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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190172
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/06 20120101AFI20221215BHJP
【FI】
G06Q40/06
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178418
(22)【出願日】2022-11-07
(62)【分割の表示】P 2020199433の分割
【原出願日】2020-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2020140994
(32)【優先日】2020-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020167712
(32)【優先日】2020-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】500422654
【氏名又は名称】東海東京フィナンシャル・ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100154748
【弁理士】
【氏名又は名称】菅沼 和弘
(72)【発明者】
【氏名】村上 雅彦
(57)【要約】
【課題】証券会社に口座を持つユーザの要望に応え、ユーザ本人に代わってユーザ本人から信頼された者が受託者として本人意思に則って口座にある信託財産の運用及び管理を行う上で、ユーザ本人の望む形で信託財産を運用したり引き継ぐことができる民事信託サービスを提供する。
【解決手段】サーバ1は、委託者(例えば父A等)が有する対象(信託財産や命令する権利等)を信託された者(例えば子B等)が受託者となった場合における、前記対象の運用の支援となる処理を実行する。サーバ1は、指図権付与部141を備える。指図権付与部141は、対象(信託財産や命令する権利等)の運用に関する指図を行う権利としての指図権を、委託者(例えば父A等)に付与する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
委託者が有する対象を信託された者が受託者となった場合における、前記対象の運用の支援となる処理を実行する情報処理装置において、
前記受託者又は前記委託者からの前記対象の運用に対する指示が、前記委託者の意向に基づき予め設定された所定条件を満たさない場合、前記指示を無効とする制御を実行する指示無効制御手段、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
委託者が有する対象を信託された者が受託者となった場合における、前記対象の運用の支援となる処理を実行する情報処理装置が実行する情報処理方法であって、
前記受託者又は前記委託者からの前記対象の運用に対する指示が、前記委託者の意向に基づき予め設定された所定条件を満たさない場合、前記指示を無効とする制御を実行する指示無効制御ステップ、
を含む情報処理方法。
【請求項3】
委託者が有する対象を信託された者が受託者となった場合における、前記対象の運用の支援となる処理を実行する情報処理装置を制御するコンピュータに、
前記受託者又は前記委託者からの前記対象の運用に対する指示が、前記委託者の意向に基づき予め設定された所定条件を満たさない場合、前記指示を無効とする制御を実行する指示無効制御ステップ、
を含む制御処理を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、高齢化社会における信託財産運用及び管理の仕方が問われている。高齢者が自身の身に万一の事があった場合に、残された保有資産をどのように管理するかについて多くの者が不安を抱えている。
近年、高齢者が生きているうちに起こる認知能力や判断能力の低下には対応していないのが現状である。
そこで、そのような不安をもつユーザの資産管理における利便性を向上させるため、ネットワークを利用し高齢者や障害者を支援する預託金管理システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-71308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1を含む従来の技術は、ユーザ本人が預けた預託金に関する事務手続きを滞りなく行う技術であり、ユーザ本人が金融機関で運用中の資産を、本人の望む形で運用したりその後の相続については考慮されておらず、ユーザの要望に十分に応えるものとは言えなかった。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、ユーザが所有する対象を、ユーザ本人に代わってユーザ本人から信頼された者が受託者として本人の意思に則って管理する上で、ユーザ本人の望む形で引き継ぐことができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様の情報処理装置は、
委託者が有する対象を信託された者が受託者となった場合における、前記対象の運用の支援となる処理を実行する情報処理装置において、
前記対象の運用に関する指図を行う権利としての指図権を、前記委託者に付与する指図権付与手段、
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、委託者であるユーザが所有する対象を、ユーザ本人に代わってユーザ本人から信頼された者が受託者として本人の意思に則って管理する上で、ユーザ本人の望む形で引き継ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る情報処理システムが適用される民事信託サービス(本サービス)の概要を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る情報処理システムの構成の概略を示す図である。
図3図2の情報処理システムのうちサーバのハードウェア構成を示すブロック図である。
図4図2の情報処理システムのうちサーバの機能的構成の一例を示す機能ブロック図である。
図5】本実施形態において指図権が付与された父の指図により株式が運用される流れを示す図である。
図6】父の指図により株式が運用される際に取引情報を子へ通知する流れを示す図である。
図7】父の取引情報の異変によって父の指図権を停止する流れを示す図である。
図8】父に指図権を付与後、診断書により発症が確定した場合に父の信託財産を子が信託する流れを示す図である。
図9】父から子に信託された父の信託財産を子が運用する流れを示す図である。
図10】父から子に信託された父の信託財産を父が運用する流れを示す図である。
図11】委託者兼受益者である父から子に信託された信託財産の受益権の移動に関する第1の例を示す図である。
図12】委託者兼受益者である父から子に信託された信託財産の受益権の移動に関する第2の例を示す図である。
図13】委託者兼受益者である父から子に信託された信託財産の受益権の移動に関する第3の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態の情報処理装置が適用される民事信託サービス(以下「本サービス」と称す)のサービス形態の一例を示す図である。
ここで、まず、通常の民事信託の基本的なスキームを説明する。
【0010】
図1の例では、親と子のうち、例えば父Aが委託者兼受益者であり、その子供である子Bが受託者となる場合を説明する。
このような場合の民事信託では、通常、ステップS1において、父Aは、子Bに信託する財産について子Bとの間で信託契約を締結する。なお、父Aが保有する財産のうち子Bに信託する財産(例えば株式、債券、投資信託等の有価証券や金銭等)を「信託財産」という。
ステップS2において、父Aは、子Bに信託する信託財産について、父Aから子Bに名義変更等を行うことで信託する。
信託後、ステップS3において、子Bは、父Aから信託された信託財産を、金融機関の自身の信託口口座Fに管理及び処分することができる。
一方、ステップS4において、他の金融機関で運用されている父Aの株式K2、金銭M2等の財産についても信託口口座Fに取り込むことで、高齢となった父Aの財産をまとめることかできる。
ステップS5では、信託口口座Fに、銀行口座Gと証券口座Hを設定し、互いの口座間を連携することで、信託口口座Fに纏めた信託財産(株式K1、K2、金銭M1、M2等)を口座内で相互運用できるため、口座の信託財産が外部に流出し難い仕組みにすることができる。
子Bの信託口口座Fでは、信託財産を運用することで収益が発生する。このため、ステップS6において、金利や配当等の運用益(利益や損益等)を受益者に給付する。この実施形態の場合、父Aが委託者兼受益者であるため父Aに運用益が給付される。
【0011】
以上の民事信託の基本的なスキームにおいて、以下のようなニーズがある。
父Aは、信託は安心だけれど、信託財産を自分で運用できなくなるのは何だかさみしく、信託開始後も従来同様に信託財産を運用したい。
子Bは、父Aがしっかりしているうちは、信託財産を運用してもらう方が助かるが、万一(認知症等)に備えて、父Aの運用行為をモニタリングしたい、また、父Aの判断能力が怪しくなった段階で運用行為をできなくしたい。また、父Aが亡くなったときには受益権を含めて信託財産の継承をスムーズに行いたい。
これらのニーズを踏まえ、本サービスは、金融機関において、父Aが所有する信託財産を、高齢の父Aに代わって子Bが受託者として父Aの意思に則って管理し、その上で、父Aが望む形で信託財産を運用することができるようにするものである。
【0012】
図2は、本発明の一実施形態に係る情報処理システムの構成の概要を示す図である。
図2に示す情報処理システムは、サービス提供者としての信託財産管理機関、例えば証券会社Cが運用するサーバ1と、委託者である父Aが操作する委託者端末2と、受託者である子Bが操作する受託者端末3と、投資一任業者Dが操作する投資一任業者端末4と、インターネット等の所定のネットワークNを介して相互に接続されることで構成される。
【0013】
サーバ1は、委託者端末2、受託者端末3及び投資一任業者端末4の各動作を制御すべく、各種処理を実行する。
委託者端末2は、父Aが操作する情報処理端末であって、例えばパーソナルコンピュータ、スマートフォン等を含む。
受託者端末3は、子Bが操作する情報処理端末であって、例えばパーソナルコンピュータ、スマートフォン、電話機等を含む。
投資一任業者端末4は、投資一任業者Dが操作する情報処理端末であって、例えばパーソナルコンピュータ、スマートフォン等を含む。
【0014】
具体的には、本実施形態では、サーバ1は、次のようにして、委託者端末2、受託者端末3及び投資一任業者端末4の各動作を制御する。
【0015】
即ち、本実施形態では、サーバ1は、父Aが保有する財産を信託された子Bが受託者となった場合に、信託財産の運用の支援となる処理を実行する。この処理の1つとして、例えば指図権が付与された父Aにより操作された委託者端末2からの指図により、子Bに信託された信託財産を運用し、運用した結果を受託者端末3に通知する。
【0016】
ここで、指図権、指図権者、受託者等について説明する。
信託行為によって、一定の事項につき受託者が裁量権限を有さず、特定の者からの指示に従うべき旨が定められる。このような指示、つまり指図を行う者を指図権者といい、指図権者には、有価証券の運用を指図する権利が与えられる。
【0017】
本実施形態のように委託者兼受益者である父Aに指図権が付与され、父Aが指図権者となった場合、父A自身の利益のために有価証券の運用を自身が指図者として指図を行い、受託者である子Bはその指図に従うことになる。
このため、受託者である子Bには、信託財産に関する管理及び処分の権利として、有価証券の運用以外の信託事務を行う権利が与えられる。
【0018】
本実施形態では、指図権者である父Aの意思や判断能力が正常な場合は、上記の各権利に基づいて夫々の者(父A、子B)が信託財産を管理又は運用する。
また、父Aの意思や判断能力が一定水準以下に衰えたときは、指図権者として有価証券を運用する父Aの権利を停止又は取り消す。
さらに、父Aが死亡する等で指図権者として権利が失効した場合は、指図権者として権利を子Bに移動する共に受益者としての権利も予め設定された第2受益者に移動する。
【0019】
以下、図3及び図4を参照してサーバ1のハードウェア構成と、サーバ1が実行する各種処理の機能的構成の詳細を具体的に説明する。
まず、図3を参照してサーバ1のハードウェア構成を説明する。図3は、図1のサーバ1のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0020】
図3に示すサーバ1は、CPU(Central Processing Unit)11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、バス14と、入出力インターフェース15と、出力部16と、入力部17と、記憶部18と、通信部19と、ドライブ20とを備える。
【0021】
CPU11は、ROM12に記録されているプログラム、又は、記憶部18からRAM13にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。
RAM13には、CPU11が各種の処理を実行する上において必要なデータ等も適宜記憶される。
【0022】
CPU11、ROM12及びRAM13は、バス14を介して相互に接続されている。このバス14にはまた、入出力インターフェース15も接続されている。入出力インターフェース15には、出力部16、入力部17、記憶部18、通信部19及びドライブ20が接続されている。
【0023】
出力部16は、ディスプレイやスピーカ等で構成され、各種情報を画像や音声として出力する。入力部17は、キーボードやマウス等で構成され、各種情報を入力する。
【0024】
記憶部18は、ハードディスクやDRAM(Dynamic Random Access Memory)等で構成され、各種データを記憶する。
通信部19は、インターネットを含むネットワークNを介して他の装置(図2の例では委託者端末2、受託者端末3及び投資一任業者端末4等)との間で通信を行う。
【0025】
ドライブ20には、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリ等よりなる、リムーバブルメディア21が適宜装着される。ドライブ20によってリムーバブルメディア21から読み出されたプログラムは、必要に応じて記憶部18にインストールされる。また、リムーバブルメディア21は、記憶部18に記憶されている各種データも、記憶部18と同様に記憶することができる。
【0026】
なお、図示はしないが、図2の情報処理システムのうち、本発明の一実施形態としての委託者端末2、受託者端末3及び投資一任業者端末4も、図3に示すハードウェア構成を有する。
【0027】
図4は、図1の情報処理システムのうちサーバ1の機能的構成の一例を示す機能ブロック図である。
【0028】
図4に示す記憶部18(図3)の一領域には、信託情報DB300と、財産DB400と、運用DB500と、条件DB600と、指図権DB700とが設けられている。
【0029】
信託情報DB300には、信託契約に関する情報が記憶される。信託契約に関する情報は、例えば父Aが所有する株式K1、K2や金銭M1、M2等の信託財産をいつどういった条件で子Bに信託するという情報である。例えば株式K1、K2については、有価証券信託契約といった情報が記憶されている。
【0030】
この他、信託情報DB300には、父Aの株式K1、K2や金銭M1、M2を子Bがどのように管理及び運用する、といった運用協議情報が運用協議書といったファイル名で記憶されている。
【0031】
財産DB400には、父Aから信託された信託財産(株式K1、K2、金銭M1、M2等)の情報が記憶されている。
【0032】
運用DB500には、父Aから信託された信託財産(株式K1、K2、金銭M1、M2等)のうち、例えば株式K1、K2であれば、どの企業のものが何株あり、いつ取引(売買)されたか、といった運用情報が記憶されている。
【0033】
条件DB600には、運用協議書の中で取り決められた父Aの投資意向について信託目的・適合性等に基づいて、信託財産の運用条件を具体化した判定条件が記憶されている。
【0034】
父Aが子Bに対して指図を行い子Bはその指図に従って信託財産を運用する。
判定条件は、父Aが子Bに指図を行えるかどうかを判定するための判定条件であり、例えば指図を許可する投資許可条件又は指図の異常を判定するための異常判定条件のうち何れか一方が記憶されている。
【0035】
投資許可条件は、例えば発注銘柄と発注金額の上限値や過去の取り扱い銘柄の一覧、同一銘柄の売り買いの最短期間(例えば7日以上等)、1日の売買回数の上限値、売買対象の銘柄の現在の株価に対する指値の上限値や下限値等である。異常判定条件はその逆である。例えば同一銘柄の売り買いの最短期間であれば例えば7日以内等である。
【0036】
即ち判定条件は、例えば指図権を行使する父Aの指図が例えば「いつもと発注金額の桁が違う」、「過去に触ったことのない銘柄が連続して売買の対象になっている」、「購入(売却)して3日以内の銘柄を売却(購入)している」、「1日に10回以上の売買を行っている」、「現在値から乖離した指値発注を行っている」等の異常を判定するための条件である。多くの指図事例を機械学習させたAIにより、今後起こり得る父Aの指図の異常を判定してもよい。
なお、子Bが株式K1、K2を運用する際の判定条件についても父Aと同様に子Bの信託財産運用に係る条件として記憶されている。
【0037】
指図権DB700には、父Aに対する指図権の設定情報が記憶されている。父Aの設定情報として“付与”、“停止”、“取消”等といった状態が記憶されている。
【0038】
具体的には、父Aに対する指図権が付与され、行使可能な状態であれば、指図権として例えば“付与”が設定情報として設定されている。
また、指図権が付与されてはいるものの行使できない状態であれば、設定情報として“停止”が設定されている。設定情報が“停止”の場合、指図権を復活させることができる。この場合、設定情報に、指図権を復活させることが可能な期限等を設定してもよい。
指図権が付与されてはいたが取り消された状態であれば、設定情報として“取消”が設定情報として設定されている。設定情報が“取消”の場合、指図権を復活させることはできないものとする。ここに示した設定の例は一例であり、他の設定にしてもよい。
【0039】
サーバ1のCPU11(図3)においては、動作する際に、図4に示すように、信託制御部111と、財産管理部112とが機能する。
信託制御部111は、委託者と受託者と受益者の信託に関する処理(図1のステップS1、S2等の信託契約の処理、図8のステップS35の追加信託の処理、図11のステップS64の受益権相続処理(連続信託の処理)等を制御する。
【0040】
つまり信託制御部111は、父Aと子Bと母Eの信託に関する情報の処理を実行する。
具体的には、父Aと子Bの間では、信託制御部111は、信託財産の信託契約に関する処理や追加信託に関する処理を制御する。父Aと子Bと母Eの間では、信託制御部111は、連続信託に関する処理を制御する。
信託制御部111は、信託契約部121、追加信託制御部122及び連続信託制御部123等を有する。
【0041】
信託契約部121は、父Aと子Bとの間で信託する信託財産について、締結した信託契約の情報を委託者端末2又は受託者端末3のうち一方から取得し信託情報DB300を記憶する。
また、信託契約部121は、父Aが子Bに信託する信託財産について、父Aから子Bに名義変更した信託財産の信託委任情報を取得し、信託情報DB300に記憶する。
【0042】
追加信託制御部122は、指図権取消部143の制御により父Aの指図権が消滅した(取り消された)場合、当該父Aから信託された株式K1、K2や金銭M1、M2等とは異なる別の財産、例えば図8の父Aの特定口座F0の株式K3や金銭M3等についても、子Bの民事信託口座F1等に追加して信託する制御を実行する。
【0043】
連続信託制御部123は、父Aから他者(例えば後述の第2受益者になる母E)への一般承継の事由が発生したことに伴い第1受益者としての父Aの権利がなくなった場合、新たに当該権利を有する者となる第2受益者(例えば図11の母E等)に新たな受益権を再発行する制御を実行する。通常、第2受益者は配偶者であるが他の親族や父A自身が設定される場合もある。
【0044】
なお、この例では、信託財産を一例にしたが、この他、対象は、目上の人が部下に行う命令や命令に伴う権利等であってもよい。
父Aから他者への一般承継の事由が発生したことには、例えば父Aが死亡した場合や父Aの判断能力がなくなった場合等が含まれる。
【0045】
財産管理部112は、父Aから子Bに信託された信託財産を、財産DB400、運用DB500、条件DB600及び指図権DB700の情報に基づいて運用及び管理する。
【0046】
財産管理部112は、運用部131、監視部132、指図権制御部133、外部制御部134を有する。
【0047】
運用部131は、運用DB500にアクセスして子Bの民事信託口の信託財産を運用する。
具体的には、運用部131は、指図権者(父A)からの指図に基づいて、財産DB400及び運用DB500に登録されている株式K1、K2を売買(運用)する。
なお、指図権者(父A)の情報処理端末(委託者端末2)とサーバ1との間に投資一任)業者Dの投資一任業者端末4を介在させている場合(図10参照)は、父Aからの投資意向を聞いた投資一任業者Dからの指示となる。
【0048】
監視部132は、父Aによる例えば株式K1、K2の運用に関する指図を行う状況を監視し、その監視結果の取引情報を子Bに通知する。
監視部132は、判定部151及び異常制御部152を有する。判定部151は、株式K1、K2の運用に関する指図が予め設定されている異常判定条件を満たすか否かを判定する。
異常制御部152は、判定部151により指図が異常判定条件を満たしたと判定された場合、父Aの指図行為の異変を子Bに通知することと父Aの指図権の行使を停止させることのうち少なくとも一方の制御を実行する。
【0049】
具体的には、判定部151は、運用DB500及び条件DB600を参照して、運用DB500から読み出した株式K1、K2の取引情報が、条件DB600の異常判定条件を満たしているか否かを判定する。
異常制御部152は、判定部151により判定の結果によらず、株式K1、K2の取引情報を子Bの受託者端末3に送信することで子Bに父Aの取引状況を通知する。
【0050】
一方、株式K1、K2の取引情報が異常判定条件を満たした場合、異常制御部152は、株式K1、K2の取引情報の異常を示すアラート(警報)を子Bの受託者端末3に送信すると共に、指図権の設定情報を“付与”から“停止”に変更するよう指示信号を指図権制御部133に出力する。
【0051】
なお、父Aの株式K1、K2の取引情報を常に送るのではなく、株式K1、K2の取引情報が異常判定条件を満たした場合に、父Aの株式K1、K2の取引情報(異常な取引(銘柄や売買数、金額等)の部分の文字を強調したり注意表示にする)を子Bの受託者端末3に送信し父Aの指図行為の異変を子Bに通知してもよい。
【0052】
指図権制御部133は、監視部132からの指示信号又は指示を受け付け、受け付けた指示信号又は指示に応じた指図権の制御を実行する。受け付けた指示信号が、例えば指図権の設定情報を“付与”から“停止”に変更する指示信号の場合、指図権制御部133は、指図権DB700の指図権の設定情報を“付与”から“停止”に変更する制御を実行する。
【0053】
また、受け付けた指示が、例えば子Bの受託者端末3からの指図権の行使の差止めの指示の場合、指図権制御部133は、指図権が付与された父Aの指図権を消滅させる制御を実行する。
【0054】
指図権を消滅させる場合、指図権制御部133は、指図権DB700にアクセスし指図権が付与された父Aの指図権の状態を“付与”から“取消”に設定情報を変更する。
指図権制御部133は、指図権付与部141、指示受付部142及び指図権取消部143を有する。
【0055】
指図権付与部141は、株式K1、K2や金銭M1、M2等の運用に関する指図を行う権利としての指図権を、信託元(委託者)である父Aに付与する。
具体的には、指図権付与部141は、父Aに対する指図権の付与の指示を受けて、父Aの指図権の状態として、例えば“付与”を指図権DB700の設定情報に設定する。
【0056】
指示受付部142は、監視部132の監視結果が通知された子Bによる、父Aの指図権の行使の差止めの指示を受け付ける。この他、指図権の停止の指示等であってもよい。
具体的には、指示受付部142は、子Bの受託者端末3から送信された、父Aの指図権の行使の差止めの指示を受信して、指図権取消部143に指図権を取り消すための指示信号を出力する。
【0057】
指図権取消部143は、指示受付部142から入力された指示信号に基づき父Aの指図権を取り消す処理を実行する。
【0058】
具体的には、指図権取消部143は、指図権DB700にアクセスして、指示信号に応じた指図権の状態に設定情報を設定する。この場合、設定情報を“付与”から“取消”へ変更する。この設定では、指図権自体を消滅させて、今後の指図権の行使を無効とすることができる。
この他、例えば指図権の停止の指示であれば、設定情報が例えば“付与”から“停止”へ変更される。この設定では、指図権は存続するが指図権の行使ができなくなる。なお、緊急の場合は、通信を遮断したり、株式K1、K2の運用を停止する等して指図権の行使を物理的にできなくするようにしてもよい。
【0059】
外部制御部134は、例えば図13の投資一任業者D等の、父Aと子Bとは異なる第三者により子Bの民事信託口F1の株式K1、K2等が運用される場合に、子B又は父Aからの株式K1、K2の運用に対する指示(指図)が、父Aの投資意向に基づき予め設定された所定条件(投資許可条件)を満たさない場合(換言すると異常判定条件を満たす場合)、指示者(父A又は子B)からの指示を無効とする投資一任業者Dによる行為を支援する制御を実行する。
【0060】
具体的には、投資一任業者Dが行う株式K1、K2の取引行為を監査チェックする制御や投資一任業者Dからのアラート(株式K1、K2の運用の指示が異常判定条件を満した旨の情報)を指示者とは異なる者(子B又は父Aの何れか)の情報処理端末(受託者端末3又は委託者端末2の何れか)に通知する制御を実行する。
なお、アラートを指示者に通知してもよい。この場合、自身の指示(指図)の誤りが判る。
【0061】
以下、図5乃至図13を参照して情報処理システムのサーバの動作を説明する。
まず、図5を参照して指図権付与機能を説明する。図5は、本実施形態において指図権が付与された父の指図により信託財産が運用される流れを示す図である。なお、各図において流れを説明するにあたり登場する機能主体については、図4の機能的構成の各部を用いるものとする。
【0062】
一般的な民事信託口では、父Aと子Bが運用協議書を取り交わした上で父Aの有価証券を子Bに信託する契約を締結する。信託後は、子Bのみが、証券会社Cに株式の売買の注文を指図することができるようになる。
【0063】
これに対して、図5に示す本実施形態の子Bの民事信託口F1では、ステップS11において、父Aと子Bが運用協議書を取り交わした上で父Aの有価証券を子Bに信託する契約を締結する際に、運用協議書に、父Aに対して指図権を付与する、という文言を入れておくものとする。
これにより、サーバ1では、指図権付与部141が、父Aの指図権を指図権DB700に設定する。これにより指図権DB700の設定情報には“付与”が設定される。
【0064】
信託後、父Aが委託者端末2を操作してサーバ1にアクセスし、ステップS12において、有価証券の売買注文を証券会社Cに指図すると、サーバ1の運用部131は、指図権DB700を参照して父Aの指図権の状態を確認し、指図権DB700の設定情報が“付与”の状態であれば、父Aからの指図が可能と判定し、父Aからの売買注文により有価証券の売買を行う。
【0065】
なお、本来であれば、指図権者たる父Aは、子Bに指図を行い、子Bは、父Aからの指図により証券会社Cに売買の注文を行う必要があるが、本実施形態では、証券会社Cとの契約により、ステップS12において、あたかも指図権者たる父Aが証券会社Cに対して売買注文の指図を直接しているように見せている。
【0066】
これにより、父Aは、信託契約後も以前と変わらずに株式等の信託財産を運用することができるので、自身が所有する信託財産を安心して子Bに信託することができる。
【0067】
(みまもり機能)
次に図6を参照してみまもり機能を説明する。図6は、父の指図により株式が運用される際に取引情報を子へ通知する流れを示す図である。
【0068】
この場合、指図権が付与された父Aからの指図により証券会社Cのサーバ1で株式が運用される中で、図6に示すように、サーバ1の運用部131により運用される株式の取引が監視部132により監視され、ステップS13において、監視結果として得られる取引情報が子Bの受託者端末3に通知される。
これにより、父Aの注文を子Bがモニタリングすることができるので、子Bは、株式の運用を父Aに安心して任せられる。
【0069】
(安心ブレーキ機能及びAIブレーキアシスト機能)
次に図7を参照して安心ブレーキ機能及びAIブレーキアシスト機能を説明する。図7は、父の取引情報の異変によって父の指図権を停止する流れを示す図である。図7で説明する機能は、図6の処理ステップの延長であり、ステップS12の注文の指図迄の説明は省略する。
【0070】
この場合、図7のステップS12において、指図権が付与された父Aからの指図により株式が運用される中で、ステップS13において、監視部132により監視された取引情報が子Bの受託者端末3に通知される。
【0071】
受託者端末3に表示される取引情報を閲覧した子Bが、父Aの取引情報が普段と異なる取引内容であることに気づいたものとする。
この場合、異変を感じた子Bが受託者端末3を操作して、ステップS14において、父Aの指図権の停止を証券会社Cのサーバ1に指示する。
【0072】
サーバ1では、受託者端末3から送信されてきた指示を指示受付部142が受け付け、指図権取消部143に父Aの指図権を停止するための指示信号を出力する。
指図権取消部143は、指示受付部142からの指示信号を受けて、指図権DB700にアクセスし、ステップS15において、父Aの指図権を停止する。
具体的には、指図権DB700の設定情報の“付与”を“停止”に変更する。これにより、父Aからの注文の指図ができない状態になり、運用部131において指図が無効にされる。
【0073】
なお、監視部132は、父Aからの指図により取引される株式の取引情報が条件DB600の異常判定条件を満たすか否かを常に監視しており、異常判定条件を満たした場合、アラートを通知する。アラートは、通常の取引情報とは異なる通知の仕方で通知される。
異常判定条件には、例えば閾値(数値)や範囲を設定する他、指図行動を学習させたAI(Artificial Intelligence)を用いて指図自体の異常を判定してもよい。
【0074】
このように安心ブレーキ機能により、子Bは、父Aの指図による取引が少しでも「変だな」と思ったら指図権の行使にブレーキをかけることができる。
また、AIブレーキアシスト機能により、父Aによる指図が通常とは異なる場合、サーバ1の監視部132から発行されたアラートが子Bに届くので、父Aに連絡を取る等して指図が判断能力の低下によるものかどうかを確かめ、異常な場合は上記同様に受託者端末3より指図権を取り消す操作をすることで、今後の父Aの指図を無効にできる。
【0075】
(指図権の取消及び追加信託の機能)
次に図8を参照して指図権の取消及び追加信託の機能を説明する。図8は、父に指図権を付与後、診断書により発症が確定した場合に父の信託財産を子が信託する流れを示す図である。
【0076】
子Bの民事信託口F1において、図8に示すステップS11、S12において、指図権が付与された父Aからの指図により株式等の信託財産が証券会社Cのサーバ1で運用される中で、ステップS31において、診断書等により、例えば認知症等の発症が確定した場合、サーバ1では、ステップS32において、指図権取消部143の制御により父Aの指図権が取り消される(指図権が消滅する)。
【0077】
この場合、父Aから子Bに既に信託された株式K1、K2や金銭M1、M2等とは異なる父Aの特定口座F0の財産(株式K3や金銭M3等)についても、ステップS33、S34において、子Bの民事信託口座F1へ信託される。
サーバ1では、ステップS35において、追加信託制御部122は、父Aの特定口座F0の株式K3や金銭M3等を子Bの民事信託口座F1に追加して信託する制御を実行する。
以降、子Bからの注文の指図を受けてサーバ1の運用部131は、株式K1乃至K3や金銭M1乃至M3等の信託財産を運用することになる。
【0078】
このように指図権の取消及び追加信託の機能によれば、父Aに渡していた指図権を取消し、以降の指図は子Bが行うことになり、責任をもって信託財産を管理するようになる。
また、特定口座F0に残されていた父Aの財産が子Bの民事信託口F1に追加信託されるので、父Aの財産の継承を容易に行うことができる。
【0079】
(投資一任業者D(親族以外の第三者)による子に対するフィルタリング機能)
次に図9を参照して投資一任業者による子に対するフィルタリング機能を説明する。図9は、父から子に信託された父の信託財産を子が運用する流れを示す図である。
【0080】
この場合、指図権が付与された父A、又は父Aからの指図を受けた子Bは、投資意向を投資一任業者Dに伝え、投資一任業者Dが株式の注文を証券会社Cに指図する。
【0081】
ここで、1.指図権者と投資一任業者の関係と、2.受託者と投資一任業者の関係について説明する。
1.指図権者と投資一任業者の関係
指図権者たる父Aは、信託財産である有価証券の運用について指図(注文)する。
投資一任業者Dは、父Aの注文内容を確認し、投資目的をふまえ、場合によっては注文を停止する。
2.受託者と投資一任業者の関係
指図権者たる父Aが存在する場合、受託者たる子Bに有価証券の運用についての権限がない。子Bには、信託財産の管理責任はある。
【0082】
上記の関係を前提に、投資一任業者Dは、図9のステップS41において、父Aが子Bへ信託財産を信託した際に父Aから伺った信託目的を投資許可条件又は異常判定条件として投資一任業者端末4に設定しておき、父Aからの投資意向、又は父Aから子Bを介して指示されたとみなす子Bからの投資意向を、信託目的や適合性を踏まえてチェックし、投資意向に合致する指図を証券会社Cに伝達する。
【0083】
具体的には、ステップS42において、投資一任業者Dの投資一任業者端末4は、子Bの受託者端末3からの個別投資意向、つまり特定銘柄の売買注文の指示が受信されると、投資一任業者端末4は、ステップS43において、その注文の指示が、予め設定された所定条件(投資許可条件)を満たすか否かをチェックする。
【0084】
チェックの結果、子Bからの注文の指示が、所定条件(投資許可条件)を満さす場合(換言すると異常判定条件を満たさない場合)、投資一任業者端末4は、ステップS44において、子Bからの注文の指示を証券会社Cのサーバ1へ伝達し、証券会社Cのサーバ1では、運用部131が、子Bからの注文の指示に応じて特定銘柄の売買注文を行う。
【0085】
一方、チェックの結果、子Bからの注文の指示が、所定条件(投資許可条件)を満さない場合(換言すると異常判定条件を満たす場合)、ステップS45において、子Bから注文の指示をフィルタリング(無効に)して、その旨の通知信号をサーバ1と指示元の子Bの受託者端末3へ送信することができる。
【0086】
サーバ1では、投資一任業者端末4からの、子Bから注文の指示をフィルタリング(無効)した旨の通知信号を受信すると、外部制御部134は、投資一任業者Dが行う行為を監査チェックする制御を行うことで、投資一任業者Dの行為を支援する制御を実行する。
この他、外部制御部134は、投資一任業者Dから受け取った情報(子Bからの注文の指示を無効にした旨の情報)を、指示した者と異なる者、つまり父Aに通知する制御を行うことで、投資一任業者Dの行為を支援する制御を実行する。
【0087】
このように投資一任業者Dによる子Bの指図に対するフィルタリング機能によれば、指図権者である子Bからの指図に基づいて投資一任業者Dが株式の運用を行うことにより、子Bの信託目的を超えた運用行為等にフィルターを掛け、父Aの信託目的や適合性にそぐわない指図(注文)については、事前に投資一任業者Dがフィルタリング(無効)することで、父Aの信託目的や適合性にそぐわない子Bの信託財産運用行為(株式の取引等)を防止することができる。
また、投資一任業者Dから、注文の指示をフィルタリングした旨の通知をサーバ1が受けて他の指図権者(父A)やその口座のある証券会社Cへ通知することで、子Bは無茶な指図(注文)をできなくなり、父Aは、子Bに委託した自身の株式や預金等の信託財産を、子Bの指図の元で投資一任業者Dや証券会社Cに安心して運用させることができる。
【0088】
(投資一任業者Dによる父に対するフィルタリング機能)
次に図10を参照して投資一任業者による父に対するフィルタリング機能を説明する。図10は、父から子に信託された父の信託財産を父が運用する流れを示す図である。
【0089】
この場合、指図権が付与された父Aと、父Aから信託財産が信託された子Bの両者は、指図権者として個別投資意向を、投資一任業者Dを介して証券会社Cに指図することができる。
投資一任業者Dは、図10のステップS41において、父Aが子Bへ信託財産を信託する際に予め父Aから信託目的を伺い所定条件(例えば投資許可条件等)を投資一任業者端末4に設定しておき、指図権者からの指図の内容を、信託目的や適合性を踏まえてチェックし、投資意向に合致する指図を証券会社Cに伝達する。
なお、所定条件としては、投資許可条件の他に、例えば異常判定条件でもよく、この場合、条件を満たすか否かの判定が逆、つまり満たさないか否かになる。
【0090】
具体的には、ステップS51において、投資一任業者Dの投資一任業者端末4は、父Aの委託者端末2からの注文の指示が受信された場合、ステップS52において、父Aからの指示が、予め設定された所定条件(投資許可条件)を満たすか否かをチェックする。
チェックの結果、父Aからの注文の指示が、所定条件(投資許可条件)を満たす場合(換言すると異常判定条件を満たさない場合)、ステップS53において、父Aからの注文の指示を証券会社Cのサーバ1へ伝達する。
【0091】
証券会社Cのサーバ1では、運用部131が、受信された父Aからの注文の指示に応じた信託財産の運用、つまり株式の取引を行い、ステップS54において、取引の結果としての取引情報を子Bの受託者端末3へ通知する。
【0092】
一方、ステップS52のチェックの結果、父Aからの注文の指示が、所定条件(投資許可条件)を満さない場合(換言すると異常判定条件を満たす場合)、ステップS55において、父Aから注文の指示をフィルタリング(無効に)してサーバ1へは注文を指示せず、父Aから注文の指示を無効にした旨の情報を子Bの受託者端末3とサーバ1へ送信する。
【0093】
上述したように、父Aからの注文の指示で投資一任業者Dが証券会社Cに指示して株式を売買した取引情報は、ステップS54において、受託者端末3に常に通知されるので、子Bは、父Aの取引の内容を常に確認することができる。
【0094】
したがって、投資一任業者Dでも判らないような父Aの異変が発見された場合、ステップS56において、子Bが受託者端末3を操作して父Aの指図権を取り消すよう投資一任業者端末4へ指示することで、ステップS57において、サーバ1では、指示受付部142が指図権を取り消す指示を受け付けて、指図権取消部143が父Aの指図権を“取消”に変更するので、以降の父Aの指図による信託財産の運用行為を差し止めることができる。
【0095】
サーバ1は、投資一任業者端末4からの、父Aから注文の指示をフィルタリング(無効に)した旨の情報を含む通知信号を受信する。
【0096】
サーバ1では、外部制御部134が、父Aから注文の指示をフィルタリング(無効に)した旨の情報を含む通知信号に基づいて、投資一任業者Dが行う行為を監査チェックすることで、投資一任業者Dの行為を支援する制御を実行する。
【0097】
この他、外部制御部134は、投資一任業者Dから受け取った情報(父Aからの注文の指示をフィルタリング(無効に)した旨の情報)を、子Bの受託者端末3に通知する制御を行うことで、投資一任業者Dの行為を支援する制御を実行する。
【0098】
このように投資一任業者Dによる父Aの指図に対するフィルタリング機能によれば、指図権者である父Aからの指図に基づいて投資一任業者Dが株式の運用を行うことにより、判断能力が低下した父Aの発注にフィルターを掛け、事前に父Aの信託目的や適合性にそぐわない指図(注文)については、投資一任業者Dがフィルタリング(無効に)することで、父Aと子Bとの間で事前に取り決めた信託目的や適合性にそぐわない(判断能力が低下した)父Aの信託財産運用行為(株式の取引等)を防止することができる。
【0099】
また、投資一任業者Dから、注文の指示をフィルタリングした旨の通知をサーバ1が受けて他の指図権者である子Bやその口座のある証券会社Cへ通知することで、子Bは、父Aから信託された株式や預金等の信託財産を、父Aの指図の下で投資一任業者Dに安心して運用させることができる。
【0100】
(連続信託機能)
次に図11を参照して連続信託機能を説明する。図11は、委託者兼受益者である父から子に信託された信託財産の受益権の移動に関する第1の例(子が指図して信託財産を運用する基本ケース)を示す図である。
【0101】
図11に示すように、第1の例の場合、子Bの民事信託口F1では、ステップS61において、父Aと子Bが運用協議書を取り交わした上で父Aの有価証券を子Bに信託する契約を締結する。この際に、サーバ1の信託情報DB300に、第1受益権を持つ者を父Aに設定し、第2受益権を持つ者を母Eに設定しておくものとする。また、この例では、父Aに指図権を付与しないものとする。
【0102】
信託契約の際、父Aに指図権を付与しない場合、子Bが受託者端末3を操作してサーバ1にアクセスし、ステップS62において、例えば株式の売買の注文を証券会社Cに指図することで、サーバ1の運用部131は、子Bからの株式の売買の注文により株式を売買し信託財産を運用する。
【0103】
ここでは、子Bの民事信託口F1で管理される信託財産の受益者として父Aが設定されているため、ステップS63において、子Bの指図により証券会社Cが信託財産を運用して得られる利益や信託財産自体は、父Aに給付される。
【0104】
その後、父Aが亡くなった場合、母Eへの一般承継の事由が発生したことになる。
母Eへの一般承継の事由が発生すると、受益者としての父Aの権利がなくなる。
父Aに受益者としての権利がなくなった場合、第1受益者である父Aから第2受益者として設定されている母Eが、新たに当該権利を有する者となる。
【0105】
この場合、ステップS64において、サーバ1の連続信託制御部123は、信託情報DB300に設定されている受益者としての権利を父Aから母Eに移動させて、以降の信託財産及びその運用益を母Eに給付する制御を実行する。なお、運用益には、利益の他、損益も含まれる。
なお、この第1の例では、第2受益者に母Eが設定されるものとしたが、第2受益者には子Bが設定される場合もある。
【0106】
このようにサーバ1に連続信託制御部123を備える第1の例によれば、父Aが有する株式等を子Bが運用して得られた利益が第1受益者である父Aに給付される仕組みにおいて、父Aが亡くなった場合に、通常であれば、株式の運用で得られる利益を受ける受益者がいなくなるが、このような場合でも、第2受益者を例えば母E等に設定しておくことで、株式の給付や運用益を得る権利が自動的に母Eに継承されるので、父Aの信託財産の相続等を容易に行うことができる。つまり、子Bが株式を運用し、その運用益を母Eが得ることができるようになる。
【0107】
この結果、通常であれば、父Aの信託財産は、母Eが相続して株式の運用の見識が少ない母Eが株式を運用しなければならなくなるが、信託財産については子Bが運用できるので、母Eに煩わしい思いをさせずに済む。また子Bに信託された父Aの信託財産を母Eに容易に相続させることができる。
【0108】
(連続信託機能にみまもり機能と安心ブレーキの機能)
次に図12を参照して連続信託+みまもり機能+安心ブレーキの機能を説明する。図12は、委託者兼受益者である父から子に信託された信託財産の受益権の移動に関する第2の例(父が指図して信託財産を運用するケース)を示す図である。
【0109】
図12に示す第2の例の場合、父Aが指図して信託財産を運用する流れは、図7に示したステップS11乃至S14と同じでありその説明は省略する。
ステップS15において、父Aの指図権が停止されると、以降、父Aの指図による信託財産の運用ができなくなる。
この第2の例では、サーバ1の連続信託制御部123は、父Aの死亡をトリガにして、図11に示したステップS64の受益権移動の処理を実行する。これにより、以降の信託財産及びその運用益は、母Eに給付されるようになる。
【0110】
このように第2の例によれば、父Aが有する株式等の信託財産を子Bが受託し、父Aに付与された指図権で父Aが証券会社Cに指図して証券会社Cの口座の株式を運用して得られた運用益が第1受益者である父Aに給付されるスキーム(仕組み)において、第2受益者に母Eを設定しておくことで、父Aの死亡等で父Aの指図権が停止された場合、受益者として権利が母Eに移動されるので、以降の株式の給付や運用益が母Eに引継ぎが給付されるようになる。この結果、第1の例と同様の効果を奏することができる。
【0111】
(連続信託機能にみまもり機能と安心ブレーキの機能と投資一任業者によるフィルタリング機能)
次に図13を参照して連続信託+みまもり機能+安心ブレーキ機能+投資一任業者によるフィルタリング機能を説明する。図13は、委託者兼受益者である父から子に信託された信託財産の受益権の移動に関する第3の例(父が指図して信託財産を運用するケース)を示す図である。
【0112】
図13に示す第3の例の場合、父Aが指図して信託財産を運用する流れは、図10に示したステップS41乃至S57と同じでありその説明は省略する。
ステップS57において、例えば父Aが亡くなって、以降の父Aの指図による信託財産の運用行為が差し止められると、以降、父Aの指図による信託財産の運用ができなくなる。
この第3の例では、サーバ1の連続信託制御部123は、父Aの死亡の診断結果をトリガにして、図11に示したステップS64の受益権移動の処理を実行する。これにより、以降の信託財産及びその運用益は、母Eに給付されるようになる。
【0113】
このように第3の例によれば、父Aが有する株式等の信託財産を子Bが受託し、父Aに付与された指図権で父Aが投資一任業者Dに指図して証券会社Cの口座の株式を運用して得た運用益が第1受益者である父Aに給付されるスキーム(仕組み)において、第2受益者に母Eを設定しておくことで、父Aが死亡した場合に、受益者として権利が母Eに移動されるので、以降の株式の給付や運用益が母Eに引継がれて給付されるようになる。この結果、第1の例と同様の効果を奏することができる。
【0114】
即ち、本実施形態によれば、父Aが健康なうちは父A本人が信託財産を運用し、父Aの判断能力が一定水準以下に低下したり亡くなった場合は、その信託財産の運用及び管理を子Bが引継ぎ、その信託財産の運用結果として得られる運用益については、受益権が移動された母Eに給付するようにできる。
この結果、父Aが所有する株式や金銭等の信託財産を、委託者である父Aに代わって父Aから信頼された子Bが受託者として父Aの意思に則って管理する上で、父Aの望む形で引き継ぐことができる。
【0115】
以上纏めると、本システムのユーザである父Aの要望に応え、信託サービスや投資一任サービス等、父A本人に代わって父A本人から信頼された子Bが受託者として父Aの意思に則って父Aの信託財産を管理する上で、父A本人の望む形で信託財産を運用したり引き継ぐことができる。
【0116】
本実施形態では、ユーザと金融機関の夫々に以下のような効果が得られる。
1.ユーザの効果
委託者に指図権を付与することにより、信託契約後も従来通りの委託者による運用が可能になる。
委託者に認知症等が発症した後は、信託契約を交わせない一方で、委託者が健康なうちは信託財産を運用したい、とのニーズに応えることができる。
指図権を付与すると同時に「みまもり機能」で受託者に取引状況を提供(モニタリング機能)するので、受託者は、モニタリングで把握した内容によっては、「あんしんブレーキ機能」を使って委託者の指図権を停止することができる。
投資一任業者の活用により、資産運用の安全性を損なう取引を排除することができる。
2.金融機関の効果
預り資産が増加し有価証券を保有する高齢者の資産を取り込むことができる。
売買手数料、投信代行手数料について、信託財産の中から獲得することができる。
顧客の資産を囲い込むので、相続発生後も資産が流出し難くなる。
超高齢社会において新たなサービスを提供することで、民事信託に対応する金融機関は少ないため他行との差別化を図ることができる。
信託契約に従った資産の移管手続きのため、相続手続きを待たずに委託契約を実行できることから、事務工数が削減し、資産移管に関する事務作業を軽減することができる。
【0117】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
なお、上記実施形態では、図8のステップS31に示した発症の確定の一例として認知症を例示したが、これ以外に、父Aが指図権者としての指図の判断能力の低下があるものと診断された場合や指図できない状況に陥る病気又はケガであることが診断された場合も発症の確定に含まれる。
上記実施形態では、指図権の設定情報として指図権を復活させることが可能な“停止”と復活不可能な“取消”の2つに設定を分けたが、いずれか一方のみであってもよい。
上記実施形態では、委託者から信託される「対象」の一例として、株式や金銭等といった金融関連の財産を一例としたが、この他、命令や権利、遺言、地位、不動産、商標権等であってもよく、相続、引継、継承等が可能なものであれば足りる。
上記実施形態では、投資一任業者Dを介する運用例として、父Aが投資一任業者Dに注文を指示し、投資一任業者Dは、その指示に基づいて信託財産を運用したが、これ以外であってもよい。
例えば父Aが個別銘柄について投資意向を投資一任業者Dに伝え、投資一任業者Dは、その個別銘柄への投資意向について信託目的、適合性をふまえて個別銘柄への投資を判断し、証券会社Cに注文を指図すると共に、子Bに指図を連絡し、子Bは、連絡された指図の内容を確認した上で、注文を発注するようにしてもよい。
この場合、信託財産の運用に、投資一任業者Dと子Bの双方が関わるため、より安全に信託財産の取引を行うことができる。
上記実施形態では、サーバ1は、委託者端末2、受託者端末3及び投資一任業者端末4等を通じて情報を取得しているが、サーバ1に対する情報の取得は、委託者端末2、受託者端末3及び投資一任業者端末4等ではなく、例えば電話器や営業員を経由して行うようにしてもよい。
【0118】
また例えば、上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。
換言すると、図4の機能的構成は例示に過ぎず、特に限定されない。
即ち、上述した一連の処理を全体として実行できる機能がシステムに備えられていれば足り、この機能を実現するためにどのような機能ブロック及びデータベースを用いるのかは特に図4の例に限定されない。また、機能ブロック及びデータベースの存在場所も、図4に特に限定されず任意でよい。例えばサーバの機能ブロック及びデータベースをユーザ端末等に移譲させてもよい。逆にユーザ端末の機能ブロック及びデータベースをサーバ等に移譲させてもよい。
また、1つの機能ブロック及びデータベースは、ハードウェア単体で構成してもよいし、ソフトウェア単体で構成してもよいし、それらの組み合わせで構成してもよい。
【0119】
一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータ等にネットワークや記録媒体からインストールされる。
コンピュータは、専用のハードウェアに組み込まれるコンピュータであってもよい。
また、コンピュータは、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能なコンピュータ、例えばサーバの他汎用のスマートフォンやパーソナルコンピュータであってもよい。
【0120】
このようなプログラムを含む記録媒体は、ユーザ等にプログラムを提供するために装置本体とは別に配布される図示せぬリムーバブルメディアにより構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザ等に提供される記録媒体等で構成される。
【0121】
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
また、本明細書において、システムの用語は、複数の装置や複数の手段等より構成される全体的な装置を意味するものとする。
【0122】
以上を換言すると、本発明が適用される情報処理装置は、次のような構成を有していれば足り、各種各様な実施の形態を取ることができる。
【0123】
(指図権付与機能)
即ち、本発明が適用される情報処理装置(例えば図4のサーバ1等)は、
委託者(例えば父A等)が有する対象(信託財産や命令する権利等)を信託された者(例えば子B等)が受託者となった場合における、前記対象の運用の支援となる処理を実行する情報処理装置(例えば図4のサーバ1等)において、
前記対象の運用に関する指図を行う権利としての指図権を、前記委託者(例えば父A等)に付与する指図権付与手段(例えば図4の指図権付与部141等)、
を備える。
このように指図権付与手段(例えば図4の指図権付与部141等)を備えることで、通常ならば、委託者(例えば父A等)が受託者(例えば子B等)に対象(例えば株式等)の運用を信託後は、委託者(例えば父A等)には対象の運用(例えば株式の売買等)の権利はなくなり、対象の運用に対する指図(株式の売買の指図等)もできなくなるが、この情報処理装置では、委託者(例えば父A等)が信託後も、付与された指図権に基づき対象への指図(株式の売買の指図等)が可能になり、当該対象(株式等)を運用することができる。
この結果、受託後も委託者(例えば父A等)が対象(株式や預金等の信託財産等)を運用できるので、安心して対象(株式や預金等の信託財産等)を受託者に信託することができる。
また、受託者についても、受託後も委託者(例えば父A等)の対象(株式や預金等の信託財産等)を運用や管理をする必要がなく、以前と変わらずに通常の生活を送ることができる。
(みまもり機能)
また、上記情報処理装置(例えば図4のサーバ1等)は、
前記委託者(例えば父A等)による前記対象の運用に関する指図を行う状況を監視し、その監視結果(例えば取引情報として)を前記受託者(例えば子B等)に通知する監視手段(例えば図4の監視部132等)、
をさらに備える。
このように監視手段(例えば図4の監視部132等)を備えることで、委託者(例えば父A等)の対象の運用状況(例えば図1の株式K1、K2の取引状況等)をモニタリングすることができ、受託者は、安心して委託者(例えば父A等)に対象の運用を継続させることができる。
これにより、委託者(例えば父A等)によるおかしいと思われる対象の運用行為(例えば図1の株式K1、K2の売買行為等)を、受託者(例えば子B等)が知ることができる。
より具体的には、通知された受託者(例えば子B等)が、委託者(例えば父A等)による対象(例えば図1の株式K1、K2等)の運用内容(例えば売買した額等)をチェックすることができるので、委託者(例えば父A等)に認知症の兆候が表れたとき又は認知症が発症したときの措置が可能になる。
なお、対象の運用状況(例えば図1の株式K1、K2の取引状況等)を常に通知するのではなく、指図権を持つ委託者(例えば父A等)の判断能力に疑義が生じたとき、受託者(例えば子B等)に通知することで、高齢の委託者(例えば父A等)のことを常に気にせずに済む。
(安心ブレーキ機能及びブレーキアシスト機能)
前記監視手段(例えば図4の監視部132等)は、
前記対象の運用に関する指図が予め設定されている異常判定条件を満たすか否かを判定する判定手段(例えば図4の判定部151等)と、
前記指図が前記異常判定条件を満たした場合、前記委託者の前記指図行為の異変を前記受託者に通知することと前記委託者の前記指図権の行使を停止させることのうち少なくとも一方の制御を実行する異常制御手段(例えば図4の異常制御部152等)と、
をさらに備える。
このように判定手段(例えば図4の判定部151等)と異常制御手段(例えば図4の異常制御部152等)とを備えることで、指図権が付与された委託者(例えば父A等)の異変を自動的に検出し、受託者(例えば子B等)に通知又は前記指図権の行使を停止させることで、委託者(例えば父A等)の指図行為で対象(例えば図1の株式K1、K2等の信託財産等)に大きな損害を出るのを未然に防止することができる。
即ち受託者(例えば子B等)が少しでも「変だな」と思ったら委託者(例えば父A等)による信託財産の運用(図1の株式K1、K2の売買等の取引)にブレーキをかけることができる。
(指図権の取消機能)
また、上記情報処理装置(例えば図4のサーバ1等)は、
前記監視手段の前記監視結果が通知された前記受託者による、前記委託者の前記指図権の行使の差止め(行使の差止めの仕方としては、指図権は存続させるが行使自体を物理的にできないようにする、指図権自体を消滅させて指図権の行使を無効とする)の指示を受け付ける差止指示受付手段(例えば図4の指示受付部142等)と、
前記委託者からの前記指図権の行使の差止めの前記指示が受け付けられた場合、前記指図権が付与された委託者(例えば父A等)の前記指図権を消滅させる制御を実行する指図権制御手段(例えば図4の指図権取消部143等)と、
を備える。
このように差止指示受付手段(例えば図4の指示受付部142等)と指図権制御手段(例えば図4の指図権取消部143等)を備えることで、受託者(例えば子B等)が、委託者(例えば父A等)の判断能力の低下を気付かないうちに指図権者(父A)が対象(図1の株式K1、K2等)を悪い方向に運用(売買等)することに自動的にブレーキをかけることができる。
(追加信託の機能)
また、上記情報処理装置(例えば図4のサーバ1等)は、
前記指図権制御手段(例えば図4の指図権取消部143等)の制御により前記委託者(例えば父A等)の前記指図権が消滅した(取り消された)場合、当該委託者(例えば父A等)の前記対象(例えば図1の株式K1、K2や金銭M1、M2等)とは異なる別対象(例えば図8の父Aの特定口座F0の株式K3や金銭M3等)についても、前記受託者に追加(例えば子Bの民事信託口座F1等に追加)して信託する制御を実行する追加信託制御手段(例えば図4の追加信託制御部122等)、
を備える。
このように(例えば図4の追加信託制御部122等)を備えることで、委託者(例えば父A等)に付与していた対象への指図権が消滅した(取り消された)後、受託者(例えば子B等)へ対象(例えば図1の株式K1、K2、金銭M1、M2や図8の株式のK1乃至K3、金銭M1乃至M3等)を引き継がせることで、委託者(例えば父A等)から信託された全ての対象(例えば株式K1乃至K3、金銭M1乃至M3等)への指図を受託者(例えば子B等)が一任して行えるようになるので、委託者(例えば父A等)の全ての対象(例えば株式K1乃至K3、金銭M1乃至M等)の相続等が容易になる。
【0124】
(投資一任業者Dによる指図のフィルタリング機能)
また、上記情報処理装置(例えば図4のサーバ1等)は、
委託者(例えば父A等)が有する対象(例えば株式等の信託財産や命令する権利等)を信託された者(例えば子B等)が受託者となった場合における、前記対象(株式等の信託財産や命令する権利等)の運用の支援となる処理を実行する情報処理装置(例えば図4のサーバ1等)において、
前記委託者(例えば父A等)と前記受託者(例えば子B等)とは異なる第三者(例えば図13の投資一任業者D等)により前記対象(例えば株式等の信託財産や命令する権利等)が運用させる場合において、前記受託者(例えば子B等)又は前記委託者からの前記対象(例えば株式等の信託財産や命令する権利等)の運用に対する指示が、前記委託者(例えば父A等)の意向に基づき予め設定された所定条件(例えば投資許可条件等)を満たさない場合、前記第三者(例えば図13の投資一任業者D等)による前記指示を無効とする行為を支援する制御(具体例:投資一任業者Dが行う行為を監査チェックする制御や指示が条件を満たさない旨の情報を投資一任業者Dから受け取り指示した者と異なる委託者(例えば父A等)又は受託者(例えば子B等)に通知する制御等)を実行する指示無効制御手段(例えば図4の外部制御部134等)、
を備える。
このように指示無効制御手段(例えば図4の監視部132等)を備え、第三者(例えば図13の投資一任業者D等)を介した対象(例えば株式等の信託財産や命令する権利等)の運用(例えば株式の売買や命令を託す行為等)を行うことにより、受託者(例えば子B等)や判断能力が低下した委託者(例えば父A等)の発注にフィルターを掛け、事前に委託者(例えば父A等)の信託目的や適合性にそぐわない指図(投資意向)については、第三者(投資一任業者や弁護士等)が指示者以外の委託者(例えば父A等)又は受託者(例えば子B等)やその口座を持つ金融機関等へ通知することで、受託者(例えば子B等)は無茶な指図(注文)をできなくなり、委託者(例えば父A等)は、受託者(例えば子B等)に信託した自身の対象(例えば株式や預金等の信託財産等)を第三者や金融機関等に安心して託することができる。
【0125】
(連続信託機能)
また、上記情報処理装置(例えば図4のサーバ1等)は、
委託者(例えば父A等)が有する対象(信託財産や命令する権利等)を信託された者(例えば子B等)が受託者となり、前記対象を運用に伴う益を得る権利を有する者が第1受益者となる場合における、前記対象の運用の支援となる処理を実行する情報処理装置において、
前記委託者(例えば父A等)から他者(例えば後述の第2受益者になる母E)への一般承継の事由が発生したことに伴い前記第1受益者としての前記権利がなくなった場合、新たに当該権利を有する者となる第2受益者(例えば母E等、この他、第1受益者(例えば父A等)自身が第2受益者になる場合も含まれる)に前記対象(例えば信託財産や命令する権利等)に対する新たな受益権を再発行する制御を実行する受益者制御手段(例えば図4の連続信託制御部123等)、
を備える。
このように受益者制御手段(例えば図4の連続信託制御部123等)を備えることで、委託者(例えば父A等)が有する対象(株式等)を受託者(例えば子B等)が運用して得た利益を第1受益者(通常、委託者と受益者が同じ者(例えば父A等))に給付する仕組みの中で、第1受益者(委託者である父A等)が亡くなった場合に、通常であれば、対象(例えば株式等)の運用で得られる利益を受ける受益者がいなくなるが、このような場合でも、第2受益者として設定されている者(例えば母E等)に対象(例えば株式等)の給付や運用益を得る権利が継承されるので、対象の相続等を容易に行うことができる。
この結果、受託者が子Bであり、第2受益者が母Eの場合、子Bが対象(例えば株式等)を運用し、その運用益を母Eが得ることができるようになる。通常であれば、対象(例えば株式等)を母Eが相続することで、母Eが対象(例えば株式等)を運用することになるが、運用の煩わしさをなくすことができる。
即ち、本実施形態によれば、委託者(例えば父A等)が健康なうちは委託者(例えば父A等)本人が信託財産を運用し、委託者(例えば父A等)が亡くなった場合は、その信託財産の運用及び管理を受託者が引継ぎ、信託財産の運用結果として得られる運用益を受益者(例えば母E等)に供給することができる。
【符号の説明】
【0126】
1・・・サーバ、2・・・委託者端末、3・・・受託者端末、4・・・投資一任業者端末、11・・・CPU、18・・・記憶部、19・・・通信部、300・・・信託情報DB、400・・・財産DB、500・・・運用DB、600・・・条件DB、700・・・指図権DB、111・・・信託制御部、112・・・財産管理部、121・・・信託契約部、122・・・追加信託制御部、123・・・連続信託制御部、131・・・運用部、132・・・監視部、133・・・指図権制御部、134・・・外部制御部、151・・・判定部、152・・・異常制御部
図1
図2
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