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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190208
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】避雷接地装置及び避雷接地方法
(51)【国際特許分類】
   H02G 13/00 20060101AFI20221219BHJP
   F03D 80/30 20160101ALI20221219BHJP
   H02H 1/04 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
H02G13/00 040
F03D80/30
H02H1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098414
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】502040041
【氏名又は名称】日揮株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(72)【発明者】
【氏名】田代 富士男
(72)【発明者】
【氏名】勝岡 洋一
(72)【発明者】
【氏名】高野 年広
(72)【発明者】
【氏名】中村 光宏
(72)【発明者】
【氏名】沖井 優行
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178AA24
3H178AA43
3H178BB43
3H178CC23
3H178DD51X
(57)【要約】
【課題】洋上構造物に設けられた電気設備に対する雷撃を防止する共に、管理コストを低減することができる避雷接地装置を提供する。
【解決手段】洋上に設けられた洋上構造物の避雷のための避雷接地装置であって、前記洋上構造物に設けられた電気設備に接続され海中に接地する電気接地と、前記洋上構造物に接続され海中に接地すると共に、前記電気接地に並列して接続された避雷接地と、前記電気接地と前記電気設備との間を接続する8巻以上にループ単位が巻回されたループコイルを有するリアクトルと、を備え、前記リアクトルは、落雷時に前記避雷接地から前記電気接地に流入する雷電流に基づいて抵抗を発生し、前記電気接地から前記電気設備に流入する前記雷電流を減衰させ前記電気設備を保護し、前記避雷接地を介して前記雷電流を海中に放電させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洋上に設けられた洋上構造物の避雷のための避雷接地装置であって、
前記洋上構造物に設けられた電気設備に接続され海中に接地する電気接地と、
前記洋上構造物に接続され海中に接地すると共に、前記電気接地に並列して接続された避雷接地と、
前記電気接地と前記電気設備との間を接続する8巻以上にループ単位が巻回されたループコイルを有するリアクトルと、を備え、
前記リアクトルは、落雷時に前記避雷接地から前記電気接地に流入する雷電流に基づいて抵抗を発生し、前記電気接地から前記電気設備に流入する前記雷電流を減衰させ前記電気設備を保護し、前記避雷接地を介して前記雷電流を海中に放電させる、
避雷接地装置。
【請求項2】
前記リアクトルは、前記電気設備側において発生した異常電流を通過させ前記電気接地を介して海中に放電させる、
請求項1に記載の避雷接地装置。
【請求項3】
前記リアクトルは、隣接する前記ループ単位同士の位置を保持する固定部材を備える、
請求項1または2に記載の避雷接地装置。
【請求項4】
前記リアクトルは、直径が略100mmの前記ループコイルにより形成されている、
請求項1から3のうちいずれか1項に記載の避雷接地装置。
【請求項5】
前記リアクトルは、断面積が略60mmの銅線により形成されている、
請求項1から4のうちいずれか1項に記載の避雷接地装置。
【請求項6】
前記洋上構造物は、洋上に浮かんだ浮体構造物上に構築され、
前記避雷接地及び前記電気接地は、前記浮体構造物を介して海中に接地されている、
請求項1から5のうちいずれか1項に記載の避雷接地装置。
【請求項7】
前記洋上構造物は、海底にパイルを介して固定された着床構造物上に構築され、
前記避雷接地及び前記電気接地は、前記パイルを介して海中に接地されている、
請求項1から5のうちいずれか1項に記載の避雷接地装置。
【請求項8】
洋上に設けられた洋上構造物の避雷のための避雷接地方法であって、
前記洋上構造物に設けられた電気設備に電気接地を接続し海中に接地する工程と、
前記洋上構造物に避雷接地を接続し海中に接地すると共に、前記電気接地に並列して接続する工程と、
前記電気接地と前記電気設備との間に8巻以上にループ単位が巻回されたループコイルを有するリアクトルを接続する工程と、
前記洋上構造物に落雷した際に、前記リアクトルに前記避雷接地から前記電気接地に流入する雷電流に基づいて抵抗を発生させ、前記電気接地から前記電気設備に流入する前記雷電流を減衰させ前記電気設備を保護すると共に、前記避雷接地を介して前記雷電流を海中に放電する工程と、を備える、
避雷接地方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洋上構造物の落雷対策のための避雷接地装置及び避雷接地方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、洋上において風力発電する洋上風力発電装置が研究されている。洋上風力発電装置は、周囲に高い構造物や自然物が無いため落雷の影響を受け易い。そのため、洋上風力発電設備には、落雷が発生した際の避雷対策が求められている。
【0003】
風力発電機の設計基準では、接地抵抗が10[Ω]以下とされている。そして、この基準によれば、雷撃用の避雷接地と風力発電機の内部の発電装置及び通信機器等の電気設備類に用いられる電気接地とが区別されておらず共用されている場合が多い。風力発電機において避雷接地と電気接地を共用した場合、落雷時に発生する雷撃電流により電気設備類に過剰な電圧及び電流が誘導され、電気設備類が破壊される虞がある。
【0004】
出願人は、特許文献1において風力発電装置の避雷接地と電気接地とを個別に設ける技術について提案している。特許文献1に記載された風力発電装置の避雷接地装置によれば、風力発電装置に接続された避雷接地と、電気設備に接続された電気接地と、避雷接地と電気接地との間に接続されたループコイルとを備え、ループコイルは、落雷時に切断されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-137301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
洋上風力発電装置は、洋上に設置されているため、地上に設置された風力発電装置に比して頻繁に作業に赴くことができない。特許文献1に記載された技術を洋上風力発電装置に適用する場合には、落雷後に切断されたループコイルの交換等の管理が困難となる可能性がある。発明者らは、鋭意研究の下、洋上構造物に適用される避雷接地装置について開発を行ってきた。
【0007】
本発明は、洋上構造物に設けられた電気設備に対する雷撃を防止する共に、管理コストを低減することができる避雷接地装置及び避雷接地方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、洋上に設けられた洋上構造物の避雷のための避雷接地装置であって、前記洋上構造物に設けられた電気設備に接続され海中に接地する電気接地と、前記洋上構造物に接続され海中に接地すると共に、前記電気接地に並列して接続された避雷接地と、前記電気接地と前記電気設備との間を接続する8巻以上にループ単位が巻回されたループコイルを有するリアクトルと、を備え、前記リアクトルは、落雷時に前記避雷接地から前記電気接地に流入する雷電流に基づいて抵抗を発生し、前記電気接地から前記電気設備に流入する前記雷電流を減衰させ前記電気設備を保護し、前記避雷接地を介して前記雷電流を海中に放電させる避雷接地装置である。
【0009】
本発明によれば、避雷接地と電気接地を共用する洋上構造物において、電気接地と電気設備との間にリアクトルを設けることにより、落雷時に雷電流に基づく抵抗を発生させ電気設備側に雷電流が流入することを妨げることができる。本発明によれば、リアクトルを落雷後も再利用することができ、作業者が交換のために洋上構造物に赴く必要が無く、管理コストを低減することができる。
【0010】
また、本発明の前記リアクトルは、前記電気設備側において発生した異常電流を通過させ前記電気接地を介して海中に放電させてもよい。
【0011】
本発明によれば、通常時に電気設備において発生した異常電流に対してリアクトルは抵抗を発生せず、通常の銅線のように機能し、電気接地を介して異常電流を海中に放電することができる。本発明によれば、複雑な制御を用いることなくリアクトルを設けるだけで落雷時と通常時において電気設備を保護することができる。
【0012】
また、本発明の前記リアクトルは、隣接する前記ループ単位同士の位置を保持する固定部材を備えていてもよい。
【0013】
本発明によれば、落雷時にリアクトルに流れる雷電流により隣接するループ単位の配列が変形することを防止することができる。
【0014】
また、本発明の前記リアクトルは、直径が略100mmの前記ループコイルにより形成されていてもよい。
【0015】
本発明によれば、リアクトルが所定寸法に形成されていることにより、雷電流に特化した抵抗を発生させることができる。
【0016】
また、本発明の前記リアクトルは、断面積が略60mmの銅線により形成されていいてもよい。
【0017】
本発明によれば、リアクトルは、異常時に流れる電流に対して十分に耐性を有するように形成されている。
【0018】
また、本発明の前記洋上構造物は、洋上に浮かんだ浮体構造物上に構築され、前記避雷接地及び前記電気接地は、前記浮体構造物を介して海中に接地されていてもよい。
【0019】
本発明によれば、洋上構造物が浮体構造物である場合に、浮体構造物を介して効率的に雷電流を海中に放電することができる。
【0020】
また、本発明の前記洋上構造物は、海底にパイルを介して固定された着床構造物上に構築され、前記避雷接地及び前記電気接地は、前記パイルを介して海中に接地されていてもよい。
【0021】
本発明によれば、洋上構造物が着床構造物である場合に、着床構造物を支持するパイルを介して効率的に雷電流を海中に放電することができる。
【0022】
本開示の一態様は、洋上に設けられた洋上構造物の避雷のための避雷接地方法であって、前記洋上構造物に設けられた電気設備に電気接地を接続し海中に接地する工程と、前記洋上構造物に避雷接地を接続し海中に接地すると共に、前記電気接地に並列して接続する工程と、前記電気接地と前記電気設備との間に8巻以上にループ単位が巻回されたループコイルを有するリアクトルを接続する工程と、前記洋上構造物に落雷した際に、前記リアクトルに前記避雷接地から前記電気接地に流入する雷電流に基づいて抵抗を発生させ、前記電気接地から前記電気設備に流入する前記雷電流を減衰させ前記電気設備を保護すると共に、前記避雷接地を介して前記雷電流を海中に放電する工程と、を備える。
【0023】
本発明によれば、避雷接地と電気接地を共用する洋上構造物において、電気接地と電気設備との間にリアクトルを接続することにより、複雑な制御を用いることなく落雷時及び通常時において電気設備を保護することができる。
【発明の効果】
【0024】
洋上構造物に設けられた電気設備に対する雷撃を防止する共に、管理コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態に係る洋上発電設備の構成を概略的に示す図である。
図2】避雷接地装置の構成を示すブロック図である。
図3】リアクトルの構成を示す側面図である。
図4】リアクトルの構成を示す正面図である。
図5】避雷接地方法の各工程を示すフローチャートである。
図6】変形例に係る洋上発電設備の構成を概略的に示す図である。
図7】変形例に係る避雷接地装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態に係る避雷接地装置について説明する。避雷接地装置は、洋上に設けられた洋上構造物の避雷のための設備である。
【0027】
図1に示されるように、洋上構造物は、例えば、風力発電設備1である。風力発電設備1は、洋上に浮かぶ浮体構造物2と、浮体構造物2上に起立して設けられた風力発電装置10とを備える。浮体構造物2は、風力発電装置10の重量を支持すると共に、海面に浮かぶように浮力が調整された半潜水式の浮体に構築されている。浮体構造物2は、複数の係留索3により洋上に係留されている。係留索3の一端側は、海底Bに固定されている。係留索3の他端側は、浮体構造物2に固定されている。係留索3は、例えばチェーン、ワイヤーロープ、樹脂ロープ等のロープ体により形成されている。浮体構造物2の形式、係留索3による係留形式は、設置海域の水深、気象等の環境条件に応じて適宜変更される。
【0028】
風力発電装置10は、例えば浮体構造物2上に起立して設置されるタワー11と、タワー11に回転自在に支持された風車20と、を備える。タワー11は、例えば、頂部に向かうほど断面が減少する円柱状に形成された鉄塔である。タワー11の基端は、浮体構造物2に支持されている。タワー11の上端側には、風車20を回転自在に軸支するナセル20Bが設けられている。風車20の回転軸は、例えば、タワー11の軸線方向と直交する略水平方向に設定されている。
【0029】
風車20は、正面視してハブ20Aを中心に放射状に均等に配置された複数のブレード21を備える。ブレード21は、例えば、3個設けられている。各ブレード21の短手方向の断面は、翼断面形状に形成されている。各ブレード21は、ハブ20Aに対して迎え角が付けられている。これにより各ブレード21は、向かい風を受けた際に風向と直交方向する一方向に力が与えられ、風車20を所定方向に回転させる。各ブレード21の迎え角は、風速に応じて調整可能に制御される。ハブ20Aには、風車20の回転軸22が連結されている。
【0030】
回転軸22には、ナセル20B内に設けられた発電機23のシャフトが増速機(不図示)を介して連結されている。回転軸22の回転は、増速機により回転数が増速されて発電機23のシャフトに伝達される。または、増速機は、必ずしも設けられていなくてもよく、ダイレクトドライブ方式により回転軸22と発電機23のシャフトとが連結されていてもよい。上記構成により発電機23は、風車20の回転に基づいて誘導電圧を発生することにより発電する。風力発電装置10は、洋上に設置されている高所構造物であるため、落雷する場合がある。風力発電装置10には、発電機23等の電気設備20Dを雷から保護する避雷接地装置30が設けられている。
【0031】
図2に示されるように、避雷接地装置30は、風力発電装置10に設けられた電気設備20Dと電気的に接続され海中に接地させる電気接地31と、風力発電装置10の風車20及びタワー11等の筐体部分と電気的に接続され海中に接地させる避雷接地と32と、電気接地31と電気設備20Dとの間を接続するリアクトルRとを備える。
【0032】
電気設備20Dは、風力発電装置10に設けられた電気機器により構成されている。電気設備20Dは、例えば、ナセル20B内に設けられた発電用電気設備20Eと、タワー11内に設けられた電力用電気設備20Fとを備える。発電用電気設備20Eは、例えば、発電機23と、風車20の制御のための周辺機器が設けられた電動機部24と、発電機23及び電動機部24の計測のためのセンサや計測機器により構成された第1計測部25とを備える。発電用電気設備20Eは、リアクトルRを介して電気接地31に接続されている。
【0033】
電力用電気設備20Fは、例えば、発電機23が発電した電力を調整する電力調整部26と、発電された電力の電圧を変換する変圧器部27と、タワー11内の空気の温度及び湿度を調整する空調部28と、電力調整部26、変圧器部27、及び空調部28の制御に必要な計測のためのセンサや計測機器により構成された第2計測部29とを備える。電力用電気設備20Fは、リアクトルRを介して電気接地31に接続されている。電力用電気設備20Fの設置位置と接地方法によっては、リアクトルRは設けられていなくてもよい。
【0034】
電気接地31は、海中を基準電位点とするように海中と電気的に接続されている。電気接地31は、例えば、電気設備20Dの接地用の導線により形成されている。電気接地31は、リアクトルRを介して発電用電気設備20E及び電力用電気設備20Fに電気的に接続されると共に、浮体構造物2に接地されている。電気接地31は、電気設備20D側において発生した地絡或いは漏電に基づく異常電流を浮体構造物2に伝達し、浮体構造物2を介して海中に放電し、電気設備20Dと海中との電位差を等電位化するように構成されている。電気設備20D側において発生する異常電流は、例えば、50/60Hzの商用電源に基づく電流である。異常電流は、この他、電気設備20Dに設けられたDC回路に流れる直流電流である。電気接地31には、並列して避雷接地32が電気的に接続されている。
【0035】
避雷接地32は、海中を基準電位点とするように海中と電気的に接続されている。避雷接地32は、例えば、風力発電装置10の接地用の導線により形成されている。避雷接地32は、風車20、ナセル20B、及びタワー11により構成されていてもよい。避雷接地32は、例えば、風車20、ナセル20B、及びタワー11に電気的に接続されると共に、浮体構造物2に接地されている。避雷接地32は、洋上構造物に落雷した際に流れる雷電流を浮体構造物2に伝達し、浮体構造物2を介して海中に放電し、風力発電装置10と海中との電位差を等電位化するように構成されている。避雷接地32は、電気接地31に電気的に接続されているため、電気設備20D側において地絡或いは漏電が発生した場合、電気設備20Dの接地としても機能する。
【0036】
風力発電装置10に落雷が発生した場合、避雷接地装置30には、雷サージの影響により過渡的な異常電圧が発生すると共に、それに基づく過渡的な異常電流(雷電流)が流れる。雷電流は、避雷接地32を経由して海中に放電されると共に、電気接地31を経由して海中に放電される。このとき、電気接地31に流れる雷電流から電気設備20を保護するためにリアクトルRが機能する。リアクトルRは、電気接地31と発電用電気設備20Eとの間に設けられている。リアクトルRは、電気接地31と電力用電気設備20Fとの間にも設けられている。
【0037】
図3及び図4に示されるように、リアクトルRは、例えば、導線が巻回されて形成されたループコイルR1を有する。ループコイルR1は、複数のループ単位R2が連続して形成されている。ループコイルR1は、例えば、8巻以上のループ単位R2が連続して形成されている。リアクトルRは、導線により形成されている。導線は、例えば、銅製の撚線(銅線)である。導線の断面積は、万が一事故が発生した場合や落雷時などの異常時に流れる電流に対して耐性を有するように形成されている。導線の断面積は、所定の基準(例えば、内線規程JEAC 8001(日本電気協会編))を満たす十分な断面積が確保されている。導線の断面積は、例えば、略60mmに形成されている。導線の径は、例えば12.5mmである。ループ単位R2は、例えば、雷電流に特化した抵抗を発生させるように直径が所定の径(例えば、略100mm)の円環状に形成されている。ループコイルR1の一端側は、第1端子R3が電気的に接続されている。第1端子R3は、例えば、電気接地31に電気的に接続されている。ループコイルR1の他端側は、第2端子R4が電気的に接続されている。第2端子R4は、例えば、電気設備20側に電気的に接続されている。
【0038】
リアクトルRは、隣接するループ単位R2同士の位置を保持すると共に、固定する固定部材R6を備える。固定部材R6は、例えば、エポキシ樹脂等の絶縁性を有する樹脂材料により直方体状に形成されている。固定部材R6は、内部にループコイルR1が封じ込まれている。固定部材R6は、例えば、型枠(不図示)内にループコイルR1を固定し、型枠内に固化前の流動性を有する樹脂材料を流し入れた後、樹脂材料が固化することにより形成される。これにより、固定部材R6とループコイルR1とは一体に形成される。固定部材R6には、風力発電装置10側の固定対象に固定するための固定台座R7が設けられている。固定台座R7は、例えば、矩形の板状に形成されている。固定台座R7は、固定対象にボルト及びナット等により固定される。固定部材R6により、リアクトルRは、雷電流が流れた際に隣接するコイル単位R2の配列が保持され変形することが防止される。
【0039】
雷電流は、例えば、直撃の場合、10/350μSの電流波形、25~1kHzの周波数、100kA、50クーロンの電流値である。雷電流は、例えば、誘導雷である場合、8/20μSの電流波形、25~1kHzの周波数、100kA、2クーロンの電流値である。リアクトルRは、落雷時に避雷接地32から電気接地31に流入する高周波かつ高電圧の雷電流に誘導される誘導性リアクタンスに基づく抵抗(リアクタンス)を発生する。このリアクタンス:Xは、落雷時に避雷接地に流れる電流:I、電圧:V、とするとX=V/Iにより表される。リアクタンスは、周波数:f、コイルのインダクタンス:Lとすると、X=2πfLと表され、周波数に比例して大きくなる。そうすると、リアクトルRに流れる電流は、I=V/2πfLであるから、高周波の雷電流が入力された際に減少する。これによりリアクトルRは、落雷時に発生する抵抗に基づいて、電気接地31から電気設備20Dに流入する雷電流を減衰させ、電気設備20Dを保護する。
【0040】
これに対し、通常時のリアクトルRは、発電用電気設備20E側において地絡或いは漏電が発生した場合、発電用電気設備20E側において発生した過剰な異常電流を通過させ電気接地31を介して海中に放電させる。通常時のリアクトルRは、50/60Hzの商用電源に基づく電流、或いは電気設備20Dに設けられたDC回路に流れる直流電流に基づいて電気設備20D側において発生する異常電流に対しては誘導性リアクタンスに基づく抵抗をほとんど発生せず、且つ、巻き数が少なく逆起電力を発生させる自己インダクタンスが小さいことから、異常電流を通過させる。即ち、リアクトルRは、落雷時には、電気接地31と電気設備20Dとの間を電気的に略遮断する抵抗器として機能し、通常時には電気接地31と電気設備20Dとの間を電気的に導通させる導線として機能する。
【0041】
図5に示されるように、洋上に設けられた風力発電装置10の避雷のための避雷接地方法は、以下の各工程を備える。風力発電装置10に設けられた電気設備20Dに電気接地31を接続し海中に接地する(ステップS10)。風力発電装置10に避雷接地32を接続し海中に接地すると共に、電気接地31に並列して接続する(ステップS12)。電気接地31と電気設備との間に8巻以上にループ単位R2が巻回されたループコイルR1を有するリアクトルRを接続する(ステップS14)。風力発電装置10に落雷した際に、リアクトルRに避雷接地32から電気接地31に流入する雷電流に基づいて抵抗を発生させ、電気接地31から電気設備に流入する雷電流を減衰させ電気設備を保護すると共に、避雷接地32を介して雷電流を海中に放電する(ステップS16)。
【0042】
上述した避雷接地装置30によれば、避雷接地と電気接地を共用化した洋上風力発電装置10に落雷が生じた際に、雷サージに基づいてリアクトルRに抵抗を発生させて電気設備に流入する雷電流を減衰させ電気設備を保護すると共に、避雷接地32を介して雷電流を海中に放電することができる。避雷接地装置30によれば、落雷発生後もリアクトルRがそのまま継続して使用可能であるため、洋上風力発電装置10に管理のために赴く必要が無く、管理コストを低減することができる。避雷接地装置30によれば、通常時にリアクトルRは、電気設備20Dに発生した異常電流を通過させて電気接地31から海中に放電するため、複雑な制御を用いない簡便な構成により設備を簡略化することができる。
【0043】
[変形例]
以下、避雷接地装置の変形例について説明する。以下の説明では、上記実施形態と同一の構成については、同一の名称及び符号を用い、重複する説明については適宜省略する。
【0044】
図6に示されるように、風力発電設備1Aは、洋上に浮かぶ浮体構造物2と、浮体構造物2上に起立して設けられた風力発電装置10とを備える。浮体構造物2は、風力発電装置10の重量を支持すると共に、海面に浮かぶように浮力が調整された半潜水式の浮体に構築されている。浮体構造物2は、単数のパイル3A(モノパイル方式と呼ぶ)または複数のパイル3A(ジャケット方式と呼ぶ)により海底Bに支持され、海上に設置された着床構造物に構築されている。パイル3Aは、例えば、円筒状の鋼管により形成されている。即ち、風力発電設備1Aは、海底Bにパイル3Aを介して固定された着床構造物上に構築されている。
【0045】
図7に示されるように、避雷接地装置30Aは、避雷接地32及び電気接地31は、パイル3Aを介して海中に接地されている。上記構成により、避雷接地装置30Aは、落雷時に避雷接地32からパイル3Aを介して雷電流を放電することができる。
【0046】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。例えば、避雷接地装置は、洋上風力発電装置だけでなく、洋上クレーン、洋上ガスプラント等の他の洋上構造物に適用されていてもよい。また、リアクトルRのループコイルR1には、磁性体により形成されたコアが設けられていてもよく、雷電流に基づく誘導性リアクタンスが調整されてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 風力発電設備
2 浮体構造物
3A パイル
30、30A 避雷接地装置
31 電気接地
32 避雷接地
B 海底
R リアクトル
R1 ループコイル
R2 ループ単位
R6 固定部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7