(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189903
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】アクチュエータ付き反射板、光走査装置、及びミラーアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
G02B 26/10 20060101AFI20221215BHJP
G02B 26/08 20060101ALN20221215BHJP
【FI】
G02B26/10 104Z
G02B26/08 E
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168358
(22)【出願日】2022-10-20
(62)【分割の表示】P 2020505075の分割
【原出願日】2019-03-06
(31)【優先権主張番号】P 2018042733
(32)【優先日】2018-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】北澤 正吾
(57)【要約】
【課題】光の利用効率の高い光走査装置を構築する。
【解決手段】アクチュエータ付き反射板(13)が、両面に反射領域(132a-1,132a-2)が形成された反射板(132)と、面方向について反射板(132)を両側から支持し、当該反射板(132)の第1回転軸(13a)を定める第1支持部(135)と、反射板(132)の一方の面における、第1回転軸(13a)とずれた位置に取り付けられる第1磁気素子(136)と、第1磁気素子(136)を、第1回転軸(13a)を中心に反射板(132)を回転させる方向に動かす第1磁気アクチュエータ(131)と、を備えたことを特徴としている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両面に反射領域が形成された反射板と、
前記反射板を支持し、当該反射板の第1回転軸を定める第1支持部と、
前記反射板の、前記第1回転軸とずれた位置に取り付けられる第1磁気素子と、
前記第1磁気素子に働きかけて、前記第1回転軸を中心に前記反射板を回転させる方向に動かす第1磁気アクチュエータと、
を備えたことを特徴とするアクチュエータ付き反射板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照射光の走査に用いられるアクチュエータ付き反射板、そのようなアクチュエータ付き反射板を備えた光走査装置、及びミラーアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光源からの照射光で走査対象領域を走査し、その走査対象領域からの戻り光が光ディテクタで検出されるまでの時間に基づいて、走査対象領域に存在する物体までの距離等を測定する光走査装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載の光走査装置では、光源からの照射光がビームスプリッタを経てアクチュエータ付き反射板で反射されて走査対象領域へと照射される。アクチュエータ付き反射板は、アクチュエータで反射板を回転させることで、光源からの照射光の反射方向を変えて走査を行う。走査対象領域からの戻り光は、アクチュエータ付き反射板で反射されてビームスプリッタに至るまで照射光と略同じ光路を戻ってくる。そして、ビームスプリッタによって戻り光の一部が光路から分離されて光ディテクタへと向かう。
【0003】
ここで、上記の光走査装置では、戻り光が照射光と略同じ光路を戻ることとなっているが、これは光源からの照射光と走査対象領域からの戻り光の両方を反射板の同じ面で反射しているためである。このため、戻り光をアクチュエータ付き反射板で反射した後に、その戻り光を光路から分離して光ディテクタへと向かわせるべくビームスプリッタが必要となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の光走査装置では、ビームスプリッタを配置したことで、照射光と戻り光の少なくとも一方に光量のロスが生じることから光の利用効率が低くなりがちである。
【0006】
したがって、本発明の課題は、光の利用効率の高い光走査装置を構築することができるアクチュエータ付き反射板、そのようなアクチュエータ付き反射板を備えた光走査装置、及びミラーアクチュエータを提供すること等が一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載の本発明のアクチュエータ付き反射板は、両面に反射領域が形成された反射板と、前記反射板を支持し、当該反射板の第1回転軸を定める第1支持部と、前記反射板の、前記第1回転軸とずれた位置に取り付けられる第1磁気素子と、前記第1磁気素子に働きかけて、前記第1回転軸を中心に前記反射板を回転させる方向に動かす第1磁気アクチュエータと、を備えたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施例に係る光走査装置を示す模式図である。
【
図2】
図1に模式的に示されているアクチュエータ付き反射板を示した斜視図である。
【
図3】
図2に示されている第1磁気アクチュエータ及び第2磁気アクチュエータによって反射板が回転駆動される様子を、反射板を中心とした要部の拡大斜視図で示した図である。
【
図4】
図2に示されている第1磁気アクチュエータ及び第2磁気アクチュエータによって反射板が回転駆動される様子を、
図2中の矢印V11方向から見た側面図で示した図である。
【
図5】第2実施例におけるアクチュエータ付き反射板を示した斜視図である。
【
図6】
図5に示されている一対のアクチュエータ部分によって反射板が回転駆動される様子を、反射板を中心とした要部の拡大斜視図で示した図である。
【
図7】
図1~
図6に示す第1実施例や第2実施例と比較するための比較例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を説明する。本発明の実施形態に係るアクチュエータ付き反射板は、反射板と、第1支持部と、第1磁気素子と、第1磁気アクチュエータと、を備える。反射板は、両面に反射領域が形成されたものである。第1支持部は、反射板を支持し、この反射板の第1回転軸を定めるものである。第1磁気素子は、反射板の、第1回転軸とずれた位置に取り付けられるものである。第1磁気アクチュエータは、第1磁気素子に働きかけて、第1回転軸を中心に反射板を回転させる方向に動かすものである。
【0010】
本実施形態のアクチュエータ付き反射板では、第1磁気アクチュエータによって動かされる第1磁気素子が、反射板の第1回転軸からずれた位置に取付けられている。このため、反射板の両面の反射領域で、第1磁気素子や第1磁気アクチュエータに遮られることなく光を反射することができる。つまり、本実施形態のアクチュエータ付き反射板は、両面反射板として用いることができる。これにより、本実施形態のアクチュエータ付き反射板で光走査装置を構築する際に、両面のうちの第1面で照射光を反射し、第2面で戻り光を反射するように構成することができる。従って、ビームスプリッタを用いて照射光の光路から戻り光の一部を分離させて光ディテクタへ向かわせる必要がない。即ち、本実施形態のアクチュエータ付き反射板によれば、ビームスプリッタを用いないことで光の利用効率の高い光走査装置を構築することができる。
【0011】
ここで、本実施形態のアクチュエータ付き反射板では、第1磁気素子は、反射板の少なくとも一方の面に取り付けられている。
【0012】
これにより、第1磁気素子の動きが反射板に直接的に伝わるので、反射板を効率的に回転させることができる。
【0013】
また、本実施形態のアクチュエータ付き反射板では、第1回転軸が、反射領域を、第1回転軸に対する直交方向について長さが異なる2つの領域に二分し、第1磁気素子が、長さが短い方の領域に取り付けられている。
【0014】
これにより、2つの領域のうちの長い方の領域について、第1磁気素子の駆動量に対して、第1回転軸を中心とした大きな回転量を得ることができる。光走査装置を構築する場合、照射光や戻り光は、第1磁気素子を避けて、この長い方の領域で反射されることとなるので、第1磁気素子の駆動量に対して大きな走査量を得ることができる。
【0015】
また、本実施形態のアクチュエータ付き反射板は、第2支持部と、第2磁気素子と、第2磁気アクチュエータと、を備えるものであってもよい。第2支持部は、第1回転軸と直行する第2回転軸を定めるように反射板を支持するものである。第2磁気素子は、磁力を加えられると第2回転軸を中心に反射板を回転させる方向に動く位置に取付けられたものである。第2磁気アクチュエータは、第2磁気素子に対して磁力を加えるものである。
【0016】
これにより、反射板を、第1回転軸と第2回転軸の2軸を中心に回転させることができる。つまり、走査対象領域を二次元的に走査可能な光走査装置を構築することができる。また、各回転軸を中心とした反射板の回転を、各回転軸に対応した磁気素子と磁気アクチュエータとで行うため、各回転軸を中心とした反射板の回転を容易に行なうことができる。
【0017】
また、本実施形態のアクチュエータ付き反射板は、第2支持部を備え、第1磁気素子が、以下に説明する素子であり、第1磁気アクチュエータが、以下に説明する一対のアクチュエータ部分を備えたものであってもよい。まず、第2支持部は、第1回転軸と直行する第2回転軸を定めるように反射板を支持するものである。そして、第1磁気素子が、第2回転軸と交差するように第1回転軸の軸方向に延在した素子となっている。また、第1磁気アクチュエータが、第1磁気素子の第2回転軸を挟んだ2つの部位に磁力を加える一対のアクチュエータ部分を備えたものとなっている。
【0018】
これによっても、反射板を、第1回転軸と第2回転軸の2軸を中心に回転させることができるので、走査対象領域を二次元的に走査可能な光走査装置を構築することができる。また、第1磁気素子と第1磁気アクチュエータとの組合せのみで反射板を2軸を中心に回転させることができるので、アクチュエータ付き反射板の小型化を図ることができる。
【0019】
また、このような形態のアクチュエータ付き反射板では、一対のアクチュエータ部分が、相互間で大きさと極性との少なくとも一方が異なる磁力を加えることで、第2回転軸を中心に反射板を回転させる方向に第1磁気素子を動かすものであることが好適である。
【0020】
これによれば、一対のアクチュエータ部分それぞれが加える磁力の大きさや極性について相互間のバランスを取りつつ制御することで、第1回転軸を中心とした反射板の回転を制御することができる。そして、一対のアクチュエータ部分それぞれが加える磁力の大きさや極性を相互間で異ならせつつ制御することで、第2回転軸を中心とした反射板の回転を制御することができる。
【0021】
また、本発明の実施形態に係る光走査装置は、光源と、光ディテクタと、上述したアクチュエータ付き反射板と、を備える。そして、アクチュエータ付き反射板における反射板の両面のうちの第1面で光源からの照射光を走査対象領域に導くように反射し、両面のうちの第2面で走査対象領域からの戻り光を光ディテクタへと導くように反射するものとなっている。
【0022】
本実施形態の光走査装置によれば、アクチュエータ付き反射板で照射光と戻り光とを分離することができることからビームスプリッタが不要である。このため、本実施形態の光走査装置によれば、ビームスプリッタによる光量のロスがなく、光の高い利用効率を得ることができる。
【0023】
また、本発明の実施形態に係るミラーアクチュエータは、搖動部と、第1支持部と、磁石と、ヨークと、からなる。搖動部は、第1の面及び、この第1の面の反対側の面である第2の面を反射面とするものである。第1支持部は、搖動部を第1の搖動軸を中心に搖動可能に支持するものである。磁石は、搖動部の反射面を形成しない領域に設けられたものである。ヨークは、磁石に作用する磁場を発生させるものである。
【0024】
本実施形態のミラーアクチュエータによれば、光の利用効率の高い光走査装置を構築することができる。
【0025】
また、本実施形態のミラーアクチュエータでは、磁石は、揺動部の第1の面又は第2の面の少なくともいずれか一方に設けられている。
【0026】
これにより、第1磁気素子の動きが揺動部に直接的に伝わるので、搖動部を効率的に搖動させることができる。
【実施例0027】
以下、本発明の実施例について図を参照して具体的に説明する。まず、第1実施例について説明する。
【0028】
図1は、本発明の第1実施例に係る光走査装置を示す模式図である。
【0029】
図1に示されている光走査装置1は、光源11と、光ディテクタ12と、アクチュエータ付き反射板13と、照射光用反射ミラー14と、光源用レンズ15と、ディテクタ用レンズ16と、照射光用レンズ17と、戻り光用レンズ18と、を備えている。この光走査装置1は、光源11からの照射光L11で走査対象領域を走査し、その走査対象領域からの戻り光L12が光ディテクタ12で検出されるまでの時間に基づいて、走査対象領域に存在する物体までの距離等を測定する装置である。
【0030】
この光走査装置1では、光源11からの照射光L11が光源用レンズ15を通り、アクチュエータ付き反射板13及び照射光用反射ミラー14で反射され、更に照射光用レンズ17を通って走査対象領域へと照射される。アクチュエータ付き反射板13は、詳細については後述する第1磁気アクチュエータ131及び第2磁気アクチュエータ139で反射板132を回転させることで、光源11からの照射光L11の反射方向を変えて走査を行う。
【0031】
ここで、アクチュエータ付き反射板13における反射板132は、両面に反射領域が形成された両面反射板となっている。この反射板132の両面のうちの第1面132cで光源11からの照射光L11を走査対象領域に導くように反射する。
【0032】
走査対象領域からの戻り光L12は、戻り光用レンズ18を通ってアクチュエータ付き反射板13の第2面132dで反射され、ディテクタ用レンズ16を通って光ディテクタ12へと向かう。
【0033】
アクチュエータ付き反射板13では、反射板132の両面のうちの第2面132dで走査対象領域からの戻り光L12を光ディテクタ12へと導くように反射する。
【0034】
そして、不図示の制御装置において、光源11から照射光L11が照射されてから、走査対象領域に存在する物体で照射光L11が反射した戻り光L12が光ディテクタ12で検出されるまでの時間に基づいて、物体までの距離等が算出される。
【0035】
図2は、
図1に模式的に示されているアクチュエータ付き反射板を示した斜視図である。
【0036】
アクチュエータ付き反射板13(ミラーアクチュエータ)は、第1磁気アクチュエータ131と、反射板132(搖動部)と、内フレーム133と、外フレーム134と、第1支持部135と、第1磁気素子136と、を備えている。更に、アクチュエータ付き反射板13は、第2支持部137と、第2磁気素子138と、第2磁気アクチュエータ139と、を備えている。
【0037】
まず、反射板132、内フレーム133、外フレーム134、第1支持部135、及び第2支持部137は、シリコン材で一体に形成されている。反射板132は、円板部132aと矩形板部132bとを有しており、円板部132aの両面に金もしくはアルミニウム等の蒸着等により反射領域132a-1,132a-2が形成されている。
【0038】
図1にも示す反射板132の両面132c,132dのうちの第1面132cにおいて、円板部132aに形成された反射領域132a-1で照射光L11が反射される。また、第2面132dにおいて、円板部132aに形成された反射領域132a-2で戻り光L12が反射される。
【0039】
内フレーム133は、反射板132を囲むように形成された四角枠であり、外フレーム134は、その内フレーム133を囲むように形成された四角枠である。
【0040】
第1支持部135は、反射板132を両側から支持し、この反射板132の第1回転軸13aを定めるように設けられている。反射板132は、この一対の第1支持部135によって内フレーム133に連結されており、一対の第1支持部135は、第1回転軸13aを中心に捩れる一対のトーションバーとなっている。
【0041】
第2支持部137は、第1回転軸13aと直行する第2回転軸13bを定めるように反射板132を両側から支持している。上記の内フレーム133が、この一対の第2支持部137によって外フレーム134に連結されており、一対の第2支持部137は、第2回転軸13bを中心に捩れる一対のトーションバーとなっている。第2支持部137は、内フレーム133を介して、その内フレーム133に連結された反射板132を支持している。
【0042】
第1磁気素子136は、反射板132の一方の面における、第1回転軸13aとずれた位置に取り付けられる永久磁石である。具体的には、
図1にも示されている矩形板部132bにおける第1面132c側に取り付けられている。この第1磁気素子136は、N極部とS極部とが第2回転軸13bの軸方向に着磁された直方体状の永久磁石である。そして、この第1磁気素子136が、矩形板部132bに、その長手方向が第1回転軸13aと平行となるように取り付けられる。このような取付けを可能とするために、矩形板部132bは、第1回転軸13aと平行に長辺が延びた長方形状に形成されている。
【0043】
ここで、本実施例では、第1回転軸13aが、反射領域132a-1,132a-2の双方を、第1回転軸13aに対する直交方向D11について長さが異なる2つの領域に二分する。そして、第1磁気素子136は、直交方向D11の長さが短い方の領域に取り付けられている。即ち、この短い方の領域の側に上記の矩形板部132bが設けられており、その矩形板部132bに第1磁気素子136が取り付けられている。
【0044】
第1磁気アクチュエータ131は、第1磁気素子136に磁力を加える位置に1つ設けられた電磁石であり、ヨーク131aとコイル131bとを備えている。この第1磁気アクチュエータ131が、第1磁気素子136に磁力を加えて、第1回転軸13aを中心に反射板132を回転させる。
【0045】
第2磁気素子138は、第1磁気素子136と同様の直方体状の永久磁石であり、反射板132の上記の第1面132cの延長面において、磁力を加えられると第2回転軸13bを中心に反射板132を回転させるように取付けられる。具体的には、矩形状の内フレーム133において第2回転軸13bと平行に延びた対向する一対の辺部分133aそれぞれの、第1磁気素子136が取り付けられている側と同じ側の面に1つずつ取り付けられている。各辺部分133aに、第2磁気素子138は、その長手方向が、各辺部分133aの長手方向に沿うように、即ち第2回転軸13bと平行となるように取り付けられる。
【0046】
第2磁気アクチュエータ139は、一対の第2磁気素子138それぞれに磁力を加える位置に1つずつ設けられた、上記の第1磁気アクチュエータ131と同等な電磁石であり、各々、ヨーク139aとコイル139bとを備えている。
【0047】
図3は、
図2に示されている第1磁気アクチュエータ及び第2磁気アクチュエータによって反射板が回転駆動される様子を、反射板を中心とした要部の拡大斜視図で示した図である。また、
図4は、
図2に示されている第1磁気アクチュエータ及び第2磁気アクチュエータによって反射板が回転駆動される様子を、
図2中の矢印V11方向から見た側面図で示した図である。
【0048】
まず、第1磁気アクチュエータ131による回転駆動について説明する。
【0049】
第1磁気素子136は永久磁石であり、磁界F11を発している。この第1磁気素子136に対し、第1磁気アクチュエータ131が、磁界F12を発生したとする。すると、これら2つの磁界F11,F12の相互間の反発と吸引とにより、反射板132に対する駆動力F13が生じる。この駆動力F13により、反射板132は、第1支持部135で定められる第1回転軸13aを中心に回転することとなる。このときの回転量は、不図示の制御部により第1磁気アクチュエータ131が発生する磁力の大きさを制御することで調整される。また、回転方向は、第1磁気アクチュエータ131が発生する磁界F12の向きによって制御される。
【0050】
次に、一対の第2磁気アクチュエータ139による回転駆動について説明する。
【0051】
一対の第2磁気素子138も、第1磁気素子136と同様の永久磁石であり、磁界F14を発している。このとき、一対の第2磁気素子138は、互いに同じ極性が向かい合うように配置されている。このとき、一対の第2磁気アクチュエータ139が、互いに逆向きの磁界F15を発生した場合、第2磁気素子138それぞれに対して駆動力F16が生じる。このとき、各第2磁気アクチュエータ139が逆向きに磁界F15を発生させているので、各第2磁気素子138に対して生じる駆動力F16も互いに逆向きとなる。このように互いに逆向きの一対の駆動力F16により、反射板132は、第2支持部137で定められる第2回転軸13bを中心に回転することとなる。このときの回転量は、不図示の制御部により第2磁気アクチュエータ139が発生する磁力の大きさを制御することで調整される。また、回転方向は、第2磁気アクチュエータ139が発生する磁界F15の向きによって制御される。
【0052】
図1に示されている光走査装置1では、アクチュエータ付き反射板13において反射板132を上記のように2軸を中心に回転させながら照射光L11を反射することで、走査対象領域を2次元的に走査することができる。
【0053】
次に第2実施例について説明する。この第2実施例は、アクチュエータ付き反射板が、上述した第1実施例とは異なっている。一方で、光走査装置におけるアクチュエータ付き反射板以外の構成は、
図1に示されている第1実施例の光走査装置1と同じである。以下では、第2実施例について、第1実施例との相違点であるアクチュエータ付き反射板に注目して説明を行ない、同一点である光走査装置の構成については説明を割愛する。
【0054】
図5は、第2実施例におけるアクチュエータ付き反射板を示した斜視図である。尚、
図5では、
図2に示されている第1実施例のアクチュエータ付き反射板13の構成要素と同等な構成要素については
図2と同じ符号が付されている。以下では、それら同等な構成要素についての重複説明を省略する。
【0055】
本実施例におけるアクチュエータ付き反射板23は、磁気素子236を1つだけ備えたものとなっている。この磁気素子236は、第1回転軸13aの軸方向に第2回転軸13bと交差するように延在した永久磁石である。
【0056】
そして、本実施例では、このような磁気素子236を動かすための磁気アクチュエータ231が、次のような一対のアクチュエータ部分231a,231bを備えたものとなっている。一対のアクチュエータ部分231a,231bは、磁気素子236において、第2支持部137で定められる第2回転軸13bを挟んだ2つの部位236a,236bに磁力を加える電磁石である。各アクチュエータ部分231a,231bは、ヨーク231a-1,231b-1とコイル231a-2,231b-2とを備えている。一対のアクチュエータ部分231a,231bは、磁気素子236の長手方向に、第2回転軸13bを相互間に挟んで並ぶように配列されている。
【0057】
図6は、
図5に示されている一対のアクチュエータ部分によって反射板が回転駆動される様子を、反射板を中心とした要部の拡大斜視図で示した図である。
【0058】
まず、第1支持部135で定められる第1回転軸13aを中心とした反射板232の回転駆動について説明する。この回転駆動は、一対のアクチュエータ部分231a,231bが、大きさや極性が互いに同等な磁力を発生させることで行われる。この場合、磁気素子236における2つの部位236a,236bそれぞれの磁界F21と、各アクチュエータ部分231a,231bの磁界F221,F222aと、の相互間の反発と吸引とにより各部位236a,236bに同等な駆動力F231が生じる。この駆動力F231により、反射板232が第1回転軸13aを中心として回転する。このときの回転量は、不図示の制御部により各アクチュエータ部分231a,231bが発生する磁力の大きさを制御することで調整される。また、回転方向は、これらの磁界F221,F222aの向きによって制御される。
【0059】
次に、第2支持部137で定められる第2回転軸13bを中心とした反射板232の回転駆動について説明する。この回転駆動は、一対のアクチュエータ部分231a,231bが、互いに異なる方向の磁界F221,F222bを発生させることで行われる。
【0060】
互いに異なる方向の磁界F221,F222bを発生させた場合、磁気素子236における2つの部位236a,236bに対して、互いに逆向きの駆動力F231,F232が生じる。この駆動力F231,F232により、反射板232が第2回転軸13bを中心として回転する。この場合の回転方向は、互いに異なる磁界F221,F222bの向きによって制御され、回転量はその磁力の大きさで制御される。従って、互いに異なる方向の磁界F221,F222bの向きを交互且つ連続的に切り替えることによって、第2回転軸13bを中心として反射板232を揺動させることができる。
【0061】
また、磁界の向きが同じで、強さが異なる磁界F221,F222cを発生させた場合、磁気素子236における2つの部位236a,236bには、向きは同じだが大きさが互いに異なる駆動力F231,F233が生じる。このような駆動力F231,F233が生じた場合には、反射板132は、第1回転軸13aを中心として回転しつつ第2回転軸13bを中心として回転することとなる。この場合の回転量や回転方向は磁界F221,F222cの向きや強さによって制御される。
【0062】
図7は、
図1~
図6に示す第1実施例や第2実施例と比較するための比較例を示す図である。この
図7には、比較例が光走査装置5で示されている。
【0063】
この比較例の光走査装置5は、光源51と、光ディテクタ52と、アクチュエータ付き反射板53と、ビームスプリッタ54と、光源用レンズ55と、ディテクタ用レンズ56と、共用レンズ57と、を備えている。この光走査装置5は、光源51からの照射光L51で走査対象領域を走査し、その走査対象領域からの戻り光L52が光ディテクタ52で検出されるまでの時間に基づいて、走査対象領域に存在する物体までの距離等を測定する装置である。
【0064】
この光走査装置5では、光源51からの照射光L51が光源用レンズ55を通り、ビームスプリッタ54を経てアクチュエータ付き反射板53で反射されて走査対象領域へと照射される。アクチュエータ付き反射板53は、磁気アクチュエータ531で反射板532を回転させることで、光源51からの照射光L51の反射方向を変えて走査を行う。反射板532の裏面532cには、磁気アクチュエータ531からの磁力を受ける磁気素子536が配置されている。アクチュエータ付き反射板53は、反射板532における、この磁気素子536とは反対側の表面532dに反射領域が形成された片面反射板となっている。
【0065】
走査対象領域からの戻り光L52は、レンズ57を通ってアクチュエータ付き反射板53で反射され、ビームスプリッタ54及びディテクタ用レンズ56を通って光ディテクタ12へと向かう。そして、不図示の制御装置において、光源51から照射光L51が照射されてから、戻り光L52が光ディテクタ52で検出されるまでの時間に基づいて、走査対象領域に存在する物体までの距離等が算出される。
【0066】
ここで、
図7に示されている比較例の光走査装置5では、ビームスプリッタ54を配置したことで、照射光L51と戻り光L52の双方に光量のロスが生じることから光の利用効率が低くなりがちである。
【0067】
これに対し、上述した第1実施例では、第1磁気アクチュエータ131によって動かされる第1磁気素子136が、反射板132の第1回転軸13aからずれた位置に取付けられている。また、上述した第2実施例では、磁気アクチュエータ231によって動かされる磁気素子236が、反射板232の第1回転軸13aからずれた位置に取付けられている。このため、何れの実施例においても、反射板132の両面の反射領域で、第1磁気素子136や第1磁気アクチュエータ131、あるいは磁気素子236や磁気アクチュエータ231にさえぎられることなく光を反射することができる。つまり、第1実施例及び第2実施例のアクチュエータ付き反射板13,23は、表裏両面を広く利用して両面反射板として用いることができる。これにより、
図1に示されているように、アクチュエータ付き反射板13,23で光走査装置1を構築する際に、両面のうちの第1面132cで照射光L11を反射し、第2面132dで戻り光L12を反射するように構成することができる。その結果、光走査装置1において、ビームスプリッタを用いることなく戻り光L12を光ディテクタ52に導くことができる。即ち、第1実施例及び第2実施例のアクチュエータ付き反射板13,23によれば、ビームスプリッタを用いないことで光の利用効率の高い光走査装置1を構築することができる。
【0068】
また、第1実施例及び第2実施例によれば、何れにおいても、光走査装置1において照射光L11と戻り光L12とを互いに別経路とすることができるので、一方の光から他方の光への迷光や干渉を抑制することもできる。更には、光走査装置1において照射光L11と戻り光L12とのそれぞれに対して個別に最適な光路設計を行うことができる。この最適な光路設計としては、反射板132,232における反射膜構成の最適化や、各光路に配置するレンズにおける反射防止膜構成の最適化等が挙げられる。
【0069】
ここで、第1実施例及び第2実施例では、何れにおいても、第1回転軸13aによって二分される反射領域132a-1,132a-2の2つの領域のうち、次のような領域に第1磁気素子136や磁気素子236が取り付けられている。即ち、第1磁気素子136や磁気素子236は、直交方向D11の長さが短い方の領域に取り付けられている。
【0070】
これにより、2つの領域のうちの長い方の領域について、第1磁気素子136や磁気素子236の駆動量に対して、第1回転軸13aを中心とした大きな回転量を得ることができる。光走査装置1では、照射光L11や戻り光L12は、第1磁気素子136や磁気素子236を避けて、この長い方の領域で反射されることとなるので、第1磁気素子136や磁気素子236の駆動量に対して大きな走査量を得ることができる。
【0071】
また、第1磁気素子136や磁気素子236が、反射領域ではない領域(反射領域からずれた位置)に取り付けられていることにより、反射領域にゆがみが生じるといった不具合が生じにくい。
【0072】
また、上述した第1実施例のアクチュエータ付き反射板13は、第1磁気素子136及び第1磁気アクチュエータ131に加えて、第2磁気素子138及び第2磁気アクチュエータ139を備えている。
【0073】
これにより、第1実施例のアクチュエータ付き反射板13では、反射板132を、第1回転軸13aと第2回転軸13bの2軸を中心に回転させることができる。つまり、走査対象領域を二次元的に走査可能な光走査装置1を構築することができる。また、各回転軸13a,13bを中心とした反射板132の回転を、各回転軸13a,13bに対応した磁気素子と磁気アクチュエータとで行うため、各回転軸13a,13bを中心とした反射板13の回転を容易に行なうことができる。
【0074】
また、上述した第2実施例のアクチュエータ付き反射板23は、磁気アクチュエータ231が、次のような一対のアクチュエータ部分231a,231bを備えている。これら一対のアクチュエータ部分231a,231bは、磁気素子236において第2回転軸13bを挟んだ2つの部位236a,236bに磁力を加える。
【0075】
これによっても、反射板232を、第1回転軸13aと第2回転軸13bとの2軸を中心に回転させることができるので、走査対象領域を二次元的に走査可能な光走査装置1を構築することができる。また、磁気素子236と磁気アクチュエータ231との組合せのみで反射板232を2軸を中心に回転させることができるので、アクチュエータ付き反射板23の小型化を図ることができる。
【0076】
また、この第2実施例のアクチュエータ付き反射板23では、一対のアクチュエータ部分231a、231bが発生させる磁界の向きと強さについてバランスを取りつつ制御することで、第1回転軸13aを中心とした反射板232の回転を制御することができる。そして、一対のアクチュエータ部分231a、23bそれぞれが発生させる磁界の向きと強さを相互間で異ならせつつ制御することで、第2回転軸13bを中心とした反射板232の回転を制御することができる。
【0077】
尚、本発明は、以上に説明した実施例に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
【0078】
例えば、上述した第1実施例及び第2実施例では、本発明にいうアクチュエータ付き反射板の一例として、反射板132,232を2軸を中心に回転させるアクチュエータ付き反射板13,23が例示されている。しかしながら、本発明にいうアクチュエータ付き反射板は、これに限るものではなく、例えば磁気素子と磁気アクチュエータを1セットのみ備えて反射板を1軸で回転させるもの等であってもよい。
【0079】
また、上述した第1実施例及び第2実施例では、本発明にいう第1磁気素子の一例として永久磁石の第1磁気素子136及び磁気素子236が例示されている。同様に、本発明にいう第2磁気素子の一例として、永久磁石の第2磁気素子138が例示されている。しかしながら、本発明にいう第1磁気素子や第2磁気素子は、これらに限るものではなく、例えば電流が流されて磁力を受けると駆動力が生じるコイル等であってもよい。この場合、このコイルを動かす磁気アクチュエータは永久磁石であってもよい。
【0080】
また、上述した第1実施例及び第2実施例では、本発明にいう反射板の一例として円板部132aと矩形板部132b,232bとを備え、円板部132aの両面に反射領域が形成された反射板132,232が例示されている。しかしながら、本発明にいう反射板はこれらに限るものではない。本発明にいう反射板は、両面に反射領域が形成されたものであれば、単純な円板状であっても矩形板状であってもよく、その具体的形状を問うものではない。
【0081】
また、本実施例では、1つの磁気素子136、236について、反射板132,232の一方の面に取り付けられたものとして説明したが、磁気素子は2つに分割したものを用いてもよく、また両方の面に取り付けてもよい。又は、反射板132、232の磁石取付位置に開口を設け、そこに1つの磁気素子136、236をはめ込んでもよい。この場合、反射板132、232の両方の面に磁気素子136、236が現れることになる。磁気素子を両面に取り付けた場合、又は開口にはめ込んだ場合は、反射板132、232が縦になるように取り付けた場合でも、反射板の回転軸に対してバランスがとれた状態にできるので、例えば非駆動時において反射板が回転して一方に傾いてしまうことがない。
【0082】
また、本実施例では、磁気素子136,236,135を長手方向を有する長方形の形状で説明したが、これに限定されない。反射板132又は232を回転駆動させるのに十分な力が得られるのであれば、磁気素子のサイズは小さくてもよく、例えば正方形に形成した磁気素子を用いることもできる。