(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189969
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】眼科装置、及び眼科情報処理装置
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20221215BHJP
【FI】
A61B3/10 100
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174890
(22)【出願日】2022-10-31
(62)【分割の表示】P 2018049744の分割
【原出願日】2018-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100124626
【弁理士】
【氏名又は名称】榎並 智和
(72)【発明者】
【氏名】山口 達夫
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 僚一
(72)【発明者】
【氏名】中西 美智子
(57)【要約】
【課題】被検眼の断層像の歪みを補正することが可能な眼科装置等を提供する。
【解決手段】眼科装置は、光スキャナと、干渉光学系と、画像形成部と、眼内距離算出部と、画像補正部と、制御部とを含む。光スキャナは、被検眼における第1部位と光学的に略共役な位置に配置される。干渉光学系は、光スキャナを介して測定光を被検眼に照射し、被検眼からの測定光の戻り光と参照光との干渉光を光スキャナを介して検出する。画像形成部は、干渉光の検出結果に基づいて、光スキャナにより偏向された測定光の複数の進行方向に対応した被検眼の複数のAスキャン画像を形成する。眼内距離算出部は、干渉光の検出結果に基づいて被検眼における所定の部位間の眼内距離を求める。画像補正部は、測定光の偏向角度によって異なる眼球光学系の収差を補正するように、眼内距離に基づいて複数のAスキャン画像を補正する。制御部は、少なくとも光スキャナを制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼における第1部位と光学的に略共役な位置に配置された光スキャナと、
光源からの光を参照光と測定光とに分割し、前記光スキャナを介して前記測定光を前記被検眼に照射し、前記被検眼からの前記測定光の戻り光と前記参照光との干渉光を前記光スキャナを介して検出する干渉光学系と、
前記干渉光学系により得られた前記干渉光の検出結果に基づいて、前記光スキャナにより偏向された前記測定光の複数の進行方向に対応した前記被検眼の複数のAスキャン画像を形成する画像形成部と、
前記干渉光の検出結果に基づいて前記被検眼における所定の部位間の眼内距離を求める眼内距離算出部と、
前記光スキャナによって偏向される前記測定光の偏向角度によって異なる眼球光学系の収差を補正するように、前記眼内距離算出部により求められた前記眼内距離に基づいて、前記画像形成部により形成された前記複数のAスキャン画像のそれぞれを補正し、補正された前記複数のAスキャン画像が前記干渉光学系の光軸方向に対応する方向に沿って配置された補正画像を生成する画像補正部と、
少なくとも前記光スキャナを制御する制御部と、
を含む眼科装置。
【請求項2】
前記画像補正部は、各Aスキャン画像における前記所定の部位間の距離が一定値になるように前記複数のAスキャン画像のそれぞれを補正する
ことを特徴とする請求項1に記載の眼科装置。
【請求項3】
前記画像形成部は、前記測定光の進行方向の第1深度範囲の前記被検眼の第3Aスキャン画像と、前記第1深度範囲を含み前記第1深度範囲より長い第2深度範囲の前記被検眼の第4Aスキャン画像とを形成し、
前記眼内距離算出部は、前記第3Aスキャン画像に基づいて前記眼内距離を求め、
前記画像補正部は、前記眼内距離に基づいて前記第4Aスキャン画像を補正する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の眼科装置。
【請求項4】
前記光源は、波長の掃引周波数を変更可能な波長掃引光源であり、
前記制御部は、前記掃引周波数を変更することにより深度範囲が異なる複数のAスキャン画像を前記画像形成部に形成させる
ことを特徴とする請求項3に記載の眼科装置。
【請求項5】
画角を変更するための画角変更部を含み、
前記画像補正部は、前記画角変更部により変更された画角に応じて前記Aスキャン画像を補正する
ことを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項6】
前記画角変更部により第1画角が設定されているとき、前記制御部は、前記光スキャナに前記測定光で前記被検眼をスキャンさせ、前記被検眼の第1範囲を表す第1画像を前記画像形成部に形成させ、前記眼内距離に基づいて前記第1画像を前記画像補正部に補正させ、補正された前記第1画像を表示手段に表示させ、
前記画角変更部により前記第1画角より狭い第2画角が設定されているとき、前記制御部は、前記光スキャナに前記測定光で前記被検眼をスキャンさせ、前記被検眼の第2範囲を表す第2画像を前記画像形成部に形成させ、形成された前記第2画像を表示手段に表示させる
ことを特徴とする請求項5に記載の眼科装置。
【請求項7】
前記眼内距離算出部は、Aスキャンごとに、前記所定の部位間の眼内距離を求め、
前記画像補正部は、Aスキャンごとに、前記眼内距離算出部により求められた前記眼内距離に基づいて前記Aスキャン画像を補正する
ことを特徴とする請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項8】
前記眼内距離算出部は、複数のAスキャン単位で、前記所定の部位間の眼内距離を求め、
前記画像補正部は、前記複数のAスキャン単位で前記眼内距離算出部により求められた前記眼内距離に基づいて前記Aスキャン画像を補正する
ことを特徴とする請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項9】
前記眼内距離は、眼軸長である
ことを特徴とする請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項10】
前記眼内距離は、前記第1部位から網膜までの距離である
ことを特徴とする請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項11】
被検眼における第1部位と光学的に略共役な位置に配置された光スキャナを用いた光コヒーレンストモグラフィにより取得されたデータに基づいて、前記光スキャナにより偏向された測定光の複数の進行方向に対応した複数のAスキャン画像を形成する画像形成部と、
前記データに基づいて前記被検眼における所定の部位間の眼内距離を求める眼内距離算出部と、
前記光スキャナによって偏向される前記測定光の偏向角度によって異なる眼球光学系の収差を補正するように、前記眼内距離算出部により求められた前記眼内距離に基づいて、前記画像形成部により形成された前記複数のAスキャン画像のそれぞれを補正し、補正された前記複数のAスキャン画像が前記測定光の進行方向に対応する方向に沿って配置された補正画像を生成する画像補正部と、
を含む眼科情報処理装置。
【請求項12】
前記画像補正部は、各Aスキャン画像における前記所定の部位間の距離が一定値になるように前記複数のAスキャン画像のそれぞれを補正する
ことを特徴とする請求項11に記載の眼科情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、眼科装置、及び眼科情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レーザー光源等からの光ビームを用いて被測定物体の表面形態や内部形態を表す画像を形成するOCTが注目を集めている。OCTは、X線CT(Computed Tomography)のような人体に対する侵襲性を持たないことから、特に医療分野や生物学分野における応用の展開が期待されている。例えば眼科分野においては、眼底や角膜等の画像を形成する装置が実用化されている。このようなOCTの手法を用いた装置(OCT装置)は被検眼の様々な部位の観察に適用可能であり、また高精細な画像を取得できることから、様々な眼科疾患の診断に応用されている。
【0003】
OCTを用いて被検眼の眼内の所定部位の断層像を取得する場合、当該所定部位をスキャンするための測定光を瞳孔から眼内に入射させ、例えば瞳孔近傍の位置を中心に測定光を偏向させる。測定光の偏向方向により、眼球光学系は異なる収差をもつため、取得された断層像に歪みが生ずる。画角が十分に狭い場合には歪みの影響は少ないが、画角が広い場合には歪みの影響を無視することができなくなる。
【0004】
例えば、特許文献1には、眼球光学系の収差による断層像のスキャン長のずれが補正されるように、走査手段により測定光の走査角度を補正する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の技術では、様々な眼軸長を有する複数の眼に対して走査手段の走査可能範囲の全画素に対応する走査角度の補正量をあらかじめ算出しておく必要がある。従って、画角が大きい場合に、様々な眼球光学系を有する被検眼それぞれに対して、断層像の歪みを高精度に補正することは難しい。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、画角が大きい場合でも被検眼の断層像の歪みを補正することが可能な眼科装置、及び眼科情報処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
いくつかの実施形態の1つの態様は、被検眼における第1部位と光学的に略共役な位置に配置された光スキャナと、光源からの光を参照光と測定光とに分割し、前記光スキャナを介して前記測定光を前記被検眼に照射し、前記被検眼からの前記測定光の戻り光と前記参照光との干渉光を前記光スキャナを介して検出する干渉光学系と、前記干渉光学系により得られた前記干渉光の検出結果に基づいて、前記光スキャナにより偏向された前記測定光の複数の進行方向に対応した前記被検眼の複数のAスキャン画像を形成する画像形成部と、前記干渉光の検出結果に基づいて前記被検眼における所定の部位間の眼内距離を求める眼内距離算出部と、前記光スキャナによって偏向される前記測定光の偏向角度によって異なる眼球光学系の収差を補正するように、前記眼内距離算出部により求められた前記眼内距離に基づいて、前記画像形成部により形成された前記複数のAスキャン画像のそれぞれを補正し、補正された前記複数のAスキャン画像が前記干渉光学系の光軸方向に対応する方向に沿って配置された補正画像を生成する画像補正部と、少なくとも前記光スキャナを制御する制御部と、を含む眼科装置である。
【0009】
いくつかの実施形態の別の態様は、被検眼における第1部位と光学的に略共役な位置に配置された光スキャナを用いた光コヒーレンストモグラフィにより取得されたデータに基づいて、前記光スキャナにより偏向された測定光の複数の進行方向に対応した複数のAスキャン画像を形成する画像形成部と、前記データに基づいて前記被検眼における所定の部位間の眼内距離を求める眼内距離算出部と、前記光スキャナによって偏向される前記測定光の偏向角度によって異なる眼球光学系の収差を補正するように、前記眼内距離算出部により求められた前記眼内距離に基づいて、前記画像形成部により形成された前記複数のAスキャン画像のそれぞれを補正し、補正された前記複数のAスキャン画像が前記測定光の進行方向に対応する方向に沿って配置された補正画像を生成する画像補正部と、を含む眼科情報処理装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、画角が大きい場合でも被検眼の断層像の歪みを補正することが可能な眼科装置、及び眼科情報処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る眼科装置の構成の一例を示す概略図である。
【
図2】実施形態に係る眼科装置の構成の一例を示す概略図である。
【
図3】実施形態に係る眼科装置の動作の一例を表すフローチャートである。
【
図4】実施形態に係る眼科装置の動作の一例を表すフローチャートである。
【
図5】実施形態に係る眼科装置の動作の一例を表すフローチャートである。
【
図6A】実施形態に係る眼科装置の動作を説明するための概略図である。
【
図6B】実施形態に係る眼科装置の動作を説明するための概略図である。
【
図7】実施形態に係る眼科装置の動作を説明するための概略図である。
【
図8】実施形態に係る眼科装置の動作を説明するための概略図である。
【
図9】実施形態の変形例に係る眼科装置の動作を説明するための概略図である。
【
図10A】実施形態の変形例に係る眼科装置の動作を説明するための概略図である。
【
図10B】実施形態の変形例に係る眼科装置の動作を説明するための概略図である。
【
図11】実施形態の変形例に係る眼科装置の動作の一例を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明に係る眼科装置、及び眼科情報処理装置の実施形態の一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、実施形態において、この明細書において引用されている文献に記載された技術を任意に援用することが可能である。
【0013】
実施形態に係る眼科装置は、光コヒーレンストモグラフィを用いて前眼部から後眼部までの広い範囲を光ビームでスキャンして所定データの分布(例:画像、層厚分布、病変分布)を取得することが可能である。このような眼科装置の例として高コヒーレンス長の光源を用いた光干渉断層計などがある。
【0014】
実施形態に係る眼科情報処理装置は、上記の眼科装置により光コヒーレンストモグラフィを用いて取得された被検眼のデータに基づいて被検眼の眼内距離を求め、求められた眼内距離に基づいて被検眼の断層像の歪みを補正することが可能である。いくつかの実施形態では、このような眼科情報処理装置の機能の少なくとも一部は、上記の眼科装置に含まれる。
【0015】
いくつかの実施形態に係る眼科装置は、眼底に固視標を投影する機能を備える。固視標には、内部固視標や外部固視標を用いることができる。
【0016】
以下、特に明記しない限り、被検者から見て左右方向をX方向とし、上下方向をY方向とし、前後方向(奥行き方向)をZ方向とする。X方向、Y方向及びZ方向は、3次元直交座標系を定義する。
【0017】
<構成>
図1に、実施形態に係る眼科装置の概略構成を示す。眼科装置1は、光コヒーレンストモグラフィを用いて被検眼Eの前眼部や後眼部を光でスキャンすることによりデータを収集し、収集されたデータに基づいて被検眼Eの画像を取得する。
図1では、被検眼Eの2次元断層像又は3次元画像、正面画像が得られる。
【0018】
眼科装置1は、装置光学系100と、制御ユニット200と、画像形成ユニット220と、データ処理ユニット230と、操作ユニット240と、表示ユニット250とを含む。装置光学系100は、光コヒーレンストモグラフィにより被検眼Eのデータを取得するための光学系を含む。制御ユニット200は、画像形成ユニット220と、データ処理ユニット230と、操作ユニット240と、表示ユニット250とを制御する。
【0019】
装置光学系100は、照明光学系10と、観察光学系20と、光スキャナ30と、干渉光学系40とを含む。装置光学系100は、上記の光学系の光路を分離したり他の光学系と結合したりするための光路結合分離部材としての光学素子M1、M2を含む。
【0020】
光学素子M1は、照明光学系10の光路とそれ以外の光学系(観察光学系20、光スキャナ30、干渉光学系40)の光路とを結合したり、被検眼Eからの戻り光の光路を照明光学系10の光路とそれ以外の光学系の光路とに分離したりする。光学素子M1は、照明光学系10の光軸がそれ以外の光学系の光軸と略同軸になるように、これら光学系を結合することが望ましい。
【0021】
光学素子M2は、観察光学系20の光路とそれ以外の光学系(光スキャナ30、干渉光学系40)の光路とを結合したり、被検眼Eからの戻り光の光路を観察光学系20の光路とそれ以外の光学系の光路とに分離したりする。光学素子M2は、観察光学系10の光軸が光スキャナ30の光軸と略同軸になるように、これら光学系を結合することが望ましい。
【0022】
いくつかの実施形態に係る装置光学系100は、被検眼Eと光学素子M1との間に対物レンズが配置される。すなわち、装置光学系100は、各光学系に共通の対物レンズを含んでもよい。
【0023】
(照明光学系10)
照明光学系10は、被検眼Eの前眼部又は眼底Efを照明する。照明光学系10は、照明光源やレンズなどを含む。
【0024】
照明光学系10からの照明光は、光学素子M1により反射され、被検眼Eに導かれる。被検眼Eからの照明光の戻り光(反射光)は、光学素子M1を透過し、光学素子M2により反射され、観察光学系20に導かれる。
【0025】
いくつかの実施形態では、光学素子M1は、照明光学系10の光路とそれ以外の光路とを結合する孔開きミラーである。孔開きミラーには、光スキャナ30(干渉光学系40)の光軸が通過する孔部が形成されている。例えば、孔開きミラーの孔部は、被検眼Eの瞳孔と光学的に略共役な位置に配置される。照明光学系10からの照明光は、孔開きミラーに形成された孔部の周辺部で反射され、被検眼Eに導かれる。被検眼Eからの照明光の戻り光は、孔開きミラーに形成されている孔部を通過し、光学素子M2により反射され、観察光学系20に導かれる。
【0026】
いくつかの実施形態では、光学素子M2は、ダイクロイックミラーである。
【0027】
(観察光学系20)
観察光学系20は、照明光学系10からの照明光により照明されている被検眼Eの前眼部又は眼底Efを観察するために用いられる。
【0028】
観察光学系20は、接眼レンズ及び撮像素子の少なくとも一方を含む。接眼レンズは、被検眼Eの肉眼観察に用いられる。撮像素子は、被検眼Eの正面画像の取得に用いられる。撮像素子を用いて取得された画像は、撮像素子からの信号を受けた制御ユニット200が表示ユニット250を制御することによって図示しない表示部等に表示される。
【0029】
(光スキャナ30)
光スキャナ30は、干渉光学系40からの光を偏向し、偏向された光を光学素子M2に導く。光スキャナ30は、被検眼Eにおける所定部位と光学的に略共役な位置に配置される。所定部位として、瞳孔中心位置、瞳孔重心位置などがある。それにより、干渉光学系40からの測定光は、被検眼Eにおける所定部位をスキャン中心位置として偏向される。いくつかの実施形態では、光スキャナ30は、被検眼Eにおける任意の部位と光学的に略共役な位置に配置可能である。
【0030】
いくつかの実施形態では、光スキャナ30は、1軸の偏向部材又は互いに直交する2軸の偏向部材を含む。偏向部材の例として、ガルバノミラー、ポリゴンミラー、回転ミラー、ダボプリズム、ダブルダボプリズム、ローテーションプリズム、MEMSミラースキャナーなどがある。2軸の偏向部材が用いられる場合、高速スキャン用の偏向部材(例えばポリゴンミラー)と低速スキャン用の偏向部材(例えばガルバノミラー)とを組み合わせることができる。光スキャナ30は、偏向された光を被検眼Eに投射するための光学素子を更に含んでもよい。
【0031】
光スキャナ30は、後述の制御ユニット200からの制御を受け、干渉光学系40からの光を偏向することが可能である。それにより、干渉光学系40からの光の被検眼Eにおける照射位置がX方向及びY方向の少なくとも1つの方向に変更される。
【0032】
光スキャナ30により偏向された光は、光学素子M2を透過し、光学素子M1に導かれ、光学素子M1を透過し、被検眼Eに導かれる。被検眼Eからの戻り光は、光学素子M1を透過し、光学素子M2を透過し、光スキャナ30に導かれる。光学素子M1が孔開きミラーである場合、光スキャナ30からの光は、孔開きミラーに形成された孔部を通過し、被検眼Eからの戻り光も同様に、当該孔部を通過して光学素子M2に導かれる。
【0033】
(干渉光学系40)
干渉光学系40は、光源からの光を測定光と参照光とに分割し、光スキャナ30を経由した測定光の被検眼Eからの戻り光と参照光とを重ね合わせて得られる干渉光を検出器に導く。干渉光学系40は、例えばスウェプトソースタイプ又はスペクトラルドメインタイプのOCT(Optical Coherence Tomography)を実行可能な光学系を含む。以下、実施形態に係る干渉光学系40は、スウェプトソースタイプのOCTを実行可能である場合について説明する。
【0034】
実施形態に係る干渉光学系40は、出射光の波長を掃引(走査)可能な波長掃引型(波長走査型)光源であるOCT光源を含む。波長掃引型光源には、例えば、共振器を含み、所定の中心波長を有する光を発するレーザー光源が用いられる。波長掃引型光源は、人眼では視認できない近赤外の波長帯において、出力波長を時間的に変化させる。
【0035】
実施形態に係るOCT光源は、高コヒーレンスな(コヒーレンス長が長い)波長掃引光源である。実施形態に係るOCT光源は、後述の制御ユニット200からの制御を受け、波長の掃引周波数(掃引速度)、掃引開始波長、掃引終了波長、掃引波長範囲などを変更可能である。例えば、制御ユニット200は、波長の掃引周波数を変更することにより深度範囲が異なる複数の断層像を画像形成ユニット220に形成させることが可能である。
【0036】
いくつかの実施形態では、OCT光源から出力される光は、例えば、1040~1060nm程度(例えば、1050nm)の中心波長を有し、50nm程度の波長幅を有する近赤外光である。
【0037】
OCT光源から出力された光は、光ファイバによりファイバカプラに導かれて測定光と参照光とに分割される。測定光は、光ファイバにより導光され、ファイバ端部から出射され、コリメートレンズにより平行光束となり、光スキャナ30に導かれる。この光ファイバのファイバ端部は、例えば、被検眼Eの眼底Efと光学的に略共役な位置である眼底共役位置又はその近傍に配置されている。測定光は、光スキャナ30により偏向され、光学素子M2を透過し、光学素子M1を透過し、被検眼Eに導かれる。例えば、眼底Efに照射された測定光は、例えば、眼底Efなどの測定部位において散乱、反射される。この散乱光及び反射光をまとめて測定光の戻り光と称することがある。測定光の戻り光は、同じ経路を逆向きに進行して上記のファイバカプラに導かれる。
【0038】
一方、参照光は、光ファイバにより導光され、参照光の光路に沿って移動可能な参照ミラーにより反射され、その反射光は再び上記のファイバカプラに導かれる。いくつかの実施形態では、参照光の光路には、偏波調整器(偏波コントローラ)や、分散補償用の光学素子(ペアプリズム等)や、偏光補正用の光学素子(波長板等)や、光減衰器(アッテネータ)が設けられている。偏波調整器は、例えば、ループ状にされた光ファイバに対して外部から応力を与えることで、当該光ファイバ内を通過している参照光の偏光状態を調整する。光減衰器は、制御ユニット200の制御の下で光ファイバを通過している参照光の光量を調整する。
【0039】
測定光の戻り光と参照ミラーにより反射された参照光が入射する上記のファイバカプラは、測定光の戻り光と参照光とを合波する。これにより生成された干渉光は、光ファイバにより検出器に導光される。このとき、別のファイバカプラにより所定の分岐比(例えば50:50)で干渉光を分岐して一対の干渉光が生成される。一対の干渉光は、検出器(バランスドフォトダイオード)により検出される。
【0040】
検出器は、一対の干渉光を検出した結果(検出信号)を図示しないDAQ(Data Acquisition System)に送る。DAQには、OCT光源からクロックが供給される。このクロックは、波長可変光源により所定の波長範囲内にて掃引される各波長の出力タイミングに同期して生成される。DAQは、このクロックに基づいて検出信号をサンプリングする。サンプリング結果は、OCT画像を形成するための画像形成ユニット220に送られる。
【0041】
いくつかの実施形態に係る装置光学系100には、被検眼Eに対する装置光学系100のアライメントを行うためのアライメント系、及び被検眼Eに対する装置光学系100のフォーカシングを行うためのフォーカス系のうちの少なくとも1つを含む。
【0042】
(制御ユニット200)
制御ユニット200は、制御部201と、記憶部202とを含む。制御部201の機能は、例えばプロセッサにより実現される。この明細書において、プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(例えば、SPLD(Simple Programmable Logic Device)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array))等の回路により実現される。記憶部202には、眼科装置1を制御するためのコンピュータプログラムがあらかじめ格納される。このコンピュータプログラムには、各種の光源制御用プログラム、光スキャナ制御用プログラム、各種の検出器制御用プログラム、画像形成用プログラム、データ処理用プログラム及びユーザインターフェイス用プログラムなどが含まれる。このようなコンピュータプログラムに従って制御部201が動作することにより、制御ユニット200は制御処理を実行する。
【0043】
記憶部202は、各種のデータを記憶する。記憶部202に記憶されるデータとしては、干渉光学系40を用いて取得されたOCTデータ等の被検眼のデータやOCT画像や被検眼情報などがある。被検眼情報は、患者IDや氏名などの被検者情報や、左眼/右眼の識別情報や、電子カルテ情報などを含む。
【0044】
(画像形成ユニット220)
画像形成ユニット220は、干渉光学系40により得られた干渉光の検出結果に基づいて、光スキャナ30により偏向された測定光の進行方向に沿った被検眼Eの断層像(Aスキャン画像)を形成する。画像形成ユニット220は、光スキャナ30により偏向された測定光の複数の進行方向に対応した複数の断層像を形成することができる。すなわち、画像形成ユニット220は、第1進行方向に対応した被検眼Eの第1断層像と、光スキャナ30により偏向された測定光の第2進行方向に対応した被検眼Eの第2断層像とを形成することができる。画像形成ユニット220は、例えば従来のOCTと同様に、検出器から入力される受光信号と、制御ユニット200から入力される画素位置信号とに基づいて、被検眼Eの断層像を形成する。
【0045】
また、画像形成ユニット220は、測定光の進行方向に沿った被検眼Eの断層像(Aスキャン画像)から、公知の手法によりBスキャン画像やCスキャン画像を形成することができる。例えば、画像形成ユニット220は、例えば一連の波長走査毎に(Aライン毎に)、干渉光の検出結果に基づくスペクトル分布にフーリエ変換等を施すことにより、各Aラインにおける反射強度プロファイルを形成し、各Aラインの反射強度プロファイルを画像化することにより画像データを形成することが可能である。
【0046】
画像形成ユニット220は、画像形成用プログラムを記憶した記憶装置と、この画像形成用プログラムに従って動作するプロセッサとを含む。
【0047】
(データ処理ユニット230)
データ処理ユニット230は、制御ユニット200からの制御を受け、装置光学系100を用いて得られた受光結果に対して各種のデータ処理(画像処理)や解析処理を施す。例えば、データ処理ユニット230は、画像の輝度補正や分散補正等の補正処理を実行する。いくつかの実施形態では、データ処理ユニット230は、画像解析、画像評価、診断支援などのデータ処理を実行する。また、データ処理ユニット230は、断層像に対して各種の画像処理や解析処理を施す。データ処理ユニット230は、断層像の間の画素を補間する補間処理などの公知の画像処理を実行することにより、被検眼Eのボリュームデータ(ボクセルデータ)を形成することができる。ボリュームデータに基づく画像を表示させる場合、データ処理ユニット230は、このボリュームデータに対してレンダリング処理を施して、特定の視線方向から見たときの擬似的な3次元画像を形成する。
【0048】
データ処理ユニット230は、干渉光学系40により得られた干渉光の検出結果に基づいて被検眼Eにおける所定の部位間の眼内距離を求め、求められた眼内距離に基づいて、画像形成ユニット220により形成された断層像を補正する。
【0049】
図2に、
図1のデータ処理ユニット230の構成例のブロック図を示す。データ処理ユニット230は、眼内距離算出部231と、画像補正部232とを含む。
【0050】
眼内距離算出部231は、干渉光学系40により得られた干渉光の検出結果に基づいて被検眼における所定の部位間の眼内距離を求める。例えば、眼内距離算出部231は、干渉光学系40により得られた干渉光の検出結果を解析することにより眼内の所定部位に相当する干渉光のピーク位置を特定し、特定されたピーク位置間の距離に基づいて上記の眼内距離を求める。所定の部位間の眼内距離としては、眼軸長や、瞳孔中心等に設定された測定光のスキャン中心位置から網膜までの距離などがある。眼内距離として眼軸長が求められる場合、眼内距離算出部231は、角膜頂点に相当するピーク位置から網膜に相当するピーク位置までの距離に基づいて眼軸長を求める。眼内距離として測定光のスキャン中心位置から網膜までの距離が求められる場合、眼内距離算出部231は、スキャン中心位置を特定し、特定されたスキャン中心位置から網膜に相当するピーク位置までの距離に基づいて眼内距離を求める。
【0051】
画像補正部232は、光スキャナ30により変更された画角に応じて断層像を補正する。光スキャナ30は、測定光の偏向角度を変更することにより画角を変更する。それにより、測定光の偏向角度(スキャン角度)によって異なるスキャン長に応じた断層像の補正が可能になる
【0052】
具体的には、画像補正部232は、眼内距離算出部231により求められた眼内距離に基づいて、画像形成ユニット220により形成された断層像を補正することにより、補正画像を生成する。それにより、測定光の偏向角度(スキャン角度)によって異なるスキャン長を実質的に求め、求められたスキャン長に応じた断層像の補正が可能になる。従って、被検眼Eの眼球光学系の収差に応じて断層像を補正することができるため、被検眼Eに応じた断層像の歪みを高精度に補正することができる。
【0053】
いくつかの実施形態では、画像補正部232は、Aスキャン毎に断層像を補正し、補正された複数の断層像が干渉光学系40の光軸方向に対応する方向に沿って配置された補正画像を生成する。干渉光学系40の光軸方向(測定光の進行方向)に対応する方向として、当該光軸方向に直交する方向がある。画像補正部232による補正処理には、眼内距離に基づく画素値の合成処理、間引き処理、伸張処理などがある。それにより、被検眼Eの眼球光学系の収差に応じて補正されたBスキャン画像を取得することができる。いくつかの実施形態では、画像補正部232は、眼内距離算出部231により複数のAスキャン単位で求められた眼内距離に基づいて断層像を補正する。
【0054】
いくつかの実施形態では、画像補正部232は、各断層像における所定の部位間の距離が一定値になるように複数の断層像のそれぞれを補正する。それにより、被検眼Eの眼球光学系の収差が補償されたBスキャン画像(Cスキャン画像)を取得することができる。
【0055】
いくつかの実施形態では、画像補正部232は、偏向角度が異なる複数のAスキャン画像それぞれを眼内距離に基づいて補正する。画像補正部232は、補正された複数のAスキャン画像がスキャン中心位置を通過し各Aスキャン画像のスキャン方向に沿うように配置された補正画像を生成する。すなわち、画像補正部232は、測定光の複数の進行方向に対応した複数の断層像のそれぞれを眼内距離に基づいて補正し、補正された複数の断層像がスキャン中心位置を通過し各断層像のスキャン方向に相当する方向に沿うように配置された補正画像を生成する。例えば、画像補正部232は、測定光の第1進行方向に対応した第1断層像及び測定光の第2進行方向に対応した第2断層像のそれぞれを眼内距離に基づいて補正する。画像補正部232は、補正された第1断層像がスキャン中心位置を通過し第1進行方向に相当する方向に沿うように配置され、補正された第2断層像がスキャン中心位置を通過し第2進行方向に相当する方向に沿うように配置された補正画像を生成する。それにより、被検眼Eの眼内の形状に対応した補正画像を取得することが可能になる。
【0056】
データ処理ユニット230は、制御ユニット200と同様に、制御部と、記憶部とを含み、記憶部にあらかじめ格納されたコンピュータプログラムに従って制御部が動作することによりデータ処理を実行する。
【0057】
いくつかの実施形態では、眼科情報処理装置が、装置光学系100により得られた干渉光の検出結果に対して上記の処理を行う。例えば、眼科情報処理装置は、画像形成ユニット220と、データ処理ユニット230と、操作ユニット240と、表示ユニット250と、これらを制御するための制御ユニットとを含む。眼科情報処理装置に含まれる制御ユニットは、制御ユニット200の上記の機能のうち画像形成ユニット220と、データ処理ユニット230と、操作ユニット240と、表示ユニット250とを制御する機能を有する。
【0058】
(操作ユニット240)
操作ユニット240は、眼科装置1に対してユーザが指示を入力するために使用される。操作ユニット240は、コンピュータに用いられる公知の操作デバイスを含んでよい。例えば、操作ユニット240は、マウスやタッチパッドやトラックボール等のポインティングデバイスを含んでよい。また、操作ユニット240は、キーボードやペンタブレット、専用の操作パネルなどを含んでよい。
【0059】
(表示ユニット250)
表示ユニット250は、液晶ディスプレイなどの表示部を備え、制御ユニット200からの制御を受け、画像などの各種情報を表示する。表示ユニット250と操作ユニット240は、それぞれ個別のユニットとして構成される必要はない。例えばタッチパネルのように、表示機能と操作機能とが一体化されたデバイスを用いることも可能である。
【0060】
いくつかの実施形態に係る眼科装置1には、装置光学系100を3次元的に(X方向、Y方向、Z方向に)移動する光学系移動部(図示せず)が設けられている。それにより、被検眼Eと装置光学系100とを相対的に移動することが可能である。光学系移動部は、
図1に示す装置光学系100のうち一部の光学系だけを移動するものであってもよい。光学系移動部には、移動対象の光学系(例えば、装置光学系100)を保持する保持部材と、この保持部材を移動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。アクチュエータは、例えばパルスモータにより構成される。伝達機構は、例えば歯車の組み合わせやラック・アンド・ピニオンなどによって構成される。制御ユニット200は、光学系移動部を制御して、装置光学系100に設けられた光学系を3次元的に移動させることができる。例えば、この制御は、アライメントやトラッキングにおいて用いられる。トラッキングとは、被検眼Eの運動に合わせて装置光学系100を移動させるものである。トラッキングを行う場合には、事前にアライメントとピント合わせが実行される。トラッキングは、被検眼Eを動画撮影して得られる画像に基づき被検眼Eの位置や向きに合わせて装置光学系100をリアルタイムで移動させることにより、アライメントとピントが合った好適な位置関係を維持する機能である。
【0061】
スキャン中心位置又は瞳孔中心は、実施形態に係る「第1部位」の一例である。画像形成ユニット220は、実施形態に係る「画像形成部」の一例である。制御ユニット200又は制御部201は、実施形態に係る「制御部」の一例である。光スキャナ30は、実施形態に係る「画角変更部」の一例である。
【0062】
<動作例>
実施形態に係る眼科装置1の動作の例を説明する。
【0063】
図3、
図4、及び
図5に、実施形態に係る眼科装置1の動作例の概要を示す。
図3は、実施形態に係る眼科装置1の動作例のフロー図を表す。
図4は、
図3のステップS2の動作例のフロー図を表す。
図5は、
図4のステップS15の動作例のフロー図を表す。制御ユニット200の記憶部202には、
図3~
図5に示す処理を実現するためのコンピュータプログラムが記憶されている。制御ユニット200の制御部201は、このコンピュータプログラムに従って動作することにより、
図3~
図5に示す処理を実行する。
【0064】
(S1:アライメント)
まず、制御ユニット200は、光学系移動部を制御し、装置光学系100を初期位置に移動させる。その後、制御ユニット200は、被検眼Eに対して装置光学系100の位置合わせを行うためのアライメントの実行を制御する。
【0065】
例えば、制御ユニット200は、観察光学系20を用いて取得された被検眼Eの眼底像(眼底Efの正面画像)を表示ユニット250の表示部に表示させる。制御ユニット200は、操作ユニット240を用いてユーザにより指定された方向に装置光学系100を移動するように光学系移動部を制御することが可能である。この場合、観察光学系20は、照明光学系10により照明されている被検眼Eの眼底像を取得する。
【0066】
いくつかの実施形態では、制御ユニット200は、図示しない前眼部撮影系により得られた被検眼Eの前眼部像を表示ユニット250の表示部に表示させる。制御ユニット200は、操作ユニット240を用いてユーザにより指定された方向に装置光学系100を移動するように光学系移動部を制御する。
【0067】
いくつかの実施形態では、制御ユニット200は、図示しないアライメント光源からの光を被検眼Eに投射し、その戻り光に対応した像に基づいて光学系移動部を制御することにより、被検眼Eに対する装置光学系100の位置合わせを実行する。
【0068】
いくつかの実施形態では、制御ユニット200は、図示しない2以上のカメラを用いて互いに異なる方向から被検眼Eの前眼部を撮影させ、視差が設けられた2以上の画像から被検眼Eの位置を特定させる。制御ユニット200は、特定された被検眼Eの位置に基づいて光学系移動部を制御することにより、被検眼Eに対する装置光学系100の位置合わせを実行する。
【0069】
制御ユニット200は、アライメント完了後に、ピント調整を行い、トラッキングを開始させることが可能である。
【0070】
制御ユニット200は、観察光学系20により得られた眼底像の合焦状態(ぼけ具合)を特定し、特定された合焦状態が所望の合焦状態となるように装置光学系100等を移動させることでピント調整を行うことが可能である。また、制御ユニット200は、2以上のカメラを用いて互いに異なる方向から前眼部を撮影し、視差が設けられた2以上の画像から合焦状態を特定し、特定された合焦状態が所望の合焦状態となるように装置光学系100のZ方向の移動量を求めてもよい。
【0071】
また、制御ユニット200は、観察光学系20を用いて被検眼Eの画像を反復的に取得し、所定のタイミングで取得された画像中の特徴部位を特定させる。制御ユニット200は、特定された特徴部位の位置が変更したときのずれ量がキャンセルされるように光学系移動部を制御することによりトラッキングを行うことが可能である。
【0072】
(S2:断層像を取得)
次に、制御ユニット200は、干渉光学系40を用いてOCTを実行し、被検眼Eの断層像を画像形成ユニット220に形成させる。ステップS2では、上記のように被検眼Eの眼内距離を求め、求められた眼内距離に基づいて補正された断層像が取得される。ステップS2の詳細については後述する。
【0073】
(S3:断層像を表示)
続いて、制御ユニット200は、ステップS2において取得された断層像を表示ユニット250の表示部に表示させる。以上で、眼科装置1の動作は終了である(エンド)。
【0074】
図3のステップS2では、
図4に示すような処理が実行される。なお、
図4では、光スキャナ30に対して走査条件(走査開始位置、走査終了位置、走査エリア、走査パターン)が既に設定されているものとする。また、干渉光学系40のOCT光源に対して波長掃引条件(掃引開始波長、掃引終了波長、掃引波長範囲)が既に設定されているものとする。
【0075】
(S11:光スキャナを動作開始)
制御ユニット200は、光スキャナ30を制御することにより測定光の偏向動作を開始させる。光スキャナ30は、事前に設定された走査条件に対応した偏向角度範囲での偏向動作を開始する。
【0076】
(S12:OCT光源を点灯開始)
制御ユニット200は、干渉光学系40のOCT光源を制御することにより出力光の出射を開始させる。OCT光源は、事前に設定された波長掃引条件に対応した出力光の波長掃引動作を開始する。
【0077】
(S13:干渉データを取得)
干渉光学系40は、上記のようにOCT光源からの光に基づいて生成された測定光を光スキャナ30を介して被検眼Eに投射し、参照光と被検眼Eからの測定光の戻り光との干渉光を生成し、生成された干渉光を検出する。干渉光の検出結果は、干渉データとして取得される。
【0078】
(S14:断層像を形成)
制御ユニット200は、ステップS13において取得された干渉データに基づいて、公知の手法により被検眼Eの断層像を画像形成ユニット220に形成させる。ステップS14では、少なくとも1つのBスキャン画像が形成される。
【0079】
(S15:断層像を補正)
制御ユニット200は、データ処理ユニット230を制御することにより、ステップS14において形成された断層像に対し被検眼Eの眼球光学系の収差に対応した補正を施す。ステップS15の詳細については後述する。
【0080】
(S16:OCT光源を消灯)
制御ユニット200は、干渉光学系40のOCT光源を制御することにより出力光の出射を停止させる。OCT光源は、出力光の波長掃引動作を停止する。以上で、
図3のステップS2は終了である(エンド)。
【0081】
図4のステップS15では、
図5に示すような処理が実行される。
【0082】
(S21:各部位の位置を特定)
制御ユニット200は、
図4のステップS14において取得された断層像をデータ処理ユニット230に解析させる。眼内距離算出部231は、Aスキャンライン毎に各部位のZ方向(深度方向)の位置を特定する。例えば、眼内距離算出部231は、ステップS14において取得されたBスキャン画像に基づいて、Aスキャンライン毎に各部位のZ方向の位置を特定する。
【0083】
図6A及び
図6Bに、実施形態に係る眼内距離算出部231の動作説明図を示す。
図6Aは、被検眼Eに入射する測定光の経路を模式的に表したものである。
図6Bは、
図6Aに示す経路で被検眼Eに入射する測定光によるスキャンにより得られた断層像の一例を表したものである。
【0084】
光スキャナ30により偏向された測定光は、
図6Aに示すように被検眼Eの瞳孔に対して様々な入射角度で入射される。被検眼Eに入射した測定光は、例えば瞳孔中心に設定されたスキャン中心位置Csを中心に眼内の各部に向けて投射される。
【0085】
例えば、
図6Aの測定光LS1を用いて得られた干渉データは、
図6BのAスキャン画像IMa1の生成に用いられる。同様に、測定光LS2を用いて得られた干渉データは、Aスキャン画像IMa2の生成に用いられ、測定光LS3を用いて得られた干渉データは、Aスキャン画像IMa3の生成に用いられる。
【0086】
この実施形態では、眼内距離算出部231は、Aスキャンライン毎に、角膜前面に相当する角膜前面位置CF、角膜後面に相当する角膜後面位置CB、水晶体前面に相当する水晶体前面位置LF、水晶体後面に相当する水晶体後面位置LB、網膜に相当する網膜位置Rを特定する。
【0087】
図7に、
図4のステップS14において取得された断層像の一例を模式的に示す。ステップS14において、N(Nは2以上の整数)ラインのAスキャン画像により構成されるBスキャン画像が取得されたものとする。
図7において、縦方向はAスキャン方向を表し、横方向はBスキャン方向を表す。なお、
図7では、瞳位置(瞳孔中心位置)Pが図示されている。
【0088】
Aスキャンラインの位置をn(1≦n≦N、nは整数)で表すと、眼内距離算出部231は、Aスキャンライン「n」について、角膜前面位置CF(n)、角膜後面位置CB(n)、水晶体前面位置LF(n)、水晶体後面位置LB(n)、網膜位置R(n)を特定する。
【0089】
(S22:瞳位置を特定)
眼内距離算出部231は、ステップS21において特定された各部位の位置から瞳位置Pを特定する。
【0090】
眼内距離算出部231は、Aスキャンライン毎に、瞳位置Pを特定することが可能である。例えば、眼内距離算出部231は、模型眼における各部位の位置関係に基づいて、角膜前面位置CF(n)、水晶体前面位置LF(n)、及び水晶体後面位置LB(n)から瞳位置P(n)を特定する。
【0091】
(S23:眼内距離を特定)
眼内距離算出部231は、ステップS21において特定された各部位の位置とステップS22において特定された瞳位置から眼内距離を特定する。眼内距離算出部231は、Aスキャンライン毎に、眼内距離を特定することが可能である。例えば、眼内距離算出部231は、瞳位置Pから網膜位置Rまでの眼内距離Tを眼軸長として特定する。この場合、眼内距離算出部231は、瞳位置P(n)と網膜位置R(n)との眼内距離T(n)を特定する。
【0092】
(S24:眼内距離に基づいて断層像を補正)
画像補正部232は、ステップS23において特定された眼内距離に基づいて、ステップS14において取得された断層像を補正する。画像補正部232は、各Aスキャン画像における眼内距離T(n)が一定値になるように、ステップS14において取得された各Aスキャン画像を補正することができる。いくつかの実施形態では、眼内距離算出部231は、Bスキャン方向に眼内距離T(n)の平均値を求める。画像補正部232は、求められた眼内距離T(n)の平均値になるように、ステップS14において取得された各Aスキャン画像を補正することができる。以上で、
図4のステップS15は終了である(エンド)。
【0093】
図8に、実施形態に係る眼科装置1の動作説明図を示す。
図8は、眼内距離が一定値になるように断層像が補正された場合の補正画像の一例を模式的に表す。
【0094】
図4のステップS14において取得された断層像IMG1は、ステップS24における画像補正処理により断層像IMG2に補正される。ステップS24では、各Aスキャン画像が、瞳位置Pから網膜位置Rまでの距離が一定である補正画像が生成される。この場合、測定光の偏向角度にかかわらず、眼内距離が一定値になるように補正したので、被検眼Eの断層構造を容易に把握することができるようになる。
【0095】
<変形例>
(第1変形例)
眼内距離算出部231による眼内距離算出処理は、
図7に示す処理に限定されるものではない。
【0096】
図9に、実施形態の第1変形例に係る眼内距離算出部の動作説明図を示す。
【0097】
第1変形例に係る眼内距離算出部は、ステップS14において取得された断層像に対して、Bスキャン方向の各ラインについて分散値を求め、輝度値が閾値以上で、且つ分散値が最小のラインを瞳位置Pとして特定する。眼内距離算出部は、実施形態と同様に、各Aスキャンラインにおける網膜位置R(n)を特定する。
【0098】
眼内距離算出部は、特定された瞳位置Pと網膜位置Rとの距離Qを求め、求められた距離Qと測定光が通過する媒質の屈折率とに基づいて眼内距離Tを求める。例えば、眼内距離算出部は、距離Qと媒質(角膜、水晶体、房水、硝子体等)の屈折率の平均値とを乗算することにより眼内距離Tを求めることができる。
【0099】
例えば、記憶部202には、グルストランドの模型眼やSanz & Navarro等の模型眼における眼球の構造を示す形状情報や屈折率情報などの模型眼データ(光学パラメータ)があらかじめ記憶される。眼内距離算出部は、記憶部202に記憶された模型眼データを用いて眼内距離を算出することが可能である。例えば、眼内距離算出部は、距離Qと模型眼データの屈折率(例えば、1.375)とを乗算することにより眼内距離Tを求める。
【0100】
第1変形例に係る画像補正部は、以上のようにして求められた眼内距離Tに基づいて断層像を補正する。すなわち、画像補正部は、被検眼Eにおける測定光の通過部位に対応した1以上の光学パラメータを用いて断層像を補正する。
【0101】
(第2変形例)
画像補正部232による画像補正処理は、
図8に示すような処理に限定されるものではない。
【0102】
図10A及び
図10Bに、実施形態の第2変形例に係る画像補正部の動作説明図を示す。
図10Aは、第2変形例に係る眼内距離算出部によるスキャン中心位置の特定処理の説明図を表す。
図10Bは、第2変形例に係る画像補正部による画像補正処理の説明図を表す。
【0103】
第2変形例に係る眼内距離算出部は、第1変形例と同様に、ステップS14において取得された断層像に対して、Bスキャン方向の各ラインについて分散値を求め、輝度値が閾値以上で、且つ分散値が最小のラインを瞳位置Pとして特定する。眼内距離算出部は、瞳位置Pにおけるスキャン中心位置Cs´を特定する。例えば、眼内距離算出部は、瞳位置PにおけるBスキャン方向の中心位置をスキャン中心位置Cs´として特定する。また、眼内距離算出部は、被検眼Eの眼球光学系が模型眼と同様であると仮定して、模型眼データを用いてスキャン中心位置Cs´を特定してもよい。また、眼内距離算出部は、公知の光線追跡処理によりスキャン中心位置Cs´を特定してもよい。
【0104】
第2変形例に係る画像補正部は、
図10Bに示すように、複数のAスキャン画像それぞれを対応する眼内距離に基づいて補正する。画像補正部は、補正された各断層像がスキャン中心位置Cs´を通過し当該測定光の進行方向に相当する方向に沿うように配置された補正画像を生成する。具体的には、画像補正部は、第1進行方向の測定光を用いて形成された第1断層像及び第2進行方向の測定光を用いて形成された第2断層像のそれぞれを眼内距離に基づいて補正する。画像補正部は、補正された第1断層像がスキャン中心位置Cs´を通過し第1進行方向に相当する方向に沿うように配置され、補正された第2断層像がスキャン中心位置Cs´を通過し第2進行方向に相当する方向に沿うように配置された補正画像を生成する。
【0105】
これにより、スキャン中心位置Cs´を中心に、補正された断層像が配置されるため、被検眼Eの実際の眼球構造を反映した補正画像を取得することが可能になる。
【0106】
(第3変形例)
上記のように、制御ユニット200は、波長掃引光源における波長の掃引周波数を変更することにより、測定光の進行方向の深度範囲を変更することが可能である。例えば、第3変形例では、深度範囲が短い高精細な断層像を用いて正確に求められた眼内距離に基づいて、深度範囲が長い断層像が補正される。
【0107】
図11に、実施形態の第3変形例に係る眼科装置の動作例の概要を示す。
図11は、第3変形例に係る眼科装置の動作例のフロー図を表す。制御ユニット200の記憶部202には、
図11に示す処理を実現するためのコンピュータプログラムが記憶されている。制御ユニット200の制御部201は、このコンピュータプログラムに従って動作することにより、
図11に示す処理を実行する。なお、
図11では、事前にアライメントが完了しているものとする。
【0108】
(S31:低速モードに設定)
まず、制御ユニット200は、OCT光源の動作モードを低速モードに設定する。それにより、OCT光源は、低速モードに対応した波長の掃引周波数で出力波長が変化する出力光を出射する。
【0109】
(S32:断層像を取得)
次に、制御ユニット200は、干渉光学系40を用いてOCTを実行し、被検眼Eの断層像を画像形成ユニット220に形成させる。
【0110】
(S33:画像補正)
続いて、制御ユニット200は、眼内距離算出を制御することにより、ステップS32において形成された断層像から眼内距離を算出させ、画像補正部を制御することにより、算出された眼内距離に基づいて補正画像を生成させる。画像補正部は、例えば、
図10Bに示すような補正画像を生成する。
【0111】
(S34:補正用データを作成)
制御ユニット200は、データ処理ユニット230を制御することにより、ステップS33において生成された補正画像から補正用データを生成させる。例えば、データ処理ユニット230は、ステップS33において生成された補正画像を解析することにより、角膜や網膜等の所定部位の形状情報(例えば、曲率又は眼内距離)を含む補正用データを生成する。
【0112】
(S35:高速モードに設定)
次に、制御ユニット200は、OCT光源の動作モードを高速モードに設定する。それにより、OCT光源は、高速モードに対応した波長の掃引周波数で出力波長が変化する出力光を出射する。ステップS35では、ステップS31より波長の掃引周波数が高い。
【0113】
(S36:前眼部の断層像を取得)
続いて、制御ユニット200は、例えばOCT光源の波長掃引範囲を変更することにより、被検眼Eの前眼部に対して干渉光学系40を用いたOCTを実行させる。制御ユニット200は、干渉光学系40により得られた干渉データを用いて被検眼Eの前眼部の断層像を画像形成ユニット220に形成させる。
【0114】
(S37:後眼部の断層像を取得)
同様に、制御ユニット200は、例えばOCT光源の波長掃引範囲を変更することにより、被検眼Eの後眼部に対して干渉光学系40を用いたOCTを実行させる。制御ユニット200は、干渉光学系40により得られた干渉データを用いて被検眼Eの後眼部の断層像を画像形成ユニット220に形成させる。
【0115】
(S38:補正用データを用いた画像補正)
制御ユニット200は、画像補正部を制御することにより、ステップS34において生成された補正用データに基づいて、ステップS36において取得された前眼部の断層像を補正させ、前眼部補正画像を生成させる。画像補正部は、ステップS34において求められた曲率に合わせて所定部位の形状を変更するように前眼部の断層像を補正する。また、画像補正部は、ステップS34において求められた眼内距離に基づいて前眼部の断層像を補正する。同様に、制御ユニット200は、画像補正部を制御することにより、ステップS34において生成された補正用データに基づいて、ステップS37において取得された後眼部の断層像を補正させ、後眼部補正画像を生成させる。
【0116】
(S39:合成画像を表示)
制御ユニット200は、データ処理ユニット230を制御することにより合成画像を生成させる。データ処理ユニット230は、ステップS33において生成された補正画像に、ステップS36において生成された前眼部補正画像及びステップS37において生成された後眼部補正画像の少なくとも一方を重ね合わせた合成画像を生成する。以上で、第3変形例に係る眼科装置の動作は終了である(エンド)。
【0117】
以上説明したように、第3変形例では、画像形成ユニット220は、測定光の進行方向の第1深度範囲の被検眼Eの断層像(第3断層像)と、第1深度範囲を含み第1深度範囲より長い第2深度範囲の被検眼Eの断層像(第4断層像)とを形成する。第1深度範囲の断層像は、第2深度範囲の断層像より高精細な画像である。例えば、データ処理ユニット230は、第1深度範囲の断層像を解析することにより補正用データを生成する。補正用データは、第1深度範囲の断層像を解析することにより得られた眼内距離であってよい。画像補正部は、補正用データ(例えば、眼内距離)に基づいて、第2深度範囲の断層像を補正する。
【0118】
それにより、深度範囲が短く高精細な断層像から得られた補正用データを用いて、深度範囲が長く低画質な断層像を補正することができるので、低画質の断層像に対して高精度な補正を行うことができるようになる。
【0119】
(第4変形例)
実施形態又はその変形例では、光スキャナ30により測定光の偏向角度を変更することにより画角を変更する場合について説明したが、実施形態にかかる眼科装置の構成はこれに限定されるものではない。
【0120】
例えば、眼科装置は、屈折力が異なる対物レンズを切り替えることにより画角を変更してもよい。この場合でも、画像補正部は、対物レンズの屈折力を切り替えることにより変更された画角に応じて、上記の実施形態又はその変形例と同様に断層像を補正することが可能である。
【0121】
所定の対物レンズにより第1画角が設定されているとき、制御ユニット200は、光スキャナ30に測定光で被検眼Eをスキャンさせ、被検眼の第1範囲を表す第1画像を画像形成ユニット220に形成させる。更に、制御ユニット200は、上記のように眼内距離に基づいて第1画像を画像補正部に補正させ、補正された第1画像を表示ユニット250の表示部に表示させる。一方、対物レンズを切り替えることにより第1画角より狭い第2画角が設定されているとき、制御ユニット200は、光スキャナ30に測定光で被検眼Eをスキャンさせ、被検眼Eの第2範囲を表す第2画像を画像形成ユニット220に形成させる。更に、制御ユニット200は、形成された第2画像を表示ユニット250の表示部に表示させる。
【0122】
すなわち、画角が広くなると画質が劣化するため、広い画角で取得された断層像に対して上記の実施形態又はその変形例と同様に補正し、より狭い画角で取得された断層像に対して上記の補正を行わない。
【0123】
また、例えば、眼科装置は、装置光学系を被検眼Eの瞳孔を中心に旋回させることにより画角を変更してもよい。この場合でも、画像補正部は、装置光学系を旋回させることにより変更された画角に応じて、上記の実施形態又はその変形例と同様に断層像を補正することが可能である。
【0124】
<作用・効果>
実施形態に係る眼科装置の効果について説明する。
【0125】
いくつかの実施形態に係る眼科装置(1)は、光スキャナ(30)と、干渉光学系(40)と、画像形成部(画像形成ユニット220)と、眼内距離算出部(231)と、画像補正部(232)と、制御部(制御ユニット200、制御部201)とを含む。光スキャナは、被検眼Eにおける第1部位(スキャン中心位置、瞳孔中心)と光学的に略共役な位置に配置される。干渉光学系は、光源(OCT光源)からの光を参照光と測定光とに分割し、光スキャナを介して測定光を被検眼に照射し、被検眼からの測定光の戻り光と参照光との干渉光を光スキャナを介して検出する。画像形成部は、干渉光学系により得られた干渉光の検出結果に基づいて、光スキャナにより偏向された測定光の第1進行方向に対応した被検眼の断層像を形成する。眼内距離算出部は、干渉光の検出結果に基づいて被検眼における所定の部位間の眼内距離を求める。画像補正部は、眼内距離算出部により求められた眼内距離に基づいて、画像形成部により形成された断層像を補正する。制御部は、少なくとも光スキャナを制御する。
【0126】
このような構成によれば、干渉光学系を用いて取得された断層像から眼内距離を求め、求められた眼内距離に基づいて断層像を補正するようにしたので、測定光の偏向角度が大きい場合であっても被検眼の断層像の歪みを高精度に補正することが可能になる。
【0127】
いくつかの実施形態に係る眼科装置では、画像形成部は、光スキャナにより偏向された測定光の複数の進行方向に対応した複数の断層像を形成する。画像補正部は、画像形成部により形成された複数の断層像のそれぞれを眼内距離に基づいて補正し、補正された複数の断層像が干渉光学系の光軸方向に対応する方向に沿って配置された補正画像を生成する。
【0128】
このような構成によれば、測定光の複数の進行方向に対応した複数の断層像を形成し、形成された複数の断層像のそれぞれを眼内距離に基づいて補正し、補正された複数の断層像が干渉光学系の光軸方向に対応する方向に沿って配置された補正画像を生成するようにしたので、被検眼の眼球光学系の収差が補償された補正画像を容易に取得することが可能になる。
【0129】
いくつかの実施形態に係る眼科装置では、画像補正部は、各断層像における所定の部位間の距離が一定値になるように複数の断層像のそれぞれを補正する。
【0130】
このような構成によれば、複数の断層像における眼内距離が一定になる断層構造がフラットな補正画像を取得することが可能になる。
【0131】
いくつかの実施形態に係る眼科装置では、画像形成部は、第1進行方向に対応した被検眼の第1断層像と、光スキャナにより偏向された測定光の第2進行方向に対応した被検眼の第2断層像とを形成する。画像補正部は、第1断層像及び第2断層像のそれぞれを眼内距離に基づいて補正し、補正された第1断層像が第1部位を通過し第1進行方向に相当する方向に沿うように配置され、補正された第2断層像が第1部位を通過し第2進行方向に相当する方向に沿うように配置された補正画像を生成する。
【0132】
このような構成によれば、第1部位を通過する各測定光の進行方向に沿って断層像が配置された補正画像を生成するようにしたので、被検眼の実際の眼内の構造を反映した補正画像を取得することが可能になる。
【0133】
いくつかの実施形態に係る眼科装置では、画像形成部は、測定光の進行方向の第1深度範囲の被検眼の第3断層像と、第1深度範囲を含み第1深度範囲より長い第2深度範囲の被検眼の第4断層像とを形成する。眼内距離算出部は、第3断層像に基づいて眼内距離を求める。画像補正部は、眼内距離に基づいて第4断層像を補正する。
【0134】
このような構成によれば、より高精細な断層像から得られた眼内距離に基づいて、画質が劣る断層像を補正するようにしたので、低画質の断層像を高精度に補正することができる。
【0135】
いくつかの実施形態に係る眼科装置では、光源は、波長の掃引周波数を変更可能な波長掃引光源である。制御部は、掃引周波数を変更することにより深度範囲が異なる複数の断層像を画像形成部に形成させる。
【0136】
このような構成によれば、測定光の偏向角度が大きい場合であっても被検眼の任意の部位の断層像の歪みを高精度に補正することが可能になる。
【0137】
いくつかの実施形態に係る眼科装置は、画角を変更するための画角変更部(光スキャナ30)を含み、画像補正部は、画角変更部により変更された画角に応じて断層像を補正する。
【0138】
このような構成によれば、測定光の偏向角度によって異なるスキャン長に応じた断層像の補正が可能になる。従って、被検眼の眼球光学系の収差に応じて断層像を補正することができるため、被検眼に応じた断層像の歪みを高精度に補正することができる。
【0139】
いくつかの実施形態に係る眼科装置では、画角変更部により第1画角が設定されているとき、制御部は、光スキャナに測定光で前記被検眼をスキャンさせ、被検眼の第1範囲を表す第1画像を画像形成部に形成させ、眼内距離に基づいて第1画像を画像補正部に補正させ、補正された第1画像を表示手段(表示ユニット250の表示部)に表示させる。画角変更部により第1画角より狭い第2画角が設定されているとき、制御部は、光スキャナに測定光で被検眼をスキャンさせ、被検眼の第2範囲を表す第2画像を画像形成部に形成させ、形成された第2画像を表示手段に表示させる。
【0140】
このような構成によれば、画角が広い場合のみ断層像を補正し、画角が狭く高精細な断層像に対して補正を行わないようにしたので、画角が広く画質が劣る断層像だけを高精度に補正することができる。
【0141】
いくつかの実施形態に係る眼科装置は、被検眼における測定光の通過部位に対応した1以上の光学パラメータを記憶する記憶部(202)を含む。画像補正部は、1以上の光学パラメータを用いて断層像を補正する。
【0142】
このような構成によれば、測定光の通過部位に対応した高精度な断層像の補正が可能になる。
【0143】
いくつかの実施形態に係る眼科装置では、眼内距離算出部は、Aスキャンごとに、所定の部位間の眼内距離を求める。画像補正部は、Aスキャンごとに、眼内距離算出部により求められた眼内距離に基づいて断層像を補正する。
【0144】
このような構成によれば、Aスキャン毎に断層像を補正することにより、画角が大きい場合でも被検眼の断層像の歪みを高精度に補正することが可能になる。
【0145】
いくつかの実施形態に係る眼科装置では、眼内距離算出部は、複数のAスキャン単位で、所定の部位間の眼内距離を求める。画像補正部は、複数のAスキャン単位で眼内距離算出部により求められた眼内距離に基づいて断層像を補正する。
【0146】
このような構成によれば、複数のAスキャン単位に断層像を補正することにより、画角が大きい場合でも被検眼の断層像の歪みを高精度に補正することが可能になる。
【0147】
いくつかの実施形態に係る眼科装置では、眼内距離は、眼軸長である。
【0148】
このような構成によれば、画角が大きい場合でも眼軸長に応じて被検眼の断層像の歪みを高精度に補正することが可能になる。
【0149】
いくつかの実施形態に係る眼科装置では、眼内距離は、第1部位から網膜までの距離である。
【0150】
このような構成によれば、画角が大きい場合でも第1部位から網膜までの距離に応じて被検眼の断層像の歪みを高精度に補正することが可能になる。
【0151】
いくつかの実施形態に係る眼科情報処理装置は、画像形成部(画像形成ユニット220)と、眼内距離算出部(231)と、画像補正部(232)とを含む。画像形成部は、被検眼(E)における第1部位(スキャン中心位置、瞳孔中心)と光学的に略共役な位置に配置された光スキャナ(30)を用いた光コヒーレンストモグラフィにより取得されたデータ(干渉データ)に基づいて被検眼の断層像を形成する。眼内距離算出部は、上記のデータに基づいて被検眼における所定の部位間の眼内距離を求める。画像補正部は、眼内距離算出部により求められた眼内距離に基づいて、画像形成部により形成された断層像を補正する。
【0152】
いくつかの実施形態に係る眼科情報処理装置では、画像形成部は、光スキャナにより偏向された測定光の複数の進行方向に対応した複数の断層像を形成する。画像補正部は、画像形成部により形成された複数の断層像のそれぞれを眼内距離に基づいて補正し、補正された複数の断層像が測定光の進行方向に対応する方向に沿って配置された補正画像を生成する。
【0153】
いくつかの実施形態に係る眼科情報処理装置では、画像補正部は、各断層像における所定の部位間の距離が一定値になるように複数の断層像のそれぞれを補正する。
【0154】
いくつかの実施形態に係る眼科情報処理装置では、画像形成部は、測定光の第1進行方向に対応した被検眼の第1断層像と、光スキャナにより偏向された測定光の第2進行方向に対応した被検眼の第2断層像とを形成する。画像補正部は、第1断層像及び第2断層像のそれぞれを眼内距離に基づいて補正し、補正された第1断層像が第1部位を通過し第1進行方向に相当する方向に沿うように配置され、補正された第2断層像が第1部位を通過し第2進行方向に相当する方向に沿うように配置された補正画像を生成する。
【0155】
以上に示された実施形態は、この発明を実施するための一例に過ぎない。この発明を実施しようとする者は、この発明の要旨の範囲内において任意の変形、省略、追加等を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0156】
1 眼科装置
10 照明光学系
20 観察光学系
30 光スキャナ
40 干渉光学系
100 装置光学系
200 制御ユニット
201 制御部
202 記憶部
220 画像形成ユニット
230 データ処理ユニット
240 操作ユニット
250 表示ユニット
E 被検眼
Ef 眼底
M1、M2 光学素子