(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190129
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】作業機及び作業機の自動走行制御システム
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20221215BHJP
A01C 11/02 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
A01B69/00 303M
A01B69/00 303T
A01C11/02 331D
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177301
(22)【出願日】2022-11-04
(62)【分割の表示】P 2018239757の分割
【原出願日】2018-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】直本 哲
(72)【発明者】
【氏名】宮西 吉秀
(72)【発明者】
【氏名】生野 仁
(72)【発明者】
【氏名】目野 鷹博
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和正
(57)【要約】
【課題】圃場形状を好適に算出可能な作業機及び作業機の自動走行制御システムを提供する。
【解決手段】航法衛星を用いて走行機体の位置を検出可能な衛星測位ユニット80と、圃場に対する作業が可能な作業装置と、作業装置による作業を伴う周回走行が行われている間における走行機体の位置の経時的な検出によって取得した走行機体の走行軌跡に基づいて圃場形状を算出可能な圃場形状算出部(55B)と、を備えた。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
航法衛星を用いて走行機体の位置を検出可能な衛星測位ユニットと、
圃場に対する作業が可能な作業装置と、
前記作業装置による前記作業を伴う周回走行が行われている間における前記走行機体の位置の経時的な検出によって取得した前記走行機体の走行軌跡に基づいて圃場形状を算出可能な圃場形状算出部と、を備えた作業機又は作業機の自動走行制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機及び作業機の自動走行制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に、作業車の圃場での走行経路を設定可能な走行経路生成システムが開示されている。この走行経路生成システムでは、複数の目標走行経路(文献では『往路作業経路』)と旋回経路とが設定され、出入口(文献では『入出経路』)から最も離れた目標走行経路から走行が開始され、この目標走行経路から順に出入口に向けて車体が往復走行するように目標走行経路の走行順位が設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、圃場の畦際には、例えば電柱や水口等の障害物が存在する場合が多いため、目標走行経路に沿って走行した後に走行機体が次の目標走行経路へ自動的に旋回走行するためには、目標走行経路の設定は、このような障害物と走行機体との接触が回避されるように考慮されなくてはならない。また、トラクタやコンバインは既作業領域を再度走行可能であるのに対し、植播系作業機は、種苗を踏み荒らさないように既作業領域を回避して走行することが要求される。このため、植播系作業機の自動走行制御では、このような実情が考慮された上で目標走行経路が設定される必要がある。
【0005】
本発明の目的は、圃場形状を好適に算出可能な作業機及び作業機の自動走行制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の作業車又は作業機の自動走行制御システムは、航法衛星を用いて走行機体の位置を検出可能な衛星測位ユニットと、圃場に対する作業が可能な作業装置と、前記作業装置による前記作業を伴う周回走行が行われている間における前記走行機体の位置の経時的な検出によって取得した前記走行機体の走行軌跡に基づいて圃場形状を算出可能な圃場形状算出部と、を備えた。
また、本発明による植播系作業機の自動走行制御システムは、航法衛星を用いて走行機体の位置を検出可能な衛星測位ユニットと、圃場に対する種苗の植播作業が可能な作業装置と、前記走行機体が前記植播作業を行いつつ走行する複数の目標走行経路を圃場形状に基づいて互いに平行に並ぶ状態で設定可能な経路設定部と、前記走行機体の位置に基づいて前記作業装置を制御可能な自動作業制御部と、前記目標走行経路に沿って前記走行機体が走行することと、前記目標走行経路に沿って前記走行機体が走行した後に次の前記目標走行経路へ旋回走行することと、を前記走行機体の位置に基づいて制御する自動往復走行制御が可能な自動走行制御部と、が備えられ、前記自動走行制御部は、前記圃場形状に基づく圃場の外周から圃場内側に予め設定された設定距離以上に離れた位置で前記自動往復走行制御に基づく前記旋回走行を可能に構成されていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る自動走行制御システムの技術的特徴は、植播系作業機そのものにも適用可能であって、そのため、本発明は、そのような植播系作業機も権利の対象とすることができる。その場合における植播系作業機は、航法衛星を用いて走行機体の位置を検出可能な衛星測位ユニットと、圃場に対する種苗の植播作業が可能な作業装置と、前記走行機体が前記植播作業を行いつつ走行する複数の目標走行経路を圃場形状に基づいて互いに平行に並ぶ状態で設定可能な経路設定部と、前記走行機体の位置に基づいて前記作業装置を制御可能な自動作業制御部と、前記走行機体の位置に基づいて、前記目標走行経路に沿って前記走行機体が走行することと、前記目標走行経路に沿って前記走行機体が走行した後に次の前記目標走行経路へ旋回走行することと、を制御する自動往復走行制御が可能な自動走行制御部と、が備えられ、前記自動走行制御部は、前記圃場形状に基づく圃場の外周から圃場内側に予め設定された設定距離以上に離れた位置で前記自動往復走行制御に基づく前記旋回走行を可能に構成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明によると、圃場の畦際から設定距離以上に離れた箇所で旋回走行が行われるため、圃場の畦際に、例えば電柱や水口等の障害物が存在する場合であっても、これらの障害物に接触することなく自動往復走行制御に基づく旋回走行が可能となる。また、本発明であれば、自動往復走行制御が圃場の畦際から設定距離以上に離れた圃場内側の範囲で行われるため、自動往復走行制御が行われた後で圃場の外周領域に未作業領域を残すことが可能となる。このため、圃場の内側において植播作業が完了した種苗が踏み荒らされることなく、圃場の外周領域で残りの植播作業が円滑に行われる。また、圃場の畦際に障害物が存在する場合に、自動往復走行制御が圃場内側の範囲で行われるため、圃場の外周領域はだけ人為操作による植播作業を行うことも可能である。これにより、障害物との接触を回避しながら精度よく自動走行制御が可能な植播系作業機及び植播系作業機の自動走行制御システムが実現される。
【0009】
なお、本発明における『植播作業』は、圃場に対して発芽前の種子を種蒔きしたり、圃場に対して発芽後の苗を移植したりする作業の総称を意味する。また、本発明における『植播系作業機』は、上述した種蒔きが可能な作業機や苗の移植が可能な作業機の総称を意味する。また、本発明における『種苗』は、発芽前の種子と発芽後の苗とを含むものである。また、本発明における『自動往復走行制御』は、自動走行制御の一形態に含まれる。
【0010】
本発明において、収穫作物を収穫する収穫機の作業幅を記憶可能な記憶部が備えられ、圃場において前記自動往復走行制御に基づいて前記植播作業が行われる内側作業領域よりも圃場外側は、前記走行機体が周回走行を可能な外周領域であって、自動作業制御部は、前記外周領域における周回走行によって前記植播作業が行われる際の前記作業装置の実際の作業幅の合計が前記収穫機の作業幅の整数倍となるように、前記作業装置の作業幅のうち動作する作業幅を制御可能に構成されていると好適である。また、この構成において、前記経路設定部は、前記外周領域における周回走行によって前記植播作業が行われる際の前記作業装置の実際の作業幅の合計が前記収穫機の作業幅の整数倍となるように、前記目標走行経路を設定可能に構成されている構成も好適である。
【0011】
収穫機が収穫作物を収穫する場合、まずは圃場の外周に沿って収穫機が旋回走行しながら収穫作業を行い、次に圃場の内側で収穫機が前進走行と機体の進行方向を反転させる旋回走行とを交互に繰り返しながら収穫作業を行う。この際、内側作業領域と外周領域と境界で種苗の植播作業の間隔がずれる場合が多い。このため、この境界上を跨ぐ状態で収穫機による収穫作業が行われると、例えば収穫機の一例である自脱型コンバインのデバイダが収穫作物を押し倒して収穫ロスが発生することも考えられる。本構成であれば、外周領域に、収穫機の作業幅の整数倍となるように植播作業が行われるため、収穫機が収穫作物を収穫する際に上述の不都合が発生する虞が軽減される。なお、作業装置の作業幅のうち動作する作業幅を制御する構成に関しては、作業装置の作業幅すべてが動作する場合も含まれる。
【0012】
本発明において、前記作業装置に、圃場の凹凸を整地可能な整地ロータが含まれ、前記自動作業制御部は、前記旋回走行が行われた箇所で前記植播作業が行われる場合に、圃場の凹凸を整地するように前記整地ロータを制御可能に構成されていると好適である。
【0013】
旋回走行が行われた箇所は、走行機体が走行した轍によって圃場の整地状態が荒れていることが考えられる。この状態で移植作業が行われると浮き苗が生じる虞があるため、本構成によって圃場表面の凹凸が整地されつつ移植作業が行われ、浮き苗等の不都合が発生する虞が軽減される。
【0014】
本発明において、前記経路設定部は、圃場において前記自動往復走行制御に基づいて前記植播作業が行われる内側作業領域よりも圃場外側に少なくとも二周分の周回走行経路を設定可能に構成され、前記自動走行制御部は、少なくとも一周分の前記周回走行経路に沿って前記走行機体が走行するように制御する自動走行制御を可能に構成されていると好適である。
【0015】
本構成によって、作業装置の作業幅よりも広い必要十分な旋回走行のスペースが確保され、走行機体が圃場畦際の障害物に接触することなく自動往復走行制御が効率よく行われる。また、本構成であれば、人為操作による植播作業が必要な場合であっても、人為操作される領域が外周側の周回走行経路の領域に絞られる。これにより、自動走行制御による植播作業が出来るだけ圃場外周側まで活用され、かつ、圃場畦際の障害物との接触が確実に回避される。
【0016】
本発明において、前記走行機体の位置の経時的な検出によって取得した前記走行機体の走行軌跡に基づいて前記圃場形状を算出可能な圃場形状算出部が備えられ、前記圃場形状算出部は、前記作業装置が前記植播作業を行うとともに前記走行機体が圃場の外周に沿って周回走行することによって前記圃場形状を算出可能なように構成され、前記設定距離に、前記圃場形状の算出のための周回走行における前記植播作業によって形成された外周既作業領域の作業幅が含まれると好適である。
【0017】
本構成であれば、最初に走行機体が圃場の外周に沿って走行することによって圃場形状が算出され、この走行時に植播作業が行われる。このため、最初に走行機体が圃場の外周に沿って走行する際に植播作業が行われない構成と比較して、植播作業が効率的に行われる。また、設定距離に外周既作業領域が含まれる構成によって、圃場の監視者や走行機体の搭乗者が植播系作業機の自動走行を監視する場合に、監視者やの搭乗者が外周既作業領域を設定距離の目安として視認できる。
【0018】
本発明において、補給資材を提供可能な補給位置が前記圃場形状の外周を形成する辺のうちの少なくとも一辺よりも圃場外側に隣接する場合、前記自動作業制御部は、前記補給位置に隣接する前記辺における前記植播作業では前記作業装置の作業幅のうち圃場外側の幅だけ前記作業装置が動作するように前記作業装置を制御可能に構成されていると好適である。
【0019】
圃場形状の外周のうち、補給位置に隣接する箇所に、作業装置の作業幅に亘って植播作業が行われた場合、補給時に走行機体が補給位置に接近し難くなり、補給作業に支障を及ぼす虞がある。本構成によると、補給位置が隣接する箇所では、作業装置のうちの圃場内側部分が動作せずに植播作業が行われないため、補給時に走行機体が補給位置に接近し易くなり、補給作業が円滑に行われる。
【0020】
本発明において、前記経路設定部は、外周既作業領域と、前記自動往復走行制御に基づいて前記植播作業が行われる内側作業領域と、の間に前記作業装置が前記植播作業を前記作業装置の作業幅に亘って行うとともに前記走行機体が圃場を周回走行する周回走行経路を確保するように前記目標走行経路を設定可能に構成され、前記自動走行制御部は、前記周回走行経路に沿って前記走行機体が走行するように制御する自動走行制御を可能に構成されていると好適である。
【0021】
本構成であれば、圃場の畦際が既に外周既作業領域として植播作業を完了している領域であるため、走行機体が圃場畦際の障害物に接触することなく自動走行制御が行われる。
【0022】
本発明において、前記経路設定部は、前記周回走行経路における前記自動走行制御が完了するときに、圃場に前記走行機体が出入り可能な出入口から予め設定された範囲内に位置するとともに前記走行機体の進行方向が前記出入口の傾斜方向に沿うように前記周回走行経路を設定可能に構成されていると好適である。
【0023】
本構成であれば、自動走行制御の完了時に走行機体が前進すれば、走行機体はそのまま出入口から圃場の外へ出られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】植播系作業機である田植機を示す側面図である。
【
図2】植播系作業機の自動走行制御システムの構成を示すブロック図である。
【
図3】自動走行制御の機能とデータの流れを示す機能ブロック図である。
【
図4】圃場形状を取得するための周回走行を示す圃場の平面図である。
【
図5】周回走行に伴って植播作業が行われた状態を示す圃場の平面図である。
【
図6】目標走行経路及び旋回経路の設定を示す圃場の平面図である。
【
図7】目標走行経路及び旋回経路の設定を示す圃場の平面図である。
【
図8】周回走行経路の設定を示す圃場の平面図である。
【
図9】最後の目標走行経路における植播作業を示す平面図である。
【
図10】最初及び最後の目標走行経路における植播作業を示す平面図である。
【
図11】目標走行経路及び旋回経路の設定を示す圃場の平面図である。
【
図12】周回走行経路の設定を示す圃場の平面図である。
【
図13】一周目の周回走行経路に沿って植播作業が行われた状態を示す圃場の平面図である。
【
図14】コンバインによる収穫作業の流れを説明する説明図である。
【
図15】内側作業領域と外周領域との夫々における苗の移植状態を示す平面図である。
【
図16】別実施形態における目標走行経路及び旋回経路の設定を示す圃場の平面図である。
【
図17】苗植付装置が外周領域と内側作業領域との境界に跨る状態で植播作業が行われる状態を示す圃場の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
〔植播系作業機の基本構成〕
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本発明における『植播作業』は、圃場に対して発芽前の種子を種蒔きしたり、圃場に対して発芽後の苗を移植したりする作業の総称を意味する。また、本発明における『植播系作業機』は、上述した種蒔きが可能な作業機や苗の移植が可能な作業機の総称を意味する。また、本発明における『種苗』は、発芽前の種子と発芽後の苗とを含むものである。ここでは、植播系作業機の一例として乗用型田植機を例に挙げて説明する。なお、
図1において、矢印「F」が走行機体Cの機体前部側、矢印「B」が走行機体Cの機体後部側である。
【0026】
図1に示されているように、乗用型田植機には、左右一対の操舵車輪10,10と、左右一対の後車輪11,11と、を有する走行機体Cが備えられている。また、走行機体Cの後部に作業装置としての苗植付装置Wが上下昇降可能に連結され、苗植付装置Wは圃場に対する苗(種苗)の移植作業(植播作業の一形態)を可能に構成されている。左右一対の操舵車輪10は、走行機体Cの機体前部に設けられて走行機体Cの向きを変更操作自在なように構成され、左右一対の後車輪11は、走行機体Cの機体後部に設けられている。
苗植付装置Wは、リンク機構21を介して走行機体Cの後端に昇降自在に連結されている。リンク機構21は昇降用油圧シリンダ20の伸縮作動により昇降作動する。これにより、苗植付装置Wは、圃場の田面に降下して移植作業を行う作業状態と、圃場の田面の上方に上昇して移植作業を行わない非作業状態と、に切換可能に構成されている。
【0027】
走行機体Cの前部には、開閉式のボンネット12が備えられている。ボンネット12内には、エンジン13が備えられている。詳述はしないが、操舵車輪10若しくは後車輪11、またはその両方に、エンジン13の動力を伝達するための変速機構として、公知のHST(Hydraulic Static Transmission、不図示)が備えられている。エンジン13の動力が、機体に備えられた変速機構を介して操舵車輪10及び後車輪11に伝達され、変速後の動力が電動モータ駆動式の植付クラッチ(不図示)を介して苗植付装置Wに伝達される。走行機体Cには、前後方向に沿って延びる機体フレーム15が備えられ、機体フレーム15の前部には支持支柱フレーム16が立設されている。
【0028】
走行機体Cにおけるボンネット12の左右側部には、複数(例えば四個)の通常予備苗台28と、予備苗台29と、が備えられている。通常予備苗台28及び予備苗台29は、苗植付装置Wに補給するための予備苗を載置可能なように構成されている。走行機体Cにおけるボンネット12の左右側部に左右一対の予備苗フレーム30が備えられ、左右の予備苗フレーム30の上部同士が連結フレーム31にて連結されている。予備苗フレーム30は各通常予備苗台28及び予備苗台29を支持する。連結フレーム31の上部に衛星測位ユニット80Aが取り付けられている。
【0029】
衛星測位ユニット80Aは、地球の上空を周回する複数の航法衛星から発信される電波を受信することによって、走行機体Cの位置を検出可能に構成されている。即ち、衛星測位用システム(GNSS:グローバル・ナビゲーション・サテライト・システム)の一例として、周知の技術であるGPS(グローバル・ポジショニング・システム)を利用することによって、衛星測位ユニット80Aの位置が測位される。本実施形態では、衛星測位ユニット80Aは、RTK-GPS(Real Time Kinematic GPS:干渉測位方式)を利用したものであるが、DGPS(Differential GPS:相対測位方式)を利用することも可能である。なお、衛星測位ユニット80Aは連結フレーム31に対して着脱可能に構成されていても良い。
【0030】
衛星測位ユニット80Aの他に、走行機体Cの方位を検出する方位検出手段として、例えばIMU(Inertial Measurement Unit)を有する慣性計測ユニット80B(
図2及び
図3参照)が、走行機体Cに備えられている。図示はしないが、慣性計測ユニット80Bは、例えば、走行機体Cの横幅方向中央の低い位置に設けられ、走行機体Cの旋回角度の角速度、走行機体Cの左右傾斜角度の角速度、走行機体Cの前後傾斜角度の角速度、等を計測可能である。この角速度を積分することによって、機体の方位変化角の算出が可能である。なお、慣性計測ユニット80Bは、ジャイロセンサや加速度センサを有する構成であっても良い。本実施形態では、自機位置検出モジュール80として、衛星測位ユニット80Aと慣性計測ユニット80Bとが含まれる。
【0031】
走行機体Cの中央部には、各種の運転操作が行われる搭乗部40が備えられている。搭乗部40には、運転座席41と、操向ハンドル43と、例えば主変速レバー44等の各種操作具と、が備えられている。運転座席41は、走行機体Cの中央部に備えられ、搭乗者が着席可能なように構成されている。操向ハンドル43は、人為操作によって操舵車輪10の操向操作を可能なように構成されている。走行機体Cの前後進の切換え操作や走行速度の変更操作が、例えば主変速レバー44等の操作によって可能であり、苗植付装置Wの昇降操作等が搭乗部40の各種操作具によって可能である。
【0032】
図示はしないが、搭乗部40に、走行機体Cに対して着脱可能なタブレットコンピュータが備えられている。このタブレットコンピュータは、タッチパネル式の液晶画面を有し、種々の情報を表示可能なように構成されている。なお、当該タブレットコンピュータに後述する制御ユニット5の少なくとも一部の構成が搭載されていても良い。この場合、衛星測位ユニット80Aとタブレットコンピュータとが走行機体Cから取り外された状態で互いにデータ通信可能に接続される構成であっても良い。そして、例えば圃場の監視者や圃場作業機の搭乗者が、衛星測位ユニット80A及び当該タブレットコンピュータを持ち運びながら畦際を歩き、位置情報を測位できる構成であっても良い。
【0033】
苗植付装置Wに、複数(例えば四個)の伝動ケース22と、複数(例えば八個)の回転ケース23と、整地フロート25と、苗載せ台26と、整地ロータ27と、が備えられている。回転ケース23は、各伝動ケース22の後部の左側部及び右側部に、夫々回転自在に支持されている。夫々の回転ケース23の両端部に、一対のロータリ式の植付アーム24が備えられている。整地フロート25は、圃場の田面を整地するものであり、苗植付装置Wに複数備えられている。苗載せ台26に、植え付け用のマット状苗が載置される。整地ロータ27は圃場の凹凸を整地可能に構成されている。
【0034】
苗植付装置Wは、苗載せ台26を左右に往復横送り駆動しながら、伝動ケース22から伝達される動力により各回転ケース23を回転駆動して、苗載せ台26の下部から各植付アーム24により交互に苗を取り出して圃場の田面に植え付けるようになっている。図示はしないが、苗植付装置Wは、複数の回転ケース23に備えられた植付アーム24により苗を植え付けるように構成されている。回転ケース23が四個の場合は四条植え型式であり、回転ケース23が六個の場合は六条植え型式であり、回転ケース23が八個の場合は八条植え型式であり、回転ケース23が10個の場合は10条植え型式である。
【0035】
苗植付装置Wの一部として施肥装置34が備えられ、施肥装置34は圃場に植え付けられた苗に肥料を供給する。施肥装置34に、ホッパー34Aと、繰り出し部34Bと、ホース34Cと、作溝器34Dと、ブロア34Eと、が設けられている。ホッパー34Aは肥料を貯留する。ホッパー34Aに貯留された肥料は、繰り出し部34Bによって繰り出され、ブロア34Eの送風によってホース34Cを介して作溝器34Dに送られる。作溝器34Dによって圃場の田面に溝が形成され、作溝器34Dに送られた肥料は、田面の溝に供給される。
【0036】
苗載せ台26の後方に、苗植付装置Wの一部として薬剤散布装置35が備えられている。薬剤散布装置35に、本体ケース35Aと、本体ケース35Aの上部に連結され、除草剤等の薬剤を貯留する薬剤ホッパー35Bと、が備えられている。薬剤散布装置35の本体ケース35Aは、苗植付装置Wに支持されている。本体ケース35Aの内部には、薬剤ホッパー35Bに貯留された薬剤を繰り出す繰出機構35Cと、繰出機構35Cで繰り出された薬剤を斜め後ろ下方に向けて左右方向に拡散させながら薬剤の散布を実現する拡散機構35Dと、が備えられている。
【0037】
繰出機構35C及び拡散機構35Dは不図示の電動モータによって駆動される。繰出機構35Cは、作動毎に設定量の薬剤を繰り出すように構成されている。拡散機構35Dに拡散板が備えられている。薬剤散布装置35は、苗植付装置Wによって設定数の株が植え付けられる毎に、繰出機構35Cと拡散機構35Dとを設定時間だけ駆動して薬剤を散布するように制御される。
【0038】
〔自動走行制御の構成〕
次に、自動走行制御を行うための構成を
図1乃至
図3に基づいて説明する。
図2及び
図3に、本発明による自動走行制御システムを利用する圃場作業機の制御系が示されている。圃場作業機の制御系は、制御ユニット5、及び、この制御ユニット5との間で車載LANなどの配線網を通じて信号通信(データ通信)を行う各種入出力機器から構成されている。制御ユニット5は、この制御系の中核要素であり、多数のECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)と呼ばれる電子制御ユニットの集合体として示されている。
衛星測位ユニット80Aや慣性計測ユニット80Bからの信号は、車載LANを通じて制御ユニット5に入力される。
【0039】
制御ユニット5は通信部66と接続されている。通信部66は、制御ユニット5と、管理コンピュータ6と、の間でデータ交換するために用いられる。通信部66と管理コンピュータ6とはインターネット等のネットワークによって接続されている。管理コンピュータ6は、例えば、上述したタブレットコンピュータであったり、監視者や作業計画決定者が携帯するスマートフォン等の携帯端末であったり、監視者や作業計画決定者の自宅や管理事務所に設置されているコンピュータであったりする。また、管理コンピュータ6は、走行機体C及び作業装置としての苗植付装置Wに対する遠隔操作手段を有する遠隔操作端末である。遠隔操作手段は、タッチパネルであっても良いし、コンピュータ用のキーボードやマウスであっても良いし、専用のパネルスイッチやロータリスイッチやシートキースイッチであっても良い。
【0040】
制御ユニット5は、入出力インタフェースとして、出力処理部58と入力処理部57とを備えている。出力処理部58は、機器ドライバ65を介して種々の動作機器70と接続されている。動作機器70として、走行関係の機器である走行機器群71と、作業関係の機器である作業機器群72と、が含まれる。走行機器群71には、例えば、操舵車輪10,10の操舵モータ(不図示)、エンジン13の制御機器、上述したHSTの制御機器、不図示の制動機器などが含まれる。作業機器群72には、
図1に示されるような苗植付装置W(不図示の各条クラッチも含まれる)や施肥装置34や薬剤散布装置35に対する制御機器などが含まれる。
【0041】
入力処理部57には、走行状態センサ群63、作業状態センサ群64、監視者が操作可能な走行操作ユニット90、などが接続されている。走行状態センサ群63には、車速センサ63A、障害物検知部63B、操向角センサ63Cの他に、エンジン回転数センサ、オーバーヒート検出センサ、ブレーキペダル位置検出センサ、変速位置検出センサ等も含まれる。車速センサ63Aは、例えば、後車輪11に対する伝動機構中の伝動軸の回転速度により車速を検出するように構成されている。障害物検知部63Bは、走行機体Cの前部及び左右両側部に備えられ、例えば、光波測距式の距離センサであったり、画像センサであったりして、圃場の畦際等を検知可能なように構成されている。作業状態センサ群64には、
図1に示されるような苗植付装置Wや施肥装置34や薬剤散布装置35の駆動状態を検出するセンサなどが含まれる。
【0042】
走行操作ユニット90は、搭乗者によって手動操作される操作具の総称である。走行操作ユニット90の手動操作に基づく操作信号が制御ユニット5に入力される。走行操作ユニット90には、操向ハンドル43、主変速レバー44、モード操作具90A、自動開始操作具90B、などが含まれる。モード操作具90Aは、制御ユニット5の走行モードを、自動運転が行われる自動走行モードと、手動運転が行われる手動走行モードと、に切換える信号を制御ユニット5に出力する機能を有する。自動開始操作具90Bは、自動走行を開始するための最終的な自動開始指令を制御ユニット5に与える機能を有する。なお、
図2では、自動開始操作具90Bが一つだけ示されているが、誤操作を防止するために、複数の自動開始操作具90Bが備えられ、複数の自動開始操作具90Bが同時に操作されることによって、最終的な自動開始指令が出力される構成であっても良い。なお、モード操作具90Aによる操作とは無関係に、自動走行モードから手動走行モードへの移行が、ソフトウエアによって自動的に行われる場合もある。例えば、自動運転が不可能な状況が発生したら、制御ユニット5は、強制的に自動走行モードから手動走行モードへの移行を実行する。
【0043】
制御ユニット5には、走行制御部51、作業制御部52、走行モード管理部53、経路設定部54、自機位置算出部55、報知部56、記憶部59、などが備えられている。
【0044】
自機位置算出部55は、測位データと方位データと車速データとに基づいて、予め設定されている走行機体Cの特定箇所の地図座標(または圃場座標)である自機位置を算出する。測位データは衛星測位ユニット80Aによって経時的に取得される。方位データは慣性計測ユニット80Bによって経時的に取得される。車速データは車速センサ63Aによって経時的に取得される。自機位置として、走行機体Cの基準点(例えば車体中心、
図1に示される苗植付装置Wの中心など)の位置を設定することができる。
【0045】
自機位置算出部55は、自機位置を、例えばRAM(ランダム・アクセス・メモリー)で構成された記憶部59に経時的に記憶する。記憶部59は、位置情報としての自機位置を経時的に記憶可能に構成されている。自機位置算出部55の一構成として、走行軌跡取得部55Aと、圃場形状算出部55Bと、が備えられている。記憶部59に記憶された自機位置の集合に基づいて走行軌跡を取得可能なように、走行軌跡取得部55Aは構成されている。要するに、走行軌跡取得部55Aは、自機位置の経時的な検出に基づいて走行機体Cの走行軌跡を取得可能なように構成されている。また、圃場形状算出部55Bは、走行機体Cの走行軌跡に基づいて圃場形状を算出可能に構成されている。
【0046】
走行軌跡取得部55Aによって取得された走行軌跡や、圃場形状算出部55Bによって算出された圃場形状は、記憶部59に記憶可能に構成されている。また、記憶部59に記憶された走行軌跡や圃場形状は、通信部66を介して管理コンピュータ6に転送可能に構成されている。
【0047】
報知部56は、制御ユニット5の各機能部からの指令等に基づいて報知データを生成し、報知デバイス62に与える。報知デバイス62として、例えばブザーやスピーカやランプや計器等が例示される。なお、報知部56は、報知デバイス62以外にも、通信部66を介して管理コンピュータ6に報知データを伝送する構成であっても良い。
【0048】
走行制御部51は、エンジン制御機能、操舵制御機能、車速制御機能などを有し、走行機器群71に制御信号を与える。作業制御部52は、
図1に示される苗植付装置Wや施肥装置34や薬剤散布装置35の動きを制御するために、作業機器群72に制御信号を与える。
【0049】
本実施形態における田植機は、自動走行で移植作業を行う自動運転と、手動走行で移植作業を行う手動運転と、の両方で圃場を走行可能である。このため、走行制御部51に、手動走行制御部51Aと自動走行制御部51Bとが含まれる。また、作業制御部52に、手動作業制御部52Aと自動作業制御部52Bとが含まれる。なお、自動運転を行う際には、自動走行モードが設定され、手動運転を行うためには手動走行モードが設定される。
走行モードの切換えは、走行モード管理部53によって管理される。つまり、走行モード管理部53は、制御ユニット5の走行モードを、自動走行を実行する自動走行モードと、手動走行を実行する手動走行モードと、に切換可能なように構成されている。これにより、制御ユニット5は、自動走行制御が実行される自動走行モードと、自動走行制御が実行されない手動走行モードと、に切換可能なように構成されている。
【0050】
自動走行制御部51Bは、自動操向及び停車を含む車速変更の制御信号を生成して、走行機器群71を制御する。詳細は後述するが、経路設定部54は、例えば
図6に示されるように、内側作業領域CAに複数の目標走行経路LMを設定するとともに、外周領域SAに目標走行経路LMの端部同士を繋ぐ旋回走行経路TMを設定する。自機位置は自機位置算出部55によって算出される。そして、自車位置と目標走行経路LMとの間の位置ずれ、及び、方位ずれが解消されるように、自動走行制御部51Bは制御信号を出力する。即ち、自動走行制御部51Bは、走行機体Cの位置に基づいて、目標走行経路LMに沿って走行機体Cが走行するように制御する自動走行制御を可能なように構成されている。制御信号を出力する制御手法として、例えば公知のPID制御が用いられる。
【0051】
自動作業制御部52Bは、自動走行制御部51Bに基づく自動走行制御と連動して苗植付装置Wを制御可能なように構成されている。換言すると、自動作業制御部52Bは、走行機体Cの位置に基づいて苗植付装置Wを制御可能なように構成されている。例えば走行機体Cが移植作業を伴わずに圃場を走行(以下、『非作業走行』と称する)する場合、自動作業制御部52Bは苗植付装置Wを上昇させる制御信号を出力する。また、自動作業制御部52Bは施肥装置34や薬剤散布装置35に対する制御信号も出力可能に構成されている。例えば、走行機体Cが圃場を非作業走行する際に、自動作業制御部52Bが施肥装置34や薬剤散布装置35を停止させる制御信号を出力することによって、肥料や薬剤が重複散布される虞が防止される。
【0052】
経路設定部54は、経路算出アルゴリズムによって自ら目標走行経路LMを生成する。
なお、経路設定部54は自ら目標走行経路LMを生成せず、上述の管理コンピュータ6等で生成された目標走行経路LMを経路設定部54がダウンロードして用いる構成であっても良い。
【0053】
手動走行モードが選択されている場合、監視者や搭乗者による操作に基づいて、手動走行制御部51Aが操舵量や変速指令等を出力し、走行機器群71を制御することによって、手動運転が実現される。なお、経路設定部54によって算出された目標走行経路LMは、手動運転であっても、田植機が当該目標走行経路LMに沿って走行するためのガイダンス目的で利用できる。
【0054】
〔圃場形状の取得を伴う場合における植播系作業機の自動走行制御〕
図4乃至
図8に基づいて、圃場形状の取得を伴う場合の植播作業機の自動走行制御について説明する。
図4乃至
図8に示された圃場において、紙面左右方向が圃場の横方向Hであり、紙面上下方向が圃場の縦方向Vである。
図4乃至
図8に示された圃場は、横方向Hの長さよりも縦方向Vの長さが長く、いわゆる縦長に形成されている。
【0055】
図4乃至
図8に示された圃場形状は四角形に形成されている。圃場は、対向する一対の第一辺S1,S3と、一対の第一辺S1,S3の間に位置するとともに一対の第一辺S1,S3よりも短い一対の第二辺S2,S4と、を有する。第一辺S1,S3と第二辺S2,S4とによって圃場に四辺の畦際が形成されている。上下一対の第二辺S2,S4の夫々に農道K1,K2が隣接し、農道K1,K2の夫々は、
図4乃至
図8に示された圃場の紙面上下の第二辺S2,S4に沿って紙面横方向に延びる。第二辺S2における紙面右下の畦際に圃場の出入口Eが設けられ、走行機体Cはこの出入口Eを経由することによって農道K2と圃場とを出入り可能である。出入口Eの地面は、縦方向Vに沿って農道K2の位置する側ほど高くなるように傾斜する。
【0056】
図4に、走行機体Cが圃場の畦際に沿って圃場内を周回しながら移植作業を行う様子が示されている。この圃場における最初の周回走行は人為操作によって行われる。本実施形態では、走行機体Cが農道K2から出入口Eを経由して圃場に進入した後、田植機は第一辺S1に沿ってそのまま直進可能である。農道K2から出入口Eを経由して圃場内の第二辺S4に沿って走行機体Cを走行させようとする場合、走行機体Cの旋回操作が必要となるが、出入口Eが傾斜地であるため、人為操作による走行機体Cの旋回には熟練した技能が要求されることが多い。第一辺S1に沿って走る経路は、搭乗者の運転技能に左右されることなく容易に進入可能な経路である。本実施形態では、人為操作による周回走行は、最初に第一辺S1に沿って行われる。そして、第二辺S2、第一辺S3、第二辺S4の順に、圃場の四辺の畦際に沿って反時計回りの周回走行が行われる。
【0057】
図2乃至
図4に基づいて説明すると、人為操作による周回走行が行われている間に、自機位置が自機位置算出部55によって経時的に算出され、自機位置の集合に基づいて走行軌跡が取得される。また、周回走行が行われている間に植苗作業が同時に行われ、圃場の畦際に沿って苗が植えられる。そして、圃場形状算出部55Bは、苗植付装置Wが移植作業を行うとともに走行機体Cが圃場の外周に沿って周回走行することによって圃場形状を算出可能なように構成されている。
【0058】
図5には、外周領域SAにおける既作業領域として、第一外周既作業領域SA1と、第二外周既作業領域SA2と、第三外周既作業領域SA3と、第四外周既作業領域SA4と、が示されている。第一外周既作業領域SA1は、第一辺S1に沿って苗が植えられた既作業領域である。第二外周既作業領域SA2は、第二辺S2に沿って苗が植えられた既作業領域である。第三外周既作業領域SA3は、第一辺S3に沿って苗が植えられた既作業領域である。第四外周既作業領域SA4は、第二辺S4に沿って苗が植えられた既作業領域である。
【0059】
図5に示された実施形態では、圃場の四辺に沿って苗が移植された領域のうち、縦方向Vに沿う第一外周既作業領域SA1及び第三外周既作業領域SA3は、苗植付装置Wの作業幅に亘る幅を有する。つまり、第一辺S1,S3は、縦方向Vに沿う二辺の畦際に対応する周回経路であって、この経路では苗が苗植付装置Wの作業幅に亘って植えられる。
【0060】
圃場の四辺に沿って苗が植えられた領域のうち、横方向Hに沿う第二外周既作業領域SA2及び第四外周既作業領域SA4は、苗植付装置Wの作業幅よりも狭い幅を有する。つまり、第二辺S2及び第二辺S4は、横方向Hに沿う二辺の畦際に対応する周回経路であって、この経路では苗が苗植付装置Wの一部のみで植えられる。つまり、
図1及び
図5に基づいて説明すると、第二辺S2及び第二辺S4では、苗植付装置Wの各条クラッチによって、複数の回転ケース23のうちの圃場内側寄りの回転ケース23が停止され、圃場外側の回転ケース23のみが動作する。このため、第二外周既作業領域SA2及び第四外周既作業領域SA4における苗の植付条数は第一外周既作業領域SA1及び第三外周既作業領域SA3における苗の植付条数よりも少ない。本実施形態では、第二外周既作業領域SA2及び第四外周既作業領域SA4における苗の植付条数二条に設定され、この植付条数は適宜変更可能である。
【0061】
第二外周既作業領域SA2よりも圃場外側に農道K1が隣接し、第四外周既作業領域SA4よりも圃場外側に農道K2が隣接する。この農道K1,K2は、例えば補給苗や補給燃料等の補給資材を積載した車両が通行可能なように整備されている。つまり、農道K1,K2は、補給資材を提供可能な補給位置として圃場に隣接する。例えば作業者が農道K1または農道K2から補給資材を走行機体Cに補給する場合、第二外周既作業領域SA2または第四外周既作業領域SA4に圃場内側から隣接した状態で走行機体Cが停車して、農道K1または農道K2で作業する作業者が補給資材を走行機体Cの搭乗者に手渡しすることが考えられる。このような場合に、第二外周既作業領域SA2及び第四外周既作業領域SA4に八条分ではなくて二条分の苗が植えられることによって、これらの補給資材の手渡しが容易となる。
【0062】
例えばトラクタやコンバイン等による圃場の周回走行に基づいて圃場形状が予め取得されていた場合であっても、植播系作業機では更に高精度の圃場形状が要求されるために、走行機体Cが再度圃場を周回走行しながら高精度の圃場形状を取得することが考えられる。このような場合を
図2及び
図5に基づいて説明する。上述の人為操作による周回走行が行われる前に、予め取得されていた圃場形状が通信部66を介して受信済みであった場合が考えられる。この場合、走行機体Cの搭乗者や圃場監視者は、外周領域SAのうち、どの領域の植付条数を少なくするかを周回走行の前に設定できる構成であっても良い。そして、自動作業制御部52Bは、上述の植付条数の設定に対応して制御信号を出力し、苗植付装置Wの植え付け条数が各条クラッチを介して調整される。植付条数を少なくする領域の設定は、例えば上述した管理コンピュータ6の操作によって設定可能であっても良いし、圃場の監視者や圃場作業機の搭乗者が操作する携帯端末の操作によって設定可能であっても良い。
【0063】
このように、補給資材を提供可能な補給位置が圃場形状の外周を形成する第一辺S1,S3及び第二辺S2,S4のうちの少なくとも一辺よりも圃場外側に隣接する場合、自動作業制御部52Bは、補給位置に隣接する辺における移植作業では苗植付装置Wの作業幅のうち圃場外側の幅だけ苗植付装置Wが動作するように苗植付装置Wを制御可能に構成されている。このため、補給位置としての農道K1,K2に隣接する第二辺S2,S4に対応する第二外周既作業領域SA2及び第四外周既作業領域SA4の幅は、農道K1,K2に隣接しない第一辺S1,S3に対応する第一外周既作業領域SA1及び第三外周既作業領域SA3の幅よりも狭く形成されている。
【0064】
人為操作による周回走行が完了した後、
図6に示されるように、複数の目標走行経路LMと、複数の旋回走行経路TMと、が経路設定部54(
図2及び
図3参照)によって設定される。
図6に示される実施形態では、目標走行経路LMの夫々の長手方向が、圃場の縦方向Vと沿うように互いに平行に並んで設定される。換言すると、内側作業領域CAのうち、横方向Hの方向に目標走行経路LMが等間隔で並んで設定される。
【0065】
内側作業領域CAは、圃場において自動走行制御の一形態としての自動往復走行制御に基づいて移植作業が行われる領域である。外周領域SAは、内側作業領域CAよりも圃場外側であって、走行機体Cが周回走行を可能な領域である。
【0066】
図6に示されるように、旋回走行経路TMの夫々は、圃場形状に基づく圃場の外周から圃場内側に予め設定された設定距離Dだけ離れた位置に設定される。設定距離Dは、第二外周既作業領域SA2の幅や第四外周既作業領域SA4の幅であっても良いし、苗植付装置Wの作業幅であっても良い。つまり、設定距離Dに、圃場形状の算出のための周回走行における移植作業によって形成された第二外周既作業領域SA2の作業幅及び第四外周既作業領域SA4の作業幅が含まれる。自動走行制御部51Bは、圃場形状に基づく圃場の外周から圃場内側に予め設定された設定距離Dに離れた位置で、自動往復走行制御に基づく旋回走行を可能に構成されている。
【0067】
図2及び
図3に示される経路設定部54は、第一外周既作業領域SA1乃至第四外周既作業領域SA4と、自動往復走行制御に基づいて移植作業が行われる内側作業領域CAと、の間に苗植付装置Wが移植作業を苗植付装置Wの作業幅に亘って行うとともに走行機体Cが圃場を周回走行する周回走行経路LMLを確保するように目標走行経路LMを設定可能に構成されている。目標走行経路LMの両端は、第二外周既作業領域SA2と第四外周既作業領域SA4との夫々から苗植付装置Wの作業幅に相当する距離だけ離れた位置に設定される。走行機体Cが最初に走行する最初の目標走行経路LM1と、第三外周既作業領域SA3との間は、苗植付装置Wの作業幅に相当する距離だけ余分に離れている。走行機体Cが最初に走行する最後の目標走行経路LM2と、第一外周既作業領域SA1との間は、苗植付装置Wの作業幅に相当する距離だけ余分に離れている。このことから、目標走行経路LMと、外周領域SAにおける既作業領域と、の間に走行機体Cが走行可能な領域として最終周回領域SA5が確保され、この最終周回領域SA5に後述する周回走行経路LMLが設定される。つまり、経路設定部54は、圃場形状の算出のための周回走行における移植作業によって形成された第一外周既作業領域SA1乃至第四外周既作業領域SA4よりも内側に周回走行経路LMLを確保するように目標走行経路LMを設定可能に構成されている。
【0068】
また、旋回走行経路TMよりも圃場外側に、既作業領域である第二外周既作業領域SA2及び第四外周既作業領域SA4が存在するため、旋回走行は、走行機体Cはこの外周領域SAにおける既作業領域よりも内側で行われる。つまり、作業走行及び旋回走行が行われる領域が畦際から離れた圃場の内側領域に限定される。このため、圃場の畦際に、例えばコンクリート壁や電柱や送電線の鉄塔等の障害物が存在する場合であっても、第二外周既作業領域SA2及び第四外周既作業領域SA4が旋回の余裕地として存在するため、走行機体Cがこの障害物等と接触する虞が軽減される。
【0069】
本実施形態では、作業走行とは、走行機体Cが目標走行経路LMに沿って走行しつつ苗植付装置Wによる移植作業が行われることを意味する。また、旋回走行とは、一つの目標走行経路LMに沿った作業走行の完了後に、走行機体Cが旋回走行経路TMに沿って次の目標走行経路LMへ移動することを意味する。
【0070】
旋回走行経路TMの夫々は、隣り合う目標走行経路LM,LMにおける隣り合う端部同士を繋ぐ旋回走行経路TMとして設定される。
図6に示された旋回走行経路TMは、第二外周既作業領域SA2と第四外周既作業領域SA4との夫々に隣接した状態で設定される。第二外周既作業領域SA2よりも圃場外側に農道K1が隣接し、第四外周既作業領域SA4よりも圃場外側に農道K2が隣接する。このため、農道K1,K2から補給資材を走行機体Cに補給する場合、走行機体Cが旋回走行経路TMの旋回途中で停車した状態で補給作業が可能となる。これにより、走行機体Cが目標走行経路LMや旋回走行経路TMから外れて専用の補給位置へ移動する手間が省略される。
【0071】
目標走行経路LMの夫々が圃場の長手方向である縦方向Vと沿うように設定される。これにより、目標走行経路LMの夫々が圃場の短手方向である横方向Hと沿うように設定される構成と比較して、目標走行経路LM及び旋回走行経路TMの数が減少し、走行機体Cの旋回頻度が減少する。その結果、内側作業領域CAと、外周領域SAにおける既作業領域と、の間の領域の整地状態が荒らされる虞が軽減される。
【0072】
目標走行経路LMの走行順は、出入口Eから離れた側に位置する最初の目標走行経路LM1における開始位置STから順に走行するように設定される。つまり、出入口Eの最寄りに設定された目標走行経路LM2は、複数の目標走行経路LMのうち、走行機体Cが最後に走行する目標走行経路LMである。また、走行機体Cがこの最後の目標走行経路LM2を出入口Eの位置する側に向かって走行するように、目標走行経路LM及び旋回走行経路TMは設定される。このことから、最後の目標走行経路LM2のうち、出入口Eの位置する側と反対側の端部が旋回走行経路TMと接続され、最後の目標走行経路LM2における出入口Eの位置する側の端部に旋回走行経路TMは設けられない。
図6及び
図7に示されるように、最後の目標走行経路LM2のうち、出入口Eの位置する側の端部に、終了位置Gが設定される。終了位置Gは、出入口Eからから予め設定された範囲内(例えば出入口Eから5メートル以内)に位置する。つまり、経路設定部54は、周回走行経路LMLよりも圃場内側における自動走行制御が完了するときに、圃場に対する走行機体Cの出入りが可能な出入口Eから予め設定された範囲内に走行機体Cが位置するように、目標走行経路LMを設定可能に構成されている。
【0073】
このように、走行機体Cが終了位置Gに到達すると同時に内側作業領域CAに対する苗の植え付けが完了するように、目標走行経路LM及び旋回走行経路TMが設定される。このため、自動走行制御が開始される開始位置STは、
図6及び
図7に示されるように設定される。
図6に示される実施形態では、目標走行経路LMの数が偶数であるため、開始位置STは、最初の目標走行経路LM1のうち終了位置Gの位置する側の端部に設定される。
図7に示される実施形態では、目標走行経路LMの数が奇数であるため、開始位置STは、最初の目標走行経路LM1のうち終了位置Gの位置する側と反対側の端部に設定される。
【0074】
図4に基づいて説明したように、第一辺S1乃至第二辺S4の順に、圃場の四辺の畦際に沿って反時計回りの周回走行が行われた後、走行機体Cは出入口Eの近傍に位置する。
この状態で、搭乗者または圃場の監視者が自動開始操作具90B(
図2参照)を操作することによって、自動走行制御が開始される。
図6及び
図7に基づいて説明すると、まず、走行機体Cは開始位置STへ移動する。開始位置STへの移動に際し、移植作業の前に走行機体Cが内側作業領域CAの領域内を移動すると、圃場表面に走行機体Cの走行軌跡が轍となって残り、この轍の箇所に苗が植え付けられた場合に、その箇所で浮き苗が発生する虞がある。この不都合を回避するため、走行機体Cが内側作業領域CAよりも外側を迂回しながら開始位置STへ移動するように、自動走行制御部51B(
図2及び
図3参照)は制御信号を出力する。このことから、走行機体Cは出入口Eの近傍から最終周回領域SA5を経由して開始位置STへ移動する。このとき、苗植付装置Wは上昇した状態、即ち非作業状態となる。また、苗植付装置Wが上昇している間、施肥装置34や薬剤散布装置35も停止しており、施肥作業や薬剤散布作業は行われない。これにより、最終周回領域SA5に対する施肥や薬剤散布の重複作業が回避される。
【0075】
図6に示された実施形態では、走行機体Cは、最終周回領域SA5のうち、第四外周既作業領域SA4と内側作業領域CAとの間の領域を走行しながら開始位置STへ移動する。
図4に基づいて説明した周回走行が完了した時点で、走行機体Cの前部は出入口Eの位置する側に向いている。走行機体Cが、この箇所で走行機体Cが180度の旋回をした後に、開始位置STへ移動する移動手法であっても良いし、走行機体Cがこの箇所から後進しながら開始位置STへ移動する移動手法であっても良い。
【0076】
走行機体Cは最終周回領域SA5を走行しながら開始位置STへ移動するが、最終周回領域SA5では後工程で移植作業が行われるため、走行機体Cは後で再び最終周回領域SA5を走行する。走行機体Cが一度走行した後の走行軌跡は轍として圃場の表面に残る。
このため、後工程で後述する周回走行経路LMLに沿って走行機体Cが走行する場合に走行機体Cがこの轍の上を再度走行すると、操舵車輪10及び後車輪11が轍のぬかるみに嵌ってスリップが発生し易くなることが考えられる。このような不都合を回避するため、走行機体Cが周回走行経路LMLに沿って走行する経路よりも走行機体Cが左右何れかに位置ずれするように、自動走行制御部51Bは走行機体Cを開始位置STへ移動させる制御信号を出力する。このとき、走行機体Cの左右何れかに対する位置ずれ量は、後工程の移植作業で苗が轍の上に植えられないように考慮して設定される。
【0077】
走行機体Cの開始位置STへの到達後に、自動走行制御の一形態としての自動往復走行制御が行われている間、走行機体Cは、圃場において
図6(または
図7)に示された内側作業領域CAで作業走行を行うとともに、内側作業領域CAと第二外周既作業領域SA2との間の領域で旋回走行を行う。内側作業領域CAにおいて、自動往復走行制御は作業走行と旋回走行とを交互に繰り返す。
【0078】
内側作業領域CAにおける作業走行と、内側作業領域CAよりも外側における旋回走行とが完了すると、
図8に示されるように内側作業領域CAに苗が植えられる。内側作業領域CAに苗が植えられた状態で走行機体Cが内側作業領域CAを走行すると、苗が踏み倒されてしまう。このため、内側作業領域CAに苗が植えられた後の走行では、走行機体Cが内側作業領域CAを走行しないように、自動走行制御部51Bは制御信号を出力する。
内側作業領域CAと、外周領域SAにおける既作業領域と、の間に未作業領域としての最終周回領域SA5が残され、最終周回領域SA5は、苗植付装置Wの作業幅に相当する幅を有する。このため、内側作業領域CAよりも外側、かつ、外周領域SAにおける既作業領域よりも内側の最終周回領域SA5に沿って一周分の周回走行経路LMLが経路設定部54によって設定される。そして、走行機体Cが周回走行経路LMLに沿って周回走行するように、自動走行制御部51Bは制御信号を出力する。これにより、走行機体Cが周回走行経路LMLに沿って走行する自動走行制御が行われる。このように、自動走行制御部51Bは、周回走行経路LMLに沿って走行機体Cが走行するように制御する自動走行制御を可能に構成されている。
【0079】
最終周回領域SA5のうち、第二外周既作業領域SA2と内側作業領域CAとの間の箇所と、第四外周既作業領域SA4と内側作業領域CAとの間の箇所と、では上述の走行機体Cの開始位置STへの非作業走行と、上述の旋回走行と、が行われた。このため、最終周回領域SA5におけるこれらの箇所では圃場の整地状態が荒れていることが考えられる。この場合を
図1、
図2、
図3及び
図8に基づいて説明する。最終周回領域SA5で移植作業が行われる場合には、自動作業制御部52Bの制御信号に基づいて整地ロータ27が操作され、圃場表面の凹凸が整地ロータ27整地されながら移植作業が行われる。即ち、自動作業制御部52Bは、自機位置算出部55によって算出された自機位置に基づいて、非作業走行や旋回走行が行われた箇所に対して整地ロータ27を動作させる制御信号を出力する。自動作業制御部52Bの制御信号に基づいて整地ロータ27の動作は、最終周回領域SA5の全域に亘って行われる構成であっても良いし、上述の非作業走行及び旋回走行が行われた箇所に限定して行われる構成であっても良い。このように、自動作業制御部52Bは、旋回走行が行われた箇所で移植作業が行われる場合に、圃場の凹凸を整地するように整地ロータ27を制御可能に構成されている。
【0080】
最終周回領域SA5において走行機体Cが周回走行しながら移植作業を行い、この移植作業が完了した後、走行機体Cが圃場の出入口Eから圃場外へ出て、圃場における移植作業が完了する。
【0081】
走行機体Cが圃場の出入口Eから圃場外へ出る際に、旋回伴わずに走行機体Cが前進する、もしくは操舵車輪10の僅かな旋回切れ角(例えば0度より上、かつ、15度以下)で走行機体Cが前進するだけで、走行機体Cが圃場の出入口Eから圃場外へ出られれば好適である。このため、本実施形態では、最終周回領域SA5における周回走行の完了時点で、走行機体Cが出入口Eから予め設定された範囲内(例えば出入口Eから4メートル以内)に位置し、かつ、走行機体Cの進行方向が出入口Eの傾斜方向に沿うように、最終周回領域SA5における周回走行経路LMLは設定される。このため、
図8に示される周回走行経路LMLは時計回りに設定される。本実施形態では、周回走行経路LMLは、最初の人為操作による周回走行(
図4参照)の周回方向と反対方向の周回方向に設定される。
【0082】
このように、経路設定部54は、周回走行経路LMLにおける自動走行制御が完了するときに、圃場に走行機体Cが出入り可能な出入口Eから予め設定された範囲内に位置するとともに走行機体Cの進行方向が出入口Eの傾斜方向に沿うように周回走行経路LMLを設定可能に構成されている。
【0083】
〔各条クラッチを用いた植付制御及び目標走行経路の設定〕
自動作業制御部52Bは、苗植付装置Wの作業幅のうちの動作する作業幅を制御可能に構成されている。通常の移植作業では、自動作業制御部52Bは苗植付装置Wの作業幅の全幅に亘って複数の回転ケース23及び複数の植付アーム24を動作させる。
【0084】
内側作業領域CAにおいて作業走行が行われる際に、最終周回領域SA5に苗植付装置Wの作業幅が確保されるように作業走行が行われる。このため、内側作業領域CAにおける横方向Hの幅が、苗植付装置Wの作業幅の整数倍と等しい幅を有することが理想である。内側作業領域CAにおける横方向Hの幅が、苗植付装置Wの作業幅の整数倍と等しい幅を有していない場合、内側作業領域CAにおける移植作業に、各条クラッチ(不図示、以下同じ)が用いられる。
【0085】
図9には、内側作業領域CAにおける最後の目標走行経路LM2で移植作業が行われる状態が示される。
図9では、目標走行経路LM2に基づく移植作業の領域と、最終周回領域SA5と、の境界として境界線BLが示される。この目標走行経路LM2に沿って走行機体Cの自動走行制御が行われている間、苗植付装置Wの作業幅のうち周回走行経路LMLに基づく作業幅、即ち最終周回領域SA5と重複する幅が存在する。この幅を『重複幅OW』と称する。この目標走行経路LM2に沿って苗植付装置Wの作業幅に亘って移植作業が行われると、内側作業領域CAよりも外側にも重複幅OWに亘って苗が植え付けられて、最終周回領域SA5に苗植付装置Wの作業幅を確保できなくなる。このため、苗植付装置Wのうち、内側作業領域CAよりも外側に位置する箇所の回転ケース23及び植付アーム24(何れも
図1参照、以下同じ)に対応する各条クラッチが切操作され、この箇所に対応する回転ケース23及び植付アーム24が停止する。苗植付装置Wのうち、内側作業領域CAの範囲内に位置する回転ケース23及び植付アーム24のみが動作する。
【0086】
図9に示された実施形態では、苗植付装置Wは八条分の作業幅を有する。また、
図9に示された実施形態では、苗植付装置Wの作業幅が内側作業領域CAの領域内に入るように最初の目標走行経路LM1が設定された。このため、最初の目標走行経路LM1に基づく作業走行では八条分に亘る移植作業が行われ、八条分に亘る移植作業は最後の目標走行経路LM2の手前まで行われた。そして、最後の目標走行経路LM2に基づく作業走行では、苗植付装置Wにおける八条分の作業幅のうち四条分の幅だけ苗植付装置Wが動作する状態が示されている。最後の目標走行経路LM2に沿った作業走行では、最終周回領域SA5における重複幅OWの領域に対する移植作業が行われず、最終周回領域SA5に八条分の作業幅が確保される。そして、最終周回領域SA5に沿った周回走行で、苗植付装置Wの作業幅である八条分の移植作業が行われる。
【0087】
このように、周回走行経路LMLよりも内側の目標走行経路LMに沿って自動走行制御が行われ、かつ、苗植付装置Wの作業幅のうち周回走行経路LMLに基づく作業幅と重複する重複幅OWが存在する場合、自動作業制御部52Bは、苗植付装置Wの作業幅のうちの重複幅OWだけ苗植付装置Wの動作を停止するように苗植付装置Wを制御可能に構成されている。
【0088】
図1に示される施肥装置34及び薬剤散布装置35の散布作業に関しても、最後の目標走行経路LM2に沿った作業走行では、自動作業制御部52B(
図2及び
図3参照)による制御に基づいて、最終周回領域SA5における重複幅OWの領域に対する施肥作業や散布作業は行われない。このため、施肥装置34の施肥作業及び薬剤散布装置35の散布作業は、内側作業領域CAに対してのみ行われる。そして、最終周回領域SA5に沿った周回走行で、苗植付装置Wの作業幅である八条分の施肥作業及び散布作業が行われる。これにより、重複幅OWの領域に対する施肥作業及び散布作業の重複が回避される。
【0089】
最後の目標走行経路LM2に沿って移植作業が行われた際に、走行機体Cにおける左右一方側(
図9では走行機体Cの進行方向左側、即ち走行機体Cの紙面右側)の操舵車輪10及び後車輪11が、内側作業領域CAよりも外側に位置している。このため、内側作業領域CAよりも外側に位置する操舵車輪10及び後車輪11の走行軌跡が、轍RTとして残される。轍RTの領域は、その左右の領域よりもぬかるみがちである。そして、最終周回領域SA5に沿った周回走行で、走行機体Cにおける左右他方側の操舵車輪10及び後車輪11が、この轍RTの上を走行すると、この操舵車輪10及び後車輪11が轍RTのぬかるみに嵌ってスリップが発生し易くなることが考えられる。このような不都合を回避するため、
図10に示されるような目標走行経路LMの設定が行われる。
【0090】
図10には、内側作業領域CAにおいて、最初の目標走行経路LM1で移植作業が行われる状態と、最後の目標走行経路LM2で移植作業が行われる状態と、が示される。最初の目標走行経路LM1は、苗植付装置Wの作業幅のうちの二条分の作業幅が内側作業領域CAよりも外側に位置するように設定される。走行機体Cが最初の目標走行経路LM1に沿って走行し、苗植付装置Wの作業幅のうちの六条分の作業幅で移植作業が行われる。このことから、苗植付装置Wの作業幅が内側作業領域CAの領域内に入るように最初の目標走行経路LM1が設定される構成と比較して、目標走行経路LMは、
図10の紙面において全体的に二条分だけ右寄りに位置ずれする。そして、最後の目標走行経路LM2では、
図9で示された場合よりも二条分だけ多い六条分の作業幅で移植作業が行われる。
【0091】
図10に示された実施形態では、操舵車輪10,10及び後車輪11,11のうち、最終周回領域SA5の位置する側の操舵車輪10及び後車輪11の轍RTが、内側作業領域CAと最終周回領域SA5との略境界に位置する。このため、最終周回領域SA5に沿った周回走行で、この轍RTを回避した移植作業が可能となる。このように、経路設定部54は、圃場の走行経路に重複箇所が存在する場合、先に設定された走行経路に基づく走行機体Cの走行によってできた轍RTの上を車輪が再度走行しないように、走行機体Cの進行方向に対して機体横方向に位置ずれした後工程の走行経路を設定する。なお、後工程の移植作業で苗が轍RTの上に植えられた場合、その苗が浮き苗となる虞がある。このため、走行機体Cの機体横方向に対する位置ずれ量は、後工程の移植作業で苗が轍RTの上に植えられないように考慮して設定される。
【0092】
〔圃場形状の取得を伴わない場合における植播系作業機の自動走行制御〕
例えば前年度以前に田植機による圃場の周回走行に基づいて圃場形状が取得済みであって、圃場の形状が前年度と比較して変化していない(または殆ど変化していない)場合、
図4及び
図5に基づいて説明したような圃場形状の取得の必要性はない。つまり、前年度以前の移植作業で用いられた圃場形状のマップ情報がそのまま流用される場合、
図11に示されるように、内側作業領域CAが最初に設定され、内側作業領域CAに対して目標走行経路LMが平行に並んで設定される。
【0093】
走行機体Cの周辺に、前年度以前の移植作業で用いられた圃場形状のマップ情報をそのまま流用する圃場が複数存在する場合、走行機体Cから最も近傍に存在する圃場が自動的に選択される構成であっても良いし、走行機体Cの搭乗者や圃場の監視者が対象圃場を選択可能な構成であっても良い。監視者や搭乗者が対象圃場を選択する手法は、例えば上述した管理コンピュータ6を操作するものであっても良いし、走行機体Cを選択対象の圃場に移動させるものであっても良い。この場合、この管理コンピュータ6のモニタにおける表示画面上に複数の圃場を含む地図画面が表示され、監視者や搭乗者がその地図画面の中から一つの圃場を選択する構成であっても良い。
【0094】
内側作業領域CAに対して目標走行経路LMが平行に並んで設定された後、内側作業領域CA内で上述の自動往復走行制御が実行される。即ち、目標走行経路LMに沿って移植作業を行う作業走行と、内側作業領域CAよりも外側の領域で走行機体Cが旋回しながら次の目標走行経路LMへ移動する旋回走行と、が交互に繰り返される。内側作業領域CAに対する移植作業の完了後、
図12に示されるように、外周領域SAには周回走行が可能な周回走行経路LM11,LM12が経路設定部54によって設定される。周回走行経路LM11,LM12によって、走行機体Cは二周に亘って外周領域SAを周回走行できる。つまり、経路設定部54は、圃場において自動往復走行制御に基づいて移植作業が行われる内側作業領域CAよりも圃場外側に少なくとも二周分の周回走行経路LM11,LM12を設定可能に構成されている。このため、少なくとも二周分の周回走行経路LM11,LM12が設定される。
【0095】
二周分の周回走行経路LM11,LM12のうち、一周目の周回走行経路LM11では内側作業領域CAの外周に沿って自動走行に基づく移植作業が行われ、二周目の周回走行経路LM12では圃場の畦際に沿って田植機の人為操作による移植作業が行われる。つまり、自動走行制御部51Bによる自動走行制御に、少なくとも一周分の周回走行経路LM11に沿って走行機体Cが走行するように制御することが含まれる。換言すると、自動走行制御部51Bは、少なくとも一周分の周回走行経路LM11に沿って走行機体Cが走行するように制御する自動走行制御を可能に構成されている。
【0096】
二周目に行われる移植作業では、苗植付装置Wの作業幅に亘って移植作業が行われる。
このため、
図13に示されるように、一周目の周回走行経路LM11に沿った自動走行制御に基づく移植作業で外周領域SA11が既作業領域として形成され、各条クラッチを用いた植え付け条数の調整が行われる。これにより、外周領域SA12には苗植付装置Wの作業幅に亘る周回領域が残される。ここで、二周分の周回走行における移植作業では、収穫機であるコンバインが一度に刈取可能な条数が考慮される。
【0097】
実際の圃場におけるコンバインの収穫作業では、
図14に示されているように、コンバインが圃場に入ると(#a)、手動操舵で二周または三周の周囲刈り走行が行われ、圃場の外周領域SAの植立穀稈が刈り取られる(#b)。
【0098】
図15に示される例として、内側作業領域CA(内側作業領域CA1,CA2,CA3)における作業走行で植え付けられた苗と、外周領域SA(外周領域SA11,外周領域SA12)における周回走行で植え付けられた苗と、の夫々の植付け間隔が、内側作業領域CAと外周領域SAとの境界付近でずれている。このことが考慮されずにコンバインの刈取作業が行われると、この植付け間隔のずれた箇所で植立穀稈がコンバインのデバイダに突き刺さって収穫ロスが発生することも考えられる。このため、田植機で植えられた苗が植立穀稈(収穫作物)としてコンバインによって刈り取られるとき、田植機が移植作業を行ったときの進行方向と、コンバインが刈取作業を行うときの進行方向と、が同じであることが好適である。
【0099】
図15において、外周領域SA11及び外周領域SA12において、走行機体Cが横方向Hに沿って前進したため、外周領域SA11及び外周領域SA12におけるコンバインの進行方向も横方向Hに沿う方向であることが望ましい。また、内側作業領域CA1乃至内側作業領域CA3において、走行機体Cが縦方向Vに沿って前進したため、内側作業領域CA1乃至内側作業領域CA3におけるコンバインの進行方向も縦方向Vに沿う方向であることが望ましい。
【0100】
このことから、外周領域SAに植え付けられる苗の条数は、コンバインが一度に刈取可能な条数の整数倍の条数に設定される。コンバインが一度に刈取可能な条数の設定は、例えば上述の管理コンピュータ6の操作によって設定可能であっても良いし、圃場の監視者や圃場作業機の搭乗者が操作する携帯端末の操作によって設定される構成であっても良い。
【0101】
二周目に行われる移植作業では、苗植付装置Wの作業幅に亘って移植作業が行われる。
このため、外周領域SAにおいて一周目に行われる移植作業で各条クラッチを用いた植え付け条数の調整が行われる。具体的には、一周目の植え付け条数と二周目の植え付け条数との合計と、コンバインが一度に刈取可能な条数の整数倍の条数と、が一致するように、苗植付装置Wにおける植え付け条数が調整される。
図15に示された実施形態では、コンバインが一度に刈取可能な作業幅は六条分であって、苗植付装置Wの作業幅は八条分と定義される。この場合、一周目(外周領域SA11)では四条分の苗が植えられ、二周目(外周領域SA12)で苗植付装置Wの作業幅に亘る八条分の苗が植えられる。このため、一周目と二周目との合計で、コンバインの作業幅の二倍に相当する12条分の苗が植えられる。他には、例えばコンバインが一度に刈取可能な作業幅は五条分で、かつ、苗植付装置Wの作業幅が八条分である場合、一周目では二条分の苗が植えられ、二周目で八条分の苗が植えられる。これにより、一周目と二周目との合計で、コンバインの作業幅の二倍に相当する10条分の苗が植えられる。また、コンバインが一度に刈取可能な作業幅は六条分で、かつ、苗植付装置Wの作業幅は六条分である場合、一周目と二周目との夫々で六条分の苗が植え付けられる。
【0102】
このように、自動作業制御部52Bは、外周領域SAにおける周回走行によって移植作業が行われる際の苗植付装置Wの実際の作業幅の合計が収穫機の作業幅の整数倍となるように、苗植付装置Wの作業幅のうち動作する作業幅を制御可能に構成されている。なお、「苗植付装置Wの作業幅のうち動作する作業幅を制御する」という意味は、苗植付装置Wの作業幅の全てが動作することを排除するものではない。
【0103】
〔別実施形態〕
本発明は、上述の実施形態に例示された構成に限定されるものではなく、以下、本発明の代表的な別実施形態を例示する。
【0104】
(1)上述した実施形態において、圃場は長方形の形状であったが、この実施形態に限定されない。例えば、圃場は正方形の形状であっても良いし、
図16に示されるような台形形状であっても良い。
図16において、夫々の目標走行経路LMは第一辺S1に沿う方向に設定されているが、夫々の目標走行経路LMが第一辺S1と対向する第一辺S3に沿う方向に設定されても良い。つまり、経路設定部54は、一対の第一辺S1,S3の少なくとも何れかに沿って延びる複数の目標走行経路LMを設定することと、目標走行経路LMの夫々を繋ぐ旋回走行経路TMを一対の第二辺S2,S4における周回走行経路LML,L11(
図8及び
図12参照)の領域に設定することと、を可能に構成されている。また、圃場形状は三角形であっても良いし、五角形以上の多角形であっても良い。
【0105】
図16の二点鎖線で囲まれた部分が
図17に示される。
図17は、苗植付装置Wが外周領域SAと内側作業領域CAとの境界に跨る状態で植播作業が行われる状態を示す圃場の平面図である。
図16に示された圃場の形状によって、内側作業領域CAと最終周回領域SA5(外周領域SA)との境界を示す境界線BLが、走行機体Cの進行方向に対して左向きに傾斜している。このような場合でも、最終周回領域SA5に苗植付装置Wの作業幅に亘る幅が残されることが好適である。このため、苗植付装置Wが外周領域SAと内側作業領域CAとの境界に跨る状態では、苗植付装置Wの各条クラッチを用いることによって、内側作業領域CAに対してのみ移植作業が行われる構成であっても良い。
【0106】
図17に示される実施形態では、苗植付装置Wのうちの右側箇所が内側作業領域CAに位置し、走行機体Cが前進するほど、苗植付装置Wのうちの内側作業領域CAに位置する箇所の割合が大きくなる。このため、苗植付装置Wの右端が内側作業領域CAの内側に進入した時点で苗植付装置Wの右端の各条クラッチだけが伝達状態であって、走行機体Cが前進に伴って、左側の各条クラッチが順番に伝達状態に切換えられる構成であっても良い。これにより、内側作業領域CAと外周領域SAとの境界(境界線BLで示された部分)が走行機体Cの進行方向に対して傾斜する場合であっても、移植作業が隙間なく行われる。
【0107】
(2)圃場形状が、例えば棚田のように細長い形状を有する場合、第一辺S1,S3及び第二辺S2,S4の何れかの長さが短すぎる場合が考えられる。このような場合、圃場形状算出部55Bは圃場形状を算出しない構成であっても良い。この場合、圃場形状が算出不能であることが、報知部56を介して管理コンピュータ6に伝送される構成であっても良い。
【0108】
(3)上述した実施形態では、目標走行経路LMの長手方向が圃場の縦方向V、即ち縦長の圃場の長手方向に沿うように設定されているが、この実施形態に限定されない。例えば、目標走行経路LMの長手方向が圃場の短手方向に沿うように、目標走行経路LMの夫々が平行に並んで設定される構成であっても良い。この構成は、特に農道K1や農道K2が、第一辺S1,S3に隣接して位置する場合に有用である。
【0109】
(4)上述した実施形態では制御ユニット5に圃場形状算出部55Bが備えられ、最初に走行機体Cが周回走行することによって圃場形状が算出されるが、この実施形態に限定されない。例えば、圃場形状算出部55Bは、管理コンピュータ6やネットワークサイトから取得した地図情報に基づいて圃場形状を算出する構成であっても良い。
【0110】
(5)上述した実施形態では、周回走行経路LM12は人為操作に基づく植播作業が行われるが、周回走行経路LM12に沿って自動走行制御が行われながら植播作業が行われる構成であっても良い。この場合、経路設定部54は、周回走行経路LM12における自動走行制御が完了するときに、圃場に走行機体Cが出入り可能な出入口Eから予め設定された範囲内に位置するとともに走行機体Cの進行方向が出入口Eの傾斜方向に沿うように周回走行経路LM12を設定可能に構成されて良い。
【0111】
(6)上述した実施形態では、周回走行経路LM11と周回走行経路LM12とが設定されているが、このような周回走行経路が三周以上設けられる構成であっても良い。また、
図8に示された周回走行経路LMLは、走行機体Cが二周以上周回可能な走行経路であっても良い。このような構成に基づいて、例えば、経路設定部54は、外周領域SAにおける周回走行によって移植作業が行われる際の苗植付装置Wの実際の作業幅の合計が収穫機(例えば自脱型コンバイン)の作業幅の整数倍となるように、目標走行経路LMを設定可能に構成されても良い。
【0112】
(7)上述した実施形態では、農道K1に隣接する第二外周既作業領域SA2と、農道K2に隣接する第四外周既作業領域SA4と、に八条分ではなくて二条分の苗が植えられるが、この実施形態に限定されない。例えば第二外周既作業領域SA2及び第四外周既作業領域SA4の夫々に一条分の苗が植えられても良いし、三条分や四条分の苗が植えられる構成であっても良い。例えば畦際がコンクリート畦である場合には三条以上の植え付け条数が好適な場合も考えられる。また、例えば補給位置が農道K1と農道K2との何れか一方である場合、第二外周既作業領域SA2と第四外周既作業領域SA4との何れか一方にのみ二条分の苗が植えられる構成であっても良い。
【0113】
(8)上述した実施形態では、出入口Eの付近で走行機体Cが直進または略直進する状態で圃場を出入りするが、この実施形態に限定されない。例えば、
図4及び
図5に例示されたものの他に、走行機体Cが圃場に進入した直後に大きく左旋回し、走行機体Cが圃場を時計回りに周回することによって、圃場形状の算出と植播作業とが行われる構成であっても良い。また、
図8、
図12及び
図13に例示されたものの他に、周回走行経路LMLと周回走行経路LM11と周回走行経路LM12とが反時計回りの周回経路であっても良い。この場合、走行機体Cが、周回走行経路LMLや周回走行経路LM12を反時計回りに周回走行した後、出入口Eに向かって大きく右旋回しながら圃場から出る構成であっても良い。
【0114】
(9)上述の衛星測位ユニット80Aは、航法衛星から発信される電波を直接受信する構成に限定されない。例えば、作業車の周囲における複数の箇所に、航法衛星から発信される電波を受信する基地局が設けられ、当該複数の箇所の基地局とのネットワーク通信処理によって走行機体Cや苗植付装置Wの位置情報を特定する構成であっても良い。
【0115】
(10)
図9及び
図10に示された実施形態では、苗植付装置Wの作業幅のうちの動作する作業幅が各条クラッチによって制御されているが、この実施形態に限定されない。例えば、最初の目標走行経路LM1に基づく作業走行で、最終周回領域SA5における重複幅OWの領域に対する移植作業が行われても良い。また、最後の目標走行経路LM2に基づく作業走行で、最終周回領域SA5における重複幅OWの領域に対する移植作業が行われても良い。つまり、
図9及び
図10に示された実施形態では、苗植付装置Wの作業幅のうちの動作する作業幅が、苗植付装置Wの全幅に亘っても良い。この場合、周回走行経路LMLに沿って作業走行が行われると、重複幅OWの領域に先に移植済みの苗が走行機体Cの走行によって踏み荒らされてしまうが、苗植付装置Wの全幅に亘って移植作業が行われて苗が植え直される構成であっても良い。
【0116】
図12に示された実施形態においても、周回走行経路LM11に沿って作業走行が行われる際に、苗植付装置Wの全幅に亘って移植作業が行われる構成であっても良い。この場合、
図13に示される既作業領域としての外周領域SA11が圃場外側へ広がって外周領域SA12の幅が狭められてしまう。この場合であっても、周回走行経路LM12に沿って作業走行が行われる際に、走行機体Cの走行によって苗が踏み荒らされてしまった領域が、苗植付装置Wの全幅に亘って移植作業が行われることによって植え直される構成であっても良い。
【0117】
(11)上述の実施形態では、作業装置として苗植付装置Wが示されたが、作業装置は播種装置であっても良いし、施肥装置34であっても良いし、薬剤散布装置35であっても良い。もちろん、作業装置に乗用型管理機における薬液等の散布装置も含まれ、この場合には本発明における『植播作業』に、薬液等の散布作業も含まれる。
【0118】
(12)上述した目標走行経路LMは直線状であるが、目標走行経路LMは曲線状に設定されていても良い。
【0119】
(13)本発明に係る自動走行制御システムの技術的特徴は、植播系作業機そのものにも適用可能であって、そのため、本発明は、そのような植播系作業機も権利の対象とすることができる。したがって、本発明は田植機や播種機や乗用管理機にも適用可能であるし、田植機や播種機や乗用管理機の自動走行制御システムにも適用可能である。つまり、植播系作業機に乗用型田植機や乗用型播種機や乗用型管理機等が含まれる。
【0120】
なお、上述の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。
また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明は、圃場を自動走行する植播作業機及び植播作業機の自動走行制御システムに適用可能である。
【符号の説明】
【0122】
27 :整地ロータ
51B :自動走行制御部
52B :自動作業制御部
54 :経路設定部
55B :圃場形状算出部
59 :記憶部
80A :衛星測位ユニット
C :走行機体
W :苗植付装置(作業装置)
CA :内側作業領域
CA1 :内側作業領域
CA2 :内側作業領域
CA3 :内側作業領域
D :設定距離
E :出入口
K1 :農道(補給位置)
K2 :農道(補給位置)
LM :目標走行経路
LM11 :周回走行経路
LM12 :周回走行経路
LML :周回走行経路
S1 :第一辺(辺)
S2 :第二辺(辺)
S3 :第一辺(辺)
S4 :第二辺(辺)
SA :外周領域
SA11 :外周領域
SA12 :外周領域
SA1 :第一外周既作業領域(外周既作業領域)
SA2 :第二外周既作業領域(外周既作業領域)
SA3 :第三外周既作業領域(外周既作業領域)
SA4 :第四外周既作業領域(外周既作業領域)
SA5 :最終周回領域(外周領域)