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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190199
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】逆止弁および複合弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 15/06 20060101AFI20221219BHJP
   F16K 15/18 20060101ALI20221219BHJP
   F16K 15/14 20060101ALI20221219BHJP
   F25B 41/35 20210101ALI20221219BHJP
   F25B 41/325 20210101ALI20221219BHJP
【FI】
F16K15/06
F16K15/18 F
F16K15/14
F25B41/35
F25B41/325
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098393
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000133652
【氏名又は名称】株式会社テージーケー
(74)【代理人】
【識別番号】110002273
【氏名又は名称】弁理士法人インターブレイン
(72)【発明者】
【氏名】栗谷川 勉
【テーマコード(参考)】
3H058
【Fターム(参考)】
3H058AA02
3H058AA13
3H058BB14
3H058CA04
3H058CA23
3H058CB12
3H058CB14
3H058CC01
3H058CC11
3H058CD05
3H058EE01
3H058EE17
(57)【要約】
【課題】 流体の圧力損失を低減可能な逆止弁を提供する。
【解決手段】 逆止弁300は、ボディ200における下流側通路222の内周面に凹状嵌合部232が設けられる。軸受部312は、弁体310を軸線方向に摺動可能に支持するガイド部332と、ガイド部332に連設され、弁室224にて弁体310を下流側から係止可能な係止部334と、係止部334又はガイド部332から下流側通路222に向けて片持ち状に延び、軸受部312の軸線に対して近接又は離間する方向に弾性変形可能な複数の脚部336と、を含む。複数の脚部336の先端部が互いに離隔し、その複数の先端部の外接円の直径が下流側通路222の内径よりも大きい。複数の脚部336の先端部が凹状嵌合部232に嵌合することにより軸受部312がボディ200に固定される。複数の脚部336の先端部の間に、下流側通路222において軸線方向に開放された流路が形成される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側から流体を導入する上流側通路と、下流側へ流体を導出する下流側通路と、前記上流側通路と前記下流側通路とを連通させる弁室とが連設されたボディと、
前記弁室の上流端において前記ボディに一体に設けられた弁座と、
前記弁室にて前記弁座に下流側から着脱して弁部を開閉する弁体と、
前記ボディの内方に設けられ、前記弁体を摺動可能に支持する軸受部と、
を備え、
前記ボディにおける前記下流側通路の内周面に凹状嵌合部が設けられ、
前記軸受部は、
前記弁体を軸線方向に摺動可能に支持するガイド部と、
前記ガイド部に連設され、前記弁室にて前記弁体を下流側から係止可能な係止部と、
前記係止部又は前記ガイド部から前記下流側通路に向けて片持ち状に延び、前記軸受部の軸線に対して近接又は離間する方向に弾性変形可能な複数の脚部と、
を含み、
前記複数の脚部の先端部が互いに離隔し、その複数の先端部の外接円の直径が前記下流側通路の内径よりも大きく、
前記複数の脚部の先端部が前記凹状嵌合部に嵌合することにより前記軸受部が前記ボディに固定され、
前記複数の脚部の先端部の間に、前記下流側通路において軸線方向に開放された流路が形成されることを特徴とする逆止弁。
【請求項2】
前記軸受部が、樹脂材の射出成形部品であることを特徴とする請求項1に記載の逆止弁。
【請求項3】
前記凹状嵌合部が、前記下流側通路の内周面に形成された環状溝であることを特徴とする請求項1又は2に記載の逆止弁。
【請求項4】
前記係止部が環状をなし、
前記複数の脚部が、前記係止部の周縁部に沿って所定の間隔で配設されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の逆止弁。
【請求項5】
前記弁室は、前記上流側通路より大きな断面積を有することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の逆止弁。
【請求項6】
冷凍サイクルにおいて使用され、
凝縮器から蒸発器へ流れる冷媒を通過させる第1通路と、前記蒸発器から圧縮機へ流れる冷媒を通過させる第2通路とが形成された共用のボディと、
前記第1通路に弁部が設けられた電動弁と、
前記第2通路に弁部が設けられた逆止弁と、
を備える複合弁であって、
前記逆止弁は、
前記蒸発器から冷媒を導入する上流側通路と、前記圧縮機へ冷媒を導出する下流側通路と、前記上流側通路と前記下流側通路とを連通させる弁室とが連設された前記ボディと、
前記弁室の上流端において前記ボディに一体に設けられた弁座と、
前記弁室にて前記弁座に下流側から着脱して前記第2通路に設けられた弁部を開閉する弁体と、
前記ボディの内方に設けられ、前記弁体を摺動可能に支持する軸受部と、
を備え、
前記ボディにおける前記下流側通路の内周面に凹状嵌合部が設けられ、
前記軸受部は、
前記弁体を軸線方向に摺動可能に支持するガイド部と、
前記ガイド部に連設され、前記弁室にて前記弁体を下流側から係止可能な係止部と、
前記係止部又は前記ガイド部から前記下流側通路に向けて片持ち状に延び、前記軸受部の軸線に対して近接又は離間する方向に弾性変形可能な複数の脚部と、
を含み、
前記複数の脚部の先端部が互いに離隔し、その複数の先端部の外接円の直径が前記下流側通路の内径よりも大きく、
前記複数の脚部の先端部が前記凹状嵌合部に嵌合することにより前記軸受部が前記ボディに固定され、
前記複数の脚部の先端部の間に、前記下流側通路において軸線方向に開放された流路が形成されることを特徴とする複合弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆止弁の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用空調装置は、一般に、圧縮機、凝縮器、膨張装置、蒸発器等を冷凍サイクルに配置して構成される。このような冷凍サイクルにおいて、冷媒の逆流を防止するために逆止弁が設けられることがある。
【0003】
冷凍サイクルに逆止弁を設ける場合、その組み付けの作業性の観点から配管の接続部に配置するのが一般的であったが(特許文献1参照)、その接続箇所において冷媒の漏れが発生する等の懸念があった。そこで、他の制御弁と共用のボディに組み込む形で逆止弁を提供する複合弁が提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
この複合弁では、ボディの流路に弁室が形成され、逆止弁の弁ユニットが配置される。弁ユニットは、環状の軸受部を有する。軸受部は、ボディに内接するボディ当接部と、弁体を軸線に沿って摺動可能に支持するガイド部と、ボディ当接部とガイド部とを架橋する支持部とを含む。このような構成において、支持部が、弁室において半径方向に開口する開口部を有する。このため、冷媒をその開口部を介して流すこともできる。すなわち、上流側から導入された冷媒を、弁室にて一旦向心方向に誘導した後、下流側に向けて軸線方向に導出するといった流れを形成する。支持部の開口部を十分に大きくして流路面積を確保することで、冷媒の圧力損失を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-087965号公報
【特許文献2】特開2020-112215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に例示された弁構造では、下流側のボディ当接部が環状の遮蔽壁となって一部の流れを阻害する。さらに、ボディ当接部を下流側から係止する環状の係止部材が必要になり、その係止部材も圧力損失の要因となる。このため、圧力損失低減の観点でいまだ改善の余地がある。なお、このような圧力損失の問題は、空調装置に限らず逆止弁を使用する他の装置にも生じうる。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、流体の圧力損失を低減可能な逆止弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様は逆止弁である。この逆止弁は、上流側から流体を導入する上流側通路と、下流側へ流体を導出する下流側通路と、上流側通路と下流側通路とを連通させる弁室とが連設されたボディと、弁室の上流端においてボディに一体に設けられた弁座と、弁室にて弁座に下流側から着脱して弁部を開閉する弁体と、ボディの内方に設けられ、弁体を摺動可能に支持する軸受部と、を備える。
【0009】
ボディにおける下流側通路の内周面に凹状嵌合部が設けられる。軸受部は、弁体を軸線方向に摺動可能に支持するガイド部と、ガイド部に連設され、弁室にて弁体を下流側から係止可能な係止部と、係止部から下流側通路に向けて片持ち状に延び、軸受部の軸線に対して近接又は離間する方向に弾性変形可能な複数の脚部と、を含む。複数の脚部の先端部が互いに離隔し、その複数の先端部の外接円の直径が下流側通路の内径よりも大きい。複数の脚部の先端部が凹状嵌合部に嵌合することにより軸受部がボディに固定される。複数の脚部の先端部の間に、下流側通路において軸線方向に開放された流路が形成される。
【0010】
この態様によれば、軸受部が複数の脚部の先端部においてボディに固定されるところ、それらの先端部が互いに離隔することで、脚部間に軸線方向に開放された流路が形成される。すなわち、軸受部がボディとの接続部において環状につながる遮蔽壁を形成しない。また、弁体および軸受部をボディに組み付ける際には、複数の脚部を撓ませながら下流側通路に容易に挿入でき、それらの脚部を凹状嵌合部に嵌合させることができる。このため、軸受部を下流側から係止する部材も不要となる。その結果、流体の圧力損失を効果的に低減できる。
【0011】
本発明の別の態様は、冷凍サイクルにおいて使用される複合弁である。この複合弁は、凝縮器から蒸発器へ流れる冷媒を通過させる第1通路と、蒸発器から圧縮機へ流れる冷媒を通過させる第2通路とが形成された共用のボディと、第1通路に弁部が設けられた電動弁と、第2通路に弁部が設けられた逆止弁と、を備える。逆止弁は、蒸発器から冷媒を導入する上流側通路と、圧縮機へ冷媒を導出する下流側通路と、上流側通路と下流側通路とを連通させる弁室とが連設されたボディと、弁室の上流端においてボディに一体に設けられた弁座と、弁室にて弁座に下流側から着脱して弁部を開閉する弁体と、ボディの内方に設けられ、弁体を摺動可能に支持する軸受部と、を備える。
【0012】
ボディにおける下流側通路の内周面に凹状嵌合部が設けられる。軸受部は、弁体を軸線方向に摺動可能に支持するガイド部と、ガイド部に連設され、弁室にて弁体を下流側から係止可能な係止部と、係止部から下流側通路に向けて片持ち状に延び、軸受部の軸線に対して近接又は離間する方向に弾性変形可能な複数の脚部と、を含む。複数の脚部の先端部が互いに離隔し、その複数の先端部の外接円の直径が下流側通路の内径よりも大きい。複数の脚部の先端部が凹状嵌合部に嵌合することにより軸受部がボディに固定される。複数の脚部の先端部の間に、下流側通路において軸線方向に開放された流路が形成される。
【0013】
この態様によれば、複合弁を構成する逆止弁について、軸受部が複数の脚部の先端部においてボディに固定されるところ、それらの先端部が互いに離隔することで、脚部間に軸線方向に開放された流路が形成される。すなわち、軸受部がボディとの接続部において環状につながる遮蔽壁を形成しない。また、弁体および軸受部をボディに組み付ける際には、複数の脚部を撓ませながら下流側通路に容易に挿入でき、それらの脚部を凹状嵌合部に嵌合させることができる。このため、軸受部を下流側から係止する部材も不要となる。その結果、冷媒の圧力損失を効果的に低減できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、流体の圧力損失を低減可能な逆止弁を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に係る複合弁の構成を表す断面図である。
図2】電動弁の構造を表す断面図である。
図3】逆止弁およびその周辺の構造を表す断面図である。
図4】弁ユニットの構成を表す分解斜視図である。
図5】軸受部の構成を表す図である。
図6】逆止弁の開弁状態を表す図である。
図7】変形例に係る弁ユニットの構成を表す図である。
図8】変形例に係る弁ユニットの構成を表す図である。
図9】変形例に係る弁ユニットの構成を表す図である。
図10】変形例に係る弁ユニットの構成を表す図である。
図11】変形例に係る弁ユニットの構成を表す図である。
図12】変形例に係る弁ユニットの構成を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を表現することがある。また、以下の実施形態およびその変形例について、ほぼ同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0017】
本実施形態の複合弁は、自動車用空調装置の冷凍サイクルに適用される。冷凍サイクルには、循環する冷媒を圧縮する圧縮機、圧縮された冷媒を凝縮する凝縮器、分離された液冷媒を絞り膨張させて霧状にして送出する膨張弁、その霧状の冷媒を蒸発させてその蒸発潜熱により車室内の空気を冷却する蒸発器、蒸発器から圧縮機へ戻る冷媒の逆流を防止する逆止弁等が設けられる。複合弁は、その膨張弁と逆止弁の機能を兼ね備える。
【0018】
[複合弁]
図1は、実施形態に係る複合弁の構成を表す断面図である。
複合弁1は、共用のボディ200に電動弁100と逆止弁300を一体に組み付けて構成される。電動弁100は、冷凍サイクルを構成する膨張弁として機能する。逆止弁300は、冷凍サイクルにおける逆止弁として機能する。ボディ200は、例えばアルミニウム合金などの金属からなり、概略角柱形状をなし、蒸発器のハウジングに組み付けられるか又は一体化される。
【0019】
ボディ200の側部には、導入ポート202、導出ポート204、導入ポート206および導出ポート208が設けられている。導入ポート202には凝縮器側から延びる配管が接続され、導出ポート204には蒸発器の入口につながる配管が接続される。導入ポート206には蒸発器の出口につながる配管が接続され、導出ポート208には圧縮機側へ延びる配管が接続される。導入ポート202と導出ポート204とをつなぐ第1通路210と、導入ポート206と導出ポート208とをつなぐ第2通路212が形成されている。第1通路210と第2通路212とは、隔壁214により上下に離隔されている。
【0020】
ボディ200の上部には、取付孔216が上方に向けて開口している。取付孔216は、電動弁100のボディ5(後述)と相補形状の段付円孔状をなし、第1通路210と連通している。取付孔216における第1通路210のやや上方には、ボディ5の雄ねじ10と螺合可能な雌ねじ218が形成されている。
【0021】
電動弁100をボディ200に組み付ける際には、シールリング14,20を取り付けたボディ5を取付孔216に挿入し、雄ねじ10を雌ねじ218に螺入して締結させる。シールリング14が外部への冷媒漏れを防止し、シールリング20が弁部の上流側通路と下流側通路との間をシールする。
【0022】
逆止弁300は、第2通路212の中央に設けられる。逆止弁300は、蒸発器から圧縮機へ向かう冷媒の逆流を防止する。逆止弁300およびその周辺の構成についは、後に詳述する。
【0023】
[電動弁]
図2は、電動弁100の構造を表す断面図である。
電動弁100は、弁本体2とモータユニット3とを組み付けて構成される。弁本体2は、弁部を収容したボディ5を有する。ボディ5は、第1ボディ6と第2ボディ8とを同軸状に組み付けて構成される。第1ボディ6の下部外周面に雄ねじ10が形成されている。第1ボディ6における雄ねじ10のやや上方の外周面にシールリング14(Oリング)が嵌着されている。
【0024】
第1ボディ6の下部に第2ボディ8の上部が圧入されている。第2ボディ8の下部外周面にシールリング20が嵌着されている。第2ボディ8の底部を軸線方向に貫通するように弁孔22が設けられ、その弁孔22の上端開口部に弁座24が形成されている。第2ボディ8の側部に入口ポート26が設けられ、下部に出口ポート28が設けられている。第1ボディ6および第2ボディ8の内方に弁室30が形成されている。入口ポート26と出口ポート28とは、弁室30を介して連通している。
【0025】
ボディ5の内方には、モータユニット3のロータ60から延びる作動ロッド32が挿通されている。作動ロッド32は、弁室30を貫通する。作動ロッド32の下部に弁体34が一体に設けられている。弁体34が弁室30側から弁座24に着脱することにより弁部を開閉する。
【0026】
第1ボディ6の上部中央には、ガイド部材36が立設されている。ガイド部材36の軸線方向中央部の外周面に雄ねじ38が形成されている。ガイド部材36の下端部が第1ボディ6の上部中央に圧入され、同軸状に固定されている。ガイド部材36は、その内周面により作動ロッド32を軸線方向に摺動可能に支持する一方、その外周面によりロータ60の回転軸62を回転摺動可能に支持する。作動ロッド32とガイド部材36との間に、弁体34を閉弁方向に付勢するスプリング46が介装されている。
【0027】
一方、モータユニット3は、ロータ60とステータ64とを含む三相ステッピングモータとして構成されている。モータユニット3は、有底円筒状のキャン66を有し、そのキャン66の内方にロータ60を配置し、外方にステータ64を配置して構成されている。キャン66は、弁体34およびその駆動機構が配置される空間を覆うとともにロータ60を内包する有底円筒状の部材であり、冷媒の圧力が作用する内方の圧力空間(内部空間)と作用しない外方の非圧力空間(外部空間)とを画定する。キャン66は、非磁性金属からなり、その下部が第1ボディ6の上端部に外挿されるようにして同軸状に組み付けられている。ボディ5とキャン66とに囲まれた空間が、上記圧力空間を形成している。
【0028】
ステータ64は、積層コア70の内周部に複数の突極を等間隔に配置して構成される。積層コア70は、環状のコアが軸線方向に積層されて構成される。各突極には、コイル73(電磁コイル)が装着されたボビン74が組み付けられている。ステータ64は、モータユニット3のケース76と一体に設けられている。第1ボディ6の上部外周面にシールリング82(Oリング)が嵌着されている。第1ボディ6の上部外周面とケース76の下部内周面とに間にシールリング82が介装されることにより、キャン66とステータ64との間隙への外部雰囲気(水など)の侵入が防止されている。
【0029】
ロータ60は、回転軸62に組み付けられた円筒状のロータコア102と、ロータコア102の外周面に設けられたロータマグネット104と、ロータコア102の上端面に設けられたセンサマグネット106を備える。ロータコア102は、回転軸62に組み付けられている。ロータマグネット104は、その周方向に複数極に磁化(着磁)されている。センサマグネット106も複数極に磁化(着磁)されている。
【0030】
回転軸62は、有底円筒状の円筒軸であり、ガイド部材36に外挿されている。回転軸62の下部内周面に雌ねじ108が形成され、ガイド部材36の雄ねじ38と噛合している。これらのねじ部によるねじ送り機構109によって、ロータ60の回転運動が作動ロッド32の軸線運動に変換される。それにより弁体34が軸線方向、つまり弁部の開閉方向に移動(昇降)する。
【0031】
作動ロッド32の上部が縮径され、回転軸62の底部112を貫通している。作動ロッド32の上端部には環状のストッパ114が固定されている。一方、作動ロッド32と底部112との間には、作動ロッド32を下方(つまり閉弁方向)に付勢するスプリング116が介装されている。このような構成により、開弁時には、ストッパ114が底部112に係止される態様で作動ロッド32がロータ60と一体変位する。一方、閉弁時には、弁体34が弁座24から受ける反力によりスプリング116が押し縮められる。このときのスプリング116の弾性反力により弁体34を弁座24に押し付けることができ、弁体34の着座性能(弁閉性能)を高められる。
【0032】
モータユニット3は、キャン66の外側に回路基板118を有する。回路基板118は、ケース76の内方に固定されている。回路基板118には、モータを駆動するための駆動回路、駆動回路に制御信号を出力する制御回路、制御回路が外部装置と通信するための通信回路、各回路およびモータに電力を供給するための電源回路等が実装されている。ケース76の上端は、蓋体77により閉止されている。
【0033】
回路基板118におけるセンサマグネット106との対向面には、磁気センサ119が設けられている。磁気センサ119は、キャン66の底部端壁を介してセンサマグネット106と軸線方向に対向する。ロータ60の回転に伴ってセンサマグネット106による磁束が変化する。磁気センサ119は、この磁束の変化を捉えることでロータ60の変位量(ロータ60の回転角度)を検出する。そのロータ60の変位量に基づいて弁体34の軸線方向位置ひいては弁開度を算出できる。
【0034】
電動弁100が駆動されると、ロータ60は、ガイド部材36との間のねじ送り機構109により上下方向に動作する。つまり、弁体34が弁部の開閉方向に並進し、弁部の開度が設定開度に調整される。このねじ送り機構109は、ロータ60の軸線周りの回転運動を作動ロッド32の軸線運動(直進運動)に変換し、弁体34を弁部の開閉方向に駆動する。電動弁100がボディ200に取り付けられて膨張弁として機能するとき、弁部は小開度に制御される。
【0035】
[逆止弁300]
図3は、逆止弁300およびその周辺の構造を表す断面図である。図4は、弁ユニットの構成を表す分解斜視図である。図5は、軸受部の構成を表す図である。図5(A)は正面図、図5(B)は背面図、図5(C)は左側面図、図5(D)は図5(A)のA-A矢視断面図である。
【0036】
図3に示すように、第2通路212の上流側から順に上流側通路220、弁室224、下流側通路222が連設されている。上流側通路220は、導入ポート206と連通する。弁室224は、上流側通路220と下流側通路222を連通させる。下流側通路222は導出ポート208と連通する。弁室224は、ボディ200に中ぐり加工を施すことにより得られる。弁室224の内径は、上流側通路220および下流側通路222のいずれの内径よりも大きい。すなわち、弁室224の断面積は、上流側通路220および下流側通路222のいずれの断面積よりも大きい。
【0037】
上流側通路220の下流端は縮径しており、その縮径部により弁孔228が形成されている。その縮径部の下流側端面(弁室224の上流側端面)に弁座230が形成されている。一方、下流側通路222の上流端近傍に凹状嵌合部232が形成されている。凹状嵌合部232は、下流側通路222の内周面に沿って形成された環状溝である。
【0038】
逆止弁300は、弁体310、軸受部312およびスプリング313を含む。弁体310と軸受部312との間にスプリング313が介装されている。スプリング313は、弁体310を逆止弁300の閉弁方向に付勢する「付勢部材」として機能する。
【0039】
図4にも示すように、弁体310、軸受部312およびスプリング313の組立体を「弁ユニット330」ともいう。弁体310は、段付円柱状の本体314と、本体314の先端に嵌着される段付円板状の弁部材316とを有する。本体314は樹脂材からなり、軸受部312に挿通される軸部318と、軸部318の先端側に設けられた弁支持部320とを有する。
【0040】
弁支持部320は、弁部材316と嵌合する凹状嵌合部322と、弁部材316を下流側から支持する円板状の支持部324を有する。弁部材316は、可撓性を有するゴム(弾性体)からなる。弁部材316は、その中央に円形の嵌合孔326を有する。弁部材316は、嵌合孔326が凹状嵌合部322に外嵌される態様で本体314に組み付けられる。弁部材316を本体314に組み付けることで弁体310が得られ、さらに軸部318をスプリング313に挿通しつつ軸受部312に組み付けることで弁ユニット330が得られる。
【0041】
図5に示すように、軸受部312は、樹脂材の射出成形部品であり、ガイド部332、係止部334および複数の脚部336を一体に有する(図5(A),(B))。ガイド部332は、複数のガイド部材340を含む。ガイド部材340は角柱状をなし、軸受部312の軸線Lの周りに複数配設される(図5(B)~(D))。本実施形態では、4つのガイド部材340が軸線Lを中心に90度おきに等間隔で配設されている。各ガイド部材340は、軸線Lに対して平行に延在し、それぞれが連結部342を介して係止部334に連設されている。4つのガイド部材340は、その内接円の径が弁体310の軸部318の外径とほぼ等しく、軸部318の外周面に当接して弁体310を支持する。
【0042】
係止部334は、ガイド部332の上流側に位置し、逆止弁300の開弁時に弁体310を下流側から係止する(図3参照)。係止部334は円板状(環状)をなし、その中央に挿通孔344を有する。挿通孔344は、弁体310の軸部318を同軸状に挿通する。連結部342は、その一端がガイド部材340の長手方向中央部に接続され、他端が係止部334の内周縁部に接続されている。
【0043】
係止部334の外周縁部から下流側に向けて複数の脚部336が延出している(図5(B),(D))。本実施形態では、4つの脚部336が軸線Lを中心に90度おきに等間隔で配設されている。脚部336は、係止部334から下流側に向けて片持ち状に(つまり片持ち梁のように)延び、軸線Lに対して近接又は離間する方向に弾性変形可能である。脚部336の先端部には、ガイド部332の半径方向外向きに突出する嵌合部346が設けられている。4つの嵌合部346の外接円の直径は、下流側通路222の内径よりもやや大きい。
【0044】
図3に戻り、弁ユニット330をボディ200に組み付ける際には、導出ポート208の側から第2通路212へ挿入する。このとき、下流側通路222において4つの脚部336が撓んだ状態で挿入されていく。そして、嵌合部346が凹状嵌合部232に嵌合することで脚部336が弾性復帰し、軸受部312がボディ200の内周面にしっかりと固定される。すなわち、複数の脚部336は、いわゆるスナップフィットとして機能する。なお、金属製のボディ200に樹脂製の軸受部312を挿入するため、下流側通路222の内周面が脚部336によって傷つけられることを防止又は抑制できる。
【0045】
弁体310は、弁室224に同軸状に配置される。軸受部312が下流側通路222に組みつけられ、弁体310を軸線方向に摺動可能に支持する。弁体310が下流側から弁座230に着脱することで、逆止弁300の弁部が開閉される。逆止弁300の開弁時には、弁室224において係止部334が弁体310を下流側から係止する。
【0046】
次に、逆止弁300の開弁時における冷媒の流路について説明する。
図6は、逆止弁300の開弁状態を表す図である。図6(A)は断面図であり、図6(B)は図6(A)のB方向矢視図である。図中の太線矢印は、冷媒の流れを示す。
【0047】
上流側通路220の圧力と下流側通路222の圧力との差圧が予め設定した開弁差圧を上回るとき、逆止弁300は開弁状態となる(図6(A))。この開弁差圧は、スプリング313の荷重により設定される。このとき、上流側通路220から弁室224へ流入した冷媒は、4つの脚部336の間に形成される流路を流れ、下流側通路222へと導かれる。
【0048】
すなわち、本実施形態では上述のように、軸受部312が脚部336の先端部においてボディ200に固定される。複数の脚部336の先端部が下流側通路222の内周方向に互いに離隔するため、軸線方向に開放された流路Sが形成される(図6(B))。つまり、軸受部312がボディ200との接続部近傍において環状の遮蔽壁を形成しない。また、脚部336が凹状嵌合部232に嵌合し、軸受部312が安定に固定されるため、軸受部312を下流側から係止する部材も不要となる。このため、逆止弁300の開示弁時における冷媒の圧力損失を効果的に低減できる。
【0049】
以上に説明したように、本実施形態では、脚部336にスナップフィットの機能をもたせることで、逆止弁300の軸受部312をボディ200に簡易に組み付けることができる。その結果、複合弁1の製造工程が簡素化され作業性が向上する。そして特に、このような構成を採用したことで複数の脚部336間に十分な流路断面を確保でき、また軸受部312の下流側に流路を阻害するような部品を配置する必要もなくなる。その結果、逆止弁300において、流体の圧力損失低減効果を相乗的に高めることができる。
【0050】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0051】
[変形例]
図7図12は、変形例に係る弁ユニットの構成を表す図である。図7は変形例1、図8は変形例2を示す。図9は変形例3、図10は変形例4、図11は変形例5、図12は変形例6を示す。各図(A)は分解斜視図である。各図(B)は軸受部の正面図であり、各図(C)は軸受部の背面図である。
【0052】
変形例1の弁ユニット350では、軸受部352において脚部336が3つ設けられている。3つの脚部336が軸線Lを中心に120度おきに等間隔で配設されている(図7)。一方、変形例2の弁ユニット360では、軸受部362において脚部336が2つ設けられている。2つの脚部336が軸線Lを中心に180度の間隔をあけて配設されている(図8)。このように脚部の数を変更しても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。圧力損失低減効果を高めるには脚部の数が少ないほうがよいが、軸受部をボディに安定に固定する観点からは脚部の数は少なくとも3つ以上とするのが好ましい。
【0053】
変形例3の弁ユニット370では、軸受部372における係止部374の面積が、上記実施形態の係止部334と比較して小さい(図9)。係止部374は、係止部334よりも外径が小さい環状部376と、環状部376に連設された4つの延出部378を有する。延出部378は、環状部376の外周縁に連設され、軸線Lを中心として90度おきに等間隔で設けられている。4つの延出部378は、4つの脚部336と対応する位置に配設されている。各脚部336は、各延出部378の先端部に連設されている。このような構成を採用しても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。係止部374を小さくすることで、軸受部372の材料コストを低減できる。
【0054】
変形例4の弁ユニット410も、軸受部412における係止部414の面積が、上記実施形態の係止部334と比較して小さい(図10)。さらに、脚部436が、その先端部と係止部414と連結するためのテーパ部416を有する。軸受部412において、4つの脚部436が軸線Lを中心に90度おきに等間隔で配設されている。一方、変形例5の弁ユニット420では、脚部436が3つ設けられている。軸受部422において、3つの脚部436が軸線Lを中心に120度おきに等間隔で配設されている(図11)。変形例6の弁ユニット430では、脚部436が2つ設けられている。軸受部432において、2つの脚部436が軸線Lを中心に180度の間隔をあけて配設されている(図12)。
【0055】
このような構成を採用しても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。係止部414を小さくすることで、軸受部の材料コストを低減できる。ただし、変形例1および2に関して述べたように、脚部の数については、圧力損失低減効果と軸受部の支持安定性の観点から最適値を適宜設定することとなる。
【0056】
上記実施形態では、図6に示したように、凹状嵌合部232を環状に連続する環状溝とした。変形例においては、下流側通路222の内周面に沿って複数の凹状嵌合部を間欠的に設け、複数の脚部をそれぞれ嵌合させてもよい。その場合、複数の凹状嵌合部を環状に配置してもよいし、複数の凹状嵌合部のうち少なくとも一部の位置を軸線方向にずらしてもよい。その場合、弁ユニットにおける複数の脚部も同様に、少なくとも一部の位置が軸線方向にずらされることとなる。
【0057】
上記実施形態では、係止部334の周縁部に軸線Lを中心に複数の脚部336を等間隔で配設する構成を例示した。変形例においては、複数の脚部の間隔を少なくとも部分的に異ならせる態様で配置してもよい。脚部の位置は、ボディの凹状嵌合部との位置関係に基づいて適宜設定できる。
【0058】
上記実施形態では、電動膨張弁と逆止弁とを一体に有する複合弁を例示した。変形例においては、膨張機能を有しない制御弁(開閉弁や流量制御弁)と逆止弁とを一体に有する複合弁としてもよい。その場合、制御弁はモータ駆動のものでもよいし、ソレノイド駆動のものでもよい。配管内に組み付けられる逆止弁単体として構成してもよい。
【0059】
上記実施形態では、弁座がボディと一体に形成されていたが、ボディに弁座部材を設けることで、弁座をボディとは別の部材によって構成してもよい。この弁座部材に下流側から弁体を着脱する態様で逆止弁を構成してもよい。
【0060】
上記実施形態では、上流側通路の下流端に逆止弁の弁座が形成されていた。変形例においては、弁室と上流側通路との間に弁座部材を設けてもよい。この弁座部材に下流側から弁体を着脱する態様で逆止弁を構成してもよい。
【0061】
上記実施形態では、弁体と軸受部との間にスプリングが介装されていた。このスプリングは逆止弁を閉弁状態に保つために挿入されるものであるが、高圧流体を使用する場合にはスプリングを省略してもよい。この場合には、逆流時に流体が弁体を弁座に押し付けるため、スプリングを省略しても逆止弁として機能する。
【0062】
上記実施形態では、軸受部312の係止部334が円板状(環状につながる形状)をなす例を示した(図5参照)。変形例においては、係止部334が環状に閉じない構成としてもよい。例えば、係止部を上流側に向けて突出する複数の凸部にて構成してもよい。それらの凸部が環状に配置される構成としてもよい。
【0063】
上記実施形態では、軸受部312において係止部334の外周縁から複数の脚部336が下流側へ延出する構成を例示した。変形例においては、係止部の底部(下流側面)から複数の脚部が下流側へ延出する構成としてもよい。あるいは、複数の脚部がガイド部から下流側通路に向けて片持ち状に延びる構成としてもよい。
【0064】
上記実施形態では、上記構成の逆止弁を空調装置に適用する例を示した。変形例においては、給湯装置その他の装置に適用してもよい。逆止弁は、冷媒以外の湯水その他の流体の逆流を防止するものとしてもよい。
【0065】
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 複合弁、2 弁本体、3 モータユニット、5 ボディ、24 弁座、32 作動ロッド、34 弁体、36 ガイド部材、60 ロータ、62 回転軸、64 ステータ、66 キャン、100 電動弁、109 ねじ送り機構、119 磁気センサ、200 ボディ、202 導入ポート、204 導出ポート、206 導入ポート、208 導出ポート、210 第1通路、212 第2通路、220 上流側通路、222 下流側通路、224 弁室、228 弁孔、230 弁座、232 凹状嵌合部、300 逆止弁、310 弁体、312 軸受部、313 スプリング、314 本体、316 弁部材、318 軸部、320 弁支持部、330 弁ユニット、332 ガイド部、334 係止部、336 脚部、340 ガイド部材、342 連結部、344 挿通孔、346 嵌合部、352 軸受部、372 軸受部、374 係止部、376 環状部、378 延出部、412 軸受部、414 係止部、416 テーパ部、422 軸受部、432 軸受部、436 脚部、L 軸線、S 流路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12