(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190160
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】固体-液体-気体反応を伴う超安定な再充電可能なマンガン電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/36 20100101AFI20221215BHJP
H01M 4/50 20100101ALI20221215BHJP
【FI】
H01M10/36 A
H01M10/36 Z
H01M4/50
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178213
(22)【出願日】2022-11-07
(62)【分割の表示】P 2019565195の分割
【原出願日】2018-05-29
(31)【優先権主張番号】62/513,373
(32)【優先日】2017-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ チェン
(72)【発明者】
【氏名】イー ツイ
(57)【要約】
【課題】 再充電可能なマンガン電池を提供すること
【解決手段】 再充電可能なマンガン電池は、(1)多孔質導電性支持体を含む第1の電極と、(2)触媒支持体および触媒支持体上に配置された触媒を含む第2の電極と、(3)第1の電極と第2の電極との間に配置され、第1の電極でのマンガンの可逆的沈着および溶解、ならびに第2の電極での水素の可逆的発生および酸化を維持する、電解質と、を含む。再充電可能なマンガン電池はまた、(1)多孔質導電性支持体を含むカソードと、(2)触媒支持体および触媒支持体上に配置された触媒を含むアノードと、(3)カソードとアノードとの間に配置され、マンガンイオンを含む電解質と、を含み得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再充電可能なマンガン電池であって、
多孔質導電性支持体を含む第1の電極と、
触媒支持体および前記触媒支持体上に配置された触媒を含む第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された電解質であって、MnSO
4
およびH
2
SO
4
を含む、電解質と
を含み、
ここで、前記再充電可能なマンガン電池の充電動作中に、前記第1の電極の前記多孔質導電性支持体の表面の上にナノ構造化された酸化マンガンが析出するように、前記再充電可能なマンガン電池が構成される、
再充電可能なマンガン電池。
【請求項2】
前記多孔質導電性支持体が炭素質繊維状支持体である、請求項1に記載の再充電可能なマンガン電池。
【請求項3】
前記触媒支持体が炭素質繊維状支持体である、請求項1に記載の再充電可能なマンガン電池。
【請求項4】
前記触媒が、非貴金属、非貴金属炭化物、または非貴金属リン化物のうちの1つを含む、請求項1に記載の再充電可能なマンガン電池。
【請求項5】
前記電解質がマンガンイオンを含む、請求項1に記載の再充電可能なマンガン電池。
【請求項6】
前記マンガンイオンがMn2+を含む、請求項5に記載の再充電可能なマンガン電池。
【請求項7】
前記マンガンイオンの濃度が0.1M~7Mの範囲にある、請求項5に記載の再充電可能なマンガン電池。
【請求項8】
前記電解質が水性電解質である、請求項5に記載の再充電可能なマンガン電池。
【請求項9】
前記水性電解質が7未満のpHを有する、請求項8に記載の再充電可能なマンガン電池。
【請求項10】
再充電可能なマンガン電池であって、
多孔質導電性支持体を含むカソードと、
触媒支持体および前記触媒支持体上に配置された触媒を含むアノードと、
前記カソードと前記アノードとの間に配置された電解質であって、MnSO
4
およびH
2
SO
4
を含む、電解質と
を含み、
ここで、前記再充電可能なマンガン電池の充電動作中に、前記カソードの前記多孔質導電性支持体の表面の上にナノ構造化された酸化マンガンが析出するように、前記再充電可能なマンガン電池が構成される、
再充電可能なマンガン電池。
【請求項11】
前記電解質がマンガンイオンを含む、請求項10に記載の再充電可能なマンガン電池。
【請求項12】
前記マンガンイオンがMn2+を含む、請求項11に記載の再充電可能なマンガン電池。
【請求項13】
前記マンガンイオンの濃度が0.1M~7Mの範囲にある、請求項11に記載の再充電可能なマンガン電池。
【請求項14】
前記電解質が酸性である、請求項10に記載の再充電可能なマンガン電池。
【請求項15】
前記触媒が、非貴金属、非貴金属炭化物、または非貴金属リン化物のうちの1つを含む、請求項10に記載の再充電可能なマンガン電池。
【請求項16】
前記多孔質導電性支持体が炭素質繊維状支持体である、請求項10に記載の再充電可能なマンガン電池。
【請求項17】
前記触媒支持体が炭素質繊維状支持体である、請求項10に記載の再充電可能なマンガン電池。
【請求項18】
再充電可能なマンガン電池を動作させる方法であって、
多孔質導電性支持体を含む第1の電極を提供することと、
触媒支持体および前記触媒支持体上にコーティングされた触媒を含む第2の電極を提供することと、
前記第1の電極でのマンガンの可逆的沈着および溶解、ならびに前記第2の電極での水素の可逆的発生および酸化を維持する電解質を提供することであって、ここで、前記電解質が、MnSO
4
およびH
2
SO
4
を含む、電解質を提供することと
前記再充電可能なマンガン電池の充電動作中に、前記第1の電極の前記多孔質導電性支持体の表面の上にナノ構造化された酸化マンガンを形成することと
を含む、方法。
【請求項19】
前記ナノ構造化された酸化マンガンが、ガンマ酸化マンガンを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ナノ構造化された酸化マンガンが、酸化マンガンのナノシートを含む、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2017年5月31日に出願された米国仮出願番号第62/513,373号の利益を主張しており、この仮出願の内容は、その全体が参考として本明細書中に援用される。
【0002】
連邦政府が後援する研究開発に関する声明
本発明は、エネルギー省により授与された契約DE-AC02-76SF00515に基づく政府の支援によりなされたものである。政府は、本発明に特定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
背景
増え続ける世界的なエネルギー消費により、温室効果ガスの排出および大気汚染を削減するための再生可能エネルギー技術の開発が推進されている。電池などの電気化学エネルギー貯蔵装置は、太陽や風などの再生可能であり、しかもなお断続的なエネルギー源の実装に不可欠である。現在まで、異なる電池技術がエネルギー貯蔵用に展開されてきた。リチウムイオン電池は、携帯用電子機器において広範にわたって使用されているが、それらの安全性および長期再充電性は大幅に改善される必要がある。有機対応品と比較して、再充電可能な水性電池は、高出力、高い安全性、環境への優しさという点から大きな利点がある。過去数十年にわたって、マンガン(Mn)系水性電池は、それらの地中における存在度(earth abundance)、低コスト、環境適合性、および高い理論容量により、著しい注目を集めている。酸化マンガン系の水性電池では、最先端のマンガン亜鉛電池が支配的であるが、容量が低く、再充電性が不十分であり、亜鉛アノード上で樹状突起(dentrite)の形成を被る。1電子移動電荷蓄積メカニズムの低い理論比容量(約308mAh/g)と厳しい初期容量フェージングが相まって、Mn系電池を高エネルギー貯蔵装置としてより広く実装することが妨げられている。カソードでは、固体MnO2カソードが電解質へ溶解することにより寄生損失が発生し、典型的なMn系セルに対し可逆性が低下する。ビスマス、鉛、チタン、ニッケルなどの種々の添加剤で修飾された二酸化マンガンが、活性MnO2の損失を低下させ、再充電性を高めることが実証されているが、電池の安定性における改善は依然として制約されている。アノードでは、サイクルが長くなると避けられない亜鉛樹状突起が形成され、これにより亜鉛系の電池の故障がもたらされる。したがって、高容量および長サイクル寿命を備えた高度な再充電可能な水性マンガン系電池の開発が非常に望ましい。
【0004】
この背景に対して、本開示の実施形態を開発する必要性が生じた。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
要旨
いくつかの実施形態では、再充電可能なマンガン電池は、
(1)多孔質導電性支持体を含む第1の電極と、(2)触媒支持体および触媒支持体上に配置された触媒を含む第2の電極と、(3)第1の電極と第2の電極との間に配置され、第1の電極でのマンガンの可逆的沈着および溶解、ならびに第2の電極での水素の可逆的発生および酸化を維持する、電解質と、を含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、再充電可能なマンガン電池は、
(1)多孔質導電性支持体を含むカソードと、(2)触媒支持体および触媒支持体上に配
置された触媒を含むアノードと、(3)カソードとアノードとの間に配置され、マンガンイオンを含む電解質と、を含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、再充電可能なマンガン電池を製造する方法は、
(1)多孔質導電性支持体を含む第1の電極を提供することと、(2)触媒支持体および触媒支持体上にコーティングされた触媒を含む第2の電極を提供することと、(3)第1の電極でのマンガンの可逆的沈着および溶解、ならびに第2の電極での水素の可逆的発生および酸化を維持する電解質を提供することと、を含む。
【0008】
本開示の他の態様および実施形態も企図される。前述の概要および以下の発明を実施するための形態は、本開示を特定の実施形態に限定することを意味するものではなく、単に本開示のいくつかの実施形態を説明することを意味している。
【0009】
本開示のいくつかの実施形態の性質および目的をよりよく理解するために、添付の図面とともに以下の発明を実施するための形態を参照すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、2電子移動電荷蓄積メカニズムを備えた、改善されたマンガン電池のセル概略図を示す。(A)最先端のMnO
2-Zn電池の構成。(B)改善されたマンガン電池の構成。(C)充電モードおよび放電モードにおけるセルの概略図。概略図には、電解質中の陰イオン(SO
4
2-)を示さないで、陽イオン(Mn
2+およびH
+)が示されていることを注記する。
【0011】
【
図2】
図2は、スウェージロック型固体-液体-気体反応性マンガン電池(SLGMB)の電気化学性能を示す。(A)種々の酸性度を有する約1MのMnSO
4におけるセルの放電挙動。(B)レート特性および(C)約0.05MのH
2SO
4を含む約1MのMnSO4の電解質中におけるセルの長期安定性試験。すべてのセルを、スウェージロック型装置にて試験し、セルを、約1.6Vで約1mAh/cm
2まで充電し、約10mA/cm
2で約0.5Vまで放電する。挿入されたデジタル写真は、スウェージロックセルセットアップを示す。
【0012】
【
図3】
図3は、セルカソードの特性評価を示す。初回に約1.6Vで約1mAh/cm
2まで充電した後のカソードの(A、B)走査電子顕微鏡(SEM)画像および(C)透過電子顕微鏡(TEM)画像。初回に約10mA/cm
2で約0.5Vまで放電した後のカソードの(D、E)SEM画像および(F)TEM画像。丸で囲んだ領域は、
図3F中のMnO
2溶解によって生成されたナノポアを示す。(G)初回の充電および放電後のカソードのX線回折(XRD)スペクトル。初回に約1.6Vで約1mAh/cm
2まで充電した後のカソードの(H)X線光電子分光法(XPS)Mn 3sおよび(I)O 1s。
【0013】
【
図4】
図4は、SLGMBのスケールアップを示す。(A)3つの異なる電極サイズを有するスウェージロックセルの放電挙動。スウェージロックセルI(カソード厚さ約3.18mmおよび面積約1cm
2)を、約1.6Vで約2mAh(約2mAh/cm
2)まで充電し、約10mA/cm
2で約0.5Vまで放電した。スウェージロックセルII(カソード厚さ約6.35mmおよび面積約1cm
2)を、約1.6Vで約4mAh(約4mAh/cm
2)まで充電し、約10mA/cm
2で約0.5Vまで放電した。スウェージロックセルIII(カソード厚さ約6.35mmおよび面積約2.5cm
2)を、約1.6Vで約10mAh(約4mAh/cm
2)まで充電し、約10mA/cm
2で約0.5Vまで放電した。(B)約1.6Vで約4mAh/cm
2まで充電し、約10mA/cm
2で約0.5Vまで放電したときの、セルIIのサイクル安定性。(C)無膜円筒形Mn-Hセルの概略図およびデジタル写真。(D)厚さ約6.35mm、面積約10cm
2のカソードカーボンフェルトを用いた円筒形セルの放電挙動。セルを、約1.8Vで約10、約15、および約20mAhの容量まで充電し、約20mAで0Vまで放電した。(E)充電容量が約15mAhの円筒形セルの、サイクル安定性。電解質は、約0.05MのH
2SO
4を含む約1MのMnSO
4である。
【0014】
【
図5】
図5は、スウェージロックセルセットアップを示す。(A)全体図。(B)拡大図。
【0015】
【
図6】
図6は、カーボンフェルトおよびMnO
2コーティングカーボンフェルト上での酸素発生反応(OER)試験を示す。約0.5mV/sのスキャン速度でのOER分極曲線は、約10mA/cm
2の電流密度で、可逆水素電極(RHE)に対して約2Vより高い開始電位で酸素が生成し始めることを示している。高表面積カーボンフェルトの二重層静電容量を抑制するために、OER試験には約0.5mV/sの低いスキャン速度を使用した。MnO
2カーボンフェルト電極上のRHEに対して約1.83Vの電位でのアノードピークは、おそらくMnO
2へのNa
+の脱挿入に起因する。
【0016】
【
図7】
図7は、約1MのMnSO
4の電解質中におけるスウェージロックセルの最初の10サイクルの放電挙動を示す。
【0017】
【
図8】
図8は、(A)約1MのMnSO
4の電解質、(B)約1MのMnSO
4+約0.05MのH
2SO
4の電解質、および(C)約1MのMnSO4+約3MのH
2SO
4の電解質中におけるスウェージロックセルの充電挙動を示す。セルを、約1.6Vで約1mAh/cm
2の容量まで充電した。
【0018】
【
図9】
図9は、(A)約1MのMnSO
4+約0.05MのH
2SO
4の電解質中におけるスウェージロックセルの最初の10サイクルの放電挙動を示す。(B)セルの容量保持率を示す。
【0019】
【
図10】
図10は、スウェージロックセルにより点灯している発光ダイオード(LED)を示す。約1.6Vで約3分間充電した場合、直列に接続された2つのスウェージロックセルによって青色LEDが駆動された。
【0020】
【
図11】
図11は、高表面積カーボンフェルト集電体に起因する電気化学二重層容量(EDLC)寄与率を示す。測定セットアップは、MnSO
4が電解質中に含まれていないことを除いて、スウェージロックセルのセットアップと同一である。スウェージロックセルにおけるEDLCの容量は、約0.064mAh/cm
2である。この値は、
図2Cに示すように、スウェージロックセルの長期サイクル試験で観察された余剰容量に対応している。
【0021】
【
図12】
図12は、約1MのMnSO
4電解質中におけるスウェージロックセルのサイクル性能を示す。
【0022】
【
図13】
図13は、カーボンフェルトの、(A)、(B)、および(C)様々な倍率のSEM画像、ならびに(D)エネルギー分散型X線分光法(EDX)スペクトルを示す。
【0023】
【
図14】
図14は、約1MのMnSO
4+約0.05MのH
2SO
4の電解質中における、(A)、(B)、および(C)様々な倍率のSEM画像、ならびに(D)約1.6Vで約1mAh/cm
2まで充電したときのセルカソードのEDXスペクトルを示す。セルを組み立てた後、脱イオン(DI)水中でカソードを徹底的に洗浄したにもかかわらず、
図14Aではセパレータからの若干のガラスマイクロファイバーがまだ観察されたことに注意する。
【0024】
【0025】
【
図16】
図16は、析出したMnO
2の、(131)および(031)面の格子縞を示す高解像度TEM(HRTEM)画像を示す。
【0026】
【
図17】
図17は、(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)、(G)、(H)、および(I)MnO
2コーティングカーボンフェルトカソードの異なる領域のSEM画像を示す。セルを、約1MのMnSO
4+約0.05MのH
2SO
4の電解質中において、約1.6Vで約1mAh/cm
2まで充電した。
【0027】
【
図18】
図18は、実質的に完全に放電されたカーボンフェルトカソードの、(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)、(G)、および(H)異なる部分のSEM画像、および(I)EDXスペクトルを示す。セルを、約1MのMnSO
4+約0.05MのH
2SO
4の電解質中において、約1.6Vで約1mAh/cm
2まで充電し、次いで約10mA/cm
2で約0.5Vまで放電した。
【0028】
【
図19】
図19は、実質的に完全に放電されたカーボンフェルトカソード上のMnO
2残留物のTEM画像を示す。セルを、約1MのMnSO
4+約0.05MのH
2SO
4の電解質中において、約1.6Vで約1mAh/cm
2まで充電し、次いで約10mA/cm
2で約0.5Vまで放電した。
【0029】
【
図20】
図20は、部分的に放電されたカーボンフェルトカソードの、(A)、(B)、および(C)SEM画像および(D)XRDスペクトルを示す。セルを、約1MのMnSO
4+約0.05MのH
2SO
4の電解質中において、約1.6Vで約1mAh/cm
2まで充電し、次いで約10mA/cm
2で約1.2Vまで放電した。
【0030】
【
図21】
図21は、充電および放電段階におけるカソードの(A)XPS調査および(B)Mn 2pスペクトルを示す。
【0031】
【0032】
【
図23】
図23は、1.6Vで1mAh/cm
2まで充電したときのセル電解質濃度変動のシミュレーション結果を示す。
【0033】
【
図24】
図24は、10mA/cm
2で放電したときのセル電解質濃度変動のシミュレーション結果を示す。
【0034】
【
図25】
図25は、1.6Vの充電電位下における1mAh/cm
2の容量に達するまでの完全な充電プロセス、および10mA/cm
2の放電電流密度下における完全な放電プロセスにわたる、電解質濃度変動の代表的なスライスを示す。各スライスの下の数字は、充電時間または放電時間を秒単位で示す。
【0035】
【
図26】
図26は、(A)0、2、20、および40秒の充電時間中の、Mn
2+イオン流束の方向に沿った位置による電解質濃度変動を示す。(B)40~60(偶数時間、つまり、40、42、44などによる)、70、80、100、160、220、280、320、および400秒の放電時間中の、Mn
2+イオン流束の方向に沿った位置による電解質濃度変動を示す。
【0036】
【
図27】
図27は、シミュレーションされた充電プロセスにおける電流密度および容量対充電時間を示す。
【0037】
【
図28】
図28は、(A)セルI、(B)セルII、および(C)セルIIIの、異なる充電容量下での放電挙動を示す。これらのスウェージロックセルを、約1MのMnSO
4+約0.05MのH
2SO
4の電解質中において、約1.6Vで充電し、次いで約10mA/cm
2で約0.5Vまで放電した。
【0038】
【
図29】
図29は、(A)約5mAh/cm
2および(B)約6mAh/cm
2の充電容量下でのスウェージロックセルIIのサイクル安定性試験をそれぞれ示す。
【0039】
【
図30】
図30は、約1.6Vで約6mAh/cm
2まで充電したときの、セルIIのカソードのSEM画像を示す。
【0040】
【
図31】
図31は、約1.6Vで約6mAh/cm
2まで最初に充電し、次いで約10mA/cm
2で約0.5Vまで放電した後のセルIIのカソードのSEM画像を示す。
【0041】
【
図32】
図32は、円筒形セルのセットアップを示す。(A)円筒形セル内の部品。(B)セルのカソード。(C)セルのアノード。
【0042】
【0043】
【0044】
【
図35】
図35は、いくつかの実施形態による、再充電可能なマンガン電池の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
説明
図35は、いくつかの実施形態による、再充電可能なマンガン電池100の概略図を示す。電池100は、(1)多孔質導電性支持体108を含む第1の電極102と、(2)触媒支持体110および触媒支持体110上にコーティングされた、または別様に配置された触媒112を含む第2の電極104と、(3)第1の電極102と第2の電極104との間に配置され、第1の電極102でのマンガンの可逆的沈着および溶解、ならびに第2の電極104での水素の可逆的発生および酸化を維持する、電解質106と、を含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、第1の電極102はカソードであり、第2の電極104はアノードである。
【0047】
いくつかの実施形態では、第1の電極102に含まれる多孔質導電性支持体108は、カーボンクロス、カーボン紙、またはカーボンフェルトなどの炭素質繊維状支持体であるが、他の炭素質繊維状支持体または非炭素系繊維状支持体を使用することができる。多孔度は、総体積に対する空隙容積の比率、つまり0~1の間で、または0%~100%の間の百分率として表すことができる。いくつかの実施形態では、多孔質導電性支持体108は、少なくとも約0.05~最大約0.95もしくはそれより高い多孔度、例えば、約0.1~約0.9、約0.2~約0.9、約0.3~約0.9、約0.4~約0.9、約0.5~約0.9、約0.5~約0.8、または約0.6~約0.8の範囲にある多孔度を
有することができる。多孔度を決定するための技術としては、例えば、ポロシメトリー技術および光学もしくは走査技術が挙げられる。いくつかの実施形態では、および第1の電極102の少なくとも1つの充電状態(例えば、実質的に完全に放電された状態)では、多孔質導電性支持体108は、第1の電極102の総重量の約50重量%超、例えば少なくとも約60重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約90重量%、または少なくとも約95重量%を構成する。
【0048】
いくつかの実施形態では、第2の電極104に含まれる触媒支持体110は、カーボンクロス、カーボン紙、またはカーボンフェルトなどの炭素質繊維状支持体であるが、他の炭素質繊維状支持体または非炭素系繊維状支持体を使用することができる。いくつかの実施形態では、触媒支持体110は、少なくとも約0.05~最大約0.95もしくはそれより高い多孔度、例えば、約0.1~約0.9、約0.2~約0.9、約0.3~約0.9、約0.4~約0.9、約0.5~約0.9、約0.5~約0.8、または約0.6~約0.8の範囲にある多孔度を有することができる。
【0049】
いくつかの実施形態では、第2の電極104に含まれる触媒112は、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、およびイリジウム(Ir)などの、1つまたは複数の白金族金属を含む。いくつかの実施形態では、触媒112は、1つまたは複数の白金族金属の代わりに、またはこれらと組み合わせて、銀(Ag)および金(Au)などの1つまたは複数の貴金属を含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、第2の電極104に含まれる触媒112は、1つまたは複数の非貴金属およびそれらの炭化物、例えば、炭化タングステン(例えば、WCまたはW2C)、炭化モリブデン(例えば、MoCまたはMo2C)、炭化チタン(例えば、TiCまたはTi2C)を含む。いくつかの実施形態では、触媒112は、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、および銅(Cu)などの1つまたは複数の非貴金属を、1つまたは複数の非貴金属およびそれらの炭化物の代わりに、またはこれらと組み合わせて含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、第2の電極104に含まれる触媒112は、1つまたは複数の非貴金属およびそれらのリン化物、例えば、リン化ニッケル(例えば、NiPまたはNi2P)、リン化コバルト(例えば、CoPまたはCo2P)およびリン化鉄(例、FePまたはFe2P)を含む。いくつかの実施形態では、触媒112は、マンガン(Mn)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、およびチタン(Ti)などの1つまたは複数の非貴金属を、1つまたは複数の非貴金属およびそれらのリン化物の代わりに、またはこれらと組み合わせて含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、第2の電極104に含まれる触媒112は、カーボンブラック、グラファイトカーボン、メソポーラスカーボン、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、およびグラフェンなどの、1つまたは複数の炭素質材料を含む。いくつかの実施形態では、触媒112は、窒素(N)、硫黄(S)、ホウ素(B)、およびリン(P)などの1つまたは複数の元素でドープされた1つまたは複数の炭素質材料を含む。
【0053】
いくつかの実施形態では、電解質106は水性電解質である。いくつかの実施形態では、水性電解質はマンガンイオンを含む。いくつかの実施形態では、マンガンイオンはMn2+を含むが、他の酸化状態を有するマンガンイオンを含むことができる。いくつかの実施形態では、マンガンイオンの濃度は、約0.1モル濃度(M)~約7M、例えば約0.1M~約6M、約0.1M~約5M、約0.1M~約4M、約0.1M~約3M、約0.1M~約2M、約0.5M~約2M、または約0.5M~約1.5Mの範囲に存在する。いくつかの実施形態では、水性電解質は、約7もしくはそれ未満のpH、例えば約6.5
もしくはそれ未満、約6もしくはそれ未満、約5.5もしくはそれ未満、約5もしくはそれ未満、約4.5もしくはそれ未満、約4もしくはそれ未満、約3.5もしくはそれ未満、約3もしくはそれ未満、約2.5もしくはそれ未満、約2もしくはそれ未満、または約1.5もしくはそれ未満、および約1もしくはそれ未満までのpHを有する。
【0054】
いくつかの実施形態では、電解質106は非水性電解質である。いくつかの実施形態では、非水性電解質はマンガンイオンを含む。いくつかの実施形態では、マンガンイオンはMn2+を含むが、他の酸化状態を有するマンガンイオンを含むことができる。いくつかの実施形態では、マンガンイオンの濃度は、約0.1M~約7M、例えば約0.1M~約6M、約0.1M~約5M、約0.1M~約4M、約0.1M~約3M、約0.1M~約2M、約0.5M~約2M、または約0.5M~約1.5Mの範囲に存在する。いくつかの実施形態では、非水性電解質は、約7もしくはそれ未満のpH、例えば約6.5もしくはそれ未満、約6もしくはそれ未満、約5.5もしくはそれ未満、約5もしくはそれ未満、約4.5もしくはそれ未満、約4もしくはそれ未満、約3.5もしくはそれ未満、約3もしくはそれ未満、約2.5もしくはそれ未満、約2もしくはそれ未満、または約1.5もしくはそれ未満、および約1もしくはそれ未満のpHを有する。
【0055】
いくつかの実施形態では、電解質106は、マンガンが酸化マンガンとして多孔質導電性支持体108上へ沈着するのを維持するように構成される。いくつかの実施形態では、酸化マンガンはガンマ酸化マンガンを含む。いくつかの実施形態では、電解質106は、約1nm~約1000nm、約1nm~約900nm、約1nm~約800nm、約1nm~約700nm、約1nm~約600nm、約1nm~約500nm、約1nm~約400nm、約1nm~約300nm、約1nm~約200nm、または約1nm~約100nmの範囲の少なくとも1つの寸法を有するような、酸化マンガンのナノシートまたは他のナノ構造として、マンガンが、多孔性導電性支持体108上へ沈着するのを維持するように構成される。いくつかの実施形態では、電解質106は、マンガンが、約4+の酸化状態を有する多孔質導電性支持体108上へ沈着するのを維持するように構成される。
【0056】
追加の実施形態は、再充電可能なマンガン電池100を製造または動作させる方法を対象とし、この方法は、(1)多孔質導電性支持体108を含む第1の電極102を提供することと、(2)触媒支持体110および触媒支持体110上にコーティングされた触媒112を含む第2の電極104を提供することと、(3)第1の電極102でのマンガンの可逆的沈着および溶解、ならびに第2の電極104での水素の可逆的発生および酸化を維持する電解質106を提供することと、を含む。
【実施例0057】
以下の例は、本開示のいくつかの実施形態の特定の態様を説明し、当業者に説明を例示し提供する。この例は、本開示のいくつかの実施形態を理解および実施するのに有用な特定の方法論を提供するだけなので、この開示を限定するものと解釈されるべきではない。
【0058】
概要:
【0059】
高性能の再充電可能な電池の開発は、家庭用電化製品、電動輸送機器、およびグリッド貯蔵の用途のための再生可能エネルギーの統合にとって重要である。マンガン系電池は、低コスト、環境への優しさ、および高い理論容量の機会を提供する。しかし、これらの電池は、電解質へのマンガンの溶解により、容量が低く、サイクル安定性が低いという問題があった。この例では、固体-液体-気体反応を伴う改善された電池化学を導入し、これにより、超高速充電、高容量、および優れて再充電可能なマンガン系電池が可能になる。溶解性が高いマンガン水性電解質中において、カソードでは、二酸化マンガンが可逆的に沈着し、溶解するが、アノードでは触媒的水素発生酸化反応が生じる。マンガン電池の実
験測定では、約585mAh/gの可逆容量を有し、目立った劣化なしで10,000サイクルにわたって優れた再充電性を有する、ほぼ2電子移動の電荷蓄積メカニズムが示される。マンガン電池は、約1.3Vの明確に定義された放電電圧および約100C(約36秒の放電)の傑出したレート特性を示す。理論的シミュレーションにより、マンガン電池は、カソードにおけるマンガン沈着-溶解 充放電プロセスにおいて高い可逆性があることが確認される。さらに、この電池構成は、大規模なエネルギー貯蔵用の異なる経路で容易にスケーリングすることができる。この電池化学は、低コストで大規模な用途向けの効率的なエネルギー貯蔵システムとして望ましいものである。
【0060】
結果および考察:
【0061】
マンガンリッチケミストリー(rich chemistry of manganese)により、マンガンは、Mn
2+、Mn
3+、Mn
4+およびMn
7+などの種々の価数状態で存在することができ、異なるマンガン系電池システムの機会を提供する。本実施例では、2電子移動系マンガン析出-溶解電荷蓄積メカニズムを備えた、超安定な固体-液体-気体反応性マンガン電池(SLGMB)を提案する。提案されているマンガン電池は、固体MnO
2カソードおよびZnアノードを使用するMnO
2-Znセル(
図1A)を含む他のマンガン電池とは異なり、カソードレス(cathode-less)電極および触媒制御アノード(
図1B)を利用している。具体的には、SLGMBは、カソードレスの多孔質カーボンフェルト集電体、ガラス繊維セパレータ、Pt/C触媒コーティングカーボンフェルトアノード、およびマンガンイオン水性電解質で構成されている(
図1C)。マンガン電池の充放電プロセスは、カソードでの固-液マンガン沈着-溶解反応と、アノードでの液-ガス水素発生反応(HER)-水素酸化反応(HOR)を含む。セルを充電すると、電解質中の可溶性Mn
2+イオンがカソードに移動し、カーボンフェルト上に固体MnO
2の形で析出し、一方、アノードでは高活性白金触媒によって、プロトンからの水素ガスの発生が促進される。電池の放電中には、カソード上に析出したMnO
2の均一な層が溶解してMn
2+可溶性電解質中に戻り、アノード上で水素が酸化される。
【0062】
提案されたマンガン電池は、他のマンガン系を超える特別な利点を有する。第1に、他の水性マンガン電池におけるマンガン溶解によって引き起こされる故障メカニズムを活用して、主要な電荷蓄積メカニズムとして、提案されたマンガン電池に適用する。マンガンの析出-溶解反応は高度に可逆的プロセスであり、カソードの再充電性の問題に根本的に対処し、マンガンカソードの安定化という数十年にわたる目標に向けた重要な一歩を踏み出している。一方、マンガンの析出-溶解反応は、2電子移動に制御される充放電プロセスであり、これにより、SLGMBの理論容量が、他のMn電池と比較して約308から約616mAh/gへと、効果的に2倍になる。加えて、水素電極をアノードとして使用して亜鉛アノードの樹状突起の問題を克服し、水素電極は、高度に可逆的なPt触媒によるHERおよびHOR反応に基づいている。さらに、マンガンカソードを触媒水素アノードと結合することにより、充電および放電プロセス中の電解質酸性度の変動が、電解質中のプロトンの消費および放出によって大幅に緩和され得る。さらに、カソードでのマンガンの沈着-溶解反応およびアノードでのHER-HORの速い反応速度は、SLGMBが高レート特性を有するのに寄与する。
【0063】
提案されたエネルギー貯蔵メカニズムに照らして、SLGMBの構築を特注のスウェージロックセルにおいて実施し(
図2および
図5)、電気化学測定は、種々の酸性度を有する、約1MのMnSO
4の電解質中において室温で実施する。カソードでの酸素発生反応を抑制するために、クロノアンペロメトリー(例えば、実質的に一定の電位)技術を約1.6Vの最適電位で適用して、スウェージロックセルを充電する。MnO
2コーティングカーボンフェルトカソードは、酸素発生反応に対して約2Vより高い開始電位を示す(図
6)。電解質の酸性度が、SLGMBの電気化学性能に影響を与えることがわかる。約1MのMnSO
4の電解質中におけるセルは、約1.2Vで明確な放電プラトーを伴う典型的な電池放電挙動を示す。約1mAh/cm
2の容量まで充電した場合、セルの初回の放電効率は約62%であり、この放電効率は後続のサイクルで増加し、10サイクル後に約91%に達する(
図7)。少量のH
2SO
4(約0.05M)を約1MのMnSO
4電解質中に加えると、充電特性および放電特性が大幅に改善された。電解質のイオン伝導率およびプロトン濃度がより高いため、約0.05MのH
2SO
4を含む約1MのMnSO
4中におけるセルの充電電流は、約1MのMnSO
4電解質中における充電電流の約3倍であり、充電時間は、はるかに短い約85秒となる(
図8)。さらに、放電プラトーは約50mV増加し(
図2A)、約0.05MのH
2SO
4を含む約1MのMnSO
4の電解質中におけるセルの反応速度の改善を実証した。したがって、セルの初回の放電効率は約70%に改善され、その放電容量は、初期起動サイクル後に約100%の効率で約1mAh/cm
2に達することができる(
図9)。約1mAh/cm
2の面積容量は、2電子移動電荷蓄積メカニズムに基づいた約616mAh/gの比容量に対応し、これによりSLGMBにおける理論容量の達成が明らかになる。電解質の酸性度をさらに高めると、充電時間が短くなり放電電位が高くなるという点で、セルの電気化学特性が改善される。例えば、約3MのH
2SO
4を含む約1MのMnSO
4の電解質中におけるセルは、約1mAh/cm
2の対応する容量に達するのに、約36s(約100Cレート)の非常に速い充電速度を示す(
図8C)。その放電プラトーは約1.4Vより上に位置しており、酸を含まない電解質中におけるセルと比較して、少なくとも200mV増加している(
図2A)。しかし、高酸性電解質の過酷な条件および結果として生じる腐食性の問題により、弱酸性または中性に近い電解質で動作するセルに、さらに注意が向けられた。その後、指定されない限り、約0.05MのH
2SO
4を含む約1MのMnSO
4の電解質中におけるマンガン電池に、さらに注意が向けられた。
【0064】
電池のレート特性および長期サイクル安定性は、実際のエネルギー貯蔵用途にとって重要である。
図2Bに示すように、放電電流が約10mA/cm
2(約10Cレート)から約50C、さらには約100Cに増加しても、セルの放電容量は約1mAh/cm
2をほぼ維持することができ、このことは、その優れたレート特性および高い出力密度を示す。実際に、セルを約1.6Vで約3分間急速に充電したときに、これらのセルが数時間、青色発光ダイオード(LED)を点灯することができるということが実証されている(
図10)。印象的なことに、SLGMBは非常に安定した再充電性を示し、初期起動サイクル後、約1mAh/cm
2の充電容量で10,000サイクルにわたって顕著な容量劣化を示していない(
図2Cおよび
図9B)。セルの実際の放電容量が約1mAh/cm
2よりわずかに高いことは、注目に値する。これは、高表面積のカーボンフェルト集電体の電気化学二重層静電容量の余剰容量が寄与していることによるものである(
図11)。対照的に、純粋なMnSO
4電解質中におけるセルは、400サイクル後に緩やかな容量劣化を示し、その後深刻な劣化を示す(
図12)。電気化学的挙動と電解質の酸性度との相関関係は、マンガン電池の傑出した電気化学性能のための電解質最適化の重要性を示している。
【0065】
電極の変化を調査し、SLGMBのエネルギー貯蔵メカニズムを確認するために、異なる特性評価により、カソードでの可逆的マンガン沈着-溶解反応試験を実施する。Ex-situ走査電子顕微鏡(SEM)画像は、元のカーボンフェルトのきれいな表面(
図13)と比較して、約1mAh/cm
2までの初回の充電後のカーボンフェルトカソードが、MnO
2の均一層で実質的に覆われていることを示す(
図3Aおよび
図14)。MnO
2はX線回折(XRD)によってガンマ相であることが確認され(
図3G)、これは電解二酸化マンガンの特性と一致している。MnO
2のエネルギー分散型X線分光法(EDX)は、MnおよびOの顕著なピークを示し、これによりMnO
2の組成がさらに確認される(
図14D)。高解像度のSEM画像は、ほぼ垂直に配向したナノシートを備えたMn
O
2のナノ多孔質層を示しており(
図3B)、透過型電子顕微鏡(TEM)により、しわになり絡み合ったナノ構造であることがさらに特徴づけられた(
図3Cおよび
図15)。高解像度TEM(HRTEM)は、ガンマMnO
2の(131)および(031)面にそれぞれ対応する約0.24nmおよび約0.26nmの格子縞を示す(
図16)。初回の充電後、カソードの種々の異なる領域を調べると、カーボンフェルトカソード全体にMnO
2が均一に析出していることが示される(
図17)。対照的に、カソード上のMnO
2は初回の約0.5Vまでの完全放電後に著しく消失し、カーボンフェルトがその元の形態に戻った(
図3Dおよび
図18)。これは、MnO
2の特徴的なピークの消失を示している、XRDの結果とよく一致している(
図3G)。カソード全体にわたる異なる領域の観測結果により、完全放電時にMnO
2が完全に溶解していることが確認され、EDXでは、カソード上の炭素ピークのみが示されている(
図18)。しかし、おそらく初回の放電プロセスにおけるMnO
2の不完全な溶解によって、MnO
2残留物のごく一部が炭素繊維上に残っていることが見出された(
図3E)。MnO
2残留物は、析出したMnO
2と同様の形態であることがTEMによって特徴づけられた(
図3Fおよび
図19)。さらに、放電されたMnO
2残留物上には、多数のナノポアがはっきりと目に見え(
図3F)、これらの多数のナノポアは、放電中にMnO
2が徐々に溶解することにより形成され、不完全な溶解の痕跡として残った。SLGMBシステムの電荷蓄積メカニズムをよりよく理解するために、異なる放電カットオフ電圧下でカソードの調査を実施する。例えば、セルを完全放電しない場合(カットオフ電圧約1.2V)、カソードはMnO
2で部分的に覆われた炭素繊維の形態を示し、放電プロセスが実際に緩やかな溶解プロセスであることを実証している(
図20)。約1.2Vまで放電したカソードのXRDスペクトルは、充電状態のカソードのXRDスペクトルと比較して、はるかに弱いMnO
2の結晶ピークを示す(
図20D)。
【0066】
析出したMnO
2の酸化状態を評価するために、充電段階下および放電段階下におけるカソード上で、X線光電子分光法(XPS)測定を実施する。約1mAh/cm
2まで充電した後のカソードは、Mnの顕著なスペクトルを示し、このスペクトルは、完全に放電すると実質的に消失する(
図21)。Mn 2sおよびO 1sのコアレベルのスペクトルを利用して、マンガンの酸化状態を決定した。充電段階におけるカソードの場合、MnO
2の平均酸化状態は、約4.47eVのMn 2sピーク分裂エネルギーに基づいて約3.9と計算された(
図3H)。したがって、マンガン電池の実際の電子電荷移動数は約1.9であり、これは約585mAh/gの比容量に相当する。さらに、デコンボリューションされたO 1sスペクトルは、4価のMnO
2のMn-O-Mn結合、3価のMnOOHのMn-OH結合、および材料中の残留水のH-O-H結合にそれぞれ関連する3つの成分に適合させることができる(
図3I)。
【0067】
電荷蓄積メカニズムの性質を理解するために、COMSOLの有限要素指向モデルを適用して、完全充放電プロセスにわたる電極反応の動的変動および電解質濃度をシミュレーションすることにより、セルカソードでのMnO
2析出-溶解プロセスを模倣する(
図22)。シミュレーションされたカラースペクトル(
図23、24、および25)およびそれらの対応する電解質濃度分布曲線(
図26)は、MnO
2の析出-溶解反応の完全に可逆的プロセスを表し、それらの高速充電率を表す(
図27)。
【0068】
大規模なエネルギー貯蔵用途のために電池容量を増加させる試みにおいて、SLGMBのエネルギー貯蔵容量をスケールアップするために2つの異なるアプローチが開発されている。第1のアプローチでは、より大きな表面積を有する、より厚いカソードカーボンフェルトを使用することにより、セル容量を増加させる。異なるカーボンフェルトカソードを備えた対応するセルは、セルI(厚さ:約3.18mm、面積:約1cm
2)、セルII(厚さ:約6.35mm、面積:約1cm
2)、およびセルIII(厚さ:約6.35mm、面積:約2.5cm
2)としてそれぞれ表す。
図28に示し、
図4Aにまとめたよ
うに、セルIIの容量(約3.78mAh)は、2倍の厚さを用いてカソードを置き換えることにより、セルIの容量(約1.9mAh)のほぼ2倍である。同様に、カソード面積を約2.5倍増やすことで、セルIIIの容量を約8.97mAhにさらに増加させることができる。約4mAh/cm
2の高充電容量下でのセルIIの再充電性試験は、600サイクル後の放電容量が約3.86mAh/cm
2の優れた耐久性を示し(
図4B)、これは、約96.5%の高い容量維持率に相当する。しかし、MnO
2の導電率が比較的低いため(10
-5~10
-6S/cm)、セルの可逆性が約4mAh/cm
2の充電容量を超えて低下することが見出された。その結果、セルIIを約5および約6mAh/cm
2の充電容量でサイクルすると、その放電容量は初期サイクルで徐々に劣化し、その後下落した(
図29)。高充電容量下でのセルの性能劣化メカニズムを探して、SEM画像から、約6mAh/cm
2の充電容量のカソードがMnO
2の厚い層で厚く覆われていることが観察され、それらの一部は厚さが厚いために炭素繊維から剥離し、それにより機械的亀裂が誘発されがちである(
図30)。そのような剥離により、活物質の損失および電解質種の減少がもたらされ、それにより析出プロセスが遅くなり、放電プロセスの効率が悪化する。実際、放電後のセルカソードは、カーボンフェルトからのMnO
2の不完全な溶解および部分的な剥離を示した(
図31)。異なる充電容量下でのサイクル安定性試験は、安定な電気化学性能のために充電容量の制御が望ましいことを示している。全体として、この例で設計されたスウェージロックセルは、大規模なエネルギー貯蔵用途向けの電池スケールアップ特性を示した。
【0069】
SLGMBのスケールアップに向けた第2のアプローチでは、大規模なエネルギー貯蔵のために、無膜円筒形セルを形成する。円筒形セルは、大面積のカーボンフェルトカソード、電解質、およびPt/Cコーティングカーボンフェルトアノードの小片で構成されている(
図4Cおよび
図32)。鋼製容器を利用して、すべての構成要素を封入し、それらを水素雰囲気下で保持した。独特な電荷蓄積メカニズムにより、非対応サイズのカソードとアノードを利用することが可能になり、アノードでの貴重な白金触媒の量を減らすことにより、触媒系電池の製造に対し経済的経路を提供する。
図4Dは、約0.05MのH
2SO
4を含む約1MのMnSO
4の電解質中における円筒形セルの電気化学放電挙動を示す。同じ電荷蓄積メカニズムにより、円筒形セルはスウェージロックセルと同様の電気化学的挙動を示す(
図33)。急速充電率に関しては、約15mAhの容量に達するのに約30分かかる(
図34)。円筒形セルにおける種々の充電容量で、約1.2Vの放電プラトーが観察され、これはスウェージロックセルの充電容量よりもわずかに低くなっている。円筒形セルは、約10~20mAhの高容量を達成することができる。具体的には、約10、約15および約20mAhの充電容量下におけるセルの初回サイクル放電容量は、約9.7、約13.7および約17.6mAhであり、それぞれ、約97%、約91.3%および約88%の初期クーロン効率に対応する。さらに、円筒形セルの効率は初期サイクル後に増加し、安定性試験で明らかになったように、最初の50サイクル内で約96.7%に達する(
図4E)。長期サイクル安定性の結果では、円筒形セルの顕著な可逆性が示され、1400サイクル後に約15mAhの充電容量のうちの約94.2%を達成する(
図4E)。エネルギー貯蔵をさらに増加させるために、より大きなサイズのカソードカーボンフェルトを適用することにより、容器を拡大することができる。円筒形セルの優れた電気化学性能は、大規模なエネルギー貯蔵用途に向けた別の重要な戦略を実証する。したがって、固体-液体-気体反応を伴う開発された水性マンガン電池は、グリッドレベルのエネルギー貯蔵用の高容量、高速充電および超安定電池の開発に向けた一般的な方法論を提供する。
【0070】
材料および方法:
【0071】
材料
【0072】
以下の化学物質および材料は市販されており、受け入れたままの状態で使用される、すなわち、硫酸マンガン(MnSO4、Sigma Aldrich)、硫酸(H2SO4、Sigma Aldrich)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP、Sigma Aldrich)、炭素上の約40%の白金(HiSPEC 4000、Fuel Cell Store)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF、MTI)、ワットマンガラス繊維ろ紙(GF8、厚さ約350μm)、チタン箔(厚さ約0.127mmおよび約0.5mm、Alfa Aesar)、カーボンフェルト(厚さ約3.18mmおよび約6.35mm、Alfa Aesar)、および脱イオン(DI)水(約18.2MΩの抵抗、Milli Q)。
【0073】
方法
【0074】
スウェージロックセルは、ステンレス鋼の入口および出口弁を、クランプによりポリテトラフルオロエチレン(PTFE)中心のOリング内でKFフランジ-スウェージロックアダプターに接続することにより構築した(
図5)。カソードとアノードとをガラス繊維セパレータで挟み、コインセルスタックにてスウェージロックセルに組み立てた。絶縁PTFEフィルムの薄い層をアルミニウムクランプの内側に配置して、カソードとアノードとを分離した。カソードカーボンフェルトは、約450℃で約2時間焼成した後、集電体として機能させた。アノードは、カーボンフェルトの片面にPt/Cスラリーを貼り付けることにより(焼成処理なしで)調製した。次に、真空下にて約60℃で少なくとも約24時間、実質的に完全に乾燥させた。Pt/Cスラリーを、NMP中でPt/C粉末をPVDFバインダーと約9:1の比で混合することにより調製して、一晩激しく撹拌した。アノードカーボンフェルトのPt/Cコーティング面は、スウェージロックセルのアセンブリ内のセパレータと直接接触させ、そのもう一方の面はガス拡散層として使用した。アノードカーボンフェルトの厚さは、すべてのセルで約3.18mmである。汚染または副反応の可能性を避けるために、カーボンフェルト集電体用の導電性基板として、高純度チタン箔を使用した。組み立てられたセルを高純度水素ガス(約99.99%、Airgas)でパージして、セルから閉じ込められた空気を除去した。スウェージロックセルは、弁をロックすることにより、密閉状態下で室温にて試験した。
【0075】
円筒形セルは、PTFE中心のOリング内で、KFフランジ-スウェージロックアダプターでステンレス鋼シリンダーをクランプすることにより形成した(
図32)。ステンレス鋼シリンダーは機械工場で機械加工され、これをカソードケースとして使用した。カソードは、チタン箔に接続して鋼製シリンダーに溶接された焼成カーボンフェルトを圧延加工することにより構築した。ステンレス鋼容器からのいかなる汚染も防ぐために、鋼製シリンダーの内側を絶縁テープの層で覆った(
図32B)。KFフランジ-スウェージロックアダプターを三方弁に接続することにより、アノードを形成した。アノード形成は、Pt/Cコーティングカーボンフェルトをチタン箔でアダプター上に溶接することにより行った(
図S32C)。Pt/Cコーティングカーボンフェルトは、カーボンフェルトの両面にPt/C触媒を貼り付けることによって作製した。組み立てられた円筒形セルでは、カソードカーボンフェルトは約0.5cmのギャップで中央のアノードで囲まれていた。約14mLの電解質(約0.05MのH
2SO
4を含む約1MのMnSO
4)を、セルに加えた。セルを組み立て、高純度水素ガス(約99.99%、Airgas)でパージして、閉じ込められた空気を除去した。円筒形セルは、弁をロックすることにより、密閉状態下で室温にて試験した。
【0076】
材料特性評価
【0077】
電極の形態および微細構造は、SEM(FEI XL30 Sirion)およびTEM(FEI Titan)によって特徴づけられた。XRDは、銅のKエッジX線を使用
して、PANalytical X’Pert回折計によって行った。XPSは、AlKα線源を備えたSSI SProbe XPS分光計にて実施した。MnO2の平均酸化状態(AOS)は、以下の方程式に基づいて計算される。
AOS=8.95-1.13ΔE(eV)
式中、ΔEはメインのMn 3sピークとそのサテライトピーク間のエネルギー差である。
【0078】
電気化学測定
【0079】
電気化学測定は、室温でBiologic VMP3マルチチャネル電気化学ワークステーションにて実施した。SLGMBの独特な電荷蓄積メカニズムにより、クロノアンペロメトリー(例えば、実質的に一定の電位)技術を適用して、セルを充電する。約1.6Vおよび約1.8Vの最適電位を使用して、スウェージロックセルおよび円筒形セルをそれぞれ充電した。セルの放電は、定電流を印加することにより実施した。スウェージロックセルおよび円筒形セルは、カーボンフェルトをカソード集電体として適用し、Pt/Cコーティングカーボンフェルトをアノード集電体として適用した、2電極フルセル構成で試験した。スウェージロックセルでは単層のガラス繊維セパレータ(GF-8、Whatman、厚さ約350μm)を使用したが、円筒形セルでは膜を使用しなかった。
【0080】
酸素発生反応(OER)試験は、作用電極としてMnO2コーティングカーボンフェルト(厚さ約6.35mm)、参照電極として飽和カロメル電極(SCE)、および対電極として黒鉛棒を使用することにより、3電極構成で行った。約1cm2の幾何学的面積を有するMnO2コーティングカーボンフェルトを、いかなるバインダーも導電性添加剤も用いずに、作用電極として使用した。電解質は約0.5MのNa2SO4である。SCE参照電極は、約0.1MのH2飽和KOH電解質中の可逆水素電極(RHE)に対して較正され、E(RHE)=E(SCE)+1.01Vの関係式を得た。約0.5~約2V(対SCE)の間で、約0.5mV/sにて、線形掃引ボルタンメトリーを記録した。報告された電流密度は、MnO2コーティングカーボンフェルトの幾何学的面積を基準としている。
【0081】
シミュレーション詳細
【0082】
COMSOLの「電着、二次」および「希釈種輸送」物理モデルを適用して、電解質の反応および濃度変動をシミュレーションした。シミュレーションセルは、底面の寸法が250μm×250μmの長方形で、350μmの高さがセパレータの厚さに対応する(
図5)。Mn
2+イオンの初期濃度は、電解質全体で1Mに設定した。Mn
2+の拡散係数は、σ=μneの方程式およびアインシュタイン関係式を使用して、44mS/cmのイオン伝導率から計算して、1.172×10
-5cm
2/sに設定した。充電プロセスの場合、カソードは、SHEに対して1.6Vの一定電位に設定した。反応は、8.18A/m
2の交換電流密度で、濃度依存のバトラー-ボルマー(Butler-Volmer)反応速度論に基づいて行った。充電プロセスは、1mAh/cm
2の容量が得られた後に終了し、これは計算されて40秒後に得られた。その後、セルは、1mAh/cm
2の容量がなくなるまで10mA/cm
2の電流密度で定電流放電され、これは360秒間続く。
【0083】
シミュレーション結果に関する考察
【0084】
シミュレーションされたカラースペクトル(
図23、24、および25)およびそれらの対応する電解質濃度分布曲線(
図26)は、電解質濃度の緩やかな変化を表す。具体的には、セルを1.6Vで2秒間充電すると、カソードでの電解質濃度が1Mから約0.7
Mに大幅に下落し、これはバイアスをかけたときにMnO
2がカソードに容易に析出することができることを示しており、一方、アノードでの電解質濃度は変化しないままである。セルを10秒間充電すると、カソードの電解質濃度はさらに0.45Mに下落し、一方、アノードでの濃度は低下し始める。セルを40秒間1mAh/cm
2の容量までさらに充電すると、カソードで電解質が枯渇し(約0.16M)、アノードで電解質濃度が大幅に低下する(約0.68M)。10mA/cm
2の電流密度での後続のセル放電の電解質濃度の変動は、このシミュレーションで適用される異なる充電技術および放電技術により、充電プロセスに対する明確な可逆的挙動を示す。その結果、セルにおけるカソードの電解質濃度は最初の数秒以内に即座に増加し、完全に放電すると徐々にほぼ1Mまで上昇し、このことは、カソードに析出したMnO
2が溶解して、したがって電解質中に戻ることを示す。しかし、アノードでの電解質濃度は、60秒の放電時間で約0.5Mに低下し、その後、400秒で完全に放電するまでさらに放電すると、ほぼ1Mに着実に増加する。完全に放電して緩和した後の電解質濃度分布(
図26B、400秒)は、充電前のセルの濃度分布(
図26A、0秒)とまったく同じになる傾向があり、これは電解質濃度の同じカラースペクトルによって確認される(
図25、0秒および400秒)。このことは、完全な充放電サイクル後に電解質の濃度変動を完全に回復できることを示しており、カーボンフェルトカソード上でのMnO
2の析出-溶解反応の非常に可逆的な充放電プロセスを実証している。さらに、充電プロセスは高速で、わずか40秒で1mAh/cm
2の容量を達成する(
図27)。これらの優れた特性は、良好な可逆性および高速の充電レートを備えたマンガン電池の開発にとって重要である。
【0085】
本明細書で使用する場合、単数形の用語「a」、「an」および「the」は、文脈上別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を含み得る。したがって、例えば、文脈上別段の明確な指示がない限り、1つの対象への言及には複数の対象が含まれることがある。
【0086】
本明細書で使用する場合、「実質的に」、「実質的な」、および「約」という用語は、小さな変動を記述し説明するために使用する。事象または状況と組み合わせて使用する場合、用語は、事象または状況が正確に生じる場合、ならびに事象または状況がほぼそれに近似して生じる場合を指すことができる。例えば、数値と組み合わせて使用する場合、用語は、その数値の±10%未満またはそれと等しい変動範囲、例えば、±5%未満またはそれと等しい、±4%未満またはそれと等しい、±3%未満またはそれと等しい、±2%未満またはそれと等しい、±1%未満またはそれと等しい、±0.5%未満またはそれと等しい、±0.1%未満またはそれと等しい、または±0.05%未満またはそれと等しいなどの変動範囲を包含することができる。
【0087】
本明細書で使用する場合、「サイズ」という用語は、物体の特徴的な寸法を指す。したがって、例えば、円形または球形の物体のサイズは、物体の直径を指すことができる。非円形または非球形の物体の場合、物体のサイズは、対応する円形または球形の物体の直径を指すことができ、対応する円形または球形の物体は、非円形もしくは非球形物体の特性と実質的に同じである推論可能なもしくは測定可能な特定の一連の特性を、示すかまたは有する。特定のサイズを有する一連の物体に言及する場合、物体は、特定のサイズの周囲にサイズの分布を有することができると考えられる。したがって、本明細書で使用する場合、一連の物体のサイズは、平均サイズ、中央サイズ、またはピークサイズなどのサイズ分布の典型的なサイズを指すことができる。
【0088】
加えて、量、比、および他の数値は、本明細書において範囲形式で提示される場合がある。そのような範囲の形式は、便宜上および簡潔にするために使用されることを理解すべきであり、範囲の制限として明示的に指定された数値を含むこと、ならびに、その範囲内に包含されるすべての個々の数値または部分範囲も、あたかも各数値および部分範囲が明
示的に指定されているかのように、含むことを柔軟に理解すべきである。例えば、約1~約200の範囲は、明示的に記載された約1~約200の制限を含むこと、ならびに約2、約3、および約4などの個々の値、ならびに約10~約50、約20~約100などの部分範囲も含むことを理解すべきである。
【0089】
本開示は、その特定の実施形態に関して説明されてきたが、添付の特許請求の範囲によって定義された本開示の真の精神および範囲から逸脱することなく、種々の変更が行われてもよく、均等物が置換されてもよいことを、当業者は理解するべきである。さらに、特定の状況、材料、物質の組成、方法、1つまたは複数の操作を、本開示の目的、精神、および範囲に適合させるために、多くの修正が加えられてもよい。そのような修正はすべて、本明細書に添付された特許請求の範囲内にあることが意図されている。特に、特定の順序で実施される特定の操作に関して、ある種の方法が説明されてきたが、これらの操作は、本開示の教示から逸脱することなく、均等な方法を形成するために組み合わせ、細分化し、または並べ替えることができることを理解されたい。したがって、本明細書で具体的に示されない限り、操作の順序およびグループ化は、本開示の限定ではない。
【0090】
本発明の好ましい実施形態によれば、例えば、以下が提供される。
(項1)
多孔質導電性支持体を含む第1の電極と、
触媒支持体および前記触媒支持体上に配置された触媒を含む第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置され、前記第1の電極でのマンガンの可逆的沈着および溶解、ならびに前記第2の電極での水素の可逆的発生および酸化を維持する、電解質と
を含む、再充電可能なマンガン電池。
(項2)
前記多孔質導電性支持体が炭素質繊維状支持体である、上記項1に記載の再充電可能なマンガン電池。
(項3)
前記触媒支持体が炭素質繊維状支持体である、上記項1に記載の再充電可能なマンガン電池。
(項4)
前記触媒が1つまたは複数の白金族金属を含む、上記項1に記載の再充電可能なマンガン電池。
(項5)
前記電解質がマンガンイオンを含む、上記項1に記載の再充電可能なマンガン電池。
(項6)
前記マンガンイオンがMn
2+
を含む、上記項5に記載の再充電可能なマンガン電池。
(項7)
前記マンガンイオンの濃度が0.1M~7Mの範囲にある、上記項5に記載の再充電可能なマンガン電池。
(項8)
前記電解質が水性電解質である、上記項5に記載の再充電可能なマンガン電池。
(項9)
前記水性電解質が7未満のpHを有する、上記項8に記載の再充電可能なマンガン電池。
(項10)
前記電解質が非水性電解質である、上記項5に記載の再充電可能なマンガン電池。
(項11)
多孔質導電性支持体を含むカソードと、
触媒支持体および前記触媒支持体上に配置された触媒を含むアノードと、
前記カソードと前記アノードとの間に配置され、マンガンイオンを含む電解質と
を含む、再充電可能なマンガン電池。
(項12)
前記マンガンイオンがMn
2+
を含む、上記項11に記載の再充電可能なマンガン電池。
(項13)
前記マンガンイオンの濃度が0.1M~7Mの範囲にある、上記項11に記載の再充電可能なマンガン電池。
(項14)
前記電解質が酸性である、上記項11に記載の再充電可能なマンガン電池。
(項15)
多孔質導電性支持体を含む第1の電極を提供することと、
触媒支持体および前記触媒支持体上にコーティングされた触媒を含む第2の電極を提供することと、
前記第1の電極でのマンガンの可逆的沈着および溶解、ならびに前記第2の電極での水素の可逆的発生および酸化を維持する電解質を提供することと
を含む、再充電可能なマンガン電池を製造する方法。
(項16)
前記電解質が、マンガンが酸化マンガンとして前記多孔質導電性支持体上へ沈着するのを維持するように構成される、上記項15に記載の方法。
(項17)
前記酸化マンガンが、ガンマ酸化マンガンを含む、上記項16に記載の方法。
(項18)
前記電解質が、マンガンが酸化マンガンのナノシートとして前記多孔質導電性支持体上へ沈着するのを維持するように構成される、上記項15に記載の方法。