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特開2022-190069光学式生体センサ装置、制御方法、及びプログラム
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  • 特開-光学式生体センサ装置、制御方法、及びプログラム 図1
  • 特開-光学式生体センサ装置、制御方法、及びプログラム 図2
  • 特開-光学式生体センサ装置、制御方法、及びプログラム 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190069
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】光学式生体センサ装置、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/02 20060101AFI20221215BHJP
   A61B 5/1455 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
A61B5/02 310H
A61B5/1455
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176212
(22)【出願日】2022-11-02
(62)【分割の表示】P 2018238520の分割
【原出願日】2018-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】杉山 純一
(57)【要約】
【課題】より消費電力を抑制することが可能な光学式生体センサ装置等を提供する。
【解決手段】光学式生体センサ装置1は、生体2に向けて光を照射する発光部140と、発光部140により照射され、生体2内を透過した光を検出する受光部150と、受光部150により検出された光の強度に基づいて、生体2の生体情報を取得する生体情報取得部170と、受光部150により検出された光の強度に基づいて、発光部140の駆動電圧を制御する電圧制御部160と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体に向けて光を照射する発光部と、
前記発光部により照射され、前記生体内を透過した光を検出する受光部と、
前記受光部により検出された光の強度に基づいて、前記生体の生体情報を取得する生体情報取得部と、
前記受光部により検出された光の強度に基づいて、前記発光部の駆動電圧を制御する電圧制御部と、
を備えることを特徴とする光学式生体センサ装置。
【請求項2】
前記電圧制御部は、前記生体情報を取得可能な光の強度の範囲と、前記受光部により検出された光の強度とに基づいて、前記発光部の駆動電圧を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の光学式生体センサ装置。
【請求項3】
前記範囲は、前記生体情報を取得可能な光の強度の下限値により規定され、
前記電圧制御部は、前記受光部により検出された光の強度が、前記下限値よりも大きいときに、前記発光部の駆動電圧を減少させ、前記受光部により検出された光の強度が、前記下限値よりも大きくないときに、前記発光部の駆動電圧を増加させる、
ことを特徴とする請求項2に記載の光学式生体センサ装置。
【請求項4】
前記発光部に電力を供給する電源部の電源電圧を、前記電圧制御部により指示された前記駆動電圧に変換する電源制御部をさらに備え、
前記電圧制御部は、前記受光部により検出された光の強度が前記範囲内であって、かつ前記電源電圧と前記駆動電圧との差が最小になるような前記駆動電圧に変換するよう前記電源制御部に指示する、
ことを特徴とする請求項2または3に記載の光学式生体センサ装置。
【請求項5】
前記範囲は、前記生体情報の種類に応じて設定される、
ことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の光学式生体センサ装置。
【請求項6】
前記受光部により検出された光の強度に基づいて、前記発光部の駆動電流を制御する電流制御部をさらに備え、
前記電圧制御部は、前記光学式生体センサ装置の消費電力を抑制可能な、前記電流制御部が制御する前記駆動電流の値と前記電圧制御部が制御する前記駆動電圧の値を決定する決定部をさらに備え、
前記電圧制御部は、前記決定部による決定結果に基づいて、前記発光部の駆動電圧を制御し、
前記電流制御部は、前記決定部による決定結果に基づいて、前記発光部の駆動電流を制御する、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光学式生体センサ装置。
【請求項7】
前記発光部は、所定の周期で前記生体に向けて光を照射し、
前記受光部は、前記発光部により照射され、前記生体内を透過した光を前記所定の周期で検出し、
前記電圧制御部は、前記所定の周期で、前記受光部により検出された光の強度に基づいて、前記発光部の駆動電圧を制御する、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の光学式生体センサ装置。
【請求項8】
生体に向けて光を照射する発光部と、前記発光部により照射され、前記生体内を透過した光を検出する受光部と、を備える光学式生体センサ装置の制御方法であって、
前記受光部により検出された光の強度に基づいて、前記生体の生体情報を取得する生体情報取得ステップと、
前記受光部により検出された光の強度に基づいて、前記発光部の駆動電圧を制御する電圧制御ステップと、
を備えることを特徴とする制御方法。
【請求項9】
生体に向けて光を照射する発光部と、前記発光部により照射され、前記生体内を透過した光を検出する受光部と、を備える光学式生体センサ装置のコンピュータを、
前記受光部により検出された光の強度に基づいて、前記生体の生体情報を取得する生体情報取得手段、
前記受光部により検出された光の強度に基づいて、前記発光部の駆動電圧を制御する電圧制御手段、
として機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光学式生体センサ装置、制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、発光素子と受光素子とを利用した光学式生体センサであって、受光素子で必要な光量をまかないつつ、発光素子の駆動電流が小さくなるように、発光素子の駆動電流を制御することにより、消費電力を低減する技術ある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-278758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示されているように、発光素子の駆動電流を制御する方法では、消費電力の削減量に限界があり、改善の余地がある。
【0005】
この発明の目的は、より消費電力を抑制することが可能な光学式生体センサ装置、制御方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するため、本発明の観点に係る光学式生体センサ装置は、
生体に向けて光を照射する発光部と、
前記発光部により照射され、前記生体内を透過した光を検出する受光部と、
前記受光部により検出された光の強度に基づいて、前記生体の生体情報を取得する生体情報取得部と、
前記受光部により検出された光の強度に基づいて、前記発光部の駆動電圧を制御する電圧制御部と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に従うと、より消費電力を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る光学式生体センサ装置の構成例を示すブロック図である。
図2】実施形態に係る光学式生体センサ装置の概略回路図の一例を示す図である。
図3】実施形態に係る光学式生体センサ装置が実行する制御処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、好ましい実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
図1は、実施形態に係る光学式生体センサ装置1の機能構成例を示す図である。本実施形態に係る光学式生体センサ装置1は、後述する発光部140により照射された光Lであって、生体2内を透過した光Lを受光部150により検出し、その光Lの強度に基づいて、生体2の心臓から血管に血液を送り出すことにより発生する血管の容積変化の波形(容積脈波、以下単に脈波と呼ぶ。)を測定し、その測定結果から生体2の生体情報を取得する装置である。
【0011】
生体情報としては、例えば、測定された脈波の変動周期から脈拍数、赤色光と赤外光の2つの光を照射したときの脈動から動脈血中の酸素飽和濃度を取得することができる。また、高精度に脈波を測定することにより得られる加速度脈波から生体情報として血管年齢を取得することができる。
【0012】
図1に示すように、光学式生体センサ装置1は、機能的に、電源部110と、電源制御部120と、電流制御部130と、発光部140と、受光部150と、電圧制御部160と、生体情報取得部170とを備える。
【0013】
電源部110は、光学式生体センサ装置1の動作に係る電力を供給する。電源部110は、例えば、リチウムイオン電池等の二次電池により実現される。
【0014】
電源制御部120は、発光部140に電力を供給する電源部110の電源電圧を、電圧制御部160により指示された発光部140を駆動するための駆動電圧に変換する。電源制御部120は、例えば、電源部110としての二次電池から供給される電圧を昇圧する昇圧DC/DCコンバータといった電源IC(Integrated Circuit)により実現され、電源電圧を電圧制御部160からの制御信号が表す駆動電圧に変換する。
【0015】
電流制御部130は、受光部150により検出された光の強度に基づいて、発光部140の駆動電流を制御する。電流制御部130は、例えば、発光部140と直列に接続された可変な電流制限抵抗により実現され、電圧制御部160からの制御信号に基づいて、電流制限抵抗の抵抗値を変化させることにより駆動電流を制御する。
【0016】
発光部140は、生体2に向けて光Lを照射する。発光部140は、例えば赤色の可視光や赤外線等の光Lを照射可能なLED(Light Emitting Diode)やLD(Laser Diode)といった発光素子により実現される。発光部140は、電流制御部130により制御される駆動電流に応じた強度で光Lを照射する。
【0017】
受光部150は、発光部140により照射され、生体2内を透過した光Lを検出する。そして、受光部150は、検出した光Lの強度に応じた信号を、電圧制御部160及び生体情報取得部170に出力する。受光部150は、例えば発光部140により照射された光Lを受光可能な受光素子により実現される。
【0018】
電圧制御部160は、受光部150により検出された光Lの強度に基づいて、発光部140の駆動電圧を制御する。より詳細には、電圧制御部160は、生体情報を取得可能な光の強度の範囲(測定範囲)と、受光部150により検出された光の強度とに基づいて、発光部140の駆動電圧を制御する。具体的には、電圧制御部160は、光学式生体センサ装置1の消費電力を抑制可能な、電流制御部130が制御する駆動電流の値と電圧制御部160が制御する駆動電圧の値を決定する決定部180をさらに備える。そして、電圧制御部160は、決定部180による決定結果に基づいて、発光部140の駆動電圧を制御する。また、電流制御部130は、決定部180による決定結果に基づいて、発光部140の駆動電流を制御する。電圧制御部160は、例えば、受光部150から受け付けた信号が表す光Lの強度が、測定範囲内か否かを判定する判定回路、及びその判定結果に基づいて発光部140の駆動電圧を制御する制御信号を電源制御部120に出力するフィードバック回路により実現され、決定部180は、例えば、当該判定回路により実現される。
【0019】
生体情報取得部170は、受光部150により検出された光Lの強度に基づいて、生体2の生体情報を取得する。生体情報取得部170は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えるマイクロコンピュータ(マイコン)により実現され、受光部150から受け付けた信号が表す光の強度の時間推移を記録し、記録したデータに基づいて、脈拍数や血管年齢等の生体情報を取得する。
【0020】
次に、図1に示す各機能を実現するための本実施形態に係る光学式生体センサ装置1の回路構成例について説明する。図2は、本実施形態に係る光学式生体センサ装置1の概略回路図の一例である。
【0021】
図2に示す例において、光学式生体センサ装置1は、電源部110としてバッテリ111と、電源制御部120として電源IC121と、電流制御部130として電流制限抵抗131と、発光部140として発光素子141と、受光部150として受光素子151と、電圧制御部160としての判定回路161とフィードバック制御回路162と、生体情報取得部170としてのマイコン171と、を備える。
【0022】
電源IC121は、バッテリ111から供給される電源電圧を、フィードバック制御回路162から出力される制御信号が表す発光素子141の駆動電圧Vdまで昇圧する。これにより、発光素子141は、駆動電圧Vdと、発光素子141の順方向電圧Vfと、電流制限抵抗131の抵抗値Rにより決定される駆動電流Iが流れることにより発光する。発光素子141により照射され、生体2内を透過した光は、受光素子151により検出される。受光素子151は、検出した光の強度に応じた信号を判定回路161及びマイコン171に出力する。
【0023】
判定回路161は、決定部180の一例であって、受光素子151からの信号が表す光の強度が、測定下限値よりも大きいか否かを判定する。測定下限値は、測定範囲の下限値、すなわち生体情報を取得するために必要な光の強度の下限値である。測定範囲及び測定下限値は、脈拍数や血管年齢といった取得すべき生体情報の種類に応じて設定可能である。例えば、脈拍数よりも高精度の脈波の測定が必要な血管年齢を生体情報として取得する場合、測定下限値は、脈拍数を生体情報として取得する場合の測定下限値よりも高い値が設定されてもよい。
【0024】
本実施形態において、判定回路161は、光の強度が測定下限値よりも低いとき、駆動電流が所定変化量(例えば、5.0[mA])だけ増加するように電流制限抵抗131の抵抗値を変更するための制御信号を電流制限抵抗131に出力する。また、判定回路161は、駆動電圧が所定変化量(例えば、0.5[V])だけ増加するように駆動電圧を変更するための信号をフィードバック制御回路162に出力する。判定回路161は、光の強度が測定下限値よりも大きいとき、駆動電流が所定変化量(例えば、5.0[mA])だけ減少するように電流制限抵抗131の抵抗値を変更するための信号を電流制限抵抗131に出力する。また、判定回路161は、駆動電圧が所定変化量(例えば、0.5[V])だけ減少するように駆動電圧を変更するための信号をフィードバック制御回路162に出力する。フィードバック制御回路162は、判定回路161からの信号に基づいて決定される駆動電圧までバッテリ111の電源電圧を昇圧するための制御信号を電源IC121に出力する。
【0025】
なお、判定回路161により増減される駆動電流及び駆動電圧の所定変化量やサンプリング周期は、脈拍数や血管年齢といった取得すべき生体情報の種類に応じて設定可能である。例えば、脈拍数よりも高精度の脈波の測定が必要な血管年齢を生体情報として取得する場合、所定変化量及びサンプリング周期は、脈拍数を生体情報として取得する場合の所定変化量及びサンプリング周期よりも小さい値が設定されてもよい。
【0026】
次に、本実施形態に係る光学式生体センサ装置1における消費電力の抑制方法について説明する。本実施形態では、発光素子141の駆動電圧及び駆動電流が制御することにより、発光素子141及び電源IC121における消費電力を抑制する。
【0027】
まず、発光素子141における消費電力の抑制について説明する。例えば、図2に示す電源IC121により供給される駆動電圧Vd、発光素子141の順方向電圧Vf、電流制限抵抗131の抵抗値Rを用いて、発光素子141に流れる駆動電流Iは以下の式で表される。
I=(Vd-Vf)/R
順方向電圧Vfが一定値であるとすると、駆動電流Iを変更するためには、駆動電圧Vd及び抵抗値Rのうち少なくとも一方を変更すればよい。例えば、駆動電圧Vd=5.0[V]、順方向電圧Vf=2.0[V]、抵抗値R=100[Ω]のとき、駆動電流I=(5.0-2.0)/100=30[mA]である。この場合、受光素子151で検出された光の強度が所定の範囲を超えており、発光素子141の消費電力を下げるため、駆動電流Iを減少させる場合、駆動電圧Vd=5.0[V]のまま抵抗値RをR=300[Ω]に変更すると、I=(5.0-2.0)/300=10[mA]のように駆動電流Iを30[mA]から10[mA]に減少させることができる。一方、抵抗値R=100[Ω]のまま駆動電圧VdをVd=3.0[V]に変更しても、I=(3.0-2.0)/100=10[mA]のように駆動電流Iを30[mA]から10[mA]に減少させることができる。すなわち、駆動電圧Vdを5.0[V]から3.0[V]に変更するか、または抵抗値Rを100[Ω]から300[Ω]に変更することにより、発光素子141の駆動電流Iを減少させることができるため、発光素子141の消費電力を抑制することができる。
【0028】
次に、電源IC121における消費電力の抑制について説明する。一般的な電源ICと同様に、電源IC121は、電源電圧の昇圧差が大きいほど変換効率が悪化する特性がある。例えば、図2に示すように、電源IC121にバッテリ111から供給される電圧及び電流をVin,Iin、電源IC121から出力される電圧及び電流をVout,Ioutとすると、Vinを一定値(例えば2.4[V])として、同じIoutを出力するとき、Vout=3.0[V]の場合と、Vout=5.0[V]の場合とでは、昇圧差が大きいVout=5.0[V]の場合の方が、Vout=3.0[V]の場合よりも大きいIinを必要とするため、電源電圧の変換効率が悪い。従って、受光素子151で検出された光の強度が所定の範囲内に収まるような駆動電流I(Iout)において、できるだけ昇圧差が小さくなるように駆動電圧Vd(Vout)を制御することにより、電源IC121における電源電圧の変換効率を最適化し、電源IC121における消費電力を抑制することができる。
【0029】
本実施形態に係る光学式生体センサ装置1は、受光素子151により検出された光の強度が測定下限値に近づくように、所定のサンプリング周期で駆動電圧Vd及び駆動電流Iをそれぞれ所定変化量ずつ変化させる。これにより、光学式生体センサ装置1は、受光素子151からの信号が表す光の強度が測定下限値を超えた上で、駆動電圧Vd及び駆動電流Iを変化させるにあたって、光学式生体センサ装置1の消費電力を可能な限り抑制できるような、駆動電圧Vdと駆動電流Iの最適な値の組み合わせとなるように制御することとなる。
【0030】
次に、本実子形態に係る光学式生体センサ装置1の動作について説明する。図3は、本実施形態における光学式生体センサ装置1が実行する発光素子141の駆動電圧・駆動電流を制御するための制御処理の一例を示すフローチャートである。光学式生体センサ装置1は、例えば、ユーザから操作受付部(図示せず)を介して電源をオンにされたことを契機として図3に示す制御処理を開始する。
【0031】
光学式生体センサ装置1は、制御処理を開始すると、電源制御部120が出力する発光部140の駆動電圧を初期値(例えば、5.0[V])に設定する(ステップS101)。
【0032】
そして、光学式生体センサ装置1は、電流制御部130により制御される駆動電流を初期値(例えば、30[mA])に設定する(ステップS102)。
【0033】
そして、光学式生体センサ装置1は、測定下限値及びサンプリング周期を設定する(ステップS103)。ここで、設定される測定下限値及びサンプリング周期は、測定すべき生体情報に応じてユーザにより操作受付部(図示せず)を介して設定されてもよいし、予め定められた値が設定されてもよい。
【0034】
そして、光学式生体センサ装置1は、生体情報の測定を開始する(ステップS104)。光学式生体センサ装置1は、測定を開始すると、ステップS103において設定されたサンプリング周期で発光部140を点灯する。
【0035】
そして、光学式生体センサ装置1は、ステップS103において設定されたサンプリング周期で受光部150により光を検出する(ステップS105)。そして、受光部150は、検出した光の強度を表す信号を、電圧制御部160に出力する。
【0036】
そして、光学式生体センサ装置1の電圧制御部160は、ステップS105において検出された光の強度が測定下限値よりも大きいか否かを判定する(ステップS106)。電圧制御部160は、光の強度が測定下限値よりも大きいと判定したとき(ステップS106;Yes)、駆動電流を現在の値から5.0[mA]減少した値に変更する制御信号を電流制御部130に出力し、駆動電圧を現在の値から0.5[V]減少した値に変更する制御信号を電源制御部120に出力する(ステップS107)。そして、光学式生体センサ装置1は、ステップS105の処理に戻る。
【0037】
一方、電圧制御部160は、光の強度が測定下限値よりも大きくないと判定したとき(ステップS106;No)、駆動電流を5.0[mA]増加する制御信号を電流制御部130に出力し、駆動電圧を0.5[V]増加する制御信号を電源制御部120に出力する(ステップS108)。そして、光学式生体センサ装置1は、ステップS105の処理に戻る。
【0038】
光学式生体センサ装置1は、以上の処理を、例えばユーザから操作受付部(図示せず)を介して電源をオフにされたことを契機として終了する。
【0039】
以上説明したように、本実施形態に係る光学式生体センサ装置1において、電圧制御部160は、発光部140により生体2に照射され、生体2内を透過した光を受光部150が検出し、検出された光の強度に基づいて、発光部140の駆動電圧を制御する。そのため、光学式生体センサ装置1は、受光部150により検出された光の強度が生体情報を取得可能な強度よりも大きいときに、発光部140の駆動電圧を減少するように制御することにより、光学式生体センサ装置1の消費電力を抑制することができる。
【0040】
また、本実施形態に係る光学式生体センサ装置1において、電圧制御部160は、生体情報を取得可能な光の強度の測定範囲と、受光部150により検出された光の強度とに基づいて、発光部140の駆動電圧を制御する。そのため、光学式生体センサ装置1は、受光部150により検出された光の強度を生体情報を取得可能な強度の範囲に収めつつ、発光部140の駆動電圧を減少するように制御することにより、光学式生体センサ装置1の消費電力を抑制することができる。
【0041】
また、本実施形態に係る光学式生体センサ装置1において、電圧制御部160は、受光部150により検出された光の強度が測定下限値よりも大きいときに、発光部140の駆動電圧を減少させ、受光部150により検出された光の強度が測定下限値よりも大きくないときに発光部140の駆動電圧を増加させる。そのため、光学式生体センサ装置1は、受光部150が検出する光の強度が生体情報を取得するために必要な最低限の値となるように、発光部140の駆動電圧を制御することができ、その結果、光学式生体センサ装置1の消費電力をより抑制することができる。
【0042】
また、本実施形態に係る光学式生体センサ装置1は、発光部140に電力を供給する電源部110の電源電圧を、電圧制御部160により指示された駆動電圧に変換する電源制御部120を備え、電圧制御部160は、受光部150により検出された光の強度が測定範囲内であって、電源電圧と駆動電圧との差が最小になるような駆動電圧に変換するよう電源制御部120に指示する。そのため、光学式生体センサ装置1は、生体情報を取得可能な光の強度を確保しつつ、電源制御部120における変換効率が最大となるように駆動電圧を制御するため、電源制御部120の消費電力を抑制することができる。
【0043】
また、本実施形態に係る光学式生体センサ装置1は、受光部150により検出された光の強度に基づいて、発光部140の駆動電流を制御する電流制御部130を備える。そのため、光学式生体センサ装置1は、受光部150により検出された光の強度が生体情報を取得可能な強度よりも大きいときに、発光部140の駆動電流を減少するように制御することにより、発光部140の消費電力を抑制することができる。
【0044】
また、本実施形態に係る光学式生体センサ装置1において、測定範囲は、生体情報の種類に応じて設定される。そのため、脈拍数や、脈拍数よりも高精度な脈波のデータを必要とする血管年齢のように、生体情報の種類に応じて、取得すべき光の強度の測定範囲が異なる場合であっても、光学式生体センサ装置1はその生体情報の種類に適した測定範囲を設定できるため、より精度良く生体情報を取得することができる。
【0045】
また、本実施形態に係る光学式生体センサ装置1において、発光部140により所定のサンプリング周期で生体2に向けて光を照射され、生体2内を透過した光を受光部150が同じサンプリング周期で検出し、電圧制御部160は、そのサンプリング周期で、受光部150により検出された光の強度に基づいて、発光部140の駆動電圧を制御する。そのため、光学式生体センサ装置1は、発光部140及び受光部150による間欠的な照射及び受光の合間に、受光した光の強度に基づく駆動電圧のフィードバック制御を行うことができる。
【0046】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
【0047】
例えば、上述の実施形態において、図3のステップS107及びS108において、検出した光の強度に基づいて、駆動電圧及び駆動電流の両方を増減する例について説明した。しかし、光学式生体センサ装置1は、検出した光の強度に基づいて、駆動電圧のみを増減するよう制御してもよい。この場合、光学式生体センサ装置1は、駆動電流が変化しなくても、駆動電圧を減少させることにより、電源制御部120の消費電力の抑制に加えて、ジュール熱による電流制限抵抗131の消費電力を抑制することができる。
【0048】
また、例えば、上述の実施形態において、光学式生体センサ装置1は、発光部140の駆動電流を制御することにより、発光部140により放射される光の強度を制御したが、PWM(Pulse Width Modulation)制御により、光の強度を制御してもよい。
【0049】
また、例えば、上述の実施形態において、光学式生体センサ装置1は、受光部150により検出された光の強度が測定下限値に近づくように、フィードバック制御により駆動電圧及び駆動電流を制御する例について説明した。しかし、光学式生体センサ装置1が駆動電圧及び駆動電流を制御する方法はこれに限られない。例えば、測定下限値と、その測定下限値における駆動電圧及び駆動電流とを対応付けた対応テーブルをROM等に記憶しておき、電圧制御部160は、その対応テーブルを参照して、測定下限値に対応する駆動電圧及び駆動電流になるように制御してもよい。このように予め測定下限値と対応付けられる駆動電圧及び駆動電流として、過去に計測された駆動電圧及び駆動電流の平均値を用いてもよいし、過去に計測された測定下限値と駆動電圧及び駆動電圧の関係から統計学的に求めた値を用いてもよい。また、電圧制御部160は、対応テーブルの代わりに、測定下限値と駆動電圧及び駆動電流の関係を表す計算式を用いて、測定下限値に対応する駆動電圧及び駆動電流を算出し、算出された駆動電圧及び駆動電流になるように制御してもよい。また、例えば、受光部150により検出された光の強度が測定下限値に対応するように、先ずは発光部140の駆動電流を決定して(上記のような対応テーブルを利用して決定してもよいし、計算式を利用して決定してもよい)、その駆動電流を維持した上で最も消費電力が抑制できる駆動電圧になるように制御するようにしてもよい。
【0050】
また、例えば、上述の実施形態において、電圧制御部160として、判定回路161及びフィードバック制御回路162により、検出した光の強度に基づいて、駆動電圧及び駆動電流を制御する例について説明した。しかし、電圧制御部160の機能は、判定回路161及びフィードバック制御回路162といった専用回路によって実現される例に限られない。例えば、電圧制御部160の機能の一部又は全部が、CPUによるソフトウェア制御により実現されてもよい。より詳細には、例えば、電圧制御部160は、予めROM等に記憶された、光の強度と駆動電圧及び駆動電流の対応テーブルを参照して、検出した光の強度に対応する駆動電圧及び駆動電流の値を特定し、その値となるように駆動電圧及び駆動電流を制御してもよい。
【0051】
また、電圧制御部160の機能の一部又は全部、及び生体情報取得部170の機能が、CPUによるソフトウェア制御により実現される場合、そのソフトウェア制御に係るプログラムは、コンピュータ読み取り可能な媒体としてフラッシュメモリなどの不揮発性メモリからなるROMに記録されてもよい。また、コンピュータ読み取り可能な媒体は、これらに限定されず、HDD(Hard Disk Drive)、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)やDVD(Digital Versatile Disc)などの可搬型記録媒体を適用してもよい。また、そのソフトウェア制御に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウェーブ(搬送波)も本発明に適用される。
【0052】
その他、上記実施の形態で示した構成、制御手順や表示例などの具体的な細部は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記の番号は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
【0054】
(付記1)
生体に向けて光を照射する発光部と、
前記発光部により照射され、前記生体内を透過した光を検出する受光部と、
前記受光部により検出された光の強度に基づいて、前記生体の生体情報を取得する生体情報取得部と、
前記受光部により検出された光の強度に基づいて、前記発光部の駆動電圧を制御する電圧制御部と、
を備えることを特徴とする光学式生体センサ装置。
【0055】
(付記2)
前記電圧制御部は、前記生体情報を取得可能な光の強度の範囲と、前記受光部により検出された光の強度とに基づいて、前記発光部の駆動電圧を制御する、
ことを特徴とする付記1に記載の光学式生体センサ装置。
【0056】
(付記3)
前記範囲は、前記生体情報を取得可能な光の強度の下限値により規定され、
前記電圧制御部は、前記受光部により検出された光の強度が、前記下限値よりも大きいときに、前記発光部の駆動電圧を減少させ、前記受光部により検出された光の強度が、前記下限値よりも大きくないときに、前記発光部の駆動電圧を増加させる、
ことを特徴とする付記2に記載の光学式生体センサ装置。
【0057】
(付記4)
前記発光部に電力を供給する電源部の電源電圧を、前記電圧制御部により指示された前記駆動電圧に変換する電源制御部をさらに備え、
前記電圧制御部は、前記受光部により検出された光の強度が前記範囲内であって、かつ前記電源電圧と前記駆動電圧との差が最小になるような前記駆動電圧に変換するよう前記電源制御部に指示する、
ことを特徴とする付記2または3に記載の光学式生体センサ装置。
【0058】
(付記5)
前記範囲は、前記生体情報の種類に応じて設定される、
ことを特徴とする付記2乃至4のいずれか1つに記載の光学式生体センサ装置。
【0059】
(付記6)
前記受光部により検出された光の強度に基づいて、前記発光部の駆動電流を制御する電流制御部をさらに備え、
前記電圧制御部は、前記光学式生体センサ装置の消費電力を抑制可能な、前記電流制御部が制御する前記駆動電流の値と前記電圧制御部が制御する前記駆動電圧の値を決定する決定部をさらに備え、
前記電圧制御部は、前記決定部による決定結果に基づいて、前記発光部の駆動電圧を制御し、
前記電流制御部は、前記決定部による決定結果に基づいて、前記発光部の駆動電流を制御する、
ことを特徴とする付記1乃至5のいずれか1つに記載の光学式生体センサ装置。
【0060】
(付記7)
前記発光部は、所定の周期で前記生体に向けて光を照射し、
前記受光部は、前記発光部により照射され、前記生体内を透過した光を前記所定の周期で検出し、
前記電圧制御部は、前記所定の周期で、前記受光部により検出された光の強度に基づいて、前記発光部の駆動電圧を制御する、
ことを特徴とする付記1乃至6のいずれか1つに記載の光学式生体センサ装置。
【0061】
(付記8)
生体に向けて光を照射する発光部と、前記発光部により照射され、前記生体内を透過した光を検出する受光部と、を備える光学式生体センサ装置の制御方法であって、
前記受光部により検出された光の強度に基づいて、前記生体の生体情報を取得する生体情報取得ステップと、
前記受光部により検出された光の強度に基づいて、前記発光部の駆動電圧を制御する電圧制御ステップと、
を備えることを特徴とする制御方法。
【0062】
(付記9)
生体に向けて光を照射する発光部と、前記発光部により照射され、前記生体内を透過した光を検出する受光部と、を備える光学式生体センサ装置のコンピュータを、
前記受光部により検出された光の強度に基づいて、前記生体の生体情報を取得する生体情報取得手段、
前記受光部により検出された光の強度に基づいて、前記発光部の駆動電圧を制御する電圧制御手段、
として機能させることを特徴とするプログラム。
【符号の説明】
【0063】
1…光学式生体センサ装置、110…電源部、111…バッテリ、120…電源制御部、121…電源IC、130…電流制御部、131…電流制限抵抗、140…発光部、141…発光素子、150…受光部、151…受光素子、160…電圧制御部、161…判定回路、162…フィードバック制御回路、170…生体情報取得部、171…マイコン、180…決定部
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2022-12-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するため、本発明の観点に係る光学式生体センサ装置は、
生体に向けて光を照射する発光部と、
前記発光部により照射され、前記生体内を透過した光を検出する受光部と、
前記受光部により検出された光の強度に基づいて、前記生体の生体情報を取得する生体情報取得部と、
前記受光部により検出された光の強度に基づいて、前記発光部の駆動電圧を制御する電圧制御部と、
を備え
前記電圧制御部は、前記光の強度を変更するように前記発光部の駆動電圧を制御する場合、前記発光部の駆動電圧を段階的に変更する制御を行う、
ことを特徴とする。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体に向けて光を照射する発光部と、
前記発光部により照射され、前記生体内を透過した光を検出する受光部と、
前記受光部により検出された光の強度に基づいて、前記生体の生体情報を取得する生体情報取得部と、
前記受光部により検出された光の強度に基づいて、前記発光部の駆動電圧を制御する電圧制御部と、
を備え
前記電圧制御部は、前記光の強度を変更するように前記発光部の駆動電圧を制御する場合、前記発光部の駆動電圧を段階的に変更する制御を行う、
ことを特徴とする光学式生体センサ装置。
【請求項2】
前記受光部により検出された光の強度に基づいて、前記発光部の駆動電流を制御する電流制御部をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の光学式生体センサ装置。
【請求項3】
前記電流制御部は、前記光の強度を変更するように前記発光部の駆動電流を制御する場合、前記発光部の駆動電流を段階的に変更する制御を行う、
ことを特徴とする請求項2に記載の光学式生体センサ装置。
【請求項4】
前記電圧制御部が、前記光の強度が段階的に変更されるように、前記発光部の駆動電圧を変更するとともに、
前記電流制御部が、前記光の強度が段階的に変更されるように、前記発光部の駆動電流を変更する、
ことを特徴とする請求項2に記載の光学式生体センサ装置。
【請求項5】
前記電圧制御部が、前記光の強度が増加又は減少されるように、前記発光部の駆動電圧を変更するとともに、
前記電流制御部が、前記光の強度が増加又は減少されるように、前記発光部の駆動電流を変更する、
ことを特徴とする請求項2に記載の光学式生体センサ装置。
【請求項6】
前記発光部は、所定の周期で前記生体に向けて光を照射し、
前記受光部は、前記発光部により照射され、前記生体内を透過した光を前記所定の周期で検出し、
前記電圧制御部は、前記所定の周期で、前記受光部により検出された光の強度に基づいて、前記発光部の駆動電圧を制御する、
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の光学式生体センサ装置。
【請求項7】
生体に向けて光を照射する発光部と、前記発光部により照射され、前記生体内を透過した光を検出する受光部と、を備える光学式生体センサ装置の制御方法であって、
前記受光部により検出された光の強度に基づいて、前記生体の生体情報を取得する生体情報取得ステップと、
前記受光部により検出された光の強度に基づいて、前記発光部の駆動電圧を制御する電圧制御ステップと、
を備え
前記電圧制御ステップにおいて、前記光の強度を変更するように前記発光部の駆動電圧を制御する場合、前記発光部の駆動電圧を段階的に変更する制御を行う、
ことを特徴とする制御方法。
【請求項8】
生体に向けて光を照射する発光部と、前記発光部により照射され、前記生体内を透過した光を検出する受光部と、を備える光学式生体センサ装置のコンピュータを、
前記受光部により検出された光の強度に基づいて、前記生体の生体情報を取得する生体情報取得手段
前記受光部により検出された光の強度に基づいて、前記発光部の駆動電圧を制御する電圧制御手段
として機能させ
前記電圧制御手段は、前記光の強度を変更するように前記発光部の駆動電圧を制御する場合、前記発光部の駆動電圧を段階的に変更する制御を行う、
ことを特徴とするプログラム。