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▶ 谷岡 明彦の特許一覧

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  • 特開-ボーリング工具 図1
  • 特開-ボーリング工具 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022019016
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】ボーリング工具
(51)【国際特許分類】
   B23B 51/04 20060101AFI20220120BHJP
   B23P 15/32 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
B23B51/04 D
B23P15/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020122533
(22)【出願日】2020-07-17
(71)【出願人】
【識別番号】520266487
【氏名又は名称】谷岡 明彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091465
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 久夫
(72)【発明者】
【氏名】谷岡 明彦
【テーマコード(参考)】
3C037
【Fターム(参考)】
3C037AA05
3C037DD06
3C037FF04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】切削チップだけでなく、工具本体も効率よく冷却できるようにした高強度のボーリング工具を提供する。
【解決手段】先端外周縁に切削チップが突設され、中心軸回りに回転されることによって穴あけを行うボーリング工具において、工具10は工具本体11とインナー部材12とから構成され、工具本体は円筒状をなし、インナー部材は断面外形円形状をなし、インナー部材が工具本体内に圧入されて固定されており、工具本体の外側面には切削チップ13の近傍から工具本体の基部に向けて螺旋状に伸びる切屑除去溝11Aが形成され、インナー部材の外側面には凹溝12Aが螺旋状に形成され、螺旋状の凹溝は工具本体内に圧入されて工具本体の内側面によって外側開放口が封鎖されることによって、切削チップに至る冷却材の供給チャネル14が構成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端外周縁に切削チップが突設され、中心軸回りに回転されることによって穴あけを行うボーリング工具において、
工具(10)は工具本体(11)とインナー部材(12)とから構成され、上記工具本体(11)は円筒状をなし、上記インナー部材(12)は断面外形円形状をなし、該インナー部材(12)が上記工具本体(11)内に圧入されて固定されており、
上記工具本体(11)の外側面には切削チップ(13)の近傍から上記工具本体(11)の基部に向けて螺旋状に伸びる切屑除去溝(11A)が形成され、
上記インナー部材(12)の外側面には凹溝(12A)が螺旋状に形成され、該螺旋状の凹溝(12A)は上記工具本体(11)内に圧入されて上記工具本体(11)の内側面によって外側口が封鎖されることによって、上記切削チップ(13)に至る冷却材の供給チャネルが構成されていることを特徴とするボーリング工具。
【請求項2】
上記工具本体(11)とインナー部材(12)とが焼き嵌め構造によって相互に固定されている請求項1記載のボーリング工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボーリング工具に関し、特に切削チップだけでなく、工具本体も効率よく冷却できるようにしたボーリング工具に関する。
【背景技術】
【0002】
ボーリング工具では外形円形状の本体先端外周縁に切削チップを突設するとともに、本体に冷却材、例えば切削油の供給路を形成し、本体や切削チップに冷却材を供給して本体や切削チップが過熱するのを抑制する構造が採用されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2020-500721号公報
【特許文献2】特表2018-525238号公報
【特許文献3】特開2017-154218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1記載のボーリング工具では冷却材の供給路を本体内に湾曲した形状に形成することが提案されているが、実際にはどのように加工するのか不明である。つまり、特許文献1には冷却材の供給路を本体内に湾曲した形状に形成することが提案されているが、実際にはどのように加工するのか不明である。つまり、特許文献1には粉末冶金が提案されているが、粉末冶金ではボーリング工具の強度不足が懸念される。そこで、工具本体内部に冷却材の供給路を形成する場合にドリルを用いて穿設するしかなく、湾曲した形状に穿設することはできない。
また、特許文献2、3記載のボーリング工具では切削チップを冷却できるものの、冷却材の供給路を直線的な形状としているので、工具本体の冷却能はそれほど期待できなかった。
【0005】
本発明はかかる問題点に鑑み、切削チップだけでなく、工具本体も効率よく冷却できるようにしたボーリング工具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明に係るボーリング工具は、先端外周縁に切削チップが突設され、中心軸回りに回転されることによって穴あけを行うボーリング工具において、工具は工具本体とインナー部材とから構成され、上記工具本体は円筒状をなし、上記インナー部材は断面外形円形状をなし、該インナー部材が上記工具本体内に圧入されて固定されており、上記工具本体の外側面には上記切削チップの近傍から上記工具本体の基部に向けて螺旋状に伸びる切屑除去溝が形成され、上記インナー部材の外側面には凹溝が螺旋状に形成され、該螺旋状の凹溝は上記工具本体内に圧入されて上記工具本体の内側面によって外側開放口が封鎖されることによって、上記切削チップに至る冷却材の供給チャネルが構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の特徴の1つはボーリング工具を円筒状の工具本体内にインナー部材を圧入して一体化するようにした点にある。
【0008】
これにより、インナー部材の外側面に螺旋状の凹溝を切削加工、例えばエンドミルで加工し、インナー部材を工具本体内に圧入して一体化すると、螺旋状の凹溝の外側開放口が工具本体の内側面によって封鎖され、切削チップに至る冷却材の供給チャネルを構成することができる。
【0009】
その結果、冷却材、例えば切削油は工具本体内の供給チャネル内を螺旋状に流れて工具本体を冷却しながら切削チップに供給され、切削チップを冷却した後、切屑とともに切屑排出溝を排出され、切削チップだけでなく、工具本体も効率よく冷却できる。
【0010】
また、金属部材同士の固定構造によってボーリング工具に製作するようにしたので、粉末冶金によってボーリング工具を製作する特許文献1記載のボーリング工具に比較して高い強度のボーリング工具が得られる。
【0011】
インナー部材は工具本体に圧入によって固定すればよいが、強い固定強度を確保する上で、工具本体とインナー部材とを焼き嵌め構造によって相互に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係るボーリング工具の好ましい実施形態を示す全体図である。
図2】上記実施形態における要部断面図である。
図3】上記実施形態におけるインナー部材を示す図である。
図4】上記インナー部材を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。図1ないし図4は本発明に係るボーリング工具の好ましい実施形態を示す。図において、ボーリング工具10は工具本体11とインナー部材12の2つの部材から構成されている。
【0014】
工具本体11は円筒状をなし、基部には加工機械に対する三角錐状の取付け基部11Bが形成され、取付け基部11B内には冷却材の供給チャネル14が形成され、工具本体11の先端外周縁には2つの切削チップ13が取付けられ、又工具本体11の外側面には切削チップ13の近傍から工具本体11の基部に向けて螺旋状に伸びる切屑除去溝11Aが形成されている。
【0015】
また、インナー部材12は大略円筒状をなし、工具本体11内に圧入されて固定されている。具体的には工具本体11を加熱し、その状態で工具本体11内にインナー部材12を圧入し、工具本体11を冷却させて収縮させる、いわゆる焼き嵌めによって強固に固定することができる。
【0016】
このインナー部材12の外側面には螺旋状の凹溝12Aが切削加工、例えばエンドミル加工によって切削チップ13の近傍から基部側に向けて形成され、螺旋状の凹溝12Aはインナー部材12が工具本体11内に圧入されることによって、工具本体11の内側面によって外側開放口が封鎖され、切削チップ13に至る冷却材の供給チャネルが構成され、冷却材の供給チャネルは工具本体11の取付け基部11Bの冷却材の供給チャネルに連通されている。
【0017】
以上のような本例のボーリング工具ではボーリング工具10を円筒状の工具本体11内にインナー部材12を圧入して一体化するようにしたので、インナー部材12の外側面に螺旋状の凹溝12Aを切削加工、例えばエンドミルで加工し、インナー部材12を工具本体11内に圧入して一体化すると、螺旋状の凹溝12Aの外側開放口が工具本体11の内側面によって封鎖され、切削チップ13に至る冷却材の供給チャネルを構成することができる結果、冷却材、例えば切削油は工具本体11内の供給チャネル内を螺旋状に流れて工具本体11を冷却しながら切削チップ13に供給され、切削チップ13を冷却した後、切屑とともに切屑除去溝11Aを通って除去され、切削チップ13だけでなく、工具本体11も効率よく冷却できる。
【0018】
また、剛体同士、つまり工具本体11とインナー部材12の固定構造によってボーリング工具に製作するようにしたので、粉末冶金によってボーリング工具を製作する場合に比較して高い強度のボーリング工具が得られる。
【0019】
さらに、工具本体11とインナー部材12とを焼き嵌め構造によって相互に固定するようるしたので、強い固定強度を確保することができる。
【符号の説明】
【0020】
10 ボーリング工具
11 工具本体
11A 切屑除去溝
12 インナー部材
12A 凹溝
13 切削チップ
14 冷却材の供給チャネル
図1
図2
図3
図4