(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189891
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】車両搬送装置
(51)【国際特許分類】
E04H 6/12 20060101AFI20221215BHJP
E04H 6/42 20060101ALI20221215BHJP
E04H 6/30 20060101ALI20221215BHJP
E04H 6/24 20060101ALI20221215BHJP
B60P 3/07 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
E04H6/12 A
E04H6/42 Z
E04H6/30 A
E04H6/24 B
B60P3/07
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167586
(22)【出願日】2022-10-19
(62)【分割の表示】P 2019034655の分割
【原出願日】2019-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】鹿野 直人
(72)【発明者】
【氏名】室園 智紀
(72)【発明者】
【氏名】近藤 修平
(57)【要約】
【課題】駐車領域のスペースを有効に活用することを可能にする車両搬送装置を提供する。
【解決手段】車両搬送装置10は、車両94の下に入り、車両94の車輪96を持ち上げて走行する第1ロボット12aおよび第2ロボット12bで構成される。第1ロボット12aおよび第2ロボット12bは、ロボットとロボットの周囲に存在する物体との距離を検出する測距センサ54と、ロボットの走行動作および荷役動作を制御するロボット演算部64と、を備え、ロボット演算部64は、駐車領域で車両94を下す際に、測距センサ54により検出される情報に基づいて車両94の駐車位置を調整する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を持ち上げて車両を搬送する車両搬送装置であって、
前記車両の下に入り、前記車両の前輪を持ち上げて走行する第1ロボットと、
前記車両の下に入り、前記車両の後輪を持ち上げて走行する第2ロボットと、で構成され、
前記第1ロボットおよび前記第2ロボットは、
本体の全方向への走行と旋回を自在に行う全方向車輪と、
前記全方向車輪に対して駆動力を伝達する駆動力伝達機構と、
リフトアームと、当接部と、前記リフトアームを回転移動させる荷役モータとを有する荷役機構と、
ロボットと前記ロボットの周囲に存在する物体との距離を検出する測距センサと、
前記ロボットの走行動作および荷役動作を制御するロボット演算部と、を備え、
前記リフトアームは、前記第1ロボットまたは前記第2ロボットの幅方向と平行する軸部材と、前記軸部材と同心であり前記軸部材を中心にして回転自在である円筒部材と、を有する回転棒であり、
前記当接部は、ロボット本体に固定され、かつ、前記第1ロボットまたは前記第2ロボットが前記前輪または前記後輪に接近することによって前記前輪または前記後輪の接地面に当接し、
前記荷役モータが動作すると、前記リフトアームは収納位置から展開位置に回転移動し、前記前輪または前記後輪の接地面のうち前記当接部が当接する接地面とは前後逆の接地面に当接し、
更に前記荷役モータが動作すると、更に前記リフトアームは回転移動し前記当接部に接近して、前記リフトアームが前記前輪または前記後輪を上方に持ち上げ、
前記ロボット演算部は、駐車領域で前記車両を下す際に、前記測距センサにより検出される情報に基づいて前記車両の駐車位置を調整する、車両搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両搬送装置であって、
前記当接部は、幅方向に延びる第2軸部材と、前記第2軸部材と同心であり前記第2軸部材を中心にして回転自在である円筒部材と、を有する第2回転棒である、車両搬送装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両搬送装置であって、
前記前輪または前記後輪は、前記リフトアームと、前記当接部との間で上方に持ち上げられる、車両搬送装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の車両搬送装置であって、
前記測距センサは、前記当接部の軸線に対する前記リフトアームの位置とは反対側の位置に取り付けられる、車両搬送装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の車両搬送装置であって、
前記ロボット演算部は、前記測距センサにより検出される情報に基づいて前記物体と前記車両との距離を推測し、前記距離がゼロより大きくかつ上限値以下となる位置で前記車両を下すように前記ロボットの走行動作および荷役動作を制御する、車両搬送装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の車両搬送装置であって、
前記第1ロボットはマスター機であり、
前記第2ロボットはスレーブ機である、車両搬送装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の車両搬送装置であって、
前記第1ロボットの全高および前記第2ロボットの全高は、150mm未満である、車両搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駐車領域で車両を搬送する車両搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、限られたスペースを有効に活用し、駐車効率の向上を意図した駐車装置が示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1で示されるような設備としての駐車装置が設けられていない駐車領域(駐車場、貨物船、港湾等)で、スペースを有効に活用することが望まれる。
【0005】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、駐車領域のスペースを有効に活用することを可能にする車両搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様は、
車輪を持ち上げて車両を搬送する車両搬送装置であって、
前記車両の下に入り、前記車両の前輪を持ち上げて走行する第1ロボットと、
前記車両の下に入り、前記車両の後輪を持ち上げて走行する第2ロボットと、で構成され、
前記第1ロボットおよび前記第2ロボットは、
本体の全方向への走行と旋回を自在に行う全方向車輪と、
前記全方向車輪に対して駆動力を伝達する駆動力伝達機構と、
リフトアームと、当接部と、前記リフトアームを回転移動させる荷役モータとを有する荷役機構と、
ロボットと前記ロボットの周囲に存在する物体との距離を検出する測距センサと、
前記ロボットの走行動作および荷役動作を制御するロボット演算部と、を備え、
前記リフトアームは、前記第1ロボットまたは前記第2ロボットの幅方向と平行する軸部材と、前記軸部材と同心であり前記軸部材を中心にして回転自在である円筒部材と、を有する回転棒であり、
前記当接部は、ロボット本体に固定され、かつ、前記第1ロボットまたは前記第2ロボットが前記前輪または前記後輪に接近することによって前記前輪または前記後輪の接地面に当接し、
前記荷役モータが動作すると、前記リフトアームは収納位置から展開位置に回転移動し、前記前輪または前記後輪の接地面のうち前記当接部が当接する接地面とは前後逆の接地面に当接し、
更に前記荷役モータが動作すると、更に前記リフトアームは回転移動し前記当接部に接近して、前記リフトアームが前記前輪または前記後輪を上方に持ち上げ、
前記ロボット演算部は、駐車領域で前記車両を下す際に、前記測距センサにより検出される情報に基づいて前記車両の駐車位置を調整する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、駐車場のスペースを有効に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】
図2は上部カバーが外された搬送ロボットを示す斜視図である。
【
図3】
図3は上部カバーが外された搬送ロボットを示す平面図である。
【
図4】
図4は搬送ロボットの制御系統および電力系統を示すブロック構成図である。
【
図5】
図5は車両に対する位置合わせ段階の車両搬送装置を示す模式図である。
【
図8】
図8は車両搬送システムを示すシステム構成図である。
【
図10】
図10は駐車場への車両の入庫処理を示すシーケンス図である。
【
図11】
図11は駐車場からの車両の出庫処理を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る車両搬送装置について、好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
[1.車両搬送装置10]
図1A、
図1Bに示されるように、車両搬送装置10は、車両94の搬送を要する所定領域で自律走行することができる一組の搬送ロボット12(第1ロボット12a、第2ロボット12b)を有する。第1ロボット12aは、車両94の下に入り、車両94の前輪96fを持ち上げて所定領域内を自律走行することができる。第2ロボット12bは、車両94の下に入り、車両94の後輪96rを持ち上げて所定領域内を自律走行することができる。第1ロボット12aの構造と第2ロボット12bの構造は同じである。但し、第1ロボット12aはマスター機であり、第2ロボット12bはスレーブ機である。
【0011】
[1.1.搬送ロボット12の構造]
図2および
図3を用いて、搬送ロボット12(第1ロボット12a、第2ロボット12b)の構造を説明する。
図2、
図3は本体16の上部を覆う上部カバー14(
図1A)が外された搬送ロボット12を示す。なお、本明細書では、説明の便宜のために、搬送ロボット12を基準とする各方向を次のように定義する。後述する右リフトアーム42Rおよび左リフトアーム42Lに対して右当接部48Rおよび左当接部48Lが配置される方向を前方向とし、その反対方向を後方向とする。また、本明細書では、搬送ロボット12の幅方向の中心位置(以下、中心線Cという。)に対して後述する右荷役機構30Rが配置される方向を右方向とし、中心線Cに対して後述する左荷役機構30Lが配置される方向を左方向とする。以下の説明において特に限定がない限り、前後左右というのは搬送ロボット12の前後左右の方向のことを意味する。
【0012】
搬送ロボット12は、概ね、本体16と、本体16の内側に配置される4組の駆動機構20と、本体16の右側に配置される右荷役機構30Rと、本体16の左側に配置される左荷役機構30Lとを有する。右荷役機構30Rは、相対的に搬送ロボット12の右側に配置される。左荷役機構30Lは、相対的に搬送ロボット12の左側に配置される。4組の駆動機構20は、相対的に搬送ロボット12の中央であって、右荷役機構30Rと左荷役機構30Lの間に配置される。本体16は、搬送ロボット12を形作ると共に、各部品を支持するフレームである。
【0013】
1組の駆動機構20は、駆動力伝達機構22と全方向車輪28とを有する。駆動力伝達機構22は、走行モータ24と駆動側減速機26とを有する。4組の駆動機構20は、中心線Cを境にして左右にそれぞれ2組に分けられて配置される。左側の2組の駆動機構20と右側の2組の駆動機構20は、中心線Cを軸として線対称となるように配置される。また、前側の2組の駆動機構20と後側の2組の駆動機構20は、搬送ロボット12の幅方向と平行する平行線(不図示)を軸として線対称となるように配置される。各組の走行モータ24と駆動側減速機26と全方向車輪28は、中心線Cから幅方向外側に向かって、その順で並べられる。また、各組において、走行モータ24と駆動側減速機26と全方向車輪28は軸線が一致するように並べられる。
【0014】
走行モータ24は、電動モータである。走行モータ24の出力軸は、駆動側減速機26の入力軸に接続される。駆動側減速機26は、入力軸と出力軸が同一線上にあり、例えば遊星歯車減速機を有する。駆動側減速機26の出力軸は、全方向車輪28に接続される。
【0015】
全方向車輪28はメカナムホイールである。各組に設けられるメカナムホイールは、互いに協調して駆動することにより本体16の全方向(平面2自由度でホロノミックな)移動を行うことができる。なお、本実施形態では駆動機構20がメカナムホイールを有するが、全方向への移動を可能とする他の車輪を有していてもよい。例えば、駆動機構20は、メカナムホイールの代わりにオムニホイールを有していてもよい。オムニホイールの場合は3つで本体16の全方向への走行と旋回を自在に行うことができるため、3組の駆動機構20を設ければよい。なお、搬送ロボット12は、水平方向の姿勢を安定させるために、全方向車輪28と共に補助輪を有していてもよい。
【0016】
右荷役機構30Rは、右回転力伝達機構32Rと右リフトアーム42Rと右当接部48Rとを有する。また、左荷役機構30Lは、左回転力伝達機構32Lと左リフトアーム42Lと左当接部48Lとを有する。右荷役機構30Rと左荷役機構30Lは、中心線Cを軸として線対称となるように配置される。右回転力伝達機構32Rと左回転力伝達機構32Lは、それぞれ荷役モータ34とブレーキ36と荷役側減速機38とリンク部材40とを有する。荷役モータ34とブレーキ36と荷役側減速機38とリンク部材40は、搬送ロボット12の後方向に向かって、その順で並べられる。リンク部材40は、搬送ロボット12の後端に配置される。なお、右荷役機構30Rと左荷役機構30Lは構造が同じであるため、以下では右荷役機構30Rの構造を説明する。そして、右荷役機構30Rの説明において、右を左に読み替え、符号に付されるRをLにすることにより、左荷役機構30Lの説明とする。
【0017】
荷役モータ34は、電動モータである。荷役モータ34の出力軸は、ブレーキ36の入力軸に接続される。ブレーキ36は、例えば電磁ブレーキが使用される。ブレーキ36の出力軸は、荷役側減速機38の入力軸に接続される。荷役側減速機38は、入力軸と出力軸が直交しており、例えばべべルギアが使用される。荷役側減速機38の出力軸は、リンク部材40に接続される。この出力軸は上下方向と平行する。リンク部材40は、前後方向および幅方向と平行する上部板材および下部板材と、上部板材の端部および下部板材の端部に接続されて上下方向と平行する側部板材と、を有する。上部板材は荷役側減速機38の出力軸に接続され、下部板材は本体16に回転自在に接続される。
【0018】
右リフトアーム42Rは、前後方向および幅方向と平行する軸部材と、軸部材と同心であり軸部材を中心にして回転自在である円筒部材と、を有する回転棒である。右リフトアーム42Rの軸部材の基部44Rは、リンク部材40の側部板材に接続される。右リフトアーム42Rは、リンク部材40の回転動作に伴い、先端46Rを本体16の幅方向中央側に向ける右収納位置76Rと先端46Rを本体16の幅方向外側(右方向)に向ける右展開位置78Rとの間で回転移動する。
【0019】
右収納位置76Rおよび右展開位置78Rは、右リフトアーム42Rの軸部材が幅方向と平行する位置である。言い換えると、右収納位置76Rは、右リフトアーム42Rを右展開位置78Rから前後方向および幅方向と平行する平面に沿って180度回転させた後の右リフトアーム42Rの位置である。逆に、右展開位置78Rは、右リフトアーム42Rを右収納位置76Rから前後方向および幅方向と平行する平面に沿って180度回転させた後の右リフトアーム42Rの位置である。
【0020】
右当接部48Rは、本体16から幅方向外側に向かって延びる軸部材と、軸部材と同心であり軸部材を中心にして回転自在である円筒部材と、を有する回転棒である。右当接部48Rの軸部材の両端は本体16に固定される。軸部材は、前側の2組の駆動機構20の軸の延長線上に配置される。
【0021】
搬送ロボット12は、車両94の下に入って車両94を持ち上げ、また、車両94の下を走行することを可能とする。このため、搬送ロボット12の全高は、可能な限り低いことが好ましい。搬送ロボット12の全高として好ましいのは150mm未満であり、更に好ましいのは140mm未満であり、また更に好ましいのは130mm未満である。なお、日本国の保安基準では、車両94の地上高の下限として90mmが定められていることから、搬送ロボット12の全高として最も好ましいのは90mm未満である。
【0022】
[1.2.搬送ロボット12の制御系統および電力系統の構成]
図4を用いて、搬送ロボット12の制御系統および電力系統の構成を説明する。なお、
図4に示される構成の一部は、
図1A、
図3にも示される。搬送ロボット12は、制御系統として、センサ群50と通信部62とロボット演算部64とロボット記憶部66とモータドライバ70とパワーリレー72とDC/DCコンバータ74とを有する。センサ群50は、カメラ52と測距センサ54とリミットスイッチ56とホール素子58とエンコーダ59と測位部60とラインセンサ61とを有する。
【0023】
カメラ52は、搬送ロボット12の周辺を撮像する。測距センサ54は、例えばPSDセンサ、レーダ、LiDAR、LRF、TOFセンサ等であり、搬送ロボット12の周辺に存在する物体との距離を検出する。カメラ52と測距センサ54は、搬送ロボット12の全方位を検出対象とするために、それぞれ複数設けられる。
図1Aで示されるように、本実施形態において、4組のカメラ52と測距センサ54が、上部カバー14に取り付けられる。取付位置は上部カバー14の右前部、左前部、右後部、左後部である。なお、カメラ52の数、配置、姿勢は、カメラ52が撮像できる範囲に応じて適宜設定される。同様に、測距センサ54の数、配置、姿勢は、測距センサ54が検出できる範囲に応じて適宜設定される。
【0024】
リミットスイッチ56は、右リフトアーム42Rと左リフトアーム42Lの可動範囲を制限する。リミットスイッチ56は、右展開位置78Rの前方、右収納位置76Rの前方、左展開位置78Lの前方、左収納位置76Lの前方にそれぞれ1つずつ設けられる。ホール素子58は、4つの走行モータ24と2つの荷役モータ34の回転数を検出する。ホール素子58は、各モータに設けられる。エンコーダ59は、全方向車輪28の回転角度を検出する。エンコーダ59は、全方向車輪28の車軸に設けられる。測位部60は、例えばGNSSモジュール、加速度センサ、ジャイロ等を有し、衛星航法と慣性航法の少なくとも一方を用いて搬送ロボット12の位置および姿勢を検出する。ラインセンサ61は、搬送ロボット12が走行する地面(床面)を撮像する。
【0025】
通信部62は、外部の通信機器と無線通信を行うための通信装置とアンテナを有する。外部の通信機器というのは、例えば、後述するサーバ102(
図8)であり、対をなす他方の搬送ロボット12の通信部62である。通信部62は、近距離無線通信を行うための通信モジュールと公衆回線を介して無線通信を行う通信モジュールとを有する。
【0026】
ロボット演算部64は、例えばCPUやMPU等を備えるプロセッサにより構成される。ロボット演算部64は、ロボット記憶部66に記憶されるプログラムを実行することにより各種機能を実現する。ロボット記憶部66は、RAMやROM等により構成される。ロボット記憶部66は、各種プログラムと、ロボット演算部64が行う処理で使用される各種情報と、搬送ロボット12が走行する領域内の地図情報を記憶する。
【0027】
モータドライバ70は、4つの走行モータ24および2つの荷役モータ34に対して個別に設けられる。モータドライバ70は、入力側にバッテリ68が接続され、出力側に走行モータ24または荷役モータ34が接続される。モータドライバ70は、ロボット演算部64から出力される制御信号に応じて変圧動作をする。パワーリレー72は、入力側にバッテリ68が接続され、出力側にブレーキ36が接続される。パワーリレー72は、ロボット演算部64から出力されるオン信号またはオフ信号に応じてバッテリ68からの電力の供給と遮断とを切り替える。DC/DCコンバータ74は、入力側にバッテリ68が接続され、出力側に各電子機器が接続される。DC/DCコンバータ74は、バッテリ68から電力を入力し、一定の電圧に降圧してセンサ群50およびロボット演算部64に給電する。
【0028】
[1.3.搬送ロボット12の荷役動作]
ここでは、搬送ロボット12を構成する2つのロボットのうち、前輪96fを持ち上げる第1ロボット12aの荷役動作を説明する。車両94を持ち上げる前に、右リフトアーム42Rは右収納位置76Rに格納され、左リフトアーム42Lは左収納位置76Lに格納されている。
【0029】
図5に示されるように、ロボット演算部64は、カメラ52により撮像される画像情報および測距センサ54により検出される情報に基づいて搬送すべき車両94の姿勢を認識し、車両94の前方に移動して、第1ロボット12aの後部を車両94の前部に向ける。このとき、ロボット演算部64は、ロボット以外のカメラ(外部カメラ)から画像情報を受信し、その画像情報に基づいて搬送すべき車両94の姿勢を認識してもよい。更に、ロボット演算部64は、画像情報に基づいて車両94の幅(車幅)を認識すると共に車幅方向の中心位置(中心線Co)を認識する。ロボット演算部64は、第1ロボット12aの幅方向の中心位置(中心線C)を車両94の中心位置(中心線Co)に合わせるために、モータドライバ70に制御信号を出力して各走行モータ24を駆動させる。このとき、各走行モータ24は協調して動作し、第1ロボット12aを幅方向(左右いずれか)に移動させる。位置合わせ終了後、ロボット演算部64は、第1ロボット12aを後進させるために、モータドライバ70に制御信号を出力して各走行モータ24を駆動させる。このとき、各走行モータ24は協調して動作し、第1ロボット12aを後進させて車両94の下に潜り込ませる。
【0030】
図6A、
図6Bに示されるように、ロボット演算部64は、右当接部48Rおよび左当接部48Lが左右の前輪96fの前側の接地面に当接または近接(数cm以内)する場合に、モータドライバ70に制御信号を出力して各走行モータ24を停止させる。ロボット演算部64は、右当接部48Rおよび左当接部48Lが前輪96fに当接または近接することを、カメラ52により撮像される画像情報と測距センサ54により検出される情報の少なくとも一方から認識する。または、ロボット演算部64は、右当接部48Rおよび左当接部48Lが前輪96fに当接することを、走行モータ24の負荷(負荷>所定値)から認識することもできる。または、ロボット演算部64は、第1ロボット12aを後進させる前に、測距センサ54により検出される情報に基づいて右当接部48Rおよび左当接部48Lと前輪96fとの距離を演算し、その距離だけ後進させるようにしてもよい。
【0031】
図7A、
図7Bに示されるように、ロボット演算部64は、モータドライバ70に制御信号を出力して左右の荷役モータ34を動作させる。右荷役機構30Rの動作と左荷役機構30Lの動作は実質的に同じであるため、ここでは左荷役機構30Lの動作を説明する。左回転力伝達機構32Lの荷役モータ34が動作すると、左リフトアーム42Lは左収納位置76Lから左展開位置78Lに回転移動し、前輪96fの後側の接地面に当接する。更に荷役モータ34が動作すると、左リフトアーム42Lは円筒部材を回転させながら左当接部48Lに接近する。すると、左側の前輪96fは上方に持ち上げられる。更に荷役モータ34が動作すると、左リフトアーム42Lは収納位置から180度または180度±数度まで回転した位置でリミットスイッチ56に当接する。ロボット演算部64は、リミットスイッチ56から出力される信号を検出し、モータドライバ70に制御信号を出力して荷役モータ34を停止させる。同時に、ロボット演算部64は、パワーリレー72に制御信号を出力してブレーキ36を作動させる。
【0032】
第1ロボット12aが前輪96fを下す場合、ロボット演算部64は、荷役モータ34を動作させて、左リフトアーム42Lを左当接部48Lから離間させる。すると、左側の前輪96fは地面に下される。更に荷役モータ34が動作すると、左リフトアーム42Lは左展開位置78Lから左収納位置76Lに回転移動する。左収納位置76Lで左リフトアーム42Lはリミットスイッチ56に当接する。ロボット演算部64はリミットスイッチ56から出力される信号を検出し、モータドライバ70に制御信号を出力して荷役モータ34を停止させる。
【0033】
以上が、第1ロボット12aの荷役動作の説明である。第2ロボット12bの荷役動作も同じである。但し、
図1A、
図1Bに示されるように、本実施形態では、第1ロボット12aが前後左右を車両94の前後左右と一致させているのに対して、第2ロボット12bは前後左右を車両94の前後左右と逆にしている。このため、第2ロボット12bの荷役動作は、上述した第1ロボット12aの荷役動作とは、前後左右が逆になる。
【0034】
但し、車両94に対する第1ロボット12aおよび第2ロボット12bの前後の向きは限定されない。第1ロボット12aの前後方向を車両94の前後方向と一致させてもよいし、逆にしてもよい。同様に、第2ロボット12bの前後方向を車両94の前後方向と一致させてもよいし、逆にしてもよい。
【0035】
第1ロボット12aのロボット演算部64と第2ロボット12bのロボット演算部64は、第1ロボット12aの荷役動作と第2ロボット12bの荷役動作を同一のタイミングで行うこともできるし、異なるタイミングで行うこともできる。例えば、第1ロボット12aのロボット演算部64は、荷役動作が完了した後に、通信部62により荷役終了信号を送信するようにしてもよい。この場合、第2ロボット12bのロボット演算部64は、通信部62により荷役終了信号が受信される場合に、荷役動作(後輪96rの上げ下げ)を開始する。これとは逆に、第2ロボット12bの荷役動作の後に、第1ロボット12aの荷役動作が開始されるようにしてもよい。また、ロボット演算部64は、車両94の重量配分を示す情報を検出し、その検出結果に基づいて第1ロボット12aの荷役動作と第2ロボット12bの荷役動作のタイミングを決定してもよい。車両94の重量配分を示す情報は、車両94から送信されてもよいし、車両94以外の外部装置から送信されてもよい。
【0036】
[1.4.搬送ロボット12の走行動作]
第1ロボット12aのロボット演算部64は、搬送すべき車両94の有無に関わらず、第1ロボット12aを事前に生成された走行軌道に沿って走行させる。走行軌道の情報は、第1ロボット12aのロボット演算部64により生成されてもよいし、外部のサーバ102(
図8)により生成されてもよい。走行軌道の情報は、第1ロボット12aが走行すべき位置(領域内の位置)を通過時間順に並べることにより生成される。第1ロボット12aのロボット演算部64は、生成された走行軌道と、センサ群50と外部カメラの少なくとも1つにより検出される位置と、を比較して走行制御を行う。但し、第1ロボット12aのロボット演算部64は、第1ロボット12aの走行時に、カメラ52により撮像される画像情報および測距センサ54により検出される情報に基づいて第1ロボット12aと障害物との距離が所定値以上となるように走行軌道を修正する。
【0037】
第1ロボット12aのロボット演算部64は、第1ロボット12aを事前に生成された走行姿勢で走行させてもよい。第1ロボット12aは、個々の全方向車輪28の駆動量、駆動方向を調整することにより、走行姿勢を自在に調整することができる。走行姿勢の情報は、第1ロボット12aのロボット演算部64により生成されてもよいし、外部のサーバ102(
図8)により生成されてもよい。第1ロボット12aのロボット演算部64は、生成された走行姿勢と測位部60により検出される姿勢とを比較して姿勢制御を行う。但し、第1ロボット12aのロボット演算部64は、第1ロボット12aの走行時に、カメラ52により撮像される画像情報および測距センサ54により検出される情報に基づいて第1ロボット12aと障害物との距離が所定値以上となるように走行姿勢を修正する。
【0038】
第2ロボット12bのロボット演算部64は、第2ロボット12bを第1ロボット12aが走行した軌跡(走行軌跡)に沿って走行させる。この際、第2ロボット12bのロボット演算部64は、通信部62を介して第1ロボット12aから走行軌道の情報を取得してもよいし、カメラ52により撮像される画像情報に基づいて第1ロボット12aの走行軌跡を演算してもよい。第1ロボット12aと同様に、第2ロボット12bのロボット演算部64は、カメラ52により撮像される画像情報および測距センサ54により検出される情報に基づいて第2ロボット12bと障害物との距離が所定値以上となるように走行軌道(または走行軌跡)の情報を修正する。更に、第2ロボット12bのロボット演算部64は、第2ロボット12bと第1ロボット12aとの間隔が一定になるように走行制御する。
【0039】
[2.車両搬送装置10の使用例]
車両搬送装置10は、車両94の搬送を要する所定領域、例えば駐車場80、充電スポット、貨物船内、港湾等で使用できる。ここでは、駐車場80で車両搬送装置10を使用する車両搬送システム100を説明する。
【0040】
[2.1.駐車場80]
図8に示されるように、駐車場80は、入庫スペース82と出庫スペース84と駐車スペース86と待機スペース88とを含む。
【0041】
入庫スペース82は、駐車場80の入口であり、車両搬送装置10が車両94を持ち上げるスペースでもある。出庫スペース84は、駐車場80の出口であり、車両搬送装置10が車両94を下すスペースでもある。駐車スペース86は、車両94のユーザが駐車を希望する場合に、車両94を駐車させるスペースである。駐車スペース86は、複数の車両94を収容することができる。待機スペース88は、車両搬送装置10が待機するスペースである。
【0042】
[2.2.車両搬送システム100の構成]
駐車場80に構築される車両搬送システム100は、1以上の車両搬送装置10とサーバ102と監視カメラ110とを有する。
【0043】
サーバ102は、サーバ演算部104とサーバ記憶部106とを有するコンピュータである。サーバ演算部104はCPUやMPU等を備えるプロセッサにより構成される。サーバ演算部104は、サーバ記憶部106に記憶されるプログラムを実行することにより各種機能を実現する。サーバ記憶部106は、RAMやROM等により構成される。サーバ記憶部106は、各種プログラムと、サーバ演算部104が行う処理で使用される各種情報と、駐車場80の内部の地図情報と、駐車リスト120(
図9)を記憶する。
【0044】
図9に示されるように、駐車リスト120には、車両94の駐車位置を示す位置情報122と、駐車サービスを受けるユーザの識別情報124と、が紐づけられて記録される。識別情報124は、駐車場80で車両94を識別するための情報である。ここでは識別情報124として、車両94のユーザが所有する端末装置140の連絡先を示す情報や、ユーザが任意に設定する番号等が利用される。
【0045】
図8に戻り説明を続ける。サーバ102は、搬送ロボット12と無線通信で情報を送信および受信し、搬送ロボット12の行動を管理する。また、サーバ102は、監視カメラ110と有線または無線で通信を行い、駐車場80への入庫の有無および駐車状態を監視する。また、サーバ102は、車両94のユーザが所有する端末装置140と近距離無線通信または公衆回線を用いて通信を行い、ユーザに対して各種の報知を行う。
【0046】
ユーザが所有する端末装置140は、例えばスマートフォン、タブレット等である。端末装置140は、公衆回線を用いて通信を行うことができる機能、または、ブルートゥース(登録商標)のように近距離無線通信を行うことができる機能を備える。端末装置140には、駐車場80を利用するためのソフトウェアが予めインストールされている。
【0047】
[2.3.車両搬送システム100で行われる各処理]
車両搬送システム100で行われる各処理(入庫処理、出庫処理)を説明する。
【0048】
[A.駐車場80への車両94の入庫処理]
図10を用いて駐車場80への車両94の入庫処理の流れを説明する。駐車場80への入車を希望するユーザは、車両94を入庫スペース82で停車させた後に、端末装置140を使用して入庫の申し込みを行う。
【0049】
ステップS1において、端末装置140は、サーバ102に入庫要求を送信する。この際、端末装置140は、識別情報124(
図9)を合わせて送信する。
【0050】
ステップS2において、サーバ演算部104は、入庫要求に応じて監視カメラ110により撮像される画像情報を確認し、車両94を検出する。ステップS3において、サーバ演算部104は、待機スペース88から入庫スペース82までの最短の走行軌道および入庫スペース82から駐車スペース86までの最短の走行軌道を生成する。サーバ演算部104は、駐車リスト120に基づいて駐車スペース86における各車両94の大まかな駐車位置を把握している。サーバ演算部104は、できるだけ車両94を駐車スペース86のD1方向およびD2方向に詰めるようにする。このため、サーバ演算部104は、駐車スペース86の中の到達位置を、他の車両94が駐車していない範囲内でD1方向およびD2方向に設定したうえで、入庫スペース82から駐車スペース86までの走行軌道を生成する。このとき、サーバ演算部104は、最適な走行姿勢を生成してもよい。ステップS4において、サーバ演算部104は、生成した走行軌道を示す軌道情報と搬入指示を搬送ロボット12の第1ロボット12aに送信する。なお、サーバ演算部104は、走行軌道の情報を送信する際に、走行姿勢の情報を合わせて送信してもよい。以下、サーバ演算部104は、車両94の搬送時以外のときに、同様に走行姿勢の情報を生成、送信してもよい。
【0051】
ステップS5において、第1ロボット12aおよび第2ロボット12bは走行軌道に沿って走行し、車両94を搬入する。具体的には、第1ロボット12aのロボット演算部64は、待機スペース88から入庫スペース82までの走行軌道を参照して第1ロボット12aおよび第2ロボット12bの走行制御を行う(上記[1.4]参照)。第1ロボット12aと第2ロボット12bが入庫スペース82に到達したら、各ロボット演算部64は、車両94を持ち上げる(上記[1.3]参照)。この際、各ロボット演算部64は、カメラ52により撮像される画像情報および測距センサ54により検出される情報に基づいて各ロボットに対する車両94の前後方向および左右方向(幅方向)のはみだし量を演算する。荷役動作が完了したら、第1ロボット12aのロボット演算部64は、入庫スペース82から駐車スペース86までの走行軌道を参照して第1ロボット12aおよび第2ロボット12bの走行制御を行う(上記[1.4]参照)。
【0052】
ステップS6において、第1ロボット12aと第2ロボット12bが駐車スペース86に到達したら、各ロボット演算部64は、車両94の駐車位置を調整する。ここでは、第1ロボット12aのロボット演算部64は、測距センサ54により検出される情報に基づいて、積載する車両94の周囲に存在する物体(他の車両94、壁等)と車両94との水平方向の距離を推測する。例えば、第1ロボット12aのロボット演算部64は、物体と第1ロボット12aとの距離を演算し、その演算結果から車両94のはみだし量を減算し、物体と車両94との距離とする。第1ロボット12aのロボット演算部64は、物体と車両94との距離がゼロより大きくかつ上限値以下となる位置で車両94を下すように、駆動機構20と右荷役機構30Rと左荷役機構30Lを制御する。第2ロボット12bのロボット演算部64も同じように制御する。車両94の駐車位置調整後、各ロボット演算部64は、車両94を下す(上記[1.3]参照)。ステップS7において、第1ロボット12aのロボット演算部64は、測位部60により検出される駐車位置の情報を搬入完了通知と合わせてサーバ102に送信する。
【0053】
ステップS8において、サーバ演算部104は、ユーザの端末装置140に駐車完了通知を送信する。
【0054】
ステップS9において、サーバ演算部104は、車両94の駐車位置の情報を位置情報122とし、ステップS1で端末装置140から送信された識別情報124と紐づけて、駐車リスト120を更新する。ステップS10において、サーバ演算部104は、駐車スペース86から待機スペース88までの最短の走行軌道を生成する。ステップS11において、サーバ演算部104は、生成した走行軌道を示す軌道情報と帰還指示を第1ロボット12aに送信する。
【0055】
ステップS12において、第1ロボット12aおよび第2ロボット12bは走行軌道に沿って走行する。具体的には、第1ロボット12aのロボット演算部64は、駐車スペース86から待機スペース88までの走行軌道を参照して第1ロボット12aおよび第2ロボット12bの走行制御を行う(上記[1.4]参照)。ステップS13において、第1ロボット12aと第2ロボット12bが待機スペース88に到達したら、第1ロボット12aのロボット演算部64は、帰還通知をサーバ102に送信する。
【0056】
[B.駐車場80からの車両94の出庫処理]
図11を用いて駐車場80からの車両94の出庫処理の流れを説明する。駐車場80からの出庫を希望するユーザは、端末装置140を使用して出庫の申し込みを行う。
【0057】
ステップS21において、端末装置140は、サーバ102に出庫要求を送信する。この際、端末装置140は、識別情報124(
図9)を合わせて送信する。
【0058】
ステップS22において、サーバ演算部104は、出庫する車両94の駐車位置を特定する。ここでは、サーバ演算部104は、駐車リスト120を参照し、ステップS21で端末装置140から送信された識別情報124に対応する駐車位置を特定する。ステップS23において、サーバ演算部104は、待機スペース88から駐車スペース86までの最短の走行軌道および駐車スペース86から出庫スペース84までの最短の走行軌道を生成する。ステップS24において、サーバ演算部104は、生成した走行軌道を示す軌道情報と搬出指示を搬送ロボット12の第1ロボット12aに送信する。なお、サーバ演算部104は、駐車リスト120を参照し、駐車スペース86に駐車する他の車両94を移動させて搬送路を確保する必要があるか否かも確認する。他の車両94の移動が必要である場合、サーバ演算部104は、他の第1ロボット12aに他の車両94を一時的に移動させるための搬送指示を送信する。他の第1ロボット12aは、他の車両94を一時的に移動させる。
【0059】
ステップS25において、第1ロボット12aおよび第2ロボット12bは走行軌道に沿って走行し、車両94を搬出する。具体的には、第1ロボット12aのロボット演算部64は、待機スペース88から駐車スペース86までの走行軌道を参照して第1ロボット12aおよび第2ロボット12bの走行制御を行う(上記[1.4]参照)。第1ロボット12aと第2ロボット12bが駐車スペース86に到達したら、各ロボット演算部64は、車両94を持ち上げる(上記[1.3]参照)。荷役動作が完了したら、第1ロボット12aのロボット演算部64は、駐車スペース86から出庫スペース84までの走行軌道を参照して第1ロボット12aおよび第2ロボット12bの走行制御を行う(上記[1.4]参照)。第1ロボット12aと第2ロボット12bが出庫スペース84に到達したら、各ロボット演算部64は、車両94を下す(上記[1.3]参照)。ステップS26において、第1ロボット12aのロボット演算部64は、搬出完了通知をサーバ102に送信する。
【0060】
ステップS27において、サーバ演算部104は、ユーザの端末装置140に出庫通知を送信する。
【0061】
ステップS28~ステップS31の流れは、
図10に示されるステップS10~ステップS13の流れと実質的に同じである。但し、ここでは、出庫スペース84から待機スペース88までの走行軌道が生成される。
【0062】
なお、車両94が出庫した場合、サーバ演算部104は、駐車スペース86に駐車する車両94をD1方向およびD2方向に詰めることが好ましい。この際、ステップS3~ステップS6と同じ処理が行われる。そして、サーバ演算部104は、移動させた車両94の位置情報122を修正し、駐車リスト120を更新する。
【0063】
[3.変形例、その他の付加的機能]
ロボット演算部64は、慣性航法に基づいて自己位置、姿勢を認識する場合、所定のタイミングまたは任意のタイミングで認識している自己位置、姿勢の修正を行うことが好ましい。例えば、駐車場80(待機スペース88等)の特定位置に目標が設けられ、その特定位置は各ロボット記憶部66に記憶される。ロボット演算部64は、ロボット記憶部66に記憶される特定位置と、カメラ52および測距センサ54で検出される本体16に対する目標の方向と距離とを用いて、その時点で認識している自己位置、姿勢を修正する。
【0064】
図8に示される車両搬送システム100では、駐車場80に駐車する車両94のユーザに対してメンテナンス情報を提供することもできる。例えば、ロボット演算部64は、車両94の下に入ったときまたは車両94の下を通過するときに、車両94の下面やタイヤをカメラ52により撮像する。そして、ロボット演算部64は、画像情報を車両94の位置情報122および識別情報124と紐づける。ロボット演算部64は、画像情報を解析し、下面にキズ等を検出し、また、タイヤの減り具合を判定する。また、左右の当接部およびリフトアームにシート状の圧力センサが設けられる場合、ロボット演算部64は、圧力センサの検出結果に基づいてタイヤの空気圧が不足しているか否かを判定する。ロボット演算部64は、これらのメンテナンス情報を、ユーザの端末装置140に送信する。
【0065】
[4.実施形態から得られる技術的思想]
上記実施形態から把握しうる技術的思想について、以下に記載する。
【0066】
本発明の態様は、
車輪96を持ち上げて車両94を搬送する車両搬送装置10であって、
前記車両94の下に入り、前記車両94の前輪96fを持ち上げて走行する第1ロボット12aと、
前記車両94の下に入り、前記車両94の後輪96rを持ち上げて走行する第2ロボット12bと、で構成され、
前記第1ロボット12aおよび前記第2ロボット12bは、
本体16の全方向への走行と旋回を自在に行う全方向車輪28と、
前記全方向車輪28に対して駆動力を伝達する駆動力伝達機構22と、
ロボット(第1ロボット12a、第2ロボット12b)と前記ロボット(第1ロボット12a、第2ロボット12b)の周囲に存在する物体との距離を検出する測距センサ54と、
前記ロボット(第1ロボット12a、第2ロボット12b)の走行動作および荷役動作を制御するロボット演算部64と、を備え、
前記ロボット演算部64は、駐車領域(駐車場80の駐車スペース86)で前記車両94を下す際に、前記測距センサ54により検出される情報に基づいて前記車両94の駐車位置を調整する。
【0067】
上記構成によれば、ロボット演算部64は、駐車場80の駐車スペース86で車両94を下す際に、測距センサ54により検出される情報に基づいて車両94の駐車位置を調整する。このため、駐車場80の駐車スペース86で車両94を詰めて駐車させることができ、より多くの車両94を駐車させることができる。従って、駐車場80のスペースを有効に活用することができる。
【0068】
本発明の態様において、
前記ロボット演算部64は、前記測距センサ54により検出される情報に基づいて前記物体と前記車両94との距離を推測し、前記距離がゼロより大きくかつ上限値以下となる位置で前記車両94を下すように前記ロボット(第1ロボット12a、第2ロボット12b)の走行動作および荷役動作を制御してもよい。
【0069】
上記構成によれば、車両94と物体(他の車両94、壁等)とを接触しない距離まで接近させることができる。
【0070】
本発明の態様において、
前記第1ロボット12aはマスター機であり、
前記第2ロボット12bはスレーブ機であってもよい。
【0071】
上記構成によれば、第1ロボット12aと第2ロボット12bの協調動作が容易になる。また、第2ロボット12bの演算負荷が低減する。
【0072】
本発明の態様において、
前記第1ロボット12aの全高および前記第2ロボット12bの全高は、150mm未満であってもよい。
【0073】
上記構成によれば、第1ロボット12aと第2ロボット12bが地上高150mm以上の車両94の下に入ることができる。
【0074】
なお、本発明に係る車両搬送装置は、上述の実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0075】
10…車両搬送装置 12a…第1ロボット
12b…第2ロボット 16…本体
22…駆動力伝達機構 28…全方向車輪
54…測距センサ 64…ロボット演算部
94…車両 96…車輪
96f…前輪 96r…後輪