本開示の部位特異的ポリペプチド、及び/または本開示の方法の態様を実施するために必要な任意の核酸またはタンパク質分子を含む核酸を提供する。
【0174】
本開示のゲノムターゲティング核酸、本開示の部位特異的ポリペプチド、及び/または本開示の方法の態様を実施するために必要な任意の核酸またはタンパク質分子をコードする核酸はベクター(例えば、組換え発現ベクター)を含み得る。
【0175】
「ベクター」という用語は、結合している別の核酸を輸送することができる核酸分子を指す。ベクターの1種は「プラスミド」であり、これは追加の核酸セグメントをライゲートすることができる円形二本鎖DNAループを指す。別の種類のベクターはウイルスベクターであり、この場合、追加の核酸セグメントをウイルスゲノムにライゲートすることができる。ある種のベクターは、導入された宿主細胞中での自律複製が可能である(例えば、細菌複製開始点を有する細菌ベクター及びエピソーム哺乳類ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳類ベクター)を宿主細胞へ導入して宿主細胞のゲノムに組み込むと、それによってそれらは、宿主ゲノムと共に複製される。
【0176】
一部の例では、ベクターは、作動可能に連結された核酸の発現を指示することができる。そのようなベクターは、本明細書では「組換え発現ベクター」、またはより簡単に「発現ベクター」と称され、同等の機能を果たす。
【0177】
「作動可能に連結された」という用語は、目的のヌクレオチド配列が、ヌクレオチド配列の発現を可能にするように制御配列(複数可)に連結していることを意味する。「制御配列」という用語は、例えば、プロモーター、エンハンサー及び他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むことが意図されている。そのような制御配列は、当技術分野で周知であり、例えば、Goeddel;Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185,Academic Press,San Diego,CA(1990)に記載されている。制御配列には、宿主細胞の多くの種類においてヌクレオチド配列の構成的発現を指示するもの、及び特定の宿主細胞においてだけヌクレオチド配列の発現を指示するもの(例えば、組織特異的制御配列)が含まれる。発現ベクターの設計は、標的細胞の選択、所望の発現レベルなどの因子に依存し得ることは、当業者には分かるであろう。
【0178】
企図される発現ベクターには、これに限定されないが、ワクシニアウイルス、ポリオウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、SV40、単純ヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、レトロウイルス(例えば、マウス白血病ウイルス、脾臓壊死ウイルス)をベースとするウイルスベクター、及びレトロウイルス、例えば、ラウス肉腫ウイルス、ハーベイ肉腫ウイルス、トリ白血病ウイルス、レンチウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、骨髄増殖性肉腫ウイルス、及び乳癌ウイルスに由来するベクターならびに他の組換えベクターが含まれる。真核標的細胞で企図される他のベクターには、これに限定されないが、ベクターpXT1、pSG5、pSVK3、pBPV、pMSG、及びpSVLSV40(Pharmacia)が含まれる。宿主細胞と適合し得る限り、他のベクターを使用することができる。
【0179】
一部の例では、ベクターは、1つまたは複数の転写及び/または翻訳制御エレメントを含み得る。利用する宿主/ベクターシステムに応じて、構成的及び誘導性プロモーター、転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーターなどを含むいくつかの適切な転写及び翻訳制御要素のいずれかを、発現ベクターにおいて使用することができる。ベクターは、ウイルス配列またはCRISPR機構の成分または他のエレメントのいずれかを不活化する自己不活化型ベクターであり得る。
【0180】
適切な真核プロモーター(すなわち、真核細胞で機能性のプロモーター)の非限定的例には、サイトメガロウイルス(CMV)最初期に由来するもの、単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ、初期及び後期SV40、レトロウイルス由来の長末端反復(LTR)、ヒト伸長因子-1プロモーター(EF1)、ハイブリッド構築物(ニワトリβアクチンプロモーター(CAG)に融合したサイトメガロウイルス(CMV)エンハンサーを含む)、マウス幹細胞ウイルスプロモーター(MSCV)、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1遺伝子座プロモーター(PGK)及びマウスメタロチオネイン-Iが含まれる。
【0181】
Casエンドヌクレアーゼと関連して使用されるガイドRNAを含む小さなRNAを発現するために、例えばU6及びH1を含むRNAポリメラーゼIIIプロモーターなどの様々なプロモーターが有利であり得る。そのようなプロモーターの使用の記載及びそれを増強するためのパラメーターは、当分野で公知であり、追加の情報及びアプローチは定期的に記載されている;例えば、Ma,H.et al.,Molecular Therapy - Nucleic Acids 3,e161(2014)doi:10.1038/mtna.2014.12を参照されたい。
【0182】
発現ベクターはまた、翻訳開始及び転写終結のためのリボソーム結合部位を含有し得る。発現ベクターはまた、発現を増幅するための適切な配列を含み得る。発現ベクターはまた、部位特異的ポリペプチドに融合している非天然タグ(例えば、ヒスチジンタグ、血球凝集素タグ、緑色蛍光タンパク質など)をコードするヌクレオチド配列を含み得、したがって、融合タンパク質が生じている。
【0183】
プロモーターは、誘導プロモーター(例えば、ヒートショックプロモーター、テトラサイクリン制御プロモーター、ステロイド制御プロモーター、金属制御プロモーター、エストロゲン受容体制御プロモーターなど)であり得る。プロモーターは、構成的プロモーター(例えば、CMVプロモーター、UBCプロモーター)であり得る。場合によっては、プロモーターは、空間限定(spatially restricted)及び/または一過性限定(temporally restricted)プロモーター(例えば、組織特異的プロモーター、細胞型特異的プロモーターなど)であり得る。
【0184】
本開示のゲノムターゲティング核酸及び/または部位特異的ポリペプチドをコードする核酸を、細胞に送達するために送達ビヒクル内に、またはその表面にパッケージングすることができる。企図される送達ビヒクルには、これに限定されないが、ナノ球体、リポソーム、量子ドット、ナノ粒子、ポリエチレングリコール粒子、ヒドロゲル、及びミセルが含まれる。当技術分野で記載されているとおり、そのようなビヒクルと所望の細胞型または位置との優先的相互作用を増強するために、様々なターゲティング部分を使用することができる。
【0185】
細胞への本開示の複合体、ポリペプチド、及び核酸の導入は、ウイルスまたはバクテリオファージ感染、トランスフェクション、コンジュゲーション、プロトプラスト融合、リポフェクション、電気穿孔法、ヌクレオフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリエチレンイミン(PEI)媒介トランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、リポソーム媒介トランスフェクション、粒子ガン技術、リン酸カルシウム沈殿、直接マイクロ注射、ナノ粒子媒介核酸送達などによって行うことができる。
【0186】
治療アプローチ
本明細書で提供されるのは、疼痛を有する患者を治療するための方法である。そのような方法の1つの態様は、ex vivoでの細胞ベースの治療である。例えば、患者の末梢神経の生検が行われる。神経組織は、患者の皮膚または脚から分離され得る。次いで、末梢神経系の細胞(例えば、神経内のシュワン細胞または神経節内のサテライトグリア細胞などのニューロンまたはグリア細胞)は、生検材料から単離される。次いで、末梢神経系の細胞(例えば、神経内のシュワン細胞または神経節内のサテライトグリア細胞などのニューロンまたはグリア細胞)の染色体DNAは、本明細書に記載の材料及び方法を用いて編集され得る。最後に、末梢神経系の編集細胞(例えば、神経内のシュワン細胞または神経節内のサテライトグリア細胞などのニューロンまたはグリア細胞)は、患者に移植される。任意の起源または細胞の種類は、前駆細胞として使用され得る。
【0187】
そのような方法の別の態様は、ex vivoでの細胞ベースの治療である。例えば、患者特異的な人工多能性幹細胞(iPSC)が作製され得る。次いで、これらのiPSC細胞の染色体DNAは、本明細書に記載の材料及び方法を用いて編集され得る。次に、ゲノム編集されたiPSCは、末梢神経系の細胞(例えば、神経内のシュワン細胞または神経節内のサテライトグリア細胞などのニューロンまたはグリア細胞)に分化され得る。最後に、末梢神経系の分化した細胞(例えば、神経内のシュワン細胞または神経節内のサテライトグリア細胞などのニューロンまたはグリア細胞)は、患者に移植される。
【0188】
そのような方法のさらに別の態様は、ex vivoでの細胞ベースの治療である。例えば、間葉系幹細胞は、患者から単離され得、患者の骨髄または末梢血から単離され得る。次に、これらの間葉系幹細胞の染色体DNAは、本明細書に記載の材料及び方法を用いて編集され得る。次に、ゲノム編集された間葉系幹細胞は、末梢神経系の細胞(例えば、神経内のシュワン細胞または神経節内のサテライトグリア細胞などのニューロンまたはグリア細胞)に分化され得る。最後に、末梢神経系の分化した細胞(例えば、神経内のシュワン細胞または神経節内のサテライトグリア細胞などのニューロンまたはグリア細胞)は、患者に移植される。
【0189】
ex vivoでの細胞療法のアプローチの1つの利点は、投与前に治療薬の包括的な分析を行うことができることである。ヌクレアーゼベースの治療薬は、ある程度のオフターゲットの効果をもたらす可能性がある。ex vivoで遺伝子編集を行うことにより、移植前に編集された細胞集団を特徴付けることが可能になる。本開示は、もしあれば、オフターゲットの効果が、患者に対する最小のリスクと関連するゲノム位置にあり得ることを確実にするために、編集された細胞の全ゲノムを配列決定することを含む。さらに、クローン集団を含む特定の細胞の集団は、移植前に単離され得る。
【0190】
ex vivoでの細胞療法の別の利点は、他の初代細胞の供給源と比較した、iPSCにおける遺伝子改変に関する。iPSCは豊富で、細胞ベースの治療に必要とされる多数の細胞を得ることを容易にする。さらに、iPSCは、クローンの単離を行うのに理想的な細胞型である。これにより、生存率の低下を招くことなく、正確なゲノム修飾をスクリーニングすることができる。対照的に、グリア細胞のような他の初代細胞は、数継代の間だけ生存可能であり、クローン的に拡大することが困難である。したがって、疼痛の治療のためのiPSCの操作は、はるかに容易であり得、所望の遺伝子改変をするために必要とされる時間量を短縮し得る。
【0191】
方法はまた、in vivoベースの治療を含み得る。患者の細胞の染色体DNAは、本明細書に記載の材料及び方法を用いて編集される。いくつかの態様において、in vivoベースの治療における標的細胞は、末梢神経系のニューロンである。
【0192】
特定の細胞は、ex vivoでの処置及び療法のための魅力的な標的を提示するが、送達における有効性の増加は、そのような細胞への直接的なin vivoの送達を可能にし得る。理想的には、ターゲティング及び編集は、関連する細胞に指向される。他の細胞における切断は、特定の細胞及び/または発生段階においてのみ活性なプロモーターの使用によっても防止され得る。追加のプロモーターは、誘導性であり、したがって、ヌクレアーゼがプラスミドとして送達される場合は、一時的に制御され得る。送達されたRNA及びタンパク質が細胞内に留まる時間量もまた、半減期を変えるために、処置または添加されたドメインを用いて調整され得る。in vivoでの処置は、多くの処置工程を排除するが、より低い送達速度は、より高い編集速度を必要とし得る。in vivoでの治療は、ex vivoでの治療、ならびに既存の脳回路へのニューロン及びグリア細胞の生着及び生着後の、適切な統合からの問題及び損失を排除し得る。
【0193】
in vivoでの遺伝子治療の利点は、治療薬の製造及び投与が容易なことであり得る。同じ治療アプローチ及び治療は、例えば、同じまたは類似の遺伝子型または対立遺伝子を共有する多数の患者など、複数の患者を治療するために使用される可能性を有する。対照的に、ex vivoでの細胞療法は、典型的には、患者の自身の細胞を使用することを必要とし、それは単離され、操作され、そして同じ患者に戻される。
【0194】
ゲノム編集により細胞内のSCN10A遺伝子を編集するための細胞方法も本明細書に提供される。例えば、細胞は、患者または動物から単離され得る。次いで、本明細書に記載の材料及び方法を用いて、細胞の染色体DNAが編集され得る。
【0195】
本明細書で提供される方法は、細胞方法、またはex vivoでの方法もしくはin vivoでの方法のいずれであるかにかかわらず、SCN10A遺伝子またはSCN10A遺伝子の調節要素をコードする他のDNA配列の内またはその近傍に、1つ以上の挿入、欠失または突然変異を導入することにより、SCN10A遺伝子の発現を低減(ノックダウン)または排除(ノックアウト)することを含み得る。
【0196】
例えば、ノックダウンまたはノックアウトの戦略は、不正確なNHEJ修復経路に起因して生じる、ランダムな挿入または欠失(インデル)を導入することによって、SCN10A遺伝子内のリーディングフレームを破壊することを含み得る。これは、1つ以上のCRISPRエンドヌクレアーゼ及びgRNA(例えば、crRNA+tracrRNA、またはsgRNA)を用いて、SCN10A遺伝子内の1つの一本鎖切断もしくは二本鎖切断、または2つ以上のCRISPRエンドヌクレアーゼ及び2つ以上のsgRNAを用いて、SCN10A遺伝子内の2つ以上の一本鎖切断もしくは二本鎖切断を誘導することによって達成され得る。このアプローチは、SCN10A遺伝子に対して、sgRNAの開発及び最適化を必要とし得る。
【0197】
あるいは、ノックダウンまたはノックアウトの戦略はまた、SCN10A遺伝子またはSCN10A遺伝子の調節要素をコードする他のDNA配列の内またはその近傍に、1つ以上のセグメントの欠失も含み得る。この欠失の戦略は、SCN10A遺伝子内またはその近傍の2つの異なる部位に結合することができる、少なくとも一対のgRNA(例えば、crRNA+tracrRNA、またはsgRNA)、及び1つ以上のCRISPRエンドヌクレアーゼを必要とする。2つのgRNAで構成されたCRISPRエンドヌクレアーゼは、所望の位置で2つの二本鎖切断を誘導する。切断後、前記2つの末端は、平滑であるかオーバーハングを有するかにかかわらず、NHEJによって連結され得、介在セグメントの欠失をもたらす。NHEJの修復経路は、前記接合箇所において、挿入、欠失または突然変異を引き起こす可能性がある。
【0198】
上記のゲノム編集の戦略に加えて、別の戦略は、調節配列内で編集することによって、SCN10Aの発現、機能または活性を調節することを含む。
【0199】
上記の編集オプションに加えて、Cas9または同様のタンパク質は、編集のために同定され得る同じ標的部位、またはエフェクタードメインの範囲内のさらなる標的部位に、エフェクタードメインを標的化するために使用され得る。様々なクロマチン修飾酵素、メチラーゼまたはデメチラーゼは、標的遺伝子の発現を変えるために使用され得る。1つの可能性は、突然変異が望ましくない活性をもたらす場合に、SCN10Aタンパク質の発現を減少させることである。これらの種類のエピジェネティックの制御は、特に、それらが起こり得るオフターゲットの効果が限られているので、いくつかの利点を有する。
【0200】
多くの種類のゲノム標的部位は、コード配列及びスプライシング配列に加えて存在し得る。
【0201】
転写及び翻訳の調節は、細胞タンパク質またはヌクレオチドと相互作用する多数の異なるクラスの部位を意味する。転写因子または他のタンパク質のDNA結合部位は、その部位の役割を研究するために、突然変異または欠失の標的となることが多いが、それらは、また、遺伝子発現を変化させるためにターゲティングされ得る。部位は、非相同性末端結合NHEJまたは相同性配向型修復(HDR)による直接的なゲノム編集によって付加され得る。ゲノム配列決定、RNAの発現、及び転写因子結合のゲノムワイドな研究の使用の増加は、前記部位が発生または一時的な遺伝子調節につながる方法を同定するために、我々の能力を高めた。これらの制御システムは、直接的なものでも、複数のエンハンサーからの活性の統合を必要とし得る広範囲の協調的な制御を伴うものでもよい。転写因子は、通常6~12bp長の縮重DNA配列に結合する。個々の部位によって提供される低レベルの特異性は、複雑な相互作用及び規則が結合及び機能的な結果に関与していることを示唆している。縮重の少ない結合部位は、より単純な調節手段を提供し得る。人工転写因子は、ゲノム中のより少ない類似した配列を有し、オフターゲットの切断のために低い可能性を有する、より長い配列を特定するように設計され得る。これらのタイプの結合部位のいずれも、遺伝子調節または発現における変化を可能にするために、突然変異、欠失、または創製さえされ得る(Canver,M.C.etal.,Nature(2015))。
【0202】
これらの特徴を有する遺伝子制御領域の他のクラスは、マイクロRNA(miRNA)結合部位である。miRNAは、転写後の遺伝子調節において重要な役割を果たすノンコーディングRNAである。miRNAは、すべての哺乳動物のタンパク質をコードする遺伝子の30%の発現を調節し得る。二本鎖RNA(RNAi)による特異的かつ強力な遺伝子サイレンシング、さらに追加の小さな非コードRNAが発見された(Canver,M.C.et al.,Nature(2015))。遺伝子サイレンシングに重要な最大クラスの非コードRNAは、miRNAである。哺乳動物では、miRNAは、最初に長いRNA転写産物として転写され、別々の転写単位、タンパク質イントロンの一部、または他の転写産物であり得る。長い転写産物は、不完全に塩基対を形成したヘアピン構造を含む一次miRNA(pri-miRNA)と呼ばれる。これらのpri-miRNAは、Droshaを含む、核内のタンパク質複合体であるマイクロプロセッサによって、1つ以上のより短い前駆体miRNA(pre-miRNA)に切断され得る。
【0203】
pre-miRNAは、長さ約70ヌクレオチドの短いステムループであり、成熟した19~25ヌクレオチドのmiRNA:miRNA*二本鎖に運ばれる2-ヌクレオチドの3’オーバーハングを有する。より低い塩基対を形成する安定性を有するmiRNA鎖(ガイド鎖)は、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)にロードされ得る。パッセンジャー鎖(*印)は、機能され得るが、通常は分解される。成熟miRNAは、主に、3’非翻訳領域(UTR)内に見出される標的mRNAにおいて、部分的に相補的な配列モチーフにRISCをつなぎ、転写後の遺伝子サイレンシングを誘導する(Bartel,D.P.Cell 136,215-233(2009);Saj,A.&Lai,E.C.Curr Opin Genet Dev 21,504-510(2011))。
【0204】
miRNAは、発生、分化、細胞周期、及び成長制御において、そして哺乳動物及び他の多細胞生物における実質的にすべての生物学的経路において、重要であり得る。miRNAはまた、細胞周期の制御、アポトーシス、及び幹細胞の分化、造血、低酸素、筋肉発生、神経発生、インスリン分泌、コレステロール代謝、老化、ウイルス複製、及び免疫応答にも関与し得る。
【0205】
単一のmiRNAは、数百の異なるmRNA転写物をターゲティングし得るが、個々のmiRNA転写物は、多くの異なるmiRNAによってターゲティングされ得る。最新リリースのmiRBase(v.21)には、28645を超えるマイクロRNAがアノテーションされている。いくつかのmiRNAは、複数の遺伝子座によってコードされ得、そのうちのいくつかは、タンデムに同時転写されたクラスターから発現され得る。前記特徴により、複数の経路及びフィードバック制御を備えた複雑な制御ネットワークが可能になる。miRNAは、これらのフィードバック及び調節回路の不可欠な部分であり得、そしてタンパク質産生を制限内に維持することによって遺伝子発現を調節するのを助け得る(Herranz,H.&Cohen,S.M.Genes Dev 24,1339-1344(2010);Posadas,D.M.& Carthew,R.W.Curr Opin Genet Dev 27,1-6(2014))。
【0206】
miRNAはまた、異常なmiRNA発現に関連する多数のヒトの疾患において重要であり得る。この関連付けは、前記miRNAの制御経路の重要性を強調している。最近のmiRNA欠失の研究は、miRNAを免疫応答の調節と関連付けている(Stern-Ginossar,N.et al.,Science 317,376-381(2007))。
【0207】
miRNAはまた、癌と強い関連があり、異なる種類の癌において役割を果し得る。miRNAは、多くの腫瘍でダウンレギュレーションされることが分かっている。miRNAは、細胞周期制御やDNA損傷応答などの主要な癌関連経路の調節に重要となり得、したがって、診断に使用され得、臨床的にターゲティングされ得る。マイクロRNAは、すべてのマイクロRNAを枯渇させる実験が腫瘍血管形成を抑制するように、血管形成のバランスを微妙に制御し得る(Chen,S.et al.,Genes Dev 28,1054-1067(2014))。
【0208】
タンパク質をコードする遺伝子について示されているように、miRNA遺伝子はまた、癌に伴って起こるエピジェネティックな変化を受ける可能性がある。多くのmiRNA遺伝子座は、DNAメチル化による制御についてそれらの機会を増大させるCpGアイランドと関連付けさせ得る(Weber,B.,Stresemann,C.,Brueckner,B.& Lyko,F.Cell Cycle 6,1001-1005(2007))。大部分の研究は、エピジェネティックにサイレンスしたmiRNAを明らかにするために、クロマチン再構成薬を用いた治療を使用してきた。
【0209】
RNAサイレンシングにおけるそれらの役割に加えて、miRNAも翻訳を活性化し得る(Posadas,D.M.& Carthew,R.W.Curr Opin Genet Dev 27,1-6(2014))。miRNA部位をノックアウトすると、標的遺伝子の発現が減少し得るが、これらの部位を導入すると発現が増加し得る。
【0210】
個々のmiRNAは、結合特異性について重要であり得るシード配列(マイクロRNAの2~8塩基)を変異させることによって、最も効果的にノックアウトされ得る。この領域での切断、それに続くNHEJによる誤修復は、標的部位への結合を遮断することによって、miRNA機能を効果的に無効にし得る。miRNAは、パリンドローム配列に隣接する特別なループ領域の特異的な標的化によっても阻害され得る。触媒的に不活性なCas9も、shRNA発現を阻害するために使用され得る(Zhao,Y.et al.,Sci Rep 4,3943(2014))。miRNAをターゲティングすることに加えて、前記結合部位はまた、miRNAによるサイレンシングを防ぐためにターゲティングされ、突然変異させられ得る。
【0211】
本開示によれば、マイクロRNA(miRNA)またはそれらの結合部位のいずれも本発明の組成物に組み込まれ得る。
【0212】
組成物は、限定されるものではないが、配列番号632~4715に記載のマイクロRNAのいずれかの配列を含む領域、配列番号632~4715に記載のマイクロRNAの逆相補体、または配列番号632~4715に記載のマイクロRNAのいずれかのマイクロRNAアンチシード領域などの領域を有し得る。
【0213】
本開示の組成物は、1つ以上のマイクロRNA標的配列、マイクロRNA配列、またはマイクロRNAシードを含み得る。そのような配列は、米国特許出願公開第2005/0261218号及び米国特許出願公開第2005/0059005号に教示されているものなどの、任意の既知のマイクロRNAに対応し得る。非限定的な例として、ヒトゲノムにおける既知のマイクロRNA、それらの配列及びそれらの結合部位の配列は、配列番号632~4715に列挙されている。
【0214】
マイクロRNA配列は、「シード」配列、すなわち、成熟マイクロRNAの2~8位の領域内の配列を含み、この配列は、miRNA標的配列に対して完全なワトソン-クリックの相補性を有する。マイクロRNAシードは、成熟マイクロRNAの2~8位または2~7位を含み得る。いくつかの態様において、マイクロRNAシードは、7ヌクレオチド(例えば、成熟マイクロRNAの2~8ヌクレオチド)を含み得、対応するmiRNA標的におけるシード相補的部位は、1位のマイクロRNAとは反対側のアデニン(A)に隣接される。いくつかの態様において、マイクロRNAシードは、6ヌクレオチド(例えば、成熟マイクロRNAの2~7ヌクレオチド)を含み得、対応するmiRNA標的におけるシード相補的部位は、1位のマイクロRNAとは反対側のアデニン(A)に隣接される。例えば、Grimson A,Farh KK,Johnston WK,Garrett-Engele P,Lim LP,Bartel DP;Mol Cell.2007 Jul 6;27(1):91-105を参照されたい。マイクロRNAシードの塩基は、標的配列と完全に相補的である。
【0215】
マイクロRNA、マイクロRNA標的領域、ならびにそれらの発現パターン及び生物学における役割の同定が報告されている(Bonauer et al.,Curr Drug Targets 2010 11:943-949;Anand and Cheresh Curr Opin Hematol 2011 18:171-176;Contreras and Rao Leukemia 2012 26:404-413(2011 Dec 20.doi:10.1038/leu.2011.356);Bartel Cell 2009 136:215-233;Landgraf et al,Cell,2007 129:1401-1414;Gentner and Naldini,Tissue Antigens.2012 80:393-403)。
【0216】
例えば、前記組成物が肝臓に送達されることを意図されずにそれで終わる場合、次いで、肝臓に豊富に存在するマイクロRNAであるmiR-122は、miR-122の1つまたは複数の標的部位がその標的配列をコードするポリヌクレオチド中に操作される場合に、送達される配列の発現を阻害し得る。異なるマイクロRNAについての1つまたは複数の結合部位の導入は、寿命、安定性、及びタンパク質翻訳をさらに減少させるように操作され得、それ故にさらなる耐久性の層を提供する。
【0217】
本明細書で使用されるとき、用語「マイクロRNA部位」は、マイクロRNA標的部位もしくはマイクロRNA認識部位、またはマイクロRNAが結合または会合する任意のヌクレオチド配列のことをいう。「結合」は、伝統的なワトソン-クリックのハイブリダイゼーション法則に従ってもよいし、またはマイクロRNAとマイクロRNA部位またはその近傍の標的配列との任意の安定な会合を反映してもよいことを理解されたい。
【0218】
逆に、本開示の組成物の目的のために、マイクロRNA結合部位は、特定の組織におけるタンパク質発現を増加させるために、それらが天然に存在する配列から設計され得る(すなわち、そこから除去され得る)。
【0219】
具体的には、マイクロRNAは、抗原提示細胞(APC)(例えば、樹状細胞及びマクロファージ)、マクロファージ、単球、Bリンパ球、Tリンパ球、顆粒球、ナチュラルキラー細胞などの免疫細胞(造血細胞ともいう)において、差次的に発現されることが知られている。免疫細胞特異的なマイクロRNAは、免疫原性、自己免疫、感染に対する免疫応答、炎症、ならびに遺伝子治療及び組織/臓器移植後の望ましくない免疫応答に関与している。免疫細胞特異的なマイクロRNAはまた、造血細胞(免疫細胞)の発生、増殖、分化及びアポトーシスの多くの局面を調節する。例えば、miR-142及びmiR-146は、免疫細胞において排他的に発現され、特に、骨髄性樹状細胞において豊富に発現される。本開示のポリペプチドの3’-UTRへのmiR-142結合部位の導入は、miR-142媒介mRNA分解を介して抗原提示細胞における遺伝子発現を選択的に抑制し得、専門APC(例えば、樹状細胞)における抗原提示を制限し、それにより、遺伝子送達後の抗原媒介性免疫応答を妨げる(Annoni A et al.,blood,2009,114,5152-5161を参照されたい。)。
【0220】
1つの例において、免疫細胞、特に、抗原提示細胞において発現されることが知られているマイクロRNA結合部位は、マイクロRNA媒介性のRNA分解を介して、APCにおけるポリヌクレオチドの発現を抑制するために、ポリヌクレオチドに操作され、抗原媒介性免疫応答を抑制し得、一方、ポリヌクレオチドの発現は、免疫細胞特異的マイクロRNAが発現されない非免疫細胞において維持される。
【0221】
様々な癌細胞/組織及び他の疾患におけるマイクロRNAの差次的発現を概説するために、多くのマイクロRNA発現の研究が行われており、当該分野において記載されている。いくつかのマイクロRNAは、特定の癌細胞において異常に過剰発現され、他のものは低発現される。例えば、マイクロRNAは、癌細胞において差次的に発現される(WO2008/154098、US2013/0059015、US2013/0042333、WO2011/157294);癌幹細胞(US2012/0053224);膵臓癌及び疾患(US2009/0131348、US2011/0171646、US2010/0286232、US8389210);喘息及び炎症(US8415096);前立腺癌(US2013/0053264);肝細胞癌(WO2012/151212、US2012/0329672、WO2008/054828、US8252538);肺癌細胞(WO2011/076143、WO2013/033640、WO2009/070653、US2010/0323357);皮膚T細胞リンパ腫(WO2013/011378);結腸直腸癌細胞(WO2011/0281756、WO2011/076142);癌陽性リンパ節(WO2009/100430、US2009/0263803);鼻咽頭癌(EP2112235);慢性閉塞性肺疾患(US2012/0264626、US2013/0053263)、甲状腺癌(WO2013/066678);卵巣癌細胞(US2012/0309645、WO2011/095623);乳癌細胞(WO2008/154098、WO2007/081740、US2012/0214699)、白血病及びリンパ腫(WO2008/073915、US2009/0092974、US2012/036081、US2012/0283310、WO2010/018563)。
【0222】
マイクロRNA配列、ならびに標的組織及び/または細胞の非限定的な例は、配列番号632~4715に開示されている。
【0223】
ゲノム工学戦略
いくつかの態様において、本開示の方法は、一方または両方の対立遺伝子を編集することを含み得る。対立遺伝子(複数可)を改変するための遺伝子編集は、標的遺伝子または遺伝子産物を恒久的に改変するという利点を有する。
【0224】
本開示のex vivoでの方法の工程は、ゲノム工学を用いて、患者から単離された末梢神経系の細胞(例えば、神経内のシュワン細胞または神経節内のサテライトグリア細胞などのニューロンまたはグリア細胞)を編集することを含み得る。あるいは、本開示のex vivoでの方法の工程は、患者特異的なiPSCまたは間葉系幹細胞を編集することを含み得る。同様に、本開示のin vivoでの方法の工程は、ゲノム工学を用いて、疼痛を患う患者の細胞を編集することを含む。同様に、本開示の細胞方法における工程は、ゲノム工学によって、ヒト細胞におけるSCN10A遺伝子を編集することを含み得る。
【0225】
任意のCRISPRエンドヌクレアーゼが本開示の方法において使用され得、各CRISPRエンドヌクレアーゼは、それ自体の関連するPAMを有し、これは、疾患特異的であってもなくてもよい。
【0226】
例えば、SCN10A遺伝子の発現は、不正確なNHEJ修復経路に起因して生じるランダムな挿入または欠失(インデル)を導入することによって、破壊または排除され得る。標的領域は、SCN10A遺伝子のコード配列(すなわち、エキソン)であってもよい。遺伝子のコード配列へのヌクレオチドの挿入または欠失は、通常の3文字コドンパターンが乱される「フレームシフト」を引き起こす可能性がある。このようにして、遺伝子発現、ひいてはタンパク質産生は、減少または排除され得る。このアプローチはまた、配列の変化がSCN10A遺伝子の発現を妨害し得るSCN10A遺伝子の任意のイントロン、イントロン:エキソン接合部、または調節DNAエレメントをターゲティングするためにも使用され得る。
【0227】
別の例として、NHEJはまた、直接的に、またはいくつかの位置をターゲティングする1つのgRNAまたはいくつかのgRNAによる切断を通して、スプライスドナーまたはアクセプター部位を変更することによってのいずれかで、遺伝子のセグメントを欠失させるために使用され得る。これは、小さなランダムインデルが標的遺伝子をノックアウトするのに非効率的である場合に役立ち得る。この種の欠失には、一対のgRNAが使用されてきた。
【0228】
ドナーが存在しない場合、DNA切断からの末端または異なる切断からの末端は、DNA末端が接合部でほとんどまたは全く塩基対合なしに接合される、いくつかの非相同修復経路を用いて連結され得る。正規のNHEJに加えて、alt-NHEJなどの同様の修復メカニズムがある。2つの切れ目がある場合は、間にあるセグメントは、削除または反転され得る。NHEJの修復経路は、前記ジョイントで挿入、欠失または突然変異を引き起こす可能性がある。
【0229】
NHEJはまた、相同性非依存的な標的の組込みをもたらし得る。例えば、ドナーのプラスミド上のヌクレアーゼ標的部位の包含は、ドナー及び染色体の両方のin vivoでのヌクレアーゼ切断後の、導入遺伝子の染色体二本鎖切断への組込みを促進し得る(Cristea.,Biotechnol Bioeng.2013 Mar;110(3):871-80)。NHEJは、ヌクレアーゼ切断後に、15kbの誘導性遺伝子発現カセットをヒト細胞株の規定の遺伝子座に挿入するために使用された。(例えば、Maresca,M.,Lin,V.G.,Guo,N.&Yang,Y.,Genome Res 23,539-546(2013);Cristea et al.Biotechnology and Bioengineering 2013;Suzuki et al.Nature,540,144-149(2016)を参照されたい。)。組み込まれた配列は、SCN10A遺伝子のリーディングフレームを破壊するか、または前記遺伝子の構造を変え得る。
【0230】
さらなる代替として、相同性配向型修復(HDR)もまた、遺伝子をノックアウトするかまたは遺伝子機能を改変するために使用され得る。例えば、HDRノックアウトの戦略は、SCN10A遺伝子に非機能的または無関係な配列を挿入することによって、SCN10A遺伝子の構造または機能を破壊することを含み得る。これは、細胞的なDSB応答を相同性配向型修復に指向するために、外因的に導入されたドナーのDNA鋳型(ドナーのDNA鋳型は、短い一本鎖オリゴヌクレオチド、短い二本鎖オリゴヌクレオチド、長い一本鎖または二本鎖DNA分子であり得る。)の存在下で、1つ以上のCRISPRエンドヌクレアーゼ及び2つ以上のgRNAを有する目的の遺伝子において、1つ以上のCRISPRエンドヌクレアーゼ及びgRNA(例えば、crRNA+tracrRNA、またはsgRNA)、または2つ以上の一本鎖切断もしくは二本鎖切断を用いて、目的の遺伝子において、一本鎖切断または二本鎖切断を誘導することによって達成され得る。このアプローチは、SCN10A遺伝子についてgRNA及びドナーのDNA分子の開発及び最適化を必要とし得る。
【0231】
相同性配向型修復(HDR)は、本質的に、DSB修復中に供給された相同DNA配列を鋳型として使用する、エラーのないメカニズムである。HDRの速度は、突然変異と切断部位との間の距離の関数であるので、重複または最も近い標的部位を選択することが重要である。鋳型は、相同領域に隣接する追加の配列を含み得、またはゲノム配列とは異なる配列を含み得、したがって配列編集が可能になる。
【0232】
最も一般的な形態のHDRは、相同組換えである。一本鎖アニーリング及び代替HDRを含むHDRについて、さらなる経路がある。ゲノム工学のツールにより、研究者は、細胞相同組換え経路を操作して、ゲノムに部位特異的修飾を作り出すことができる。細胞は、トランスで提供される合成ドナー分子を用いて、二本鎖切断を修復し得ることが見出された。したがって、特定の突然変異の近くに二本鎖切断を導入し、適切なドナーを提供することによって、標的化された変化がゲノムにおいてなされ得る。特異的な切断は、同種のドナーのみを受けた106個の細胞において、HDRの速度を1の速度よりも1,000倍以上増加させる。特定のヌクレオチドにおける相同性配向型修復(HDR)の速度は、切断部位までの距離の関数であるので、重複または最も近い標的部位を選択することが重要である。インサイチューでの編集は、残りのゲノムを混乱させないままにするので、遺伝子編集は、遺伝子付加よりも有利である。
【0233】
HDRによる編集のために供給されるドナーは著しく変化するが、ゲノムDNAへのアニーリングを可能にするために、小さいまたは大きい隣接相同性アームを有する意図された配列を含み得る。導入された遺伝的変化に隣接する相同性領域は、30bp以下、またはプロモーター、cDNAなどを含み得るマルチキロベースのカセットと同じ大きさであり得る。一本鎖及び二本鎖オリゴヌクレオチドのドナーの両方が使用されてきた。より長いssDNAもまた生成されそして使用され得るが、これらのオリゴヌクレオチドは、100nt未満から数kbを超えるまでのサイズの範囲である。PCRアンプリコン、プラスミド、及びミニサークルを含む二本鎖のドナーが使用され得る。一般に、AAVベクターは、ドナーの鋳型の送達の非常に有効な手段であり得るが、個々のドナーに対するパッケージングの限界は、<5kbである。ドナーの活発な転写は、3倍HDRを増加させ、プロモーターの包含が変換を増加させるかもしれないことを示している。逆に、ドナーのCpGのメチル化は、遺伝子発現及びHDRを減少させた。
【0234】
Cas9のような野生型エンドヌクレアーゼに加えて、一方または他方のヌクレアーゼドメインが不活性化されて、1つのDNA鎖のみが切断されるニッカーゼ変異体が存在する。HDRは、個々のCasニッカーゼから、または標的領域に隣接する一対のニッカーゼを用いて指示され得る。ドナーは、一本鎖、ニックの入った、またはdsDNAであり得る。
【0235】
ドナーのDNAは、ヌクレアーゼと共に、または種々の異なる方法により、例えば、トランスフェクション、ナノ粒子、マイクロインジェクション、もしくはウイルス形質導入により独立して供給され得る。HDRに対するドナーの利用可能性を高めるために、一連のテザリングの選択肢が提案されている。例には、ドナーをヌクレアーゼに結合すること、近くに結合するDNA結合タンパク質に結合すること、またはDNA末端結合もしくは修復に関与するタンパク質に結合することが含まれる。
【0236】
修復経路の選択は、細胞周期に影響を与えるものなどの多くの培養条件によって、またはDNA修復及び関連タンパク質の標的化によって導かれ得る。例えば、HDRを増加させるために、KU70、KU80またはDNAリガーゼIVなどの重要なNHEJ分子が抑制され得る。
【0237】
NHEJまたはHDRによるゲノム編集に加えて、NHEJ経路及びHDRの両方を使用する部位特異的な遺伝子挿入が行われてきた。組み合わせアプローチは、おそらくイントロン/エキソンの境界を含む特定の状況において、適用可能であり得る。NHEJは、イントロンでのライゲーションに効果的であることが証明され得るが、エラーのないHDRは、コード領域でより適し得る。
【0238】
SCN10A遺伝子は、表3に示すように、多数のエキソンを含む。リーディングフレームを破壊し、最終的に異常なSCN10Aタンパク質活性を排除する1つ以上のインデルを作製するために、これらのエキソンまたは近くのイントロンのうちの任意の1つ以上がターゲティングされ得る。
【0239】
いくつかの態様において、本方法は、不要な配列に隣接する位置で遺伝子を2回切断することによって欠失を生じるgRNA対を提供し得る。この配列は、1つ以上のエキソン、イントロン、イントロン:エキソン接合部、SCN10A遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列、またはそれらの組み合わせを含み得る。切断は、それぞれがゲノム内にDSBを作る一対のDNAエンドヌクレアーゼによって、または一緒になって、ゲノム内にDSBを作る複数のニッカーゼによって達成され得る。
【0240】
あるいは、本方法は、コード配列またはスプライシング配列内に、1つの二本鎖切断を作製するための1つのgRNAを提供し得る。二本鎖切断は、単一のDNAエンドヌクレアーゼ、または一緒にゲノム中にDSBを作る複数のニッカーゼによって作製され得る。
【0241】
スプライシングドナー及びアクセプターは、一般に、隣接するイントロンの100塩基対以内にある。いくつかの例では、方法は、対象となる各エキソン/イントロン接合部に対して、約+/-100~3100bpを切断するgRNAを提供し得る。
【0242】
任意のゲノム編集戦略について、遺伝子編集は、配列決定またはPCR解析によって確認され得る。
【0243】
標的配列の選択
特定の参照遺伝子座に対する5’境界及び/または3’境界の位置のシフトは、本明細書でさらに説明及び図示されるように、編集のために選択されたエンドヌクレアーゼシステムに部分的に依存する、遺伝子編集の特定の適用を容易にするかまたは高めるために使用され得る。
【0244】
このような標的配列選択の非限定的な第一の例において、多くのエンドヌクレアーゼシステムは、CRISPR TypeIIまたはType Vエンドヌクレアーゼの場合において、DNA切断部位に隣接する特定の位置におけるPAM配列モチーフの必要性などの切断のために、潜在的な標的部位の初期選択を導き得る規則または基準を有する。
【0245】
標的配列の選択または最適化の別の非限定的な例において、標的配列及び遺伝子編集のエンドヌクレアーゼの特定の組み合わせについて、オフターゲット活性の頻度(すなわち、選択された標的配列以外の部位で生じるDSBの頻度)は、オンターゲット活性の頻度と比較して評価され得る。場合によっては、所望の遺伝子座で正しく編集された細胞は、他の細胞と比較して、選択的な利点を有することがある。選択的な利点の例示的であるが非限定的な例としては、複製速度の向上、持続性、特定の条件に対する耐性、患者への導入後のin vivoでの生着の成功率または持続性の向上などの属性の獲得、及びそのような細胞の維持または増加した数もしくは生存率に関連する他の属性が挙げられる。他の場合では、所望の遺伝子座で正しく編集された細胞は、正しく編集された細胞を同定、分類、または選択するために用いられる1つ以上のスクリーニング方法によって、積極的に選択され得る。選択的な利点及び指向的選択方法の両方とも、変化に関連した表現型が利用され得る。場合によっては、意図された細胞集団を選択または精製するために使用される、新しい表現型を作製する第2の改変を作製するために、細胞は、2回以上編集され得る。そのような第2の修飾は、選択可能またはスクリーニング可能なマーカーの発現を可能にする、第2のgRNAを付加することによって作製され得る。場合によっては、cDNA及び選択マーカーを含むDNA断片を用いて、細胞は、所望の遺伝子座で正しく編集され得る。
【0246】
任意の選択的な利点が適用可能であるか、または任意の有向選択が特定の場合に適用されるべきかにかかわらず、標的の配列選択はまた、適用の有効性を高めるため及び/または所望の標的以外の部位で、望ましくない改変の可能性を減少させるために、オフターゲットの周波数の考慮によって導かれ得る。本明細書及び当該技術分野でさらに説明され例示されるように、オフターゲット活性の発生は、標的部位と様々なオフターゲット部位との間の類似性及び非類似性、ならびに使用される特定のエンドヌクレアーゼを含む多数の要因によって影響され得る。オフターゲット活性の予測を支援するバイオインフォマティクスのツールが利用可能であり、そして多くの場合、そのようなツールは、オフターゲット活性の可能性が最も高い部位を同定するためにも使用され得、次いで、これを実験設定で評価して、オフターゲット活性対オンターゲット活性の相対頻度を評価することができ、それにより、より高い相対的オンターゲット活性を有する配列の選択が可能になる。そのような技術の例示的な例は、本明細書に提供されており、他のものは当該技術分野において公知である。
【0247】
標的配列の選択の別の態様は、相同組換えの事象に関する。相同性領域を共有する配列は、介在配列の欠失をもたらす相同組換え事象の焦点として役立ち得る。そのような組換えの事象は、染色体及び他のDNA配列の通常の複製の過程の間に、また、DNA配列が合成されるその他の時間、例えば、二本鎖切断(DSB)の修復の場合のように、通常の細胞複製サイクルの間に定期的に起こるが、種々の事象(紫外線や他のDNA破壊の誘発物質など)の発生、または特定の薬剤の存在(様々な化学的誘発物質など)によって増強され得る。多くのそのような誘発物質は、DSBをゲノム中に無差別に発生させ、また、DSBは、正常細胞において定期的に誘導されそして修復され得る。修復中に、元の配列は、完全な忠実度で再構築され得るが、場合によっては、小さな挿入または欠失(「インデル」という。)がDSB部位に導入される。
【0248】
また、DSBは、本明細書に記載のエンドヌクレアーゼシステムの場合のように、特定の位置で特異的に誘導され得、これは選択された染色体位置に指向性または優先的な遺伝子改変事象を引き起こすために使用され得る。相同配列がDNA修復(ならびに複製)の状況において組換えを受ける傾向は、多くの状況において利用され得て、それは、「ドナー」のポリヌクレオチドの使用により提供される目的の配列を所望の染色体位置に挿入するために、相同性配向型修復が使用されるCRISPRのような遺伝子編集システムの一つの応用の基礎である。
【0249】
わずか10塩基対以下を含み得る「ミクロ相同性」の小領域であり得る、特定の配列間の相同性領域もまた、所望の欠失をもたらすために使用され得る。例えば、単一のDSBは、近くの配列とミクロ相同性を示す部位に導入され得る。そのようなDSBの通常の修復過程において、高い頻度で起こる結果は、組換えがDSB及び付随する細胞修復過程によって促進される結果として、介在配列の欠失である。
【0250】
しかしながら、いくつかの状況において、相同性領域内の標的配列の選択はまた、遺伝子融合を含むはるかに大きな欠失(欠失がコード領域にある場合)を生じさせる可能性があり、これは、特定の状況を考えると望まれる場合と望まない場合とがある。
【0251】
本明細書に提供される実施例はさらに、SCN10Aタンパク質活性の低下または排除をもたらす挿入、欠失または突然変異を誘導するように設計された、DSBの作製のための様々な標的領域の選択、ならびにオンターゲットの事象に対してオフターゲットの事象を最小限に抑えるように設計されているそのような領域内の特定の標的配列の選択を例示する。
【0252】
ヒト細胞
本明細書に記載及び例示されるように、SCN10Aに関連する疼痛または任意の障害を改善するために、遺伝子編集の主な標的はヒト細胞である。例えば、ex vivoでの方法において、ヒト細胞は、体細胞であり得、それは記載の技術を用いて改変された後、分化した細胞、例えば、末梢神経系のニューロンまたは前駆細胞を生じ得る。例えば、in vivoでの方法において、ヒト細胞は、末梢神経系のニューロン、または他の罹患器官由来の細胞であり得る。
【0253】
必要としている患者に由来し、したがって既に完全に一致している自己細胞において遺伝子編集を行うことによって、前記患者に安全に再導入され得る細胞を生成すること、及び前記患者の疾患に関連する1つ以上の臨床状態を改善するのに有効であろう細胞集団を効果的に生じさせることが可能である。
【0254】
幹細胞は、増殖することができ、そしてより多くの前駆細胞を生じさせることができ、これらは、次に、分化したまたは分化可能な娘細胞を生じさせ得る多数の母細胞を生成する能力を有する。娘細胞自体を増殖させ、続いて、1つ以上の成熟細胞型に分化する子孫を産生させる一方で、親の発生能を有する1つ以上の細胞を保持することもできる。次いで、用語「幹細胞」は、特定の状況下で、より特殊化されたまたは分化した表現型へと分化する能力または可能性を有し、ある状況下で、実質的に分化することなく増殖する能力を保持する細胞のことをいう。1つの態様において、用語前駆細胞または幹細胞は、その子孫(descendant)(子孫(progeny))が、例えば、胚細胞及び組織の漸進的多様化において生じるように、例えば、完全に個々の特徴を獲得することによる分化によって、多くの場合異なる方向に特化する一般化した母細胞のことをいう。細胞分化は、典型的には多くの細胞分裂を通して起こる複雑な過程である。分化細胞は、それ自体が多能性細胞に由来するなど、多能性細胞に由来し得る。これらの多分化能性細胞のそれぞれは幹細胞と見なされ得るが、それぞれが生じ得る細胞型の範囲はかなり異なり得る。いくつかの分化細胞はまた、より大きな発生可能性の細胞を生じさせる能力を有する。そのような能力は、天然のものでもよく、または様々な因子による治療の際に人工的に誘発されてもよい。多くの生物学的な事例において、幹細胞はまた、それらが1つ以上の異なる細胞型の子孫を産生し得るので「多能性」であり得るが、これは「幹細胞性」に必要とされない。
【0255】
自己複製は、幹細胞の別の重要な態様であり得る。理論的には、自己複製は、2つの主要なメカニズムのいずれかによって発生し得る。幹細胞は、一方の娘は幹状態を保持し、他方の娘はいくつかの異なる他の特定の機能及び表現型を発現することを伴い、非対称的に分裂し得る。あるいは、集団内のいくつかの幹細胞は、対称的に2つの幹に分裂し得、したがって、集団内のいくつかの幹細胞を全体として維持しながら、集団内の他の細胞は、分化した子孫のみを生じさせる。一般に、「前駆細胞」は、より原始的な(すなわち、完全に分化した細胞よりも、発生経路または進行に沿ったより早い段階にある。)細胞表現型を有する。多くの場合、前駆細胞はまた、有意なまたは非常に高い増殖能を有する。前駆細胞は、発生経路及び前記細胞が発生し分化する環境に応じて、複数の異なる分化細胞型または単一の分化細胞型を生じさせ得る。
【0256】
細胞の個体発生の状況において、形容詞「分化した」または「分化している」は、相対的な用語である。「分化細胞」は、それが比較されている細胞よりも発生経路に沿ってさらに進行した細胞である。したがって、幹細胞は、系統を限定した前駆細胞(神経前駆細胞など)に分化することができ、前記経路のさらに下流の他の種類の前駆細胞(神経前駆細胞など)に分化し、次いで、特定の組織型において特徴的な役割を果たし、さらに増殖する能力を保持してもしなくてもよい、神経細胞のような最終段階の分化した細胞へ分化し得る。
【0257】
人工多能性幹細胞
本明細書に記載の遺伝子操作されたヒト細胞は、人工多能性幹細胞(iPSC)であり得る。iPSCを用いることの利点は、前記細胞が、前駆細胞が投与されるのと同じ対象に由来し得ることである。すなわち、体細胞は、対象から得られ、人工多能性幹細胞に再プログラム化され、次いで、前記対象に投与されるべき前駆細胞(例えば、自己細胞)に再分化され得る。前駆体は、本質的に自家供給源に由来するので、生着拒絶またはアレルギー反応の危険性は、他の対象または対象群由来の細胞の使用と比較して、減少させ得る。さらに、iPSCの使用は、胚供給源から得られた細胞の必要性を否定する。したがって、1つの態様において、開示された方法で使用される幹細胞は、胚性幹細胞ではない。
【0258】
分化は、一般に生理学的状況下では不可逆的であるが、体細胞をiPSCに再プログラム化するためのいくつかの方法が最近開発された。例示的な方法は、当業者に知られており、以下に簡単に説明されている。
【0259】
用語「再プログラミング」は、分化細胞(例えば、体細胞)の分化状態を変化させるかまたは逆転させる過程のことをいう。別の言い方をすれば、再プログラミングとは、細胞の分化をより未分化の、またはより原始的なタイプの細胞に逆行させる過程のことをいう。多くの初代細胞培養細胞を培養すると、完全に分化した特徴がある程度失われる可能性があることに注意されたい。したがって、分化細胞という用語に含まれるそのような細胞を単に培養することは、これらの細胞を分化していない細胞(例えば、未分化細胞)または多能性細胞にしない。分化細胞の多能性への移行は、培養において分化した特徴の部分的な喪失をもたらす刺激を超える再プログラミングの刺激を必要とする。再プログラム化された細胞はまた、一般に培養中の限られた数の分裂に対してのみ能力を有する、初代細胞の親と比較して、増殖能力を失うことなく継代を延長する能力の特徴を有する。
【0260】
再プログラム化された細胞は、再プログラミングの前に部分的にまたは最終的に分化させ得る。再プログラミングは、分化細胞(例えば、体細胞)の分化状態の多能性状態または多分化性状態への完全な復帰を包含し得る。再プログラミングは、分化細胞(例えば、体細胞)の分化状態の未分化細胞(例えば、胚様細胞)への完全または部分的な復帰状態を包含し得る。再プログラミングは、細胞による特定の遺伝子の発現をもたらし得、その発現はさらに再プログラミングに寄与する。本明細書に記載の特定の例では、分化細胞(例えば、体細胞)の再プログラミングは、分化細胞を未分化状態とすることができる(例えば、未分化細胞である。)。得られた細胞は、「再プログラム化された細胞」または「人工多能性幹細胞(iPSCまたはiPS細胞)」という。
【0261】
再プログラミングは、細胞分化の間に起こる核酸修飾(例えば、メチル化)、クロマチン凝縮、エピジェネティックな変化、ゲノムインプリンティングなどの遺伝的パターンの少なくともいくつかの変化、例えば反転を含み得る。再プログラミングは、既に多能性である細胞の既存の未分化状態を単に維持すること、または既に多分化能細胞である細胞(例えば、筋原性幹細胞)の既存の完全に分化していない状態を維持することとは異なる。いくつかの例において、本明細書に記載の組成物及び方法もそのような目的に有用であり得るが、再プログラミングは、既に多能性または多分化能である細胞の自己複製または増殖の促進とも異なる。
【0262】
体細胞から多能性幹細胞を生成するために使用され得る多くの方法が当該技術分野において公知である。体細胞を多能性表現型に再プログラム化する任意のそのような方法は、本明細書に記載の方法における使用に適切である。
【0263】
定義された組み合わせの転写因子を用いて、多能性細胞を生成するための再プログラミング方法論が記載されている。マウス体細胞は、Oct4、Sox2、Klf4、及びc-Mycの直接の形質導入によって、発生能が拡大したES細胞様細胞に変換され得る。例えばTakahashi and Yamanaka,Cell 126(4):663-76(2006)を参照されたい。iPSCは、多能性関連の転写回路及び多くのエピジェネティックランドスケープを修復するので、ES細胞に似ている。さらに、マウスiPSCは、多能性についてのすべての標準的アッセイ、具体的には、3つの胚葉の細胞型へのin vitro分化、奇形腫形成、キメラへの寄与、生殖系列伝達[例えば、Maherali and Hochedlinger,Cell Stem Cell.3(6):595-605(2008)を参照されたい。]、及び四倍体相補性を満たす。
【0264】
ヒトiPSCは、同様の形質導入方法を用いて得ることができ、転写因子トリオ、OCT4、SOX2、及びNANOGは、多能性を支配する転写因子のコアセットとして確立されている。例えば、Budniatzky and Gepstein,Stem Cells Transl Med.3(4):448-57(2014);Barrett et al.,Stem Cells Trans Med 3:1-6 sctm.2014-0121(2014);Focosi et al.,Blood Cancer Journal 4:e211(2014);及びそこに引用されている参考文献を参照されたい。iPSCの産生は、歴史的にはウイルスベクターを用いて、幹細胞関連遺伝子をコードする核酸配列を成体の体細胞に導入することによって達成され得る。
【0265】
iPSCは、成体幹細胞または体性幹細胞と同様に、最終分化した体細胞からも生成または誘導され得る。すなわち、非多能性前駆細胞は、再プログラミングによって、多能性(pluripotent)または多能性(multipotent)にすることができる。そのような場合、最終分化細胞を再プログラム化するのに必要な数の再プログラム化因子を含める必要はないかもしれない。さらに、再プログラミングは、例えば、タンパク質自体を導入することによって、または再プログラミング因子をコードする核酸を導入することによって、または翻訳時に再プログラミング因子を産生するメッセンジャーRNAを導入することによって、再プログラミング因子の非ウイルス導入によって誘導され得る(例えば、Warren et al.,Cell Stem Cell,7(5):618-30(2010)を参照されたい。)。再プログラミングは、例えば、Oct-4(Oct-3/4またはPouf51としても知られている。)、Sox1、Sox2、Sox3、Sox15、Sox18、NANOG、Klf1、Klf2、Klf4、Klf5、NR5A2、c-Myc、1-Myc、n-Myc、Rem2、Tert、及びLIN28を含む幹細胞関連遺伝子をコードする核酸の組み合わせを導入することによって達成され得る。本明細書に記載の方法及び組成物を用いた再プログラミングは、体細胞へのOct-3/4、Soxファミリーのメンバー、Klfファミリーのメンバー、及びMycファミリーのメンバーのうちの1つ以上の導入をさらに含み得る。本明細書に記載の方法及び組成物は、再プログラミングについてOct-4、Sox2、NANOG、c-Myc及びKlf4のそれぞれの1つ以上を導入することをさらに含み得る。上記のように、再プログラミングに用いられる正確な方法は、本明細書に記載の方法及び組成物にとって必ずしも重要ではない。しかしながら、再プログラム化された細胞から分化した細胞が、例えばヒトの治療において用いられることになっている場合、1つの態様において、再プログラミングは、ゲノムを変える方法によって影響をもたらさせない。したがって、そのような例では、再プログラミングは、例えば、ウイルスベクターまたはプラスミドベクターを用いずに達成させ得る。
【0266】
開始細胞の集団に由来する再プログラミングの効率(すなわち、再プログラム化された細胞の数)は、Shi et al.,Cell-Stem Cell 2:525-528(2008);Huangfu et al.,Nature Biotechnology 26(7):795-797(2008) and Marson et al.,Cell-Stem Cell 3:132-135(2008)によって示されるように、様々な薬剤(例えば、小分子)の添加によって増強され得る。したがって、人工多能性幹細胞産生の効率または速度を増強する薬剤または薬剤の組み合わせは、患者特異的または疾患特異的なiPSCの産生に使用され得る。再プログラミング効率を高める薬剤のいくつかの非限定的な例には、可溶性Wnt、Wnt馴化培地、BIX-01294(G9aヒストンメチルトランスフェラーゼ)、PD0325901(MEK阻害剤)、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、バルプロ酸、5’-アザシチジン、デキサメタゾン、スベロイルアニリド、ヒドロキサム酸(SAHA)、ビタミンC、及びトリコスタチン(TSA)などが挙げられる。
【0267】
再プログラミング促進剤の他の非限定的な例としては、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA(例えば、MK0683、ボリノスタット)及び他のヒドロキサム酸)、BML-210、デプデシン(例えば、(-)-デプデシン)、HC毒素、ヌルスクリプト(4-(1,3-ジオキソ-1H、3H-ベンゾ[デ]イソキノリン-2-イル)-N-ヒドロキシブタンアミド)、フェニルブチレート(例えば、フェニルブチレートナトリウム)及びバルプロ酸((VPA)及び他の短鎖)脂肪酸)、スクリプタイド、スラミンナトリウム、トリコスタチンA(TSA)、APHA化合物8、アピシジン、酪酸ナトリウム、ピバロイルオキシメチルブチレート(Pivanex、AN-9)、トラポキシンB、クラミドシン、デプシペプチド(FR901228またはFK228としても知られる。)、ベンズアミド(例えば、CI-994(例えば、N-アセチルジナリン)及びMS-27-275)、MGCD0103、NVP-LAQ-824、CBHA(m-カルボキシシンナミン酸ビスヒドロキサム酸)、JNJ16241199、ツバシン、A-161906、プロキサミド、オキサムフラチン、3-Cl-UCHA(例えば、6-(3-クロロフェニルウレイド)カプロン酸ヒドロキサム酸)、AOE(2-アミノ-8-オキソ-9,10-エポキシデカン酸)、CHAP31、及びCHAP50が挙げられる。他の再プログラミング促進剤としては、例えば、HDACのドミナントネガティブ形態(例えば、触媒的に不活性な形態)、HDACのsiRNA阻害剤、及びHDACに特異的に結合する抗体が挙げられる。そのような阻害剤は、例えば、BIOMOL International、Fukasawa、Merck Biosciences、Novartis、Gloucester Pharmaceuticals、Titan Pharmaceuticals、MethylGene、及びSigma Aldrichから入手可能である。
【0268】
本明細書に記載の方法で使用するための多能性幹細胞の誘導を確認するために、単離されたクローンは、幹細胞マーカーの発現について試験され得る。体細胞由来の細胞におけるそのような発現は、その細胞を人工多能性幹細胞として同定する。幹細胞マーカーは、SSEA3、SSEA4、CD9、Nanog、Fbxl5、Ecat1、ESgl、Eras、Gdf3、Fgf4、Cripto、Dax1、Zpf296、Slc2a3、Rex1、Utfl、及びNatlを含む非限定的な群から選択され得る。1つの例において、例えば、Oct4またはNanogを発現する細胞は、多能性として同定される。そのようなマーカーの発現を検出するための方法には、例えば、RT-PCR及びコードされたポリペプチドの存在を検出する免疫学的方法、例えば、ウエスタンブロット法またはフローサイトメトリー解析が含まれ得る。検出は、RT-PCRだけでなく、タンパク質マーカーの検出も含み得る。細胞内マーカーは、RT-PCR、または免疫細胞化学などのタンパク質検出方法によって最もよく同定され得るが、細胞表面マーカーは、例えば、免疫細胞化学によって容易に同定される。
【0269】
単離された細胞の多能性幹細胞の特徴は、iPSCが3つの胚葉のそれぞれの細胞に分化する能力を評価する試験によって確認され得る。1つの例として、ヌードマウスにおける奇形腫形成は、単離されたクローンの多能性を評価するために使用され得る。前記細胞は、ヌードマウスに導入され得、組織学及び/または免疫組織化学は、前記細胞から生じる腫瘍に対して行われ得る。例えば、3つすべての胚葉由来の細胞を含む腫瘍の増殖は、前記細胞が多能性幹細胞であることをさらに示す。
【0270】
末梢神経系の細胞
いくつかの態様において、本明細書に記載の遺伝子操作されたヒト細胞は、脳及び脊髄の外側のニューロン及び神経である。情報を処理するニューロン、及び神経系への機械的及び代謝的支持を提供するグリア細胞は、末梢神経系の細胞の2つの主要なクラスである。ニューロンの非限定的な例には、感覚ニューロン(皮膚、筋肉、及び臓器などの領域内の感覚受容体からインパルスを収集し、それらのインパルスを神経を通してCNSに伝達する。)及び運動ニューロン(前記CNSから発信メッセージを収集し、どのような行動をとる必要があるのかを指示しながら、適切な身体器官にそれらを送達する。)が含まれる。グリア細胞の非限定的な例には、神経内のシュワン細胞または神経節内のサテライト細胞が含まれる。
【0271】
患者特異的iPSCの作製
本開示のex vivoでの方法の1つの工程は、患者特異的iPS細胞、患者特異的iPS細胞(複数可)、または患者特異的iPS細胞株を作製することを含み得る。Takahashi and Yamanaka 2006;Takahashi,Tanabe et al.2007に記載されているように、患者特異的iPS細胞を作製するための当該分野において確立された多くの方法がある。例えば、前記作製工程は、a)皮膚細胞または線維芽細胞などの体細胞を患者から単離すること、及びb)多能性幹細胞になるように細胞を誘導するために、1組の多能性関連遺伝子を体細胞に導入すること、を含み得る。多能性関連遺伝子のセットは、OCT4、SOX1、SOX2、SOX3、SOX15、SOX18、NANOG、KLF1、KLF2、KLF4、KLF5、c-MYC、n-MYC、REM2、TERT、及びLIN28からなる群から選択される1つ以上の遺伝子であり得る。
【0272】
患者の組織の生検または吸引の実施
生検または吸引は、身体から採取された組織または体液のサンプルである。生検や吸引には様々な種類がある。それらのほとんどすべては、少量の組織を除去するために、鋭利な道具を用いることを含む。生検が皮膚または他の敏感な部分にある場合は、麻痺薬を最初に適用し得る。生検または吸引は、当該分野で公知の方法のいずれかに従って行われ得る。例えば、骨髄吸引液において、大きな針は、骨盤骨に入れて、骨髄を集めるために用いられる。例えば、末梢神経系のニューロンを単離するための皮膚または脚からの神経生検の場合には、神経部分は切除され、最小限の機械的損傷を与えている。神経を圧迫したり伸ばしたりすることは避けられ、脂肪や結合組織の過剰な除去は試みられない。
【0273】
末梢神経系のニューロンの単離
末梢神経系のニューロンは、当該技術分野における任意の既知の方法に従って単離され得る。例えば、神経セグメントは、無菌条件下で、最小の機械的損傷を与えて切除される。神経を圧迫したり伸ばしたりすることは、厳密に避けられ、脂肪や結合組織の過剰な除去は、試みられない。神経線維は、機械的損傷に対して非常に敏感であるため、近位神経切断が最初に行われる。単離後、最も外側の結合組織層である上尿膜が除去され、酵素消化のために集められる。すべての束が個々の繊維に分離されるまで、前記繊維は、細い鉗子の助けを用いて裂かれる。次いで、上尿膜及び裂かれた繊維は、ディスパーゼII及びI型コラゲナーゼを用いて、一晩酵素消化に供される。消化された生成物は、濾過され、遠心分離により集められる。得られた細胞懸濁液は、接着剤PLL/ラミニン基質上にプレーティングされる。接着細胞は、解析のために培養される(Andersen et al.,Scientific Reports-Nature,2016,6:31781)。
【0274】
間葉系幹細胞の単離
間葉系幹細胞は、患者の骨髄または末梢血からなど、当該技術分野において公知の任意の方法に従って単離され得る。例えば、骨髄吸引液は、ヘパリンと共に注射器に集められ得る。細胞は、洗浄され、Percollで遠心され得る。前記細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS)を含有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(低グルコース)中で培養され得る(Pittinger MF,Mackay AM,Beck SC et al.,Science 1999;284:143-147)。
【0275】
遺伝子改変細胞
用語「遺伝子改変細胞」は、ゲノム編集によって(例えば、CRISPR/Cas9またはCRISPR/Cpf1システムを用いて)導入された、少なくとも1つの遺伝子改変を含む細胞のことをいう。本明細書中のいくつかのex vivoの例において、遺伝子改変細胞は、遺伝子改変前駆細胞であり得る。本明細書中のいくつかのin vivoでの例において、遺伝子改変細胞は、末梢神経系の遺伝子改変ニューロンであり得る。外因性ゲノムターゲティング核酸及び/またはゲノムターゲティング核酸をコードする外因性核酸を含む遺伝子改変細胞は、本明細書で企図される。
【0276】
用語「対照を処理した集団」は、ゲノム編集をしたコンポーネントの追加を除いて、同じ培地、ウイルス誘導、核酸配列、温度、集密度、フラスコサイズ、pHなどで処理された細胞集団を表す。当該技術分野で公知の任意の方法が使用され、例えば、SCN10Aタンパク質のウエスタンブロット解析またはSCN10A mRNAを定量するためのリアルタイムPCRで、SCN10A遺伝子の転写、またはタンパク質の発現もしくは活性を測定し得る。
【0277】
用語「単離された細胞」は、それが最初に見出された生物から取り出された細胞、またはそのような細胞の子孫のことをいう。場合により、前記細胞は、in vitroで、例えば、規定の条件下でまたは他の細胞の存在下で培養され得る。場合によっては、前記細胞は、後に第2の生物に導入されるか、またはそれが単離された生物(またはそれが由来する細胞)に再導入され得る。
【0278】
単離された細胞集団に関して、用語「単離された集団」は、混合されたまたは不均一な細胞集団から取り出され分離された細胞の集団のことをいう。いくつかの場合において、単離された集団は、細胞が単離された、または濃縮された異種の集団と比較して、実質的に純粋な細胞の集団であり得る。場合によっては、単離された集団は、ヒト前駆細胞及びヒト前駆細胞が由来する細胞を含む不均一な細胞集団と比較して、ヒト前駆細胞の単離された集団(例えば、実質的に純粋なヒト前駆細胞の集団)であり得る。
【0279】
特定の細胞集団に関して、用語「実質的に増強された」は、特定の種類の細胞の発生が既存のまたは参照レベルと比較して、例えば、疼痛を改善するためのそのような細胞の所望のレベルに応じて、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも400倍、少なくとも1000倍、少なくとも5000倍、少なくとも20000倍、少なくとも100000倍、またはそれ以上の倍数で増加している細胞の集団のことをいう。
【0280】
特定の細胞集団に関して、用語「実質的に濃縮された」は、全細胞集団を構成する細胞に対して、少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%以上である細胞の集団のことをいう。
【0281】
特定の細胞集団に関して、用語「実質的に純粋な」は、全細胞集団を構成する細胞に関して、少なくとも約75%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%純粋である細胞の集団のことをいう。すなわち、前駆細胞の集団に関して、用語「実質的に純粋な」または「本質的に精製された」は、本明細書中の用語により定義されるような前駆細胞ではない、約20%未満、約15%、約10%、約9%、約8%、約7%、約6%、約5%、約4%、約3%、約2%、約1%、または1%未満の細胞を含む細胞の集団のことをいう。
【0282】
ゲノム編集iPSCの末梢神経系細胞への分化
本開示のex vivoでの方法の別の工程は、ゲノム編集されたiPSCを末梢神経系の細胞(例えば、神経内のシュワン細胞または神経節内のサテライトグリア細胞などのニューロンまたはグリア細胞)に分化させることを含み得る。分化する工程は、当該技術分野において公知の任意の方法に従って実施され得る。例えば、iPSCの神経分化は、脳由来の神経栄養因子(BDNF)、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)、神経成長因子(NGF)、及びジブチリルサイクリックAMP(dbcAMP)の組み合わせを用いて誘導される。次いで、iPSC由来の神経細胞は、毛様体神経栄養因子(CNTF)、ニューレグリン1β、及びdbcAMPを用いて、シュワン細胞にさらに分化させる(Wang et al.,Biomaterials.2011;32(22):5023-5032)。
【0283】
ゲノム編集された間葉系幹細胞の末梢神経系細胞への分化
本開示のex vivoでの方法の別の工程は、ゲノム編集された間葉系幹細胞を末梢神経系の細胞(例えば、神経節のシュワン細胞または神経節のサテライトグリア細胞などのニューロンまたはグリア細胞)に分化させることを含み得る。分化する工程は、当該技術分野において公知の任意の方法に従って実施され得る。例えば、MSCは、塩基性線維芽細胞増殖因子、ヒト組換え血小板由来増殖因子、フォルスコリン、及びグリア増殖因子-2を含む様々な因子及びホルモンで治療される(Ladak et al.,Experimental Neurology 228(2011)242-252)。
【0284】
患者への細胞移植
本開示のex vivoでの方法の別の工程は、末梢神経系のゲノム編集されたニューロンを患者に移植することを含み得る。この移植工程は、当該技術分野において公知の任意の移植方法を用いて達成され得る。例えば、遺伝子改変細胞は、前記患者の血液に直接注入されるか、他の方法で前記患者に投与され得る。
【0285】
III.製剤及び送達
薬学的に許容される担体
本明細書で企図される対象に前駆細胞を投与するex vivo方法は、前駆細胞を含む治療用組成物の使用を伴う。
【0286】
治療用組成物は、生理学的に許容される担体を、その中に活性成分として溶解または分散している細胞組成物、及び任意選択で本明細書に記載のとおりの少なくとも1種の追加の生理活性薬剤と一緒に含有し得る。場合によっては、治療用組成物は、治療目的で哺乳類またはヒト患者に投与した場合に、そのように望まない場合を除いて実質的に免疫原性ではない。
【0287】
一般に、本明細書に記載の前駆細胞を、薬学的に許容される担体と共に懸濁液として投与することができる。当業者は、細胞組成物において使用される薬学的に許容される担体が、対象に送達される細胞の生存を実質的に妨害する量で緩衝剤、化合物、凍結保存剤、防腐剤、または他の薬剤を含まないことが分かるであろう。細胞を含む製剤は、例えば、維持されるべき細胞膜の完全性を可能にする浸透圧緩衝剤、及び任意選択で、細胞の生存を維持する、または投与の際の生着を増強する栄養素を含み得る。そのような製剤及び懸濁液は当業者に公知である、及び/またはルーチン的な実験を使用して、本明細書に記載のとおりの前駆細胞と共に使用するために適合させることができる。
【0288】
乳化手順が細胞の生存に不利な影響を及ぼさないことを条件として、細胞組成物を乳化することができるか、リポソーム組成物として提供することもできる。細胞及び任意の他の活性成分を、薬学的に許容され、活性成分と適合性であり、かつ本明細書に記載の治療法で使用するために適した量の添加剤と混合することができる。
【0289】
細胞組成物に含まれる追加の薬剤には、その中の成分の薬学的に許容される塩が含まれ得る。薬学的に許容される塩には、例えば、塩酸もしくはリン酸などの無機酸、または酢酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸と形成される酸付加塩(ポリペプチドの遊離アミノ基と形成される)が含まれる。遊離カルボキシル基と形成される塩はまた、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムまたは水酸化第二鉄などの無機塩基、及びイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基から誘導され得る。
【0290】
生理学的に許容される担体は当技術分野で周知である。例示的な液体担体は、活性成分及び水の他に物質を含有しない、または生理学的pH値でリン酸ナトリウムなどの緩衝剤を含有する滅菌水溶液、生理食塩水またはその両方、例えば、リン酸緩衝生理食塩水である。またさらに、水性担体は、1種より多い緩衝塩、さらには塩化ナトリウム及びカリウムなどの塩、デキストロース、ポリエチレングリコール及び他の溶質を含有し得る。液体組成物はまた、水に加えて、及び水を除いて、液相を含有し得る。そのような追加の液相の例は、グリセリン、植物油、例えば綿実油、及び水-油乳剤である。特定の障害または状態の処置で有効な細胞組成物で使用される活性化合物の量は、障害または状態の性質に依存し得、標準的な臨床的技法によって決定され得る。
【0291】
ガイドRNA製剤
本開示のガイドRNAを、特定の投与様式及び剤形に応じて、薬学的に許容される添加剤、例えば担体、溶媒、安定剤、アジュバント、希釈剤などで製剤化することができる。ガイドRNA組成物は、生理学的に適合性なpH、ならびに製剤及び投与経路に応じて約3のpHから約11までのpH、約pH3~約pH7の範囲を達成するように製剤化することができる。場合によっては、pHを約pH5.0~約pH8の範囲に調節することができる。場合によっては、組成物は、少なくとも1種の本明細書に記載の化合物の治療有効量を1種または複数の薬学的に許容される添加剤と共に含み得る。任意選択で、組成物は、本明細書に記載の化合物の組み合わせを含むことができるか、または細菌成長の処置もしくは予防に有用な第2の活性成分(例えば、限定ではないが抗細菌薬または抗菌薬)を含むことができるか、または本開示の試薬の組み合わせを含むことができる。
【0292】
適切な添加剤には、例えば、大きな、ゆっくり代謝される高分子、例えばタンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマー、及び不活性なウイルス粒子を含む担体分子が含まれる。他の例示的な添加剤には、抗酸化剤(例えば、限定ではないがアスコルビン酸)、キレート化剤(例えば、限定ではないが、EDTA)、炭水化物(例えば、限定ではないが、デキストリン、ヒドロキシアルキルセルロース、及びヒドロキシアルキルメチルセルロース)、ステアリン酸、液体(例えば及び限定ではないが、油、水、生理食塩水、グリセロール及びエタノール)、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質などが含まれ得る。
【0293】
送達
ガイドRNAポリヌクレオチド(RNAまたはDNA)及び/またはエンドヌクレアーゼポリヌクレオチド(複数可)(RNAまたはDNA)を当技術分野で公知のウイルスまたは非ウイルス送達ビヒクルによって送達することができる。別法では、エンドヌクレアーゼポリペプチド(複数可)を、当技術分野で公知のウイルスまたは非ウイルス送達ビヒクル、例えば電気穿孔法または脂質ナノ粒子によって送達することができる。さらなる代替の態様では、DNAエンドヌクレアーゼを、1種または複数のポリペプチドとして、単独で、あるいはtracrRNAと一緒に1つもしくは複数のガイドRNA、または1つもしくは複数のcrRNAと事前複合体化して送達することができる。
【0294】
ポリヌクレオチドを、これに限定されないが、ナノ粒子、リポソーム、リボ核タンパク質、正電荷をもつペプチド、小分子RNAコンジュゲート、アプタマー-RNAキメラ、及びRNA融合タンパク質複合体を含む非ウイルス送達ビヒクルによって送達することができる。一部の例示的な非ウイルス送達ビヒクルが、Peer and Lieberman,Gene Therapy,18:1127-1133(2011)(これは他のポリヌクレオチドの送達にも有用であるsiRNAのための非ウイルス送達ビヒクルに焦点を当てている)に記載されている。
【0295】
本開示のポリヌクレオチドでは、製剤を、例えば、国際出願PCT/US2012/069610に教示されているもののいずれかから選択してよい。
【0296】
ポリヌクレオチド、例えばガイドRNA、sgRNA、及びエンドヌクレアーゼをコードするmRNAを、脂質ナノ粒子(LNP)によって細胞または患者に送達してよい。
【0297】
LNPは、1000nm、500nm、250nm、200nm、150nm、100nm、75nm、50nm、または25nm未満の直径を有する任意の粒子を指す。別法では、ナノ粒子は、1~1000nm、1~500nm、1~250nm、25~200nm、25~100nm、35~75nm、または25~60nmのサイズの範囲であってよい。
【0298】
LNPを陽イオン性、陰イオン性、または中性脂質から作製してよい。中性脂質、例えば膜融合性リン脂質DOPEまたは膜成分コレステロールが、トランスフェクション活性及びナノ粒子安定性を増強する「ヘルパー」脂質としてLNPに含まれてよい。陽イオン性脂質の限界には、不十分な安定性及び急速なクリアランスによる低い有効性、さらには炎症または抗炎症反応の発生が含まれる。
【0299】
LNPはまた、疎水性脂質、親水性脂質、または疎水性及び親水性脂質の両方から構成されてよい。
【0300】
当技術分野で公知の任意の脂質または脂質の組み合わせを、LNPを生成するために使用することができる。LNPを生成するために使用される脂質の例は、DOTMA、DOSPA、DOTAP、DMRIE、DC-コレステロール、DOTAP-コレステロール、GAP-DMORIE-DPyPE、及びGL67A-DOPE-DMPE-ポリエチレングリコール(PEG)である。陽イオン性脂質の例は、98N12-5、C12-200、DLin-KC2-DMA(KC2)、DLin-MC3-DMA(MC3)、XTC、MD1、及び7C1である。天然脂質の例は、DPSC、DPPC、POPC、DOPE、及びSMである。PEG修飾脂質の例は、PEG-DMG、PEG-CerC14、及びPEG-CerC20である。
【0301】
脂質を任意の数値のモル比で組み合わせて、LNPを生成することができる。加えて、ポリヌクレオチド(複数可)を幅広いモル比で脂質(複数可)と組み合わせて、LNPを生成することができる。
【0302】
既に述べたとおり、部位特異的ポリペプチド及びゲノムターゲティング核酸をそれぞれ別々に細胞または患者に投与することができる。他方で、部位特異的ポリペプチドを、tracrRNAと一緒に1つもしくは複数のガイドRNA、または1つもしくは複数のcrRNAと事前複合体化することができる。次いで、事前複合体化物質を細胞または患者に投与することができる。そのような事前複合体化物質は、リボ核タンパク質粒子(RNP)として公知である。
【0303】
RNAは、RNAまたはDNAと特異的な相互作用を生じ得る。この特性は多くの生物学的プロセスで利用されるが、核酸リッチな細胞環境では無差別に相互作用するリスクもある。この問題の解決策の1つは、RNAがエンドヌクレアーゼと事前複合体化されているリボ核タンパク質粒子(RNP)の形成である。RNPの別の利点は、RNAを分解から保護することである。
【0304】
RNPにおけるエンドヌクレアーゼは修飾されていてよいか、または非修飾であってよい。同様に、gRNA、crRNA、tracrRNA、またはsgRNAも修飾されていてよいか、または非修飾であってよい。多数の修飾が当技術分野で公知であり、使用することができる。
【0305】
エンドヌクレアーゼ及びsgRNAを一般に1:1のモル比で組み合わせることができる。別法では、エンドヌクレアーゼ、crRNA及びtracrRNAを一般に1:1:1のモル比で組み合わせることができる。しかしながら、幅広いモル比を使用して、RNPを生成することができる。
【0306】
AAV(アデノ随伴ウイルス)
組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを送達のために使用することができる。送達されるポリヌクレオチド、rep及びcap遺伝子、ならびにヘルパーウイルス機能を含むパッケージングされたAAVゲノムを細胞に供給するrAAV粒子を生成するための技法は、当技術分野で標準的である。rAAVの生成は典型的には、次の成分が単細胞(本明細書ではパッケージング細胞と示される)内に存在することを必要とする:rAAVゲノム、rAAVゲノムとは別の(すなわち、その中にはない)AAVrep及びcap遺伝子、及びヘルパーウイルス機能。AAVrep及びcap遺伝子は、組換えウイルスを誘導し得る任意のAAV血清型からのものであってよく、かつこれに限定されないが、本明細書に記載のAAV血清型を含む、rAAVゲノムITRとは異なるAAV血清型からのものであってよい。偽型rAAVの生成が例えば、国際特許出願公開WO01/83692に開示されている。
【0307】
AAV血清型
本開示の組成物、例えば、エンドヌクレアーゼ、ドナー配列、またはRNAガイド分子をコードするポリヌクレオチドをパッケージングする本開示のAAV粒子は、任意の天然または組換えAAV血清型を含むか、またはそれから誘導されていてよい。本開示によれば、AAV粒子は、これに限定されないが、AAV1、AAV10、AAV106.1/hu.37、AAV11、AAV114.3/hu.40、AAV12、AAV127.2/hu.41、AAV127.5/hu.42、AAV128.1/hu.43、AAV128.3/hu.44、AAV130.4/hu.48、AAV145.1/hu.53、AAV145.5/hu.54、AAV145.6/hu.55、AAV16.12/hu.11、AAV16.3、AAV16.8/hu.10、AAV161.10/hu.60、AAV161.6/hu.61、AAV1-7/rh.48、AAV1-8/rh.49、AAV2、AAV2.5T、AAV2-15/rh.62、AAV223.1、AAV223.2、AAV223.4、AAV223.5、AAV223.6、AAV223.7、AAV2-3/rh.61、AAV24.1、AAV2-4/rh.50、AAV2-5/rh.51、AAV27.3、AAV29.3/bb.1、AAV29.5/bb.2、AAV2G9、AAV-2-pre-miRNA-101、AAV3、AAV3.1/hu.6、AAV3.1/hu.9、AAV3-11/rh.53、AAV3-3、AAV33.12/hu.17、AAV33.4/hu.15、AAV33.8/hu.16、AAV3-9/rh.52、AAV3a、AAV3b、AAV4、AAV4-19/rh.55、AAV42.12、AAV42-10、AAV42-11、AAV42-12、AAV42-13、AAV42-15、AAV42-1b、AAV42-2、AAV42-3a、AAV42-3b、AAV42-4、AAV42-5a、AAV42-5b、AAV42-6b、AAV42-8、AAV42-aa、AAV43-1、AAV43-12、AAV43-20、AAV43-21、AAV43-23、AAV43-25、AAV43-5、AAV4-4、AAV44.1、AAV44.2、AAV44.5、AAV46.2/hu.28、AAV46.6/hu.29、AAV4-8/r11.64、AAV4-8/rh.64、AAV4-9/rh.54、AAV5、AAV52.1/hu.20、AAV52/hu.19、AAV5-22/rh.58、AAV5-3/rh.57、AAV54.1/hu.21、AAV54.2/hu.22、AAV54.4R/hu.27、AAV54.5/hu.23、AAV54.7/hu.24、AAV58.2/hu.25、AAV6、AAV6.1、AAV6.1.2、AAV6.2、AAV7、AAV7.2、AAV7.3/hu.7、AAV8、AAV-8b、AAV-8h、AAV9、AAV9.11、AAV9.13、AAV9.16、AAV9.24、AAV9.45、AAV9.47、AAV9.61、AAV9.68、AAV9.84、AAV9.9、AAVA3.3、AAVA3.4、AAVA3.5、AAVA3.7、AAV-b、AAVC1、AAVC2、AAVC5、AAVCh.5、AAVCh.5R1、AAVcy.2、AAVcy.3、AAVcy.4、AAVcy.5、AAVCy.5R1、AAVCy.5R2、AAVCy.5R3、AAVCy.5R4、AAVcy.6、AAV-DJ、AAV-DJ8、AAVF3、AAVF5、AAV-h、AAVH-1/hu.1、AAVH2、AAVH-5/hu.3、AAVH6、AAVhE1.1、AAVhER1.14、AAVhEr1.16、AAVhEr1.18、AAVhER1.23、AAVhEr1.35、AAVhEr1.36、AAVhEr1.5、AAVhEr1.7、AAVhEr1.8、AAVhEr2.16、AAVhEr2.29、AAVhEr2.30、AAVhEr2.31、AAVhEr2.36、AAVhEr2.4、AAVhEr3.1、AAVhu.1、AAVhu.10、AAVhu.11、AAVhu.11、AAVhu.12、AAVhu.13、AAVhu.14/9、AAVhu.15、AAVhu.16、AAVhu.17、AAVhu.18、AAVhu.19、AAVhu.2、AAVhu.20、AAVhu.21、AAVhu.22、AAVhu.23.2、AAVhu.24、AAVhu.25、AAVhu.27、AAVhu.28、AAVhu.29、AAVhu.29R、AAVhu.3、AAVhu.31、AAVhu.32、AAVhu.34、AAVhu.35、AAVhu.37、AAVhu.39、AAVhu.4、AAVhu.40、AAVhu.41、AAVhu.42、AAVhu.43、AAVhu.44、AAVhu.44R1、AAVhu.44R2、AAVhu.44R3、AAVhu.45、AAVhu.46、AAVhu.47、AAVhu.48、AAVhu.48R1、AAVhu.48R2、AAVhu.48R3、AAVhu.49、AAVhu.5、AAVhu.51、AAVhu.52、AAVhu.53、AAVhu.54、AAVhu.55、AAVhu.56、AAVhu.57、AAVhu.58、AAVhu.6、AAVhu.60、AAVhu.61、AAVhu.63、AAVhu.64、AAVhu.66、AAVhu.67、AAVhu.7、AAVhu.8、AAVhu.9、AAVhu.t19、AAVLG-10/rh.40、AAVLG-4/rh.38、AAVLG-9/hu.39、AAVLG-9/hu.39、AAV-LK01、AAV-LK02、AAVLK03、AAV-LK03、AAV-LK04、AAV-LK05、AAV-LK06、AAV-LK07、AAV-LK08、AAV-LK09、AAV-LK10、AAV-LK11、AAV-LK12、AAV-LK13、AAV-LK14、AAV-LK15、AAV-LK17、AAV-LK18、AAV-LK19、AAVN721-8/rh.43、AAV-PAEC、AAV-PAEC11、AAV-PAEC12、AAV-PAEC2、AAV-PAEC4、AAV-PAEC6、AAV-PAEC7、AAV-PAEC8、AAVpi.1、AAVpi.2、AAVpi.3、AAVrh.10、AAVrh.12、AAVrh.13、AAVrh.13R、AAVrh.14、AAVrh.17、AAVrh.18、AAVrh.19、AAVrh.2、AAVrh.20、AAVrh.21、AAVrh.22、AAVrh.23、AAVrh.24、AAVrh.25、AAVrh.2R、AAVrh.31、AAVrh.32、AAVrh.33、AAVrh.34、AAVrh.35、AAVrh.36、AAVrh.37、AAVrh.37R2、AAVrh.38、AAVrh.39、AAVrh.40、AAVrh.43、AAVrh.44、AAVrh.45、AAVrh.46、AAVrh.47、AAVrh.48、AAVrh.48、AAVrh.48.1、AAVrh.48.1.2、AAVrh.48.2、AAVrh.49、AAVrh.50、AAVrh.51、AAVrh.52、AAVrh.53、AAVrh.54、AAVrh.55、AAVrh.56、AAVrh.57、AAVrh.58、AAVrh.59、AAVrh.60、AAVrh.61、AAVrh.62、AAVrh.64、AAVrh.64R1、AAVrh.64R2、AAVrh.65、AAVrh.67、AAVrh.68、AAVrh.69、AAVrh.70、AAVrh.72、AAVrh.73、AAVrh.74、AAVrh.8、AAVrh.8R、AAVrh8R、AAVrh8R A586R変異体、AAVrh8R R533A変異体、BAAV、BNP61AAV、BNP62AAV、BNP63AAV、ウシAAV、ヤギAAV、Japanese AAV10、真型(true type)AAV(ttAAV)、UPENN AAV10、AAV-LK16、AAAV、AAV Shuffle100-1、AAV Shuffle100-2、AAV Shuffle100-3、AAV Shuffle100-7、AAV Shuffle10-2、AAV Shuffle10-6、AAV Shuffle10-8、AAV SM100-10、AAV SM100-3、AAV SM10-1、AAV SM10-2、及び/またはAAV SM10-8を含む血清型、及びそのバリアントのいずれかから選択される血清型を利用し得るか、またはそれに基づき得る。
【0308】
一部の態様では、N Pulicherla et al.(Molecular Therapy 19(6):1070-1078(2011))によって記載されたとおり、AAV血清型は、AAV9配列の変異、例えば、これに限定されないが、AAV9.9、AAV9.11、AAV9.13、AAV9.16、AAV9.24、AAV9.45、AAV9.47、AAV9.61、AAV9.68、AAV9.84であってよいか、それを有してよい。
【0309】
一部の態様では、AAV血清型は、米国特許第6156303号に記載されているとおりの配列、例えば、これに限定されないが、AAV3B(米国特許第6156303号の配列番号1及び10)、AAV6(米国特許第6156303号の配列番号2、7及び11)、AAV2(米国特許第6156303号の配列番号3及び8)、AAV3A(米国特許第6156303号の配列番号4及び9)、またはその誘導体であってよいか、それを有してよい。
【0310】
一部の態様では、Grimm et al.(Journal of Virology 82(12):5887-5911(2008))によって記載されたとおり、血清型は、AAVDJまたはそのバリアント、例えばAAVDJ8(またはAAV-DJ8)であってよい。ヘパリン結合ドメイン(HBD)を除去するために、AAVDJ8のアミノ酸配列は、2つ以上の変異を含んでよい。非限定的例として、米国特許第7,588,772号に配列番号1として記載されているAAV-DJ配列:(1)アミノ酸587のアルギニン(R;Arg)がグルタミン(Q;Gln)に変化しているR587Q及び(2)アミノ酸590のアルギニン(R;Arg)がトレオニン(T;Thr)に変化しているR590T。別の非限定的例として、3つの変異を含んでよい:(1)アミノ酸406のリシン(K;Lys)がアルギニン(R;Arg)に変化しているK406R、(2)アミノ酸587のアルギニン(R;Arg)がグルタミン(Q;Gln)に変化しているR587Q、及び(3)アミノ酸590のアルギニン(R;Arg)がトレオニン(T;Thr)に変化しているR590T。
【0311】
一部の例では、AAV血清型は、国際公開WO2015121501に記載されているとおりの配列、例えば、これに限定されないが、真型AAV(ttAAV)(WO2015121501の配列番号2)、「UPenn AAV10」(WO2015121501の配列番号8)、「Japanese AAV10」(WO2015121501の配列番号9)、またはそのバリアントであってよいか、それを有してよい。
【0312】
本開示によれば、AAVカプシド血清型の選択または使用は、様々な種からであってよい。一例では、AAVは、トリAAV(AAAV)であってよい。AAAV血清型は、米国特許第9238800号に記載のとおりの配列、例えば、これに限定されないが、AAAV(米国特許第9238800号の配列番号1、2、4、6、8、10、12、及び14)、またはそのバリアントであってよいか、それを有してよい。
【0313】
一例では、AAVはウシAAV(BAAV)であってよい。BAAV血清型は、米国特許第9,193,769号に記載のとおりの配列、例えば、これに限定されないが、BAAV(米国特許第9,193,769号の配列番号1及び6)、またはそのバリアントであってよいか、それを有してよい。BAAV血清型は、米国特許第7427396号に記載のとおりの配列、例えば、これに限定されないが、BAAV(米国特許第7427396号の配列番号5及び6)、またはそのバリアントであってよいか、それを有してよい。
【0314】
一例では、AAVはヤギAAVであってよい。ヤギAAV血清型は、米国特許第7427396号に記載のとおりの配列、例えば、これに限定されないが、ヤギAAV(米国特許第7427396号の配列番号3)、またはそのバリアントであってよいか、それを有してよい。
【0315】
他の例では、AAVを、2つ以上の親血清型に由来するハイブリッドAAVとして操作してよい。一例では、AAVは、AAV2及びAAV9に由来する配列を含むAAV2G9であってよい。AAV2G9AAV血清型は、米国特許出願公開第20160017005号に記載のとおりの配列であってよいか、それを有してよい。
【0316】
一例では、AAVは、Pulicherla et al.(Molecular Therapy 19(6):1070-1078(2011)によって記載されたとおり、アミノ酸390~627(VP1ナンバリング)に変異を有するAAV9カプシドライブラリーによって生成された血清型であってよい。血清型及び対応するヌクレオチド及びアミノ酸置換は、これに限定されないが、AAV9.1(G1594C;D532H)、AAV6.2(T1418A及びT1436X;V473D及びI479K)、AAV9.3(T1238A;F413Y)、AAV9.4(T1250C及びA1617T;F417S)、AAV9.5(A1235G、A1314T、A1642G、C1760T;Q412R、T548A、A587V)、AAV9.6(T1231A;F411I)、AAV9.9(G1203A、G1785T;W595C)、AAV9.10(A1500G、T1676C;M559T)、AAV9.11(A1425T、A1702C、A1769T;T568P、Q590L)、AAV9.13(A1369C、A1720T;N457H、T574S)、AAV9.14(T1340A、T1362C、T1560C、G1713A;L447H)、AAV9.16(A1775T;Q592L)、AAV9.24(T1507C、T1521G;W503R)、AAV9.26(A1337G、A1769C;Y446C、Q590P)、AAV9.33(A1667C;D556A)、AAV9.34(A1534G、C1794T;N512D)、AAV9.35(A1289T、T1450A、C1494T、A1515T、C1794A、G1816A;Q430L、Y484N、N98K、V606I)、AAV9.40(A1694T、E565V)、AAV9.41(A1348T、T1362C;T450S)、AAV9.44(A1684C、A1701T、A1737G;N562H、K567N)、AAV9.45(A1492T、C1804T;N498Y、L602F)、AAV9.46(G1441C、T1525C、T1549G;G481R、W509R、L517V)、9.47(G1241A、G1358A、A1669G、C1745T;S414N、G453D、K557E、T582I)、AAV9.48(C1445T、A1736T;P482L、Q579L)、AAV9.50(A1638T、C1683T、T1805A;Q546H、L602H)、AAV9.53(G1301A、A1405C、C1664T、G1811T;R134Q、S469R、A555V、G604V)、AAV9.54(C1531A、T1609A;L511I、L537M)、AAV9.55(T1605A;F535L)、AAV9.58(C1475T、C1579A;T492I、H527N)、AAV.59(T1336C;Y446H)、AAV9.61(A1493T;N498I)、AAV9.64(C1531A、A1617T;L511I)、AAV9.65(C1335T、T1530C、C1568A;A523D)、AAV9.68(C1510A;P504T)、AAV9.80(G1441A,;G481R)、AAV9.83(C1402A、A1500T;P468T、E500D)、AAV9.87(T1464C、T1468C;S490P)、AAV9.90(A1196T;Y399F)、AAV9.91(T1316G、A1583T、C1782G、T1806C;L439R、K528I)、AAV9.93(A1273G、A1421G、A1638C、C1712T、G1732A、A1744T、A1832T;S425G、Q474R、Q546H、P571L、G578R、T582S、D611V)、AAV9.94(A1675T;M559L)及びAAV9.95(T1605A;F535L)であってよい。
【0317】
一例では、AAVは、少なくとも1つのAAVカプシドCD8+T-細胞エピトープを含む血清型であってよい。非限定的例として、血清型は、AAV1、AAV2またはAAV8であってよい。
【0318】
一例では、AAVは、Deverman.2016.Nature Biotechnology.34(2):204-209に記載されているとおり、バリアント、例えばPHP.AまたはPHP.Bであってよい。
【0319】
一例では、AAVは、配列番号4734~5302及び表2において見出されるもののうちのいずれかから選択される血清型であってよい。
【0320】
一例では、AAVは、配列番号4734~5302及び表2に記載されているとおりの配列、断片またはバリアントによってコードされてよい。
【0321】
rAAV生成の一般原則は、例えばCarter,1992,Current Opinions in Biotechnology,1533-539;及びMuzyczka,1992,Curr.Topics in Microbial.and Immunol.,158:97-129)において概説されている。様々なアプローチが、Ratschin et al.,Mol.Cell.Biol.4:2072(1984);Hermonat et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6466(1984);Tratschin et al.,Mo1.Cell.Biol.5:3251(1985);McLaughlin et al.,J.Virol.,62:1963(1988);及びLebkowski et al.,1988 Mol.Cell.Biol.,7:349(1988).Samulski et al.(1989,J.Virol.,63:3822-3828);米国特許第5,173,414号;WO95/13365及び対応する米国特許第5,658.776号;WO95/13392;WO96/17947;PCT/US98/18600;WO97/09441(PCT/US96/14423);WO97/08298(PCT/US96/13872);WO97/21825(PCT/US96/20777);WO97/06243(PCT/FR96/01064);WO99/11764;Perrin et al.(1995)Vaccine 13:1244-1250;Paul et al.(1993)Human Gene Therapy 4:609-615;Clark et al.(1996)Gene Therapy 3:1124-1132;米国特許第5,786,211号;米国特許第5,871,982号;及び米国特許第6,258,595号に記載されている。
【0322】
AAVベクター血清型を標的細胞型に適合させることができる。例えば、次の例示的な細胞型をとりわけ、示されているAAV血清型によって形質導入することができる。
【0323】
【0324】
アデノ随伴ウイルスベクターに加えて、他のウイルスベクターを使用することができる。そのようなウイルスベクターには、これに限定されないが、レンチウイルス、アルファウイルス、エンテロウイルス、ペスチウイルス、バキュロウイルス、ヘルペスウイルス、エプスタイン-バールウイルス、パポバウイルス、ポックスウイルス、ワクシニアウイルス、及び単純ヘルペスウイルスが含まれる。
【0325】
一部の態様では、Cas9 mRNA、SCN10A遺伝子の1つまたは2つの部位をターゲティングするsgRNA、及びドナーDNAを脂質ナノ粒子にそれぞれ別々に製剤化することができるか、または1つの脂質ナノ粒子に共製剤化する。
【0326】
一部の態様では、Cas9 mRNAは、脂質ナノ粒子に製剤化することができる一方で、sgRNA及びドナーDNAは、AAVベクターにおいて送達することができる。
【0327】
Cas9ヌクレアーゼをDNAプラスミドとして、mRNAとして、またはタンパク質として送達するために、オプションを利用することができる。ガイドRNAを、同じDNAから発現させることができるか、またはRNAとして送達することもできる。RNAを化学修飾して、半減期を変化させる、もしくは改善する、または免疫応答の可能性もしくは程度を低下させることができる。エンドヌクレアーゼタンパク質を、送達前にgRNAと複合体化することができる。ウイルスベクターは効率的な送達を可能にし;Cas9の分割バージョン及びCas9のより小さなオルソログをAAVにパッケージングすることができ、HDRのためのドナーも同様にできる。これらの成分のそれぞれを送達することができる様々な非ウイルス送達方法も存在し、または非ウイルス及びウイルス方法を合わせて使用することができる。例えば、ナノ粒子を、タンパク質及びガイドRNAを送達するために使用することができる一方で、AAVを、ドナーDNAを送達するために使用することができる。
【0328】
本明細書に記載のin vivoベースの治療の一部の態様では、エンドヌクレアーゼ、ガイドRNA及び/またはドナーDNAをコードするウイルスベクター(複数可)を、直接神経節内もしくは髄腔内注射、または髄腔内送達を介して末梢神経系のニューロン、例えば、一次感覚及び運動ニューロンに送達してよい(Hoyng et al.,Front Mol Neurosci.2015 Jul 15;8:32)。
【0329】
IV.投薬及び投与
「投与すること」、「導入すること」及び「移植すること」という用語は、所望の作用(複数可)が生じるように所望の部位、例えば、損傷または修復の部位で、導入された細胞の少なくとも部分的な局在化をもたらす方法または経路によって、細胞、例えば、前駆細胞を対象に配置する文脈で互換的に使用される。細胞、例えば前駆細胞、またはそれらの分化後代を、対象内の所望の位置への送達をもたらす任意の適切な経路によって、移植細胞または細胞の成分の少なくとも一部を生かしたままで投与することができる。対象への投与後の細胞の生存期間は、短くて数時間、例えば24時間、数日まで、長くて数年まで、またはさらには患者の寿命、すなわち、長期生着であり得る。例えば、本明細書に記載の一部の態様では、前駆細胞の有効量を全身投与経路、例えば腹腔内または静脈内経路を介して投与する。
【0330】
「個体」、「対象」、「宿主」及び「患者」という用語は、本明細書で互換的に使用され、診断、処置または治療が望ましい任意の対象を指す。一部の態様では、対象は哺乳類である。一部の態様では、対象はヒトである。
【0331】
予防的に与える場合、疼痛のいずれかの症状の前に、本明細書に記載の前駆細胞を対象に投与することができる。したがって、前駆細胞集団の予防投与は、疼痛を予防するために役立つ。
【0332】
本明細書に記載の方法によって投与される前駆細胞集団は、1つまたは複数のドナーから得られた同種前駆細胞を含み得る。そのような前駆細胞は、任意の細胞または組織起源のもの、例えば、肝臓、筋肉、心臓などのものであってよい。「同種」は、同じ種の1つまたは複数の異なるドナーから得られた、1つまたは複数の遺伝子座にある遺伝子が同一ではない1つの前駆細胞または前駆細胞を含む生体試料を指す。例えば、対象に投与される肝臓前駆細胞集団は、1つもしくは複数の無関係ドナー対象から、または1つもしくは複数の非同一兄弟から誘導することができる。場合によっては、同系前駆細胞集団を、例えば、遺伝的に同一の動物から、または一卵性双生児から得られたものなどを使用することができる。前駆細胞は自己細胞であり得;すなわち、前駆細胞を対象から採取または単離し、その同じ対象に投与する、すなわち、ドナー及びレシピエントが同じである。
【0333】
「有効量」という用語は、疼痛の少なくとも1つまたは複数の徴候または症状を予防または軽減するために必要な前駆細胞またはそれらの後代の集団の量を指し、所望の作用を得るために、例えば、疼痛を有する対象を処置するために十分な組成物の量に関連する。したがって「治療有効量」という用語は、典型的な対象、例えば、疼痛を有するか、またはそのリスクを有する対象に投与した場合に特定の作用を促進するために十分な前駆細胞または前駆細胞を含む組成物の量を指す。有効量には、疾患の症状の発生を予防する、もしくは遅延させる、疾患の症状の経過を変化させる(例えば、これに限定されないが、疾患の症状の進行を減速させる)、または疾患の症状を逆転させるために十分な量も含まれるであろう。任意の所与の症例では、当業者が適切な「有効量」をルーチン的な実験を使用して決定することができることは理解される。
【0334】
本明細書に記載の様々な態様で使用するために、前駆細胞の有効量は、少なくとも102の前駆細胞、少なくとも5×102の前駆細胞、少なくとも103の前駆細胞、少なくとも5×103の前駆細胞、少なくとも104の前駆細胞、少なくとも5×104の前駆細胞、少なくとも105の前駆細胞、少なくとも2×105の前駆細胞、少なくとも3×105の前駆細胞、少なくとも4×105の前駆細胞、少なくとも5×105の前駆細胞、少なくとも6×105の前駆細胞、少なくとも7×105の前駆細胞、少なくとも8×105の前駆細胞、少なくとも9×105の前駆細胞、少なくとも1×106の前駆細胞、少なくとも2×106の前駆細胞、少なくとも3×106の前駆細胞、少なくとも4×106の前駆細胞、少なくとも5×106の前駆細胞、少なくとも6×106の前駆細胞、少なくとも7×106の前駆細胞、少なくとも8×106の前駆細胞、少なくとも9×106の前駆細胞、またはその倍数を含む。前駆細胞を1つまたは複数のドナーから得ることができるか、または自己供給源から得ることができる。本明細書に記載の一部の例では、前駆細胞を、それを必要とする対象に投与する前に、培養で増やすことができる。
【0335】
疼痛を有する患者の細胞で発現されるSCN10Aのレベルのわずかで漸増的な低下は、疾患の1つまたは複数の症状の寛解に、長期生存の増大に、及び/または他の処置と関連する副作用の低減に有利であり得る。ヒト患者へのそのような細胞の投与に際して、SCN10Aのレベルを低下させている前駆細胞の存在が有利となる。場合によっては、対象の有効な処置は、処置対象において、全SCN10Aに対してSCN10Aの少なくとも約3%、5%または7%の減少をもたらす。一部の例では、SCN10Aの減少は、全SCN10Aの少なくとも約10%である。一部の例では、SCN10Aの減少は、全SCN10Aの少なくとも約20%~30%である。同様に、一部の状況では、規格化細胞(normalized cell)が罹患細胞に対して選択的利点を有するであろうので、SCN10Aのレベルを有意に低下させている細胞のさらに比較的限定された分集団の導入が様々な患者において有利であり得る。しかしながら、SCN10Aの減少レベルで中程度のレベルの前駆細胞も、患者の疼痛の1つまたは複数の態様を寛解させるために有利であり得る。一部の例では、そのような細胞を投与される患者における神経前駆細胞のうちの約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%またはそれ以上がSCN10Aのレベルを低下させる。
【0336】
「投与された」は、所望の部位での細胞組成物の少なくとも部分的な局在化をもたらす方法または経路による対象への前駆細胞組成物の送達を指す。細胞組成物を、対象において有効な処置をもたらす任意の適切な経路によって投与することができ、すなわち、投与は、対象において所望の位置への送達をもたらし、その際、送達される組成物の少なくとも一部、すなわち少なくとも1×104の細胞が、ある期間にわたって所望の部位に送達される。
【0337】
方法の一態様では、医薬組成物を、これに限定されないが、腸内(小腸に)、胃腸内、硬膜外(硬膜に)、経口(口腔によって)、経皮、硬膜上、脳内(大脳に)、脳室内(脳室に)、皮膚上(皮膚に塗布)、皮内(皮膚自体に)、皮下(皮膚下に)、経鼻投与(鼻を通じて)、静脈内(静脈に)、静脈内ボーラス、静脈内点滴、動脈内(動脈に)、筋肉内(筋肉に)、心臓内(心臓に)、骨内注入(骨髄に)、髄腔内(脊柱管に)、腹腔内(腹膜への注入または注射)、膀胱内注入、硝子体中(目を通じて)、空洞内注射(病的空洞に)、腔内(陰茎の基部(base of the penis)に)、膣内投与、子宮内、羊膜外投与、経皮(全身分布のための無傷の皮膚を通じて拡散)、経粘膜(粘膜を通じて拡散)、経膣、吹送(経鼻吸引(snorting))、舌下、唇下、浣腸、点眼(結膜上に)、点耳、耳(耳道内、またはそれによって)、頬側(頬側に対して)、結膜、皮膚、歯科的(歯に)、電気浸透、頸管内、静脈洞内、気管内、体外、血液透析、浸潤、間質性、腹腔内、羊膜内、関節内、胆管内、気管支内、滑液包内、軟骨内(軟骨の内部に)、馬尾内(馬尾の内部に)、槽内(小脳延髄大槽(cisterna magna cerebellomedularis)の内部に)、角膜内(角膜の内部に)、歯冠内(dental intracornal)、冠内(冠動脈の内部に)、陰核海綿体内(陰茎の海綿体の膨張性空間の内部に)、椎間板内(椎間板の内部に)、管内(腺管の内部に)、十二指腸内(十二指腸の内部に)、硬膜内(硬膜の内部に、またはその下に)、表皮内(表皮に対して)、食道内(食道に対して)、胃内(胃の内部に)、歯肉内(歯肉の内部に)、回腸内(小腸遠位部の内部に)、病変内(局所病変の内部に、またはそれに直接導入される)、管腔内(管腔の内部に)、リンパ内(リンパの内部に)、髄内(骨髄腔の内部に)、髄膜内(髄膜の内部に)、眼内(眼の内部に)、卵巣内(卵巣の内部に)、心膜内(心膜の内部に)、胸膜内(胸膜の内部に)、前立腺内(前立腺の内部に)、肺内(肺またはその気管支の内部に)、洞内(鼻洞または眼窩周囲洞の内部に)、髄腔内(脊柱の内部に)、滑液包内(関節の滑膜腔の内部に)、腱内(腱の内部に)、精巣内(精巣の内部に)、くも膜下腔内(任意の脳脊髄軸レベルの脳脊髄液の内部に)、胸腔内(胸部の内部に)、管内(臓器細管の内部に)、腫瘍内(腫瘍の内部に)、鼓室内(中耳(aurus media)の内部に)、血管内(1つまたは複数の血管の内部に)、脳室内(脳室の内部に)、イオントフォレーシス(電流を用いて、ここでは可溶性塩のイオンが体の組織中に移動する)、潅注(開放創または体腔を浴洗し、またはフラッシュするため)、喉頭(喉頭上に直接)、経鼻胃(鼻から胃の中に)、密封包帯療法(局所経路投与、次いで包帯で被覆して範囲を閉塞する)、眼(外眼部に対して)、口腔咽頭(口及び咽頭に直接)、非経口、経皮、関節周囲、硬膜周囲、神経周囲、歯周、直腸、呼吸器(局所作用または全身作用のため経口的または経鼻的に吸入することによって気道の内部に)、球後(橋の後方または眼球の後方)、心筋内(心筋層の内部に)、軟部組織、クモ膜下、結膜下、粘膜下、局所、経胎盤(胎盤を通じて、またはそれにわたって)、経皮気管内(気管壁を通じて)、経鼓室(鼓室にわたって、またはそれを通じて)、尿管(尿管に対して)、尿道(尿道に対して)、腟内、仙骨ブロック、診断、神経ブロック、胆管潅流、心潅流、フォトフェレーシス及び脊髄などの経路を介して投与してよい。
【0338】
投与様式には、注射、注入、点滴、及び/または経口摂取が含まれる。「注射」には、限定ではないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、心室内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経皮気管内、皮下、表皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、髄腔内、脳脊髄内(intracerebro spinal)、及び胸骨内注射及び注入が含まれる。一部の例では、経路は静脈内である。細胞の送達では、注射または注入による投与を行うことができる。
【0339】
細胞を全身投与することができる。「全身投与」、「全身投与される」、「末梢投与」及び「末梢投与される」という語句は、標的部位、組織、または器官に直接以外で、代わりに、対象の循環系に入る、したがって、代謝及び他の同様のプロセスを受けるような前駆細胞の集団の投与を指す。
【0340】
疼痛を処置するための組成物を含む処置の有効性は、熟達した臨床医であれば決定することができる。しかしながら、SCN10Aの徴候または症状のいずれか、もしくはすべて、しかし一例としては、そのレベルが有利に変化する(例えば、少なくとも10%低下する)、または疾患の他の臨床的に認められる症状もしくはマーカーが改善もしくは寛解されれば、処置は「有効な処置」とみなされる。有効性をまた、入院または医療介入の必要によって評価されるような個体の悪化がない(例えば、疾患の進行が停止するか、または少なくとも減速する)ことによって測定することができる。これらの指標を測定する方法は、当業者に知られている、及び/または本明細書に記載されている。処置には、個体または動物(一部の非限定的例には、ヒト、または哺乳類が含まれる)における疾患の任意の処置が含まれ、(1)疾患を阻害すること、例えば、症状の進行を停止もしくは減速させること;または(2)疾患を軽減すること、例えば、症状の退縮をもたらすこと;及び(3)症状の発生を予防すること、またはその可能性を低下させることが含まれる。
【0341】
本開示による処置は、個体におけるSCN10Aタンパク質の量を低減する、または変化させることによって、疼痛と関連する1つまたは複数の症状を寛解させることができる。
【0342】
V.電位依存性ナトリウムチャネルタイプXアルファサブユニット(SCN10A)遺伝子の特徴及び特性
SCN10Aは、先天性無痛覚、喘息、運動失調症、心房細動、乳房の悪性新生物、肥大型心筋症、心血管疾患、小脳疾患、消化不良、実験的自己免疫性脳脊髄炎、原発性肢端紅痛症、心ブロック、遺伝性感覚性ニューロパチー5型、痛覚過敏、急性骨髄性白血病、多発性硬化症、神経痛、神経芽細胞腫、疼痛、帯状疱疹後神経痛、タバコ使用障害、三叉神経痛、心室細動、滑液嚢胞、坐骨神経ニューロパチー、慢性疼痛、細動、血液腫瘍、心電図:P-R間隔、ニューロパチー、乳癌、中枢神経芽細胞腫、水痘帯状疱疹、ブルガダ症候群(障害)、粘液様嚢胞、チャネル病、圧迫性ニューロパチー、発作性激痛症、高度房室ブロック、小径線維ニューロパチー、及び家族性エピソード性疼痛症候群2等であるがこれらに限定されない疾患ならびに障害と関連している。本明細書に記載の方法のいずれかを使用したSCN10A遺伝子の編集を用いて、本明細書に記載の疾患及び障害の症状を治療、予防、及び/または軽減することがある。
【0343】
遺伝子SCN10Aは、NaV1.8と命名された電位依存性ナトリウムチャネルのアルファサブユニットをコードする。NaV1.8は、主に後根神経節の感覚ニューロンで発現され、神経因性疼痛の機序において重要な役割を果たす。SCN10A遺伝子の突然変異は、家族性エピソード性疼痛症候群2型の患者に見出されている。家族性エピソード性疼痛症候群2型は、稀な常染色体優性の神経障害であり、成人発症の足領域における発作性の疼痛を特徴とする。これらの症状の発現は、一般に高温、低温、化学物質、及びある特定の表面によって誘発される。患者はまた、接触過敏及び疼痛刺激に対する反応の亢進が生じている場合もある。現在、この疾患に利用できる治療法はない。暖かさが疼痛の症状の発現を和らげることが証明されている。SCN10A遺伝子の突然変異もまた、小径線維ニューロパチーの症状の約5パーセントに関与する。小径線維ニューロパチーは、激痛発作及び無痛症を特徴とする状態である。これらの疼痛発作は、通常、しびれ、刺すようなもしくは焼けるような、またはヒリヒリするもしくはかゆみのような皮膚の感覚異常として説明される。現在、小径線維末梢性ニューロパチーに対する治療法はない。治療の選択肢としては、静注免疫グロブリン(IVIG)及び血漿交換が挙げられる。
【0344】
1つの例では、該遺伝子は、電位依存性ナトリウムチャネルタイプXアルファサブユニット(SCN10A)であり、これはまた、ナトリウム電位依存性チャネルアルファサブユニット10、ナトリウムチャネル電位依存性タイプXアルファポリペプチド、電位依存性ナトリウムチャネルサブユニットアルファNav1.8、ナトリウムチャネルタンパク質タイプXサブユニットアルファ、末梢神経ナトリウムチャネル3、HPN3、PN3、Nav1.8、FEPS2、及びSNSとも呼ばれる場合がある。SCN10Aは、細胞遺伝学的位置3p22.2にあり、ゲノム座標は、リザーブ鎖(reserve strand)の3番染色体上の位置38,696,802~38,794,010である。SCN10Aのヌクレオチド配列は、配列番号5303として示される。AC116038.1は、リバース鎖(reverse strand)上のSCN10Aの上流の遺伝子であり、SCN5Aは、リバース鎖(reverse strand)上のSCN10Aの下流の遺伝子である。SCN10Aは、NCBI遺伝子IDが6336、UniprotのIDがQ9Y5Y9、及びEnsembl遺伝子IDがENSG00000185313である。SCN10Aは、6380のSNP、26のイントロン、及び27のエクソンを有する。Ensemblのエクソン識別子ならびにイントロン及びエクソンの開始/終止部位を表3に示す。
【表3-1】
【表3-2】
【0345】
表4は、Ensemblデータベースに基づくSCN10A遺伝子のすべての転写産物に関する情報を提供する。表4に提供するのは、Ensemblの転写産物のID及び当該転写産物に関する対応するNCBI RefSeq ID、Ensemblの翻訳ID及び当該タンパク質に関する対応するNCBI RefSeq ID、Ensemblによって分類される転写産物配列のバイオタイプ、ならびに表3の情報に基づく転写産物のエクソン及びイントロンである。
【表4】
【0346】
SCN10Aは、6380のSNPを有し、このSCN10A遺伝子に関するNCBIのrs番号及び/またはUniprotのVAR番号は、rs7630989、rs6795970、rs12632942、rs6599241、rs35332705、VAR_064748、rs138404783、VAR_070879、VAR_070880、VAR_070881、VAR_070882、rs142217269、rs151090729、rs4076737、rs4426623、rs4622847、rs5848486、rs4676596、rs4676597、rs4676598、rs6422143、rs6767948、rs6776034、rs6763628、rs6783110、rs6777775、rs6764493、rs6794914、rs6784303、rs6795880、rs6799038、rs6781740、rs6803189、rs6599243、rs6599244、rs6599245、rs6599246、rs6599247、rs6599248、rs6599249、rs6599252、rs6599253、rs6599256、rs6599260、rs6599261、rs6800541、rs6790396、rs6797763、rs6798087、rs6775197、rs6790627、rs6798015、rs7430323、rs7430438、rs6599259、rs7430451、rs6802294、rs6791171、rs6793226、rs6599257、rs6599255、rs7430726、rs6599254、rs6599251、rs6599250、rs7431144、rs7373595、rs7374030、rs6599242、rs7374804、rs7375034、rs7375036、rs6599240、rs6599239、rs6796459、rs6796336、rs7428167、rs6799257、rs7428538、rs6780103、rs7432787、rs7432804、rs6763876、rs7429946、rs7433306、rs6771157、rs7433430、rs6767699、rs7628873、rs6763282、rs6767287、rs6767286、rs7617547、rs4676595、rs4676594、rs7650384、rs7635221、rs4676479、rs4629274、rs4426622、rs7610489、rs9825762、rs4420805、rs4420804、rs7651106、rs7641844、rs4417808、rs9827941、rs4414778、rs4390861、rs9311198、rs9828268、rs9847662、rs9811498、rs9836531、rs4369974、rs7644127、rs3923697、rs7644332、rs9836859、rs3923696、rs9637536、rs9844265、rs4072090、rs9844577、rs4072089、rs9861456、rs9862441、rs9875610、rs9846774、rs9884052、rs6801957、rs9851471、rs9990137、rs7430283、rs11129800、rs11129801、rs11129802、rs11129803、rs7430439、rs11129805、rs11129806、rs7430477、rs7611456、rs10212338、rs9878604、rs7430861、rs10212535、rs7372672、rs7373373、rs6805187、rs11710462、rs7374599、rs9879472、rs7426951、rs7431703、rs11711860、rs11711936、rs11711941、rs9874436、rs6809264、rs11712354、rs7428232、rs11927856、rs7432727、rs12487090、rs12494065、rs7615140、rs11707331、rs12631918、rs11928905、rs7433352、rs11707961、rs12487551、rs11929645、rs12495205、rs7433723、rs7433958、rs7639104、rs9815458、rs12054245、rs11721285、rs9815891、rs11922082、rs7617919、rs12634001、rs7635325、rs11716493、rs12489221、rs11915567、rs12496750、rs11709828、rs7618620、rs11710161、rs12497173、rs12497868、rs12497918、rs9816817、rs9809798、rs12635859、rs12635869、rs12490478、rs7641702、rs9818087、rs12636153、rs11925007、rs12491593、rs13315383、rs11917835、rs9311196、rs9311197、rs9828737、rs9828912、rs9820042、rs9848976、rs9830687、rs13071311、rs28535395、rs9876564、rs11129799、rs13087440、rs35164567、rs11129804、rs34758568、rs34292044、rs34292377、rs11129807、rs34314583、rs11129808、rs9872482、rs10428132、rs34804756、rs28706149、rs10428168、rs35395591、rs35396916、rs11710461、rs35301534、rs34392360、rs9866540、rs34397514、rs28448349、rs10637333、rs11711062、rs9874633、rs35463820、rs35464547、rs11705730、rs34455861、rs11719241、rs35486880、rs11344113、rs34478094、rs35496543、rs34919067、rs11714394、rs11928917、rs11396392、rs34929296、rs56654680、rs34930893、rs56661472、rs11715513、rs34515439、rs34516179、rs56704765、rs34074715、rs11708587、rs12633214、rs35993937、rs56824318、rs11921917、rs34987014、rs11922415、rs34105543、rs59468016、rs34152407、rs11716467、rs11710006、rs12172962、rs35652104、rs35048311、rs12172966、rs57122706、rs36085822、rs35052238、rs11924846、rs12636123、rs34667147、rs58410551、rs11926158、rs12630795、rs59640942、rs57203624、rs12638536、rs12638572、rs35710839、rs60847476、rs34700431、rs13085808、rs56128837、rs62242398、rs62242399、rs13319504、rs28523323、rs62242432、rs34260359、rs28570344、rs62242435、rs34756581、rs62242438、rs62242443、rs62242444、rs35212276、rs62242446、rs62242447、rs62242448、rs62242450、rs62242453、rs57326399、rs59733668、rs34777803、rs57346275、rs13325628、rs34786326、rs35389751、rs60969309、rs62244065、rs62244070、rs62244071、rs62244072、rs62244073、rs62244074、rs62244075、rs62244076、rs34846255、rs28435458、rs62244079、rs34422505、rs34890249、rs55791366、rs35466104、rs13095477、rs35904829、rs62244107、rs62244108、rs55849713、rs62244110、rs62244111、rs56406440、rs13096893、rs35523546、rs61014925、rs59856101、rs59858965、rs13098827、rs59914178、rs35993330、rs58792349、rs58802016、rs35998249、rs58883392、rs58915895、rs35847006、rs58141279、rs36057862、rs56040630、rs60218401、rs55742609、rs34177393、rs56051560、rs71635876、rs60240656、rs34204621、rs34205252、rs55779957、rs60773084、rs71085335、rs71085336、rs59639785、rs60349808、rs35094360、rs35095264、rs60874265、rs58025631、rs62242429、rs62242430、rs71323673、rs71323674、rs71323675、rs71323676、rs62242433、rs72864370、rs72864377、rs62242434、rs72864392、rs72866235、rs72866253、rs62242436、rs72866260、rs72866265、rs72866266、rs72866267、rs62242445、rs72866278、rs35734463、rs62243860、rs73825863、rs62243861、rs62243862、rs73825866、rs73825867、rs73825878、rs73825880、rs62244077、rs72867808、rs72869618、rs72867855、rs73825864、rs73825865、rs73825883、rs62244078、rs73826323、rs73826324、rs62244080、rs62244081、rs73826357、rs73826358、rs62244103、rs74848784、rs66689339、rs74341073、rs62244104、rs62244105、rs75859611、rs62244106、rs74928884、rs62244109、rs62244112、rs59790671、rs74445516、rs58684946、rs56206213、rs58760012、rs35818440、rs60118537、rs68001863、rs77019133、rs57803396、rs55749331、rs71635874、rs61349119、rs60278090、rs71085334、rs57905522、rs73064529、rs61487238、rs73064536、rs57989962、rs73064548、rs73064557、rs73064559、rs61533375、rs770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583、rs755234769、rs755435149、rs768253809、rs772645482、rs751237565、rs772850179、rs747474998、rs759799166、rs777337458、rs747478059、rs777551972、rs755448967、rs796121812、rs777556622、rs751438322、rs772865443、rs759810657、rs759811932、rs772663640、rs772869110、rs777345301、rs796405217、rs576958615、rs772878006、rs751252167、rs777359688、rs768093278、rs751271372、rs777368805、rs759655903、rs759831926、rs747508932、rs576969601、rs772891496、rs777591347、rs751464268、rs777599790、rs755311800、rs777604789、rs768314082、rs768128277、rs777606824、rs747613024、rs764233083、rs764038861、rs751484106、rs576996766、rs755344373、rs755345260、rs576999040、rs772917999、rs755510163、rs772926214、rs755515271、rs777633592、rs777634572、rs796478901、rs768167768、rs751340142、rs764260671、rs777642089、rs768347496、rs751514125、rs759880550、rs764081453、rs777661319、rs777667084、rs751344454、rs777670484、rs576996944、rs777638368、rs755553717、rs577018765、rs777474412、rs796298037、rs764298538、rs796544253、rs777691463、rs777483324、rs777698381、rs772798048、rs751558593、rs755392832、rs764316581、rs759930945、rs759751843、rs751383252、rs759934734、rs764327465、rs751384151、rs751574392、rs796329030、rs772810661、rs751394310、rs777516552、rs796368194、rs764168768、rs764349805、rs751593824、rs755609430、rs764170812、rs796620506、rs777546671、rs759989589、rs755645351、rs772854933、rs796383620、rs777787015、rs796661192、rs764401492、rs768495538、rs759804091、rs768500142、rs764191883、rs768502292、rs768502791、rs768278218、rs796412093、rs772881421、rs755469501、rs777579309、rs764208467、rs755474416、rs764212354、rs759842238、rs576987267、rs777611685、rs768531741、rs768541787、rs796744438、rs764239305、rs755530255、rs768556721、rs768368073、rs759900839、rs773155259、rs796529169、rs773159968、rs760073097、rs796533460、rs772974795、rs768566944、rs764298098、rs755570717、rs759921753、rs751558751、rs777896190、rs777904932、rs796576438、rs777905744、rs764325028、rs760106760、rs760114670、rs773008809、rs796835517、rs764330725、rs755591769、rs751577582、rs796845806、rs764543219、rs773224139、rs777950383、rs777731699、rs759953813、rs764550997、rs760141969、rs759955803、rs777740480、rs777774052、rs773070471、rs768476929、rs768496766、rs764414043、rs777815787、rs796694081、rs796694101、rs760026563、rs796700180、rs773281939、rs755688608、rs764437535、rs768521742、rs777835811、rs768526554、rs773290901、rs764448482、rs764470746、rs773149634、rs773296210、rs764476034、rs755728923、rs768563062、rs778052433、rs773319945、rs773324319、rs778042620、rs768733994、rs778044205、rs796997004、rs777881741、rs796770436、rs773363279、rs760077726、rs768571080、rs755743161、rs755746264、rs778131383、rs768785644、rs796800104、rs755764082、rs773399478、rs778148727、rs773404082、rs773407415、rs796831631、rs773409661、rs778156878、rs778169470、rs773434635、rs768614341、rs760124796、rs768620339、rs768630061、rs796861842、rs768896216、rs768635377、rs764555780、rs777963398、rs768925741、rs796872491、rs773243150、rs773548355、rs768950086、rs777977216、rs773579566、rs773584404、rs778340398、rs768979263、rs777980971、rs778342059、rs760165295、rs796906115、rs778353317、rs796911608、rs773605150、rs773607669、rs773612358、rs778370172、rs773267272、rs778010263、rs796934830、rs773630002、rs778389269、rs773638118、rs778399130、rs778018364、rs760193524、rs769050524、rs769051766、rs773660515、rs773662455、rs773289430、rs778020847、rs796950423、rs778026525、rs796952236、rs768707927、rs797021864、rs773694181、rs797021885、rs778095154、rs778101444、rs778112566、rs778116360、rs778511180、rs778520180、rs778131235、rs769153572、rs768784571、rs778135942、rs778544716、rs773394234、rs778570842、rs769103536、rs773808340、rs778583925、rs768805863、rs778204738、rs773825993、rs778619776、rs778206648、rs773484114、rs769253996、rs778233737、rs773495523、rs778719114、rs768908878、rs778754301、rs778264419、rs773524240、rs778772059、rs778798631、rs768926509、rs768929143、rs778810623、rs778814075、rs778842299、rs768965165、rs778340868、rs768981921、rs778351672、rs778360453、rs769013651、rs773623537、rs769023489、rs773645974、rs778416357、rs773667417、rs773667774、rs773676018、rs769071290、rs769071361、rs769076003、rs778449285、rs778498254、rs773812695、rs769108171、rs769128763、rs778511014、rs773757900、rs778532226、rs769157145、rs769187039、rs769200257、rs778601005、rs778620135、rs769245631、rs773877069、rs778704122、rs778720482、rs778756741、rs778760038、rs778806841、及びrs778810425である。
【0347】
1つの例では、本開示で使用するガイドRNAは、表5に記載する少なくとも1つの20ヌクレオチド(nt)標的核酸配列を含み得る。表5に提供するのは、遺伝子記号及び当該遺伝子の配列識別子(遺伝子配列番号)、当該標的遺伝子の上流及び/または下流の1~5キロ塩基対を含む遺伝子配列(拡張遺伝子配列番号)、ならびに20nt標的核酸配列(20nt標的配列の配列番号)である。配列表では、それぞれの標的遺伝子、その遺伝子をターゲティングするための鎖(配列表中で(+)鎖または(-)鎖で示される)、関連するPAM型、及びそのPAM配列が、20nt標的核酸配列(配列番号5305~76012)の各々に関して記載されている。当技術分野では、「T」が「U」である場合のスペーサー配列は、表5に記載する20nt配列に対応するRNA配列であり得ることが理解される。
【表5】
【0348】
1つの例では、本開示で使用するガイドRNAは、少なくとも1つのスペーサー配列を含んでよく、これは、「T」が「U」である場合、20ヌクレオチド(nt)標的配列、例えば、これに限定されないが、配列番号5305~76012のいずれかに対応するRNA配列であり得る。
【0349】
1つの例では、本開示で使用するガイドRNAは、少なくとも1つのスペーサー配列を含んでよく、これは、「T」が「U」である場合、20nt配列、例えば、これに限定されないが、配列番号5305~76012のいずれかに対応するRNA配列である。
【0350】
1つの例では、あるガイドRNAは、NAAAAC、NNAGAAW、NNGRRT、NNNNGHTT、NRG、またはYTN等であるがこれらに限定されないPAM型と関連する20ヌクレオチド(nt)標的核酸配列を含み得る。非限定的な例として、特定の標的遺伝子及び特定のPAM型の20nt標的核酸配列は、「T」が「U」の場合、表6の20nt核酸配列のいずれか1つに対応するRNA配列であり得る。
【表6】
【0351】
1つの例では、あるガイドRNAは、YTNのPAM型と関連する20ヌクレオチド(nt)標的核酸配列を含み得る。非限定的な例として、特定の標的遺伝子の20nt標的核酸配列は、20ntコア配列を含む場合があり、ここで、該20ntコア配列は、「T」が「U」の場合、配列番号40531~76012に対応するRNA配列であり得る。別の非限定的な例として、特定の標的遺伝子の20nt標的核酸配列は、コア配列を含む場合があり、ここで、該コア配列は、「T」が「U」の場合、配列番号40531~76012のいずれかに対応するRNA配列の断片、部分、または領域であり得る。
【0352】
VI.他の治療アプローチ
遺伝子編集は、特定の配列をターゲティングするように操作されたヌクレアーゼを用いて行うことができる。これまでのところ、4種の主要なヌクレアーゼ、すなわち、メガヌクレアーゼ及びそれらの誘導体、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、ならびにCRISPR-Cas9ヌクレアーゼ系がある。これらのヌクレアーゼプラットフォームは、設計の難しさ、標的密度、及び作用機序の点で異なり、特に、ZFN及びTALENの特異性は、タンパク質-DNA相互作用によるものであり、RNA-DNA相互作用は主にCas9を導く。
【0353】
Cas9等のCRISPRエンドヌクレアーゼを本開示の方法に使用することができる。しかしながら、治療標的部位等の本明細書に記載の教示は、ZFN、TALEN、HE、もしくはMegaTAL等の他の形態のエンドヌクレアーゼに、またはヌクレアーゼの組み合わせを使用して適用され得る。しかしながら、本開示の教示をかかるエンドヌクレアーゼに適用するためには、とりわけ、特定の標的部位に向けられたタンパク質を操作する必要があるであろう。
【0354】
さらなる結合ドメインをCas9タンパク質に融合して特異性を高めることができる。これらの構築物の標的部位は、特定されたgRNA特異的部位に位置することになるが、例えば、ジンクフィンガードメイン用のさらなる結合モチーフが必要になる。Mega-TALの場合、メガヌクレアーゼがTALEのDNA結合ドメインに融合され得る。該メガヌクレアーゼドメインは特異性を高め、切断を提供することができる。同様に、不活性化またはデッドCas9(dCas9)は、切断ドメインに融合することができ、sgRNA/Cas9標的部位及び該融合DNA結合ドメインのための隣接結合部位を必要とする。これはおそらく、触媒的不活性化に加えて、追加の結合部位なしで結合を減少させるために、dCas9の何らかのタンパク質操作を必要とするであろう。
【0355】
ジンクフィンガーヌクレアーゼ
ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)は、II型エンドヌクレアーゼFokIの触媒ドメインに連結された操作されたジンクフィンガーDNA結合ドメインからなるモジュラータンパク質である。FokIは二量体としてのみ機能するため、一対のZFNを操作して、両側のDNA鎖上の同族の標的の「ハーフ部位」配列に結合し、それらの間に正確な間隔を置いて触媒活性FokI二量体を形成することができるようにする必要がある。それ自体は配列特異性を有さないFokIドメインが二量体化されると、ゲノム編集の開始段階としてZFNのハーフ部位間にDNA二本鎖切断が生じる。
【0356】
各ZFNのDNA結合ドメインは、通常、豊富なCys2-His2構造の3~6個のジンクフィンガーからなり、各フィンガーは主に標的DNA配列の1つの鎖のヌクレオチドのトリプレットを認識するが、4番目のヌクレオチドとの交差鎖相互作用もまた重要であり得る。DNAとの重要な接触をする位置におけるあるフィンガーのアミノ酸の改変は、所与のフィンガーの配列特異性を変化させる。従って、4フィンガーのジンクフィンガータンパク質は、12bpの標的配列を選択的に認識し、該標的配列は各フィンガーが寄与するトリプレット選好の複合物であるが、トリプレット選好は隣接するフィンガーによって様々な程度に影響され得る。ZFNの重要な側面は、単に個々のフィンガーを修飾することによって、ほとんどどのゲノムアドレスにも容易に再標的化され得ることであるが、これを成功させるためにはかなりの専門知識が必要とされる。ZFNのほとんどの用途では、4~6個のフィンガーのタンパク質が使用され、それぞれ12~18bpを認識する。従って、一対のZFNは、通常、ハーフ部位間の典型的な5~7bpのスペーサーを別にして、24~36bpの結合標的配列を認識する。結合部位は、15~17bp等のより大きなスペーサーでさらに分離することができる。設計過程で反復配列または遺伝子ホモログが排除されると仮定すると、この長さの標的配列はヒトゲノムにおいて独特である可能性が高い。それにもかかわらず、ZFNタンパク質-DNA相互作用はそれらの特異性において絶対的ではないため、2つのZFN間のヘテロ二量体として、または一方もしくは他方のZFNのホモ二量体としてのいずれかで、オフターゲット結合及び切断事象が生じる。後者の可能性は、FokIドメインの二量体化界面を操作して、互いにのみ二量体になることができ、それら自体では二量体になれない偏性ヘテロダイマー変異体としても知られる「プラス」及び「マイナス」変異体を作製することによって効果的に排除されている。偏性ヘテロ二量体を強制することでホモ二量体の形成を防ぐ。これは、ZFN、及びこれらのFokI変異体を採用する任意の他のヌクレアーゼの特異性を非常に高めている。
【0357】
様々なZFNベースの系が当技術分野において記載されており、それらの修正が定期的に報告されており、多数の参考文献がZFNの設計を導くために使用される規則及びパラメータを記載している。例えば、Segal et al.,Proc Natl Acad Sci USA 96(6):2758-63(1999)、Dreier B et al.,J Mol Biol.303(4):489-502(2000)、Liu Q et al.,J Biol Chem.277(6):3850-6(2002)、Dreier et al.,J Biol Chem 280(42):35588-97(2005)、及びDreier et al.,J Biol Chem.276(31):29466-78(2001)を参照されたい。
【0358】
転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)
TALENは、ZFNと同様に、遺伝子操作されたDNA結合ドメインがFokIヌクレアーゼドメインに連結され、一対のTALENが標的DNAの切断を達成するように直列に作用する、モジュラーヌクレアーゼの別の形式を表す。ZFNとの主な違いは、DNA結合ドメインの性質及びそれに関連する標的DNA配列の認識特性である。TALENのDNA結合ドメインはTALEタンパク質に由来し、これはもともと植物の細菌性病原体Xanthomonas sp.に記されていた。TALEは、33~35アミノ酸リピートの縦列配列からなり、各リピートは、通常20bpまでの長さの標的DNA配列中の単一の塩基対を認識し、40bpまでの総標的配列長を与える。各リピートのヌクレオチド特異性は、位置12及び13のたった2つのアミノ酸を含むリピート可変二残基(RVD)によって決定される。グアニン、アデニン、シトシン、及びチミン塩基は主に、それぞれ4つのRVD、すなわち、Asn-Asn、Asn-Ile、His-Asp、及びAsn-Glyによって認識される。これは、ジンクフィンガーよりもはるかに単純な認識コードを構成し、ひいては、ヌクレアーゼ設計に関して後者よりも優れた利点を表す。それにもかかわらず、ZFNと同様に、TALENのタンパク質-DNA相互作用は、それらの特異性において絶対的なものではなく、TALENにもまた、オフターゲット活性を減少させるため、FokIドメインの偏性ヘテロダイマー変異体の使用が役立っている。
【0359】
触媒機能が不活性化されるFokIドメインのさらなる変異体が作製されている。TALENまたはZFN対のいずれかの半分が不活性FokIドメインを含む場合、DSBではなく、一本鎖DNA切断(ニッキング)のみが標的部位で起こる。その結果は、Cas9切断ドメインの1つが不活性化されているCRISPR/Cas9またはCRISPR/Cpfl「ニッカーゼ」変異体の使用に匹敵する。DNAニックを使用して、HDRによるゲノム編集を促進することができるが、DSBによるよりも効率が低い。主な利点は、NHEJによる修復過誤が発生しやすいDSBとは異なり、オフターゲットニックが迅速かつ正確に修復されることである。
【0360】
様々なTALENベースの系が当技術分野において記載されており、それらの修正が定期的に報告されている。例えば、Boch,Science 326(5959):1509-12(2009)、Mak et al.,Science 335(6069):716-9(2012)、及びMoscou et al.,Science 326(5959):1501(2009)を参照されたい。「Golden Gate」プラットフォームに基づくTALENの使用、またはクローニングのスキームは、複数のグループによって記載されている。例えば、Cermak et al.,Nucleic Acids Res.39(12):e82(2011)、Li et al.,Nucleic Acids Res.39(14):6315-25(2011)、Weber et al.,PLoS One.6(2):e16765(2011)、Wang et al.,J Genet Genomics 41(6):339-47,Epub 2014 May 17(2014)、及びCermak T et al.,Methods Mol Biol. 1239:133-59(2015)を参照されたい。
【0361】
ホーミングエンドヌクレアーゼ
ホーミングエンドヌクレアーゼ(HE)は、配列特異的なエンドヌクレアーゼであり、長い認識配列(14~44塩基対)を有し、高い特異性で、すなわち、多くの場合当該ゲノムの特異部位でDNAを切断する。GIY-YIG、His-Cisボックス、H-N-H、PD-(D/E)xK、及びVsr様を含めた構造によって分類される少なくとも6つの既知のHEのファミリーがあり、これらは、真核生物、原生生物、細菌、古細菌、シアノバクテリア、及びファージを含めた広範な宿主に由来する。ZFN及びTALENと同様に、HEを使用して、ゲノム編集の最初の段階として、標的遺伝子座にDSBを作り出すことができる。さらに、いくつかの天然のHE及び操作されたHEは、DNAの一本鎖のみを切断し、部位特異的ニッカーゼとして機能する。HEの大きな標的配列及びそれらが提供する特異性は、それらを部位特異的DSBを作り出すための魅力的な候補にしている。
【0362】
様々なHEベースの系が当技術分野において記載されており、それらの修正が定期的に報告されている。例えば、Steentoft et al.,Glycobiology 24(8):663-80(2014)、Belfort and Bonocora,Methods Mol Biol.1123:1-26(2014)、Hafez and Hausner,Genome 55(8):553-69(2012)による総説、及びそれらの引用文献を参照されたい。
【0363】
MegaTAL/Tev-mTALEN/MegaTev
ハイブリッドヌクレアーゼのさらなる例として、MegaTALプラットフォーム及びTev-mTALENプラットフォームは、TALEの調節可能なDNA結合及び特異性の両方、ならびにHEの切断配列特異性を生かして、TALEのDNA結合ドメインと触媒活性HEとの融合を使用する。例えば、Boissel et al.,NAR 42:2591-2601(2014)、Kleinstiver et al.,G3 4:1155-65(2014)、及びBoissel and Scharenberg,Methods Mol. Biol.1239:171-96(2015)を参照されたい。
【0364】
さらなる変形において、MegaTev構造は、メガヌクレアーゼ(Mega)と、GIY-YIGホーミングエンドヌクレアーゼI-TevI由来のヌクレアーゼドメイン(Tev)の融合である。これら2つの活性部位は、DNA基質上で約30bp離れて位置しており、適合しない突出末端を有する2つのDSBを生じる。例えば、Wolfs et al.,NAR 42,8816-29(2014)を参照されたい。既存のヌクレアーゼベースのアプローチの他の組み合わせが発展し、本明細書に記載の標的ゲノム修飾を達成するのに有用になることが見込まれる。
【0365】
dCas9-FokIまたはdCpf1-Fok1及び他のヌクレアーゼ
上記のヌクレアーゼプラットフォームの構造的及び機能的特性を組み合わせることで、固有の欠失の一部を潜在的に克服することができるゲノム編集へのさらなるアプローチが提供される。例として、CRISPRゲノム編集系は通常、単一のCas9エンドヌクレアーゼを使用してDSBを作り出す。標的化の特異性は、標的DNAとのワトソン・クリック塩基対合を経るガイドRNA中の20または24ヌクレオチド配列(それに加えて、S.pyogenes由来のCas9の例では、隣接するNAGまたはNGGのPAM配列のさらなる2塩基)によって促進される。かかる配列は、ヒトゲノムにおいて独特であるのに十分な長さであるが、RNA/DNA相互作用の特異性は絶対的なものではなく、特に標的配列の5’ハーフにおいてかなりの乱雑が許容されることがあり、特異性を促進する塩基の数を事実上低減させる。これに対する1つの解決策は、Cas9またはCpf1の触媒機能を完全に不活性化させること、すなわち、RNA誘導DNA結合機能のみを保持すること、及びその代わりに不活性化されたCas9にFokIドメインを融合させることであった。例えば、Tsai et al.,Nature Biotech 32:569-76(2014)、及びGuilinger et al.,Nature Biotech.32:577-82(2014)を参照されたい。FokIが触媒的に活性になるためには二量体になる必要があるため、2個のFokI融合物をごく接近してつないで二量体を形成し、DNAを切断するために、2個のガイドRNAが必要とされる。これは、本質的に、結合標的部位の塩基数を2倍にし、それによってCRISPRベースの系による標的化のストリンジェンシーを高める。
【0366】
さらなる例として、TALEのDNA結合ドメインの触媒活性HE、例えば、I-TevIへの融合は、オフターゲット切断がさらに低減され得るという見込みで、TALEの調節可能なDNA結合及び特異性の両方、ならびにI-TevIの切断配列特異性を利用する。
【0367】
VII.キット
本開示は、本明細書に記載の方法を行うためのキットを提供する。あるキットは、ゲノムターゲティング核酸、ゲノムターゲティング核酸をコードするポリヌクレオチド、部位特異的ポリペプチド、部位特異的ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、及び/または本明細書に記載の方法の態様を行うために必要な任意の核酸もしくはタンパク質性分子、またはそれらの任意の組合せのうちの1つ以上を含み得る。
【0368】
あるキットは、(1)ゲノムターゲティング核酸をコードするヌクレオチド配列を含むベクター、(2)部位特異的ポリペプチドまたは該部位特異的ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むベクター、ならびに(3)該ベクター(複数可)及びまたはポリペプチドの再構成及び/または希釈用の試薬を含み得る。
【0369】
あるキットは、(1)(i)ゲノムターゲティング核酸をコードするヌクレオチド配列、及び(ii)部位特異的ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むベクター、ならびに(2)該ベクターの再構成及び/または希釈用の試薬を含み得る。
【0370】
上記キットのいずれかにおいて、該キットは、一分子ガイドゲノムターゲティング核酸を含むことができる。上記キットのいずれかにおいて、該キットは、二重分子ゲノムターゲティング核酸を含むことができる。上記キットのいずれかにおいて、該キットは、2つ以上の二重分子ガイドまたは一分子ガイドを含むことができる。該キットは、該核酸標的核酸をコードするベクターを含むことができる。
【0371】
上記キットのいずれかにおいて、該キットは、さらに、所望の遺伝子改変を達成するために挿入されるポリヌクレオチドを含むことができる。
【0372】
キットの成分は、別々の容器に入れる場合もあれば、単一の容器で組み合わせる場合もある。
【0373】
任意の上記キットは、さらに、1つ以上のさらなる試薬を含むことができる。かかるさらなる試薬は、緩衝剤、細胞にポリペプチドまたはポリヌクレオチドを導入するための緩衝剤、洗浄用緩衝剤、対照試薬、対照ベクター、対照RNAポリヌクレオチド、DNAからポリペプチドをin vitroで生成するための試薬、配列決定用のアダプター等から選択される。緩衝剤は、安定化用緩衝剤、再構成用緩衝剤、希釈用緩衝剤等でよい。キットはまた、当該エンドヌクレアーゼによるDNAのオンターゲットの結合もしくは切断を促進もしくは増進させるため、または標的化の特異性を高めるために用いることができる1つ以上の成分を含むことができる。
【0374】
上述した成分に加えて、キットはさらに、本方法を実施するために該キットの成分を使用するための説明書を含むことができる。本方法を実施するための説明書は、適切な記録媒体に記録することができる。例えば、該説明書は、紙またはプラスチック等のような基材に印刷することができる。該説明書は、添付文書として、該キットまたはその成分の(すなわち、その包装または分包と関連する)容器のラベル等に含まれ得る。該説明書は、適切なコンピューター読み取り可能な記憶媒体、例えば、CD-ROM、ディスケット、フラッシュドライブ等に含まれる電子記憶データファイルとして含まれ得る。一部の例では、実際の説明書を当該キットに含まずに、リモート・ソースから説明書を入手する手段(例えば、インターネット経由で)を提供する場合もある。この場合の例は、説明書を見ることができる、及び/または説明書をダウンロードすることができるウェブアドレスを含むキットである。説明書と同様に、説明書を入手するためのこの手段は、適切な基材に記録することができる。
【0375】
VIII.本発明の特定の方法及び組成物
従って、本開示は、特に、本開示に従う以下の非限定的な方法に関する。第一の方法、すなわち、方法1において、本開示は、細胞の電位依存性ナトリウムチャネルタイプXアルファサブユニット(SCN10A)遺伝子を、以下を含むゲノム編集によって編集するための方法を提供する。すなわち、SCN10A遺伝子またはSCN10A調節要素の中もしくはその近傍で、該SCN10A遺伝子の中もしくはその近傍の少なくとも1つのヌクレオチドの永久的な挿入、欠失、または突然変異の1つ以上をもたらす1つ以上の一本鎖切断(SSB)または二本鎖切断(DSB)をきたすために当該細胞に1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼを導入し、それにより、SCN10A遺伝子産物の発現もしくは機能を低減または除去する。
【0376】
別の方法、すなわち、方法2において、本開示は、SCN10A関連の状態または障害を有する患者の治療のための以下を含むex vivo方法を提供する。すなわち、電位依存性ナトリウムチャネルタイプXアルファサブユニット(SCN10A)遺伝子、またはSCN10A遺伝子の調節要素をコードする他のDNA配列の中もしくは近傍の、患者特異的な人工多能性幹細胞(iPSC)を編集し、編集されたiPSCを末梢神経系のニューロンに分化させ、該末梢神経系のニューロンを当該患者に投与する。
【0377】
別の方法、すなわち、方法3において、本開示は、SCN10A関連の状態または障害を有する患者の治療のための以下を含むex vivo方法を提供する。すなわち、患者特異的な人工多能性幹細胞(iPSC)を入手し、電位依存性ナトリウムチャネルタイプXアルファサブユニット(SCN10A)遺伝子、またはSCN10A遺伝子の調節要素をコードする他のDNA配列の中もしくは近傍のiPSCを編集し、編集されたiPSCを末梢神経系のニューロンに分化させ、該末梢神経系のニューロンを当該患者に投与する。
【0378】
別の方法、すなわち、方法4において、本開示は、編集段階が以下を含む方法2または3の方法を提供する。すなわち、SCN10A遺伝子またはSCN10A調節要素の中もしくはその近傍で、該SCN10A遺伝子の中もしくはその近傍の少なくとも1つのヌクレオチドの永久的な挿入、欠失、または突然変異の1つ以上をもたらす1つ以上の一本鎖切断(SSB)または二本鎖切断(DSB)をきたすために該iPSCに1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼを導入し、それにより、SCN10A遺伝子産物の発現もしくは機能を低減または除去する。
【0379】
別の方法、すなわち、方法5において、本開示は、SCN10A関連の状態または障害を有する患者の治療のための以下を含むex vivo方法を提供する。すなわち、電位依存性ナトリウムチャネルタイプXアルファサブユニット(SCN10A)遺伝子、またはSCN10A遺伝子の調節要素をコードする他のDNA配列の中もしくは近傍の、間葉系幹細胞を編集し、編集された間葉系幹細胞を末梢神経系のニューロンに分化させ、該末梢神経系のニューロンを当該患者に投与する。
【0380】
別の方法、すなわち、方法6において、本開示は、SCN10A関連の状態または障害を有する患者の治療のための以下を含むex vivo方法を提供する。すなわち、当該患者から間葉系幹細胞を入手し、電位依存性ナトリウムチャネルタイプXアルファサブユニット(SCN10A)遺伝子、またはSCN10A遺伝子の調節要素をコードする他のDNA配列の中もしくは近傍の間葉系幹細胞を編集し、編集された間葉系幹細胞を末梢神経系のニューロンに分化させ、該末梢神経系のニューロンを当該患者に投与する。
【0381】
別の方法、すなわち、方法7において、本開示は、編集段階が以下を含む方法5または6の方法を提供する。すなわち、SCN10A遺伝子またはSCN10A調節要素の中もしくはその近傍で、該SCN10A遺伝子の中もしくはその近傍の少なくとも1つのヌクレオチドの永久的な挿入、欠失、または突然変異の1つ以上をもたらす1つ以上の一本鎖切断(SSB)または二本鎖切断(DSB)をきたすために該間葉系幹細胞に1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼを導入し、それにより、SCN10A遺伝子産物の発現もしくは機能を低減または除去する。
【0382】
別の方法、すなわち、方法8において、本開示は、SCN10A関連の障害を有する患者の治療のための以下を含むin vivo方法を提供する。すなわち、当該患者の細胞の電位依存性ナトリウムチャネルタイプXアルファサブユニット(SCN10A)遺伝子を編集する。
【0383】
別の方法、すなわち、方法9において、本開示は、編集段階が以下を含む方法8の方法を提供する。すなわち、SCN10A遺伝子またはSCN10A調節要素の中もしくはその近傍で、該SCN10A遺伝子の中もしくはその近傍の少なくとも1つのヌクレオチドの永久的な挿入、欠失、または突然変異の1つ以上をもたらす1つ以上の一本鎖切断(SSB)または二本鎖切断(DSB)をきたすために当該細胞に1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼを導入し、それにより、SCN10A遺伝子産物の発現もしくは機能を低減または除去する。
【0384】
別の方法、すなわち、方法10において、本開示は、当該細胞が末梢神経系のニューロンである方法8~9のいずれか1つの方法を提供する。
【0385】
別の方法、すなわち、方法11において、本開示は、当該1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼが、直接の神経節内もしくは脊髄内注入を介して、または髄腔内送達によって末梢神経系のニューロンに送達される、方法10の方法を提供する。
【0386】
別の方法、すなわち、方法12において、本開示は、細胞のSCN10A遺伝子の連続ゲノム配列を改変する以下を含む方法を提供する。すなわち、1つ以上の一本鎖切断(SSB)または二本鎖切断(DSB)をきたすために当該細胞を1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼと接触させる。
【0387】
別の方法、すなわち、方法13において、本開示は、該連続ゲノム配列の改変が、SCN10A遺伝子の1つ以上のエクソンで生じる、方法12の方法を提供する。
【0388】
別の方法、すなわち、方法14において、本開示は、当該1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼが、配列番号1~620の配列のいずれか及び配列番号1~620に開示する配列のいずれかに対して少なくとも90%の相同性を有する変異体から選択される、方法1~13のいずれか1つの方法を提供する。
【0389】
別の方法、すなわち、方法15において、本開示は、当該1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼが、1つ以上のタンパク質またはポリペプチドである、方法14の方法を提供する。
【0390】
別の方法、すなわち、方法16において、本開示は、当該1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼが、該1つ以上のDNAエンドヌクレアーゼをコードする1つ以上のポリヌクレオチドである、方法14の方法を提供する。
【0391】
別の方法、すなわち、方法17において、本開示は、当該1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼが、該1つ以上のDNAエンドヌクレアーゼをコードする1つ以上のリボ核酸(RNA)である、方法16の方法を提供する。
【0392】
別の方法、すなわち、方法18において、本開示は、当該1つ以上のリボ核酸(RNA)が、1つ以上の化学修飾RNAである、方法17の方法を提供する。
【0393】
別の方法、すなわち、方法19において、本開示は、当該1つ以上のリボ核酸(RNA)が、コード領域において化学的に修飾される、方法18の方法を提供する。
【0394】
別の方法、すなわち、方法20において、本開示は、当該1つ以上のポリヌクレオチドまたは1つ以上のリボ核酸(RNA)が、コドン最適化される、方法16~19のいずれか1つの方法を提供する。
【0395】
別の方法、すなわち、方法21において、本開示は、当該方法がさらに、1つ以上のgRNAまたは1つ以上のsgRNAを当該細胞に導入することを含む、方法1~20のいずれか1つの方法を提供する。
【0396】
別の方法、すなわち、方法22において、本開示は、当該1つ以上のgRNAまたは1つ以上のsgRNAが、SCN10A遺伝子の中または近傍のDNA配列に相補的なスペーサー配列を含む、方法21の方法を提供する。
【0397】
別の方法、すなわち、方法23において、本開示は、当該1つ以上のgRNAまたは1つ以上のsgRNAが化学的に修飾される、方法21~22のいずれかの方法を提供する。
【0398】
別の方法、すなわち、方法24において、本開示は、当該1つ以上のgRNAまたは1つ以上のsgRNAが、当該1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼと事前複合体化される、方法21~23のいずれか1つの方法を提供する。
【0399】
別の方法、すなわち、方法25において、本開示は、当該事前複合体化が、当該1つ以上のgRNAまたは1つ以上のsgRNAの、当該1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼに対する共有結合を伴う、方法24の方法を提供する。
【0400】
別の方法、すなわち、方法26において、本開示は、当該1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼがリポソームまたは脂質ナノ粒子に処方される、方法14~25のいずれか1つの方法を提供する。
【0401】
別の方法、すなわち、方法27において、本開示は、当該1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼが、当該1つ以上のgRNAもしくは1つ以上のsgRNAも含むリポソームまたは脂質ナノ粒子に処方される、方法21~25のいずれか1つの方法を提供する。
【0402】
別の方法、すなわち、方法28において、本開示は、当該1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼが、AAVベクター粒子内でコードされる、方法12または21~22のいずれか1つの方法を提供する。
【0403】
別の方法、すなわち、方法29において、本開示は、当該1つ以上のgRNAまたは1つ以上のsgRNAが、AAVベクター粒子内でコードされる、方法21~22のいずれかの方法を提供する。
【0404】
別の方法、すなわち、方法30において、本開示は、当該1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼが、当該1つ以上のgRNAまたは1つ以上のsgRNAもコードするAAVベクター粒子内でコードされる、方法21~22のいずれかの方法を提供する。
【0405】
別の方法、すなわち、方法31において、本開示は、当該AVVベクター粒子が、配列番号4734~5302及び表2に開示のもののいずれかからなる群から選択される、方法28~30のいずれかの方法を提供する。
【0406】
本開示はまた、配列番号5305~76012のいずれかに対応するRNA配列である少なくとも1つのスペーサー配列を含む一分子ガイドRNAを含む組成物、すなわち、組成物1を提供する。
【0407】
別の組成物、すなわち、組成物2において、本開示は、当該一分子ガイドRNAが、さらにスペーサーエクステンション領域を含む、組成物1の一分子ガイドRNAを提供する。
【0408】
別の組成物、すなわち、組成物3において、本開示は、当該一分子ガイドRNAが、さらにtracrRNAエクステンション領域を含む、組成物1の一分子ガイドRNAを提供する。
【0409】
別の組成物、すなわち、組成物4において、本開示は、当該一分子ガイドRNAが化学的に修飾される、組成物1~3の一分子ガイドRNAを提供する。
【0410】
別の組成物、すなわち、組成物5において、本開示は、部位特異的ポリペプチドと事前複合体化される組成物1~4の一分子ガイドRNAを提供する。
【0411】
別の組成物、すなわち、組成物6において、本開示は、DNAエンドヌクレアーゼと事前複合体化される組成物1~5の一分子ガイドRNAを提供する。
【0412】
別の組成物、すなわち、組成物7において、本開示は、当該DNAエンドヌクレアーゼが、Cas9またはCpf1エンドヌクレアーゼである、組成物6の組成物を提供する。
【0413】
別の組成物、すなわち、組成物8において、本開示は、当該Cas9またはCpf1エンドヌクレアーゼが、S.pyogenes Cas9、S.aureus Cas9、N.meningitides Cas9、S.thermophilus CRISPR1 Cas9、S.thermophilus CRISPR 3 Cas9、T.denticola Cas9、L.bacterium ND2006 Cpf1、及びAcidaminococcus sp.BV3L6 Cpf1、ならびにこれらエンドヌクレアーゼに対して少なくとも90%の相同性を有する変異体からなる群から選択される、組成物7の組成物を提供する。
【0414】
別の組成物、すなわち、組成物9において、本開示は、当該Cas9またはCpf1エンドヌクレアーゼが、1つ以上の核移行シグナル(NLS)を含む、組成物8の組成物を提供する。
【0415】
別の組成物、すなわち、組成物10において、本開示は、少なくとも1つのNLSが、当該Cas9もしくはCpf1エンドヌクレアーゼのアミノ末端の50アミノ酸に、または50アミノ酸以内にある、及び/または少なくとも1つのNLSが、当該Cas9もしくはCpf1エンドヌクレアーゼのカルボキシ末端の50アミノ酸に、または50アミノ酸以内にある、組成物9の組成物を提供する。
【0416】
別の組成物、すなわち、組成物11において、本開示は、組成物1~4のいずれかの一分子ガイドRNAをコードするDNAを提供する。
【0417】
別の組成物、すなわち、組成物12において、本開示は、Cas9またはCpf1エンドヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド及び組成物1~4の少なくとも1つの一分子ガイドRNAを含む、非自然発生のCRISPR/Cas系を提供する。
【0418】
別の組成物、すなわち、組成物13において、本開示は、Cas9またはCpf1エンドヌクレアーゼをコードする当該ポリヌクレオチドが、S.pyogenes Cas9、S.aureus Cas9、N.meningitides Cas9、S.thermophilus CRISPR1 Cas9、S.thermophilus CRISPR 3 Cas9、T.denticola Cas9、L.bacterium ND2006 Cpf1、及びAcidaminococcus sp.BV3L6 Cpf1、ならびにこれらエンドヌクレアーゼに対して少なくとも90%の相同性を有する変異体からなる群から選択される、組成物12のCRISPR/Cas系を提供する。
【0419】
別の組成物、すなわち、組成物14において、本開示は、Cas9またはCpf1エンドヌクレアーゼをコードする当該ポリヌクレオチドが、1つ以上の核移行シグナル(NLS)を含む、組成物13のCRISPR/Cas系を提供する。
【0420】
別の組成物、すなわち、組成物15において、本開示は、少なくとも1つのNLSが、Cas9もしくはCpf1エンドヌクレアーゼをコードする当該ポリヌクレオチドのアミノ末端の50アミノ酸に、または50アミノ酸以内にある、及び/または少なくとも1つのNLSが、Cas9もしくはCpf1エンドヌクレアーゼをコードする当該ポリヌクレオチドのカルボキシ末端の50アミノ酸に、または50アミノ酸以内にある、組成物14のCRISPR/Cas系を提供する。
【0421】
別の組成物、すなわち、組成物16において、本開示は、Cas9またはCpf1エンドヌクレアーゼをコードする当該ポリヌクレオチドが、真核細胞での発現に対してコドン最適化される、組成物15のCRISPR/Cas系を提供する。
【0422】
別の組成物、すなわち、組成物17において、本開示は、組成物12~16のいずれか1つのCRISPR/Cas系をコードするDNAを提供する。
【0423】
別の組成物、すなわち、組成物18において、本開示は、組成物12~17のいずれか1つのDNAを含むベクターを提供する。
【0424】
別の組成物、すなわち、組成物19において、本開示は、当該ベクターがプラスミドである組成物18のベクターを提供する。
別の組成物、すなわち、組成物20において、本開示は、当該ベクターがAAVベクター粒子であり、該AAVベクター粒子が、配列番号4734~5302及び表2に開示のものからなる群から選択される、組成物18のベクターを提供する。
【0425】
IX.定義
「含む(comprising)」または「含む(comprise)」という用語は、本開示にとって必須の組成物、方法、及びそれらのそれぞれの成分(複数可)に関して用いられるが、必須であるかどうかにかかわらず、特定されていない要素の包含も受け入れる。
【0426】
「~から本質的になる」という用語は、所与の態様に必要な要素を指す。この用語は、本開示のその態様の基本的及び新規な、または機能的な特性(複数可)に実質的に影響を及ぼさない追加の要素の存在を許可する。
【0427】
「~からなる」という用語は、本明細書に記載の組成物、方法、及びそれらのそれぞれの成分を指し、これらは、当該態様のその記載に列挙されていない任意の要素を除く。
【0428】
単数形「a」、「an」、及び「the」は、その文脈が明らかにそうではないことを示さない限り、複数の言及を含む。
【0429】
本明細書に列挙される任意の数値範囲は、列挙範囲内に含まれる同じ数値精度の(すなわち、同じ特定の桁数を有する)すべての部分範囲を示す。例えば、列挙範囲「1.0~10.0」は、列挙最小値1.0と列挙最大値10.0の間の(及びそれらを含む)すべての部分範囲、例えば、本明細書の本文中に「2.4~7.6」の範囲が明示的に列挙されていない場合でも、「2.4~7.6」を示す。従って、本出願人は、本明細書に明示的に列挙される範囲内に含まれる同じ数値精度の任意の部分範囲を明示的に列挙するため、特許請求の範囲を含め、本明細書を補正する権利を留保する。すべてのかかる範囲は、本質的に本明細書に記載されており、従って、任意のかかる部分範囲を明示的に列挙するための補正は、米国特許法第112条(a)及びEPC123条(2)の要件を含めた、明細書記載要件、記載の十分性の要件、及び追加事項の要件に適合する。さらに、明示的に特定されていない限り、または文脈上必要とされない限り、本明細書に記載のすべての数値パラメータ(例えば、値、範囲、量、パーセンテージ等を表すもの)は、数字の前に「約」という単語が明示的に現れていない場合であっても、「約」という単語によって前置きされたものとして解釈され得る。さらに、本明細書に記載の数値パラメータは、報告された有効桁数、数値精度を考慮し、通常の丸め技法を適用することによって解釈されるべきである。本明細書に記載の数値パラメータは、該パラメータの数値を測定するために使用される基本的な測定技術に固有の変動特性を必然的に有することも理解される。
【0430】
本開示の1つ以上の例の詳細を以下の添付の説明に記載する。本明細書に記載のものと類似または同等の任意の材料及び方法を、本開示の実施または試験に用いることができるが、好ましい材料及び方法をここに記載する。本開示の他の特徴、目的、及び利点は、本説明から明らかになろう。本説明において、単数形は、その文脈が明らかにそうではないことを示さない限り、複数形も含む。他に定義されない限り、本説明で使用するすべての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。矛盾する場合には、本説明が統制する。
【0431】
本開示を、以下の非限定的な実施例によってさらに詳しく説明する。
【実施例0432】
X.実施例
本開示は、本発明の例示的な非限定的態様を与える以下の実施例を参照することにより、さらに十分に理解されるであろう。
【0433】
これら実施例は、SCN10A遺伝子の永久的な欠失または突然変異をもたらし、SCN10Aタンパク質活性を低減または除去する、本明細書において「ゲノム修飾」と呼ばれる規定の治療的ゲノム欠失、挿入、または置換を、SCN10A遺伝子において作り出すための例示的なゲノム編集技術としてのCRISPR系の使用を記載する。
【0434】
様々なCasオルソログを切断に関して評価する。gRNAは、RNAとして送達し、プラスミド中でU6プロモーターから発現させる。対応するCasタンパク質は、mRNAとして送達して目的の細胞株にノックインし構成的に発現させるか、またはタンパク質として送達する。すべての形式でのgRNA活性は、HEK293T細胞でTIDE分析を用いて評価する。
【0435】
規定の治療的修飾の導入は、本明細書に記載及び説明する通り、疼痛の潜在的な改善のための新規な治療方法を表す。
【0436】
実施例1-SCN10A遺伝子のCRISPR/SpCas9標的部位
SCN10A遺伝子の領域を、標的部位についてスキャンした。各領域を、NRG配列を有するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)についてスキャンした。配列表の配列番号12754~40530に示す通り、該PAMに対応するgRNAの20bpスペーサー配列を次に特定した。
【0437】
実施例2-SCN10A遺伝子のCRISPR/SaCas9標的部位
SCN10A遺伝子の領域を、標的部位についてスキャンした。各領域を、NNGRRT配列を有するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)についてスキャンした。配列表の配列番号6772~9983に示す通り、該PAMに対応するgRNAの20bpスペーサー配列を次に特定した。
【0438】
実施例3-SCN10A遺伝子のCRISPR/StCas9標的部位
SCN10A遺伝子の領域を、標的部位についてスキャンした。各領域を、NNAGAAW配列を有するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)についてスキャンした。配列表の配列番号5703~6771に示す通り、該PAMに対応するgRNAの20bpスペーサー配列を次に特定した。
【0439】
実施例4-SCN10A遺伝子のCRISPR/TdCas9標的部位
SCN10A遺伝子の領域を、標的部位についてスキャンした。各領域を、NAAAAC配列を有するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)についてスキャンした。配列表の配列番号5305~5702に示す通り、該PAMに対応するgRNAの20bpスペーサー配列を次に特定した。
【0440】
実施例5-SCN10A遺伝子のCRISPR/NmCas9標的部位
SCN10A遺伝子の領域を、標的部位についてスキャンした。各領域を、NNNNGHTT配列を有するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)についてスキャンした。配列表の配列番号9984~12753に示す通り、該PAMに対応するgRNAの20bpスペーサー配列を次に特定した。
【0441】
実施例6-SCN10A遺伝子のCRISPR/Cpf1標的部位
SCN10A遺伝子の領域を、標的部位についてスキャンした。各領域を、YTN配列を有するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)についてスキャンした。配列表の配列番号40531~76012に示す通り、該PAMに対応するgRNAの20bpスペーサー配列を次に特定した。
【0442】
実施例7-ガイド鎖のバイオインフォマティクス分析
候補のガイドを次に、オンターゲット及びオフターゲットの両方の部位での理論的結合ならびに実験的に評価される活性の両方を含む単一過程または多段過程でスクリーニング及び選択する。実例として、隣接PAMとともに特定のオンターゲットの部位、例えば、SCN10A遺伝子内の部位とマッチする配列を有する候補のガイドを、以下により詳細に記載及び説明する通り、オフターゲットでの結合を評価するために利用可能な様々なバイオインフォマティクスツールの1つ以上を用いて、同様の配列を有するオフターゲットの部位で切断するそれらの可能性を評価し、目的のもの以外の染色体位置での影響の可能性を評価することができる。
【0443】
オフターゲット活性の可能性が比較的低いと予測される候補を、次にそれらのオンターゲット活性、その後様々な部位でのオフターゲット活性を測定するために実験的に評価することができる。好ましいガイドは、選択された遺伝子座で所望のレベルの遺伝子編集を達成するために十分に高いオンターゲット活性、及び他の染色体遺伝子座での改変の可能性を低減するために比較的低いオフターゲット活性を有する。オンターゲット対オフターゲットの活性比は、しばしばガイドの「特異性」と呼ばれる。
【0444】
予測されるオフターゲット活性の最初のスクリーニング用には、既知の公開された多くのバイオインフォマティクスツールがあり、これらを用いて、最も可能性の高いオフターゲット部位を予測することができる。CRISPR/Cas9またはCRISPR/Cpf1ヌクレアーゼ系における標的部位への結合は、相補的配列間のワトソン・クリック塩基対合によって引き起こされるため、相違(ひいてはオフターゲット結合の可能性の減少)の程度は、本質的に一次配列の違いであるミスマッチ及びバルジ、すなわち、非相補性塩基に変化される塩基、ならびに標的部位に対して、潜在的なオフターゲット部位での塩基の挿入または欠失に関連している。COSMID(CRISPR Off-target Sites with Mismatches,Insertions and Deletions)(crispr.bme.gatech.eduにてウェブ上で利用可能)と呼ばれる典型的なバイオインフォマティクスツールが、かかる類似性をまとめている。他のバイオインフォマティクスツールとしては、autoCOSMID及びCCTopが挙げられるがこれらに限定されない。
【0445】
バイオインフォマティクスを用いて、オフターゲット切断を最小にし、突然変異及び染色体再配置の有害作用を低減した。CRISPR/Cas9系に関する研究で、特にPAM領域から遠位でのガイド鎖のDNA配列への塩基対ミスマッチ及び/またはバルジを伴う非特異的ハイブリダイゼーションに起因するオフターゲット活性の可能性が示唆された。従って、塩基対ミスマッチに加えて、RNAガイド鎖とゲノム配列間に挿入及び/または欠失を有する潜在的なオフターゲット部位を特定することができるバイオインフォマティクスツールを有することが重要である。該オフターゲット予測アルゴリズムに基づくバイオインフォマティクスツールであるCCTopを用いて、潜在的なCRISPRのオフターゲット部位についてゲノムを検索した(CCTopは、crispr.cos.uni-heidelberg.de/にてウェブ上で利用可能である)。その出力は、ミスマッチの数及び位置に基づく潜在的なオフターゲット部位のリストをランク付けして、より多くの情報に基づく標的部位の選択を可能にし、オフターゲット切断の可能性が高い部位の使用を回避した。
【0446】
ある領域におけるgRNA標的部位の推定されたオンターゲット及び/またはオフターゲット活性を量るさらなるバイオインフォマティクスのパイプラインを使用した。活性を予測するために使用され得る他の特徴としては、問題の細胞型に関する情報、DNAアクセシビリティ、クロマチン状態、転写因子の結合部位、転写因子の結合データ、及び他のCHIP-seqデータが挙げられる。編集効率を予測するさらなる因子、例えば、gRNA対の相対位置及び方向、局所的配列の特徴、ならびにマイクロホモロジー等を検討した。
【0447】
CRISPR/Cas9標的部位の最初の評価及びスクリーニングは、SCN10A遺伝子のエクソン1~17、イントロン1~16、エクソン1の上流100~300bpに位置する配列、及び隣接イントロン配列の100~300bpに重点を置いた。これらのgRNAはまた、1つ以上のヌクレオチド、エクソン配列、及び/またはイントロン配列を編集するために使用することもできる。
【0448】
最初のバイオインフォマティクス分析では、SCN10A遺伝子のエクソン1~17、イントロン1~16、エクソン1の上流100~300bpに位置する配列、及びイントロン配列に隣接する100~300bp配列をターゲティングする1095のgRNAが特定された。予測オフターゲット部位のさらなる分析及びSCN10A遺伝子内のgRNA標的部位の評価によって、192のgRNAがスクリーニング用に選択された。SCN10A遺伝子のエクソン1~9をターゲティングする192の単一gRNAの優先順位リストを、spCas9を用いて切断効率について調べた(表7)。
【表7-1】
【表7-2】
【表7-3】
【表7-4】
【表7-5】
【0449】
これらの配列番号は、ゲノム標的のDNA配列を表しているが、gRNAまたはsgRNAのスペーサー配列は、このDNA配列のRNAバージョンになることに留意されたい。
【0450】
実施例8-in vitro転写(IVT)gRNAのスクリーニングにおける好ましいガイドの検討
同族DNA標的領域を編集することができる広範囲のgRNA対を特定するため、in vitro転写(IVT)gRNAのスクリーニングを行った。関連ゲノム配列を、gRNA設計ソフトウェアを用いる分析に供した。得られたgRNAのリストは、配列の一意性(ゲノムの他の部位で完全なマッチがないgRNAのみを選抜した)、及び最小のオフターゲット予測に基づいて上記のgRNAの選択リストに絞った。このgRNAのセットをin vitroで転写し、Lipofectamine MessengerMAXを用いてCas9を構成的に発現するHEK293T細胞にトランスフェクトした。細胞を、トランスフェクションの48時間後に採取し、ゲノムDNAを単離し、TIDE分析を用いて切断効率を評価した(
図2A~H、
図3A~C)。
【0451】
有意な活性を有するgRNAまたはgRNA対をその後培養細胞中で追跡調査し、SCN10Aのタンパク質発現を測定してもよい。オフターゲット事象も追跡することができる。様々な細胞をトランスフェクトすることができ、遺伝子修正のレベル及び起こり得るオフターゲット事象が測定され得る。これらの実験で、ヌクレアーゼ及びドナーの設計ならびに送達が最適化される。
【0452】
実施例9-オフターゲット活性に関する細胞内での好ましいガイドの検討
上記実施例におけるIVTスクリーニングからの最良のオンターゲット活性を有するgRNAを、オフターゲット活性に関して、ハイブリッドキャプチャ分析、GUIDE Seq.、及び全ゲノム配列決定を他の方法に加えて用いて検討した。
【0453】
実施例10-関連する動物モデルでのin vivo試験
CRISPR-Cas9/ガイドの組み合わせを評価した後、先頭の処方を動物モデルにてin vivoで試験する。
【0454】
ヒト細胞での培養で、上記の通り、ヒト標的及びバックグラウンドヒトゲノムに対する直接の試験が可能になる。
【0455】
前臨床有効性及び安全性評価は、マウスモデルにおける末梢神経系の改変マウスまたはヒトニューロンの生着を通して観察することができる。修飾細胞は、生着後数か月で観察することができる。
【0456】
XI.均等物及び範囲
当業者であれば、日常的な実験のみを用いて、本明細書に記載の本発明に従う特定の実施例に対する多くの均等物を認識し、または確認することができるであろう。本開示の範囲は、上記の説明に限定されることを意図するものではなく、添付の特許請求の範囲に記載の通りである。
【0457】
ある群の1つ以上の成員間に「または」を含む特許請求の範囲または説明は、当該群の成員のうちの1つ、2つ以上、またはすべてが、所与の製品または過程の中に含まれ、その中で使用され、またはそれに関連する場合に、それとは反対に示されない限り、または文脈から明らかでない限り、満たされると見なされる。本開示は、当該群の厳密に1つの成員が所与の製品または過程に含まれ、その中で使用され、またはそれに関連する例を含む。本開示は、2つ以上または全部の群の成員が所与の製品または過程に含まれ、その中で使用され、またはそれに関連する例を含む。
【0458】
さらに、従来技術の範囲内にある本開示のいかなる特定の例も、特許請求の範囲のいずれか1つ以上から明示的に除外され得ることを理解されたい。かかる例は当業者に既知であると考えられることから、該除外が本明細書に明示的に記載されていない場合であっても、それらは除外され得る。本開示の組成物のいかなる特定の例(例えば、任意の抗生物質、治療成分、または活性成分、任意の製造方法、任意の使用方法等)も、先行技術の存在との関係の有無にかかわらず、何らかの理由で、特許請求の範囲のいずれか1つ以上から除外することができる。
【0459】
使用されている単語は、限定ではなく記述の単語であること、及び添付の特許請求の範囲内において、そのより広い観点で、本開示の真の範囲及び趣旨から逸脱することなく変更がなされ得ることを理解されたい。
【0460】
本発明は、いくつかの記載された実施例に関して、ある程度の特殊性でかなり詳しく説明されてきたが、いかなるかかる項目もしくは実施例またはいかなる特定の実施例にも限定されることを意図するものでなく、添付の特許請求の範囲に関して、従来技術を考慮し、かかる特許請求の範囲の最大限広範な解釈を与えるように、従って、意図される本発明の範囲を効果的に包含するように解釈されるべきである。
【0461】
例示的実施例に関する注記
本開示は、本開示の様々な態様及び/またはその潜在的な用途を例示する目的で様々な特定の態様の説明を提供すると同時に、当業者には、変形及び修正が想到されるであろうことが理解される。
【0462】
従って、本明細書に記載の本発明(複数可)は、本明細書に提供する特定の例示的な態様によってより狭く定義されるものではなく、少なくともそれらが請求される通りの広さであるように理解されるべきである。
【0463】
本明細書で特定される任意の特許、刊行物、または他の開示資料は、特に明記しない限り、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれるが、ただし、組み込まれた資料が本明細書に明示的に記載されている既存の説明、定義、記述、または他の開示資料と矛盾しない範囲内においてのみである。従って、必要な範囲で、本明細書に記載されている明示的な開示は、参照することにより組み込まれるいかなる矛盾する資料にも優先する。参照することにより本明細書に組み込まれるといわれるが、本明細書に記載の既存の定義、記述、または他の開示試料と矛盾するいかなる試料またはその一部も、組み込まれた試料及び既存の開示資料間で矛盾が生じない限りにおいてのみ組み込まれる。出願人らは、参照することにより本明細書に組み込まれる任意の主題またはその一部を明示的に列挙するために、本明細書を補正する権利を留保する。