IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • -印刷流体カートリッジ 図1
  • -印刷流体カートリッジ 図2
  • -印刷流体カートリッジ 図3
  • -印刷流体カートリッジ 図4
  • -印刷流体カートリッジ 図5
  • -印刷流体カートリッジ 図6
  • -印刷流体カートリッジ 図7
  • -印刷流体カートリッジ 図8
  • -印刷流体カートリッジ 図9
  • -印刷流体カートリッジ 図10
  • -印刷流体カートリッジ 図11
  • -印刷流体カートリッジ 図12
  • -印刷流体カートリッジ 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189948
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】印刷流体カートリッジ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20221215BHJP
【FI】
B41J2/175 169
B41J2/175 115
B41J2/175 119
B41J2/175 167
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174118
(22)【出願日】2022-10-31
(62)【分割の表示】P 2020216470の分割
【原出願日】2016-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】大野 彰人
(57)【要約】
【課題】印刷流体カートリッジにおいて、本体の外面から突出する板部が破損され難い手段を提供する。
【解決手段】インクカートリッジ30は、貯留室36を有する後部カバー31及び前部カバー32と、前部カバー32の上面141に設けられた第1補強部83と、第1補強83部と連続して上方向54へ延びる第2補強部84と、第1補強部83及び第2補強部84と連続して前方向57及び上方向54へ延びる板部85と、を具備する。板部85は、当該傾斜面89と直交する方向124が前方向57及び上方向54に沿っていない傾斜面89を有する。傾斜面89は、第1補強部83の前端83Aから上方向54に沿って延びる第1仮想直線121と、第2補強部84の上端84Aから前方向57に沿って延びる第2仮想直線122との交点120より、第1補強部83及び第2補強部84が連続する連続部分79に近い位置にある。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷流体が貯留される貯留室を有する本体と、
上記本体の外面に設けられており、当該外面に沿って第1方向へ延びる第1補強部と、
上記第1補強部と連続しており、上記外面と直交する第2方向へ延びる第2補強部と、
上記第1補強部及び上記第2補強部と連続して上記第1方向及び上記第2方向へ延びており、上記第1方向及び上記第2方向と直交する第3方向に沿った厚みが、上記第1補強部及び上記第2補強部それぞれの当該第3方向に沿った厚みより薄い板部と、を具備しており、
上記板部は、上記第3方向に沿って拡がっており、当該第1端面と直交する方向が上記第1方向及び上記第2方向に沿っていない傾斜面を有しており、
上記傾斜面は、上記第1補強部が上記第2補強部から上記第1方向に沿って延びる第1延出端から上記第2方向に沿って延びる第1仮想直線と、上記第2補強部が上記第1補強部から上記第2方向に沿って延びる第2延出端から上記第1方向に沿って延びる第2仮想直線との交点より、上記第1補強部及び上記第2補強部が連続する連続部分に近い位置にある印刷流体カートリッジ。
【請求項2】
上記板部は、周縁が当該板部により区画されており、上記第3方向に沿って光透過性を有する窓を有する請求項1に記載の印刷流体カートリッジ。
【請求項3】
上記板部は、上記第1補強部と連続しており、上記第2方向及び上記第3方向に拡がる第1端面と、上記第2補強部と連続しており、上記第1方向及び上記第3方向に拡がる第2端面と、を有しており、
上記傾斜面は、上記第1端面と上記第2端面とを繋いでいる請求項1又は2に記載の印刷流体カートリッジ。
【請求項4】
上記傾斜面は、平面である請求項1から3のいずれかに記載の印刷流体カートリッジ。
【請求項5】
当該印刷流体カートリッジは、カートリッジ装着部に装着されるものであり、
上記外面は、当該印刷流体カートリッジが上記カートリッジ装着部に装着された装着姿勢における上記本体の上面である請求項1から4のいずれかに記載の印刷流体カートリッジ。
【請求項6】
上記外面において上記板部から上記第1方向に離れた位置にあり、上記第2方向へ突出する第1凸部と、
上記外面において上記板部を挟んで上記第1凸部と上記第1方向の反対に位置しており、上記第2方向へ突出する第2凸部と、を更に具備しており、
上記傾斜面は、上記第1凸部の突出端と上記第2凸部の突出端とを結ぶ第3仮想直線より、上記外面に近い位置にある請求項1から5のいずれかに記載の印刷流体カートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯留室を有する本体の外面から突出する板部を有する印刷流体カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、インク容器に貯留されたインクをノズルから吐出することによって、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置が知られている。インクジェット記録装置において、インクが消費される毎に新たなインクカートリッジを装着可能に構成されたものがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、インクカートリッジの本体の外面から板形状の識別部が突出されており、識別部に窓が形成されているか否かが光学センサに検知されることによって、インクカートリッジの種別を判定する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-228378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述されたような識別部は、光学センサにより検知可能な程度に厚みが薄い。したがって、インクカートリッジが床に落ちたり、他の物と衝突したりしたときに、衝撃が加わりやすい。その結果、識別部が変形したり破損したりして、光学センサによる検知が不能になったり、カートリッジ装着部に装着できなくなったりするおそれがある。
【0006】
本発明は、前述された事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、印刷流体カートリッジにおいて、本体の外面から突出する板部が破損され難い手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明に係る印刷流体カートリッジは、印刷流体が貯留される貯留室を有する本体と、上記本体の外面に設けられており、当該外面に沿って第1方向へ延びる第1補強部と、上記第1補強部と連続しており、上記外面と直交する第2方向へ延びる第2補強部と、上記第1補強部及び上記第2補強部と連続して上記第1方向及び上記第2方向へ延びており、上記第1方向及び上記第2方向と直交する第3方向に沿った厚みが、上記第1補強部及び上記第2補強部それぞれの当該第3方向に沿った厚みより薄い板部と、を具備する。上記板部は、上記第3方向に沿って拡がっており、当該傾斜面と直交する方向が上記第1方向及び上記第2方向に沿っていない傾斜面を有しており、上記傾斜面は、上記第1補強部が上記第2補強部から上記第1方向に沿って延びる第1延出端から上記第2方向に沿って延びる第1仮想直線と、上記第2補強部が上記第1補強部から上記第2方向に沿って延びる第2延出端から上記第1方向に沿って延びる第2仮想直線との交点より、上記第1補強部及び上記第2補強部が連続する連続部分に近い位置にある。
【0008】
本体の外面から突出する板部は、第1補強部及び第2補強部から延出している。第1補強部と第2補強部との連続部分から比較的遠い位置にある傾斜面が、第1仮想直線と第2仮想直線との交点より連続部分に近い位置にあるので、傾斜面に加わった衝撃により板部が変形し難い。
【0009】
(2) 好ましくは、上記板部は、周縁が当該板部により区画されており、上記第3方向に沿って光透過性を有する窓を有する。
【0010】
窓の有無が光学的に検知されることによって、印刷流体カートリッジの種別が判定可能である。
【0011】
(3) 好ましくは、上記板部は、上記第1補強部と連続しており、上記第2方向及び上記第3方向に拡がる第1端面と、上記第2補強部と連続しており、上記第1方向及び上記第3方向に拡がる第2端面と、を有しており、上記傾斜面は、上記第1端面と上記第2端面とを繋いでいる。
【0012】
(4) 好ましくは、上記傾斜面は、平面である。
【0013】
(5) 好ましくは、当該印刷流体カートリッジは、カートリッジ装着部に装着されるものであり、上記外面は、当該印刷流体カートリッジが上記カートリッジ装着部に装着された装着姿勢における上記本体の上面である。
【0014】
(6) 好ましくは、上記印刷流体カートリッジは、上記外面において上記板部から上記第1方向に離れた位置にあり、上記第2方向へ突出する第1凸部と、上記外面において上記板部を挟んで上記第1凸部と上記第1方向の反対に位置しており、上記第2方向へ突出する第2凸部と、を更に具備しており、上記傾斜面は、上記第1凸部の突出端と上記第2凸部の突出端とを結ぶ第3仮想直線より、上記外面に近い位置にある。
【0015】
上記構成によれば、例えば印刷流体カートリッジが床に落下されたときに、傾斜面より第1凸部及び第2凸部が床に当たりやすい。これにより、傾斜面に衝撃が加わり難い。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、印刷流体カートリッジにおいて、本体の外面から突出する板部が破損され難い。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、カートリッジ装着部110を備えたプリンタ10の内部構造を模式的に示す模式断面図である。
図2図2は、カートリッジ装着部110の外観構成を示す正面図である。
図3図3は、インクカートリッジ30を前方且つ上方から視た状態の外観構成を示す斜視図である。
図4図4は、インクカートリッジ30を前方且つ下方から視た状態の外観構成を示す斜視図である。
図5図5は、インクカートリッジ30の縦断面図である。
図6図6は、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着される過程における光学センサ103,108との位置関係を示す縦断面図であって、光学センサ103が識別リブ80の遮光部82を検知した状態を示す。
図7図7は、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着される過程における光学センサ103,108との位置関係を示す縦断面図であって、光学センサ108が識別リブ80の遮光部82を検知した状態を示す。
図8図8は、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着された状態における光学センサ103,108との位置関係を示す縦断面図であって、光学センサ103が被検知部材59のアーム68を検知した状態を示す。
図9図9は、制御部1を示すブロック図である。
図10図10(A)は、インクカートリッジ30の挿入過程における光学センサ103の出力信号の変化を示す図であり、図10(B)は、インクカートリッジ30の挿入過程における光学センサ108の出力信号の変化を示す図であり、図10(C)は、インクカートリッジ30に貯留されたインクの減少過程における光学センサ103の出力信号の変化を示す図である。
図11図11は、インクカートリッジ30のカートリッジ装着部110への挿入検知を説明するためのフローチャートである。
図12図12(A),(B)は、変形例における識別リブ80の板部85の形状を示す各断面図である。図12(C)は、別の変形例におけるインクカートリッジ30を模式的に示す図である。
図13図13は、インクカートリッジ30の各部の寸法を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明が具体化された一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。また、以下の説明では、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に挿入される方向が挿入方向51と定義される。また、挿入方向51と反対方向であって、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110から脱抜される方向が脱抜方向52と定義される。
【0019】
本実施形態において、挿入方向51及び脱抜方向52は水平方向であるが、挿入方向51及び脱抜方向52は水平方向でなくてもよい。また、重力方向が下方向53と定義され、重力方向と反対方向が上方向54(第2方向の一例)と定義される。また、挿入方向51及び下方向53と直交する方向が、右方向55及び左方向56と定義される。より具体的には、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110の装着位置まで挿入された状態、つまりインクカートリッジ30が装着姿勢にある状態において、インクカートリッジ30を挿入方向51に視た場合において、右に延びる方向が右方向55と定義され、左に延びる方向が左方向56と定義される。さらに、挿入方向51を前方向57(第1方向の一例)と呼び、脱抜方向52を後方向58と呼ぶこともある。
【0020】
[プリンタ10の概要]
図1に示されるように、プリンタ10は、インクジェット記録方式に基づいて、記録用紙に対してインク滴を選択的に吐出することにより画像を記録するものである。プリンタ10は、記録ヘッド21と、インク供給装置100と、記録ヘッド21及びインク供給装置100を接続するインクチューブ20とを備えている。インク供給装置100には、カートリッジ装着部110が設けられている。カートリッジ装着部110には、インクカートリッジ30(印刷流体カートリッジの一例)が装着され得る。カートリッジ装着部110には、その一面に開口112が設けられている。インクカートリッジ30は、開口112を通じてカートリッジ装着部110に挿入方向51に挿入され、或いはカートリッジ装着部110から脱抜方向52に抜き出される。
【0021】
インクカートリッジ30には、プリンタ10で使用可能なインク(印刷流体の一例)が貯留されている。カートリッジ装着部110へのインクカートリッジ30の装着が完了した状態において、インクカートリッジ30と記録ヘッド21とは、インクチューブ20で接続されている。記録ヘッド21にはサブタンク28が設けられている。サブタンク28は、インクチューブ20を通じて供給されるインクを一時的に貯留する。記録ヘッド21は、インクジェット記録方式によって、サブタンク28から供給されたインクをノズル29から選択的に吐出する。
【0022】
プリンタ10は、給紙トレイ15と、給紙ローラ23と、搬送ローラ対25と、プラテン26と、排出ローラ対27と、排紙トレイ16と、を備えている。給紙トレイ15から給紙ローラ23によって搬送路24へ給送された記録用紙は、搬送ローラ対25によってプラテン26上へ搬送される。記録ヘッド21は、プラテン26上を通過する記録用紙に対してインクを選択的に吐出する。これにより、記録用紙に画像が記録される。プラテン26を通過した記録用紙は、排出ローラ対27によって、搬送路24の最下流側に設けられた排紙トレイ16に排出される。
【0023】
[インク供給装置100]
図1に示されるように、インク供給装置100は、プリンタ10に設けられている。インク供給装置100は、プリンタ10が備える記録ヘッド21にインクを供給するものである。インク供給装置100は、インクカートリッジ30を装着可能なカートリッジ装着部110を備えている。なお、図1においては、カートリッジ装着部110へのインクカートリッジ30の装着が完了した状態が示されている。つまり、インクカートリッジ30が装着姿勢である状態が示されている。
【0024】
[カートリッジ装着部110]
図1,2に示されるように、カートリッジ装着部110は、ケース101と、インクニードル102と、光学センサ103,108と、4つの接点106と、スライダ107と、ロック部145とを備えている。カートリッジ装着部110には、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色に対応する4つのインクカートリッジ30が収容可能である。また、インクニードル102、光学センサ103、4つの接点106、スライダ107、及びロック部145は、4つのインクカートリッジ30それぞれに対応して、4つずつ設けられている。
【0025】
[ケース101]
カートリッジ装着部110の筐体を形成するケース101は、ケース101の内部空間の天部を画定している天面と、底部を画定している底面と、天部と底部とをつないでいる終面と、終面と挿入方向51及び脱抜方向52に対向する位置に設けられ、ユーザがプリンタ10を使用するときに対面する面であるプリンタ10のユーザインタフェース面に露出し得る開口112とを有する箱形状である。開口112を通じてケース101へインクカートリッジ30が挿抜される。インクカートリッジ30は、天面及び底面に設けられたガイド溝109に、インクカートリッジ30の上端部及び下端部が挿入されることによって、挿入方向51及び脱抜方向52へ案内される。ケース101には、内部空間を縦方向に長い4つの空間に仕切り分ける3つのプレート104が設けられている。このプレート104によって仕切り分けられた各空間それぞれにインクカートリッジ30が収容される。
【0026】
[インクニードル102]
図1,2に示されるように、インクニードル102は、管状の樹脂からなり、ケース101の終面の下部に設けられている。インクニードル102は、ケース101の終面において、カートリッジ装着部110に装着されたインクカートリッジ30のインク供給部34(図3参照)に対応する位置に配置されている。インクニードル102は、ケース101の終面から脱抜方向52へ突出している。
【0027】
インクニードル102の周囲には、円筒形状のガイド部105が設けられている。ガイド部105は、ケース101の終面から脱抜方向52へ突出し、その突出端が開口している。インクニードル102は、ガイド部105の中心に配置されている。ガイド部105は、インクカートリッジのインク供給部34が内方に進入する形状である。
【0028】
インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に挿入方向51へ挿入される過程において、つまりインクカートリッジ30が装着位置に移動する過程において、インクカートリッジ30のインク供給部34がガイド部105に進入する。さらにインクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に挿入方向51に挿入されると、インクニードル102が、シール部材70に形成された貫通孔71に挿入される。これにより、貫通孔71から弁体77(図8参照)が離れて貯留室36からインクニードル102へインクが流入可能な状態となる。そして、インクニードル102の内部空間を通じてインクニードル102に接続されたインクチューブ20にインクが流出される。
【0029】
[スライダ107]
ケース101の下方のガイド溝109の下面であって、終面に近い位置に挿入方向51(又は脱抜方向52)に沿って延びる開口111が形成されている。開口111には、スライダ107が設けられている。スライダ107は、開口111を通じてガイド溝109の下面の下方から上方へ突出している。スライダ107は、ケース101の下方に設けられたガイドレール(不図示)に嵌合されており、ガイドレールに沿って開口111内を挿入方向51及び脱抜方向52に移動可能である。スライダ107とケース101との間には、ヒキバネ114が張り渡されている。ヒキバネ114は、スライダ107を引っ張ることにより脱抜方向52へ付勢している。したがって、スライダ107は、外力が付与されていない状態では、ガイドレールの脱抜方向52の端に位置する。その位置から、挿入方向51への外力が付与されると、スライダ107は、開口111内をガイドレールに沿って挿入方向51へ移動可能である。
【0030】
インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に挿入方向51へ挿入される過程において、つまりインクカートリッジ30が装着位置に移動する過程において、インクカートリッジ30の第2突出部86がガイド溝109に沿って挿入方向51へ進むことにより、スライダ107と当接する。さらにインクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に挿入方向51に挿入されると、第2突出部86に押し込まれることによって、スライダ107がヒキバネ114の付勢力に抗して挿入方向51へ移動する。スライダ107により、インクカートリッジ30は、脱抜方向52への付勢力を受ける。
【0031】
[ロック部145]
図1,2に示されるように、ロック部145が、ケース101の天面付近且つ開口112付近において、ケース101の左方向56及び右方向55に延出されている。ロック部145は、左方向56及び右方向55に沿って延びる棒状の部材である。ロック部145は、例えば、金属の円柱である。ロック部145の左方向56及び右方向55の両端は、ケース101の左方向56及び右方向55の両端を画定している壁に固定されている。したがって、ロック部145は、ケース101に対して回動等の相対移動をしない。ロック部145は、4つのインクカートリッジ30が収納可能な4つの空間に渡って左方向56及び右方向55に延びている。インクカートリッジ30が収容される各空間において、ロック部145の周囲には空間が存在する。したがって、ロック部145に対して、上方向54へ向かって、また、脱抜方向52へ向かってアクセスすることができる。
【0032】
ロック部145は、カートリッジ装着部110に装着されたインクカートリッジ30を装着位置に保持するためのものである。インクカートリッジ30は、カートリッジ装着部110に挿入されて、装着姿勢に回動されることにより、ロック部145に係合され、また、ロック部145は、スライダ107がインクカートリッジ30を脱抜方向52へ押す力、及びインクカートリッジ30のコイルバネ78がインクカートリッジ30を脱抜方向52へ押す力に抗してインクカートリッジ30をカートリッジ装着部110内に保持する。
【0033】
図2に示されるように、ケース101の天面における終面付近には4つの接点106が設けられている。各図には詳細に示されていないが、4つの接点106は、左方向56及び右方向55に離れて配置されている。4つの接点106の配置は、後述されるインクカートリッジ30の4つの電極65の配置(図3参照)に対応している。各接点106は、導電性及び弾性を有する部材で構成されており、上方向54へ弾性的に変形可能である。4つの接点106は、ケース101に収容可能な4つのインクカートリッジ30に対応して、4組が設けられている。なお、接点106の個数及び電極65の個数は任意である。
【0034】
各接点106は、電気回路を介して制御部1に電気的に接続されている。制御部1は、例えばCPU,ROM,RAMなどからなるものである(図9参照)。接点106と対応する電極65とが電気的に導通されることによって、電圧Vcが電極65に印加されたり、電極65がアースされたり、電極65に電力が供給されたりする。接点106と対応する電極65との電気的な導通により、インクカートリッジ30のICに格納されたデータにアクセス可能となる。電気回路からの出力は制御部1に入力される。
【0035】
[ロッド125]
図1,2に示されるように、ロッド125が、ケース101の終面におけるインクニードル102より上方に設けられている。ロッド125は、ケース101の終面から脱抜方向52へ突出されている。ロッド125は、円筒形状の上半分の如く、脱抜方向52と直交する断面形状が逆向きU字形状であって、その最上部分から上方へ脱抜方向52へ延びるリブが突出された形状である。ロッド125は、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着された状態において、つまりインクカートリッジ30が装着位置に位置する状態において、インクカートリッジ30のIC基板64の下方の凹部96へ挿入される。
【0036】
[光学センサ103]
図1に示されるように、ケース101の天面には、光学センサ103が設けられている。光学センサ103は、発光部及び受光部を備える。発光部は、受光部よりも右方向55または左方向56に、受光部と間隔を空けて設けられている。カートリッジ装着部110への装着が完了したインクカートリッジ30の液量検知部62は、発光部及び受光部の間に配置される。換言すれば、発光部及び受光部は、カートリッジ装着部110への装着が完了したインクカートリッジ30の液量検知部62を挟んで対向配置されている。
【0037】
光学センサ103は、発光部から出力された光が受光部で受光されたか否かに応じて異なる検知信号を出力する。例えば、光学センサ103は、発光部から出力された光が受光部で受光できない(すなわち、受光強度が所定の強度未満である)ことを条件として、ローレベル信号(「信号レベルが閾値レベル未満の信号」を指す。)を出力する。一方、光学センサ103は、発光部から出力された光が受光部で受光できた(すなわち、受光強度が所定の強度以上である)ことを条件として、ハイレベル信号(「信号レベルが閾値レベル以上の信号」を指す。)を出力する。
【0038】
[光学センサ108]
図1,2に示されるように、ケース101の天面であって光学センサ103よりケース101の終面に近い位置には、光学センサ108が設けられている。光学センサ108は、発光部及び受光部を備える。発光部は、受光部よりも右方向55または左方向56に、受光部と間隔を空けて設けられている。カートリッジ装着部110への装着が完了したインクカートリッジ30の識別リブ80は、発光部及び受光部の間に配置される。換言すれば、発光部及び受光部は、カートリッジ装着部110への装着が完了したインクカートリッジ30の識別リブ80を挟んで対向配置されている。
【0039】
光学センサ108は、発光部から出力された光が受光部で受光されたか否かに応じて異なる検知信号を出力する。例えば、光学センサ108は、発光部から出力された光が受光部で受光できない(すなわち、受光強度が所定の強度未満である)ことを条件として、ローレベル信号(「信号レベルが閾値レベル未満の信号」を指す。)を出力する。一方、光学センサ108は、発光部から出力された光が受光部で受光できた(すなわち、受光強度が所定の強度以上である)ことを条件として、ハイレベル信号(「信号レベルが閾値レベル以上の信号」を指す。)を出力する。
【0040】
ケース101の開口112の上端付近には、カバーセンサ118(図9参照)が設けられている。カバーセンサ118は、ケース101の開口112とカバーとが当接しているかを検知し得る。カバーが閉位置にあると、カバーセンサ118にカバーの上端付近が当接して、カバーセンサ118から検知信号が制御部1へ出力される。カバーが閉位置にないと、カバーセンサ118は検知信号を出力しない。
【0041】
[インクカートリッジ30]
図3から図5に示されるインクカートリッジ30はインクが貯留される容器である。インクカートリッジ30の内部に形成されている空間がインクを貯留する貯留室36である。貯留室36は、インクカートリッジ30の外観を形成している後部カバー31及び前部カバー32に収納された内部フレーム35及びフィルム(不図示)によって形成されている。
【0042】
図5に示されているインクカートリッジ30の姿勢は、インクカートリッジ30が装着姿勢にあるときの姿勢である。すなわち、インクカートリッジ30は、後述されるように、前面140と、後面41と、上面39,141と、下面42,142とを備えるが、図5に示されているインクカートリッジ30の姿勢は、後面41から前面140に向かう方向が挿入方向51及び前方向57に一致し、前面140から後面41に向かう方向が脱抜方向52に一致し、上面39,141から下面42,142に向かう方向が下方向53に一致し、下面42,142から上面39,141に向かう方向が上方向54に一致する姿勢である。また、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着されるときに、前面140は挿入方向51及び前方向57を向き、後面41は脱抜方向52を向き、下面42,142は下方向53を向き、上面39,141は、上方向54を向く。
【0043】
図5に示されるように、インクカートリッジ30は、主として、略直方体形状の後部カバー31と、前面140を構成する前部カバー32と、貯留室36を区画する内部フレーム35とで構成される。後部カバー31に前部カバー32が組み付けられて、インクカートリッジ30の外形が構成されている。内部フレーム35は、組み付けられた後部カバー31及び前部カバー32の内部に収納される。インクカートリッジ30は、全体として、右方向55及び左方向56に沿った寸法、又は下方向53及び上方向54に沿った寸法より、前方向57及び後方向58に沿った寸法が大きい。インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110へ挿入されるときに挿入方向51(前方向57)を向く前部カバー32の面であって、インクカートリッジ30の前方向57及び後方向58の寸法において半分より前にある面が前面140であり、脱抜方向52(後方向58)を向く後部カバー31の面が後面41である。すなわち、後面41は、前部カバー32の前面140との間に貯留室36を挟んで配置されている。前部カバー32及び後部カバー31が本体の一例である。
【0044】
[後部カバー31]
図3及び図4に示されるように、後部カバー31は、右方向55及び左方向56において互いに隔てて配置された側面37、38と、上方向54を向く上面39、下方向53を向く下面42とが後面41から挿入方向51に延設されて構成されており、前方向57へ向かって開口された箱形である。後部カバー31の内部には、開口を通じて内部フレーム35が挿入される。すなわち、後部カバー31は、内部フレーム35の後部を覆っている。また、下面42は、内部フレーム35が挿入された状態において、上面39との間に貯留室36を挟んで配置されている。
【0045】
後部カバー31の上面39には、凸部43が設けられている。凸部43は、上面39における右方向55及び左方向56の中央において前方向57及び後方向58に沿って延びている。凸部43において後方向58を向く面がロック面151である。ロック面151は、下方向53及び上方向54に沿って延びている。ロック面151は、カートリッジ装着部110にインクカートリッジ30が装着された状態において、ロック部145と脱抜方向52へ向かって接触し得る面である。ロック面151がロック部145と脱抜方向52へ向かって接触することにより、インクカートリッジ30がスライダ107を介して付勢されるヒキバネの付勢力及びコイルバネ78の付勢力に抗してカートリッジ装着部110に保持される。
【0046】
後部カバー31の上面39において、ロック面151より後方向58には、操作部90が設けられている。後部カバー31の上面39の後端には、上面39のその他の部分より下方向53に位置するサブ上面91が形成されている。サブ上面91の上方において空間を隔てて操作部90が配置されている。操作部90は、上面39のその他の部分とサブ上面91との境界付近から上方向54へ凸部43より上方まで突出し、さらに後方向58且つ下方向53へ斜め下方向に折れ曲がった平板形状である。操作部90とサブ上面91との間には、操作部90及びサブ上面91に連続しており、且つ後方向58へ延びるリブ94が設けられている。
【0047】
[前部カバー32]
図3及び図4に示されるように、前部カバー32は、右方向55及び左方向56において互いに隔てて配置された側面143、144と、下方向53及び上方向54において互いに隔てて配置された上面141及び下面142とが前面140から後方向58に延設されて構成されており、後方向58へ向かって開口された箱形である。前部カバー32の内部には、開口を通じて内部フレーム35が挿入される。すなわち、前部カバー32は、内部フレーム35のうちの後部カバー31によって覆われていない前部を覆っている。
【0048】
前部カバー32及び後部カバー31が組み付けられた状態、すなわちインクカートリッジ30が組み立てられた状態において、前部カバー32の上面141は、後部カバー31の上面39と共にインクカートリッジ30の上面を構成する。前部カバー32の下面142、後部カバー31の下面42と共にインクカートリッジ30の下面を構成する。なお、インクカートリッジ30の前面、後面、上面、下面、側面は、必ずしも1つの平面をなしている必要はない。
【0049】
前部カバー32の前面140の上部分には、後方向58へ凹む凹部96が形成されている。凹部96には、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着された状態においてロッド125が進入する。したがって、凹部96の前方向57及び後方向58に直交する断面は、ロッド125の断面形状に対応する形状である。
【0050】
前部カバー32の前面140の下部分には、後方向58へ貫通する孔97が形成されている。孔97は、前部カバー32に内部フレーム35が挿入された状態において、内部フレーム35のインク供給部34を外部へ露出させるための孔になる。したがって、孔97は、内部フレーム35のインク供給部34に対応する位置、寸法、及び形状に形成されている。
【0051】
前部カバー32の前面140には、第1突出部85及び第2突出部86が設けられている。第1突出部85は、前部カバー32の上端において前方向57に突出している。凹部96は、第1突出部85の先端に設けられている。第1突出部85の先端は前面140の一部をなす。
【0052】
第2突出部86は、前部カバー32の前面140の下端、すなわちインク供給部34より下方において、前面140から前方向57に突出している。第2突出部86の下面には、前方向57及び下方向53に開口する凹部86が形成されている。凹部86の一部は、前部カバー32の下面142より下方向53へ突出している。第2突出部86は、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に挿入される過程において、凹部86にスライダ107が進入して当接する。
【0053】
前部カバー32の上面141には、下方向53に貫通する孔98が形成されている。孔98は、前部カバー32に内部フレーム35が挿入された状態において、内部フレーム35の液量検知部62を外部へ露出させるための孔になる。したがって、孔98は、内部フレーム35の液量検知部62に対応する位置、寸法、及び形状に形成されている。
【0054】
前部カバー32の上面141であって、第1突出部85の上方、すなわちインク供給部34の上方には、IC基板64が設けられている。IC基板64は、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着される途中において右方向55及び左方向56に沿って4つが並ぶ接点106(図2参照)と導通し、かつインクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着された状態においても接点106と導通する。
【0055】
IC基板64には、IC(各図には現れていない)と、4つの電極65が搭載されている。4つの電極65は、右方向55から左方向56へ向かって、それぞれVDD電極、SCK電極、VSS電極、SIO電極であり、右方向55及び左方向56に沿って並んでいる。ICは、半導体集積回路であり、インクカートリッジ30に関する情報、例えば、ロット番号や製造年月日、インク色などの情報を示すデータが読み出し可能に格納されている。
【0056】
各電極65はICと電気的に接続されている。各電極65は、それぞれが前方向57及び後方向58に沿って延出されており、4つの電極65は、右方向55及び左方向56に離間されて配置されている。各電極65は、IC基板64の上面に電気的にアクセス可能に露出されている。
【0057】
[内部フレーム35]
図5に示されるように、内部フレーム35は、外形が概ね直方体であり、右方向55及び左方向56に沿った寸法、又は上方向54及び下方向53に沿った寸法より、前方向57及び後方向58に沿った寸法が大きい。内部フレーム35は、樹脂によって一体成型されている。
【0058】
内部フレーム35は、インクカートリッジ30を挿入方向51または脱抜方向52に視たときに少なくとも部分的に重なり合う前壁44及び後壁45と、インクカートリッジ30を上方向54または下方向53に視たときに少なくとも部分的に重なり合う上壁46及び下壁47とを備える。
【0059】
インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110へ装着されるときに、前方となるのが前壁44であり、後方となるのが後壁45である。上壁46は、前壁44及び後壁45の上端同士を接続する。下壁47は、前壁44及び後壁45の下端同士を接続する。
【0060】
図5に示されるように、内部フレーム35の前壁44は、内部フレーム35が前部カバー32に挿入された状態において、前部カバー32の前面140の裏面と対向する。前壁44には、インク供給部34が設けられている。内部フレーム35の後壁45は、内部フレーム35が後部カバー31に挿入された状態において、後部カバー31の後面41の裏面と対向する。内部フレーム35の上壁46は、内部フレーム35が後部カバー31及び前部カバー32に挿入された状態において、後部カバー31の上面39の裏面及び前部カバー32の上面141の裏面とそれぞれ対向する。上壁46には、液量検知部62が設けられている。内部フレーム35の下壁47は、内部フレーム35が後部カバー31及び前部カバー32に挿入された状態において、後部カバー31の下面42の裏面及び前部カバー32の下面142の裏面とそれぞれ対向する。なお、内部フレーム35の前壁44、上壁46、後壁45、下壁47のそれぞれは必ずしも一つの平面をなしている必要はない。
【0061】
内部フレーム35は、右方向55及び左方向56に開放されている。開放された内部フレーム35の右面及び左面は、それぞれフィルムによって液密に封止される。各フィルムの外形は、インクカートリッジ30を右方又は左方からそれぞれ視た場合の内部フレーム35の外形と概ね一致する。各フィルムは、貯留室36の右壁又は左壁を構成する。なお、フィルムは、熱溶着以外、例えば高周波溶着や接着剤による接着によって、各壁に貼り付けられてもよい。以上より、インクが貯留可能な貯留室36は、主に前壁44、後壁45、上壁46、下壁47、及びフィルムによって形成される。内部フレーム35の右方向55及び左方向56に沿った寸法は、内部に貯留するインクの容量によって決まる。すなわち、貯留するインクの容量が少ない場合は、内部フレーム35の右方向55及び左方向56に沿った寸法が、前部カバー32の上面141の右方向55及び左方向56に沿った寸法と略同一であってもよい。
【0062】
[インク供給部34]
図5に示されるように、インク供給部34は、前面140の下部分において、内部フレーム35の前壁44から前方向57に突出されている。インク供給部34は、円筒形状の外形をなしており、前部カバー32の前面140に設けられた孔97を通じて外側へ突出されている。図5に示されるように、インク供給部34は、内部空間を有する円筒形状の筒壁49と、筒壁49に取り付けられたシール部材70、キャップ72、及び弁体77とを備えている。
【0063】
図5に示されるように、内部フレーム35は、筒壁49を備える。筒壁49は、前壁44からインクカートリッジ30の外方に向かって前方向57に延びている。筒壁49は、前方向57の端部が前壁44から外方に突出し、後方向58の端部が前壁44と後壁45との間に位置する。筒壁49の前方向57の端部は、開口されている。筒壁49の脱抜方向52の端部も開口されて貯留室36と連続しているが、当該開口は各図には現れていない。
【0064】
筒壁49の内周面は環状であり、前方向57に直交する断面において連続して延びている。なお、環状とは、円形状に限定されず、楕円形状や矩形状等であってもよい。また、筒壁49の内周面は、前方向57の端部から後方向58の端部まで全領域に亘って前方向57に視て環状である必要はなく、一部のみ前方向57に視て環状であってもよい。筒壁49の内部空間がバルブ室48である。なお、各図には現れていないが、バルブ室48を通じて、貯留室36を外部に大気開放するための気体流路が形成されている。
【0065】
筒壁49の先端部(筒壁49の挿入方向51の端部)には、シール部材70と、キャップ72とが取り付けられている。筒壁49の内部には、弁体77と、コイルバネ78とが収容されている。
【0066】
[シール部材70]
図5に示されるように、筒壁49に取り付けられるシール部材70は、概ね円板形状である。シール部材70の外径寸法は、筒壁49の内径寸法と概ね一致する。シール部材70は、筒壁49の先端に液密に密着される。シール部材70は、例えば、ゴムなどの弾性材料によって形成されている。
【0067】
シール部材70には、中央部を厚み方向(前方向57及び後方向58)に貫通する貫通孔71が形成されている。貫通孔71は、インクカートリッジ30の外部とバルブ室48とを連通させる孔であり、貯留室36に貯留されたインクが流通する。インクニードル102の外径は、貫通孔71の内径よりも僅かに小さい。これにより、インクニードル102が貫通孔71を挿通するとき、インクニードル102の外周面は貫通孔71の内周面に密着する。
【0068】
[キャップ72]
図3から図5に示されるように、筒壁49に取り付けられるキャップ72は、円板形状の蓋部73と、蓋部73の後方向58を向く面から突出する円筒形状の円筒部74と、円筒部74の突出端から後方向58に突出する係合部75とで構成される。蓋部73には、中央部を厚み方向(前方向57及び後方向58)に貫通する貫通孔76が形成されている。貫通孔76の直径は、貫通孔71より大きい。
【0069】
蓋部73は、筒壁49と反対方向からシール部材70に当接する。つまり、シール部材70は、前方向57及び後方向58において筒壁49の先端部と蓋部73とに挟まれている。円筒部74は、シール部材70の外周面及び筒壁49の外面の一部を覆う。係合部75は、前壁44に設けられた被係合部50に係合される。これにより、キャップ72は、シール部材70を筒壁49の先端に保持される。
【0070】
[弁体77]
図5に示されるように、弁体77は、バルブ室48に配置されている。弁体77は、バルブ室48を前方向57及び後方向58に沿って移動可能である。
【0071】
図5に示されるように、弁体77は、保持部79と、円筒形状の弾性部材93とを有する。弾性部材93には、挿入方向51及び脱抜方向52に貫通された貫通孔95が形成されている。弾性部材93は、保持部79よりも剛性の低い材料、例えば、ゴムなどの弾性材料によって形成されている。保持部79は、貫通孔95に挿入されている。貫通孔95における保持部79周辺の隙間に、貯留室36に貯留されたインクが流通して、保持部79より前方向57のバルブ室48に流入する。弾性部材93は、外周面から突出する環状のフランジがバルブ室48の内壁と液密に接しており、これにより、バルブ室48を前方向57及び後方向58において液密に区画する。
【0072】
[コイルバネ78]
コイルバネ78は、弁体77より後方向58のバルブ室48に配置される。コイルバネ78は、弁体77を挿入方向51へ付勢する。これにより、バルブ室48において、弁体77は、シール部材70に当接した状態に保持される。なお、コイルバネ78に代えて、板バネ等の他の付勢部材が用いられてもよい。
【0073】
[液量検知部62]
図3から図5に示されるように、内部フレーム35は、上壁46から上方向54へ突出する液量検知部62を有している。液量検知部62は、内部空間が貯留室36と連続する空間を有する凸部であり、右方向55及び左方向56へ向かって光を透過する透光性を有する。液量検知部62は、前部カバー32の孔98を通じて外部へ露出されている。液量検知部62は、前方向57、後方向58、上方向54、右方向55、及び左方向56にそれぞれ位置する5つの平面によって内部空間が区画されている。この5つの平面のうち、内部空間の前方向57の端を区画する平面を平面66と称し、内部空間の後方向58の端を区画する平面を平面67と称する。
【0074】
図5に示されるように、内部フレーム35の貯留室36内には、被検知部材59が配置されている。被検知部材59は、右方向55及び左方向56へ貫通する貫通孔92を有している。貫通孔92には、内部フレーム35の第1内壁131から右方向55へ延びる回動軸61が挿通される。回動軸61によって被検知部材59が支持され、回動軸61周りに被検知部材59が回動可能となる。
【0075】
被検知部材59は、フロート63を有している。フロート63は、貫通孔92の径方向へ延出する箱形状である。フロート63は、貯留室36に貯留されたインクより比重が小さい。したがって、貯留室36内において、フロート63はインク中に存在する状態において浮力を生じさせる。
【0076】
被検知部材59は、アーム68を有している。アーム68は、貫通孔92の径方向であって、フロート63が延出する方向とは異なる方向へ延びている。アーム68は、液量検知部62内に進入している。貯留室36がインクでほぼ満たされている状態では、フロート63の浮力によって、被検知部材59は、図5における反時計回りに回動する。被検知部材59のアーム68が液量検知部62の平面66に当接することによって、被検知部材59の姿勢が維持される。この状態において、被検知部材59のアーム68は、液量検知部62を右方向55又は左方向56に進行する光学センサ103の光を遮断等する。また、この状態において、フロート63及びアーム68は、貫通孔92より脱抜方向52に位置する。アーム68においてインクに浸されている一部分にも浮力が生じるが、アーム68に生ずる浮力も、フロート63の浮力と同様に、被検知部材59を図5における反時計回りに回動する力となる。
【0077】
被検知部材59によって、光学センサ103の発光部から出力された光が液量検知部62の右面及び左面の一方に到達したときに、液量検知部62の右面及び左面の他方の面から出て受光部に到達する光の強度が所定の強度未満、例えば、ゼロとなる。被検知部材59のアーム68は、光が右方向55もしくは左方向56に進むのを完全に遮断してもよいし、光を部分的に吸収してもよいし、光の進行方向を曲げてもよいし、光を全反射させてもよい。
【0078】
貯留室36においてインクが減り、被検知部材59が液量検知部62を進行する光を遮断等するときの姿勢におけるフロート63の位置より、インクの液面が下降すると、フロート63がインクの液面と共に下降する。フロート63においてインクの液面より上方となった部分の重力は、被検知部材59を図5における時計回りに回動する力となる。アーム68においてインクの液面より上方となった部分の重力も、フロート63の重力と同様に、被検知部材59を図5における時計回りに回動する力となる。
【0079】
フロート63及びアーム68に作用する重力が、フロート63及びアーム68に作用する浮力よりも大きくなると、被検知部材59は、図5における時計回りに回動する。この時計回りの回動によって、液量検知部62内に進入していた被検知部材59のアーム68も時計回りに回動して、光学センサ103の発光部から受光部への光路から外れ、平面67付近へ移動する。これにより、光学センサ103の受光部に到達する光の強度が所定の強度以上となる。
【0080】
図3から図5に示されるように、前部カバー32の上面141(外面の一例)におけるIC基板64より後方向58には、識別リブ80が設けられている。本実施形態において、板部85は、前方向57及び後方向58において、IC基板64のSCK電極の後方に配置されているが、右方向57及び後方向58において、本実施形態とは異なる位置に板部85が配置されてもよく、例えば、VSS電極の後方に板部85が配置されてもよい。識別リブ80は、インクカートリッジ30の種類によって、光学センサ108からの光の透過性が異なる構成の一例であって、インク供給部34より後方且つ液量検知部62より前方に位置し、前部カバー32の上面141から上方向54へ延びている。識別リブ80は、第1補強部83、第2補強部84、及び板部85を有する。
【0081】
図3及び図5に示されるように、前部カバー32の上面141であって液量検知部62より前方向57において、前方向57及び後方向58に沿って第1補強部83が延びている。第1補強部83は、上面141と連続する下端部分の右方向55及び左方向56に沿った寸法が、板部85の右方向55及び左方向56に沿った寸法より長い。そして、第1補強部83は、上方向54へ向かって右方向55及び左方向56に沿った寸法が次第に小さくなっている。第1補強部83は、前方向57及び後方向58において、右方向55及び左方向56に沿った寸法が一定である。
【0082】
図3及び図5に示されるように、第2補強部84は、第1補強部83の後方向58の端部において連続しており、当該端部から上方向54へ延びている。第2補強部84は、後端部分の右方向55及び左方向56に沿った寸法が、板部85の右方向55及び左方向56に沿った寸法より長い。そして、第2補強部84は、前方向57へ向かって右方向55及び左方向56に沿った寸法が次第に小さくなっている。第2補強部84は、上方向54及び下方向53において、右方向55及び左方向56に沿った寸法が一定である。第2補強部84の後方向58の端部は、右方向55及び左方向56の中央が前方向57へ凹んだ凹部86が形成されている。凹部86は、前部カバー32の上面141から上方向54へ延びている。凹部86には、液量検知部62の一部が進入している。
【0083】
図3及び図5に示されるように、第1補強部83及び第2補強部84に連続して板部85が形成されている。板部85は、前方向57及び後方向58、及び上方向54及び下方向53へ延びており、右方向55及び左方向56に沿った寸法(厚み)が、第1補強部83及び第2補強部84それぞれの右方向55及び左方向56に沿った寸法(厚み)より薄い。各図には、遮光部82及び貫通孔81を有する板部85が示されている。板部85において、前方向57及び後方向58の中央付近には、板部85を右方向55及び左方向56へ貫通する貫通孔81(窓の一例)が形成されている。貫通孔81の周縁は板部85によって区画されている。遮光部82は、少なくとも貫通孔81より前方向57に位置する。なお、板部85に設けられる窓としては、右方向55及び左方向56に光を透過させるものであればよい。すなわち、窓としては、本実施形態のような貫通孔81であってもよいし、光透過性を有する部材、例えば透明な樹脂などが板部85の一部分として設けられてもよい。なお、貫通孔81は必ずしも必要ではなく、インクカートリッジ30の種類(色、容量など)に応じて、貫通孔81を有する板部85と、貫通孔81を有しない板部85と、のいずれかを具備するインクカートリッジ30が用意されてもよい。後述するように、貫通孔81の有無が光学センサ108によって検知されることにより、インクカートリッジ30の種類が検知可能になる。
【0084】
板部85の上端面87(第2端面の一例)は、前部カバー32の上面141と平行な平面であり、前方向57及び後方向58、並びに右方向55及び左方向56に沿って拡がっている。上方向54及び下方向53において、上端面87は、第2補強部84の上端面、及び液量検知部62の上端面とほぼ同じ位置にある。上端面87は、後端において第2補強部84と連続している。
【0085】
板部85の前端面88(第1端面の一例)は、前部カバー32の上面141と直交する平面であり、上方向54及び下方向53、並びに前方向57及び後方向58に沿って拡がっている。上方向54及び下方向53において、前端面88は、第1補強部83の前端より若干後方向58に位置する。前端面88は、下端において第1補強部83と連続している。
【0086】
板部85の上方向54及び前方向57には傾斜面89が形成されている。傾斜面89は、右方向55及び左方向56に拡がっており、傾斜面89と直交する方向124(図5参照)が、前方向57及び後方向58に沿っておらず、且つ上方向54及び下方向53に沿っていない平面である。傾斜面89の後端は、上端面87と連続しており、下端は前端面88と連続している。つまり、傾斜面89は、上端面87と前端面88とを繋いでいる。
【0087】
図5に示されるように、傾斜面89は、第1補強部83の上端における前端83A(第1延出端の一例)から上方向54に沿って延びる第1仮想直線121と、第2補強部84の前端における上端84Aから前方向57に沿って延びる第2仮想直線122との交点120より、第1補強部83及び第2補強部84が連続する連続部分79に近い位置にある。このように、識別リブ80の右方向55及び左方向56に沿った寸法のうち、下端部分の寸法が板部85の寸法より長い第1補強部83、及び後端部分の寸法が板部85の寸法より長い第2補強部84が設けられているので、特に右方向55及び左方向56からの衝撃に伴い識別リブ80が下端側又は後端側から変形又は破損することが抑制される。
【0088】
板部85は、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に挿入される過程において、光学センサ108の発光部と受光部との間に進入して、光学センサ108の発光部が出射する赤外光を遮光又は減衰する。図8に示されるように、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着された状態になると、板部85の貫通孔81が、光学センサ108の発光部と受光部との間に位置する。光学センサ108の発光部から出射された赤外光は、板部85によって遮光又は減衰されることなく貫通孔81を通って受光部へ到達する。板部85において、貫通孔81は、インクカートリッジ30の種類に応じて形成されていたり、形成されていなかったりする。貫通孔81が形成されていない、すなわち挿入方向51に亘って遮光部82が形成されている板部85を有するインクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着されると、光学センサ108の発光部と受光部との間に板部85の遮光部82が位置して、発光部から出射される赤外光が板部85の遮光部82によって遮光又は減衰される。このような板部85における貫通孔81の有無を光学センサ108が検出し、制御部1がインクカートリッジ30の種類を判定する。
【0089】
[各部の寸法]
図3及び図13に示されるように、インクカートリッジ30の前面140から後面41までの前方向57及び後方向58に沿った寸法Lは、83mm~90mmであって、最適値は85mmである。インクカートリッジ30において、側壁143から側壁144までの右方向55及び左方向56に沿った寸法W1は、インクカートリッジ30内に収容されるインクの容量に応じて異なるが、12mm~39mmであることが好ましい。インクカートリッジ30の下面42,142から上面141までの上方向54及び下方向53に沿った寸法H1は、56mm~60mmであることが好ましい。インクカートリッジ30の下面42,142から上面91まで上方向54及び下方向53に沿った寸法H2は、56mm~60mmであることが好ましい。インク供給部34の貫通孔71の中心から貫通孔81の中心までの上方向54及び下方向53に沿った寸法Aは、47mm~50mmであることが好ましい。インク供給部34の貫通孔71の中心からIC基板64の上面までの上方向54及び下方向53に沿った寸法Bは、41mm~44mmであることが好ましい。インク供給部34の貫通孔71の中心からロック面151の上端までの上方向54及び下方向53に沿った寸法Cは、51mm~53mmであることが好ましい。IC基板64の上面から貫通孔81の中心までの上方向54及び下方向53に沿った寸法Dは、5mm~6mmであることが好ましい。インク供給部34の貫通孔71の中心から液量検知部62の中心(検知位置)までの上方向54及び下方向53に沿った寸法Eは、44mm~47mmであることが好ましい。IC基板64の後端から貫通孔81の中心までの前方向57及び後方向58に沿った寸法Fは、20mm~22mmであることが好ましい。貫通孔81の中心から液量検知部62の中心(検知位置)までの前方向57及び後方向58に沿った寸法Gは、10mm~12mmであることが好ましい。識別リブ80の右方向55及び左方向56に沿った寸法W2は、0.05mm~2mmであることが好ましい。IC基板64の前方向57及び後方向58に沿った寸法は4mm~9mmであることが好ましく、右方向55及び左方向56に沿った寸法は5mm~6.5mmであることが好ましく、IC基板64の最適な寸法関係として、5.4mm×4.4mm~6.5mm×9.0mmであることが好ましい。
【0090】
[制御部1]
プリンタ10は、図9に示される制御部1を有する。制御部1は、例えばCPU、ROM、RAMなどからなるものである。制御部1は、プリンタ10の制御部として装置筐体の内部に制御基板として配置されてもよいし、プリンタ10の制御部とは独立した別個の制御基板としてケース101などに設けられてもよい。制御部1は、IC基板64、光学センサ103、光学センサ108、及びカバーセンサ118と電気信号を送受信可能に接続されている。なお、制御部1は、モータやタッチパネルなどのその他の部材とも電気信号を送受信可能に接続されているが、同図においてはその他の部材は省略されている。制御部1が各処理を実行するためのプログラムがROMに記憶されている。CPUは、ROMに記憶されたプログラムに基づいて各処理を実行するための演算を行ったり、各部材へ指示を行う。RAMは、各種情報を一時的に記憶するメモリとして機能する。
【0091】
光学センサ103の発光部から受光部へ向けて左方向56へ照射された光が受光部へ届いた場合、光学センサ103から制御部1へハイレベルの信号が送られる。一方、光学センサ103の発光部から受光部へ向けて左方向56へ照射された光が受光部へ届かない場合、光学センサ103から制御部1へローレベルの信号が送られる。
【0092】
光学センサ108の発光部から受光部へ向けて左方向56へ照射された光が受光部へ届いた場合、光学センサ108から制御部1へハイレベルの信号が送られる。一方、光学センサ108の発光部から受光部へ向けて左方向56へ照射された光が受光部へ届かない場合、光学センサ108から制御部1へローレベルの信号が送られる。
【0093】
[挿入検知及び残量検知]
以下、光学センサ103による残量検知、及び光学センサ108による装着検知が説明される。インクカートリッジ30が挿入されていないカートリッジ装着部110において、光学センサ103の発光部と受光部との間には、発光部から照射された光を遮るものはなく、光学センサ108の発光部と受光部との間には、発光部から照射された光を遮るものはない。よって、図10(A)の「A」に示されるように、光学センサ103から制御部1へ、ハイレベルの信号が送られる。また、図10(B)の「A」に示されるように、光学センサ108から制御部1へ、ハイレベルの信号が送られる。
【0094】
また、図5に示されるように、カートリッジ装着部110に挿入されていないインクカートリッジ30において、貯留室36がインクでほぼ満たされている状態では、フロート63の浮力によって、被検知部材59は、アーム68が液量検知部62の平面66に当接した姿勢となる。
【0095】
カートリッジ装着部110のカバーが開けられてから、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に対して前方向57へ挿入されると、凸部43がロック部145に当接して押されることによって、凸部43は下方向53へ移動する。インクカートリッジ30が更に前方向57へ挿入されると、凸部43がロック部145より前方向57となる。このとき、凸部43は、ロック部145に押されなくなるため、上方向54へ移動する。これにより、ロック面151は、後方向58へ向かってロック部145と向かい合う。その結果、インクカートリッジ30はカートリッジ装着部110内に位置決めされて装着が完了した状態となる。
【0096】
なお、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に対して後方向58へ脱抜されるとき、操作部90が下方向53へ押圧される。これにより、凸部43が下方向53へ移動され、ロック面151がロック部145よりも下方向53となる。その結果、インクカートリッジ30は、ロック部145に阻害されることなく、カートリッジ装着部110から脱抜可能となる。
【0097】
図6に示されるように、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に対して前方向57へ挿入されると、識別リブ80の遮光部82が光学センサ103の発光部と受光部との間に位置する。これにより、図10(A)の「B」に示されるように、光学センサ103から制御部1へ送られる信号は、ハイレベルからローレベルに変わる。なお、このとき、光学センサ108の発光部と受光部との間には、発光部から照射された光を遮るものはない。そのため、光学センサ108から制御部1へ送られる信号は、ハイレベルのままである。
【0098】
図7に示されるように、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110へ更に挿入されると、識別リブ80の貫通孔81が光学センサ103を通過して、識別リブ80が光学センサ103よりも前方向57に位置するようになる。これにより、図10(A)の「C」に示されるように、光学センサ103から制御部1へ送られる信号は、ローレベルからハイレベルに変わる。一方、識別リブ80の遮光部82は光学センサ108の発光部と受光部との間に位置する。これにより、図10(B)の「B」に示されるように、光学センサ108から制御部1へ送られる信号は、ハイレベルからローレベルに変わる。
【0099】
インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110へ更に挿入されて、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着された状態となると、図8に示されるように、識別リブ80の貫通孔81が光学センサ108の発光部と受光部との間に位置する。これにより、識別リブ80の貫通孔81は、光学センサ108の発光部から照射された光を透過させる。これにより、図10(B)の「C」に示されるように、光学センサ108から制御部1へ送られる信号は、ハイレベルからローレベルへ変わった後、ハイレベルに変わる。なお、貫通孔81を有しない板部85を具備するインクカートリッジ30がカートリッジ装着部110へ挿入された場合には、光学センサ108から制御部1へ送られる信号は、ハイレベルからローレベルへ変わった後、ローレベルのままである。
【0100】
また、被検知部93が光学センサ103の発光部と受光部との間に位置し、被検知部93は光学センサ103の発光部から照射された光を遮る。これにより、図10(A)の「D」に示されるように、光学センサ108から制御部1へ送られる信号は、ハイレベルからローレベルへ変わる。
【0101】
インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着された状態となった後、カートリッジ装着部110のカバーが閉じられる。
【0102】
インクカートリッジ30のカートリッジ装着部110への挿入過程において、被検知部材59は移動しない。したがって、被検知部材59は、光学センサ103から左方向56へ照射される光を遮光する。また、識別リブ80は、遮光部82が光学センサ108から左方向56へ照射される光を遮光した後、貫通孔81が当該光を透過させる。
【0103】
次に、図11に示されるフローチャートを参照しつつ、インクカートリッジ30のカートリッジ装着部110への挿入検知が説明される。
【0104】
制御部1は、カートリッジ装着部110のカバーが開けられてから閉じられるまでの間に、光学センサ108から制御部1へ送られる信号がハイレベルからローレベルになった回数をカウントして、RAMに記憶する(S100)。
【0105】
制御部1は、カバーが閉じられると(S110:Yes)、RAMに記憶されている回数を参照する(S120)。そして、当該回数が1回以上である場合(S120:Yes)、制御部1は、カートリッジ装着部110にインクカートリッジ30が正常に装着されたと判断する(S130)。一方、当該回数が0回である場合(S120:No)、制御部1は、カートリッジ装着部110にインクカートリッジ30とは異なるインクカートリッジが装着された、または、カートリッジ装着部110にインクカートリッジ30が装着されていないと判断する(S140)。
【0106】
なお、制御部1は、カバーが閉じられたとき、光学センサ108から制御部1へ送られる信号がローレベル(貫通孔81がない)であるか、ハイレベル(貫通孔81がある)であるかに応じて、インクカートリッジ30の種類を決定してもよい。例えば、制御部1は、カバーが閉じられたとき、光学センサ108から制御部1へ送られる信号がローレベルであることを条件として、大容量のインクカートリッジ30であると判定する。また、光学センサ108から制御部1へ送られる信号がハイレベルであることを条件として、通常容量(大容量より少ない容量)のインクカートリッジ30であると判定する。また、制御部1は、装着されたインクカートリッジ30の種類に応じて、そのインクカートリッジ30に貯留されたインクにより印刷可能なシートの枚数を決定してもよい。
【0107】
次に、光学センサ103によるインク残量検知が説明される。貯留室36に貯留されたインクの残量が多い状態において、図8に示されるように、光学センサ103の発光部と受光部との間は、被検知部材59のアーム68によって遮られている。これにより、図10(C)の「A」に示されるように、光学センサ103から制御部1へ、ローレベルの信号が送られる。
【0108】
図8に示される状態において、貯留室36に貯留されたインクが消費されて減少すると、被検知部材59が回動して、アーム68が光学センサ103の検知位置より後方向58へ移動する。したがって、光学センサ103の発光部から照射された光は、被検知部材59のアーム68に遮られることなく光学センサ103の受光部に到達する。これにより、図10(C)の「B」に示されるように、光学センサ103から制御部1へ送られる信号は、ローレベルからハイレベルへ変わる。その結果、制御部1は、貯留室36に貯留されたインクの残量が所定の量より少なくなったことを検知する。
【0109】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態では、前部カバー32の上面141から突出する識別リブ80の板部85は、第1補強部83及び第2補強部84から延出している。第1補強部83と第2補強部84との連続部分79から比較的遠い位置にある傾斜面89が、第1仮想直線121と第2仮想直線122との交点120より連続部分79に近い位置にあるので、傾斜面89に加わった衝撃により板部85が変形し難い。
【0110】
また、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着された状態において、光学センサ103によって、板部85における貫通孔81の有無が光学的に検知されることによって、インクカートリッジ30の種別が判定可能である。
【0111】
[変形例]
前述された実施形態では、識別リブ80の板部85において、傾斜面89は平面であるが、図12(A)に示されるように、傾斜面89は上方向54且つ前方向57に膨出する曲面であってもよい。また、右方向55及び左方向56においても中央部分が前方向57へ膨出する曲面であってもよい。また、傾斜面89と上端面87との境界や前端面88との境界が面取り加工やR加工されていてもよく、同様に傾斜面89の右端や左端が面取り加工やR加工されていてもよい。また、図12(B)に示されるように、識別リブ80の板部85において、上端面87が形成されておらず、前端面88及び傾斜面89のみが形成されていてもよい。この場合、傾斜面89は、前端面88と第2補強部84の突出端とを接続している。
【0112】
また、前述された実施形態では、前部カバー32の上面141において、識別リブ80より前方向57に、識別リブ80と同程度に突出する部材が形成されていないが、図12(C)に示されるように、前部カバー32の上面141であって識別リブ80より前方向57において上方向54へ突出する凸部40(第1凸部の一例)が設けられてもよい。
【0113】
前述されたように、識別リブ80より後方向58において、後部カバー31の上面39から上方向54へ突出する凸部43(第2凸部の一例)が形成されている。凸部40の上方向54の突出端40Aと、凸部43の上方向54の突出端43Aとを結ぶ第3仮想直線123より、傾斜面89は、前部カバー32の上面141に近い位置にある。これにより、例えばインクカートリッジ30が床に落下されたときに、傾斜面89より凸部40,43が床に当たりやすい。これにより、傾斜面89に衝撃が加わり難い。
【0114】
なお、前述された実施形態では、インクを貯留する内部フレーム35が前部カバー32及び後部カバー31により覆われているが、前部カバー32及び後部カバー31は設けられなくてもよい。すなわち、内部フレーム35の外表面がインクカートリッジ30の外表面となり、内部フレーム35の上面から識別リブ80が延出されていてもよい。
【0115】
また、前述された実施形態では、インクが印刷流体の一例として説明されているが、例えば、インクに代えて、印刷時にインクに先立って記録用紙などに吐出される前処理液が印刷流体カートリッジに貯留されていてもよい。また、記録ヘッド21を洗浄するための水が印刷流体カートリッジに貯留されていてもよい。また、記録方式が、インクジェット方式に代えてレーザ方式が採用されるプリンタに装着可能な印刷流体カートリッジにおいては、印刷流体としてトナーが採用されてもよい。
【符号の説明】
【0116】
30・・・インクカートリッジ(印刷流体カートリッジ)
31・・・前部カバー(本体)
32・・・後部カバー(本体)
36・・・貯留室
79・・・連続部分
40・・・凸部(第1凸部)
43・・・凸部(第2凸部)
81・・・貫通孔(窓)
83・・・第1補強部
84・・・第2補強部
85・・・板部
87・・・上端面(第2端面)
88・・・前端面(第1端面)
89・・・傾斜面
110・・・カートリッジ装着部
141・・・上面(外面)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2022-11-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷流体が貯留される貯留室を有する本体と、
上記本体から第1方向に突出する供給部と、
部から照射される光の状態を変化させる被検知部材を含む検知部と、
上記第1方向に沿って延び、かつ、上記第1方向と直交する第2方向に向かって上記本体に対し突出する板部と、
上記板部の上記第1方向の後端に連続しており、上記第1方向および上記第2方向と直交する第3方向における寸法が上記板部の上記第3方向における寸法よりも長く、上記第方向に沿って延びる補強部と、を備え、
上記板部は、前記第1方向の前端と上記第2方向の上端とを繋ぐ傾斜面を有しており、
上記検知部と上記補強部の上記第2方向の下端とは、上記第1方向から視て重複する位置にある印刷流体カートリッジ。
【請求項2】
上記板部に連続しており、上記第1方向および上記第2方向と直交する第3方向における寸法が上記板部の寸法よりも長く、上記第方向に沿って延びる第2補強部をさらに有する請求項1に記載の印刷流体カートリッジ。
【請求項3】
記補強部は、上記板部から上記第3方向に延びる部分を有する請求項2に記載の印刷流体カートリッジ。
【請求項4】
上記光検知部と上記第2補強部とは、上記第1方向から視て重複する位置にある請求項2に記載の印刷流体カートリッジ。
【請求項5】
上記補強部の端と上記第2補強部の端とは連続している請求項2から4のいずれかに記載の印刷流体カートリッジ。
【請求項6】
上記第3方向に沿って照射される光が通過可能な空間が、上記第1方向における上記板部の前端と上記検知部との間に位置する、請求項1から5のいずれかに記載の印刷流体カートリッジ。
【請求項7】
上記空間は、上記板部に形成された貫通孔である請求項6に記載の印刷流体カートリッジ。
【請求項8】
上記被検知部材は、上記本体から突出しており、上記貯留室の印刷流体の減少に応じて移動可能なアームを有する請求項1から7のいずれかに記載の印刷流体カートリッジ。