(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190054
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20221215BHJP
A47C 7/62 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
B60N2/90
A47C7/62 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175976
(22)【出願日】2022-11-02
(62)【分割の表示】P 2021080720の分割
【原出願日】2018-03-05
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】郭 裕之
(72)【発明者】
【氏名】草野 惇至
(57)【要約】
【課題】着座者の動作を特定することが可能なシートを提供する。
【解決手段】シートクッションS1における着座者の臀部に対応する位置に配置された第1クッションセンサSC1と、シートクッションS1における第1クッションセンサSC1よりも前に位置する第2クッションセンサSC2と、シートバックS2における下部に配置された第1バックセンサSB1と、シートバックS2における第1バックセンサSB1よりも上に配置された第2バックセンサSB2とを含むセンサと、複数のセンサのそれぞれから圧力値を取得可能にセンサと接続された制御部100とを備えるシートである。制御部100は、第1クッションセンサSC1、第2クッションセンサSC2、第1バックセンサSB1および第2バックセンサSB2のうち少なくとも2つのセンサの出力に基づいて、着座者の動作を特定するように構成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションと、
前記シートクッションに座っている着座者からの圧力値を取得する複数のセンサであって、前記シートクッションにおける前記着座者の臀部に対応する位置に配置された第1クッションセンサと、前記シートクッションにおける第1クッションセンサよりも前に位置する第2クッションセンサと、を含むセンサと、
複数の前記センサのそれぞれから前記圧力値を取得可能に前記センサと接続された制御部とを備える動作判定装置であって、
前記制御部は、動作指示部と、動作判定部とを有しており、
前記動作指示部は、着座者に対して足を動かすことを指示し、
前記動作判定部は、基準姿勢のときの前記圧力値に対して、前記第1クッションセンサの圧力値および前記第2クッションセンサの圧力値が変化したことに基づいて、前記着座者が指示通りに足を動かしたことを判定することを特徴とする動作判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着座者の動作を特定可能なシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運転者のシートに圧力センサ等を搭載して、着座者の疲労状態を推定し、この推定結果に基づいて、シートを運動させる装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のシートは、シートが動くことによって疲労を回復させようとするものであるが、このような受動的な運動では、十分に疲労を回復させることはできない。それよりも、本願の発明者等は、能動的な運動を着座者に促すことによって、疲労を効果的に解消できるだけでなく、より楽しい旅を実現できるものと考えた。また、飛行機や長距離バスなどの長時間の旅行となる乗物においては、旅行者血栓症が発症する問題もあるところ、乗物内で楽しく運動することで、旅行者血栓症を抑制できる可能性がある。
【0005】
さらに、乗物以外のシートにおいても、座りながら運動をすることで、より健康的な暮らしを提供できる可能性がある。
【0006】
しかし、従来のシートでは、着座者の動作を特定することができず、このような楽しめるシートを実現することができなかった。
【0007】
そこで、本発明は、着座者の動作を特定することが可能なシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した課題を解決する本発明は、シートクッションおよびシートバックを有するシート本体と、シート本体に座っている着座者からの圧力値を取得する複数のセンサであって、シートクッションにおける着座者の臀部に対応する位置に配置された第1クッションセンサと、シートクッションにおける第1クッションセンサよりも前に位置する第2クッションセンサと、シートバックにおける下部に配置された第1バックセンサと、シートバックにおける第1バックセンサよりも上に配置された第2バックセンサとを含むセンサと、複数のセンサのそれぞれから圧力値を取得可能にセンサと接続された制御部とを備えるシートである。
そして、制御部は、第1クッションセンサ、第2クッションセンサ、第1バックセンサおよび第2バックセンサのうち少なくとも2つのセンサの出力に基づいて、着座者の動作を特定するように構成される。
【0009】
このような構成によれば、シートクッションにおいて前後に離れた第1クッションセンサおよび第2クッションセンサと、シートバックにおいて上下に離れた第1バックセンサおよび第2バックセンサの少なくとも4つのセンサのうち、少なくとも2つのセンサからの圧力値の組合せによって、着座者の動作を特定することが可能である。
【0010】
前記したシートにおいて、制御部は、基準姿勢のときの各圧力値に対して、第1クッションセンサの圧力値が大きくなり、第2クッションセンサの圧力値が小さくなった場合に、踵上げの動作がなされたと判定することができる。
【0011】
前記したシートにおいて、制御部は、基準姿勢のときの各圧力値に対して、第1クッションセンサおよび第1バックセンサの圧力値が大きくなり、第2クッションセンサの圧力値が小さくなった場合に、足上げの動作がなされたと判定することができる。
【0012】
前記したシートにおいて、制御部は、基準姿勢のときの各圧力値に対して、第1クッションセンサの圧力値が大きくなり、第1バックセンサの圧力値が小さくなった場合に、背筋伸ばしの動作がなされたと判定することができる。
【0013】
前記したシートにおいて、制御部は、基準姿勢のときの各圧力値に対して、第1クッションセンサおよび第2バックセンサの圧力値が大きくなり、第1バックセンサの圧力値が小さくなった場合に、シートバックに肩甲骨を押し付ける動作がなされたと判定することができる。
【0014】
前記したシートにおいて、第1バックセンサは、少なくとも1つの右の第1バックセンサと、少なくとも1つの左の第1バックセンサとを含み、第1クッションセンサは、少なくとも1つの右の第1クッションセンサと、少なくとも1つの左の第1クッションセンサとを含み、第2バックセンサは、少なくとも1つの右の第2バックセンサと、少なくとも1つの左の第2バックセンサとを含むことができる。この場合において、制御部は、基準姿勢のときの各圧力値に対して、右の第1クッションセンサおよび右の第1バックセンサの圧力値が大きくなり、左の第1バックセンサおよび左の第2バックセンサの圧力値が小さくなった場合に、上体を右に回す動作がなされたと判定し、左の第1クッションセンサおよび左の第1バックセンサの圧力値が大きくなり、右の第1バックセンサおよび右の第2バックセンサの圧力値が小さくなった場合に、上体を左に回す動作がなされたと判定することができる。
【0015】
第2バックセンサは、シートクッションの座面から、シートバックの座面に沿って300mm上方の位置よりも上に位置することが望ましい。
【0016】
このような構成によれば、第2バックセンサにより、着座者の肩からの圧力を検出することができる。
【0017】
第2クッションセンサは、シートバックの座面から、シートクッションの座面に沿って280mm前方の位置よりも前に位置することが望ましい。
【0018】
このような構成によれば、第2クッションセンサにより、大腿の上下の動きを良好に検出することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、少なくとも2つのセンサからの圧力値の組合せによって、着座者の動作を特定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】一実施形態に係る乗物用シートを使ったシステムの全体構成を説明する図である。
【
図3】センサの配置を説明する図であり、(a)はシートバックを前から見た図、(b)はシートクッションを上から見た図である。
【
図4】センサの配置を説明する、シートの断面図である。
【
図5】乗物用シートおよびシステムの構成を説明するブロック図である。
【
図8】動作していないと判定した場合のメッセージテーブルである。
【
図9】動作が不十分と判定した場合のメッセージテーブルである。
【
図10】指示と異なる動作をしていると判定した場合のメッセージテーブルである。
【
図11】制御部の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図13】踵上げ・足上げ判定(右)の処理のフローチャートである。
【
図14】上体回し判定(右)の処理のフローチャートである。
【
図15】背筋伸ばし・肩甲骨押付け判定の処理のフローチャートである。
【
図18】動作が小さいときの提示画面の一例である。
【
図19】指示と異なる動作をしていると判定した場合の提示画面の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、本発明のシートの一例としての乗物用シートSは、例えば、車両CRに搭載される車両用シートとして構成される。乗物用シートSは、シート本体S0と制御部100とからなる。車両CRには、例えば、2つの前席と2つの後席の4つのシートに乗物用シートSが設けられている。そして、車両CRでは、この4つの乗物用シートSの間で情報を統合し、これらを連携して動作させるとともに、着座者Pが使用する端末の一例であるスマートフォンSPと通信を行う制御部100が設けられている。
このように車両CRには、制御部100と、複数のシート本体S0とによって、乗物用シートSのシステムSYSが構成されている。
【0022】
図2に示すように、シート本体S0は、シートクッションS1およびシートバックS2を有する。シートクッションS1とシートバックS2には、表皮の下に複数の圧力センサPS1~PS6が設けられている。圧力センサPS1~PS6は、シート本体S0に座っている着座者Pの動作を特定するための測定値を取得するセンサであり、具体的には、シート本体S0に座っている着座者Pからの圧力値を取得するセンサである。制御部100は、各圧力センサPS1~PS6から、圧力値を取得可能に圧力センサPS1~PS6と接続されている。
【0023】
各圧力センサPS1~PS6は、乗物用シートSの左右の中心に対して左右対称に1対ずつ設けられている。
具体的には、
図3(b)にも示すようにシートクッションS1には、圧力センサPS1~PS3が設けられている。
【0024】
圧力センサPS1は、着座者Pの坐骨の最下部に対応する位置に設けられている。この位置では、着座者Pの荷重が最も大きくかかる。圧力センサPS1は、例えば、乗物用シートSの左右の中心Cから、左右に60~70mm、例えば、65mm離れた位置に配置することができる。
【0025】
圧力センサPS2は、圧力センサPS1の少し前に配置されており、例えば、圧力センサPS1よりも前方に50~60mm、例えば、55mm離れた位置で、中心Cから左右に65~75mm、例えば、70mm離れた位置に配置することができる。圧力センサPS1および圧力センサPS2は、シートクッションS1における着座者Pの臀部に対応する位置に配置された第1クッションセンサの一例である。第1クッションセンサは、少なくとも1つの右のクッションセンサ(圧力センサPS1,PS2)と、少なくとも1つの左のクッションセンサ(圧力センサPS1,PS2)とを含む。
【0026】
圧力センサPS1および圧力センサPS2は、いずれも、着座者Pの臀部からの圧力を測定するためのものであり、いずれか一方のみが設けられていてもよい。そのため、以下の説明においては、便宜上、圧力センサPS1および圧力センサPS2を合わせて、第1クッションセンサSC1とも呼ぶ。
【0027】
圧力センサPS3は、圧力センサPS1および圧力センサPS2から前方に大きく離れて配置されている。圧力センサPS3は、シートクッションS1における第1クッションセンサSC1よりも前に位置する第2クッションセンサの一例である。以下の説明においては、圧力センサPS3を第2クッションセンサSC2とも呼ぶ。
【0028】
圧力センサPS3は、着座者Pの大腿の下に位置し、着座者Pの大腿からの圧力値を測定可能である。圧力センサPS3は、例えば、圧力センサPS2よりも110~130mm、例えば、120mm前(圧力センサPS1よりも175mm前)で、中心Cから左右に65~75mm、例えば、70mm離れた位置に配置することができる。
【0029】
図4に示すように、第2クッションセンサSC2は、シートバックS2の座面S21から、シートクッションS1の座面S11に沿って280mm前方の位置E1よりも前に位置することが望ましい。なお、第1クッションセンサSC1は、位置E1よりも後ろに位置する。ここでの位置E1は、シートクッションS1の座面S11に、L字形の曲尺M1の一方の定規M11を沿わせ、他方の定規M12をシートバックS2の座面S21に当てたときの、一方の定規M11の寸法で測定することとする。シートバックS2の形状(例えば、ランバーサポート)を調整できる場合には、いずれかの形状において、この要件を満たしていればよい。第2クッションセンサSC2をこのような位置に配置することで、第2クッションセンサSC2により、着座者Pの大腿の上下の動きを良好に検出することができる。
【0030】
図2および
図3(a)に示すように、シートバックS2には、圧力センサPS4~PS6が設けられている。圧力センサPS4は、着座者Pの腰の後ろに対応する位置に設けられている。圧力センサPS4は、例えば、乗物用シートSの左右の中心Cから、左右に45~55mm、例えば、50mm離れた位置に配置することができる。
【0031】
圧力センサPS5は、圧力センサPS4の少し上に配置されており、例えば、圧力センサPS4よりも上方に70~80mm、例えば、75mm離れた位置で、中心Cから左右に85~95mm、例えば、90mm離れた位置に配置することができる。圧力センサPS4および圧力センサPS5は、シートバックS2における下部に配置された第1バックセンサの一例である。第1バックセンサは、少なくとも1つの右のバックセンサ(圧力センサPS4,PS5)と、少なくとも1つの左のバックセンサ(圧力センサPS4,PS5)とを含む。
【0032】
圧力センサPS4および圧力センサPS5は、いずれも、着座者Pの腰からの圧力を測定するためのものであり、いずれか一方のみが設けられていてもよい。そのため、以下の説明においては、便宜上、圧力センサPS4および圧力センサPS5を合わせて、第1バックセンサSB1とも呼ぶ。
【0033】
圧力センサPS6は、圧力センサPS4および圧力センサPS5から上方に大きく離れて配置されている。圧力センサPS6は、シートバックS2における第1バックセンサSB1よりも上に配置された第2バックセンサの一例である。以下の説明においては、圧力センサPS6を第2バックセンサSB2とも呼ぶ。
【0034】
圧力センサPS6は、着座者Pの背中の上部に対応して位置し、着座者Pの肩甲骨からの圧力値を測定可能である。圧力センサPS6は、例えば、圧力センサPS5よりも190~210mm、例えば、200mm上(圧力センサPS1よりも275mm上)で、中心Cから左右に95~105mm、例えば、100mm離れた位置に配置することができる。
【0035】
図4に示すように、第2バックセンサSB2は、シートクッションS1の座面S11から、シートバックS2の座面S21に沿って300mm上方の位置E2よりも上に位置することが望ましい。なお、第1バックセンサSB1は、位置E2よりも下に位置する。ここでの位置E2は、シートバックS2の座面S21に、L字形の曲尺M2の一方の定規M21を沿わせ、他方の定規M22をシートクッションS1の座面S11に当てたときの、一方の定規M21の寸法で測定することとする。シートバックS2の形状(例えば、ランバーサポート)を調整できる場合には、いずれかの形状において、この要件を満たしていればよい。第2バックセンサSB2をこのような位置に配置することで、第2バックセンサSB2により、着座者Pの肩からの圧力を検出することができる。
【0036】
なお、以下の説明においては、圧力センサPS1~PS6で取得した圧力値を、それぞれP1~P6とし、右、左の圧力値を、それぞれ、P1R、P1Lのように、R,Lの添え字で示す。なお、圧力センサPS1~PS6は、例えば、外部からの圧力によって電気抵抗が変化する素子であり、圧力値が大きい程、検出信号の電圧が高くなる(もしくは低くなる)。そのため、圧力値の大小は、実際には、電圧値の大小によって比較するが、本明細書においては、理解の容易のため、圧力値の大小で判定する形で説明する。
【0037】
図5に示すように、制御部100は、測定値取得部110と、処理部120と、通信部130と、記憶部190とを有している。制御部100は、図示しないCPU、ROM、RAM、書換可能な不揮発性メモリ等を有し、予め記憶されたプログラムを実行することで各機能部が実現されている。
【0038】
制御部100には、ブルートゥース(登録商標)またはWi-Fi(登録商標)などの近距離無線通信を可能にする近距離通信機3Aが接続されている。制御部100は、通信部130および近距離通信機3Aを介してスマートフォンSPと通信可能であり、スマートフォンSPにインストールされたアプリと連携してスマートフォンSPに所定の画面や音声を提供するとともに、スマートフォンSPで入力されたデータを取得することができるようになっている。
【0039】
測定値取得部110は、各圧力センサPS1~PS6から、一定の制御サイクルごとに圧力の測定値を取得する機能を有する。測定値取得部110が取得した測定値は、記憶部190に記憶され、処理部120で利用される。なお、記憶部190は、計算、処理等に必要なデータを適宜記憶するために使用される。
【0040】
処理部120は、スマートフォンSPを介して着座者Pに体操ゲームを提供する部分であり、予め記憶されたプログラムに従いゲーム進行の全体処理を実行する。処理部120は、動作指示部121と動作判定部122を有する。
【0041】
動作指示部121は、着座者Pに対して所定の動作を行うように指示する部分である。本実施形態においては、指示すべき動作は、体操ゲームのメニューごとに予め記憶された動作である。例えば、体操ゲームのメニューは、全身コースと下半身コースがあり、全身コースについては、
図7に示すような動作リストとして記憶される。動作リストには、動作の順番「No.」に、動作コードMCとその動作を行う時間[ms]が関連づけて記憶されている。例えば、最初の動作「No.1」は、動作コードMCが「1R」であり、これを1000ms継続し、次の動作「No.2」は、動作コードが「1L」であり、これを1000ms継続するように記憶されている。各動作コードは、
図6に示すように、「1R」,「1L」が踵上げ、「2R」,「2L」が足上げ、「3」が背筋伸ばし、「4」が肩甲骨押付け、「5R」,「5L」は上体回しを意味する。各コードのR,Lは、それぞれ右の動作と左の動作を意味し、例えば、「1R」は、右足の踵上げ、「5L」は、左に上体を回す(ひねる)ことを意味する。
なお、
図7の動作リストにおいて、No.301の動作コード「0」は何もしないことを意味する。また、「EOL」は、動作リストの終わりを意味する。
【0042】
動作指示部121は、動作リストに従って動作を指示するとき、動作リストのNo.の昇順に動作コードMCと時間を順次読み出し、スマートフォンSPのアプリに出力する。なお、スマートフォンSPのアプリでは、この動作コードMCに対応した画像データおよび音声データが記憶されており、スマートフォンSPの画面に文字を含む画像(変化する画像、つまり、動画を含む)を出力するとともに、スマートフォンSPのスピーカから音楽および声(つまり、音、光、画像、動画および文字)によって、動作の指示を出力する。
【0043】
ここで、各動作について説明する。
踵上げは、床から踵を上げる運動である。本発明において、踵上げは、ふくらはぎを使ってつま先を床に付けたまま踵を上げるふくらはぎ運動と、大腿筋および腸腰筋を主に使って、つま先も床から上げる足上げ運動とを含む。これらはいずれも踵が上がる運動だからである。
本実施形態においては、一例として、動作指示部121が、ふくらはぎ運動と足上げ運動の両方の運動を区別して指示するため、踵上げ運動は、ふくらはぎ運動のみ(狭義の踵上げ運動)を意味することとする。例えば、アプリにおいて、ふくらはぎ運動を「踵を上げてください」のように表現させることとする。しかし、ふくらはぎ運動と、足上げ運動の両方を指示しない(区別しない)形態で実施する場合においては、踵上げ運動は、ふくらはぎ運動および足上げ運動の両方を含むものとして呼ぶこともできる(広義の踵上げ運動)。以下、踵上げ運動については、狭義の意味か広義の意味か、適宜補足して説明する。
【0044】
足上げ運動は、上述のように、足を床から離すまで上げる運動である。
【0045】
背筋伸ばしは、背筋を鉛直に立てるように伸ばして、背中をシートバックS2から離す運動である。
【0046】
肩甲骨押付けは、肩甲骨をシートバックS2に押し付ける運動である。
【0047】
上体回しは、シートクッションS1に座ったまま、上体を右または左に回す(ひねる)運動であり、顔を横または後に向けるようにして行う。ひねった上体は、シートバックS2から付けたまま行う。例えば、右回しであれば、右肩がシートバックS2に付き、左肩がシートバックS2から浮くようになる。
【0048】
動作指示部121は、動作判定部122が、着座者Pが、動作指示部121が指示した所定の動作を行っていないと判定した場合、所定の動作を行うように再度指示する。
後述するように、本実施形態においては、動作判定部122は、動作を特定できない場合、動作を判定した結果を示す動作判定コードMCJを0とするので、動作指示部121は、MCJが0の場合に、所定の動作(動作リストで読み出したデータに対応する動作)をすべきことを、スマートフォンSPを介して再度指示する。
【0049】
着座者Pが、動作指示部121が指示した所定の動作を行っていない場合に動作指示部121がスマートフォンSPに出力するメッセージは、記憶部190に記憶されている。このメッセージは、例えば、
図8に示すように、各動作コードMCに対応させて、それぞれ記憶されている。
【0050】
また、動作指示部121は、動作判定部122が、着座者Pが行っている所定の動作の大きさが不十分であると判定した場合、着座者Pに所定の動作を大きく行う旨を指示する。
後述するように、本実施形態においては、動作判定部122は、動作の大きさを示す大きさデータMSを、動作が十分な場合は2、不十分な場合は1、動作をしていない場合は0とするので、動作指示部121は、大きさデータMSが1である場合に、着座者Pに所定の動作を大きく行うことを、スマートフォンSPを介して指示する。
着座者Pが行っている所定の動作の大きさが不十分である場合に動作指示部121がスマートフォンSPに出力するメッセージは、記憶部190に記憶されている。このメッセージは、例えば、
図9に示すように、各動作コードMCに対応させて、それぞれ記憶されている。
【0051】
また、動作指示部121は、動作判定部122が、着座者が行っている動作が、動作指示部により指示した動作と異なる動作であると判定した場合、着座者Pに正しい動作の仕方を通知する。
本実施形態においては、指示した動作コードMCと、動作判定コードMCJが一致しない場合、動作判定部122は、スマートフォンSPを介して着座者Pに正しい動作の仕方を通知する。
【0052】
着座者Pが行っている動作が、動作指示部121により指示した動作と異なる動作である場合に動作指示部121がスマートフォンSPに出力するメッセージは、記憶部190に記憶されている。このメッセージは、例えば、
図10に示すように、各動作コードMCおよび各動作判定データの組合せに対応させて、それぞれ記憶されている。
【0053】
動作判定部122は、第1クッションセンサSC1、第2クッションセンサSC2、第1バックセンサSB1および第2バックセンサSB2のうち少なくとも2つの圧力センサPS1~PS6の出力に基づいて、着座者Pの動作を特定するように構成される。動作判定部122は、動作指示部121により所定の動作を行うように指示した後、着座者Pが所定の動作を行っているか否かを判定する。
【0054】
図6に、動作の判定基準を表にして詳細に示す。具体的には、動作判定部122は、基準姿勢のときの各圧力値に対して、上げている足側の第1クッションセンサSC1の圧力センサPS2の圧力値P2が大きくなり、左右同じ側の第2クッションセンサSC2の圧力センサPS3の圧力値P3が小さくなった場合に、踵上げの動作がなされたと判定する。
【0055】
ここで、基準姿勢とは、着座者Pが足を上げたり、上体をひねったりすることなく、背もたれに上体を付けて通常座っている状態であり、この状態のときの標準的な各圧力センサPS1~PS6が取得する圧力値が記憶部190に記憶されている。基準姿勢のときの着座者Pは、平均的な大人の場合の圧力値が記憶されていてもよいし、基準姿勢のときの圧力値が着座者Pの体重ごとに記憶されていてもよい。ここでは、説明を簡単にするため、代表的な基準姿勢のときの圧力値が1つ、例えば、平均的な大人の場合の圧力値が記憶されていることとする。
【0056】
また、
図6において、SC1(PS2)と記載してあるのは、第1クッションセンサSC1の2つの圧力センサPS1,PS2(左右合わせると4つのセンサ)のうち、圧力センサPS2の値を用いて判定することを意味する。なお、本実施形態では、例えば踵上げの場合に、第1クッションセンサSC1として圧力センサPS2の測定値を使うこととしたが、圧力センサPS1の測定値を使ってもよい。他の動作においても同様、第1クッションセンサSC1の測定値に基づき動作を判定する場合、2つの圧力センサPS1,PS2のうちのいずれの測定値を使っても構わない。第1バックセンサSB1の測定値に基づき動作を判定する場合も、2つの圧力センサPS4,PS5のうちのいずれの測定値を使っても構わない。
【0057】
動作判定部122は、基準姿勢のときの各圧力値に対して、上げている足側の第1クッションセンサSC1の圧力センサPS2の圧力値P2および第1バックセンサSB1の圧力センサPS4の圧力値P4の圧力値が大きくなり、左右同じ側の第2クッションセンサSC2の圧力値P3が小さくなった場合に、足上げの動作がなされたと判定する。本実施形態においては、さらに正確さを期するため、左右逆側の第2バックセンサSB2の圧力値P6が小さくなったことも条件として足上げの動作を判定する。
【0058】
動作判定部122は、基準姿勢のときの各圧力値に対して、第1クッションセンサSC1の圧力センサPS1の圧力値P1が大きくなり、第1バックセンサSB1の圧力センサPS5の圧力値P5が小さくなった場合に、背筋伸ばしの動作がなされたと判定する。本実施形態においては、正確さを期するため、第2バックセンサSB2の圧力値P6が小さくなったことも条件として背筋伸ばしの動作を判定する。
なお、背筋伸ばしは、左右の区別がないため、左の圧力値と右の圧力値を足した圧力値を用いることとする。
【0059】
動作判定部122は、基準姿勢のときの各圧力値に対して、第1クッションセンサSC1の圧力センサPS1の圧力値P1および第2バックセンサSB2の圧力値P6が大きくなり、第1バックセンサSB1の圧力センサPS4の圧力値P4が小さくなった場合に、シートバックS2に肩甲骨を押し付ける動作がなされたと判定する。
なお、肩甲骨押付けは、左右の区別がないため、左の圧力値と右の圧力値を足した圧力値を用いることとする。
【0060】
動作判定部122は、基準姿勢のときの各圧力値に対して、右の第1クッションセンサSC1の圧力センサPS1の圧力値P1Rおよび右の第1バックセンサSB1の圧力センサPS4の圧力値P4Rが大きくなり、左の第1バックセンサSB1の圧力センサPS4の圧力値P4Lおよび左の第2バックセンサSB2の圧力値P6Lが小さくなった場合に、上体を右に回す動作がなされたと判定し、左の第1クッションセンサSC1の圧力センサPS1の圧力値P1Lおよび左の第1バックセンサSB1の圧力センサPS4の圧力値P4Lが大きくなり、右の第1バックセンサSB1の圧力センサPS4の圧力値P4Rおよび右の第2バックセンサSB2の圧力値P6Rが小さくなった場合に、上体を左に回す動作がなされたと判定する。
【0061】
上記の判定において、圧力値が基準姿勢に対して大きくなったか否か、または、小さくなったか否かは、予め記憶部190に記憶してある各しきい値と比較することにより行うことができる。
【0062】
また、各動作においては、動作の大きさを圧力値と所定のしきい値との比較により判定することができ、動作判定部122は、動作の大きさが十分な場合には、大きさデータMSを2、不十分な場合にはMSを1、動作をしてない場合にはMSを0にする。
【0063】
次に、
図11~
図15を参照して、制御部100による、体操ゲームを提供する処理の一例について説明する。
図11に示すように、処理部120は、スマートフォンSPに体操ゲームのメニュー画面を提示する(S11)。メニュー画面においては、例えば、
図16のように、車内体操のメニューとして、「全身コース」のボタンB01と、「下半身コース」のボタンB02とを提示し、着座者Pの選択を促す。処理部120は、メニューが選択されたか否か(ボタンが押された信号を受けたか)判定し、選択されるまで待つ(S12,No)。
【0064】
着座者PがボタンB01またはボタンB02を押してメニューを選択すると(S12,Yes)、処理部120は、動作指示部121は、動作リストから動作コードMCを読み出し(S21)、動作コードMCが「EOL」か否か判定する(S22)。動作コードMCが「EOL」でない場合(S22,No)、動作指示部121は、読み出した動作コードおよび動作時間を動作指示としてスマートフォンSPへ出力する(S23)。スマートフォンSPは、この動作指示に従い、例えば、
図17に示すように、「1.ふくらはぎ運動」という文字による指示と、動作コードMCに対応した画像(アニメーションなどの動画)を画面DSPに表示するとともに、スピーカSPKから音声により「ふくらはぎを使って踵を上げましょう。右、左、右、・・・」のように指示を出す。このとき、着座者Pがリズムをとりやすいように、動作時間と対応するリズムの音楽を出力するとよい。ここでは、
図17では、一例として、ふくらはぎ運動(狭義の踵上げ運動)の表示と、右の踵を上げた画像を表示している。
【0065】
そして、動作判定部122は、圧力センサPS1~PS6から取得された圧力値に基づいて、着座者Pの動作を判定する(S100)。動作の判定の処理は、
図12に示すように、まず、動作判定コードMCJと大きさデータMSを共に0にして初期化する。
【0066】
そして、踵上げ・足上げ判定(右)(ステップS200)を処理する。
この判定においては、
図13に示すように、まず、右の圧力センサPS2の圧力値P2
Rがしきい値P2th1より大きいか判定する(S201)。圧力値P2
Rがしきい値P2th1より大きい場合には(S201,Yes)、次に、右の圧力センサPS3の圧力値P3
Rがしきい値P3thより小さいか判定する(S202)。圧力値P3
Rがしきい値P3thより小さい場合(S201,Yes)、右の臀部の下の圧力が大きく、大腿の下の圧力が小さくなっているので、広義の意味で、右の踵が上がっている(足が床についているか否かを問わず、踵が上がっている)状態である。ステップS201またはステップS202でNoと判定された場合には、(狭義の)踵上げまたは足上げが行われていないのでステップS200を終了する。このとき、動作判定コードMCJおよび大きさデータMSはともに0のままである。
【0067】
ステップS202でYesと判定された後、動作判定部122は、右の圧力センサPS4の圧力値P4Rがしきい値P4thより大きいか判定し、大きい場合には(S203,Yes)、さらに、左の圧力センサPS6の圧力値P6Lがしきい値P6thより小さいか判定する(S204)。
圧力値P6Lがしきい値P6thより小さい場合(S204,Yes)、足を床から離すことにより、右の腰部がシートバックS2に押し付けられるとともに、左肩がシートバックS2から離れようとしているので、足上げ運動であると判定できる。そのため、動作判定コードMCJを2R(右の足上げ運動)とする(S212)。一方、ステップS203またはステップS204でNoと判定された場合には、足を床から離していないと考えられるので、動作判定コードMCJを1R(右の踵上げ運動)とする(S211)。
【0068】
ステップS211またはステップS212の後、動作判定部122は、右の圧力センサPS2の圧力値P2Rがしきい値P2th2より大きいか判定する(S220)。ここで、しきい値P2th1は、最低限、踵を上げているといえる程度の運動をしているか否かを判定する値であり、しきい値P2th2は、踵を十分に上げているか否かを判定する値である。つまり、P2th2はP2th1より大きい。
【0069】
圧力値P2Rがしきい値P2th2より大きい場合(S220,Yes)、十分な大きさの運動をしていると考えられるので大きさデータMSを2にする(S222)。一方、圧力値P2Rがしきい値P2th2より大きくない場合(S220,No)、動作の大きさが不十分と考えられるので大きさデータMSを1にする(S221)。
【0070】
以上で踵上げ・足上げ判定(右)のステップS200は終わり、
図12に戻り、踵上げ・足上げ判定(左)のステップS300を実行する。ステップS300は、ステップS200に対し、判定する圧力値の右と左が逆になるだけであるので、説明を省略する。
【0071】
ステップS300の後、上体回し判定(右)のステップS400を実行する。
図14に示すように、まず、動作判定コードMCJが0か否か判定する(S401)。MCJが0ではない場合(S401,No)、すでに動作の判定が済んでいるので、ステップS400を終了する。
MCJが0である場合(S401,Yes)、右の圧力センサPS1の圧力値P1
Rがしきい値P1th1より大きいか判定する(S410)。圧力値P1
Rがしきい値P1th1より大きい場合(S410,Yes)、さらに、右の圧力センサPS4の圧力値P4
Rがしきい値P4th1より大きいか判定する(S411)。圧力値P4
Rがしきい値P4th1より大きい場合(S411,Yes)、さらに、左の圧力センサPS4の圧力値P4
Lがしきい値P4th2より小さいか判定する(S412)。なお、P4th2は、P4th1より小さい値である。圧力値P4
Lがしきい値P4th2より小さい場合(S412,Yes)、さらに、左の圧力センサPS6の圧力値P6
Lがしきい値P6thより小さいか判定する(S413)。圧力値P6
Lがしきい値P6thより小さい場合には(S413,Yes)、上体を右に回していると考えられるので、動作判定コードMCJを5Rとする(S420)。一方、ステップS410,S411,S412,S413のいずれかにおいてNoと判断された場合、上体を右に回していないと考えられるので、動作判定コードMCJおよび大きさデータMSを変更せずにステップS400を終了する。
【0072】
動作判定コードMCJを5Rにした後、動作判定部122は、圧力値P1Rがしきい値P1th2より大きいか判定する(S430)。ここで、しきい値P1th1は、最低限、上体を回しているといえる程度の運動をしているか否かを判定する値であり、しきい値1th2は、上体を十分に回しているか否かを判定する値である。つまり、P1th2はP1th1より大きい。
【0073】
圧力値P1Rがしきい値P1th2より大きい場合(S430,Yes)、十分な大きさの運動をしていると考えられるので大きさデータMSを2にする(S432)。一方、圧力値P1Rがしきい値P1th2より大きくない場合(S430,No)、動作の大きさが不十分と考えられるので大きさデータMSを1にする(S431)。
【0074】
以上で上体回し判定(右)のステップS400は終わり、
図12に戻り、上体回し判定(左)のステップS500を実行する。ステップS500は、ステップS400に対し、判定する圧力値の右と左が逆になるだけであるので、説明を省略する。
【0075】
ステップS500の後、背筋伸ばし・肩甲骨押し付け判定のステップS600を実行する。
図15に示すように、まず、動作判定コードMCJが0か否か判定する(S601)。MCJが0ではない場合(S601,No)、すでに動作の判定が済んでいるので、ステップS600を終了する。
MCJが0である場合(S601,Yes)、右の圧力センサPS1の圧力値P1
Rと左の圧力センサPS1の圧力値P1
Lの和がしきい値P1th3より大きいか判定する(S610)。圧力値P1
Rと圧力値P1
Lの和がしきい値P1th3より大きくない場合(S610,No)、背筋伸ばしと肩甲骨押し付けのいずれの動作もしていないと考えられるので、ステップS600を終了する。この場合には、動作判定コードMCJと大きさデータMSはともに0であり、動作をしていないと判定される。圧力値P1
Rと圧力値P1
Lの和がしきい値P1th3より大きい場合(S610,Yes)、さらに、右の圧力センサPS6の圧力値P6
Rと左の圧力センサPS6の圧力値P6
Lの和がしきい値P6th3より大きいか判定する(S611)。
【0076】
右の圧力センサPS6の圧力値P6Rと左の圧力センサPS6の圧力値P6Lの和がしきい値P6th3より大きくない場合(S611,No)、肩甲骨をシートバックS2に押し付けているとはいえないので、動作判定部122は、背筋伸ばしをしているかの判定のため、左右の圧力センサPS5の圧力値P5R,P5Lと、左右の圧力センサPS6の圧力値P6R,P6Lとを足したP56を計算する(S620)。そして、P56がしきい値P56th1より小さいか否か判定する(S622)。P56がしきい値P56th1より小さくない場合(S622,No)には、背筋を伸ばしているといえる程度に十分にシートバックS2から上体を離していないため、動作判定コードMCJと大きさデータMSをともに0のまま変更せずにステップS600を終了する。
【0077】
一方、ステップS622において、P56がしきい値P56th1より小さい場合には(S622,Yes)、背筋を伸ばしているといえる程度に十分にシートバックS2から上体を離しているので、動作判定コードMCJを3にする(S623)。
そして、動作判定部122は、P56がしきい値P56th2より小さいか否か判定する(S625)。ここで、しきい値P56th2は、P56th1よりも小さい値である。P56がしきい値P56th2より小さくない場合には(S625,No)、背中がシートバックS2を少し押しているので、動作が不十分であり、大きさデータMSを1とする(S626)。一方、P56がしきい値P56th2より小さい場合には(S625,Yes)、背中がシートバックS2から十分に離れているか、ほとんど押していないので、動作が十分であり、大きさデータMSを2とする(S627)。そして、ステップS626およびステップS627の後、ステップS600を終了する。
【0078】
ステップS611において、圧力値P6Rと圧力値P6Lの和がしきい値P6th3より大きいと判定した場合(S611,Yes)、一応、肩甲骨をシートバックS2に押し付けているとはいえるので、動作判定部122は、さらに、右の圧力センサPS4の圧力値P4Rと左の圧力センサPS4の圧力値P4Lの和がしきい値P4th3より小さいか判定する(S630)。
圧力値P4Rと圧力値P4Lの和がしきい値P4th3より小さくない場合(S630,No)、肩甲骨をシートバックS2に押付けるというより、背中全体を押し付けているので、動作判定コードMCJと大きさデータMSをともに0のまま変更せずにステップS600を終了する。
【0079】
圧力値P4Rと圧力値P4Lの和がしきい値P4th3より小さい場合(S630,Yes)、背中全体ではなく、肩甲骨をシートバックS2に上手に押し付けているといえるので、動作判定コードMCJを4にする(S631)。
そして、圧力値P6Rと圧力値P6Lの和がしきい値P6th4より大きいか否か判定する(S632)。しきい値P6th4は、肩甲骨を十分に強くシートバックS2に押し付けていると言えるかどうかを判定する値であり、しきい値P6th3よりも大きな値である。圧力値P6Rと圧力値P6Lの和がしきい値P6th4より大きくない場合(S632,No)、肩甲骨をシートバックS2に押し付ける力が十分でないので、大きさデータMSを1とし(S633)、圧力値P6Rと圧力値P6Lの和がしきい値P6th4より大きい場合(S632,Yes)、肩甲骨をシートバックS2に押し付ける力が十分なので、大きさデータMSを2とし(S634)、それぞれ、ステップS600を終了する。これにより、動作判定のステップS100が終了する。
【0080】
図11に戻り、動作判定のステップS100の後、動作指示部121は、動作判定コードMCJが0か否か判定し、0である場合(S30,Yes)、メッセージを出力する(S31)。例えば、
図17のように、ふくらはぎ運動をしているときにおいて、動作判定コードMCJが0であった場合には、動作指示部121は、
図8のメッセージテーブルを参照して、動作コード1Rに対応するメッセージを読み出し、スマートフォンSPに出力する。これにより、スマートフォンSPのスピーカSPKから「足が動いていません。ふくらはぎを使って踵を上げましょう。」のようなメッセージを出力する(
図17参照)。
メッセージを出力した後、動作指示部121は、ステップS23へ戻って、所定の動作を行うように再度指示する。
【0081】
ステップS30において、動作判定コードMCJが0でないと判定した場合(S30,No)、動作指示部121は、動作判定コードMCJが動作コードMCと一致するか否か判定する(S40)。動作判定コードMCJが動作コードMCと一致する場合(40,Yes)、動作判定部122は、さらに、大きさデータMSが1か否か判定する(S41)。大きさデータMSが1でない場合(S41,No)、つまり、大きさデータMSが2の場合、着座者Pが指示通り動作できているので、次の動作を指示すべく、ステップS21へ戻る。
【0082】
ステップS41で大きさデータMSが1であると判定した場合(S41,Yes)、動作の大きさが不十分であるので、動作指示部121は、スマートフォンSPに動作を大きく行う旨のメッセージを出力する(S42)。例えば、ふくらはぎ運動で動作の大きさが不十分であった場合、
図9のメッセージテーブルを参照し、動作コード1Lに対応するメッセージを読み出し、スマートフォンSPに出力する。これにより、
図18に示すように、スマートフォンSPのスピーカSPKから「踵の上げ方が小さいようです。もっと高く踵を上げましょう。右、左、右、・・・」のようなメッセージを出力する。このとき、画面DSPに、
図17よりも高く踵を上げる画像を表示すると、着座者Pが何をするべきかが分かりやすい。メッセージを出力した後は、次の動作を指示すべく、ステップS21へ戻る。
【0083】
ステップS40において、動作判定コードMCJが動作コードMCと一致しないと判定した場合(S40,No)、着座者Pが指示と異なる動作をしているので、正しい動作の仕方のメッセージをスマートフォンSPに出力する(S43)。例えば、足上げ運動の際に、踵上げ運動をしていると判定された場合、つまり、動作コードMCが2Rで動作判定コードMCJが1Rだった場合などには、
図10のメッセージテーブルから、MCが2R、MJCが1Rの組合せに対応するメッセージを読み出し、スマートフォンSPに出力する。これにより、
図19に示すように、スマートフォンSPのスピーカSPKから「足を床から離れるまで上げてください。右、左、右、・・・」のようなメッセージを出力する。メッセージを出力した後は、次の動作を指示すべく、ステップS21へ戻る。
【0084】
動作コードMCを読み出した後(S21)、動作コードMCが「EOL」であった場合には(S22,Yes)、動作リストが終わりとなるので、終了画面をスマートフォンSPに提示するなどして(S60、図示省略)、処理を終了する。
【0085】
以上に説明したように、本実施形態の乗物用シートSによれば、シートクッションS1において前後に離れた第1クッションセンサSC1および第2クッションセンサSC2と、シートバックS2において上下に離れた第1バックセンサSB1および第2バックセンサSB2の少なくとも4つのセンサのうち、少なくとも2つのセンサからの圧力値の組合せによって、着座者Pの動作を特定することが可能である。
【0086】
そして、乗物用シートSは、制御部100が、動作指示部121により着座者に動作を指示し、動作判定部122が、動作指示部121による所定の動作を行うように指示した後、着座者Pが所定の動作を行っているか否かを判定することができる。このため、着座者Pが能動的に動作をして、その動作の善し悪しに関して乗物用シートSが応答することが可能になるので、着座者Pとの間でインタラクティブな関係のシートを提供することが可能になる。上記実施形態のように、体操ゲームなどを提供することで、着座者Pの能動的な動作を促すことができれば、疲労を効果的に解消することができ、より楽しい旅を実現することができる。特に、飛行機や長距離バスなどの長時間の旅行となる乗物においては、旅行者血栓症が発症する問題もあるところ、乗物内で楽しく運動することで、旅行者血栓症を抑制できる可能性がある。
【0087】
そして、本実施形態の乗物用シートSによれば、着座者Pからの圧力値を取得することで、着座者Pの動作を高い精度で特定することができる。
【0088】
着座者Pが所定の動作を行っていないと動作判定部122が判定した場合、動作指示部121は、所定の動作を行うように再度指示するので、着座者Pの積極的な動作を促すことができる。
【0089】
そして、動作判定部122が、着座者Pが行っている所定の動作の大きさが不十分であると判定した場合、動作指示部121は、着座者Pに所定の動作を大きく行う旨を指示するので、着座者Pを大きく運動させることができ、座る楽しみを増加させ、健康的な暮らしを提供することができる。
【0090】
そして、着座者Pが行っている動作が、動作指示部121により指示した動作と異なる動作であると動作判定部122が判定した場合、動作指示部121は、着座者Pに正しい動作の仕方を通知するので、着座者Pに健康的な運動を促すことができる。また、前記実施形態においては、体操のゲームを例にして説明したが、着座者Pの動作に応じて、スマートフォンSPや、ナビゲーションシステムなどの他の装置等の操作をさせようとする場合、正しい動作の仕方を通知することで、正確な操作を促すことができる。
【0091】
以上に本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記した実施形態に限定されるものではない。具体的な構成については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0092】
例えば、前記実施形態において、動作指示部は、音、光、画像、動画および文字によって着座者に所定の動作を行うように指示していたが、振動や温冷によって指示してもよい。温冷とは、着座者Pに対する温感、冷感の刺激のこととし、例えば、ヒータで座面を加熱したり、ブロワで着座者Pに風を当てたりして刺激を与えることができる。なお、本明細書において、文字には点字を含む。
【0093】
前記実施形態において、各しきい値は、一定であるものとしたが、しきい値は一定でなくてもよい。例えば、着座者をスマートフォンのidなどで特定できる場合には、着座者ごとにしきい値を記憶することもでき、また、各着座者ごとに、動作の習熟度やくせを推定・記憶して、習熟度やくせに応じてしきい値を変化させてもよい。
【0094】
前記実施形態においては、体操ゲームを一例として説明したが、他のゲームを提供することもできる。例えば、美しい姿勢を達成するためのトレーニングのアプリ(ゲーム的なもの)を提供することもできる。
【0095】
前記実施形態においては、制御部が、スマートフォンとは別の装置である場合を例示したが、シートまたは車両に設けられた装置とスマートフォンとの両方で、制御部を構成してもよい。すなわち、スマートフォンの一部または全部をシートの構成とすることができる。
【0096】
前記実施形態においては、無線通信により制御部とスマートフォンを接続していたが、有線の通信により接続されていてもよい。
【0097】
前記実施形態においては、左右の区別がない背筋伸ばしなどについて、左の圧力値と右の圧力値を足した圧力値を用いることとしたが、左の圧力値と右の圧力値の平均値を用いてもよいし、右の圧力値と左の圧力値のそれぞれが条件を満たすかを判定し、少なくとも一方が条件を満たした場合や、両方が条件を満たした場合に、その動作を行っていると判定してもよい。
【0098】
着座者の動作を特定するために、圧力値以外の測定値を取得することもできる。例えば、静電容量センサなどの測定値を利用することも可能である。
【0099】
前記実施形態においては、乗物用シートとして車両に搭載されるシートを例示したが、乗物用シートは、車両以外の乗物用シートや、乗物以外の家庭や施設等に設置されるシートであってもよい。
【0100】
また、本明細書に記載した各実施形態および各変形例で説明した各要素は、適宜組み合わせて実施することが可能である。
【符号の説明】
【0101】
100 制御部
110 測定値取得部
120 処理部
121 動作指示部
122 動作判定部
P 着座者
PS1~PS6 圧力センサ
S 乗物用シート
S1 シートクッション
S2 シートバック
SB1 第1バックセンサ
SB2 第2バックセンサ
SC1 第1クッションセンサ
SC2 第2クッションセンサ
SP スマートフォン
SYS システム