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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190196
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/54 20180101AFI20221219BHJP
   F24F 3/14 20060101ALI20221219BHJP
   F24F 6/00 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
F24F11/54
F24F3/14
F24F6/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098389
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】小林 純哉
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 圭人
(72)【発明者】
【氏名】岸本 如水
(72)【発明者】
【氏名】福本 将秀
【テーマコード(参考)】
3L053
3L055
3L260
【Fターム(参考)】
3L053BB01
3L053BB02
3L053BB04
3L053BC05
3L055AA01
3L260AA01
3L260AB02
3L260AB14
3L260BA06
3L260BA24
3L260CA13
3L260CA33
3L260CB64
3L260FA06
3L260FB61
3L260JA24
(57)【要約】
【課題】被空調空間内での結露の発生を抑制しつつ、被空調空間の加湿を行うことが可能な空調システムを提供する。
【解決手段】空調システム20は、外部から空気を導入可能に構成された空調室18、空調室18の空気を温調するエアーコンディショナ13、温調された空気を加湿する加湿装置16、空調室18の空気を複数の居室2にそれぞれ搬送する複数の搬送ファン3、及び加湿装置16を制御するコントローラ50を備える。コントローラ50は、居室2に設定された目標湿度に基づいて特定される第一設定絶対湿度と、外壁9の壁面温度に基づいて特定される第二設定絶対湿度とを用いて、第一設定絶対湿度が第二設定絶対湿度以下である場合に、加湿装置16に対して第一設定絶対湿度に基づいた第一加湿制御を実行させ、第一設定絶対湿度が第二設定絶対湿度より大きい場合に、加湿装置16に対して第二設定絶対湿度に基づいた第二加湿制御を実行させる制御を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から空気を導入可能に構成された空調室と、
前記空調室に設置され、前記空調室の空気を温調する空調機と、
前記空調室に設置され、前記空調機によって温調された空気を加湿する加湿装置と、
前記空調室の空気を前記空調室とは独立した複数の被空調空間にそれぞれ搬送する複数の搬送ファンと、
前記加湿装置を制御するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、前記被空調空間に設定された目標湿度に基づいて特定される第一設定絶対湿度と、前記被空調空間を構成する外壁の壁面温度に基づいて特定される第二設定絶対湿度とを用いて、前記第一設定絶対湿度が前記第二設定絶対湿度以下である場合に、前記加湿装置に対して前記第一設定絶対湿度に基づいた第一加湿制御を実行させ、前記第一設定絶対湿度が前記第二設定絶対湿度より大きい場合に、前記加湿装置に対して前記第二設定絶対湿度に基づいた第二加湿制御を実行させることを特徴とする空調システム。
【請求項2】
前記コントローラは、前記壁面温度を、前記被空調空間に設定された目標温度、前記被空調空間の外側の外部温度、及び前記外壁の断熱性能情報に基づいて設定することを特徴とする請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記コントローラは、前記第二設定絶対湿度を、前記壁面温度が露点となる絶対湿度に設定することを特徴とする請求項1または2に記載の空調システム。
【請求項4】
前記コントローラは、前記壁面温度として、前記外壁に設けられた窓部の、前記被空調空間側の表面温度を用いること特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の空調システム。
【請求項5】
前記コントローラは、複数の前記被空調空間のうち、少なくとも1つの被空調空間に対して前記加湿装置による前記第二加湿制御を実行させると判定した場合には、残りの前記被空調空間に対しても前記加湿装置による前記第二加湿制御を実行させることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅の複数の部屋を1つの空気調和機で空調することを可能にする空調システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、住居に対して全館空調機での空調が行なわれている。また、省エネルギー住宅需要の高まりと規制強化に伴い、高断熱及び高気密住宅が増加していくことが予想されており、その特徴に適した空調システムが要望されている。
【0003】
こうした空調システムとして、複数の空間(居室)等における空気の温湿度が目標温湿度となるように、複数の空間等から空調室に搬送されてくる空気を、空調室内において所定の温湿度に空調した上で、複数の空間等のそれぞれに搬送する全館空調システムが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-63899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の全館空調システムでは、搬送されてくる空気に対して加湿を行う加湿装置において、設定される目標湿度と被空調空間の現在湿度の差分値を参照して加湿運転を行うかどうかを判定する。このため、従来の全館空調システムでは、被空調空間の温度が外気温度に比べて高い場合、外気と接触する窓面等において被空調空間の空気が冷やされることにより、目標湿度に向けて加湿する過程で窓面等の近傍の空気の相対湿度が上昇して、窓面等に結露が発生しやすいという課題があった。
【0006】
そこで本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、被空調空間内での結露の発生を抑制しつつ、被空調空間の加湿を行うことが可能な空調システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明に係る空調システムは、外部から空気を導入可能に構成された空調室と、空調室に設置され、空調室の空気を温調する空調機と、空調室に設置され、空調機によって温調された空気を加湿する加湿装置と、空調室の空気を空調室とは独立した複数の被空調空間にそれぞれ搬送する複数の搬送ファンと、加湿装置を制御するコントローラと、を備える。コントローラは、被空調空間に設定された目標湿度に基づいて特定される第一設定絶対湿度と、被空調空間を構成する外壁の壁面温度に基づいて特定される第二設定絶対湿度とを用いて、第一設定絶対湿度が第二設定絶対湿度以下である場合に、加湿装置に対して第一設定絶対湿度に基づいた第一加湿制御を実行させ、第一設定絶対湿度が第二設定絶対湿度より大きい場合に、加湿装置に対して第二設定絶対湿度に基づいた第二加湿制御を実行させる。これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、被空調空間内での結露の発生を抑制しつつ、被空調空間の加湿を行うことが可能な空調システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施の形態1に係る空調システムの接続概略図である。
図2図2は、空調システムを構成する加湿装置の概略断面図である。
図3図3は、空調システムのコントローラの概略機能ブロック図である。
図4図4は、コントローラの基本処理動作を示すフローチャート図である。
図5図5は、加湿制御時のコントローラの処理動作を示すフローチャート図である。
図6図6は、加湿制御における居室設定湿度を特定する処理動作を示すフローチャート図である。
図7図7は、本発明の実施の形態2に係る空調システムの接続概略図である。
図8図8は、加湿制御における居室設定湿度を特定する処理動作を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る空調システムは、外部から空気を導入可能に構成された空調室と、空調室に設置され、空調室の空気を温調する空調機と、空調室に設置され、空調機によって温調された空気を加湿する加湿装置と、空調室の空気を空調室とは独立した複数の被空調空間にそれぞれ搬送する複数の搬送ファンと、加湿装置を制御するコントローラと、を備える。コントローラは、被空調空間に設定された目標湿度に基づいて特定される第一設定絶対湿度と、被空調空間を構成する外壁の壁面温度に基づいて特定される第二設定絶対湿度とを用いて、第一設定絶対湿度が第二設定絶対湿度以下である場合に、加湿装置に対して第一設定絶対湿度に基づいた第一加湿制御を実行させ、第一設定絶対湿度が第二設定絶対湿度より大きい場合に、加湿装置に対して第二設定絶対湿度に基づいた第二加湿制御を実行させる制御を行う。
【0011】
こうした構成によれば、コントローラの設定湿度が、被空調空間に設定された第一設定絶対湿度と、被空調空間を構成する外壁の壁面温度に基づいて特定される第二設定絶対湿度のうち、低い方の湿度に設定される。このため、通常時には被空調空間に設定された目標絶対湿度になるように制御しつつ、壁面温度が低い場合には壁面温度に基づいて特定される設定絶対湿度を導入することで、空調システムでは、結露の発生を抑制しつつ加湿を行うことができる。
【0012】
また、本発明に係る空調システムでは、コントローラは、壁面温度を、被空調空間に設定された目標温度、被空調空間の外側の外部温度、及び外壁の断熱性能情報に基づいて設定するようにしてもよい。このようにすることで、壁面温度は、外部温度が低いあるいは外壁の断熱性能が低いほど低く設定される。すなわち、外部温度が低い場合あるいは外壁の断熱性能が低い場合ほど第二設定絶対湿度が低く設定される。このため、壁面温度の変化に合わせて第二設定絶対湿度を変更させることができ、壁面温度が低い場合に、結露を抑制させる効果をさらに高めることができる。
【0013】
また、本発明に係る空調システムでは、第二設定絶対湿度を、壁面温度が露点となる絶対湿度に設定するようにしてもよい。このようにすることで、第二設定絶対湿度は、被空調空間の外壁において結露を発生させる絶対湿度を超えて設定されることがなくなる。このため、加湿装置によって被空調空間の外壁において結露を発生させる絶対湿度を超えて加湿されることがなくなるので、外壁における結露を抑制する効果をさらに高めることができる。
【0014】
また、本発明に係る空調システムでは、コントローラは、壁面温度として、外壁に設けられた窓部の、被空調空間側の表面温度を用いるようにしてもよい。このようにすることで、一般的に断熱性能が低く、外壁において最も結露を発生させやすい窓部において、加湿装置によって結露を発生させる絶対湿度を超えて加湿されることがなくなる。このため、結露を抑制する効果をさらに高めることができる。
【0015】
また、本発明に係る空調システムでは、コントローラは、複数の被空調空間のうち、少なくとも1つの被空調空間に対して加湿装置による第二加湿制御を実行させると判定した場合には、残りの被空調空間に対しても加湿装置による第二加湿制御を実行させるようにしてもよい。このようにすることで、最も結露を発生させやすい被空調空間にて結露を発生させない、すなわちすべての被空調空間において結露を発生させないように制御することができる。このため、結露を抑制する効果をさらに高めることができる。
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0017】
(実施の形態1)
まず、図1を参照して、本実施の形態1に係る空調システム20について説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る空調システム20の接続概略図である。
【0018】
空調システム20は、複数の搬送ファン3(搬送ファン3a,3b)と、熱交換気扇4と、複数の居室用ダンパ5(居室用ダンパ5a,5b,5c,5d)と、複数の循環口6(循環口6a,6b,6c,6d)と、複数の居室排気口7(居室排気口7a,7b,7c,7d)と、複数の居室給気口8(居室給気口8a,8b,8c,8d)と、居室温度センサ11(居室温度センサ11a,11b,11c,11d)と、居室湿度センサ12(居室湿度センサ12a,12b,12c,12d)と、エアーコンディショナ(空気調和機)13と、吸込温度センサ14と、外部温度センサ15(外部温度センサ15a,15b,15c,15d)と、加湿装置16と、集塵フィルタ17と、コントローラ50(空調コントローラに該当)と、を備えて構成される。
【0019】
空調システム20は、建物の一例である一般住宅1内に設置される。一般住宅1は、複数(本実施の形態では4つ)の居室2(居室2a,2b,2c,2d)に加え、居室2と独立した少なくとも1つの空調室18を有している。ここで一般住宅1(住宅)とは、居住者がプライベートな生活を営む場として提供された住居であり、居室2にはリビング、ダイニング、寝室、個室及び子供部屋等が含まれる。また、空調システム20が提供する居室にトイレ、浴室、洗面所又は脱衣所等を含んでもよい。
【0020】
居室2は、一般住宅1内において、外壁9(外壁9a,9b,9c,9d)を含む壁面による閉空間を構成する。なお、外壁9には、出入口となる扉(図示せず)及び窓ガラス等の窓部(図示せず)が設けられている。より詳細には、居室2aは、外壁9aを含む壁面によって一つの閉空間を構成する。居室2aは、一般住宅1の一階において、外壁9aを含む壁面によって一つの閉空間を構成する。また、居室2bは、一般住宅1の一階において、外壁9bを含む壁面によって一つの閉空間を構成する。また、居室2cは、一般住宅1の二階において、外壁9cを含む壁面によって一つの閉空間を構成する。また、居室2dは、一般住宅1の二階において、外壁9dを含む壁面によって一つの閉空間を構成する。 居室2aには、循環口6a、居室排気口7a、居室給気口8a、居室温度センサ11a、居室湿度センサ12a、コントローラ50、及び入出力端末19が設置されている。また、居室2bには、循環口6b、居室排気口7b、居室給気口8b、居室温度センサ11b、及び居室湿度センサ12bが設置されている。また、居室2cには、循環口6c、居室排気口7c、居室給気口8c、居室温度センサ11c、及び居室湿度センサ12cが設置されている。また、居室2dには、循環口6d、居室排気口7d、居室給気口8d、居室温度センサ11d、及び居室湿度センサ12dが設置されている。
【0021】
空調室18には、搬送ファン3a、搬送ファン3b、居室用ダンパ5a、居室用ダンパ5b、居室用ダンパ5c、居室用ダンパ5d、エアーコンディショナ13、吸込温度センサ14、加湿装置16、及び集塵フィルタ17が設置されている。より詳細には、空調室18内を流れる空気の流通経路の上流側から、エアーコンディショナ13、集塵フィルタ17、吸込温度センサ14、加湿装置16、搬送ファン3(搬送ファン3a、3b)、居室用ダンパ5(居室用ダンパ5a~5d)の順にそれぞれ配置されている。
【0022】
空調室18には、空調室18の外部から内部に空気が導入される。そして、空調室18では、各居室2から循環口6を通って搬送された空気(屋内の空気)と、熱交換気扇4により取り込まれて熱交換された外気(屋外の空気)とが混合される。空調室18の空気は、空調室18内に設けられたエアーコンディショナ13及び加湿装置16によって温度及び湿度がそれぞれ制御され、すなわち空調されて、居室2に搬送する空気が生成される。空調室18にて空調された空気は、搬送ファン3により、各居室2に搬送される。ここで、空調室18は、エアーコンディショナ13、吸込温度センサ14、加湿装置16、及び集塵フィルタ17などが配置でき、各居室2の空調をコントロールできる一定の広さを備えた空間を意味するが、居住空間を意図するものではなく、基本的に居住者が滞在する部屋を意味するものではない。
【0023】
各居室2の空気は、循環口6により空調室18へ搬送される他、居室排気口7により熱交換気扇4を通して熱交換された後、屋外へ排出される。空調システム20は、熱交換気扇4によって各居室2から内気(屋内の空気)を排出しつつ、屋内に外気(屋外の空気)を取り込むことで、第1種換気方式の換気が行われる。熱交換気扇4の換気風量は、複数段階で設定可能に構成されており、その換気風量は、法令で定められた必要換気量を満たすように設定される。
【0024】
熱交換気扇4は、内部に給気ファン及び排気ファン(図示せず)を有して構成され、各ファンを動作させることによって、内気(屋内の空気)と外気(屋外の空気)との間で熱交換しながら換気する。この際、熱交換気扇4は、熱交換した外気を空調室18に搬送する。
【0025】
搬送ファン3は、空調室18の壁面(底面側の壁面)に設けられている。そして、空調室18の空気は、搬送ファン3によって搬送ダクトを介して居室給気口8から居室2に搬送される。より詳細には、空調室18の空気は、搬送ファン3aによって一般住宅1の一階に位置する居室2a及び居室2bにそれぞれ搬送されるとともに、搬送ファン3bによって一般住宅1の二階に位置する居室2c及び居室2dにそれぞれ搬送される。なお、各居室2の居室給気口8に接続される搬送ダクトは、それぞれ独立して設けられる。
【0026】
居室用ダンパ5は、搬送ファン3から各居室2に空気を搬送する際、居室用ダンパ5の開度を調整することによって各居室2への送風量を調節する。より詳細には、居室用ダンパ5aは、一階に位置する居室2aへの送風量を調整する。また、居室用ダンパ5bは、一階に位置する居室2bへの送風量を調整する。また、居室用ダンパ5cは、二階に位置する居室2cへの送風量を調整する。また、居室用ダンパ5dは、二階に位置する居室2dへの送風量を調整する。
【0027】
各居室2(居室2a~2d)の空気の一部は、それぞれ対応する循環口6(循環口6a~6d)によって、循環ダクトを介して空調室18に搬送される。ここで、循環口6により搬送される空気は、搬送ファン3によって空調室18から各居室2に搬送される風量(給気風量)と、熱交換気扇4によって居室排気口7から屋外に排気される風量(排気風量)の差分だけ、循環空気として自然に空調室18に搬送される。なお、空調室18と各居室2とを接続する循環ダクトは、それぞれ独立して設けられてもよいが、循環ダクトの一部である複数の支流ダクトを途中より合流させて1つの循環ダクトに統合した後、空調室18に接続するようにしてもよい。
【0028】
各循環口6(循環口6a~6d)は、上述の通り、各居室2(居室2a~2d)から空調室18に屋内の空気を搬送するための開口である。
【0029】
各居室排気口7(居室排気口7a~7d)は、上述の通り、各居室2(居室2a~2d)から熱交換気扇4に屋内の空気を搬送するための開口である。
【0030】
各居室給気口8(居室給気口8a~8d)は、上述の通り、空調室18から各居室2(居室2a~2d)に空調室18内の空気を搬送するための開口である。
【0031】
居室温度センサ11(居室温度センサ11a~11d)は、対応する居室2(居室2a~2d)それぞれの温度(居室温度)を取得して、コントローラ50に送信するセンサである。
【0032】
居室湿度センサ12(居室湿度センサ12a~12d)は、対応する居室2(居室2a~2d)それぞれの湿度(室内湿度)を取得して、コントローラ50に送信するセンサである。
【0033】
エアーコンディショナ13は、空調機に該当するものであり、空調室18の空調を制御する。エアーコンディショナ13は、空調室18の空気の温度が設定温度(空調室目標温度)となるように、空調室18の空気を冷却又は加熱する。ここで、設定温度には、ユーザによって設定された目標温度(居室目標温度)と居室温度との温度差から必要熱量を算出して、その結果に基づいた温度に設定される。本実施の形態では、設定温度には、各居室2の空気の温度を、目標温度にまでより早く温調するために、少なくとも目標温度よりも高い温度に設定される。
【0034】
吸込温度センサ14は、空調室18においてエアーコンディショナ13が温調した空気の温度を取得して、コントローラ50に送信するセンサである。より詳細には、吸込温度センサ14は、空調室18における集塵フィルタ17の下流側に設置され、加湿装置16に吸い込まれる空気の温度を取得して、コントローラ50に送信する。
【0035】
外部温度センサ15(外部温度センサ15a~15d)は、居室2の外側の空気の温度を取得して、コントローラ50に送信するセンサである。外部温度センサ15は、居室2を構成する外壁9の外側近傍に設置され、居室2の外側近傍の空気の温度を取得して、コントローラ50に送信する。より詳細には、外部温度センサ15aは、居室2aを構成する外壁9aの外側近傍に設置され、居室2aの外側近傍の空気の温度を取得して、コントローラ50に送信する。また、外部温度センサ15bは、居室2bを構成する外壁9bの外側近傍に設置され、居室2bの外側近傍の空気の温度を取得して、コントローラ50に送信する。また、外部温度センサ15cは、居室2cを構成する外壁9cの外側近傍に設置され、居室2cの外側近傍の空気の温度を取得して、コントローラ50に送信する。また、外部温度センサ15dは、居室2dを構成する外壁9dの外側近傍に設置され、居室2dの外側近傍の空気の温度を取得して、コントローラ50に送信する。ここで、外部温度センサ15が設置される居室2を構成する外壁9の外側とは、その近傍での空気の温度が最も低くなりやすい壁面の外側であり、一般住宅1の構造に基づいて予め特定される。
【0036】
加湿装置16は、空調室18内のエアーコンディショナ13(及び集塵フィルタ17)の下流側に位置しており、各居室2の空気の湿度(居室湿度)が、設定湿度(居室設定湿度)よりも低い場合に、その湿度が設定湿度となるように、空調室18の空気を加湿する。また、本実施の形態における湿度は、それぞれ相対湿度で示されるが、所定の変換処理にて絶対湿度として扱ってもよい。この場合、居室2の湿度を含めて空調システム20での取り扱い全体を絶対湿度として取り扱うのが好ましい。加湿装置の詳細は後述する。
【0037】
集塵フィルタ17は、空調室18内に導入される空気中に浮遊する粒子を捕集する集塵フィルタである。集塵フィルタ17は、循環口6を通して空調室18内に搬送された空気中に含まれる粒子を捕集することで、搬送ファン3によって屋内に供給する空気を清浄な空気にする。ここでは、集塵フィルタ17は、エアーコンディショナ13と加湿装置16との間の領域において空気の流路を塞ぐように設置されている。
【0038】
コントローラ50は、空調システム20全体を制御するコントローラである。コントローラ50は、熱交換気扇4、搬送ファン3、居室用ダンパ5、居室温度センサ11、居室湿度センサ12、エアーコンディショナ13、吸込温度センサ14、外部温度センサ15、及び加湿装置16のそれぞれと、無線通信により通信可能に接続されている。
【0039】
また、コントローラ50は、居室温度センサ11及び居室湿度センサ12により取得された各居室2それぞれの居室温度及び居室湿度と、居室2a~2d毎に設定された設定温度(居室設定温度)及び設定湿度(居室設定湿度)と、吸込温度センサ14より取得された空調室18の空気の温度等と、外部温度センサ15より取得された居室2の外部空気の温度とに応じて、空調機としてのエアーコンディショナ13、加湿装置16、搬送ファン3の風量、及び居室用ダンパ5の開度を制御する。なお、搬送ファン3の風量は、ファンごとに個別に制御してもよい。
【0040】
これにより、空調室18にて空調された空気が、各搬送ファン3及び各居室用ダンパ5に設定された風量で各居室2に搬送される。よって、各居室2の居室温度及び居室湿度が、居室設定温度及び居室設定湿度となるように制御される。
【0041】
ここで、コントローラ50に、熱交換気扇4、搬送ファン3、居室用ダンパ5、居室温度センサ11、居室湿度センサ12、エアーコンディショナ13、吸込温度センサ14、外部温度センサ15、及び加湿装置16が無線通信で接続されることにより、複雑な配線工事を不要とすることができる。ただし、これら全体を、又は、コントローラ50とこれらの一部とを、有線通信により通信可能に構成してもよい。
【0042】
次に、図2を参照して、加湿装置16の構成について説明する。図2は、空調システム20を構成する加湿装置16の概略断面図である。
【0043】
加湿装置16は、空調室18内のエアーコンディショナ13の下流側に位置しており、空調室18内の空気を遠心水破砕によって加湿するための装置である。言い換えれば、加湿装置16は、揚水管37が回転することによって揚水した水を遠心破砕して微細化し、エアーコンディショナ13によって温調された空気に含ませて放出するように構成された装置である。
【0044】
加湿装置16は、空調室18内の空気を吸い込む吸込口31と、加湿した空気を空調室18内に吹き出す吹出口32と、吸込口31と吹出口32との間に設けられた風路と、この風路に設けられた液体微細化室33と、を備えている。
【0045】
吸込口31は、加湿装置16の外枠を構成する筐体の上面に設けられている。吹出口32は、筐体の側面に設けられている。液体微細化室33は、加湿装置16の主要部であり、遠心水破砕方式によって水の微細化を行うところである。
【0046】
具体的には、加湿装置16は、回転モータ34と、回転モータ34によって回転する回転軸35と、遠心ファン36と、筒状の揚水管37と、貯水部40と、第一エリミネータ41と、第二エリミネータ42と、を備えている。
【0047】
揚水管37は、液体微細化室33の内側において回転軸35に固定され、回転軸35の回転に合わせて回転しながら、鉛直方向下方に備えた円形状の揚水口から水を汲み上げる。より詳細には、揚水管37は、逆円錐形の中空構造となっており、鉛直方向下方に円形状の揚水口を備えるとともに、揚水管37の上方であって逆円錐形の天面中心に、鉛直方向に向けて配置された回転軸35が固定されている。回転軸35が、液体微細化室33の鉛直方向上方に位置する回転モータ34と接続されることで、回転モータ34の回転運動が回転軸35を通じて揚水管37に伝導され、揚水管37が回転する。
【0048】
揚水管37は、逆円錐形の天面側に、揚水管37の外面から外側に突出するように形成された複数の回転板38を備えている。複数の回転板38は、上下で隣接する回転板38との間に、回転軸35の軸方向に所定間隔を設けて、揚水管37の外面から外側に突出するように形成されている。回転板38は、揚水管37とともに回転するため、回転軸35と同軸の水平な円盤形状が好ましい。なお、回転板38の枚数は、目標とする性能あるいは揚水管37の寸法に合わせて適宜設定される。
【0049】
また、揚水管37の壁面には、揚水管37の壁面を貫通する複数の開口39が設けられている。複数の開口39のそれぞれは、揚水管37の内部と、揚水管37の外面から外側に突出するように形成された回転板38の上面とを連通する位置に設けられている。
【0050】
遠心ファン36は、揚水管37の鉛直方向上方に配置され、空調室18から装置内に空気を取り込むためファンである。遠心ファン36は、揚水管37と同じく回転軸35に固定されており、回転軸35の回転に合わせて回転することで、液体微細化室33内に空気を導入する。
【0051】
貯水部40は、揚水管37の鉛直方向下方において、揚水管37が揚水口より揚水する水を貯水する。貯水部40の深さは、揚水管37の下部の一部、例えば揚水管37の円錐高さの三分の一から百分の一程度の長さが浸るような深さに設計されている。この深さは、必要な揚水量に合わせて設計できる。また、貯水部40の底面は、揚水口に向けてすり鉢状に形成されている。貯水部40への水の供給は、給水部(図示せず)により行われる。
【0052】
第一エリミネータ41は、空気が流通可能な多孔体であり、液体微細化室33の側方(遠心方向の外周部)に設けられ、遠心方向に空気が流通するように配置されている。第一エリミネータ41では、揚水管37の開口39から放出された水滴が衝突することで、水滴を微細化させるとともに、液体微細化室33を通過する空気に含められた水のうち水滴を捕集する。これにより、加湿装置16内を流れる空気には、気化された水が含まれる。
【0053】
第二エリミネータ42は、第一エリミネータ41の下流側に設けられ、鉛直方向上方に空気が流通するように配置されている。第二エリミネータ42もまた、空気が流通可能な多孔体であり、第一エリミネータ41を通過した空気が衝突することで、第二エリミネータ42を通過する空気に含められた水のうち水滴を捕集する。これにより、微細化された水滴を二つのエリミネータによって二重に捕集することで、粒径の大きな水滴をより精度よく捕集することができる。
【0054】
次に、加湿装置16における加湿(水の微細化)の動作原理を説明する。
【0055】
次に、図2を参照して、加湿装置16における加湿(水の微細化)の動作原理を説明する。なお、図2では、加湿装置16内での空気の流れと水の流れをそれぞれ矢印で示している。
【0056】
まず、加湿装置16の動作を開始すると、回転モータ34により回転軸35を第一回転数R1で回転させ、遠心ファン36によって、吸込口31から空調室18の空気の吸い込みが開始される。そして、回転軸35の第一回転数R1での回転に合わせて揚水管37が回転する。そして、図2の破線矢印で示す水の流れのように、揚水管37の回転によって生じる遠心力により、貯水部40に貯水された水が揚水管37によって汲み上げられる。ここで、回転モータ11(揚水管37)の第一回転数R1は、例えば、空気の送風量及び空気への加湿量に応じて、600rpm~3000rpmの間に設定される。揚水管37は、逆円錐形の中空構造となっているため、回転によって汲み上げられた水は、揚水管37の内壁を伝って上部へ揚水される。そして、揚水された水は、揚水管37の開口39から回転板38を伝って遠心方向に放出され、水滴として飛散する。
【0057】
回転板38から飛散した水滴は、第一エリミネータ41に囲まれた空間(液体微細化室33)を飛翔し、第一エリミネータ41に衝突し、微細化される。一方、液体微細化室33を通過する空気は、図2の実線矢印で示す空気の流れのように、第一エリミネータ41によって破砕(微細化)された水を含みながら第一エリミネータ41の外周部へ移動する。そして、第一エリミネータ41から第二エリミネータ42に至る風路内を空気が流れる過程で、気流の渦が生じ、水と空気とが混合する。そして、水を含んだ空気は、第二エリミネータ42を通過する。これにより、加湿装置16は、吸込口31より吸い込んだ空気に対して加湿を行い、吹出口32より加湿された空気を吹き出すことができる。
【0058】
なお、微細化される液体は水以外でもよく、例えば、殺菌性あるいは消臭性を備えた次亜塩素酸水等の液体であってもよい。
【0059】
次に、図3を参照して、空調システム20におけるコントローラ50について説明する。図5は、空調システム20におけるコントローラ50の機能ブロック図である。
【0060】
コントローラ50は、一般住宅1のリビング等の生活の主となる居室2a内の壁面に設置され、エアーコンディショナ13、搬送ファン3、居室用ダンパ5、及び加湿装置16の動作を制御する。また、コントローラ50は、利用者による操作を容易にするため、居室2aの床から人間の顔程度の高さに設置される。コントローラ50は、矩形形状を有し、本体の正面中央領域に表示パネル50j及び表示パネル50jの右側領域に操作パネル50aを備えている。
【0061】
表示パネル50jは、液晶モニタ等であり、表示画面にエアーコンディショナ13、搬送ファン3、居室用ダンパ5、加湿装置16の動作状況、居室設定温度、居室設定湿度、居室2の現在の居室温度、及び居室湿度等を表示する。
【0062】
操作パネル50aは、利用者が居室2に対する居室設定温度及び居室設定湿度等を入力するためのボタンスイッチ等である。
【0063】
そして、コントローラ50は、本体の内部にコンピュータのCPU(Central Processing Unit)及びメモリ等を有する制御ユニットが収納されている。
【0064】
具体的には、コントローラ50の制御ユニットは、入力部50bと、処理部50cと、記憶部50dと、計時部50eと、ダンパ開度特定部50fと、風量特定部50gと、設定温度特定部50hと、回転数特定部50kと、出力部50iと、を備える。
【0065】
入力部50bは、居室温度センサ11から送信される居室2の居室温度に関する情報(第一情報)と、居室湿度センサ12から送信される居室2の室内湿度に関する情報(第二情報)と、吸込温度センサ14から送信される加湿装置16の吸込温度に関する情報(第三情報)と、外部温度センサ15から送信される居室2の外部温度に関する情報(第四情報)と、操作パネル50aから送信される利用者の入力設定に関する情報(第五情報)とを受け付ける。入力部50bは、受け付けた第一情報~第五情報を処理部50cに出力する。
【0066】
記憶部50dは、処理部50cにより参照または更新されるデータを記憶する。例えば、記憶部50dは、エアーコンディショナ13、加湿装置16、及び搬送ファン3の動作態様を決定するアルゴリズムを記憶している。また、記憶部50dは、入力部50bが受け付けた第一情報~第五情報を時系列に記憶している。そして、記憶部50dは、記憶したデータ(記憶データ)を、処理部50cからの要求に応じて処理部50cに出力する。
【0067】
計時部50eは、処理部50cが実行するプログラムの中で、必要に応じて時間の測定に使用される。そして、計時部50eは、現在時刻を示すデータ(時刻データ)を処理部50cに出力する。
【0068】
処理部50cは、入力部50bからの第一情報~第五情報と、記憶部50dからの記憶データと、計時部50eからの時刻データとを受け付ける。処理部50cは、受け付けた各情報を用いて、一定時間(例えば5分)ごとに、居室2に必要とされる要求空調量及び要求加湿量を特定する。より詳細には、処理部50cは、計時部50eから取得する時刻データに基づいて一定時間ごとに、記憶部50dに記憶された居室設定温度と、居室2a~2dに設置された居室温度センサ11a~11dで検知される居室温度との間の温度差に基づいて、居室2a~2dごとに個別に必要とされる要求空調量を特定する。処理部50cは、計時部50eから取得する時刻データに基づいて一定時間ごとに、記憶部50dに記憶された居室設定湿度と、居室2a~2dに設置された居室湿度センサ12a~12dで検知される居室湿度との間の湿度差に基づいて、居室2a~2dごとに個別に必要とされる要求加湿量を特定する。また、処理部50cは、表示パネル50jに表示される情報の変化に応じて、出力部50iを介して表示パネル50jの表示を更新する。
【0069】
ダンパ開度特定部50fは、処理部50cから要求空調量に関する情報を取得し、居室2a~2dごとの要求空調量の比率に基づいて居室用ダンパ5a~5dの開度を特定する。そして、ダンパ開度特定部50fは、特定した居室用ダンパ5a~5dの開度に関する情報(開度情報)を処理部50cに出力する。
【0070】
風量特定部50gは、処理部50cから要求空調量に関する情報を取得し、要求空調量の平均値または合計値に基づいてエアーコンディショナ13の吹出風量を特定する。また、風量決定部50gは、一階と二階のそれぞれの要求空調量の平均値または合計値に基づいて搬送ファン3(搬送ファン3a、搬送ファン3b)の送風量を特定する。そして、風量特定部50gは、特定したエアーコンディショナ13の吹出風量に関する情報(吹出風量情報)と、特定した搬送ファン3の送風量に関する情報(送風量情報)を処理部50cに出力する。
【0071】
設定温度特定部50hは、処理部50cから要求空調量に関する情報を取得し、要求空調量の平均値または合計値に基づいてエアーコンディショナ13の設定温度を特定する。そして、設定温度特定部50hは、特定したエアーコンディショナ13の設定温度に関する情報(空調機設定温度情報)を処理部50cに出力する。
【0072】
回転数特定部50kは、処理部50cからの要求加湿量に関する情報及び加湿装置16の吸込温度に関する情報を取得し、加湿装置16の揚水管37(回転モータ34)の回転数を特定する。そして、回転数特定部50kは、特定した揚水管37の回転数に関する情報(回転数情報)を処理部50cに出力する。
【0073】
処理部50cは、ダンパ開度特定部50fからの開度情報と、風量特定部50gからの吹出風量情報及び送風量情報と、設定温度特定部50hからの空調機設定温度情報と、回転数特定部50kからの回転数情報とを受け付ける。処理部50cは、受け付けた各情報を用いて、エアーコンディショナ13、搬送ファン3(搬送ファン3a、搬送ファン3b)、居室用ダンパ5(居室用ダンパ5a~5d)、及び加湿装置16の各動作に関する制御情報を特定する。そして、処理部50cは、特定した制御情報を出力部50iに出力する。
【0074】
出力部50iは、処理部50cから受け付けた制御情報を、エアーコンディショナ13、搬送ファン3(搬送ファン3a、搬送ファン3b)、居室用ダンパ5(居室用ダンパ5a~5d)、及び加湿装置16にそれぞれ出力する。
【0075】
そして、エアーコンディショナ13は、出力部50iから出力された制御情報に応じて、制御情報に基づいた空調設定温度及び吹出風量にて空調動作を実行する。また、搬送ファン3(搬送ファン3a、搬送ファン3b)は、出力部50iから出力された制御情報に応じて、制御情報に基づいたそれぞれの送風量にて送風動作を実行する。また、居室用ダンパ5(居室用ダンパ5a~5d)は、出力部50iから出力された制御情報に応じて、制御情報に基づいたそれぞれの開度にて風量調整動作を実行する。また、加湿装置16は、出力部50iから出力された制御情報に応じて、制御情報に基づいた回転数にて加湿動作を実行する。
【0076】
以上のようにして、コントローラ50は、エアーコンディショナ13、搬送ファン3、居室用ダンパ5、及び加湿装置16の各動作を実行させる。
【0077】
次に、図4を参照して、コントローラ50の基本処理動作について説明する。図4は、コントローラ50の基本処理動作を示すフローチャート図である。
【0078】
<基本処理動作>
まず、コントローラ50は、空調システム20の終了判定を実施する(ステップS01)。その結果、空調システム20の電源がオフ(または操作パネル50aからの空調システム20の動作停止指示の入力)の場合(ステップS01のYES)、空調システム20の動作を終了する。一方、空調システム20の電源オンの場合(ステップS01のNO)、時間経過の判定を実施する(ステップS02)。その結果、コントローラ50は、前回の処理から一定時間(例えば10分)が経過していない場合(ステップS02のNO)、ステップS01へ戻る。一方、前回の処理から一定時間が経過した場合(ステップS02のYES)、ステップS03へ進み、居室用ダンパ5、エアーコンディショナ13、及び搬送ファン3の出力特定処理を行う。
【0079】
次に、コントローラ50は、被空調空間である居室2の数分のループを開始する(ステップS03)。そして、コントローラ50は、居室2a~2dのそれぞれに対する要求空調量を算出する(ステップS04)。また、コントローラ50は、居室2a~2dのそれぞれに対応する居室用ダンパ5a~5dの開度特定を実施する(ステップS05)。そして、コントローラ50は、すべての居室2の要求空調量の算出と居室用ダンパ5の開度特定が完了したらループを終了する(ステップS06)。
【0080】
ステップS03~S06のループ内の処理について、居室2aを例としてより詳細に説明する。
【0081】
ステップS04では、コントローラ50は、居室2aの要求空調量を、居室温度センサ11aから取得した居室温度と、居室2aに設定された居室設定温度との間の温度差分として特定する。より詳細には、要求空調量は、暖房運転時には、居室設定温度から居室温度を引いた値に基づいて特定される。また、要求空調量は、冷房運転時には、居室温度から居室設定温度を引いた値に基づいて特定される。これは、要求空調量が正の値で大きいほど、居室2aに空調が必要とされていることを意味する。
【0082】
ステップS05では、居室2aに対応する居室用ダンパ5aの開度を、居室2aの要求空調量に応じて特定する。本実施の形態では、要求空調量が2℃以上の場合は開度「100%」とし、1℃以上2℃未満の場合は開度「60%」とし、0℃以上1℃未満の場合は開度「45%」とし、-1℃以上0℃未満の場合は開度「30%」とし、-1℃未満の場合は開度「10%」としている。そして、残りの居室2(居室2b~2d)についてもこのように設定していくことで、居室用ダンパ5a~5dの開度は、居室2a~2dの要求空調量の比に応じた開度設定となり、要求空調量が高い居室(居室2)へより空調空気が送風されるようになり、居室2ごとの温度制御が可能となる。
【0083】
次に、コントローラ50は、居室2のそれぞれの要求空調量をもとに、一般住宅1の全体の要求空調量を算出する(ステップS07)。本実施の形態では、一般住宅1の要求空調量は、居室2のそれぞれの要求空調量の平均値に基づいて算出している。
【0084】
続いて、コントローラ50は、算出した一般住宅1の要求空調量に応じてエアーコンディショナ13の空調設定温度及び吹出風量を特定する(ステップS08)。より詳細には、コントローラ50は、暖房運転時には、要求空調量が高いほど空調設定温度を高く、冷房運転時には、要求空調量が高いほど空調設定温度を低くする。例えば、コントローラ50は、要求空調量が0℃未満の場合は、空調設定温度を居室2の居室設定温度と同じ値とし、要求空調量が0℃以上1℃未満の場合は、空調設定温度を居室2の居室設定温度よりも暖房運転時は1度高く、冷房運転時は1度低くする。また、コントローラ50は、要求空調量が1℃以上の場合は、空調設定温度を居室2の居室設定温度よりも暖房運転時は2度高く、冷房運転時は2度低くする。これにより、要求空調量が高いほどエアーコンディショナ13は高い出力で運転することになり、より早く居室2の居室温度が居室設定温度に制御される。
【0085】
また、コントローラ50は、エアーコンディショナ13の吹出風量を要求空調量が高いほど大きく制御する。本実施の形態では、要求空調量が0℃未満の場合は、吹出風量を500m/hとし、要求空調量が0℃以上1℃未満の場合は、吹出風量を700m/hとし、要求空調量が2℃以上の場合は、吹出風量を1200m/hとしている。
【0086】
続いて、コントローラ50は、搬送ファン3の合計風量を、エアーコンディショナ13の吹出風量と等しいか、吹出風量よりもわずかに多くなるように特定する(ステップS09)。言い換えれば、コントローラ50は、搬送ファン3の合計風量とエアーコンディショナ13の吹出風量との間の風量差が基準風量以下となるように特定する。これにより、コントローラ50は、搬送ファン3の消費電力を抑制している。
【0087】
次に、コントローラ50は、一階と二階のそれぞれの要求空調量を算出する(ステップS10)。本実施の形態では、一階と二階のそれぞれの居室2の要求空調量の平均値をその階の要求空調量としている。
【0088】
続いて、ステップS10で算出した要求空調量に基づいて、搬送ファン3のそれぞれの送風量を決定する(ステップS11)。コントローラ50は、要求空調量の比に応じた風量比をつけるように一階と二階のそれぞれの搬送ファン3の送風量を特定する。具体的には、コントローラ50は、二階の要求空調量が1℃で、一階の要求空調量が2℃であり、ステップS09で特定した搬送ファン3の合計風量が1200m/hの場合、搬送ファン3間の風量比が1:2となるように、二階の搬送ファン3aの送風量は400m/h、一階の搬送ファン3bの風量は800m/hと特定する。これにより、一階と二階とで要求空調量に差がある場合でも、搬送ファン3の送風量に差をつけることで、搬送される熱量に差がつき、一階と二階ともに要求空調量に見合った熱量を搬送することができる。
【0089】
続いて、コントローラ50は、加湿制御を開始(ステップS12)し、加湿装置16による加湿処理動作を実行させる。
【0090】
次に、図5を参照して、ステップS12における加湿制御として、加湿装置16の制御を行う際のコントローラ50の加湿処理動作を説明する。図5は、加湿制御時のコントローラ50の処理動作を示すフローチャート図である。
【0091】
<加湿処理動作>
加湿制御を開始すると、図5に示すように、コントローラ50は、まず、加湿目標値となる居室設定湿度Xtを特定する(ステップS21)。ここで、居室設定湿度Xtの特定方法は、図6を参照して後述するが、居室設定湿度Xtは、第一設定絶対湿度Xt1または第二設定絶対湿度Xt2のいずれかに設定される。その後、被空調空間である居室2の数分のループを開始する(ステップS22)。そして、コントローラ50は、居室2a~2dのそれぞれに対する要求加湿量を算出する(ステップS23)。そして、コントローラ50は、すべての居室2の要求加湿量の算出が完了したらループを終了する(ステップS24)。
【0092】
ステップS22~S24のループ内の処理について、居室2aを例としてより詳細に説明する。
【0093】
ステップS23では、コントローラ50は、居室2aの要求加湿量を、居室湿度センサ12aから取得した居室湿度と、居室2aに設定された居室設定湿度Xtとの間の湿度差分として特定する。詳細には、居室設定湿度Xt及び居室湿度をそれぞれ絶対湿度に換算し、居室設定湿度Xtに対応する居室設定絶対湿度から、居室湿度に対応する居室絶対湿度を差し引いた値を要求加湿量とする。これは、要求加湿量が正の値で大きいほど、居室2aに加湿が必要とされていることを意味する。
【0094】
次に、コントローラ50は、居室2のそれぞれの要求加湿量をもとに、一般住宅1の全体の要求加湿量を算出する(ステップS25)。本実施の形態では、一般住宅1の要求空調量は、居室2のそれぞれの要求加湿量の平均値に基づいて算出している。
【0095】
次に、コントローラ50は、加湿装置16の運転判定として、加湿要求量が正の値か否かを実施する(ステップS26)。詳細には、一般住宅1の要求加湿量が正の値である場合(ステップS26のYES)は、加湿装置16の運転動作を行うとして、ステップS27へ進む。一方、一般住宅1の要求加湿量が0もしくは負の値である場合(ステップS26のNO)は、揚水管37の回転数を「0」として加湿装置16の運転を行わずに(ステップS28)、加湿制御を終了する。
【0096】
続いて、ステップS27において、コントローラ50は、算出した一般住宅1の要求空調量、加湿装置16への吸込温度、及び搬送ファン3の合計風量に応じて揚水管37の要求回転数を特定する。ここで、コントローラ50は、要求加湿量が高いほどまたは吸込温度が低いほど、要求回転数を大きく設定する。
【0097】
本実施の形態では、コントローラ50は、加湿装置16の加湿性能データをもとに要求回転数を特定する。加湿性能データは、あらかじめ実験評価により得られたデータであり、加湿装置16の吸込温度T、揚水管37の回転数R、及び搬送ファン3の合計風量Qの条件で加湿動作した場合に、加湿装置16が出す加湿量Xを示したものである。ここで、加湿装置16が出す加湿量Xは、加湿装置16を流通する空気に含ませる水分量に相当する。加湿量Xは、加湿装置16の特性から、吸込温度T及び回転数Rは、それぞれ加湿量と正の相関を持つ。例えば吸込温度Ta及び回転数Raであるときの加湿量を加湿量Xaとし、吸込温度Tb及び回転数Rbであるときの加湿量を加湿量Xbとし、さらに回転数Ra<回転数Rb、温度Ta=温度Tbの関係であるとすると、加湿量Xa及び加湿量Xbの大小関係は、加湿量Xa<加湿量Xbとなる。
【0098】
続いて、コントローラ50は、要求回転数があらかじめ設定された上限回転数と下限回転数との間の範囲内に収まるように回転数を調整する(ステップS29)。具体的には、コントローラ50は、要求回転数が上限回転数と下限回転数との間の範囲内に収まっている場合は、ステップS27において特定された要求回転数をそのまま加湿装置16の回転数として設定する。一方、コントローラ50は、要求回転数が上限回転数を上回る場合は、上限回転数を加湿装置16の回転数として補正して設定する。また、コントローラ50は、要求回転数が下限回転数を下回る場合は、下限回転数を加湿装置16の回転数として補正して設定する。
【0099】
そして、コントローラ50は、ステップS29において設定した回転数にて加湿装置16による加湿処理動作を実行させる(ステップS30)。その後、コントローラ50は、加湿処理動作を実行させた状態で加湿制御を終了し、ステップS01に戻って、基本処理動作及び加湿処理動作を繰り返す。
【0100】
次に、図6を参照して、加湿目標値となる居室設定湿度Xtを特定する処理動作について説明する。図6は、加湿制御における居室設定湿度Xtを特定する処理動作を示すフローチャート図である。ここでは、処理動作の対象となる居室2として、居室2aを例示して説明する。
【0101】
居室設定湿度Xtを特定する処理動作では、図6に示すように、まずコントローラ50は、居室2aにおける外部温度Toと、第一設定絶対湿度Xt1と、居室設定温度Tsetとを取得する(ステップS31)。ここで、外部温度Toは、外部温度センサ15aから送信される居室2aの外側近傍の空気の温度である。第一設定絶対湿度Xt1は、居室2aに設定された目標湿度に基づいて特定される絶対湿度であり、目標湿度が絶対湿度であればそのままの値が設定され、相対湿度であれば絶対湿度に換算された値が設定される。居室設定温度Tsetは、居室2aに設定された目標温度に相当する。
【0102】
そして、コントローラ50は、取得した外部温度To及び居室設定温度Tsetを参照し、居室2aを構成する外壁9aの壁面温度Twを特定する(ステップS32)。ここで、壁面温度Twは、外壁9aの居室2a側の壁面近傍の温度(居室2側の壁面の表面温度とも言える)であり、例えば、式(1)に示す計算式で求めることができる。
【0103】
Tw=Tset-U×(Tset-To)・・・式(1)
ここで、Uは壁面温度推定係数であり、外壁9の断熱性能情報に基づいて決定され、「0」から「1」の間の値をとる。より詳細には、壁面温度推定係数は、外壁9の断熱性能が高いほど低い値をとり、U=0のとき、Tw=Tset、すなわち完全断熱されていることを意味する。なお、壁面温度推定係数の設定において参照する壁面(外壁9aの居室2a側の壁面)は、居室2を構成する外壁9のうち、最も低い断熱性能を有する壁面とするのが望ましい。例えば、窓ガラスなどの窓部がこれに相当し、窓部が単層ガラスで構成される場合には、U=0.8程度に設定される。
【0104】
続いて、コントローラ50は、特定された外壁9の壁面温度Twに基づいて第二設定絶対湿度Xt2を特定する(ステップS33)。本実施の形態では、第二設定絶対湿度Xt2は、外壁9の居室2側の壁面にて結露を発生させない限界の絶対湿度となるように設定される。より詳細には、第二設定絶対湿度Xt2は、居室設定温度Tsetと保護制御相対湿度rhとを用いて、空気線図の考えに従って温度と相対湿度の関係から求められ、設定される。
【0105】
ここで、保護制御相対湿度rhは、居室2において、外壁9の居室2側の壁面温度Twが結露を発生させる限界の温度であると仮定し、その場合の居室2の絶対湿度を、居室設定温度Tsetの場合に換算した居室2の相対湿度であり、例えば、式(2)で示す計算式で求めることができる。
【0106】
rh=(1-C’)×(Tw-A’-B’×Tset)・・・式(2)
ここで、A’,B’,C‘は居室設定温度と居室相対湿度から求められる露点温度の算出に用いた実験式から決定され、A’=-26.44、B’=0.899、C’=0.3545である。
【0107】
次に、コントローラ50は、第一設定絶対湿度Xt1と第二設定絶対湿度Xt2のどちらを居室2aにおける居室設定湿度Xtとして設定するか判定する。具体的には、コントローラ50は、第一設定絶対湿度Xt1が第二設定絶対湿度Xt2より大きいか否かの判定を行う。(ステップS34)。そして、判定の結果、第一設定絶対湿度Xt1が第二設定絶対湿度Xt2より大きくない、すなわち第一設定絶対湿度Xt1が第二設定絶対湿度Xt2以下である場合(ステップS34のNO)には、コントローラ50は、第一設定絶対湿度Xt1を居室設定湿度Xtとして設定する。そして、コントローラ50は、居室設定湿度Xtを特定する処理動作を終了し、図5のステップS21に戻って、第一加湿制御として、第一設定絶対湿度Xt1に設定された居室設定湿度Xtに基づいて、ステップS22以降の加湿処理動作を実行する。なお、第一加湿制御は、加湿装置16に対して第一設定絶対湿度Xt1に基づいて実行される制御と言える。
【0108】
一方、ステップS34での判定の結果、第一設定絶対湿度Xt1が第二設定絶対湿度Xt2より大きい場合(ステップS34のYES)には、コントローラ50は、第二設定絶対湿度Xt2を居室設定湿度Xtとして設定する。そして、コントローラ50は、居室設定湿度Xtを特定する処理動作を終了し、図5のステップS21に戻って、第二加湿制御として、第二設定絶対湿度Xt2に設定された居室設定湿度Xtに基づいて、ステップS22以降の加湿処理動作を実行する。なお、第二加湿制御は、加湿装置16に対して第二設定絶対湿度Xt2に基づいて実行される制御と言える。
【0109】
本実施の形態では、上述した処理動作は、複数の居室2(居室2a~2d)のすべてにおいて実行される。そして、コントローラ50は、複数の居室2のうちの一ヵ所(例えば、居室2a)でも、第一設定絶対湿度Xt1が第二設定絶対湿度Xt2より大きいと判定した場合には、残りの居室2b~2dにおいても、居室2b~2dでの判定結果に関係なく、居室2aと連動した加湿制御(第二加湿制御)が実行される。
【0110】
以上、本実施の形態1に係る空調システム20によれば、以下の効果を享受することができる。
【0111】
(1)空調システム20は、外部から空気を導入可能に構成された空調室18と、空調室18に設置され、空調室18の空気を温調するエアーコンディショナ13と、空調室18に設置され、エアーコンディショナ13によって温調された空気を加湿する加湿装置16と、空調室18の空気を空調室18とは独立した複数の居室2にそれぞれ搬送する複数の搬送ファン3と、加湿装置16及び搬送ファン3を制御するコントローラ50と、を備える。コントローラ50は、居室2に設定された第一設定絶対湿度Xt1と第二設定絶対湿度Xt2とを用いて、第一設定絶対湿度Xt1が第二設定絶対湿度Xt2以下である場合に、加湿装置16に対して第一設定絶対湿度Xt1に基づいた第一加湿制御を実行させ、第一設定絶対湿度Xt1が第二設定絶対湿度Xt2より大きい場合に、加湿装置16に対して第二設定絶対湿度に基づいた第二加湿制御を実行させるようにした。
【0112】
このようにすることで、コントローラ50の居室設定湿度Xtが、居室2に設定された第一設定絶対湿度Xt1と、居室2を構成する外壁9の壁面温度に基づいて特定される第二設定絶対湿度Xt2のうち、低い方の湿度に設定される。このため、通常時には居室2に設定された第一居室設定湿度Xt1になるように制御しつつ、壁面温度が低い場合には壁面温度に基づいて特定される第二居室設定湿度Xt2を導入することで、空調システムでは、結露の発生を抑制しつつ加湿を行うことができる。
【0113】
(2)空調システム20では、コントローラ50は、壁面温度を居室2に設定された第一居室設定温度Xt1、居室2の外部温度T0、及び外壁9の断熱性能情報に基づいて設定するようにした。このようにすることで、壁面温度は、外部温度T0が低いあるいは外壁9の断熱性能が低いほど低く設定される。すなわち、外部温度T0が低い場合あるいは外壁9の断熱性能が低い場合ほど居室設定湿度Xt(第二居室設定湿度Xt2)が低く設定される。このため、居室2の外壁9の温度変化に合わせて居室設定湿度Xtを変更させることができ、壁面温度が低い場合に結露を抑制させる効果をさらに高めることができる。
【0114】
(3)空調システム20では、コントローラ50は、第二設定絶対湿度Xt2を、壁面温度が露点となる絶対湿度に設定するようにした。このようにすることで、第二設定絶対湿度Xt2は、居室2の外壁9において結露を発生させる絶対湿度を超えて設定されることがなくなる。このため、加湿装置16によって居室2の外壁9において結露を発生させる絶対湿度を超えて加湿されることがなくなるので、居室2の外壁9における結露を抑制する効果をさらに高めることができる。
【0115】
(4)空調システム20では、コントローラ50は、壁面温度として、外壁9に設けられた窓部の、居室2側の表面温度を用いるようにしてもよい。このようにすることで、一般的に断熱性能が低く、外壁9において最も結露を発生させやすい窓部において、加湿装置16によって結露を発生させる絶対湿度を超えて加湿されることがなくなる。このため、結露を抑制する効果をさらに高めることができる。
【0116】
(5)空調システム20では、コントローラ50は、複数の居室2のうち、少なくとも1つの居室2に対して加湿装置16による第二加湿制御を実行させると判定した場合には、残りの居室2に対しても加湿装置16による第二加湿制御を実行させるようにしてもよい。このようにすることで、最も結露を発生させやすい居室2にて結露を発生させない、すなわちすべての居室2において結露を発生させないように制御されるため、結露を抑制する効果をさらに高めることができる。
【0117】
(実施の形態2)
図7及び図8を参照して、本発明の実施の形態2に係る空調システム20aについて説明する。
図7は、本発明の実施の形態2に係る空調システム20aの接続概略図である。図8は、加湿制御における居室設定湿度Xtを特定する処理動作を示すフローチャート図である。
【0118】
実施の形態2に係る空調システム20aは、居室2ごとに設けられた外部温度センサ15a~15dに替えて、熱交換気扇4に外部から導入される空気の温度を取得する外部温度センサ15eが設置されている点で実施の形態1と異なる。この点以外の空調システム20aの構成は、実施の形態1に係る空調システム20と同様である。以下、実施の形態1で説明済みの内容は再度の説明を適宜省略し、実施の形態1と異なる点を主に説明する。
【0119】
図7に示すように、空調システム20aは、外部から熱交換気扇4に空気を導入するダクトに設置された外部温度センサ15eを備えている。外部温度センサ15eは、外部から熱交換気扇4に導入される空気の温度を取得して、外部温度Toeとしてコントローラ50に送信するセンサである。そして、空調システム20aのコントローラ50は、加湿処理動作として、外部温度センサ15eから送信される外部温度Toeを含む各情報を用いて、図5のステップS21における居室設定湿度Xtを特定する。
【0120】
具体的に、図8を参照して、本実施の形態における居室設定湿度Xtを特定する処理動作について説明する。
【0121】
居室設定湿度Xtを特定する処理動作では、図8に示すように、まずコントローラ50は、外部温度センサ15eから送信される外部温度Toeと、第一設定絶対湿度Xt1と、居室設定温度Tsetとを取得する(ステップS41)。
【0122】
そして、コントローラ50は、取得した外部温度Toe及び居室設定温度Tsetを参照し、居室2aを構成する外壁9aの壁面温度Tweを特定する(ステップS42)。つまり、本実施の形態では、一般住宅1に導入される外部の空気の温度を、居室2aの外側近傍の空気の温度と見なして壁面温度Tweを特定する。ここで、壁面温度Tweは、例えば、式(3)に示す計算式で求めることができる。
【0123】
Twe=Tset-U×(Tset-Toe)・・・式(3)
続いて、コントローラ50は、特定された外壁9の壁面温度Tweに基づいて第二設定絶対湿度Xt2eを特定する(ステップS43)。より詳細には、第二設定絶対湿度Xt2eは、居室設定温度Tsetと保護制御相対湿度rheとを用いて、空気線図の考えに従って温度と相対湿度の関係から求められ、設定される。
【0124】
ここで、保護制御相対湿度rhは、例えば、式(4)で示す計算式で求めることができる。
【0125】
rhe=(1-C’)×(Tw-A’-B’×Tset)・・・式(4)
次に、コントローラ50は、コントローラ50は、第一設定絶対湿度Xt1が第二設定絶対湿度Xt2eより大きいか否かの判定を行う。(ステップS44)。そして、判定の結果、第一設定絶対湿度Xt1が第二設定絶対湿度Xt2eより大きくない、すなわち第一設定絶対湿度Xt1が第二設定絶対湿度Xt2e以下である場合(ステップS44のNO)には、コントローラ50は、第一設定絶対湿度Xt1を居室設定湿度Xtとして設定する。そして、コントローラ50は、居室設定湿度Xtを特定する処理動作を終了し、図5のステップS21に戻って、第一加湿制御として、第一設定絶対湿度Xt1に設定された居室設定湿度Xtに基づいて、ステップS22以降の加湿処理動作を実行する。
【0126】
一方、ステップS44での判定の結果、第一設定絶対湿度Xt1が第二設定絶対湿度Xt2eより大きい場合(ステップS44のYES)には、コントローラ50は、第二設定絶対湿度Xt2eを居室設定湿度Xtとして設定する。そして、コントローラ50は、居室設定湿度Xtを特定する処理動作を終了し、図5のステップS21に戻って、第二加湿制御として、第二設定絶対湿度Xt2に設定された居室設定湿度Xtに基づいて、ステップS22以降の加湿処理動作を実行する。
【0127】
本実施の形態では、上述した処理動作は、複数の居室2(居室2a~2d)のすべてにおいて実行される。そして、コントローラ50は、複数の居室2のうちの一ヵ所(例えば、居室2a)でも、第一設定絶対湿度Xt1が第二設定絶対湿度Xt2eより大きいと判定した場合には、残りの居室2b~2dにおいても、居室2b~2dでの判定結果に関係なく、居室2aと連動した加湿制御(第二加湿制御)が実行される。
【0128】
以上、本実施の形態2に係る空調システム20aによれば、上記した効果(1)~(5)に加え、以下の効果を享受することができる。
【0129】
(6)空調システム20aは、居室2ごとに設けられた外部温度センサ15a~15dに替えて、外部から熱交換気扇4に空気を導入するダクトに設置された外部温度センサ15eを用いて、外部温度Toeを取得するようにした。このようにすることで、最も低い温度として検出されやすい外部温度Toeを用いて第二設定絶対湿度Xt2が特定されるので、第二加湿制御において、各居室2の外壁9において結露を発生させる絶対湿度を超えて設定されることがさらに抑制される。
【0130】
(7)空調システム20aでは、一つの外部温度センサ15eを用いて外部温度Toeを取得するようにした。これにより、居室2の数に応じた複数の外部温度センサ15を設ける必要がなくなるので、空調システム20aの低コスト化を図ることができる。
【0131】
以上、本開示を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、各構成要素あるいは各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0132】
実施の形態に係る空調システム20、20aでは、居室設定湿度Xtを特定する処理動作を、複数の居室2(居室2a~2d)のすべてにおいて実行するようにしたが、これに限られない。例えば、予め結露の発生しやすい居室2を特定して指定できる場合には、指定する居室2のみに対して処理動作を実行するようにしてもよい。これにより、空調システム20、20aにおける処理負荷を軽減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明に係る空調システムは、被空調空間内での結露の発生を抑制しつつ、被空調空間の加湿を行うことができるものとして有用である。
【符号の説明】
【0134】
1 一般住宅
2、2a、2b、2c、2d 居室
3、3a、3b 搬送ファン
4 熱交換気扇
5、5a、5b、5c、5d 居室用ダンパ
6、6a、6b、6c、6d 循環口
7、7a、7b、7c、7d 居室排気口
8、8a、8b、8c、8d 居室給気口
9、9a、9b、9c、9d 外壁
11、11a、11b、11c、11d 居室温度センサ
12、12a、12b、12c、12d 居室湿度センサ
13 エアーコンディショナ
14 吸込温度センサ
15、15a、15b、15c、15d、15e 外部温度センサ
16 加湿装置
17 集塵フィルタ
18 空調室
20 空調システム
20a 空調システム
31 吸込口
32 吹出口
33 液体微細化室
34 回転モータ
35 回転軸
36 遠心ファン
37 揚水管
38 回転板
39 開口
40 貯水部
41 第一エリミネータ
42 第二エリミネータ
50 コントローラ
50a 操作パネル
50b 入力部
50c 処理部
50d 記憶部
50e 計時部
50f ダンパ開度特定部
50g 風量特定部
50h 設定温度特定部
50i 出力部
50j 表示パネル
50k 回転数特定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8