(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190234
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
H02G 3/30 20060101AFI20221219BHJP
H02G 3/04 20060101ALI20221219BHJP
H01B 7/00 20060101ALI20221219BHJP
F16B 2/08 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
H02G3/30
H02G3/04 062
H01B7/00 301
F16B2/08 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098466
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒川 弘行
【テーマコード(参考)】
3J022
5G309
5G357
5G363
【Fターム(参考)】
3J022DA12
3J022EA32
3J022EB02
3J022EB14
3J022EC14
3J022EC22
3J022FB07
3J022FB12
3J022GA03
3J022GB54
3J022GB75
5G309AA10
5G309AA11
5G357DA06
5G357DB03
5G357DC12
5G357DD01
5G357DD05
5G357DD10
5G357DE10
5G363AA12
5G363AA16
5G363BA02
5G363DA13
5G363DA15
5G363DA16
5G363DA20
5G363DC02
(57)【要約】
【課題】より容易にクランプの横ずれを抑制する。
【解決手段】取付対象に取り付け可能なワイヤハーネスであって、電線部材と、前記電線部材の外周面に巻回されているテープ部材と、前記テープ部材の外周面に取り付けられているベルトと、前記ベルトから径方向外側に突出し、前記取付対象に係合可能な係合部と、を有するクランプと、を備える、ワイヤハーネス。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付対象に取り付け可能なワイヤハーネスであって、
電線部材と、
前記電線部材の外周面に巻回されているテープ部材と、
前記テープ部材の外周面に取り付けられているベルトと、前記ベルトから径方向外側に突出し、前記取付対象に係合可能な係合部と、を有するクランプと、
を備える、ワイヤハーネス。
【請求項2】
前記テープ部材は、幅方向に前記テープ部材の幅よりも短い所定長さが重複するように複数回、巻回された部分を含み、
前記巻回された前記テープ部材の幅方向一方側の端から幅方向他方側の端までの長さは、前記テープ部材の幅の2倍以上である、
請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記所定長さは、前記テープ部材の幅の半分である、
請求項2に記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
前記電線部材の外周面の一部と、前記テープ部材の一部との間には、隙間が形成されている、
請求項2又は請求項3のいずれか1項に記載のワイヤハーネス。
【請求項5】
前記電線部材は、電線と、前記電線を覆う外装部材と、を有し、
前記外装部材は、長手方向に沿って交互に設けられた環状凸部及び環状凹部を有し、
前記テープ部材は前記外装部材の外周面に巻回され、
前記隙間は、前記環状凹部と前記テープ部材との間に形成されている、
請求項4に記載のワイヤハーネス。
【請求項6】
前記電線部材は、径方向に隣接する複数の電線を含み、
前記隙間は、前記テープ部材が前記複数の電線を横断する部分に形成されている、
請求項4に記載のワイヤハーネス。
【請求項7】
前記テープ部材は、第1テープ部材と、前記第1テープ部材よりも厚い第2テープ部材と、を有し、
前記ベルトは、前記第2テープ部材の外周面に取り付けられている、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のワイヤハーネス。
【請求項8】
前記第1テープ部材は、前記第2テープ部材の端部を含む前記第2テープ部材の外周面に巻回されている、
請求項7に記載のワイヤハーネス。
【請求項9】
前記電線部材は、電線が外装部材により覆われている第1領域と、前記電線が前記外装部材により覆われていない第2領域と、を有し、
前記ベルトは、前記第2領域に巻回されている第2テープ部材の外周面に取り付けられている、
請求項8に記載のワイヤハーネス。
【請求項10】
前記第1テープ部材は、前記第1領域と前記第2領域とを横断して巻回されている、
請求項9に記載のワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
車両等において、複数の機器間を接続するためにワイヤハーネスが用いられている。また、ワイヤハーネスを所定の取付対象に固定する手段として、従来よりクランプが用いられている。特許文献1には、電線部材(電線束とコルゲートチューブを含む部材)を結束状態にて保持するベルトと、車体側のパネル部材に組み付けられる組み付け部と、を有するクランプ(ベルトクランプ)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ワイヤハーネスを取付対象に固定する手順としては、作業者の手作業により、まず電線部材にクランプを取り付けることで、クランプ付き電線部材(すなわち、ワイヤハーネス)を形成し、次にクランプを取付対象に取り付ける。ここで、クランプを取付対象に取り付ける際に、作業者がクランプを取付対象に引き寄せるために手で強く引っ張る場合がある。このときに、クランプが電線部材の長手方向にずれる「横ずれ」が生じると、ワイヤハーネスを正確に取付対象に取り付けることができない。このため、クランプの横ずれを抑制する必要がある。
【0005】
特許文献1には、電線部材にクランプを取り付けた後、ベルトを電線部材にレーザー溶着させることで、横ずれを抑制する技術が開示されている。しかしながら、レーザー溶着を行うには、レーザー装置等の設備が必要であり、コストが掛かるうえに、作業者へのレーザー装置の使用方法及び安全教育等の教育が必要となる。
【0006】
かかる課題に鑑み、本開示は、ワイヤハーネスにおいて、より容易にクランプの横ずれを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のワイヤハーネスは、取付対象に取り付け可能なワイヤハーネスであって、電線部材と、前記電線部材の外周面に巻回されているテープ部材と、前記テープ部材の外周面に取り付けられているベルトと、前記ベルトから径方向外側に突出し、前記取付対象に係合可能な係合部と、を有するクランプと、を備える、ワイヤハーネスである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、より容易にクランプの横ずれを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るワイヤハーネスの側面図である。
【
図2】
図2は、
図1の切断線IIにより切断した断面図である。
【
図3】
図3は、
図2の切断線IIIにより切断した断面図である。
【
図4】
図4は、第2実施形態に係るワイヤハーネスの側面図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態に係るテープ部材の巻き方を説明する図である。
【
図6】
図6は、第3実施形態に係るワイヤハーネスの側面図である。
【
図7】
図7は、第3実施形態に係るテープ部材の巻き方を説明する図である。
【
図8】
図8は、
図7の切断線VIIIにより切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
本開示の実施形態には、その要旨として、以下の構成が含まれる。
【0011】
(1)本開示のワイヤハーネスは、取付対象に取り付け可能なワイヤハーネスであって、電線部材と、前記電線部材の外周面に巻回されているテープ部材と、前記テープ部材の外周面に取り付けられているベルトと、前記ベルトから径方向外側に突出し、前記取付対象に係合可能な係合部と、を有するクランプと、を備える、ワイヤハーネスである。
【0012】
テープ部材をベルトと外装部材との間に介在させているため、ベルトをテープ部材の外周面に食い込ませることができる。これにより、より容易にクランプの横ずれを抑制することができる。
【0013】
(2)好ましくは、前記テープ部材は、幅方向に前記テープ部材の幅よりも短い所定長さが重複するように複数回、巻回された部分を含み、前記巻回された前記テープ部材の幅方向一方側の端から幅方向他方側の端までの長さは、前記テープ部材の幅の2倍以上である。
【0014】
このように構成することで、巻回されたテープ部材の長手方向の長さがより長くなり、テープ部材と電線部材との接触面積が増えることで、クランプがテープ部材ごと電線部材の外周面を長手方向に滑ることを抑制することができる。これにより、より確実にクランプの横ずれを抑制することができる。
【0015】
(3)好ましくは、前記所定長さは、前記テープ部材の幅の半分である。
【0016】
このように構成することで、径方向に少なくとも2枚のテープ部材が重なる。これにより、巻回されたテープ部材の径方向の厚みを厚くしつつ、長手方向の長さをより長くすることができる。この結果、ベルトをテープ部材に食い込みやすくしつつ、クランプがテープ部材ごと電線部材の外周面を長手方向に滑ることを抑制することができる。
【0017】
(4)好ましくは、前記電線部材の外周面の一部と、前記テープ部材の一部との間には、隙間が形成されている。
【0018】
このような構成では、テープ部材と電線部材との間の粘着力が、クランプを引っ張る力に負けて、クランプがテープ部材ごと電線部材の外周面を長手方向に滑るおそれがある。しかしながら、テープ部材は、長手方向の長さがより長くなるように巻回されているため、クランプがテープ部材ごと電線部材の外周面を長手方向に滑ることを抑制することができる。
【0019】
(5)好ましくは、前記電線部材は、電線と、前記電線を覆う外装部材と、を有し、前記外装部材は、長手方向に沿って交互に設けられた環状凸部及び環状凹部を有し、前記テープ部材は前記外装部材の外周面に巻回され、前記隙間は、前記環状凹部と前記テープ部材との間に形成されている。
【0020】
(6)好ましくは、前記電線部材は、径方向に隣接する複数の電線を含み、前記隙間は、前記テープ部材が前記複数の電線を横断する部分に形成されている。
【0021】
(7)好ましくは、前記テープ部材は、第1テープ部材と、前記第1テープ部材よりも厚い第2テープ部材と、を有し、前記ベルトは、前記第2テープ部材の外周面に取り付けられている。
【0022】
(8)前記第1テープ部材は、前記第2テープ部材の端部を含む前記第2テープ部材の外周面に巻回されている。
【0023】
第2テープ部材は第1テープ部材よりも厚いため、端部が剥がれやすい。そこで、第2テープ部材の端部を含む第2テープ部材の外周面を、より薄い第1テープ部材により巻くことで、第2テープ部材が電線部材から剥がれることを抑制することができる。
【0024】
(9)好ましくは、前記電線部材は、電線が外装部材により覆われている第1領域と、前記電線が前記外装部材により覆われていない第2領域と、を有し、前記ベルトは、前記第2領域に巻回されている第2テープ部材の外周面に取り付けられている。
【0025】
このように構成することで、外装部材により覆われていない電線を、厚肉の第2テープ部材によって保護することができる。
【0026】
(10)好ましくは、前記第1テープ部材は、前記第1領域と前記第2領域とを横断して巻回されている。
【0027】
第1領域と第2領域とを横断する部分は、特に第2テープ部材が剥がれやすい。このような部分に第1テープ部材を巻き回すことで、より確実に第2テープ部材が電線部材から剥がれることを抑制することができる。
【0028】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、図面を参照して、本開示の実施形態の詳細を説明する。
【0029】
《第1実施形態》
図1は、第1実施形態に係るワイヤハーネス10の側面図である。
ワイヤハーネス10は、取付対象90に取付可能な部材である。取付対象90は、例えば車両の内部に設けられているパネル部材である。なお、取付対象90は、特に限定されず、例えば機器の筐体であってもよい。ワイヤハーネス10は、電線部材20と、テープ部材31と、クランプ40とを備える。
【0030】
電線部材20は、電線21と、電線21を覆う外装部材22とを有する。電線21は、樹脂製の被覆を含む電線である。本実施形態の電線部材20には2本の電線21が含まれるが、電線部材20に含まれる電線21の本数は特に限定されず、1本であってもよいし、3本以上であってもよい。
【0031】
外装部材22は、例えばポリプロピレン等の樹脂製のコルゲートチューブである。外装部材22は、長手方向に沿って、交互に設けられた環状凸部22a及び環状凹部22bを有する。すなわち、外装部材22は蛇腹構造を有する。
【0032】
環状凸部22aの外径は、例えば15mm以上20mm以下の範囲にある。環状凹部22bの外径は、例えば12mm以上17mm以下の範囲にあり、環状凹部22bの外周面から環状凸部22aの外周面までの間には、3mm程度の隙間G1が形成されている。環状凸部22aの長手方向の幅は例えば1.9mmであり、環状凹部22bの長手方向の幅は例えば1.6mmである。なお、上記の外装部材22の寸法は例示であり、その他の寸法の外装部材22を用いてもよい。
【0033】
テープ部材31は、例えばポリ塩化ビニル(PVC)等の樹脂製の基材の一方側の面に粘着剤が設けられている粘着テープである。テープ部材31の基材としては、例えば外装部材22を構成する樹脂よりも柔らかい(剛性の低い)樹脂を用いる。テープ部材31の厚みは、例えば0.2mmである。テープ部材31は、粘着剤側の面を内側にした状態で、電線部材20の外周面に巻回されている。
【0034】
図2は、
図1の切断線IIにより切断した断面図である。
図3は、
図2の切断線IIIにより切断した断面図である。
より具体的には、テープ部材31は、
図2に示すように外装部材22の外周面に複数周(例えば3周)、「ピッチ巻き」により巻回されている。「ピッチ巻き」とは、
図3に示すように、1周目にテープ部材31を巻いた場所と同じ場所に、2周目以降のテープ部材31を巻く巻き方である。このため、巻回された後のテープ部材31の幅方向一方側の端から幅方向他方側の端までの長さL1は、テープ部材31の幅と等しくなる。また、巻回された後のテープ部材31の内側(1周目の内周面)から外側(3周目の外周面)までの厚みは、0.6mm程度である。
【0035】
巻回されたテープ部材31は、環状凸部22aの外周面と接触する一方で、環状凹部22bの外周面とは接触せず、テープ部材31と環状凹部22bの外周面との間には前述の隙間G1が形成されている。本実施形態の長さL1(=テープ部材31の幅)は、例えば19mmであり、少なくとも4個の環状凸部22aの外周面と接触する。
【0036】
クランプ40は、例えば樹脂製の部材であり、ベルト41と、係合部42とを有する。ベルト41は、テープ部材31の外周面に取り付けられている部分である。ベルト41の幅L2は、例えば3mmであり、テープ部材31の長さL1よりも短く、環状凹部22bの幅よりも長い。ベルト41は、例えば一方端部にロック部材41aを有し、ベルト41をテープ部材31の外周面に巻いた状態で他方端部41bをロック部材41aに挿入することで、テープ部材31の外周面に取り付けられる。
【0037】
係合部42は、ベルト41から径方向外側に突出し、取付対象90に係合可能な部分である。係合部42は、例えば
図1の吹き出し図面に示すように、取付対象90に設けられた孔90aに挿入されることで、取付対象90に係合される。なお、係合部42はその他の方法により取付対象90に係合されてもよい。例えば、取付対象90に設けられている係止片に係合部42が取り付けられてもよい。
図1の係合部42の形状は例示であって、その他の形状であってもよい。
【0038】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
例えば、ベルト41を、テープ部材31を介さずに直接、外装部材22の外周面に取り付けると、係合部42を取付対象90に取り付ける際に、ベルト41が外装部材22の外周面を長手方向に滑り、クランプ40が電線部材20の長手方向にずれる「横ずれ」が生じるおそれが高い。これを防止するために、ベルト41をより強く外装部材22に締めつけると、外装部材22が径方向に潰れ、外装部材22の強度が低下するおそれがある。
【0039】
本実施形態では、ベルト41と外装部材22との間にテープ部材31を介在させる。ここで、テープ部材31は外装部材22よりも柔らかく、また、外装部材22の外周面に複数周のピッチ巻きにより巻回しているため、ある程度の厚みを有する。このため、
図3に示すように、ベルト41をテープ部材31の外周面に外装部材22が潰れない程度の強度で締め付けると、テープ部材31の外周面が径方向内側に凹み、ベルト41はテープ部材31に食い込む。
【0040】
これにより、テープ部材31のうちベルト41により締め付けられていない部分は、ベルト41の内周面よりも径方向外側に位置し、ベルト41の側面がテープ部材31と干渉することで、ベルト41の長手方向への移動が規制される。この結果、クランプ40の横ずれが抑制される。
【0041】
本実施形態では、従来技術のように、レーザ装置等の大掛かりな機械器具が不要であり、テープ部材31をベルト41と外装部材22との間に介在させればよいため、より容易にクランプ40の横ずれを抑制することができる。
【0042】
《第2実施形態》
図4は、第2実施形態に係るワイヤハーネス11の側面図である。第2実施形態において、第1実施形態と共通する構成については、同じ符号を付して適宜説明を省略する。
ワイヤハーネス11は、電線部材20と、テープ部材32と、クランプ40とを備える。第1実施形態のワイヤハーネス10と、本実施形態のワイヤハーネス11とは、テープ部材32の巻き方が相違し、その他の点は共通する。
【0043】
第1実施形態のワイヤハーネス10は、テープ部材31をベルト41と外装部材22との間に介在させ、ベルト41をテープ部材31の外周面に食い込ませることで、クランプ40の横ずれを抑制する。
【0044】
しかしながら、クランプ40をより強く引っ張ると、クランプ40がテープ部材31ごと外装部材22の外周面を長手方向に滑るおそれがある。特に、テープ部材31の一部には、外装部材22との間に隙間G1が形成されているため、テープ部材31と外装部材22との間の粘着力が、クランプ40を引っ張る力に負けるおそれがある。
【0045】
そこで、第2実施形態では、テープ部材31自体が外装部材22の外周面を長手方向に滑ることを抑制するために、テープ部材31の巻き方を第1実施形態の「ピッチ巻き」から「ラップ巻き」に変更する。第2実施形態のテープ部材は、ピッチ巻きされるテープ部材31と区別するために、「テープ部材32」と称する。本実施形態のテープ部材32の材質及び寸法は、テープ部材31と同じである。なお、テープ部材32の材質及び寸法は、テープ部材31と相違してもよい。
【0046】
図5は、テープ部材32の巻き方を説明する図である。テープ部材32は、前述のとおり、外装部材22の外周面に「ラップ巻き」により巻回される部分を含む。「ラップ巻き」とは、テープ部材32の幅W1よりも短い所定長さW2が幅方向に重複するように巻く巻き方である。
【0047】
図5中の(a)に示すように、はじめに、テープ部材32は外装部材22の外周面に2周だけ「ピッチ巻き」される。すなわち、テープ部材32の幅W1に完全に重複させた状態で、2周分、垂直に巻き回される。次に、
図5中の(b)に示すように、所定長さW2ずつ重複させながら、テープ部材32が斜めに3周分、巻回される。本実施形態の所定長さW2は、テープ部材32の幅W1の半分(W2=1/2×W1)である。このように、幅方向の半分が重なる巻き方は、「ハーフラップ巻き」と称される。
【0048】
最後に、
図5中の(c)に示すように、テープ部材32は外装部材22の外周面に2周だけ「ピッチ巻き」される。巻回されたテープ部材32の幅方向一方側の端32aから幅方向他方側の端32bまでの長さL3は、例えば40mmであり、テープ部材32の幅W1(=19mm)よりも2倍以上長い。
【0049】
ベルト41は、テープ部材32を外装部材22の外周面に巻回した後、
図4に示すようにテープ部材32の外周面に取り付けられる。ベルト41をテープ部材32の外周面に締め付けると、当該外周面にベルト41が食い込むため、ベルト41がテープ部材32の外周面に対して長手方向に移動することを抑制することができる。
【0050】
また、テープ部材32は、長手方向の両端部分をピッチ巻きとすることで外装部材22から剥離することを防止しつつ、長手方向の中央部分をラップ巻きとすることで長さL3を長くしている。長さL3が長手方向により長いため、テープ部材32と外装部材22との接触面積が増え、テープ部材32が外装部材22から剥がれにくくなる。これにより、クランプ40がテープ部材32ごと外装部材22の外周面を長手方向に滑ることを抑制し、より確実にクランプ40の横ずれを抑制することができる。
【0051】
特に、本実施形態ではテープ部材32の幅W1の半分が重なるように巻き回すため、径方向に少なくとも2枚のテープ部材32が重なる。これにより、巻回されたテープ部材32の径方向の厚みを厚くしつつ、長さL3を長手方向に長くすることができるため、ベルト41をテープ部材32に食い込みやすくしつつ、クランプ40がテープ部材32ごと外装部材22の外周面を長手方向に滑ることを抑制することができる。
【0052】
なお、所定長さW2は、例えば幅W1の半分より大きくてもよい。また、本実施形態ではテープ部材32をはじめに2周ピッチ巻きした後、3周ラップ巻きし、最後に2周ピッチ巻きするが、巻き始めと巻き終わりにおいてピッチ巻きをせずに、ラップ巻きのみを行ってもよい。また、各巻き方において、巻く周数は特に限定されず、本実施形態よりも多い周数にて巻いてもよい。例えばテープ部材32を3周ピッチ巻きをしてもよいし、4周ラップ巻きをしてもよい。
【0053】
また、上記の対策は、テープ部材32を巻き回すことで実現されるため、レーザ装置を用いる従来技術と比べて、より容易にクランプ40の横ずれを抑制することができる。
【0054】
《第3実施形態》
図6は、第3実施形態に係るワイヤハーネス12の側面図である。
第1実施形態及び第2実施形態では、テープ部材31,32はそれぞれ外装部材22の外周面に巻回される。しかしながら、ワイヤハーネスの設置場所が例えば機器の筐体内部等の十分なスペースが確保できない場所の場合、ワイヤハーネスは、外装部材22の一部を外して電線21を露出させた状態で設置されることがある。
【0055】
この場合、外装部材22の代わりに電線21を保護するために、厚肉のテープ部材により電線21を覆うことが考えられる。第3実施形態では、テープ部材31,32よりも厚いテープ部材を用いるワイヤハーネス12について説明する。第3実施形態において、第1実施形態と共通する構成については、同じ符号を付して適宜説明を省略する。
【0056】
ワイヤハーネス12は、電線部材20と、テープ部材33と、クランプ40とを備える。テープ部材33は、第1テープ部材34と、第2テープ部材35とを有する。第1テープ部材34は、例えば第1実施形態のテープ部材31と同じ材質及び寸法であり、その厚みは0.2mmである。第2テープ部材35は、第1テープ部材34よりも厚く、例えば0.7mmである。
【0057】
図7は、テープ部材33の巻き方を説明する図である。
図7中の(a)に示すように、電線部材20は、電線21が外装部材22により覆われている第1領域20aと、電線21が外装部材22により覆われていない第2領域20bとを有する。第2領域20bでは、電線21がそのまま露出しているため、電線21を保護するために、厚肉の第2テープ部材35を電線21の外周面に(すなわち第2領域20bに)巻き回す。
【0058】
図7中の(b)に示すように、第2テープ部材35は、はじめに2周「ピッチ巻き」された後に、複数周(例えば、3周以上)「ラップ巻き」され、最後に2周「ピッチ巻き」される。第2テープ部材35は、周方向の端部35aから巻き始められ、端部35bにおいて巻き終わる。
【0059】
端部35bは、第1領域20aと第2領域20bとを横断する位置にある。すなわち、第2テープ部材35は、電線21と外装部材22とにまたがる部分において、巻き終わる。これにより、外装部材22により覆われていない電線21を第2テープ部材35によって保護しつつ、外装部材22の内部に異物が混入することを防止することができる。
【0060】
第2テープ部材35は、厚肉のテープであるため、電線21を保護することができる一方で、テープの剛性が高いために端部35a,35bが電線21から剥がれやすい。また、端部35bは第1領域20aと第2領域20bとを横断する位置にあるため、より剥がれやすい。このため、本実施形態では、
図7中の(c)に示すように、第2テープ部材35の端部35a,35bを、より薄い第1テープ部材34により巻くことで、第2テープ部材35が電線部材20から剥がれることを抑制する。
【0061】
第1テープ部材34は、第2テープ部材35の巻き始めの端部35aと、巻き終わりの端部35bとの2箇所に、それぞれ巻回される。以下、端部35a側の第1テープ部材34を適宜「第1テープ部材34a」と称し、端部35b側の第1テープ部材34を適宜「第1テープ部材34b」と称する。第1テープ部材34aは、端部35aを含む第2テープ部材35の外周面に、複数周(例えば、2周)「ピッチ巻き」される。第1テープ部材34bは、端部35bを含む第2テープ部材35の外周面に、複数周(例えば、2周)「ピッチ巻き」される。
【0062】
第1テープ部材34bは、第1領域20aと第2領域20bとを横断して巻回されている。すなわち、第1テープ部材34bは、剥がれやすい端部35aを覆うため、第2テープ部材35が電線部材20から剥がれることを抑制することができる。
【0063】
図6に示すように、ベルト41は第2テープ部材35の外周面に取り付けられる。ベルト41を厚肉の第2テープ部材35の外周面に締め付けると、当該外周面にベルト41が食い込むため、ベルト41が第2テープ部材35の外周面に対して長手方向に移動することを抑制することができる。
【0064】
図8は、
図7の切断線VIIIにより切断した断面図である。第2領域20bでは、第2テープ部材35は、径方向に隣接する複数の(本実施形態では2本の)電線21を結束する。このとき、第2テープ部材35が複数の電線21を横断する部分には隙間G2が形成される。このため、ベルト41を第2テープ部材35の外周面に食い込ませ、ベルト41が第2テープ部材35の外周面に対して長手方向に移動することを抑制したとしても、第2テープ部材35と電線21との間の粘着力が、クランプ40を引っ張る力に負けて、クランプ40が第2テープ部材35ごと長手方向に移動するおそれがある。
【0065】
このため、第2テープ部材35は第2実施形態のテープ部材32と同様に長手方向により長く巻回される。これにより、第2テープ部材35と電線部材20との接触面積が増え、クランプ40が第2テープ部材35ごと電線部材20の外周面を長手方向に滑ることを抑制することができる。
【0066】
さらに、第2テープ部材35は、第1テープ部材34によって両端35a,35bが巻回されることで、電線部材20により強く締め付けられる。これにより、電線部材20と第2テープ部材35との間の摩擦力が高くなり、クランプ40が第2テープ部材35ごと電線部材20の外周面を長手方向に滑ることをより抑制することができる。
【0067】
また、上記の対策は、第1テープ部材34及び第2テープ部材35を巻き回すことで実現されるため、レーザ装置を用いる従来技術と比べて、より容易にクランプ40の横ずれを抑制することができる。
【0068】
なお、第3実施形態において、第2テープ部材35の端部35a,35bの剥離防止が不要な場合には、第1テープ部材34を省略してもよい。
【0069】
《補記》
なお、上記の各実施形態については、その少なくとも一部を、相互に任意に組み合わせてもよい。また、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0070】
10 ワイヤハーネス
11 ワイヤハーネス
12 ワイヤハーネス
20 電線部材
20a 第1領域
20b 第2領域
21 電線
22 外装部材
22a 環状凸部
22b 環状凹部
31 テープ部材
32 テープ部材
32a 端
32b 端
33 テープ部材
34 第1テープ部材
34a 第1テープ部材
34b 第1テープ部材
35 第2テープ部材
35a 端部
35b 端部
40 クランプ
41 ベルト
41a ロック部材
41b 他方端部
42 係合部
90 取付対象
90a 孔
L1 (テープ部材31の長手方向の)長さ
L2 (ベルト41の)幅
L3 (テープ部材32の長手方向の)長さ
W1 (テープ部材32の)幅
G1 隙間
G2 隙間