(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190195
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】ガラスアンテナ及び車両用窓ガラス
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/32 20060101AFI20221219BHJP
H01Q 1/22 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
H01Q1/32 A
H01Q1/22 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098387
(22)【出願日】2021-06-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り セントラル硝子株式会社が、令和2年9月17日に、株式会社SUBARUに、野口明宏が発明したアンテナが搭載されたガラス板を販売によって、発明を公開した。
(71)【出願人】
【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】野口 明宏
【テーマコード(参考)】
5J046
5J047
【Fターム(参考)】
5J046AA03
5J046AA07
5J046AB17
5J046LA01
5J046LA19
5J047AA03
5J047AA07
5J047AB17
5J047EC02
(57)【要約】
【課題】必要とされるアンテナ感度を確保しつつ、ノイズの影響を受けにくく、簡素なアンテナパターンで占有面積が小さいガラスアンテナを提供する。
【解決手段】車両の窓ガラスに設けられるアンテナであって、芯線側給電部と接続される芯線側エレメントと、接地側給電部と接続される接地側エレメントとを備え、前記接地側エレメントは、前記接地側給電部から第1方向に延伸する第1接地側エレメント及び第2接地側エレメントと、前記接地側給電部から前記第1方向と異なる第2方向に延伸する第3接地側エレメントとを含み、前記第1接地側エレメント及び前記第2接地側エレメントは、ボディフランジに沿って逆方向に延伸することを特徴とするアンテナ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の窓ガラスに設けられるアンテナであって、
芯線側給電部と接続される芯線側エレメントと、
接地側給電部と接続される接地側エレメントとを備え、
前記接地側エレメントは、
前記接地側給電部から第1方向に延伸する第1接地側エレメント及び第2接地側エレメントと、
前記接地側給電部から前記第1方向と異なる第2方向に延伸する第3接地側エレメントとを含み、
前記第1接地側エレメント及び前記第2接地側エレメントは、ボディフランジに沿って逆方向に延伸することを特徴とするアンテナ。
【請求項2】
請求項1に記載のアンテナであって、
前記第1接地側エレメント及び前記第2接地側エレメントは、前記ボディフランジと容量結合することを特徴とするアンテナ。
【請求項3】
請求項2に記載のアンテナであって、
前記第1接地側エレメント及び前記第2接地側エレメントは、長さが略同一であり、前記ボディフランジとの距離が略同一であることを特徴とするアンテナ。
【請求項4】
請求項1に記載のアンテナであって、
前記第3接地側エレメントは、前記芯線側エレメントと平行に配置されており、
前記第3接地側エレメントと前記芯線側エレメントとが容量結合していることを特徴とするアンテナ。
【請求項5】
請求項1に記載のアンテナであって、
前記芯線側エレメントは、前記ボディフランジと容量結合しない位置に配置されることを特徴とするアンテナ。
【請求項6】
請求項2に記載のアンテナであって、
前記第1接地側エレメント及び前記第2接地側エレメントは、60mm以上の長さで前記ボディフランジに近接して配置されることを特徴とするアンテナ。
【請求項7】
車両用窓ガラスであって、
請求項1から6のいずれかに記載のアンテナが、前記車両用窓ガラスの上側中央部に二つ設けられており、
コーナーアンテナが、前記車両用窓ガラスの上側左右隅部に一つずつ設けられていることを特徴とする車両用窓ガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスアンテナに関し、特に、自動車用窓ガラスに設ける地上波デジタルTV放送波などのUHF波を受信するのに好適なガラスアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の窓ガラスにガラスアンテナを設ける場合、後部窓ガラス、前部窓ガラス及び側部の固定窓ガラスにアンテナが設けられる。
【0003】
この技術分野の背景技術として特開2010-93781号公報(特許文献1)及び特開2010-206361号公報(特許文献2)がある。特許文献1には、芯線側エレメントと接地側エレメントとを備えるガラスアンテナであって、前記芯線側エレメントは、芯線側給電端子から所定の方向に延伸され、前記接地側エレメントは、接地側給電端子に接続され、前記芯線側エレメントと並行に延伸される第1エレメントと、前記接地側給電端子に接続され、前記第1エレメントと並行に延伸される第2エレメントと、を備え、前記第1エレメントをボディフランジに近接させることによって、前記第1エレメントとボディフランジとを容量結合させたことを特徴とするガラスアンテナが記載されている。また、特許文献2(特開2003-211956号公報)には、芯線側給電点と接続される芯線側エレメント、及び、接地側給電点と接続される接地側エレメントを備える平面アンテナであって、前記芯線側エレメントは、前記芯線側給電点から前記接地側給電点と反対側に延伸する第1エレメントと、前記芯線側給電点から前記第1エレメントと略直角方向に延伸し、さらに前記第1エレメントと同一方向かつ略平行に延伸する第2エレメントと、によって構成され、前記接地側エレメントは、前記第1エレメントの延伸方向と異なる方向に前記接地側給電点から延伸することを特徴とする平面アンテナが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-93781号公報
【特許文献2】特開2010-206361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、自動車の前部窓ガラスにガラスアンテナを設ける場合、運転者の視野を確保するために、簡素なアンテナパターンで占有面積が小さいアンテナが求められる。また、前部窓ガラスの上部中央部に地上波デジタルTV放送波用アンテナを設置した場合、従来のアンテナでは車両前方以外の方向に対しては良好な指向特性が得られず、2系統以上のアンテナを備えるダイバーシティアンテナを設けても、車両前方方向に指向特性が偏り、十分なダイバーシティ効果が得られない問題がある。さらに、前部窓ガラスに設けられたカメラ等の情報取得装置が発生するノイズによってアンテナ感度が低下する問題がある。また、芯線側給電部とアース側給電部を左右反転させると、他の機器やボディフランジの影響が変わり、アンテナ面積を大きくしないと十分なアンテナ感度が得られないことがある。
【0006】
本発明は、必要とされるアンテナ感度を確保しつつ、ノイズの影響を受けにくく、簡素なアンテナパターンで占有面積が小さいガラスアンテナの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、車両の窓ガラスに設けられるアンテナであって、芯線側給電部と接続される芯線側エレメントと、接地側給電部と接続される接地側エレメントとを備え、前記接地側エレメントは、前記接地側給電部から第1方向に延伸する第1接地側エレメント及び第2接地側エレメントと、前記接地側給電部から前記第1方向と異なる第2方向に延伸する第3接地側エレメントとを含み、前記第1接地側エレメント及び前記第2接地側エレメントは、ボディフランジに沿って逆方向に延伸することを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、前記第1接地側エレメント及び前記第2接地側エレメントは、前記ボディフランジと容量結合することを特徴とするアンテナである。
【0009】
また、本発明は、前記第1接地側エレメント及び前記第2接地側エレメントは、長さが略同一であり、前記ボディフランジとの距離が略同一であることを特徴とするアンテナである。
【0010】
また、本発明は、前記第3接地側エレメントは、前記芯線側エレメントと平行に配置されており、前記第3接地側エレメントと前記芯線側エレメントとが容量結合していることを特徴とするアンテナである。
【0011】
また、本発明は、前記芯線側エレメントは、前記ボディフランジと容量結合しない位置に配置されることを特徴とするアンテナである。
【0012】
また、本発明は、前記第1接地側エレメント及び前記第2接地側エレメントは、60mm以上の長さで前記ボディフランジに近接して配置されることを特徴とするアンテナである。
【0013】
また、本発明は、車両用窓ガラスであって、前記アンテナが、前記車両用窓ガラスの上側中央部に二つ設けられており、コーナーアンテナが、前記車両用窓ガラスの上側左右隅部に一つずつ設けられていることを特徴とする車両用窓ガラスである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の代表的な実施形態によれば、情報取得装置が発生するノイズの影響を低減し、アンテナ感度を確保できる。また、芯線側エレメントの水平エレメントの長さとL字形エレメントの長さの調節によって、アンテナ特性に影響を与えずに、共振周波数を変化できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施例1の車両用窓ガラスを車内側から見た平面図である。
【
図2】実施例1の車両用窓ガラスに配置されるセンターアンテナの拡大図である。
【
図3】実施例1の車両用窓ガラスに配置されるコーナーアンテナの拡大図である。
【
図4】実施例2の車両用窓ガラスを車内側から見た平面図である。
【
図5】実施例2の車両用窓ガラスに配置されるセンターアンテナの拡大図である。
【
図6】実施例2の車両用窓ガラスに配置されるコーナーアンテナの拡大図である。
【
図7】実施例1のセンターアンテナの周波数特性を示す図である。
【
図8】実施例1のセンターアンテナの指向特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施例1>
図1は、本発明の実施例1の車両用窓ガラスを車内側から見た平面図であり、
図2及び
図3は、
図1に示す車両用窓ガラスに配置されるガラスアンテナの拡大図である。
【0017】
本発明の実施例の窓ガラス1は、車内側の周辺部にセラミックペースト層4が設けられている。セラミックペースト層4は、ガラス面上に低融点ガラスの粉末と顔料を混合したセラミックペーストをスクリーン印刷して焼き付けることによって形成される通常黒色で帯状の絶縁層である。窓ガラス1は、セラミックペースト層4において車体に接着剤で取り付けられる。車体の窓部の内側端部がボディフランジ5である。
【0018】
窓ガラス1の車内側の上中央部には、カメラ、センサー、レーダーなどの情報取得装置が取り付けられる。
図1では、情報取得装置の取り付け位置6を破線で示す。
【0019】
窓ガラス1の車内側には、上中央部に二つのセンターアンテナ2L、2Rと、上左右隅部に対向して二つのコーナーアンテナ3L、3Rが設けられる。センターアンテナ2Lとセンターアンテナ2Rは、窓ガラス1の縦中心線に対して左右対称に設けられ、コーナーアンテナ3Lとコーナーアンテナ3Rとは窓ガラス1の縦中心線に対して左右対称に設けられる。
【0020】
センターアンテナ2L、2R、コーナーアンテナ3L、3Rは、各々の芯線側給電部と接地側給電部に接続された同軸ケーブルによって受信機に接続される。受信機では各アンテナからの信号を合成してダイバーシティ効果を得る。
【0021】
センターアンテナ2Rは、
図2に示すように、芯線側給電部11と、接地側給電部12と、芯線側給電部11に接続される複数の芯線側エレメント21、22と、接地側給電部12に接続される複数の接地側エレメント26~28を有する。芯線側給電部11及び接地側給電部12は、左右に並んで(すなわち、縦方向にほぼ同位置に)配置される。
【0022】
芯線側エレメント21、22のうち、第1芯線側エレメント21は、芯線側給電部11から窓ガラス1の縦中心線から離れる右方に延伸する。第2芯線側エレメント22は、芯線側給電部11から下方に延伸し、先端部が右方に屈曲して延伸する。第2芯線側エレメント22の先端部は、
図2に示すように右方に延伸しても、左方に延伸しても、曲がらずに下方に延伸してもよい。第2芯線側エレメント22の先端部を屈曲させることによって、斜め方向から到来する電波に対する感度を向上できる。芯線側エレメント21は、ボディフランジ5と容量結合しないように、20mm以上離れて配置される。芯線側第1エレメント21と芯線側第2エレメント22の合計の長さ(例えば、
図2では140mm)は、受信周波数(地上デジタルテレビ放送波帯470~710MHz)の上端波長(710MHzにおける波長)をλH及び下端波長(470MHzにおける波長)をλL、ガラスの波長短縮率をαとして、αλL/4とαλH/2の間に入るようにするとよい。
【0023】
接地側エレメント26~28のうち、第1接地側エレメント26は、接地側給電部12から上方に延伸し、左方に屈曲して、ボディフランジ5に沿って延伸する。第2接地側エレメント27は、接地側給電部12から上方に延伸し、右方に屈曲して、ボディフランジ5に沿って延伸する。このため、第1接地側エレメント26とボディフランジ5が容量結合し、第2接地側エレメント27とボディフランジ5が容量結合する。第3接地側エレメント28は、接地側給電部12から下方に延伸した後、右方に屈曲して延伸する。第3接地側エレメント28の先端部は、
図2に示すように右方に延伸しても、左方に延伸しても、曲がらずに下方に延伸してもよい。
【0024】
第1接地側エレメント26と第2接地側エレメント27は、ボディフランジ5から同程度の距離に配置されるとよい。すなわち、第1接地側エレメント26と第2接地側エレメント27がボディフランジ5に沿って延伸する箇所において、第1接地側エレメント26とボディフランジ5との距離と、第2接地側エレメント27とボディフランジ5との距離は、同程度であるとよく、それぞれ5mm以上15mm以下であるとよく、8mm以上10mm以下であることが好ましく、8.5mmであることがより好ましい。
【0025】
また、第1接地側エレメント26がボディフランジ5に沿って延伸する長さと、第2接地側エレメント27がボディフランジ5に沿って延伸する長さは、それぞれ60mm以上であるとよい。第1接地側エレメント26がボディフランジ5に沿って延伸する長さと、第2接地側エレメント27がボディフランジ5に沿って延伸する長さの合計は、受信周波数(地上デジタルテレビ放送波帯470~710MHzの中心の590MHz)の波長をλ、ガラスの波長短縮率をαとして、αλ/2程度にするとよい。また、第1接地側エレメント26がボディフランジ5に沿って延伸する長さと、第2接地側エレメント27がボディフランジ5に沿って延伸する長さは同程度とするとよい。このように、ボディフランジ5に対して、第1接地側エレメント26と第2接地側エレメント27を同程度の位置に配置することによって、第1接地側エレメント26と第2接地側エレメント27におけるボディフランジ5との容量結合の強さのバランスをとることができる。一方、第1接地側エレメント26及び第2接地側エレメント27のボディフランジ5に対する位置を変えることによって、第1接地側エレメント26と第2接地側エレメント27の容量結合におけるバランスを変えて、指向特性を変化させてもよい。例えば、窓ガラス1の内側の第1接地側エレメント26を短くし、外側の第2接地側エレメント27の長くすると、内側から到来するノイズへの耐性を向上できる。L字形に形成された第1接地側エレメント26及び第2接地側エレメント27がボディフランジ5に沿って左右方向に延伸するので、1本のエレメントを長くすることなく、第1接地側エレメント26及び第2接地側エレメント27がボディフランジ5に沿っている部分を長くして、接地側エレメントとボディフランジ5との強い容量結合が可能となり、情報取得装置からの耐ノイズ特性を向上できる。
【0026】
コーナーアンテナ3Rは、
図3に示すように、芯線側給電部16と、接地側給電部17と、芯線側給電部16に接続されるループ状の芯線側エレメント31と、接地側給電部12に接続される複数の接地側エレメント36、37とを有する。
【0027】
芯線側エレメント31は、芯線側給電部11から窓ガラス1の縦中心線に近づく左方に延伸するループエレメントである。ループの最上辺はボディフランジ5に沿って延伸しており、芯線側エレメント31はボディフランジ5と容量結合している。ループの形状及びループの長さを変えることによって、周波数特性を変更できる。
【0028】
接地側エレメント36、37のうち、第1接地側エレメント36は、接地側給電部12から上方に延伸し、左方に屈曲して、芯線側エレメント31のループの下辺に沿って延伸する。このため、第1接地側エレメント36と芯線側エレメント31が容量結合する。第1接地側エレメント36と芯線側エレメント31の容量結合の強さの調整によって、アンテナのインピーダンス、すなわち共振特性を変更できる。
【0029】
第2接地側エレメント37は、接地側給電部17から下方に延伸し、左方に屈曲して延伸し、上方に屈曲して延伸した後、右方に屈曲し、ボディフランジ5に沿って延伸する。このため、第2接地側エレメント37とボディフランジ5が容量結合する。第2接地側エレメント37とボディフランジ5の容量結合の強さの調整によって、アンテナのインピーダンス、すなわち共振特性を変更できる。
【0030】
実施例1では、給電部11、12、16、17、センターアンテナ2L、2R、及びコーナーアンテナ3L、3Rの各エレメントは、ガラスの車内側の面上又はセラミックペースト層4上に導電性の銀ペーストを所定の幅(約0.7mm)で印刷し、乾燥後、加熱炉によって焼き付けて形成される。また、光透過性の樹脂フィルム上に形成された導電性パターンによってアンテナ導体を形成し、樹脂フィルムをガラスに貼付してもよい。このように、セラミックペースト層上にアンテナを配置すると、黒色のセラミックペースト層4に給電部やエレメントが覆われるので、室外側からアンテナや給電部が見えず、見栄えをよくできる。
【0031】
各エレメントの長さは図示したとおりである。
【0032】
<実施例2>
次に、本発明の実施例2を説明する。
【0033】
図4は、本発明の実施例2の車両用窓ガラスを車内側から見た平面図であり、
図5及び
図6は、
図4に示す車両用窓ガラスに配置されるガラスアンテナの拡大図である。
【0034】
実施例2では、実施例1のセンターアンテナ2L、2Rをセンターアンテナ2L’、2R’で置き換え、実施例1のコーナーアンテナ3L、3Rをコーナーアンテナ3L’、3R’で置き換える。実施例2では、実施例1との相違点を説明し、実施例1と同じ構成には同じ符号を付し、それらの説明は省略する。
【0035】
窓ガラス1には、上中央部に二つのセンターアンテナ2L’、2R’と、上左右隅部に対向して二つのコーナーアンテナ3L’、3R’が設けられる。センターアンテナ2L’とセンターアンテナ2R’は、窓ガラス1の縦中心線に対して左右対称に設けられ、コーナーアンテナ3L’とコーナーアンテナ3R’とは窓ガラス1の縦中心線に対して左右対称に設けられる。
【0036】
センターアンテナ2L’、2R’、コーナーアンテナ3L’、3R’は、各々の芯線側給電部と接地側給電部に接続された同軸ケーブルによって受信機に接続される。受信機では各アンテナからの信号を合成してダイバーシティ効果を得る。
【0037】
センターアンテナ2R’は、
図5に示すように、芯線側給電部11と、接地側給電部12と、芯線側給電部11に接続される複数の芯線側エレメント121、122と、接地側給電部12に接続される複数の接地側エレメント126~128を有する。芯線側給電部11及び接地側給電部12は、上下に並んで(すなわち、縦方向にほぼ同位置に)配置される。
【0038】
芯線側エレメント121、122のうち、第1芯線側エレメント121は、芯線側給電部11から窓ガラス1の縦中心線から離れる右方に屈曲して延伸する。第2芯線側エレメント122は、芯線側給電部11から右方に延伸し、上方に屈曲して延伸した後、右方に屈曲して、第3接地側エレメント128に沿って延伸する。このため、第2芯線側エレメント122と第3接地側エレメント128が容量結合する。第2芯線側エレメント122と第3接地側エレメント128の容量結合によって、接地側エレメントに誘起した電波を芯線側エレメントに誘導して、アンテナ感度を向上できる。特に、接地側エレメントの縦線条によって横方向の指向性を改善できる。
【0039】
接地側エレメント126~128のうち、第1接地側エレメント126は、接地側給電部12から上方に延伸し、左方に屈曲して、ボディフランジ5に沿って延伸する。第2接地側エレメント127は、接地側給電部12から上方に延伸し、右方に屈曲し、ボディフランジ5に沿って延伸する。このため、第1接地側エレメント126とボディフランジ5が容量結合し、第2接地側エレメント127とボディフランジ5が容量結合する。第3接地側エレメント128は、接地側給電部12から右方に延伸する。
【0040】
第1接地側エレメント126と第2接地側エレメント127は、ボディフランジ5から同程度の距離に配置されるとよい。すなわち、第1接地側エレメント26と第2接地側エレメント27がボディフランジ5に沿って延伸する箇所において、第1接地側エレメント26とボディフランジ5との距離と、第2接地側エレメント27とボディフランジ5との距離は、同程度であるとよく、それぞれ5mm以上15mm以下であるとよく、8mm以上10mm以下であることが好ましく、8.5mmであることがより好ましい。
【0041】
また、第1接地側エレメント26がボディフランジ5に沿って延伸する長さと、第2接地側エレメント27がボディフランジ5に沿って延伸する長さは、それぞれ60mm以上であるとよい。第1接地側エレメント126がボディフランジ5に沿って延伸する長さと、第2接地側エレメント127がボディフランジ5に沿って延伸する長さの合計は、受信周波数をλ、ガラスの波長短縮率をαとして、αλ/2程度にするとよい。また、第1接地側エレメント126がボディフランジ5に沿って延伸する長さと、第2接地側エレメント127がボディフランジ5に沿って延伸する長さは同程度とするとよい。このように、ボディフランジ5に対して、第1接地側エレメント126と第2接地側エレメント127を同程度の位置に配置することによって、第1接地側エレメント126と第2接地側エレメント127におけるボディフランジ5との容量結合の強さのバランスをとることができる。一方、第1接地側エレメント126及び第2接地側エレメント127のボディフランジ5に対する位置を変えることによって、第1接地側エレメント126と第2接地側エレメント127の容量結合におけるバランスを変えて、指向特性を変化させてもよい。例えば、窓ガラス1の内側の第1接地側エレメント26を短くし、外側の第2接地側エレメント27の長くすると、内側から到来するノイズへの耐性を向上できる。L字形に形成された第1接地側エレメント126及び第2接地側エレメント127がボディフランジ5に沿って左右方向に延伸するので、1本のエレメントを長くすることなく、第1接地側エレメント126及び第2接地側エレメント127がボディフランジ5に沿っている部分を長くして、接地側エレメントとボディフランジ5との強い容量結合が可能となり、情報取得装置からの耐ノイズ特性を向上できる。
【0042】
コーナーアンテナ3R’は、
図6に示すように、芯線側給電部16と、接地側給電部17と、芯線側給電部16に接続されるループ状の芯線側エレメント131と、接地側給電部12に接続される複数の接地側エレメント136~138とを有する。
【0043】
芯線側エレメント131は、芯線側給電部11から窓ガラス1の縦中心線に近づく左方に延伸するループエレメントである。ループの形状及びループの長さを変えることによって、周波数特性を変更できる。
【0044】
接地側エレメント136~138のうち、第1接地側エレメント136は、接地側給電部12から上方に延伸し、左方に屈曲して、芯線側エレメント31のループの下辺に沿って延伸する。このため、第1接地側エレメント136と芯線側エレメント131が容量結合する。第1接地側エレメント136と芯線側エレメント131の容量結合の強さの調整によって、アンテナのインピーダンス、すなわち共振特性を変更できる。
【0045】
第2接地側エレメント137は、接地側給電部17から左方に延伸し、上方に屈曲して延伸した後、右方に屈曲し、ボディフランジ5に沿って延伸する。このため、第2接地側エレメント37とボディフランジ5が容量結合する。また、第2接地側エレメント137の先端部は芯線側エレメント131のループの上辺に近接しており、第2接地側エレメント137と芯線側エレメント131が容量結合する。第2接地側エレメント137とボディフランジ5の容量結合の強さや、第2接地側エレメント137と芯線側エレメント131の容量結合の強さの調整によって、アンテナのインピーダンス、すなわち共振特性を変更できる。
【0046】
第3接地側エレメント138は、接地側給電部17から下方に延伸する。第3接地側エレメント138は、受信周波数の波長より短いので、種にインピーダンス調整の役割を有する。
【0047】
実施例2では、給電部11、12、16、17、センターアンテナ2L’、2R’、及びコーナーアンテナ3L’、3R’の各エレメントは、ガラスの車内側の面上又はセラミックペースト層4上に導電性の銀ペーストを所定の幅(約0.7mm)で印刷し、乾燥後、加熱炉によって焼き付けて形成される。また、光透過性の樹脂フィルム上に形成された導電性パターンによってアンテナ導体を形成し、樹脂フィルムをガラスに貼付してもよい。このように、セラミックペースト層上にアンテナを配置すると、黒色のセラミックペースト層4に給電部やエレメントが覆われるので、室外側からアンテナや給電部が見えず、見栄えをよくできる。
【0048】
各エレメントの長さは図示したとおりである。
【0049】
なお、実施例1と実施例2でセンターアンテナとコーナーアンテナの組み合わせを変えてガラスアンテナを構成してもよい。すなわち、センターアンテナ2L’、2R’とコーナーアンテナ3L、3Rを組み合わせたり、センターアンテナ2L、2Rとコーナーアンテナ3L’、3R’を組み合わせてもよい。
【0050】
次に、センターアンテナ2L、2Rの動作について考察する。以下では、実施例1のセンターアンテナ2L、2Rの動作を説明するが、実施例2のセンターアンテナ2L’、2R’の動作も同じである。
【0051】
センターアンテナ2L、2R(2L’、2R’)は、接地側エレメントが接地されていない非接地のアンテナである。しかし、第1接地側エレメント26(126)及び第2接地側エレメント27(127)はボディフランジ5と容量結合しているので、第1接地側エレメント26(126)及び第2接地側エレメント27(127)の電位はグランドレベルに近くなる。このため、センターアンテナは、グランドを構成する接地側エレメントに対し、放射エレメントとしての芯線側エレメント21(121)が設けられたモノポールアンテナと考えることができる。
【0052】
一方、第3接地側エレメント28(128)は、放射エレメントとして機能する。よって、第3接地側エレメント28(128)が、第1芯線側エレメント21に対する、接地側の放射エレメントとして機能し、センターアンテナはダイポールアンテナと考えることができる。
【0053】
このようにセンターアンテナは、モノポールアンテナの特性とダイポールアンテナの特性とを併せ持つため、第1芯線側エレメント21(121)の長さを変化させた場合と、第3接地側エレメント28(128)の長さを変化させた場合とで、アンテナの特性の変化が異なる。
【0054】
このように、接地側エレメントを、ボディフランジ5と密に結合している第1接地側エレメント26(126)及び第2接地側エレメント27(127)と、ボディフランジ5と結合していない第3接地側エレメント28(128)に分けて構成したので、各接地側エレメント構成(長さ、エレメントの形状、エレメント数等)によって、アンテナ特性の変化が異なり、アンテナ特性を容易に調整することができる。
【0055】
図7は、実施例1のセンターアンテナ2Rの周波数特性を示す図である。
図7において、破線は情報取得装置(例えばカメラ)がない場合、実線は情報取得装置がある場合のデジタルテレビ放送周波数帯における利得の特性を示す。実施例1のセンターアンテナ2Rでは、情報取得装置の影響が小さく、情報取得装置の有無によってアンテナ利得が変わらないアンテナを構成できる。
【0056】
図8は、実施例1のセンターアンテナ2Rの指向特性を示す図である。
図8において、破線は情報取得装置がない場合、実線は情報取得装置がある場合のデジタルテレビ放送周波数帯の代表的な3周波数における利得の特性を示す。実施例1のセンターアンテナ2Rでは、指向特性においても、情報取得装置の影響が小さく、情報取得装置の有無によって指向特性が変わらないアンテナを構成できる。
【0057】
以上、本発明を添付の図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこのような具体的構成に限定されるものではなく、添付した請求の範囲の趣旨内における様々な変更及び同等の構成を含むものである。
【符号の説明】
【0058】
1 窓ガラス
2L、2L’、2R、2R’センターアンテナ
3L、3L’、3R、3R’コーナーアンテナ
4 セラミックペースト層
5 ボディフランジ
6 情報取得装置取り付け位置
11、16 芯線側給電部
12、17 接地側給電部
21、121 第1芯線側エレメント
22、122 第2芯線側エレメント
26、126 第1接地側エレメント
27、127 第2接地側エレメント
28、128 第3接地側エレメント
31、131 芯線側エレメント
36、136 第1接地側エレメント
37、137 第2接地側エレメント
138 第3接地側エレメント