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2022-190212波情報推定装置、および、波情報推定方法
<図1>
  • -波情報推定装置、および、波情報推定方法 図1
  • -波情報推定装置、および、波情報推定方法 図2
  • -波情報推定装置、および、波情報推定方法 図3
  • -波情報推定装置、および、波情報推定方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190212
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】波情報推定装置、および、波情報推定方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/95 20060101AFI20221219BHJP
   G01S 13/50 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
G01S13/95
G01S13/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098426
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トラン トロン ミン
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AE14
5J070AF05
5J070AH19
5J070AH35
5J070AK40
(57)【要約】
【課題】軽い計算負荷で、波情報を精度良く推定する。
【解決手段】
波情報推定部10は、相関処理部12、移動ベクトル推定部131、総合ベクトル算出部133、および、波向推定部14を備える。相関処理部12は、複数の方位の探知データに対してスキャン相関処理を実行する。移動ベクトル推定部131は、複数の方位のスキャン相関処理の結果を用いて、波に対する複数の方位の移動ベクトルを推定する。総合ベクトル算出部133は、所定の方位範囲内の複数の方位の移動ベクトルを用いて、総合ベクトルを算出する。波向推定部14は、総合ベクトルを用いて、波向を推定する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の方位の探知データに対してスキャン相関処理を実行する相関処理部と、
前記複数の方位のスキャン相関処理の結果を用いて、波に対する前記複数の方位の移動ベクトルを推定する移動ベクトル推定部と、
所定の方位範囲内の前記複数の方位の移動ベクトルを用いて、総合ベクトルを算出する総合ベクトル算出部と、
前記総合ベクトルを用いて、波向を推定する波向推定部と、
を備える、波情報推定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の波情報推定装置であって、
前記総合ベクトル算出部は、前記複数の方位の移動ベクトルの合成ベクトルを用いて、前記総合ベクトルを算出する、
波情報推定装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の波情報推定装置であって、
前記複数の方位の移動ベクトルを、前記複数の方位の単位移動ベクトルに変換する単位移動ベクトル変換部を備え、
前記総合ベクトル算出部は、
前記所定の方位範囲の前記複数の方位の単位移動ベクトルを用いて、前記総合ベクトルを算出する、
波情報推定装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の波情報推定装置であって、
前記総合ベクトル算出部は、
それぞれに組合せが異なる前記複数の方位の移動ベクトルを用いて、複数の個別総合ベクトルを算出し、
前記複数の個別総合ベクトルを用いて、前記総合ベクトルを算出する、
波情報推定装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の波情報推定装置であって、
前記移動ベクトル推定部は、
前記スキャン相関処理結果の相関ピークの符号、および、前記相関ピークの位置を用いて、前記波向を推定する、
波情報推定装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の波情報推定装置であって、
前記複数の方位の移動ベクトルと前記波向とを用いて、波周期を推定する波周期推定部を備える、
波情報推定装置。
【請求項7】
請求項6に記載の波情報推定装置であって、
前記波周期推定部は、
前記波向の移動ベクトルと前記複数の方位の移動ベクトルとを用いて、前記複数の方位の距離ベクトルを算出する距離ベクトル算出部と、
前記複数の方位の距離ベクトルを用いて、波の平均移動距離を算出する平均移動距離算出部と、
前記平均移動距離を用いて、前記波周期を算出する波周期算出部と、
を備える、
波情報推定装置。
【請求項8】
請求項7に記載の波情報推定装置であって、
前記距離ベクトル算出部は、
前記波向の方位の移動ベクトルの大きさを用いて、前記複数の方位の距離ベクトルを算出する、
波情報推定装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の波情報推定装置であって、
前記複数の方位の探知データの周波数スペクトルと前記波向とを用いて、波周期を推定する波周期推定部を備える、
波情報推定装置。
【請求項10】
請求項9に記載の波情報推定装置であって、
前記波周期推定部は、
前記波向を用いて、前記周波数スペクトルを算出する解析領域の探知データを抽出する解析領域抽出部と、
前記周波数スペクトルのピークの距離を算出するピーク距離算出部と、
前記ピークの距離を用いて、前記波周期を算出する波周期算出部と、
を備える、波情報推定装置。
【請求項11】
請求項9または請求項10に記載の波情報推定装置であって、
前記波周期推定部は、
前記周波数スペクトルを2次元フーリエ変換によって算出する、
波情報推定装置。
【請求項12】
請求項9または請求項10に記載の波情報推定装置であって、
前記波周期推定部は、
前記周波数スペクトルを1次元フーリエ変換によって算出する、
波情報推定装置。
【請求項13】
請求項1乃至請求項12のいずれかに記載の波情報推定装置であって、
前記総合ベクトルを用いて、前記波高を含む波情報の推定の信頼性を評価する信頼性評価部を備える、
波情報推定装置。
【請求項14】
請求項9乃至請求項12のいずれかに記載の波情報推定装置であって、
前記総合ベクトルと前記周波数スペクトルとを用いて、前記波高を含む波情報の推定の信頼性を評価する信頼性評価部を備える、
波情報推定装置。
【請求項15】
請求項6乃至請求項14のいずれかに記載の波情報推定装置であって、
前記波の影響を受ける移動体のヒーブを計測するヒーブ計測部と、
前記ヒーブ、前記波周期、および、前記波向を用いて、波高を推定する波高推定部と、
を備える、波情報推定装置。
【請求項16】
請求項6乃至請求項14のいずれかに記載の波情報推定装置であって、
前記波の影響を受ける移動体のヒーブを計測するヒーブ計測部と、
前記ヒーブ、および、前記探知データを用いて、波高を推定する波高推定部と、
を備える、波情報推定装置。
【請求項17】
複数の方位の探知データに対してスキャン相関処理を実行し、
前記複数の方位のスキャン相関処理の結果を用いて、波に対する前記複数の方位の移動ベクトルを推定し、
所定の方位範囲内の前記複数の方位の移動ベクトルを用いて、総合ベクトルを算出し、
前記総合ベクトルを用いて、波向を推定する、
波情報推定方法。
【請求項18】
請求項17に記載の波情報推定方法であって、
前記複数の方位の移動ベクトルと前記波向とを用いて、波周期を推定する、
波情報推定方法。
【請求項19】
請求項17に記載の波情報推定方法であって、
前記複数の方位の探知データの周波数スペクトルと前記波向とを用いて、波周期を推定する、
波情報推定方法。
【請求項20】
請求項18または請求項19に記載の波情報推定方法であって、
前記波の影響を受ける移動体のヒーブを計測し、
前記ヒーブ、前記波周期、および、前記波向を用いて、または、前記ヒーブおよび前記探知データを用いて、波高を推定する、
波情報推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、波向等の波情報を推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、レーダを用いた波浪情報の測定方法および測定装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-21680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示すような従来の方法では、波向を含む波情報を、計算負荷を軽減しながら、精度良く測定することが難しかった。
【0005】
したがって、本発明の目的は、軽い計算負荷で、波情報を精度良く推定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の波情報推定装置は、相関処理部、移動ベクトル推定部、総合ベクトル算出部、および、波向推定部を備える。相関処理部は、複数の方位の探知データに対してスキャン相関処理を実行する。移動ベクトル推定部は、複数の方位のスキャン相関処理の結果を用いて、波に対する複数の方位の移動ベクトルを推定する。総合ベクトル算出部は、所定の方位範囲内の複数の方位の移動ベクトルを用いて、総合ベクトルを算出する。波向推定部は、総合ベクトルを用いて、波向を推定する。
【0007】
この構成では、スキャン相関処理、ベクトル演算によって、波向きが推定される。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、軽い計算負荷で、波情報を精度良く推定できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1の実施形態に係る波情報推定部の機能ブロック図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る探知装置の機能ブロック図である。
図3図3は、波の一態様を示す平面図である。図3の線は、例えば、波頭を表す。
図4図4(A)は、1つのスイープにおける異なる2時刻(異なるスキャン時)の波の関係の一例を示す図であり、図4(B)は、相関処理結果を示すグラフであり、図4(C)は、各方位の移動ベクトルの概念を示す図である。
図5図5は、波の進行方向、スキャン間位相差、相関結果のピークの符号、および、相関結果のピーク位置の符号の関係を示す表である。
図6図6(A)は、複数の方位の移動ベクトルを示し、図6(B)は、複数の方位の単位移動ベクトルを示す。
図7図7(A)は、総合ベクトルを算出するための複数の方位の単位移動ベクトル群を示す図であり、図7(B)は、総合ベクトルを示す図である。
図8図8(A)は、右舷前方が波向のときの複数の方位の移動ベクトルを示し、図8(B)は、複数の方位の単位移動ベクトルを示す。
図9図9(A)は、総合ベクトルを算出するための複数の方位の単位移動ベクトル群を示す図であり、図9(B)は、総合ベクトルを示す図である。
図10図10は、本発明の第1の実施形態に係る波向推定方法の一例を示すフローチャートである。
図11図11は、本発明の第2の実施形態に係る波向推定方法の一例を示すフローチャートである。
図12図12(A)、図12(B)、図12(C)は、個別総合ベクトルを算出する複数の単位移動ベクトルの組の一例を示す図である。
図13図13は、総合ベクトルの算出概念を示す図である。
図14図14は、第3の実施形態に係る波情報推定部の機能ブロック図である。
図15図15は、第3の実施形態に係る波周期推定部の構成を示す機能ブロック図である。
図16図16(A)は、距離ベクトルを算出する複数の方位の移動ベクトル群を示す図であり、図16(B)は、複数の方位の距離ベクトルを示す図である。
図17図17は、第3の実施形態に係る波周期推定方法の一例を示すフローチャートである。
図18図18は、第4の実施形態に係る波情報推定部の機能ブロック図である。
図19図19は、第4の実施形態に係る波周期推定部の構成を示す機能ブロック図である。
図20図20(A)は、解析領域の抽出概念を示す図であり、図20(B)は、2DFFT処理結果を示す図であり、図20(C)は、1Dスペクトル波形を示す図である。
図21図21は、本発明の第4の実施形態に係る波周期推定方法の一例を示すフローチャートである。
図22図22は、第5の実施形態に係る波周期推定部の構成を示す機能ブロック図である。
図23図23(A)は、解析領域の抽出概念を示す図であり、図23(B)は、1Dスペクトル波形を示す図である。
図24図24は、本発明の第5の実施形態に係る波周期推定方法の一例を示すフローチャートである。
図25図25は、第6の実施形態に係る波情報推定部の機能ブロック図である。
図26図26は、信頼性評価部で実行する処理を示すフローチャートである。
図27図27は、第7の実施形態に係る波情報推定部の機能ブロック図である。
図28図28は、信頼性評価部で実行する処理を示すフローチャートである。
図29図29は、第8の実施形態に係る波情報推定部の機能ブロック図である。
図30図30は、ヒーブの遷移の一例を示すグラフである。
図31図31は、第8の実施形態に係る波高推定方法の一例を示すフローチャートである。
図32図32は、第9の実施形態に係る波情報推定部の機能ブロック図である。
図33図33は、第9の実施形態に係る波高推定方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態にかかる波情報推定技術について、図を参照して説明する。図1は、第1の実施形態に係る波情報推定部の機能ブロック図である。図2は、本発明の実施形態に係る探知装置の機能ブロック図である。
【0011】
(探知装置90の構成)
図2に示すように、探知装置90は、波情報推定部10、送信部91、サーキュレータ92、受信部93、および、アンテナ900を備える。探知装置90は、例えば、船舶に取り付けられ、自船の周囲の状況を探知するレーダ装置の構成を用いることによって実現される。
【0012】
送信部91は、探知信号を生成し、サーキュレータ92に出力する。サーキュレータ92は、送信部91からの探知信号を、アンテナ900に伝送する。
【0013】
アンテナ900は、水平方向に、所定の回転数で回転しながら、複数の方位に対して、探知信号を送信(放射)する。アンテナ900は、送信した探知信号が波等に反射した反射信号を受信する。アンテナ900は、反射信号をサーキュレータ92に出力する。サーキュレータ92は、反射信号を受信部93に出力する。
【0014】
受信部93は、反射信号に対して、増幅処理、フィルタ処理、A/D変換処理等の所定の受信処理を行って、複数の方位毎の探知データを生成する。受信部93は、複数の方位の探知データを、波情報推定部10に出力する。探知データは、距離方向に所定の分解能でならぶ個別振幅データであり、個別振幅データは、それぞれに、例えば、反射対象物の反射強度に応じたレベルを有する。
【0015】
波情報推定部10は、複数の方位の探知データを用いて、波情報を推定する。波情報は、少なくとも、波向を含み、波周期、波高を含んでいる。
【0016】
(波情報推定部10の構成および処理)
図1に示すように、波情報推定部10は、探知データ記憶部11、相関処理部12、波向ベクトル生成部13、および、波向推定部14を備える。波向ベクトル生成部13は、移動ベクトル推定部131、単位移動ベクトル変換部132、および、総合ベクトル算出部133を備える。波情報推定部10は、例えば、メモリとCPU等の演算素子を備える情報処理装置、および、情報処理装置で実行されるプログラムによって実現される。
【0017】
探知データ記憶部11は、受信部93から入力された探知データを記憶する。
【0018】
相関処理部12は、方位毎に、複数スキャンのスイープの探知データ間の相関処理を実行する。図3は、波の一態様を示す平面図である。図3の線は、例えば、波頭を表す。図4(A)は、1つのスイープにおける異なる2時刻(異なるスキャン時)の波の関係の一例を示す図であり、図4(B)は、相関処理結果を示すグラフであり、図4(C)は、各方位の移動ベクトルの概念を示す図である。
【0019】
図3に示すように、波は移動し、時刻t1と時刻t2とで位置が異なる。より具体的には、船舶9に対して、時刻t1での波WV(t1)の波頭の位置と、時刻t2での波WV(t2)の波頭の位置は、異なる。すなわち、時刻t2が時刻t1よりも後の時刻として、波WV(t2)の波頭の位置は、波WV(t1)の波頭の位置よりも、波の進行方向に距離Δrで移動した位置となる。
【0020】
このような状態において、スキャン相関処理を実行すると、方位毎に、距離Δrθに応じた位置に相関ピークが生じる。スキャン相関処理とは、異なるスキャンにおける同一方位のスイープを相関処理することである。例えば、図3に示すように船舶9の船尾側から船首側に波が進行する状態において、船舶9の船首方向となる方位θでは、図4(A)に示すように、波WV(t1)の波頭と波WV(t2)の波頭とは、距離Δrθ0で離間し、波WV(t2)の波頭が波WV(t1)の波頭よりも船舶9(波情報推定部10)から離間する位置となる。
【0021】
この場合、図4(B)に示すように、波WV(t1)の探知データと、波WV(t2)の探知データとの相関処理結果Rθ0(スキャン相関処理結果)のピークは、距離Δrθ0に相当する位置に発生する。
【0022】
そして、図4(C)に示すように、船舶9(波情報推定部10)を基準点とした方位が異なれば、波の進行方向(波向)に対する角度に応じて、距離Δrθは異なる。これは、同じ波頭に対する距離が方位によって異なることに起因する。
【0023】
例えば、船舶9の船首方位である方位θでは、波WV(t1)の波頭と波WV(t2)の波頭の距離と同じになる。そして、方位θでは、船舶9から離間する波となる。
【0024】
また、船舶9の船首方位に対して、右舷側に角度Δθ(90°未満)でシフトした方位θでは、角度Δθに応じて、波WV(t1)の波頭と波WV(t2)の波頭の距離は、長くなる。そして、方位θでは、船舶9から離間する波となる。
【0025】
また、船舶9の船尾方位である方位θでは、波WV(t1)の波頭と波WV(t2)の波頭の距離と同じになる。ただし、方位θでは、方位θと逆に、船舶9に向かう波となる。
【0026】
また、船舶9の船首方位に対して、右舷側から回転させた角度Δθ(180°より大きく270°未満)でシフトした左舷後方の方位θcでは、角度Δθに応じて(より正確には、方位θと方位θとの角度差に応じて)、波WV(t1)の波頭と波WV(t2)の波頭の距離は、長くなる。そして、方位θでは、船舶9に向かう波となる。
【0027】
そして、各方位に対する探知データのスキャン相関処理結果のピーク位置も、基準点(船舶9(波情報推定部10)の位置)に対して、上述の方位毎の波頭間距離に応じた位置になる。
【0028】
相関処理部12は、複数の方位毎に、相関結果のピーク位置およびピーク強度を、方位に関連付けして、波向ベクトル生成部13の移動ベクトル推定部131に出力する。
【0029】
移動ベクトル推定部131は、複数の方位毎の相関結果のピーク位置およびピーク強度を用いて、複数の方位毎の移動ベクトルを推定する。各方位の移動ベクトルは、相関結果のピーク位置に応じた距離Δrθを大きさとし、各方位での波の進行する方向を向きとするベクトルである。
【0030】
例えば、図4(C)の例であれば、方位θでは、相関処理結果のピーク位置の距離Δrθ0が移動ベクトルΔrvθ0の大きさとなる。また、方位θでは、方位θで船舶9から遠ざかる方向が移動ベクトルΔrvθ0の向きとなる。
【0031】
方位θでは、相関処理結果のピーク位置の距離Δrθaが移動ベクトルΔrvθaの大きさとなる。また、方位θでは、方位θで船舶9から遠ざかる方向が移動ベクトルΔrvθaの向きとなる。
【0032】
方位θでは、相関処理結果のピーク位置の距離Δrθbが移動ベクトルΔrvθbの大きさとなる。また、方位θでは、方位θで船舶9に近づく方向が移動ベクトルΔrvθbの向きとなる。
【0033】
方位θでは、相関処理結果のピーク位置の距離Δrθcが移動ベクトルΔrvθcの大きさとなる。また方位θでは、方位θで船舶9に近づく方向が移動ベクトルΔrvθcの向きとなる。
【0034】
ここで、相関結果のピーク強度を用いることで、エイリアシングの生じない範囲を拡張できる。図5は、波の進行方向、スキャン間位相差、相関結果のピークの符号、および、相関結果のピーク位置の符号の関係を示す表である。波向は、船舶9(波情報推定部10)に対して追い波(遠ざかる波)か、向い波(近づく波)かで分類される。
【0035】
図5に示すように、(A)追い波でスキャン間位相差が0[°]から90[°]まで(0[rad]からπ/4[rad]まで)の範囲の場合、相関結果ピークの符号は「+」になり、相関結果ピーク位置の符号は「+」になる。
【0036】
(B)追い波でスキャン間位相差が90[°]から180[°]まで(π/4[rad]からπ/2[rad]まで)の範囲の場合、相関結果ピークの符号は「-」になり、相関結果ピーク位置の符号は「-」になる。
【0037】
(C)向い波でスキャン間位相差が0[°]から90[°]まで(0[rad]からπ/4[rad]まで)の範囲の場合、相関結果ピークの符号は「-」になり、相関結果ピーク位置の符号は「+」になる。
【0038】
(D)向い波でスキャン間位相差が90[°]から180[°]まで(π/4[rad]からπ/2[rad]まで)の範囲の場合、相関結果ピークの符号は「+」になり、相関結果ピーク位置の符号は「-」になる。
【0039】
したがって、相関結果のピークの符号と、相関結果のピーク位置の符号(基準点に対して正側か負側か)とを用いることで、0[°]から180[°]まで(0[rad]からπ/2[rad]まで)のピーク位置を確実に識別できる。
【0040】
このような相関結果のピークの符号とピーク位置の符号とを用いない方法(従来方法)では、90[°](π/4[rad])以上の範囲でエイリアシングが発生する。しかしながら、上述の相関結果のピークの符号とピーク位置の符号とを用いることで、エイリアシングが発生しない範囲を、0[°]から180[°]まで(0[rad]からπ/2[rad]まで)拡張できる。
【0041】
例えば、移動ベクトル推定部131は、ピークの大きさ(Peak)とピーク位置(Position)との乗算値(Pk×Pos)を算出する。追い波の0[°]から90[°]と、向い波の90[°]から180[°]とでは、基準点からの相関結果のピークの位置は同じになるが、移動ベクトル推定部131は、乗算値(Pk×Pos)によって、追い波か向い波かを識別できる。同様に、追い波の90[°]から180[°]と、向い波の0[°]から90[°]とでは、基準点からの相関結果のピークの位置は同じになるが、移動ベクトル推定部131は、乗算値(Pk×Pos)によって、追い波か向い波かを識別できる。これにより、移動ベクトル推定部131は、移動ベクトルの推定可能な範囲(大きさの範囲)を拡張できる。
【0042】
移動ベクトル推定部131は、推定した複数の方位の移動ベクトルrvθを、単位移動ベクトル変換部132に出力する。
【0043】
単位移動ベクトル変換部132は、複数の方位の移動ベクトルrvθのそれぞれを、大きさが「1」の単位移動ベクトルIθに変換する。図6(A)は、複数の方位の移動ベクトルを示し、図6(B)は、複数の方位の単位移動ベクトルを示す。なお、図6(A)、図6(B)に示す場合は、移動ベクトルを15[°]間隔で生成する態様を示したが、移動ベクトルの生成間隔(方位方向の分解能)は、これに限るものではない。図6(A)、図6(B)は、波向が図3図4(C)と同じ状態を示す。
【0044】
図6(A)に示すように、複数の方位の移動ベクトルrvθ0、・・・、rvθ23は、波向に対する角度に応じて、大きさが異なる。これは、上述の図4(C)を参照した説明からもわかる。例えば、船舶9の船首側においては、波向に平行な方位θの移動ベクトルrvθ0の大きさは小さく、波向に対する角度が大きくなり、波向に対して90[°]の方位に近づくのにしたがって、移動ベクトルrvθの大きさは大きくなる。同様に、船舶9の船尾側においては、波向に平行な方位θ12図4(C)であれば、方位θに対応)の移動ベクトルrvθ12の大きさは小さく、波向に対する角度が大きくなり、波向に対して90[°]の方位に近づくのにしたがって、移動ベクトルrvθの大きさは大きくなる。
【0045】
そこで、単位移動ベクトル変換部132は、各方位の移動ベクトルrvθ0、・・・、rvθ23の大きさを「1」に変換する。これにより、図6(B)に示すように、各方位の単位移動ベクトルIθ0、・・・、Iθ23は、方位に応じたベクトルの向きを有し、大きさが統一されたベクトルとなる。
【0046】
単位移動ベクトル変換部132は、複数の方位の単位移動ベクトルIθ0、・・・、Iθ23を、総合ベクトル算出部133に出力する。
【0047】
総合ベクトル算出部133は、複数の方位の単位移動ベクトルIθを用いて、総合ベクトルΣvθを算出する。この際、総合ベクトル算出部133は、所定の方位範囲に含まれる複数の方位の単位移動ベクトルIθを用いて、総合ベクトルΣvθを算出する。より具体的には、総合ベクトル算出部133は、所定の方位範囲に含まれる複数の方位の単位移動ベクトルIθの合成ベクトルを算出することで、総合ベクトルΣvθを算出する。
【0048】
図7(A)は、総合ベクトルを算出するための複数の方位の単位移動ベクトル群を示す図であり、図7(B)は、総合ベクトルを示す図である。なお、図7(A)、図7(B)は、波向の方位が、船首方位の場合を示し、上述の図6(B)に示した単位移動ベクトルを用いた場合を示す。
【0049】
図7(A)に示す態様では、総合ベクトル算出部133は、船舶9の船首側180[°]の範囲を、総合ベクトルの算出用の方位範囲に設定する。この場合、総合ベクトル算出部133は、単位移動ベクトルIθ0、Iθ1、Iθ2、Iθ3、Iθ4、Iθ5、(rvθ6)、(rvθ18)、Iθ19、Iθ20、Iθ21、Iθ22、Iθ23を合成する。なお、船舶9の船首側180[°]の範囲としては、船首方位に対して90[°]となる移動ベクトルrvθ6、rvθ18の単位移動ベクトルも合成の対象となるが、この場合、移動ベクトルrvθ6、rvθ18の大きさが「0」のため、これらの単位移動ベクトルの大きさも「0」となるので、合成しても合成の結果に影響はなく、ここでは図示を省略している。
【0050】
このベクトルの合成によって、図7(B)に示すように、総合ベクトルΣvθが算出される。総合ベクトルΣvθの角度要素(方位)は、複数の単位移動ベクトルの方位の平滑値となる。例えば、図7(B)の例であれば、総合ベクトルΣvθの角度要素(方位)は、船首方位となる。また、図7(B)の例であれば、総合ベクトルΣvθの向きは、船舶9から離れる方向である。
【0051】
なお、波向が右舷前方の場合は、移動ベクトル、単位移動ベクトル、総合ベクトルは次のようになる。図8(A)は、右舷前方が波向のときの複数の方位の移動ベクトルを示し、図8(B)は、複数の方位の単位移動ベクトルを示す。図9(A)は、総合ベクトルを算出するための複数の方位の単位移動ベクトル群を示す図であり、図9(B)は、総合ベクトルを示す図である。なお、図9(A)、図9(B)は、波向の方位が、船首方位の場合を示し、上述の図8(B)に示した単位移動ベクトルを用いた場合を示す。
【0052】
波向が右舷前方の場合、図8(A)、図8(B)に示すように、複数の方位の移動ベクトル、および、複数の方位の単位移動ベクトルは、船舶9の右舷前方を中心とする右舷後方から左舷前方の範囲において、追い波のベクトルとなる。また、複数の方位の移動ベクトル、および、複数の方位の単位移動ベクトルは、船舶9の左舷後方を中心とする右舷後方から左舷前方の範囲において、向い波のベクトルとなる。
【0053】
したがって、図9(A)に示すように、船舶9の船首側180[°]の範囲の複数の単位移動ベクトルを用いて総合ベクトルを算出すると、単位移動ベクトルIθ0、Iθ1、Iθ2、Iθ3、Iθ4、Iθ5、Iθ6、Iθ21、Iθ22、Iθ23が追い波のベクトルとなり、単位移動ベクトルIθ18、Iθ19、Iθ2が向い波のベクトルとなる。このため、総合ベクトルΣvθは、右舷前方を方位とし、船舶9から離れる方向のベクトルとなる。
【0054】
このように、本願の処理を用いることで、総合ベクトルΣvθの角度要素(方位)は、波向における方位を示す。また、総合ベクトルΣvθの向き(始点から終点に向かう方向)は、波向における波の進行方向を示す。
【0055】
総合ベクトル算出部133は、総合ベクトルΣvθを、波向推定部14に出力する。
【0056】
波向推定部14は、総合ベクトルΣvθを用いて、波向を推定する。より具体的には、波向推定部14は、総合ベクトルΣvθの角度要素を抽出し、この角度要素を波向における方位とする。また、波向推定部14は、総合ベクトルΣvθの向きを、波向における波の進行方向とする。
【0057】
このような構成および処理を用いることで、波情報推定部10は、波向を推定できる。この際、上述のように、波情報推定部10は、スイープ相関処理を用いることで、従来用いられた2DFFTや3DFFTよりも、波向を推定するための計算負荷を軽くできる。また、波情報推定部10は、3DFFTと同様に、波向を精度良く推定できる。これは、本実施形態の処理を行った場合の波向の推定結果と、3DFFTを用いた場合の波向の推定結果とを比較することによって、確認できる。
【0058】
また、上述のように、単位移動ベクトルを用いることによって、波情報推定部10は、計算負荷をさらに軽くでき、推定精度を向上できる。
【0059】
また、船舶9の全方位の単位移動ベクトルを用いることなく、全方位よりも狭い所定の方位範囲の複数の方位の単位移動ベクトルを用いることによって、波情報推定部10は、計算負荷をさらに軽くできる。この際、図6(B)に示したように、方位が180[°]異なる単位移動ベクトル同士は、船舶9に対して追い波か向かい波かの相違があるのみで、大きさが同じである。したがって、全方位よりも狭い所定の方位範囲の複数の方位の単位移動ベクトルを用いても、波向の推定精度の低下は抑制できる。これにより、波情報推定部10は、波向を精度良く推定できる。
【0060】
なお、上述の態様では、複数の方位の単位移動ベクトルから総合ベクトルを算出した。しかしながら、複数の方位の移動ベクトルから総合ベクトルを算出することも可能である。ただし、単位移動ベクトルを用いることで、各移動ベクトルの大きさによる総合ベクトルの誤差を抑制できる。したがって、単位移動ベクトルを用いることで、波情報推定部10は、波向を、より精度良く推定できる。
【0061】
(波向推定方法1)
図10は、本発明の第1の実施形態に係る波向推定方法の一例を示すフローチャートである。なお、図10のフローチャートで示す各処理の具体的な内容は、上述の構成の説明の際に説明している。したがって、以下の波向推定方法の説明では、追加の必要な箇所のみを具体的に説明し、その他の箇所の説明は省略する。
【0062】
波情報推定部10を含む探知装置90は、探知信号を送受信する(S11)。波情報推定部10の相関処理部12は、複数の方位のそれぞれに対して、受信した探知信号に基づく探知データのスキャン相関処理を実行する(S12)。
【0063】
波向ベクトル生成部13は、相関処理結果を用いて、複数の方位の移動ベクトルを推定する(S13)。波向ベクトル生成部13は、複数の方位の移動ベクトルを用いて、総合ベクトルを算出する(S14)。
【0064】
波向推定部14は、総合ベクトルを用いて、波向を推定する(S15)。
【0065】
このような方法を用いることで、波向を、軽い計算負荷で精度良く推定できる。
【0066】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係る波情報推定技術について、図を参照して説明する。第2の実施形態に係る波情報推定技術では、第1の実施形態に係る波情報推定技術に対して、総合ベクトルの算出方法において異なる。第2の実施形態に係る波情報推定技術のその他の構成および処理は、第1の実施形態に係る波情報推定技術と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0067】
(波向推定方法2)
図11は、本発明の第2の実施形態に係る波向推定方法の一例を示すフローチャートである。図12(A)、図12(B)、図12(C)は、個別総合ベクトルを算出する複数の単位移動ベクトルの組の一例を示す図である。図13は、総合ベクトルの算出概念を示す図である。
【0068】
波情報推定部10を含む探知装置90は、探知信号を送受信する(S11)。波情報推定部10の相関処理部12は、複数の方位のそれぞれに対して、受信した探知信号に基づく探知データのスキャン相関処理を実行する(S12)。波向ベクトル生成部13は、相関処理結果を用いて、複数の方位の移動ベクトルを推定する(S13)。
【0069】
総合ベクトル算出部133は、それぞれに組み合わせが異なる複数の方位の単位移動ベクトルを用いて、複数の個別総合ベクトルを算出する(S16)。例えば、総合ベクトル算出部133は、図12(A)に示すような船舶9の船首方位を中心とする180[°]の範囲の複数の方位の単位移動ベクトル(単位移動ベクトルIθ0、Iθ1、Iθ2、Iθ3、Iθ4、Iθ5、(Iθ6)、(Iθ18)、Iθ19、Iθ20、Iθ21、Iθ22、Iθ23)を用いて、図13に示す個別総合ベクトルΣvθk1を算出する。総合ベクトル算出部133は、図12(B)に示すような船舶9の右舷前方を中心とする180[°]の範囲の複数の方位の単位移動ベクトル(単位移動ベクトルIθ0、Iθ1、Iθ2、Iθ3、Iθ4、Iθ5、(Iθ6)、Iθ7、Iθ8、Iθ9、Iθ21、Iθ22、Iθ23)を用いて、図13に示す個別総合ベクトルΣvθk2を算出する。総合ベクトル算出部133は、図12(C)に示すような船舶9の左舷前方を中心とする180[°]の範囲の複数の方位の単位移動ベクトル(単位移動ベクトルIθ0、Iθ1、Iθ2、Iθ3、Iθ15、Iθ16、Iθ17、(Iθ18)、Iθ19、Iθ20、Iθ21、Iθ22、Iθ23)を用いて、図13に示す個別総合ベクトルΣvθk3を算出する。
【0070】
総合ベクトル算出部133は、個別総合ベクトルΣvθk1、個別総合ベクトルΣvθk2、個別総合ベクトルΣvθk3を用いて、総合ベクトルΣvθを算出する。より具体的には、総合ベクトル算出部133は、個別総合ベクトルΣvθk1、個別総合ベクトルΣvθk2、個別総合ベクトルΣvθk3の合成ベクトルを算出することで、総合ベクトルΣvθを算出する。
【0071】
このように、複数の個別総合ベクトルを用いることによって、最終的な総合ベクトルの誤差を抑制できる。したがって、波情報推定部10は、波向を、より精度良く推定できる。
【0072】
なお、個別総合ベクトルの組み合わせ、個数は、これに限るものではなく、他の組み合わせ、個数を適用することもできる。
【0073】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態に係る波情報推定技術について、図を参照して説明する。第3の実施形態に係る波情報推定技術では、第1、第2の実施形態に係る波情報推定技術に対して、波情報として波周期を含む点で異なる。第3の実施形態に係る波情報推定技術における波向の推定技術は、第1、第2の実施形態に係る波向の推定技術と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0074】
図14は、第3の実施形態に係る波情報推定部の機能ブロック図である。図14に示すように、第3の実施形態に係る波情報推定部10Aは、探知データ記憶部11、相関処理部12、波向ベクトル生成部13、波向推定部14、および、波周期推定部15Aを備える。探知データ記憶部11、相関処理部12、波向ベクトル生成部13、波向推定部14は、波情報推定部10と同様の構成を備え、同様の処理を実行するので、説明は省略する。
【0075】
図15は、第3の実施形態に係る波周期推定部の構成を示す機能ブロック図である。図15に示すように、波周期推定部15Aは、距離ベクトル算出部151、平均移動距離算出部152、および、波周期算出部153を備える。
【0076】
距離ベクトル算出部151には、波向ベクトル生成部13の移動ベクトル推定部131から、複数の方位の移動ベクトルが入力される。また、距離ベクトル算出部151には、波向推定部14から、波向の方位が入力される。
【0077】
図16(A)は、距離ベクトルを算出する複数の方位の移動ベクトル群を示す図であり、図16(B)は、複数の方位の距離ベクトルを示す図である。
【0078】
距離ベクトル算出部151は、波向の方位の移動ベクトルと所定の方位範囲の複数の方位の移動ベクトルとを用いて、複数の方位の距離ベクトルを算出する。例えば、図16(A)、図16(B)の場合、距離ベクトル算出部151は、波向の方位θを含む方位範囲を設定する。距離ベクトル算出部151は、図16(A)に示すような方位範囲の移動ベクトルrvθ0、rvθ1、rvθ2、rvθ3、rvθ4、rvθ5、(rvθ6)、(rvθ18)、rvθ19、rvθ20、rvθ21、rvθ22、rvθ23を用いて、図16(B)に示すような距離ベクトルrv’θ0、rv’θ1、rv’θ2、rv’θ3、rv’θ4、rv’θ5、(rv’θ6)、(rv’θ18)、rv’θ19、rv’θ20、rv’θ21、rv’θ22、rv’θ23を算出する。
【0079】
より具体的には、距離ベクトル算出部151は、移動ベクトルrvθ0、rvθ1、rvθ2、rvθ3、rvθ4、rvθ5、(rvθ6)、(rvθ18)、rvθ19、rvθ20、rvθ21、rvθ22、rvθ23を、波向の方位θの移動ベクトルrvθ0の大きさで除算することで、距離ベクトルrv’θ0、rv’θ1、rv’θ2、rv’θ3、rv’θ4、rv’θ5、(rv’θ6)、(rv’θ18)、rv’θ19、rv’θ20、rv’θ21、rv’θ22、rv’θ23を算出する。
【0080】
距離ベクトル算出部151は、複数の方位の距離ベクトルrv’θ0、rv’θ1、rv’θ2、rv’θ3、rv’θ4、rv’θ5、(rv’θ6)、(rv’θ18)、rv’θ19、rv’θ20、rv’θ21、rv’θ22、rv’θ23を、平均移動距離算出部152に出力する。
【0081】
平均移動距離算出部152は、所定の方位範囲の距離ベクトルrv’θ0、rv’θ1、rv’θ2、rv’θ3、rv’θ4、rv’θ5、(rv’θ6)、(rv’θ18)、rv’θ19、rv’θ20、rv’θ21、rv’θ22、rv’θ23の大きさの平均値を算出することで、平均移動距離を算出する。平均移動距離算出部152は、平均移動距離を波周期算出部153に出力する。
【0082】
波周期算出部153は、平均移動距離を用いて波周期を算出する。例えば、より具体的には、波周期算出部153は、平均移動距離を、スキャン相関処理を行ったスイープ同士の時間間隔の2倍(スキャンの2周期分の時間)で除算して、波速度を算出する。波周期算出部153は、既知の波の特性式に波速度を入力することで、波周期を算出する。
【0083】
このような構成および処理を用いることによって、波情報推定部10Aは、波情報として、波周期を、軽い計算負荷で精度良く推定できる。
【0084】
(波周期推定方法1)
図17は、第3の実施形態に係る波周期推定方法の一例を示すフローチャートである。なお、図17のフローチャートで示す各処理の具体的な内容は、上述の構成の説明の際に説明している。したがって、以下の波周期推定方法の説明では、追加の必要な箇所のみを具体的に説明し、その他の箇所の説明は省略する。
【0085】
距離ベクトル算出部151は、複数の方位の移動ベクトルと波向の方位を用いて、複数の方位の距離ベクトルを算出する(S21)。平均移動距離算出部152は、複数の方位の距離ベクトルを用いて、平均移動距離を算出する(S22)。波周期算出部153は、平均移動距離を用いて、波周期を算出する(S23)。
【0086】
[第4の実施形態]
本発明の第4の実施形態に係る波情報推定技術について、図を参照して説明する。第4の実施形態に係る波情報推定技術では、第1、第2の実施形態に係る波情報推定技術に対して、波情報として波周期を含む点で異なる。第4の実施形態に係る波情報推定技術における波向の推定技術は、第1、第2の実施形態に係る波向の推定技術と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。また、第4の実施形態に係る波情報推定技術は、第3の実施形態に係る波情報推定技術に対して、波周期の推定方法において異なる。
【0087】
図18は、第4の実施形態に係る波情報推定部の機能ブロック図である。図18に示すように、第4の実施形態に係る波情報推定部10Bは、探知データ記憶部11、相関処理部12、波向ベクトル生成部13、波向推定部14、および、波周期推定部15Bを備える。探知データ記憶部11、相関処理部12、波向ベクトル生成部13、波向推定部14は、波情報推定部10と同様の構成を備え、同様の処理を実行するので、説明は省略する。
【0088】
図19は、第4の実施形態に係る波周期推定部の構成を示す機能ブロック図である。図19に示すように、波周期推定部15Bは、解析領域抽出部154、2DFFT処理部155、1Dスペクトル算出部156、ピーク距離算出部157、および、波周期算出部158を備える。
【0089】
図20(A)は、解析領域の抽出概念を示す図であり、図20(B)は、2DFFT処理結果を示す図であり、図20(C)は、1Dスペクトル波形を示す図である。
【0090】
解析領域抽出部154には、探知データ記憶部11から、2次元の探知データが入力される。また、解析領域抽出部154には、波向推定部14から、波向の方位が入力される。
【0091】
図20(A)に示すように、解析領域抽出部154は、2次元配列された探知データから、波向の方位θを含むように、2次元の解析領域fθ0(x、y)を抽出する。解析領域抽出部154は、解析領域fθ0(x、y)の探知データを、2DFFT処理部155に出力する。
【0092】
2DFFT処理部155は、解析領域fθ0(x、y)の探知データに対して、2次元FFT処理を実行し、図20(B)に示すような2次元周波数スペクトルを生成する。2DFFT処理部155は、2次元周波数スペクトルを、1Dスペクトル算出部156に出力する。
【0093】
1Dスペクトル算出部156は、2次元周波数スペクトルから、図20(C)に示すような1次元パワースペクトルを算出する。1Dスペクトル算出部156は、1次元パワースペクトルを、ピーク距離算出部157に出力する。
【0094】
ピーク距離算出部157は、1次元パワースペクトルから、図20(C)に示すようなピーク距離kpを算出する。ピーク距離算出部157は、ピーク距離kpを、波周期算出部158に出力する。
【0095】
波周期算出部158は、ピーク距離kp、重力加速度を含む定数を用いて、既知の演算式から、波周期を算出する。
【0096】
このような処理によって、波情報推定部10Bは、波情報として、波周期を、精度良く推定できる。この際、2DFFTを実行する解析領域は、波向の方位によって規定されており、全方位よりも小さい領域となる。これにより、波情報推定部10Bは、波周期の計算負荷を軽くできる。なお、この際、波周期算出部158がピーク距離kpの平均値を用いることによって、波周期の算出精度をさらに向上できる。
【0097】
(波周期推定方法2)
図21は、本発明の第4の実施形態に係る波周期推定方法の一例を示すフローチャートである。なお、図21のフローチャートで示す各処理の具体的な内容は、上述の構成の説明の際に説明している。したがって、以下の波周期推定方法の説明では、追加の必要な箇所のみを具体的に説明し、その他の箇所の説明は省略する。
【0098】
解析領域抽出部154は、波向(波向の方位)を用いて、2次元の探知データに対する解析領域を抽出する(S31)。2DFFT処理部155は、解析領域の探知データに対して、2次元FFT処理を実行する(S32)。
【0099】
1Dスペクトル算出部156は、2次元FFT処理結果を用いて、1次元パワースペクトルを算出する(S33)。ピーク距離算出部157は、1次元パワースペクトルから、ピーク距離を算出する(S34)。波周期算出部158は、ピーク距離を用いて、波周期を算出する(S35)。
【0100】
[第5の実施形態]
本発明の第5の実施形態に係る波情報推定技術について、図を参照して説明する。第5の実施形態に係る波情報推定技術では、第1、第2の実施形態に係る波情報推定技術に対して、波情報として波周期を含む点で異なる。第5の実施形態に係る波情報推定技術における波向の推定技術は、第1、第2の実施形態に係る波向の推定技術と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。また、第5の実施形態に係る波情報推定技術は、第3、第4の実施形態に係る波情報推定技術に対して、波周期の推定方法において異なる。
【0101】
図22は、第5の実施形態に係る波周期推定部の構成を示す機能ブロック図である。図22に示すように、波周期推定部15Cは、解析領域抽出部154C、1DFFT処理部159、ピーク距離算出部157、および、波周期算出部158を備える。
【0102】
図23(A)は、解析領域の抽出概念を示す図であり、図23(B)は、1Dスペクトル波形を示す図である。
【0103】
解析領域抽出部154Cには、探知データ記憶部11から、2次元の探知データが入力される。また、解析領域抽出部154Cには、波向推定部14から、波向の方位が入力される。
【0104】
図23(A)に示すように、解析領域抽出部154Cは、2次元配列された探知データから、波向の方位θを含む所定の方位範囲Δθを、解析領域Rn(Δθ)に設定する。解析領域抽出部154Cは、解析領域Rn(Δθ)の探知データを抽出する。解析領域抽出部154Cは、解析領域Rn(Δθ)の探知データを、1DFFT処理部159に出力する。
【0105】
1DFFT処理部159は、解析領域Rn(Δθ)の探知データに対して、方位毎に、1次元FFT処理を実行し、図23(B)に示すような1次元パワースペクトルを算出する。1DFFT処理部159は、1次元パワースペクトルを、ピーク距離算出部157に出力する。
【0106】
ピーク距離算出部157は、1次元パワースペクトルから、図23(B)に示すようなピーク距離kpを算出する。ピーク距離算出部157は、ピーク距離kpを、波周期算出部158に出力する。波周期算出部158は、ピーク距離kp、重力加速度を含む定数を用いて、既知の演算式から、波周期を算出する。
【0107】
このような処理によって、波周期推定部15Cは、波情報として、波周期を、精度良く推定できる。この際、波周期推定部15Cは、1DFFTを実行することで、2DFFT処理を実行するよりも、波周期の計算負荷を軽くできる。なお、この際、波周期算出部158がピーク距離kpの平均値を用いることによって、波周期の算出精度をさらに向上できる。
【0108】
(波周期推定方法2)
図24は、本発明の第5の実施形態に係る波周期推定方法の一例を示すフローチャートである。なお、図24のフローチャートで示す各処理の具体的な内容は、上述の構成の説明の際に説明している。したがって、以下の波周期推定方法の説明では、追加の必要な箇所のみを具体的に説明し、その他の箇所の説明は省略する。
【0109】
解析領域抽出部154Cは、波向(波向の方位)を用いて、2次元の探知データに対する方位範囲で規定した解析領域を抽出する(S41)。1DFFT処理部159は、解析領域の探知データに対して、1次元FFT処理を実行する(S42)。これにより、1次元パワースペクトルが、方位毎に得られる。
【0110】
ピーク距離算出部157は、1次元パワースペクトルから、ピーク距離を算出する(S43)。波周期算出部158は、ピーク距離を用いて、波周期を算出する(S44)。
【0111】
[第6の実施形態]
本発明の第6の実施形態に係る波情報推定技術について、図を参照して説明する。第6の実施形態に係る波情報推定技術では、第2の実施形態に係る波情報推定技術に対して、波情報の信頼性評価を行う点で異なる。第6の実施形態に係る波情報推定技術における波向の推定技術は、第2の実施形態に係る波向の推定技術と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0112】
図25は、第6の実施形態に係る波情報推定部の機能ブロック図である。図25に示すように、第6の実施形態に係る波情報推定部10Dは、探知データ記憶部11、相関処理部12、波向ベクトル生成部13、波向推定部14、および、信頼性評価部16Dを備える。探知データ記憶部11、相関処理部12、波向ベクトル生成部13、波向推定部14は、波情報推定部10と同様の構成を備え、同様の処理を実行するので、説明は省略する。
【0113】
信頼性評価部16Dは、例えば次に示す方法によって、波情報の信頼性を評価する。図26は、信頼性評価部で実行する処理を示すフローチャートである。
【0114】
信頼性評価部16Dは、複数の個別総合ベクトルのバラツキを算出する(S51)。信頼性評価部16Dは、複数の個別総合ベクトルが合成された総合ベクトルの振幅を取得する(S52)。
【0115】
信頼性評価部16Dは、複数の個別総合ベクトルのバラツキの大きさ、総合ベクトルの振幅を用いて、推定した波情報の信頼性を評価する。例えば、信頼性評価部16Dは、複数の個別総合ベクトルのバラツキが大きければ、信頼性が低いと評価し、バラツキが小さければ、信頼性が高いと評価する。なお、複数の個別総合ベクトルのバラツキとは、大きさのバラツキ、方位のバラツキの少なくとも一方を用いて決定される。また、例えば、信頼性評価部16Dは、総合ベクトルの振幅が小さければ、信頼性が低いと評価し、振幅が大きければ、信頼性が高いと評価する。
【0116】
[第7の実施形態]
本発明の第7の実施形態に係る波情報推定技術について、図を参照して説明する。第7の実施形態に係る波情報推定技術では、第4、第5の実施形態に係る波情報推定技術に対して、波情報の信頼性評価を行う点で異なる。第7の実施形態に係る波情報推定技術における波向の推定技術は、第4、第5の実施形態に係る波向の推定技術と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0117】
図27は、第7の実施形態に係る波情報推定部の機能ブロック図である。図27に示すように、第7の実施形態に係る波情報推定部10Eは、探知データ記憶部11、相関処理部12、波向ベクトル生成部13、波向推定部14、波周期推定部15E、および、信頼性評価部16Eを備える。探知データ記憶部11、相関処理部12、波向ベクトル生成部13、波向推定部14は、第4、第5の実施形態に係る波情報推定部と同様の構成を備え、同様の処理を実行するので、説明は省略する。
【0118】
波周期推定部15Eは、第4の実施形態に係る波周期推定部15B、または、第5の実施形態に係る波周期推定部15Cの構成を備える。波周期推定部15Eは、2次元FFT処理の結果、または、1次元FFT処理の結果を、信頼性評価部16Eに出力する。
【0119】
信頼性評価部16Eは、例えば次に示す方法によって、波情報の信頼性を評価する。図28は、信頼性評価部で実行する処理を示すフローチャートである。
【0120】
信頼性評価部16Eは、複数の個別総合ベクトルのバラツキを算出する(S51)。信頼性評価部16Eは、複数の個別総合ベクトルが合成された総合ベクトルの振幅を取得する(S52)。
【0121】
信頼性評価部16Eは、2次元FFT処理の結果、または、1次元FFT処理の結果における異常スペクトルを判定する。ここでの異常スペクトルとは、波以外の要因によって生じるスペクトルであり、例えば、他船、陸、偽造エコー等によって生じるスペクトルである。
【0122】
信頼性評価部16Eは、複数の個別総合ベクトルのバラツキの大きさ、総合ベクトルの振幅、異常スペクトルの判定結果を用いて、推定した波情報の信頼性を評価する。例えば、信頼性評価部16Eは、複数の個別総合ベクトルのバラツキが大きければ、信頼性が低いと評価し、バラツキが小さければ、信頼性が高いと評価する。また、例えば、信頼性評価部16Eは、総合ベクトルの振幅が小さければ、信頼性が低いと評価し、振幅が大きければ、信頼性が高いと評価する。また、例えば、信頼性評価部16Eは、異常スペクトルがあれば、信頼性が低いと評価し、異常スペクトルがなければ、信頼性が高いと評価する。
【0123】
[第8の実施形態]
本発明の第8の実施形態に係る波情報推定技術について、図を参照して説明する。第8の実施形態に係る波情報推定技術では、第3の実施形態に係る波情報推定技術に対して、波情報として波高を含む点で異なる。第8の実施形態に係る波情報推定技術における波向の推定技術は、第1、第2の実施形態に係る波向の推定技術と同様であり、第8の実施形態に係る波情報推定技術における波周期の推定技術は、第3の実施形態に係る波向の推定技術と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0124】
図29は、第8の実施形態に係る波情報推定部の機能ブロック図である。図29に示すように、第8の実施形態に係る波情報推定部10Fは、探知データ記憶部11、相関処理部12、波向ベクトル生成部13、波向推定部14、波周期推定部15F、波高推定部17F、および、ヒーブ計測部21を備える。探知データ記憶部11、相関処理部12、波向ベクトル生成部13、波向推定部14は、波情報推定部10と同様の構成を備え、同様の処理を実行するので、説明は省略する。また、波周期推定部15Fは、波周期推定部15Aと同様の構成であり、同様の処理を実行するので、説明は省略する。
【0125】
ヒーブ計測部21は、船舶9の鉛直方向の移動(ヒーブ)を計測する。ヒーブ計測部21は、例えば、加速度センサ、姿勢センサによって実現される。ヒーブ計測部21は、ヒーブを波高推定部17Fに出力する。
【0126】
波高推定部17Fは、波の波長とヒーブとを用いて、波高を推定する。具体的には、波高推定部17Fは、波周期から波の波長を算出する。波高推定部17Fは、波の波長と船舶9の船体長とを比較する。
【0127】
波高推定部17Fはヒーブの最高値Hvmaxとヒーブの最低値Hvminとを差分して、ヒーブ変化量ΔHを算出する。図30は、ヒーブの遷移の一例を示すグラフである。図30に示すように、波高推定部17Fは、隣接するヒーブの最高値Hvmaxとヒーブの最低値Hvminとを差分を、ヒーブ変化量ΔHとする。
【0128】
船体長が波の波長よりも小さければ、ヒーブ変化量ΔHと波高とは、ほとんど同じになる。したがって、船体長が波の波長よりも小さければ、波高推定部17Fは、ヒーブ変化量ΔHに約「1」の所定の係数を乗算することで、波高を算出する。
【0129】
船体長が波の波長よりも大きければ、ヒーブ変化量ΔHは波高の約1/3になり、波高は、ヒーブ変化量ΔHと波の波長との関数で表されることが、実験およびシミュレーションからわかった。したがって、船体長が波の波長よりも大きければ、波高推定部17Fは、ヒーブ変化量ΔHと波の波長とに基づく関数を設定し、この関数を用いて波高を算出する。
【0130】
このような構成および処理を用いることによって、波情報推定部10Fは、波情報として、波高を、軽い計算負荷で精度良く推定できる。
【0131】
(波高推定方法1)
図31は、第8の実施形態に係る波高推定方法の一例を示すフローチャートである。なお、図31のフローチャートで示す各処理の具体的な内容は、上述の構成の説明の際に説明している。したがって、以下の波高推定方法の説明では、追加の必要な箇所のみを具体的に説明し、その他の箇所の説明は省略する。
【0132】
ヒーブ計測部21は、ヒーブを計測する(S61)。波高推定部17Fは、ヒーブの変化量を算出する(S62)。波高推定部17Fは、波周期から波の波長を算出する(S63)。波高推定部17Fは、ヒーブの変化量と波の波長とを用いて、波高を推定する(S64)。
【0133】
[第9の実施形態]
本発明の第9の実施形態に係る波情報推定技術について、図を参照して説明する。第9の実施形態に係る波情報推定技術では、第3の実施形態に係る波情報推定技術に対して、波情報として波高を含む点で異なる。第9の実施形態に係る波情報推定技術における波向の推定技術は、第1、第2の実施形態に係る波向の推定技術と同様であり、第9の実施形態に係る波情報推定技術における波周期の推定技術は、第3の実施形態に係る波向の推定技術と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0134】
図32は、第9の実施形態に係る波情報推定部の機能ブロック図である。図32に示すように、第9の実施形態に係る波情報推定部10Gは、探知データ記憶部11、相関処理部12、波向ベクトル生成部13、波向推定部14、波周期推定部15G、波高推定部17G、および、ヒーブ計測部21を備える。探知データ記憶部11、相関処理部12、波向ベクトル生成部13、波向推定部14は、波情報推定部10と同様の構成を備え、同様の処理を実行するので、説明は省略する。また、波周期推定部15Gは、波周期推定部15Aと同様の構成であり、同様の処理を実行するので、説明は省略する。
【0135】
ヒーブ計測部21は、船舶9の鉛直方向の移動(ヒーブ)を計測する。ヒーブ計測部21は、例えば、加速度センサ、姿勢センサによって実現される。ヒーブ計測部21は、ヒーブを波高推定部17Fに出力する。
【0136】
波高推定部17Gは、波の波長とヒーブとを用いて、波高を推定する。具体的には、波高推定部17Gは、探知データのレベル変動から波の波長を算出する。例えば、波高推定部17Gは、探知データのレベルが、所定の基準レベルになる時刻差を波の周期として算出する。波高推定部17Gは、波の波長と船舶9の船体長とを比較する。
【0137】
波高推定部17Gは、波高推定部17Fと同様に、ヒーブの最高値Hvmaxとヒーブの最低値Hvminとを差分して、ヒーブ変化量ΔHを算出する。
【0138】
以下、波高推定部17Gは、波高推定部17Fと同様に、波の波長と船舶9の船体長とを比較に応じて、波高を算出する。
【0139】
このような構成および処理を用いることによって、波情報推定部10Gは、波情報として、波高を、軽い計算負荷で精度良く推定できる。
【0140】
また、この構成では、波向から算出される波周期を用いなくても、波高を推定できる。例えば、波情報推定部10Gは、波向と波高とを波情報として推定できる。
【0141】
(波高推定方法2)
図33は、第9の実施形態に係る波高推定方法の一例を示すフローチャートである。なお、図33のフローチャートで示す各処理の具体的な内容は、上述の構成の説明の際に説明している。したがって、以下の波高推定方法の説明では、追加の必要な箇所のみを具体的に説明し、その他の箇所の説明は省略する。
【0142】
ヒーブ計測部21は、ヒーブを計測する(S71)。波高推定部17Gは、ヒーブの変化量を算出する(S72)。波高推定部17Gは、探知データから波の波長を算出する(S73)。波高推定部17Gは、ヒーブの変化量と波の波長とを用いて、波高を推定する(S74)。
【0143】
なお、上述の各実施形態の構成および処理は、適宜組み合わせることが可能であり、それぞれの組み合わせに応じた作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0144】
9:船舶
10、10A、10B、10D、10E、10F、10G:波情報推定部
11:探知データ記憶部
12:相関処理部
13:波向ベクトル生成部
14:波向推定部
15A、15B、15C、15E、15F、15G:波周期推定部
16D、16E:信頼性評価部
17F、17G:波高推定部
21:ヒーブ計測部
90:探知装置
91:送信部
92:サーキュレータ
93:受信部
131:移動ベクトル推定部
132:単位移動ベクトル変換部
133:総合ベクトル算出部
151:距離ベクトル算出部
152:平均移動距離算出部
153:波周期算出部
154、154C:解析領域抽出部
155:2DFFT処理部
156:1Dスペクトル算出部
157:ピーク距離算出部
158:波周期算出部
159:1DFFT処理部
900:アンテナ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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