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特開2022-190122発光素子、発光装置、表示装置、電子機器および照明装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190122
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】発光素子、発光装置、表示装置、電子機器および照明装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20221215BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20221215BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20221215BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
H05B33/14 B
H01L27/32
H05B33/02
H05B33/12 E
H05B33/12 B
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177111
(22)【出願日】2022-11-04
(62)【分割の表示】P 2021116250の分割
【原出願日】2016-03-07
(31)【優先権主張番号】P 2015046376
(32)【優先日】2015-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】石曽根 崇浩
(72)【発明者】
【氏名】細海 俊介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 辰義
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 哲史
(57)【要約】
【課題】蛍光発光材料を有する発光素子において、発光効率の高い発光素子を提供する。
【解決手段】蛍光発光材料と、ホスト材料と、を有し、ホスト材料は、第1の有機化合物
と、第2の有機化合物と、を有し、第1の有機化合物、及び第2の有機化合物は、第1の
有機化合物と、第2の有機化合物と、が励起錯体を形成する機能を有し、励起錯体が呈す
る発光は、遅延蛍光成分の占める割合が5%以上であり、遅延蛍光成分は、蛍光寿命が1
0ns以上50μs以下の遅延蛍光成分を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極間に発光層を有し、
前記発光層は、蛍光寿命が10ns以上50μs以下の遅延蛍光成分を有する遅延蛍光成分の占める割合が5%以上の発光を呈する熱活性化遅延蛍光材料と、蛍光発光材料と、を有し、
前記熱活性化遅延蛍光材料のS1準位は、前記蛍光発光材料のS1準位よりも高く、
前記熱活性化遅延蛍光材料の発光スペクトルは、前記蛍光発光材料の吸収スペクトルの最も低いエネルギー側の吸収帯と重なりを有し、
前記熱活性化遅延蛍光材料は、前記蛍光発光材料へ励起エネルギーを供与する機能を有し、
前記蛍光発光材料からの発光が得られる、発光素子。
(ただし、前記熱活性化遅延蛍光材料が、下記4,6mCzP2Pmと下記PCBBiFの混合物である場合を除く。)
【化1】
【請求項2】
請求項1において、
前記熱活性化遅延蛍光材料は、π電子過剰型複素芳香環骨格及びπ電子不足型複素芳香環骨格を有する複素環化合物である、発光素子。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の発光素子と、基板と、を有する発光装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の発光素子と、カラーフィルタまたはトランジスタの少なくとも一方と、を有する表示装置。
【請求項5】
請求項4に記載の表示装置と、筐体またはタッチセンサの少なくとも一方と、を有する電子機器。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の発光素子と、筐体またはタッチセンサの少なくとも一方と、を有する照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、発光素子、または該発光素子を有する表示装置、電子機器、及び照
明装置に関する。
【0002】
なお、本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本明細書等で開示する発明
の一態様の技術分野は、物、方法、または、製造方法に関する。または、本発明の一態様
は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、または、組成物(コンポジション・オブ・マ
ター)に関する。そのため、より具体的に本明細書で開示する本発明の一態様の技術分野
としては、半導体装置、表示装置、液晶表示装置、発光装置、照明装置、蓄電装置、記憶
装置、それらの駆動方法、または、それらの製造方法、を一例として挙げることができる
【背景技術】
【0003】
近年、エレクトロルミネッセンス(Electroluminescence:EL)
を利用した発光素子の研究開発が盛んに行われている。これら発光素子の基本的な構成は
、一対の電極間に発光性の物質を含む層(EL層)を挟んだ構成である。この素子の電極
間に電圧を印加することにより、発光性の物質からの発光が得られる。
【0004】
上述の発光素子は自発光型であるため、これを用いた表示装置は、視認性に優れ、バッ
クライトが不要であり、消費電力が少ない等の利点を有する。さらに、薄型軽量に作製で
き、応答速度が高いなどの利点も有する。
【0005】
発光性の物質に有機化合物を用い、一対の電極間に当該発光性の物質を含むEL層を設
けた発光素子(例えば、有機EL素子)の場合、一対の電極間に電圧を印加することによ
り、陰極から電子が、陽極から正孔(ホール)がそれぞれ発光性のEL層に注入され、電
流が流れる。そして、注入された電子及び正孔が再結合することによって発光性の有機化
合物が励起状態となり、励起された発光性の有機化合物から発光を得ることができる。
【0006】
有機化合物が形成する励起状態の種類としては、一重項励起状態(S)と三重項励起
状態(T)があり、一重項励起状態からの発光が蛍光、三重項励起状態からの発光が燐
光と呼ばれている。また、発光素子におけるそれらの統計的な生成比率は、S:T
1:3である。そのため、蛍光を発する化合物(蛍光性化合物)を用いた発光素子より、
燐光を発する化合物(燐光性化合物)を用いた発光素子の方が、高い発光効率を得ること
が可能となる。したがって、三重項励起状態を発光に変換することが可能な燐光性化合物
を用いた発光素子の開発が近年盛んに行われている。
【0007】
燐光性化合物を用いた発光素子のうち、特に青色の発光を呈する発光素子においては、
高い三重項励起エネルギー準位を有する安定な化合物の開発が困難であるため、未だ実用
化に至っていない。そのため、より安定な蛍光性化合物を用いた発光素子の開発が行われ
ており、蛍光性化合物を用いた発光素子(蛍光発光素子)の発光効率を高める手法が探索
されている。
【0008】
三重項励起状態の一部を発光に変換することが可能な材料として、熱活性化遅延蛍光(
Thermally Activated Delayed Fluorescence
:TADF)体が知られている。熱活性化遅延蛍光体では、三重項励起状態から逆項間交
差により一重項励起状態が生成され、一重項励起状態から発光に変換される。
【0009】
熱活性化遅延蛍光体を用いた発光素子において、発光効率を高めるためには、熱活性化
遅延蛍光体において、三重項励起状態から一重項励起状態が効率よく生成するだけでなく
、一重項励起状態から効率よく発光が得られること、すなわち蛍光量子収率が高いことが
重要となる。しかしながら、この2つを同時に満たす発光材料を設計することは困難であ
る。
【0010】
そこで、熱活性化遅延蛍光体と、蛍光性化合物と、を有する発光素子において、熱活性
化遅延蛍光体の一重項励起エネルギーを、蛍光性化合物へと移動させ、蛍光性化合物から
発光を得る方法が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2014-45179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
熱活性化遅延蛍光体と、蛍光性化合物と、を有する発光素子において、発光効率を高め
るためには、三重項励起状態から一重項励起状態が効率よく生成することが好ましい。ま
た、熱活性化遅延蛍光体の一重項励起状態から蛍光性化合物の一重項励起状態へ、効率よ
くエネルギーが移動することが好ましい。また、熱活性化遅延蛍光体の三重項励起状態か
ら蛍光性化合物の三重項励起状態へのエネルギー移動を抑制することが好ましい。
【0013】
したがって、本発明の一態様では、蛍光性化合物を有し、発光効率が高い発光素子を提
供することを課題の一とする。または、本発明の一態様では、消費電力が低減された発光
素子を提供することを課題の一とする。または、本発明の一態様では、新規な発光素子を
提供することを課題の一とする。または、本発明の一態様では、新規な発光装置を提供す
ることを課題の一とする。または、本発明の一態様では、新規な表示装置を提供すること
を課題の一とする。
【0014】
なお、上記の課題の記載は、他の課題の存在を妨げない。なお、本発明の一態様は、必
ずしも、これらの課題の全てを解決する必要はない。上記以外の課題は、明細書等の記載
から自ずと明らかであり、明細書等の記載から上記以外の課題を抽出することが可能であ
る。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様は、発光素子が励起錯体を形成する発光層を有することにより、三重項
励起子を一重項励起子に変換し、一重項励起子から発光させることができる発光素子であ
り、該一重項励起子のエネルギー移動によって蛍光性化合物から発光させることができる
発光素子である。
【0016】
したがって、本発明の一態様は、蛍光発光材料と、ホスト材料と、を有し、ホスト材料
は、第1の有機化合物と、第2の有機化合物と、を有し、第1の有機化合物、及び第2の
有機化合物は、第1の有機化合物と、第2の有機化合物と、が励起錯体を形成する機能を
有し、励起錯体が呈する発光は、遅延蛍光成分の占める割合が5%以上であり、遅延蛍光
成分は、蛍光寿命が10ns以上50μs以下の遅延蛍光成分を有する発光素子である。
【0017】
また、上記構成において、励起錯体は、蛍光発光材料へ励起エネルギーを供与する機能
を有すると好ましい。
【0018】
また、上記各構成において、励起錯体が呈する発光は、蛍光発光材料の最も低いエネル
ギー側の吸収帯と重なる領域を有すると好ましい。
【0019】
また、上記各構成において、第1の有機化合物または第2の有機化合物の一方は、電子
を輸送する機能を有し、第1の有機化合物または第2の有機化合物の他方は、正孔を輸送
する機能を有すると好ましい。あるいは、第1の有機化合物または第2の有機化合物の一
方は、π電子不足型複素芳香環骨格を有し、第1の有機化合物または第2の有機化合物の
他方は、π電子過剰型複素芳香環骨格または芳香族アミン骨格を有すると好ましい。
【0020】
また、本発明の他の一態様は、上記各構成の発光素子と、カラーフィルタまたはトラン
ジスタの少なくとも一方と、を有する表示装置である。また、本発明の他の一態様は、当
該表示装置と、筐体またはタッチセンサの少なくとも一方と、を有する電子機器である。
また、本発明の他の一態様は、上記各構成の発光素子と、筐体またはタッチセンサの少な
くとも一方と、を有する照明装置である。また、本発明の一態様は、発光素子を有する発
光装置だけでなく、発光装置を有する電子機器も範疇に含める。従って、本明細書中にお
ける発光装置とは、画像表示デバイス、もしくは光源(照明装置含む)を指す。また、発
光装置にコネクター、例えばFPC(Flexible Printed Circui
t)、TCP(Tape Carrier Package)が取り付けられた表示モジ
ュール、TCPの先にプリント配線板が設けられた表示モジュール、または発光素子にC
OG(Chip On Glass)方式によりIC(集積回路)が直接実装された表示
モジュールも発光装置を含む場合がある。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一態様により、蛍光性化合物を有し、発光効率が高い発光素子を提供すること
ができる。または、本発明の一態様により、消費電力が低減された発光素子を提供するこ
とができる。または、本発明の一態様により、新規な発光素子を提供することができる。
または、本発明の一態様により、新規な発光装置を提供することができる。または、本発
明の一態様により、新規な表示装置を提供することができる。
【0022】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げない。なお、本発明の一態様は、
必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。なお、これら以外の効果は、明細書
、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかであり、明細書、図面、請求項などの記載
から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一態様の発光素子の断面模式図、及び発光層におけるエネルギー準位の相関を説明する図。
図2】本発明の一態様の発光素子の断面模式図、及び発光層におけるエネルギー準位の相関を説明する図。
図3】本発明の一態様の発光素子の断面模式図、及び発光層におけるエネルギー準位の相関を説明する図。
図4】本発明の一態様の発光素子の断面模式図。
図5】本発明の一態様の発光素子の断面模式図。
図6】本発明の一態様の発光素子の作製方法を説明する断面模式図。
図7】本発明の一態様の発光素子の作製方法を説明する断面模式図。
図8】本発明の一態様の表示装置を説明する上面図及び断面模式図。
図9】本発明の一態様の表示装置を説明する断面模式図。
図10】本発明の一態様の表示装置を説明する断面模式図。
図11】本発明の一態様の表示装置を説明する断面模式図。
図12】本発明の一態様の表示装置を説明する断面模式図。
図13】本発明の一態様の表示装置を説明する断面模式図。
図14】本発明の一態様の表示装置を説明する断面模式図。
図15】本発明の一態様の表示装置を説明するブロック図及び回路図。
図16】本発明の一態様の表示装置の画素回路を説明する回路図。
図17】本発明の一態様の表示装置の画素回路を説明する回路図。
図18】本発明の一態様のタッチパネルの一例を示す斜視図。
図19】本発明の一態様の表示装置、及びタッチセンサの一例を示す断面図。
図20】本発明の一態様のタッチパネルの一例を示す断面図。
図21】本発明の一態様に係るタッチセンサのブロック図及びタイミングチャート図。
図22】本発明の一態様に係るタッチセンサの回路図。
図23】本発明の一態様の表示モジュールを説明する斜視図。
図24】本発明の一態様の電子機器について説明する図。
図25】本発明の一態様の発光装置を説明する斜視図及び断面図。
図26】本発明の一態様の発光装置を説明する断面図。
図27】本発明の一態様の照明装置及び電子機器を説明する図。
図28】本発明の一態様の照明装置について説明する図。
図29】実施例に係る、発光素子の電流効率-輝度特性を説明する図。
図30】実施例に係る、発光素子の外部量子効率-輝度特性を説明する図。
図31】実施例に係る、発光素子の輝度-電圧特性を説明する図。
図32】実施例に係る、発光素子の電界発光スペクトルを説明する図。
図33】実施例に係る、発光素子の電流効率-輝度特性を説明する図。
図34】実施例に係る、発光素子の外部量子効率-輝度特性を説明する図。
図35】実施例に係る、発光素子の輝度-電圧特性を説明する図。
図36】実施例に係る、発光素子の電界発光スペクトルを説明する図。
図37】実施例に係る、薄膜の発光スペクトルを説明する図。
図38】実施例に係る、溶液の吸収スペクトルを説明する図。
図39】実施例に係る、薄膜の時間分解蛍光測定の結果を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の態様について図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下
の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細
を様々に変更し得ることが可能である。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内
容に限定して解釈されない。
【0025】
なお、図面等において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、理解の簡単のため、
実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、
必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
【0026】
また、本明細書等において、第1、第2等として付される序数詞は便宜上用いており、
工程順又は積層順を示さない場合がある。そのため、例えば、「第1の」を「第2の」又
は「第3の」などと適宜置き換えて説明することができる。また、本明細書等に記載され
ている序数詞と、本発明の一態様を特定するために用いられる序数詞は一致しない場合が
ある。
【0027】
また、本明細書等において、図面を用いて発明の構成を説明するにあたり、同じものを
指す符号は異なる図面間でも共通して用いる場合がある。
【0028】
また、本明細書等において、「膜」という用語と、「層」という用語とは、互いに入れ
替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜」という用語に変
更することが可能な場合がある。または、例えば、「絶縁膜」という用語を、「絶縁層」
という用語に変更することが可能な場合がある。
【0029】
また、本明細書等において、一重項励起状態(S)は、励起エネルギーを有する一重
項状態のことである。また、一重項励起エネルギー準位の最も低い準位(S1準位)は、
最も低い一重項励起状態の励起エネルギー準位のことである。また、三重項励起状態(T
)は、励起エネルギーを有する三重項状態のことである。また、三重項励起エネルギー
準位の最も低い準位(T1準位)は、最も低い三重項励起状態の励起エネルギー準位のこ
とである。
【0030】
また、本明細書等において蛍光材料または蛍光性化合物とは、一重項励起状態から基底
状態へ緩和する際に可視光領域に発光を与える材料または化合物である。燐光材料または
燐光性化合物とは、三重項励起状態から基底状態へ緩和する際に、室温において可視光領
域に発光を与える材料または化合物である。換言すると燐光材料または燐光性化合物とは
、三重項励起エネルギーを可視光へ変換可能な材料または化合物の一つである。
【0031】
なお、本明細書等において、室温とは、0℃以上40℃以下のいずれかの温度をいう。
【0032】
また、本明細書等において、青色の波長領域とは、400nm以上490nm未満の波
長領域であり、青色の発光は該波長領域に少なくとも一つの発光スペクトルピークを有す
る。また、緑色の波長領域とは、490nm以上580nm未満の波長領域であり、緑色
の発光は該波長領域に少なくとも一つの発光スペクトルピークを有する。また、赤色の波
長領域とは、580nm以上680nm以下の波長領域であり、赤色の発光は該波長領域
に少なくとも一つの発光スペクトルピークを有する。
【0033】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光素子について、図1を用いて以下説明する。
【0034】
<発光素子の構成例>
まず、本発明の一態様の発光素子の構成について、図1(A)(B)及び(C)を用い
て、以下説明する。
【0035】
図1(A)は、本発明の一態様の発光素子250の断面模式図である。
【0036】
発光素子250は、一対の電極(電極101及び電極102)を有し、該一対の電極間
に設けられたEL層100を有する。EL層100は、少なくとも発光層130を有する
【0037】
また、図1(A)に示すEL層100は、発光層130の他に、正孔注入層111、正
孔輸送層112、電子輸送層118、及び電子注入層119等の機能層を有する。
【0038】
なお、本実施の形態においては、一対の電極のうち、電極101を陽極として、電極1
02を陰極として説明するが、発光素子250の構成としては、その限りではない。つま
り、電極101を陰極とし、電極102を陽極とし、当該電極間の各層の積層を、逆の順
番にしてもよい。すなわち、陽極側から、正孔注入層111と、正孔輸送層112と、発
光層130と、電子輸送層118と、電子注入層119と、が積層する順番とすればよい
【0039】
なお、EL層100の構成は、図1(A)に示す構成に限定されず、正孔注入層111
、正孔輸送層112、電子輸送層118、及び電子注入層119の中から選ばれた少なく
とも一つを有する構成とすればよい。あるいは、EL層100は、正孔または電子の注入
障壁を低減する、正孔または電子の輸送性を向上する、正孔または電子の輸送性を阻害す
る、または電極による消光現象を抑制する、ことができる等の機能を有する機能層を有す
る構成としてもよい。なお、機能層はそれぞれ単層であっても、複数の層が積層された構
成であってもよい。
【0040】
図1(B)は、図1(A)に示す発光層130の一例を示す断面模式図である。図1
B)に示す発光層130は、ホスト材料131と、ゲスト材料132と、を有する。また
、ホスト材料131は、有機化合物131_1と、有機化合物131_2と、を有する。
【0041】
なお、ゲスト材料132としては、発光性の有機化合物を用いればよく、該発光性の有
機化合物としては、蛍光を発することができる物質(以下、蛍光性化合物ともいう)であ
ると好適である。以下の説明においては、ゲスト材料132として、蛍光性化合物を用い
る構成について説明する。なお、ゲスト材料132を蛍光材料または蛍光性化合物として
読み替えてもよい。
【0042】
本発明の一態様の発光素子250においては、一対の電極(電極101及び電極102
)間に電圧を印加することにより、陰極から電子が、陽極から正孔(ホール)が、それぞ
れEL層100に注入され、電流が流れる。そして、注入された電子及び正孔が再結合す
ることによって、励起子が形成される。キャリア(電子および正孔)の再結合によって生
じる励起子のうち、一重項励起子と三重項励起子の比(以下、励起子生成確率)は、統計
的確率により、1:3となる。そのため、蛍光発光材料を用いた発光素子において、発光
に寄与する一重項励起子が生成する割合は25%であり、発光に寄与しない三重項励起子
が生成する割合は75%となる。したがって、発光に寄与しない三重項励起子を、発光に
寄与する一重項励起子へ変換することが、発光素子の発光効率を向上させるためには重要
である。
【0043】
<発光素子の発光機構>
次に、発光層130の発光機構について、以下説明を行う。
【0044】
発光層130におけるホスト材料131が有する有機化合物131_1および有機化合
物131_2は、励起錯体(エキサイプレックス、エキシプレックスまたはExcipl
exともいう)を形成する。
【0045】
有機化合物131_1と有機化合物131_2との組み合わせは、励起錯体を形成する
ことが可能な組み合わせであればよいが、一方が正孔を輸送する機能(正孔輸送性)を有
する化合物であり、他方が電子を輸送する機能(電子輸送性)を有する化合物であること
が、より好ましい。この場合、ドナー-アクセプター型の励起錯体を形成しやすくなり、
効率よく励起錯体を形成することができる。また、有機化合物131_1と有機化合物1
31_2との組み合わせが、正孔輸送性を有する化合物と電子輸送性を有する化合物との
組み合わせである場合、その混合比によってキャリアバランスを容易に制御することが可
能となる。具体的には、正孔輸送性を有する化合物:電子輸送性を有する化合物=1:9
から9:1(重量比)の範囲が好ましい。また、該構成を有することで、容易にキャリア
バランスを制御することができることから、キャリア再結合領域の制御も簡便に行うこと
ができる。
【0046】
また、効率よく励起錯体を形成するホスト材料の組み合わせとしては、有機化合物13
1_1及び有機化合物131_2のうち一方の最高被占軌道(Highest Occu
pied Molecular Orbital、HOMOともいう)準位が他方のHO
MO準位より高く、一方の最低空軌道(Lowest Unoccupied Mole
cular Orbital、LUMOともいう)準位が他方のLUMO準位より高いこ
とが好ましい。例えば、一方の有機化合物が正孔輸送性を有し、他方の有機化合物が電子
輸送性を有する場合、一方の有機化合物のHOMO準位が他方の有機化合物のHOMO準
位より高いことが好ましく、一方の有機化合物のLUMO準位が他方の有機化合物のLU
MO準位より高いことが好ましい。具体的には、一方の有機化合物のHOMO準位と他方
の有機化合物のHOMO準位とのエネルギー差は、好ましくは0.05eV以上であり、
より好ましくは0.1eV以上であり、さらに好ましくは0.2eV以上である。また、
一方の有機化合物のLUMO準位と他方の有機化合物のLUMO準位とのエネルギー差は
、好ましくは0.05eV以上であり、より好ましくは0.1eV以上であり、さらに好
ましくは0.2eV以上である。
【0047】
発光層130における有機化合物131_1と、有機化合物131_2と、ゲスト材料
132とのエネルギー準位の相関を図1(C)に示す。なお、図1(C)における表記及
び符号は、以下の通りである。
・Host(131_1):有機化合物131_1
・Host(131_2):有機化合物131_2
・Guest(132):ゲスト材料132(蛍光性化合物)
・S:有機化合物131_1(ホスト材料)のS1準位
・T:有機化合物131_1(ホスト材料)のT1準位
・S:ゲスト材料132(蛍光性化合物)のS1準位
・T:ゲスト材料132(蛍光性化合物)のT1準位
・S:励起錯体のS1準位
・T:励起錯体のT1準位
【0048】
本発明の一態様の発光素子においては、発光層130が有する有機化合物131_1と
有機化合物131_2とが励起錯体を形成する。励起錯体の最も低い一重項励起エネルギ
ー準位(S)と励起錯体の最も低い三重項励起エネルギー準位(T)とは、互いに隣
接したエネルギー準位となる(図1(C) ルートE参照)。
【0049】
励起錯体は、2種類の物質からなる励起状態であり、光励起の場合、励起状態となった
一方の物質が基底状態である他方の物質と相互作用することによって形成される。そして
、光を発することによって基底状態になると、励起錯体を形成していた2種類の物質は、
また元の別々の物質として振る舞う。電気励起の場合は、一方が励起状態になると、速や
かに他方と相互作用することで励起錯体を形成する。あるいは、一方が正孔を、他方が電
子を受け取ることで速やかに励起錯体を形成することができる。この場合、いずれの物質
においても励起状態を形成することなく励起錯体を形成することができるため、発光層1
30における励起子のほとんどが励起錯体として存在することが可能となる。励起錯体の
励起エネルギー準位(SまたはT)は、励起錯体を形成するホスト材料(有機化合物
131_1および有機化合物131_2)の一重項励起エネルギー準位(S)より低く
なるため、より低い励起エネルギーでホスト材料131の励起状態を形成することが可能
となる。これによって、発光素子250の駆動電圧を低減することができる。
【0050】
励起錯体の一重項励起エネルギー準位(S)と三重項励起エネルギー準位(T)は
、互いに隣接したエネルギー準位であるため、熱活性化遅延蛍光を呈する機能を有する。
すなわち、励起錯体は三重項励起エネルギーを逆項間交差(アップコンバージョン)によ
って一重項励起エネルギーに変換する機能を有する(図1(C) ルートE参照)。し
たがって、発光層130で生成した三重項励起エネルギーの一部は励起錯体により一重項
励起エネルギーに変換される。そのためには、励起錯体の一重項励起エネルギー準位(S
)と三重項励起エネルギー準位(T)とのエネルギー差は0eVより大きく0.2e
V以下であると好ましい。なお、逆項間交差を効率よく生じさせるためには、励起錯体の
三重項励起エネルギー準位(T)が、励起錯体を形成するホスト材料を構成している各
有機化合物(有機化合物131_1および有機化合物131_2)の三重項励起エネルギ
ー準位よりも低いことが好ましい。これにより、各有機化合物による励起錯体の三重項励
起エネルギーのクエンチが生じにくくなり、効率よく逆項間交差が発生する。
【0051】
また、励起錯体の一重項励起エネルギー準位(S)は、ゲスト材料132の一重項励
起エネルギー準位(S)より高いことが好ましい。そうすることで、生成した励起錯体
の一重項励起エネルギーは、励起錯体の一重項励起エネルギー準位(S)からゲスト材
料132の一重項励起エネルギー準位(S)へエネルギー移動することができ、ゲスト
材料132が一重項励起状態となり、発光する(図1(C) ルートE参照)。
【0052】
なお、ゲスト材料132の一重項励起状態から効率よく発光を得るためには、ゲスト材
料132の蛍光量子収率は高いことが好ましく、具体的には、好ましくは50%以上、よ
り好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上である。
【0053】
なお、励起錯体の一重項励起エネルギー準位(S)から、ゲスト材料132の三重項
励起エネルギー準位(T)へのエネルギー移動は、ゲスト材料132における一重項基
底状態から三重項励起状態への直接遷移が禁制であることから、主たるエネルギー移動過
程になりにくい。
【0054】
また、励起錯体の三重項励起エネルギー準位(T)からゲスト材料132の三重項励
起エネルギー準位(T)へ三重項励起エネルギー移動が生じると、三重項励起エネルギ
ーは失活してしまう(図1(C) ルートE参照)。そのため、ルートEのエネルギ
ー移動が少ない方が、ゲスト材料132の三重項励起状態の生成効率を低減することがで
き、熱失活を減少することができるため好ましい。そのためには、ホスト材料131とゲ
スト材料132との重量比は、ゲスト材料132の重量比が低いことが好ましく、具体的
にはホスト材料131に対するゲスト材料132の重量比が、好ましくは0.001以上
0.05以下であり、より好ましくは0.001以上0.01以下である。
【0055】
なお、ゲスト材料132においてキャリアの直接再結合過程が支配的になると、発光層
130において三重項励起子が多数生成することになり、熱失活によって発光効率を損ね
てしまう。そのため、ゲスト材料132においてキャリアが直接再結合する過程よりも、
励起錯体の生成過程を経たエネルギー移動過程(図1(C) ルートE及びE)の割
合が多い方が、ゲスト材料132の三重項励起状態の生成効率を低減することができ、熱
失活を抑制することができるため好ましい。そのためには、やはりホスト材料131とゲ
スト材料132との重量比は、ゲスト材料132の重量比が低いことが好ましく、具体的
にはホスト材料131に対するゲスト材料132の重量比が、好ましくは0.001以上
0.05以下であり、より好ましくは0.001以上0.01以下である。
【0056】
以上のように、上述のルートE及びEのエネルギー移動過程が全て効率よく生じれ
ば、ホスト材料131の一重項励起エネルギー及び三重項励起エネルギーの双方が効率よ
くゲスト材料132の一重項励起状態のエネルギーに変換されるため、発光素子250は
高い発光効率で発光することが可能となる。
【0057】
上記に示すルートE、E、及びEの過程を、本明細書等において、ExSET(
Exciplex-Singlet Energy Transfer)またはExEF
(Exciplex-Enhanced Fluorescence)と呼称する場合が
ある。別言すると、発光層130は、励起錯体からゲスト材料132への励起エネルギー
の供与がある。
【0058】
発光層130を上述の構成とすることで、発光層130のゲスト材料132からの発光
を効率よく得ることができる。
【0059】
<エネルギー移動機構>
次に、ホスト材料131と、ゲスト材料132との分子間のエネルギー移動過程の支配
因子について説明する。分子間のエネルギー移動の機構としては、フェルスター機構(双
極子-双極子相互作用)と、デクスター機構(電子交換相互作用)の2つの機構が提唱さ
れている。ここでは、ホスト材料131とゲスト材料132との分子間のエネルギー移動
過程について説明するが、ホスト材料131が励起錯体の場合も同様である。
【0060】
≪フェルスター機構≫
フェルスター機構では、エネルギー移動に、分子間の直接的接触を必要とせず、ホスト
材料131及びゲスト材料132間の双極子振動の共鳴現象を通じてエネルギー移動が起
こる。双極子振動の共鳴現象によってホスト材料131がゲスト材料132にエネルギー
を受け渡し、励起状態のホスト材料131が基底状態になり、基底状態のゲスト材料13
2が励起状態になる。なお、フェルスター機構の速度定数kh*→gを数式(1)に示す
【0061】
【数1】
【0062】
数式(1)において、νは、振動数を表し、f’(ν)は、ホスト材料131の規格
化された発光スペクトル(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は蛍光スペ
クトル、三重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は燐光スペクトル)を表し、
ε(ν)は、ゲスト材料132のモル吸光係数を表し、Nは、アボガドロ数を表し、n
は、媒体の屈折率を表し、Rは、ホスト材料131とゲスト材料132の分子間距離を表
し、τは、実測される励起状態の寿命(蛍光寿命や燐光寿命)を表し、cは、光速を表し
、φは、発光量子収率(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は蛍光量子収
率、三重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は燐光量子収率)を表し、K
、ホスト材料131とゲスト材料132の遷移双極子モーメントの配向を表す係数(0か
ら4)である。なお、ランダム配向の場合はK=2/3である。
【0063】
≪デクスター機構≫
デクスター機構では、ホスト材料131とゲスト材料132が軌道の重なりを生じる接
触有効距離に近づき、励起状態のホスト材料131の電子と、基底状態のゲスト材料13
2との電子の交換を通じてエネルギー移動が起こる。なお、デクスター機構の速度定数k
h*→gを数式(2)に示す。
【0064】
【数2】
【0065】
数式(2)において、hは、プランク定数であり、Kは、エネルギーの次元を持つ定数
であり、νは、振動数を表し、f’(ν)は、ホスト材料131の規格化された発光ス
ペクトル(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は蛍光スペクトル、三重項
励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は燐光スペクトル)を表し、ε’(ν)は
、ゲスト材料132の規格化された吸収スペクトルを表し、Lは、実効分子半径を表し、
Rは、ホスト材料131とゲスト材料132の分子間距離を表す。
【0066】
ここで、ホスト材料131からゲスト材料132へのエネルギー移動効率φETは、数
式(3)で表される。kは、ホスト材料131の発光過程(一重項励起状態からのエネ
ルギー移動を論じる場合は蛍光、三重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は燐
光)の速度定数を表し、kは、ホスト材料131の非発光過程(熱失活や項間交差)の
速度定数を表し、τは、実測されるホスト材料131の励起状態の寿命を表す。
【0067】
【数3】
【0068】
数式(3)より、エネルギー移動効率φETを高くするためには、エネルギー移動の速
度定数kh*→gを大きくし、他の競合する速度定数k+k(=1/τ)が相対的に
小さくなれば良いことがわかる。
【0069】
≪エネルギー移動を高めるための概念≫
まず、フェルスター機構によるエネルギー移動を考える。数式(3)に数式(1)を代
入することでτを消去することができる。したがって、フェルスター機構の場合、エネル
ギー移動効率φETは、ホスト材料131の励起状態の寿命τに依存しない。また、エネ
ルギー移動効率φETは、発光量子収率φ(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じ
ているので、蛍光量子収率)が高い方が良いと言える。一般的に、有機化合物の三重項励
起状態からの発光量子収率は室温において非常に低い。そのため、ホスト材料131が三
重項励起状態である場合、フェルスター機構によるエネルギー移動過程は無視でき、ホス
ト材料131が一重項励起状態である場合のみ考慮すればよい。
【0070】
また、ホスト材料131の発光スペクトル(一重項励起状態からのエネルギー移動を論
じる場合は蛍光スペクトル)とゲスト材料132の吸収スペクトル(一重項基底状態から
一重項励起状態への遷移に相当する吸収)との重なりが大きいことが好ましい。さらに、
ゲスト材料132のモル吸光係数も高い方が好ましい。このことは、ホスト材料131の
発光スペクトルと、ゲスト材料132の最も長波長側に現れる吸収帯とが重なることを意
味する。なお、ゲスト材料132における一重項基底状態から三重項励起状態への直接遷
移が禁制であることから、ゲスト材料132において三重項励起状態が係わるモル吸光係
数は無視できる量である。このことから、フェルスター機構によるゲスト材料132の三
重項励起状態へのエネルギー移動過程は無視でき、ゲスト材料132の一重項励起状態へ
のエネルギー移動過程のみ考慮すればよい。すなわち、フェルスター機構においては、ホ
スト材料131の一重項励起状態からゲスト材料132の一重項励起状態へのエネルギー
移動過程を考えればよい。
【0071】
次に、デクスター機構によるエネルギー移動を考える。数式(2)によれば、速度定数
h*→gを大きくするにはホスト材料131の発光スペクトル(一重項励起状態からの
エネルギー移動を論じる場合は蛍光スペクトル)とゲスト材料132の吸収スペクトル(
一重項基底状態から一重項励起状態への遷移に相当する吸収)との重なりが大きい方が良
いことがわかる。したがって、エネルギー移動効率の最適化は、ホスト材料131の発光
スペクトルと、ゲスト材料132の最も長波長側に現れる吸収帯とが重なることによって
実現される。
【0072】
また、数式(3)に数式(2)を代入すると、デクスター機構におけるエネルギー移動
効率φETは、τに依存することが分かる。デクスター機構は、電子交換に基づくエネル
ギー移動過程であるため、ホスト材料131の一重項励起状態からゲスト材料132の一
重項励起状態へのエネルギー移動と同様に、ホスト材料131の三重項励起状態からゲス
ト材料132の三重項励起状態へのエネルギー移動も生じる。
【0073】
本発明の一態様の発光素子においては、ゲスト材料132は蛍光材料であるため、ゲス
ト材料132の三重項励起状態へのエネルギー移動効率は低いことが好ましい。すなわち
、ホスト材料131からゲスト材料132へのデクスター機構に基づくエネルギー移動効
率は低いことが好ましく、ホスト材料131からゲスト材料132へのフェルスター機構
に基づくエネルギー移動効率は高いことが好ましい。
【0074】
既に述べたように、フェルスター機構におけるエネルギー移動効率は、ホスト材料13
1の励起状態の寿命τに依存しない。一方、デクスター機構におけるエネルギー移動効率
は、ホスト材料131の励起寿命τに依存し、デクスター機構におけるエネルギー移動効
率を低下させるためには、ホスト材料131の励起寿命τは短いことが好ましい。
【0075】
なお、ホスト材料131からゲスト材料132へのエネルギー移動と同様に、励起錯体
からゲスト材料132へのエネルギー移動過程についても、フェルスター機構、及びデク
スター機構の双方の機構によるエネルギー移動が生じる。
【0076】
そこで、本発明の一態様は、ゲスト材料132に効率的にエネルギー移動が可能なエネ
ルギードナーとしての機能を有する励起錯体、を形成する組み合わせの有機化合物131
_1および有機化合物131_2をホスト材料131として有する発光素子を提供する。
有機化合物131_1および有機化合物131_2が形成する励起錯体は、一重項励起エ
ネルギー準位と、三重項励起エネルギー準位とが近接しているという特徴を有する。その
ため、発光層130において生成する三重項励起子から一重項励起子への遷移(逆項間交
差)が起こりやすい。したがって、発光層130において一重項励起子の生成効率を高め
ることができる。さらに、励起錯体の一重項励起状態からエネルギーアクセプターとなる
ゲスト材料132の一重項励起状態へのエネルギー移動を生じやすくするためには、励起
錯体の発光スペクトルと、ゲスト材料132の最も長波長側(低エネルギー側)に現れる
吸収帯と、が重なると好ましい。そうすることで、ゲスト材料132の一重項励起状態の
生成効率を高めることができる。
【0077】
また、励起錯体が呈する発光のうち、熱活性化遅延蛍光成分における蛍光寿命は短いこ
とが好ましく、具体的には、好ましくは10ns以上50μs以下、より好ましくは10
ns以上40μs以下、さらに好ましくは10ns以上30μs以下である。
【0078】
また、励起錯体が呈する発光のうち、熱活性化遅延蛍光成分が占める割合は高いことが
好ましい。具体的には、励起錯体が呈する発光のうち、熱活性化遅延蛍光成分が占める割
合は好ましくは5%以上、より好ましくは8%以上、さらに好ましくは10%以上である
【0079】
<材料>
次に、本発明の一態様に係わる発光素子の構成要素の詳細について、以下説明を行う。
【0080】
≪発光層≫
発光層130に用いることができる材料について、それぞれ以下に説明する。
【0081】
発光層130中では、ホスト材料131が重量比で最も多く存在し、ゲスト材料132
(蛍光材料)は、ホスト材料131中に分散される。発光層130のホスト材料131(
有機化合物131_1及び有機化合物131_2)のS1準位は、発光層130のゲスト
材料132(蛍光材料)のS1準位よりも高いことが好ましい。また、発光層130のホ
スト材料131(有機化合物131_1及び有機化合物131_2)のT1準位は、発光
層130のゲスト材料132(蛍光材料)のT1準位よりも高いことが好ましい。
【0082】
発光層130において、ゲスト材料132としては、特に限定はないが、アントラセン
誘導体、テトラセン誘導体、クリセン誘導体、フェナントレン誘導体、ピレン誘導体、ペ
リレン誘導体、スチルベン誘導体、アクリドン誘導体、クマリン誘導体、フェノキサジン
誘導体、フェノチアジン誘導体などが好ましく、例えば以下の材料を用いることができる
【0083】
5,6-ビス[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-2,2’-ビピ
リジン(略称:PAP2BPy)、5,6-ビス[4’-(10-フェニル-9-アント
リル)ビフェニル-4-イル]-2,2’-ビピリジン(略称:PAPP2BPy)、N
,N’-ジフェニル-N,N’-ビス[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イ
ル)フェニル]ピレン-1,6-ジアミン(略称:1,6FLPAPrn)、N,N’-
ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ビス[3-(9-フェニル-9H-フルオレン
-9-イル)フェニル]ピレン-1,6-ジアミン(略称:1,6mMemFLPAPr
n)、N,N’-ビス[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-N,N’-
ジフェニルスチルベン-4,4’-ジアミン(略称:YGA2S)、4-(9H-カルバ
ゾール-9-イル)-4’-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン(
略称:YGAPA)、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(9,10-ジフ
ェニル-2-アントリル)トリフェニルアミン(略称:2YGAPPA)、N,9-ジフ
ェニル-N-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾー
ル-3-アミン(略称:PCAPA)、ペリレン、2,5,8,11-テトラ(tert
-ブチル)ペリレン(略称:TBP)、4-(10-フェニル-9-アントリル)-4’
-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCB
APA)、N,N’’-(2-tert-ブチルアントラセン-9,10-ジイルジ-4
,1-フェニレン)ビス[N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン
](略称:DPABPA)、N,9-ジフェニル-N-[4-(9,10-ジフェニル-
2-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCAPPA
)、N-[4-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-N,N’,N’
-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン(略称:2DPAPPA)、N,N,N’
,N’,N’’,N’’,N’’’,N’’’-オクタフェニルジベンゾ[g,p]クリ
セン-2,7,10,15-テトラアミン(略称:DBC1)、クマリン30、N-(9
,10-ジフェニル-2-アントリル)-N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-3
-アミン(略称:2PCAPA)、N-[9,10-ビス(1,1’-ビフェニル-2-
イル)-2-アントリル]-N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略
称:2PCABPhA)、N-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)-N,N’,
N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン(略称:2DPAPA)、N-[9,
10-ビス(1,1’-ビフェニル-2-イル)-2-アントリル]-N,N’,N’-
トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン(略称:2DPABPhA)、9,10-ビ
ス(1,1’-ビフェニル-2-イル)-N-[4-(9H-カルバゾール-9-イル)
フェニル]-N-フェニルアントラセン-2-アミン(略称:2YGABPhA)、N,
N,9-トリフェニルアントラセン-9-アミン(略称:DPhAPhA)、クマリン6
、クマリン545T、N,N’-ジフェニルキナクリドン(略称:DPQd)、ルブレン
、5,12-ビス(1,1’-ビフェニル-4-イル)-6,11-ジフェニルテトラセ
ン(略称:BPT)、2-(2-{2-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}
-6-メチル-4H-ピラン-4-イリデン)プロパンジニトリル(略称:DCM1)、
2-{2-メチル-6-[2-(2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[
ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニ
トリル(略称:DCM2)、N,N,N’,N’-テトラキス(4-メチルフェニル)テ
トラセン-5,11-ジアミン(略称:p-mPhTD)、7,14-ジフェニル-N,
N,N’,N’-テトラキス(4-メチルフェニル)アセナフト[1,2-a]フルオラ
ンテン-3,10-ジアミン(略称:p-mPhAFD)、2-{2-イソプロピル-6
-[2-(1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H
-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プ
ロパンジニトリル(略称:DCJTI)、2-{2-tert-ブチル-6-[2-(1
,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[i
j]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニト
リル(略称:DCJTB)、2-(2,6-ビス{2-[4-(ジメチルアミノ)フェニ
ル]エテニル}-4H-ピラン-4-イリデン)プロパンジニトリル(略称:BisDC
M)、2-{2,6-ビス[2-(8-メトキシ-1,1,7,7-テトラメチル-2,
3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニ
ル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(略称:BisDCJTM)、
5,10,15,20-テトラフェニルビスベンゾ[5,6]インデノ[1,2,3-c
d:1’,2’,3’-lm]ペリレン、などが挙げられる。
【0084】
有機化合物131_1としては、亜鉛やアルミニウム系金属錯体の他、オキサジアゾー
ル誘導体、トリアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、キノキサリン誘導体、ジベ
ンゾキノキサリン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ピリミジ
ン誘導体、トリアジン誘導体、ピリジン誘導体、ビピリジン誘導体、フェナントロリン誘
導体などが挙げられる。他の例としては、芳香族アミンやカルバゾール誘導体などが挙げ
られる。
【0085】
また、以下の正孔輸送性材料および電子輸送性材料を用いることができる。
【0086】
正孔輸送性材料としては、電子よりも正孔の輸送性の高い材料を用いることができ、1
×10-6cm/Vs以上の正孔移動度を有する材料であることが好ましい。具体的に
は、芳香族アミン、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、スチルベン誘導体などを用い
ることができる。また、該正孔輸送性材料は高分子化合物であっても良い。
【0087】
これら正孔輸送性の高い材料として、例えば、芳香族アミン化合物としては、N,N’
-ジ(p-トリル)-N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン(略称:DTDP
PA)、4,4’-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ
]ビフェニル(略称:DPAB)、N,N’-ビス{4-[ビス(3-メチルフェニル)
アミノ]フェニル}-N,N’-ジフェニル-(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジ
アミン(略称:DNTPD)、1,3,5-トリス[N-(4-ジフェニルアミノフェニ
ル)-N-フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)等を挙げることができる。
【0088】
また、カルバゾール誘導体としては、具体的には、3-[N-(4-ジフェニルアミノ
フェニル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzDPA1
)、3,6-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]-9
-フェニルカルバゾール(略称:PCzDPA2)、3,6-ビス[N-(4-ジフェニ
ルアミノフェニル)-N-(1-ナフチル)アミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称
:PCzTPN2)、3-[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニ
ルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6-ビス[N-
(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバ
ゾール(略称:PCzPCA2)、3-[N-(1-ナフチル)-N-(9-フェニルカ
ルバゾール-3-イル)アミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)
等を挙げることができる。
【0089】
また、カルバゾール誘導体としては、他に、4,4’-ジ(N-カルバゾリル)ビフェ
ニル(略称:CBP)、1,3,5-トリス[4-(N-カルバゾリル)フェニル]ベン
ゼン(略称:TCPB)、9-[4-(10-フェニル-9-アントラセニル)フェニル
]-9H-カルバゾール(略称:CzPA)、1,4-ビス[4-(N-カルバゾリル)
フェニル]-2,3,5,6-テトラフェニルベンゼン等を用いることができる。
【0090】
また、芳香族炭化水素としては、例えば、2-tert-ブチル-9,10-ジ(2-
ナフチル)アントラセン(略称:t-BuDNA)、2-tert-ブチル-9,10-
ジ(1-ナフチル)アントラセン、9,10-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)アン
トラセン(略称:DPPA)、2-tert-ブチル-9,10-ビス(4-フェニルフ
ェニル)アントラセン(略称:t-BuDBA)、9,10-ジ(2-ナフチル)アント
ラセン(略称:DNA)、9,10-ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、
2-tert-ブチルアントラセン(略称:t-BuAnth)、9,10-ビス(4-
メチル-1-ナフチル)アントラセン(略称:DMNA)、2-tert-ブチル-9,
10-ビス[2-(1-ナフチル)フェニル]アントラセン、9,10-ビス[2-(1
-ナフチル)フェニル]アントラセン、2,3,6,7-テトラメチル-9,10-ジ(
1-ナフチル)アントラセン、2,3,6,7-テトラメチル-9,10-ジ(2-ナフ
チル)アントラセン、9,9’-ビアントリル、10,10’-ジフェニル-9,9’-
ビアントリル、10,10’-ビス(2-フェニルフェニル)-9,9’-ビアントリル
、10,10’-ビス[(2,3,4,5,6-ペンタフェニル)フェニル]-9,9’
-ビアントリル、アントラセン、テトラセン、ルブレン、ペリレン、2,5,8,11-
テトラ(tert-ブチル)ペリレン等が挙げられる。また、この他、ペンタセン、コロ
ネン等も用いることができる。このように、1×10-6cm/Vs以上の正孔移動度
を有し、炭素数14以上炭素数42以下である芳香族炭化水素を用いることがより好まし
い。
【0091】
なお、芳香族炭化水素は、ビニル骨格を有していてもよい。ビニル基を有している芳香
族炭化水素としては、例えば、4,4’-ビス(2,2-ジフェニルビニル)ビフェニル
(略称:DPVBi)、9,10-ビス[4-(2,2-ジフェニルビニル)フェニル]
アントラセン(略称:DPVPA)等が挙げられる。
【0092】
また、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(略称:PVK)やポリ(4-ビニルトリフェ
ニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N-(4-{N’-[4-(4-ジフェニル
アミノ)フェニル]フェニル-N’-フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](
略称:PTPDMA)、ポリ[N,N’-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N’-ビス
(フェニル)ベンジジン](略称:Poly-TPD)等の高分子化合物を用いることも
できる。
【0093】
また、正孔輸送性の高い材料としては、例えば、4,4’-ビス[N-(1-ナフチル
)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPBまたはα-NPD)やN,N’-ビ
ス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニル-[1,1’-ビフェニル]-4,4
’-ジアミン(略称:TPD)、4,4’,4’’-トリス(カルバゾール-9-イル)
トリフェニルアミン(略称:TCTA)、4,4’,4’’-トリス[N-(1-ナフチ
ル)-N-フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:1’-TNATA)、4,4’
,4’’-トリス(N,N-ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA
)、4,4’,4’’-トリス[N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ]ト
リフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’-ビス[N-(スピロ-9,9’-
ビフルオレン-2-イル)-N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)、4-
フェニル-4’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:B
PAFLP)、4-フェニル-3’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニ
ルアミン(略称:mBPAFLP)、N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-
イル)-N-{9,9-ジメチル-2-[N’-フェニル-N’-(9,9-ジメチル-
9H-フルオレン-2-イル)アミノ]-9H-フルオレン-7-イル}フェニルアミン
(略称:DFLADFL)、N-(9,9-ジメチル-2-ジフェニルアミノ-9H-フ
ルオレン-7-イル)ジフェニルアミン(略称:DPNF)、2-[N-(4-ジフェニ
ルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]スピロ-9,9’-ビフルオレン(略称:D
PASF)、4-フェニル-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)ト
リフェニルアミン(略称:PCBA1BP)、4,4’-ジフェニル-4’’-(9-フ
ェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBBi1BP
)、4-(1-ナフチル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)ト
リフェニルアミン(略称:PCBANB)、4,4’-ジ(1-ナフチル)-4’’-(
9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNB
B)、4-フェニルジフェニル-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)アミ
ン(略称:PCA1BP)、N,N’-ビス(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-
N,N’-ジフェニルベンゼン-1,3-ジアミン(略称:PCA2B)、N,N’,N
’’-トリフェニル-N,N’,N’’-トリス(9-フェニルカルバゾール-3-イル
)ベンゼン-1,3,5-トリアミン(略称:PCA3B)、N-(4-ビフェニル)-
N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9-フェニル-9H-カルバ
ゾール-3-アミン(略称:PCBiF)、N-(1,1’-ビフェニル-4-イル)-
N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9-ジメ
チル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:PCBBiF)、9,9-ジメチル-N-
フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]フル
オレン-2-アミン(略称:PCBAF)、N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-
9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]スピロ-9,9’-ビフルオレン-2-アミ
ン(略称:PCBASF)、2-[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-
フェニルアミノ]スピロ-9,9’-ビフルオレン(略称:PCASF)、2,7-ビス
[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]-スピロ-9,9’-
ビフルオレン(略称:DPA2SF)、N-[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フ
ェニル]-N-(4-フェニル)フェニルアニリン(略称:YGA1BP)、N,N’-
ビス[4-(カルバゾール-9-イル)フェニル]-N,N’-ジフェニル-9,9-ジ
メチルフルオレン-2,7-ジアミン(略称:YGA2F)などの芳香族アミン化合物等
を用いることができる。また、3-[4-(1-ナフチル)-フェニル]-9-フェニル
-9H-カルバゾール(略称:PCPN)、3-[4-(9-フェナントリル)-フェニ
ル]-9-フェニル-9H-カルバゾール(略称:PCPPn)、3,3’-ビス(9-
フェニル-9H-カルバゾール)(略称:PCCP)、1,3-ビス(N-カルバゾリル
)ベンゼン(略称:mCP)、3,6-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)-9-フェ
ニルカルバゾール(略称:CzTP)、4-{3-[3-(9-フェニル-9H-フルオ
レン-9-イル)フェニル]フェニル}ジベンゾフラン(略称:mmDBFFLBi-I
I)、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾフラン)
(略称:DBF3P-II)、1,3,5-トリ(ジベンゾチオフェン-4-イル)-ベ
ンゼン(略称:DBT3P-II)、2,8-ジフェニル-4-[4-(9-フェニル-
9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-I
II)、4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]-6-フ
ェニルジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-IV)、4-[3-(トリフェニレン
-2-イル)フェニル]ジベンゾチオフェン(略称:mDBTPTp-II)等のアミン
化合物、カルバゾール化合物、チオフェン化合物、フラン化合物、フルオレン化合物、ト
リフェニレン化合物、フェナントレン化合物等を用いることができる。ここに述べた物質
は、主に1×10-6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。但し、電子よ
りも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外の物質を用いてもよい。
【0094】
電子輸送性材料としては、正孔よりも電子の輸送性の高い材料を用いることができ、1
×10-6cm/Vs以上の電子移動度を有する材料であることが好ましい。電子を受
け取りやすい材料(電子輸送性を有する材料)としては、含窒素複素芳香族化合物のよう
なπ電子不足型複素芳香族や金属錯体などを用いることができる。具体的には、キノリン
配位子、ベンゾキノリン配位子、オキサゾール配位子、あるいはチアゾール配位子を有す
る金属錯体が挙げられる。また、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナ
ントロリン誘導体、ピリジン誘導体、ビピリジン誘導体、ピリミジン誘導体などが挙げら
れる。
【0095】
例えば、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Alq)、トリ
ス(4-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Almq)、ビ
ス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称:BeBq
)、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト)アルミニウム(
III)(略称:BAlq)、ビス(8-キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Znq)
など、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等である。また、この他
ビス[2-(2-ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnPBO)
、ビス[2-(2-ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnBTZ)
などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる
。さらに、金属錯体以外にも、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチル
フェニル)-1,3,4-オキサジアゾール(略称:PBD)や、1,3-ビス[5-(
p-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベンゼン
(略称:OXD-7)、9-[4-(5-フェニル-1,3,4-オキサジアゾール-2
-イル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CO11)、3-(4-ビフェニリル
)-4-フェニル-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール
(略称:TAZ)、2,2’,2’’-(1,3,5-ベンゼントリイル)トリス(1-
フェニル-1H-ベンゾイミダゾール)(略称:TPBI)、2-[3-(ジベンゾチオ
フェン-4-イル)フェニル]-1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール(略称:mD
BTBIm-II)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(
略称:BCP)、2,9-ビス(ナフタレン-2-イル)-4,7-ジフェニル-1,1
0-フェナントロリン(略称:NBPhen)などの複素環化合物や、2-[3-(ジベ
ンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mD
BTPDBq-II)、2-[3’-(ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-3
-イル]ジベンゾ[f、h]キノキサリン(略称:2mDBTBPDBq-II)、2-
[3’-(9H-カルバゾール-9-イル)ビフェニル-3-イル]ジベンゾ[f、h]
キノキサリン(略称:2mCzBPDBq)、2-[4-(3,6-ジフェニル-9H-
カルバゾール-9-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2CzP
DBq-III)、7-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[
f,h]キノキサリン(略称:7mDBTPDBq-II)、及び、6-[3-(ジベン
ゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:6mDB
TPDBq-II)、4,6-ビス[3-(フェナントレン-9-イル)フェニル]ピリ
ミジン(略称:4,6mPnP2Pm)、4,6-ビス[3-(4-ジベンゾチエニル)
フェニル]ピリミジン(略称:4,6mDBTP2Pm-II)、4,6-ビス[3-(
9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mCzP2Pm)
などのジアジン骨格を有する複素環化合物や、2-{4-[3-(N-フェニル-9H-
カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール-9-イル]フェニル}-4,6-ジフ
ェニル-1,3,5-トリアジン(略称:PCCzPTzn)などのトリアジン骨格を有
する複素環化合物や、3,5-ビス[3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]
ピリジン(略称:35DCzPPy)、1,3,5-トリ[3-(3-ピリジル)フェニ
ル]ベンゼン(略称:TmPyPB)などのピリジン骨格を有する複素環化合物、4,4
’-ビス(5-メチルベンゾオキサゾール-2-イル)スチルベン(略称:BzOs)な
どの複素芳香族化合物も用いることができる。また、ポリ(2,5-ピリジンジイル)(
略称:PPy)、ポリ[(9,9-ジヘキシルフルオレン-2,7-ジイル)-co-(
ピリジン-3,5-ジイル)](略称:PF-Py)、ポリ[(9,9-ジオクチルフル
オレン-2,7-ジイル)-co-(2,2’-ビピリジン-6,6’-ジイル)](略
称:PF-BPy)のような高分子化合物を用いることもできる。ここに述べた物質は、
主に1×10-6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質である。なお、正孔よりも
電子の輸送性の高い物質であれば、上記以外の物質を用いても構わない。
【0096】
有機化合物131_2としては、有機化合物131_1と励起錯体を形成できる組み合
わせとする。具体的には、上記で示した正孔輸送性材料および電子輸送性材料を用いるこ
とができる。この場合、有機化合物131_1と有機化合物131_2とで形成される励
起錯体の発光ピークが、ゲスト材料132(蛍光材料)の最も長波長側(低エネルギー側
)の吸収帯と重なるように、有機化合物131_1、有機化合物131_2、およびゲス
ト材料132(蛍光材料)を選択することが好ましい。これにより、発光効率が飛躍的に
向上した発光素子とすることができる。
【0097】
発光層130が有するホスト材料131(有機化合物131_1および有機化合物13
1_2)としては、三重項励起エネルギーを一重項励起エネルギーに変換する機能を有す
る材料であればよい。該三重項励起エネルギーを一重項励起エネルギーに変換する機能を
有する材料としては、励起錯体の他に、熱活性化遅延蛍光(Thermally act
ivated delayed fluorescence:TADF)材料が挙げられ
る。したがって、励起錯体と記載した部分に関しては、熱活性化遅延蛍光材料と読み替え
ても構わない。なお、熱活性化遅延蛍光材料とは、三重項励起エネルギー準位と一重項励
起エネルギー準位との差が小さく、逆項間交差によって三重項励起状態から一重項励起状
態へエネルギーを変換する機能を有する材料である。そのため、三重項励起状態をわずか
な熱エネルギーによって一重項励起状態にアップコンバート(逆項間交差)が可能で、一
重項励起状態からの発光(蛍光)を効率よく呈することができる。また、熱活性化遅延蛍
光が効率良く得られる条件としては、三重項励起エネルギー準位と一重項励起エネルギー
準位のエネルギー差が好ましくは0eVより大きく0.2eV以下、さらに好ましくは0
eVより大きく0.1eV以下であることが挙げられる。
【0098】
また、熱活性化遅延蛍光を示す材料は、単独で三重項励起状態から逆項間交差により一
重項励起状態を生成できる材料であっても良い。熱活性化遅延蛍光材料が、一種類の材料
から構成される場合、例えば以下の材料を用いることができる。
【0099】
まず、フラーレンやその誘導体、プロフラビン等のアクリジン誘導体、エオシン等が挙
げられる。また、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、スズ(S
n)、白金(Pt)、インジウム(In)、もしくはパラジウム(Pd)等を含む金属含
有ポルフィリンが挙げられる。該金属含有ポルフィリンとしては、例えば、プロトポルフ
ィリン-フッ化スズ錯体(SnF(Proto IX))、メソポルフィリン-フッ化
スズ錯体(SnF(Meso IX))、ヘマトポルフィリン-フッ化スズ錯体(Sn
(Hemato IX))、コプロポルフィリンテトラメチルエステル-フッ化スズ
錯体(SnF(Copro III-4Me))、オクタエチルポルフィリン-フッ化
スズ錯体(SnF(OEP))、エチオポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF(E
tio I))、オクタエチルポルフィリン-塩化白金錯体(PtClOEP)等が挙
げられる。
【0100】
また、一種の材料から構成される熱活性化遅延蛍光材料としては、π電子過剰型複素芳
香環及びπ電子不足型複素芳香環を有する複素環化合物も用いることができる。具体的に
は、2-(ビフェニル-4-イル)-4,6-ビス(12-フェニルインドロ[2,3-
a]カルバゾール-11-イル)-1,3,5-トリアジン(略称:PIC-TRZ)、
2-{4-[3-(N-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾー
ル-9-イル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:PC
CzPTzn)、2-[4-(10H-フェノキサジン-10-イル)フェニル]-4,
6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:PXZ-TRZ)、3-[4-(5-
フェニル-5,10-ジヒドロフェナジン-10-イル)フェニル]-4,5-ジフェニ
ル-1,2,4-トリアゾール(略称:PPZ-3TPT)、3-(9,9-ジメチル-
9H-アクリジン-10-イル)-9H-キサンテン-9-オン(略称:ACRXTN)
、ビス[4-(9,9-ジメチル-9,10-ジヒドロアクリジン)フェニル]スルホン
(略称:DMAC-DPS)、10-フェニル-10H,10’H-スピロ[アクリジン
-9,9’-アントラセン]-10’-オン(略称:ACRSA)等が挙げられる。該複
素環化合物は、π電子過剰型複素芳香環及びπ電子不足型複素芳香環を有するため、電子
輸送性及び正孔輸送性が高く、好ましい。なお、π電子過剰型複素芳香環とπ電子不足型
複素芳香環とが直接結合した物質は、π電子過剰型複素芳香環のドナー性とπ電子不足型
複素芳香環のアクセプター性が共に強く、一重項励起エネルギー準位と三重項励起エネル
ギー準位の差が小さくなるため、特に好ましい。
【0101】
なお、発光層130は2層以上の複数層でもって構成することもできる。例えば、第1
の発光層と第2の発光層を正孔輸送層側から順に積層して発光層130とする場合、第1
の発光層のホスト材料として正孔輸送性を有する物質を用い、第2の発光層のホスト材料
として電子輸送性を有する物質を用いる構成などがある。
【0102】
また、発光層130において、ホスト材料131およびゲスト材料132以外の材料を
有していても良い。
【0103】
≪一対の電極≫
電極101及び電極102は、発光層130へ正孔と電子を注入する機能を有する。電
極101及び電極102は、金属、合金、導電性化合物、およびこれらの混合物や積層体
などを用いて形成することができる。金属としてはアルミニウム(Al)が典型例であり
、その他、銀(Ag)、タングステン、クロム、モリブデン、銅、チタンなどの遷移金属
、リチウム(Li)やセシウムなどのアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム(Mg)
などの第2族金属を用いることができる。遷移金属としてイッテルビウム(Yb)などの
希土類金属を用いても良い。合金としては、上記金属を含む合金を使用することができ、
例えばMgAg、AlLiなどが挙げられる。導電性化合物としては、例えば、インジウ
ム錫酸化物(Indium Tin Oxide、以下ITO)、珪素または酸化珪素を
含むインジウム錫酸化物(略称:ITSO)、インジウム亜鉛酸化物(Indium Z
inc Oxide)、タングステン及び亜鉛を含有したインジウム酸化物などの金属酸
化物が挙げられる。導電性化合物としてグラフェンなどの無機炭素系材料を用いても良い
。上述したように、これらの材料の複数を積層することによって電極101及び電極10
2の一方または双方を形成しても良い。
【0104】
また、発光層130から得られる発光は、電極101及び電極102の一方または双方
を通して取り出される。したがって、電極101及び電極102の少なくとも一つは可視
光を透過する機能を有する。光を透過する機能を有する導電性材料としては、可視光の透
過率が40%以上100%以下、好ましくは60%以上100%以下であり、かつその抵
抗率が1×10-2Ω・cm以下の導電性材料が挙げられる。また、光を取り出す方の電
極は、光を透過する機能と、光を反射する機能と、を有する導電性材料により形成されて
も良い。該導電性材料としては、可視光の反射率が20%以上80%以下、好ましくは4
0%以上70%以下であり、かつその抵抗率が1×10-2Ω・cm以下の導電性材料が
挙げられる。光を取り出す方の電極に金属や合金などの光透過性の低い材料を用いる場合
には、可視光を透過できる程度の厚さ(例えば、1nmから10nmの厚さ)で電極10
1及び電極102の一方または双方を形成すればよい。
【0105】
なお、本明細書等において、光を透過する機能を有する電極には、可視光を透過する機
能を有し、且つ導電性を有する材料を用いればよく、例えば上記のようなITOに代表さ
れる酸化物導電体層に加えて、酸化物半導体層、または有機物を含む有機導電体層を含む
。有機物を含む有機導電体層としては、例えば、有機化合物と電子供与体(ドナー)とを
混合してなる複合材料を含む層、有機化合物と電子受容体(アクセプター)とを混合して
なる複合材料を含む層等が挙げられる。また、透明導電層の抵抗率としては、好ましくは
1×10Ω・cm以下、さらに好ましくは1×10Ω・cm以下である。
【0106】
また、電極101及び電極102の成膜方法は、スパッタリング法、蒸着法、印刷法、
塗布法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法、CVD法、パル
スレーザ堆積法、ALD(Atomic Layer Deposition)法等を適
宜用いることができる。
【0107】
≪正孔注入層≫
正孔注入層111は、一対の電極の一方(電極101または電極102)からのホール
注入障壁を低減することでホール注入を促進する機能を有し、例えば遷移金属酸化物、フ
タロシアニン誘導体、あるいは芳香族アミンなどによって形成される。遷移金属酸化物と
しては、モリブデン酸化物やバナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、タングステン酸化物
、マンガン酸化物などが挙げられる。フタロシアニン誘導体としては、フタロシアニンや
金属フタロシアニンなどが挙げられる。芳香族アミンとしてはベンジジン誘導体やフェニ
レンジアミン誘導体などが挙げられる。ポリチオフェンやポリアニリンなどの高分子化合
物を用いることもでき、例えば自己ドープされたポリチオフェンであるポリ(エチレンジ
オキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)などがその代表例である。
【0108】
正孔注入層111として、正孔輸送性材料と、これに対して電子受容性を示す材料の複
合材料を有する層を用いることもできる。あるいは、電子受容性を示す材料を含む層と正
孔輸送性材料を含む層の積層を用いても良い。これらの材料間では定常状態、あるいは電
界存在下において電荷の授受が可能である。電子受容性を示す材料としては、キノジメタ
ン誘導体やクロラニル誘導体、ヘキサアザトリフェニレン誘導体などの有機アクセプター
を挙げることができる。具体的には、7,7,8,8-テトラシアノ-2,3,5,6-
テトラフルオロキノジメタン(略称:F-TCNQ)、クロラニル、2,3,6,7,
10,11-ヘキサシアノ-1,4,5,8,9,12-ヘキサアザトリフェニレン(略
称:HAT-CN)等の電子吸引基(ハロゲン基やシアノ基)を有する化合物である。ま
た、遷移金属酸化物、例えば第4族から第8族金属の酸化物を用いることができる。具体
的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸
化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムなどである。中でも酸化モリブデンは大気
中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。
【0109】
正孔輸送性材料としては、電子よりも正孔の輸送性の高い材料を用いることができ、1
×10-6cm/Vs以上の正孔移動度を有する材料であることが好ましい。具体的に
は、発光層130に用いることができる正孔輸送性材料として挙げた芳香族アミン、カル
バゾール誘導体、芳香族炭化水素、スチルベン誘導体などを用いることができる。また、
該正孔輸送性材料は高分子化合物であっても良い。
【0110】
≪正孔輸送層≫
正孔輸送層112は正孔輸送性材料を含む層であり、正孔注入層111の材料として例
示した材料を使用することができる。正孔輸送層112は正孔注入層111に注入された
正孔を発光層130へ輸送する機能を有するため、正孔注入層111のHOMO準位と同
じ、あるいは近いHOMO準位を有することが好ましい。
【0111】
上記正孔輸送性材料として、正孔注入層111の材料として例示した材料を用いること
ができる。また、1×10-6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質であることが
好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外の物質を用い
てもよい。なお、正孔輸送性の高い物質を含む層は、単層だけでなく、上記物質からなる
層が二層以上積層してもよい。
【0112】
≪電子輸送層≫
電子輸送層118は、電子注入層119を経て一対の電極の他方(電極101または電
極102)から注入された電子を発光層130へ輸送する機能を有する。電子輸送性材料
としては、正孔よりも電子の輸送性の高い材料を用いることができ、1×10-6cm
/Vs以上の電子移動度を有する材料であることが好ましい。電子を受け取りやすい化合
物(電子輸送性を有する材料)としては、含窒素複素芳香族化合物のようなπ電子不足型
複素芳香族や金属錯体などを用いることができる。具体的には、発光層130に用いるこ
とができる電子輸送性材料として挙げたキノリン配位子、ベンゾキノリン配位子、オキサ
ゾール配位子、あるいはチアゾール配位子を有する金属錯体が挙げられる。また、オキサ
ジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、ピリジン誘導体、ビ
ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体などが挙げられる。また、1×10-6cm/Vs
以上の電子移動度を有する物質であることが好ましい。なお、正孔よりも電子の輸送性の
高い物質であれば、上記以外の物質を電子輸送層として用いても構わない。また、電子輸
送層118は、単層だけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層してもよい。
【0113】
また、電子輸送層118と発光層130との間に電子キャリアの移動を制御する層を設
けても良い。これは上述したような電子輸送性の高い材料に、電子トラップ性の高い物質
を少量添加した層であって、電子キャリアの移動を抑制することによって、キャリアバラ
ンスを調節することが可能となる。このような構成は、発光層を電子が突き抜けてしまう
ことにより発生する問題(例えば素子寿命の低下)の抑制に大きな効果を発揮する。
【0114】
≪電子注入層≫
電子注入層119は電極102からの電子注入障壁を低減することで電子注入を促進す
る機能を有し、例えば第1族金属、第2族金属、あるいはこれらの酸化物、ハロゲン化物
、炭酸塩などを用いることができる。また、先に示す電子輸送性材料と、これに対して電
子供与性を示す材料の複合材料を用いることもできる。電子供与性を示す材料としては、
第1族金属、第2族金属、あるいはこれらの酸化物などを挙げることができる。具体的に
は、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF
)、リチウム酸化物(LiO)等のようなアルカリ金属、アルカリ土類金属、または
それらの化合物を用いることができる。また、フッ化エルビウム(ErF)のような希
土類金属化合物を用いることができる。また、電子注入層119にエレクトライドを用い
てもよい。該エレクトライドとしては、例えば、カルシウムとアルミニウムの混合酸化物
に電子を高濃度添加した物質等が挙げられる。また、電子注入層119に、電子輸送層1
18で用いることが出来る物質を用いても良い。
【0115】
また、電子注入層119に、有機化合物と電子供与体(ドナー)とを混合してなる複合
材料を用いてもよい。このような複合材料は、電子供与体によって有機化合物に電子が発
生するため、電子注入性および電子輸送性に優れている。この場合、有機化合物としては
、発生した電子の輸送に優れた材料であることが好ましく、具体的には、例えば上述した
電子輸送層118を構成する物質(金属錯体や複素芳香族化合物等)を用いることができ
る。電子供与体としては、有機化合物に対し電子供与性を示す物質であればよい。具体的
には、アルカリ金属やアルカリ土類金属や希土類金属が好ましく、リチウム、セシウム、
マグネシウム、カルシウム、エルビウム、イッテルビウム等が挙げられる。また、アルカ
リ金属酸化物やアルカリ土類金属酸化物が好ましく、リチウム酸化物、カルシウム酸化物
、バリウム酸化物等が挙げられる。また、酸化マグネシウムのようなルイス塩基を用いる
こともできる。また、テトラチアフルバレン(略称:TTF)等の有機化合物を用いるこ
ともできる。
【0116】
なお、上述した、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、及び電子注入層は、
それぞれ、蒸着法(真空蒸着法を含む)、インクジェット法、塗布法、グラビア印刷等の
方法で形成することができる。また、上述した、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子
輸送層、及び電子注入層には、上述した材料の他、量子ドットなどの無機化合物または高
分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)を用いてもよい。
【0117】
なお、量子ドットとしては、コロイド状量子ドット、合金型量子ドット、コア・シェル
型量子ドット、コア型量子ドット、などを用いてもよい。また、2族と16族、13族と
15族、13族と17族、11族と17族、または14族と15族の元素グループを含む
量子ドットを用いてもよい。または、カドミウム(Cd)、セレン(Se)、亜鉛(Zn
)、硫黄(S)、リン(P)、インジウム(In)、テルル(Te)、鉛(Pb)、ガリ
ウム(Ga)、ヒ素(As)、アルミニウム(Al)、等の元素を有する量子ドットを用
いてもよい。
【0118】
≪基板≫
また、本発明の一態様に係る発光素子は、ガラス、プラスチックなどからなる基板上に
作製すればよい。基板上に作製する順番としては、電極101側から順に積層しても、電
極102側から順に積層しても良い。
【0119】
なお、本発明の一態様に係る発光素子を形成できる基板としては、例えばガラス、石英
、又はプラスチックなどを用いることができる。また可撓性基板を用いてもよい。可撓性
基板とは、曲げることができる(フレキシブル)基板のことであり、例えば、ポリカーボ
ネート、ポリアリレートからなるプラスチック基板等が挙げられる。また、フィルム、無
機蒸着フィルムなどを用いることもできる。なお、発光素子、及び光学素子の作製工程に
おいて支持体として機能するものであれば、これら以外のものでもよい。あるいは、発光
素子、及び光学素子を保護する機能を有するものであればよい。
【0120】
例えば、本発明等においては、様々な基板を用いて発光素子を形成することが出来る。
基板の種類は、特に限定されない。その基板の一例としては、半導体基板(例えば単結晶
基板又はシリコン基板)、SOI基板、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板、金属
基板、ステンレス・スチル基板、ステンレス・スチル・ホイルを有する基板、タングステ
ン基板、タングステン・ホイルを有する基板、可撓性基板、貼り合わせフィルム、繊維状
の材料を含む紙、又は基材フィルムなどがある。ガラス基板の一例としては、バリウムホ
ウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、又はソーダライムガラスなどがある。可撓
性基板、貼り合わせフィルム、基材フィルムなどの一例としては、以下が挙げられる。例
えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、
ポリエーテルスルホン(PES)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)に代表され
るプラスチックがある。または、一例としては、アクリル等の樹脂などがある。または、
一例としては、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリフッ化ビニル、又はポリ塩化ビニル
などがある。または、一例としては、ポリアミド、ポリイミド、アラミド、エポキシ、無
機蒸着フィルム、又は紙類などがある。
【0121】
また、基板として、可撓性基板を用い、可撓性基板上に直接、発光素子を形成してもよ
い。または、基板と発光素子との間に剥離層を設けてもよい。剥離層は、その上に発光素
子を一部あるいは全部完成させた後、基板より分離し、他の基板に転載するために用いる
ことができる。その際、耐熱性の劣る基板や可撓性の基板にも発光素子を転載できる。な
お、上述の剥離層には、例えば、タングステン膜と酸化シリコン膜との無機膜の積層構造
の構成や、基板上にポリイミド等の樹脂膜が形成された構成等を用いることができる。
【0122】
つまり、ある基板を用いて発光素子を形成し、その後、別の基板に発光素子を転置し、
別の基板上に発光素子を配置してもよい。発光素子が転置される基板の一例としては、上
述した基板に加え、セロファン基板、石材基板、木材基板、布基板(天然繊維(絹、綿、
麻)、合成繊維(ナイロン、ポリウレタン、ポリエステル)若しくは再生繊維(アセテー
ト、キュプラ、レーヨン、再生ポリエステル)などを含む)、皮革基板、又はゴム基板な
どがある。これらの基板を用いることにより、壊れにくい発光素子、耐熱性の高い発光素
子、軽量化された発光素子、または薄型化された発光素子とすることができる。
【0123】
また、上述した基板上に、例えば電界効果トランジスタ(FET)を形成し、FETと
電気的に接続された電極上に発光素子250を作製してもよい。これにより、FETによ
って発光素子の駆動を制御するアクティブマトリクス型の表示装置を作製できる。
【0124】
なお、本実施の形態において、本発明の一態様について述べた。または、他の実施の形
態において、本発明の一態様について述べる。ただし、本発明の一態様は、これらに限定
されない。例えば、本発明の一態様では、発光素子が蛍光発光材料とホスト材料とを有し
、ホスト材料は、第1の有機化合物と第2の有機化合物とを有する場合の例を示したが、
本発明の一態様は、これに限定されない。場合によっては、または、状況に応じて、本発
明の一態様では、例えば、ホスト材料は第1の有機化合物あるいは第2の有機化合物を有
さなくてもよい。または、例えば、本発明の一態様では、励起錯体が10ns以上50μ
s以下の蛍光寿命を有する遅延蛍光成分を有する場合の例を示したが、本発明の一態様は
、これに限定されない。場合によっては、または、状況に応じて、本発明の一態様では、
例えば、励起錯体が10ns未満の蛍光寿命を有する遅延蛍光成分を有してもよい。ある
いは、例えば、励起錯体が50μsより大きい蛍光寿命を有する遅延蛍光成分を有しても
よい。または、例えば、本発明の一態様では、励起錯体が呈する発光は、遅延蛍光成分の
占める割合が5%以上である場合の例を示したが、本発明の一態様は、これに限定されな
い。場合によっては、または、状況に応じて、本発明の一態様では、例えば、励起錯体が
呈する発光は、遅延蛍光成分の占める割合が5%未満であってもよい。
【0125】
以上、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態と適宜組み合わせて用いることがで
きる。
【0126】
(実施の形態2)
本実施の形態においては、実施の形態1に示す構成と異なる構成の発光素子、及び当該
発光素子の発光機構について、図2及び図3を用いて、以下説明を行う。なお、図2及び
図3において、図1(A)に示す符号と同様の機能を有する箇所には、同様のハッチパタ
ーンとし、符号を省略する場合がある。また、同様の機能を有する箇所には、同様の符号
を付し、その詳細な説明は省略する場合がある。
【0127】
<発光素子の構成例1>
図2(A)は、発光素子260の断面模式図である。
【0128】
図2(A)に示す発光素子260は、一対の電極(電極101及び電極102)の間に
、複数の発光ユニット(図2(A)においては、発光ユニット106及び発光ユニット1
08)を有する。1つの発光ユニットは、図1(A)で示すEL層100と同様な構成を
有する。つまり、図1(A)で示した発光素子250は、1つの発光ユニットを有し、発
光素子260は、複数の発光ユニットを有する。なお、発光素子260において、電極1
01が陽極として機能し、電極102が陰極として機能するとして、以下説明するが、発
光素子260の構成としては、逆であっても構わない。
【0129】
また、図2(A)に示す発光素子260において、発光ユニット106と発光ユニット
108とが積層されており、発光ユニット106と発光ユニット108との間には電荷発
生層115が設けられる。なお、発光ユニット106と発光ユニット108は、同じ構成
でも異なる構成でもよい。例えば、発光ユニット108に、図1(A)で示すEL層10
0を用いると好ましい。
【0130】
また、発光素子260は、発光層120と、発光層130と、を有する。また、発光ユ
ニット106は、発光層120の他に、正孔注入層111、正孔輸送層112、電子輸送
層113、及び電子注入層114を有する。また、発光ユニット108は、発光層130
の他に、正孔注入層116、正孔輸送層117、電子輸送層118、及び電子注入層11
9を有する。
【0131】
電荷発生層115は、正孔輸送性材料に電子受容体であるアクセプター性物質が添加さ
れた構成であっても、電子輸送性材料に電子供与体であるドナー性物質が添加された構成
であってもよい。また、これらの両方の構成が積層されていても良い。
【0132】
電荷発生層115に、有機化合物とアクセプター性物質の複合材料が含まれる場合、該
複合材料には実施の形態1に示す正孔注入層111に用いることができる複合材料を用い
ればよい。有機化合物としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール化合物、芳香族炭化
水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の化合物を用
いることができる。なお、有機化合物としては、正孔移動度が1×10-6cm/Vs
以上である物質を適用することが好ましい。ただし、電子よりも正孔の輸送性の高い物質
であれば、これら以外の物質を用いてもよい。有機化合物とアクセプター性物質の複合材
料は、キャリア注入性、キャリア輸送性に優れているため、低電圧駆動、低電流駆動を実
現することができる。なお、発光ユニット108のように、発光ユニットの陽極側の面が
電荷発生層115に接している場合は、電荷発生層115が発光ユニットの正孔注入層ま
たは正孔輸送層の役割も担うことができるため、該発光ユニットには正孔注入層または正
孔輸送層を設けなくとも良い。
【0133】
なお、電荷発生層115は、有機化合物とアクセプター性物質の複合材料を含む層と他
の材料により構成される層を組み合わせた積層構造として形成してもよい。例えば、有機
化合物とアクセプター性物質の複合材料を含む層と、電子供与性物質の中から選ばれた一
の化合物と電子輸送性の高い化合物とを含む層とを組み合わせて形成してもよい。また、
有機化合物とアクセプター性物質の複合材料を含む層と、透明導電性材料を含む層とを組
み合わせて形成してもよい。
【0134】
なお、発光ユニット106と発光ユニット108とに挟まれる電荷発生層115は、電
極101と電極102とに電圧を印加したときに、一方の発光ユニットに電子を注入し、
他方の発光ユニットに正孔を注入するものであれば良い。例えば、図2(A)において、
電極101の電位の方が電極102の電位よりも高くなるように電圧を印加した場合、電
荷発生層115は、発光ユニット106に電子を注入し、発光ユニット108に正孔を注
入する。
【0135】
なお、電荷発生層115は、光取出し効率の点から、可視光に対して透光性(具体的に
は、電荷発生層115に対する可視光の透過率が40%以上)を有することが好ましい。
また、電荷発生層115は、一対の電極(電極101及び電極102)よりも低い導電率
であっても機能する。電荷発生層115の導電率が一対の電極と同程度に高い場合、電荷
発生層115によって発生したキャリアが、膜面方向に流れることで、電極101と電極
102とが重ならない領域で発光が生じてしまう場合がある。このような不良を抑制する
ためには、電荷発生層115は、一対の電極よりも導電率が低い材料で形成されると好ま
しい。
【0136】
上述した材料を用いて電荷発生層115を形成することにより、発光層が積層された場
合における駆動電圧の上昇を抑制することができる。
【0137】
また、図2(A)においては、2つの発光ユニットを有する発光素子について説明した
が、3つ以上の発光ユニットを積層した発光素子についても、同様に適用することが可能
である。発光素子260に示すように、一対の電極間に複数の発光ユニットを電荷発生層
で仕切って配置することで、電流密度を低く保ったまま、高輝度発光を可能とし、さらに
長寿命な発光素子を実現できる。また、消費電力が低い発光素子を実現することができる
【0138】
なお、複数のユニットのうち、少なくとも一つのユニットに、図1(A)で示すEL層
100の構成を適用することによって、発光効率の高い、発光素子を提供することができ
る。
【0139】
また、発光ユニット108が有する発光層130は、実施の形態1で示した構成を有す
ると好ましい。そうすることで、発光素子260は、発光材料として蛍光材料を有し、且
つ発光効率の高い発光素子となり好適である。
【0140】
また、発光ユニット108が有する発光層120は、図2(B)に示すように、ホスト
材料121と、ゲスト材料122とを有する。なお、ゲスト材料122は蛍光材料として
、以下説明する。
【0141】
≪発光層120の発光機構≫
発光層120の発光機構について、以下説明を行う。
【0142】
一対の電極(電極101及び電極102)あるいは電荷発生層から注入された電子およ
び正孔が発光層120において再結合することにより、励起子が生成する。ゲスト材料1
22と比較してホスト材料121は大量に存在するので、励起子の生成により、ホスト材
料121の励起状態が形成される。
【0143】
なお、励起子はキャリア(電子および正孔)対のことである。励起子はエネルギーを有
するため、励起子が生成した材料は励起状態となる。
【0144】
形成されたホスト材料121の励起状態が一重項励起状態である場合、ホスト材料12
1のS1準位からゲスト材料122のS1準位へ一重項励起エネルギーがエネルギー移動
し、ゲスト材料122の一重項励起状態が形成される。
【0145】
ゲスト材料122は蛍光材料であるため、ゲスト材料122において一重項励起状態が
形成されると、ゲスト材料122は速やかに発光する。このとき、高い発光効率を得るた
めには、ゲスト材料122の蛍光量子収率は高いことが好ましい。なお、ゲスト材料12
2において、キャリアが再結合し、生成した励起状態が一重項励起状態である場合も同様
である。
【0146】
次に、キャリアの再結合によってホスト材料121の三重項励起状態が形成される場合
について説明する。この場合のホスト材料121およびゲスト材料122のエネルギー準
位の相関を図2(C)に示す。また、図2(C)における表記および符号は、以下の通り
である。なお、ホスト材料121のT1準位がゲスト材料122のT1準位より低いこと
が好ましいため、図2(C)では、この場合を図示するが、ホスト材料121のT1準位
がゲスト材料122のT1準位よりも高くてもよい。
【0147】
・Host(121):ホスト材料121
・Guest(122):ゲスト材料122(蛍光材料)
・SFH:ホスト材料121のS1準位
・TFH:ホスト材料121のT1準位
・SFG:ゲスト材料122(蛍光材料)のS1準位
・TFG:ゲスト材料122(蛍光材料)のT1準位
【0148】
図2(C)に示すように、三重項-三重項消滅(TTA:triplet-tripl
et annihilation)によって、キャリアの再結合によって生成した三重項
励起子同士が近接することにより、一方がホスト材料121のS1準位(SFH)のエネ
ルギーを有する一重項励起子に変換される反応が生じる(図2(C) TTA参照)。ホ
スト材料121の一重項励起エネルギーは、SFHから、それよりもエネルギーの低いゲ
スト材料122のS1準位(SFG)へエネルギー移動が生じ(図2(C) ルートE
参照)、ゲスト材料122の一重項励起状態が形成され、ゲスト材料122が発光する。
【0149】
なお、発光層120における三重項励起子の密度が十分に高い場合(例えば1×10
12cm-3以上)では、三重項励起子単体の失活を無視し、2つの近接した三重項励起
子による反応のみを考えることができる。
【0150】
また、ゲスト材料122においてキャリアが再結合し三重項励起状態が形成されるとき
、ゲスト材料122の三重項励起状態は熱失活するため、発光に利用することが困難とな
る。しかしながら、ホスト材料121のT1準位(TFH)がゲスト材料122のT1準
位(TFG)より低い場合、ゲスト材料122の三重項励起エネルギーは、ゲスト材料1
22のT1準位(TFG)からホスト材料121のT1準位(TFH)へエネルギー移動
する(図2(C) ルートE参照)ことが可能であり、その後TTAに利用される。
【0151】
すなわち、ホスト材料121は、三重項励起エネルギーをTTAによって一重項励起エ
ネルギーに変換する機能を有すると好ましい。そうすることで、発光層120で生成した
三重項励起エネルギーの一部を、ホスト材料121におけるTTAによって一重項励起エ
ネルギーに変換し、該一重項励起エネルギーをゲスト材料122に移動することで、蛍光
発光として取り出すことが可能となる。そのためには、ホスト材料121のS1準位(S
FH)は、ゲスト材料122のS1準位(SFG)より高いことが好ましい。また、ホス
ト材料121のT1準位(TFH)は、ゲスト材料122のT1準位(TFG)より低い
ことが好ましい。
【0152】
なお、特にゲスト材料122のT1準位(TFG)がホスト材料121のT1準位(T
FH)よりも低い場合においては、ホスト材料121とゲスト材料122との重量比は、
ゲスト材料122の重量比が低い方が好ましい。具体的には、ホスト材料121に対する
ゲスト材料122の重量比が、0より大きく0.05以下が好ましい。そうすることで、
ゲスト材料122でキャリアが再結合する確率を低減させることができる。また、ホスト
材料121のT1準位(TFH)からゲスト材料122のT1準位(TFG)へのエネル
ギー移動が生じる確率を低減させることができる。
【0153】
なお、ホスト材料121は単一の化合物で構成されていても良く、複数の化合物から構
成されていても良い。
【0154】
なお、上記各構成において、発光ユニット106および発光ユニット108に用いるゲ
スト材料(蛍光材料)としては、同じであっても異なっていてもよい。発光ユニット10
6と発光ユニット108とで同じゲスト材料を有する場合、発光素子260は少ない電流
値で高い発光輝度を呈する発光素子となり好ましい。また、発光ユニット106と発光ユ
ニット108とで異なるゲスト材料を有する場合、発光素子260は多色発光を呈する発
光素子となり好ましい。特に、演色性の高い白色発光、あるいは少なくとも赤色と緑色と
青色とを有する発光、になるようゲスト材料を選択することが好適である。
【0155】
<発光素子の構成例2>
図3(A)は、発光素子262の断面模式図である。
【0156】
図3(A)に示す発光素子262は、先に示した発光素子260と同様に、一対の電極
(電極101及び電極102)の間に、複数の発光ユニット(図3(A)においては、発
光ユニット106及び発光ユニット108)を有する。1つの発光ユニットは、図1(A
)で示すEL層100と同様な構成を有する。なお、発光ユニット106と発光ユニット
108は、同じ構成でも異なる構成でもよい。
【0157】
また、図3(A)に示す発光素子262において、発光ユニット106と発光ユニット
108とが積層されており、発光ユニット106と発光ユニット108との間には電荷発
生層115が設けられる。例えば、発光ユニット106に、図1(A)で示すEL層10
0を用いると好ましい。
【0158】
また、発光素子262は、発光層130と、発光層140と、を有する。また、発光ユ
ニット106は、発光層130の他に、正孔注入層111、正孔輸送層112、電子輸送
層113、及び電子注入層114を有する。また、発光ユニット108は、発光層140
の他に、正孔注入層116、正孔輸送層117、電子輸送層118、及び電子注入層11
9を有する。
【0159】
また、発光ユニット108の発光層が燐光材料を有すると好適である。すなわち、発光
ユニット106が有する発光層130は、実施の形態1で示した構成を有し、発光ユニッ
ト108が有する発光層140は、燐光材料を有すると好適である。この場合の発光素子
262の構成例について、以下説明を行う。
【0160】
また、発光ユニット108が有する発光層140は、図3(B)で示すように、ホスト
材料141と、ゲスト材料142とを有する。また、ホスト材料141は、有機化合物1
41_1と、有機化合物141_2と、を有する。なお、発光層140が有するゲスト材
料142が燐光材料として、以下説明する。
【0161】
≪発光層140の発光機構≫
次に、発光層140の発光機構について、以下説明を行う。
【0162】
発光層140が有する、有機化合物141_1と、有機化合物141_2とは励起錯体
を形成する。
【0163】
発光層140における励起錯体を形成する有機化合物141_1と有機化合物141_
2との組み合わせは、励起錯体を形成することが可能な組み合わせであればよいが、一方
が正孔輸送性を有する化合物であり、他方が電子輸送性を有する化合物であることが、よ
り好ましい。
【0164】
発光層140における有機化合物141_1と、有機化合物141_2と、ゲスト材料
142とのエネルギー準位の相関を図3(C)に示す。なお、図3(C)における表記及
び符号は、以下の通りである。
・Host(141_1):有機化合物141_1(ホスト材料)
・Host(141_2):有機化合物141_2(ホスト材料)
・Guest(142):ゲスト材料142(燐光材料)
・SPH:有機化合物141_1(ホスト材料)のS1準位
・TPH:有機化合物141_1(ホスト材料)のT1準位
・TPG:ゲスト材料142(燐光材料)のT1準位
・SPE:励起錯体のS1準位
・TPE:励起錯体のT1準位
【0165】
有機化合物141_1と有機化合物141_2とにより形成される、励起錯体の一重項
励起状態の最も低い準位(SPE)と励起錯体の三重項励起状態の最も低い準位(TPE
)とは互いに隣接することになる(図3(C)Route C参照)。
【0166】
そして、励起錯体の(SPE)と(TPE)の双方のエネルギーを、ゲスト材料142
(燐光材料)の三重項励起状態の最も低い準位へ移動させて発光が得られる(図3(C)
Route D参照)。
【0167】
なお、上記に示すRoute C及びRoute Dの過程を、本明細書等においてE
xTET(Exciplex-Triplet Energy Transfer)と呼
称する場合がある。
【0168】
また、有機化合物141_1及び有機化合物141_2は、一方がホールを、他方が電
子を受け取ることで励起錯体を形成する。あるいは、一方が励起状態となると、他方と相
互作用することで励起錯体を形成する。したがって、発光層140における励起子のほと
んどが励起錯体として存在する。励起錯体は、有機化合物141_1及び有機化合物14
1_2のどちらよりもバンドギャップは小さくなるため、より低い励起エネルギーで励起
状態を形成することが可能となる。そのため、励起錯体が形成されることにより、発光素
子の駆動電圧を下げることができる。
【0169】
発光層140を上述の構成とすることで、発光層140のゲスト材料142(燐光材料
)からの発光を、効率よく得ることが可能となる。
【0170】
なお、発光層130からの発光が、発光層140からの発光よりも短波長側に発光のピ
ークを有する構成とすることが好ましい。短波長の発光を呈する燐光材料を用いた発光素
子は輝度劣化が早い傾向がある。そこで、短波長の発光を蛍光発光とすることによって、
輝度劣化の小さい発光素子を提供することができる。
【0171】
また、発光層130と発光層140とで異なる発光波長の光を得ることによって、多色
発光の素子とすることができる。この場合、発光スペクトルは異なる発光ピークを有する
発光が合成された光となるため、少なくとも二つの極大値を有する発光スペクトルとなる
【0172】
また、上記の構成は白色発光を得るためにも好適である。発光層130と発光層140
との光を互いに補色の関係とすることによって、白色発光を得ることができる。
【0173】
また、発光層130及び発光層140のいずれか一方または双方に発光波長の異なる複
数の発光材料を用いることによって、三原色や、4色以上の発光色からなる演色性の高い
白色発光を得ることもできる。この場合、発光層130及び発光層140のいずれか一方
または双方を層状にさらに分割し、当該分割した層ごとに異なる発光材料を含有させるよ
うにしても良い。
【0174】
<発光層に用いることができる材料の例>
次に、発光層120、発光層130及び発光層140に用いることのできる材料につい
て、以下説明する。
【0175】
≪発光層130に用いることのできる材料≫
発光層130に用いることのできる材料としては、先の実施の形態1に示す発光層13
0に用いることのできる材料を援用すればよい。そうすることで、一重項励起状態の生成
効率が高く、発光効率の高い発光素子を作製することができる。
【0176】
≪発光層120に用いることのできる材料≫
発光層120中では、ホスト材料121が重量比で最も多く存在し、ゲスト材料122
(蛍光材料)は、ホスト材料121中に分散される。ホスト材料121のS1準位は、ゲ
スト材料122(蛍光材料)のS1準位よりも高く、ホスト材料121のT1準位は、ゲ
スト材料122(蛍光材料)のT1準位よりも低いことが好ましい。
【0177】
発光層120において、ゲスト材料122としては、特に限定はないが、例えば実施の
形態1で示したゲスト材料132として例示した材料を用いることができる。
【0178】
また、発光層120において、ホスト材料121に用いることが可能な材料としては、
特に限定はないが、例えば、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)(略称
:Alq)、トリス(4-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:
Almq)、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(
略称:BeBq)、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト
)アルミニウム(III)(略称:BAlq)、ビス(8-キノリノラト)亜鉛(II)
(略称:Znq)、ビス[2-(2-ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(
略称:ZnPBO)、ビス[2-(2-ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(
略称:ZnBTZ)などの金属錯体、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-
ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3-ビス[5
-(p-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベン
ゼン(略称:OXD-7)、3-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-5-(4-te
rt-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール(略称:TAZ)、2,2’,2’
’-(1,3,5-ベンゼントリイル)トリス(1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾー
ル)(略称:TPBI)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイ
ン(略称:BCP)、2,9-ビス(ナフタレン-2-イル)-4,7-ジフェニル-1
,10-フェナントロリン(略称:NBPhen)、9-[4-(5-フェニル-1,3
,4-オキサジアゾール-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CO11
)などの複素環化合物、4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]
ビフェニル(略称:NPBまたはα-NPD)、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)
-N,N’-ジフェニル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(略称:TP
D)、4,4’-ビス[N-(スピロ-9,9’-ビフルオレン-2-イル)-N―フェ
ニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)などの芳香族アミン化合物が挙げられる。ま
た、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、ピレン誘導体、クリセン誘導体、ジベ
ンゾ[g,p]クリセン誘導体等の縮合多環芳香族化合物が挙げられ、具体的には、9,
10-ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、N,N-ジフェニル-9-[4
-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(
略称:CzA1PA)、4-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン(
略称:DPhPA)、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(10-フェニル
-9-アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、N,9-ジフェニル-N
-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-ア
ミン(略称:PCAPA)、N,9-ジフェニル-N-{4-[4-(10-フェニル-
9-アントリル)フェニル]フェニル}-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PC
APBA)、N,9-ジフェニル-N-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)-9
H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCAPA)、6,12-ジメトキシ-5,1
1-ジフェニルクリセン、N,N,N’,N’,N’’,N’’,N’’’,N’’’-
オクタフェニルジベンゾ[g,p]クリセン-2,7,10,15-テトラアミン(略称
:DBC1)、9-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カル
バゾール(略称:CzPA)、3,6-ジフェニル-9-[4-(10-フェニル-9-
アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:DPCzPA)、9,10-ビス
(3,5-ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、9,10-ジ(2-
ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、2-tert-ブチル-9,10-ジ(2-
ナフチル)アントラセン(略称:t-BuDNA)、9,9’-ビアントリル(略称:B
ANT)、9,9’-(スチルベン-3,3’-ジイル)ジフェナントレン(略称:DP
NS)、9,9’-(スチルベン-4,4’-ジイル)ジフェナントレン(略称:DPN
S2)、1,3,5-トリ(1-ピレニル)ベンゼン(略称:TPB3)などを挙げるこ
とができる。また、これら及び公知の物質の中から、上記ゲスト材料122のエネルギー
ギャップより大きなエネルギーギャップを有する物質を、一種もしくは複数種選択して用
いればよい。
【0179】
なお、発光層120は2層以上の複数層でもって構成することもできる。例えば、第1
の発光層と第2の発光層を正孔輸送層側から順に積層して発光層120とする場合、第1
の発光層のホスト材料として正孔輸送性を有する物質を用い、第2の発光層のホスト材料
として電子輸送性を有する物質を用いる構成などがある。
【0180】
また、発光層120において、ホスト材料121は、一種の化合物から構成されていて
も良く、複数の化合物から構成されていても良い。あるいは、発光層120において、ホ
スト材料121およびゲスト材料122以外の材料を有していても良い。
【0181】
≪発光層140に用いることのできる材料≫
発光層140中では、ホスト材料141が重量比で最も多く存在し、ゲスト材料142
(燐光材料)は、ホスト材料141中に分散される。発光層140のホスト材料141(
有機化合物141_1及び有機化合物141_2)のT1準位は、発光層140のゲスト
材料(ゲスト材料142)のT1準位よりも高いことが好ましい。
【0182】
有機化合物141_1としては、亜鉛やアルミニウム系金属錯体の他、オキサジアゾー
ル誘導体、トリアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、キノキサリン誘導体、ジベ
ンゾキノキサリン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ピリミジ
ン誘導体、トリアジン誘導体、ピリジン誘導体、ビピリジン誘導体、フェナントロリン誘
導体などが挙げられる。他の例としては、芳香族アミンやカルバゾール誘導体などが挙げ
られる。具体的には、実施の形態1で示した電子輸送性材料および正孔輸送性材料を用い
ることができる。
【0183】
有機化合物141_2としては、有機化合物141_1と励起錯体を形成できる組み合
わせが好ましい。具体的には、実施の形態1で示した電子輸送性材料および正孔輸送性材
料を用いることができる。この場合、有機化合物141_1と有機化合物141_2とで
形成される励起錯体の発光ピークが、ゲスト材料142(燐光材料)の三重項MLCT(
Metal to Ligand Charge Transfer)遷移の吸収帯、よ
り具体的には、最も長波長側の吸収帯と重なるように、有機化合物141_1、有機化合
物141_2、およびゲスト材料142(燐光材料)を選択することが好ましい。これに
より、発光効率が飛躍的に向上した発光素子とすることができる。ただし、燐光材料に替
えて熱活性化遅延蛍光材料を用いる場合においては、最も長波長側の吸収帯は一重項の吸
収帯であることが好ましい。
【0184】
ゲスト材料142(燐光材料)としては、イリジウム、ロジウム、または白金系の有機
金属錯体、あるいは金属錯体が挙げられ、中でも有機イリジウム錯体、例えばイリジウム
系オルトメタル錯体が好ましい。オルトメタル化する配位子としては4H-トリアゾール
配位子、1H-トリアゾール配位子、イミダゾール配位子、ピリジン配位子、ピリミジン
配位子、ピラジン配位子、あるいはイソキノリン配位子などが挙げられる。金属錯体とし
ては、ポルフィリン配位子を有する白金錯体などが挙げられる。
【0185】
青色または緑色に発光ピークを有する物質としては、例えば、トリス{2-[5-(2
-メチルフェニル)-4-(2,6-ジメチルフェニル)-4H-1,2,4-トリアゾ
ール-3-イル-κN2]フェニル-κC}イリジウム(III)(略称:Ir(mpp
tz-dmp))、トリス(5-メチル-3,4-ジフェニル-4H-1,2,4-ト
リアゾラト)イリジウム(III)(略称:Ir(Mptz))、トリス[4-(3-
ビフェニル)-5-イソプロピル-3-フェニル-4H-1,2,4-トリアゾラト]イ
リジウム(III)(略称:Ir(iPrptz-3b))、トリス[3-(5-ビフ
ェニル)-5-イソプロピル-4-フェニル-4H-1,2,4-トリアゾラト]イリジ
ウム(III)(略称:Ir(iPr5btz))のような4H-トリアゾール骨格を
有する有機金属イリジウム錯体や、トリス[3-メチル-1-(2-メチルフェニル)-
5-フェニル-1H-1,2,4-トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:Ir(
Mptz1-mp))、トリス(1-メチル-5-フェニル-3-プロピル-1H-1
,2,4-トリアゾラト)イリジウム(III)(略称:Ir(Prptz1-Me)
)のような1H-トリアゾール骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、fac-トリス
[1-(2,6-ジイソプロピルフェニル)-2-フェニル-1H-イミダゾール]イリ
ジウム(III)(略称:Ir(iPrpmi))、トリス[3-(2,6-ジメチル
フェニル)-7-メチルイミダゾ[1,2-f]フェナントリジナト]イリジウム(II
I)(略称:Ir(dmpimpt-Me))のようなイミダゾール骨格を有する有機
金属イリジウム錯体や、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N
,C2’]イリジウム(III)テトラキス(1-ピラゾリル)ボラート(略称:FIr
6)、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジ
ウム(III)ピコリナート(略称:FIrpic)、ビス{2-[3’,5’-ビス(
トリフルオロメチル)フェニル]ピリジナト-N,C2’}イリジウム(III)ピコリ
ナート(略称:Ir(CFppy)(pic))、ビス[2-(4’,6’-ジフル
オロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(
略称:FIr(acac))のような電子吸引基を有するフェニルピリジン誘導体を配位
子とする有機金属イリジウム錯体が挙げられる。上述した中でも、4H-トリアゾール骨
格を有する有機金属イリジウム錯体は、信頼性や発光効率に優れるため、特に好ましい。
【0186】
また、緑色または黄色に発光ピークを有する物質としては、例えば、トリス(4-メチ
ル-6-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(mppm))、
トリス(4-t-ブチル-6-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:I
r(tBuppm))、(アセチルアセトナト)ビス(6-メチル-4-フェニルピリ
ミジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(mppm)(acac))、(アセチ
ルアセトナト)ビス(6-tert-ブチル-4-フェニルピリミジナト)イリジウム(
III)(略称:Ir(tBuppm)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス
[4-(2-ノルボルニル)-6-フェニルピリミジナト]イリジウム(III)(略称
:Ir(nbppm)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス[5-メチル-6
-(2-メチルフェニル)-4-フェニルピリミジナト]イリジウム(III)(略称:
Ir(mpmppm)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス{4,6-ジメチ
ル-2-[6-(2,6-ジメチルフェニル)-4-ピリミジニル-κN3]フェニル-
κC}イリジウム(III)(略称:Ir(dmppm-dmp)(acac))、(
アセチルアセトナト)ビス(4,6-ジフェニルピリミジナト)イリジウム(III)(
略称:Ir(dppm)(acac))のようなピリミジン骨格を有する有機金属イリ
ジウム錯体や、(アセチルアセトナト)ビス(3,5-ジメチル-2-フェニルピラジナ
ト)イリジウム(III)(略称:Ir(mppr-Me)(acac))、(アセチ
ルアセトナト)ビス(5-イソプロピル-3-メチル-2-フェニルピラジナト)イリジ
ウム(III)(略称:Ir(mppr-iPr)(acac))のようなピラジン骨
格を有する有機金属イリジウム錯体や、トリス(2-フェニルピリジナト-N,C2’
イリジウム(III)(略称:Ir(ppy))、ビス(2-フェニルピリジナト-N
,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(ppy)(ac
ac))、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート
(略称:Ir(bzq)(acac))、トリス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウ
ム(III)(略称:Ir(bzq))、トリス(2-フェニルキノリナト-N,C
)イリジウム(III)(略称:Ir(pq))、ビス(2-フェニルキノリナト-
N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(pq)(ac
ac))のようなピリジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、ビス(2,4-ジフ
ェニル-1,3-オキサゾラト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナー
ト(略称:Ir(dpo)(acac))、ビス{2-[4’-(パーフルオロフェニ
ル)フェニル]ピリジナト-N,C2’}イリジウム(III)アセチルアセトナート(
略称:Ir(p-PF-ph)(acac))、ビス(2-フェニルベンゾチアゾラト
-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bt)(a
cac))など有機金属イリジウム錯体の他、トリス(アセチルアセトナト)(モノフェ
ナントロリン)テルビウム(III)(略称:Tb(acac)(Phen))のよう
な希土類金属錯体が挙げられる。上述した中でも、ピリミジン骨格を有する有機金属イリ
ジウム錯体は、信頼性や発光効率に際だって優れるため、特に好ましい。
【0187】
また、黄色または赤色に発光ピークを有する物質としては、例えば、(ジイソブチリル
メタナト)ビス[4,6-ビス(3-メチルフェニル)ピリミジナト]イリジウム(II
I)(略称:Ir(5mdppm)(dibm))、ビス[4,6-ビス(3-メチル
フェニル)ピリミジナト](ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:Ir
(5mdppm)(dpm))、ビス[4,6-ジ(ナフタレン-1-イル)ピリミジ
ナト](ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:Ir(d1npm)
dpm))のようなピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、(アセチルアセ
トナト)ビス(2,3,5-トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:I
r(tppr)(acac))、ビス(2,3,5-トリフェニルピラジナト)(ジピ
バロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tppr)(dpm))、(
アセチルアセトナト)ビス[2,3-ビス(4-フルオロフェニル)キノキサリナト]イ
リジウム(III)(略称:[Ir(Fdpq)(acac)])のようなピラジン骨
格を有する有機金属イリジウム錯体や、トリス(1-フェニルイソキノリナト-N,C
)イリジウム(III)(略称:Ir(piq))、ビス(1-フェニルイソキノリ
ナト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(piq)
(acac))のようなピリジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体の他、2,3,
7,8,12,13,17,18-オクタエチル-21H,23H-ポルフィリン白金(
II)(略称:PtOEP)のような白金錯体や、トリス(1,3-ジフェニル-1,3
-プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(
DBM)(Phen))、トリス[1-(2-テノイル)-3,3,3-トリフルオロ
アセトナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(TTA)
(Phen))のような希土類金属錯体が挙げられる。上述した中でも、ピリミジン骨
格を有する有機金属イリジウム錯体は、信頼性や発光効率に際だって優れるため、特に好
ましい。また、ピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体は、色度の良い赤色発光が
得られる。
【0188】
発光層140に含まれる発光材料としては、三重項励起エネルギーを発光に変換できる
材料であればよい。該三重項励起エネルギーを発光に変換できる材料としては、燐光材料
の他に、熱活性化遅延蛍光(Thermally activated delayed
fluorescence:TADF)材料が挙げられる。したがって、燐光材料と記
載した部分に関しては、熱活性化遅延蛍光材料と読み替えても構わない。なお、熱活性化
遅延蛍光材料とは、三重項励起エネルギー準位と一重項励起エネルギー準位との差が小さ
く、逆項間交差によって三重項励起状態から一重項励起状態へエネルギーを変換する機能
を有する材料である。そのため、三重項励起状態をわずかな熱エネルギーによって一重項
励起状態にアップコンバート(逆項間交差)が可能で、一重項励起状態からの発光(蛍光
)を効率よく呈することができる。また、熱活性化遅延蛍光が効率良く得られる条件とし
ては、三重項励起エネルギー準位と一重項励起エネルギー準位のエネルギー差が好ましく
は0eVより大きく0.2eV以下、さらに好ましくは0eVより大きく0.1eV以下
であることが挙げられる。
【0189】
また、熱活性化遅延蛍光を示す材料は、単独で三重項励起状態から逆項間交差により一
重項励起状態を生成できる材料であっても良いし、励起錯体(エキサイプレックス、また
はExciplexともいう)を形成する複数の材料から構成されても良い。
【0190】
熱活性化遅延蛍光材料が、一種類の材料から構成される場合、具体的には、実施の形態
1で示した熱活性化遅延蛍光材料を用いることができる。
【0191】
また、熱活性化遅延蛍光材料をホスト材料として用いる場合、励起錯体を形成する2種
類の化合物を組み合わせて用いることが好ましい。この場合、上記に示した励起錯体を形
成する組み合わせである電子を受け取りやすい化合物と、正孔を受け取りやすい化合物と
を用いることが特に好ましい。
【0192】
また、発光層120、発光層130、及び発光層140に含まれる発光材料の発光色に
限定は無く、それぞれ同じでも異なっていても良い。各々から得られる発光が混合されて
素子外へ取り出されるので、例えば両者の発光色が互いに補色の関係にある場合、発光素
子は白色の光を与えることができる。発光素子の信頼性を考慮すると、発光層120に含
まれる発光材料の発光ピーク波長は発光層140に含まれる発光材料のそれよりも短いこ
とが好ましい。
【0193】
なお、発光ユニット106、発光ユニット108、及び電荷発生層115は、蒸着法(
真空蒸着法を含む)、インクジェット法、塗布法、グラビア印刷等の方法で形成すること
ができる。
【0194】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用
いることができる。
【0195】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1及び実施の形態2に示す構成と異なる構成の発光素子
の例について、図4乃至図7を用いて以下に説明する。
【0196】
<発光素子の構成例1>
図4(A)(B)は、本発明の一態様の発光素子を示す断面図である。なお、図4(A
)(B)において、図1(A)に示す符号と同様の機能を有する箇所には、同様のハッチ
パターンとし、符号を省略する場合がある。また、同様の機能を有する箇所には、同様の
符号を付し、その詳細な説明は省略する場合がある。
【0197】
図4(A)(B)に示す発光素子270a及び発光素子270bは、基板200側に光
を取り出す下面射出(ボトムエミッション)型の発光素子であってもよく、基板200と
反対方向に光を取り出す上面射出(トップエミッション)型の発光素子であってもよい。
なお、本発明の一態様はこれに限定されず、発光素子が呈する光を基板200の上方およ
び下方の双方に取り出す両面射出(デュアルエミッション)型の発光素子であっても良い
【0198】
発光素子270a及び発光素子270bが、ボトムエミッション型である場合、電極1
01は、光を透過する機能を有することが好ましい。また、電極102は、光を反射する
機能を有することが好ましい。あるいは、発光素子270a及び発光素子270bが、ト
ップエミッション型である場合、電極101は、光を反射する機能を有することが好まし
い。また、電極102は、光を透過する機能を有することが好ましい。
【0199】
発光素子270a及び発光素子270bは、基板200上に電極101と、電極102
とを有する。また、電極101と電極102との間に、発光層123Bと、発光層123
Gと、発光層123Rと、を有する。また、正孔注入層111と、正孔輸送層112と、
電子輸送層118と、電子注入層119と、を有する。
【0200】
また、発光素子270bは、電極101の構成の一部として、導電層101aと、導電
層101a上の導電層101bと、導電層101a下の導電層101cとを有する。すな
わち、発光素子270bは、導電層101aが、導電層101bと、導電層101cとで
挟持された電極101の構成を有する。
【0201】
発光素子270bにおいて、導電層101bと、導電層101cとは、異なる材料で形
成されてもよく、同じ材料で形成されても良い。電極101が、同じ導電性材料で挟持さ
れる構成を有する場合、エッチング工程によるパターン形成が容易になるため好ましい。
【0202】
なお、発光素子270bにおいて、導電層101bまたは導電層101cにおいて、い
ずれか一方のみを有する構成としてもよい。
【0203】
なお、電極101が有する導電層101a、101b、導電層101cは、それぞれ実
施の形態1で示した電極101または電極102と同様の構成および材料を用いることが
できる。
【0204】
図4(A)(B)においては、電極101と電極102とで挟持された領域221B、
領域221G、及び領域221R、の間に隔壁145を有する。隔壁145は、絶縁性を
有する。隔壁145は、電極101の端部を覆い、該電極と重畳する開口部を有する。隔
壁145を設けることによって、各領域の基板200上の電極101を、それぞれ島状に
分離することが可能となる。
【0205】
なお、発光層123Bと、発光層123Gとは、隔壁145と重畳する領域において、
互いに重なる領域を有していてもよい。また、発光層123Gと、発光層123Rとは、
隔壁145と重畳する領域において、互いに重なる領域を有していてもよい。また、発光
層123Rと、発光層123Bとは、隔壁145と重畳する領域において、互いに重なる
領域を有していてもよい。
【0206】
隔壁145としては、絶縁性であればよく、無機材料または有機材料を用いて形成され
る。該無機材料としては、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シ
リコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム等が挙げられる。該有機材料としては、例
えば、アクリル樹脂、またはポリイミド樹脂等の感光性の樹脂材料が挙げられる。
【0207】
また、発光層123R、発光層123G、発光層123Bは、それぞれ異なる色を呈す
る機能を有する発光材料を有することが好ましい。例えば、発光層123Rが赤色を呈す
る機能を有する発光材料を有することで、領域221Rは赤色の発光を呈し、発光層12
3Gが緑色を呈する機能を有する発光材料を有することで、領域221Gは緑色の発光を
呈し、発光層123Bが青色を呈する機能を有する発光材料を有することで、領域221
Bは青色の発光を呈する。このような構成を有する発光素子270aまたは発光素子27
0bを、表示装置の画素に用いることで、フルカラー表示が可能な表示装置を作製するこ
とができる。また、それぞれの発光層の膜厚は、同じであっても良いし、異なっていても
良い。
【0208】
また、発光層123B、発光層123G、発光層123R、のいずれか一つまたは複数
の発光層は、実施の形態1で示した発光層130を有することが好ましい。そうすること
で、発光効率の良好な発光素子を作製することができる。
【0209】
なお、発光層123B、発光層123G、発光層123R、のいずれか一つまたは複数
の発光層は、2層以上が積層された構成としても良い。
【0210】
以上のように、少なくとも一つの発光層が実施の形態1で示した発光層を有し、該発光
層を有する発光素子270aまたは発光素子270bを、表示装置の画素に用いることで
、発光効率の高い表示装置を作製することができる。すなわち、発光素子270aまたは
発光素子270bを有する表示装置は、消費電力を低減することができる。
【0211】
なお、光を取り出す電極上に、カラーフィルタを設けることで、発光素子270a及び
発光素子270bの色純度を向上させることができる。そのため、発光素子270aまた
は発光素子270bを有する表示装置の色純度を高めることができる。
【0212】
また、光を取り出す電極上に、偏光板を設けることで、発光素子270a及び発光素子
270bの外光反射を低減することができる。そのため、発光素子270aまたは発光素
子270bを有する表示装置のコントラスト比を高めることができる。
【0213】
なお、発光素子270a及び発光素子270bにおける他の構成については、実施の形
態1における発光素子の構成を参酌すればよい。
【0214】
<発光素子の構成例2>
次に、図4に示す発光素子と異なる構成例について、図5(A)(B)を用いて、以下
説明を行う。
【0215】
図5(A)(B)は、本発明の一態様の発光素子を示す断面図である。なお、図5(A
)(B)において、図4に示す符号と同様の機能を有する箇所には、同様のハッチパター
ンとし、符号を省略する場合がある。また、同様の機能を有する箇所には、同様の符号を
付し、その詳細な説明は省略する場合がある。
【0216】
図5(A)(B)は、一対の電極間に、発光層を有する発光素子の構成例である。図5
(A)に示す発光素子272aは、基板200と反対の方向に光を取り出す上面射出(ト
ップエミッション)型の発光素子、図5(B)に示す発光素子272bは、基板200側
に光を取り出す下面射出(ボトムエミッション)型の発光素子である。ただし、本発明の
一態様はこれに限定されず、発光素子が呈する光を発光素子が形成される基板200の上
方および下方の双方に取り出す両面射出(デュアルエミッション)型であっても良い。
【0217】
発光素子272a及び発光素子272bは、基板200上に電極101と、電極102
と、電極103と、電極104とを有する。また、電極101と電極102との間、及び
電極102と電極103との間、及び電極102と電極104との間に、少なくとも発光
層130と、電荷発生層115とを有する。また、正孔注入層111と、正孔輸送層11
2と、発光層150と、電子輸送層113と、電子注入層114と、正孔注入層116と
、正孔輸送層117と、電子輸送層118と、電子注入層119と、を有する。
【0218】
また、電極101は、導電層101aと、導電層101a上に接する導電層101bと
、を有する。また、電極103は、導電層103aと、導電層103a上に接する導電層
103bと、を有する。電極104は、導電層104aと、導電層104a上に接する導
電層104bと、を有する。
【0219】
図5(A)に示す発光素子272a、及び図5(B)に示す発光素子272bは、電極
101と電極102とで挟持された領域222B、電極102と電極103とで挟持され
た領域222G、及び電極102と電極104とで挟持された領域222R、の間に、隔
壁145を有する。隔壁145は、絶縁性を有する。隔壁145は、電極101、電極1
03、及び電極104の端部を覆い、該電極と重畳する開口部を有する。隔壁145を設
けることによって、各領域の基板200上の該電極を、それぞれ島状に分離することが可
能となる。
【0220】
また、発光素子272a及び発光素子272bは、領域222B、領域222G、及び
領域222Rから呈される光が取り出される方向に、それぞれ光学素子224B、光学素
子224G、及び光学素子224Rを有する基板220を有する。各領域から呈される光
は、各光学素子を介して発光素子外部に射出される。すなわち、領域222Bから呈され
る光は、光学素子224Bを介して射出され、領域222Gから呈される光は、光学素子
224Gを介して射出され、領域222Rから呈される光は、光学素子224Rを介して
射出される。
【0221】
また、光学素子224B、光学素子224G、及び光学素子224Rは、入射される光
から特定の色を呈する光を選択的に透過する機能を有する。例えば、光学素子224Bを
介して射出される領域222Bから呈される光は、青色を呈する光となり、光学素子22
4Gを介して射出される領域222Gから呈される光は、緑色を呈する光となり、光学素
子224Rを介して射出される領域222Rから呈される光は、赤色を呈する光となる。
【0222】
光学素子224R、光学素子224G、及び光学素子224Bには、例えば、着色層(
カラーフィルタともいう)、バンドパスフィルタ、多層膜フィルタなどを適用できる。ま
た、光学素子に色変換素子を適用することができる。色変換素子は、入射される光を、当
該光の波長より長い波長の光に変換する光学素子である。色変換素子として、量子ドット
を用いる素子であると好適である。量子ドットを用いることにより、表示装置の色再現性
を高めることができる。
【0223】
なお、光学素子224R、光学素子224G、及び光学素子224B上に複数の光学素
子を重ねて設けてもよい。他の光学素子としては、例えば円偏光板や反射防止膜などを設
けることができる。円偏光板を、表示装置の発光素子が発する光が取り出される側に設け
ると、表示装置の外部から入射した光が、表示装置の内部で反射されて、外部に射出され
る現象を防ぐことができる。また、反射防止膜を設けると、表示装置の表面で反射される
外光を弱めることができる。これにより、表示装置が発する発光を、鮮明に観察できる。
【0224】
なお、図5(A)(B)において、各光学素子を介して各領域から射出される光を、青
色(B)を呈する光、緑色(G)を呈する光、赤色(R)を呈する光、として、それぞれ
破線の矢印で模式的に図示している。
【0225】
また、各光学素子の間には、遮光層223を有する。遮光層223は、隣接する領域か
ら発せられる光を遮光する機能を有する。なお、遮光層223を設けない構成としても良
い。
【0226】
遮光層223としては、外光の反射を抑制する機能を有する。または、遮光層223と
しては、隣接する発光素子から発せられる光の混色を防ぐ機能を有する。遮光層223と
しては、金属、黒色顔料を含んだ樹脂、カーボンブラック、金属酸化物、複数の金属酸化
物の固溶体を含む複合酸化物等を用いることができる。
【0227】
なお、基板200、及び光学素子を有する基板220としては、実施の形態1を参酌す
ればよい。
【0228】
さらに、発光素子272a及び発光素子272bは、マイクロキャビティ構造を有する
【0229】
発光層130、及び発光層150から射出される光は、一対の電極(例えば、電極10
1と電極102)の間で共振される。また、発光層130及び発光層150は、射出され
る光のうち所望の波長の光が強まる位置に形成される。例えば、電極101の反射領域か
ら発光層130の発光領域までの光学距離と、電極102の反射領域から発光層130の
発光領域までの光学距離と、を調整することにより、発光層130から射出される光のう
ち所望の波長の光を強めることができる。また、電極101の反射領域から発光層150
の発光領域までの光学距離と、電極102の反射領域から発光層150の発光領域までの
光学距離と、を調整することにより、発光層150から射出される光のうち所望の波長の
光を強めることができる。すなわち、複数の発光層(ここでは、発光層130及び発光層
150)を積層する発光素子の場合、発光層130及び発光層150のそれぞれの光学距
離を最適化することが好ましい。
【0230】
また、発光素子272a及び発光素子272bにおいては、各領域で導電層(導電層1
01b、導電層103b、及び導電層104b)の厚さを調整することで、発光層130
及び発光層150から呈される光のうち所望の波長の光を強めることができる。なお、各
領域で正孔注入層111及び正孔輸送層112のうち、少なくとも一つの厚さを異ならせ
ることで、発光層130及び発光層150から呈される光を強めても良い。
【0231】
例えば、電極101乃至電極104において、光を反射する機能を有する導電性材料の
屈折率が、発光層130または発光層150の屈折率よりも小さい場合においては、電極
101が有する導電層101bの膜厚を、電極101と電極102との間の光学距離がm
λ/2(mは自然数、λは領域222Bで強める光の波長を、それぞれ表す)と
なるよう調整する。同様に、電極103が有する導電層103bの膜厚を、電極103と
電極102との間の光学距離がmλ/2(mは自然数、λは領域222Gで強め
る光の波長を、それぞれ表す)となるよう調整する。さらに、電極104が有する導電層
104bの膜厚を、電極104と電極102との間の光学距離がmλ/2(mは自
然数、λは領域222Rで強める光の波長を、それぞれ表す)となるよう調整する。
【0232】
上記のように、マイクロキャビティ構造を設け、各領域の一対の電極間の光学距離を調
整することで、各電極近傍における光の散乱および光の吸収を抑制し、高い光取り出し効
率を実現することができる。なお、上記構成においては、導電層101b、導電層103
b、導電層104bは、光を透過する機能を有することが好ましい。また、導電層101
b、導電層103b、導電層104b、を構成する材料は、互いに同じであっても良いし
、異なっていても良い。また、導電層101b、導電層103b、導電層104bは、そ
れぞれ2層以上の層が積層された構成であっても良い。
【0233】
なお、図5(A)に示す発光素子272aは、上面射出型の発光素子であるため、導電
層101a、導電層103a、及び導電層104aは、光を反射する機能を有することが
好ましい。また、電極102は、光を透過する機能と、光を反射する機能とを有すること
が好ましい。
【0234】
また、図5(B)に示す発光素子272bは、下面射出型の発光素子であるため、導電
層101a、導電層103a、導電層104aは、光を透過する機能と、光を反射する機
能と、を有することが好ましい。また、電極102は、光を反射する機能を有することが
好ましい。
【0235】
また、発光素子272a及び発光素子272bにおいて、導電層101a、導電層10
3a、または導電層104a、に同じ材料を用いても良いし、異なる材料を用いても良い
。導電層101a、導電層103a、導電層104a、に同じ材料を用いる場合、発光素
子272a及び発光素子272bの製造コストを低減できる。なお、導電層101a、導
電層103a、導電層104aは、それぞれ2層以上の層が積層された構成であっても良
い。
【0236】
また、発光素子272a及び発光素子272bにおける発光層130は、実施の形態1
で示した構成を有することが好ましい。そうすることで、高い発光効率を示す発光素子を
作製することができる。
【0237】
また、発光層130及び発光層150は、例えば発光層150a及び発光層150bの
ように、一方または双方で2層が積層された構成としてもよい。2層の発光層に、第1の
発光材料及び第2の発光材料という、異なる色を呈する機能を有する2種類の発光材料を
それぞれ用いることで、複数の色を含む発光を得ることができる。特に発光層130と、
発光層150と、が呈する発光により、白色となるよう、各発光層に用いる発光材料を選
択すると好ましい。
【0238】
また、発光層130または発光層150は、一方または双方で3層以上が積層された構
成としても良く、発光材料を有さない層が含まれていても良い。
【0239】
以上のように、実施の形態1で示した発光層の構成を有する発光素子272aまたは発
光素子272bを、表示装置の画素に用いることで、発光効率の高い表示装置を作製する
ことができる。すなわち、発光素子272aまたは発光素子272bを有する表示装置は
、消費電力を低減することができる。
【0240】
なお、発光素子272a及び発光素子272bにおける他の構成については、発光素子
270aまたは発光素子270b、あるいは実施の形態1及び実施の形態2で示した発光
素子の構成を参酌すればよい。
【0241】
<発光素子の作製方法>
次に、本発明の一態様の発光素子の作製方法について、図6及び図7を用いて以下説明
を行う。なお、ここでは、図5(A)に示す発光素子272aの作製方法について説明す
る。
【0242】
図6及び図7は、本発明の一態様の発光素子の作製方法を説明するための断面図である
【0243】
以下で説明する発光素子272aの作製方法は、第1乃至第7の7つのステップを有す
る。
【0244】
≪第1のステップ≫
第1のステップは、発光素子の電極(具体的には、電極101を構成する導電層101
a、電極103を構成する導電層103a、及び電極104を構成する導電層104a)
を、基板200上に形成する工程である(図6(A)参照)。
【0245】
本実施の形態においては、基板200上に、光を反射する機能を有する導電層を形成し
、該導電層を所望の形状に加工することで、導電層101a、導電層103a、及び導電
層104aを形成する。上記光を反射する機能を有する導電層としては、銀とパラジウム
と銅の合金膜(Ag-Pd-Cu膜、APCともいう)を用いる。このように、導電層1
01a、導電層103a、及び導電層104aを、同一の導電層を加工する工程を経て形
成することで、製造コストを安くすることができるため好適である。
【0246】
なお、第1のステップの前に、基板200上に複数のトランジスタを形成してもよい。
また、上記複数のトランジスタと、導電層101a、導電層103a、及び導電層104
aとを、それぞれ電気的に接続させてもよい。
【0247】
≪第2のステップ≫
第2のステップは、電極101を構成する導電層101a上に光を透過する機能を有す
る導電層101bを、電極103を構成する導電層103a上に光を透過する機能を有す
る導電層103bを、電極104を構成する導電層104a上に光を透過する機能を有す
る導電層104bを、形成する工程である(図6(B)参照)。
【0248】
本実施の形態においては、光を反射する機能を有する導電層101a、103a、及び
104a、の上にそれぞれ、光を透過する機能を有する導電層101b、103b、及び
104bを形成することで、電極101、電極103、及び電極104を形成する。上記
の導電層101b、103b、及び104bとしては、ITSO膜を用いる。
【0249】
なお、光を透過する機能を有する導電層101b、103b、及び104bは、複数回
に分けて形成してもよい。複数回に分けて形成することで、各領域で適したマイクロキャ
ビティ構造となる膜厚で、導電層101b、103b、及び104bを形成することがで
きる。
【0250】
≪第3のステップ≫
第3のステップは、発光素子の各電極の端部を覆う隔壁145を形成する工程である(
図6(C)参照)。
【0251】
隔壁145は、電極と重なるように開口部を有する。該開口部によって露出する導電膜
が発光素子の陽極として機能する。本実施の形態では、隔壁145として、ポリイミド樹
脂を用いる。
【0252】
なお、第1乃至第3のステップにおいては、EL層(有機化合物を含む層)を損傷する
おそれがないため、さまざまな成膜方法及び微細加工技術を適用できる。本実施の形態で
は、スパッタリング法を用いて反射性の導電層を成膜し、リソグラフィ法を用いて、該導
電層をパターン形成し、その後ドライエッチング法またはウエットエッチング法を用いて
、該導電層を島状に加工することで、電極101を構成する導電層101a、電極103
を構成する導電層103a、及び電極104を構成する導電層104a、を形成する。そ
の後、スパッタリング法を用いて透明性を有する導電膜を成膜し、リソグラフィ法を用い
て、該透明性を有する導電膜にパターンを形成し、その後ウエットエッチング法を用いて
、該透明性を有する導電膜を島状に加工して、電極101、電極103、及び電極104
を形成する。
【0253】
≪第4のステップ≫
第4のステップは、正孔注入層111、正孔輸送層112、発光層150、電子輸送層
113、電子注入層114、及び電荷発生層115を形成する工程である(図7(A)参
照)。
【0254】
正孔注入層111としては、正孔輸送性材料とアクセプター性物質を含む材料とを共蒸
着することで形成することができる。なお、共蒸着とは、異なる複数の物質をそれぞれ異
なる蒸発源から同時に蒸発させる蒸着法である。また、正孔輸送層112としては、正孔
輸送性材料を蒸着することで形成することができる。
【0255】
発光層150としては、緑色、黄緑色、黄色、橙色、または赤色の中から選ばれる少な
くともいずれか一つの発光を呈するゲスト材料を蒸着することで形成することができる。
ゲスト材料としては、蛍光または燐光を呈する発光性の有機化合物を用いることができる
。また、実施の形態1及び実施の形態2で示した発光層の構成を用いることが好ましい。
また、発光層150として、2層の構成としてもよい。その場合、2層の発光層は、それ
ぞれ互いに異なる発光色を呈する発光性の物質を有することが好ましい。
【0256】
電子輸送層113としては、電子輸送性の高い物質を蒸着することで形成することがで
きる。また、電子注入層114としては、電子注入性の高い物質を蒸着することで形成す
ることができる。
【0257】
電荷発生層115としては、正孔輸送性材料に電子受容体(アクセプター)が添加され
た材料、または電子輸送性材料に電子供与体(ドナー)が添加された材料を蒸着すること
で形成することができる。
【0258】
≪第5のステップ≫
第5のステップは、正孔注入層116、正孔輸送層117、発光層130、電子輸送層
118、電子注入層119、及び電極102を形成する工程である(図7(B)参照)。
【0259】
正孔注入層116としては、先に示す正孔注入層111と同様の材料及び同様の方法に
より形成することができる。また、正孔輸送層117としては、先に示す正孔輸送層11
2と同様の材料及び同様の方法により形成することができる。
【0260】
発光層130としては、紫色、青色、または青緑色の中から選ばれる少なくともいずれ
か一つの発光を呈するゲスト材料を蒸着することで形成することができる。ゲスト材料と
しては、蛍光性の有機化合物を用いることができる。また、該蛍光性の有機化合物は、単
独で蒸着してもよいが、他の材料と混合して蒸着してもよい。また、蛍光性の有機化合物
をゲスト材料とし、ゲスト材料より励起エネルギーが大きなホスト材料に該ゲスト材料を
分散して蒸着してもよい。
【0261】
電子輸送層118としては、先に示す電子輸送層113と同様の材料及び同様の方法に
より形成することができる。また、電子注入層119としては、先に示す電子注入層11
4と同様の材料及び同様の方法により形成することができる。
【0262】
電極102としては、反射性を有する導電膜と、透光性を有する導電膜を積層すること
で形成することができる。また、電極102としては、単層構造、または積層構造として
もよい。
【0263】
上記工程を経て、電極101、電極103、及び電極104上に、それぞれ領域222
B、領域222G、及び領域222Rを有する発光素子が基板200上に形成される。
【0264】
≪第6のステップ≫
第6のステップは、基板220上に遮光層223、光学素子224B、光学素子224
G、及び光学素子224Rを形成する工程である(図7(C)参照)。
【0265】
遮光層223としては、黒色顔料の含んだ樹脂膜を所望の領域に形成する。その後、基
板220及び遮光層223上に、光学素子224B、光学素子224G、及び光学素子2
24Rを形成する。光学素子224Bとしては、青色顔料の含んだ樹脂膜を所望の領域に
形成する。また、光学素子224Gとしては、緑色顔料の含んだ樹脂膜を所望の領域に形
成する。また、光学素子224Rとしては、赤色顔料の含んだ樹脂膜を所望の領域に形成
する。
【0266】
≪第7のステップ≫
第7のステップは、基板200上に形成された発光素子と、基板220上に形成された
遮光層223、光学素子224B、光学素子224G、及び光学素子224Rと、を貼り
合わせ、シール材を用いて封止する工程である(図示しない)。
【0267】
以上の工程により、図5(A)に示す発光素子272aを形成することができる。
【0268】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用
いることができる。
【0269】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様の表示装置について、図8乃至図14を用いて説明
する。
【0270】
<表示装置の構成例1>
図8(A)は表示装置600を示す上面図、図8(B)は図8(A)の一点鎖線A-B
、及び一点鎖線C-Dで切断した断面図である。表示装置600は、駆動回路部(信号線
駆動回路部601、及び走査線駆動回路部603)、並びに画素部602を有する。なお
、信号線駆動回路部601、走査線駆動回路部603、及び画素部602は、発光素子の
発光を制御する機能を有する。
【0271】
また、表示装置600は、素子基板610と、封止基板604と、シール材605と、
シール材605で囲まれた領域607と、引き回し配線608と、FPC609と、を有
する。
【0272】
なお、引き回し配線608は、信号線駆動回路部601及び走査線駆動回路部603に
入力される信号を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC609からビデ
オ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等を受け取る。なお、ここではFP
C609しか図示されていないが、FPC609にはプリント配線基板(PWB:Pri
nted Wiring Board)が取り付けられていても良い。
【0273】
また、信号線駆動回路部601は、Nチャネル型のトランジスタ623とPチャネル型
のトランジスタ624とを組み合わせたCMOS回路が形成される。なお、信号線駆動回
路部601または走査線駆動回路部603は、種々のCMOS回路、PMOS回路、また
はNMOS回路を用いることが出来る。また、本実施の形態では、基板上に駆動回路部を
形成したドライバと画素とを同一の表面上に設けた表示装置を示すが、必ずしもその必要
はなく、駆動回路部を基板上ではなく外部に形成することもできる。
【0274】
また、画素部602は、スイッチング用のトランジスタ611と、電流制御用のトラン
ジスタ612と、電流制御用のトランジスタ612のドレインに電気的に接続された下部
電極613と、を有する。なお、下部電極613の端部を覆って隔壁614が形成されて
いる。隔壁614としては、ポジ型の感光性アクリル樹脂膜を用いることができる。
【0275】
また、被覆性を良好にするため、隔壁614の上端部または下端部に曲率を有する曲面
が形成されるようにする。例えば、隔壁614の材料としてポジ型の感光性アクリルを用
いた場合、隔壁614の上端部のみに曲率半径(0.2μm以上3μm以下)を有する曲
面を持たせることが好ましい。また、隔壁614として、ネガ型の感光性樹脂、またはポ
ジ型の感光性樹脂のいずれも使用することができる。
【0276】
なお、トランジスタ(トランジスタ611、612、623、624)の構造は、特に
限定されない。例えば、スタガ型のトランジスタを用いてもよい。また、トランジスタの
極性についても特に限定はなく、Nチャネル型およびPチャネル型のトランジスタを有す
る構造、及びNチャネル型のトランジスタまたはPチャネル型のトランジスタのいずれか
一方のみからなる構造を用いてもよい。また、トランジスタに用いられる半導体膜の結晶
性についても特に限定はない。例えば、非晶質半導体膜、結晶性半導体膜を用いることが
できる。また、半導体材料としては、14族(ケイ素等)半導体、化合物半導体(酸化物
半導体を含む)、有機半導体等を用いることができる。トランジスタとしては、例えば、
エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上、さらに好ましくは3eV
以上の酸化物半導体を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができるた
め好ましい。該酸化物半導体としては、In-Ga酸化物、In-M-Zn酸化物(Mは
、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr
)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、スズ(Sn)、ハフニウム(Hf)、または
ネオジム(Nd)を表す)等が挙げられる。
【0277】
下部電極613上には、EL層616、および上部電極617がそれぞれ形成されてい
る。なお、下部電極613は、陽極として機能し、上部電極617は、陰極として機能す
る。
【0278】
また、EL層616は、蒸着マスクを用いた蒸着法、インクジェット法、スピンコート
法等の種々の方法によって形成される。また、EL層616を構成する他の材料としては
、低分子化合物、または高分子化合物(オリゴマー、デンドリマーを含む)であっても良
い。
【0279】
なお、下部電極613、EL層616、及び上部電極617により、発光素子618が
形成される。発光素子618は、実施の形態1乃至実施の形態3の構成を有する発光素子
である。なお、画素部は複数の発光素子が形成される場合、実施の形態1乃至実施の形態
3に記載の発光素子と、それ以外の構成を有する発光素子の両方が含まれていても良い。
【0280】
また、シール材605で封止基板604を素子基板610と貼り合わせることにより、
素子基板610、封止基板604、およびシール材605で囲まれた領域607に発光素
子618が備えられた構造になっている。なお、領域607には、充填材が充填されてお
り、不活性気体(窒素やアルゴン等)が充填される場合の他、シール材605に用いるこ
とができる紫外線硬化樹脂または熱硬化樹脂で充填される場合もあり、例えば、PVC(
ポリビニルクロライド)系樹脂、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、
シリコーン系樹脂、PVB(ポリビニルブチラル)系樹脂、またはEVA(エチレンビニ
ルアセテート)系樹脂を用いることができる。封止基板には凹部を形成し、そこに乾燥剤
を設けると水分の影響による劣化を抑制することができ、好ましい構成である。
【0281】
また、発光素子618と互いに重なるように、光学素子621が封止基板604の下方
に設けられる。また、封止基板604の下方には、遮光層622が設けられる。光学素子
621及び遮光層622としては、それぞれ、実施の形態3に示す光学素子、及び遮光層
と同様の構成とすればよい。
【0282】
なお、シール材605にはエポキシ系樹脂やガラスフリットを用いるのが好ましい。ま
た、これらの材料はできるだけ水分や酸素を透過しにくい材料であることが望ましい。ま
た、封止基板604に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiber
Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリ
エステルまたはアクリル等からなるプラスチック基板を用いることができる。
【0283】
以上のようにして、実施の形態1乃至実施の形態3に記載の発光素子及び光学素子を有
する表示装置を得ることができる。
【0284】
<表示装置の構成例2>
次に、表示装置の別の一例について、図9(A)(B)及び図10を用いて説明を行う
。なお、図9(A)(B)及び図10は、本発明の一態様の表示装置の断面図である。
【0285】
図9(A)には基板1001、下地絶縁膜1002、ゲート絶縁膜1003、ゲート電
極1006、1007、1008、第1の層間絶縁膜1020、第2の層間絶縁膜102
1、周辺部1042、画素部1040、駆動回路部1041、発光素子の下部電極102
4R、1024G、1024B、隔壁1025、EL層1028、発光素子の上部電極1
026、封止層1029、封止基板1031、シール材1032などが図示されている。
【0286】
また、図9(A)では、光学素子の一例として、着色層(赤色の着色層1034R、緑
色の着色層1034G、及び青色の着色層1034B)を透明な基材1033に設けてい
る。また、遮光層1035をさらに設けても良い。着色層及び遮光層が設けられた透明な
基材1033は、位置合わせし、基板1001に固定する。なお、着色層、及び遮光層は
、オーバーコート層1036で覆われている。また、図9(A)においては、着色層を透
過する光は赤、緑、青となることから、3色の画素で映像を表現することができる。
【0287】
図9(B)では、光学素子の一例として、着色層(赤色の着色層1034R、緑色の着
色層1034G、青色の着色層1034B)をゲート絶縁膜1003と第1の層間絶縁膜
1020との間に形成する例を示している。このように、着色層は基板1001と封止基
板1031の間に設けられていても良い。
【0288】
図10では、光学素子の一例として、着色層(赤色の着色層1034R、緑色の着色層
1034G、青色の着色層1034B)を第1の層間絶縁膜1020と第2の層間絶縁膜
1021との間に形成する例を示している。このように、着色層は基板1001と封止基
板1031の間に設けられていても良い。
【0289】
また、以上に説明した表示装置では、トランジスタが形成されている基板1001側に
光を取り出す構造(ボトムエミッション型)の表示装置としたが、封止基板1031側に
発光を取り出す構造(トップエミッション型)の表示装置としても良い。
【0290】
<表示装置の構成例3>
トップエミッション型の表示装置の断面図の一例を図11(A)(B)に示す。図11
(A)(B)は、本発明の一態様の表示装置を説明する断面図であり、図9(A)(B)
及び図10に示す駆動回路部1041、周辺部1042等を省略して例示している。
【0291】
この場合、基板1001は光を通さない基板を用いることができる。トランジスタと発
光素子の陽極とを接続する接続電極を作製するまでは、ボトムエミッション型の表示装置
と同様に形成する。その後、電極1022を覆うように、第3の層間絶縁膜1037を形
成する。この絶縁膜は平坦化の役割を担っていても良い。第3の層間絶縁膜1037は第
2の層間絶縁膜と同様の材料の他、他の様々な材料を用いて形成することができる。
【0292】
発光素子の下部電極1024R、1024G、1024Bはここでは陽極とするが、陰
極であっても構わない。また、図11(A)(B)のようなトップエミッション型の表示
装置である場合、下部電極1024R、1024G、1024Bは光を反射する機能を有
することが好ましい。また、EL層1028上に上部電極1026が設けられる。上部電
極1026は光を反射する機能と、光を透過する機能を有し、下部電極1024R、10
24G、1024Bと、上部電極1026との間で、マイクロキャビティ構造を採用し、
特定波長における光強度を増加させると好ましい。
【0293】
図11(A)のようなトップエミッションの構造では、着色層(赤色の着色層1034
R、緑色の着色層1034G、及び青色の着色層1034B)を設けた封止基板1031
で封止を行うことができる。封止基板1031には画素と画素との間に位置するように遮
光層1035を設けても良い。なお、封止基板1031は透光性を有する基板を用いると
好適である。
【0294】
また、図11(A)においては、複数の発光素子と、該複数の発光素子にそれぞれ着色
層を設ける構成を例示したが、これに限定されない。例えば、図11(B)に示すように
、緑色の着色層を設けずに、赤色の着色層1034R、及び青色の着色層1034Bを設
けて、赤、緑、青の3色でフルカラー表示を行う構成としてもよい。図11(A)に示す
ように、発光素子と、該発光素子にそれぞれ着色層を設ける構成とした場合、外光反射を
抑制できるといった効果を奏する。一方で、図11(B)に示すように、発光素子と、緑
色の着色層を設けずに、赤色の着色層、及び青色の着色層を設ける構成とした場合、緑色
の発光素子から射出された光のエネルギー損失が少ないため、消費電力を低くできるとい
った効果を奏する。
【0295】
<表示装置の構成例4>
以上に示す表示装置は、3色(赤色、緑色、及び青色)の副画素を有する構成を示した
が、4色(赤色、緑色、青色、及び黄色、あるいは赤色、緑色、青色、及び白色)の副画
素を有する構成としてもよい。図12乃至図14は、下部電極1024R、1024G、
1024B、及び1024Yを有する表示装置の構成である。図12(A)(B)及び図
13は、トランジスタが形成されている基板1001側に光を取り出す構造(ボトムエミ
ッション型)の表示装置であり、図14(A)(B)は、封止基板1031側に発光を取
り出す構造(トップエミッション型)の表示装置である。
【0296】
図12(A)は、光学素子(着色層1034R、着色層1034G、着色層1034B
、着色層1034Y)を透明な基材1033に設ける表示装置の例である。また、図12
(B)は、光学素子(着色層1034R、着色層1034G、着色層1034B)をゲー
ト絶縁膜1003と第1の層間絶縁膜1020との間に形成する表示装置の例である。ま
た、図13は、光学素子(着色層1034R、着色層1034G、着色層1034B、着
色層1034Y)を第1の層間絶縁膜1020と第2の層間絶縁膜1021との間に形成
する表示装置の例である。
【0297】
着色層1034Rは赤色の光を透過し、着色層1034Gは緑色の光を透過し、着色層
1034Bは青色の光を透過する機能を有する。また、着色層1034Yは黄色の光を透
過する機能、あるいは青色、緑色、黄色、赤色の中から選ばれる複数の光を透過する機能
を有する。着色層1034Yが青色、緑色、黄色、赤色の中から選ばれる複数の光を透過
する機能を有するとき、着色層1034Yを透過した光は白色であってもよい。黄色ある
いは白色の発光を呈する発光素子は発光効率が高いため、着色層1034Yを有する表示
装置は、消費電力を低減することができる。
【0298】
また、図14に示すトップエミッション型の表示装置においては、下部電極1024Y
を有する発光素子においても、図11(A)の表示装置と同様に、下部電極1024R、
1024G、1024B、1024Yと、上部電極1026との間で、マイクロキャビテ
ィ構造を有する構成が好ましい。また、図14(A)の表示装置では、着色層(赤色の着
色層1034R、緑色の着色層1034G、青色の着色層1034B、及び黄色の着色層
1034Y)を設けた封止基板1031で封止を行うことができる。
【0299】
マイクロキャビティ、及び黄色の着色層1034Yを介して呈される発光は、黄色の領
域に発光スペクトルを有する発光となる。黄色は視感度が高い色であるため、黄色の発光
を呈する発光素子は発光効率が高い。すなわち、図14(A)の構成を有する表示装置は
、消費電力を低減することができる。
【0300】
また、図14(A)においては、複数の発光素子と、該複数の発光素子にそれぞれ着色
層を設ける構成を例示したが、これに限定されない。例えば、図14(B)に示すように
、黄色の着色層を設けずに、赤色の着色層1034R、緑色の着色層1034G、及び青
色の着色層1034Bを設けて、赤、緑、青、黄の4色、または赤、緑、青、白の4色で
フルカラー表示を行う構成としてもよい。図14(A)に示すように、発光素子と、該発
光素子にそれぞれ着色層を設ける構成とした場合、外光反射を抑制できるといった効果を
奏する。一方で、図14(B)に示すように、発光素子と、黄色の着色層を設けずに、赤
色の着色層、緑色の着色層、及び青色の着色層を設ける構成とした場合、黄色または白色
の発光素子から射出された光のエネルギー損失が少ないため、消費電力を低くできるとい
った効果を奏する。
【0301】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態や本実施の形態中の他の構成と適宜
組み合わせることが可能である。
【0302】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光素子を有する表示装置について、図15乃至
図17を用いて説明を行う。
【0303】
なお、図15(A)は、本発明の一態様の表示装置を説明するブロック図であり、図1
5(B)は、本発明の一態様の表示装置が有する画素回路を説明する回路図である。
【0304】
<表示装置に関する説明>
図15(A)に示す表示装置は、表示素子の画素を有する領域(以下、画素部802と
いう)と、画素部802の外側に配置され、画素を駆動するための回路を有する回路部(
以下、駆動回路部804という)と、素子の保護機能を有する回路(以下、保護回路80
6という)と、端子部807と、を有する。なお、保護回路806は、設けない構成とし
てもよい。
【0305】
駆動回路部804の一部、または全部は、画素部802と同一基板上に形成されている
ことが望ましい。これにより、部品数や端子数を減らすことが出来る。駆動回路部804
の一部、または全部が、画素部802と同一基板上に形成されていない場合には、駆動回
路部804の一部、または全部は、COGやTAB(Tape Automated B
onding)によって、実装することができる。
【0306】
画素部802は、X行(Xは2以上の自然数)Y列(Yは2以上の自然数)に配置され
た複数の表示素子を駆動するための回路(以下、画素回路801という)を有し、駆動回
路部804は、画素を選択する信号(走査信号)を出力する回路(以下、走査線駆動回路
804aという)、画素の表示素子を駆動するための信号(データ信号)を供給するため
の回路(以下、信号線駆動回路804b)などの駆動回路を有する。
【0307】
走査線駆動回路804aは、シフトレジスタ等を有する。走査線駆動回路804aは、
端子部807を介して、シフトレジスタを駆動するための信号が入力され、信号を出力す
る。例えば、走査線駆動回路804aは、スタートパルス信号、クロック信号等が入力さ
れ、パルス信号を出力する。走査線駆動回路804aは、走査信号が与えられる配線(以
下、走査線GL_1乃至GL_Xという)の電位を制御する機能を有する。なお、走査線
駆動回路804aを複数設け、複数の走査線駆動回路804aにより、走査線GL_1乃
至GL_Xを分割して制御してもよい。または、走査線駆動回路804aは、初期化信号
を供給することができる機能を有する。ただし、これに限定されず、走査線駆動回路80
4aは、別の信号を供給することも可能である。
【0308】
信号線駆動回路804bは、シフトレジスタ等を有する。信号線駆動回路804bは、
端子部807を介して、シフトレジスタを駆動するための信号の他、データ信号の元とな
る信号(画像信号)が入力される。信号線駆動回路804bは、画像信号を元に画素回路
801に書き込むデータ信号を生成する機能を有する。また、信号線駆動回路804bは
、スタートパルス、クロック信号等が入力されて得られるパルス信号に従って、データ信
号の出力を制御する機能を有する。また、信号線駆動回路804bは、データ信号が与え
られる配線(以下、データ線DL_1乃至DL_Yという)の電位を制御する機能を有す
る。または、信号線駆動回路804bは、初期化信号を供給することができる機能を有す
る。ただし、これに限定されず、信号線駆動回路804bは、別の信号を供給することも
可能である。
【0309】
信号線駆動回路804bは、例えば複数のアナログスイッチなどを用いて構成される。
信号線駆動回路804bは、複数のアナログスイッチを順次オン状態にすることにより、
画像信号を時分割した信号をデータ信号として出力できる。また、シフトレジスタなどを
用いて信号線駆動回路804bを構成してもよい。
【0310】
複数の画素回路801のそれぞれは、走査信号が与えられる複数の走査線GLの一つを
介してパルス信号が入力され、データ信号が与えられる複数のデータ線DLの一つを介し
てデータ信号が入力される。また、複数の画素回路801のそれぞれは、走査線駆動回路
804aによりデータ信号のデータの書き込み及び保持が制御される。例えば、m行n列
目の画素回路801は、走査線GL_m(mはX以下の自然数)を介して走査線駆動回路
804aからパルス信号が入力され、走査線GL_mの電位に応じてデータ線DL_n(
nはY以下の自然数)を介して信号線駆動回路804bからデータ信号が入力される。
【0311】
図15(A)に示す保護回路806は、例えば、走査線駆動回路804aと画素回路8
01の間の配線である走査線GLに接続される。または、保護回路806は、信号線駆動
回路804bと画素回路801の間の配線であるデータ線DLに接続される。または、保
護回路806は、走査線駆動回路804aと端子部807との間の配線に接続することが
できる。または、保護回路806は、信号線駆動回路804bと端子部807との間の配
線に接続することができる。なお、端子部807は、外部の回路から表示装置に電源及び
制御信号、及び画像信号を入力するための端子が設けられた部分をいう。
【0312】
保護回路806は、自身が接続する配線に一定の範囲外の電位が与えられたときに、該
配線と別の配線とを導通状態にする回路である。
【0313】
図15(A)に示すように、画素部802と駆動回路部804にそれぞれ保護回路80
6を設けることにより、ESD(Electro Static Discharge:
静電気放電)などにより発生する過電流に対する表示装置の耐性を高めることができる。
ただし、保護回路806の構成はこれに限定されず、例えば、走査線駆動回路804aに
保護回路806を接続した構成、または信号線駆動回路804bに保護回路806を接続
した構成とすることもできる。あるいは、端子部807に保護回路806を接続した構成
とすることもできる。
【0314】
また、図15(A)においては、走査線駆動回路804aと信号線駆動回路804bに
よって駆動回路部804を形成している例を示しているが、この構成に限定されない。例
えば、走査線駆動回路804aのみを形成し、別途用意された信号線駆動回路が形成され
た基板(例えば、単結晶半導体膜、多結晶半導体膜で形成された駆動回路基板)を実装す
る構成としても良い。
【0315】
<画素回路の構成例>
図15(A)に示す複数の画素回路801は、例えば、図15(B)に示す構成とする
ことができる。
【0316】
図15(B)に示す画素回路801は、トランジスタ852、854と、容量素子86
2と、発光素子872と、を有する。
【0317】
トランジスタ852のソース電極及びドレイン電極の一方は、データ信号が与えられる
配線(データ線DL_n)に電気的に接続される。さらに、トランジスタ852のゲート
電極は、ゲート信号が与えられる配線(走査線GL_m)に電気的に接続される。
【0318】
トランジスタ852は、データ信号のデータの書き込みを制御する機能を有する。
【0319】
容量素子862の一対の電極の一方は、電位が与えられる配線(以下、電位供給線VL
_aという)に電気的に接続され、他方は、トランジスタ852のソース電極及びドレイ
ン電極の他方に電気的に接続される。
【0320】
容量素子862は、書き込まれたデータを保持する保持容量としての機能を有する。
【0321】
トランジスタ854のソース電極及びドレイン電極の一方は、電位供給線VL_aに電
気的に接続される。さらに、トランジスタ854のゲート電極は、トランジスタ852の
ソース電極及びドレイン電極の他方に電気的に接続される。
【0322】
発光素子872のアノード及びカソードの一方は、電位供給線VL_bに電気的に接続
され、他方は、トランジスタ854のソース電極及びドレイン電極の他方に電気的に接続
される。
【0323】
発光素子872としては、実施の形態1乃至実施の形態3に示す発光素子を用いること
ができる。
【0324】
なお、電位供給線VL_a及び電位供給線VL_bの一方には、高電源電位VDDが与
えられ、他方には、低電源電位VSSが与えられる。
【0325】
図15(B)の画素回路801を有する表示装置では、例えば、図15(A)に示す走
査線駆動回路804aにより各行の画素回路801を順次選択し、トランジスタ852を
オン状態にしてデータ信号のデータを書き込む。
【0326】
データが書き込まれた画素回路801は、トランジスタ852がオフ状態になることで
保持状態になる。さらに、書き込まれたデータ信号の電位に応じてトランジスタ854の
ソース電極とドレイン電極の間に流れる電流量が制御され、発光素子872は、流れる電
流量に応じた輝度で発光する。これを行毎に順次行うことにより、画像を表示できる。
【0327】
また、画素回路に、トランジスタのしきい値電圧等の変動の影響を補正する機能を持た
せてもよい。図16(A)(B)及び図17(A)(B)に画素回路の一例を示す。
【0328】
図16(A)に示す画素回路は、6つのトランジスタ(トランジスタ303_1乃至3
03_6)と、容量素子304と、発光素子305と、を有する。また、図16(A)に
示す画素回路には、配線301_1乃至301_5、並びに配線302_1及び配線30
2_2が電気的に接続されている。なお、トランジスタ303_1乃至303_6につい
ては、例えばPチャネル型のトランジスタを用いることができる。
【0329】
図16(B)に示す画素回路は、図16(A)に示す画素回路に、トランジスタ303
_7を追加した構成である。また、図16(B)に示す画素回路には、配線301_6及
び配線301_7が電気的に接続されている。ここで、配線301_5と配線301_6
とは、それぞれ電気的に接続されていてもよい。なお、トランジスタ303_7について
は、例えばPチャネル型のトランジスタを用いることができる。
【0330】
図17(A)に示す画素回路は、6つのトランジスタ(トランジスタ308_1乃至3
08_6)と、容量素子304と、発光素子305と、を有する。また、図17(A)に
示す画素回路には、配線306_1乃至306_3、並びに配線307_1乃至307_
3が電気的に接続されている。ここで配線306_1と配線306_3とは、それぞれ電
気的に接続されていてもよい。なお、トランジスタ308_1乃至308_6については
、例えばPチャネル型のトランジスタを用いることができる。
【0331】
図17(B)に示す画素回路は、2つのトランジスタ(トランジスタ309_1及びト
ランジスタ309_2)と、2つの容量素子(容量素子304_1及び容量素子304_
2)と、発光素子305と、を有する。また、図17(B)に示す画素回路には、配線3
11_1乃至配線311_3、配線312_1、及び配線312_2が電気的に接続され
ている。また、図17(B)に示す画素回路の構成とすることで、例えば、電圧入力-電
流駆動方式(CVCC方式ともいう)とすることができる。なお、トランジスタ309_
1及び309_2については、例えばPチャネル型のトランジスタを用いることができる
【0332】
また、本発明の一態様の発光素子は、表示装置の画素に能動素子を有するアクティブマ
トリクス方式、または、表示装置の画素に能動素子を有しないパッシブマトリクス方式の
それぞれの方式に適用することができる。
【0333】
アクティブマトリクス方式では、能動素子(アクティブ素子、非線形素子)として、ト
ランジスタだけでなく、さまざまな能動素子(アクティブ素子、非線形素子)を用いるこ
とが出来る。例えば、MIM(Metal Insulator Metal)、又はT
FD(Thin Film Diode)などを用いることも可能である。これらの素子
は、製造工程が少ないため、製造コストの低減、又は歩留まりの向上を図ることができる
。または、これらの素子は、素子のサイズが小さいため、開口率を向上させることができ
、低消費電力化や高輝度化をはかることが出来る。
【0334】
アクティブマトリクス方式以外のものとして、能動素子(アクティブ素子、非線形素子
)を用いないパッシブマトリクス型を用いることも可能である。能動素子(アクティブ素
子、非線形素子)を用いないため、製造工程が少ないため、製造コストの低減、又は歩留
まりの向上を図ることができる。または、能動素子(アクティブ素子、非線形素子)を用
いないため、開口率を向上させることができ、低消費電力化、又は高輝度化などを図るこ
とが出来る。
【0335】
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いること
ができる。
【0336】
(実施の形態6)
本実施の形態においては、本発明の一態様の発光素子を有する表示装置、及び該表示装
置に入力装置を取り付けた電子機器について、図18乃至図22を用いて説明を行う。
【0337】
<タッチパネルに関する説明1>
なお、本実施の形態において、電子機器の一例として、表示装置と、入力装置とを合わ
せたタッチパネル2000について説明する。また、入力装置の一例として、タッチセン
サを有する場合について説明する。
【0338】
図18(A)(B)は、タッチパネル2000の斜視図である。なお、図18(A)(
B)において、明瞭化のため、タッチパネル2000の代表的な構成要素を示す。
【0339】
タッチパネル2000は、表示装置2501とタッチセンサ2595とを有する(図1
8(B)参照)。また、タッチパネル2000は、基板2510、基板2570、及び基
板2590を有する。なお、基板2510、基板2570、及び基板2590はいずれも
可撓性を有する。ただし、基板2510、基板2570、及び基板2590のいずれか一
つまたは全てが可撓性を有さない構成としてもよい。
【0340】
表示装置2501は、基板2510上に複数の画素及び該画素に信号を供給することが
できる複数の配線2511を有する。複数の配線2511は、基板2510の外周部にま
で引き回され、その一部が端子2519を構成している。端子2519はFPC2509
(1)と電気的に接続する。また、複数の配線2511は、信号線駆動回路2503s(
1)からの信号を複数の画素に供給することができる。
【0341】
基板2590は、タッチセンサ2595と、タッチセンサ2595と電気的に接続する
複数の配線2598とを有する。複数の配線2598は、基板2590の外周部に引き回
され、その一部は端子を構成する。そして、該端子はFPC2509(2)と電気的に接
続される。なお、図18(B)では明瞭化のため、基板2590の裏面側(基板2510
と対向する面側)に設けられるタッチセンサ2595の電極や配線等を実線で示している
【0342】
タッチセンサ2595として、例えば静電容量方式のタッチセンサを適用できる。静電
容量方式としては、表面型静電容量方式、投影型静電容量方式等がある。
【0343】
投影型静電容量方式としては、主に駆動方式の違いから自己容量方式、相互容量方式な
どがある。相互容量方式を用いると同時多点検出が可能となるため好ましい。
【0344】
なお、図18(B)に示すタッチセンサ2595は、投影型静電容量方式のタッチセン
サを適用した構成である。
【0345】
なお、タッチセンサ2595には、指等の検知対象の近接または接触を検知することが
できる、様々なセンサを適用することができる。
【0346】
投影型静電容量方式のタッチセンサ2595は、電極2591と電極2592とを有す
る。電極2591は、複数の配線2598のいずれかと電気的に接続し、電極2592は
複数の配線2598の他のいずれかと電気的に接続する。
【0347】
電極2592は、図18(A)(B)に示すように、一方向に繰り返し配置された複数
の四辺形が角部で接続される形状を有する。
【0348】
電極2591は四辺形であり、電極2592が延在する方向と交差する方向に繰り返し
配置されている。
【0349】
配線2594は、電極2592を挟む二つの電極2591と電気的に接続する。このと
き、電極2592と配線2594の交差部の面積ができるだけ小さくなる形状が好ましい
。これにより、電極が設けられていない領域の面積を低減でき、透過率のバラツキを低減
できる。その結果、タッチセンサ2595を透過する光の輝度のバラツキを低減すること
ができる。
【0350】
なお、電極2591及び電極2592の形状はこれに限定されず、様々な形状を取りう
る。例えば、複数の電極2591をできるだけ隙間が生じないように配置し、絶縁層を介
して電極2592を、電極2591と重ならない領域ができるように離間して複数設ける
構成としてもよい。このとき、隣接する2つの電極2592の間に、これらとは電気的に
絶縁されたダミー電極を設けると、透過率の異なる領域の面積を低減できるため好ましい
【0351】
<表示装置に関する説明>
次に、図19(A)を用いて、表示装置2501の詳細について説明する。図19(A
)は、図18(B)に示す一点鎖線X1-X2間の断面図に相当する。
【0352】
表示装置2501は、マトリクス状に配置された複数の画素を有する。該画素は表示素
子と、該表示素子を駆動する画素回路とを有する。
【0353】
以下の説明においては、白色の光を射出する発光素子を表示素子に適用する場合につい
て説明するが、表示素子はこれに限定されない。例えば、隣接する画素毎に射出する光の
色が異なるように、発光色が異なる発光素子を適用してもよい。
【0354】
基板2510及び基板2570としては、例えば、水蒸気の透過率が1×10-5g・
-2・day-1以下、好ましくは1×10-6g・m-2・day-1以下である可
撓性を有する材料を好適に用いることができる。または、基板2510の熱膨張率と、基
板2570の熱膨張率とが、およそ等しい材料を用いると好適である。例えば、線膨張率
が1×10-3/K以下、好ましくは5×10-5/K以下、より好ましくは1×10
/K以下である材料を好適に用いることができる。
【0355】
なお、基板2510は、発光素子への不純物の拡散を防ぐ絶縁層2510aと、可撓性
基板2510bと、絶縁層2510a及び可撓性基板2510bを貼り合わせる接着層2
510cと、を有する積層体である。また、基板2570は、発光素子への不純物の拡散
を防ぐ絶縁層2570aと、可撓性基板2570bと、絶縁層2570a及び可撓性基板
2570bを貼り合わせる接着層2570cと、を有する積層体である。
【0356】
接着層2510c及び接着層2570cとしては、例えば、ポリエステル、ポリオレフ
ィン、ポリアミド(ナイロン、アラミド等)、ポリイミド、ポリカーボネートまたはアク
リル、ウレタン、エポキシを用いることができる。また、シロキサン結合を有する樹脂を
含む材料を用いることができる。
【0357】
また、基板2510と基板2570との間に封止層2560を有する。封止層2560
は、空気より大きい屈折率を有すると好ましい。また、図19(A)に示すように、封止
層2560側に光を取り出す場合は、封止層2560は光学的な接合層を兼ねることがで
きる。
【0358】
また、封止層2560の外周部にシール材を形成してもよい。当該シール材を用いるこ
とにより、基板2510、基板2570、封止層2560、及びシール材で囲まれた領域
に発光素子2550Rを有する構成とすることができる。なお、封止層2560として、
不活性気体(窒素やアルゴン等)を充填してもよい。また、当該不活性気体内に、乾燥剤
を設けて、水分等を吸着させる構成としてもよい。また、上述のシール材としては、例え
ば、エポキシ系樹脂やガラスフリットを用いるのが好ましい。また、シール材に用いる材
料としては、水分や酸素を透過しない材料を用いると好適である。
【0359】
また、表示装置2501は、画素2502Rを有する。また、画素2502Rは発光モ
ジュール2580Rを有する。
【0360】
画素2502Rは、発光素子2550Rと、発光素子2550Rに電力を供給すること
ができるトランジスタ2502tとを有する。なお、トランジスタ2502tは、画素回
路の一部として機能する。また、発光モジュール2580Rは、発光素子2550Rと、
着色層2567Rとを有する。
【0361】
発光素子2550Rは、下部電極と、上部電極と、下部電極と上部電極の間にEL層と
を有する。発光素子2550Rとして、例えば、実施の形態1乃至実施の形態3に示す発
光素子を適用することができる。
【0362】
また、下部電極と上部電極との間で、マイクロキャビティ構造を採用し、特定波長にお
ける光強度を増加させてもよい。
【0363】
また、封止層2560が光を取り出す側に設けられている場合、封止層2560は、発
光素子2550Rと着色層2567Rに接する。
【0364】
着色層2567Rは、発光素子2550Rと重なる位置にある。これにより、発光素子
2550Rが発する光の一部は着色層2567Rを透過して、図中に示す矢印の方向の発
光モジュール2580Rの外部に射出される。
【0365】
また、表示装置2501には、光を射出する方向に遮光層2567BMが設けられる。
遮光層2567BMは、着色層2567Rを囲むように設けられている。
【0366】
着色層2567Rとしては、特定の波長領域の光を透過する機能を有していればよく、
例えば、赤色の波長領域の光を透過するカラーフィルタ、緑色の波長領域の光を透過する
カラーフィルタ、青色の波長領域の光を透過するカラーフィルタ、黄色の波長領域の光を
透過するカラーフィルタなどを用いることができる。各カラーフィルタは、様々な材料を
用いて、印刷法、インクジェット法、フォトリソグラフィ技術を用いたエッチング方法な
どで形成することができる。
【0367】
また、表示装置2501には、絶縁層2521が設けられる。絶縁層2521はトラン
ジスタ2502tを覆う。なお、絶縁層2521は、画素回路に起因する凹凸を平坦化す
るための機能を有する。また、絶縁層2521に不純物の拡散を抑制できる機能を付与し
てもよい。これにより、不純物の拡散によるトランジスタ2502t等の信頼性の低下を
抑制できる。
【0368】
また、発光素子2550Rは、絶縁層2521の上方に形成される。また、発光素子2
550Rが有する下部電極には、該下部電極の端部に重なる隔壁2528が設けられる。
なお、基板2510と、基板2570との間隔を制御するスペーサを、隔壁2528上に
形成してもよい。
【0369】
走査線駆動回路2503g(1)は、トランジスタ2503tと、容量素子2503c
とを有する。なお、駆動回路を画素回路と同一の工程で同一基板上に形成することができ
る。
【0370】
また、基板2510上には、信号を供給することができる配線2511が設けられる。
また、配線2511上には、端子2519が設けられる。また、端子2519には、FP
C2509(1)が電気的に接続される。また、FPC2509(1)は、ビデオ信号、
クロック信号、スタート信号、リセット信号等を供給する機能を有する。なお、FPC2
509(1)にはプリント配線基板(PWB)が取り付けられていても良い。
【0371】
また、表示装置2501には、様々な構造のトランジスタを適用することができる。図
19(A)においては、ボトムゲート型のトランジスタを適用する場合について、例示し
ているが、これに限定されず、例えば、図19(B)に示す、トップゲート型のトランジ
スタを表示装置2501に適用する構成としてもよい。
【0372】
また、トランジスタ2502t及びトランジスタ2503tの極性については、特に限
定はなく、Nチャネル型およびPチャネル型のトランジスタを有する構造、Nチャネル型
のトランジスタまたはPチャネル型のトランジスタのいずれか一方のみからなる構造を用
いてもよい。また、トランジスタ2502t及び2503tに用いられる半導体膜の結晶
性についても特に限定はない。例えば、非晶質半導体膜、結晶性半導体膜を用いることが
できる。また、半導体材料としては、14族の半導体(例えば、ケイ素を有する半導体)
、化合物半導体(酸化物半導体を含む)、有機半導体等を用いることができる。トランジ
スタ2502t及びトランジスタ2503tのいずれか一方または双方に、エネルギーギ
ャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上、さらに好ましくは3eV以上の酸化物
半導体を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができるため好ましい。
当該酸化物半導体としては、In-Ga酸化物、In-M-Zn酸化物(Mは、Al、G
a、Y、Zr、La、Ce、Sn、Hf、またはNdを表す)等が挙げられる。
【0373】
<タッチセンサに関する説明>
次に、図19(C)を用いて、タッチセンサ2595の詳細について説明する。図19
(C)は、図18(B)に示す一点鎖線X3-X4間の断面図に相当する。
【0374】
タッチセンサ2595は、基板2590上に千鳥状に配置された電極2591及び電極
2592と、電極2591及び電極2592を覆う絶縁層2593と、隣り合う電極25
91を電気的に接続する配線2594とを有する。
【0375】
電極2591及び電極2592は、透光性を有する導電材料を用いて形成する。透光性
を有する導電性材料としては、酸化インジウム、インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸
化物、酸化亜鉛、ガリウムを添加した酸化亜鉛などの導電性酸化物を用いることができる
。なお、グラフェンを含む膜を用いることもできる。グラフェンを含む膜は、例えば膜状
に形成された酸化グラフェンを含む膜を還元して形成することができる。還元する方法と
しては、熱を加える方法等を挙げることができる。
【0376】
例えば、透光性を有する導電性材料を基板2590上にスパッタリング法により成膜し
た後、フォトリソグラフィ法等の様々なパターン形成技術により、不要な部分を除去して
、電極2591及び電極2592を形成することができる。
【0377】
また、絶縁層2593に用いる材料としては、例えば、アクリル、エポキシなどの樹脂
、シロキサン結合を有する樹脂の他、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウ
ムなどの無機絶縁材料を用いることもできる。
【0378】
また、電極2591に達する開口が絶縁層2593に設けられ、配線2594が隣接す
る電極2591と電気的に接続する。透光性の導電性材料は、タッチパネルの開口率を高
めることができるため、配線2594に好適に用いることができる。また、電極2591
及び電極2592より導電性の高い材料は、電気抵抗を低減できるため配線2594に好
適に用いることができる。
【0379】
電極2592は、一方向に延在し、複数の電極2592がストライプ状に設けられてい
る。また、配線2594は電極2592と交差して設けられている。
【0380】
一対の電極2591が1つの電極2592を挟んで設けられる。また、配線2594は
一対の電極2591を電気的に接続している。
【0381】
なお、複数の電極2591は、1つの電極2592と必ずしも直交する方向に配置され
る必要はなく、0度より大きく90度未満の角度をなすように配置されてもよい。
【0382】
また、配線2598は、電極2591または電極2592と電気的に接続される。また
、配線2598の一部は、端子として機能する。配線2598としては、例えば、アルミ
ニウム、金、白金、銀、ニッケル、チタン、タングステン、クロム、モリブデン、鉄、コ
バルト、銅、またはパラジウム等の金属材料や、該金属材料を含む合金材料を用いること
ができる。
【0383】
なお、絶縁層2593及び配線2594を覆う絶縁層を設けて、タッチセンサ2595
を保護してもよい。
【0384】
また、接続層2599は、配線2598とFPC2509(2)を電気的に接続させる
【0385】
接続層2599としては、異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic C
onductive Film)や、異方性導電ペースト(ACP:Anisotrop
ic Conductive Paste)などを用いることができる。
【0386】
<タッチパネルに関する説明2>
次に、図20(A)を用いて、タッチパネル2000の詳細について説明する。図20
(A)は、図18(A)に示す一点鎖線X5-X6間の断面図に相当する。
【0387】
図20(A)に示すタッチパネル2000は、図19(A)で説明した表示装置250
1と、図19(C)で説明したタッチセンサ2595と、を貼り合わせた構成である。
【0388】
また、図20(A)に示すタッチパネル2000は、図19(A)及び図19(C)で
説明した構成の他、接着層2597と、反射防止層2567pと、を有する。
【0389】
接着層2597は、配線2594と接して設けられる。なお、接着層2597は、タッ
チセンサ2595が表示装置2501に重なるように、基板2590を基板2570に貼
り合わせている。また、接着層2597は、透光性を有すると好ましい。また、接着層2
597としては、熱硬化性樹脂、または紫外線硬化樹脂を用いることができる。例えば、
アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、またはシロキサン系樹脂を用いるこ
とができる。
【0390】
反射防止層2567pは、画素に重なる位置に設けられる。反射防止層2567pとし
て、例えば円偏光板を用いることができる。
【0391】
次に、図20(A)に示す構成と異なる構成のタッチパネルについて、図20(B)を
用いて説明する。
【0392】
図20(B)は、タッチパネル2001の断面図である。図20(B)に示すタッチパ
ネル2001は、図20(A)に示すタッチパネル2000と、表示装置2501に対す
るタッチセンサ2595の位置が異なる。ここでは異なる構成について詳細に説明し、同
様の構成を用いることができる部分は、タッチパネル2000の説明を援用する。
【0393】
着色層2567Rは、発光素子2550Rと重なる位置にある。また、図20(B)に
示す発光素子2550Rは、トランジスタ2502tが設けられている側に光を射出する
。これにより、発光素子2550Rが発する光の一部は、着色層2567Rを透過して、
図中に示す矢印の方向の発光モジュール2580Rの外部に射出される。
【0394】
また、タッチセンサ2595は、表示装置2501の基板2510側に設けられている
【0395】
接着層2597は、基板2510と基板2590の間にあり、表示装置2501とタッ
チセンサ2595を貼り合わせる。
【0396】
図20(A)(B)に示すように、発光素子から射出される光は、基板2510の上側
及び下側のいずれか一方または双方に射出されればよい。
【0397】
<タッチパネルの駆動方法に関する説明>
次に、タッチパネルの駆動方法の一例について、図21(A)(B)を用いて説明を行
う。
【0398】
図21(A)は、相互容量方式のタッチセンサの構成を示すブロック図である。図21
(A)では、パルス電圧出力回路2601、電流検出回路2602を示している。なお、
図21(A)では、パルス電圧が与えられる電極2621をX1-X6として、電流の変
化を検知する電極2622をY1-Y6として、それぞれ6本の配線で例示している。ま
た、図21(A)は、電極2621と、電極2622とが重畳することで形成される容量
2603を示している。なお、電極2621と電極2622とはその機能を互いに置き換
えてもよい。
【0399】
パルス電圧出力回路2601は、X1-X6の配線に順にパルスを印加するための回路
である。X1-X6の配線にパルス電圧が印加されることで、容量2603を形成する電
極2621と電極2622との間に電界が生じる。この電極間に生じる電界が遮蔽等によ
り容量2603の相互容量に変化を生じさせることを利用して、被検知体の近接、または
接触を検出することができる。
【0400】
電流検出回路2602は、容量2603での相互容量の変化による、Y1-Y6の配線
での電流の変化を検出するための回路である。Y1-Y6の配線では、被検知体の近接、
または接触がないと検出される電流値に変化はないが、検出する被検知体の近接、または
接触により相互容量が減少する場合には電流値が減少する変化を検出する。なお電流の検
出は、積分回路等を用いて行えばよい。
【0401】
次に、図21(B)には、図21(A)で示す相互容量方式のタッチセンサにおける入
出力波形のタイミングチャートを示す。図21(B)では、1フレーム期間で各行列での
被検知体の検出を行う。また、図21(B)では、被検知体を検出しない場合(非タッチ
)と被検知体を検出する場合(タッチ)との2つの場合について示している。なお、図2
1(B)では、Y1-Y6の配線で検出される電流値に対応する電圧値の波形を示してい
る。
【0402】
X1-X6の配線には、順にパルス電圧が与えられ、該パルス電圧にしたがってY1-
Y6の配線での波形が変化する。被検知体の近接または接触がない場合には、X1-X6
の配線の電圧の変化に応じてY1-Y6の波形が一様に変化する。一方、被検知体が近接
または接触する箇所では、電流値が減少するため、これに対応する電圧値の波形も変化す
る。
【0403】
このように、相互容量の変化を検出することにより、被検知体の近接または接触を検知
することができる。
【0404】
<センサ回路に関する説明>
また、図21(A)ではタッチセンサとして配線の交差部に容量2603のみを設ける
パッシブマトリクス型のタッチセンサの構成を示したが、トランジスタと容量とを有する
アクティブマトリクス型のタッチセンサとしてもよい。アクティブマトリクス型のタッチ
センサに含まれるセンサ回路の一例を図22に示す。
【0405】
図22に示すセンサ回路は、容量2603と、トランジスタ2611と、トランジスタ
2612と、トランジスタ2613とを有する。
【0406】
トランジスタ2613はゲートに信号G2が与えられ、ソースまたはドレインの一方に
電圧VRESが与えられ、他方が容量2603の一方の電極およびトランジスタ2611
のゲートと電気的に接続する。トランジスタ2611は、ソースまたはドレインの一方が
トランジスタ2612のソースまたはドレインの一方と電気的に接続し、他方に電圧VS
Sが与えられる。トランジスタ2612は、ゲートに信号G1が与えられ、ソースまたは
ドレインの他方が配線MLと電気的に接続する。容量2603の他方の電極には電圧VS
Sが与えられる。
【0407】
次に、図22に示すセンサ回路の動作について説明する。まず、信号G2としてトラン
ジスタ2613をオン状態とする電位が与えられることで、トランジスタ2611のゲー
トが接続されるノードnに電圧VRESに対応した電位が与えられる。次に、信号G2と
してトランジスタ2613をオフ状態とする電位が与えられることで、ノードnの電位が
保持される。
【0408】
続いて、指等の被検知体の近接または接触により、容量2603の相互容量が変化する
ことに伴い、ノードnの電位がVRESから変化する。
【0409】
読み出し動作は、信号G1にトランジスタ2612をオン状態とする電位を与える。ノ
ードnの電位に応じてトランジスタ2611に流れる電流、すなわち配線MLに流れる電
流が変化する。この電流を検出することにより、被検知体の近接または接触を検出するこ
とができる。
【0410】
トランジスタ2611、トランジスタ2612、及びトランジスタ2613としては、
酸化物半導体層をチャネル領域が形成される半導体層に用いることが好ましい。とくにト
ランジスタ2613にこのようなトランジスタを適用することにより、ノードnの電位を
長期間に亘って保持することが可能となり、ノードnにVRESを供給しなおす動作(リ
フレッシュ動作)の頻度を減らすことができる。
【0411】
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いること
ができる。
【0412】
(実施の形態7)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光素子を有する表示モジュール及び電子機器に
ついて、図23及び図24を用いて説明を行う。
【0413】
<表示モジュールに関する説明>
図23に示す表示モジュール8000は、上部カバー8001と下部カバー8002と
の間に、FPC8003に接続されたタッチセンサ8004、FPC8005に接続され
た表示装置8006、フレーム8009、プリント基板8010、バッテリ8011を有
する。
【0414】
本発明の一態様の発光素子は、例えば、表示装置8006に用いることができる。
【0415】
上部カバー8001及び下部カバー8002は、タッチセンサ8004及び表示装置8
006のサイズに合わせて、形状や寸法を適宜変更することができる。
【0416】
タッチセンサ8004は、抵抗膜方式または静電容量方式のタッチセンサを表示装置8
006に重畳して用いることができる。また、表示装置8006の対向基板(封止基板)
に、タッチセンサ機能を持たせるようにすることも可能である。また、表示装置8006
の各画素内に光センサを設け、光学式のタッチセンサとすることも可能である。
【0417】
フレーム8009は、表示装置8006の保護機能の他、プリント基板8010の動作
により発生する電磁波を遮断するための電磁シールドとしての機能を有する。またフレー
ム8009は、放熱板としての機能を有していてもよい。
【0418】
プリント基板8010は、電源回路、ビデオ信号及びクロック信号を出力するための信
号処理回路を有する。電源回路に電力を供給する電源としては、外部の商用電源であって
も良いし、別途設けたバッテリ8011による電源であってもよい。バッテリ8011は
、商用電源を用いる場合には、省略可能である。
【0419】
また、表示モジュール8000は、偏光板、位相差板、プリズムシートなどの部材を追
加して設けてもよい。
【0420】
<電子機器に関する説明>
図24(A)乃至図24(G)は、電子機器を示す図である。これらの電子機器は、筐
体9000、表示部9001、スピーカ9003、操作キー9005(電源スイッチ、又
は操作スイッチを含む)、接続端子9006、センサ9007(力、変位、位置、速度、
加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電
場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を測定する
機能を含むもの)、マイクロフォン9008、等を有することができる。
【0421】
図24(A)乃至図24(G)に示す電子機器は、様々な機能を有することができる。
例えば、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能、タッ
チセンサ機能、カレンダー、日付または時刻などを表示する機能、様々なソフトウェア(
プログラム)によって処理を制御する機能、無線通信機能、無線通信機能を用いて様々な
コンピュータネットワークに接続する機能、無線通信機能を用いて様々なデータの送信ま
たは受信を行う機能、記録媒体に記録されているプログラムまたはデータを読み出して表
示部に表示する機能、等を有することができる。なお、図24(A)乃至図24(G)に
示す電子機器が有することのできる機能はこれらに限定されず、様々な機能を有すること
ができる。また、図24(A)乃至図24(G)には図示していないが、電子機器には、
複数の表示部を有する構成としてもよい。また、該電子機器にカメラ等を設け、静止画を
撮影する機能、動画を撮影する機能、撮影した画像を記録媒体(外部またはカメラに内蔵
)に保存する機能、撮影した画像を表示部に表示する機能、等を有していてもよい。
【0422】
図24(A)乃至図24(G)に示す電子機器の詳細について、以下説明を行う。
【0423】
図24(A)は、携帯情報端末9100を示す斜視図である。携帯情報端末9100が
有する表示部9001は、可撓性を有する。そのため、湾曲した筐体9000の湾曲面に
沿って表示部9001を組み込むことが可能である。また、表示部9001はタッチセン
サを備え、指やスタイラスなどで画面に触れることで操作することができる。例えば、表
示部9001に表示されたアイコンに触れることで、アプリケーションを起動することが
できる。
【0424】
図24(B)は、携帯情報端末9101を示す斜視図である。携帯情報端末9101は
、例えば電話機、手帳又は情報閲覧装置等から選ばれた一つ又は複数の機能を有する。具
体的には、スマートフォンとして用いることができる。なお、携帯情報端末9101は、
スピーカ9003、接続端子9006、センサ9007等を省略して図示しているが、図
24(A)に示す携帯情報端末9100と同様の位置に設けることができる。また、携帯
情報端末9101は、文字や画像情報をその複数の面に表示することができる。例えば、
3つの操作ボタン9050(操作アイコンまたは単にアイコンともいう)を表示部900
1の一の面に表示することができる。また、破線の矩形で示す情報9051を表示部90
01の他の面に表示することができる。なお、情報9051の一例としては、電子メール
やSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)や電話などの着信を知らせる表示
、電子メールやSNSなどの題名、電子メールやSNSなどの送信者名、日時、時刻、バ
ッテリの残量、アンテナ受信の強度などがある。または、情報9051が表示されている
位置に、情報9051の代わりに、操作ボタン9050などを表示してもよい。
【0425】
図24(C)は、携帯情報端末9102を示す斜視図である。携帯情報端末9102は
、表示部9001の3面以上に情報を表示する機能を有する。ここでは、情報9052、
情報9053、情報9054がそれぞれ異なる面に表示されている例を示す。例えば、携
帯情報端末9102の使用者は、洋服の胸ポケットに携帯情報端末9102を収納した状
態で、その表示(ここでは情報9053)を確認することができる。具体的には、着信し
た電話の発信者の電話番号又は氏名等を、携帯情報端末9102の上方から観察できる位
置に表示する。使用者は、携帯情報端末9102をポケットから取り出すことなく、表示
を確認し、電話を受けるか否かを判断できる。
【0426】
図24(D)は、腕時計型の携帯情報端末9200を示す斜視図である。携帯情報端末
9200は、移動電話、電子メール、文章閲覧及び作成、音楽再生、インターネット通信
、コンピュータゲームなどの種々のアプリケーションを実行することができる。また、表
示部9001はその表示面が湾曲して設けられ、湾曲した表示面に沿って表示を行うこと
ができる。また、携帯情報端末9200は、通信規格された近距離無線通信を実行するこ
とが可能である。例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハン
ズフリーで通話することもできる。また、携帯情報端末9200は、接続端子9006を
有し、他の情報端末とコネクターを介して直接データのやりとりを行うことができる。ま
た接続端子9006を介して充電を行うこともできる。なお、充電動作は接続端子900
6を介さずに無線給電により行ってもよい。
【0427】
図24(E)(F)(G)は、折り畳み可能な携帯情報端末9201を示す斜視図であ
る。また、図24(E)が携帯情報端末9201を展開した状態の斜視図であり、図24
(F)が携帯情報端末9201を展開した状態または折り畳んだ状態の一方から他方に変
化する途中の状態の斜視図であり、図24(G)が携帯情報端末9201を折り畳んだ状
態の斜視図である。携帯情報端末9201は、折り畳んだ状態では可搬性に優れ、展開し
た状態では、継ぎ目のない広い表示領域により表示の一覧性に優れる。携帯情報端末92
01が有する表示部9001は、ヒンジ9055によって連結された3つの筐体9000
に支持されている。ヒンジ9055を介して2つの筐体9000間を屈曲させることによ
り、携帯情報端末9201を展開した状態から折りたたんだ状態に可逆的に変形させるこ
とができる。例えば、携帯情報端末9201は、曲率半径1mm以上150mm以下で曲
げることができる。
【0428】
本実施の形態において述べた電子機器は、何らかの情報を表示するための表示部を有す
ることを特徴とする。ただし、本発明の一態様の発光素子は、表示部を有さない電子機器
にも適用することができる。また、本実施の形態において述べた電子機器の表示部におい
ては、可撓性を有し、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる構成、または折り
畳み可能な表示部の構成について例示したが、これに限定されず、可撓性を有さず、平面
部に表示を行う構成としてもよい。
【0429】
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いること
ができる。
【0430】
(実施の形態8)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光素子を有する発光装置について、図25及び
図26を用いて説明する。
【0431】
本実施の形態で示す、発光装置3000の斜視図を図25(A)に、図25(A)に示
す一点鎖線E-F間に相当する断面図を図25(B)に、それぞれ示す。なお、図25
A)において、図面の煩雑さを避けるために、構成要素の一部を破線で表示している。
【0432】
図25(A)(B)に示す発光装置3000は、基板3001と、基板3001上の発
光素子3005と、発光素子3005の外周に設けられた第1の封止領域3007と、第
1の封止領域3007の外周に設けられた第2の封止領域3009と、を有する。
【0433】
また、発光素子3005からの発光は、基板3001及び基板3003のいずれか一方
または双方から射出される。図25(A)(B)においては、発光素子3005からの発
光が下方側(基板3001側)に射出される構成について説明する。
【0434】
また、図25(A)(B)に示すように、発光装置3000は、発光素子3005が第
1の封止領域3007と、第2の封止領域3009とに、囲まれて配置される二重封止構
造である。二重封止構造とすることで、発光素子3005側に入り込む外部の不純物(例
えば、水、酸素など)を、好適に抑制することができる。ただし、第1の封止領域300
7及び第2の封止領域3009を、必ずしも設ける必要はない。例えば、第1封止領域3
007のみの構成としてもよい。
【0435】
なお、図25(B)において、第1の封止領域3007及び第2の封止領域3009は
、基板3001及び基板3003と接して設けられる。ただし、これに限定されず、例え
ば、第1の封止領域3007及び第2の封止領域3009の一方または双方は、基板30
01の上方に形成される絶縁膜、あるいは導電膜と接して設けられる構成としてもよい。
または、第1の封止領域3007及び第2の封止領域3009の一方または双方は、基板
3003の下方に形成される絶縁膜、あるいは導電膜と接して設けられる構成としてもよ
い。
【0436】
基板3001及び基板3003としては、それぞれ先の実施の形態3に記載の基板20
0と、基板220と同様の構成とすればよい。発光素子3005としては、先の実施の形
態に記載の発光素子と同様の構成とすればよい。
【0437】
第1の封止領域3007としては、ガラスを含む材料(例えば、ガラスフリット、ガラ
スリボン等)を用いればよい。また、第2の封止領域3009としては、樹脂を含む材料
を用いればよい。第1の封止領域3007として、ガラスを含む材料を用いることで、生
産性や封止性を高めることができる。また、第2の封止領域3009として、樹脂を含む
材料を用いることで、耐衝撃性や耐熱性を高めることができる。ただし、第1の封止領域
3007と、第2の封止領域3009とは、これに限定されず、第1の封止領域3007
が樹脂を含む材料で形成され、第2の封止領域3009がガラスを含む材料で形成されて
もよい。
【0438】
また、上述のガラスフリットとしては、例えば、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、
酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化セシウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸
化ホウ素、酸化バナジウム、酸化亜鉛、酸化テルル、酸化アルミニウム、二酸化珪素、酸
化鉛、酸化スズ、酸化リン、酸化ルテニウム、酸化ロジウム、酸化鉄、酸化銅、二酸化マ
ンガン、酸化モリブデン、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化タングステン、酸化ビスマス、
酸化ジルコニウム、酸化リチウム、酸化アンチモン、ホウ酸鉛ガラス、リン酸スズガラス
、バナジン酸塩ガラス又はホウケイ酸ガラス等を含む。赤外光を吸収させるため、少なく
とも一種類以上の遷移金属を含むことが好ましい。
【0439】
また、上述のガラスフリットとしては、例えば、基板上にフリットペーストを塗布し、
これに加熱処理、またはレーザ照射などを行う。フリットペーストには、上記ガラスフリ
ットと、有機溶媒で希釈した樹脂(バインダとも呼ぶ)とが含まれる。また、ガラスフリ
ットにレーザ光の波長の光を吸収する吸収剤を添加したものを用いても良い。また、レー
ザとして、例えば、Nd:YAGレーザや半導体レーザなどを用いることが好ましい。ま
た、レーザ照射の際のレーザの照射形状は、円形でも四角形でもよい。
【0440】
また、上述の樹脂を含む材料としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリ
アミド(ナイロン、アラミド等)、ポリイミド、ポリカーボネートまたはアクリル、ウレ
タン、エポキシを用いることができる。また、シロキサン結合を有する樹脂を含む材料を
用いることができる。
【0441】
なお、第1の封止領域3007及び第2の封止領域3009のいずれか一方または双方
にガラスを含む材料を用いる場合、当該ガラスを含む材料と、基板3001との熱膨張率
が近いことが好ましい。上記構成とすることで、熱応力によりガラスを含む材料または基
板3001にクラックが入るのを抑制することができる。
【0442】
例えば、第1の封止領域3007にガラスを含む材料を用い、第2の封止領域3009
に樹脂を含む材料を用いる場合、以下の優れた効果を有する。
【0443】
第2の封止領域3009は、第1の封止領域3007よりも、発光装置3000の外周
部に近い側に設けられる。発光装置3000は、外周部に向かうにつれ、外力等による歪
みが大きくなる。よって、歪みが大きくなる発光装置3000の外周部側、すなわち第2
の封止領域3009に、樹脂を含む材料によって封止し、第2の封止領域3009よりも
内側に設けられる第1の封止領域3007にガラスを含む材料を用いて封止することで、
外力等の歪みが生じても発光装置3000が壊れにくくなる。
【0444】
また、図25(B)に示すように、基板3001、基板3003、第1の封止領域30
07、及び第2の封止領域3009に囲まれた領域には、第1の領域3011が形成され
る。また、基板3001、基板3003、発光素子3005、及び第1の封止領域300
7に囲まれた領域には、第2の領域3013が形成される。
【0445】
第1の領域3011及び第2の領域3013としては、例えば、希ガスまたは窒素ガス
等の不活性ガスが充填されていると好ましい。なお、第1の領域3011及び第2の領域
3013としては、大気圧状態よりも減圧状態であると好ましい。
【0446】
また、図25(B)に示す構成の変形例を図25(C)に示す。図25(C)は、発光
装置3000の変形例を示す断面図である。
【0447】
図25(C)は、基板3003の一部に凹部を設け、該凹部に乾燥剤3018を設ける
構成である。それ以外の構成については、図25(B)に示す構成と同じである。
【0448】
乾燥剤3018としては、化学吸着によって水分等を吸着する物質、または物理吸着に
よって水分等を吸着する物質を用いることができる。例えば、乾燥剤3018として用い
ることができる物質としては、アルカリ金属の酸化物、アルカリ土類金属の酸化物(酸化
カルシウムや酸化バリウム等)、硫酸塩、金属ハロゲン化物、過塩素酸塩、ゼオライト、
シリカゲル等が挙げられる。
【0449】
次に、図25(B)に示す発光装置3000の変形例について、図26(A)(B)(
C)(D)を用いて説明する。なお、図26(A)(B)(C)(D)は、図25(B)
に示す発光装置3000の変形例を説明する断面図である。
【0450】
図26(A)(B)(C)(D)に示す発光装置は、第2の封止領域3009を設けず
に、第1の封止領域3007とした構成である。また、図26(A)(B)(C)(D)
に示す発光装置は、図25(B)に示す第2の領域3013の代わりに領域3014を有
する。
【0451】
領域3014としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド(ナイロ
ン、アラミド等)、ポリイミド、ポリカーボネートまたはアクリル、ウレタン、エポキシ
を用いることができる。また、シロキサン結合を有する樹脂を含む材料を用いることがで
きる。
【0452】
領域3014として、上述の材料を用いることで、いわゆる固体封止の発光装置とする
ことができる。
【0453】
また、図26(B)に示す発光装置は、図26(A)に示す発光装置の基板3001側
に、基板3015を設ける構成である。
【0454】
基板3015は、図26(B)に示すように凹凸を有する。凹凸を有する基板3015
を、発光素子3005の光を取り出す側に設ける構成とすることで、発光素子3005か
らの光の取出し効率を向上させることができる。なお、図26(B)に示すような凹凸を
有する構造の代わりに、拡散板として機能する基板を設けてもよい。
【0455】
また、図26(C)に示す発光装置は、図26(A)に示す発光装置が基板3001側
から光を取り出す構造であったのに対し、基板3003側から光を取り出す構造である。
【0456】
図26(C)に示す発光装置は、基板3003側に基板3015を有する。それ以外の
構成は、図26(B)に示す発光装置と同様である。
【0457】
また、図26(D)に示す発光装置は、図26(C)に示す発光装置の基板3003、
3015を設けずに、基板3016を設ける構成である。
【0458】
基板3016は、発光素子3005の近い側に位置する第1の凹凸と、発光素子300
5の遠い側に位置する第2の凹凸と、を有する。図26(D)に示す構成とすることで、
発光素子3005からの光の取出し効率をさらに、向上させることができる。
【0459】
したがって、本実施の形態に示す構成を実施することにより、水分や酸素などの不純物
による発光素子の劣化が抑制された発光装置を実現することができる。または、本実施の
形態に示す構成を実施することにより、光取出し効率の高い発光装置を実現することがで
きる。
【0460】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせること
ができる。
【0461】
(実施の形態9)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光素子を様々な照明装置及び電子機器に適用す
る一例について、図27及び図28を用いて説明する。
【0462】
本発明の一態様の発光素子を、可撓性を有する基板上に作製することで、曲面を有する
発光領域を有する電子機器、照明装置を実現することができる。
【0463】
また、本発明の一態様を適用した発光装置は、自動車の照明にも適用することができ、
例えば、ダッシュボードや、フロントガラス、天井等に照明を設置することもできる。
【0464】
図27(A)は、多機能端末3500の一方の面の斜視図を示し、図27(B)は、多
機能端末3500の他方の面の斜視図を示している。多機能端末3500は、筐体350
2に表示部3504、カメラ3506、照明3508等が組み込まれている。本発明の一
態様の発光装置を照明3508に用いることができる。
【0465】
照明3508は、本発明の一態様の発光装置を用いることで、面光源として機能する。
したがって、LEDに代表される点光源と異なり、指向性が少ない発光が得られる。例え
ば、照明3508とカメラ3506とを組み合わせて用いる場合、照明3508を点灯ま
たは点滅させて、カメラ3506により撮像することができる。照明3508としては、
面光源としての機能を有するため、自然光の下で撮影したような写真を撮影することがで
きる。
【0466】
なお、図27(A)、(B)に示す多機能端末3500は、図24(A)乃至図24
G)に示す電子機器と同様に、様々な機能を有することができる。
【0467】
また、筐体3502の内部に、スピーカ、センサ(力、変位、位置、速度、加速度、角
速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、
電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を測定する機能を含む
もの)、マイクロフォン等を有することができる。また、多機能端末3500の内部に、
ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサを有する検出装置を設けることで、多
機能端末3500の向き(縦か横か)を判断して、表示部3504の画面表示を自動的に
切り替えるようにすることができる。
【0468】
表示部3504は、イメージセンサとして機能させることもできる。例えば、表示部3
504に掌や指で触れ、掌紋、指紋等を撮像することで、本人認証を行うことができる。
また、表示部3504に近赤外光を発光するバックライト又は近赤外光を発光するセンシ
ング用光源を用いれば、指静脈、掌静脈などを撮像することもできる。なお、表示部35
04に本発明の一態様の発光装置を適用してもよい。
【0469】
図27(C)は、防犯用のライト3600の斜視図を示している。ライト3600は、
筐体3602の外側に照明3608を有し、筐体3602には、スピーカ3610等が組
み込まれている。本発明の一態様の発光装置を照明3608に用いることができる。
【0470】
ライト3600としては、例えば、照明3608を握持する、掴持する、または保持す
ることで発光することができる。また、筐体3602の内部には、ライト3600からの
発光方法を制御できる電子回路を備えていてもよい。該電子回路としては、例えば、1回
または間欠的に複数回、発光が可能なような回路としてもよいし、発光の電流値を制御す
ることで発光の光量が調整可能なような回路としてもよい。また、照明3608の発光と
同時に、スピーカ3610から大音量の警報音が出力されるような回路を組み込んでもよ
い。
【0471】
ライト3600としては、あらゆる方向に発光することが可能なため、例えば、暴漢等
に向けて光、または光と音で威嚇することができる。また、ライト3600にデジタルス
チルカメラ等のカメラ、撮影機能を有する機能を備えてもよい。
【0472】
図28は、発光素子を室内の照明装置8501として用いた例である。なお、発光素子
は大面積化も可能であるため、大面積の照明装置を形成することもできる。その他、曲面
を有する筐体を用いることで、発光領域が曲面を有する照明装置8502を形成すること
もできる。本実施の形態で示す発光素子は薄膜状であり、筐体のデザインの自由度が高い
。したがって、様々な意匠を凝らした照明装置を形成することができる。さらに、室内の
壁面に大型の照明装置8503を備えても良い。また、照明装置8501、8502、8
503に、タッチセンサを設けて、電源のオンまたはオフを行ってもよい。
【0473】
また、発光素子をテーブルの表面側に用いることによりテーブルとしての機能を備えた
照明装置8504とすることができる。なお、その他の家具の一部に発光素子を用いるこ
とにより、家具としての機能を備えた照明装置とすることができる。
【0474】
以上のようにして、本発明の一態様の発光装置を適用して照明装置及び電子機器を得る
ことができる。なお、適用できる照明装置及び電子機器は、本実施の形態に示したものに
限らず、あらゆる分野の照明装置及び電子機器に適用することが可能である。
【0475】
また、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用
いることができる。
【実施例0476】
本実施例では、本発明の一態様である発光素子の作製例を示す。本実施例で作製した発
光素子の断面模式図は、図1(A)に示す発光素子250と同様である。素子構造の詳細
を表1に示す。また、本実施例で使用した化合物の構造と略称を以下に示す。
【0477】
【化1】
【0478】
【化2】
【0479】
【表1】
【0480】
<発光素子1の作製>
基板上に電極101として、ITSO膜を、厚さが110nmになるように形成した。
なお、電極101の電極面積は、4mm(2mm×2mm)とした。
【0481】
次に、電極101上にEL層100を形成した。正孔注入層111としては、1,3,
5-トリ(ジベンゾチオフェン-4-イル)ベンゼン(略称:DBT3P-II)と酸化
モリブデン(MoO)とを重量比(DBT3P-II:MoO)が1:0.5になる
ように、且つ厚さが20nmになるように共蒸着した。また、正孔輸送層112としては
、4-フェニル-4’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略
称:BPAFLP)を厚さが20nmになるように蒸着した。
【0482】
次に、発光層130としては、4,6-ビス[3-(9H-カルバゾール-9-イル)
フェニル]ピリミジン(略称:4,6mCzP2Pm)、9-フェニル-9’-(トリフ
ェニレン-2-イル)-3,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:PCCzTp)、お
よびRubrene(ルブレンともいう)を重量比(4,6mCzP2Pm:PCCzT
p:Rubrene)が0.8:0.2:0.01になるように、且つ厚さが40nmに
なるように共蒸着した。なお、発光層130において、4,6mCzP2PmおよびPC
CzTpがホスト材料131であり、Rubreneがゲスト材料132(蛍光材料)で
ある。
【0483】
また、発光層130上に、電子輸送層118として、4,6mCzP2Pmを厚さが2
0nmになるよう、及びBPhenを厚さが10nmになるよう順次蒸着した。次に、電
子注入層119として、フッ化リチウム(LiF)を厚さが1nmになるように蒸着した
【0484】
また、電極102としては、アルミニウム(Al)を厚さが200nmになるように形
成した。
【0485】
次に、窒素雰囲気のグローブボックス内において、有機EL用シール材を用いて、EL
層100を形成した基板に封止基板を固定することで、発光素子1を封止した。具体的に
は、基板に形成したEL層100の周囲にシール材を塗布し、該基板と封止基板とを貼り
合わせ、波長が365nmの紫外光を6J/cm照射し、80℃にて1時間熱処理した
。以上の工程により発光素子1を得た。
【0486】
<発光素子2乃至4の作製>
発光素子2乃至4は、先に示す発光素子1の作製と、発光層130のホスト材料のみ異
なり、それ以外の工程は、発光素子1と同様の作製方法とした。
【0487】
発光素子2の発光層130としては、4,6mCzP2Pm、N-(1,1’-ビフェ
ニル-4-イル)-N-[4-(ジベンゾフラン-4-イル)フェニル]-9,9-ジメ
チル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:FrBBiF-II)、およびRubre
neを重量比(4,6mCzP2Pm:FrBBiF-II:Rubrene)が0.8
:0.2:0.01になるように、且つ厚さが40nmになるように共蒸着した。なお、
発光層130において、4,6mCzP2PmおよびFrBBiF-IIがホスト材料1
31であり、Rubreneがゲスト材料132(蛍光材料)である。
【0488】
発光素子3の発光層130としては、4,6mCzP2Pm、N-(1,1’-ビフェ
ニル-4-イル)-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニ
ル]-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:PCBBiF)、およ
びRubreneを重量比(4,6mCzP2Pm:PCBBiF:Rubrene)が
0.8:0.2:0.01になるように、且つ厚さが40nmになるように共蒸着した。
なお、発光層130において、4,6mCzP2PmおよびPCBBiFがホスト材料1
31であり、Rubreneがゲスト材料132(蛍光材料)である。
【0489】
発光素子4の発光層130としては、4,6mCzP2Pm、N-(4-ビフェニル)
-N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9-フェニル-9H-カル
バゾール-3-アミン(略称:PCBiF)、およびRubreneを重量比(4,6m
CzP2Pm:PCBiF:Rubrene)が0.8:0.2:0.01になるように
、且つ厚さが40nmになるように共蒸着した。なお、発光層130において、4,6m
CzP2PmおよびPCBiFがホスト材料131であり、Rubreneがゲスト材料
132(蛍光材料)である。
【0490】
<発光素子の動作特性1>
次に、作製した発光素子1乃至発光素子4の発光特性について測定した。なお、測定は
室温(23℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0491】
ここで、1000cd/m付近における発光素子の発光特性を以下の表2に示す。ま
た、発光素子の電流効率-輝度特性を図29に、外部量子効率-輝度特性を図30に、輝
度-電圧特性を図31に示す。また、発光素子に2.5mA/cmの電流密度で電流を
流したときの電界発光スペクトルを図32に示す。
【0492】
【表2】
【0493】
図32に示すように、発光素子1乃至発光素子4の電界発光スペクトルピークからは、
蛍光材料であるRubreneが呈する黄色発光のみを観測した。
【0494】
また、図29図30、及び表2に示すように、発光素子1乃至発光素子4は高い電流
効率、及び外部量子効率を示す結果が得られた。また、特に発光素子4は、1000cd
/m付近において、外部量子効率が8%より高い効率を示す結果が得られた。
【0495】
一対の電極から注入されたキャリア(正孔及び電子)の再結合によって生成する一重項
励起子の生成確率が最大で25%であるため、外部への光取り出し効率を20%とした場
合の外部量子効率は、最大で5%となる。発光素子1乃至発光素子4においては、外部量
子効率が5%より高い効率が得られている。これは、発光素子1乃至発光素子4において
は、一対の電極から注入されたキャリア(正孔及び電子)の再結合によって生成した一重
項励起子に由来する発光に加えて、ExEFによって、三重項励起子から生成した一重項
励起子に由来する発光が得られているためである。
【0496】
また、図31及び表2に示すように、発光素子1乃至発光素子4は低い電圧で駆動して
いる。すなわち、ExEFを用いた発光層を有することで、低い電圧で駆動する発光素子
を作製することができる結果が得られた。また、消費電力の低減された発光素子を作製す
ることができる結果が得られた。
【0497】
次に、発光素子1乃至発光素子4がExEFにより発光しているかを調査するため、ゲ
スト材料132を有さない発光素子の作製および測定を行った。素子構造の詳細を表3に
示す。
【0498】
【表3】
【0499】
<発光素子5乃至8の作製>
発光素子5乃至8は、それぞれ先に示す発光素子1乃至4の作製と、発光層130のゲ
スト材料132を有さない点のみ異なり、それ以外の工程は、それぞれ発光素子1乃至4
と同様の作製方法とした。
【0500】
発光素子5の発光層130としては、4,6mCzP2Pm、及びPCCzTpを重量
比(4,6mCzP2Pm:PCCzTp)が0.8:0.2になるように、且つ厚さが
40nmになるように共蒸着した。なお、発光層130において、4,6mCzP2Pm
およびPCCzTpがホスト材料131に相当し、ゲスト材料132を有さない。
【0501】
発光素子6の発光層130としては、4,6mCzP2Pm、及びFrBBiF-II
を重量比(4,6mCzP2Pm:FrBBiF-II)が0.8:0.2になるように
、且つ厚さが40nmになるように共蒸着した。なお、発光層130において、4,6m
CzP2PmおよびFrBBiF-IIがホスト材料131に相当し、ゲスト材料132
を有さない。
【0502】
発光素子7の発光層130としては、4,6mCzP2Pm、及びPCBBiFを重量
比(4,6mCzP2Pm:PCBBiF)が0.8:0.2になるように、且つ厚さが
40nmになるように共蒸着した。なお、発光層130において、4,6mCzP2Pm
およびPCBBiFがホスト材料131に相当し、ゲスト材料132を有さない。
【0503】
発光素子8の発光層130としては、4,6mCzP2Pm、及びPCBiFを重量比
(4,6mCzP2Pm:PCBiF)が0.8:0.2になるように、且つ厚さが40
nmになるように共蒸着した。なお、発光層130において、4,6mCzP2Pmおよ
びPCBiFがホスト材料131に相当し、ゲスト材料132を有さない。
【0504】
<発光素子の動作特性2>
次に、作製した発光素子5乃至8の発光特性について測定した。なお、測定は室温(2
3℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0505】
ここで、1000cd/m付近における発光素子の発光特性を以下の表4に示す。ま
た、発光素子の電流効率-輝度特性を図33に、外部量子効率-輝度特性を図34に、輝
度-電圧特性を図35に示す。また、発光素子に2.5mA/cmの電流密度で電流を
流したときの電界発光スペクトルを図36に示す。
【0506】
【表4】
【0507】
また、図37に、ホスト材料として用いた4,6mCzP2Pm、PCCzTp、Fr
BBiF-II、PCBBiF、及びPCBiF、それぞれの薄膜の発光スペクトルを示
す。なお、薄膜の発光スペクトルの測定にはPL-EL測定装置(浜松ホトニクス社製)
を用いた。
【0508】
図37に示すように、ホスト材料として用いた4,6mCzP2Pm、PCCzTp、
FrBBiF-II、PCBBiF、及びPCBiFからは、ピーク波長がそれぞれ49
3nm、418nm、428nm、436nm、430nmの青色発光が観測された。
【0509】
一方、図36に示すように、発光素子5、発光素子6、発光素子7、及び発光素子8の
電界発光スペクトルピークからは、ピーク波長がそれぞれ499nm、513nm、53
6nm、及び552nmの緑色から黄色の発光が観測され、発光スペクトルの半値全幅は
いずれも化合物単体の発光スペクトルよりも大きい結果となった。発光素子5乃至発光素
子8の発光スペクトルの波長は、4,6mCzP2PmのLUMO準位とPCCzTpの
HOMO準位、4,6mCzP2PmのLUMO準位とFrBBiF-IIのHOMO準
位、4,6mCzP2PmのLUMO準位とPCBBiFのHOMO準位、及び4,6m
CzP2PmのLUMO準位とPCBiFのHOMO準位、とのエネルギー差にそれぞれ
相関があるため、4,6mCzP2PmとPCCzTp、4,6mCzP2PmとFrB
BiF-II、4,6mCzP2PmとPCBBiF、及び4,6mCzP2PmとPC
BiF、との励起錯体が呈する発光であるといえる。
【0510】
また、図38には、発光素子1乃至発光素子4のゲスト材料として用いたRubren
eを有するトルエン溶液の吸収スペクトルを測定した結果を示す。
【0511】
図38に示すようにRubreneの吸収スペクトルは、450nm乃至550nm付
近に高いモル吸光係数を有する吸収帯を有する。これは、図36に示した励起錯体の電界
発光スペクトルの波長範囲と概ね一致する結果となっている。したがって、発光素子1乃
至発光素子4のホスト材料として励起錯体を形成する組み合わせの化合物を用いることで
、ゲスト材料へのエネルギー移動効率が高くなるため好適であることが分かった。
【0512】
また、図33図34、及び表4に示すように、発光素子7及び発光素子8は高い発光
効率(電流効率、及び外部量子効率)を示す結果が得られた。また、特に発光素子8は、
高輝度側でも発光効率の低下(ロールオフ)が少ない結果が得られた。
【0513】
1000cd/m付近において、発光素子5及び発光素子6の発光効率は概ね一致し
ており、発光素子7は発光素子5及び6の発光効率より高く、発光素子8は発光素子7よ
り発光効率が高い結果が得られた。また、先に示した発光素子1乃至発光素子4において
は、1000cd/m付近において、発光素子1及び発光素子2の発光効率は概ね一致
しており、発光素子3は発光素子1及び2の発光効率より高く、発光素子4は発光素子3
より発光効率が高い結果が得られた。
【0514】
すなわち、励起錯体が呈する発光の発光効率と、ゲスト材料が呈する発光の発光効率に
相関がある結果が得られた。励起錯体の発光効率が高いということは、励起錯体における
無輻射失活の速度定数が小さいことを意味し、逆項間交差の速度定数が大きいことが示唆
される。
【0515】
そこで、次に、発光素子5乃至発光素子8の発光層と同等の薄膜に対して、時間分解蛍
光測定を行った。
【0516】
<薄膜サンプルの作製>
発光素子の発光層の時間分解蛍光測定を行うため、石英基板上に真空蒸着法により薄膜
サンプルを作製した。
【0517】
薄膜1としては、4,6mCzP2Pm、及びFrBBiF-IIを重量比(4,6m
CzP2Pm:FrBBiF-II)が0.8:0.2になるように、且つ厚さが50n
mになるように共蒸着した。
【0518】
薄膜2としては、4,6mCzP2Pm、及びPCBBiFを重量比(4,6mCzP
2Pm:PCBBiF)が0.8:0.2になるように、且つ厚さが50nmになるよう
に共蒸着した。
【0519】
薄膜3としては、4,6mCzP2Pm、及びPCBiFを重量比(4,6mCzP2
Pm:PCBiF)が0.8:0.2になるように、且つ厚さが50nmになるように共
蒸着した。
【0520】
また、窒素雰囲気のグローブボックス内において、有機EL用シール材を用いて、薄膜
サンプルを成膜した石英基板上に封止基板を固定することで、薄膜1乃至薄膜3をそれぞ
れ封止した。具体的には、石英基板に形成した薄膜の周囲にシール材を塗布し、該石英基
板と封止基板とを貼り合せ、波長が365nmの紫外光を6J/cm照射し、80℃に
て1時間熱処理した。
【0521】
<薄膜サンプルの時間分解蛍光測定>
測定にはピコ秒蛍光寿命測定システム(浜松ホトニクス社製)を用いた。本測定では、
薄膜が呈する蛍光発光の寿命を測定するため、薄膜にパルスレーザを照射し、レーザ照射
後から減衰していく発光をストリークカメラにより時間分解測定した。パルスレーザには
波長が337nmの窒素ガスレーザーを用い、500psのパルスレーザを10Hzの周
期で薄膜に照射し、繰り返し測定したデータを積算することにより、S/N比の高いデー
タを得た。また、測定は室温(23℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0522】
薄膜1乃至薄膜3からは、2つの化合物が形成する励起錯体が呈する発光をそれぞれ観
測した。測定によって得られた減衰曲線を図39に示す。
【0523】
また、図39に示す減衰曲線について、以下の数式(4)を用いてフィッティングを行
った。
【0524】
【数4】
【0525】
数式(4)において、Lは規格化した発光強度を表し、tは経過時間を表す。減衰曲線
のフィッティングを行った結果、nが1及び2でフィッティングを行うことができた。減
衰曲線のフィッティング結果から、薄膜1の発光成分には、蛍光寿命が0.60μsの早
い蛍光成分(prompt成分を含む)と、96μsの遅延蛍光成分(delayed成
分ともいう)が含まれていることが分かった。また、薄膜2の発光成分には、蛍光寿命が
0.72μsの早い蛍光成分と、55μsの遅延蛍光成分が含まれていることが分かった
。一方、薄膜3の発光成分には、蛍光寿命が0.67μsの早い蛍光成分と、23μsの
遅延蛍光成分が含まれていることが分かった。すなわち、高い発光効率が得られた発光素
子4や発光素子8で用いた励起錯体の遅延蛍光寿命は、他の発光素子2、発光素子3、発
光素子6、及び発光素子7で用いた励起錯体の遅延蛍光寿命よりも短く、50μs以下で
あることが分かった。また、該遅延蛍光成分が発光に占める割合は、薄膜1乃至薄膜3で
それぞれ、0.084%、3.8%、9.4%と算出された。
【0526】
上記のように、薄膜3においては、比較的短い蛍光寿命を有する遅延蛍光成分を有する
ことが分かった。遅延蛍光成分の寿命が短いということは、逆項間交差の速度定数が早い
ことを示唆するため、発光素子8によって得られた結果を支持する結果となった。すなわ
ち、励起錯体の三重項励起子が比較的短い時間で一重項励起子に変換されることで、高輝
度領域(励起子密度が高い領域)においても励起子密度の飽和が生じなかったため、発光
素子8は高輝度領域での発光効率の低下が生じにくい結果になったといえる。また、発光
素子1乃至4を比較すると、発光素子3(励起錯体の時間分解蛍光測定における遅延蛍光
寿命は55μs)でも発光素子1および発光素子2よりは発光効率が向上しているが、大
きな発光効率の向上が見られるのは発光素子4(励起錯体の時間分解蛍光測定における遅
延蛍光寿命は23μs)である。つまり、本発明の一態様においては、励起錯体の時間分
解蛍光測定における遅延蛍光寿命が50μs以下であることが好ましく、より好ましくは
40μs以下、さらに好ましくは30μs以下である。
【0527】
また、時間分解蛍光測定において、薄膜3は、呈する発光のうち遅延蛍光成分を5%以
上含むことから、一重項励起状態と三重項励起状態とのエネルギー移動が比較的高い確率
で生じていることが示唆される。
【0528】
また、寿命の短い遅延蛍光成分を有する励起錯体をホスト材料として有する発光素子4
は、高い発光効率を示す結果が得られている。これは、励起錯体の三重項励起子が比較的
短い時間で一重項励起子に変換されることで、励起錯体の三重項励起状態からゲスト材料
の三重項励起状態へのエネルギー移動効率を低減し、励起錯体およびゲスト材料における
一重項励起子生成効率を向上させることができたためである。
【0529】
以上のように、ホスト材料として励起錯体を形成する化合物を有し、該励起錯体が50
μs以下という比較的短い蛍光寿命を有する遅延蛍光成分を5%以上の割合で有すること
で、発光素子4に示すような高い発光効率を示す発光素子を作製できることが分かった。
【0530】
以上、本実施例に示す構成は、他の実施の形態と適宜組み合わせて用いることができる
【符号の説明】
【0531】
100 EL層
101 電極
101a 導電層
101b 導電層
101c 導電層
102 電極
103 電極
103a 導電層
103b 導電層
104 電極
104a 導電層
104b 導電層
106 発光ユニット
108 発光ユニット
111 正孔注入層
112 正孔輸送層
113 電子輸送層
114 電子注入層
115 電荷発生層
116 正孔注入層
117 正孔輸送層
118 電子輸送層
119 電子注入層
120 発光層
121 ホスト材料
122 ゲスト材料
123B 発光層
123G 発光層
123R 発光層
130 発光層
131 ホスト材料
131_1 有機化合物
131_2 有機化合物
132 ゲスト材料
140 発光層
141 ホスト材料
141_1 有機化合物
141_2 有機化合物
142 ゲスト材料
145 隔壁
150 発光層
150a 発光層
150b 発光層
200 基板
220 基板
221B 領域
221G 領域
221R 領域
222B 領域
222G 領域
222R 領域
223 遮光層
224B 光学素子
224G 光学素子
224R 光学素子
250 発光素子
260 発光素子
262 発光素子
270a 発光素子
270b 発光素子
272a 発光素子
272b 発光素子
301_1 配線
301_5 配線
301_6 配線
301_7 配線
302_1 配線
302_2 配線
303_1 トランジスタ
303_6 トランジスタ
303_7 トランジスタ
304 容量素子
304_1 容量素子
304_2 容量素子
305 発光素子
306_1 配線
306_3 配線
307_1 配線
307_3 配線
308_1 トランジスタ
308_6 トランジスタ
309_1 トランジスタ
309_2 トランジスタ
311_1 配線
311_3 配線
312_1 配線
312_2 配線
600 表示装置
601 信号線駆動回路部
602 画素部
603 走査線駆動回路部
604 封止基板
605 シール材
607 領域
608 配線
609 FPC
610 素子基板
611 トランジスタ
612 トランジスタ
613 下部電極
614 隔壁
616 EL層
617 上部電極
618 発光素子
621 光学素子
622 遮光層
623 トランジスタ
624 トランジスタ
801 画素回路
802 画素部
804 駆動回路部
804a 走査線駆動回路
804b 信号線駆動回路
806 保護回路
807 端子部
852 トランジスタ
854 トランジスタ
862 容量素子
872 発光素子
1001 基板
1002 下地絶縁膜
1003 ゲート絶縁膜
1006 ゲート電極
1007 ゲート電極
1008 ゲート電極
1020 層間絶縁膜
1021 層間絶縁膜
1022 電極
1024B 下部電極
1024G 下部電極
1024R 下部電極
1024Y 下部電極
1025 隔壁
1026 上部電極
1028 EL層
1029 封止層
1031 封止基板
1032 シール材
1033 基材
1034B 着色層
1034G 着色層
1034R 着色層
1034Y 着色層
1035 遮光層
1036 オーバーコート層
1037 層間絶縁膜
1040 画素部
1041 駆動回路部
1042 周辺部
2000 タッチパネル
2001 タッチパネル
2501 表示装置
2502R 画素
2502t トランジスタ
2503c 容量素子
2503g 走査線駆動回路
2503s 信号線駆動回路
2503t トランジスタ
2509 FPC
2510 基板
2510a 絶縁層
2510b 可撓性基板
2510c 接着層
2511 配線
2519 端子
2521 絶縁層
2528 隔壁
2550R 発光素子
2560 封止層
2567BM 遮光層
2567p 反射防止層
2567R 着色層
2570 基板
2570a 絶縁層
2570b 可撓性基板
2570c 接着層
2580R 発光モジュール
2590 基板
2591 電極
2592 電極
2593 絶縁層
2594 配線
2595 タッチセンサ
2597 接着層
2598 配線
2599 接続層
2601 パルス電圧出力回路
2602 電流検出回路
2603 容量
2611 トランジスタ
2612 トランジスタ
2613 トランジスタ
2621 電極
2622 電極
3000 発光装置
3001 基板
3003 基板
3005 発光素子
3007 封止領域
3009 封止領域
3011 領域
3013 領域
3014 領域
3015 基板
3016 基板
3018 乾燥剤
3500 多機能端末
3502 筐体
3504 表示部
3506 カメラ
3508 照明
3600 ライト
3602 筐体
3608 照明
3610 スピーカ
8000 表示モジュール
8001 上部カバー
8002 下部カバー
8003 FPC
8004 タッチセンサ
8005 FPC
8006 表示装置
8009 フレーム
8010 プリント基板
8011 バッテリ
8501 照明装置
8502 照明装置
8503 照明装置
8504 照明装置
9000 筐体
9001 表示部
9003 スピーカ
9005 操作キー
9006 接続端子
9007 センサ
9008 マイクロフォン
9050 操作ボタン
9051 情報
9052 情報
9053 情報
9054 情報
9055 ヒンジ
9100 携帯情報端末
9101 携帯情報端末
9102 携帯情報端末
9200 携帯情報端末
9201 携帯情報端末
図1
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図39