(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189967
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】金属酸化物膜の作製方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/08 20060101AFI20221215BHJP
C23C 14/34 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
C23C14/08
C23C14/34
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174831
(22)【出願日】2022-10-31
(62)【分割の表示】P 2021065681の分割
【原出願日】2017-07-06
(31)【優先権主張番号】P 2016137190
(32)【優先日】2016-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016144334
(32)【優先日】2016-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
(72)【発明者】
【氏名】中島 基
(72)【発明者】
【氏名】馬場 晴之
(57)【要約】
【課題】新規な金属酸化物、または新規なスパッタリングターゲットを提供する。
【解決手段】導電性材料と、絶縁性材料と、を有するスパッタリングターゲットであって
、絶縁性材料は、元素M1(元素M1は、Al、Ga、Si、Mg、Zr、Be、及びB
から選ばれる一種または複数種)を含む酸化物、窒化物または酸窒化物を有し、導電性材
料は、インジウムおよび亜鉛を含む酸化物、窒化物または酸窒化物を有し、導電性材料と
、絶縁性材料とは、互いに分離している、スパッタリングターゲットを用いて金属酸化物
膜を成膜する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インジウム、亜鉛、及び元素M1を有する第1の領域と、インジウム及び亜鉛を有する第2の領域と、を有するスパッタリングターゲットを成膜室に配置し、
前記成膜室に、アルゴンガス及び酸素ガスを導入して、金属酸化物を成膜し、
前記元素M1は、Al、Si、Mg、Zr、Be、及びBから選ばれる一種または複数種であり、
前記第2の領域に含まれるインジウムの割合は、前記第1の領域に含まれる元素M1の割合より高く、
前記第1の領域は、前記第2の領域より高抵抗であり、
前記金属酸化物を成膜する工程において、前記第1の領域からはじき出された第1のスパッタ粒子はインジウム、亜鉛、及び元素M1を有するクラスタを形成し、前記第2の領域からはじき出された第2のスパッタ粒子は、インジウム及び亜鉛を有するクラスタを形成する、金属酸化物膜の作製方法。
【請求項2】
インジウム、ガリウム、及び亜鉛を有する第1の領域と、インジウム及び亜鉛を有する第2の領域と、を有するスパッタリングターゲットを成膜室に配置し、
前記成膜室に、アルゴンガス及び酸素ガスを導入して、金属酸化物を成膜し、
前記第2の領域に含まれるインジウムの割合は、前記第1の領域に含まれるガリウムの割合より高く、
前記第1の領域は、前記第2の領域より高抵抗であり、
前記金属酸化物を成膜する工程において、前記第1の領域からはじき出された第1のスパッタ粒子はインジウム、ガリウム、及び亜鉛を有するクラスタを形成し、前記第2の領域からはじき出された第2のスパッタ粒子は、インジウム及び亜鉛を有するクラスタを形成する、金属酸化物膜の作製方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記第1の領域又は前記第2の領域は、微結晶構造を有する、金属酸化物膜の作製方法。
【請求項4】
請求項2において、
前記微結晶構造において、径は0.5nm以上3nm以下の大きさを有する、金属酸化物膜の作製方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一において、
前記第1の領域及び前記第2の領域のそれぞれは粒子状である、金属酸化物膜の作製方法。
【請求項6】
請求項5において、
前記第1の領域及び前記第2の領域のそれぞれは、径が10μm未満の大きさを有する、金属酸化物膜の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物、方法、または、製造方法に関する。または、本発明は、プロセス、マシ
ン、マニュファクチャ、または、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関する。特
に、本発明の一態様は、金属酸化物、当該金属酸化物の製造方法、スパッタリングターゲ
ット、または当該スパッタリングターゲットの作製方法に関する。または、本発明の一態
様は、半導体装置、表示装置、液晶表示装置、発光装置、蓄電装置、記憶装置、それらの
駆動方法、または、それらの製造方法に関する。
【0002】
なお、本明細書等において、半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる
装置全般を指す。トランジスタなどの半導体素子をはじめ、半導体回路、演算装置、記憶
装置は、半導体装置の一態様である。撮像装置、表示装置、液晶表示装置、発光装置、電
気光学装置、発電装置(薄膜太陽電池、有機薄膜太陽電池等を含む)、及び電子機器は、
半導体装置を有している場合がある。
【背景技術】
【0003】
トランジスタに適用可能な半導体材料として、酸化物が注目されている。例えば、特許
文献1では、In-Zn-Ga-O系酸化物、In-Zn-Ga-Mg-O系酸化物、I
n-Zn-O系酸化物、In-Sn-O系酸化物、In-O系酸化物、In-Ga-O系
酸化物、及びSn-In-Zn-O系酸化物のうちのいずれかである非晶質酸化物を有す
る電界効果型トランジスタが開示されている。
【0004】
また、非特許文献1では、トランジスタの活性層として、In-Zn-O系酸化物と、
In-Ga-Zn-O系酸化物との2層積層の金属酸化物を有する構造が検討されている
。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】John F. Wager、「Oxide TFTs:A Progress Report」、Information Display 1/16、SID 2016、 Jan/Feb 2016、Vol.32,No.1, pp.16-21
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、In-Zn-Ga-O系酸化物、In-Zn-Ga-Mg-O系酸化
物、In-Zn-O系酸化物、In-Sn-O系酸化物、In-O系酸化物、In-Ga
-O系酸化物、及びSn-In-Zn-O系酸化物のうちのいずれかである非晶質酸化物
を用いて、トランジスタの活性層を形成している。言い換えると、トランジスタの活性層
は、上記酸化物のいずれか1つの非晶質酸化物を有している。トランジスタの活性層が、
上記非晶質酸化物のいずれか1つから構成された場合、トランジスタの電気特性の1つで
あるオン電流が低くなるといった問題がある。または、トランジスタの活性層が、上記非
晶質酸化物のいずれか1つから構成された場合、トランジスタの信頼性が悪くなるといっ
た問題がある。
【0008】
また、非特許文献1では、チャネル保護型のボトムゲート型のトランジスタにおいて、
トランジスタの活性層として、In-Zn酸化物と、In-Ga-Zn酸化物との2層積
層とし、チャネルが形成されるIn-Zn酸化物の膜厚を10nmとすることで、高い電
界効果移動度(μ=62cm2V-1s-1)を実現している。一方で、トランジスタ特
性の一つであるS値(Subthreshold Swing、SSともいう)が0.4
1V/decadeと大きい。また、トランジスタ特性の一つである、しきい値電圧(V
thともいう)が-2.9Vであり、所謂ノーマリーオンのトランジスタ特性である。
【0009】
上述の問題に鑑み、本発明の一態様は、新規な金属酸化物を提供することを課題の一と
する。または、本発明の一態様は、新規なスパッタリングターゲットを提供することを課
題の一とする。または、本発明の一態様は、半導体装置に良好な電気特性を付与すること
を課題の一とする。または、信頼性の高い半導体装置を提供することを課題の一とする。
または、新規な構成の半導体装置を提供することを課題の一とする。または、新規な構成
の表示装置を提供することを課題の一とする。
【0010】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の
一態様は、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。なお、これら以外の課
題は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、
図面、請求項などの記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、導電性材料と、絶縁性材料と、を有するスパッタリングターゲット
であって、絶縁性材料は、元素M1(元素M1は、Al、Ga、Si、Mg、Zr、Be
、及びBから選ばれる一種または複数種)を含む酸化物、窒化物または酸窒化物を有し、
導電性材料は、インジウムおよび亜鉛を含む酸化物、窒化物または酸窒化物を有し、導電
性材料と、絶縁性材料とは、互いに分離している、ことを特徴とするスパッタリングター
ゲットである。
【0012】
上記構成において、元素M1は、Gaである、ことが好ましい。
【0013】
本発明の一態様は、導電性材料と、絶縁性材料と、を有するスパッタリングターゲット
であって、絶縁性材料は、元素M1(元素M1は、Al、Ga、Si、Mg、Zr、Be
、及びBから選ばれる一種または複数種)を含む酸化物、窒化物または酸窒化物を有し、
導電性材料は、インジウムおよび亜鉛のいずれかまたは両方と、元素M2(元素M2は、
Ti、Ge、Sn、V、Ni、Mo、W、及びTaから選ばれる一種または複数種)を含
む酸化物、窒化物または酸窒化物を有し、導電性材料と、絶縁性材料とは、互いに分離し
ている、ことを特徴とするスパッタリングターゲットである。
【0014】
上記構成において、元素M1は、Gaであり、元素M2は、TiまたはGeであること
が好ましい。
【0015】
また、本発明の一態様は、導電性材料と、絶縁性材料と、を有するスパッタリングター
ゲットであって、絶縁性材料は、元素M1(元素M1は、Al、Ga、Si、Mg、Zr
、Be、またはBのいずれか二種以上)を含む酸化物、窒化物または酸窒化物を有し、導
電性材料は、インジウムおよび亜鉛のいずれかまたは両方を有し、導電性材料と、絶縁性
材料とは、互いに分離している、ことを特徴とするスパッタリングターゲットである。
【0016】
上記構成において、元素M1は、Al,GaまたはSiのいずれか二種以上であること
が好ましい。
【0017】
上記構成において、絶縁性材料は、さらに亜鉛を含むことが好ましい。
【0018】
上記構成において、導電性材料に含まれるインジウムの原子数比は、絶縁性材料に含ま
れる元素M1の原子数比よりも多いことが好ましい。上記構成において、導電性材料、及
び絶縁性材料は、それぞれ粒子状であることが好ましい。また、上記構成において、導電
性材料、及び絶縁性材料は、それぞれ径が10μm未満、またはその近傍値である領域を
有することが好ましい。
【0019】
また、本発明の他の一態様は、絶縁性材料の原料である、元素M1(元素M1は、Al
、Ga、Si、Mg、Zr、Be、及びBから選ばれる一種または複数種)の酸化物、及
び第1の亜鉛酸化物と、導電性材料の原料である、インジウム酸化物、及び第2の亜鉛酸
化物を秤量する工程と、元素M1の酸化物、及び第1の亜鉛酸化物を混ぜて第1の混合物
を作製する工程と、第1の混合物を成形しながら、加圧して第1の成形体を作製する工程
と、第1の成形体を焼成して、第1の焼成体を作製する工程と、第1の焼成体を粉末化し
て、第1の粉体を作製する工程と、インジウム酸化物、及び第2の亜鉛酸化物を混ぜて第
2の混合物を作製する工程と、第2の混合物を成形しながら、加圧して第2の成形体を作
製する工程と、第2の成形体を焼成して、第2の焼成体を作製する工程と、第2の焼成体
を粉末化して、第2の粉体を作製する工程と、第1の粉体と第2の粉体を混ぜて第3の混
合物を作製する工程と、第3の混合物を成形しながら、加圧して第3の成形体を作製する
工程と、を有し、第3の成形体を作製する工程の後、第3の成形体を焼成する工程を行わ
ない、ことを特徴とするスパッタリングターゲットの作製方法である。
【0020】
また、本発明の他の一態様は、スパッタリングターゲットの作製方法であって、絶縁性
材料の原料である、元素M1(元素M1は、Al、Ga、Si、Mg、Zr、Be、及び
Bから選ばれる一種または複数種)の酸化物、及び第1の亜鉛酸化物と、導電性材料の原
料である、インジウム酸化物、及び第2の亜鉛酸化物を秤量する工程と、元素M1の酸化
物、及び第1の亜鉛酸化物を混ぜて第1の混合物を作製する工程と、第1の混合物を成形
しながら、加圧して第1の成形体を作製する工程と、第1の成形体を焼成して、第1の焼
成体を作製する工程と、第1の焼成体を粉末化して、第1の粉体を作製する工程と、イン
ジウム酸化物、及び第2の亜鉛酸化物を混ぜて第2の混合物を作製する工程と、第2の混
合物を成形しながら、加圧して第2の成形体を作製する工程と、第2の成形体を焼成して
、第2の焼成体を作製する工程と、第2の焼成体を粉末化して、第2の粉体を作製する工
程と、第1の粉体と第2の粉体を混ぜて第3の混合物を作製する工程と、第3の混合物を
成形しながら、加圧して第3の成形体を作製する工程と、第3の成形体を焼成して、第3
の焼成体を作製する工程と、を有し、第3の成形体を焼成する温度は、導電性材料の一部
と、絶縁性材料の一部とが、化合しない温度で行われる、ことを特徴とするスパッタリン
グターゲットの作製方法である。
【0021】
上記構成において、第3の成形体を焼成する温度は、第1の成形体を焼成する温度、及
び第2の成形体を焼成する温度より低いことが好ましい。
【0022】
また、本発明の他の一態様は、スパッタリングターゲットの作製方法であって、絶縁性
材料の原料である、元素M1(元素M1は、Al、Ga、Si、Mg、Zr、Be、及び
Bから選ばれる一種または複数種)の酸化物と、導電性材料の原料である、インジウム酸
化物、亜鉛酸化物、及び元素M2(元素M2は、Ti、Ge、Sn、V、Ni、Mo、W
、及びTaから選ばれる一種または複数種)の酸化物を秤量する工程と、インジウム酸化
物、亜鉛酸化物、及び元素M2の酸化物を混ぜて第1の混合物を作製する工程と、第1の
混合物を成形しながら、加圧して第1の成形体を作製する工程と、第1の成形体を焼成し
て、第1の焼成体を作製する工程と、第1の焼成体を粉末化して、第1の粉体を作製する
工程と、第1の粉体と元素M1の酸化物を混ぜて第2の混合物を作製する工程と、第2の
混合物を成形しながら、加圧して第2の成形体を作製する工程と、を有し、第2の成形体
を作製する工程の後、第2の成形体を焼成する工程を行わない、ことを特徴とするスパッ
タリングターゲットの作製方法である。
【0023】
また、本発明の他の一態様は、スパッタリングターゲットの作製方法であって、絶縁性
材料の原料である、元素M1(元素M1は、Al、Ga、Si、Mg、Zr、Be、及び
Bから選ばれる一種または複数種)の酸化物と、導電性材料の原料である、インジウム酸
化物、亜鉛酸化物、及び元素M2(元素M2は、Ti、Ge、Sn、V、Ni、Mo、W
、及びTaから選ばれる一種または複数種)の酸化物を秤量する工程と、インジウム酸化
物、亜鉛酸化物、及び元素M2の酸化物を混ぜて第1の混合物を作製する工程と、第1の
混合物を成形しながら、加圧して第1の成形体を作製する工程と、第1の成形体を焼成し
て、第1の焼成体を作製する工程と、第1の焼成体を粉末化して、第1の粉体を作製する
工程と、第1の粉体と元素M1の酸化物を混ぜて第2の混合物を作製する工程と、第2の
混合物を成形しながら、加圧して第2の成形体を作製する工程と、第2の成形体を焼成し
て、第2の焼成体を作製する工程と、を有し、第2の成形体を焼成する温度は、導電性材
料の一部と、絶縁性材料の一部とが、化合しない温度で行われる、ことを特徴とするスパ
ッタリングターゲットの作製方法である。
【0024】
また、本発明の他の一態様は、スパッタリングターゲットの作製方法であって、絶縁性
材料の原料である、元素M1A(元素M1Aは、Al、Ga、Si、Mg、Zr、Be、
及びBから選ばれる一種または複数種)の酸化物、及び元素M1B(元素M1Bは、Al
、Ga、Si、Mg、Zr、Be、及びBから選ばれる一種または複数種であり、元素M
1Aと異なる種類の元素を含む)の酸化物と、導電性材料の原料である、インジウム酸化
物及び亜鉛酸化物を秤量する工程と、元素M1Aの酸化物、及び元素M1Bの酸化物を混
ぜて第1の混合物を作製する工程と、第1の混合物を成形しながら、加圧して第1の成形
体を作製する工程と、第1の成形体を焼成して、第1の焼成体を作製する工程と、第1の
焼成体を粉末化して、第1の粉体を作製する工程と、第1の粉体と、インジウム酸化物と
、亜鉛酸化物と、を混ぜて第2の混合物を作製する工程と、第2の混合物を成形しながら
、加圧して第2の成形体を作製する工程と、を有し、第2の成形体を作製する工程の後、
第2の成形体を焼成する工程を行わない、ことを特徴とするスパッタリングターゲットの
作製方法である。
【0025】
また、本発明の他の一態様は、スパッタリングターゲットの作製方法であって、絶縁性
材料の原料である、元素M1A(元素M1Aは、Al、Ga、Si、Mg、Zr、Be、
及びBから選ばれる一種または複数種)の酸化物、及び元素M1B(元素M1Bは、Al
、Ga、Si、Mg、Zr、Be、及びBから選ばれる一種または複数種であり、元素M
1Aと異なる種類の元素を含む)の酸化物と、導電性材料の原料である、インジウム酸化
物及び亜鉛酸化物を秤量する工程と、元素M1Aの酸化物、及び元素M1Bの酸化物を混
ぜて第1の混合物を作製する工程と、第1の混合物を成形しながら、加圧して第1の成形
体を作製する工程と、第1の成形体を焼成して、第1の焼成体を作製する工程と、第1の
焼成体を粉末化して、第1の粉体を作製する工程と、第1の粉体と、インジウム酸化物と
、亜鉛酸化物と、を混ぜて第2の混合物を作製する工程と、第2の混合物を成形しながら
、加圧して第2の成形体を作製する工程と、第2の成形体を焼成して、第2の焼成体を作
製する工程と、を有し、第2の成形体を焼成する温度は、導電性材料の一部と、絶縁性材
料の一部が、化合しない温度で行われる、ことを特徴とするスパッタリングターゲットの
作製方法である。
【0026】
上記構成において、第2の成形体を焼成する温度は、第1の成形体を焼成する温度より
低いことが好ましい。
【0027】
上記構成において、絶縁性材料として、さらに亜鉛酸化物を用いてもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明の一態様により、新規な金属酸化物を提供することができる。または、本発明の
一態様により、新規なスパッタリングターゲットを提供することができる。または、本発
明の一態様により、半導体装置に良好な電気特性を付与することができる。または、信頼
性の高い半導体装置を提供することができる。または、新規な構成の半導体装置を提供す
ることができる。または、新規な構成の表示装置を提供することができる。
【0029】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。なお、本発明の
一態様は、必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。なお、これら以外の効果
は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図
面、請求項などの記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】スパッタリングターゲット及び当該スパッタリングターゲットを用いた成膜の模式図。
【
図2】スパッタリングターゲット作製方法のフローチャート。
【
図3】スパッタリングターゲット作製方法のフローチャート。
【
図4】スパッタリングターゲット作製方法のフローチャート。
【
図5】スパッタリングターゲット作製方法のフローチャート。
【
図7】本発明の一態様に係るスパッタリングターゲットを用いた成膜の模式図。
【
図9】トランジスタ、および該トランジスタにおけるエネルギー準位の分布を説明する模式図。
【
図10】トランジスタにおけるバンドダイアグラムのモデルを説明する図。
【
図11】トランジスタにおけるバンドダイアグラムのモデルを説明する図。
【
図12】半導体装置の一態様を示す上面図、断面図、及び断面概念図。
【
図13】半導体装置の一態様を示す上面図、断面図、及び断面概念図。
【
図14】半導体装置の一態様を示す上面図、断面図、及び断面概念図。
【
図15】半導体装置の一態様を示す上面図、断面図、及び断面概念図。
【
図16】半導体装置の一態様を示す上面図、断面図、及び断面概念図。
【
図17】半導体装置の一態様を示す上面図、断面図、及び断面概念図。
【
図18】半導体装置の一態様を示す上面図、断面図、及び断面概念図。
【
図19】半導体装置の一態様を示す上面図、断面図、及び断面概念図。
【
図20】半導体装置の作製工程の一例を示す断面図。
【
図21】半導体装置の作製工程の一例を示す断面図。
【
図22】半導体装置の作製工程の一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。但し、実施の形態は多くの異
なる態様で実施することが可能であり、趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態
及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は
、以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0032】
また、図面において、大きさ、層の厚さ、又は領域は、明瞭化のために誇張されている
場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。なお図面は、理想的な例を
模式的に示したものであり、図面に示す形状又は値などに限定されない。
【0033】
また、本明細書にて用いる「第1」、「第2」、「第3」という序数詞は、構成要素の
混同を避けるために付したものであり、数的に限定するものではないことを付記する。
【0034】
また、本明細書において、「上に」、「下に」などの配置を示す語句は、構成同士の位
置関係を、図面を参照して説明するために、便宜上用いている。また、構成同士の位置関
係は、各構成を描写する方向に応じて適宜変化するものである。従って、明細書で説明し
た語句に限定されず、状況に応じて適切に言い換えることができる。
【0035】
また、本明細書等において、トランジスタとは、ゲートと、ドレインと、ソースとを含
む少なくとも三つの端子を有する素子である。そして、ドレイン(ドレイン端子、ドレイ
ン領域またはドレイン電極)とソース(ソース端子、ソース領域またはソース電極)の間
にチャネル領域を有しており、ドレインとチャネル領域とソースとを介して電流を流すこ
とができるものである。なお、本明細書等において、チャネル領域とは、電流が主として
流れる領域をいう。
【0036】
また、ソースやドレインの機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路
動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明
細書等においては、ソースやドレインの用語は、入れ替えて用いることができるものとす
る。
【0037】
また、本明細書等において、「電気的に接続」には、「何らかの電気的作用を有するも
の」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するも
の」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない
。例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極や配線をはじめ、トランジス
タなどのスイッチング素子、抵抗素子、インダクタ、キャパシタ、その他の各種機能を有
する素子などが含まれる。
【0038】
また、本明細書等において、酸化窒化シリコン膜とは、その組成として、窒素よりも酸
素の含有量が多い膜を指し、窒化酸化シリコン膜とは、その組成として、酸素よりも窒素
の含有量が多い膜を指す。
【0039】
また、本明細書等において、図面を用いて発明の構成を説明するにあたり、同じものを
指す符号は異なる図面間でも共通して用いる場合がある。
【0040】
また、本明細書等において、「膜」という用語と、「層」という用語とは、場合によっ
ては、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜
」という用語に変更することが可能な場合がある。または、例えば、「絶縁膜」という用
語を、「絶縁層」という用語に変更することが可能な場合がある。
【0041】
なお、「半導体」と表記した場合でも、例えば、導電性が十分低い場合は「絶縁体」と
しての特性を有する場合がある。また、「半導体」と「絶縁体」は境界が曖昧であり、厳
密に区別できない場合がある。したがって、本明細書に記載の「半導体」は、「絶縁体」
と言い換えることができる場合がある。同様に、本明細書に記載の「絶縁体」は、「半導
体」と言い換えることができる場合がある。
【0042】
なお、本明細書等において、ノーマリーオンとは、電源による電位の印加がない(0V
)ときにオン状態であることをいう。例えば、ノーマリーオンの特性とは、トランジスタ
のゲートに与える電圧が0Vの際に、しきい値電圧がマイナスとなる電気特性をさす場合
がある。
【0043】
本明細書等において、金属酸化物(metal oxide)とは、広い表現での金属
の酸化物である。金属酸化物は、酸化物絶縁体、酸化物導電体(透明酸化物導電体を含む
)、酸化物半導体(Oxide Semiconductorまたは単にOSともいう)
などに分類される。例えば、トランジスタの活性層に金属酸化物を用いた場合、当該金属
酸化物を酸化物半導体と呼称する場合がある。つまり、金属酸化物が増幅作用、整流作用
、及びスイッチング作用の少なくとも1つを有する場合、当該金属酸化物を、金属酸化物
半導体(metal oxide semiconductor)、略してOSと呼ぶこ
とができる。また、OS FETと記載する場合においては、金属酸化物または酸化物半
導体を有するトランジスタと換言することができる。
【0044】
また、本明細書等において、窒素を有する金属酸化物も金属酸化物(metal ox
ide)と総称する場合がある。また、窒素を有する金属酸化物を、金属酸窒化物(me
tal oxynitride)と呼称してもよい。
【0045】
また、本明細書等において、エネルギーギャップとは、バンド構造における価電子帯上
端のエネルギー準位(Ev端)と、伝導帯下端のエネルギー準位(Ec端)とのエネルギ
ーの差を表す。また、エネルギーギャップをバンドギャップと読み替えてもよい。
【0046】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る金属酸化物、及び当該金属酸化物を成膜する
ためのスパッタリングターゲットについて説明する。
【0047】
本実施の形態に示す金属酸化物は、少なくともインジウムを含むことが好ましい。特に
インジウムおよび亜鉛を含むことが好ましい。また、それらに加えて元素M1(元素M1
は、Al、Ga、Si、Mg、Zr、Be、及びBから選ばれる一種または複数種)が含
まれている。さらに、元素M2(元素M2は、Ti、Ge、Sn、V、Ni、Mo、W、
及びTaから選ばれる一種または複数種)が含まれていることが好ましい。
【0048】
ここで、金属酸化物が、インジウム、元素M1、元素M2、及び亜鉛を有する場合を考
える。なお、金属酸化物が有するインジウム、元素M1、元素M2、及び亜鉛の原子数比
のそれぞれの項を[In]、[M1]、[M2]、および[Zn]とする。
【0049】
<スパッタリングターゲット>
まず、
図1を用いて金属酸化物をスパッタリング法で成膜するためのスパッタリングタ
ーゲットについて説明する。
図1(A)は、金属酸化物を、スパッタリング法を用いて成
膜するためのスパッタリングターゲット10の断面図を示す。また、
図1(B)は、スパ
ッタリングターゲット10を用いて金属酸化物を成膜する様子を示す。
【0050】
スパッタリングターゲット10は、絶縁性材料(誘電性材料ということもできる。)を
含む第1の領域11と、導電性材料を含む第2の領域12と、を有する。第1の領域11
及び第2の領域12は、互いに分離されている。ここで、第1の領域11は、第2の領域
12よりも高抵抗であることが好ましい。このように、スパッタリングターゲット10は
、絶縁性領域(誘電性領域ということもできる。)として機能する第1の領域11と、導
電性領域として機能する第2の領域12と、に機能分離していることが好ましい。言い換
えると、スパッタリングターゲット10には、絶縁性領域として機能する第1の領域11
、導電性領域として機能する第2の領域12という性質の異なる二つの相が存在する、と
いうこともできる。
【0051】
図1に示すように、第1の領域11及び第2の領域12は、それぞれ粒子状であること
が好ましい。第1の領域11及び第2の領域12は、それぞれ径が10μm未満であるこ
とが好ましい。
【0052】
また、スパッタリングターゲット10は、一部に結晶構造を有してもよい。例えば、微
結晶構造(nc(nano-crystal)構造という場合もある。)または多結晶構
造を有してもよい。第1の領域11および/または第2の領域12が微結晶構造をとる場
合、径が0.5nm以上3nm以下、または1nm以上2nm以下、またはその近傍値と
なることが好ましい。
【0053】
第1の領域11は、上記の元素M1(元素M1は、Al、Ga、Si、Mg、Zr、B
e、及びBから選ばれる一種または複数種)または、元素M1および亜鉛の両方を含むこ
とが好ましい。また、第1の領域11は、元素M1の酸化物または、元素M1と亜鉛の酸
化物が含まれる構成としてもよい。例えば、第1の領域11は、M1酸化物、M1-Zn
酸化物、In-M1-Zn酸化物、またはIn-M1-M2-Zn酸化物などを含む場合
がある。なお、第1の領域11に元素M1または、元素M1と亜鉛の窒化物または酸窒化
物が含まれてもよい。例えば、第1の領域11に窒化アルミニウム、または窒化シリコン
が含まれてもよい。ただし、第1の領域11に含まれるIn、元素M2の原子数比は、第
2の領域12に含まれるIn、元素M2の原子数比より小さいことが好ましい。
【0054】
第2の領域12は、インジウムおよび亜鉛のいずれかまたは両方を含むことが好ましい
。さらに、第2の領域12は、上記の元素M2(元素M2は、Ti、Ge、Sn、V、N
i、Mo、W、及びTaから選ばれる一種または複数種)を含むことが好ましい。また、
第2の領域12は、インジウムおよび亜鉛のいずれかまたは両方を含む、酸化物、窒化物
、および/または酸窒化物が含まれる構成としてもよい。また、第2の領域12は、元素
M2(元素M2は、Ti、Ge、Sn、V、Ni、Mo、W、及びTaから選ばれる一種
または複数種)を含む、酸化物、窒化物、および/または酸窒化物が含まれる構成として
もよい。例えば、第2の領域12に窒化タンタルが含まれてもよい。例えば、In酸化物
、Zn酸化物、In-Zn酸化物、In-M2酸化物、Zn-M2酸化物、またはIn-
Zn-M2酸化物などを含む場合がある。
【0055】
ここで、スパッタリングターゲット10は、絶縁性材料の一部と導電性材料の一部とは
化合しないことが好ましく、例えば、第1の領域11に含まれる元素M1と第2の領域1
2に含まれるインジウムが化合しないことが好ましい。
【0056】
例えば、元素M1がGaであり、元素M2がTiである場合、第1の領域11は、Ga
酸化物、Ga-Zn酸化物、In-Ga-Zn酸化物、またはIn-Ga-Ti-Zn酸
化物などのいずれかが含まれることが好ましく、第2の領域12は、In酸化物、Zn酸
化物、In-Zn酸化物、In-Ti酸化物、Zn-Ti酸化物、またはIn-Zn-T
i酸化物などが含まれることが好ましい。
【0057】
また、例えば、元素M1がGaであり、元素M2がGeである場合、第1の領域11は
、Ga酸化物、Ga-Zn酸化物、In-Ga-Zn酸化物、またはIn-Ga-Ge-
Zn酸化物などのいずれかが含まれることが好ましく、第2の領域12は、In酸化物、
Zn酸化物、In-Zn酸化物、In-Ge酸化物、Zn-Ge酸化物、またはIn-Z
n-Ge酸化物などが含まれることが好ましい。
【0058】
また、例えば、元素M1がGa及びAlであり、元素M2がTiである場合、第1の領
域11は、Ga酸化物、Al酸化物、Ga-Al酸化物、Ga-Zn酸化物、Al-Zn
酸化物、Ga-Al-Zn酸化物、In-Ga-Zn酸化物、In-Al-Zn酸化物、
In-Ga-Al-Zn酸化物、In-Ga-Ti-Zn酸化物、In-Al-Ti-Z
n酸化物、またはIn-Ga-Al-Ti-Zn酸化物などのいずれかが含まれることが
好ましく、第2の領域12は、In酸化物、Zn酸化物、In-Zn酸化物、In-Ti
酸化物、Zn-Ti酸化物、またはIn-Zn-Ti酸化物などが含まれることが好まし
い。
【0059】
また、例えば、元素M1がGaであり、元素M2を含まない場合、第1の領域11は、
Ga酸化物、Ga-Zn酸化物、またはIn-Ga-Zn酸化物などのいずれかが含まれ
ることが好ましく、第2の領域12は、In酸化物、Zn酸化物、またはIn-Zn酸化
物などが含まれることが好ましい。
【0060】
また、スパッタリングターゲット10から成膜された金属酸化物中に、絶縁性材料より
多く導電性材料が含まれることにより、よりキャリア移動度を高くすることができる。こ
のような金属酸化物を成膜するには、スパッタリングターゲット10に含まれる導電性材
料に含まれるインジウムの原子数比を絶縁性材料に含まれる元素M1の原子数比より多く
することが好ましい。
【0061】
ここで、元素M2は、In、Ga、及びZnよりも価数が多い。例えば、元素M2とし
てTiを用いる場合、Znが2価であり、In及びGaが3価であり、Tiが4価である
。金属酸化物中に、In、Ga、及びZnよりも価数の多い元素M2(ここではTi)を
用いることで、当該元素がキャリア供給源となり、スパッタリングターゲット10を用い
て成膜した金属酸化物の元素M2を含む領域のキャリア密度を高くすることができる。ま
た、Tiは、In、Ga、及びZnと比べて、酸素との結合力が強い。したがって、金属
酸化物中にTiを含有させる構造とすることで、酸素欠損の生成を抑制することができる
。したがって、スパッタリングターゲット10を用いて成膜した金属酸化物をトランジス
タの半導体層に用いる場合、トランジスタの電界効果移動度を高め、且つ酸素欠損の生成
を抑制することで信頼性の高い半導体装置とすることができる。
【0062】
スパッタリングターゲット10の組成としては、例えば、[In]:[M1]:[M2
]:[Zn]=4:1:1:4[原子数比]、[In]:[M1]:[M2]:[Zn]
=5:0.5:0.5:7[原子数比]、またはその近傍値の原子数比であるスパッタリ
ングターゲットを用いることが好ましい。例えば、元素M1がGa、元素M2がTiまた
はGeの場合、In:Ga:Ti:Zn=4:1:1:4[原子数比]、In:Ga:G
e:Zn=4:1:1:4[原子数比]、In:Ga:Ti:Zn=5:0.5:0.5
:7[原子数比]、In:Ga:Ge:Zn=5:0.5:0.5:7[原子数比]、ま
たはその近傍値の原子数比である金属酸化物ターゲットを用いることが好ましい。また、
例えば、元素M2の原子数比は、元素M1の原子数比と同程度か、それより小さくするこ
とが好ましい。なお、スパッタリングターゲット10の組成は上記に限られるものではな
い。
【0063】
なお、成膜される金属酸化物膜の原子数比は、上記のスパッタリングターゲットに含ま
れる金属元素の原子数比のプラスマイナス40%の変動を含む。
【0064】
なお、本実施の形態に示すスパッタリングターゲット10において、第1の領域11に
元素M1として示す元素のうち2種類以上を含む構成としてもよい。また、本実施の形態
に示すスパッタリングターゲット10において、第2の領域12に元素M2を含まない構
成としてもよい。
【0065】
また、絶縁性材料として元素M1として示す元素のうち2種類以上が含まれることによ
り、スパッタリングターゲット10を用いて成膜した金属酸化物の元素M1を含む領域の
エネルギーギャップを大きくすることができる場合がある。
【0066】
また、第1の領域11及び第2の領域12に亜鉛が含まれる構成にすることにより、ス
パッタリングターゲット10を用いて成膜した金属酸化物膜において、少なくとも元素M
1を含む第1の成分の領域と、少なくともInを含む第2の成分の領域の、両方に亜鉛を
含ませることができる。さらに、当該金属酸化物膜において、第1の成分の領域と、第2
の成分の領域の間に亜鉛を含ませることができる。このように金属酸化物膜に亜鉛を含ま
せることにより、亜鉛も導電パスとして、金属酸化物膜にキャリア(電子)が流れる。
【0067】
<スパッタリングターゲットの作製方法>
次に、
図2乃至
図4に示すフローチャートを用いてスパッタリングターゲット10の作
製方法について説明する。
【0068】
まず、
図2に示すフローチャートを用いて、スパッタリングターゲット10の作製方法
について説明する。
【0069】
まずは、上記導電性材料の原料と、上記絶縁性材料の原料を秤量する(ステップS10
1)。導電性材料の原料は、例えば元素M2としてTiを用いる場合、粉末状の、インジ
ウム酸化物、亜鉛酸化物、およびチタン酸化物などを用いることができる。なお、導電性
材料の原料はこれらに限定されることなく、例えば、粉末状の、元素M2の酸化物などを
適宜用いればよい。また、絶縁性材料の原料は、例えば元素M1としてGaを用いる場合
、粉末状のGa酸化物などを用いることができる。なお、絶縁性材料の原料はこれらに限
定されることなく、例えば、粉末状の、元素M1の酸化物などを適宜用いればよい。なお
、上記では、各元素の酸化物を用いる例について示したが、酸窒化物、窒化物などを用い
てもよい。
【0070】
導電性材料の原料および絶縁性材料の原料の秤量は、例えば、粉末状のインジウム酸化
物、粉末状の元素M1の酸化物、粉末状の元素M2の酸化物、粉末状の亜鉛酸化物におけ
る、インジウム、元素M1、元素M2、亜鉛の原子数比が上記のように、[In]:[M
1]:[M2]:[Zn]=4:1:1:4[原子数比]、または[In]:[M1]:
[M2]:[Zn]=5:0.5:0.5:7[原子数比]などになるように秤量すれば
よい。
【0071】
導電性材料の原料および絶縁性材料の原料に純度の高いものを用いることで、後に不純
物濃度の低いスパッタリングターゲット10を得やすくなる。具体的には、アルカリ金属
を、それぞれ10重量ppm未満、好ましくは5重量ppm未満、さらに好ましくは2重
量ppm未満とすることができる。また、アルカリ土類金属を、それぞれ5重量ppm未
満、好ましくは2重量ppm未満、さらに好ましくは1重量ppm未満とすることができ
る。また、ハロゲンを、それぞれ10重量ppm未満、好ましくは5重量ppm未満、さ
らに好ましくは2重量ppm未満とすることができる。なお、これらの不純物濃度は、二
次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectr
ometry)、グロー放電質量分析法(GDMS:Glow Discharge M
ass Spectrometry)または誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS
:Inductively Coupled Plasma Mass Spectro
metry)などによって測定すればよい。
【0072】
次に、秤量された導電性材料の原料を混ぜて混合物を作製する(ステップS102)。
例えば、粉末状の、インジウム酸化物、亜鉛酸化物、および元素M2の酸化物を混ぜて混
合物を作製する。以下、当該混合物を導電性材料の混合物という場合がある。
【0073】
次に、導電性材料の混合物を成形型に敷き詰めて、成形する(ステップS103)。成
形型に敷き詰めた混合物を、プレス装置などを用いて加圧することにより、成形体にする
ことができる。以下、当該成形体を導電性材料の成形体という場合がある。
【0074】
次に、導電性材料の成形体を焼成し、焼成体を作製する(ステップS104)。焼成に
は、炉(焼成炉または焼結炉ともいう。)を用いる。焼成は、希ガス、窒素ガス、または
酸素ガスのいずれか一または複数を含む雰囲気で行えばよい。以下、当該焼成体を導電性
材料の焼成体という場合がある。
【0075】
導電性材料の成形体を焼成する温度は、導電性材料に含まれる、インジウム、亜鉛、元
素M2(例えばTi、Geなど)が化合して酸化物を形成する程度の温度、例えば、熱に
よって互いに反応し、原料と異なる化合物に変化する温度、であることが好ましい。例え
ば、導電性材料の成形体を焼成する温度を400℃以上2500℃以下、好ましくは90
0℃以上1900℃以下とする。
【0076】
このように導電性材料の成形体を焼成して、導電性材料に含まれる、インジウム、亜鉛
、元素M2を化合させて酸化物を形成することで、作製したスパッタリングターゲット1
0の第2の領域12にインジウム、亜鉛、元素M2を多く含ませることができる。
【0077】
また、
図2に示すフローチャートでは、成形及び加圧を行うステップS103と、焼成
を行うステップS104と、を別工程としているが、本実施の形態に示す方法はこれに限
られるものではない。例えば、混合物を成形型に入れて低温で焼成を行いながら、プレス
装置で加圧を行う構成としてもよい。
【0078】
次に、導電性材料の焼成体を粉砕して粉末化することで、粉体を作製する(ステップS
105)。以下、当該粉体を導電性材料の粉体という場合がある。
【0079】
次に、導電性材料の粉体と絶縁性材料の粉体を混ぜて混合物を作製する(ステップS1
06)。ここで、絶縁性材料の粉体とは、ステップS101で秤量された絶縁性材料の原
料のことを指す。
【0080】
次に、導電性材料の粉体と絶縁性材料の粉体の混合物を成形型に敷き詰めて、成形する
(ステップS107)。成形型に敷き詰めた混合物を、プレス装置などを用いて加圧する
ことにより、成形体にすることができる。以下、当該成形体を導電性材料と絶縁性材料の
成形体という場合がある。
【0081】
図2のフローチャートに示すように、焼成などの高温の熱処理を用いずに、加圧のみで
導電性材料と絶縁性材料の成形体を作製することにより、上記導電性材料と、上記絶縁性
材料が化合しないようにすることができる。例えば、インジウムと、元素M1などが化合
しないようにすることができる。これにより、スパッタリングターゲット10に、絶縁性
領域として機能する第1の領域11と、導電性領域として機能する第2の領域12と、を
互いに分離して設けることができる。
【0082】
さらに、予めステップS102からステップS105において、導電性材料となるイン
ジウム酸化物、亜鉛酸化物、および元素M2の酸化物を混合した粉体を作製しておくこと
で、導電性領域として機能する第2の領域12に含まれる元素M2の量を多くすることが
できる。
【0083】
このように、スパッタリングターゲット10の第2の領域12に、In、及びZnより
も価数の多い元素M2を含ませることで、当該元素がキャリア供給源となり、スパッタリ
ングターゲット10を用いて成膜した金属酸化物のキャリア密度を高くすることができる
。
【0084】
作製した導電性材料と絶縁性材料の成形体に対し、仕上げ処理を行うことで、スパッタ
リングターゲット10を作製する。具体的には、導電性材料と絶縁性材料の成形体の長さ
、幅および厚さを調整するために、分断する、または研削する。また、表面に微小な凹凸
が存在することで、異常放電が起こることがあるため、表面の研磨処理を行う。研磨処理
は、化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishi
ng)によって行うと好ましい。
【0085】
なお、ステップS106で導電性材料の粉体と絶縁性材料の粉体を混ぜる際に、さらに
水と、有機物(分散剤およびバインダ)と、を混合し、スラリー化してもよい。スラリー
化して混合することにより、スパッタリングターゲット10に含まれる第1の領域11及
び第2の領域12の径をより小さくすることができる。また、ステップS102で導電性
材料の原料を混ぜる際に同様の方法でスラリー化してもよい。
【0086】
この場合、ステップS103で成形するときにスラリーを流し込む成形型の底部に、一
または複数の吸引口を設けて、水などを吸引できる構成とする。また、成形型の底部にフ
ィルタを設け、導電性材料の原料の粉末を通さず、水および有機物を通す構成とする。具
体的には、織布またはフェルト上に多孔性の樹脂膜を付着させたフィルタなどを用いれば
よい。
【0087】
ステップS103では、成形型の底部に設けられたフィルタを介してスラリーから水な
どを吸引し、スラリーから水および有機物を除去することで、成形体を形成する。
【0088】
なお、得られた成形体は、僅かに水および有機物が残存するため、乾燥処理および有機
物の除去を行う。乾燥処理は自然乾燥により行うと成形体にひびが入りにくいため好まし
い。
【0089】
上記においては、導電性材料の粉体と絶縁性材料の粉体の混合物を加圧してスパッタリ
ングターゲット10を作製したが、本実施の形態はこれに限られるものではない。例えば
、加圧して作製した成形体を低温で焼成して焼成体を作製して、スパッタリングターゲッ
ト10としてもよい。焼成には、炉(焼成炉または焼結炉ともいう。)を用いる。焼成は
、希ガス、窒素ガス、または酸素ガスのいずれか一または複数を含む雰囲気で行えばよい
。
【0090】
導電性材料と絶縁性材料の成形体を焼成する温度は、上記導電性材料と、上記絶縁性材
料が化合しない程度の温度、例えば、インジウムと、元素M1などが化合しない程度の温
度、具体的には、熱によって互いに反応し、原料とは異なる化合物に変化しない温度、で
あることが好ましい。よって、例えば、上記ステップS104の導電性材料の成形体を焼
成する温度より低い温度で、導電性材料と絶縁性材料の成形体を焼成すればよい。例えば
、導電性材料と絶縁性材料の成形体を焼成する温度を200℃以上1000℃未満とする
ことが好ましい。
【0091】
このように導電性材料と絶縁性材料の成形体を低温で焼成してスパッタリングターゲッ
ト10を作製することにより、さらにスパッタリングターゲット10の強度を向上させる
ことができる。
【0092】
なお、導電性材料と絶縁性材料の成形体を低温で焼成する工程を行う場合、ターゲット
の一部に上記導電性材料および/または上記絶縁性材料を含む合金が形成される場合もあ
る。
【0093】
また、上記のように混合物をスラリー化させてスパッタリングターゲット10を作製す
る場合、低温での焼成を行うことによって、導電性材料と絶縁性材料の成形体に僅かに残
存した水及び有機物も除去することができる。
【0094】
また、低温焼成は、ステップS107の成形及び加圧を行うステップと必ずしも別工程
とする必要はない。例えば、混合物を成形型に入れて低温で焼成を行いながら、プレス装
置で加圧を行う構成としてもよい。
【0095】
また、
図3に示すフローチャートを用いて、
図2に示すものとは異なるスパッタリング
ターゲット10の作製方法について説明する。
図3に示すスパッタリングターゲット10
の作製方法では、絶縁性材料の原料として、元素M1として選択可能なAl、Ga、Si
、Mg、Zr、Be、及びBから2種以上を用いる場合について説明する。以下では、代
表的に、絶縁性材料の原料として、粉末状の、元素M1A(元素M1Aは、Al、Ga、
Si、Mg、Zr、Be、及びBから選ばれる一種または複数種)の酸化物、及び元素M
1B(元素M1Bは、Al、Ga、Si、Mg、Zr、Be、及びBから選ばれる一種ま
たは複数種であり、元素M1Aと異なる種類の元素を含む)の酸化物を用いる場合につい
て説明する。
【0096】
なお、
図3に示すスパッタリングターゲット10の作製方法は、ステップS101の後
に、ステップS102からステップS105の代わりに、ステップS202からステップ
S205を行っている点において、
図2に示すスパッタリングターゲット10の作製方法
と異なる。
【0097】
ステップS101で導電性材料の原料と、絶縁性材料の原料を秤量したのち、秤量され
た絶縁性材料の原料を混ぜて混合物を作製する(ステップS202)。例えば、元素M1
Aの酸化物と、元素M1Bの酸化物を混ぜて混合物を作製する。以下、当該混合物を絶縁
性材料の混合物という場合がある。
【0098】
次に、絶縁性材料の混合物を成形型に敷き詰めて、成形する(ステップS203)。成
形型に敷き詰めた混合物を、プレス装置などを用いて加圧することにより、成形体にする
ことができる。以下、当該成形体を絶縁性材料の成形体という場合がある。
【0099】
次に、絶縁性材料の成形体を焼成し、焼成体を作製する(ステップS204)。焼成に
は、炉(焼成炉または焼結炉ともいう。)を用いる。焼成は、希ガス、窒素ガス、または
酸素ガスのいずれか一または複数を含む雰囲気で行えばよい。以下、当該焼成体を絶縁性
材料の焼成体という場合がある。
【0100】
絶縁性材料の成形体を焼成する温度は、絶縁性材料に含まれる、元素M1A、元素M1
B(例えばAl、Ga、Siなど)が化合して酸化物を形成する程度の温度、例えば、熱
によって互いに反応し、原料と異なる化合物に変化する温度、であることが好ましい。例
えば、絶縁性材料成形体を焼成する温度を400℃以上2900℃以下、好ましくは90
0℃以上2100℃以下とする。
【0101】
このように絶縁性材料の成形体を焼成して、絶縁性材料に含まれる、元素M1A、元素
M1Bを化合させて酸化物を形成することで、作製したスパッタリングターゲット10の
第1の領域11に元素M1A、元素M1Bを多く含ませることができる。
【0102】
また、
図3に示すフローチャートでは、成形及び加圧を行うステップS203と、焼成
を行うステップS204と、を別工程としているが、本実施の形態に示す方法はこれに限
られるものではない。例えば、混合物を成形型に入れて低温で焼成を行いながら、プレス
装置で加圧を行う構成としてもよい。
【0103】
次に、絶縁性材料の焼成体を粉砕して粉末化することで、粉体を作製する(ステップS
205)。以下、当該粉体を絶縁性材料の粉体という場合がある。
【0104】
次に、ステップS106において、導電性材料の粉体(例えば、粉末状のインジウム酸
化物及び亜鉛酸化物)と、ステップS205で作製した絶縁性材料の粉体と、を混ぜて混
合物を作製する。ここで、導電性材料の粉体とは、ステップS101で秤量された導電性
材料の原料のことを指す。以下の工程は
図2に示すフローチャートと同様の方法を用いて
行うことができる。
【0105】
このように、予めステップS202からステップS205において、絶縁性材料となる
元素M1A及び元素M1Bの酸化物を混合した粉体を作製しておくことで、第1の領域1
1に、元素M1として選択可能なAl、Ga、Si、Mg、Zr、Be、及びBから2種
以上を含むスパッタリングターゲットを作製することができる。これにより、スパッタリ
ングターゲット10を用いて成膜した金属酸化物膜において、元素M1を含む領域のエネ
ルギーギャップを大きくすることができる場合がある。
【0106】
また、
図4に示すように、
図2に示すスパッタリングターゲット10の作製方法に
図3
に示すステップS202からステップS205の工程を足し合わせてもよい。つまり、ス
テップS101の後にステップS102からステップS105と、ステップS202から
ステップS205と、を並行して行う。よって、ステップS101からステップS107
は
図2に示す方法と同様の方法を用い、ステップS202からステップS205は
図3に
示す方法と同様の方法を用いて行えばよい。なお、ステップS102からステップS10
5の工程と、ステップS202からステップS205の工程は、どちらを先に行っても構
わない。
【0107】
また、
図4に示すフローチャートに示す作製方法と同様の方法を用いて、第1の領域1
1及び第2の領域12に亜鉛が含まれるスパッタリングターゲット10を作製することが
できる。以下に、元素M1としてGaを用い、[In]:[Ga]:[Zn]=4:2:
4[原子数比]の組成を有するスパッタリングターゲット10を作製する例について、図
5を用いて説明する。なお、以下に示す作製方法は、これらの元素の種類及び組成に限ら
れるものではなく、元素の種類及び組成を適宜設定して同様の方法を用いてターゲットを
作製すればよい。
【0108】
原料の秤量については、粉末状の、インジウム酸化物、ガリウム酸化物、及び亜鉛酸化
物を準備して、上記のステップS101と同様の方法で行えばよい。ただし、第1の領域
11及び第2の領域12に亜鉛を含めるため、絶縁性材料に含める亜鉛酸化物を第1の亜
鉛酸化物とし、導電性材料に含める亜鉛酸化物を第2の亜鉛酸化物として、分割して秤量
する。
【0109】
よって、例えば、粉末状のインジウム酸化物、粉末状のガリウム酸化物、粉末状の第1
の亜鉛酸化物、粉末状の第2の亜鉛酸化物における、インジウム、ガリウム、第1の亜鉛
(以下、Zn1と表記する場合がある。)、及び第2の亜鉛(以下、Zn2と表記する場
合がある。)の原子数比が、[In]:[Ga]:[Zn1]:[Zn2]=4:2:2
:2[原子数比]になるように秤量すればよい。
【0110】
次に、
図5に示すステップS102からステップS105では、ステップS101で秤
量した粉末状のインジウム酸化物と、粉末状の第2の亜鉛酸化物を用いて、上記のステッ
プS102からステップS105と同様の方法で作製すればよい。ステップS102では
、粉末状のインジウム酸化物と、粉末状の第2の亜鉛酸化物を、[In]:[Zn2]=
4:2[原子数比]で混ぜて混合物を作製する。
【0111】
上記においては、導電性材料の原料として、粉末状のインジウム酸化物と粉末状の第2
の亜鉛酸化物を、[In]:[Zn2]=4:2[原子数比]で混合する例について示し
たが、本項に示す作製方法はこれに限られるものではなく、粉末状のインジウム酸化物と
粉末状の第2の亜鉛酸化物の混合量は適宜設定すればよい。例えば、[In]:[Zn2
]=4:2[原子数比]で混合することで、これらの導電性材料の原料から形成される焼
成体のエネルギーギャップを2.7eV乃至3.2eV程度に調整することが好ましい。
【0112】
また、
図2などで示したように、導電性材料の原料に、元素M2を含めてもよい。例え
ば、元素M2として、Ti、W、またはSnなどを用いる場合、粉末状のチタン酸化物、
粉末状のタングステン酸化物、または粉末状の錫酸化物などを用いればよい。元素M2の
含有量は、元素M1(例えばGa)の含有量に対して、好ましくは0.01atomic
%以上2atomic%以下、より好ましくは0.1atomic%以上0.5atom
ic%以下、となるようにすればよい。このように、元素M2を不純物として、インジウ
ム酸化物及び第2の亜鉛酸化物を含む導電性材料の混合物に含ませる場合、当該導電性材
料の混合物から形成される焼成体における、元素M2によるエネルギーギャップの変動量
が0.3eV以下となることが好ましい。
【0113】
ステップS103からステップS105は上述の記載を参酌すればよい。ステップS1
04でインジウム酸化物と第2の亜鉛酸化物からなる成形体を焼成する場合、成形体を焼
成する温度を400℃以上1700℃以下、好ましくは900℃以上1500℃以下とす
ればよい。例えば、成形体を焼成する温度を1400℃程度にすればよい。
【0114】
次に、
図5に示すステップS202からステップS205では、ステップS101で秤
量した粉末状のガリウム酸化物と、粉末状の第1の亜鉛酸化物を用いて、上記のステップ
S202からステップS205と同様の方法で作製すればよい。ステップS202では、
粉末状のガリウム酸化物と、粉末状の第1の亜鉛酸化物を、[Ga]:[Zn1]=2:
2[原子数比]で混ぜて混合物を作製する。
【0115】
上記においては、絶縁性材料の原料として、粉末状のガリウム酸化物と粉末状の第1の
亜鉛酸化物を、[Ga]:[Zn1]=2:2[原子数比]で混合する例について示した
が、本項に示す作製方法はこれに限られるものではない。例えば、Zn1の含有量が、Z
n1とGaの含有量に対して、15atomic%以上85atomic%以下になるよ
うにすればよい。このように、エネルギーギャップ約5eVのガリウム酸化物に、エネル
ギーギャップ約3eVの亜鉛酸化物を混合することにより、これらの絶縁性材料の原料か
ら形成される焼成体のエネルギーギャップを調整することができる。
【0116】
ステップS203からステップS205は上述の記載を参酌すればよい。ステップS2
04でガリウム酸化物と第1の亜鉛酸化物からなる成形体を焼成する場合、成形体を焼成
する温度を400℃以上1700℃以下、好ましくは900℃以上1500℃以下とすれ
ばよい。例えば、成形体を焼成する温度を1400℃程度にすればよい。
【0117】
次に、
図5に示すステップS106では、上記のステップS106と同様に、ステップ
S105で作製した導電性材料の粉体とステップS205で作製した絶縁性材料の粉体を
混ぜて混合物を作製する。
【0118】
次に、
図5に示すステップS107では、上記のステップS107と同様に、導電性材
料と絶縁性材料の混合物を成形型に敷き詰めて、成形する。
【0119】
次に、
図5に示すステップS108として低温焼成を行うことが好ましい。焼成には、
炉(焼成炉または焼結炉ともいう。)を用いる。焼成は、希ガス、窒素ガス、または酸素
ガスのいずれか一または複数を含む雰囲気で行えばよい。
【0120】
導電性材料と絶縁性材料の成形体を焼成する温度は、上記導電性材料と、上記絶縁性材
料が化合しない程度の温度、例えば、インジウムと、元素M1などがが化合しない程度の
温度、具体的には、熱によって互いに反応し、原料とは異なる化合物に変化しない温度、
であることが好ましい。よって、例えば、ステップS104及びステップS204の焼成
温度より低い温度で、導電性材料と絶縁性材料の成形体を焼成すればよい。例えば、ステ
ップS104及びステップS204の焼成温度より200℃乃至300℃程度低い温度で
、導電性材料と絶縁性材料の成形体を焼成すればよい。具体的には、導電性材料と絶縁性
材料の成形体を焼成する温度を200℃以上1200℃未満とすることが好ましい。
【0121】
このように導電性材料と絶縁性材料の成形体を低温で焼成してスパッタリングターゲッ
ト10を作製することにより、さらにスパッタリングターゲット10の強度を向上させる
ことができる。
【0122】
また、ステップS108の低温焼成は、ステップS107の成形及び加圧を行うステッ
プと必ずしも別工程とする必要はない。例えば、混合物を成形型に入れて低温で焼成を行
いながら、プレス装置で加圧を行う構成としてもよい。
【0123】
また、ステップS107終了時にスパッタリングターゲット10の強度が十分高い場合
、ステップS108を行わず、ステップS107でフローを終了させてもよい。
【0124】
図5のフローチャートに示すように、導電性材料の原料と絶縁性材料の原料を別々に焼
成、粉末化して導電性材料の粉体と、絶縁性材料の粉体を作製した後は、焼成などの高温
の熱処理を用いずに、スパッタリングターゲット10を作製する。これにより、上記導電
性材料と、上記絶縁性材料が化合しないように、例えば、インジウムと、元素M1などが
化合しないように、スパッタリングターゲット10を作製することができる。よって、ス
パッタリングターゲット10に、絶縁性領域として機能する第1の領域11と、導電性領
域として機能する第2の領域12と、を互いに分離して設けることができる。
【0125】
さらに、予めステップS102からステップS105において、導電性材料となるイン
ジウム酸化物および第2の亜鉛酸化物を混合した粉体を作製しておくことで、導電性領域
として機能する第2の領域12に含まれるインジウム及び亜鉛の割合を高くすることがで
きる。また、予めステップS202からステップS205において、絶縁性材料となるガ
リウム酸化物および第1の亜鉛酸化物を混合した粉体を作製しておくことで、絶縁性領域
として機能する第1の領域11に含まれるガリウム及び亜鉛の割合を高くすることができ
る。このようにして、スパッタリングターゲット10の第1の領域11及び第2の領域1
2に含まれる亜鉛の割合を高くすることができる。
【0126】
<スパッタリング装置>
次に、
図6を用いて、スパッタリングターゲット10を用いることができるスパッタリ
ング装置について説明する。
図6(A)は、スパッタリング装置が有する成膜室41を説
明する断面図であり、
図6(B)は、スパッタリング装置が有するマグネットユニット5
4a、及びマグネットユニット54bの平面図である。
【0127】
図6(A)に示す成膜室41は、ターゲットホルダ52aと、ターゲットホルダ52b
と、バッキングプレート50aと、バッキングプレート50bと、スパッタリングターゲ
ット10aと、スパッタリングターゲット10bと、部材58と、基板ホルダ62と、を
有する。なお、スパッタリングターゲット10aは、バッキングプレート50a上に配置
される。また、バッキングプレート50aは、ターゲットホルダ52a上に配置される。
また、マグネットユニット54aは、バッキングプレート50aを介してスパッタリング
ターゲット10a下に配置される。また、スパッタリングターゲット10bは、バッキン
グプレート50b上に配置される。また、バッキングプレート50bは、ターゲットホル
ダ52b上に配置される。また、マグネットユニット54bは、バッキングプレート50
bを介してスパッタリングターゲット10b下に配置される。
【0128】
図6(A)、および
図6(B)に示すように、マグネットユニット54aは、マグネッ
ト54N1と、マグネット54N2と、マグネット54Sと、マグネットホルダ56と、
を有する。なお、マグネットユニット54aにおいて、マグネット54N1、マグネット
54N2及びマグネット54Sは、マグネットホルダ56上に配置される。また、マグネ
ット54N1及びマグネット54N2は、マグネット54Sと間隔を空けて配置される。
なお、マグネットユニット54bは、マグネットユニット54aと同様の構造を有する。
なお、成膜室41に基板60を搬入する場合、基板60は基板ホルダ62に接して配置さ
れる。
【0129】
スパッタリングターゲット10a、バッキングプレート50a及びターゲットホルダ5
2aと、スパッタリングターゲット10b、バッキングプレート50b及びターゲットホ
ルダ52bと、は部材58によって離間されている。なお、部材58は絶縁体であること
が好ましい。ただし、部材58が導電体または半導体であっても構わない。また、部材5
8が、導電体または半導体の表面を絶縁体で覆ったものであっても構わない。
【0130】
ターゲットホルダ52aとバッキングプレート50aとは、ネジ(ボルトなど)を用い
て固定されており、等電位となる。また、ターゲットホルダ52aは、バッキングプレー
ト50aを介してスパッタリングターゲット10aを支持する機能を有する。また、ター
ゲットホルダ52bとバッキングプレート50bとは、ネジ(ボルトなど)を用いて固定
されており、等電位となる。また、ターゲットホルダ52bは、バッキングプレート50
bを介してスパッタリングターゲット10bを支持する機能を有する。
【0131】
バッキングプレート50aは、スパッタリングターゲット10aを固定する機能を有す
る。また、バッキングプレート50bは、スパッタリングターゲット10bを固定する機
能を有する。
【0132】
なお、
図6(A)には、マグネットユニット54aによって形成される磁力線64a、
64bが明示されている。
【0133】
また、
図6(B)に示すように、マグネットユニット54aは、長方形または略長方形
のマグネット54N1と、長方形または略長方形のマグネット54N2と、長方形または
略長方形のマグネット54Sと、がマグネットホルダ56に固定されている構成を有する
。そして、マグネットユニット54aを、
図6(B)に示す矢印のように左右に揺動させ
ることができる。例えば、マグネットユニット54aを、0.1Hz以上1kHz以下の
ビート(リズム、拍子、パルス、周波、周期またはサイクルなどと言い換えてもよい。)
で揺動させればよい。
【0134】
スパッタリングターゲット10a上の磁場は、マグネットユニット54aの揺動ととも
に変化する。磁場の強い領域は高密度プラズマ領域となるため、その近傍においてスパッ
タリングターゲット10aのスパッタリング現象が起こりやすい。これは、マグネットユ
ニット54bについても同様である。
【0135】
なお、
図6では、平行平板型のスパッタリング装置を用いる例について示したが、本実
施の形態に係る金属酸化物の成膜方法はこれに限られるものではない。例えば、対向ター
ゲット型のスパッタリング装置を用いて金属酸化物を成膜してもよい。
【0136】
<金属酸化物の成膜フロー>
次に、スパッタリングターゲット10を用いて、金属酸化物を成膜する方法について、
第1乃至第4の工程に分けて説明する。
【0137】
第1の工程は、成膜室に基板を配置する工程を有する。
【0138】
第1の工程としては、例えば、
図6(A)に示す成膜室41が有する基板ホルダ62に
基板60を配置する。
【0139】
成膜時の基板60の温度は、金属酸化物の電気的な性質に影響する。基板温度が高いほ
ど、金属酸化物の結晶性を高め、信頼性を高めることができる。一方、基板温度が低いほ
ど、金属酸化物の結晶性を低くし、キャリア移動度を高めることができる。特に、成膜時
の基板温度が低いほど、金属酸化物を有するトランジスタにおいて、低いゲート電圧(例
えば0Vより大きく2V以下)における電界効果移動度の向上が顕著となる。
【0140】
基板60の温度としては、室温(25℃)以上150℃以下、好ましくは室温以上13
0℃以下とすればよい。基板温度を上記範囲とすることで、大面積のガラス基板(例えば
、第8世代から第10世代のガラス基板)を用いる場合に好適である。特に、金属酸化物
の成膜時における基板温度を室温、別言すると意図的に加熱しない状態とすることで、基
板の撓みまたは歪みを抑制することができるため好適である。
【0141】
また、基板ホルダ62に冷却機構等を設け、基板60を冷却する構成としてもよい。
【0142】
また、基板60の温度を100℃以上150℃以下とすることにより、金属酸化物に付
着した水を除去することができる。このように不純物である水を除去することで、電界効
果移動度の向上を図りながら、信頼性の向上を図ることができる。
【0143】
また、基板60の温度を100℃以上150℃以下として水を除去することにより、ス
パッタリング装置に、過剰な熱による歪みが生じることを防ぐことができる。例えばG1
0等の大型基板は、そのサイズに応じて、基板温度の制限がある。従って、水の気化温度
(100℃)より高く、かつ装置のメンテナビリティー、スループットの良い温度を可能
な範囲で適宜選択すればよい。これにより、半導体装置の生産性向上を図ることができる
。よって、生産性が安定するため、大規模な生産装置を導入しやすいので、大面積の基板
を用いた大型の表示装置を容易に製造することができる。
【0144】
また、基板60の温度を室温以上150℃以下として成膜を行うことにより、金属酸化
物中の浅い欠陥準位(sDOSともいう)の低減を図ることができる。
【0145】
第2の工程は、成膜室にガスを導入する工程を有する。
【0146】
第2の工程としては、例えば、
図6(A)に示す成膜室41にガスを導入する。当該ガ
スとしては、アルゴンガス、酸素ガス及び窒素ガスのいずれか一または複数を導入すれば
よい。なお、アルゴンガスに代えてヘリウム、キセノン、クリプトン等の不活性ガスを用
いてもよい。
【0147】
酸素ガスを用いて金属酸化物を成膜する場合、酸素流量比が小さいほど、金属酸化物の
キャリア移動度を高めることができる。特に、酸素流量比が小さいほど、金属酸化物を有
するトランジスタにおいて、低いゲート電圧(例えば0Vより大きく2V以下の範囲)に
おける電界効果移動度の向上が顕著となる。
【0148】
酸素流量比は、金属酸化物の用途に応じた好ましい特性を得るために、0%以上30%
以下の範囲で適宜設定することができる。このとき、例えば、成膜ガスをアルゴンガスと
酸素ガスの混合ガスにすることができる。さらに、成膜ガスに酸素ガスを含ませることに
より、成膜される金属酸化物の酸素欠損量を低減することができる。このように、酸素欠
損量を低減することで、金属酸化物の信頼性向上を図ることができる。
【0149】
例えば、電界効果移動度の高いトランジスタの半導体層に用いる場合には、金属酸化物
の成膜時における酸素流量比として、0%以上30%以下、好ましくは5%以上20%以
下とする。
【0150】
成膜ガスに窒素ガスを含めて成膜することにより、スパッタリングターゲット10が窒
素を含まない構成であっても、窒素を有する金属酸化物を成膜することができる。窒素ガ
スを添加して窒素を有する金属酸化物を成膜する場合、窒素流量比を大きくし、窒素を含
む金属酸化物に十分な量の窒素を含ませることで、キャリア移動度を高めることができる
。
【0151】
窒素流量比は、窒素を有する金属酸化物の用途に応じた好ましい特性を得るために、1
0%以上100%以下の範囲で適宜設定することができる。このとき、例えば、成膜ガス
を窒素ガスとアルゴンガスの混合ガスにすることができる。また、成膜ガスを、窒素ガス
と酸素ガスの混合ガスとしてもよいし、窒素ガスと酸素ガスとアルゴンガスの混合ガスと
してもよい。
【0152】
さらに、成膜ガスに窒素ガスを含ませることにより、成膜される窒素を有する金属酸化
物の酸素欠損に相当するサイトを窒素で補填し、窒素を有する金属酸化物の酸素欠損量を
低減することができる。このとき、スパッタリングターゲット10に含まれる元素M1と
して酸素と結合力の強い元素(例えば、シリコン、アルミニウムなど)を用いている場合
、窒素を有する金属酸化物の酸素欠損に相当するサイトを、当該元素M1によって補填す
ることができる。このようにすることで、成膜ガス中の酸素を低減、または成膜ガスに酸
素を含まない構成としても、窒素を有する金属酸化物の酸素欠損量の低減を図ることがで
きる。さらに、窒素を有する金属酸化物中の酸素量を低減し、窒素量を増加させることに
より、窒素を有する金属酸化物のキャリア移動度を向上させることができる。
【0153】
また、スパッタリング時に成膜ガスとして酸素ガスを用いる場合、当該酸素ガスが負イ
オン化し、成膜中の金属酸化物に衝突して、当該金属酸化物が損傷する場合がある。これ
に対して上記のように、成膜ガス中の酸素を低減、または成膜ガスに酸素を含まない構成
とすることにより、金属酸化物が損傷することを防ぐことができる。
【0154】
なお、スパッタリングターゲット10として窒素を含むターゲットを用いる場合には、
窒素を有する金属酸化物を成膜する場合でも、成膜ガスとして窒素を用いない構成にする
ことができる。
【0155】
また、スパッタリングガスの高純度化も必要である。例えば、スパッタリングガスとし
て用いる酸素ガス、窒素ガス、及びアルゴンガスは、露点が-40℃以下、好ましくは-
80℃以下、より好ましくは-100℃以下、より好ましくは-120℃以下にまで高純
度化したガスを用いることで金属酸化物に水分等が取り込まれることを可能な限り防ぐこ
とができる。
【0156】
また、成膜室41は、金属酸化物にとって不純物となる水等を可能な限り除去すべくク
ライオポンプのような吸着式の真空排気ポンプを用いて高真空(5×10-7Paから1
×10-4Pa程度まで)排気することが好ましい。または、ターボ分子ポンプとコール
ドトラップを組み合わせて排気系からチャンバー内に気体、特に炭素または水素を含む気
体が逆流しないようにしておくことが好ましい。特に、スパッタリング装置の待機時にお
ける、チャンバー内のH2Oに相当するガス分子(m/z=18に相当するガス分子)の
分圧を1×10-4Pa以下とすることが好ましく、5×10-5Pa以下とすることが
より好ましい。また、スパッタリング装置の放電時における、チャンバー内のH2Oに相
当するガス分子(m/z=18に相当するガス分子)の分圧を5×10-5Pa以下とす
ることが好ましく、1×10-5Pa以下とすることがより好ましい。このようにして、
金属酸化物中に混入する不純物の低減を図ることにより、信頼性の高いトランジスタを実
現することができる。
【0157】
このように、水、水素等を低減した金属酸化物は、水素に起因するキャリアが少ないた
め、キャリア密度が低くなる。ただし、スパッタリングターゲット10を用いた金属酸化
物は、キャリア供給源となる元素M2(例えば、Ti、Ge、Sn、V、Ni、Mo、W
、及びTaから選ばれる一種または複数種)を有する構成であるため、水素に起因するキ
ャリアが少なくても、キャリア密度を高めることができる。また、Tiに代表される元素
M2は、水素に対してゲッタリング作用を有するため、キャリアとして機能する水素を低
減し、トランジスタの信頼性を向上させることができる。
【0158】
第3の工程は、スパッタリングターゲット10に電圧を印加する工程を有する。
【0159】
第3の工程としては、例えば、
図6(A)に示すターゲットホルダ52a及びターゲッ
トホルダ52bに電圧を印加する。一例としては、ターゲットホルダ52aに接続する端
子V1に印加される電位を、基板ホルダ62に接続する端子V2に印加される電位よりも
低い電位とする。また、ターゲットホルダ52bに接続する端子V4に印加される電位を
、基板ホルダ62に接続する端子V2よりも低い電位とする。また、基板ホルダ62に接
続する端子V2に印加される電位を、接地電位とする。また、マグネットホルダ56に接
続する端子V3に印加される電位を、接地電位とする。
【0160】
なお、端子V1、端子V2、端子V3、及び端子V4に印加される電位は上記の電位に
限定されない。また、ターゲットホルダ52、基板ホルダ62、マグネットホルダ56の
全てに電位が印加されなくても構わない。例えば、基板ホルダ62が電気的にフローティ
ング状態であってもよい。なお、端子V1には、印加する電位の制御が可能な電源が電気
的に接続されているものとする。電源には、DC電源、AC電源、またはRF電源を用い
ればよい。
【0161】
第4の工程は、スパッタリングターゲット10から基板上に金属酸化物を堆積する工程
を有する。
【0162】
第4の工程としては、例えば、
図6(A)に示す成膜室41中で、アルゴンガス、窒素
ガスまたは酸素ガスが電離し、陽イオンと電子とに分かれてプラズマを形成する。その後
、プラズマ中の陽イオンは、ターゲットホルダ52a、52bに印加された電位によって
、スパッタリングターゲット10a、10bに向けて加速される。陽イオンがスパッタリ
ングターゲット10a、10bに衝突することで、スパッタ粒子が生成され、基板60に
スパッタ粒子が堆積する。
【0163】
金属酸化物膜の成膜中のスパッタリングターゲット10近傍の模式図を
図1(B)に示
す。
図1(B)には、スパッタリングターゲット10、プラズマ30、陽イオン20、第
1のスパッタ粒子11a、及び第2のスパッタ粒子12aを示す。
【0164】
図1(B)では、アルゴンガス、酸素ガスまたは窒素ガスが電離し、陽イオン20と電
子(図示しない)とに分かれてプラズマ30を形成する。その後、プラズマ30中の陽イ
オン20は、スパッタリングターゲット10に向けて加速する。陽イオン20がスパッタ
リングターゲット10に衝突することで、第1のスパッタ粒子11a及び第2のスパッタ
粒子12aが生成され、スパッタリングターゲット10から、第1のスパッタ粒子11a
及び第2のスパッタ粒子12aが弾き出される。なお、第1のスパッタ粒子11aは、第
1の領域11から弾き出されるため、元素M1(例えば、ガリウム、アルミニウム、シリ
コンなど)及び亜鉛のいずれか一種または複数種を多く含むクラスタを形成している場合
がある。また、第2のスパッタ粒子12aは、第2の領域12から弾き出されるため、イ
ンジウム、亜鉛、及び元素M2のいずれか一種または複数種を多く含むクラスタを形成し
ている場合がある。
【0165】
絶縁性材料を含む第1の領域11から飛び出した第1のスパッタ粒子11aと、導電性
材料を含む第2の領域12から飛び出した第2のスパッタ粒子12aと、がそれぞれ飛び
出して基板上に堆積する。基板上では、第1のスパッタ粒子11aを含み、導電性が比較
的低い領域と、第2のスパッタ粒子12aを含み、導電性が比較的高い領域が偏在して形
成される。
【0166】
元素M1としてガリウムを用いる場合、
図7に示すように、スパッタリングターゲット
10の上面に析出部13が形成される場合がある。析出部13は、第1の領域11に含ま
れるガリウムが主に析出したものであり、表面張力により球状または粒状に形成される場
合がある。よって、析出部13に含まれるガリウムの原子数比は、第1の領域11に含ま
れるガリウムの原子数比より大きい場合がある。また、析出部13では、表面を覆うよう
に、亜鉛または亜鉛の酸化物などが形成される場合がある。
【0167】
スパッタリングターゲット10の上面に露出した第1の領域11に、アルゴンイオンな
どに代表される陽イオン20が衝突すると、第1の領域11から酸素が排出され、ガリウ
ム、亜鉛などの単体がスパッタリングターゲット10の表面に形成される。ガリウムの単
体は融点が約30℃と低いため、スパッタリング処理によって生じる熱により、形成され
たガリウムの単体は溶解する。溶融したガリウムは、表面張力によって凝集し、球状また
は粒状の析出部13が形成される。
【0168】
ここで、ガリウム単体の融点近傍における、亜鉛のガリウムに対する固溶域は、1at
omic%程度である。このため、析出部13の内部には亜鉛がほとんど存在せず、析出
部13の表面を覆うように、亜鉛または亜鉛の酸化物などが形成される場合がある。
【0169】
析出部13から飛び出した第1のスパッタ粒子11aは、第1の領域11から飛び出し
た第1のスパッタ粒子11aより、多くのガリウムを含む場合が多い。このため、スパッ
タリングによって基板上に形成される、第1のスパッタ粒子11aを含む領域に含有され
るガリウムの量が多くなる。このようにして、第1のスパッタ粒子11aを含み、導電性
が比較的低い領域に含まれるガリウムの量を多くすることで、第2のスパッタ粒子12a
を含み、導電性が比較的高い領域と、より分離させることができる。ただし、析出部13
の表面には亜鉛も存在するので、基板上に形成される、第1のスパッタ粒子11a含む領
域近傍に亜鉛も存在する。
【0170】
このとき、スパッタリング装置の成膜室の端子に印加する電力は高いことが好ましい。
例えば、2.5kW以上、具体的には4.5kW程度印加することが好ましい。このよう
に、スパッタ電力を大きくすることにより、析出部13を、より大きな規模で形成するこ
とができるので、第1のスパッタ粒子11aを含み、導電性が比較的低い領域と、第2の
スパッタ粒子12aを含み、導電性が比較的高い領域とを、より分離させることができる
。このような金属酸化物膜をトランジスタに用いることにより、電界効果移動度の向上を
図ることができる。
【0171】
次に、上記スパッタリングターゲットを用いて成膜した金属酸化物について説明する。
【0172】
上記スパッタリングターゲットを用いて成膜した金属酸化物は、少なくともInを含む
ことが好ましい。特にIn及びZnを含むことが好ましい。また、上記スパッタリングタ
ーゲットを用いて成膜した金属酸化物は、In及びZnに加えて、元素M1(元素M1は
、Al、Ga、Si、Mg、Zr、Be、及びBから選ばれる一種または複数種)が含ま
れると好ましい。また、上記スパッタリングターゲットを用いて成膜した金属酸化物は、
さらに、元素M2(元素M2は、Ti、Ge、Sn、V、Ni、Mo、W、及びTaから
選ばれる一種または複数種)が含まれると好ましい。元素M1としては、Gaが好ましい
。また、元素M2としては、TiまたはGeが好ましい。
【0173】
上記スパッタリングターゲットを用いて成膜した金属酸化物としては、例えば、In-
Ga-Zn酸化物、In-Ga-Ti-Zn酸化物、またはIn-Ga-Ge-Zn酸化
物などが挙げられる。
【0174】
なお、上記スパッタリングターゲットを用いて成膜した金属酸化物は、複数の成分を有
する。
【0175】
上記スパッタリングターゲットを用いて成膜した金属酸化物は、第1の成分と、第2の
成分と、を有し、第1の成分は、M1(M1は、Al、Ga、Si、Mg、Zr、Be、
及びBから選ばれる一種または複数種)酸化物、M1-Zn酸化物、In-M1-Zn酸
化物、またはIn-M1-M2-Zn酸化物(M2は、Ti、Ge、Sn、V、Ni、M
o、W、及びTaから選ばれる一種または複数種)を有し、第2の成分は、In酸化物、
Zn酸化物、In-Zn酸化物、In-M2酸化物、またはIn-M2-Zn酸化物を有
する。
【0176】
また、M1酸化物の中でも、Al、Siに関しては、窒化物に置き換えてもよい。具体
的には、M1酸化物を、窒化アルミニウム、または窒化シリコンに置き換えてもよい。
【0177】
また、第1の成分と、第2の成分とは、混合する領域を有すると好ましい。なお、第1
の成分は、金属酸化物中に、1乃至50atomic%有すると好ましい。また、第2の
成分は、金属酸化物中に、0.01乃至5atomic%有すると好ましい。
【0178】
上記スパッタリングターゲットを用いて成膜した金属酸化物は、複数の成分により構成
されるため、複数のエネルギーギャップを有する。より詳しくは、上記スパッタリングタ
ーゲットを用いて成膜した金属酸化物は、複数のエネルギーバンドの伝導帯下端のエネル
ギー準位を有する。なお、場合によっては、複数の成分を複数の領域と言い換えてもよい
。
【0179】
別言すると、上記スパッタリングターゲットを用いて成膜した金属酸化物は、エネルギ
ーバンドの伝導帯下端のエネルギー準位が高い第1の領域と、第1の領域よりもエネルギ
ーバンドの伝導帯下端のエネルギー準位が低い第2の領域と、を有し、第2の領域は、第
1の領域よりもキャリアが多く、第1の領域と、第2の領域との伝導帯下端のエネルギー
準位の差が0.2eV以上である。
【0180】
ここで、金属酸化物がIn、元素M1、元素M2、及びZnを有する構成について
図8
を用いて説明を行う。
【0181】
<金属酸化物の構成>
図8は、本発明の一態様におけるCAC(Cloud-Aligned Compos
ite)構成を有する金属酸化物の概念図である。なお、本明細書において、本発明の一
態様である金属酸化物が、半導体の機能を有する場合、CAC(Cloud-Align
ed Composite)-OS(Oxide Semiconductor)、また
はCAC-metal oxideと定義する。
【0182】
なお、CAC-OS、またはCAC-metal oxideは、マトリックス複合材
(matrix composite)、または金属マトリックス複合材(metal
matrix composite)と称する場合もある。従って、CAC-OSを、C
loud-Aligned Composite-OSと称してもよい。
【0183】
CAC-OSとは、例えば、
図8に示すように、金属酸化物を構成する元素が偏在する
ことで、各元素を主成分とする領域001、および領域002を形成し、各領域が、混合
し、モザイク状に形成される。つまり、金属酸化物を構成する元素が、0.5nm以上1
0nm以下、好ましくは、1nm以上2nm以下、またはその近傍のサイズで偏在した材
料の一構成である。なお、以下では、金属酸化物において、一つあるいはそれ以上の金属
元素が偏在し、該金属元素を有する領域が、0.5nm以上10nm以下、好ましくは、
1nm以上2nm以下、またはその近傍のサイズで混合した状態をモザイク状、またはパ
ッチ状ともいう。
【0184】
例えば、CAC構成を有するIn-M1-M2-Zn酸化物とは、In酸化物(以下、
InOX1(X1は0よりも大きい実数)とする。)、In-Zn酸化物(以下、InX
2ZnY2OZ2(X2、Y2、およびZ2は、それぞれ0よりも大きい実数)とする。
)、またはIn-M2-Zn酸化物(以下、InW3M2X3ZnY3OZ3(W3、X
3、Y3、およびZ3は、それぞれ0よりも大きい実数)とする。)と、元素M1を含む
酸化物と、にそれぞれ材料が分離することでモザイク状となり、モザイク状のInOX1
、InX2ZnY2OZ2、またはInW3M2X3ZnY3OZ3と、元素M1を含む
酸化物とが、膜中に分布した構成(以下、クラウド状ともいう。)である。
【0185】
別言すると、本発明の一態様の金属酸化物は、In酸化物、In-Zn酸化物、In-
M1酸化物、In-M1-Zn酸化物、M1-Zn酸化物、M1-M2酸化物、M2酸化
物、In-M2酸化物、In-M2-Zn酸化物、M2-Zn酸化物、In-M1-M2
-Zn酸化物の中から選ばれる、少なくとも2以上の複数の酸化物または複数の成分を有
する。特に、2以上の複数の酸化物としては、Inを含む酸化物またはIn及び元素M2
を含む酸化物と、元素M1を含む酸化物とのそれぞれから選択されると好ましい。
【0186】
例えば、元素M1がGaであり、元素M2がTiである場合、本発明の一態様の金属酸
化物は、In酸化物、In-Zn酸化物、Ga-Ti酸化物、In-Ga酸化物、In-
Ga-Zn酸化物、Ga-Zn酸化物、Ti酸化物、In-Ti酸化物、In-Ti-Z
n酸化物、Ti-Zn酸化物、In-Ti-Ga-Zn酸化物の中から選ばれる、少なく
とも2以上を有する。特に、本発明の一態様の金属酸化物は、上記酸化物のうち、Gaを
含む酸化物と、Tiを含む酸化物と、Znを含む酸化物と、を組み合わせたIn-Ga-
Ti-Zn酸化物としてもよい。
【0187】
また、元素M1がGaであり、元素M2がGeである場合、本発明の一態様の金属酸化
物は、In酸化物、In-Zn酸化物、Ga-Ge酸化物、In-Ga酸化物、In-G
a-Zn酸化物、Ga-Zn酸化物、Ge酸化物、In-Ge酸化物、In-Ge-Zn
酸化物、Ge-Zn酸化物、In-Ga-Ge-Zn酸化物の中から選ばれる、少なくと
も2以上を有する。特に、本発明の一態様の金属酸化物は、上記酸化物のうち、Gaを含
む酸化物と、Geを含む酸化物と、Znを含む酸化物と、を組み合わせたIn-Ga-G
e-Zn酸化物としてもよい。
【0188】
なお、元素M1がGaであり、元素M2を有しない構成としてもよい。この場合、本発
明の一態様の金属酸化物は、In酸化物、In-Zn酸化物、Ga酸化物、In-Ga酸
化物、In-Ga-Zn酸化物、Ga-Zn酸化物、Zn酸化物の中から選ばれる、少な
くとも2以上を有する。
【0189】
すなわち、本発明の一態様の金属酸化物は、複数の材料または複数の成分を有する複合
材料、あるいはコンポジット材料ともいえる。
【0190】
ここで、
図8に示す概念が、CAC構成を有するIn-M1-M2-Zn酸化物である
と仮定する。その場合、領域001が元素M1を含む酸化物を主成分とする領域、また、
領域002がInO
X1、In
X2Zn
Y2O
Z2、またはIn
W3M2
X3Zn
Y3O
Z3を主成分とする領域であるといえる。このとき、領域001と、領域002とは、周
辺部が不明瞭である(ボケている)ため、それぞれ明確な境界が観察できない場合がある
。
【0191】
つまり、CAC構成を有するIn-M1-M2-Zn酸化物は、元素M1を含む酸化物
が主成分である領域と、InOX1、InX2ZnY2OZ2、またはInW3M2X3
ZnY3OZ3が主成分である領域とが、混合している金属酸化物である。従って、金属
酸化物を複合金属酸化物と記載する場合がある。
【0192】
また、領域001は、さらに亜鉛を含むことが好ましい。このとき、領域001及び領
域002で共通して亜鉛を含む。さらに、領域001と領域002の間の領域(例えば、
図8で灰色で示される領域に相当し、領域001と領域002の周辺部の不明瞭な領域な
ども含む。)にも亜鉛が含まれることが好ましい。亜鉛が金属酸化物中にクラウド状に広
がっており、領域001と領域002は、亜鉛が含まれる領域を介して連結されていると
いうこともできる。なお、領域001と領域002の間の領域に含まれる亜鉛の原子数比
は、領域001または領域002に含まれる亜鉛の原子数比より大きくなる場合がある。
【0193】
また、CAC構成を有するIn-M1-M2-Zn酸化物において、領域001、及び
領域002における結晶構造は、特に限定されない。また、領域001、及び領域002
は、それぞれ、異なる結晶構造を有していてもよい。
【0194】
例えば、CAC構成を有するIn-M1-M2-Zn酸化物は、非単結晶構造を有する
酸化物半導体であることが好ましい。非単結晶構造として、例えば、CAAC-OS、多
結晶酸化物半導体、nc-OS(nanocrystalline oxide sem
iconductor)、擬似非晶質酸化物半導体(a-like OS:amorph
ous-like oxide semiconductor)および非晶質酸化物半導
体などがある。
【0195】
なお、CAAC-OSは、CAAC構造を有する。CAAC構造とは、c軸配向性を有
し、かつa-b面方向において複数のナノ結晶が連結し、歪みを有した結晶構造の酸化物
半導体である。なお、歪みとは、複数のナノ結晶が連結する領域において、格子配列の揃
った領域と、別の格子配列の揃った領域と、の間で格子配列の向きが変化している箇所を
指す。
【0196】
ナノ結晶は、六角形を基本とするが、正六角形状とは限らず、非正六角形状である場合
がある。また、歪みにおいて、五角形、および七角形などの格子配列を有する場合がある
。従って、CAAC-OSにおいて、歪み近傍においても、明確な結晶粒界(グレインバ
ウンダリーともいう)を確認することはできない。即ち、格子配列の歪みによって、結晶
粒界の形成が抑制されていることがわかる。これは、CAAC-OSが、a-b面方向に
おいて原子配列が稠密でないことや、金属元素が置換することで原子間の結合距離が変化
することなどによって、歪みを許容することができるためと考えられる。
【0197】
nc-OSは、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上
3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc-OSは、異なるナ
ノ結晶間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。し
たがって、nc-OSは、分析方法によっては、a-like OSや非晶質酸化物半導
体と区別が付かない場合がある。
【0198】
a-like OSは、nc-OSと非晶質酸化物半導体との間の構造を有する酸化物
半導体である。a-like OSは、鬆または低密度領域を有する。即ち、a-lik
e OSは、nc-OSおよびCAAC-OSと比べて、不安定な構造である。
【0199】
ここで、本発明の一態様の金属酸化物が、In-Ga-Ti-Zn酸化物である場合に
ついて説明する。InOX1、InX2ZnY2OZ2、またはInW3TiX3ZnY
3OZ3と、InaGabTicZndOe(a、b、c、d、及びeは、それぞれ0よ
りも大きい実数とする。)と、に材料が分離することでモザイク状となる。
【0200】
つまり、In-Ga-Ti-Zn酸化物におけるCAC-OSは、InaGabTic
ZndOeが主成分である領域と、InOX1、InX2ZnY2OZ2、またはInW
3TiX3ZnY3OZ3が主成分である領域と、が混合している構成を有する複合金属
酸化物である。また、InaGabTicZndOeが主成分である領域と、InOX1
、InX2ZnY2OZ2、またはInW3TiX3ZnY3OZ3が主成分である領域
とは、周辺部が不明瞭である(ボケている)ため、明確な境界が観察できない場合がある
。
【0201】
例えば、
図8に示す概念図において、領域001がIn
aGa
bTi
cZn
dO
eを主
成分とする領域に相当し、領域002がInO
X1、In
X2Zn
Y2O
Z2、またはI
n
W3Ti
X3Zn
Y3O
Z3を主成分とする領域に相当する。なお、In
aGa
bTi
cZn
dO
eを主成分とする領域、及びInO
X1、In
X2Zn
Y2O
Z2、またはI
n
W3Ti
X3Zn
Y3O
Z3を主成分とする領域を、それぞれナノ粒子と呼称してもよ
い。当該ナノ粒子は、粒子の径が0.5nm以上10nm以下、代表的には1nm以上2
nm以下である。また、上記ナノ粒子は、周辺部が不明瞭である(ボケている)ため、明
確な境界が観察できない場合がある。
【0202】
なお、領域001、および領域002のサイズは、エネルギー分散型X線分光法(ED
X:Energy Dispersive X-ray spectroscopy)を
用いて取得したEDXマッピングで評価することができる。例えば、領域001は、断面
写真のEDXマッピングにおいて、領域001の径が、0.5nm以上10nm以下、ま
たは1nm以上2nm以下で観察される場合がある。また、領域の中心部から周辺部にか
けて、主成分である元素の密度は、徐々に小さくなる。例えば、EDXマッピングでカウ
ントできる元素の個数(以下、存在量ともいう)が、中心部から周辺部に向けて傾斜する
と、断面写真のEDXマッピングにおいて、領域の周辺部が不明瞭な(ボケた)状態で観
察される。例えば、InaGabTicZndOeが主成分である領域において、Ga原
子は、中心部から周辺部にかけて徐々に減少し、代わりに、In原子、Ti原子、および
Zn原子が増加することで、InW3TiX3ZnY3OZ3が主成分である領域へと段
階的に変化する。従って、EDXマッピングにおいて、InW3TiX3ZnY3OZ3
が主成分である領域の周辺部は不明瞭な(ボケた)状態で観察される。
【0203】
なお、CAC構成を有するIn-Ga-Ti-Zn酸化物における結晶構造は、特に限
定されない。また、領域001、および領域002は、それぞれ、異なる結晶構造を有し
ていてもよい。例えば、CAC構成を有するIn-Ga-Ti-Zn酸化物は、非単結晶
構造を有する酸化物半導体であることが好ましい。
【0204】
なお、In-Ga-Ti-Zn酸化物におけるCAC-OSにおける結晶性については
、電子線回折で評価することができる。例えば、電子線回折を用いてIn-Ga-Ti-
Zn酸化物を分析した場合、電子線回折パターン像において、リング状に輝度の高い領域
、およびリング状に輝度の高い領域内に、複数のスポットが観察される場合がある。
【0205】
なお、CAC-OSにおける結晶性を評価する場合、電子線のビーム径、すなわち観察
する領域の面積によって、異なるパターンが確認される場合がある。例えば、CAC-O
Sにおける結晶性を評価する場合には、電子線のビーム径を1nmΦ以上100nmΦ以
下で測定する、所謂ナノビーム電子線回折(NBED:Nano Beam Elect
ron Diffraction)を用いると好適である。
【0206】
また、InO
X1、In
X2Zn
Y2O
Z2、またはIn
W3Ti
X3Zn
Y3O
Z3
が主成分である領域(
図8における領域002)は、In
aGa
bTi
cZn
dO
eが主
成分である領域(
図8における領域001)と比較して、キャリア密度が大きい領域であ
る。つまり、InO
X1、In
X2Zn
Y2O
Z2、またはIn
W3Ti
X3Zn
Y3O
Z3が主成分である領域を、キャリアが流れることにより、金属酸化物としての導電性が
発現する。従って、InO
X1、In
X2Zn
Y2O
Z2、またはIn
W3Ti
X3Zn
Y3O
Z3が主成分である領域が、金属酸化物中にクラウド状に分布することで、高い電
界効果移動度(μ)が実現できる。なお、InO
X1、In
X2Zn
Y2O
Z2、または
In
W3Ti
X3Zn
Y3O
Z3などが主成分である領域は、導電体の性質に近い、半導
体の領域ともいえる。
【0207】
一方、InaGabTicZndOeなどが主成分である領域は、InOX1、InX
2ZnY2OZ2、またはInW3TiX3ZnY3OZ3が主成分である領域と比較し
て、キャリア密度が小さくなる。つまり、InaGabTicZndOeなどが主成分で
ある領域が、金属酸化物中に分布することで、リーク電流を抑制し、良好なスイッチング
動作を実現できる。なお、InaGabTicZndOeなどが主成分である領域は、絶
縁体の性質に近い、半導体の領域ともいえる。
【0208】
従って、In-Ga-Ti-Zn酸化物におけるCAC-OSを半導体素子に用いた場
合、InaGabTicZndOeなどに起因する性質と、InOX1、InX2ZnY
2OZ2、またはInW3TiX3ZnY3OZ3に起因する性質とが、相補的に作用す
ることにより、高いオン電流(Ion)、高い電界効果移動度(μ)、および、低いオフ
電流(Ioff)を実現することができる。
【0209】
また、上記のように、領域001、領域002、及び領域001と領域002の間の領
域に亜鉛を含ませることにより、亜鉛を導電パスとして、領域001と領域002を電気
的に連結させることができる。このようにして、亜鉛を導電パスとして、金属酸化物膜に
キャリア(電子)が流れる。
【0210】
また、In-Ga-Ti-Zn酸化物におけるCAC-OSを用いた半導体素子は、信
頼性が高い。従って、In-Ga-Ti-Zn酸化物におけるCAC-OSは、ディスプ
レイをはじめとするさまざまな半導体装置に最適である。
【0211】
<金属酸化物を有するトランジスタ>
続いて、上記金属酸化物を半導体としてトランジスタに用いる場合について、
図9を用
いて説明する。
【0212】
なお、上記金属酸化物を半導体としてトランジスタに用いることで、電界効果移動度が
高く、かつ、スイッチング特性が高いトランジスタを実現することができる。また、信頼
性の高いトランジスタを実現することができる。
【0213】
図9(A)は、上記金属酸化物をチャネル領域に用いたトランジスタの模式図である。
図9(A)において、トランジスタは、ソースと、ドレインと、第1のゲートと、第2の
ゲートと、第1のゲート絶縁部と、第2のゲート絶縁部と、チャネル部と、を有する。ト
ランジスタは、ゲートに印加する電位によって、チャネル部の抵抗を制御することができ
る。即ち、第1のゲート、または第2のゲートに印加する電位によって、ソースとドレイ
ンとの間の導通(トランジスタがオン状態)・非導通(トランジスタがオフ状態)を制御
することができる。
【0214】
ここで、チャネル部は、第1のバンドギャップを有する領域001と、第2のバンドギ
ャップを有する領域002と、がクラウド状であるCAC-OSを有している。なお、第
1のバンドギャップは、第2のバンドギャップよりも大きいものとする。
【0215】
例えば、チャネル部のCAC-OSとして、CAC構成を有するIn-Ga-Ti-Z
n酸化物を用いる場合について説明する。CAC構成を有するIn-Ga-Ti-Zn酸
化物は、領域001として、領域002よりもGaの濃度が高いInaGabTicZn
dOeを主成分とする領域と、領域002として、領域001よりもInの濃度が高いI
nOX1、InX2ZnY2OZ2、またはInW3TiX3ZnY3OZ3が主成分で
ある領域と、に材料が分離することでモザイク状となり、InaGabTicZndOe
、InOX1、InX2ZnY2OZ2、またはInW3TiX3ZnY3OZ3が、膜
中に分布した構成(クラウド状)である。なお、InaGabTicZndOeを主成分
とする領域001は、InOX1、InX2ZnY2OZ2、またはInW3TiX3Z
nY3OZ3が主成分である領域002よりも、大きなバンドギャップを有する。
【0216】
次に、
図9(A)に示すトランジスタの伝導モデルについて、
図9(B)を用いて説明
する。
図9(B)は、
図9(A)に示すトランジスタのソースとドレインとの間における
エネルギー準位の分布を説明する模式図である。また、
図9(C)は、
図9(A)に示す
トランジスタにおいて、X-X’で示す実線上における伝導バンド図である。なお、各伝
導バンド図において、実線は伝導帯下端のエネルギーを示す。また、E
fで示す一点破線
は電子の擬フェルミ準位のエネルギーを示す。また、ここでは、第1のゲート電圧として
、ゲートとソースとの間にマイナスの電圧を印加し、ソースとドレインとの間にドレイン
電圧(V
d>0)を印加する場合を想定する。なお、
図9においては、伝導帯下端のエネ
ルギーをCBと記す。
【0217】
図9(A)に示すトランジスタに、マイナスのゲート電圧を印加すると、
図9(B)に
示すように、ソースとドレインとの間に、領域001に由来する伝導帯下端のエネルギー
CB
001と、領域002に由来する伝導帯下端のエネルギーCB
002と、が形成され
る。ここで、第1のバンドギャップは第2のバンドギャップよりも大きいため、伝導帯下
端のエネルギーCB
001におけるポテンシャル障壁は、伝導帯下端のエネルギーCB
0
02のポテンシャル障壁よりも大きい。つまり、チャネル部におけるポテンシャル障壁の
最大値は、領域001に起因する値をとる。従って、CAC-OSをチャネル部に用いる
ことで、リーク電流を抑制し、スイッチング特性が高いトランジスタとすることができる
。
【0218】
また、
図9(C)に示すように、第1のバンドギャップを有する領域001は、第2の
バンドギャップを有する領域002より、バンドギャップが相対的に広いので、第1のバ
ンドギャップを有する領域001のEc端は、第2のバンドギャップを有する領域002
のEc端よりも相対的に高い位置に存在しうる。
【0219】
ここで、本発明の一態様の金属酸化物が、In-Ga-Ti-Zn酸化物(In:Ga
:Ti:Zn=5:0.5:0.5:7[原子数比])である構成を仮定する。
【0220】
In-Ga-Ti-Zn酸化物において、Tiは、In、Ga、及びZnよりも価数が
多い。具体的には、Znが2価であり、In及びGaが3価であり、Tiが4価である。
金属酸化物中に、In、Ga、及びZnよりも価数の多い元素(ここではTi)を用いる
ことで、当該元素がキャリア供給源となり、金属酸化物のキャリア密度を高くすることが
できる。また、Tiは、In、Ga、及びZnと比べて、酸素との結合力が強い。したが
って、金属酸化物中にTiを含有させる構造とすることで、酸素欠損の生成を抑制するこ
とができる。したがって、本発明の一態様の金属酸化物をトランジスタの半導体層に用い
る場合、トランジスタの電界効果移動度を高め、且つ酸素欠損を抑制することで信頼性の
高い半導体装置とすることができる。
【0221】
なお、上記構成においては、Tiについて説明したが、Tiの代わりにGe、Sn、V
、Ni、Mo、W、及びTaを用いてもよい。
【0222】
また、上記構成の場合、第1のバンドギャップを有する領域001の成分が、In-G
a-Ti-Zn酸化物に起因し、第2のバンドギャップを有する領域002の成分がIn
-Ti-Zn酸化物に起因する場合がある。この場合、第1のバンドギャップは、3.3
eV、またはその近傍であり、第2のバンドギャップは、2.4eV、またはその近傍と
なる。なお、バンドギャップの値は、各材料の単膜をエリプソメータで測定して得られる
値を用いることができる。
【0223】
また、本発明の一態様の金属酸化物は、領域001に由来する伝導帯下端のエネルギー
準位と、領域002に由来する伝導帯下端のエネルギー準位との差が、少なくとも0.2
eV以上あると好ましい。ただし、領域001に由来する価電子帯上端のエネルギーの位
置と、領域002に由来する価電子帯上端のエネルギーの位置が異なる場合があるので、
領域001に由来する伝導帯下端のエネルギー準位と、領域002に由来する伝導帯下端
のエネルギー準位との差は、好ましくは0.3eV以上、さらに好ましくは0.4eV以
上であるとよい。
【0224】
また、上記の仮定の場合、CAC-OS中にキャリアが流れる際に、第2のバンドギャ
ップ、すなわちナローギャップを有するIn酸化物、In-Zn酸化物、またはIn-T
i-Zn酸化物に起因してキャリアが流れる。この際に、第2のバンドギャップから第1
のバンドギャップ、すなわちワイドギャップを有するIn-Ga-Ti-Zn酸化物側に
キャリアが溢れる。別言すると、ナローギャップを有するIn酸化物、In-Zn酸化物
、またはIn-Ti-Zn酸化物の方がキャリアを生成しやすく、当該キャリアは、ワイ
ドギャップを有するIn-Ga-Ti-Zn酸化物に移動する。
【0225】
なお、上述したナローギャップを有するIn酸化物、In-Zn酸化物、及びIn-T
i-Zn酸化物の中でも、In-Ti-Zn酸化物は、In酸化物、及びIn-Zn酸化
物よりも、さらにナローギャップを有する場合がある。よって、In酸化物、またはIn
-Zn酸化物よりも、さらにキャリア密度を高くすることができる。
【0226】
なお、第1のバンドギャップ、すなわちワイドギャップを有する領域のキャリア密度は
、1×1010cm-3以上1×1016cm-3以下、好ましくは、1×1015cm
-3程度である。また、第2のバンドギャップ、すなわちナローギャップを有する領域の
キャリア密度は、1×1018cm-3以上1×1021cm-3未満が好ましい。
【0227】
なお、チャネルを形成する金属酸化物中において、領域001と、領域002とは、モ
ザイク状であり、領域001、および領域002は不規則に偏在している。そのため、X
-X’で示す実線上における伝導バンド図は一例である。
【0228】
次に、
図9(C)に示す伝導バンド図と異なる伝導バンド図を
図10(A)(B)(C
)に示す。
【0229】
本発明の一態様の金属酸化物においては、基本的には、
図10(A)に示すように、領
域002が領域001に挟まれたバンドを形成していればよい。または、領域001が領
域002に挟まれたバンドを形成していればよい。
【0230】
また、CAC-OSでは、第1のバンドギャップを有する領域001と第2のバンドギ
ャップを有する領域002との接合部は、領域の凝集形態や組成に揺らぎが生じる場合が
ある。従って、
図10(B)、および
図10(C)に示すように、不連続ではなく、連続
的にバンドが変化する場合がある。すなわち、CAC-OS中にキャリアが流れる際に、
第1のバンドギャップと、第2のバンドギャップとが連動すると言い換えても良い。
【0231】
次に、
図9(A)に示すトランジスタおいて、X-X’で示す実線上におけるバンドダ
イアグラムのモデル図を、
図11(A)(B)(C)に示す。なお、第1のゲートに電圧
を印加する場合、第2のゲートにも同じ電圧が印加されるとする。
【0232】
図11(A)には、第1のゲート電圧V
gとして、ゲートとソースとの間にプラスの電
圧(V
g>0)を印加した状態(ON State)を示す。
図11(B)には、第1の
ゲート電圧V
gを印加しない(V
g=0)状態を示す。
図11(C)には、第1のゲート
電圧V
gとして、ゲートとソースとの間にマイナスの電圧(V
g<0)を印加した状態(
OFF State)を示す。なお、各伝導バンド図において、実線は伝導帯下端のエネ
ルギーを示す。また、E
fで示す一点鎖線は電子の擬フェルミ準位のエネルギーを示す。
【0233】
CAC-OSをチャネル部に有するトランジスタは、第1のバンドギャップを有する領
域001と第2のバンドギャップを有する領域002とが、電気的に相互作用を及ぼす。
別言すると、第1のバンドギャップを有する領域001と第2のバンドギャップを有する
領域002とが、相補的に機能する。
【0234】
図11(A)に示すように、トランジスタをオン状態にする電位(V
g>0)が、第1
のゲートに印加されると、Ec端の低い第2のバンドギャップを有する領域002が主な
伝導経路となり、電子が流れると同時に、第1のバンドギャップを有する領域001にも
電子が流れる。このためトランジスタのオン状態において高い電流駆動力、つまり大きな
オン電流および高い電界効果移動度を得ることができる。
【0235】
一方、
図11(B)、および
図11(C)に示すように、第1のゲートにしきい値電圧
未満の電圧(V
g≦0)を印加することで、第1のバンドギャップを有する領域001は
、誘電体(絶縁体)として振る舞うので、領域001中の伝導経路は遮断される。また、
第2のバンドギャップを有する領域002は、第1のバンドギャップを有する領域001
と接している。従って、第1のバンドギャップを有する領域001は、自らに加えて第2
のバンドギャップを有する領域002へ電気的に相互作用を及ぼし、第2のバンドギャッ
プを有する領域002中の伝導経路すらも遮断する。これでチャネル部全体が非導通状態
となり、トランジスタはオフ状態となる。
【0236】
以上の説明により、トランジスタにCAC-OSを用いることで、トランジスタの動作
時、例えば、ゲートと、ソースまたはドレインとの間に電位差が生じた時に、ゲートと、
ソースまたはドレインと、の間のリーク電流を低減または防止することができる。
【0237】
また、トランジスタには、膜中の水素濃度が低減された金属酸化物を用いることが好ま
しい。なお、膜中の水素濃度が低減された金属酸化物を、高純度真性または実質的に高純
度真性と呼称する場合がある。高純度真性または実質的に高純度真性である金属酸化物は
、水素に起因するキャリア(例えば、酸素欠損に水素が存在するVoHなど)が少ないた
め、キャリア密度を低くすることができる。また、高純度真性または実質的に高純度真性
である金属酸化物は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低くなる場合がある
。
【0238】
なお、高純度真性または実質的に高純度真性である金属酸化物は、水素に起因するキャ
リアが少ないため、キャリア密度が低くなる。ただし、本発明の一態様の金属酸化物は、
キャリア供給源となる元素(例えば、Ti、Ge、Sn、V、Ni、Mo、W、及びTa
から選ばれる一種または複数種)を有する構成であるため、水素に起因するキャリアが少
なくても、キャリア密度を高めることができる。
【0239】
また、金属酸化物のトラップ準位に捕獲された電荷は、消失するまでに要する時間が長
く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、トラップ準位密度の高い
金属酸化物にチャネル領域が形成されるトランジスタは、電気特性が不安定となる場合が
ある。
【0240】
従って、トランジスタの電気特性を安定にするためには、金属酸化物中の不純物濃度を
低減することが有効である。また、金属酸化物中の不純物濃度を低減するためには、近接
する膜中の不純物濃度も低減することが好ましい。不純物としては、水素、アルカリ金属
等がある。
【0241】
ここで、金属酸化物中における各不純物の影響について説明する。
【0242】
金属酸化物において、第14族元素の一つである炭素が含まれると、金属酸化物におい
て欠陥準位が形成される。このため、金属酸化物における炭素の濃度と、金属酸化物との
界面近傍の炭素の濃度(二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion
Mass Spectrometry)により得られる濃度)を、2×1018ato
ms/cm3以下、好ましくは2×1017atoms/cm3以下とする。
【0243】
また、金属酸化物にアルカリ金属が含まれると、欠陥準位を形成し、キャリアを生成す
る場合がある。従って、アルカリ金属が含まれている金属酸化物を用いたトランジスタは
ノーマリーオン特性となりやすい。このため、金属酸化物中のアルカリ金属の濃度を低減
することが好ましい。具体的には、SIMSにより得られる金属酸化物中のアルカリ金属
の濃度を、1×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×1016atoms/
cm3以下とする。
【0244】
また、金属酸化物に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になるため
、酸素欠損(Vo)を形成する場合がある。該酸素欠損(Vo)に水素が入ることで、キ
ャリアである電子が生成される場合がある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素
と結合して、キャリアである電子を生成することがある。従って、水素が含まれている金
属酸化物を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、金属酸化
物中の水素はできる限り低減されていることが好ましい。具体的には、金属酸化物におい
て、SIMSにより得られる水素濃度を、1×1016atoms/cm3以上3×10
21atoms/cm3未満、好ましくは1×1017atoms/cm3以上3×10
20atoms/cm3未満とする。
【0245】
なお、金属酸化物中の酸素欠損(Vo)は、酸素を金属酸化物に導入することで、低減
することができる。つまり、金属酸化物中の酸素欠損(Vo)に、酸素が補填されること
で、酸素欠損(Vo)は消失する。従って、金属酸化物中に、酸素を拡散させることで、
トランジスタの酸素欠損(Vo)を低減し、信頼性を向上させることができる。
【0246】
なお、酸素を金属酸化物に導入する方法として、例えば、金属酸化物に接して、化学量
論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物を設けることができる。つまり、酸
化物には、化学量論的組成よりも酸素が過剰に存在する領域(以下、過剰酸素領域ともい
う)が形成されていることが好ましい。特に、トランジスタに金属酸化物を用いる場合、
トランジスタ近傍の下地膜や、層間膜などに、過剰酸素領域を有する酸化物を設けること
で、トランジスタの酸素欠損を低減し、信頼性を向上させることができる。
【0247】
不純物が十分に低減された金属酸化物をトランジスタのチャネル形成領域に用いること
で、安定した電気特性を付与することができる。
【0248】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜、組み合わせて用
いることができる。
【0249】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様の金属酸化物を有する半導体装置、及び当該半導体
装置の作製方法について、
図12乃至
図23を参照して説明する。
【0250】
<2-1.半導体装置の構成例1>
図12(A)は、本発明の一態様の半導体装置であるトランジスタ100Aの上面図で
あり、
図12(B)は、
図12(A)に示す一点鎖線X1-X2間における切断面の断面
図に相当し、
図12(C)は、
図12(A)に示す一点鎖線Y1-Y2間における切断面
の断面図に相当する。また、
図12(D)は、
図12(B)に示す領域P1を拡大した断
面概念図に相当する。
【0251】
なお、
図12(A)において、煩雑になることを避けるため、トランジスタ100Aの
構成要素の一部(ゲート絶縁膜として機能する絶縁膜等)を省略して図示している。また
、一点鎖線X1-X2方向をチャネル長方向、一点鎖線Y1-Y2方向をチャネル幅方向
と呼称する場合がある。なお、トランジスタの上面図においては、以降の図面においても
図12(A)と同様に、構成要素の一部を省略して図示する場合がある。
【0252】
トランジスタ100Aは、基板102上の導電膜106と、基板102及び導電膜10
6上の絶縁膜104と、絶縁膜104上の金属酸化物108と、金属酸化物108上の導
電膜112aと、金属酸化物108上の導電膜112bと、金属酸化物108、導電膜1
12a、及び導電膜112b上の絶縁膜114と、絶縁膜114上の絶縁膜116と、絶
縁膜116上の導電膜120aと、絶縁膜116上の導電膜120bと、を有する。
【0253】
また、絶縁膜104は、開口部151を有し、絶縁膜104上には、開口部151を介
して導電膜106と電気的に接続される導電膜112cが形成される。また、絶縁膜11
4及び絶縁膜116は、導電膜112bに達する開口部152aと、導電膜112cに達
する開口部152bとを有する。
【0254】
金属酸化物108は、実施の形態1に示す本発明の一態様の金属酸化物を有する。ここ
で、
図12(D)を用いて、本発明の一態様の金属酸化物と、導電膜との接続について説
明を行う。
【0255】
図12(D)の領域P1に示すように、金属酸化物108の上面及び側面と導電膜11
2aが接するため、接触抵抗を低減できる。また、金属酸化物108は、
図8に示すCA
C構成を有するため、CAC構成が有する領域002、すなわち、導電性が高い領域と導
電膜112aとが接するため、さらに接触抵抗を低減できる。なお、図示していないが、
金属酸化物108と、導電膜112bとの接続についても、領域P1と同様である。
【0256】
本発明の一態様の金属酸化物は、高い導電性領域を有し、且つ導電膜との接触抵抗が低
減されている。したがって、当該金属酸化物を有するトランジスタの電界効果移動度を高
めることができる。
【0257】
例えば、トランジスタ100Aの電界効果移動度が50cm2/Vsを超える、さらに
好ましくはトランジスタ100Aの電界効果移動度が100cm2/Vsを超えることが
可能となる。
【0258】
例えば、上記の電界効果移動度が高いトランジスタを、表示装置が有するゲート信号を
生成するゲートドライバに用いることで、額縁幅の狭い(狭額縁ともいう)表示装置を提
供することができる。また、上記の電界効果移動度が高いトランジスタを、表示装置が有
する信号線からの信号の供給を行うソースドライバ(とくに、ソースドライバが有するシ
フトレジスタの出力端子に接続されるデマルチプレクサ)に用いることで、表示装置に接
続される配線数が少ない表示装置を提供することができる。
【0259】
また、金属酸化物108中に混入する水素または水分などの不純物は、トランジスタ特
性に影響を与えるため問題となる。したがって、金属酸化物108中のチャネル領域にお
いては、水素または水分などの不純物が少ないほど好ましい。また、金属酸化物108中
のチャネル領域に形成される酸素欠損は、トランジスタ特性に影響を与えるため問題とな
る。例えば、金属酸化物108のチャネル領域中に酸素欠損が形成されると、該酸素欠損
に水素が結合し、キャリア供給源となる。金属酸化物108のチャネル領域中にキャリア
供給源が生成されると、金属酸化物108を有するトランジスタ100Aの電気特性の変
動、代表的にはしきい値電圧のシフトが生じる。したがって、金属酸化物108のチャネ
ル領域においては、酸素欠損が少ないほど好ましい。
【0260】
また、導電膜112cと導電膜120aとは、開口部152bを介して電気的に接続さ
れ、導電膜112bと導電膜120bとは、開口部152aを介して電気的に接続される
。なお、導電膜120aと、導電膜120bとは、同じ導電膜を加工することで形成され
る。
【0261】
また、トランジスタ100Aの上には、絶縁膜118が設けられる。絶縁膜118は、
絶縁膜116、導電膜120a、及び導電膜120bを覆うように形成される。
【0262】
なお、トランジスタ100Aにおいて、絶縁膜104は、トランジスタ100Aの第1
のゲート絶縁膜としての機能を有し、絶縁膜114、116は、トランジスタ100Aの
第2のゲート絶縁膜としての機能を有し、絶縁膜118は、トランジスタ100Aの保護
絶縁膜としての機能を有する。
【0263】
また、トランジスタ100Aにおいて、導電膜106は、第1のゲート電極としての機
能を有し、導電膜120aは、第2のゲート電極としての機能を有し、導電膜120bは
、表示装置に用いる画素電極としての機能を有する。また、トランジスタ100Aにおい
て、導電膜112aは、ソース電極としての機能を有し、導電膜112bは、ドレイン電
極としての機能を有する。また、トランジスタ100Aにおいて、導電膜112cは接続
電極としての機能を有する。なお、本明細書等において、絶縁膜104を第1の絶縁膜と
、絶縁膜114、116を第2の絶縁膜と、絶縁膜118を第3の絶縁膜と、それぞれ呼
称する場合がある。
【0264】
また、
図12(C)に示すように、第2のゲート電極として機能する導電膜120aは
、接続電極として機能する導電膜112cを間に挟んで、第1のゲート電極として機能す
る導電膜106と電気的に接続される。よって、導電膜106と、導電膜120aとは、
同じ電位が与えられる。
【0265】
また、
図12(C)に示すように、金属酸化物108は、第1のゲート電極として機能
する導電膜106と、第2のゲート電極として機能する導電膜120aのそれぞれと対向
するように位置し、2つのゲート電極として機能する膜に挟まれている。導電膜120a
のチャネル長方向の長さ、及び導電膜120aのチャネル幅方向の長さは、金属酸化物1
08のチャネル長方向の長さ、及び金属酸化物108のチャネル幅方向の長さよりもそれ
ぞれ長く、金属酸化物108の全体は、絶縁膜114、116を介して導電膜120aに
覆われている。
【0266】
別言すると、トランジスタ100Aのチャネル幅方向において、第1のゲート電極とし
て機能する導電膜106及び第2のゲート電極として機能する導電膜120aは、第1の
ゲート絶縁膜として機能する絶縁膜104及び第2のゲート絶縁膜として機能する絶縁膜
114、116を介して金属酸化物108を囲む構成である。
【0267】
このような構成を有することで、トランジスタ100Aに含まれる金属酸化物108を
、第1のゲート電極として機能する導電膜106及び第2のゲート電極として機能する導
電膜120aの電界によって電気的に囲むことができる。トランジスタ100Aのように
、第1のゲート電極及び第2のゲート電極の電界によって、チャネル領域が形成される金
属酸化物を、電気的に囲むトランジスタのデバイス構造をSurrounded cha
nnel(S-channel)構造と呼ぶことができる。
【0268】
トランジスタ100Aは、S-channel構造を有するため、第1のゲート電極と
して機能する導電膜106によってチャネルを誘起させるための電界を効果的に金属酸化
物108に印加することができるため、トランジスタ100Aの電流駆動能力が向上し、
高いオン電流特性を得ることが可能となる。また、オン電流を高くすることが可能である
ため、トランジスタ100Aを微細化することが可能となる。また、トランジスタ100
Aは、金属酸化物108が第1のゲート電極として機能する導電膜106及び第2のゲー
ト電極として機能する導電膜120aによって囲まれた構造を有するため、トランジスタ
100Aの機械的強度を高めることができる。
【0269】
<2-2.半導体装置の構成例2>
次に、
図12(A)(B)(C)(D)に示すトランジスタ100Aの変形例について
、
図13乃至
図15を用いて説明する。
【0270】
まず、
図13(A)(B)(C)(D)を用いて説明を行う。
【0271】
図13(A)(B)(C)は、
図12(A)(B)(C)に示すトランジスタ100A
の変形例であるトランジスタ100Bの上面図及び断面図である。また、
図13(D)は
、
図13(B)に示す領域P2を拡大した断面概念図に相当する。
【0272】
図13(A)(B)(C)に示すトランジスタ100Bは、
図12(A)(B)(C)
に示すトランジスタ100Aが有する金属酸化物108を2層の積層構造としている。よ
り具体的には、トランジスタ100Bが有する金属酸化物108は、金属酸化物108_
2と、金属酸化物108_2上の金属酸化物108_3と、を有する。
【0273】
例えば、金属酸化物108が有する金属酸化物108_2に、本発明の一態様の金属酸
化物を用いることができる。
【0274】
また、
図13(D)の領域P2に示すように、金属酸化物108の上面及び側面と導電
膜112aが接するため、接触抵抗を低減できる。また、金属酸化物108が有する金属
酸化物108_2は、
図8に示すCAC構成を有するため、CAC構成が有する領域00
2、すなわち、導電性が高い領域と導電膜112aとが接するため、さらに接触抵抗を低
減できる。また、導電性の低い金属酸化物、例えば、ワイドバンドギャップ(例えば、E
gが3.3eV以上)の酸化物を金属酸化物108_3に用いたとしても、金属酸化物1
08_2の側面と、導電膜112aとが接することで接触抵抗を、低減することができる
。なお、図示していないが、金属酸化物108と、導電膜112bとの接続についても、
領域P2と同様である。
【0275】
次に、
図14(A)(B)(C)(D)を用いて説明を行う。
【0276】
図14(A)(B)(C)は、
図12(A)(B)(C)に示すトランジスタ100A
の変形例であるトランジスタ100Cの上面図及び断面図である。また、
図14(D)は
、
図14(B)に示す領域P3を拡大した断面概念図に相当する。
【0277】
図14(A)(B)(C)に示すトランジスタ100Cは、
図12(A)(B)(C)
に示すトランジスタ100Aが有する金属酸化物108を3層の積層構造としている。よ
り具体的には、トランジスタ100Cが有する金属酸化物108は、金属酸化物108_
1と、金属酸化物108_1上の金属酸化物108_2と、金属酸化物108_2上の金
属酸化物108_3と、を有する。
【0278】
例えば、金属酸化物108が有する金属酸化物108_2に、本発明の一態様の金属酸
化物を用いることができる。
【0279】
また、
図14(D)の領域P3に示すように、金属酸化物108の上面及び側面と導電
膜112aが接するため、接触抵抗を低減できる。また、金属酸化物108が有する金属
酸化物108_2は、
図8に示すCAC構成を有するため、CAC構成が有する領域00
2、すなわち、導電性が高い領域と導電膜112aとが接するため、さらに接触抵抗を低
減できる。また、導電性の低い金属酸化物、例えば、ワイドバンドギャップ(例えば、E
gが3.3eV以上)の酸化物を金属酸化物108_1及び金属酸化物108_3に用い
たとしても、金属酸化物108_2の側面と、導電膜112aとが接することで接触抵抗
を、低減することができる。なお、図示していないが、金属酸化物108と、導電膜11
2bとの接続についても、領域P3と同様である。
【0280】
次に、
図15(A)(B)(C)(D)を用いて説明を行う。
【0281】
図15(A)(B)(C)は、
図12(A)(B)(C)に示すトランジスタ100A
の変形例であるトランジスタ100Dの上面図及び断面図である。また、
図15(D)は
、
図15(B)に示す領域P4を拡大した断面概念図に相当する。
【0282】
図15(A)(B)(C)に示すトランジスタ100Dは、
図12(A)(B)(C)
に示すトランジスタ100Aが有する金属酸化物108を3層の積層構造としている。よ
り具体的には、トランジスタ100Dが有する金属酸化物108は、金属酸化物108_
1と、金属酸化物108_1上の金属酸化物108_2と、金属酸化物108_2上の金
属酸化物108_3と、を有する。
【0283】
例えば、金属酸化物108が有する金属酸化物108_2に、本発明の一態様の金属酸
化物を用いることができる。また、
図15(D)の領域P4に示すように、金属酸化物1
08の上面及び側面と導電膜112aが接するため、接触抵抗を低減できる。また、金属
酸化物108が有する金属酸化物108_2は、
図8に示すCAC構成を有するため、C
AC構成が有する領域002、すなわち、キャリア密度が高い領域と導電膜112aとが
接するため、さらに接触抵抗を低減できる。
【0284】
また、トランジスタ100Dは、トランジスタ100Cと金属酸化物108_3の配置
される位置が異なり、トランジスタ100Dが有する金属酸化物108_3は、ソース電
極及びドレイン電極として機能する導電膜112a、112bの上に形成される。金属酸
化物108_3を導電膜112a、112b上に配置することで、金属酸化物108_2
と、導電膜112a、112bとの接触抵抗をさらに、低減することができる。
【0285】
図13乃至
図15に示すように、本発明の一態様のトランジスタにおいては、金属酸化
物を積層構造とすると好適である。
【0286】
<2-3.バンド構造>
次に、金属酸化物108を積層構造とした場合のバンド構造について、
図23を用いて
説明する。
【0287】
絶縁膜104、金属酸化物108_1、108_2、108_3、及び絶縁膜114の
バンド構造、並びに、絶縁膜104、金属酸化物108_2、108_3、及び絶縁膜1
14のバンド構造を
図23に示す。
【0288】
図23(A)は、絶縁膜104、金属酸化物108_1、108_2、108_3、及
び絶縁膜114を有する積層構造の膜厚方向のバンド構造の一例である。また、
図23(
B)は、絶縁膜104、金属酸化物108_2、108_3、及び絶縁膜114を有する
積層構造の膜厚方向のバンド構造の一例である。なお、バンド構造は、理解を容易にする
ため絶縁膜104、金属酸化物108_1、108_2、108_3、及び絶縁膜114
の伝導帯下端のエネルギー準位(Ec)を示す。
【0289】
図23(A)に示すように、金属酸化物108_1、108_2、108_3において
、伝導帯下端のエネルギー準位はなだらかに変化する。また、
図23(B)に示すように
、金属酸化物108_2、108_3において、伝導帯下端のエネルギー準位はなだらか
に変化する。換言すると、連続的に変化または連続接合するともいうことができる。この
ようなバンド構造を有するためには、金属酸化物108_1と金属酸化物108_2との
界面、または金属酸化物108_2と金属酸化物108_3との界面において、トラップ
中心や再結合中心のような欠陥準位を形成するような不純物が存在しないとする。
【0290】
金属酸化物108_1、108_2、108_3に連続接合を形成するためには、ロー
ドロック室を備えたマルチチャンバー方式の成膜装置(スパッタリング装置)を用いて各
膜を大気に触れさせることなく連続して積層することが必要となる。
【0291】
図23(A)(B)に示す構成とすることで金属酸化物108_2がウェル(井戸)と
なり、上記積層構造を用いたトランジスタにおいて、チャネル領域が金属酸化物108_
2に形成されることがわかる。
【0292】
また、金属酸化物108_2には、本発明の一態様の金属酸化物を適用することができ
る。したがって、
図23においては、金属酸化物108_2のバンド構造をフラットな形
状として図示しているが、金属酸化物108_2のバンド構造は、実施の形態1で説明し
た
図10(A)(B)(C)に示すバンド構造となる場合がある。
【0293】
なお、金属酸化物108_1、108_3を設けることにより、金属酸化物108_2
に形成されうるトラップ準位を金属酸化物108_1または金属酸化物108_3に設け
ることができる。したがって、金属酸化物108_2には、トラップ準位が形成され難い
構造となる。
【0294】
また、トラップ準位がチャネル領域として機能する金属酸化物108_2の伝導帯下端
のエネルギー準位(Ec)より真空準位から遠くなることがあり、トラップ準位に電子が
蓄積しやすくなってしまう。トラップ準位に電子が蓄積されることで、マイナスの固定電
荷となり、トランジスタのしきい値電圧はプラス方向にシフトしてしまう。したがって、
トラップ準位が金属酸化物108_2の伝導帯下端のエネルギー準位(Ec)より真空準
位に近くなるような構成にすると好ましい。このようにすることで、トラップ準位に電子
が蓄積しにくくなり、トランジスタのオン電流を増大させることが可能であると共に、電
界効果移動度を高めることができる。
【0295】
また、金属酸化物108_1、108_3は、金属酸化物108_2よりも伝導帯下端
のエネルギー準位が真空準位に近く、代表的には、金属酸化物108_2の伝導帯下端の
エネルギー準位と、金属酸化物108_1、108_3の伝導帯下端のエネルギー準位と
の差が、0.15eV以上、または0.5eV以上、かつ2eV以下、または1eV以下
である。すなわち、金属酸化物108_1、108_3の電子親和力と、金属酸化物10
8_2の電子親和力との差が、0.15eV以上、または0.5eV以上、かつ2eV以
下、または1eV以下である。
【0296】
このような構成を有することで、金属酸化物108_2が主な電流経路となる。すなわ
ち、金属酸化物108_2は、チャネル領域としての機能を有し、金属酸化物108_1
、108_3は、酸化物絶縁膜としての機能を有する。また、金属酸化物108_1、1
08_3は、チャネル領域が形成される金属酸化物108_2を構成する金属元素の一種
以上から構成される金属酸化物を用いると好ましい。このような構成とすることで、金属
酸化物108_1と金属酸化物108_2との界面、または金属酸化物108_2と金属
酸化物108_3との界面において、界面散乱が起こりにくい。従って、該界面において
はキャリアの動きが阻害されないため、トランジスタの電界効果移動度が高くなる。
【0297】
また、金属酸化物108_1、及び金属酸化物108_3は、チャネル領域の一部とし
て機能することを防止するため、導電率が十分に低い材料を用いるものとする。そのため
、金属酸化物108_1、108_3を、その物性及び/または機能から、それぞれ酸化
物絶縁膜とも呼べる。または、金属酸化物108_1、108_3には、電子親和力(真
空準位と伝導帯下端のエネルギー準位との差)が金属酸化物108_2よりも小さく、伝
導帯下端のエネルギー準位が金属酸化物108_2の伝導帯下端のエネルギー準位と差分
(バンドオフセット)を有する材料を用いるものとする。また、ドレイン電圧の大きさに
依存したしきい値電圧の差が生じることを抑制するためには、金属酸化物108_1、1
08_3の伝導帯下端のエネルギー準位が、金属酸化物108_2の伝導帯下端のエネル
ギー準位よりも真空準位に近い材料を用いると好適である。例えば、金属酸化物108_
2の伝導帯下端のエネルギー準位と、金属酸化物108_1、及び金属酸化物108_3
の伝導帯下端のエネルギー準位との差が、0.2eV以上、好ましくは0.5eV以上と
することが好ましい。
【0298】
また、金属酸化物108_1、108_3は、膜中にスピネル型の結晶構造が含まれな
いことが好ましい。金属酸化物108_1、108_3の膜中にスピネル型の結晶構造を
含む場合、該スピネル型の結晶構造と他の領域との界面において、導電膜120a、12
0bの構成元素が金属酸化物108_2へ拡散してしまう場合がある。なお、金属酸化物
108_1、108_3がCAAC-OSである場合、導電膜120a、120bの構成
元素、例えば、銅元素のブロッキング性が高くなり好ましい。
【0299】
なお、金属酸化物108_1、108_3として、In:Ga:Zn=1:1:1[原
子数比]の金属酸化物ターゲット、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]の金属酸
化物ターゲット、In:Ga:Zn=1:3:6[原子数比]の金属酸化物ターゲットな
どを用いて形成することができる。
【0300】
<2-4.半導体装置の構成例3>
次に、先に説明したトランジスタと異なる態様の構成のトランジスタについて、
図16
を用いて説明する。
【0301】
図16(A)は、本発明の一態様の半導体装置であるトランジスタ200Aの上面図で
あり、
図16(B)は、
図16(A)に示す一点鎖線X1-X2間における切断面の断面
図に相当し、
図16(C)は、
図16(A)に示す一点鎖線Y1-Y2間における切断面
の断面図に相当する。また、
図16(D)は、
図16(B)に示す領域P5を拡大した断
面概念図に相当する。
【0302】
図16(A)(B)(C)に示すトランジスタ200Aは、所謂トップゲート構造のト
ランジスタである。
【0303】
トランジスタ200Aは、基板202上の導電膜206と、基板202及び導電膜20
6上の絶縁膜204と、絶縁膜204上の金属酸化物208と、金属酸化物208上の絶
縁膜210と、絶縁膜210上の導電膜212と、絶縁膜204、金属酸化物208、及
び導電膜212上の絶縁膜216と、を有する。
【0304】
また、金属酸化物208は、本発明の一態様の金属酸化物を用いると好ましい。
【0305】
なお、金属酸化物208は、導電膜212と重なり、且つ絶縁膜210と接する領域2
08iと、絶縁膜216と重なる領域208nと、を有する。また、領域208nは、領
域208iよりもキャリア密度が高い領域を有する。すなわち、金属酸化物208は、キ
ャリア密度の異なる複数の領域を有する。また、領域208nを、ソース領域またはドレ
イン領域と呼称することもできる。
【0306】
ここで、
図16(D)を用いて、領域208iと、領域208nとの接続について説明
を行う。
【0307】
図16(D)の領域P5に示すように、領域208iの側面と領域208nの側面とが
接するため、接触抵抗を低減できる。また、金属酸化物208が有する領域208iは、
図8に示すCAC構成を有するため、CAC構成が有する領域002、すなわち、導電性
が高い領域と領域208n、すなわちソース領域とが接するため、さらに接触抵抗を低減
できる。なお、図示していないが、領域208iの他方の側面と、領域208nの側面と
の接続についても領域P5と同様である。
【0308】
本発明の一態様の金属酸化物は、高い導電性領域を有し、且つソース領域またはドレイ
ン領域との接触抵抗が低減されている。したがって、当該金属酸化物を有するトランジス
タの電界効果移動度を高めることができる。
【0309】
また、領域208nは、絶縁膜216と接する。絶縁膜216は、窒素または水素を有
する。そのため、絶縁膜216中の窒素または水素が領域208n中に添加される。領域
208nは、絶縁膜216から窒素または水素が添加されることで、キャリア密度が高く
なる。
【0310】
また、トランジスタ200Aは、絶縁膜216上の絶縁膜218と、絶縁膜216、2
18に設けられた開口部241aを介して、領域208nに電気的に接続される導電膜2
20aと、絶縁膜216、218に設けられた開口部241bを介して、領域208nに
電気的に接続される導電膜220bと、を有していてもよい。
【0311】
また、
図16(C)に示すように、絶縁膜204及び絶縁膜210には、開口部243
が設けられる。また、導電膜206は、開口部243を介して導電膜212と、電気的に
接続される。よって、導電膜206と導電膜212には、同じ電位が与えられる。また、
開口部243を設けずに、導電膜206と、導電膜212と、に異なる電位を与えてもよ
い。
【0312】
なお、導電膜206は、第1のゲート電極(ボトムゲート電極ともいう)としての機能
を有し、導電膜212は、第2のゲート電極(トップゲート電極ともいう)としての機能
を有する。また、絶縁膜204は、第1のゲート絶縁膜としての機能を有し、絶縁膜21
0は、第2のゲート絶縁膜としての機能を有する。
【0313】
このように、
図16(A)(B)(C)に示すトランジスタ200Aは、金属酸化物2
08の上下にゲート電極として機能する導電膜を有する構造である。トランジスタ200
Aに示すように、本発明の一態様の半導体装置には、2つ以上のゲート電極を設けてもよ
い。
【0314】
また、
図16(C)に示すように、金属酸化物208は、第1のゲート電極として機能
する導電膜206と、第2のゲート電極として機能する導電膜212のそれぞれと対向す
るように位置し、2つのゲート電極として機能する導電膜に挟まれている。
【0315】
また、導電膜212のチャネル幅方向の長さは、金属酸化物208のチャネル幅方向の
長さよりも長く、金属酸化物208のチャネル幅方向全体は、絶縁膜210を介して導電
膜212に覆われている。また、導電膜212と導電膜206とは、絶縁膜204及び絶
縁膜210に設けられる開口部243において接続されるため、金属酸化物208のチャ
ネル幅方向の側面の一方は、絶縁膜210を介して導電膜212と対向している。
【0316】
別言すると、トランジスタ200Aのチャネル幅方向において、導電膜206及び導電
膜212は、絶縁膜204及び絶縁膜210に設けられる開口部243において接続する
と共に、絶縁膜204及び絶縁膜210を介して金属酸化物208を取り囲む構成である
。すなわち、トランジスタ200Aは、先に示すS-channel構造である。
【0317】
<2-5.半導体装置の構成例4>
次に、
図16(A)(B)(C)に示すトランジスタ200Aの変形例について、
図1
7乃至
図19を用いて説明する。
【0318】
まず、
図17(A)(B)(C)(D)を用いて説明を行う。
【0319】
図17(A)(B)(C)は、
図16(A)(B)(C)に示すトランジスタ200A
の変形例であるトランジスタ200Bの上面図及び断面図である。また、
図17(D)は
、
図17(B)に示す領域P6を拡大した断面概念図に相当する。
【0320】
図17(A)(B)(C)に示すトランジスタ200Bは、
図16(A)(B)(C)
に示すトランジスタ200Aが有する金属酸化物208を2層の積層構造としている。よ
り具体的には、トランジスタ200Bが有する金属酸化物208は、領域208i_1と
、領域208i_1上の領域208i_2と、絶縁膜216と重なる領域208nと、を
有する。
【0321】
例えば、金属酸化物208が有する領域208i_2に、本発明の一態様の金属酸化物
を用いることができる。
【0322】
図17(D)の領域P6に示すように、領域208i_2の側面と領域208nの側面
とが接するため、接触抵抗を低減できる。また、金属酸化物208が有する領域208i
_2は、
図8に示すCAC構成を有するため、CAC構成が有する領域002、すなわち
、導電性が高い領域と領域208n、すなわちソース領域とが接するため、さらに接触抵
抗を低減できる。なお、図示していないが、領域208i_2の他方の側面と、領域20
8nの側面との接続についても領域P6と同様である。
【0323】
次に、
図18(A)(B)(C)(D)を用いて説明を行う。
【0324】
図18(A)(B)(C)は、
図16(A)(B)(C)に示すトランジスタ200A
の変形例であるトランジスタ200Cの上面図及び断面図である。また、
図18(D)は
、
図18(B)に示す領域P7を拡大した断面概念図に相当する。
【0325】
図18(A)(B)(C)に示すトランジスタ200Cは、
図16(A)(B)(C)
に示すトランジスタ200Aが有する金属酸化物208を3層の積層構造としている。よ
り具体的には、トランジスタ200Cが有する金属酸化物208は、領域208i_1と
、領域208i_1上の領域208i_2と、領域208i_2上の領域208i_3と
、絶縁膜216と重なる領域208nと、を有する。
【0326】
例えば、金属酸化物208が有する領域208i_2に、本発明の一態様の金属酸化物
を用いることができる。
【0327】
図18(D)の領域P7に示すように、領域208i_2の側面と領域208nの側面
とが接するため、接触抵抗を低減できる。また、金属酸化物208が有する領域208i
_2は、
図8に示すCAC構成を有するため、CAC構成が有する領域002、すなわち
、導電性が高い領域と領域208n、すなわちソース領域とが接するため、さらに接触抵
抗を低減できる。なお、図示していないが、領域208i_2の他方の側面と、領域20
8nの側面との接続についても領域P7と同様である。
【0328】
次に、
図19(A)(B)(C)(D)を用いて説明を行う。
【0329】
図19(A)(B)(C)は、
図16(A)(B)(C)に示すトランジスタ200A
の変形例であるトランジスタ200Dの上面図及び断面図である。また、
図19(D)は
、
図19(B)に示す領域P8を拡大した断面概念図に相当する。
【0330】
図19(A)(B)(C)に示すトランジスタ200Dは、
図16(A)(B)(C)
に示すトランジスタ200Aが有する金属酸化物208を3層の積層構造としている。よ
り具体的には、トランジスタ200Dが有する金属酸化物208は、領域208i_1と
、領域208i_1上の領域208i_2と、領域208i_2上の領域208i_3と
、絶縁膜216と重なる領域208nと、を有する。
【0331】
例えば、金属酸化物208が有する領域208i_2に、本発明の一態様の金属酸化物
を用いることができる。なお、領域P8に示すように、領域208i_2の側面と領域2
08nの側面とが接するため、接触抵抗を低減できる。また、金属酸化物208が有する
領域208i_2は、
図8に示すCAC構成を有するため、CAC構成が有する領域00
2、すなわち、キャリア密度が高い領域と領域208n、すなわちソース領域とが接する
ため、さらに接触抵抗を低減できる。なお、図示していないが、領域208i_2の他方
の側面と、領域208nの側面との接続についても領域P8と同様である。
【0332】
なお、トランジスタ200Dが有する金属酸化物208は、トランジスタ200Cが有
する金属酸化物208と、領域208i_3の形状が異なる。具体的には、トランジスタ
200Dが有する金属酸化物208は、領域208i_1の側面、及び領域208i_2
の側面を領域208i_3によって、覆う形状である。当該形状とすることで、領域20
8i_1の側面及び領域208i_2の側面と、絶縁膜210とが接しない構造となる。
当該構造とすることで、領域208i_1及び領域208i_2中、特に領域208i_
2中に入り込みうる不純物を抑制することができるため、信頼性の高い半導体装置を提供
することができる。
【0333】
図17乃至
図19に示すように、本発明の一態様のトランジスタにおいては、金属酸化
物を積層構造とすると好適である。なお、金属酸化物を積層構造とした場合のバンド構造
については、<2-3.バンド構造>を参照すればよい。
【0334】
<2-6.半導体装置の構成要素>
以下では、本実施の形態の半導体装置に含まれる構成要素について、詳細に説明する。
【0335】
[基板]
基板102、202の材質などに大きな制限はないが、少なくとも、後の熱処理に耐え
うる程度の耐熱性を有している必要がある。例えば、ガラス基板、セラミック基板、石英
基板、サファイア基板等を、基板102、202として用いてもよい。また、シリコンや
炭化シリコンを材料とした単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウム
等の化合物半導体基板、SOI基板等を適用することも可能であり、これらの基板上に半
導体素子が設けられたものを、基板102、202として用いてもよい。なお、基板10
2、202として、ガラス基板を用いる場合、第6世代(1500mm×1850mm)
、第7世代(1870mm×2200mm)、第8世代(2200mm×2400mm)
、第9世代(2400mm×2800mm)、第10世代(2950mm×3400mm
)等の大面積基板を用いることで、大型の表示装置を作製することができる。
【0336】
また、基板102、202として、可撓性基板を用い、可撓性基板上に直接、トランジ
スタを形成してもよい。または、基板102、202とトランジスタの間に剥離層を設け
てもよい。剥離層は、その上に半導体装置を一部あるいは全部完成させた後、基板102
、202より分離し、他の基板に転載するのに用いることができる。その際、トランジス
タは耐熱性の劣る基板や可撓性の基板にも転載できる。
【0337】
[導電膜]
第1のゲート電極として機能する導電膜106、206、ソース電極として機能する導
電膜112a、220a、ドレイン電極として機能する導電膜112b、220b、接続
電極として機能する導電膜112c、第2のゲート電極として機能する導電膜120a、
212、及び画素電極として機能する導電膜120bとしては、クロム(Cr)、銅(C
u)、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、モリブデン(M
o)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、ニ
ッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト(Co)から選ばれた金属元素、または上述した
金属元素を成分とする合金か、上述した金属元素を組み合わせた合金等を用いてそれぞれ
形成することができる。
【0338】
また、導電膜106、112a、112b、112c、120a、120b、206、
220a、220b、212には、インジウムと錫とを有する酸化物、タングステンとイ
ンジウムとを有する酸化物、タングステンとインジウムと亜鉛とを有する酸化物、チタン
とインジウムとを有する酸化物、チタンとインジウムと錫とを有する酸化物、インジウム
と亜鉛とを有する酸化物、シリコンとインジウムと錫とを有する酸化物、インジウムとガ
リウムと亜鉛とを有する酸化物等の酸化物導電体を適用してもよい。
【0339】
特に、導電膜120a、212には、上述の酸化物導電体を好適に用いることができる
。なお、本明細書等において、酸化物導電体をOC(Oxide Conductor)
と呼称してもよい。酸化物導電体としては、例えば、酸化物半導体に酸素欠損を形成し、
該酸素欠損に水素を添加すると、伝導帯近傍にドナー準位が形成される。この結果、酸化
物半導体は、導電性が高くなり導電体化する。導電体化された酸化物半導体を、酸化物導
電体ということができる。一般に、酸化物半導体は、エネルギーギャップが大きいため、
可視光に対して透光性を有する。一方、酸化物導電体は、伝導帯近傍にドナー準位を有す
る酸化物半導体である。したがって、酸化物導電体は、ドナー準位による吸収の影響は小
さく、可視光に対して酸化物半導体と同程度の透光性を有する。
【0340】
また、導電膜106、112a、112b、112c、120a、120b、206、
220a、220b、212には、Cu-X合金膜(Xは、Mn、Ni、Cr、Fe、C
o、Mo、Ta、またはTi)を適用してもよい。Cu-X合金膜を用いることで、ウエ
ットエッチングプロセスで加工できるため、製造コストを抑制することが可能となる。
【0341】
特に、導電膜112a、112b、220a、220bには、上述のCu-X合金膜を
好適に用いることができる。Cu-X合金膜としては、Cu-Mn合金膜が特に好ましい
。
【0342】
[第1のゲート絶縁膜として機能する絶縁膜]
トランジスタの第1のゲート絶縁膜として機能する絶縁膜104、204としては、プ
ラズマ化学気相堆積(PECVD:(Plasma Enhanced Chemica
l Vapor Deposition))法、スパッタリング法等により、酸化シリコ
ン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜
、酸化ハフニウム膜、酸化イットリウム膜、酸化ジルコニウム膜、酸化ガリウム膜、酸化
タンタル膜、酸化マグネシウム膜、酸化ランタン膜、酸化セリウム膜および酸化ネオジム
膜を一種以上含む絶縁層を、それぞれ用いることができる。なお、絶縁膜104、204
としては、上述の材料から選択された単層の絶縁膜、または2層以上の絶縁膜を用いても
よい。
【0343】
なお、トランジスタのチャネル領域として機能する金属酸化物108、208と接する
絶縁膜には、酸化物絶縁膜を用いることが好ましく、化学量論的組成よりも過剰に酸素を
含有する領域(酸素過剰領域)を有することがより好ましい。
【0344】
ただし、上記構成に限定されず、金属酸化物108、208と接する絶縁膜に、窒化物
絶縁膜を用いる構成としてもよい。当該構成の一例としては、窒化シリコン膜を形成し、
当該窒化シリコン膜の表面に酸素プラズマ処理などを行うことで、窒化シリコン膜の表面
を酸化させる構成などが挙げられる。なお、窒化シリコン膜の表面に酸素プラズマ処理な
どを行った場合、窒化シリコン膜の表面は原子レベルで酸化されている場合があるため、
トランジスタの断面の観察等を行っても、酸化膜が観察されない可能性がある。すなわち
、トランジスタの断面の観察を行った場合、窒化シリコン膜と、金属酸化物とが、接して
いるように観察される場合がある。
【0345】
なお、窒化シリコン膜は、酸化シリコン膜と比較して比誘電率が高く、酸化シリコン膜
と同等の静電容量を得るのに必要な膜厚が大きいため、トランジスタのゲート絶縁膜とし
て、窒化シリコン膜を含むことで絶縁膜を厚膜化することができる。よって、トランジス
タの絶縁耐圧の低下を抑制、さらには絶縁耐圧を向上させて、トランジスタの静電破壊を
抑制することができる。
【0346】
また、絶縁膜104、204として、酸化ハフニウムを用いる場合、以下の効果を奏す
る。酸化ハフニウムは、酸化シリコンや酸化窒化シリコンと比べて比誘電率が高い。した
がって、酸化シリコンを用いた場合と比べて、絶縁膜104、204の膜厚を大きくでき
るため、トンネル電流によるリーク電流を小さくすることができる。すなわち、オフ電流
の小さいトランジスタを実現することができる。さらに、結晶構造を有する酸化ハフニウ
ムは、非晶質構造を有する酸化ハフニウムと比べて高い比誘電率を備える。したがって、
オフ電流の小さいトランジスタとするためには、結晶構造を有する酸化ハフニウムを用い
ることが好ましい。結晶構造の例としては、単斜晶系や立方晶系などが挙げられる。ただ
し、本発明の一態様は、これらに限定されない。
【0347】
[金属酸化物]
金属酸化物108、208としては、実施の形態1に示す本発明の一態様の金属酸化物
を用いることができる。
【0348】
また、金属酸化物108、208は、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2
.5eV以上、より好ましくは3eV以上である。このように、エネルギーギャップの広
い金属酸化物を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができる。
【0349】
また、金属酸化物108、208の厚さは、3nm以上200nm以下、好ましくは3
nm以上100nm以下、さらに好ましくは3nm以上50nm以下である。
【0350】
なお、必要とするトランジスタの半導体特性を得るために、金属酸化物108、208
のキャリア密度や不純物濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比、密度等を適切なも
のとすることが好ましい。
【0351】
[第2のゲート絶縁膜として機能する絶縁膜]
絶縁膜114、116、210は、トランジスタの第2のゲート絶縁膜として機能する
。また、絶縁膜114、116、210は、金属酸化物108、208に酸素を供給する
機能を有する。すなわち、絶縁膜114、116、210は、酸素を有する。また、絶縁
膜114は、酸素を透過することのできる絶縁膜である。なお、絶縁膜114は、後に形
成する絶縁膜116を形成する際の、金属酸化物108へのダメージ緩和膜としても機能
する。
【0352】
絶縁膜114としては、厚さが5nm以上150nm以下、好ましくは5nm以上50
nm以下の酸化シリコン、酸化窒化シリコン等を用いることができる。
【0353】
また、絶縁膜114は、欠陥量が少ないことが好ましく、代表的には、電子スピン共鳴
(ESR)測定により、シリコンのダングリングボンドに由来するg=2.001に現れ
る信号のスピン密度が3×1017spins/cm3以下であることが好ましい。これ
は、絶縁膜114に含まれる欠陥密度が多いと、該欠陥に酸素が結合してしまい、絶縁膜
114における酸素の透過量が減少してしまうためである。
【0354】
なお、絶縁膜114においては、外部から絶縁膜114に入った酸素が全て絶縁膜11
4の外部に移動せず、絶縁膜114にとどまる酸素もある。また、絶縁膜114に酸素が
入ると共に、絶縁膜114に含まれる酸素が絶縁膜114の外部へ移動することで、絶縁
膜114において酸素の移動が生じる場合もある。絶縁膜114として酸素を透過するこ
とができる酸化物絶縁膜を形成すると、絶縁膜114上に設けられる、絶縁膜116から
脱離する酸素を、絶縁膜114を介して金属酸化物108に移動させることができる。
【0355】
また、絶縁膜114は、窒素酸化物に起因する準位密度が低い酸化物絶縁膜を用いて形
成することができる。なお、当該窒素酸化物に起因する準位密度は、金属酸化物の価電子
帯の上端のエネルギー(Ev_os)と金属酸化物の伝導帯の下端のエネルギー(Ec_
os)の間に形成され得る場合がある。上記酸化物絶縁膜として、窒素酸化物の放出量が
少ない酸化窒化シリコン膜、または窒素酸化物の放出量が少ない酸化窒化アルミニウム膜
等を用いることができる。
【0356】
なお、窒素酸化物の放出量の少ない酸化窒化シリコン膜は、昇温脱離ガス分析法(TD
S:Thermal Desorption Spectroscopy)において、窒
素酸化物の放出量よりアンモニアの放出量が多い膜であり、代表的にはアンモニアの放出
量が1×1018cm-3以上5×1019cm-3以下である。なお、アンモニアの放
出量は、膜の表面温度が50℃以上650℃以下、好ましくは50℃以上550℃以下の
加熱処理による放出量とする。
【0357】
窒素酸化物(NOx、xは0を越えて2以下、好ましくは1以上2以下)、代表的には
NO2またはNOは、絶縁膜114などに準位を形成する。当該準位は、金属酸化物10
8のエネルギーギャップ内に位置する。そのため、窒素酸化物が、絶縁膜114及び金属
酸化物108の界面に拡散すると、当該準位が絶縁膜114側において電子をトラップす
る場合がある。この結果、トラップされた電子が、絶縁膜114及び金属酸化物108界
面近傍に留まるため、トランジスタのしきい値電圧をプラス方向にシフトさせてしまう。
【0358】
また、窒素酸化物は、加熱処理においてアンモニア及び酸素と反応する。絶縁膜114
に含まれる窒素酸化物は、加熱処理において、絶縁膜116に含まれるアンモニアと反応
するため、絶縁膜114に含まれる窒素酸化物が低減される。このため、絶縁膜114及
び金属酸化物108の界面において、電子がトラップされにくい。
【0359】
絶縁膜114として、上記酸化物絶縁膜を用いることで、トランジスタのしきい値電圧
のシフトを低減することが可能であり、トランジスタの電気特性の変動を低減することが
できる。
【0360】
なお、トランジスタの作製工程の加熱処理、代表的には300℃以上350℃未満の加
熱処理により、絶縁膜114は、100K以下のESRで測定して得られたスペクトルに
おいてg値が2.037以上2.039以下の第1のシグナル、g値が2.001以上2
.003以下の第2のシグナル、及びg値が1.964以上1.966以下の第3のシグ
ナルが観測される。なお、第1のシグナル及び第2のシグナルのスプリット幅、並びに第
2のシグナル及び第3のシグナルのスプリット幅は、XバンドのESR測定において約5
mTである。また、g値が2.037以上2.039以下の第1のシグナル、g値が2.
001以上2.003以下の第2のシグナル、及びg値が1.964以上1.966以下
である第3のシグナルのスピンの密度の合計が1×1018spins/cm3未満であ
り、代表的には1×1017spins/cm3以上1×1018spins/cm3未
満である。
【0361】
なお、100K以下のESRスペクトルにおいて、g値が2.037以上2.039以
下の第1のシグナル、g値が2.001以上2.003以下の第2のシグナル、及びg値
が1.964以上1.966以下である第3のシグナルのスピンの密度の合計は、窒素酸
化物(NOx、xは0より大きく2以下、好ましくは1以上2以下)起因のシグナルのス
ピンの密度の合計に相当する。窒素酸化物の代表例としては、一酸化窒素、二酸化窒素等
がある。即ち、g値が2.037以上2.039以下の第1のシグナル、g値が2.00
1以上2.003以下の第2のシグナル、及びg値が1.964以上1.966以下であ
る第3のシグナルのスピンの密度の合計が少ないほど、酸化物絶縁膜に含まれる窒素酸化
物の含有量が少ないといえる。
【0362】
また、上記酸化物絶縁膜は、SIMSで測定される窒素濃度が6×1020atoms
/cm3以下である。
【0363】
基板温度が220℃以上350℃以下であり、シラン及び一酸化二窒素を用いたPEC
VD法を用いて、上記酸化物絶縁膜を形成することで、緻密であり、且つ硬度の高い膜を
形成することができる。
【0364】
絶縁膜116、210は、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物
絶縁膜を用いて形成すると好適である。化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を
含む酸化物絶縁膜は、加熱により酸素の一部が脱離する。化学量論的組成を満たす酸素よ
りも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜は、TDS分析にて、酸素原子に換算しての酸素の脱
離量が1.0×1019atoms/cm3以上、好ましくは3.0×1020atom
s/cm3以上である酸化物絶縁膜である。なお、上記TDSにおける膜の表面温度とし
ては100℃以上700℃以下、または100℃以上500℃以下の範囲が好ましい。
【0365】
絶縁膜116、210としては、厚さが30nm以上500nm以下、好ましくは50
nm以上400nm以下の、酸化シリコン、酸化窒化シリコン等を用いることができる。
【0366】
また、絶縁膜116、210は、欠陥量が少ないことが好ましく、代表的には、ESR
測定により、シリコンのダングリングボンドに由来するg=2.001に現れる信号のス
ピン密度が1.5×1018spins/cm3未満、さらには1×1018spins
/cm3以下であることが好ましい。なお、絶縁膜116は、絶縁膜114と比較して金
属酸化物108から離れているため、絶縁膜114より、欠陥密度が多くともよい。
【0367】
また、絶縁膜114、116は、同種の材料の絶縁膜を用いることができるため、絶縁
膜114と絶縁膜116の界面が明確に確認できない場合がある。したがって、本実施の
形態においては、絶縁膜114と絶縁膜116の界面は、破線で図示している。なお、本
実施の形態においては、絶縁膜114と絶縁膜116の2層構造について説明したが、こ
れに限定されず、例えば、絶縁膜114の単層構造、あるいは3層以上の積層構造として
もよい。
【0368】
[保護絶縁膜として機能する絶縁膜]
絶縁膜118、216は、トランジスタの保護絶縁膜として機能する。
【0369】
絶縁膜118、216は、水素及び窒素のいずれか一方または双方を有する。または、
絶縁膜118、216は、窒素及びシリコンを有する。また、絶縁膜118、216は、
酸素、水素、水、アルカリ金属、アルカリ土類金属等のブロッキングできる機能を有する
。絶縁膜118、216を設けることで、金属酸化物108、208からの酸素の外部へ
の拡散と、絶縁膜114、116、210に含まれる酸素の外部への拡散と、外部から金
属酸化物108、208への水素、水等の入り込みを防ぐことができる。
【0370】
絶縁膜118、216としては、例えば、窒化物絶縁膜を用いることができる。該窒化
物絶縁膜としては、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化アルミニウム、窒化酸化アル
ミニウム等がある。
【0371】
なお、上記記載の、導電膜、絶縁膜、金属酸化物、金属膜などの様々な膜は、スパッタ
リング法やPECVD法により形成することができるが、他の方法、例えば、熱CVD(
Chemical Vapor Deposition)法により形成してもよい。熱C
VD法の例としてMOCVD(Metal Organic Chemical Vap
or Deposition)法、またはALD(Atomic Layer Depo
sition)法などが挙げられる。
【0372】
熱CVD法は、プラズマを使わない成膜方法のため、プラズマダメージにより欠陥が生
成されることが無いという利点を有する。
【0373】
熱CVD法は、原料ガスと酸化剤を同時にチャンバー内に送り、チャンバー内を大気圧
または減圧下とし、基板近傍または基板上で反応させて基板上に堆積させることで成膜を
行ってもよい。
【0374】
また、ALD法は、チャンバー内を大気圧または減圧下とし、反応のための原料ガスが
順次チャンバーに導入され、そのガス導入の順序を繰り返すことで成膜を行ってもよい。
【0375】
MOCVD法、ALD法などの熱CVD法は、上記実施形態の導電膜、絶縁膜、金属酸
化物などの様々な膜を形成することができる。
【0376】
<2-7.半導体装置の作製方法>
次に、本発明の一態様の半導体装置であるトランジスタ200Cの作製方法について、
図20乃至
図22を用いて説明する。
【0377】
【0378】
まず、基板202上に導電膜206を形成する。次に、基板202、及び導電膜206
上に絶縁膜204を形成し、絶縁膜204上に第1の金属酸化物と、第2の金属酸化物と
、第3の金属酸化物とを形成する。その後、第1の金属酸化物、第2の金属酸化物、及び
第3の金属酸化物を島状に加工することで、金属酸化物208_1a、金属酸化物208
_2a、及び金属酸化物208_3aを形成する(
図20(A)参照)。
【0379】
導電膜206としては、先に記載の材料を選択することで形成できる。本実施の形態に
おいては、導電膜206として、スパッタリング装置を用い、厚さ50nmのタングステ
ン膜と、厚さ400nmの銅膜との積層膜を形成する。
【0380】
なお、導電膜206となる導電膜の加工方法としては、ウエットエッチング法及びドラ
イエッチング法のいずれか一方または双方を用いればよい。本実施の形態では、ウエット
エッチング法にて銅膜をエッチングしたのち、ドライエッチング法にてタングステン膜を
エッチングすることで導電膜を加工し、導電膜206を形成する。
【0381】
絶縁膜204としては、スパッタリング法、CVD法、蒸着法、パルスレーザー堆積(
PLD)法、印刷法、塗布法等を適宜用いて形成することができる。本実施の形態におい
ては、絶縁膜204として、PECVD装置を用い、厚さ400nmの窒化シリコン膜と
、厚さ50nmの酸化窒化シリコン膜とを形成する。
【0382】
また、絶縁膜204を形成した後、絶縁膜204に酸素を添加してもよい。絶縁膜20
4に添加する酸素としては、酸素ラジカル、酸素原子、酸素原子イオン、酸素分子イオン
等がある。また、添加方法としては、イオンドーピング法、イオン注入法、プラズマ処理
法等がある。また、絶縁膜204上に酸素の脱離を抑制する膜を形成した後、該膜を介し
て絶縁膜204に酸素を添加してもよい。
【0383】
上述の酸素の脱離を抑制する膜として、インジウム、亜鉛、ガリウム、錫、アルミニウ
ム、クロム、タンタル、チタン、モリブデン、ニッケル、鉄、コバルト、またはタングス
テンの1以上を有する導電膜あるいは半導体膜を用いて形成することができる。
【0384】
また、プラズマ処理で酸素の添加を行う場合、マイクロ波で酸素を励起し、高密度な酸
素プラズマを発生させることで、絶縁膜204への酸素添加量を増加させることができる
。
【0385】
金属酸化物208_1a、金属酸化物208_2a、及び金属酸化物208_3aは、
スパッタリング装置を用いて真空中で連続して形成されると好ましい。金属酸化物208
_1a、金属酸化物208_2a、及び金属酸化物208_3aを、スパッタリング装置
を用いて真空中で連続して形成することで、各界面に付着しうる不純物(例えば、水素、
水など)を抑制することができる。
【0386】
ここで、金属酸化物208_2aとなる膜の成膜は、上記のスパッタリングターゲット
10を用いた成膜方法で成膜を行えばよい。
【0387】
また、金属酸化物208_2aの形成条件としては、金属酸化物208_1a及び金属
酸化物208_3aのいずれか一方または双方よりも、低い酸素分圧で形成されると好ま
しい。
【0388】
また、金属酸化物208_1a、金属酸化物208_2a、及び金属酸化物208_3
aを形成する際に、酸素ガスに、不活性ガス(例えば、ヘリウムガス、アルゴンガス、キ
セノンガスなど)を混合させてもよい。なお、金属酸化物208_1aを形成する際の成
膜ガス全体に占める酸素ガスの割合(以下、酸素流量比ともいう)としては、70%以上
100%以下、好ましくは80%以上100%以下、さらに好ましくは90%以上100
%以下である。また、金属酸化物208_2aを形成する際の酸素流量比としては、0%
より大きく30%以下、好ましくは5%以上15%以下である。また、金属酸化物208
_3aを形成する際の酸素流量比としては、70%以上100%以下、好ましくは80%
以上100%以下、さらに好ましくは90%以上100%以下である。
【0389】
なお、金属酸化物208_2aの形成条件としては、金属酸化物208_1a及び金属
酸化物208_3aのいずれか一方または双方よりも、低い基板温度で形成してもよい。
【0390】
具体的には、金属酸化物208_2aの形成条件としては、基板温度を室温以上150
℃未満、好ましくは室温以上140℃以下とすればよい。また、金属酸化物208_1a
及び金属酸化物208_3aの形成条件としては、基板温度を室温以上300℃以下、好
ましくは基板温度を室温以上200℃以下とすればよい。ただし、金属酸化物208_1
a、金属酸化物208_2a、及び金属酸化物208_3aの形成時の基板温度を同一(
例えば、室温以上150℃未満)とした方が、生産性が高くなり好ましい。
【0391】
上記のような形成条件とすることで、金属酸化物208_2aを、金属酸化物208_
1a及び金属酸化物208_3aよりも結晶性が低い領域を有する構成とすることができ
る。
【0392】
また、金属酸化物208_1aの厚さとしては、1nm以上20nm未満、好ましくは
5nm以上10nm以下とすればよい。また、金属酸化物208_2aの厚さとしては、
20nm以上100nm以下、好ましくは20nm以上50nm以下とすればよい。また
、金属酸化物208_3aの厚さとしては、1nm以上20nm未満、好ましくは5nm
以上15nm以下とすればよい。
【0393】
なお、金属酸化物208を加熱して成膜することで、金属酸化物208の結晶性を高め
ることができる。一方で、基板202として、大型のガラス基板(例えば、第6世代乃至
第10世代)を用いる場合、金属酸化物208を成膜する際の基板温度を200℃以上3
00℃以下とした場合、基板202が変形する(歪むまたは反る)場合がある。よって、
大型のガラス基板を用いる場合においては、金属酸化物208の成膜する際の基板温度を
100℃以上200℃未満とすることで、ガラス基板の変形を抑制することができる。
【0394】
また、スパッタリングガスの高純度化も必要である。例えば、スパッタリングガスとし
て用いる酸素ガスやアルゴンガスは、露点が-40℃以下、好ましくは-80℃以下、よ
り好ましくは-100℃以下、より好ましくは-120℃以下にまで高純度化したガスを
用いることで金属酸化物に水分等が取り込まれることを可能な限り防ぐことができる。
【0395】
また、スパッタリング法で金属酸化物を成膜する場合、スパッタリング装置におけるチ
ャンバーは、金属酸化物にとって不純物となる水等を可能な限り除去すべくクライオポン
プのような吸着式の真空排気ポンプを用いて、高真空(5×10-7Paから1×10-
4Pa程度まで)に排気することが好ましい。特に、スパッタリング装置の待機時におけ
る、チャンバー内のH2Oに相当するガス分子(m/z=18に相当するガス分子)の分
圧を1×10-4Pa以下、好ましく5×10-5Pa以下とすることが好ましい。
【0396】
なお、第1の金属酸化物、第2の金属酸化物、及び第3の金属酸化物を、金属酸化物2
08_1a、金属酸化物208_2a、及び金属酸化物208_3aに加工するには、ウ
エットエッチング法及びドライエッチング法のいずれか一方または双方を用いればよい。
【0397】
また、金属酸化物208_1a、金属酸化物208_2a、及び金属酸化物208_3
aを形成した後、加熱処理を行い、金属酸化物208_1a、金属酸化物208_2a、
及び金属酸化物208_3aの脱水素化または脱水化をしてもよい。加熱処理の温度は、
代表的には、150℃以上基板の歪み点未満、または250℃以上450℃以下、または
300℃以上450℃以下である。
【0398】
加熱処理は、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノン、クリプトン等の希ガス、または
窒素を含む不活性ガス雰囲気で行うことができる。または、不活性ガス雰囲気で加熱した
後、酸素雰囲気で加熱してもよい。なお、上記不活性雰囲気及び酸素雰囲気に水素、水な
どが含まれないことが好ましい。処理時間は3分以上24時間以下とすればよい。
【0399】
該加熱処理は、電気炉、RTA装置等を用いることができる。RTA装置を用いること
で、短時間に限り、基板の歪み点以上の温度で熱処理を行うことができる。そのため加熱
処理時間を短縮することができる。
【0400】
金属酸化物を加熱しながら成膜する、または金属酸化物を形成した後、加熱処理を行う
ことで、金属酸化物において、SIMSにより得られる水素濃度を5×1019atom
s/cm3以下、または1×1019atoms/cm3以下、5×1018atoms
/cm3以下、または1×1018atoms/cm3以下、または5×1017ato
ms/cm3以下、または1×1016atoms/cm3以下とすることができる。
【0401】
次に、絶縁膜204及び金属酸化物208上に絶縁膜210_0を形成する。(
図20
(B)参照)。
【0402】
絶縁膜210_0としては、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、または窒化シリコ
ン膜を、プラズマ化学気相堆積装置(PECVD装置、または単にプラズマCVD装置と
いう)を用いて形成することができる。この場合、原料ガスとしては、シリコンを含む堆
積性気体及び酸化性気体を用いることが好ましい。シリコンを含む堆積性気体の代表例と
しては、シラン、ジシラン、トリシラン、フッ化シラン等がある。酸化性気体としては、
酸素、オゾン、一酸化二窒素、二酸化窒素等がある。
【0403】
また、絶縁膜210_0として、堆積性気体の流量に対する酸化性気体の流量を20倍
より大きく100倍未満、または40倍以上80倍以下とし、処理室内の圧力を100P
a未満、または50Pa以下とするPECVD装置を用いることで、欠陥量の少ない酸化
窒化シリコン膜を形成することができる。
【0404】
また、絶縁膜210_0として、PECVD装置の真空排気された処理室内に載置され
た基板を280℃以上400℃以下に保持し、処理室に原料ガスを導入して処理室内にお
ける圧力を20Pa以上250Pa以下、さらに好ましくは100Pa以上250Pa以
下とし、処理室内に設けられる電極に高周波電力を供給する条件により、緻密である酸化
シリコン膜または酸化窒化シリコン膜を形成することができる。
【0405】
また、絶縁膜210_0を、マイクロ波を用いたPECVD法を用いて形成してもよい
。マイクロ波とは300MHzから300GHzの周波数域を指す。マイクロ波は、電子
温度が低く、電子エネルギーが小さい。また、供給された電力において、電子の加速に用
いられる割合が少なく、より多くの分子の解離及び電離に用いられることが可能であり、
密度の高いプラズマ(高密度プラズマ)を励起することができる。このため、被成膜面及
び堆積物へのプラズマダメージが少なく、欠陥の少ない絶縁膜210_0を形成すること
ができる。
【0406】
本実施の形態では絶縁膜210_0として、PECVD装置を用い、厚さ100nmの
酸化窒化シリコン膜を形成する。
【0407】
次に、絶縁膜210_0上の所望の位置に、リソグラフィによりマスクを形成した後、
絶縁膜210_0、及び絶縁膜204の一部をエッチングすることで、導電膜206に達
する開口部243を形成する(
図20(C)参照)。
【0408】
開口部243の形成方法としては、ウエットエッチング法及びドライエッチング法のい
ずれか一方または双方を用いればよい。本実施の形態においては、ドライエッチング法を
用い、開口部243を形成する。
【0409】
次に、開口部243を覆うように、導電膜206及び絶縁膜210_0上に導電膜21
2_0を形成する。また、導電膜212_0として、例えば金属酸化膜を用いる場合、導
電膜212_0の形成時に絶縁膜210_0中に酸素が添加される場合がある(
図20(
D)参照)。
【0410】
なお、
図20(D)において、絶縁膜210_0中に添加される酸素を矢印で模式的に
表している。また、開口部243を覆うように、導電膜212_0を形成することで、導
電膜206と、導電膜212_0とが電気的に接続される。
【0411】
導電膜212_0として、金属酸化膜を用いる場合、導電膜212_0の形成方法とし
ては、スパッタリング法を用い、形成時に酸素ガスを含む雰囲気で形成することが好まし
い。形成時に酸素ガスを含む雰囲気で導電膜212_0を形成することで、絶縁膜210
_0中に酸素を好適に添加することができる。なお、導電膜212_0の形成方法として
は、スパッタリング法に限定されず、その他の方法、例えばALD法を用いてもよい。
【0412】
本実施の形態においては、導電膜212_0として、スパッタリング法を用いて、膜厚
が100nmのIn-Ga-Zn酸化物(In:Ga:Zn=4:2:4.1(原子数比
))を成膜する。また、導電膜212_0の形成前、または導電膜212_0の形成後に
、絶縁膜210_0中に酸素添加処理を行ってもよい。当該酸素添加処理の方法としては
、絶縁膜204の形成後に行うことのできる酸素の添加処理と同様とすればよい。
【0413】
次に、導電膜212_0上の所望の位置に、リソグラフィ工程によりマスク240を形
成する(
図21(A)参照)。
【0414】
次に、マスク240上から、エッチングを行い、導電膜212_0、及び絶縁膜210
_0を加工する。また、導電膜212_0及び絶縁膜210_0の加工後に、マスク24
0を除去する。導電膜212_0、及び絶縁膜210_0を加工することで、島状の導電
膜212、及び島状の絶縁膜210が形成される(
図21(B)参照)。
【0415】
本実施の形態においては、ドライエッチング法を用い、導電膜212_0、及び絶縁膜
210_0を加工する。
【0416】
なお、導電膜212_0、及び絶縁膜210_0の加工の際に、導電膜212が重畳し
ない領域の金属酸化物208の膜厚が薄くなる場合がある。または、導電膜212_0、
及び絶縁膜210_0の加工の際に、金属酸化物208が重畳しない領域の絶縁膜204
の膜厚が薄くなる場合がある。また、導電膜212_0、及び絶縁膜210_0の加工の
際に、エッチャントまたはエッチングガス(例えば、塩素など)が金属酸化物208中に
添加される、あるいは導電膜212_0、または絶縁膜210_0の構成元素が金属酸化
物208中に添加される場合がある。
【0417】
次に、絶縁膜204、金属酸化物208、及び導電膜212上に絶縁膜216を形成す
る。なお、絶縁膜216を形成することで、絶縁膜216と接する金属酸化物208は、
領域208nとなる。また、導電膜212と重畳する金属酸化物208中には、領域20
8i_1、領域208i_2、及び領域208i_3が形成される。(
図21(C)参照
)。
【0418】
絶縁膜216としては、先に記載の材料を選択することで形成できる。本実施の形態に
おいては、絶縁膜216として、PECVD装置を用い、厚さ100nmの窒化酸化シリ
コン膜を形成する。また、当該窒化酸化シリコン膜の形成時において、プラズマ処理と、
成膜処理との2つのステップを220℃の温度で行う。当該プラズマ処理としては、成膜
前に流量100sccmのアルゴンガスと、流量1000sccmの窒素ガスとを、チャ
ンバー内に導入し、チャンバー内の圧力を40Paとし、RF電源(27.12MHz)
に1000Wの電力を供給する。また、成膜処理としては、流量50sccmのシランガ
スと、流量5000sccmの窒素ガスと、流量100sccmのアンモニアガスとを、
チャンバー内に導入し、チャンバー内の圧力を100Paとし、RF電源(27.12M
Hz)に1000Wの電力を供給する。
【0419】
絶縁膜216として、窒化酸化シリコン膜を用いることで、絶縁膜216に接する領域
208nに窒化酸化シリコン膜中の窒素または水素を供給することができる。また、絶縁
膜216の形成時の温度を上述の温度とすることで、絶縁膜210に含まれる過剰酸素が
外部に放出されるのを抑制することができる。
【0420】
次に、絶縁膜216上に絶縁膜218を形成する(
図22(A)参照)。
【0421】
絶縁膜218としては、先に記載の材料を選択することで形成できる。本実施の形態に
おいては、絶縁膜218として、PECVD装置を用い、厚さ300nmの酸化窒化シリ
コン膜を形成する。
【0422】
次に、絶縁膜218の所望の位置に、リソグラフィによりマスクを形成した後、絶縁膜
218及び絶縁膜216の一部をエッチングすることで、領域208nに達する開口部2
41a、241bを形成する(
図22(B)参照)。
【0423】
絶縁膜218及び絶縁膜216をエッチングする方法としては、ウエットエッチング法
及びドライエッチング法のいずれか一方または双方を用いればよい。本実施の形態におい
ては、ドライエッチング法を用い、絶縁膜218、及び絶縁膜216を加工する。
【0424】
次に、開口部241a、241bを覆うように、領域208n及び絶縁膜218上に導
電膜を形成し、当該導電膜を所望の形状に加工することで導電膜220a、220bを形
成する(
図22(C)参照)。
【0425】
導電膜220a、220bとしては、先に記載の材料を選択することで形成できる。本
実施の形態においては、導電膜220a、220bとして、スパッタリング装置を用い、
厚さ50nmのタングステン膜と、厚さ400nmの銅膜との積層膜を形成する。
【0426】
なお、導電膜220a、220bとなる導電膜の加工方法としては、ウエットエッチン
グ法及びドライエッチング法のいずれか一方または双方を用いればよい。本実施の形態で
は、ウエットエッチング法にて銅膜をエッチングしたのち、ドライエッチング法にてタン
グステン膜をエッチングすることで導電膜を加工し、導電膜220a、220bを形成す
る。
【0427】
以上の工程により、
図18(A)(B)(C)に示すトランジスタ200Cを作製する
ことができる。
【0428】
なお、トランジスタを構成する膜(絶縁膜、金属酸化物、導電膜等)としては、上述の
形成方法の他、スパッタリング法、化学気相堆積(CVD)法、真空蒸着法、パルスレー
ザー堆積(PLD)法、ALD法を用いて形成することができる。あるいは、塗布法や印
刷法で形成することができる。成膜方法としては、スパッタリング法、プラズマ化学気相
堆積(PECVD)法が代表的であるが、熱CVD法でもよい。熱CVD法の例として、
有機金属化学気相堆積(MOCVD)法が挙げられる。
【0429】
熱CVD法は、チャンバー内を大気圧または減圧下とし、原料ガスと酸化剤を同時にチ
ャンバー内に送り、基板近傍または基板上で反応させて基板上に堆積させることで成膜を
行う。このように、熱CVD法は、プラズマを発生させない成膜方法であるため、プラズ
マダメージにより欠陥が生成されることが無いという利点を有する。
【0430】
なお、本実施の形態で示す構成、方法は、他の実施の形態で示す構成、方法と適宜組み
合わせて用いることができる。
【0431】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置を用いた表示装置の表示部等に用いる
ことのできる表示パネルの一例について、
図24及び
図25を用いて説明する。以下で例
示する表示パネルは、反射型の液晶素子と、発光素子との双方を有し、透過モードと反射
モードの両方の表示を行うことのできる、表示パネルである。なお、本発明の一態様の金
属酸化物、及び当該金属酸化物を有するトランジスタは、表示装置の画素のトランジスタ
、または表示装置を駆動させるドライバ、あるいは表示装置にデータを供給するLSI等
に好適に用いることができる。
【0432】
<3-1.表示パネルの構成例>
図24は、本発明の一態様の表示パネル600の斜視概略図である。表示パネル600
は、基板651と基板661とが貼り合わされた構成を有する。
図24では、基板661
を破線で明示している。
【0433】
表示パネル600は、表示部662、回路659、配線666等を有する。基板651
には、例えば回路659、配線666、及び画素電極として機能する導電膜663等が設
けられる。また
図24では基板651上にIC673とFPC672が実装されている例
を示している。そのため、
図24に示す構成は、表示パネル600とFPC672及びI
C673を有する表示モジュールと言うこともできる。
【0434】
回路659は、例えば走査線駆動回路として機能する回路を用いることができる。
【0435】
配線666は、表示部662や回路659に信号や電力を供給する機能を有する。当該
信号や電力は、FPC672を介して外部、またはIC673から配線666に入力され
る。
【0436】
また、
図24では、COG(Chip On Glass)方式等により、基板651
にIC673が設けられている例を示している。IC673は、例えば走査線駆動回路、
または信号線駆動回路などとしての機能を有するICを適用できる。なお表示パネル60
0が走査線駆動回路及び信号線駆動回路として機能する回路を備える場合や、走査線駆動
回路や信号線駆動回路として機能する回路を外部に設け、FPC672を介して表示パネ
ル600を駆動するための信号を入力する場合などでは、IC673を設けない構成とし
てもよい。また、IC673を、COF(Chip On Film)方式等により、F
PC672に実装してもよい。
【0437】
図24には、表示部662の一部の拡大図を示している。表示部662には、複数の表
示素子が有する導電膜663がマトリクス状に配置されている。導電膜663は、可視光
を反射する機能を有し、後述する液晶素子640の反射電極として機能する。
【0438】
また、
図24に示すように、導電膜663は開口を有する。さらに導電膜663よりも
基板651側に、発光素子660を有する。発光素子660からの光は、導電膜663の
開口を介して基板661側に射出される。
【0439】
<3-2.断面構成例>
図25に、
図24で例示した表示パネルの、FPC672を含む領域の一部、回路65
9を含む領域の一部、及び表示部662を含む領域の一部をそれぞれ切断したときの断面
の一例を示す。
【0440】
表示パネルは、基板651と基板661の間に、絶縁膜620を有する。また基板65
1と絶縁膜620の間に、発光素子660、トランジスタ601、トランジスタ605、
トランジスタ606、着色層634等を有する。また絶縁膜620と基板661の間に、
液晶素子640、着色層631等を有する。また基板661と絶縁膜620は接着層64
1を介して接着され、基板651と絶縁膜620は接着層642を介して接着されている
。
【0441】
トランジスタ606は、液晶素子640と電気的に接続し、トランジスタ605は、発
光素子660と電気的に接続する。トランジスタ605とトランジスタ606は、いずれ
も絶縁膜620の基板651側の面上に形成されているため、これらを同一の工程を用い
て作製することができる。
【0442】
基板661には、着色層631、遮光膜632、絶縁膜621、及び液晶素子640の
共通電極として機能する導電膜613、配向膜633b、絶縁膜617等が設けられてい
る。絶縁膜617は、液晶素子640のセルギャップを保持するためのスペーサとして機
能する。
【0443】
絶縁膜620の基板651側には、絶縁膜681、絶縁膜682、絶縁膜683、絶縁
膜684、絶縁膜685等の絶縁層が設けられている。絶縁膜681は、その一部が各ト
ランジスタのゲート絶縁層として機能する。絶縁膜682、絶縁膜683、及び絶縁膜6
84は、各トランジスタを覆って設けられている。また絶縁膜684を覆って絶縁膜68
5が設けられている。絶縁膜684及び絶縁膜685は、平坦化層としての機能を有する
。なお、ここではトランジスタ等を覆う絶縁層として、絶縁膜682、絶縁膜683、絶
縁膜684の3層を有する場合について示しているが、これに限られず4層以上であって
もよいし、単層、または2層であってもよい。また平坦化層として機能する絶縁膜684
は、不要であれば設けなくてもよい。
【0444】
また、トランジスタ601、トランジスタ605、及びトランジスタ606は、一部が
ゲートとして機能する導電膜654、一部がソース又はドレインとして機能する導電膜6
52、半導体膜653を有する。ここでは、同一の導電膜を加工して得られる複数の層に
、同じハッチングパターンを付している。
【0445】
液晶素子640は反射型の液晶素子である。液晶素子640は、導電膜635、液晶層
612、導電膜613が積層された積層構造を有する。また導電膜635の基板651側
に接して、可視光を反射する導電膜663が設けられている。導電膜663は開口655
を有する。また導電膜635及び導電膜613は可視光を透過する材料を含む。また液晶
層612と導電膜635の間に配向膜633aが設けられ、液晶層612と導電膜613
の間に配向膜633bが設けられている。また、基板661の外側の面には、偏光板65
6を有する。
【0446】
液晶素子640において、導電膜663は可視光を反射する機能を有し、導電膜613
は可視光を透過する機能を有する。基板661側から入射した光は、偏光板656により
偏光され、導電膜613、液晶層612を透過し、導電膜663で反射する。そして液晶
層612及び導電膜613を再度透過して、偏光板656に達する。このとき、導電膜6
63及び導電膜635と導電膜613の間に与える電圧によって液晶の配向を制御し、光
の光学変調を制御することができる。すなわち、偏光板656を介して射出される光の強
度を制御することができる。また光は着色層631によって特定の波長領域以外の光が吸
収されることにより、取り出される光は、例えば赤色を呈する光となる。
【0447】
発光素子660は、ボトムエミッション型の発光素子である。発光素子660は、絶縁
膜620側から導電膜643、EL層644、及び導電膜645bの順に積層された積層
構造を有する。また導電膜645bを覆って導電膜645aが設けられている。導電膜6
45bは可視光を反射する材料を含み、導電膜643及び導電膜645aは可視光を透過
する材料を含む。発光素子660が発する光は、着色層634、絶縁膜620、開口65
5、導電膜613等を介して、基板661側に射出される。
【0448】
ここで、
図25に示すように、開口655には可視光を透過する導電膜635が設けら
れていることが好ましい。これにより、開口655と重なる領域においてもそれ以外の領
域と同様に液晶が配向するため、これらの領域の境界部で液晶の配向不良が生じ、意図し
ない光が漏れてしまうことを抑制できる。
【0449】
ここで、基板661の外側の面に配置する偏光板656として直線偏光板を用いてもよ
いが、円偏光板を用いることもできる。円偏光板としては、例えば直線偏光板と1/4波
長位相差板を積層したものを用いることができる。これにより、外光反射を抑制すること
ができる。また、偏光板の種類に応じて、液晶素子640に用いる液晶素子のセルギャッ
プ、配向、駆動電圧等を調整することで、所望のコントラストが実現されるようにすれば
よい。
【0450】
また導電膜643の端部を覆う絶縁膜646上には、絶縁膜647が設けられている。
絶縁膜647は、絶縁膜620と基板651が必要以上に接近することを抑制するスペー
サとしての機能を有する。またEL層644や導電膜645aを遮蔽マスク(メタルマス
ク)を用いて形成する場合には、当該遮蔽マスクが被形成面に接触することを抑制する機
能を有していてもよい。なお、絶縁膜647は不要であれば設けなくてもよい。
【0451】
トランジスタ605のソース又はドレインの一方は、導電膜648を介して発光素子6
60の導電膜643と電気的に接続されている。
【0452】
トランジスタ606のソース又はドレインの一方は、接続部607を介して導電膜66
3と電気的に接続されている。導電膜663と導電膜635は接して設けられ、これらは
電気的に接続されている。ここで、接続部607は、絶縁膜620に設けられた開口を介
して、絶縁膜620の両面に設けられる導電層同士を接続する部分である。
【0453】
基板651の基板661と重ならない領域には、接続部604が設けられている。接続
部604は、接続層649を介してFPC672と電気的に接続されている。接続部60
4は接続部607と同様の構成を有している。接続部604の上面は、導電膜635と同
一の導電膜を加工して得られた導電層が露出している。これにより、接続部604とFP
C672とを接続層649を介して電気的に接続することができる。
【0454】
接着層641が設けられる一部の領域には、接続部687が設けられている。接続部6
87において、導電膜635と同一の導電膜を加工して得られた導電層と、導電膜613
の一部が、接続体686により電気的に接続されている。したがって、基板661側に形
成された導電膜613に、基板651側に接続されたFPC672から入力される信号ま
たは電位を、接続部687を介して供給することができる。
【0455】
接続体686としては、例えば導電性の粒子を用いることができる。導電性の粒子とし
ては、有機樹脂またはシリカなどの粒子の表面を金属材料で被覆したものを用いることが
できる。金属材料としてニッケルや金を用いると接触抵抗を低減できるため好ましい。ま
たニッケルをさらに金で被覆するなど、2種類以上の金属材料を層状に被覆させた粒子を
用いることが好ましい。また接続体686として、弾性変形、または塑性変形する材料を
用いることが好ましい。このとき導電性の粒子である接続体686は、
図25に示すよう
に上下方向に潰れた形状となる場合がある。こうすることで、接続体686と、これと電
気的に接続する導電層との接触面積が増大し、接触抵抗を低減できるほか、接続不良など
の不具合の発生を抑制することができる。
【0456】
接続体686は、接着層641に覆われるように配置することが好ましい。例えば、硬
化前の接着層641に接続体686を分散させておけばよい。
【0457】
図25では、回路659の例としてトランジスタ601が設けられている例を示してい
る。
【0458】
図25では、トランジスタ601及びトランジスタ605の例として、チャネルが形成
される半導体膜653を2つのゲートで挟持する構成が適用されている。一方のゲートは
導電膜654により、他方のゲートは絶縁膜682を介して半導体膜653と重なる導電
膜623により構成されている。このような構成とすることで、トランジスタのしきい値
電圧を制御することができる。このとき、2つのゲートを接続し、これらに同一の信号を
供給することによりトランジスタを駆動してもよい。このようなトランジスタは他のトラ
ンジスタと比較して電界効果移動度を高めることが可能であり、オン電流を増大させるこ
とができる。その結果、高速駆動が可能な回路を作製することができる。さらには、回路
部の占有面積を縮小することが可能となる。オン電流の大きなトランジスタを適用するこ
とで、表示パネルを大型化、または高精細化したときに配線数が増大したとしても、各配
線における信号遅延を低減することが可能であり、表示ムラを抑制することができる。
【0459】
なお、回路659が有するトランジスタと、表示部662が有するトランジスタは、同
じ構造であってもよい。また回路659が有する複数のトランジスタは、全て同じ構造で
あってもよいし、異なる構造のトランジスタを組み合わせて用いてもよい。また、表示部
662が有する複数のトランジスタは、全て同じ構造であってもよいし、異なる構造のト
ランジスタを組み合わせて用いてもよい。
【0460】
各トランジスタを覆う絶縁膜682、絶縁膜683のうち少なくとも一方は、水や水素
などの不純物が拡散しにくい材料を用いることが好ましい。すなわち、絶縁膜682また
は絶縁膜683はバリア膜として機能させることができる。このような構成とすることで
、トランジスタに対して外部から不純物が拡散することを効果的に抑制することが可能と
なり、信頼性の高い表示パネルを実現できる。
【0461】
基板661側において、着色層631、遮光膜632を覆って絶縁膜621が設けられ
ている。絶縁膜621は、平坦化層としての機能を有していてもよい。絶縁膜621によ
り、導電膜613の表面を概略平坦にできるため、液晶層612の配向状態を均一にでき
る。
【0462】
表示パネル600を作製する方法の一例について説明する。例えば剥離層を有する支持
基板上に、導電膜635、導電膜663、絶縁膜620を順に形成し、その後、トランジ
スタ605、トランジスタ606、発光素子660等を形成した後、接着層642を用い
て基板651と支持基板を貼り合せる。その後、剥離層と絶縁膜620、及び剥離層と導
電膜635のそれぞれの界面で剥離することにより、支持基板及び剥離層を除去する。ま
たこれとは別に、着色層631、遮光膜632、導電膜613等をあらかじめ形成した基
板661を準備する。そして基板651または基板661に液晶を滴下し、接着層641
により基板651と基板661を貼り合せることで、表示パネル600を作製することが
できる。
【0463】
剥離層としては、絶縁膜620及び導電膜635との界面で剥離が生じる材料を適宜選
択することができる。特に、剥離層としてタングステンなどの高融点金属材料を含む層と
当該金属材料の酸化物を含む層を積層して用い、剥離層上の絶縁膜620として、窒化シ
リコンや酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン等を複数積層した層を用いることが好まし
い。剥離層に高融点金属材料を用いると、これよりも後に形成する層の形成温度を高める
ことが可能で、不純物の濃度が低減され、信頼性の高い表示パネルを実現できる。
【0464】
導電膜635としては、金属酸化物、または金属窒化物等の酸化物または窒化物を用い
ることが好ましい。金属酸化物を用いる場合には、水素、ボロン、リン、窒素、及びその
他の不純物の濃度、並びに酸素欠損量の少なくとも一が、トランジスタに用いる半導体層
に比べて高められた材料を、導電膜635に用いればよい。
【0465】
<3-3.各構成要素について>
以下では、上記に示す各構成要素について説明する。
【0466】
[接着層]
接着層としては、紫外線硬化型等の光硬化型接着剤、反応硬化型接着剤、熱硬化型接着
剤、嫌気型接着剤などの各種硬化型接着剤を用いることができる。これら接着剤としては
エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、イミ
ド樹脂、PVC(ポリビニルクロライド)樹脂、PVB(ポリビニルブチラル)樹脂、E
VA(エチレンビニルアセテート)樹脂等が挙げられる。特に、エポキシ樹脂等の透湿性
が低い材料が好ましい。また、二液混合型の樹脂を用いてもよい。また、接着シート等を
用いてもよい。
【0467】
また、上記樹脂に乾燥剤を含んでいてもよい。例えば、アルカリ土類金属の酸化物(酸
化カルシウムや酸化バリウム等)のように、化学吸着によって水分を吸着する物質を用い
ることができる。または、ゼオライトやシリカゲル等のように、物理吸着によって水分を
吸着する物質を用いてもよい。乾燥剤が含まれていると、水分などの不純物が素子に侵入
することを抑制でき、表示パネルの信頼性が向上するため好ましい。
【0468】
また、上記樹脂に屈折率の高いフィラーや光散乱部材を混合することにより、光取り出
し効率を向上させることができる。例えば、酸化チタン、酸化バリウム、ゼオライト、ジ
ルコニウム等を用いることができる。
【0469】
[接続層]
接続層としては、異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Condu
ctive Film)や、異方性導電ペースト(ACP:Anisotropic C
onductive Paste)などを用いることができる。
【0470】
[着色層]
着色層に用いることのできる材料としては、金属材料、樹脂材料、顔料または染料が含
まれた樹脂材料などが挙げられる。
【0471】
[遮光層]
遮光層として用いることのできる材料としては、カーボンブラック、チタンブラック、
金属、金属酸化物、複数の金属酸化物の固溶体を含む複合酸化物等が挙げられる。遮光層
は、樹脂材料を含む膜であってもよいし、金属などの無機材料の薄膜であってもよい。ま
た、遮光層に、着色層の材料を含む膜の積層膜を用いることもできる。例えば、ある色の
光を透過する着色層に用いる材料を含む膜と、他の色の光を透過する着色層に用いる材料
を含む膜との積層構造を用いることができる。着色層と遮光層の材料を共通化することで
、装置を共通化できるほか工程を簡略化できるため好ましい。
【0472】
以上が各構成要素についての説明である。
【0473】
<3-4.作製方法例>
ここでは、可撓性を有する基板を用いた表示パネルの作製方法の例について説明する。
【0474】
ここでは、表示素子、回路、配線、電極、着色層や遮光層などの光学部材、及び絶縁層
等が含まれる層をまとめて素子層と呼ぶこととする。例えば、素子層は表示素子を含み、
表示素子の他に表示素子と電気的に接続する配線、画素や回路に用いるトランジスタなど
の素子を備えていてもよい。
【0475】
また、ここでは、表示素子が完成した(作製工程が終了した)段階において、素子層を
支持し、可撓性を有する部材のことを、基板と呼ぶこととする。例えば、基板には、厚さ
が10nm以上300μm以下の、極めて薄いフィルム等も含まれる。
【0476】
可撓性を有し、絶縁表面を備える基板上に素子層を形成する方法としては、代表的には
以下に挙げる2つの方法がある。一つは、基板上に直接、素子層を形成する方法である。
もう一つは、基板とは異なる支持基板上に素子層を形成した後、素子層と支持基板を剥離
し、素子層を基板に転置する方法である。なお、ここでは詳細に説明しないが、上記2つ
の方法に加え、可撓性を有さない基板上に素子層を形成し、当該基板を研磨等により薄く
することで可撓性を持たせる方法もある。
【0477】
基板を構成する材料が、素子層の形成工程にかかる熱に対して耐熱性を有する場合には
、基板上に直接、素子層を形成すると、工程が簡略化されるため好ましい。このとき、基
板を支持基板に固定した状態で素子層を形成すると、装置内、及び装置間における搬送が
容易になるため好ましい。
【0478】
また、素子層を支持基板上に形成した後に、基板に転置する方法を用いる場合、まず支
持基板上に剥離層と絶縁層を積層し、当該絶縁層上に素子層を形成する。続いて、支持基
板と素子層の間で剥離し、素子層を基板に転置する。このとき、支持基板と剥離層の界面
、剥離層と絶縁層の界面、または剥離層中で剥離が生じるような材料を選択すればよい。
この方法では、支持基板や剥離層に耐熱性の高い材料を用いることで、素子層を形成する
際にかかる温度の上限を高めることができ、より信頼性の高い素子を有する素子層を形成
できるため、好ましい。
【0479】
例えば剥離層として、タングステンなどの高融点金属材料を含む層と、当該金属材料の
酸化物を含む層を積層して用い、剥離層上の絶縁層として、酸化シリコン、窒化シリコン
、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコンなどを複数積層した層を用いることが好ましい。
【0480】
素子層と支持基板とを剥離する方法としては、機械的な力を加えることや、剥離層をエ
ッチングすること、または剥離界面に液体を浸透させることなどが、一例として挙げられ
る。または、剥離界面を形成する2層の熱膨張率の違いを利用し、加熱または冷却するこ
とにより剥離を行ってもよい。
【0481】
また、支持基板と絶縁層の界面で剥離が可能な場合には、剥離層を設けなくてもよい。
【0482】
例えば、支持基板としてガラスを用い、絶縁層としてポリイミドなどの有機樹脂を用い
ることができる。このとき、レーザ光等を用いて有機樹脂の一部を局所的に加熱する、ま
たは鋭利な部材により物理的に有機樹脂の一部を切断、または貫通すること等により剥離
の起点を形成し、ガラスと有機樹脂の界面で剥離を行ってもよい。また、上記の有機樹脂
としては、感光性の材料を用いると、開口部などの形状を容易に作製しやすいため好適で
ある。また、上記のレーザ光としては、例えば、可視光線から紫外線の波長領域の光であ
ることが好ましい。例えば波長が200nm以上400nm以下の光、好ましくは波長が
250nm以上350nm以下の光を用いることができる。特に、波長308nmのエキ
シマレーザを用いると、生産性に優れるため好ましい。また、Nd:YAGレーザの第三
高調波である波長355nmのUVレーザなどの固体UVレーザ(半導体UVレーザとも
いう)を用いてもよい。
【0483】
または、支持基板と有機樹脂からなる絶縁層の間に発熱層を設け、当該発熱層を加熱す
ることにより、当該発熱層と絶縁層の界面で剥離を行ってもよい。発熱層としては、電流
を流すことにより発熱する材料、光を吸収することにより発熱する材料、磁場を印加する
ことにより発熱する材料など、様々な材料を用いることができる。例えば発熱層としては
、半導体、金属、絶縁体から選択して用いることができる。
【0484】
なお、上述した方法において、有機樹脂からなる絶縁層は、剥離後に基板として用いる
ことができる。
【0485】
以上が可撓性を有する表示パネルを作製する方法についての説明である。
【0486】
なお、本実施の形態で示す構成、方法は、他の実施の形態で示す構成、方法と適宜組み
合わせて用いることができる。
【符号の説明】
【0487】
P1 領域
P2 領域
P3 領域
P4 領域
P5 領域
P6 領域
P7 領域
P8 領域
001 領域
002 領域
10 スパッタリングターゲット
10a スパッタリングターゲット
10b スパッタリングターゲット
11 領域
11a スパッタ粒子
12 領域
12a スパッタ粒子
13 析出部
20 陽イオン
30 プラズマ
41 成膜室
50a バッキングプレート
50b バッキングプレート
52 ターゲットホルダ
52a ターゲットホルダ
52b ターゲットホルダ
54a マグネットユニット
54b マグネットユニット
54N1 マグネット
54N2 マグネット
54S マグネット
56 マグネットホルダ
58 部材
60 基板
62 基板ホルダ
64a 磁力線
64b 磁力線
100A トランジスタ
100B トランジスタ
100C トランジスタ
100D トランジスタ
102 基板
104 絶縁膜
106 導電膜
108 金属酸化物
108_1 金属酸化物
108_2 金属酸化物
108_3 金属酸化物
112a 導電膜
112b 導電膜
112c 導電膜
114 絶縁膜
116 絶縁膜
118 絶縁膜
120a 導電膜
120b 導電膜
151 開口部
152a 開口部
152b 開口部
200A トランジスタ
200B トランジスタ
200C トランジスタ
200D トランジスタ
202 基板
204 絶縁膜
206 導電膜
208 金属酸化物
208_1a 金属酸化物
208_2a 金属酸化物
208_3a 金属酸化物
208i 領域
208i_1 領域
208i_2 領域
208i_3 領域
208n 領域
210 絶縁膜
210_0 絶縁膜
212 導電膜
212_0 導電膜
216 絶縁膜
218 絶縁膜
220a 導電膜
220b 導電膜
240 マスク
241a 開口部
241b 開口部
243 開口部
600 表示パネル
601 トランジスタ
604 接続部
605 トランジスタ
606 トランジスタ
607 接続部
612 液晶層
613 導電膜
617 絶縁膜
620 絶縁膜
621 絶縁膜
623 導電膜
631 着色層
632 遮光膜
633a 配向膜
633b 配向膜
634 着色層
635 導電膜
640 液晶素子
641 接着層
642 接着層
643 導電膜
644 EL層
645a 導電膜
645b 導電膜
646 絶縁膜
647 絶縁膜
648 導電膜
649 接続層
651 基板
652 導電膜
653 半導体膜
654 導電膜
655 開口
656 偏光板
659 回路
660 発光素子
661 基板
662 表示部
663 導電膜
666 配線
672 FPC
673 IC
681 絶縁膜
682 絶縁膜
683 絶縁膜
684 絶縁膜
685 絶縁膜
686 接続体
687 接続部