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特開2022-190119遮光板、カメラユニット、および、電子機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190119
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】遮光板、カメラユニット、および、電子機器
(51)【国際特許分類】
   G03B 9/02 20210101AFI20221215BHJP
   G03B 17/02 20210101ALI20221215BHJP
【FI】
G03B9/02 A
G03B17/02
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176991
(22)【出願日】2022-11-04
(62)【分割の表示】P 2019167431の分割
【原出願日】2019-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2019134036
(32)【優先日】2019-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】西辻 清明
(72)【発明者】
【氏名】島村 槙一
(57)【要約】
【課題】孔を透過するように孔を区画する側面で反射される光の光量を低下させることを可能とした遮光板、カメラユニット、および、電子機器を提供する。
【解決手段】遮光板10の厚さ方向における、裏面10Rと中央開口HCの縁との間の距離に対する表面10Fと中央開口HCの縁との間の距離の比が、2.5以上である。表面10Fと対向する方向から見て、表面開口H1Fは円状を有する。表面10Fと対向する方向から見て、第2孔10H2を区画する側面を、表面開口H1Fの中心に対して同心の円によって、表面開口H1Fの径方向において5等分した場合に、表面10Fと直交する平面に沿う断面において、第2孔10H2を区画する側面を5等分した各領域のうち、中央開口HCの縁を含む領域での表面10Fに対する傾きが、当該領域と隣り合う領域での表面10Fに対する傾きよりも大きい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の遮光板であって、
光の入射側に位置する表面と、
前記表面とは反対側の面である裏面と、
前記表面と前記裏面との間を貫通する孔と、を備え、
前記孔は、前記裏面に裏面開口を有し、前記裏面から前記表面に向けて先細る形状を有した第1孔と、前記表面に前記裏面開口よりも大きい表面開口を有し、前記表面から前記裏面に向けて先細る形状を有して前記第1孔に繋がる第2孔とを備え、
前記第1孔が有する開口のうち、前記裏面開口とは反対側の前記開口が中央開口であり、
前記遮光板の厚さ方向における、前記裏面と前記中央開口の縁との間の距離に対する前記表面と前記中央開口の縁との間の距離の比が、2.5以上であり、
前記表面と対向する方向から見て、前記表面開口は円状を有し、
前記表面と対向する方向から見て、前記第2孔を区画する側面を、前記表面開口の中心に対して同心の円によって、前記表面開口の径方向において5等分した場合に、
前記表面と直交する平面に沿う断面において、前記第2孔を区画する前記側面を5等分した各領域のうち、前記中央開口の縁を含む領域での前記表面に対する傾きが、当該領域と隣り合う領域での前記表面に対する傾きよりも大きい
遮光板。
【請求項2】
前記表面と直交する平面に沿う断面において、前記第2孔を区画する前記側面を5等分した各領域のうち、前記表面開口の縁を含む領域での前記表面に対する傾きが、他の領域での前記表面に対する傾きよりも大きい
請求項1に記載の遮光板。
【請求項3】
前記表面と直交する平面に沿う断面において、前記第2孔を区画する前記側面を5等分した各領域のうち、前記表面開口の縁を含む領域での前記表面に対する傾きが、50°以上60°以下である
請求項2に記載の遮光板。
【請求項4】
前記表面と対向する方向から見て、前記第2孔を区画する前記側面を5等分した領域は、前記表面開口の縁から前記中央開口の縁に向かう方向に沿って、第1領域、第2領域、第3領域、第4領域、および、第5領域であり、
前記第1領域から前記第4領域に向けて、前記第2孔を区画する前記側面のうちで各領域に含まれる部分での前記表面に対する傾きが小さくなる
請求項1から3のいずれか一項に記載の遮光板。
【請求項5】
前記表面と直交する平面に沿う断面において、前記第2孔を区画する前記側面が弧状であり、かつ、前記第2孔を区画する前記側面の曲率中心が、前記遮光板の外側に位置する
請求項1から4のいずれか一項に記載の遮光板。
【請求項6】
前記遮光板は、10μm以上100μm以下の厚さを有する
請求項1から5のいずれか一項に記載の遮光板。
【請求項7】
前記遮光板は、鉄‐ニッケル系合金製、または、鉄‐ニッケル‐コバルト系合金製である
請求項1から6のいずれか一項に記載の遮光板。
【請求項8】
前記遮光板は、インバー製またはスーパーインバー製である
請求項7に記載の遮光板。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の遮光板を備える
カメラユニット。
【請求項10】
請求項9に記載のカメラユニットを備える
電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮光板、遮光板を備えるカメラユニット、および、カメラユニットを備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンなどの電子機器が備えるカメラユニットは、外光に対する絞りとして機能する遮光板を備えている。所定の形状を有した遮光板の成型が容易であることから、樹脂製の遮光板が多用されている(例えば、特許文献1を参照)。しかしながら、樹脂製の遮光板は、遮光板が有する光透過性のために、外光を通過させるための孔だけでなく、孔を区画する部分においても外光を透過させてしまう。このように、樹脂製の遮光板による遮光は十分ではないことから、より高い遮光性を有した金属製の遮光板が使用され始めている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-8786号公報
【特許文献2】国際公開第2016/060198号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、加工の難易度が低く、また、単位時間当たりに多くの製品を製造することが可能であるため、金属製の遮光板を製造する際には、金属板を金型によって打ち抜く打ち抜き加工が用いられている。打ち抜き加工を用いた金属板の加工では、金型によって金属板を打ち抜く際に、金属板に変形やひずみが生じることを抑え、これによって製品の寸法における精度を担保するために、金属板の表面に直交する方向に沿って金属板を打ち抜くことが必要とされる。これにより、金属板には、金属板の表面に直交する断面において、金属板の表面に対して垂直に延びる側面を有した孔が形成される。
【0005】
こうした孔を有する遮光板をカメラユニットに搭載した場合には、遮光板の表面との間で鋭角を形成する方向から遮光板に入射した外光が、孔を区画する側面において反射され、結果として孔を通過してしまうことがある。孔を通過した光は、カメラユニットが備える撮像部に受光され、撮像部が撮像した画像においてゴーストやフレアが生じてしまう場合がある。このように、金属製の遮光板には、遮光板が金属製であるがゆえの新たな課題が生じている。
【0006】
本発明は、孔を透過するように孔を区画する側面で反射される光の光量を低下させることを可能とした遮光板、カメラユニット、および、電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための遮光板は、金属製の遮光板である。光の入射側に位置する表面と、前記表面とは反対側の面である裏面と、前記表面と前記裏面との間を貫通する孔と、を備える。前記孔は、前記裏面に裏面開口を有し、前記裏面から前記表面に向けて先細る形状を有した第1孔と、前記表面に前記裏面開口よりも大きい表面開口を有し、前記表面から前記裏面に向けて先細る形状を有して前記第1孔に繋がる第2孔とを備える。前記第1孔が有する開口のうち、前記裏面開口とは反対側の前記開口が中央開口である。前記遮光板の厚さ方向における、前記裏面と前記中央開口の縁との間の距離に対する前記表面と前記中央開口の縁との間の距離の比が、2.5以上である。前記表面と対向する方向から見て、前記表面開口は円状を有する。前記表面と対向する方向から見て、前記第2孔を区画する側面を、前記表面開口の中心に対して同心の円によって、前記表面開口の径方向において5等分した場合に、前記表面と直交する平面に沿う断面において、前記第2孔を区画する前記側面を5等分した各領域のうち、前記中央開口の縁を含む領域での前記表面に対する傾きが、当該領域と隣り合う領域での前記表面に対する傾きよりも大きい。
【0008】
上記課題を解決するためのカメラユニットは、上記遮光板を備える。
上記課題を解決するための電子機器は、上記カメラユニットを備える。
【0009】
上記各構成によれば、第2孔が表面から裏面に向けて先細る形状を有するため、第2孔が表面から裏面に向けてほぼ同一の幅を有する場合に比べて、表面の斜め上方から孔に入射した光は、第2孔を区画する側面において遮光板の表面に向けて反射されやすい。しかも、裏面と中央開口との間の距離に対する表面と中央開口との間の距離の比が2.5以上であることから、第2孔の大きさを、表面から裏面に向けて先細る形状とすることが可能な大きさに維持することが可能である。これにより、孔を透過するように孔を区画する側面で反射される光の光量を低下させることが可能である。
また、上記各構成によれば、中央開口の縁を含む領域での表面に対する傾きが、当該領域と隣り合う領域での表面に対する傾きよりも小さい場合に比べて、第2孔の直径が拡張されることが抑えられる。
【0010】
上記遮光板において、前記表面と直交する平面に沿う断面において、前記第2孔を区画する前記側面を5等分した各領域のうち、前記表面開口の縁を含む領域での前記表面に対する傾きが、他の領域での前記表面に対する傾きよりも大きくてもよい。
【0011】
上記構成によれば、第2孔を区画する側面のうち、表面開口の縁を含む領域での傾きを他の領域での傾きよりも大きくすることによって、第2孔の直径が過剰に大きくなることを抑えつつ、表面開口の縁を含む領域以外の領域において、光を遮光板の表面に向けてより反射させやすくすることができる。
【0012】
上記遮光板では、前記表面と直交する平面に沿う断面において、前記第2孔を区画する前記側面を5等分した各領域のうち、前記表面開口の縁を含む領域での前記表面に対する傾きが、50°以上60°以下であってもよい。この構成によれば、第2孔を区画する側面のうち、表面開口の縁を含む領域において、遮光板の表面に向けて光を反射させる確実性を高めることができる。
【0013】
上記遮光板において、前記表面と対向する方向から見て、前記第2孔を区画する前記側面を5等分した領域は、前記表面開口の縁から前記中央開口の縁に向かう方向に沿って、第1領域、第2領域、第3領域、第4領域、および、第5領域であり、前記第1領域から前記第4領域に向けて、前記第2孔を区画する前記側面のうちで各領域に含まれる部分での前記表面に対する傾きが小さくなってもよい。
【0014】
上記構成によれば、第1領域から第4領域までにわたって第2孔を区画する側面の傾きが同一である場合に比べて、中央開口に近づくほど、第2孔に入射した光を遮光板の表面に向けて反射させやすくなる。
【0015】
上記遮光板において、前記表面と直交する平面に沿う断面において、前記第2孔を区画する前記側面が弧状であり、かつ、前記第2孔を区画する前記側面の曲率中心が、前記遮光板の外側に位置してもよい。
【0016】
上記構成によれば、表面の斜め上方から第2孔に入射した光は、弧状を有した側面において反射される。そのため、反射光のなかで最も高い輝度を有した正反射光は、弧状を有した側面から遮光板の表面に向かう方向に沿って反射される。それゆえに、孔を通過するように孔を区画する側面で反射される光の光量がより低下する。
【0017】
上記遮光板において、前記遮光板は、10μm以上100μm以下の厚さを有してもよい。この構成によれば、遮光板の厚さが10μm以上であることによって、遮光板を形成するための金属箔の反りが遮光板の形状に対して影響を与えることが抑えられ、遮光板の厚さが100μm以下であることによって、孔を形成するためのエッチングの精度が低下することが抑えられる。
【0018】
上記遮光板において、前記遮光板は、鉄‐ニッケル系合金製、または、鉄‐ニッケル‐コバルト系合金製であってもよい。
上記遮光板において、前記遮光板は、インバー製またはスーパーインバー製であってもよい。
【0019】
上記各構成によれば、外気温の変化に伴う遮光板の変形を抑えることができ、これによって、外気温の変化に伴う外光の入射量における変化を抑えることができる。それゆえに、外光の入射量における変化に伴うゴーストやフレアの発生を抑えることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、孔を透過するように孔を区画する側面で反射される光の光量を低下させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】一実施形態における遮光板の構造を示す平面図。
図2図1が示す遮光板の構造を示す断面図。
図3図2が示す断面図の一部を拡大して示す部分拡大断面図。
図4】遮光板の作用を説明するための作用図。
図5】遮光板の作用を説明するための作用図。
図6】遮光板の製造方法を説明するための工程図。
図7】遮光板の製造方法を説明するための工程図。
図8】遮光板の製造方法を説明するための工程図。
図9】遮光板の製造方法を説明するための工程図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1から図9を参照して、遮光板、カメラユニット、および、電子機器の一実施形態を説明する。以下では、遮光板の構成、遮光板の製造方法、および、実施例を順に説明する。
【0023】
[遮光板の構成]
図1から図5を参照して、遮光板の構成を説明する。
図1が示すように、金属製の遮光板10は、表面10Fと、裏面10Rと、孔10Hとを備えている。表面10Fは、光の入射側に位置する面である。裏面10Rは、表面10Fとは反対側の面である。孔10Hは、表面10Fと裏面10Rとの間を貫通している。遮光板10は、例えばステンレス鋼製であるが、ステンレス鋼以外の金属から形成されてもよい。なお、遮光板10は、表面10F、裏面10R、および、孔10Hを区画する側面が、図示されない反射防止膜によって覆われている。反射防止膜は、遮光板10を形成する金属よりも低い反射率を有し、かつ、反射防止膜に照射された光の一部を吸収する機能を有している。また、遮光板10が反射防止膜によって覆われていても、遮光板10における光の反射を完全になくすことはできない。
【0024】
遮光板10は、遮光板10が覆うレンズの形状に応じた円形状を有している。孔10Hは、孔10Hが対向するレンズの形状に応じた円形状を有している。
【0025】
図2は、遮光板10の表面10Fと直交する断面における遮光板10の構造を示している。
図2が示すように、孔10Hは、第1孔10H1および第2孔10H2を備えている。第1孔10H1は、裏面10Rに裏面開口H1Rを有し、裏面10Rから表面10Fに向けて先細る形状を有している。第2孔10H2は、表面10Fに裏面開口H1Rよりも大きい表面開口H2Fを有している。第2孔10H2は、表面10Fから裏面10Rに向けて先細る形状を有して、第1孔10H1に繋がっている。
【0026】
本実施形態では、表面10Fと直交する平面に沿う断面において、第2孔10H2を区画する側面が弧状であり、かつ、第2孔10H2を区画する側面の曲率中心が、遮光板10の外側に位置している。また、表面10Fと直交する平面に沿う断面において、第1孔10H1を区画する側面が弧状であり、第1孔10H1を区画する側面の曲率中心が、遮光板10の外側に位置している。
【0027】
遮光板10において、第1孔10H1の直径が第1直径DH1であり、第2孔10H2の直径が第2直径DH2である。第1直径DH1は、遮光板10が搭載されるカメラユニットに応じて設定される。第1直径DH1は、遮光板10が例えばスマートフォンのカメラユニットに搭載される場合には、0.4mm以上1.0mm以下であってよい。また、第1直径DH1は、遮光板10が例えば車載カメラに搭載される場合には、2.0mm以上7.0mm以下であってよい。
【0028】
第2直径DH2に対する第1直径DH1の百分率(DH1/DH2×100)は、例えば80%以上99%以下であってよい。遮光板10が、スマートフォン、タブレット型パーソナルコンピューター、および、ノート型パーソナルコンピューターの前面に設置されるカメラユニットに搭載される場合には、カメラユニットが、被写体を近距離で撮影することが多い。そのため、画角が大きくなるが、レンズが被写体の焦点を結ぶ上では、遮光板10には大きな内径が必要とされない。また、カメラユニットが配置される空間の制約から、遮光板10の外径を大きくすることも難しい。そのため、第2直径DH2に対する第1直径DH1の百分率は、80%以上90%以下であってよい。
【0029】
これに対して、遮光板10が、車載カメラに搭載される場合には、車載カメラが、被写体を中距離から遠距離で撮影することが多い。そのため、画角が小さくなるが、カメラユニットが配置される空間の制約が小さいため、カメラユニットが備えるレンズの径が大きくなる。これにより、レンズに対して広い範囲の光を集めるために、遮光板10において、第2直径DH2に対する第1直径DH1の比は、90%以上99%以下であってよい。
【0030】
また、遮光板10が、スマートフォンの背面に設置されるカメラユニットに搭載される場合には、カメラユニットが、被写体を近距離から遠距離で撮影することが多い。そのため、画角が大きくなる場合に対応する上では、第2直径DH2に対する第1直径DH1の比は、80%以上90%以下であってよく、画角が小さくなる場合に対応する上では、第2直径DH2に対する第1直径DH1の比は、90%以上99%以下であってよい。
【0031】
遮光板10の厚さTは、例えば10μm以上100μm以下であってよい。遮光板10の厚さが10μm以上である場合には、金属箔の反りが遮光板10の形状に対して影響を与えることが抑えられる。また、遮光板10の厚さが100μm以下である場合には、孔10Hを形成する際のエッチングの精度が低下することが抑えられる。
【0032】
図3は、図2が示す遮光板10の断面構造における一部を拡大して示している。
図3が示すように、第1孔10H1が有する開口のうち、裏面開口H1Rとは反対側の開口が中央開口HCである。遮光板10の厚さ方向において、裏面10Rと中央開口HCの縁との間の距離が、第1距離D1である。遮光板10の厚さ方向において、表面10Fと中央開口HCの縁との間の距離が、第2距離D2である。遮光板10において、第1距離D1に対する第2距離D2の比(D2/D1)が、2.5以上である。
【0033】
第1距離D1に対する第2距離D2の比(D2/D1)が大きくなるに従い、中央開口HCは、相対的に裏面開口H1Rに近付く。これにより、第1孔10H1の側面における面積を減少させることができる。そのため、遮光板10の斜め上方から孔10Hに入射した光の一部が、レンズの表面において反射された後、第1孔10H1に入射して、第1孔10H1からレンズLNに向けて反射されることが抑制される。
【0034】
なお、第1距離D1に対する第2距離D2の比(D2/D1)は、無限大に近づくことが好ましい。しかしながら実際には、孔10Hを形成するためのエッチングにおいて、遮光板10を形成するための金属箔と、金属箔に形成されたマスクとの隙間にエッチング液がしみ込み、これによって、サブミクロン程度の深さ、すなわち第1距離D1を有した第1孔10H1が形成される。そのため、例えば、金属箔が100μmの厚さを有する場合には、第1距離D1の下限値が0.1μm程度である。したがって、第1距離D1に対する第2距離D2の比(D2/D1)の上限値は、1000程度である。
【0035】
表面10Fと対向する方向から見て、表面開口H2Fは円状を有している。表面10Fと対向する方向から見て、第2孔10H2を区画する側面を、表面開口の中心に対して同心の面によって、表面開口H2Fの径方向において5等分する。この場合に、表面10Fと対向する方向から見て、第2孔10H2を区画する側面は、表面開口H2Fの縁から中央開口HCの縁に向かう方向に沿って、第1領域R1、第2領域R2、第3領域R3、第4領域R4、および、第5領域R5を有している。なお、第1領域R1は、第2孔10H2を区画する側面のうち、表面開口H2Fの縁を含む領域である。第5領域R5は、第2孔10H2を区画する側面のうち、中央開口HCの縁を含む領域である。
【0036】
表面10Fと直交する平面に沿う断面では、各領域において、表面10Fに対する、第2孔10H2を区画する側面の一部における一端と他端とを結ぶ直線の傾きが、側面のなかで各領域に含まれる部分での傾斜角である。第1領域R1において、第1直線L1と表面10Fとが形成する角度が第1傾斜角θ1であり、第2領域R2において、第2直線L2と表面10Fとが形成する角度が第2傾斜角θ2である。第3領域R3において、第3直線L3と表面10Fとが形成する角度が第3傾斜角θ3であり、第4領域R4において、第4直線L4と表面10Fとが形成する角度が第4傾斜角θ4であり、第5領域R5において、第5直線L5と表面10Fとが形成する角度が第5傾斜角θ5である。
【0037】
表面10Fに直交する平面に沿う断面において、第2孔10H2を区画する側面のうち、第1領域R1の第1傾斜角θ1が、他の領域での傾斜角よりも大きい。第1傾斜角θ1は、第2傾斜角θ2、第3傾斜角θ3、第4傾斜角θ4、および、第5傾斜角θ5の各々よりも大きい。また、第1傾斜角θ1は、50°以上60°以下である。
【0038】
表面10Fに直交する平面に沿う断面において、第2孔10H2を区画する側面のうち、第5領域R5の第5傾斜角θ5が、第4傾斜角θ4よりも大きい。また、第1領域R1から第4領域R4に向けて、第2孔10H2を区画する側面のうちで、各領域に含まれる部分での傾斜角が小さくなる。すなわち、第2孔10H2を区画する側面において、第1傾斜角θ1、第2傾斜角θ2、第3傾斜角θ3、第4傾斜角θ4の順に、傾斜角が小さくなる。
【0039】
図4は、本実施形態における遮光板10の断面構造を示している。一方で、図5は、表面に直交する断面において、孔を区画する側面が表面と直交する方向に沿って延びる例における断面構造を示している。なお、図4および図5では、図示の便宜上、遮光板の厚さに対する第1直径が縮小されている。
【0040】
図4が示すように、遮光板10に対して表面10Fに直交する方向から入射した光は、表面10Fに形成された表面開口H2Fから孔10Hに入る。そして、孔10Hを通った光は裏面10Rに形成された裏面開口H1Rから出ることによって、レンズLNに到達する。一方で、遮光板10において、第2孔10H2が表面10Fから裏面10Rに向けて先細る形状を有するため、表面10Fの斜め上方から孔10Hに入射した光は、第2孔10H2を区画する側面において遮光板10の表面10Fに向けて反射されやすい。
【0041】
しかも、裏面10Rと中央開口HCとの間の第2距離D2に対する表面10Fと中央開口HCとの間の第1距離D1の比(D1/D2)が2.5以上であることから、第2孔10H2の大きさを、表面10Fから裏面10Rに向けて先細る形状とすることが可能な大きさに維持することが可能である。これにより、孔10Hを透過するように孔10Hを区画する側面で反射される光の光量を低下させることが可能である。結果として、遮光板10に対向するレンズLNに意図しない光が入射することが抑えられる。
【0042】
本実施形態では、第1領域R1における第1傾斜角θ1が、第2領域R2から第5領域R5の各々における傾斜角よりも大きい。そのため、第2孔10H2の直径が過剰に大きくなることを抑えつつ、第1領域R1以外の領域において、光を遮光板10の表面10Fに向けてより反射させやすくすることができる。なお、第1傾斜角θ1が50°以上60°以下であるため、第2孔10H2を区画する側面のうち、表面開口H2Fを含む第1領域R1において、遮光板10の表面10Fに向けて光を反射させる確実性を高めることができる。
【0043】
本実施形態では、第5領域R5の第5傾斜角θ5が、第4領域R4の第4傾斜角θ4よりも大きいため、第5領域R5の第5傾斜角θ5が、第4領域R4の第4傾斜角θ4よりも小さい場合に比べて、第2孔10H2の直径が拡張されることが抑えられる。また、第1領域R1から第4領域R4に向けて、各領域での傾斜角が小さくなるため、第1領域R1から第4領域R4までにわたって第2孔10H2を区画する側面の傾きが同一である場合に比べて、中央開口HCに近付くほど、第2孔10H2に入射した光を遮光板10の表面10Fに向けて反射させやすくなる。
【0044】
また、表面10Fの斜め上方から第2孔10H2に入射した光は、曲率中心が遮光板10の外側に位置するような弧状を有した側面において反射される。そのため、反射光のなかで最も高い輝度を有した正反射光は、弧状を有した側面から遮光板10の表面10Fに向かう方向に沿って反射される。それゆえに、孔10Hを透過するように孔10Hを区画する側面で反射される光の光量がより抑えられる。
【0045】
遮光板10では、第1孔10H1を区画する側面が、曲率中心が遮光板10の外側に位置するような弧状を有する。そのため、第1孔10H1を区画する側面が直線状を有する場合に比べて、表面10Fの斜め上方から孔に入射した光のなかで、裏面開口H1Rの近傍において孔10Hを区画する側面によって反射される光の光量を低下させることができる。これにより、孔を透過するように孔10Hを区画する側面で反射される光の光量をより低下させることができる。
【0046】
図5が示すように、遮光板100に対して表面100Fに直交する方向から入射した光は、遮光板10に対して表面10Fに直交する方向から入射した光と同様、表面100Fに形成された開口から孔100H内に入る。そして、孔100Hを通った光は裏面100Rに形成された開口から出ることによって、レンズLNに到達する。これに対して、表面100Fの斜め上方から表面100Fに入射した光の一部は、表面100Fに形成された開口から孔100H内に入射し、かつ、孔100Hを区画する側面において反射される。側面に入射した光のほとんどは正反射の方向に反射されるため、側面に入射した光は、側面からレンズLNに向けて反射される。これにより、意図しない光がレンズLNを通じて撮像部に入射してしまう。
【0047】
以上説明した遮光板10は、上述したカメラユニットに1つ以上備えられる。また、遮光板10を備えるカメラユニットは、各種の電子機器に搭載される。カメラユニットを備える電子機器は、例えば、スマートフォン、タブレット型パーソナルコンピューター、および、ノート型パーソナルコンピューターなどであってよい。
【0048】
[遮光板の製造方法]
図6から図9を参照して、遮光板10の製造方法を説明する。図6から図9の各々は、遮光板10の製造過程における特定の工程における金属箔の断面構造を示している。なお、図6から図9では、図示の便宜上、金属箔の厚さに対する第2直径DH2の比が実際の遮光板よりも縮小され、かつ、金属箔の厚さに対する第1直径DH1の比が実際の遮光板よりも縮小されている。また、図6から図9では、図示の便宜上、第2直径DH2に対する第1直径DH1の比が、実際の遮光板よりも縮小されている。また、図6から図9では、説明の便宜上、遮光板10を製造する工程のなかで、遮光板10が有する孔10Hの形成に関わる工程のみを示している。
【0049】
図6が示すように、遮光板10を形成する際には、まず、遮光板10を形成するための金属箔10Mを準備する。金属箔10Mは、例えばステンレス鋼の箔であるが、上述したように、ステンレス鋼以外の金属によって形成された金属箔であってもよい。金属箔10Mの厚さは、10μm以上100μm以下である。金属箔10Mの厚さが10μm以上である場合には、金属箔10Mの反りが遮光板10の形状に対して影響を与えることが抑えられる。また、金属箔10Mの厚さが100μm以下である場合には、孔10Hを形成する際のエッチングの精度が低下することが抑えられる。金属箔10Mの厚さは、金属箔10Mから製造された遮光板10の厚さと略同一である。
【0050】
そして、金属箔10Mの表面10MFと裏面10MRとにレジスト層を配置する。金属箔10Mの表面10MFは、遮光板10の表面10Fに相当し、かつ、金属箔10Mの裏面10MRは、遮光板10の裏面10Rに相当する。金属箔10Mの表面10MFには、表面レジスト層RFが配置され、かつ、金属箔10Mの裏面10MRには、裏面レジスト層RRが配置される。なお、表面10MFおよび裏面10MRの両方には、ドライフィルムレジストがレジスト層RF,RRとして貼り付けられてもよい。あるいは、表面10MFおよび裏面10MRの両方には、レジスト層RF,RRを形成するための塗液を用いて、レジスト層RF,RRが形成されてもよい。レジスト層RF,RRは、ネガ型のレジストによって形成されてもよいし、ポジ型のレジストによって形成されてもよい。
【0051】
図7が示すように、レジスト層RF,RRの露光と現像とによって、レジスト層からレジストマスクが形成される。より詳しくは、表面レジスト層RFの露光および現像によって、表面レジスト層RFから表面マスクRMFが形成される。また、裏面レジスト層RRの露光および現像によって、裏面レジスト層RRから裏面マスクRMRが形成される。表面マスクRMFは、金属箔10Mに第2孔を形成するためのマスク孔RMFhを有している。裏面マスクRMRは、金属箔10Mに第1孔を形成するためのマスク孔RMRhを有している。
【0052】
図8が示すように、裏面10MRに形成された裏面マスクRMRを用いて、裏面10MRに裏面開口を有し、かつ、裏面10MRから表面10MFに向けて先細る形状を有した第1孔MH1を金属箔10Mに形成する。第1孔MH1は、遮光板10が有する第1孔10H1に相当する。この際に、金属箔10Mをエッチングすることが可能なエッチング液を用いて、金属箔10Mをエッチングする。なお、金属箔10Mをエッチングする前に、エッチング液に対する耐性を有した表面保護膜PMFによって、表面マスクRMFを覆う。表面保護膜PMFは、表面マスクRMFのマスク孔RMFhを埋めてもよいし、覆ってもよい。表面保護膜PMFによって表面マスクRMFを覆うことによって、金属箔10Mの表面10MFが、金属箔10Mの裏面10MRと同時にエッチングされることが抑えられる。
【0053】
なお、裏面10MRのエッチングによって第1孔MH1が形成される場合には、遮光板10における上述した裏面10Rと中央開口HCとの間の距離よりも大きい深さを有した第1孔MH1が形成される。
【0054】
図9が示すように、第1孔MH1を形成した後に、表面10MFに形成された表面マスクRMFを用いて、表面10MFに表面開口を有し、かつ、表面10MFから裏面10MRに向けて先細る形状を有した第2孔MH2を、第1孔MH1に繋がるように金属箔10Mに形成する。第2孔MH2は、遮光板10が有する第2孔10H2に相当する。この際に、第1孔MH1を形成するときと同様、金属箔10Mをエッチングすることが可能なエッチング液を用いて、金属箔10Mをエッチングする。なお、金属箔10Mをエッチングする前に、金属箔10Mの裏面10MRから裏面マスクRMRを取り除く。
【0055】
また、金属箔10Mをエッチングする前に、エッチング液に対する耐性を有した裏面保護膜PMRによって、金属箔10Mの裏面10MRを覆い、かつ、第1孔MH1内を埋める。裏面保護膜PMRによって金属箔10Mの裏面10MRを覆うことによって、金属箔10Mの裏面10MRが、金属箔10Mの表面10MFと同時にエッチングされることが抑えられる。
【0056】
第2孔MH2のエッチングでは、第1孔MH1を裏面保護膜PMRによって埋めた状態で、金属箔10Mの表面10MFをエッチングする。そのため、表面10MFのエッチングが裏面保護膜PMRに到達した後は、金属箔10Mに対するエッチング液の供給が、裏面保護膜PMRによって制御される。これにより、金属箔10Mの厚さが10μm以上100μm以下という広い範囲にわたる場合であっても、第2孔MH2の断面形状における断面形状の精度を高めることができる。これに対して、第1孔MH1内が裏面保護膜PMRによって埋められていない場合には、第1孔MH1と第2孔MH2とが繋がることによって金属箔10Mが貫通されると、第1孔MH1と第2孔MH2との接続部を通じて、エッチング液が、金属箔10Mの裏面10MRに向けて漏れてしまう。結果として、第1孔MH1の形状、および、第2孔MH2の形状における精度が低下してしまう。
【0057】
なお、第1孔MH1と第2孔MH2とを形成した後に、表面10MFから表面マスクRMFを取り除き、かつ、裏面10MRから裏面保護膜PMRを取り除く。また、表面マスクRMFおよび裏面保護膜PMRが金属箔10Mから取り除かれた後に、表面10MF、裏面10MR、および、第1孔MH1および第2孔MH2を区画する側面を覆う反射防止膜が形成される。上述したように、反射防止膜は、金属箔10Mよりも低い反射率を有し、かつ、反射防止膜に入射した光の一部を吸収する機能を有する。
【0058】
反射防止膜は、例えば黒色を有した被膜である。反射防止膜は、スパッタ法や蒸着法などの成膜方法を用いて金属箔10Mに形成されてもよい。あるいは、反射防止膜は反射防止膜を形成するための液体に、金属箔10Mを触れさせることによって、金属箔10Mに形成されてもよい。
【0059】
こうした遮光板10の製造方法によって、1つの孔10Hを有し、遮光板10の厚さ方向における、裏面10Rと中央開口HCの縁との間の距離に対する表面10Fと中央開口HCの縁との間の距離の比が2.5以上である遮光板10が製造される。
【0060】
上述した遮光板10の製造方法では、裏面保護膜PMRを形成する前に、裏面マスクRMRを取り除かなくてもよい。この場合には、裏面マスクRMRを覆い、かつ、第1孔MH1内に充填された裏面保護膜PMRを形成すればよい。また、裏面保護膜PMRは、表面10MFのエッチングによって第2孔MH2が形成された後に、裏面マスクRMRとともに裏面10MRから取り除かれればよい。
【0061】
[実施例]
実施例を説明する。
[実施例1]
30μmの厚さを有したステンレス鋼箔を準備した。そして、ステンレス鋼箔の裏面からステンレス鋼箔をエッチングすることによって第1孔を形成した後に、ステンレス鋼箔の表面からステンレス鋼箔をエッチングすることによって第2孔を形成した。これにより、第1孔と第2孔とを有し、かつ、楕円形状を有した中央開口を有した孔を有する遮光板を得た。
【0062】
[実施例2]
実施例1において、中央開口を850μmの直径を有した円状に変更した以外は、実施例1と同様の方法によって、実施例2の遮光板を得た。
【0063】
[実施例3]
実施例1において、中央開口を490μmの直径を有した円状に変更した以外は、実施例1と同様の方法によって、実施例3の遮光板を得た。
【0064】
[実施例4]
実施例1において、中央開口を6600μmの直径を有した円状に変更した以外は、実施例1と同様の方法によって、実施例4の遮光板を得た。
【0065】
[実施例5]
実施例1において、中央開口を2510μmの直径を有した円状に変更した以外は、実施例1と同様の方法によって、実施例4の遮光板を得た。
【0066】
[実施例6]
実施例3において、ステンレス鋼箔の厚さを25μmに変更した以外は、実施例3と同様の方法によって、実施例6の遮光板を得た。
【0067】
[比較例1]
実施例2において、ステンレス鋼箔を金型で打ち抜くことによって、ステンレス鋼箔を貫通する円形孔を形成した以外は、実施例1と同様の方法によって、比較例1の遮光板を得た。なお、比較例1の遮光板において、表面開口の直径と裏面開口の直径とは同一であり、かつ、実施例2の第2直径と同一であった。
【0068】
[評価結果]
実施例1から実施例6、および、比較例1の遮光板の各々について、表面と対向する方向から、共焦点レーザー顕微鏡(VK-X1000Series、(株)キーエンス製)を用いて、第2孔のプロファイルを測定した。また、裏面と対向する方向から、共焦点レーザー顕微鏡(同上)を用いて、第2孔のプロファイルを測定した。そして、第1孔のプロファイルおよび第2孔のプロファイルに基づき、第1距離D1に対する第2距離D2の比(D2/D1)を算出した。第1距離D1に対する第2距離D2の比は、以下の表1に示すとおりであった。なお、比較例1の遮光板は、上述したように、第1孔と第2孔とを有する孔を有しないため、表1には、比較例1における第1距離D1に対する第2距離D2の比を記載していない。
【0069】
【表1】
【0070】
表1が示すように、第1距離D1に対する第2距離D2の比は、実施例1において3.84であり、実施例2において3.35であり、実施例3において2.61であることが認められた。また、第1距離D1に対する第2距離D2の比は、実施例4において2.90であり、実施例5において2.57であり、実施例6において84.65であることが認められた。このように、いずれの実施例においても、第1距離D1に対する第2距離D2の比が、2.5以上であることが認められた。
【0071】
また、第2孔のプロファイルに基づき、各遮光板の撮像結果において、第2孔の側面を表面開口の径方向に沿って5等分し、各領域における傾斜角を算出した。算出結果は、以下の表2および表3に示すとおりであった。なお、表2および表3において、水平距離とは、表面と対向する方向における表面開口の径方向に沿う各領域の長さである。また、表2および表3において、高低差とは、遮光板の厚さ方向における各領域の一端の位置と他端の位置との差である。
【0072】
【表2】
【0073】
【表3】
【0074】
表2および表3が示すように、実施例1では、各領域における水平距離を6.5μmまたは6.7μmに設定することによって、第2孔を区画する側面を表面開口の径方向において5等分した。実施例2では、各領域における水平距離を9.5μmまたは9.6μmに設定することによって、第2孔を区画する側面を表面開口の径方向において5等分した。実施例3では、各領域における水平距離を8.1μmに設定し、また、実施例4では、各領域における水平距離を7.2μmに設定することによって、第2孔を区画する側面を表面開口の径方向において5等分した。実施例5において、各領域における水平距離を6.9μmまたは7.1μmに設定することによって、第2孔を区画する側面を表面開口の径方向において5等分した。実施例6において、各領域における水平距離を7.7μmまたは7.6μmに設定することによって、第2孔を区画する側面を表面開口の径方向において5等分した。
【0075】
また、表2および表3が示すように、実施例1から実施例6のいずれにおいても、第1領域から第5領域のうちで、第1領域での第1傾斜角θ1が最も大きく、かつ、第1傾斜角θ1が50°以上60°以下であることが認められた。さらに、実施例1から実施例6のいずれにおいても、第1傾斜角θ1から第4傾斜角θ4に向けて、傾斜角が順に小さくなること、および、第5傾斜角θ5が第4傾斜角θ4よりも大きいことが認められた。
【0076】
なお、各遮光板を搭載したカメラユニットによって、同一の環境下において同一の物体を撮影した。実施例1から実施例6の各々の遮光板を有したカメラユニットを用いて撮影した画像には、ゴーストやフレアがほぼ認められなかった。このように、第1距離D1に対する第2距離D2の比(D2/D1)が2.5以上であることにより、ゴーストおよびフレアが抑制されることが認められた。特に、実施例6では、実施例1から実施例5に比べて、よりゴーストおよびフレアが抑制されることが認められた。実施例6では、実施例1から実施例5に比べて、第1孔の側面における面積が非常に小さく、これによって、レンズに入射した光の一部が、レンズの表面から反射されて第1孔に入射し、さらに、第1孔からレンズに向けて反射されることを顕著に抑制できるため、ゴーストおよびフレアがさらに抑制されたと考えられる。これに対して、比較例1の遮光板を有したカメラユニットによって撮影した画像には、ゴーストおよびフレアが生じることが認められた。
【0077】
以上説明したように、遮光板の一実施形態によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)遮光板10において、第2孔10H2が表面10Fから裏面10Rに向けて先細る形状を有するため、表面10Fの斜め上方から孔10Hに入射した光は、第1孔10H1を区画する側面において遮光板10の表面10Fに向けて反射されやすい。
【0078】
(2)裏面10Rと中央開口HCとの間の第1距離D1に対する表面10Fと中央開口HCとの間の第2距離D2の比(D2/D1)が2.5以上であることから、第2孔10H2の大きさを、表面10Fから裏面10Rに向けて先細る形状とすることが可能な大きさに維持することが可能である。これにより、孔10Hを透過するように孔10Hを区画する側面で反射される光の光量を低下させることが可能である。
【0079】
(3)第1領域R1における第1傾斜角θ1が、第2領域R2から第5領域R5の各々における傾斜角よりも大きい場合には、第2孔10H2の直径が過剰に大きくなることを抑えつつ、第1領域R1以外の領域において、光を遮光板10の表面10Fに向けてより反射させやすくすることができる。
【0080】
(4)第1傾斜角θ1が50°以上60°以下である場合には、第2孔10H2を区画する側面のうち、表面開口H2Fを含む第1領域R1において、遮光板10の表面10Fに向けて光を反射させる確実性を高めることができる。
【0081】
(5)第5領域R5の第5傾斜角θ5が、第4領域R4の第4傾斜角θ4よりも大きい場合には、第5領域R5の第5傾斜角θ5が、第4領域R4の第4傾斜角θ4よりも小さい場合に比べて、第2孔10H2の直径が拡張されることが抑えられる。
【0082】
(6)第1領域R1から第4領域R4に向けて、各領域での傾斜角が小さくなる場合には、中央開口HCに近付くほど、第2孔10H2に入射した光を遮光板10の表面10Fに向けて反射させやすくなる。
【0083】
(7)第2孔10H2を区画する側面が、曲率中心が遮光板10の外側に位置するような弧状を有する場合には、反射光のなかで最も高い輝度を有した正反射光が、弧状を有した側面から遮光板10の表面10Fに向かう方向に沿って反射される。
【0084】
(8)第1孔10H1を区画する側面が、曲率中心が遮光板10の外側に位置するような弧状を有する場合には、表面10Fの斜め上方から孔に入射した光のなかで、裏面開口H1Rの近傍において孔10Hを区画する側面によって反射される光の光量を低下させることができる。
【0085】
なお、上述した実施形態を以下のように変更して実施することができる。
[第1孔]
・第1孔10H1を区画する側面は、表面10Fに直交する平面に沿う断面において、直線状を有してもよい。この場合であっても、第1孔10H1が裏面10Rから表面10Fに向けて先細りする形状を有し、第2孔10H2が表面10Fから裏面10Rに向けて先細りする形状を有し、第1距離D1に対する第2距離D2の比が2.5以上であれば、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
【0086】
[第2孔]
・第2孔10H2を区画する側面は、表面10Fに直交する平面に沿う断面において、直線状を有してもよい。この場合であっても、第1孔10H1が裏面10Rから表面10Fに向けて先細りする形状を有し、第2孔10H2が表面10Fから裏面10Rに向けて先細りする形状を有し、第1距離D1に対する第2距離D2の比が2.5以上であれば、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
【0087】
[第2孔を区画する側面]
・第1領域R1から第5領域R5に向けて、各領域での傾斜角が順に小さくなってもよい。この場合であっても、第1距離D1に対する第2距離D2の比が2.5以上であれば、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
【0088】
・第1領域R1から第4領域R4に向けて、各領域での傾斜角が順に小さくならなくてもよい。例えば、第1領域R1から第4領域R4において、各領域での傾斜角が他の領域での傾斜角と等しくてもよい。この場合であっても、第1距離D1に対する第2距離D2の比が2.5以上であれば、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
【0089】
・第5領域R5の第5傾斜角θ5は、第4領域R4の第4傾斜角θ4よりも小さくてもよい。この場合であっても、第1距離D1に対する第2距離D2の比が2.5以上であれば、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
【0090】
・第1領域R1の第1傾斜角θ1は、50°よりも小さくてもよいし、60°よりも大きくてもよい。この場合であっても、第1距離D1に対する第2距離D2の比が2.5以上であれば、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
【0091】
・第1領域R1の第1傾斜角θ1は、第2領域R2から第5領域R5の少なくとも1つの領域における傾斜角よりも小さくてもよい。この場合であっても、第1距離D1に対する第2距離D2の比が2.5以上であれば、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
【0092】
[遮光板]
・遮光板10は、上述したように、ステンレス鋼以外の金属から形成されてよい。遮光板10は、例えば、鉄‐ニッケル系合金製であってもよいし、鉄‐ニッケル‐コバルト系合金製であってもよい。
【0093】
鉄‐ニッケル系合金の熱膨張係数は、ステンレス鋼の熱膨張係数よりも小さい。そのため、鉄‐ニッケル系合金製の遮光板は、外気温の変化に伴う変形が小さく、これによって、遮光板自体の反りや熱膨張および熱収縮に伴う内径の変形といったことを要因とする外気温の変化に伴う外光の入射量における変化を抑えることができる。なお、外光の入射量とは、遮光板10を通じてレンズに入射する外光の入射量である。それゆえに、遮光板10が鉄‐ニッケル系合金によって形成されることは、外光の入射量における変化に伴い生じるゴーストやフレアの抑制に有効である。
【0094】
なお、鉄‐ニッケル系合金は、鉄とニッケルとを主成分とし、かつ、例えば、30質量%以上のニッケルと、残余分としての鉄を含む合金である。鉄‐ニッケル系合金のなかでも、36質量%のニッケルを含む合金、すなわちインバーが、遮光板10を形成するための材料として好ましい。インバーにおいて、36質量%のニッケルに対する残余分は、主成分である鉄以外の添加物を含む場合がある。添加物は、例えば、クロム、マンガン、炭素、および、コバルトなどである。鉄‐ニッケル系合金に含まれる添加物は、最大でも1質量%以下である。
【0095】
鉄‐ニッケル‐コバルト系合金の熱膨張係数は、鉄‐ニッケル系合金の熱膨張係数よりも小さい。そのため、鉄‐ニッケル‐コバルト系合金製の遮光板は、外気温の変化に伴う変形がより小さく、これによって、遮光板自体の反りや熱膨張および熱収縮に伴う内径の変形といったことを要因とする外気温の変化に伴う外光の入射量における変化をより抑えることができる。それゆえに、遮光板10が鉄‐ニッケル‐コバルト系合金によって形成されることは、外光の入射量における変化に伴い生じるゴーストやフレアの抑制にさらに有効である。
【0096】
なお、鉄‐ニッケル‐コバルト系合金は、鉄、ニッケル、および、コバルトを主成分とし、かつ、例えば、30質量%以上のニッケル、3質量%以上のコバルト、および、残余分としての鉄を含む合金である。鉄‐ニッケル‐コバルト系合金のなかでも、32質量%のニッケルと4質量%以上5質量%以下のコバルトを含む合金、すなわちスーパーインバーが、遮光板10を形成するための材料として好ましい。スーパーインバーにおいて、32質量%のニッケル、および、4質量%以上5質量%以下のコバルトに対する残余分は、主成分である鉄以外の添加物を含む場合がある。添加物は、例えば、クロム、マンガン、および、炭素などである。鉄‐ニッケル‐コバルト系合金に含まれる添加物は、最大でも0.5質量%以下である。
【0097】
このように、遮光板10が、鉄‐ニッケル系合金製、または、鉄‐ニッケル‐コバルト系合金製である場合には、以下の効果を得ることができる。
【0098】
(9)外気温の変化に伴う遮光板10の変形を抑えることができ、これによって、外気温の変化に伴う外光の入射量における変化を抑えることができる。それゆえに、外光の入射量における変化に伴うゴーストやフレアの発生を抑えることができる。
【符号の説明】
【0099】
10,100…遮光板、10F,10MF,100F…表面、10H,100H…孔、10H1…第1孔、10H2…第2孔、10M…金属箔、10MR,10R,100R…裏面、H1R…裏面開口、H2F…表面開口、HC…中央開口、LN…レンズ、MH1…第1孔、MH2…第2孔、PMF…表面保護膜、PMR…裏面保護膜、RF…表面レジスト層、RMF…表面マスク、RMFh,RMRh…マスク孔、RMR…裏面マスク、RR…裏面レジスト層。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9