(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190233
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】プレス装置およびプレス装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
B30B 15/22 20060101AFI20221219BHJP
B30B 1/32 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
B30B15/22 C
B30B1/32 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098463
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】犬飼 友和
【テーマコード(参考)】
4E089
4E090
【Fターム(参考)】
4E089EA01
4E089EB03
4E089EC01
4E089ED02
4E089EF02
4E089FC05
4E090AA01
4E090AB01
4E090BA01
4E090DA03
4E090EC06
4E090HA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】成形物の重量等の加圧成形時の条件が変更された場合等であっても正確な制御を行うことのできるプレス装置およびプレス装置の制御方法を提供する。
【解決手段】下側の加圧部材21に載置された成形物M1を下側の加圧部材21と共に上昇させ上側の加圧部材19との間で加圧するプレス装置11は、成形物M1を加圧する加圧手段15と、前記加圧手段15の圧力または負荷を検出するセンサ27と、前記下側の加圧部材21と前記上側の加圧部材19の間の距離またはプレス装置本体部12に対する下側の加圧部材21の距離を検出するセンサ22とが備えられ、前記成形物M1が上側の加圧部材19に当接され、前記成形物M1と前記下側の加圧部材21と該下側の加圧部材21とともに上昇される部分16,17,18,M2とを合わせた重力と、前記加圧手段15の力とが均衡した状態における加圧手段15の力を検出する制御装置29を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下側の加圧部材に載置された成形物を下側の加圧部材と共に上昇させ、上側の加圧部材との間で加圧するプレス装置において、
成形物を加圧する加圧手段と、
前記加圧手段の圧力または負荷を検出するセンサと、
前記下側の加圧部材と前記上側の加圧部材の間の距離またはプレス装置本体部に対する下側の加圧部材の距離を検出するセンサとが備えられ、
前記成形物が上側の加圧部材に当接された状態で、前記成形物と前記下側の加圧部材と該下側の加圧部材とともに上昇される部分とを合わせた重力と、前記加圧手段の力とが均衡した状態における加圧手段の力を検出する制御装置を備えた、プレス装置。
【請求項2】
前記加圧手段は、加圧シリンダとモータの回転数を制御可能な回転数制御ポンプの組み合わせであり、
前記加圧手段の圧力または負荷を検出するセンサは、作動油の圧力を検出する圧力センサである、請求項1に記載のプレス装置。
【請求項3】
下側の加圧部材に載置された成形物を下側の加圧部材と共に上昇させ、上側の加圧部材との間で加圧するプレス装置の制御方法において、
前記成形物と前記下側の加圧部材を上側の加圧部材に向けて上昇させ、
前記成形物が上側の加圧部材に当接された状態で加圧手段により前記成形物と前記下側の加圧部材を上昇させる力がゼロの状態を発生させ、
前記加圧手段により前記成形物と前記下側の加圧部材を上昇させる力がゼロの状態における前記加圧手段の力を検出するプレス装置の制御方法。
【請求項4】
前記加圧手段により検出された力を基準に加圧工程の加圧手段の制御を行う、請求項3に記載のプレス装置の制御方法。
【請求項5】
下側の加圧部材に載置された成形物を下側の加圧部材と共に上昇させ、上側の加圧部材との間で加圧するプレス装置の制御方法において、
前記成形物と前記下側の加圧部材を上側の加圧部材に向けて上昇させて前記成形物が上側の加圧部材に当接されたことが検出されると基準圧力検出工程を開始し、
前記基準圧力検出工程では、
加圧手段の圧力を徐々に低下させ、
前記上側の加圧部材と前記下側の加圧部材の距離が大きくなったことが検出されると次に前記加圧手段の圧力を徐々に上昇させるとともに前記上側の加圧部材と前記下側の加圧部材の距離を検出することを少なくとも1回以上行い、
前記加圧手段の圧力低下時または圧力上昇時に前記上側の加圧部材と下側の加圧部材の距離の変動またはプレス装置本体部に対する下側の加圧部材の距離の変動が所定値以内または変動が無くなった時点における前記加圧手段の圧力を加圧手段の基準圧力とするプレス装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下側の加圧部材に載置された成形物を下側の加圧部材と共に上昇させ、上側の加圧部材との間で加圧するプレス装置およびプレス装置の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プレス装置には、下側の加圧部材に載置された成形物に対して上側の加圧部材を下降させて下側の加圧部材との間で加圧するプレス装置と、下側の加圧部材に載置された成形物を下側の加圧部材と共に上昇させ上側の加圧部材との間で加圧するプレス装置が存在する。後者のプレス装置の場合は、上側の加圧装置の重量が加圧力に追加されないので、前者のプレス装置との比較において高精度な加圧制御が行いやすい。また後者のプレス装置は、加圧手段が単動の油圧シリンダの場合であっても下側の加圧部材の下降(型開)が容易となる。そのため後者のプレス装置は、熱板間の間で比較的長時間の加圧を行うホットプレス装置などに利用されている。
【0003】
後者の下側の加圧部材に載置された成形物を下側の加圧部材と共に上昇させ上側の加圧部材との間で加圧するプレス装置の例としては、特許文献1、特許文献2に記載されたものが知られている。特許文献1では、液圧プレス装置が液圧制御手段により面圧制御を行っているときは距離制限を行って板厚が所定以上に変化することを防止し、距離制御手段により板厚制御を行っているときは、面圧制限を行って面圧が所定以上に変化することを防止することが記載されている。また特許文献2では、プレス装置の油圧源に回転数を制御可能かつ吐出量を変更可能なポンプを用い、前記ポンプを制御して設定油圧2MPa以下の低圧領域の加圧工程の制御を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63-242500号公報
【特許文献2】特開2012-35317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1のプレス装置、特許文献2のプレス装置はいずれも成形物の重量や成形物を載置した熱板等の加圧部材の重量については加圧工程における圧力制御等に厳密に反映されているものではなかった。この点について特許文献2の[0026]に加圧盤等の重量を差し引きしないと実際の面圧p2が演算で求められないことが記載されてはいるがどのようにして加圧盤等の重量を算出し加圧成形に反映させているかについては記載が無い。
【0006】
そこで本発明では上記の問題を鑑みて、成形物の重量等の加圧成形時の条件が変更された場合等であっても正確な制御を行うことのできるプレス装置およびプレス装置の制御方法を提供することを目的とする。
【0007】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に記載のプレス装置は、下側の加圧部材に載置された成形物を下側の加圧部材と共に上昇させ、上側の加圧部材との間で加圧するプレス装置において、成形物を加圧する加圧手段と、前記加圧手段の圧力または負荷を検出するセンサと、前記下側の加圧部材と前記上側の加圧部材の間の距離またはプレス装置本体部に対する下側の加圧部材の距離を検出するセンサとが備えられ、前記成形物が上側の加圧部材に当接された状態で、前記成形物と前記下側の加圧部材と該下側の加圧部材とともに上昇される部分とを合わせた重力と、前記加圧手段の力とが均衡した状態における加圧手段の力を検出する制御装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のプレス装置は、下側の加圧部材に載置された成形物を下側の加圧部材と共に上昇させ、上側の加圧部材との間で加圧するプレス装置において、成形物を加圧する加圧手段と、前記加圧手段の圧力または負荷を検出するセンサと、前記下側の加圧部材と前記上側の加圧部材の間の距離またはプレス装置本体部に対する下側の加圧部材の距離を検出するセンサとが備えられ、前記成形物が上側の加圧部材に当接された状態で、前記成形物と前記下側の加圧部材と該下側の加圧部材とともに上昇される部分とを合わせた重力と、前記加圧手段の力とが均衡した状態における加圧手段の力を検出する制御装置を備えるので、成形物の重量等の加圧成形時の条件が変更された場合等であっても正確な加圧制御を行うことができる。また本発明のプレス装置の制御方法についても同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態のプレス装置の成形物の載置時の概略図である。
【
図2】本実施形態のプレス装置の基準圧力検出工程の際の概略図である。
【
図3】本実施形態のプレス装置の基準圧力検出工程の制御をフローチャート図である。
【
図4】本実施形態のプレス装置の基準圧力検出工程の制御において基準圧力の算出方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態のプレス装置について
図1および
図2を参照して説明する。本実施形態のプレス装置11は、多段のホットプレスであり、下側の加圧部材に載置された成形物を下側の加圧部材と共に上昇させ、上側の加圧部材との間で加圧する。
【0012】
プレス装置11の構造について説明すると、プレス装置11の上側に固定的に設けられたプレス本体部である上盤12と下側の下盤13の間は、タイバ14により接続されている。下盤13には加圧手段である加圧シリンダ15が取付けられている。下盤13側に取り付けられ、プレス本体部である加圧シリンダ15にはシリンダ部15aに対して昇降するラム16が備えられ、前記ラム16の前面は可動盤17の背面に固定されている。可動盤17の上面には加圧部材である下熱板18が固定的に取り付られている。また上側の上盤12の下面にも加圧部材である上熱板19が取り付られている。
【0013】
更には下熱板18と上熱板19の間には図示しない載置部に載置され前記下熱板18の上昇とともに上昇される中間熱板21が可動的に形で取り付けられている。
図1の例では、中間熱板21は1枚であるが、中間熱板21の数は限定されず、中間熱板21を備えないものでもよい。中間熱板21が複数枚の場合は、最上位置の中間熱板21が、上盤12に対する距離が測定される下側の加圧部材となる。熱板18,19,21は加圧面がそれぞれ平滑に形成された矩形の所定板厚の金属板であり、内部には熱媒油、蒸気または水等の温度制御用媒体が流通されるための通路が形成されている。また熱板18,19,21内にヒータを設けて直接加熱するものでもよい。
【0014】
プレス装置11の上盤12の側面には位置センサ22の一方の検出部22aが取り付けられ、中間熱板21の側面には、前記位置センサ22の被検出部22bが取り付けられている。従って位置センサ22は、プレス装置本体部である上盤12に対する下側の加圧部材である中間熱板21の距離を検出するセンサである。本実施形態では位置センサ22は非接触式のレーザーセンサまたは超音波センサが用いられているが、リニアスケール等を使用してもよく種類は限定されない。また位置センサが取り付けられる位置は、上盤12に取り付けられる上熱板19と中間熱板21の間が直接測定されるように位置センサを取り付けてもよい。更に位置センサは、プレス本体部である下盤13と中間熱板21の間の距離を測定するものや、ラム16の昇降位置を検出するものなどでもよい。位置センサ22により熱板19,21同士の距離を検出したほうが熱板間の距離は正確に検出されるが、熱板19,21から発生する熱の影響をセンサが受けて検出結果に影響が出たり位置センサの寿命が短くなる場合は不利な場合もある。
【0015】
また上盤12の内部にはリミットスイッチ23が取り付けられている。そして加圧シリンダ15の作動により成形物M1が上熱板19に当接したことが前記リミットスイッチ23により検出可能となっている。なおリミットスイッチ23は、上盤12の側面や上熱板19の側面に取り付けられ、中間熱板21が接触位置まで上昇したことを検出するものでもよい。また本発明においてリミットスイッチ23は必須のものではない。更に本実施形態ではプレス装置11は、外界と区画可能なチャンバ(図示せず)の中に収容され、前記チャンバには真空装置の真空ポンプ(図示せず)が接続されている。ただしプレス装置11は、チャンバを備えず、大気下で加圧されるものでもよい。
【0016】
本実施形態の加圧シリンダ15は、単動シリンダでありシリンダ部15aの内部に加圧用油室15bしか備えておらず、構造が簡略化されたものである。しかし加圧手段の加圧シリンダ15は加圧用油室と下降用油室を備えた複動シリンダであってもよい。加圧シリンダ15は、管路24を介してポンプの回転数を制御可能な回転数制御ポンプ25に接続されている。管路24の途中には作動油の供給または供給停止を選択できる切替バルブ26が設けられている。更に管路24または加圧シリンダ15の加圧用油室15bには加圧シリンダ15の作動油の圧力を検出する圧力センサ27が取り付けられている。圧力センサ27は、加圧手段の圧力を検出するセンサである。本実施形態では回転数制御ポンプ25は双方向に回転可能なギアポンプであり、サーボモータ28によりポンプの回転数が制御可能となっている。そして回転数制御ポンプ25が正回転された際はタンク20から加圧シリンダ15に作動油を供給し、逆回転された際はタンク20に作動油が戻されるようになっている。しかし回転数制御ポンプの種類はギアポンプに限定されずアキシャルピストンポンプ等でもよく、双方向に作動油が送られるポンプでなくてもよい。また回転数制御ポンプ25は回転数がクローズドループ制御可能なものであれば、インバータによりサーボモータ28以外のモータが作動されるものでもよい。また油圧回路の管路24に圧力制御型のリリーフバルブ等を接続したものでもよい。
【0017】
プレス装置11には制御装置29が付設されている。制御装置29はサーボアンプ30を含み複数の制御機器からなっていることが多いが、ここでは概念的に1つの装置として図示している。制御装置29は、回転数制御ポンプ25のサーボモータ28に接続され、サーボモータ28に供給される電流値などが制御可能となっている。またサーボモータ28のロータリエンコーダ31とも接続され、サーボモータ28の回転数を検出してクローズドループ制御が可能となっている。また制御装置29は切替バルブ26のソレノイドに接続されている。
【0018】
更に制御装置29は、位置センサ22、リミットスイッチ23、および圧力センサ27や、その他図示しない温度センサ等とも接続され、プレス装置11の状態が検出可能となっている。また制御装置29内の記憶部(図示せず)には、後述する基準圧力検出工程や加圧工程をシーケンス制御するためのプログラムが格納され、演算装置(図示せず)によりそれらの工程の制御が可能となっている。制御装置29は、成形物M1が上側の加圧部材である上熱板19に当接(密着)され、成形物M1と下側の加圧部材である中間熱板21と該下側の加圧部材である中間熱板21とともに上昇される部分(ここではラム16+可動盤17+下熱板18+下熱板18に載置された成形物M2)とを合わせた重力と、加圧手段である加圧シリンダ15の圧力(力)とが均衡した状態における加圧手段の圧力(力)を基準圧力(基準の力)として加圧工程の加圧制御を行う機能を有している。
【0019】
次に
図2のプレス装置の基準圧力検出工程の際の概略図、
図3のフローチャート図、および
図4の基準圧力の算出方法を示す図により本発明のプレス装置11の制御方法、とりわけ基準圧力検出工程について説明する。最初に
図1に示されるように下熱板18の上面と中間熱板21の上面に回路基板等の成形物M2,M1がそれぞれ載置される。一般的には1枚の熱板19,21に載置される回路基板はプレスプレート等を挟んで複数枚重ねられた成形物であり、加圧成形される回路基板によって重量もそれぞれ相違する。
【0020】
次にチャンバを閉鎖してチャンバ内を真空した状態かまたはチャンバを開放した状態のまま基準圧力検出工程を開始する。基準圧力検出工程では、サーボモータ28を駆動して回転数制御ポンプ25をクローズドループ制御により駆動して開放された切替バルブ26を介して加圧シリンダ15の加圧用油室15b内に作動油を供給する(s1)。そのことによりラム16とともに可動盤17と下熱板18に載置した成形物M2が上昇され、成形物M2が可動的に設けられた中間熱板21の下面に接触する。
【0021】
そして前記成形物M1と上盤12に取り付けられた上熱板19とが当接(密着)されたことは、リミットスイッチ23により検出される(S2=Y)。なお上熱板19と成形物M1が当接されたことは、圧力センサ27により検出値がある地点から上昇したことが検出されたことなどにより求めてもよい。成形物M1が上側の加圧部材である上熱板19に当接(密着)されたことがリミットスイッチ23等により検出され制御装置29に送られると基準圧力検出工程が開始される。
【0022】
基準圧力検出工程では、制御装置29から回転数制御ポンプ25のサーボモータ28を制御(ここでは逆回転制御)することにより、加圧シリンダ15の圧力(力)を徐々に低下させる(s3)。この際、回転数制御ポンプ25の目標圧力の制御は、所定時間毎またはスキャンサイクル毎に前の目標圧力よりも後の目標圧力のほうが低い値になるように設定を行う。この際の目標圧力の低下幅は、最小値ではない幅とする。そして低下方向に向けて順次設定された目標圧力に加圧シリンダ15の圧力が追従するようにクローズドループ制御により圧力を徐々に低下させていく。またはこの際に流量制御の要素を取り入れて圧力低下速度も制御するようにしてもよい。
【0023】
そして上盤12に対する下側の加圧部材である中間熱板21の距離が大きくなったことが位置センサ22により検出される(s4)とその際の加圧手段から検出される力に相当する加圧シリンダ15の圧力(圧力センサ27の検出値)1Aを圧力センサ27により検出し、制御装置29に記憶部に記憶する。なお位置センサ22において直接的に測定されるのは、上盤12と中間熱板21の距離であるが、上側の加圧部材である上熱板19と下側の加圧部材である中間熱板21の距離も同時に間接的に測定される。この際に上熱板19の下面と成形物M1の上面の密着は一次的に解消されることもあれば、成形物M1が弾性を備えたものの場合は、密着状態が維持されるものもある。
【0024】
次に制御装置29からの指令により回転数制御ポンプ25のサーボモータ28を正回転させて加圧シリンダ15の加圧用油室15bに作動油を再供給し、加圧シリンダ15の圧力(力)を徐々に増加させる(s5)。この際、回転数制御ポンプ25の目標圧力の制御は、所定時間毎またはスキャンサイクル毎に前の目標圧力よりも後の目標圧力のほうが高い値になるように設定を行う。この際の目標圧力の上昇幅は、最小値ではない幅とする。そして上昇方向に向けて順次設定された目標圧力に加圧シリンダ15の圧力が追従するようにクローズドループ制御により圧力を徐々に上昇させていく。またはこの際に流量制御の要素を取り入れて圧力上昇速度も制御するようにしてもよい。その際同時に位置センサ22により上盤12と中間熱板21の距離を検出し、前記距離が小さくなったことが検出される(s6)と、回転数制御ポンプ25のサーボモータ28の正回転を停止させ、その際の加圧手段から検出される力に相当する加圧シリンダ15の圧力(圧力センサ27の検出値)1Bを制御装置29の記憶部に記憶する。
【0025】
この際に成形物M1、中間熱板21、中間熱板とともに加圧手段によって上昇される部分(ここではラム16+可動盤17+下熱板18+成形物M2)を合わせた重力と加圧手段である加圧シリンダ15の圧力(力)とが均衡した状態を発生させることができれば、基準圧力検出工程は終了となる。なお前記重力と前記圧力が均衡した状態とは、演算上完全に均衡した状態のみならず、実質的に中間熱板21が昇降しない状態であればよい。
【0026】
ただし本実施形態では1回の加圧シリンダ15の圧力低下制御と圧力上昇制御で前記重力と前記圧力(力)が均衡した状態を達成することは、殆ど想定されていない。そのため次に前回測定し記憶されている中間熱板21等の下降時の加圧シリンダ15の圧力(圧力センサ27の検出値)1Aと中間熱板21等の上昇時の加圧シリンダ15の圧力(圧力センサ27の検出値)1Bの間の範囲内で加圧シリンダ15の圧力を上昇させたり下降させたりして、前記重力と前記圧力(力)が均衡して中間熱板21等が上昇も下降もしない加圧シリンダ15の圧力を探る制御をスタートする(s7)
【0027】
2回目に回転数制御ポンプ25を逆回転させる等により作動させて目標圧力を低下させる場合は、加圧シリンダ15を制御可能な目標圧力の中で前記1回目よりも所定時間毎やスキャンサイクル毎の圧力変動幅を小さくした目標圧力を順次設定して圧力を前回よりも緩やかに徐々に低下させていくように、制御装置29から回転数制御ポンプ25のサーボモータ28に指令値を送信する(s8)。そして前記上側の加圧部材である上盤12(上熱板19を含む)と下側の加圧部材である中間熱板21の距離が大きくなったことが位置センサ22により検出される(s9)とその際の加圧シリンダ15の圧力(圧力センサ27の検出値)2Aを制御装置29の記憶部に記憶する。
【0028】
次に制御装置29からの指令により回転数制御ポンプ25のサーボモータ28を正回転させて加圧シリンダ15の加圧用油室15bに作動油を再々供給し、加圧シリンダの圧力(力)を徐々に増加させる(s5)。この際、今回の中間熱板等の下降時の加圧シリンダの圧力(圧力センサ27の検出値)1Aと前回の中間熱板等の上昇時の加圧シリンダの圧力(圧力センサ27の検出値)1Bの間の範囲内で、前記1回目よりも所定時間毎やスキャンサイクル毎の圧力変動幅を小さくした設定値を順次設定して目標圧力を前回よりも緩やかに徐々に上昇させるように、加圧シリンダ15の設定圧力に定め、制御装置29から回転数制御ポンプ25のサーボモータ28に指令値を送信する。そして加圧シリンダ15の圧力(力)を前回よりも緩やかに徐々に増加させる(s10)。なお前回(s64)で検出された作動油の圧力1Bの近傍までは比較的高速で圧力を上昇させ、そこから低速で圧力上昇させるようにしてもよい。その際同時に位置センサ22により上盤12と中間熱板21の距離を検出し、前記距離が小さくなったことが検出される(s11)と、回転数制御ポンプ25のサーボモータ28の正回転を停止させ、その際の加圧シリンダ15の圧力(圧力センサ27の検出値)2Bを記憶部に記憶する。
【0029】
そして前記加圧シリンダ15の圧力低下時または圧力上昇時に前記上側の加圧部材である上盤12と下側の加圧部材である中間熱板21の距離の変動が所定値以内または変動が無くなるまで(s8)から(s11)の制御を繰り返し、中間熱板21の距離の変動が無くなった時点(加圧シリンダ15の圧力(力)と中間熱板21等の重力が均衡した状態)で、加圧シリンダ15の圧力上昇制御または圧力低下制御を終了する(s12)。
【0030】
図3のフローチャートでは、初回の加圧シリンダ15の圧力上昇制御と圧力低下制御の後、
加圧シリンダ15の圧力低下制御と圧力上昇制御で前記重力と前記圧力(力)が均衡した状態を達成するまで加圧シリンダ15の圧力上昇制御と圧力低下制御を繰り返す例が記載されているが、圧力上昇制御および圧力低下制御の回数については、加圧手段による加圧力(下側の加圧部材である中間熱板21と成形物M1とを上昇させる力)がゼロ(0)の状態を発生させることが前提であり回数Nは限定されない。また圧力上昇制御、圧力低下制御のどちらの過程で加圧手段により成形物M1を加圧する加圧力(上昇力)がゼロになったとして基準圧力検出工程を終了するものでもよい。
【0031】
また上記の基準圧力検出工程の制御は、
図4の基準圧力の算出方法を示す図にも示されているように、1回目の位置センサ22により検出される距離が大きくなり始めた作動油の圧力1A、1回目の位置センサ22により検出される距離が小さくなり始めた作動油の圧力1B、2回目の位置センサ22により検出される距離が大きくなり始めた際の作動油の圧力2A、2回目の位置センサ22により検出される距離が小さくなり始めた際の作動油の圧力2Bを順に求めながら、加圧シリンダ15の作動油の圧力の上下動の幅を小さくしていくことが望ましい。そしてその位置センサ22による距離の変動が無くなった際の加圧シリンダ15の圧力を加圧工程の加圧シリンダ15の基準圧力(基準の力)として制御装置29の記憶部に記憶する(s13)。即ち、成形物M1が上側の加圧部材である上熱板19に当接(密着)された状態で加圧手段である加圧シリンダ15の中間熱板21と成形物M1とを上昇させる上昇力がゼロの状態を発生させ、その際の加圧シリンダ15から検出される力(圧力センサ27によって検出される圧力の値)を基準圧力として前記記憶部に記憶しておき、前記基準圧力を用いて加圧工程の加圧制御が行われる。
【0032】
なお
図4の例では、加圧シリンダ15の圧力を上昇させて上側の加圧部材である上盤12(上熱板19を含む)と下側の加圧部材である中間熱板21の距離を小さくする制御と、加圧シリンダ15の圧力を低下させて上側の加圧部材である上盤12(上熱板19を含む)と下側の加圧部材である中間熱板21の距離を大きくする制御を4回行った上で、5回目の作動にて距離変化なし(加圧シリンダ15により成形物M1に及ぼす加圧力がゼロの状態=前記成形物M1と前記下側の加圧部材と該下側の加圧部材とともに上昇される部分とを合わせた重力と加圧手段の力とが均衡した状態)を発生させている。しかし前記の加圧シリンダ15の圧力上昇制御または圧力低下制御は少なくとも1回以上行い、加圧シリンダ15の圧力上昇制御時または圧力低下制御時にプレス装置本体部の上盤12に対する下側の加圧部材である中間熱板21の距離の変動、または前記上側の加圧部材である上熱板19と下側の加圧部材である中間熱板21の距離の変動が所定値以内または変動が無くなった時点(加圧手段の上昇力がゼロの状態)における前記加圧手段から検出された圧力(力)を加圧工程の加圧手段の基準圧力(基準の力)とするようにしてもよい。
【0033】
なお中間熱板21に載置された成形物M1と上熱板19が当接状態(密着状態)において加圧手段の加圧部材を上昇させる力がゼロの状態とは、成形物M1に対して加圧シリンダ15側から前記成形物M1と中間熱板21を押し上げる方向に働く力が実質的にゼロであり、成形物M1と中間熱板21が上熱板19に向けて押圧されない状態である。この際に加圧シリンダ15に発生している力は、圧力センサ27により作動油の圧力として検出されるが当然ながら正圧である。そして前記作動油の圧力(力)を基準に次の加圧工程の加圧制御が行われる。なお前記作動油の圧力(力)については、成形物M1が上熱板19に当接(密着)していてなおかつ上昇も下降もしない状態を保つことが可能な範囲であれば幅があってもよい。
【0034】
なお成形物M1が上熱板19に当接(密着)していてなおかつ加圧シリンダ15の上昇力がゼロの状態では成形物M1に加えられる押圧力はゼロまたは実質的に無視できるゼロ近傍の値であるが、下熱板18に載置される成形物M2には、中間熱板21と成形物M1の重力が作用しているので、成形物M2に加えられる押圧力はゼロではない。ただし中間熱板21を上方に向けて引き上げる補助シリンダ等を用いれば、下熱板18に載置される成形物M2も前記押圧力をゼロまたはゼロ近傍にすることができる。補助シリンダ等を使用しない場合、加圧シリンダ15による上昇力をゼロにした際に全ての成形物に対する押圧力をゼロにできるのは、下熱板18に載置された成形物M2と固定的に設けられた上熱板19の間で成形物M2を加圧成形する場合のみである。
【0035】
前記基準圧力検出工程において求められた基準圧力(電動モータの場合は基準力検出工程における基準の力)は、次の加圧工程での制御に用いられる。加圧工程において前記基準圧力検出工程で求められた基準圧力は、制御の際の原点として使用してもよく、制御装置29により前記基準圧力を演算式に代入して指令値等を生成して使用してもよい。または基準圧力に対して作業者による演算を介在させて加圧工程等で使用する指令値等を設定してもよい。具体的には成形物M1と下側の加圧部材と該下側の加圧部材とともに上昇される部分とを合わせた重力と、加圧手段の力とが均衡した状態における加圧手段の加圧シリンダ15の油圧の検出値が仮に3.0MPaであった場合、前記3.0MPaを0MPaに読み替えて加圧工程の加圧シリンダ15の制御を行ってもよい。また成形物に対して所望の面圧となるように加圧シリンダ15の設定圧力を設定する場合に前記基準圧力を用いてもよい。
【0036】
本発明については上記の実施形態の例に限定されず、次のようなものでもよい。プレス装置11は下側の加圧部材に載置された成形物を下側の加圧部材と共に上昇させ、上側の加圧部材との間で加圧するものであれば、加圧部材の形状は熱板18,19,21のように平坦なものに限定されない。上型の加圧部材と下側の加圧部材のいずれか一方が凹部を備えた型であり、いずれか他方が凸部を備えた型でもよい。
【0037】
プレス装置11の上盤12側の上熱板19は上盤12に設けられた保持部に保持されていて、リミットスイッチ23の検出時やその後の加圧時に上盤12の下面と該上盤12に対して上昇された上熱板19の上面が当接(密着)されるものでもよい。上熱板19が保持のみされている場合、上熱板19の上盤12に取り付けた位置センサ22により検出される上熱板19と中間熱板21の距離は、加圧シリンダ15により昇圧時は簡単に測定できる。しかしそれ以外のケースでは、加圧シリンダ15の中間熱板21等を上昇させる力がゼロの状態であって上熱板19が保持部に保持されており、成形物M1の上面と上熱板19の下面が当接(密着)されているときに位置センサ22により間接的に上熱板19と中間熱板21の距離が測定される(熱膨張の影響は除く)。またプレス装置11の上熱板19が上盤12に保持のみされている場合、前記基準圧力検出工程で最初に加圧手段の圧力を徐々に低下させ、上熱板19が僅かに下降して保持部に保持された時点から、本発明の
図3のフローチャートの(S3)の制御が開始される。
【0038】
プレス装置は、特開2002-307467号に示されるように、上盤に複数の型締サイドシリンダ(加圧手段)が設けられ、型締サイドシリンダのロッドが下側の可動盤にそれぞれ取り付けられたものでもよい。この装置の場合、型締サイドシリンダのピストンヘッドよりも下側の型締側の油室の圧力を上昇または低下させることにより、可動盤、下熱板、中間熱板等を昇降させてこれらの部材の重力と、型締サイドシリンダの圧力が均衡して型締サイドシリンダの上昇力ゼロの状態の型締側の油室の圧力を検出する。
【0039】
プレス装置11は、成形物M1等を下側から加圧する加圧シリンダ15等の加圧手段の他に、下側の加圧部材21等と共に成形物M1等を上昇させて加圧開始位置まで移動させ、または下降させて型開位置まで移動させる加圧部材の昇降手段を別個に設けたものでもよい。加圧部材の昇降手段は、油圧シリンダ等のシリンダまたはサーボモータ等の電動モータとボールねじ機構等から構成される。この場合、上昇させた下側の加圧部材をハーフナット等によりタイバ等に係止してから加圧手段を作動させることが一般的となる。
【0040】
またプレス装置11の加圧シリンダ15の圧力制御は、回転数を制御する回転数制御ポンプ25を用いないものでもよい。即ち回転数制御を伴わないポンプから送られる作動油をクローズドループ制御可能な圧力制御弁により圧力制御を行うものでもよい。圧力制御弁を用いたプレス装置の場合、基準圧力検出工程において圧力を低下させる際の設定値や圧力を上昇させる際の設定値は、制御装置29から圧力制御弁を制御することにより行われる。
【0041】
また本発明の基準圧力検出工程の加圧シリンダ15の圧力低下制御において、1回目の中間熱板21等の下降時に記憶された圧力1Aに対して、2回目に加圧シリンダ15の圧力を低下させる際は、圧力1Aの近傍までは比較的高速で圧力を低下させそこから低速で圧力を低下させるようにしてもよい。また圧力上昇制御においても、1回目の中間熱板21等の上昇時に記憶された圧力1Bに対して、2回目に加圧シリンダ15の圧力を上昇させる際は、圧力1Bの近傍までは比較的高速で圧力を上昇させそこから低速で圧力を上昇させるようにしてもよい。更には加圧シリンダ15の圧力低下制御は、その少なくとも一部に回転数制御ポンプ25や圧力制御弁による制御を行わずに加圧シリンダ15や油圧回路から作動油のリークにより圧力を低下させることを行うものでもよい。作動油のリークを用いる方法は、時間はかかるが緩やかな圧力の低下による正確な制御が期待できる。
【0042】
プレス装置11の加圧手段については、サーボモータ等の電動モータを用いたものでもよい。その際、電動モータから下側の加圧部材に加圧力を伝達する機構は、ボールねじとボールねじナットの組み合わせが好適に用いられる。ただし更にトグル機構やクランク機構などの倍力機構を用いてもよい。また電動モータを用いる場合も、加圧手段の電動モータと下側の加圧部材を昇降させる電動モータは別のモータとしてもよい。またプレス装置11の加圧手段がサーボモータの場合、上側の加圧部材と下側の加圧部材の距離を検出するセンサは、サーボモータに付設されるロータリエンコーダであってもよく、専用に設けられたリニアスケール等の位置センサであってもよい。また加圧手段に電動モータを使用した場合の力の検出は、ロードセルにより負荷(力)を検出するものが一般的であるが、電動モータへの電流値または電動モータのトルクを検出するものでもよい。単に電動モータへの電流値を上昇または低下させることにより電動モータのトルクを上昇または低下させ、その際の下側の加圧部材の変位を検出するとともにその際の電流値(負荷)やトルク(負荷)を検出して基準の力とするものでもよい。サーボモータ等の電動モータを用いたプレス装置についても、加圧手段である電動モータは上盤側に設けられ、ボールねじ等に挿通されるボールねじナットが取り付けられた下可動盤を上盤に向けて引き上げて加圧する方式であってもよい。
【0043】
プレス装置において加圧成形される成形物は、各種の回路基板の他、半導体、プリプレグ、樹脂板、繊維樹脂板、木材合板、セラミックスといった成形物であってもよい。また加圧時間については、一定時間以上(これに限定されるものではないが一例として30秒ないし10時間)加圧成形するようなケースにおいて有効である。逆に瞬間的な加圧を行う金属打ち抜きプレス等への本発明の採用は不可能ではないにしても好適ではない。また本発明は、成形物の重量や厚みは変動するものがより有利に利用される。1枚の加圧部材に載置される成形物の重量については、これに限定されるものではないが一例として一段の熱板に1kg以上の成形物を載置する場合、本発明は好適に利用される。
【0044】
また更に本発明は、成形物の重量が変更される場合以外にも加圧成形時の条件が変更される場合にも好適に用いられる。例えばプレス装置11が使用される季節や成形条件により加圧シリンダ15において使用される作動油の温度が変化する場合などにも好適に用いられる。更には成形物の種類の変更によりプレス装置11の熱板18,19,21の温度が変更されると熱板18,19,21や、その他のプレス装置11の部材が熱膨張の影響を受ける場合などにも好適に用いられる。
【0045】
また本発明については、一々列挙はしないが、上記した本実施形態やその他のバリエーションのものに限定されず、当業者が本発明の趣旨を踏まえて変更を加えたものや、本実施形態やバリエーションの各記載を掛け合わせたものについても、適用されることは言うまでもないことである。
【0046】
11 プレス装置
12 上盤(プレス装置本体部)
13 下盤(プレス装置本体部)
14 タイバ
15 加圧シリンダ(加圧手段)
16 ラム
17 可動盤
18 下熱板
19 上熱板(上側の加圧部材)
20 タンク
21 中間熱板(下側の加圧部材)
22 位置センサ(センサ)
23 リミットスイッチ
24 管路
25 回転数制御ポンプ
26 切替バルブ
27 圧力センサ(センサ)
28 サーボモータ(モータ)
29 制御装置
30 サーボアンプ
31 ロータリエンコーダ